00/07/25 第4回厚生科学審議会専門委員会議事録 第4回厚生科学審議会先端医療技術評価部会疫学的手法を用いた研究等における個人情 報の保護等の在り方に関する専門委員会議事次第 ○ 日  時:平成12年7月25日(火) 10:00〜12:00 ○ 場  所:中央合同庁舎第5号館(2階) 共用第7会議室 ○ 出席委員:高久史麿委員長 (委員:五十音順:敬称略)    寺田雅昭 (専門委員:五十音順:敬称略) 青木國雄 大島明  櫻井秀也 高津和子 田中平三  堀部政男 丸山英二 南 砂 安冨潔 ○ 議  事:1 地域がん登録事業の公益性について(大島委員から報告)        2 疫学的手法を用いた研究等における生命倫理問題及び個人情報保護          の在り方について ○ 配付資料:1 疫学的手法を用いた研究等における生命倫理問題及び個人情報保護 の在り方に関する調査研究班ガイドライン叩き台(検討素案・未定 稿)          (第3回当専門委員会における資料3) 2 疫学的手法を用いた研究等における生命倫理問題及び個人情報保護 の在り方の論点整理メモ(事務局作成)        3 疫学的手法を用いた研究等における生命倫理問題及び個人情報保護 の在り方に関する調査研究班ガイドライン叩き台(検討素案・未定 稿)に対する各委員からの意見 ○事務局  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第4回厚生科学審議会先端医療技術 評価部会疫学的手法を用いた研究等における個人情報の保護等の在り方に関する専門委 員会を始めさせていただきたいと思います。  本日は、全員の委員に御出席いただいております。  また、7月24日付で事務局の異動がございましたので、御紹介させていただきます。  まず、大臣官房統計情報部保健社会統計課の保健統計室長の中林でございます。 ○中林室長  (会釈) ○事務局  厚生科学課健康危機管理対策室長の南野でございます。 ○南野室長  (会釈) ○事務局  同じく、当課の課長補佐法令担当の野口でございます。 ○野口補佐  (会釈) ○事務局  次に、本日の会議資料について確認と御説明を申し上げます。資料の欠落、 乱丁等ございましたら、事務局に御指摘いただきますようお願い申し上げます。 ○事務局 (資料の説明と確認)  それでは、委員長よろしくお願いいたします。 ○高久委員長  本日は、朝からお集まりいただきまして、ありがとうございました。  最初に、皆さん方のお手元にあります議題の1の地域がん登録事業の公益性につい て、このことに関しまして大島委員から御報告をお願いしたいと思います。よろしくお 願いします。 ○大島委員  大島でございます。  4月20日の第2回の委員会で、地域がん登録については説明をさせていただきました が、一部繰り返しになるところがありますけれども、特に、公益性のところにつきまし て新しい資料をつけまして、がん登録の法的整備の必要性について説明をさせていただ きたいと思います。  なお、7月21日の法制化専門委員会でも意見を述べさせていただく機会がございまし た。  資料としましては、参考資料1と恐れ入りますが資料3の一番下に書いてあります5 ページになりますが、「地域がん登録に関する意見」というところをごらんいただきた いと思います。  この委員会にたたき台として出されている、丸山先生がおまとめになりましたガイド ラインが、地域がん登録についてどのように扱うのかというところが少し問題があるか と思うんですけれども、私は、これまで地域がん登録については、がん対策を企画立案 し評価していく上で必須の仕組みであって、言わばがん登録はがん対策の羅針盤であ る。これは、今後とも必要であるという立場から意見を申してまいりました。  6ページのところをごらんいただきたいと思います。地域がん登録に関係するものと しましては、地域がん登録における情報保護に関するガイドライン、これは後ろの資料 につけてございますが、前回4月20日には概要のみ申しましたが、今度はフルの資料を つけました。このような情報保護に関するガイドラインを作成し、がん登録における個 人情報の安全保護に努めながら、がんの実態把握、がん対策の企画評価、がん疫学研究 への応用、がん検診の評価と精度管理などの役割を果たして、公衆衛生の向上と増進に 努めてきたということでございます。  参考資料の冊子としてまとめたものでございますが、これは地域がん登録全国協議会 が6月に、まだ一部集め切っていないので未定稿としてありますが、この資料に地域が ん登録事業の公益性についてまとめさせていただきました。簡単に目次のところに沿っ て説明させていただきます。  主題ごとに四角で囲んでございますが、4月20日にも説明をさせていただきました が、全国レベルで申しますと第4次及び第5次の悪性新生物実態調査がありまして、そ の後のがん対策の政策決定をする上での基礎資料を提供しました。  その資料の内容としては、その下にも書いてありますように、がんの罹患の動向と将 来予測。部位別のがんがこれまでどのように推移してきて、今後どのようになるかを予 測するということと、それから、がんの診療の究極の評価の指標であるがん患者の生存 率がどのように推移してきているかという資料をここに書きました8つほどの資料の取 りまとめてございます。  一番下に重複がんというのが書いてございますが、いろいろな部位にまたがって多重 がんが高齢になるにつれまして増えてまいりますが、その実態も大阪では調べておりま す。  次に、がんの要因に関する疫学研究でございますが、ここに挙げておりますように肺 がん、肝がんの疫学的研究。それから、下の方にありますが原爆被爆者の調査が広島、 長崎でがん登録のデータを使って行われております。  それから、13番のところにコンピューターによるレコードリンケージ、記録照合でご ざいますが、がん登録と記録照合することによって、がんの罹患に関する追跡調査が簡 単にできるというような調査研究が行われております。  3番目に重要な課題としましては、がん検診の評価・精度管理というのがあります が、全国レベルでもがん検診の評価、有効性の評価あるいは精度管理。特に、老人保健 事業で行われているがん検診については、そのような方式をまとめて、その方式による 成績をまとめてまいりました。  それから、子どものがんで神経芽細胞腫マススクリーニングが行われているんです が、これは今その有効性に関して非常に問題になっております。がん登録のデータを使 って検討しました。  そのほか、胃がん検診、次の目次に行っていただきますが、子宮がん検診、乳がん検 診、肺がん検診につきまして、がん登録のデータを使って症例対象研究の指標による有 効性の評価が行われております。  以上が、主なテーマでございます。そのほか、それぞれの地域でがん登録が行われて いる意味としまして、それぞれの地域におけるがんの実態の把握等の研究が行われてま いりました。時間が限られておりますので一々説明はしませんが、このようながん対策 に反映するという形で、地域がん登録のデータは公衆衛生の向上と増進に貢献したと考 えております。  しかしながら、昨今の個人情報保護を巡る動きの中で、先ほどの資料の6ページに戻 りまして、今年3月に地域がん登録全国協議会は実態調査をさせていただきました。個 人情報を巡る動きの中で、支障の有無について聞いておりますが、その中で回答のあっ た9件で支障があったと回答をしております。  その具体的事例としましては、プライバシー保護を理由としての医療機関側の届出に 対する非協力・躊躇が4県、それから、個人情報保護条例を理由にした自治体病院から の採録制約が1県、届出の非協力が1県。それから、補充票への協力躊躇というのは、 死亡票のみのものに対する届出の督促でございますが、それへの協力の躊躇が1県とい うことで、7県が病院側から届出に対するがん登録への協力を躊躇するという状況が生 まれつつあります。このままいきますと、地域がん登録の登録の精度が下がってまいり ますので、先ほど申しましたがんの罹患率の正確な数字は計算できませんし、がん患者 の生存率も偏った患者さんを対象にして計測するということになりまして、地域がん登 録の存立が危うくなりかねない状況にございます。  続きまして、7ページのところの真ん中辺りに飛びますが、同じく地域がん登録全国 協議会の3月の調査で、がん登録をやっている府県のうち16府県市、広島市を入れて16 府県市でございますが、個人情報保護条例が既に制定され、8県では近く制定の予定と いうのが3月の時点でございました。合計24府県のうち9つの府県市では、がん登録事 業について個人情報保護審議会等で公式議論がなされまして、うち5府県市では条例制 定前とほぼ同じ形でがん登録事業が認知をされておりましたが、1つの県では、国レベ ルでの法的整備が必要であり、今のままで国が法的整備しないままであると、相当制限 を加えた形で認知されるのではないかと。もう1県では認知されてはいるが、本来、法 律の規定に基づくべきと個人情報審議会からコメントがあったと回答しました。ですか ら、残り2県はまだ議論の途上でございますが、1県では本人同意が必須との指摘、他 の1県では法制化が必要との指摘がなされたということでございまして、個人情報保護 条例を持っている府県でも、個人情報保護審議会での対応がかなりばらばらになってお りまして、このような問題を解決するためにも、国レベルで地域がん登録の法的な整備 ということをしないと、せっかく事業が継続されましても登録精度が非常に低くなっ て、先ほど申しました公益性の貢献ができなくなってしまうという状況がございます。  以上が、私どもの方から用意しました公益性に関係しての問題でございますが、でき ましたら、丸山先生がおまとめになったガイドラインに関係してのお話も少しだけよろ しゅうございますか。  資料3の6ページのところをご覧いただきたいと思います。