00/07/13 第5回健やか親子21検討会議事録        第 5 回 健 や か 親 子 2 1 検 討 会              厚生省児童家庭局母子保健課             第5回健やか親子21検討会議事次第                          平成12年7月13日(木)                            14時30分〜17時37分                            霞が関東京會舘 1 開 会 2 議  事 (1)「妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援」について (2)「子供のからだの健やかな発達を図るための環境整備」について (3)その他    (資料)     1 妊娠・出産・不妊関係議論たたき台     2 子供のからだ関係議論たたき台    (参考資料)      ○ 健やか親子21検討会資料集5      ○ 平成11年度厚生科学研究(子ども家庭総合研究事業)報告書      ○ のびのび子育て 〜子どもを事故から守りましょう〜      ○ 母子健康手帳      ○ SIDSリーフレット ○大平課長補佐  定刻となりましたので、ただいまから第5回「健やか親子21」検討会を開催します。 本日は、大変お忙しい中お集まりをいただきましてありがとうございます。  当検討会も今日が5回目でございまして、ちょうど中間点にかかったところでござい ます。議論も大分進んでまいりました。本日もまたよろしくお願いします。  ここで委員の所属の変更について御紹介をさせていただきます。7月1日付で柳澤委 員が国立大蔵病院院長に就任されました。今後ともよろしくお願いいたします。  それでは、平山座長に以後の議事の進行をよろしくお願いいたします。 ○平山座長  関東地方は梅雨明けが来週になりそうだという噂でございまして、真夏並みの暑さの 中を、またお忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。  室内はかなり冷房がきいておりますので、体調をお崩しになりませんようによろしく お願いをいたします。  それでは、これから始めさせていただきます。前回、思春期関係につきましては、検 討をいろいろしていただきまして、なお、若干の課題を残してはおりますけれども、ほ ぼまとまってきたというところかと存じますおります。  妊娠・出産・不妊関係につきましては、事務局の資料の説明と各委員の先生方の追加 御意見のところで前回は時間切れになってしまいました。今日は、前回の続きに加えま して、後半には、「子供の体の健やかな発達を図るための環境整備」という4番目の テーマに入らせていただきたいというように存じますので、よろしくお願いを申し上げ ます。  それでは、まず事務局から今日お配りしてあります資料の確認をお願いいたします。 ○椎葉課長補佐  それでは資料の説明をいたします。議事次第の中に資料の番号がついておりますが、 これを参照しながら御確認をいただければと思います。  まず、たたき台です。資料1、「健やか親子21検討会議論のたたき台(案)妊娠・出 産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援」と資料2、「子供のからだの健やか な発達を図るための環境整備」でございます。 また、参考資料といたしまして、「健やか親子21検討会資料集5」です。女の子がは ねているものです。それから「平成11年度厚生科学研究 (子ども家庭総合研究事業) 報 告書」、中村肇先生のお名前が載っている青色の報告書と多田委員の資料でございま す。 ちょっと前後いたしましたが、神谷委員の方から御提出の資料、今回この資料集の5 にまとめ切れなかったものが別刷りで配付しております。そして朱色のファイルにまと められました「のびのび子育て」、「 Kidsafe」、これは澤委員から御提出いただいた 豊島区の池袋保健所の資料でございます。また、私どもの方で用意しました「SID S」のリーフレットと、母子衛生研究会の「母子健康手帳」となっております。  そして、机上配付ですが、思春期保健のたたき台は、座長あずかりということになっ ておりましたけれども、若干の修正を加え、今日の日付を載せたものについて御用意さ せていただいております。思春期保健につきましては、もし何らかの御意見等がござい ましたら、事務局の方にいつでも御意見を提出していただければと思います。  そして別刷りですが、戸田委員から御提出いただいた「妊娠・出産に関する安全性と 快適さの確保と不妊への支援 たたき台に対する意見」でございます。  最後ですが、健やか親子の出欠表でございまして、これは9月以降の7回から9回ま での日程の出欠の有無につきまして確認ということで、もし今日わかりましたら私の方 に御提出いただければと思います。