00/08/03 生殖補助医療技術に関する専門委員会(第18回)議事録       厚 生 科 学 審 議 会 先 端 医 療 技 術 評 価 部 会       生 殖 補 助 医 療 技 術 に 関 す る 専 門 委 員 会                 ( 第 18 回 )                 議   事   録        厚 生 省 児 童 家 庭 局 母 子 保 健 課            厚生科学審議会先端医療技術評価部会       生殖補助医療技術に関する専門委員会(第18回)議事次第 日 時 平成12年8月3日(水) 15:30〜18:20 場 所 霞山会館(霞山ビル9F)  1 開 会  2 議 事   (1)第三者の配偶子提供等による生殖補助医療のあり方について   (2)その他  3 閉 会 〔出席委員〕   中 谷 委員長   石井(ト)委員  石井(美)委員  加 藤 委 員  高 橋 委 員   辰 巳 委 員  田 中 委 員  丸 山 委 員  矢内原 委 員   吉 村 委 員 ○椎葉課長補佐  それでは定刻になりましたので、ただいまから「第18回厚生科学審議会先端医療技術 評価部会・生殖補助医療技術に関する専門委員会」を開催いたします。  本日は大変お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。それでは議事 に入りたいと思いますので、中谷委員長、議事進行よろしくお願いいたします。 ○中谷委員長  きょうも34度ぐらいになるのですか、大変なお暑い中を皆さんおそろい御出席いただ きましてありがとうございます。  本日の議事に入ります前に、事務局からきょうの資料の確認をお願いいたします。 ○椎葉課長補佐  本日の資料でございますが、基本的には資料は2部でございまして「議事次第」と資 料1と資料2でございますが、右上の方に番号が打ってございますけれども、資料1の 方が7月11日の会議の修正部分のところでございまして、資料2が前回7月25日の修正 部分でございます。本日は資料1に基づきまして、5ページの2の「規制方法及び条件 整備」の(2)の「条件整備」の方からご議論をいただければと思いまして、資料1を 用意してございます。そして資料1を最後までご議論いただいた後、今度、資料2の最 初の方からというようなつもりで、この資料1、2を用意してございます。以上でござ います。 ○中谷委員長  ありがとうございました。そういたしますと、次に議事(1)の「第三者の配偶子提 供等による生殖補助医療のあり方について」に入りたいと思いますが、事務局で訂正し た部分について間違いや何かはっきりしないところはありませんでしたか。あの御訂正 でよかったでしょうか。別に何もお気づきのところはありませんでしたか。  3ページ、「女性に体外受精をうける病因があり、かつ精子の提供を受けなければ妊 娠できない夫婦に限って、提供精子による体外受精を受けることができる。但し、併せ て卵子の提供を受け、新たに胚をつくることはできない。」とありますが、そうする と、4)の余剰胚提供による体外受精と矛盾しないかということが問題になりませんで したか。これは余剰胚だからいいということなんですか。 ○吉村委員  これは要するに精子の提供を受けて体外受精する人が、併せて卵子の提供を受けては いけないということです。 ○中谷委員長  解決したのでしたか。 ○吉村委員  はい。 ○石井(ト)委員  6ページの一番上、確認ですけれども、「その子の父は生殖補助医療に同意した夫と する。」という言葉の表現なんですけど。 ○中谷委員長  6ページの一番上? ○石井(ト)委員  資料2の方です。2が修正した分ですね。確認ですが、この意味は、既に生殖補助医 療技術に同意しているわけですけれど、ここは、その妻の夫がその子の父となるという ような意味ですね。こういう言い回しをするのは何か意味があったのかなと思ったんで す。 ○中谷委員長  子を出産した者は、その子の母とすると。 ○石井(ト)委員  だから、その妻の夫が……。 ○中谷委員長  「妻が夫の同意をえて〜したときは、その子の父は生殖補助医療に同意した夫とす る」と。 ○石井(ト)委員  夫とするというよりか、要するにその妻の夫がその子の父になるということですね。 ○中谷委員長  そういうことですよね。 ○石井(ト)委員  非常にややこしいなと思った。もう既に同意をしているわけですね、以前に。ですか ら子の父を明らかにするということですから、その妻の夫がその子の父となるという、 そういう言い回しではおかしいんですか。ちょっとややこしいなと思ったんです。 ○石井(美)委員  その子の父は「同意した」というのは繰り返しになっているから、なくてもよいのか もしれません。 ○石井(ト)委員  もとの文章も、言い回しがやっぱりこんな感じでわかりづらかったですね。 ○中谷委員長  もっとわかりやすい表現はありますよね、統一的にすればね。でも、これでもわから ないわけではない。 ○石井(ト)委員  わからないわけではないけど、ここはその子の父はだれなのかということを明らかに 表現するわけですから、そうすると、その妻の夫はその子の父となるというので。 ○加藤委員  日本語だとその方が素直ですよね。その夫がその子の父となるという方がね。 ○母子保健課長  その夫が父となる、と簡潔にいたしますか。 ○加藤委員  非常に意地悪く言えば、精子を提供した生物学上の父は妻と結婚しなければならな い、というふうに読めますよね。 ○中谷委員長  それは結論になりますから。一番端的に言えば、夫の同意を得て子を出産した者をそ の子の母とし夫を父とする、というふうにすれば一遍に済みますけれどもね。 ○石井(ト)委員  その前に産んだ者が母となるというのが確かあったんです。 ○中谷委員長  だから出産した者だから、それでいいわけですよ。  それではワーキンググループの方にその決着をつけておいていただきましょう。 ○石井(ト)委員  修正の方の2ページで、これは前回も余り議論にならなかったんですが、気がついて みましたら、2ページの一番上の2行目、「子を持ちたいという親の希望と〜」、「生 命倫理」という言葉が間に入っているんですね。「子を持ちたいという親の希望と子ど もの福祉をどう調和させるかであり」という形で、あえてここに「生命倫理」という言 葉は必要ないのではないかと思うんです。「子を持ちたいという親の希望」というのが 「生命倫理」という言葉だけにひっかかっているんですよね。「生命倫理」というもの はもっと広い概念ですから。 ○中谷委員長  修正したのは、「子を持ちたいという希望との関係において生まれてくる子の福祉を 優先する」となっていますけど。 ○石井(ト)委員  資料2の方が修正文なんですけど。 ○中谷委員長  2ページ目。 ○石井(ト)委員  2ページの2行目です。「生命倫理」という言葉は削除した方がよろしいのではない かと思うんですけど、もし使うのでしたら「子を持ちたいという親の希望と子どもの福 祉をどう調和させるかであり〜」、だから「生命倫理」とあえて入れることはないと思 うんですよね。こういうようなそれぞれの葛藤上のいろんな問題は、すべて生命倫理上 の問題ですから。 ○中谷委員長  なくても別に構いませんということですね。 ○石井(ト)委員  なくても構いませんね。 ○中谷委員長  「〜希望と子どもの福祉をどう調和させるかであり〜」。 ○吉村委員  「生命倫理」がここで唐突に入ってきたように見えるのですが、例えば配偶子に対し て尊厳を持つというようなことも生命倫理の一つ、それも入れておいた方がということ で入れたのではなかったかと思うんですけど、これはなくても……。 ○矢内原委員  ほかのものが入っているから入れた方が私はいいと思いますね、ここの場所でないに しても。 ○石井(美)委員  生命倫理は親の希望と子どもの福祉という問題だけではないですからそういう観点か らの検討は必要だと思うのですが、並び方はおかしいと思います。 ○矢内原委員  3のどこかには「生命倫理」という言葉を入れていただかないと、次の基礎になる条 件が全部入っていますよということに重みがつくように思うんです。一番最後にします か。以下のものについては生命倫理の観点……。 ○石井(ト)委員  「配偶子提供に係るリスクをどう評価するか等の生命倫理上の問題もある。どのよう に調整していくかについては個々の〜」という形で、これはいかがでしょうか。 ○中谷委員長  「以下のものについては〜」とあって、挙げられている最後に入れたらいかがです か。 ○矢内原委員  私もそう思って今いい文章を考えてみたんですけど、「生命倫理上、以下のものにつ いては基本的〜」、この前に入れちゃいますか。 ○中谷委員長  「基本的的考え方として合意されている」というんですから、むしろ黒ポチの一等最 後に。 ○石井(美)委員  倫理の専門家の加藤先生。 ○加藤委員  まず希望と福祉をどう調和させるかというのは日本語としてわかりやすいのだけれど も、「生命倫理」と「子どもの福祉」という言葉があって、それと親の希望とどういう ふうに調和させるか、そういう趣旨になるんでしょう。 ○中谷委員長  少なくともここでの「生命倫理や」というのは取った方がいいと思いますね。 ○矢内原委員  一番最後の「以下のもの」の前に、「生命倫理を考える上で」とか、生命倫理に何か つけて「以下のものについては基本的考え方として合意されている」と。 ○中谷委員長  それでもいいですけど。 ○丸山委員  もう少し前に持ってきて「どのように調整していくかについては生命倫理の観点も踏 まえて、個々の検討事項に即して検討せざるを得ないが〜」、ちょっとおかしいです か。 ○石井(美)委員  検討〜検討はおかしい。「個々の事項に即して検討せざるを得ないが〜」でしょう か。 ○中谷委員長  「個々の事項に即して検討せざるを得ないが〜」、丸山案だと「個々の事項」の前に いくわけですね。 ○丸山委員  「どのように調整していくかについては生命倫理の観点を踏まえて、個々の事項に即 して検討せざるを得ないが〜」。 ○中谷委員長  それでいいですね。 ○加藤委員  その前に「種々の価値観」という言葉があるから「生命倫理を含めて種々の価値観」 というふうにしてもいいのではないですか。 ○吉村委員  そうですね。 ○中谷委員長  「〜ついては生命倫理の観点を踏まえて、個々の価値観の間での調整が必要とな る」。 ○加藤委員  踏まえてというより、含めて。 ○矢内原委員  価値観の方が強く出てきませんか。生命倫理の方が前かな。「生命倫理を含めて個々 の価値観の調整〜」。 ○吉村委員  前提条件に生命倫理の観点を踏まえることがあるのだから、いいと思いますけど。 ○中谷委員長  含めてではなくて踏まえてですか。 ○吉村委員  踏まえて。 ○中谷委員長  踏まえて。加藤先生、よろしいですか。 ○加藤委員  どっちでもいいです。余り字句のことで時間をとりたくないです。 ○石井(美)委員  後でもう一度調整しますから。 ○中谷委員長  それではその部分はそれでいいということですね。 ○石井(美)委員  前回を踏まえた資料2の方でよろしいでしょうか。 ○中谷委員長  はい。 ○石井(美)委員  3ページの4)「提供胚の移植」「余剰胚の胚移植」という言い方もおかしいと思う のですが、合意されたかどうかは別として、「適用の是非」の前に「提供胚は余剰胚に 限る」という一文を入れるということを申し上げたように記憶しているのですが。 ○中谷委員長  それは何ページになりますか。 ○石井(美)委員  資料2の方の3ページの4)です。 ○中谷委員長  提供胚の移植。 ○石井(美)委員  はい。提供される胚は余剰胚に限るか。 ○丸山委員  表題をそうするんですか。 ○石井(美)委員  いいえ、表題の下に一文を入れて明確にした方がよいのではないかという趣旨です。 ○加藤委員  そうすると「4)余剰胚の移植」と書いて、その次に「提供される胚は余剰胚に限 る」という文章を入れるということですか。 ○石井(美)委員  いいえ。余剰胚ではなくて提供胚の移植として、その下にという趣旨です。 ○母子保健課長  「提供される胚は余剰胚に限る」を入れると。 ○石井(美)委員  はい。そして案1の文章は、余剰胚の移植か胚の移植か、余剰胚の胚移植というのは おかしい。案3は余剰胚の移植になっています。 ○加藤委員  余剰胚の胚移植は「余剰胚の移植」でいいんじゃないですか。 ○石井(美)委員  そうですね。 ○中谷委員長  案2、余剰胚の移植。ほかにご質問ありませんか。 ○法務省  すいません、法務省でございますけれども、今の点に関連して少し確認させていただ いてもよろしいでしょうか。  資料2の5ページでございますが、(5)の胚の処分について、前回、第三者提供の 胚についての記述であるということで大幅に記載が変わった点でございますけれども、 まず「両者の合意により、余剰胚を提供することができる」とある場合の両者というの はだれなのかという点を確認したいということ。それから、その文の次の行、「使用前 であれば配偶子の由来する両者の合意により提供の撤回ができ」といったときの両者と はだれかということを確認していただければと思います。これが第三者提供ということ であれば、配偶子の由来する両者というのは、提供者と夫婦の一方ということに読める ように思われるのですが、果たしてそういう前提でご議論がされていたのかどうかを確 認したいと思います。 ○石井(美)委員  最後の点をもう一回。 ○法務省  「配偶子の由来する両者が合意して提供が撤回でき」とあって、「配偶子が由来す る」とわざわざ限定しているんですね。とすると、第三者提供で、しかも胚の提供を丸 ごと受けるのではないという前提で考えると、だれから卵をいただいて、そこに夫の精 子を受精させるというようなことになるのかと思われるのですが、そういう前提では多 分ないのだろうと思うんですが、ここの書きぶりはそういう前提に矛盾するように思い ますが。 ○吉村委員  「両者の合意により」というのは、配偶子の由来する両者の合意です。 ○法務省  配偶子の由来する両者でよろしいのですか。 ○吉村委員  そうです。 ○法務省  とすると、ある夫婦がいて、そこで奥さんに卵子ができないというときに第三者から 卵子を提供してもらって、夫の精子を受精させて体外受精する。そのときに余剰胚がで きてしまって、提供するというときの配偶子の由来する両者というのは第三者。 ○吉村委員  全くそういうことは考えてないですね。 ○法務省  それは考えてないわけですか。 ○吉村委員  考えてないです。胚の提供は、要するにある御夫婦が胚をつくって体外受精をしまし た。子どもができました。もう私たちはその胚は要りません。そういう胚だけですか ら、一切それは。 ○矢内原委員  精子提供によって、余剰胚の移植だけの問題ではなくて、実際に精子提供を受けて、 妻の卵子と胚をつくることができる。それも胚なんだから、それの保存に関しては、も しこの書き方だと、提供した人の精子ということも考えなければいかんということにな る。 ○中谷委員長  そうですね、由来するということは。 ○法務省  少なくとも前回のご議論では、夫婦の間でできた受精卵は外すというふうに議論され ていたように思えたんですけれども、そうではないんですね。 ○吉村委員  いや、そんなことは一切議論してません。 ○法務省  そうでなければ、なおさら。 ○吉村委員  その胚のことしか言ってないというか、逆ですよ。そういった胚のことしか我々は今 のところ話してなかった。 ○法務省  わかりました。 ○吉村委員  でも、そういう誤解がある以上は、これはもう少し検討する余地があります。全く誤 解されているわけですから、ある意味では。 ○石井(ト)委員  誤解というか、まだ徹底していません、その部分は。 ○石井(美)委員  そういう場合どうかということは考えなくてはいけないですね。提供精子による体外 受精のときに余剰胚というものが出るかどうかですね。 ○石井(ト)委員  あり得ます。 ○田中委員  あり得ますね。 ○吉村委員  だから、今こういう議論が是とされればあり得るわけですよね。そういったこともあ り得ますから。 ○丸山委員  そういうのは利用しないというのもおかしいんですね。 ○吉村委員  そういうのを利用しないというのもおかしい。 ○丸山委員  配偶子提供による胚は。 ○石井(美)委員  そこは決めてはいないですね。 ○吉村委員  それは決めてない。おっしゃることも出てきますね。 ○法務省  わかりました。そうするとまた前文に戻って、ここで言っている胚は夫婦間のものだ けであるという前提で考えているとすると、ここは第三者提供の配偶子等というタイト ルとは違うことを議論していると考えていいわけですね。 ○丸山委員  夫婦間でつくられた胚を第三者に提供する。 ○法務省  私の理解では、配偶子ではなくて胚のことを言っているのだというふうに考えていた ものですから、ここは夫婦間で、夫婦に由来する配偶子を使った胚と理解してここはそ のように決めてよろしいですか、お聞きしておいて。 ○中谷委員長  いずれにしても概念がはっきりしないとだめですね、内容は。 ○矢内原委員  そういうことを言うためにはその前に、胚の保存というものは、配偶子の提供によっ て得た胚は保存しないという一文をどこかに入れておかないといけない。 ○吉村委員  それはわかりました。 ○石井(美)委員  しないのですね。 ○辰巳委員  保存はしても提供はしない。 ○矢内原委員  提供をしないか決めるわけです。 ○石井(美)委員  提供はしてはいけないという理由。だれが決定できるかということですね、ご質問の ように。 ○法務省  そうすると体外受精などで余剰胚ができてしまったというときに、保存しておいて、 自分で後で使うということはあり得る。それは考えてよろしいわけですか。 ○吉村委員  実際にそれはありますから。 ○法務省  それはあり得るわけですね。 ○吉村委員  実際にもやってますから。 ○法務省  それがあり得るんだとすると、配偶子の由来する両者の合意により提供の撤回ができ るというのは提供者と夫婦の一方ということになるように読めますので、その点はお考 えいただいた方がいいのかなというふうに思います。 ○中谷委員長  提供者と夫婦の一方というよりも、提供者と御夫婦と三者のことを言わなければいけ ないのではないですか、そういう場合だったら。 ○法務省  それはこちらの皆様のお考え次第だと思いますので。 ○石井(ト)委員  それに関連してですけど「いずれか1人の申し出があれば廃棄できる」というんです けど、これはいかがなんでしょうか。ちょっと気になった文章なんですけど、こういう 文章になってきたいきさつ。いずれか1人だけが申し出れば廃棄できるんですか。 ○加藤委員  離婚しちゃっているかもしれない。喧嘩しているかもしれないしね。 ○中谷委員長  合意がなければいけないということです。 ○石井(ト)委員  合意がなければだめですよ。だから勝手にやることがあるわけですね。ですから同意 か合意が必要です。 ○田中委員  合意があって、凍結しておいて、なおかつそれを廃棄するということでしょう。 ○石井(ト)委員  だから、いずれの1人の申し出だけでオーケイになるのはおかしいと思っているんで す、私は。やはりそれなりに合意によって……。 ○中谷委員長  全員の合意がないということですよ。 ○石井(ト)委員  ええ。 ○石井(美)委員  ここのところは議論を詰めていない。 ○法務省  恐らくここは御夫婦の間でつくった胚を保存して後で使うという話と、提供を受けて できた胚を保存するという話が整理されないままに議論されていたように思われますの で、項目としても分けて……。 ○吉村委員  というよりも、提供されてできた胚は我々は考えていなかったということです。 ○石井(美)委員  そうです。 ○吉村委員  だから、あなたの考えは我々は今のところそんなことは考えてなかったということで す。 ○法務省  わかりました。 ○吉村委員  そういうことも考えなくてはいけないということが今わかったんです。ここで今ずっ と話していたのは夫婦でできた胚のことばっかりを考えていたということです。それは よくわかりました。 ○石井(美)委員  配偶子の由来するというのが前にあったのを消してしまったから、それは入れるとい うことになったんですね。 ○石井(ト)委員  もう一つ確認したいと思ったんですけど、2の4ページ、案1、2、3とあるんです けど、これはそれぞれに精子なのか卵子なのかというところで「兄弟姉妹・父母からの 提供を認めない」というところです。「兄弟姉妹からの提供は認める」、「兄弟姉妹・ 父母からの提供を認める」の三つの案があるのですけど、これは一つずつ、精子のとき にはどうなのか、卵子のときはどうなのか、余剰胚のときもあり得るんですよね。一個 ずつ確認した方がよろしいのではないかと思ったのですけど。 ○丸山委員  前回、私が胚と配偶子とでは扱いが違うようにするつもりだったということを申しま したけれども、吉村先生からそれはおかしいと指摘され、では放っておきましょうかと したものですね。案1は認めないのだからいいですね。案2と案3で、父母から胚の提 供というのはないでしょうね。兄弟姉妹だけですね。ですから、そのところを分けるか どうかというのは確かに。 ○石井(ト)委員  一つずつ確認した方がいいと思うのですね。可能性というのはいかようにもあり得る のですね。例えば兄弟の方が胚を移植して余剰胚が出る可能性もあるしとか、後でも結 構ですから御検討をお願いします。 ○中谷委員長  案1、2、3とありますけれども、数はどうだったんですか。 ○吉村委員  数は兄弟姉妹から認めるという方は多かったですね。石井(ト)先生がおっしゃった のは、精子に関しては何がいい、何が悪い。卵子に関しては何がいい、何が悪い、そう ですよね。 ○石井(ト)委員  そういうことをきっちりと。 ○吉村委員  それは次の段階で決まってくるだろうと思うんですけれども、それはそうした方がい いと思います。 ○中谷委員長  案2、案3というのは極めて日本的、ほかの立法例にはなくて、私、これは考えたこ ともなかったですね。 ○吉村委員  日本では多いだろうということですね。 ○中谷委員長  だけど、後からいろんな問題が出てきますけれどもね、経験してみないとわからない と言えばそれまでかもしれません。丸山委員、何か。 ○丸山委員  今の問題も含めて、またもう一回なぞる機会があると思いますから、条件整備を早く してしまった方が気持ちがいいのではないかと思います。 ○吉村委員  この前終わったところの、「条件整備」の続きを。 ○中谷委員長  ではどうぞ先に進んで、御意見を御自由にお述べいただきたいと思います。 ○法務省  親子関係の確定ということで私どもの所管の部分にこれからご議論が及ぶということ でございますので、これからは私どもの方からも折を見て発言させていただこうと思っ ておるのですけれども、親子関係についてお考えいただく際にぜひ留意していただきた いのが、何といっても生殖補助医療の理念との関係で「子の福祉」を優先するという点 が前回の修正で一番大きなものということでクローズアップしていただいたので、非常 にこちらとしてもありがたいなと思っておるのですが、何といっても生殖補助医療とい うのが、最終的には親になろうとするためのもの、親になりたい、親のための制度とし かやはり言いようがないという点をぜひ踏まえていただきたいと思います。  養子の問題がかなり対比して挙げられることがございますけれども、養子制度につい ては、家のための養子、親のための養子といった制度から、今や子のための養子の制度 に日本の民法ですら脱皮してきている状況でございますけれども、生殖補助医療に基づ いて子どもが生まれてくる状況というのは親のためのものなんだということを前提とし て考えざるを得ない。その中でどうやって子どもの福祉を確保していこうかという点に ついてぜひ留意をしていただいてご議論していただきたいと思っております。もちろん こちらでもご議論いただいた上で、私どももまた民事法制の観点から議論する機会があ ろうかと思いますけれども、こちらでの有識者の皆様方のご議論を踏まえて議論するた めに、ぜひ実のある議論をお願いしたいと考えております。  具体的な内容についてでございますけれども、まず母親をだれにするかということに ついてご議論がこれからあると思うのですけれども、今まで余りこの点について議論が 分かれていないということでさらっと流されてきたような点があるように思いますけれ ども、本当に出産した女性が母である、母としていいのだという実質的理由が十分論証 されているのかどうかということについてはまだ反論をされる余地があるのではないか という気もいたしますので、ある程度ここで実質的な議論をしていただけるとありがた いと思っております。代理母を禁止するためという政策的な理由だけで果たして出産し た女性を母とするというそうした結論を維持できるのかという点は、ある程度ほかの子 の福祉の観点からの考慮も示していただけるといいなと思っております。  父親をどうするかという点でございますけれども、この点については恐らく現在の嫡 出推定の制度を前提に考えていくと、ここで挙げられているようなものが一つ考えられ るのだろうと思っておりますけれども、1点だけ申し上げますと、夫の同意が推定され るという点について、夫が同意したという事実を推定するための前提条件が果たしてこ こにあるのかどうか。そもそも夫と妻が同意をしていなければ生殖補助医療自体はでき ないというふうに仕組んでいる上にこの推定の要件を書くことが合理的なのかどうかと いう点で私どもは少し疑問にも思っていますので、こうした書きぶりを維持する必要が あるのかどうかという点についてもできればご議論をいただければと思っています。  親子関係について議論が始まるということで、冒頭で少し私の要望ということで申し 上げさせていただきました。申しわけございませんでした。 ○中谷委員長  失礼ですけれども、出産した者が母親であるというのはローマ法以来の原則ですよ ね。 ○法務省  それは、出産した者が当然血縁上も母親であるということの事実は動いていなかった という前提があるわけですね。血縁関係にないようなものも生まれる可能性があるとし たときにその原則がどうして維持できるのかという点は、当然のことだと言って済まさ れる問題なのかどうかという点を考えていただきたい。 ○中谷委員長  立法上そういうものも親の決定、意義というところで規定していますよね。例えば 1990年のイギリスの法律がそうですよね。母とはどういうもの、父とはどういうものと いうふうに規定されていますよね。代理母などのことを考えますとその場合も出産した 者が母と考えるから、そうするといろいろ問題が出てくることはありますけれども、一 応原則としてはどこでもそういうふうな形で認めているのではないでしょうか。特別法 の中でそれを規定して明確にするということはあるだろうと思いますけれども。 ○法務省  恐らく結論はよろしいのだろうと思うのですけれども、結論に至る実質的な論証はこ ちらでもやはり考えていただくべきことなのだろうと思います。 ○中谷委員長  私は問題になるのは、代理母などが出産した子どもについて、その代理母が母親にな るというのは問題だろう。違反というのは、法律は違反を前提としているわけですか ら、違反があった場合に救済をするかということが問題になるので、それについては、 養子縁組にするのか、依頼した妻と代理出産した者との間の養子縁組にするのか、それ ともイギリスみたいに裁判で依頼した夫婦の嫡出の子であるという宣言をするのか、そ ういう選択肢が残されているだろうと思いますけれども、それをこれからご議論いただ くところだろうと思っております。  嫡出推定については、御夫婦で子どもが出産したという届け出をすれば、それで推定 された嫡出子なんていうのはどこにも出てこないわけでしょう。 ○法務省  趣旨がよくわかりませんでしたが。 ○中谷委員長  戸籍簿上。 ○法務省  嫡出推定が及ぶかどうかということで言われるのであれば、恐らく現在の判例の立場 からいくと、まだ生殖補助医療を利用した場合であっても嫡出推定が及ぶと考える余地 が十分あると思います。 ○中谷委員長  同意がなかったためにできなかったという判例はありますね。 ○法務省  あれは嫡出否認を求めている。ということは当然の前提として、嫡出推定が及ぶとい うことが、判断を下した裁判所の前提的な理解にあるわけですので、嫡出推定が及ぶと いうふうに考えているのだろうと思います。 ○中谷委員長  出生届を出して、そのときに嫡出推定される子どもだなんていうことは届け出はしま せんよね。 ○法務省  その趣旨がよくわからないんですけれども。夫婦間で生まれた子どもということで戸 籍が届け出される。 ○中谷委員長  そうですよね。 ○法務省  そうすると嫡出子として届け出はされるんだろうと思います。ただ、戸籍の記載がど うかということと、実体法上、嫡出推定が及ぶかどうかという問題は別でございますの で。 ○中谷委員長  その場合は、もし夫が同意しなかったり異議があれば嫡出否認は1年以内は提起でき ますよね。それがなければそのまま確定するのではないですか、違いますか。 ○法務省  ただ、それでは非常に不安定ではないかということで今たたき台にあるような提案が されているのだろうと理解しておりますので、その点をご議論いただければと思うので すが。 ○中谷委員長  医系の先生方は推定というのは実証を挙げれば覆されるわけですから、擬制ではあり ませんので、そうしますとどうでしょうか。 ○吉村委員  法務省の方が言われていることが私にはちょっとわからないところがあるんです。親 のための制度だというけれども、親のための制度を決めることは子どものためになるか ら決めるわけでしょう。例えば、あなたの意見だとどういう点を子のためのことを考え てやればいいということになるのですか。私、おっしゃっていることが全然わからなか ったんです。 ○法務省  私が申し上げたかったのは、前回、「子の福祉の優先」ということが相対化されそう な議論になっていたものですから、その点をちょっと気にしたということだけでござい まして……。 ○中谷委員長  「子の福祉の優先」というのは相対化はしてないのではないですか。皆さんそう思っ てらしたと思いますよ。 ○法務省  そのように最終的には理解しましたので、ただ、その点をもう一度私の立場から言わ せていただいたというだけでございますので。恐らく親子関係の確定については、子ど もの福祉を優先に考えるために今このような提言がされているのだろうと思っておりま すので、あとは実質をきちんとご議論いただければというふうに思っていると、そうい うことを申し上げているだけですので、子の福祉を優先したからここで書かれている記 載がどうなるということを申し上げているわけではございません。 ○石井(美)委員  具体的にこういう点を注意してほしいということがおありでしたら、おっしゃってい ただいた方がわかると思います。 ○中谷委員長  そうしないとわかりにくいですよ。 ○吉村委員  要するにこういった第三者の生殖補助医療をやっていくためには現行の民法上の対応 ではできないわけですよ。 ○法務省  少なくとも母親についてはできないですね。 ○吉村委員  少なくとも母親についてできなければ、これはできないんです。ですから、それを変 えないことにはこういった医療はやってはいけないということになるわけですよ、基本 的に言えば。 ○法務省  まさに、それが恐らく子の福祉の関係ということになるんですね。 ○吉村委員  そういうことを十分に考えているから、法律的なことが必要だと言っているわけです ね。現行の民法では、私が理解しているのは産んだのが母親でありますよということ と、夫は妻が妊娠したらそれは夫の子どもとして推定されることと、この2点しかない わけでしょう。 ○法務省  そうです。 ○吉村委員  そうするとこの生殖補助医療は、第三者の生殖補助医療、今話していることは一切で きないということですね。少なくとも代理母に関してはできないということですよ。で きないというか、要するに産んだ人が母親であるのだから、遺伝子を持った人が、例え ば自分の卵を使って子どもを産んでほしいということはできないわけです。ですからこ ういう法律が必要だということは私は理解しているんですが、おっしゃった意味が私に はどういうことをやったらいいのかわからないですけど。 ○法務省  恐らく吉村先生がおっしゃったとおりのことを私も考えておりますので、その点は食 い違いはないのだろうと思うのですけれども。 ○石井(美)委員  多分、不妊治療というのはもともと親の希望で行う。養子の場合は、現に子どもがい るその子のために、養子という制度はあると考えることはできるけれども、現にいない 人をつくるという不妊治療は、子どものためにするのだとはとても言えないからという ことをおっしゃったのだと思いますけど。 ○吉村委員  それは非常によく理解していますけれども。 ○中谷委員長  もともと生殖補助医療は、養子の資源がないというとおかしいけれども、少なくなっ てきたというところからも出てくるわけですけれども、まして最近のように少子化がこ れだけ進みますと、今、出生率は低いですよね。ですからそうなりますと、本当に子ど もが欲しいカップルとしては生殖補助医療に頼るほか仕方がないわけですよね。だか ら、その中でどの範囲までが許されて、その範囲以外のものはだめとするのか。だめと した場合にもどういう効果が発生するように考えるのかということをまさにここでそれ を考えているわけでございますので、また、いろいろ法律の専門職の方からのアドバイ スも得まして、よりいいたたき台といいますか、報告書ができればいいと思いますの で、御協力をお願いいたします。 ○法務省  すいません、私の言い方がちょっとよくなかったのかもしれませんけれども、技術的 には本当にいろいろなことができるという前提が今ある中で、子どもの福祉のことを考 えたらどこまでに抑えなければいけないのか。恐らく倫理的な判断ということをここで お考えになるときにはそういう議論の立て方になっていくのだろう、そういうことを前 提に申し上げたということでございますので、何もここでの議論を……。 ○中谷委員長  基本的にはみんな同意見なんです。 ○法務省  それであれば結構でございますので、どうぞ具体的なことを聞かせていただければと 思います。 ○矢内原委員  今の御質問の中で、具体的にこういう例だと今ここで案に出ているものでは解決がで きませんよということはありますか。代理母の話がちょっと出ましたけれども、代理母 はなしということになってますから。 ○法務省  それであればこれで構わないのだろうと思います。恐らくそういう前提と組み合わせ ていかないと最終的に法律的に親子関係をどうするかというところは決まらないと思っ ていますので、恐らくフィードバックすることにはなるのだろうと思いますけれども、 こういう人との間に親子関係をつくるからここまでの制度は認めようとか、あるいはこ れをやってしまうと変な親子関係ができてしまうからこれはやめようとか、恐らくいろ いろフィードバックする問題だろうと思いますので、そこは……。 ○矢内原委員  こういう組み合わせだと親子関係はおかしくなるということ、例えばどういうときに この文章に合わなくなりますか。 ○法務省  今まで議論されている線、余り固まってないところが多いので、どこが原則なのかよ くわからないところもあるのですが、これは例えばということでお聞きいただきたいん ですけれども、内縁の夫婦にも生殖補助医療を認めたいというような御意見も出ていた ように思いますけれども、仮に内縁の夫婦の間でこの制度を利用したときに……。 ○矢内原委員  これはだめだということに……。 ○中谷委員長  ここではだめということになっていますけど。 ○法務省  よろしいんですね。 ○中谷委員長  はい。 ○法務省  であれば結構ですけれども、仮にそれを認めてしまうと「精子・卵子・胚の提供者は 父母とならない」と書いてある部分と恐らく抵触するところが出てくる。 ○中谷委員長  それは初めからだめということですから。 ○法務省  その前提がひっくり返らないのであれば結構ですけれども、そういう問題は一つあり 得る。あと、夫の同意を得て行ったときは、父は夫になるということが決まるわけです けれども、同意を得なかった場合はどうなるかということについては余り議論はされて いないように思われます。そういったところの処理、最終的には私どもが考えなければ いけないことだろうと思いますけれども、そういう問題が仮に生じたらまずいなと思う のであれば、そこの同意のとり方をどうするかというようなことも考える必要があるか と思います。  そもそも生殖補助医療を行うことについては、書面による同意を最初にとることにな っています。その上で、ここでは妻が夫の同意を得て生殖補助医療を受けて出産したと きという条件をさらにお書きになっていますけれども、その二つの同意をどういうふう に関係づけてお考えになっているのかというようなこととか、幾つか気になる点がある 部分がございます。  先ほど申し上げた夫の同意の推定というところですけれども、そもそも最初に夫が同 意してないのに勝手に妻が生殖補助医療を受けてしまって、原則としては夫の子どもと 推定してしまうことになっていいのかどうかというようなこともございますので。 ○中谷委員長  医療の現実を御存じになれば、そういう議論は出てこないんですけど。 ○法務省  現実の話はここでもいろいろ聞かせていただいていますけれども、だとすると、余計 ここでわざわざ推定効を定める必要が本当にあるのかという問題だと思います。現実に は同意を得ないで生殖補助医療を実施することなどあり得ないということであれば、同 意が要件であるということであれば、この点について、「同意を得て出産したときは」 というような書き方をするのかどうか、そういったところまで恐らくつながってくるの だろうと思いますが。 ○中谷委員長  それを前提としても現実には違反する場合もあり得ますから、それを踏まえて規定し ているわけで。 ○法務省  そこでまた推定のところへ戻りますけれども、違反があったときに、夫の同意があっ たと推定してしまっていいのかどうかということですね。一番最初の段階で書面による 同意をとっているということだけで、推定の条件として十分なのかどうかというような ことは考えなければいけないのではないか。そういうことを申し上げたかったというこ とです。 ○高橋委員  委員長、ちょっとよろしいでしょうか。 ○中谷委員長  どうぞ。 ○高橋委員  ただいまの意見をお聞きしますと、現在の法律をある程度変えなければならないよう な問題点も含まれていると思います。それは婚姻関係にある人の間で生まれた子ども、 もし生まれた子どもがその婚姻関係の方の子どもでない場合は、1年以内にそれを否定 する訴えを起こさなければ、その後はいくら訴えてもその人たちの子どもでないとは認 められないわけです。私は家庭裁判所の調停をしていたとき、こういう問題で非常にか わいそうな事例を見ました。そのとき、今の日本の法律はなぜ僅か1年以内の期間にす るのかなと思ってこの法律の不備を強く感じたことがあります。  この問題についても議論を進めていくと、今のこういう問題、例えば精子の提供、卵 の提供を受けて生まれた子どもについて、2年後あるいは3年後に否認の訴えを起こし たいとしても認められないわけでしょう。現在の民法の不備のところもつかれているの で、ここの議論はそれ以上は進まないのではないかと思います。 ○中谷委員長  丸山委員。 ○丸山委員  中身の議論を進めた方がよろしいのではないか。まず母親をだれにするかというの で、先ほどおっしゃいましたように遺伝的な関係を気になさるような発言だったと思う のですが、私個人ではワーキンググループでこの案をつくりますときは、遺伝的なつな がりは置いておいて、懐胎、妊娠という事実の方で母を決めようという判断があったの ではないかと思うのですが、そのあたりからでも母を決める内容の議論を進めた方がよ ろしいのではないかと思います。 ○加藤委員  ローマ法の時代とは違った考え方になっちゃうのではないですか。ローマ法の時代に はおなかを痛めた人は同時に卵子の提供者になるに決まっていたのに、今度は卵子の提 供の如何にかかわらずおなかを痛めた方を優先するという考え方に立つわけでしょう。 ですから中身はローマ法とは違ってきていますよね、考え方としては。 ○石井(ト)委員  私の立場は「母性性」というようなことを考えているのですね。子どもの発育と同時 に母性性が確立し、子どもへの愛着が増します。そういうプロセスがありますので、だ から妊娠した母親がその子の母とする、そういうことを根拠にしたいです。 ○中谷委員長  産みの親か育ての親かというのはなかなか難しいですけれどもね。 ○石井(ト)委員  だけど産むということが、10カ月、旧式な言葉を使いますけれども、正式には妊娠37 週から42週未満。 ○中谷委員長  39週。 ○石井(ト)委員  その間、母子相互作用は無視できませんよね。 ○矢内原委員  卵子の提供を禁止すれば一度に解決するんです。 ○法務省  申し上げておきますけれども、私がこの案に反対しているとかそういうことではござ いませんので、ここで議論をしていただく以上は実質的な根拠に踏み込んだ議論を聞か せていただきたいという希望を申し上げているだけでございますので、その点は誤解が ないようにお願いいたします。 ○田中委員  実際、生まれた子どもの父親はだれかというのは女性しかわかりませんね。男性はわ かりませんね。 ○中谷委員長  そうですよね。 ○矢内原委員  女性もわからない。 ○石井(ト)委員  女性もわからない時があります。 ○田中委員  女性もわからないのですか。 ○石井(ト)委員  いろんな方がたくさんいますから。 ○田中委員  私たちが普通患者さんを診ていて、結婚しているカップルを診るときは、生まれた子 どもは夫婦のものだという前提ですよね。だから、その子どもがだれの父親かわからな いというふうに言い始めますと、自分も含めてDNA鑑定をしなければいけないですよ ね。そういうことは普通の我々の臨床の中では考えられないことですね。だから第三者 の卵子の提供を禁止したとしても、本当に結婚した夫婦から生まれた子と思われても実 際には違う可能性が出てきますよね。産んだ方が母親であるかどうか、また逆になりま すよね。遺伝子学的な父親が違ってくる可能性あるわけですからね。 ○法務省  まさにその点はそのとおりです。 ○田中委員  そう言い始めますと、普通の家庭の親子関係というものが危機に瀕しますよね。親子 関係というものを、普通はそこまで調べないでしょうね。 ○法務省  そうですね。そのために嫡出推定の制度というのがあるわけで、本当は自分の子ども ではないのかもしれないけれども、父親として育てていこうと思って、1年間そのまま ほうっておけば父親として親子関係が確定する。子どものために父親を与えるという趣 旨が嫡出推定の制度には含まれている。子の福祉のための制度であるというふうにここ は御理解いただければと思います。  そういった観点で、ここでも子の福祉のためにだれを母親にしたらいいのかという議 論をしていくと、先ほど石井(ト)委員の方からお話があったのは、母性を確立するプ ロセスを重視すれば、産んだ女性が母親になるべきだ、こういう議論があるのだと。 ○加藤委員  産んですぐ養子に出すことは認められるわけでしょう。 ○石井(美)委員  あり得ると思います。 ○加藤委員  あり得るわけですね。別に、産んだ以上は必ず育てなければならないというふうには 書いてないわけですね。 ○石井(美)委員  もちろん。 ○石井(ト)委員  その議論はちょっと違う。 ○中谷委員長  ちょっと違います。嫡出子推定についてはおもしろい判例がありまして、1983年の4 月の西ドイツの判例ですけれども、4月7日ぐらいの判決だったと思いますけれども、 夫婦がAIDで子どもをつくろうということで同意をいたしまして契約書をつくったん です。もし子どもが生まれたら夫は父としての権利義務は自分が持つのだとサインをし て契約書を作成したんです。ところが実際に子どもが生まれてみるとだんだんと自分と は余り似ない子どもになって、ドイツはその当時、嫡出子否認は2年間できましたか ら、ちょうど2年ちょっと前ぐらいに否認の訴えを出したんですね。そしたら契約書も あるのにと言って奥さんの方は頑張ったけれども、嫡出子否認というのは男性にとって 憲法上保障された権利だから一介の個人の契約書で効果がひっくる返るわけにはいかな いというので、その子どもは父親のない子になってしまったというのがありますね。  スウェーデンはアンリジスタード・マリッジが半分ぐらいですから、嫡出子、非嫡出 子の区別がありませんから、これは生涯にわたって父子関係不存在の訴えができますの で、そういうようないろんなものがありまして、ちょうど同じころに同じ最高裁判所の 判決が出て、スウェーデンは「人工授精法」というのをつくりましたし、ドイツはそう いうものはつくりませんでしたけれども「出自を知る権利」を憲法裁判所で認めて今日 に至っているわけです。法的にはいろいろごちゃごちゃした問題がたくさんあるんです よね。 ○矢内原委員  法律がよくわからないので、私はなるたけ現在の法律を根本からひっくり返すような ことはしないように付け足すことは付記としてあったとしても、そういう立場から考え てきたんですけれども、例えば今の、産んだのを母親とするということを新しく変えて いくことはできるんですか。今の民法 772条。 ○吉村委員 それは違うでしょう。 ○石井(美)委員 民法には母親については規定はないので、新たに定めるということになります。 ○矢内原委員 まず産んだものを母親とするというのは何でしたか。 ○石井(美)委員 規定はないです。 ○中谷委員長 規定はないです、判例か何かでそういうふうになってますけれども。 ○法務省 もともと民法の規定の中には非嫡出子でない子については母親も認知ができるという ような規定があるぐらいですので、認知をしないと母親は決められないという前提で民 法はつくられていたんですけれども、現実には産んだ女性が母親であることは当然だと いうことを最高裁の方でお認めになって、判例上、出産した女性が母親である。認知を 要しなくても親子関係が生ずるのだということがそこで決まっている。 とすると、非嫡出子についてそうである以上、嫡出子については当然だということで ここは議論されているのだろうと思います。 ○加藤委員 ここの場合には、子どもを産んだけど、吉村先生が取り違えて別の人の卵子を入れち ゃったと。女性が非嫡出子だという訴えをすることは認められないという趣旨になるの ですか。 ○石井(美)委員 たとえ違ったとしても、産んだ人が母。 ○吉村委員 そうですね。 ○矢内原委員 産んだ人が母というのは、どこに書いてあるんですか。 ○石井(美)委員 そうするという、私たちの案です。 ○矢内原委員 前提の話。 ○法務省 前提として産んだ女性が母親になるという規定は民法にないというのは、先ほど石井 先生がおっしゃったとおりでして、ここでこの提言どおりの規定をどこかにつくるとな ると、それは日本で初めての規定ということになるわけです。 ○矢内原委員 これから法律の中で、女性の遺伝的なものを持ったものを母親にするというような新 しい法律をつくることも可能なんですか。 ○法務省 可能かどうか、私に聞かれるのはなかなか難しいですけれども……。 ○加藤委員 遺伝的な因子を提供したものを母親とする、そういう規定をつくればできるのではな いでしょうか。その場合には胚の提供というのは養子と同じになって、養子縁組しなけ ればならないですね。胚を提供した場合でも。 ○石井(美)委員 そうです。産んだ人は、母となるためには養子縁組しなくてはいけないことになると 思います。ただそうしますと、生まれたときに母親がだれかというのがわからないとい うことです。先ほど田中先生がおっしゃったように、常にDNA鑑定をやって……。 ○矢内原委員 ずっとやらなければいけないですね。 ○田中委員 そうすると、こういうドネーションという治療は事実上なくなりますよね。そこまで 提供することが先まで尾を引いていくようなものが残るのであれば、だれもしたいと思 いませんよね、嫌ですよね。何年か後に、あなたが本当は母親なんだからというふうに 名乗りを上げられても困りますからね。それは考えないということが前提ではないです か。じゃないと、この話は進みませんよ。 ○法務省 ですから、まさにそういう考慮があるからというような理由をずっとこちらはお聞き しているだけですから。 ○中谷委員長 例えば人工授精法とか何とかという法律をつくって、その中に、母親とは、父親と は、という定義規定を置くことはできますよね。