「本ガイドラインにおけ る地域がん登録に関する記述についての意見」のところを少し触れて申したいと思いま す。  「地域がん登録のように継続的に実施され、かつ事後的にも説明や拒否・訂正の機会 を与えないものについては、広く社会にその事業の実情を、情報収集の手法も含めて広 報し、社会へ周知される努力を払うことが必要である」という記述がございました。私 もそのとおりと考えるのでございますが、できましたら、このガイドラインであるいは この委員会で、その具体的な広報の内容、私どもも今まで府県民に対してフィードバッ クする、国民に対してフィードバックするというのは努力してきたつもりでございます が、努力が足らない分があるという御指摘だと思います。どのようにすればいいのかと いうことをお示しいただきたいということが一点です。  それから、もう一点は「地域がん登録に関しては、人格権・プライバシー権の保護、 情報漏洩の可能性が皆無ではないこと、それによって得られる利益の実質性の点などの 点から、少なくとも拒否権の保証をすべきとの意見がある」という表現が、このガイド ラインにあるんですけれども、これは、地域がん登録に限ったことではなくて、疫学的 手法を用いた医学研究全般にわたって当てはまることではないかというふうに思いま す。ここで、地域がん登録だけを取り上げて、地域がん登録は具合が悪いのではないか という記述については、私としては納得がいかない点があります。先ほどるる説明しま した公益性についても、「それによって得られる利益の実質性の点から、地域のがん登 録には問題がある」ということでございますが、地域がん登録の公益性につきまして は、先ほど申しましたように、がん対策の企画評価を通じて国民には利益を公衆衛生の 向上ということでもたらしてきたと、未来のがん患者や社会に利益をもたらしてきたと 考えるものでございます。  以上、まとめてこのガイドラインあるいは本委員会にお願いしたいことが7ページの 一番下に書いてございますが、地域がん登録は、現在、府県が実施主体となって行って おります事業でございますが、この事業につきましては、他の一般的な疫学的手法を用 いた研究とは別に扱っていただいて、地域がん登録について1つの章にまとめて、そこ でこういう全数調査を行う合理的な理由があるのかないのか検討していただいて、その 見解を示していただく。合理的な理由が認められるとする場合には、広報や安全保護に 関する必要条件を具体的に示していただく。更には、私は地域がん登録の法的整備が必 要であると申してきたわけでございますが、これに関しても御見解をまとめていただく というようなことをしていただければと思っております。  以上でございます。 ○高久委員長  どうもありがとうございました。  今の大島委員の御意見に対して、どなたか御質問あるいは御意見おありでしょうか。  大島先生、この6ページの今おっしゃられた拒否権の保証をすべきだと。そうする と、拒否権の保証をすると、がん登録の精度が非常に落ちるということですね。 ○大島委員  はい。全数調査でございますので、私は登録されるのを拒否するという方が出てまい りますと問題があるという認識でございます。 ○堀部委員  よろしいでしょうか。従来から部分的には伺っていた話がかなり系統的に今日は聞け たかと思います。  私も、地方公共団体の個人情報保護の審議会等に関わっていますので、むしろ、具体 的にどこの県がどういうのか県名を明らかにしていただいた方が、これは個人情報では ありませんので、むしろ、どこがどうかということをもっと明確にしていただいた方が 議論しやすいのではないかと。勿論それぞれの地方公共団体で行っていますので、それ をその審議会に対してどうすべきかというのはなかなか外からは言えないわけですけれ ども、むしろ明確にしていただくとどこでどういうことになっているのかということが わかるかと思いますので、いかがでしょうか。 ○大島委員  その点につきましては、恐れ入りますが資料3の32ページからアンケート調査の結果 をまとめておるわけですが、その35ページ、36ページ、37ページで府県がわかるよう に、35ページに府県市の番号が振ってありまして、その番号ごとにどういう問題があっ たかというのが36ページ、37ページに一覧表で示しております。 ○堀部委員  見ればわかるということかもしれませんけれども、具体的に特に拒否しているとこ ろ、理由もここに書いてあるんですが、ちょっと簡単なんですが、もう少し具体的にど うであるというようなことはいかがでしょうか。それぞれ審議会で地域がん登録につい てどうするかというときに、審議会にその案が普通ですと行政側から提案されまして、 それについて議論をして、それは本人同意は必要ないというふうに審議会で認めるかあ るいは認めないか。認める場合は、審議会の意見を聞いてという規定がありますので、 それでいいということになれば進めるということになりますが、意見を聞いて、これは あくまでも本人同意でいくべきだというような場合に、その辺りの拒否する具体的理由 のようなもの、そこがまた今後、議論を進めていく上でそこをどうクリアするのかとい うことが問題になると思うんですよね。そういうところでは、大島先生が言われている 公益性というものが理解されていないと見るのか、どうなのかと。そのためには、もっ と広報活動をするのかとか、いろいろどう対応するのかというのもあるかと思いますけ れども、いかがでしょうか。 ○大島委員  私は、大阪では個人情報保護審議会に出席をして、がん登録について説明をし意見を 申す機会がありましたので詳しく報告できるんですが、大阪府の個人情報保護条例がで きたのは1996年でございまして、今度の個人情報保護の基本法への動きより少し前でご ざいました。その時点で、この大阪府の条例も個人情報の収集あるいは利用に関して は、本人同意が原則であると書いてあります。ただし、例外として審議会で認めるも のは除く。そこに当たるかどうかが議論されたわけですが、先ほどから説明させていた だきましたような公益性の点から、がんあるいはがんの罹患率、がん患者の生存率をき ちんと計測する上では、本人の同意を取るということはできないということを説明させ ていただきまして、3回ほどの審議をいただきまして、本人同意の原則については除外 をしようということになりました。しかし、得られた結果を広く府民に知らしめること ということについて、努力が足りないのではないかという御指摘がありまして、それま では年報とかあるいは医師会を通じてのしおりという形で、どちらかというと医療機 関、医師、保健医療従事者を中心に情報を返していったのでありますけれども、もう少 し違う形でということで、1つは、毎年プレス発表をするということと、もう一つは、 年報あるいは医師会に配る内容をインターネットでホームページで見られるようにした ということをしました。  もう一点は、資料利用のところで、それまでは届出の委託を受けた大阪府医師会が資 料利用について審査をしていたんですが、これを大阪府の責任でやりなさいということ になりまして、大阪府の責任で資料利用の審査をするようにいたしました。  先ほど私が説明しました幾つかの府県で問題があるということですが、1つは、先生 も御承知のように、福岡県でがん登録事業が中止をされましたが、そのときの1つの理 由として、県の個人情報保護条例から見て問題なきにしもあらずという言い方で、本当 の理由は長年がん登録事業をやってきたけれども余り成果が上がらないと。精度も上が らなくて成果が上がらないということで打ち切ろうではないかということであったと思 うんですが、それが1つです。  あとは、今まさに個人情報が議論されているという中で、府県だけでこの問題を考え ていいのだろうかということで、県だけでこういう重要な問題は考えられない、もう少 し上の国レベルでがん登録というものについてもっと審議をして、それの公益性がある ということであれば、法的な整備をするという方向でいくべきではないかというのが、 最近の審議会での議論というふうに私は見ております。 ○高久委員長  登録というのは成果が上がる、上がらないという問題ではないはずですね。 そうでもないのですか。 ○大島委員  今、申しました成果というのは、がんの罹患率とかがん患者の生存率が信頼性のある ものがなかなか計測されない、報告書もまとめられないというような意味でございま す。 ○高久委員長  なるほど、わかりました。 ○丸山委員  幾つか具体的な点を御指摘いただきましたので、お尋ね方々答えられるところはお答 えしたいと思います。  まず、疾病登録の中でがん登録だけが取り上げられているということなんですが、こ の点につきましては、疾病登録の中には必ずしも全数調査を必要としていないものもあ るようで、その中で全数調査を必要としている、逆に言いますと拒否権を認めることは 非常に難しいというものの典型例として、そして、規模の大きなものでありますので、 がん登録を一つ念頭に置いて検討させていただいております。  それから、2つ目の点で、社会へ周知させることを求めたいということを我々の班会 議のガイドラインたたき台で述べておるんですが、これは以前も申し上げたかと思いま すが、成果の周知というのは余り我々は念頭に置いておりませんで、手法を社会に周知 していただきたい。以前、第2回のこの専門委員会で大島先生の方で御説明いただきま して、私の方はそのときもプロセスについてちょっとしつこいほどの質問をいたしまし たけれども、どの段階でまず医師会を介してお願いをする、そして、どの段階で病院か ら医師会に届出がなされ、それが大阪でありましたならば成人病センターの調査部へ届 けられる。そして、何回も重複がないように照合がなされる。その後、死亡票との突き 合わせもなされる。そういうプロセスを市民あるいは大阪の場合でしたら府民にお知ら せいただきたいということを申し上げたつもりであります。