後日、FAX等で送っていただければと思います。  以上でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。もし不足がございましたら、後ほど事務局へお申し出いた だきたいと存じます。  それでは、議題に入らせていただきます。議題1の「妊娠・出産に関する安全性と快 適さの確保と不妊への支援」でございますが、この前、専門の先生方からの御意見を一 通りいただきましたけれども、事務局からのたたき台をつくっていただいております。 これの御説明をお願いいたします。 ○椎葉課長補佐  それでは資料1、1ページをお開きいただければと思います。  まず第1、問題認識です。妊娠出産に関しまして、女性に身体的かつ精神的負担が大 きいという御指摘です。そして、最近では高齢出産や働く女性の増加や多胎児、低出生 体重児などのハイリスクとなる要因が増加しているという記載です。そして、国際的に も女性の性と生殖に関する健康・権利(リプロダクティブヘルス/ライツ)」の観念へ の対応や、国内的には少子化対策といたしまして、「安全で安心して出産できる環境の 実現」についての関心が強まってきております。これらに応えるべく、本分野を21世紀 の主要な取り組み課題として位置付ける必要があるという意思表示でございます。 これまでの周産期医療や母子保健を中心とする活動の結果、我が国の母子保健水準に 関しましては、世界のトップクラスとなっておりますけれども、妊産婦死亡率につきま しては、さらに改善する余地が残されております。この死亡率がやや高い理由につきま しては、産科医療の夜間や休日における救急システム等の問題が指摘されています。今 後も引き続きハイリスクケースを中心に、妊娠・出産における母体・胎児の安全を最大 限に追求していく必要があるということでございます。 産科医療につきましては、妊娠期間や分娩時、産褥期のケアなどに伴います検査や、 この期間に使用する薬剤・処置等に関しまして、インフォームド・コンセントの充実 や、また情報提供の要望がかなり強くなっておりまして、今後はこれらの要望に適切に 対応するということが重要ではないかということでございます。 そして、この妊娠・出産の安全性の追求とともに、この妊娠出産に関わるQOLの向 上を目指すことが求められているということで、特に妊娠期間中の種々の苦痛や不快感 を解消・軽減するために、妊婦に対して理解のある家庭環境や職場環境の実現、また受 動喫煙の防止、公共の乗物などにおきます優先的な席の確保等、社会のシステム作りや 国民各層や産業界への啓発がより一層求められているという状況です。そして少子化に 伴いまして、最近では一生に一度か二度の出産に関して、病院で提供される、ともする と画一的な安全第一の分娩よりも、自然かつ家族が希望する形態で分娩をしたいと要望 が強くなっておりまして、安全性を確保しつつ、これに応えていくということが求めら れていると言えるわけです。また、入院中の母児同室や、可能な限り母乳で育てたいと いう希望についてもかなえられるようにしていくことが必要ではないかということで す。  そして妊娠から出産、産褥期におきましては、身体に変化に伴い、精神的にも不安定 になることが多いということと、特に産後うつ病などの精神疾患の発生の問題もあると いうことから、身体面への取り組みと併せ、妊産婦特有の心の問題への対応も必要だと いうことです。  次のページ、(2) 不妊への支援です。現在、生殖補助医療をうけている人は約28万 5,000 人にものぼりまして、約1万8,000 人が体外受精を受けている状況にあります。 この不妊治療を求める夫婦に対しまして、医学の進歩の成果を享受できるように、生殖 医療技術を含む適正な技術が適用される体制が整備される必要があるという認識です。  特に、我が国におきましては、第三者の配偶子等を使用した体外受精や、代理母等の 使用の是非、親子関係の特定の問題等につきまして、法的な体制が必ずしも十分整って いるとは言えず、今後整備が必要だという指摘もなされております。また、これらの技 術の存在がゆえに、かえって混乱や不安・不幸を惹起しないためにも、不妊相談を初め とした情報提供体制の整備や、カウンセリングを含む利用者の立場に立った治療方法の 標準化といったものが不可欠であるという認識です。 以上のような問題認識に関しまして、取り組みの方向性が2番目でございます。 まず、基本的な方向性ですけれども、これらの取り組みを進めるに当たりましては、 医療・保健関係者が極めて大きな役割を担うということになるわけでございます。妊 娠・出産に関する安全性と快適さのほどよい均衡のもと、出産に関する専門職の意識の 変革や産科医療における病診の連携、そして助産婦と産科医との連携、また分娩・入院 環境の改善、地域保健サービスの内容の転換等が求められるというわけです。  