イギリスの90年の法律がそうで、7条 にその規定があります。 ○吉村委員  そういうことも考えてこういったものを考えていかなくてはいけないということなん です。希望する人たちは、今言ったようなこともちゃんと理解して受けてもらわなくて はいけない。そういうことをこういったガイドラインでもしっかり示さなくてはいけな いということなんですね。 ○田中委員  ガイドラインをつくる際に、こういう治療を基本的には推進したいという考えの立場 にあるのか、この治療はできたらやらせたくないという立場をとるかによって変わって くると思うのです。やらせてあげたいと思うならば、今言ったようなことは最初からイ ンフォームド・コンセントなりに組み込まれますね。だれもどうにもならないと思うん ですね。 ○石井(美)委員  その措置を認めるのであれば、私たちの案としては産んだ人が母であるということを 法律に明記してもらいましょう、そういう趣旨です。 ○田中委員  それならいいです。 ○加藤委員  どこかで非常に自明な人間関係、親子が確定できるという拠点みたいなものがない と、全部DNAを調べたり、全部調べないと確定できないというのは非常に具合が悪い ので、ともかく母子関係というのは産んだということで確定しようと。そこから今度 は、ほかのものを確定していく拠点にしようというのがこの規定だと思うんですけど、 だから賛成とか反対というより、むしろ不妊の生殖医療を拡大するためには、この拠点 が必要だと。もちろんこの拠点ではなくて別の拠点を設定することもできるわけですよ ね。遺伝的な因子を提供した母性側の人が母となる。だけど、それは非常に面倒なこと になるし、手続き上、大変な厄介なことになりかねないですね。  ただ、吉村先生が取り違えちゃった場合には、女性はその子どもを、自分の子どもだ と引き受けざるを得ないという、それでは女性にとって負担は大きいわけですね。 ○吉村委員  それは本当にそうですよ。 ○田中委員  アメリカでありますよね、コーネル大学で白人が黒人を産んだそうです。あれは賠償 金で産んだ人が育てましたよね。 ○加藤委員  親子関係そのものは産んだ人にあるんですか。 ○吉村委員  産んだ人。 ○田中委員  産んだ人が違うんだけど、引き取ったそうです。 ○中谷委員長  凍結胚を利用するような場合、そういうことはあり得ますよね。 ○吉村委員  それはありますよ。 ○加藤委員  だから、もしこういうふうに規定しても、母親が嫡出でないという訴えを起こす可能 性をどこかで認めるのかどうかということはまた議論しなければいけないのではないで しょうか。絶対これは間違っていてもそのままということになるのか、間違っているこ とがはっきりわかった場合には別な扱いになるのか。 ○石井(美)委員  遺伝的につながった人を母とするのですか、その場合は。 ○加藤委員  そうですね。 ○吉村委員  だから、産んだ人を母親にしなければいけませんよ。絶対にそうしないと。○高橋委 員 今の民法の考えでやはり話を進めていかないと。 ○石井(美)委員  母となった人が本当に育てたくなかったときには、養子ということを考えることもあ り得ると思いますね。 ○高橋委員  法律の変更ということは非常に難しいと思うんですよ。 ○中谷委員長  ですから民法の規定の改正なんていったら、それは大変ですから。 ○高橋委員  そうですね。しかもこの案文では3年か5年のうちに法整備して云々とか、いろんな ことを書いています。それらは実現が難しいとなると、今まで何を議論してきたかとい うことになると思います。 ○矢内原委員  ちょっとまた教えてください。私はこれを読んだつもりでいたんですけど、確かに母 親のことは書いてないですね。今まで日本で法律的に母親というのは何をもって母親と するんですか。 ○法務省  ですから今のところ、判例上は出産した女性が母親である。 ○矢内原委員  判例ですか。 ○中谷委員長  判例です。 ○吉村委員  判例です。 ○法務省  最高裁の。 ○吉村委員  最高裁の判断です。 ○矢内原委員  産んだ人が母親。それは判例だけであって、ひっくり返すこともできるんてすか。 ○吉村委員  それはもう一つの判例が出てきたらひっくり返ることだってあるでしょう。 ○高橋委員  最高裁の。 ○吉村委員  最高裁の。 ○矢内原委員  だれかがやったみたいな、卵子の提供を受けて産みましたね。卵子の提供者が母親で あるということを訴えていたときに、それで最高裁が遺伝的にはこっちだと言ったら、 母親を変えるということはあり得るわけですね。 ○吉村委員  あり得るということですね。 ○法務省  現行ではあり得ます。ですから仮に体外受精で第三者の卵子と夫の精子を受精させて 別な人が産んだというときに、今の考え方でいくと、もしかすると遺伝上の母親、卵子 の提供者が、私の子どもであるということで認知したいというようなことを言ってくる 可能性はあり得る。そういう規定ぶりにはなっているということです。 ○田中委員  それは治療の前に必ず同意書をとりますよね。そういう権利を放棄するということを 将来言わないと。その点を明確にしておけば、後でそれをまた破棄するようなことを言 っても問題にはならないでしょう。卵子の提供だけで、一切親としての権利を放棄しま すということをサインしておけば大丈夫じゃないですか。 ○法務省  今のところ、そういう手続きが法律上明確に決まっているかというとそれはありませ んから、それがそのまま通用するかどうか、私にもわかりません。 ○吉村委員  それはわからないね。 ○矢内原委員  大変なことになる。 ○石井(美)委員  だからここで定めようというのです。母親は産んだ人であると。 ○辰巳委員  父親と子どもの場合は遺伝子の方が優先するんですよね。そうじゃないですか、親子 関係……。 ○加藤委員  親子関係の遺伝子的な関係がないと証明がつけば、親子関係の否認ができるんでしょ う。 ○石井(美)委員  現行の民法では、子の出生を知ってから1年以内であれば。それを超えてできるかど うかはちょっとわかりません。 ○辰巳委員  母親は産んだということが優先する。父親は遺伝子の方が優先する。 ○石井(美)委員  いや、ここでは……。 ○辰巳委員  一般的に。 ○中谷委員長  母親の夫ということになるわけですから。 ○石井(美)委員  従来は母親が遺伝的に違うということは考えてないですから、産んだ人イコール遺伝 的な母、それを前提として産んだ人を母と言っている。 ○矢内原委員  それはどこにも書いてないんでしょう。 ○石井(美)委員  ただ、それを前提にしないと父親も決まらないですから。母がいて、それに基づいて 父が決まるということになるので、前提にはなっている。 ○矢内原委員  日本国憲法は何をやっていたんですかね。 ○石井(美)委員  母が問題になるということは嫡出子については考えられなかったから、民法は特に規 定する必要性がなかった。 ○吉村委員  そういうことが起こり得なかった。 ○中谷委員長  そうですね。 ○加藤委員  太陽が西から昇ったらどうするかなんて憲法に書いてないですよ。 ○吉村委員  それは先生、そう言われればそうですよ、産んだ者以外に母親以外は母親はいないん だという考え方ですから、それは当然そうです。男が産むわけにいかないんだから。 ○中谷委員長  卵子の提供とか胚の提供なんて考えなかったですから。 ○法務省  すいません、当然なことは当然のことだということで書かないのが民法の方針でござ いましたので、ですから書かれていないことが多いんです。 ○吉村委員  それは確かに。先生、子宮のない人は子どもを産めるわけないんだから、子宮のない 人は子どもが産めないなんて書かないよね。考えてみれば、そうですね先生。 ○中谷委員長  大分基本的な問題で。 ○加藤委員  大体不可能なことについて定める必要がないという考え方が原則なんですね。だから 不可能なことについて定める必要がないという考え方が根深い根拠になっているわけで すね。ただ、技術開発をすれば不可能であったことが可能になりますから、そこで新し い規定が必要になると思いますね。 ○矢内原委員  例えば人工子宮がそんな遠くなくできるとするでしょう。そのときに民法はそれにす ぐ対応できるようなことができるんですか。 ○吉村委員  だからその一歩として、これを今話し合っているわけですよね。 ○石井(美)委員  受精卵を初めから一度も母体に戻さずに人が生まれるという事態が生じたら、そのと きはもう一度考え直さなくてはいけない。 ○吉村委員  また、そういうことが近い将来起こってきますね。 ○矢内原委員  今の考え方は、22週以前に出た子どもを別なところに行って育てた場合に……。 ○石井(美)委員  22週まで懐胎していれば、そこで出産ということになると思います。 ○矢内原委員  以前であっても。 ○石井(美)委員  以前であっても。 ○矢内原委員  流産でも懐妊だから。 ○石井(美)委員  ええ、出産というふうに解するのではないですか。分娩と、それは解釈は可能だと思 います。 ○中谷委員長  そうよね。 ○吉村委員  それはそうだ、確かにわかった。 ○石井(美)委員  問題は、加藤先生がおっしゃったように、卵子や胚を取り違えて産んだ場合でも産ん だ人が母であるということでいいのかどうかということについて合意しておくこと。 ○吉村委員  そういうことを考えなくてはいけない。 ○田中委員  普通は取り違いは起こらないというのが前提で我々は治療しますからね。 ○石井(美)委員  でも現実に、この間は起こった。 ○田中委員  でも絶対ないとは言えないですね。 ○田中委員  それはあり得ることとして書かなければいけないことですかね。 ○丸山委員  それを具体的に書くのではなくて、ここに書いているように、出産した者をその子の 母とすると書いておけば、取り違いがあってもその子の母とするということですね。 ○石井(美)委員  そこまで考慮して、私たちはそれでよいとする。 ○丸山委員  解説を石井先生に書いていただく。 ○加藤委員  でも、この考え方は親子関係については相当革命的な変化ですよね。今まで遺伝的な つながりがあるということは自明のことだったのに、遺伝子的な関係がなくても親子関 係が成り立つということを原則に定めることになりますね。 ○中谷委員長  でも今までだって、養子の場合だと遺伝的なつながりはないわけですけど、それでも 実子にした法的には同じ関係ですからね。 ○加藤委員  でもその前に養子に渡すということをだれか同意しなければ渡せないわけでしょう。 ○石井(美)委員  法的には実子と養子は違いますので、これは実子にするということです、養子ではな くて。 ○吉村委員  そうですね。 ○中谷委員長  ほかに。 ○矢内原委員  ちゃんとしていたんだろうな。 ○吉村委員  でも先生、自明のことは書いてないということがわかっただけでいいじゃないです か。 ○矢内原委員  太陽が西から上がるようなことがあるかもわからない。 ○中谷委員長  次に出自を知る権利へ進めていいですか。 ○石井(美)委員  まだ。 ○吉村委員  夫の推定というのは、私もまだよく理解してないんですけど、これは子どものことを 思って推定されるということを入れているんですよね。 ○石井(美)委員  そうですね。取り違えが起こるのと同じように、夫が同意をしないで行われることも あるかもしれない。そのときにも夫の同意は推定されてしまうと、夫はかなりそれを覆 すのは大変である。 ○吉村委員  大変ですよということですね。 ○加藤委員  その場合、夫が同意してないということの明確な証拠があった場合はどうなんです か。 ○石井(美)委員  その場合は、推定ですから覆る。 ○加藤委員  覆すことができる。この場合、1年以内とかとそういう規定はしない。 ○石井(美)委員  そうですね。 ○中谷委員長  嫡出否認と違いますから。 ○加藤委員  夫の同意があったかなかったか、争いが起こりうることがあったとしても、原則とし てプラスの方向で、夫の同意があったものとみなすという方向で処理するということで すね。もしそれをひっくり返そうとするなら、申し立てた人の方に立証責任があるとい うことですね。 ○石井(美)委員  はい。 ○中谷委員長  見なしちゃいけない。 ○石井(美)委員  推定です、あくまで。嫡出否認の期間を超えても同意がなかったことを証明すればと いうことは……。 ○中谷委員長  法的には可能ではないですか、1年を超えても推定だから。 ○石井(美)委員  嫡出推定規定はそのまま前提としますから、人工授精の場合、 772条の推定が及ぶか 及ばないのかという問題です。子どもにとっては、この場合は1年を超えてよいとはし ない方がよいという気はしますけれども。 ○中谷委員長 子どもにとってもそうですね。 ○石井(美)委員 子の福祉を優先するならば。 ○丸山委員 今の裁判所の実務というのは、夫の子であり得ないような場合であれば1年を超えて も不存在確認を認めるんでしょう。 ○石井(美)委員  別居していて、夫婦関係がないということが客観的に見て明らかである場合。 ○丸山委員  ここは人工的な方法を用いてあり得ないような場合に該当しませんかね。夫の同意が なく、奥さんの方が勝手に保存してある、もらった精子をまた使って体外受精をやった というふうにやれば。 ○石井(美)委員  普通は夫は……。 ○丸山委員  一回は同意しているからやっぱり……。 ○石井(美)委員  1年以内に、普通は夫はそのようなときには嫡出否認を起こせるのではないですか。 子どもが生まれたことに不信を持つのが通常ではないでしょうか。同意してない夫は。 ○丸山委員  同居していればね。 ○矢内原委員  どっちにしろ夫は常に推定なんですか。推定されるというのは。 ○石井(美)委員  同意すればみなす……。 ○吉村委員  この推定は、今、先生がおっしゃっている推定とはちょっと違うんです。 ○矢内原委員  いかなる場合でも、生殖医療に関して、夫の立場というのはいつも推定ですか。 ○石井(美)委員  同意した夫は父となりますという考え方です、ここでは。 ○矢内原委員  同意は推定されるということは言っているでしょう。 ○石井(美)委員  同意した夫は父であるということになるけれども、同意したことを推定する。 ○吉村委員  そうなんですよ。 ○加藤委員  普通の場合には同意書というのはちゃんと残っているのだから、この推定という規定 が効力を発揮することはないわけでしょう。 ○石井(美)委員  そうです。 ○加藤委員  ただ、なくなったとか、実は南極探検隊で音信不通だったとか何とかという場合に、 なんだ、同意があったのかということになると、もし夫の側が訴えを起こそうと思え ば、訴えを起こす夫が自分で立証責任を負わなければならない。 ○石井(美)委員  そういうことです。南極に行っていれば、今の判例でも、1年を過ぎても夫は覆せま すから……。 ○矢内原委員  覆すことができる場合に推定ということになる。 ○丸山委員  親子関係不存在確認の訴えをこの機会にこのところの条文に反映させるか、これまで どおり条文の上にはない制度として存続させるかどうか。 ○石井(美)委員  存続させるというか、ここで私たちは民法の親子法全体についてまで言及しない。だ から、そういう訴えが残っているその点でこういう技術についてはどう考えるかという ことです。 ○丸山委員  1年というふうに期限を区切っても文字どおり1年でなくて、そういう方法はほかに ありますよということを踏まえるんですね。 ○石井(美)委員  そうですね。それもさせませんということまで私たちは言えないでしょう、判例です から。でも報告書としては、そういうことは認めませんということは言えなくはないで す。 ○矢内原委員  法文上でしょう。 ○石井(美)委員  今、加藤先生がおっしゃったような場合に、1年を過ぎてできないという理由はない と思います。 ○法務省  今の前提ですと、夫が一度もクリニックに現れないような状態で、生殖補助医療を行 うなんていうことはあるんですか。 ○丸山委員  一回は現れるんですね。最初の一回は現れたがその時は子どもができなくて、二度 目、三度目が奥さんだけで、実は主人は遠くへ行ってますからというので、吉村先生が 以前おっしゃったように、その度ごとに拇印をとるというシステムだとそういうことは 起こらないでしょうけど、もう少しルーズにやると、あるいは起こり得るかなと。 ○吉村委員  それは法律家の先生方から毎回毎回とった方がいいですよと言われたから、そういう ふうに変えたんですね。それまでは十何回やっていても初めだけもらっていただけで す。 ○矢内原委員  何十年も産婦人科をやっていて恥ずかしいんですけれども、出生証明も随分たくさん 書いたんですけれども、出生証明というのはどのくらいの法律上の効力があるんです か。子どもが生まれますよね。母はだれだれ、父はだれだれと我々は書くわけです。英 語でも書いたことあるし、日本語でも何千枚書いたかわかりません。それは全然保証さ れてないことなんですか。目の前で子どもが生まれて……。 ○石井(ト)委員  そこに立ち会った人が必ず書くということが前提ですから。 ○矢内原委員  当たり前だから、わざわざ法律に書かないと。 ○法務省  当然目撃した人が書いているだろうということで、通常は中身が真実だろうと考える のだと思いますけれども、ほかの文書と比べて格段に何か効力が強いかというと、そう いうことはないのだろうと思いますね。ただ、虚偽を記載した場合には罰則があると か、そういった観点で真実性が担保されている、そういうことではないかと思います。 ○矢内原委員  嘘を書くと罰されるけれども、本当を書いてもそれは効力がないということですか。 ○法務省  書いていれば、それがまさに証明ということですから。 ○高橋委員  親子関係の証明も、出生証明書ではないでしょうか。それ以外に直接証明するものは ないと思います。 ○矢内原委員  ないでしょう。 ○高橋委員  それを否認する場合は1年以内というのが期限だと。 ○矢内原委員  プライドを持って書いていたんだけれども。 ○高橋委員  もう一つ、間接的なのが母子手帳ですね。この二つ以外はありません。 ○石井(美)委員  ただ、事実が違っているときは覆ります。医師が嘘を書けば事実は違ってきますし、 事件であったように、ほかの人の名前で母子手帳をもらって産んだような場合には、事 実が違うということが証明できれば出生証明書に書いても覆る……。 ○矢内原委員  法務省は心配するわけですね。 ○石井(美)委員  そうです。 ○矢内原委員  法律をつくっているんだ、我々。 ○中谷委員長  例えばアメリカに渡って代理母に出産してもらいますね。その届け出を領事館かどこ かに行って届け出をしますでしょう。そのときに母はだれ、父はだれというふうに記載 して届け出ますよね。帰国したときにそのまま本籍地の役場に届け出ますからそのまま になってしまう。そういうこともあり得るわけですね。 ○加藤委員  アメリカの病院でも出生証明書は出すんでしょう。 ○矢内原委員  それは出しますね。 ○加藤委員  領事館に出生証明書を持って行って届けるわけでしょう。 ○矢内原委員  そうです。 ○加藤委員  中谷先生かだれか、御婦人の方に産んでもらうと、母親・中谷瑾子と書いてあるわけ ですか、その病院の出生証明書。 ○中谷委員長  そうでしょうね。 ○吉村委員  上はどうなったんですか、推定される。 ○加藤委員  夫の同意が推定されるというのは、日常語としてはわかりにくい表現なんですけれど も、夫というのはいつも推定されるものではないかと思っている人もいるし、だから本 当はもうちょっとわかりやすい、誤解の余地のない表現がいいと思いますけれども、法 律用語としてはこれで十分なんですね。 ○矢内原委員  同意をしていることを推定するというのもおかしいでしょう。 ○加藤委員  だから日本語としては非常に異様な感じなものですよね。 ○矢内原委員  だけど法律的にはこんなことを言うのかなと思って、私はずっと今まで来ましたけ ど。 ○中谷委員長  これは丸山委員と石井(美)委員に真意を伺った方がいいですね。 ○吉村委員  そうですね。 ○石井(美)委員  子どものためにはここまで書いた方がいいだろうということですが、そこまでしなく ても、今の嫡出推定制度の枠内で子どもの福祉を守れる可能性もあると思います。 ○加藤委員  だからもうちょっと日本語でわかりやすく書くとすれば、出産したときは、たとえ夫 の同意について疑義が生じても原則として同意があったとものとみなされると。○石井 (美)委員 見なしてはいけない。 ○加藤委員  見なしちゃいけないんだ。 ○石井(美)委員  法律用語で見なすと、覆せないことになる。 ○加藤委員  見なすはいけないんだけど、同意は推定されると。だから、それに……。 ○吉村委員  同じことになっちゃう。 ○加藤委員  そうですね。 ○吉村委員  どうして、見なすはいけないんですか。 ○石井(美)委員  見なすというのは、事実が違うといっても覆せない。 ○中谷委員長 ひっくり返されないんです。確定しちゃう、事実関係が。推定だと事実 関係は通常こうだというふうに一応決めておくということです。 ○吉村委員  なるほど。 ○矢内原委員  夫の場合、いつもこうなっちゃう。 ○加藤委員  あるいは訴えを起こすものは格別な証拠を提出しなければならないと、そういうふう に書けばわかりやすいかもしれないですね。 ○中谷委員長  アンダーラインを引いたこの一文はどうしてもなければだめですか。 ○吉村委員  どれですか。 ○中谷委員長  「同意した夫とする」で切ってしまってはだめですか。 ○加藤委員  同意が疑義にさらされた場合にどうするかということが推定規定ですよね。 ○吉村委員  これは石井先生が強く、子どものことを考えて同意は推定されるべきだというお考 えだったんですね。 ○丸山委員  父親があった方がいいですね。 ○吉村委員  あった方がいいんじゃないかと思って、そうですかと賛成したんです。 ○石井(ト)委員  もう少し積極的な考え方で、さっき「見なす」は絶対だめだというんですけど、見な すということの考え方もあるんじゃないかと思うんですけど、そこら辺は。 ○石井(美)委員  同意しなくても、夫たる者、妻の産んだ子は自分の子としなさい。 ○石井(ト)委員  そういう考え方もある。その議論はどうですか。 ○中谷委員長  それはちょっと無理ですね。 ○石井(ト)委員  ちょっと難しいですか。 ○吉村委員  それは……。 ○田中委員  子の福祉にならない。 ○石井(美)委員  子の福祉にはなると思います。同意してないと、提供精子によった場合に父親がいな くなる可能性がありますから……。 ○加藤委員  下手すると、父親も母親もいなくなっちゃうんですよね。 ○石井(美)委員  母親は必ずいるけれども、父親は。 ○加藤委員  だれもいなくなったということになる。 ○石井(美)委員  そうです。それよりは、夫は常に父になってください、必ず父親はいる、という考え 方もあり得ると思います。 ○丸山委員  「子の福祉を優先する」という言葉の意味が実質的になってきますね。 ○吉村委員  いやあ、しかしそれはどうかな。 ○石井(美)委員  ということだと思います。 ○吉村委員  夫は同意しなくてもいいのでしょう、そしたら。 ○石井(美)委員  そうです。 ○吉村委員  そんなの。 ○石井(美)委員  嫡出否認もできないということになるんですね。 ○吉村委員  逆に言えば、女性が浮気して男の人つくっても、これは自分の子どもで、夫婦関係に あるうちは自分の子どもですよと言っているのと同じじゃないですか。 ○石井(美)委員  浮気とは違うんです。 ○吉村委員  浮気じゃないんだけど、精子が入ったということについては同じですね。 ○丸山委員  一回は同意書を出しているでしょうね。 ○吉村委員  まあ、できないから、医療サイドが。 ○石井(美)委員  かどうかわかりません。 ○丸山委員  出頭を求めない医療機関も出てくるかもしれないですね。 ○石井(美)委員  提供精子の場合も、お医者さんでなくてもできますよね。 ○中谷委員長  そうそう。 ○吉村委員  人工授精はできる可能性はありますね。 ○加藤委員  成功率は圧倒的に低いんですか。 ○吉村委員  低いでしょう。それはできないということはないですね。 ○中谷委員長  イギリスなどの場合、クリニックから用意するんだけれども、精子を渡して、自宅に 持ち帰って本人がやるという報告も出てますからね。 ○吉村委員  ただ、一般的にそういう場合は精子の量は非常に必要ですよね。人工授精の場合には 0.2ccとか 0.3cc。うちの場合、 0.5ccぐらい使っています。そのぐらいで十分ですけ ど、 0.5ccを膣内に入れても妊娠というところまで現実的ではないですね。でも絶対そ れはゼロではありませんので、可能性としてはある。 ○石井(美)委員 そういう場合でも「見なす」とした場合には、夫が父になるということです。あの場 合、提供者が父にならないとすると、子どもの父はいないことになりますから、夫が父 となるべきであるという考え方もあり得るとは思います。でもなかなか受け入れられな いのではないですか、同意していなくてもというところまでは。 ○中谷委員長 夫の人権か子の福祉かということ、まさにそうなりますよね。ほかにいかがですか、 関連問題について。 ○吉村委員  その次の「精子・卵子・胚の提供者は父母とならない」、これはいいんでしたか。 ○石井(美)委員 そこが気になるんです。 ○吉村委員 そうですね。 ○石井(美)委員 夫が父とならなかったときにも提供者は父とならなくてよいですか。○吉村委員 提 供者が父となるという可能性を考えて提供しているわけではないから。 ○加藤委員 この文章は日本語で普通に読むと、何か実の父も実の母も世の中にあり得ないという わけよね。 ○石井(美)委員 法律上は。 ○加藤委員 そうじゃなくて、私が私の娘の精子の提供者なんですよ、普通の日本語でいえば。だ から、およそ実子とか実母とかということは世の中であり得ないというふうに読めるん てすよ、この文章は。 ○丸山委員 提供の意味は、ここではうんと限定されてますからね。 ○石井(美)委員 第三者に提供した場合。 ○加藤委員 そうなんですよ。 ○中谷委員長 これはもう少し明確にしないと、誤解を生みますね。 ○加藤委員 法律用語っていつもそうなんですよ。 ○石井(美)委員 法律用語はきちんとしないと。 ○加藤委員 第三者への提供者というんですか、どうですかね。 ○石井(美)委員 提供者には父となる意思がなかったから、夫の同意がなくて夫が父とならなくても、 提供者を父とはしない。 ○加藤委員 これは「ならない」という表現でいいんですかね。 ○石井(美)委員 父ではない。 ○吉村委員 とはいえない。 ○石井(美)委員 いえないというのは……法律上は父母とはならないという趣旨ですね。 ○田中委員 これは法律上でしょう。 ○中谷委員長 法律上です。 ○田中委員 もし出自の権利を認められたら、生物学上的の父親は父となりますから「法律上の」 という言葉を入れておかないと。 ○辰巳委員  養子は、養父、養母は父母とは言わないんですか。 ○中谷委員長  言いますよ。 ○辰巳委員  養父母になることはあり得るんじゃないですか。 ○石井(美)委員  それは養子縁組の手続きをすればなり得ますが、何もしないでなることはない。 ○辰巳委員  そのときに、遺伝子上の父母の方に行ってはいけないというふうにとられることはな いですか。 ○石井(美)委員  そんなことはない。 ○辰巳委員  そんなことはないですか。それならいいですが。 ○石井(ト)委員  厳密に言えば、精子・卵子・胚の提供者は、父及び母と父母とはならないという感じ ですよね。 ○吉村委員  そうですね。 ○加藤委員  これも男女別々に書けば、また別々の書きようになるんですね。 ○石井(ト)委員  そうすべきです。 ○矢内原委員  精子・卵子の提供者は母とならず、胚の提供者のそれぞれの配偶者は、提供者は父母 にはならないということ。 ○吉村委員  そういうことですね。 ○丸山委員  資料1の方だとアンダーラインが引いてあって、資料2だとアンダーラインはないん ですけど、同意推定の前提条件の「妻が提供精子・提供胚による生殖補助医療を受けて 出産したときは〜」とあるんですが、提供卵子の場合は、それで体外受精の場合は、夫 の精子は一旦外に出るんですよね。 ○吉村委員  出ますよ。 ○丸山委員  出ますね。その場合、夫の同意は推定しなくていいんですか。論理的には推定してお いた方がいい……。 ○石井(美)委員  精子が取り違えられたとしても……。 ○丸山委員  自分の精子であるのが普通ですけど……。 ○吉村委員  提供卵子による体外受精のことを言ってみえるわけですね。 ○丸山委員  そうです。 ○吉村委員  同じことですね。 ○丸山委員  要らないですかね。同意の推定のところでカバーする必要は……。 ○石井(美)委員  妻が生殖補助医療を受けて出産したときは夫の同意は推定される。 ○丸山委員  そうですね。その方が……。 ○吉村委員  その方が、それも含まれますね。提供卵子による……。 ○丸山委員  その必要があればですね。そうしておいた方が。 ○石井(美)委員  卵子が取り違えられても、産んだ人が母だったら、精子も取り違えられても、といっ てよいかどうかですね。その方がよいですかね。 ○丸山委員  同意がない場合というので、あと争ってもらうんですね。 ○石井(美)委員  でも、それは同意の中身ですね。自分の精子が使われることについて同意をしている のであって、ほかの精子によることを同意してませんからね。 ○田中委員  それは同意しませんよ。しなくてもいいんですよ。 ○石井(美)委員  その同意は推定されないですよね。 ○中谷委員長  これは取っちゃだめですね。 ○石井(美)委員  そうすると取り違えられることまで含めてちゃんとカウンセリングで言って、その場 合、あなたは父となるのですよと。 ○田中委員  そんなことはカウンセリングに必要にはならないですよ。インフォームド・コンセン トをとるときはすべてを喋れということではなくて、余りにも発生頻度の低いことまで 全部喋る必要は逆にないと思うんですね。 ○丸山委員  どっちなんですか。取り違えられた場合でも、夫は父とするんですか。 ○石井(美)委員  どうしましょうね。難しいですね。夫を父としないと、夫が否認した場合には取り違 えられた方の人が父になる。提供しているわけではないですね。 ○吉村委員  違う。 ○石井(美)委員  普通の論理で。 ○丸山委員  出産した者の配偶者じゃないでしょう。 ○石井(美)委員  夫が否認すれば非嫡出子になるということで、認知によって父は定まることになる。 だから、使われた精子の持ち主が……。 ○丸山委員  認知すれば。 ○吉村委員  それがなると。 ○石井(美)委員  なることにしますか。 ○吉村委員  それは無理でしょう。 ○石井(ト)委員  それはちょっと……。 ○丸山委員  それはこの下も同じでしょう。精子・卵子・胚の提供者は父母とならないというの は、父親がこの上のところで推定されずに、父親のない子になった場合に、提供者が認 知することできるんでしょう、精子提供者が。 ○石井(美)委員  それは提供者は父母とならないと言ったことが問題となる。 ○丸山委員  それは今の取り違えの場合ですけど、取り違えじゃなくて。結局同じかな。 ○石井(美)委員  取り違えまでも含むかどうかですね、提供者の中に。 ○田中委員  提供者は一切父親にはならないでしょう。提供で、自分のものではないということで あげるわけですから、一切、後で父親の認知はしないと。 ○丸山委員  ですけど、子どもに父親がいないとなった場合に、精子提供者が認知することは、こ れはないんですか。 ○法務省  ここに書いてあるのは、「父母とはならない」というのは認知もできない、という趣 旨で私は読んだので、それがいいのかと申し上げているので。 ○丸山委員  当然ならないから、任意に認知すればいいと読めないですか。 ○法務省  そこは皆さんが議論になるべき……。 ○田中委員  また、認知したいとか言い始めると大変な……。 ○石井(美)委員  強制もできるということですね。子どもの方が訴えて。 ○加藤委員  これは認知しても親子関係にはならないという趣旨で、この表現はどうするにして も、一切、精子・卵子・胚の提供者は本当に物理的な素材を提供しただけであって何の 権利も義務も発生しないと、そういう趣旨に理解すべきだと思いますね。 ○丸山委員  精子の提供者がどう考えても、発生させない。 ○田中委員  それがいいと思いますね。 ○加藤委員  例えば物すごい金持ちになっちゃったとか、モナコの王子様だったなんていうことが わかった場合にはやっぱり認知してもらった方が得だったということになるかもしれな いし、おれが提供したのだと言えば、しがない稼ぎをしなくて済む。 ○中谷委員長  夢の話は、なるべく。 ○加藤委員  一切、権利関係が発生しないという趣旨に表現するにはどうしたらいいんですか、法 律的には。 ○石井(美)委員  提供精子・提供胚によると制限するということですか。取り違えのときに夫は父とな らない、産んだ人は……。 ○丸山委員  ならないのを保護するんですか。 ○石井(美)委員  女性の場合は、産んでいるということは 10カ月間の関係があるから、それをもって母 とするのであって……。 ○石井(ト)委員  こういう中に取り違えということを前提として盛り込むというのはどうなんですか。 ○石井(美)委員  盛り込む必要はないと思います。でも起きたときにきちんと親が決まらないと子の福 祉の観点からは困るので、一応考えておかなくてはいけないと思います。 ○加藤委員  取り違えた場合に訴えることができるのかできないのか、取り違えてもそのままで通 用してしまうのか。 ○石井(ト)委員  大抵そのときに、それこそ判例で裁判で争われて一つの方針が出る、そういう方向で もいいと思うんですよ。あえて、取り違えて、これはあってはならないことを前提にし て考えるというのは。あってはならないことですよ。 ○石井(美)委員  もう既に起きている。 ○石井(ト)委員  それは起きているのを知ってますけど、だけど起きているということを、そのために 前提に話を進めるというのはちょっと筋が違うのではないか。 ○吉村委員  こういったことが起きている。そういう起こりうることに関しては、現実面で決める 必要がありますかということを言っているわけですね。 ○石井(美)委員  この文章でいけば、判例に委ねられる可能性はあります。要するに取り違えられたこ とについては、争おうと思えば争えるということになりますね。一応私たちは考えたけ れども。 ○加藤委員  どうもうちの息子はあのとき病院で隣に座っていた男にそっくりだ、なんてあるんじ ゃないかな。 ○矢内原委員  今まではそこで終わっていたからいいけれども、今度もっと複雑になるわけですね。 母親の場合も規定しなければいけなくなりますね。夫はあくまで自分のあれがないから 取り違えということはあり得ないけれども、胚と提供精子の場合には、卵子が変わって くるから、産んだ母親としての比較というか、決めというのは、これも推定はあるんで すか。 ○石井(美)委員  母は推定ではない。 ○矢内原委員  違う自分の卵子じゃない、提供……。 ○中谷委員長  でも産んだという事実……。 ○吉村委員  産んだ事実。 ○矢内原委員  それだったら取り違えはひっくり返らないじゃない。 ○吉村委員  そうじゃなくて、卵子が自分の卵子ではなかったということは立証することはできる でしょう。 ○丸山委員  それでも産んだ人が母親。 ○吉村委員  産んだ人が母親なんです。これは大前提がある。 ○田中委員  そうですね。そこがやっぱり前提として決めておいた方がいいかもしれません。子ど もが不幸になりますね。 ○石井(美)委員  でも胚が取り違えられたときに、産んだ人は母だけど、夫は父親ではないといってよ いかということです。 ○吉村委員  でもその胚はもらっているわけでしょう。 ○中谷委員長  いや、自分の胚だから……。 ○石井(美)委員  自分たちの胚……。 ○吉村委員  自分たちの胚の場合を言ってみえるんですか、これは。 ○丸山委員  提供卵子ですね。提供胚じゃなくて。 ○吉村委員  提供胚でしょう。自分たち夫婦の胚。 ○加藤委員  夫婦の御当人の胚でも、それは取り違えの場合はというのでしょう。 ○石井(美)委員  そうそう。 ○吉村委員  それまで考えると……。 ○丸山委員  それは形式的には今扱ってないですね。 ○吉村委員  扱ってないですよ。 ○吉村委員  法律って、間違った起こるべきではないことに対しても法律は……。 ○石井(美)委員  起こるべきでないことではない、起こり得る。 ○吉村委員  起こり得る可能性が非常に少ないことについても……。 ○石井(美)委員  書いてます。 ○吉村委員  書くんですか。 ○石井(美)委員  はい。 ○吉村委員  当たり前なことは全然書かないで、要するに事実だという、そういうようなものは書 かないで、そういうことを書くわけですね。それが法律ですね。 ○石井(美)委員  それは紛争を解決するためですから、紛争が起きたときを考えて書いておくべ き……。 ○吉村委員  いや、おもしろいですね、法律って。 ○田中委員  そういうことが書いてないから裁判所があるのではないですか。書いてあったら裁判 官は要らないでしょう。 ○石井(ト)委員  私は可能性、生殖補助技術については、あらゆる可能性を考えて織り込むというのだ ったら話がわかるんですけれども、リスクを考えてそれを織り込むというのはちょっと 納得できないですね。 ○石井(美)委員  民法の中には、本当は起こらないはずの摘出推定が重なったときに父を定める手続き が書いてあります。その点では、起こる可能性がある問題は考えておいたほうがよいと 思います。 ○吉村委員  非常によくわかります。だから精子・卵子・胚の提供者は父母としての権利義務を放 棄するのはいけないの。 ○石井(美)委員  義務は放棄できない。 ○吉村委員  義務じゃない、権利……。 ○加藤委員  権利は放棄し義務は免れるですね。 ○吉村委員  義務は免れるか、そうですね。 ○石井(美)委員  父母ではあるけれども、権利と義務はないということになる。 ○加藤委員  父母ではあるけれどもというわけね。 ○吉村委員  父母ではあるけれども、なります。 ○吉村委員  そうですか。遺伝的な父母であるということですね。 ○加藤委員  だから、この場合、「父母とはならず」と書いて、その説明として「父母としての権 利・義務は発生しないものとする」というふうに書いたっていいわけですよ。重複して いるけど。 ○石井(美)委員  今問題となっているのは、それでよいかどうかということです。 ○吉村委員  それでいいと。 ○田中委員  私もいいと思います。大前提だけ押さえて、あとは起きたときの当事者間で問題とす ればいいじゃないですか。めったにそんなことはないですよ。あっても少ないと思いま すよ。 ○石井(美)委員  あったら困ります。 ○田中委員  そういうことはいちいち……。 ○吉村委員  そういうときは具体的にどう書くんですか、間違えたとき、取り違えたとき……。 ○石井(美)委員  いや、そこまでは書かない……。 ○吉村委員  同意が推定されない場合は、ということを書くんですか。具体的にはどう書くんです か。同意が推定されない場合はとか……。 ○石井(美)委員  同意していない場合についても……。 ○吉村委員  同意していない場合、夫が同意してないのにする。 ○加藤委員  だから、これは実際同意なしにやっちゃいけないということなんだけれども、実際に 同意してなかったという場合があるわけでしょう。 ○吉村委員  ありますね。 ○石井(美)委員  そういう場合には、夫は父とならないその場合にも提供者は父とならない、それでい いんですね。 ○田中委員  その場合、なられた場合、提供者は困りますよ。 ○加藤委員  あやふやだったら、精子の提供者は父親になるといったら……。 ○田中委員  あっちもこっちも父親になる。 ○加藤委員  まずいですね。 ○中谷委員長  大変詳細なご議論が展開されてますけれども、出自を知る権利との関係もありますの で「出自を知る権利」の方へ移らせていただきたいと思います。この項目についてはい かがでしょうか。 ○石井(ト)委員  「成人後」というのは何歳なんですか。 ○中谷委員長  成人は20歳。 ○石井(ト)委員  20歳あるいは結婚ができる年齢18歳。 ○中谷委員長  結婚ができるのは、女性は16歳で、男性18歳ですから。 ○石井(ト)委員  そこら辺はどう考えますか。 ○加藤委員  成人というよりも結婚年齢と考えた方が合理的だというお考えなんですか、石井先生 は。 ○石井(ト)委員  問題提起です。だから「成人後」と抽象的なんですけど、結婚の合法的な年齢にする のか、一般的でいう20歳にするのか、18歳なのか、女性は16歳です。結婚の同意はたし か必要でしたね。 ○中谷委員長  親権者。これは「成人後」とされたワーキンググループの方の御提案の趣旨は。 ○石井(美)委員  婚姻にあたってというのは1に入っているので、そちらの方は成人ではなくても、婚 姻にあたって知ることができるということです。 ○加藤委員  成人規定と婚姻規定と両方あるわけですね。 ○石井(美)委員  1の方は。3はもっと詳しい、本当に提供者そのものを知ることができるという場合 には、婚姻のときというよりは、成熟して十分な判断能力をもって「知る」ということ の意味をわかった上での方がよいということです。 ○中谷委員長  その場合に案3の提供者は、個人の特定に結びつくんですか。案1は、「〜結びつか ない情報〜」とありますけれども。 ○石井(美)委員  そうですね。案1がそうですから、案3はそういうことです。 ○中谷委員長  案3もそうなんですか。 ○吉村委員  案3がそういうことです。だから会いに行けるんです。 ○加藤委員  案3の場合には提供者の固有名詞がはっきりわかる場合でしょう。 ○吉村委員  そういうことです。 ○田中委員  外国のいろいろなガイドブックを読むと、出自を知る権利の項もあるんですけど、提 供のドナーのところに必ず「提供精子・提供卵子のドナーのプライバシーを守る」と書 いてあるんです。匿名性だと。ただ特殊な場合、エマージェンシーですね。例えばそれ を使って感染症を起こしたとか伝染病を起こしたとか、そういう非常に予期せぬことで 第三者に危険が及ぶ場合にはこの限りではないと。本人たちが希望すれば自由に全てを 知ることができる、というガイドラインは見たことがないんですね。こんなに出自を知 る権利がオープンに自由に出ているのは見たことないです。 ○加藤委員  案1についてもですか。 ○田中委員  1でも3でも。普通は権利を認めないというか、プライバシーは守るけれども、そう いうエマージェンシーの場合には委員会ですか、それが独自の判断を優先すると。そう 書いてあると思うんですけど……。 ○加藤委員  案1というのは、提供者のプライバシーと生まれた子どもの出自を知る権利の、いわ ば折衷案というか両立案なのではないですか。 ○中谷委員長  最初に出自を知る権利が問題になった、先ほど申し上げました1983年のスウェーデン のあれですと、人工授精法などになりますと特定できるんですよね。 ○石井(美)委員  スウェーデンは案3だと思いますし、案1はイギリスがこれだと思います。 ○中谷委員長  イギリスは特定できない形で、どういう社会的……。 ○田中委員  イギリスはこの前来られたときに、コードを見せていただきましたね。あれは1番と は違うと思います。 ○中谷委員長  1番ではありません、そうです。 ○田中委員  こんなに緩くなかったですよ。 ○中谷委員長  個人の特定ができない程度のあれですね。それでただ、同じころにそういう生殖補助 医療を受けて……。 ○加藤委員  案1とイギリスと、そんなにずれてますか。 ○田中委員  イギリスは、さっき私が言ったエマージェンシーのときは、組織がドナーのプライバ シーよりも開示の方を優先するというのは書いてありましたけど、これだと婚姻すると きにはみんな聞けるような、調べられるような感じがしませんか。婚姻にあたっては、 本当のことを……。 ○加藤委員  この場合にもだれだれさんが提供しましたというのではなくて、あなたが結婚しよう と思っている人との間には近親関係は成立しませんと及ぶだけですよ。 ○中谷委員長  そういう形です。 ○加藤委員  ですからだれだれさんですと教えてくれるのではなくて、あなたが結婚しようと思っ ている人は近親関係が成立しませんと書いてあるだけなんですから。 ○田中委員  そうすると出自を知る権利というのは、近親婚になるかどうか調べる権利ということ になるんですね。 ○丸山委員  二つあるうちの一つはそれです。 ○石井(美)委員  案1はそういう立場に。 ○田中委員  わかりました、よく理解できました。 ○加藤委員  案1の場合には、提供者のプライバシーというのは両立が成立しているというふうに 言っていいのではないでしょうか。 ○中谷委員長  そうですね。 ○吉村委員  案3だと、何を知りたいんですか。 ○石井(美)委員  最終的には会いに行くことが……。 ○田中委員  お父さんに会いたいという。 ○吉村委員  非常に感情的なものですか、出自を知る権利というのは。 ○石井(美)委員  自分はなぜこの世に存在するのかということを考えたときに知りたい。 ○加藤委員  会いに行ったら、10人ということもある。 ○石井(美)委員  もう一つは、日本の養子制度は、生物学的親というか、実親を知ることができるよう になっている。 ○石井(ト)委員  知ることはできるんですか。 ○中谷委員長  実親は知ることになっているとは言い切れないと私は思いますけど。 ○加藤委員  一応だから連結可能匿名性という形にするわけでしょう。だれとだれ、調べることは できるけれども、匿名のままということ。 ○石井(ト)委員  この場合は遺伝的なことではないですか。感情的なだけでなくて、確認をしたいとい う。 ○加藤委員  3案の場合には、合理的な根拠に基づいて出自を知る場合と不合理な根拠に基づいて 出自を知る場合、両方含んでいるんですよ。第1の場合、大体主として合理的な根拠を 中心としているんですよ。ですから合理的な根拠のある要求は却下できないと。それは 例えば生存権だとか幸福追求権に抵触すると。しかし不合理な、おれの父親はどういう 世界観の持ち主だっただろうかということまでは権利として認めなくてもいい、そうい う考え方もあるわけですよね。  だから出自を知る権利が人格権として非常に基本的な権利であるとすれば、それはプ ライバシーの問題ではなくて、あなたの父は実は加藤尚武だと教えなければならない。 ○石井(美)委員  そこまで確立しているかどうかはよくわからないですが。 ○中谷委員長  案2の御意見も結構多かったのですか。 ○吉村委員  多かったです。 ○石井(美)委員  丸山先生も。 ○加藤委員  第2の場合には、これから遺伝子検査とかDNAの検査ということが非常に医療行為 のベースになっていった場合、本当に合理的に見て、だれがどういう因果関係にあった かということを知るというか、非常に重要になってきたときには、個人の幸福追求権や 生存権を制限するということにどうしてもなると思うんですね、第2案だと。 ○田中委員  ここに、そういう特殊な場合は別であるということをはっきりしておけば、原則的に 認めない。 ○加藤委員  その場合には、請求があればそのまますぐ開示するというのではなくて、請求に合理 的な根拠があれば開示する。合理的な根拠があるかないかということは第三者機関で審 議すると、そういう形になるわけですね。ですから第2案とは違うと思います。 ○田中委員  これを少しそういうふうに書いていただければ、基本的には認めないということを私 は……。 ○中谷委員長  それは第2案にすると提供者の数が減るという意味ですか。第3案ですか。 ○田中委員  第3案にするとますます提供者はいなくなると思います。ドネーションの治療を推進 するのであれば、やはり提供者のプライバシーをまず保護してやることが第一と思いま す。 ○中谷委員長  スウェーデンでも出自を知る権利を人工授精法で保障してますね。その後、提供者が 大変減って困ったんですけれども、その後ある程度回復して、今はそんなに問題になっ ていないのだそうです。 ○田中委員  スウェーデンみたいな社会福祉国家と日本は違うかと思いますけど、どうでしょう か。子どもが20歳になって、自分の父親がわかるようになってきて、お父さんのところ へ来ますよということがあり得ますよといったら、大抵は精子をくれませんね。多分無 理ですね。 ○高橋委員  現実にはそういうことはないと思いますけれども、ただ、話だけで……。 ○田中委員  そういう話をしなければいけないのでしょうか。 ○高橋委員  提供者は来ないんですよ。 ○中谷委員長  でも個人の特定はできないというふうに。 ○田中委員  だから案1であれば少しはいいかなと思うんですけど、3の場合やはり。 ○加藤委員  案1の場合にも、情報の提供を請求すれば自動的に情報は得られるというふうに判断 するのか、情報の提供の請求があった場合に適切な判断の後にそれが認められるという ふうにするのか、それによって違ってくると思います。 ○田中委員  どちらにウエートが重いかですね。プライバシーを守るのか、子どもの情報を求める そっちを優先するかによって、バランスで書き方が変わりますね。 ○加藤委員  もう一つ、あなたは提供配偶子や提供胚によって生まれた子どもか子どもでないかと いうことも確認を求める、そういう確認もあるのではないかと思うんですけれどもね。 どうもおやじと全然似ていないと、あんなひどいおやじからおれほど立派な男が生まれ るはずはないと。 ○田中委員  実際問題そういうことはないと思うんですけれどもね。 ○中谷委員長  かつてありましたね、AIDの初期のころに。ある農村に生まれた子どもが非常に優 秀で、東大にストレートで入ったとか何とかというのでびっくりして、鳶が鷹を産んだ じゃないけど、そういうので問題になったというのがありましたね。 ○吉村委員  出自を知る権利は、今もお話になったと思うんですけど、ドナーの匿名性ということ とも真っ向から対立しますよね。そうすると今、我々が話していることが実際において できるかできないかはまた別問題としてやっていく場合に、本当にドナーを得たいと思 ってやるとしたならば、出自を知る権利は認められないという方向でいかないと現実的 ではないですね。そうすると、兄弟しかこういったことはできなくなる可能性はあると 思いますけれどもね。 ○辰巳委員  案1なら大丈夫じゃないでしょうか。 ○中谷委員長  案1でいいんじゃない。 ○吉村委員  私は案1でもこれは結構難しいと思いますね。そういった人がドナーになってくれる かどうかということを、現実面で、私はもしこういうことが本当に、近親婚にあたって はそういうことを確認を求められますよと言ったら、ドナーになる方は私は減ると思い ますね。 ○中谷委員長  でもこのワーキンググループの提案では、兄弟姉妹からの提供は認めるわけでしょ う。 ○吉村委員  そういう案もあるという、まだ認めて、それは……。 ○中谷委員長  それはあれですか。 ○加藤委員  吉村先生、提供した人に電話がかかってきて、あなた、提供者について問い合わせが ありましたけれども、オーケイしていいですか、と問い合わせるわけじゃないでしょ う。ただ帳簿があって、帳簿を管理する人がコンピュータを叩いて、はい、関連性あ り、なし、とかちゃんと言うだけでしょう。提供者は全然痛くも痒くもないんですよ。 ○吉村委員  ドナーにもちゃんとこういうことを説明しなくちゃいけないわけですね、説明の義務 がありますので。そういった場合にドナーになっていただけるかということについては 非常に疑問が出てきてます。 ○加藤委員  でもそれについてだって、あなたの個人名は絶対わからないということは言っていい わけです、嘘にならないわけでしょう。 ○吉村委員  それはならないですね。 ○田中委員  情報の開示でしょう。開示を保存機関に請求するとした場合、全部を意味するのでは ないでしょうか。 ○丸山委員  情報というのは何であるか。 ○田中委員  このままの文章だとちょっと……。 ○丸山委員  コンピュータの端末を叩くのだったら、コンピュータに何が入っている。何が入って いるかというのは、配偶子の採取の際に何が調べられるかということにつながってくる と思うんですね。 ○田中委員  そうですね、全部開示ならばですね。 ○丸山委員  何も調べなくて配偶子の提供をしていたら、情報というのはないんじゃないですか。 ○加藤委員  年齢とか固有名詞だとか人種、イギリスの場合には毛の色だとか眼の色だとか。 ○丸山委員  普通だと、それを知りたい合理的な理由というのがある場合というのはどういう場合 になるのか。案1の場合の成人後の。 ○田中委員  近親婚じゃないですか。 ○丸山委員  近親婚は婚姻にあたって、案1の2番目の方なんです。こちらはわかるんです。 ○田中委員  その前のですか。 ○吉村委員  「〜請求することができる」まではやめてしまって、「〜婚姻に当たって、近親婚の 問題がないかの確認を求めることができる」、これだけだったら、私はドナーはそんな に問題ないと思いますね。 ○田中委員  この前と後ろだけそう思います。 ○矢内原委員  その場合には個人の特定に結びつかないということがあり得ますか。勝手に結びつけ なければ近親婚じゃないか。例えば眼の色だとか……。 ○石井(美)委員  本人には知らされないけれども、記録上は誰であるかわかる。 ○矢内原委員  だから、あるのはこちらでしょう。個人の特定に結びつく情報は保存してあるけれど も、それは開示しない。 ○中谷委員長  開示しない。 ○丸山委員  提供者は0001号でもいいですね。精子提供者、日本の。番号を振ってしまってい ると。個人特定情報はすべて落としてしまう。 ○石井(美)委員  でもその人がだれであるかということがわからなくては、近親婚は防げません。 ○中谷委員長  別の記録が必要ですよね。 ○丸山委員  1番ではだめなんですか。 ○石井(美)委員  1番でも構わないです。情報と個人名はかなり分断して保存されない、普通は。 ○吉村委員  番号がだから0003は先生とか。 ○石井(美)委員  今でもそうですね。 ○吉村委員  今もそうです。ただ、近親婚かどうかというのも具体的にやろうとすると結構難しい なと思ったりするんですね。 ○田中委員  難しいですよ、確かに。 ○吉村委員  例えば、どうやって近親婚じゃないというのは。例えば、生まれが違うから、出身地 が違うから。 ○石井(美)委員  いや、個人名と結びつけない限り近親婚は防げない。 ○吉村委員  近親婚はいいか。 ○石井(美)委員  調べられないですね。 ○吉村委員  ちょっと薄い親戚であってもいいわけだ。 ○石井(美)委員  民法の規定もそうです。 ○吉村委員  何親等でしたか。それだったらできるか。 ○丸山委員  だけど民法の規定に抵触するような近親婚のみを防ぐ趣旨ではないでしょう。いとこ の結婚なんかも回避してもらおうというんでしょう。 ○石井(美)委員  それは言えないのではないですか。普通の人ができることを禁止するんですか。 ○丸山委員  禁止はしません。禁止はしないけど、本人に伝えてあげる。 ○石井(美)委員  いとこですよと。 ○丸山委員  あなたの相手はいとこですよと。 ○石井(美)委員  それはかなり問題ではないですか。 ○田中委員  それは大変なことが。 ○石井(美)委員  そうしたら大変なことがわかってしまう。 ○田中委員  結婚のショックの以前にね。 ○丸山委員  そこまでは言わないわけですか。兄弟だけ、結局言うのは。実は兄弟。 ○石井(美)委員  近親婚に当たりますよということを開示するということはかなりのことがわかってし まうということですね。提供者が特定できる可能性が出てくるということですね。 ○丸山委員  だから、そこは提供者に番号を打って。 ○加藤委員  でも、本来個人が合理的な選択をするのに必要な情報は開示を受ける権利があるとい う考え方に基づくならば、民法の規定する近親婚の範囲よりもっと広く、例えばいとこ であるとか姻戚関係にあるとかないとかということまで開示の権利があると考えなけれ ばならないと思うんですね。合理的な選択の根拠となる情報という考え方に基づけば。 ○高橋委員  法的に禁止されてない範囲内であれば、近親婚と思っていても、その本人たちが良い と言えばそれで良いと思います。実際、情報提供しても、それは問題にならないと思い ます。ですから、近親婚である、この項目は要らないのでは。かえって「合理的根拠に 基づく請求以外は〜」という文章にすればよい。近親婚か近親婚でないかというのを厳 密に言ったら、例えば兄弟が別のところに養子に行って、そちらで名前が変わって結婚 の相手になった場合は、それは他人として扱うでしょう。 ○石井(美)委員  そんなことはないです。 ○中谷委員長  そんなことはないです。 ○高橋委員  だって、実子特例法などで小さいときに姓が変わった場合に。 ○石井(美)委員  いや、それでも残っています、近親婚の禁止は。 ○中谷委員長  一見してはわからないけれども、ちゃんとわかるようになっていますので。 ○高橋委員  そこまで、例えば精子提供者にはっきりした証書するものを持って来させてやるとい うことは実際は不可能でしょう。 ○吉村委員  それは無理です。 ○高橋委員  そうすると近親婚とか云々というのは余り議論にならないのではないかと思います、 実際の問題としては。文章としてはすごく立派ですけど。 ○中谷委員長  一度そういう疑問が起こった事例がありまして、一切あなたは近親婚にはならないと いうことで決着しましたけれども、あったものですからね。 ○矢内原委員  子どもの福祉のためにはどっちがいいんですか。 ○石井(美)委員  今の流れとしては、出自を知る権利というものを認める方向だと思うんですけれど も、一般論としてですね。 ○矢内原委員  一般論で、生まれた子どもが自分の……。 ○石井(美)委員  出自を知る権利があるという。 ○加藤委員  知る権利というのは、普通は合理的な選択の根拠になる情報を知る権利があるという のが一番基本なんですね。ところが極端な場合には、非常に非合理的な目的であって も、それは人格権に属すると考えれば、合理的な根拠がなくても情報を得る権利がある というところまでいくわけですよ。だけどそれはいろいろ判例も認めたり認めなかった りしてますから、例えば、生存権だとか幸福追求権に直接結びつくような情報について の開示を制限するというのは、制限するだけの特別な理由がなければ難しいということ になると思うんですけれどもね。 ○矢内原委員  例えば、そういうことを請求する権利はないかもわからないけれども、臓器の提供が 近親者はいいと言ったときに、その人が自分の実際上の親のところに行って、実は自分 はこうこうこうだと。また、あなたに近い人に臓器の提供者はいないだろうか、という ことが起こりえますよね、それが一番いいわけですから。それは生存に関連する合理的 なことなんですか。 ○加藤委員  臓器の提供者を探すのに、出自を知る権利を使っていいかどうかという問題ですね。 ○矢内原委員  はい。そういうことをいろいろ考えると、認めないとしてしまった方が面倒臭くなく ていい。面倒臭いというとおかしいですけど、いろいろ細かい事情を考えなくて……。 ○加藤委員  面倒臭くないという点では、一番2がいいと思います。 ○石井(美)委員  「子の福祉」を優先するので、本当に生まれた子どもは知らなくていいと言えるかど うかです。法律的な親はいる、いない場合もある、提供者は父母とならない。けれど も、どこのだれかを知りたいと思わないでしょうか。 ○吉村委員  いない場合があるというのは、どういうこと。 ○石井(美)委員  夫が同意してない場合には、夫は父親にならないですから。 ○吉村委員  同意してない場合は一般的にはできないんですけどね。 ○丸山委員  医療機関がいいかげんに実施したりする場合。失礼かな……。 ○石井(美)委員  でも提供者の記録もいいかげんだったりするかもしれない。 ○中谷委員長  出自を知る権利を、具体的にこれを認めないということは現実にこれからの案として は採択できないと思いますけれども、私は。 ○加藤委員  ですから第1案で、例えば矢内原先生のおっしゃるように、臓器の提供者を探す場合 には固有名詞がわからないとだめですから、そういう目的の範囲まで権利をカバーして ないと。ただ、私はこういうハンチントン舞踏病の遺伝子をどこからもらったかわから ないというとき、どうもこれは提供者がいたのではないかということになれば、それは ある程度教えてあげられるというような、例えばこの場合、重大な遺伝的な疾患の場合 には認めていいとか、そういうふうなことになるのではないかと思うんですけど。 ○丸山委員  これはどこから由来したかは、知る必要はないのではないですか。 ○加藤委員  事実上必要ないかもしれないけれどもね。 ○丸山委員  筋ジスみたいな、大きな遺伝子でどこに変異があるかわからないときに発端者を調べ るというのは。 ○加藤委員  私が今言った例は適切でなかったかもしれない。遺伝病に関連することでね。 ○吉村委員  そういうのは子の幸福追求権になる。それを知ることが。 ○中谷委員長  ハンチントン舞踏。 ○吉村委員  ハンチントン舞踏病でなくてデュシェンヌ型筋ジストロフィーでもいいですけど、そ れは知らせるということは、子のことを思っているわけですか、本当に。自分の母親 が、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーを生みたくないから、例えば健康な子ども を産みたい、そういったことが果して許されるのでしょうか? ○加藤委員  でも、この議論として出自を知る権利は認めないという形でこのガイドラインをス タートさせることは事実上不可能だと思いますね。 ○吉村委員  不可能ですね。 ○加藤委員  ですから、いかにして提供者のプライバシーと出自を知る権利とを両立させるかとい う形で考えを進めていく以外にないのではないかと思いますけれどもね。 ○吉村委員  それは私も賛成します。 ○加藤委員  特に、面倒臭いから出自を知る権利は認めないと一言でも書いたら全滅ですね。 ○中谷委員長  全滅ですよね。 ○吉村委員  それはそうですね。しかしフランスは出自を知る権利を認めてないですね。 ○石井(美)委員  認めません。あそこは匿名性は大原則ですから。 ○中谷委員長  完全匿名ですから。 ○吉村委員  そういう国もあるわけですから、絶対的に出自を知る権利を認めることが子の福祉に つながるという考え方ももう一回考え直さなくちゃいけないかもしれませんよ。前提が 崩れるというか。 ○石井(美)委員  それはそうですね。 ○吉村委員  本当に、子どもに知らせることが子どもにとって幸せなのかということです。 ○加藤委員  知らぬが仏、というのがある。 ○吉村委員  世の中の流れはそうだということはよくわかります。 ○中谷委員長  成文化するとなるとそうはいかない。御理解をいただきまして。 ○矢内原委員  匿名性とか親・兄弟の問題と全部絡んでいますよね。 ○中谷委員長  そうなんですね。 ○石井(美)委員  どこまで認めるか、確かに難しいです。 ○中谷委員長  最後まで何とかいかなければいけないと思います。 ○田中委員  頑張りましょう。閉店30分前。 ○石井(美)委員  頑張りましょう。 ○吉村委員  案1が妥当なんですかね。 ○中谷委員長  だと思います。 ○加藤委員  案1に、情報開示するかどうかの審査をもう一つ入れるということですね。適切な情 報開示請求かどうかということを。 ○吉村委員  それはいいと思いますね。先生、次へ行きますか。 ○中谷委員長  具体的な修正は。 ○吉村委員  また、初めからやり直しますから。 ○中谷委員長  そうですか。 ○吉村委員  これは案1をとるだろうと。 ○石井(美)委員  だろう。 ○吉村委員  だろうということで。 ○中谷委員長  修正案1ですね。 ○吉村委員  そうですね。 ○中谷委員長  その次、「3)実施者等の指定」。 ○辰巳委員  いいでしょうか。 ○中谷委員長  はい。 ○辰巳委員  「資格認定を受けた専門カウンセラー〜」というふうになっていますけれども、資格 認定がいつ動き出すかわからない。だから、ここがネックになってこのことができなく なる可能性はあると思うので、とりあえず「専門家カウンセラーが実施施設等におい て」としておいて、それで資格認定ができた際には資格が必要というふうな移行的措置 を入れないと、ここがネックで動かないということが起こる可能性があると思います。 ○吉村委員  十分ありますね。 ○石井(美)委員  公的資格制度を作ることを目指すということです。3年あってもできないですか。 ○矢内原委員  努力をしないとだめでしょうね。 ○丸山委員  人類遺伝学会の遺伝カウンセラーの講習会を受けたような人は、この資格認定を受け た人になるのでしょうか。 ○田中委員  試験に通らないとだめです。 ○丸山委員  公的な資格を考える。 ○吉村委員  このカウンセリングは、遺伝的なカウンセリングというよりはもっと違った補助医療 のカウンセリングだと思うんですね。 ○丸山委員  体外受精コーディネーターのような人。 ○吉村委員  そっちの方が近いと思いますね。ですから遺伝の知識というよりは、不妊の治療に携 わっている人の中でカウンセラーを養成しなくちゃいけない。 ○丸山委員  そういうものは、今の人類遺伝学会の講習会に対応するような動きは。 ○吉村委員  ないです。 ○丸山委員  ないんですか。 ○矢内原委員  個々にはあるんですけれども、オーガナイズした、学会をオーソライズしたようなも のはないです。だから人類遺伝学会とかいうところが浮かび上がっちゃうんですね。 ○田中委員  これは次の4)と関係するんですね。4)でこういう体制ができれば自ずとこういう 人を使いなさいということが言えるので。それがもしなければ今までどおりの各施設 で、治療に詳しい看護婦なり助産婦なりが大抵やっていますよね。だから、次の4)が どうなるかで決まるような気がするんですね。 ○吉村委員  辰巳先生がおっしゃるように、資格認定を受けたというのは今のところ除いた方がい いですね。 ○加藤委員  除くにしても何か但し書きで、ちゃんとした資格制度を発足させることが望ましいと かというぐらい書かないと、余りにも何でもいいという式になっちゃう。 ○吉村委員  そうですね。 ○石井(美)委員  資格認定を受けたというのを残しておいて、できるまでは、という暫定措置を設ける 方がいいのではないでしょうか。 ○吉村委員  それはいいと思います。 ○矢内原委員  認定制ができるまで。 ○田中委員  そうすると永久にできなくなるので、資格認定はできないと。その方がいいでしょう ね。 ○吉村委員  4)ですね。4)は大変なんだ。 ○田中委員  先生、いいですか一言。 ○中谷委員長  どうぞ。 ○田中委員  私、この4)を決める前に決めることがあると思うんです。それは、卵子の提供をだ れから受けるかという案がありましたよね。これが決まるとアウトラインが見えてくる と思うんですよ。要するに匿名性を守って金品の授受がだめとなると、実際問題第三者 の卵子提供はほとんど行えなくなると思います、提供者がいなくなりますから。お金は 要らないし私は注射を打ってリスクがあってもいいです、採ってくださいという人はま ずいないでしょう。そうすると日本では実際できなくなる。だったら公的機関をつくる 必要はないと思うんですね。  もしも身内でもいいですよとなれば、お姉さん、妹からでもいいのであれば治療は実 際的になります。まず卵子の提供者をどっちにするかを、先に決めた方がいいのではな いでしょうか。 ○中谷委員長  身内はよかったんですよね。 ○吉村委員  まだ決まってないです。 ○中谷委員長  そうですか。 ○吉村委員  卵子提供がよくないという人もいますから。 ○田中委員  一番のネックは卵子の提供だと思うんですね。卵子の提供がどうなるかで、最後の公 的機関、これがどうこうというのは変わってくると思うんです。まず卵子の提供者を皆 さんで決めて、方向をつけた方がいいと思いますけど。 ○辰巳委員  卵子の提供がなければ要らない。 ○田中委員  実際、申告するような話はないのではないでしょうか。 ○辰巳委員  胚提供は結構、というふうな形……。 ○田中委員  実際問題余りないと思いますね。第三者の精子を使った体外受精だけになっちゃうと 思いますね。 ○石井(美)委員  人工授精も含みます。 ○田中委員  AIDも全部報告するわけですか。 ○石井(美)委員  それは記録保存がきちんとなされる必要があります。 ○中谷委員長  そうですよね。 ○田中委員  AIDの大体9割、慶應でやってます。必要ないじゃないですか。 ○石井(美)委員  今でも9割と言えますか。 ○田中委員  実態そうでしょう、と思いますよ。そんな気がしますけどね。 ○中谷委員長  個人的にもありますよね、AIDはほかにも。 ○田中委員  そんなにないと思いますよ。 ○矢内原委員  20施設ぐらいありますから、ゼロではない。 ○中谷委員長  ゼロではないです。 ○田中委員  少ない。実際、公的機関というのは、現実に厚生省とかそういう国のレベルになるの ですか。 ○母子保健課長  これはいろんな形があると思います。ここでは先端医療技術評価部会の専門委員会で すけれども、例えばそういう形のものを常設して、何か審議事項があれば開くというよ うな形は技術的には考えられるだろうと思います。それから運営機関の方ですが、例え ば今度できる成育医療センター、ナショナルセンターですね、そこに室を設けるなり、 あるいは何らかのスタッフを置いてそこが管理するという形態は比較的イメージし易い と思います。 ○石井(美)委員 それがどれほどになるかは、実際にどのぐらい行われるかにかかっているというこ と。 ○中谷委員長 成育医療センターの構造とか機能とかというものは大体わかっているのですか。 ○母子保健課長  そうですね。大まかにわかっております。 ○中谷委員長  それを教えていただけますか、どういうものになる。 ○矢内原委員  その中で管理できるかどうかということは。 ○石井(美)委員  それに付加していただいても。 ○加藤委員  こちらから注文をつけてこの公的審議機関というのを設置したとしても、情報量とし てはどうせコンパクトディスク1枚に全部入っちゃうぐらいでしょう、今のところ保存 すべき情報の全体というのは。それをその審議にあたったり管理したりする人は必ずし も常勤である必要がないとすれば、それほど馬鹿でかい機関を立ち上げるということに は必ずしもならないのではないでしょうか。 ○母子保健課長  あとはポツの二つ目の方などで実施施設の監査とかいろいろ書かれていますので、こ のあたりがどの程度まで、例えば頻度の問題とかパターンでどれぐらいのスタッフが必 要かとか、そういう部分は多少幅があるとは思います。 ○中谷委員長  常勤の人がどういうメンバー、構成なのかとか、男女とか医学専門家とか看護とか法 とかいろんなあれがありますよね。それから、その機関の予算も問題ですよね。 ○母子保健課長  余り大きな規模になる場合にどうかということはございますが、それほど大きなもの でなければ、そういう機関が必要だということで、例えば法律で規定するとか、そうい う方向性が明らかになれば、実施の可能性は高いという様に考えております。 ○矢内原委員  これだけいろいろなことを決めるわけですから、これはこの審議をしたり、管理運営 をしたりする機関は絶対必要だと思うんです。 ○中谷委員長  そうですね。同時に年間の記録といいますかね。 ○矢内原委員  なければ、ただ決めただけということになると思います。 ○中谷委員長  記録の収集やなんかも、きちんとした報告書を出してもらうとかいろいろありますよ ね。 ○母子保健課長  審議機関を設置して実際に何らかの法的な手当をして実施することになると、かなり 細かな規定が実際には必要になりますので、その作業が結構大変なのではないかという 気がしています。だから公的機関の設置のところで、具体的な進め方を決めるプロセス がかなりの作業になるのではないかという気がいたします。 ○田中委員  よろしいですか。これから時代が進んでくるといろんなパターンのことが出てくる可 能性があると思うんですね、多分、今の常識ではかり知れないようなこと。だから、今 の卵子の提供、胚、第三者の精子を含めたものだけであれば、それほど今の常識内で対 処できると思うんですけど、これから先、親子関係を含めていろんなバリエーションが 出てくる可能性があるので、そこまで対応できるようなキャパシティーを持ったものを つくっておいた方がいいような気がするんですね。  そういう意味で、今お考えになっている施設というのはそれに対応できるかどうか。 何という病院ですか。 ○母子保健課長  成育医療センターですか。 ○田中委員  そこは要するに、厚生省管轄の病院ということですか。 ○母子保健課長  そうです。ナショナルセンターですね。循環器病センターとか、がんセンターと同じ ような。 ○田中委員  そこでは生殖医療だけをやるんですか。 ○母子保健課長  いいえ、全部、小児医療から。 ○吉村委員  小児科、産婦人科、結構大きな最後のセンターですよ。 ○田中委員  そういう医療の特殊な治療。 ○吉村委員  はい。 ○田中委員  そうすると当然そこでも治療が行われますよね。治療をやっていくという側面を持ち ながらそういう新しいもののガイドラインをつくるというときに、果たして純粋に割り 切ってできるかという問題が出てくるような気がするんですね。 ○矢内原委員  審議機関と管理機関は違います。 ○中谷委員長  別です。 ○田中委員  そうなんですか。私が心配している点は、成育医療センターが審議または管理機関と なった時に、そのセンターの治療内容が現在の先端医療のレベルに達していなければ、 正確な審議ができるのかどうか。自分たちはできないのでやる必要はない、認めないと ならないでしょうか、心配です。 ○矢内原委員  審議は審議で問題が起こったり……。 ○中谷委員長  それとガイドラインそのものを法的につくるということとはまた別問題ですから、そ れはきちんと決めていただくという。 ○吉村委員  だから運営機関の一つのどこに置くかということで、成育医療センターなどでもいい のではないかと。データを集めて、監査するかどうかはまた審議機関でもいいかもしれ ないですけど。 ○矢内原委員  審議機関はいろんな分野の人が必要になってきますから、これは管理機関とは別組織 になるのではないか。 ○石井(美)委員  管理機関は管理機関の内にそういういろいろなことを決める組織をもつこともあり得 ると思います。それが審議機関とどういう関係になるかということは、また考えなくて はいけない。 ○田中委員  ぜひ将来のことを踏まえて、このようないろんな方面の方が入られて審議していただ けるようなものにぜひして下さい。私たちもこれからいろいろ研究したいと思っており ますので、その辺はよろしくお願いしたいと思います。 ○母子保健課長  審議機関の方がどういう性格になるかがやはり問題になると思います。どの範囲まで を考えた審議機関かということで、専門委員会が基本的に第三者の配偶子提供に焦点を 当てて生殖補助医療を議論してきているわけですが、実験への利用の問題とか、もっと 広い意味での生命倫理的なものまで含むべきではないかというご議論もあるようです。  ただ、これを実際につくろうとする過程で、もっと大きなものにしろという話が出て くるかどうかだろうと思うのですが、そこのところはこの専門委員会を超えた話になっ てしまいます。とりあえずは第三者の配偶子を使用した生殖補助医療を実施するとすれ ば、どういうものが必要かということのミニマム・リクワイアメントをいただいたとい う形で整理させていただければとは思いますけれども。 ○石井(ト)委員  成育医療センターのことについて説明してほしいんですけど、例えばもちろん治療と 実験と当然あると思うんですけど。 ○母子保健課長  ナショナルセンターになりますので、研究部門、病院部門、運営部門とこういう形に なります。どこに管理機関を置くかというのはいろいろあろうかとは思いますけれど も、研究部門かあるいは運営部門に置くことになろうかと思います。  それから診療科目は、先ほど吉村先生も言われましたように、基本的に国立大蔵病院 と国立小児病院が統合され拡充されるということですので、従来の小児科部門、産科を 中心にした部門。それから、それを生育ということで小児科と産科だけに切るのではな くて、子どもが生まれていってそしてまた大人になっていってと、また子どもがそこか ら生まれてくるわけですから、そういう一つの連続したものとしてとらえると。それを 成育という概念で、新しく出てきた概念でありますけれども、従来の分離していた小 児・産婦人科という観念だけでない、連続したものとして成育医療を考えるということ でやってまいります。したがって、従来の基本的な診療科目のようなものは基本的に備 えているわけです。  あとはナショナルセンターとしてやりますので、どういう部門を特に強化をしてナシ ョナルセンターにふさわしいものにしていくかということで、今、いろいろとソフト部 分の検討をしていると。病床規模は 500と聞いております。 ○矢内原委員 順調にいって、大体どのぐらいで出来上がるんですか。 ○母子保健課長 平成13年度中ということで……。 ○吉村委員 14年ですね。 ○母子保健課長 春ぐらいまでにはということ、あるいは13年の秋くらいに。 ○石井(美)委員 そこに置くかどうかというようなことまで、ここで考える必要はないのでは。 ○母子保健課長 お尋ねいただいたので、そういうことも選択肢としてあるということです。 ○加藤委員 こっちはボールを投げればいいんですよ。 ○石井(美)委員 私としては、今、第三者の提供による生殖補助医療に焦点が絞られてはいますけれど も、付記も含めて、公的審議機関の役割をそこに狭めない方がよいのではないか。将 来、先ほど田中先生がおっしゃったような今は範疇に入ってこない問題が生じたときに 対応できるようなものとしてできていく方が望ましいと思っています。 ○母子保健課長 そこの括り方だと思います。生殖にかかわる問題から、いわゆるクローンの問題とか いろんなところを一緒にすべきだという御意見もあるわけです。先般、科学技術庁の方 でまとめた法律案と、例えばここの接点はどうなんだという議論も当然に広い意味で括 ろうと思えばあり得るわけですね。それをどこまでやるかという話になっていくと、な かなか現実的には難しい側面もあるだろうということで、どこまで広くとるのかという あたりも議論の範囲かなと思います。 ○石井(美)委員 生殖医療までは限定してもよいかもしれませんが。 ○母子保健課長 今、ご議論いただいているようなことの延長線上に新しい技術の適用のもとで、どう いう可能性が出てくるのかと、そういうことを包含する形で議論いただくというのは、 かなりこの範囲内に含まれていくような議論だとは思います。 ○石井(美)委員 そしてこれは多分合意は得られないかもしれませんが、私は現に行われている夫婦間 を含めて、この機関のもとに置かれる方がよいと思っています。 ○田中委員 すべてのARTをですね。そうすると大きな組織になりますね。 ○石井(美)委員  いや、それは持って行き方だろうとは思います。どこまで直接に管理するかの問題 で。 ○田中委員  そうすると、私たちは日本産婦人科学会の組織に属しているわけですよね。我々を統 括している日産婦の存在はどうなるのでしょうか。 ○中谷委員長  例えばしっかりしたガイドラインを確立するということが必要でしょうね。法的措置 としてね。 ○田中委員  それは了解します。 ○石井(美)委員  会告だけでは対応できないものをきちんとできるようにすることが必要なのではない かと思うんです。 ○中谷委員長  それはこの委員会の使命でもありましたので。  大体時間が迫ってまいりましたけど、先日、御提供申し上げましたオーストラリアの ディスカル・ガイドライン、ARTという、ご覧いただいたかと思います。私、これを 読みまして、記録の保存が永久保存であるということはよくわかるんですけれども、一 つ、私は考えなかったんですが、それも考えるのかなと思ったのは、良心的な拒否がで きると。生殖補助医療について賛成できないものは、別に協力を強制されないというの があるんですよね。これはよく妊娠中絶法やなんかにはそういう規定が必ずあるんです けど、こういうものにもあるのかなと思って感心して読みました。ほかに何かお気づき の点がありましたら教えていただければと思います。  大体時間がわずかとなりましたので、続きは次回としたいと思います。よろしゅうご ざいましょうか。 ○加藤委員  きょうで大体全部終わるわけだったんじゃないですか。31日、次。 ○中谷委員長  次回は31日の1時から5時までですか。場所が厚生省の別館の7階の共用第12会議室 になります。どうも長時間にわたりまして、誠にありがとうございました。 照会先:児童家庭局 母子保健課 03−3503−1711(代) 椎葉(内線:3173) 小林(内線:3178)