大島先生の所にいらっしゃ る味木先生に伺いましたら、手法についてもホームページに掲載されているというふう に伺ったんですが、そして、私も余り速やかではなかったんですが、しばらくして拝見 したんですけれども、やはりわかっていないとわからない、当たり前のことなんです が、あらかじめ理解できていないとすぐわかるというように情報は提供されていないよ うに感じました。すべての人に理解させるというのは、いろいろな人がおりますので、 この社会では難しいと思いますが、関心を持っている人には、しばらく時間を掛ければ 仕組みがわかるような、そういう周知の方法を取っていただければありがたいなという ことを考えております。  それから、3つ目に公益性の点についてなのでありますけれども、大島先生には既に 個別的にお尋ねしたことなんですが、一応、記録のためにこの会議でも出しておきたい と思います。  それは、平成9年11月に総務庁の行政監察局から難病対策等に関する調査結果報告書 ということで、難病患者等支援対策、がん予防対策等についての行政監察の結果報告が なされております。その中で、がん登録事業につきましては、あちらも長所を褒めたた えるというのが仕事でないようで、欠点をつかまえて改善を求めるというところにウ エートが置かれているものなんでしょうけれども、がん登録につきましては事業の実施 目的、特に、がん予防対策への活用が不明確となっているほか、届出、集計解析事項が 都道府県間で区々となっている等の状況が見られた、というふうに評価されており、ま とめとしまして、地域がん登録事業について、その活用方策を含め、現行の事業を全面 的に見直すことというふうに総務庁は平成9年に言っておりますので、もし、その点に ついて御意見が大島先生の方にございましたら、あるいはコメントをいただけましたら ありがたいと思います。 ○大島委員  今、丸山先生が御指摘の総務庁の行政監察は、あくまで地域がん登録事業一般でなく て、老人保健事業の下で精度管理指導事業として行われているがん登録事業、これは老 人保健法が施行されて、それより以前から、例えば大阪府のがん登録はずっと以前から 行ってきておりますけれども、老人保健事業で行われるがん検診の精度管理を中心とし て整理をして、老人保健事業の精度管理指導事業の一環としてがん登録が位置付けられ て、国が補助金が出るという仕組みに変わったわけでございます。昭和63年でございま す。その事業について、行政監察が行われたと私は思っております。ですから、私たち も総務庁から来られたときに、こういう位置付けでやられているので、いろいろやりに くい点があるんだというようなことも申しまして、そういう意味で「現行の事業を全面 的に活用方策も含めて見直すべき」ということで理解しています。私は、これは地域が ん登録事業、一般的なものについて指摘を行われたのではなくて、当時行われておりま した老人保健事業の下でのがん登録事業という位置付けであろうと思います。  ちなみに、そのがん検診が老人保健事業の補助金から外れました平成10年度以降は、 国からの補助金というのは今はもうなくなっているわけです。 ○高久委員長  わかりました。  ほかにどなたかございますか。今の話は老人保健事業が関係するがん登録に問題があ って、がん登録全体では問題がないという御意見だったのですか。 ○大島委員  問題がないというよりは、本来のがん登録事業という点から見直すというこについて は、私も賛成でございました。もう少し具体的に申しますと、国が府県に補助金を出す ようになって、地域がん登録を行う府県は非常に数が増えたわけでございます。しか し、その増えたところのがん登録の内容は、かなり先行しているところに比べると登録 精度も低くて利用の程度も悪いという状況がございまして、この点をまさに総務庁は指 摘をしたというふうには私思っております。 ○丸山委員  双方の御意見を聞いてどちらを信用していいかよくわからないんですけれども、この 総務庁の報告書の中で指摘されています届出、あるいは集計解析事項が都道府県間で 区々となっている点というのは、事業のどこに基づいているかにかかわらず重要な点か と思うんですが、これは改善されたというふうに理解してよろしいですか。 ○大島委員  その点につきましては、厚生省がん研究助成金をいただいて行っております地域がん 登録の研究班で手引というのをつくって、これに基づいてやるようにというガイドライ ンみたいなものをつくって、それぞれの府県には示しておるんでございますが、実施主 体がそれぞれの府県でございますので、それぞれの府県の独自のものが入るというよう なところをとらまえて、ばらばらではないかと。しかし、がんの罹患率を計測すると か、がん患者の生存率を計測するための基本的な項目は、きちんと網羅されているとい うことでございます。 ○高久委員長  どなたか御質問ございませんか。先ほど7つの病院で出なかったとのお話がありまし たが、その判断は病院長の判断ですか。 ○大島委員  病院長の判断というよりは自治体の病院ですので、自治体の病院は事務局あるいは自 治体の役所の方の考えが非常に大きく影響していると思います。 ○高津委員  もう一つ質問なんですけれども、がん患者からの登録末梢要求が1県あったというこ となんですけれども、これは実際にトラブルか何かがあって問題が起こったから登録末 梢を要求したんでしょうか。 ○大島委員  私は、これについては紙でしか情報をいただいていないので余り細かいところはわか りませんが、ある県でがん登録事業についてこんないいことができたということで、関 係する団体が表彰されるというようなこと、つまりがん登録が記事になったわけでござ います。そのときに、その新聞を読まれた読者が、では、自分も登録されているんだと いうことに気が付かれて、自分はそういうところに登録してほしくないんだということ で、中央登録室に申されて、実施主体の県とも話し合いが行われたという経緯であった というふうにその紙からは得ております。 ○丸山委員  今の事例は私も少し聞いたんですが、そういう場合、大島先生の御見解だと、本人が 出てこられても登録は抹消すべきでなかったというふうなことになるのでございましょ うか。 ○大島委員  はい。私は、登録を抹消するべきではないと考えております。 ○高久委員長  どうもありがとうございました。  それでは、次の議題の疫学的手法を用いた研究等における生命倫理問題及び個人情報 保護の在り方について、ガイドラインのたたき台について意見を交換したいと思いま す。  まず、事務局の方で各委員の方々から提出されました意見等をまとめた資料を用意し ていますので、その資料について説明をお願いします。その説明が終わった後に、意見 をいただいた4人の委員の方々から簡単なコメントをいただきたいと思います。  最初に、事務局の方からよろしくお願いします。 ○事務局  それでは、資料2に基づいて御説明申し上げます。  資料2は、前回の御議論などを踏まえまして事務局で整理させていただいたものでご ざいまして、あくまでも議論の御参考にしていただくという趣旨の文章でございますの で、その点をお含みおき願いたいと思います。  大きな7点に分けて記述しておりますが、まず、最初が、指針の適用範囲の問題でご ざいます。すなわち、どの範囲にこの指針というのを適用していくのだうろかと。ある いは定義といたしまして、疫学的手法でありますとか、研究等の「等」の範囲でござい ますとか、あるいはそれを議論していく際には、症例報告といって1例特殊な症例があ りましたという報告が学会等ではたくさんなされておりますけれども、そのようなもの までこの指針を適用するのであろうかと。要するに、指針の適用範囲をどの程度にする のであろうかという問題でございます。  2番目が、俗に用語の定義の問題を書いておるわけでございますが、あくまでこれを 使っていただく方々が迷うことがないようにする必要があるという基本的な考え方と、 ここに書いてあります介入であるとか匿名でありますとか、連結可能、不可能あるいは 最小の危険、ミニマムリスクと言われるもの、この辺りをある程度具体的に書かない と、判断に迷う場合がかなり多いのではなかろうかということでございます。  3番目でございますが、個人情報保護に関する基本法の動向が明確化するまで議論す るのがなかなか難しい問題もあるのではなかろうかと。特に、個人情報保護の問題と学 問の自由との関係、あるいは学問の自由というのは一体どの範囲までを含むのであろう かというような問題。あるいは医療情報保護、その在り方あるいはその範囲、あるいは 医療情報を提供する医師の守秘義務と研究への協力との関係、このような問題というの は、個人情報保護の基本法の議論の中である程度整理なされないと、なかなか前に行か ないのではなかろうかということでございます。  4番目の御指摘は、仮に個人情報保護の基本法と言われているものが諸外国の法制度 の動向に合わせるということになりますと、医学研究について次の4点ぐらいを特に議 論していただく必要があるだろうと。  まず、最初は研究の明確性でございますけれども、医学研究の場合に通常診療を行っ ていって、その診療の結果というのが一つの研究を生むことがある。情報としては、あ らかじめ研究しようと思ってやるというよりは、診療していくと、その診療の結果を集 積したものが非常に貴重な研究になる場合があるということでございます。  (2)は匿名化の問題でございますが、複数の情報を照合するという場合、長期に縦断的 に調べていくという場合に、匿名化することによって研究が煩雑になる、あるいは試 料、個人情報を含めてその混同の危険性が高まるなどの問題が生ずる可能性があるので はなかろうかという問題でございます。  (3)が、先ほど来議論されています本人の同意の問題でございまして、同意を求めるこ と自体が研究対象の偏りを生むことになる場合、この場合に、どのような取扱いをする のであろうか。あるいは既存資料を用いる研究、あるいは先ほど申し上げました診療に 関する情報の集積結果などから、事後的に始まる研究の場合に、どのように考えたらい いのであろうかという問題であります。  (4)は(3)との関係でございますけれども、有効なインフォームド・コンセントという のはどのように考えればいいのだろうかと。あるいはその代替措置というのは考えられ るのだろうというような問題。  裏に入りまして、(5)が個人情報の本人への開示の問題でございまして、収集された個 人情報を本人に開示すべきなのだろうか。あるいは開示できない場合、どういう場合だ ったら開示できない、あるいはそれでも開示すべき情報の範囲というのは、どの程度あ るのであろうかという問題でございます。  (6)が訂正の問題でございまして、どのような場合に訂正というものを認めるのか。  最後でございますが、(7)個人情報保護のための制度的な措置をどのように考えたらい いのだろうか。  大きな5番目といたしましては、インフォームド・コンセントの問題でございまし て、これについては先ほども触れたわけでございますが、触れていない問題として3項 目挙げさせていただいております。  まず、1番目が、どのような項目を説明すべきか。  (2)が、未成年者あるいは有効に判断することができない状態、このような場合あるい は死者の場合に、だれに説明し同意を求めるべきなのだろうか。  その様式が(3)の問題でございます。  大きな6番が、倫理審査委員会の問題でございまして、倫理審査委員会の審査対象あ るいはその責任についてどう考えるのだろうか。研究に対する倫理問題に関する責任と いうものは、倫理審査委員会がすべて負うのか、あるいは審査対象を緩和した場合に、 その研究について倫理問題が生じた場合にだれが責任を負うことになるのだろうか。  (2)でございますが、その委員構成をどのように考えるのか。  (3)でございますが、(1)との関係があるわけでございますが、審査対象の研究範囲を どのように考えるのだろうか。匿名化されている場合、この場合においても倫理審査委 員会の審査対象とするのだろうかという問題でございます。  (4)は、その委員の教育あるいはそのために必要となる費用をだれが負担するのか。  (5)でございますけれども、医療機関における医学研究そのすべてが倫理審査委員会の 審査が必要ということになりますと、医学研究が阻害され、かえって不利益をこうむる ことというのが考えられるのではないか。あるいは、そのような自体が生じないよう、 倫理審査委員会の条件を考える必要があるのではなかろうかという問題でございます。  (6)が、共同研究の場合に、幾つかの研究機関がそれぞれごとに倫理審査委員会の審査 を受けるという必要性があるのかないのかという問題でございます。  7番目、その他としておりますが、まず、試料の廃棄の問題が、引き続く今後の医学 研究にどのような影響を与えるのかという問題。  (2)は、先ほど来議論されておりますがん登録の問題でございまして、これは最初に申 し上げましたとおり、前回の御議論あるいはその後いただいた御意見等をまとめて、あ くまで御審議の御参考までに出したものでございますので、その点をお含みおき願いた いと思います。よろしくお願いします。 ○高久委員長  どうもありがとうございました。  それでは、それに引き続きまして、青木委員、大島委員、櫻井委員、寺田委員から3 分ぐらい、既に書類で御意見をいただいておりますが、御説明よろしくお願いします。 ○青木委員  私の資料は、資料3の1ページに走り書きで恐縮でありますが、ちょっと問題点を書き とめました。  第1は、疫学的手法で、この前も若干議論になりましたけれども、今のままでは不明 確の感じがいたします。疫学が臨床研究その他と違いますのは、やはり集団を特定し て、その集団についての研究であります。疫学的、疫学という両方の言葉が今はほとん ど同じような状況で使われておりますが、疫学という用語にに絞った方がいいかとも思 っております。ここでは疫学的手法という題名になっています。つまり定義を明確にす べきで、少なくとも対象集団と方法論を明確にして話を進めていただくのがよいのでは ないかということであります。  今お話がありました症例報告とか、臨床研究というのは少し別にえた方が、将来とも いいのではないかというふうに考えております。  それから、2番目にインフォームド・コンセントが免除されうる場合です。がん登録 その他国が行う大きな全国的調査は、やはり公益性を考えますとこれは必要でございま すので、今、意見が出てきておりますが、個人情報保護処置の一層の強化・徹底等々に よりまして、それに体制を整えてこれは進めるべきではないかと思います。これは、極 めて国民の受ける不利益の方が大きくなるのではないかと考えます。  地域がん登録につきまして申し上げますと、ドイツでは戦後非常に情報公開を制限し ましたために、ほとんど疫学研究ができなかった。それで10年以上掛けていろいろな努 力をされ、ようやく現在のような制度になったわけであります。がん登録は、1908年ぐ らいから是非必要ということで、世界中に呼び掛けたのです。それが実際に始まりまし たのがアメリカで1937年。それからデンマーク、また10年以上経って、日本の宮城県と 3か国だけが始めました。更に10年掛けて今日の基礎ができました。実現するのに非常 に時間が掛かった、現在世界中で、非常に重要だというので多数国で認められて増加し ておるものであります。是非これは実現の方向に向けて規約をつくっていただきたいと 思うわけであります。  3番目は、前にも説明の中でお触れになりましたけれども、ある試料につきましては 研究が終了しました時点で、なお、保存が必要だという点でございます。 私どもも最長20年の調査後、これはもういいというので中断して資料を破棄したわけで あります。翌年、外国で25年追及の成績では逆の結果が出てまいりまして、我々の追跡 の20年ではだめだということが分かりました。ある病気が起こる頻度が、例えば60歳と か70歳で高くなる場合、40才ぐらいから始めましても20年では不足するわけでありま す。そういうことは残念ながら予知できなかった。したがいまして、この研究終了時に おいて新しい重要な事態が生まれた場合には、これは倫理委員会等と書きましたけれど も適当な機関で保存して将来に備えるのが、調査に協力してくださった方々に対する義 務でもないかと思いますし、勿論、国全体の利益にもつながることであります。  それから、玉越委員会関係のことは省略いたします。  以上です。 ○高久委員長  それでは、引き続きまして大島委員から先ほど御意見をいただきましたけれども、も し、追加することがあるならばよろしくお願いします。 ○大島委員  先ほどは、がん登録についてのみ申しましたので、それ以外のところをごく簡単に申 させていただきます。  この資料3の2ページ以降のところをごらんください。まず、基本理念のところです が、基本理念のところで広く医学研究というふうに書いておられますので、是非、最近 の医療分野における個人情報保護と利活用のテーマに関して、いろいろな団体や学会、 組織が意見を出しておられますので、これも参考にするいうことと併せて、国際的にど のような動向になっているかということも併せて検討していただきまして、日本だけが 特殊なことをしなければならないのであれば、その理由も併せて示していただかなけれ ばならないのではないかと思っています。  2番目は定義でございますが、定義については匿名であっても連結可能というような 言葉が出てまいりまして、少しわかりにくいのではないかと。これは、先ほども事務局 の方でも提言について説明がありました。なお、この定義に関連してですれども、個人 識別情報、アイデンティファイアーがついていない匿名の情報の場合には、このガイド ラインの対象とする必要はないのではないかというふう私は考えています。  3番目、インフォームド・コンセントのところですが、インフォームド・コンセント のところで既存資料を用いる研究の場合のインフォームド・コンセントということで、 3−2−2とか3−2−3がありまして、ここで倫理審査委員会で審査で考慮するべき 事項として、危険が最小限であるかどうか、研究実施の倫理的妥当性以外に、個人情報 の保護、匿名化、研究実施の社会への周知、拒否の機会の保証の有無というのが挙げら れているんですが、これは具体的にどういうことであるのか、倫理審査委員会がこのよ うな要件を示されて審議するといっても、なかなかこれでは難しいのではないかという ふうに思います。 むしろ、その後のインフォームド・コンセントの要件が免除される場合というのが4番 のところに上がってきて、ここに8つの条件が挙げられております。これは、基本的に は米国の規則案に基づいておられると思うんですが、このような要件の方がはるかに具 体的で、倫理審査委員会としては審査しやすいということで、更にもう少し言えば、い ろいろな場合があるわけですけれども、重なる場合にはどちらを優先するんだというこ とがよくわからなくて、私はインフォームド・コンセントの要件が免除される場合とい うのが、後者の4番に挙げられている8つの要件を審査するということでいいのではな いかというふうに考えます。  それから、4番目、倫理審査委員会についてですが、疫学的手法を用いる研究すべて が対象だというふうに書いてあるわけですけれども、そうであると、その匿名の情報も 定義のところで申しましたけれども、すべての研究が対象となってしまうということ で、匿名の情報を扱う研究はこの範囲外だと、倫理審査委員会の承認を得ることなく実 施できるんだということでいいのではないかと思います。  それから、Vの個人情報保護についてでございますが、勿論ガイドラインで研究者自ら がこういうふうに努力するんだということは必要でございますが、秘密漏洩に関する罰 則の強化や、特に最近ですと、コンピューター化されている情報に対しては、不当に入 手し利用して自分の能力をひけらかすというのに快感を覚えるというような人が出てま いりますので、そういう人に対しては厳重な罰則規程を設けるというようなことも示し ておかないと、ガイドラインだけでは対処できないというふうに考えました。  