特に、妊娠、出産、不妊に関しましては、その治療等に伴う処理や検査等に関するイ ンフォームド・コンセントの充実、母子の希望する支援環境と退院後のフォローアッ プ、必要な情報提供が求められているわけでして、今後はこれらの動きに積極的に応え ていく必要があるのではないかということでございます。  そして妊娠、出産、産褥期については、妊産婦の不安などの心の問題にも対応した、 きめ細かな対応を推進していく必要があるという3つの基本的な方向を示しておりま す。 具体的な取り組みですが、まずは医療機関です。助産所におきまして、助産婦立ち会 いで出産して場合に関しましては、概ね高い満足感が得られているという報告がありま して、通常分娩で自然な形態の分娩を希望する妊婦に対しましては、今後広く勧められ るべきであるという認識です。安全性の確保の観点から申しますと、異常分娩か否かの 早期の判断と、産科医療機関への速やかな搬送が必要で、そのための産科医療機関との 連携システムの構築が不可欠であるということです。  産科診療所や病院におきましては、主として分娩に対する安全性の確保を担っており ますが、安全性については、産科医院からより高次の産科医療機関へ搬送する場合の判 断、また休日夜間の医療従事者の不足等の課題についての対応が求められるわけで、今 後はリスクに応じた分娩形態の採用や、助産婦を活用したチーム医療の採用、高次の病 院のオープン化等の取り組みを進める必要があるということでございます。  そして緊急を要する母体・胎児に関しては、都道府県ごとに母体・胎児の受け入れや 搬送が可能な3次医療を担当する総合周産期母子医療センターの整備、そして、これを 中心として、地域ごとに2次医療を担う地域周産期母子医療センターや、1次医療を担 う一般産科医院、診療所、助産所を含めました母体・患児の搬送体制の確保、周産医療 に関する情報提供、医療従事者の研修等の周産期医療ネットワークの整備が必要である という認識でございます。 快適さの確保の観点から申しますと、これまで習慣的に行われていた会陰切開や剃 毛、浣腸、導尿などの産科ルチーン処置等につきまして、リスクに応じた検討やEBM に基づく見直しを行う必要もあるということです。  妊婦の心の問題に対応した健診体制や出産形態の採用、また専門職によるカウンセリ ングの強化等の取り組みが必要である。  そして今後は、医療機関の出産準備教育や個々のニーズに対応する継続的なケアとカ ウンセリングが重要でして、例えば、母乳のみで保育できるような出産前からの教育や 支援、また子供と愛着形成できるような形成の整備も求められる。また、家族の立ち会 い分娩、母児同室、居住型の分娩施設を利用したいという希望への対応も必要であると いうことでございます。  そして不妊治療に関するものですが、ガイドラインを作成し、治療の標準化を図る必 要がある。また、併せまして、治療を受けることへの不安や、子供ができないことによ る家族や社会の精神的圧迫などにより十分な心のケアが必要で、これらの不妊治療に伴 う処置や検査、今後の状況について相談体制の整備が必要であるということでございま す。  以上が医療機関の対応ですが、 (2)として、地域保健や産業保健における取り組みの 具体的方法です。まず、1番目ですが、都道府県レベルにおきましては、妊産婦死亡率 等の改善を図るために、1次から3次医療を担当する産科医療機関の連携システムの構 築が必要であるということです。 4ページ、2次医療圏におきましては、助産所や医療機関、保健所、市町村の連携推 進を図るとともに、保健所や市町村が中心となり、積極的な母子保健情報の提供や母親 教育の実施、育児サークルの育成等を積極的に行う必要があるということです。  そして市町村においては、妊産婦の不安の解消のために、産褥期ヘルパー等ホームヘ ルプサービスの提供などの取り組みも必要である。  また、働く女性の妊娠・出産が安全で、快適なものとなるような職場環境の実現を図 る必要があるということでございます。 以上が市町村レベル、都道府県レベル、産業保健のレベルの取り組みです。次に関係 者の役割です。国は関係者による取り組みが国民運動として適切に展開されように、以 下の役割に沿って取り組みを推進する必要があり、地方公共団体や専門団体、国民、民 間団体においても自主的積極的な運動が展開されることが期待されるということです。 順番は、まず国民、地方自治体、そして国、専門団体というふうに記載しております。 まず国民でございますけれども、周産期の保健医療に関する認識を深める活動に参画 し、この周産期の問題を、まさに地域の問題として受け止めまして、関係機関と連携を 持ち、その解決に向けて努力をする必要がある。  特に妊婦に対して優しい社会の実現を図るために、国民の理解が不可欠です。また、 働きながら出産でき、再就職が可能な社会の構築や、父親が育児に気軽に参加できる企 業風土の育成といったものも必要であります。また、不妊治療を受けている人への配慮 も求められるわけでございまして、こういった取り組みがなされることが必要です。 (2) 地方公共団体の役割です。住民が周産期の保健医療に関しまして、地域の課題と して解決に取り組めるように、この地域特性を重視しながら、積極的な支援が求められ るということで、以下、関係部局が連携して積極的に取り組む必要があるということで 例示でございますが、特に地域における周産期保健医療の目標値の設定、評価、計画の フォローアップや、保健所や市町村保健センター、医療機関との連携の強化、特に医師 や助産婦、保健婦との定期的なカンファレンスなどによる情報交換を推進していくとい うことが重要ではないか。妊婦に優しい環境づくりの推進を、これは自治体が中心とな るわけですけれども、職場や公共施設との取り組みや、妊婦ということがわかるような バッチに利用といったものも考えられる。また、関係者への研修や、地域におきます周 産期保健や育児支援に関係する団体等の育成、先進的な自治体などから情報提供に基づ きます周産期保健医療を推進していくというような取り組みなどが考えられるわけでご ざいます。総合周産期母子医療センターの整備など、都道府県における整備、また産褥 期ヘルパーの活用や不妊相談センターの整備、特に不妊治療情報の積極的な提供や、電 話等による相談といった役割が考えられます。 続きまして3番目、国の役割ですが、この周産期の問題について、地域が課題として 共同に解決に取り組めるように、地方公共団体や関係機関が積極的に支援できるよう、 必要な情報の収集、調査研究等により科学的知見を集めること、また、健康教育や学習 教材の開発に努める、国としての目標や方向を提示し、各種制度の整備を行うなど関係 団体の積極的な参加により、国民運動として展開されるよう推進することが求められと いうことで、以下例示でございます。 国レベルの目標値の設定、評価、そして国レベルの推進協議会による計画のフォロー アップです。また、地方公共団体等が地域で使用しやすいような包括的な予算の策定。 また快適な妊娠・出産を意識した予算措置という取り組み。また関係者への研修、そし て職場における働く女性の母性保護活動の推進。労働省で推進しております母性健康管 理指導事項連絡カードの普及を図るということで、これにつきましては、厚生省も労働 省と一緒になるますので、今後積極的な推進が必要だという認識です。また、生殖補助 医療に関する研究の推進や、国立成育医療センターにおける生殖補助医療体制の整備と いったものが考えられるわけです。  関係団体の役割ですが、専門団体は、その専門性を活用して、周産期の健康問題に関 する相談や治療、調査研究、啓発普及、また人材の育成など積極的に関わる必要があ る。そして、住民に対する積極的な支援を行うとともに、国や地方公共団体の施策に協 力をしていただくことが求められる。  特に、2つまとめていますが、1つは産婦人科関係の専門団体でございます。医師の 研修や施設のクオリティ・コントロール、またEBMに基づく産科医療の検討、また周 産期医療体制整備への御協力、また生殖補助医療体制整備への御協力、不妊治療のガイ ドラインの作成、不妊相談センターへの御協力といったようなものが考えられ得る。  そして、助産婦の専門団体ですけれども、助産婦への研修や、それから嘱託医療機関 との連携による母体搬送システムの確立をしていただくこと、また、助産婦活動のため のガイドラインの作成等といったものが考えられるわけです。  そして5番目、民間団体、特にNPOですけれども、国や地方公共団体、専門団体、 国民の間のコミュニケーションを円滑にするなど、公益的な視点から組織的に活動を行 うことによりまして、大きな役割を果たすであろう。その自主的積極的な活動が期待さ れるということで、妊娠・出産、産褥に関する総合的な支援や育児に関する支援、また 母乳保育推進活動の取り組み、あと不妊相談やカウンセリングといった取り組みという ことで整理をさせていただいております。  目標値につきましては、別途検討したい思います。以上がたたき台でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。  少し詳しく御説明をいただきましたが、この妊娠・出産、そして不妊に関係した部分 のたたき台ということでたたいていただきたいと存じます。1時間ぐらい時間をいただ いて御自由にディスカッションをお願いしたいと思うんです。  はい、どうぞ戸田委員さん。 ○戸田委員  この報告書のたたき台なんですけれども、安全性と快適さというのが、いつも対局に 置かれているような書き方がされているということにずっと違和感を覚えてまいりまし た。女性たちは決して安全性を犠牲にしてまで、快適な、豪華な、きれいな、まるで王 様のように扱われるようなケアを必要としているのではなく、これから子育ての出発点 として、親子の愛着形成をしっかりして、この親子は大丈夫という確信を持って医療側 が社会に送り出すという社会的責任を全うできるような、本当に必要最小限といいます か、必要なケアを行い、不必要で女性の心を傷つけるようなケアをして欲しくない、そ ういうことだと思うんです。  