先ほどから私はがん登録の方でいろいろ言いましたけれども、個人情報の利活用の最 低守らなければならない条件としては、個人情報の安全保護のための措置をきちんとす るということ。それが、必要条件としてあって、もう一つは、公益性に対する国民の理 解があると思いますので、個人情報保護については、ガイドラインだけではなくて法的 な強化ということも必要ではないかというふうに考えます。  以上でございます。 ○高久委員長  どうもありがとうございました。  それでは、引き続きまして櫻井委員から御説明をお願いいたします。 ○櫻井委員  資料3の49ページにメモ書きみたいなものを出しました。個々の細かいことについて は、今、前の先生方がおっしゃったようなところを含めて、幾つかわからない部分もあ るんですけれども、それは議論の中でまたお聞きしようと思っているんですが、全体的 にこの間ガイドラインたたき台というものを御説明いただいた印象としては、簡単に言 えば、すべての疫学的手法を用いる研究を事前に倫理委員会に掛けるということが主題 になっているように私は感じたわけです。これは前から私は言っていっているわけです けれども、個人情報の保護ということが問題になったことが大きなきっかけになって、 こういうことが今議論されていると思うんですが、もともと個人の情報が保護されない ことによって、個人が何らかの不利益なり損害なりをこうむることから守ってあげよう という考えから発せられものだろうと思うんです。例えば現実に今までそういう基本法 みたいなものがなくても、今まで議論があったがん登録等が行われているけれど、実際 に、がん登録によって個人が損害をこうむったり、不利益なことが起きたことというの は恐らくないだろうと思うんです。そういう現実にはないのにもかかわらず、何でもか んでも倫理委員会を通すというのが、何かいかにもそれを通しておけば一応エクスキ ューズになるんだと、倫理委員会を通ったんだからやっていいんだというような形にな るようなガイドラインのように私は印象を持ったのです。どうもそれがちょっと疑問の ような気がします。今、申し上げました個人が損害を得た、不利益を得たという場合に は、恐らく先ほどのがん登録の話で拒否という話がありましたけれども、本当にそうだ とすれば、自分が不利益を得たことに対して、例えば裁判を起こすというような訴えが 起きれば、それには受けて立たざるを得ないんだろうし、この場合も、倫理委員会を通 っていたからどうだという話ではないわけですから、その辺をどういうふうに考えるの かなというのが疑問するわけです。  現実は、先ほど申し上げましたように、今、議論していることが個人情報の基本法の 制定という話が一方にあるので、こういう議論が当然持ち上がったというふうに理解す べきだと思うんです。そっちの基本法の方がはっきり何をどうしろというのがわかって いないので、それがはっきりしないうちに、具体的にがん登録の話がたくさん出ていま すから言いますけれども、がん登録でこういう損害をこうむって困ったという人がたく さん出ているから、それを守って上げるためにどうすべきだということをここで議論す るならいいんですけれども、そうではなくて、そんなことはないのに基本法ができそう だという影におびえながら、先にいろいろなことをごちゃごちゃ決めていくのはおかし いということで、基本法がはっきりしないうちに結論を出すべきではないというふうに 考えるということです。 ○高久委員長  それでは、最後に、寺田委員の方からよろしくお願いします。 ○寺田委員  50ページのところにメモみたいに書いてあります。事務局側が今さっき資料にまとめ てくださったところにいろいろな疑問点を書いてあります。このことは、以前、これは 臨床も全部含むということが基本理念のところで先ほど言われたましたけれども、広く 医学研究を意味するというのは丸山班で扱っている範囲であるということで、この班も そういうことを扱っているという前提の下でこういうことを指摘させていただきまし て、早速、臨床の方を入れてくださったと聞いておりますので、その面は解決がついた と思っております。  私は、こういうふうに書きましたからといって、地域がん登録と疫学が意味がないと かそんなことを言っているわけでは全然なくて、大島先生が言われましたように、地域 がん登録があるお陰で、がんの治療法がよくなったのか、発生している人が増えている のか、どんながんが増えて国としてはどういう方向に研究を持っていくのか、あるいは どういう対策をするのか、本当に検診は有効なのか、それはすべてがん登録に基いてい るんですね。 残念ながら、本当のことを言いまして、日本の中でそういう精度できちんと信頼性があ るのは大阪と宮城と限られたところなんですね。全体を混ぜてしまうと信頼性がないと か何とか言いますけれども、今言ったところだけではなくて、まだ3つ4つあると思い ますが、そういうものがすべてのがん対策、今、国民の3人に1人、あるいはある年齢 以上になると2人に1人が死ぬ、これに対してどういう対策をするかという面で、やは り非常に私は大事だと思います。これは当然のことだと私は思っていたんですけれど も、いろいろ議論が出ているところを見ると、やはり先ほどから話が出ていましたよう に、国民へのプロセスの理解、その重要性に関する理解を求める力が、がん登録をやっ ている方だけではなくて、がんの対策に携わっているすべての人に対して、どちらかと いうと乏しかったかなという反省はしております。  それから、臨床研究のことでちょっとメモに入っていないんですが、例えばAという がんがありまして、ある地域の出身者にどうも多いようであると。これは、臨床研究の 現場の一番大事なことなんですね。これを全国で調べてみたいということになります。 調べてみたところが九州のある地域にこのがんが多いようであるとなります。では、そ この患者さんを調べて本当にそのがんが多いのかどうか全部カルテを調べていくわけで すね。その場合にICが必要なのかどうか問題です。それが1つ。  結果として、例えばの話、九州の鹿児島に多いということがわかった。では、原因は 何だろうと考えます。そこの100人とか200人の方を一々ICを取らずにカルテを見せて もらって、家族歴あるいは今だったらDNA、これはちゃんとDNAの倫理規定によっ てやりますけれども、それから、ウイルスの存在や或いは例えば、そこの人はひょっと したらダイオキシンの影響を受けていたのかもしれないと考えるわけです。そこで、10 年前、20年前に環境汚染が高かったところの血清のダイオキシンを調べてみたいと考 え、その当時保存してあった血清を調べるのにインフォームド・コンセントをとる必要 があるのかどうか。その人を尋ねていって全部インフォームド・コンセントを取る必要 があるのか知りたいわけです。  それで原因がある程度わかったとすると、それに関して次は薬を使おうと考えるわけ です。薬使う場合には、ちゃんとしたルールがありますから、その前に前もってインフ ォームド・コンセントを取って、こういう薬ですからテストしたい。その結果、例えば 薬乙というのが非常にいいということが分かりました。そこで、薬乙を認可を受けて使 うことになりました。ところが、そこでは5年ほど経ちますと1,000人のうち1人ぐらい は副作用があるということがわかった場合があったとします。そのことをわかったとき に元へ戻って、同じような副作用があった状態の患者さんがいたかどうかということも 調べなくてはいけない。その場合は、またICを取るのかどうかです。  そういうことが、ここの事務局がまとめてくださったところに書いてございますけれ ども、実際の臨床研究にも、これはもしカバーするのであれば、大変なことになると思 います。臨床研究あるいは国民の福祉に還元すべきことが還元されにくくなります。そ んな邪魔くさいなら原因を調べたり、副作用、有用性を追求するのはやめてしまえとい うふうになる可能性があるというのが私の感じです。こういうものを例えば、ここの丸 山委員の研究班以外に、例えば開原先生の班が、やはり「個人情報大綱を踏まえた診療 情報保護の在り方について」という報告書を出しておられるわけですね。 この中で医学研究のところを見ますと、非常に簡単にしか書いていません。だから、医 学研究全般に関して個人情報保護法を全体として扱っているのがこの場しかないのかど うかというのが質問です。もし、この場だけであれば、相当もっと議論を詰めてやって いかないといけないというふうに私は思っております。  以上です。 ○高久委員長  どうもありがとうございました。  残りの時間の大部分をこの資料2と事務局がまとめた論点整理と、それから、今、御 意見をいただきました委員の方々の御意見についてフリートーキングのような形でお話 を願いたいと思いますので、どうぞ御自由に御意見を出してください。 ○櫻井委員  ちょっと質問よろしいですか。先ほど大島先生のお話の後でと丸山先生がおっしゃっ た中で、一般の人にいろいろ広報する部分が足りないというような話の中で、成果につ いては広めておく必要がなくて、むしろプロセスを広めるというか、開示することが必 要だとおっしゃいました。がん登録ならがん登録の成果がどういういいことがあるんだ ということよりは、それは大して必要ではなくて、がん登録がどういうプロセスで行わ れているかを、一般の人全部に教えるのは無理だから関心のある人にはというふうに最 後におっしゃいましたけれども、そこのところの意味をもう一遍説明してほしいんで す。変な言い方ですが、素人的には、がん登録をやったらこんないい成果があるよとい うことを国民にわかってもらえればいいような気がするんですけれども、そうではなく て、プロセスが必要だということの意味をちょっと教えてほしいんです。 ○丸山委員  成果のことについて広報するなと言っているわけではありませんし、成果については どんどん周知徹底していただいたらいいんですが、今ガイドラインをつくっております のは、個人情報保護あるいはより広く個人の人権を中心とした自己決定権を考えており ますので、その観点からすると、成果の広報というものは我々の焦点ではなくて、その プロセスがどうなされて事業が行われているか、それが知らされて、それに対して個々 の市民あるいは社会が受容できているかどうか、そういうところが個人情報保護あるい は個人の人権の保障の点でポイントだということです。成果の方は、勿論、利益性を考 える上で重要なものですから、広報されることが重要だと思いますが、我々が研究をす る際に研究者の方にお願いしたい要件としては、そこは焦点にはなっていないというこ とです。 それにとどまります。 ○田中委員  私は、日本疫学会の理事長をさせていただいておるわけでございますが、この丸山案 に対する意見あるいは論点整理メモを事務局に作成していただいておるわけですが、こ れに対する意見を疫学会の中で個人情報の保護及び倫理問題に関する検討委員会を設置 いたしまして、そこで検討させていただいております。いろいろ意見がありまして、そ れをまとめてここへお話しするのが若干遅れておりますので、この1週間以内ぐらいに まとめて事務局へ提出させていただきたいと思います。また、次回にそれについて説明 させていただく機会を御了承願えたらありがたいと思います。  今日は、ちょっと私は個人的な立場から、このことについて意見を述べさせていただ きますが、この個人情報といったものについて十把ひとからげにすべて包括されている ような印象を受けております。つまり、個人情報にはいろいろなレベルがあるのではな いかと。 例えば、性とか年齢といった問題もありますし、生体試料につきましてもコレステロー ルといったような問題から、もっと遺伝子のレベル問題もあるかと思います。遺伝子の 場合でも一部わかりやすい言い方をしますと変異があって、それは必ずしもすべて遺伝 子疾患のように遺伝していくというのではなくて、そういう変異を持っておる人は疾病 の罹患のリスクが高くなるという意味合いのものもありますし、それがまた遺伝子では 遺伝子疾患のように伝わっていくという問題もありますので、そういう個人の情報の水 準といいますか、レベルということをも考えていただきたいと思っております。  そして、それプラスやはり公益性といったことをも踏まえた上での個人情報のレベル を考えていただきたいと思いますし、もう一つ、我々自身も個人情報を保護していくシ ステム的なものを出したいと思いますし、法律関係の先生方からも、そういうシステム 的なものを私は提示していただけたらありがたいのではないかと思っております。  それから、事務局の論点整理メモで出していただきました倫理委員会の責任問題であ りますが、これは責任問題ということを言われるというよりも、こういったことに一般 の人々から相談があった場合には、それに対応するというような意味ではないのかなと いうように考えております。責任というと、何か罰せられるような印象がありまして、 疫学者は何も悪いことをするために研究しておるのではなくて、やはり国民の健康の維 持増進のためにということをやっておりますので、若干、責任といったような言葉に抵 抗感をも感じております。  それから、丸山先生の方の資料で先ほども幾つか触れられておりましたが、試料の破 棄というのは単純に破棄しなければならないというのは、非常に公益性の面から損害が 多いと思います。例えば、これは前々回のとき私はちょっと触れたのでございますが、 アメリカで有名なフラミンガムスタディーというのがございますが、それは血清をずっ と保存しておったわけですね。そのときに臨床の場でいわゆる善玉コレステロールと言 われておるHDLコレステロールというのが、どうも心筋梗塞の予防につながるだろう というようなヒントを得たときに、保存されておった血清で心筋梗塞になられた方とな られなかった方について、HDLコレステロールを保存血清を用いて測定されたわけで すね。そして、ものの見事にHDLコレステロールと心筋梗塞の間に予防効果があると いうことがわかったわけです。  また、何かある科学的物質に、先ほどもちょっとダイオキシン類が触れておられまし たけれども、汚染されたことが何らかの病気にかかわりあるといったときに、直ちにそ れを測定することによって危機を脱出するということもあり得るわけです。もしも、そ ういったことがインフォームド・コンセントを取るために1年、2年という歳月を費や すならば、多くの犠牲者を生むこともあり得るわけですね。ですから、また、これもこ の前ちょっとお話ししたんですが、有名なサリドマイド、いわゆる四肢障害とのかかわ りもそうですね。 あのときに、妊娠初期にある薬を服薬した人からそういう四肢障害の子どもができると いうようなヒントを得たときに、カルテを直ちに閲覧して四肢障害を産んだ母親と、そ のときにいわゆる正常児を産んだ母親について服薬状況をチェックした結果、サリドマ イド服用がかかわりがあるということがわかったわけですね。そういったときに、もし もインフォームド・コンセントを取るといったようなことで時間を費やしていきます と、四肢障害の多発といったことが起こってくるわけですね。そういったようなことも ありますので、試料の破棄といったことあるいはもう一つその下にありますように、閲 覧をして適切に更新しなければならないということがありますが、人間の生体情報とい うのは時間的に大きな変化を受けておるわけですね。過去のデータが非常に病気の発生 あるいは予防治療に重要なことが多々あるわけです。簡単に更新されてしまって過去の 情報が失われてしまうと、健康の維持増進、疾病の予防に重要な情報が失われてしまう ということもありますので、そういったことへも私は十分思いを掛けていだたいて、御 検討していただきたいということをお願いしたいと思います。 ○高久委員長  どうもありがとうございました。  ほかにどなたか。資料2の事務局の方でまとめていただいたものの中に、非常に重要 な点が幾つも指摘されていると思います。私は、特に疫学的手法と、研究等の定義をも う少しはっきりする必要があるのではないかと思います。特に、この資料1を見ます と、疫学的手法を用いた研究ということと、国民の公衆衛生の向上に資する研究という ことが並行して書かれていますが、同時に2行目には、公衆衛生の向上に資する研究は 広く医学研究を意味する。そうすると、医学研究はすべて疫学的研究になるのか。必ず しもそうでもないと思いますので、そこら付近をはっきりする必要があるのではないか と思います。 ○丸山委員  その点、このガイドラインが専門委員会の検討対象でもありますので、今日は先生方 の意見を専らお伺いするという場として事務局は設定していただいたようなのですが、 あえて少し現在考えているところを述べたいと思います。  その前に、忘れないうちに今の田中先生がおっしゃいました最後の点、個人情報保護 でよく述べられます破棄の問題ですが、破棄の問題につきましては、我々の研究班でも 我々が研究者として資料を集めるときだってそんなに簡単に破棄しないということで、 個人情報が含まれていてもそんなに破棄しない。ですから、原則はこの案でも破棄とい うことになっておりますけれども、よく検討しなければならない、意見がかなり分かれ ている。破棄する方の必要性も強いですが、破棄するのはやはり研究上つらいという意 見も非常に強い。 ○田中委員  研究がつらいというよりも公益性を損なうという意味で。 ○丸山委員  公益性を達成する点でもつらいということですね。そういうことは非常に強く主張さ れております。ですから、今の田中先生の御意見も十分踏まえて議論していきたいと思 います。  それから、その後の更新につきましては、よく更新ということで古い身体情報が取り 換えられるんだというふうにおっしゃる方がいらっしゃるんですが、医療については積 み重ねというふうに考えるのが普通の理解だというふうに情報の先生もおっしゃいます ので、更新といったからといって1年前の身体情報がなくなって今日の情報に置き換え るということではないというのを御理解いただければと存じます。  それから、戻りまして、まず、最初の指針の適用範囲でありますけれども、あるいは 事務局の方から言っていただいた方がいいかもしれないんですが、この委員会の性格 上、今つくられますガイドラインの適用はミレニアムガイドラインと余り違わない。す なわち国立高度専門医療センター、それから、国立試験研究機関が実施する研究か、厚 生科学研究費補助金の交付を受ける研究に限られる、直接適用を受けるのはその2つの ものということになるということでございます。  それから、疫学的手法を用いる研究でありますけれども、いずれ定義しないといけな いということで、今、前回以降いただきました先生方の御意見を踏まえてたたき台を 徐々に修正しているんですが、その疫学的手法を用いる研究については、人を対象とす る研究で次の手法を用いたものを言うとして、通常疫学研究として挙げられるものを列 挙する方法はどうかというふうに考えております。  どういう手法かといいますと、1つが観察研究で記述研究、分析的研究、分析的研究 としましては、生態学的研究、横断的研究、症例対照研究、コホート研究などと。もう 一つが介入研究で、その中には臨床試験、野外試験、地域研究なとがあるというふう に、疫学的手法としてあるいは疫学的手法を用いる研究として通常挙げられるものを列 挙して、その手法が用いられれば、ここに言う疫学的手法を用いた研究であるというこ とで定義をしようかと思っております。  この中で大きな意味を持ちますのは、前回も寺田先生、高久先生の御指摘がありまし た通常の医学研究、臨床研究が含まれるということなんですが、そして、それも含めよ うというのが、当初この委員会を設置した事務局の御意向だったと思うんですけれど も、その趣旨を疫学を特に専門にしていない医学の研究者にどうわかってもらうかとい うのが少し難しいかと思うんですが、何らかの方法でそういう趣旨であるということを 示す。