さらにつけ加えますと、私、個人的な体験ですけれども、16年前イギリスでお産をい たしました。そのときに剃毛、浣腸などは全くありませんでしたし、周囲の女性たちに 聞いても、一体それは何だという、20年前のヨーロッパでは葬り去られた不必要な処置 ということが研究の結果わかっているわけです。それがこの20年近くなぜ日本ではまだ 依然として行われているのか。また、厚生省で行わせていただいた昨年度の科研の研究 の結果なんですけれども、見ますと大学病院、高次医療施設になればなるほど、実はそ ういった不必要とされている介入が非常に多くなってくる。浣腸などは、例えば、大学 病院では46.1%、助産院では5.3 %、剃毛は大学病院が70.8%、助産院では5.3 %、点 滴、会陰切開等60%以上大学病院で行われているものが、助産院では2.4 %にとどまる わけなんです。これは前回の資料に出させていただいておりまして、今回皆様のお手元 にある青いものとは違うんですけれども、そういった不必要なケア、そして女性たちに 聞きますと、お産のときの浣腸などは拷問に等しい、非常に苦しい、二度あんな思いは したくないというふうに語ります。これは720 名のアンケート調査をいたしましたら ば、浣腸を行った方々のうち、6割がそういった考え方をしているんです。こういった 医療の体質といいますか、全く産む側の声がどこにも反映されない、産む側が言いたい ことも言えないような産科医療というものが問題点なのではないかというふうに考えま す。 それから私の手元にある新聞記事は、先月18日同じ医師が何度もミスを行うという横 浜市青葉区の産科医の記事なんですけれども、実はこの被害に遭われた方がグループを 結成して、こうやってマスコミに訴えていきました。この女性に私は個人的に会ってお 話を伺っております。そのときのお話を聞きますと、医療にミスがあるということを非 難しているわけではない。だけれども、そのミスがあったときに、何が起こったのかの 説明はなく、さらに謝罪もなく、同じ医師が、新聞用語なのかどうかわかりませんが、 ここに「リピーター」という書き方がされているんですけれども、何度も同じミスを行 っている。それはリハビリ施設の方に行って、この女性が初めて気がついたことなんで す。あなたもあそこの病院だったのかと。何でこういったことが起こるのかということ が非常に疑問であり、ここを何とかしなければ、今後お母さんが赤ちゃんを子育てして いく出発点としてのお産というものが改善されていく見通しは立たないだろうというふ うに考えます。 ○平山座長  大学病院と助産院での何かのパーセントはリスクの具合いやら何やらあるので、一概 に比べられないのだろうと思いますけれども、今のお話に直接何かございましたらお願 いいたします。 ○矢内原委員  前回もそうだったんですが、大病院、大学病院を含めたドクター側が非常に責められ ているような気がして、ちょっと一つ、二つ反論をさせていただきます。反論という か、こういうことを含めたらどうでしょうかということであります。 1つは、会陰切開とか、浣腸とか、導尿とか、そういうことは患者さんの要望という ものが受け入れられないということに起因しているんだろうと思います。言えない環境 は一体どこにあるのか。患者さんとドクターとの話し合いの中に、いわゆるバースプラ ンというものが患者の方から先生方に言えないのか、また病院側に言えないのかという ことに対する建設的な御意見がなくて一方的に責められているような感じがします。し たがいまして、もしそういう必要性を、これは誰でも感じていることだと思いますが、 この文書の中にぜひ入るような、どういうふうにしたらそれが変えられるかというよう な建設的な意見がいただければと思いました。 それからもう一つ、いわゆる産む側の中に、積極的にそれに参加するという意識を持 たせる、これも患者さんに対する一つの要求で、これは与えるものではなくて、外国の 例でも、イギリスの話が出ましたが、アメリカでも同じように、民主主義と同じにかち 取っていく一つの過程だと思うんです。したがって、新しい、よりよいというものをこ の中にうたいたいのならば、もう少し具体的な対策というものの建設的な御意見がいた だければ、また盛り込めればというふうに思いました。 ○平山座長  では、櫃本先生。 ○櫃本委員  まず、この健やか親子そのものが、基本的にヘルスプロモーションということをバッ クに置いている以上、今の戸田さんの発言というのは最大限重視すべきだというふうに 思います。妊婦さんの立場をということです。それをどういうふうに担保していくかと いうことで、私ども地域保健による立場からは、よくどこの産婦人科で産むといいです かという相談を受けて、個人的に紹介をよく頼まれます。私だったら、きっといろんな ことを知っているんだろうと思うんですが、実は知らないことばかりで、そういった処 置のことだとか、つまり医療のそもそもの、これは産婦人科分野に限らず、いろんな意 味で医療機関の情報提供がない中で選択肢として、恐らくそういうことをドクターと相 談するというよりは、選ぶ段階で既に決まってしまっているいうケースが多い。もしこ れに書き込めるとすれば、積極的な情報提供ということを、特に前もってそういうもの ができる体制といいますか、情報公開ということ、広告規制とのバランスが出てくるん ですけれども、この辺を「健やか親子21」全体にもそうだと思うんですけれども、特に 病気でもないような状況でのサービスを受けるときにはかなり情報提供が必要なんじゃ ないか。その辺をうたうことが一つの対策ではないかというふうに思うんです。少なく とも、産婦人科の先生方に剃毛や浣腸はするなというふうな指導が、現段階でそういう ことができるのかどうかということは私にはよくわかりませんので、以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。戸田委員さん。 ○戸田委員  前回提出させていただいた資料にはもっと具体的に書かせていただいているんですけ れども。まず女性側が一番ものが言いやすいというのは、ドクターではなくて、やはり 共感が得られやすい、出産体験もあるような、女性の気持ちに立って考えられる、ある いは、そういった訓練を受けている助産婦さんなんです。それで、ずっと同じ知った顔 で信頼関係もできているという人と継続的にかかわることによって非常に話しやすい雰 囲気ができる。これはバースプランのような書類提出ということではなくて、気持ちの 面も含めて相談ができるということがもう既にいろいろな研究で知られているわけです から、やはり一人一人の妊婦さんに知った顔の助産婦さんが付くということがまず大原 則であり、すべての産科医療施設で正常なお産を扱うところであれば、必ず助産婦がい なければならないといった診療体制をつくることが、まず第一だと思います。  それから今、全国で恐らく出産を扱う助産院は三百ちょっとぐらいだと思うんですけ れども、それを増やすというのは、女性側から見れば必ずしも好ましい形ではないと思 うんです。もちろん増えてもいいと思うんですけれども、今98%以上の女性たちは病院 に行っております。ここは安全を求めていくわけですから人員と設備の整ったところ、 それから緊急時の対応が産科では一番大切なわけですから、そういったバックアップが 非常に身近にあるという環境の中で、先ほど申しましたような助産婦ケアが行われる。 これはローリスクとプライマリーケアと、それからセカンダリーケアとの明確な区別が その診療体制の中で行われていくことが具体的な策としては必要なのではないかという ふうに考えております。 それから女性に積極的になれというお話でございましたけれども、今のピラミッド型 の一番底辺にある女性側が患者として踏み込む病院の中ではどうしてもこれは積極的に なれません。お腹の赤ちゃんも人質にとられておりますし、とてもとても物を言うよう な環境ではありません。これは櫃本委員がおっしゃったように、選ぶ段階からもそうで すし、すべての情報が公開されている状況の中で、こちらと対等な関係といいますか、 情報を分かち合った関係の中で初めて自分の意見が言えるということが生じてくるわけ でございますので、今の非常に閉鎖的な情報の未公開の現状は何とか打破されなければ ならないというふうに思います。  ついでに医療ミス、リピーターということの具体策なんですけれども、事故を起こし たということを責めるのではなくて、これについて繰り返さないように現状を非常に細 かく分析していく必要性、そして対策を立てていく必要性があるということを考えます と、アメリカやイギリスで行われているように、医療事故に限らず、死亡したケースで すとか、そういったケースはすべて報告を義務付けまして、それに対しての何らかの対 策を講じていくことを義務付ける。ミスを犯したことに罰を加えるのではなくて、その 報告義務、あるいは対策を怠ったということに関しては罰則規定を設ける。それから、 やはり前回も申し上げましたとおり医師免許、保健医療に関わるすべての人に当てはま ることですが、一人一人の医療者の質が、医療に関しては命ですから、この質の改善の ためには、底辺を上げるというためには、免許の更新ということも含めた思い切った策 が必要ではないかというふうに考えます。 ○平山座長  それでは、岡本委員さんお願いします。 ○岡本委員  今、特に病院、診療所等の医師と助産婦がいる施設の中での、特に正常分娩のケアと いいますか、その周辺の一番の問題として、助産婦のやるケアと医師のやる部分との領 域が非常に不鮮明であるという部分があります。