ですから、研究の内容あるいは種類としては、医学研究のかなりの部分をカバー するんだけれども、実際に直接適用を受けるのは厚生省の管轄医療機関、大規模セン ターと試験研究機関及び厚生科学研究費補助金を受ける研究ということで、研究主体の 点ではかなり限定されるというような位置付けでございます。  ですから、それ以外のものについては、直接このガイドラインの適用を受けませんの で、倫理委員会の承認をすべてについて求める。すべてについて承認を求めるというの は、先ほどの大島先生、櫻井先生の御指摘もあって、ややきついかなと。個人情報保護 は含まれていない、あるいはアノニマスなデータを用いるものについては、届出だけで いいかなという気もするんですが、個人的には届出であっても倫理委員会をかませたい 感じがするんですが、その点も現在、研究班で検討中の状況でございます。  ちょっと最後に余計なことを申しましたけれども、ガイドラインの適用範囲と、それ からもう一つ疫学的手法を用いる研究について、私どもの方で考えていることを少し述 べさせていただきました。 ○寺田委員  それに対しまして、私は勘違いをしておりまして、研究費とか所属によってこれが違 うという、前の基本理念のところの文章が非常にそうしますと間違っていたというふう に解釈してよろしいですね。 ○事務局  ちょっとよろしゅうございますか。今、丸山先生から御発言のあった指針の適用範囲 の関係で、1つクリアにしたいと思います。厚生省が義務付けると申しますか、条件付 けると申しますか、そういう言わば強制的な規範としてできるということでございます と、国立の厚生省の傘下にある研究機関あるいはそこでやる臨床研究ということになり ます。したがいまして、ナショナルセンターでありますとか、国立病院でありますとか 厚生省傘下の国立研究機関というところが一つあるわけでございます。  もう一つありますのは、先ほど御紹介のあった研究費補助金の交付の条件とするやり 方でございまして、この2つについては強制規範として、例えば、この指針を適用条件 とするということができるわけでございます。勿論、厚生省それ以外の一般的なものに ついても参考と申しますか、言わば、強制規範でないガイドラインという形で示すとい うのは、当然手法としてあるわけでございまして、例えば遺伝子解析につきましては、 強制規範としてミレニアム研究、ミレニアムプロジェクトのものについては、まず最初 に、これが条件であるという形の指針をつくりましたが、その際、厚生科学審議会の議 論の中でも、ミレニアムプロジェクト以外の遺伝子解析研究についても指針を示すべき であるという御意見を賜って、現在その検討に入っておるわけでございます。そういう 点から申し上げますと、交付の条件あるいは義務規定としてできるものと、一般的なガ イドラインという2つの考え方があるのだろうというふうに考えております。 ○寺田委員  これは、私オールジャパンだと思っていて、それは私の間違いだということで、それ は結構です。  そうしますと、これは6月2日付の個人情報保護基本法制に関する大綱案に関して、 疫学研究あるいは地域がん登録でも結構ですけれども、それをいかにスムーズにやっ て、しかも、国民一人一人に迷惑を掛けないようにしながらやるという、それに対向す る案をつくっているわけですね。そうすると、ほかの省庁あるいはほかの医学研究に関 しては、そちら側で勝手にやってくれと、あなたたち困りますよと、極端な言い方をす るとそういうことになるわけですか。 ○高久委員長  事務局から説明していただいて結構なのですが、これがつくられたら他の省庁も、特 に、文部省関係などもつくらざるを得ないだろうと思います。 そうすると、研究者の間でダブルスタンダードは困る、つくるならやはりすべての研究 者に共通なものをつくってくれという声が必ず出てくると思いますから、そのときには もう一回考え直すというか、これをそのままするのか、もう少し幅の広いというか、も っと幅の広い層の研究者が使い得るガイドラインにするのかということが議論になると 思います。差し当たっては、今、事務局から言われたように、厚生省の管轄と厚生科学 研究の対象に絞った方が話が進めやすいですね。 ○櫻井委員  そこが非常にわからないところで、そうすると、随分時間を掛けて、例えばがん登録 の話が出ましたけれども、がん登録というのは今、都道府県でやっているんですね。今 回の対象ではないんですね。それでは、対象ではないものについて、すごい時間を掛け てやってきたということになるんですか。 ○事務局  言葉が足りずに、また、不明確であったかと反省しておるんでございますが、私が申 し上げたかったのは、強制的な規範としてこの指針が適用されるのは厚生省の傘下及び 補助金の対象であると。それ以外のところについては、勿論この審議会での御議論に委 ねるところでございますが、一般的な指針として、いわゆるガイドラインとしてお示し できるのであれば、それが一番ありがたい。すなわち1つのものをつくって、それが厚 生省の傘下あるいは補助金の交付に当たっては、それが強制規範として適用されます し、それ以外のところについては、一般的な指針として適用されるということを考えて おるわけでございます。 ○田中委員  丸山先生あるいは堀部先生にもうちょっとお伺いしたいんですが、このガイドライン と現在検討されております個人情報基本法との整合性といいますか、例えば、ここでガ イドラインを決めていただいているのは基本法のヒアリング等で、私たちはいわゆる適 用除外というような、例外規定というような形でお願いしている内容が随分含まれてお るわけですね。そういったところでどうなんでしょうか、個人情報保護基本法とこちら との整合性的なもの。こちらさえ守っておれば、個人情報基本法の方はうまくクリアで きるのか、そういった関わりを御説明願えるとありがたいのですが。 ○堀部委員  7月7日から名称が変わりまして、情報通信技術IT戦略本部というふうに従来の高 度情報通信社会推進本部の名称が変わったというよりも、正確に言うと高度情報通信社 会推進本部を7月7日付で廃止して、新たに情報通信技術IT戦略本部というのが設け られまして、従来の部会とか検討会とかその種のものは新たな方に引き継がれていま す。私が座長を務めています高度情報通信個人情報検討部会と、それと併置されていま す個人情報保護法制化専門委員会、これはそのまま活動を続けているということになり ます。  今、田中先生の御質問に関連していいますと、昨年の11月19日に出しました「我が国 における個人情報保護システムの在り方について中間報告」では、基本法というものを 提案しております。基本法というのは、全体をカバーするものですので、その下に公的 部門、特に、国の行政機関が保有している個人情報も入りますし、それから、個別の分 野で個別法と言っておりますが、具体的に挙げましたのは信用情報、医療情報、電機通 信分野等と3つ明示的に挙げております。それに並ぶ形で、自主規制という言い方をし ていますが自主規制。地方公共団体は地方公共団体で、またその下に位置付けられます けれども、ともかく国で言えば今のような形ですべてが傘の下に入る、あるいはインフ ラとして考えていただいてもいいんですけれども、個人情報保護についての基本法があ って、その上にさまざまなそれを踏まえた保護措置が取られるということを期待してい るわけですね。その場合に、これは、むしろ厚生省の方としてこの専門委員会で検討す るのを、この6月2日に出ました大綱案の「政府の措置及び施策」の3の「個人情報の 保護の推進に関する方針の策定」、4の「支援、周知等の施策の実施」、ここに位置付 けるのかどうかというのがある と思うんですね。多分ここに位置付けて専門家の意見を伺ってということだろうと思う んですが、それとともに、5の「事業者が遵守すべき事項」として、国の行政機関の下 に入るものは別として、その他独立行政法人など、国立病院は独立行政法人なるのも結 構あるんですか。 ○事務局  平成16年度に移行する予定でございます。 ○堀部委員  そうですか。そうすると、その独立行政法人等についてどうするのかという問題も出 てきます。  定義とすると、国・地方公共団体及びこれらに準ずる一定のもの以外はすべて事業者 というふうになりますので、そうしますと、恐らく地域がん登録センターと言っている のは独自の存在ですよね。そうすると、これは事業者に入ることになると思うんです ね。そうすると、先ほどちょっと言い掛けた「事業者が遵守すべき事項」として現在11 項目挙げていますので、それにのっとって自主的に取り組んでいただくと。しかし、そ れは全部基本法という傘の下にあるということになるわけです。  そこで、先週の金曜日だったでしょうか田中先生、大島先生が来られて意見を述べら れたのは、それを適用除外なり何なりしていくとか、あるいはこちらに公衆衛生の向上 というものを入れて、特別の法律をつくるということも考えられるのではないかという 御意見であったわけですけれども、そこの適用範囲をどうするのかというのは、実は規 律ごとに情報の正確等に即して検討する。この場合、表現の自由、学問の自由等に十分 留意するというふうに現在のところなっております。ここで、その他というふうに位置 付けられているものについては結論が出ておりませんので、今言いましたようなことで 引き続き検討することになりまして、その場合に、憲法25条で言う公衆衛生の向上とい うようなものをここに入れるのかどうかという議論は今後出てくると思いますが、少な くとも学問の自由、研究の自由、そういうものの一環であるというふうにとらえること ができるかと、私は個人的には思っています。そうであれば、そこについて、この遵守 すべき事項の全部をそれについて外すか、個別に一つ一つについて利用目的というのを 明確にするということで部分的に適用していくか、部分的に適応除外にするか、こうい う議論になっていきます。ですから、全体としては、繰り返しになりますが基本あるい は基本法にとどまるのか、もう少し一般法的な罰則などを含めたものになるかどうか は、もう少し9月末まで検討してみないと明確な方向は出てこないという状況にありま す。  