それから助産婦が今まだまだ足りない 実情の中で、消費者の方が望んでおられる、できるだけ同じ人が継続的にということ は、助産婦自身も目指している点ではあるんですけれども、なかなか困難であるという のが現状です。昨年、調査した中で、現在の今の業務内容だけをやるにしても、病院・ 診療所で七千数百名が足りないというデータが出ました。そういう中で、助産婦自身も 反省をしておりますが、前回の資料集の4で、例えば、深谷日赤の例を出させていただ いたんですが、そういう非常に厳しい現状の中でも、どうしたらそれに近づけるような ケアができるかということで今幾つかの施設で努力しておりますけれども、まだまだ実 現は先の長い話かと思っています。  ただし、どういうふうな形で医師の方と正常分娩のケアについて、役割分担していく かということは、個々の施設でも当然検討して今までやっておりますし、これからもい いサービスをという観点では目的は同じですので、医師と助産婦が、さらに今後話し合 いをしながら消費者の希望というものを重視していく必要があるのではなかいと思って います。そういう点では、これからの大きな課題として、医師と助産婦の役割分担を明 確にしながら、当然、安全性を最優先しながら、さらに質を担保していけるような方法 を探るということで、助産婦も、病院の中でも、それから施設外でも連携を含めて頑張 っていきたいと思います。 ○平山座長  ありがとうございました。多田先生お願いします。 ○多田委員  戸田委員や岡本委員が言われたことは誠にもっともなことばかりですが、私の方から 一言お願いというか、意見を言いたいのですが、前回いただきました資料は十分ディス カッションする時間がなかったので、そこに加えさせていただきたいと思います。今お 話にありましたような、いわゆる安全性とか、女性の自主性、お産をするのに対する快 適であって、しかも満足するようなお産ということがある一方で、今日のたたき台にも ありますように、安全性を確保しつつということがあります。現状ではそれがすぐ、い わゆる助産院分娩になってしまうという傾向があります。前回、28日に会議があった日 の夕方の朝日新聞に戸田委員もコメントを書いておられますけれども、助産院での出産 に非常に満足しているという新聞記事が出まして、これを見たら、みんな医療機関より も助産院がいいんだと考えます。それから前回いただきました資料集の中にも、安全性 は助産院でも同じだということが書かれておりました。しかし、その直前の25日に、う ちでも1例助産院から送られてきたケースがあり、ディスカッションをしたかったので すが、時間がなかったので、今日その報告をさせていただきますと、アプガー2点で助 産院で生まれています。この方は破水が15時間あって、羊水混濁はなかったというので すが、すぐ泣かなかった、7分間泣かなかったということで、酸素投与をしておりま す。それで全身色が多少よくなったということですけれども、やがて呻吟が出てきた。 恐らくこれは僕らから見るとけいれんなんですけれども、呻吟が出てきた。多呼吸はな いけれども、元気に泣かないからということで、4時間ぐらい経って僕らの施設に入院 してまいりました。このときは、多分救急車で来たと思いますが、毛布にくるんで連れ て来られました。残念ながら、こちらに来ましてけいれんが起こって、現在も恐らく後 遺症が非常に心配な状態でいる子供です。これは確かに妊娠中は異常ありませんでした し、助産院さんの方でもケアはよくしておられたんだと思いますけれども、これを予防 するには、医療機関と一緒にやっていかない限り無理だろうと思いますし、それから分 娩監視装置がないところでお産する以上は、こういうことが起こるというのは、予防で きない問題です。  それからもう1例は、昨年ちょうど夏ごろにあったケースですが、このときはアプ ガーが9点で助産院生まれましたが、その1点の減点は、泣かなかったということでし た。私どもから見るとアプガーが9点であったことは多分ないだろうと思うんですが、 それで1日目は元気がなかったということだったのですが、2日目から呻吟が出てき た。そのうち嘔吐して息が止まってしまっということで、急いでマウス・ツー・マウス で蘇生を行い、それですぐに僕らの病院に救急車で送ってきた。救急車内では、救急隊 が心臓マッサージをしながら連れてきたということで、僕らの病院に来てからはけいれ んも起こりますし、脳の障害が非常に強かったので、残念ながら1か月後にお母さま方 に看取っていただいて亡くなったというようなケースがあります。これも妊娠中は特に 異常がなかった。アプガーも9点だったというんですが、これも成熟児です。  産科の先生方は、こういうような重症になったときには、生まれるとすぐ連絡をして くださったり、これを防ぐために分娩監視装置を使ってくださっているわけです。もし 助産院の分娩を勧めるならば、必ずそれができるようになっていただかないと困るし、 そうでないならば、その部分をどうかしないと、さっき戸田委員が言われたように、安 全性を犠牲にするんではないということですけれども、必ずそういう問題が起こってき ます。