いずれにしましても、基本法という非常にソフトなフレキシブルなものの傘の下には 入る。だから、そこから全く抜け出すというふうに議論するのか、やはりその傘の下で 厚生省としては何らかの方針なり施策を講じていくという中で、ここではその場合には どういうふうにするべきなのか。特に、事業者として遵守すべきもので、これは例え ば、櫻井先生が盛んに前から言っておられる開示とか訂正の問題などになると、それを 権利とか義務という形で位置付けるべきである、医師と患者の場合には、信頼関係でい くので日本医師会としては情報提供の指針をちゃんと出して今年の1月1日から実施し ている、こういうことであると。だから、そういう部分は、医師と患者の関係あるいは 疫学研究については適用除外とすべきであるというふうになっていくかどうか、そうい う議論になっていくかと思います。  ですから、基本法は一応、念頭に置いていただいてということで議論を進めていただ くとよろしいのではないかと思います。 ○高久委員長  先ほどの櫻井先生からなぜがん登録という対象ではないものについて時間をつぶして いるのかという話があったのですが、恐らくこれができると、先ほど事務局が言われた ように、国研とか厚生科学研究費をもらったところにはかなり強く言えると。 しかし、恐らくほかの省庁、特に、文部省関係のものも参考にせざるを得ないだろうと 思います。  それから、最終的には一般の方の意見を聞くわけですね。その中に当然、文部省関係 の研究者の意見も入ってきますので、それらの研究者の意見も聞いて、また、修正をす るというプロセスは当然経てきますので、そういたしますと、強制力は持たないとして も、この指針をほかの文部省関係あるいは科技庁関係その他いろいろなところでの研究 者も応用せざるを得なくなるのではないかと考えています。その中には、もしも地域が ん登録が含まれるならば、がん登録に関係する人もそのガイドラインを利用せざるを得 ないだろう。がん登録を外せば、また話は別になってくると思いますが。そういうふう に考えています。 ○堀部委員  文部省でも学術審議会の下に、そういう学術研究と個人情報基本法制との関係をどう するのかということで検討が始まりまして、そのワーキンググループの第1回が先週開 かれております。そこでも、こういう個人情報を取り扱う研究分野についてどうするの かということで議論をしていまして、こちらに開原先生が入っています。私も専門委員 に入っていますが、そこで、この前も医学研究、疫学研究の場合には個人情報を扱うの で、そういう実態もそこでもう少し明かにしてはどうかというような議論をしておりま す。 厚生省に恐らく連絡が来ているかと思いますが。  文部省の方の学術審議会の下での検討になりますと、今度は社会科学の分野でも、例 えば社会学の人などは、やはり個人を対象にしていろいろな調査をしているわけです ね。また、例えば子どもを被験者として、子どもからいろいろ情報を取るというのもあ りますので、そういうところをどうするのかというようなことで議論をしています。そ の分は、今日の専門委員会とは直接関係ありませんが、そういうことで共通の部分とい うのはいろいろあると思うんですね。ですから、そこは高久委員長言われるように、こ ちらで特にこういう疫学研究について一定の指針をまとめれば、それはほかでも参考に して、それに準じて対応していくということになると思いますので、やはりここでやっ ていることの意味というのは極めて大きいのではないかというふうに思います。 ○高久委員長  当然、学術審議会の方で検討されているなら、医学に関しては学術審議会の検討の内 容あるいは結果とこの委員会の結果がうまく合致するように事務局の方で御尽力いただ きたいと思います。そうしないと、研究者は困ると思いますので、よろしくお願いしま す。  ほかにどなたか御意見ございませんか。 ○大島委員  今までの議論を聞いていまして、まだ釈然としないところがあるんですけれども、要 するに、堀部先生がおっしゃったように、個人情報保護基本法がもうすぐできるんだ と。これに対応して医学研究はどうするんだというのが、やはりテーマであったはずだ と私は思うんですね。今度のこの委員会が例えば「疫学的手法を用いた研究等」という ふうになっているので、やや混乱を招いている節がありまして、これは「個人情報を取 り扱う医学研究」というふうにすればすっきりするし、先ほど倫理審査委員会で個人情 報を扱わないアイデンティファイアーのないものは対象にならないというのもすっきり するわけでございます。  そういうことで、今ここで検討しているガイドラインが、単に厚生省の強制的な措置 を受けるところだけでなくて、医学研究全般の医療分野と中間報告の中で例示されてい るそこでの個別法をつくっていくときの基にもなるはずだと私は理解していまして、し たがって、がん登録事業も当然検討の範囲に含まれてしかるべきではないかというふう に思ってきたんですが、そういうことで言うと、繰り返しになりますけれども、「疫学 的手法」と言うのでなぜかわかりにくくなってしまった。「個人情報を取り使う研究 等」と言えばすっきりして、医学研究全般を含まれるというようなことにもなるわけで はないかというふうに思うのですが、それはいかがですか。 ○高久委員長  ただ、先生そうすると、症例報告も個人情報を取り扱う医学研究になりますから、ち ょっと難しいのではないですか。 ○大島委員  しかし、それはどこかで検討しなければならないのではないですか。今、寺田先生が おっしゃったように、そういうものはどこかで検討しているのであれば、そこと整合さ せればいいのですけれども、全然検討しないで個人情報保護基本法ができたときには、 では、医学研究は一体どうなるのというのが非常に心配があります。 ○櫻井委員  ちょっといいですか。話がちょっと飛躍していると思うので、堀部先生がおっしゃる ことはわかりますけれども、まだ基本法ができたわけではないし、基本法がこうなって 個別法をつくれという、その個別法をつくること自体に私ども賛成していないんですけ れども、決まればそのときはやるしかないんでしょうが、決まったわけではないのに、 医療に関しては個別法をつくるということが議論の前提になっているとしたら、全くお かしな話だと思うんですね。そういう意味で、先ほどメモに書いたように、基本法がま だはっきりしていないのに、先走るのはおかしいではないかというふうに申し上げたの はそういう意味なのでして、堀部先生が中心になっていらっしゃるというので、大体そ ういう方向になってしまうのかもしれませんけれども、そのこと自体はまだ確定した問 題ではなくて、我々とすれば基本法そのものにきちんとある書き込むべきだと考えてい ます。さっき先生がおっしゃったように全くの基本でいくのか、そこへもう少し書き込 みがあって、医療の分野については非常にわかりやすく言ってしまえば、適用除外だと かそんなことは基本法に書けるとは思えないけれども、露骨に言えばそういうことが入 ってくれば、個別法で議論する必要はなくなってしまうわけですね。そこのところがち ょっとおかしいと思うんです。 ○堀部委員  ちょっとよろしいですか。個別法で医療情報というのを具体的に挙げましたのは沿革 がありまして、これは1997年9月から1998年の6月まで開かれました高度情報通信社会 推進本部の電子商取引等検討部会の項目の中のプライバシー保護の中に、ちょっと正確 に覚えていませんが、信用情報、医療情報等保護の必要性の高い分野については公的関 与というか、後できちんと入れますけれども、そういうものが必要だけれども、あとは 全体的に自主的な対応、自主規制でいくべきだというのがあったわけですね。そこの段 階で、これは内閣でやっていますので、厚生省で医療分野とか医療というのをそこに入 れることについては、恐らく何らかの意思表示をしているんだろうと思うんです。  その医療分野は、今度それを踏まえて検討した、先ほど言いました個人情報検討部 会、これは昨年の7月から今も検討部会としては存続していまして、11月19日に中間報 告をまとめたところですけれども、それをそのまま引き継いでいるわけです。その場合 の医療情報というのが何かというのは、前にも2回目のときだったか、私がここでどう もその中身がはっきりしないと言ったところ、たしか宮本補佐がこういうことだという ことを少し言われたことがあるんですが、恐らく厚生省として個別法で言う医療情報と いうのは何なのかというのはまだ明確にされていないと思うんですよ。ですから、地域 がん登録法という仮称の法律をつくるというのが医療情報の一部ではあるかと思います けれども、医療情報という形で一つ個別法をつくるのか、また、それぞれの性格に応じ て法律をつくっていくのかというのは、むしろ、これからの議論だと思うんです。です から、そういう経緯で入っていまして、決して独断で入れたわけではありません。 ○高久委員長  まだいろいろ御議論はあると思いますけれども、時間がまいりましたので終わりま す。本日は十分には議論し尽くされなかったと思います。また、丸山委員には御苦労様 ですが、引き続き御検討をよろしくお願いしたいと思います。  事務局の方から連絡事項をよろしくお願いいたします。 ○事務局  次回の関係でございますけれども、もう7月の終わりでございますので、次回は9月 ということにさせていただきまして、机の上に配付させていただいております日程調整 表に御都合のつく時間を御記入の上御提出いただいて、至急、日程調整をやりたいと考 えておりますので、よろしく御協力をお願いいたします。 ○高久委員長  それでは、本日はどうもありがとうございました。 (了) 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 野口(内線3806) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171