この間の報告書を見せていただきますと、助産院側の調査では、こういうものは 恐らく、送ったというところまでしかわからなくて、この方が脳性麻痺になるかどうか わかりませんけれども、そういうもののフィードバックというのは、ケースが少ないの で、なかなかできないのだろうと思います。したがって、こういう問題を解決していか ないといけない段階で、余り助産院分娩がいいというようなことを、ここにも今日書い てありますけれども、ぜひ書かないでいただきたいと思います。  ただ、産科医療の中で不必要なものをやる必要はないと思いますし、それから個人的 な希望が実現できるような体制とか、そういうものを現在の医療体制の中でどう確保し ていくか、あるいは、それにどう付加していくか。こういう少子化時代ですから、当然 そういうことは要求されて、医療体制の中に組み込んでいくということは絶対必要なこ とだし、いいことだと思いますので、この際やっていただきたいことだと思いますが、 その快適性を求めるには助産院しかないんだというような書き方がしてありますが、こ れだけは避けていただかないと。  今、私どものところに、このような重症例はほとんど来ません。産科で仮死で生まれ た子供でも異常がなく育っていく赤ちゃんがかなり多いです。それでも3時間、4時間 遅れて来ると、遷延性肺高血圧症になって非常に重症になる者がいるので、産科の先生 には、ぜひその前に送ってくださるように、重症仮死であるという場合には、すぐ送っ てくださるようにということを我々はお願いしています。助産院の方は異常がないとい うことが前提で、分娩もなさるし、その後のケアもなさるので、どうしても遅れてしま うという問題があります。NICUや周産期センターとの直接のかかわり合いは、助産 院は極めて少ないのです。私どものところには、産科では今は診療所の先生も病院の先 生も、母体搬送でたくさん送ってきてくださるのですが、助産院から母体搬送で来る例 というのはほとんどありません。これは産科診療所に行って、そこでケアを受けている せいなのかもしれませんが。また、もう1人、私のところにいる具合いの悪い子は、残 念ながら、自宅で突然産まれてしまった。ケアが悪かったんだと思いますけれども、重 症仮死になって、人工呼吸器から外せない子供が今、入院しています。こういうふうに 医療から漏れてしまう例があります。正常なのは、快適性のために自宅分娩がいいのだ とか、助産院がいいのだということが強調されますと、今は1,000 人に1人しか異常は 起こらない時代になっているときに異常が起こってしまうというこが危惧されます。私 に限らず、新生児をやっているドクターたちは、そういう風潮になっていることを非常 に心配しておりますので、産科施設に、先ほどの話にあったような快適性を入れること を考えて整備をしていただく。助産院もそれに協力をしていただいて、ある部分に担っ ていただくのは私も大賛成ですし、快適性を求めるのはいいと思いますけれども、この 検討会として、助産院分娩を勧めるということは非常に危険があることだと思っており ます。 ○平山座長  ありがとうございました。  お隣ですが、新家先生、マイクがあるので、何か御意見ございましたらお願いしま す。 ○新家委員  私もいろんな経験があります。確かに助産所から送られてくることもありますし、そ れから、ある助産所は、私が知らないうちに嘱託医にさせられたという過去の例もあり ます。そういういい加減なところもあるということです。細かいことを言い出すと切り がありません。私は診療所の小さな開業医でありますけれども、我々が一番心配するの は、この前も申し上げましたけれども、ハイリスクの妊娠ではないんです。ハイリスク はある程度予測できるので、かえって結果はよくなります。むしろ何でもなく経過して いる人が突発的に異常が起きたときにどうするか。このレベルをもっと早くわかる状況 にしないといけないと思うので、果たして、これが助産所のレベルで、そんなことを言 っては悪いんですけれども、それもチェックができるのかというのが非常に疑問であり ます。  以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。  ほかにどうぞ。戸田委員さん。 ○戸田委員  たびたびすみません。女性側の気持ちから言うと、自宅出産あるいは助産院出産、し かも非常に少ない数の助産所をわざわざ探して、遠くから行くという状況は一体何かと いうふうに聞いてみますと、実は病院から逃げているというケースが多いんです。病院 のこれが嫌だ、病院のあれが嫌だ、医師のこれが嫌だ、あれが嫌だと。先ほどから助産 院のこういうことが危ない、ああいうことが危ないというお話がございましたけれど も、それを申すならば、産科医療施設の中でも数多くの医療事故は起こっているわけで して、しかも、例えばプロスタグランディンとオキシトシンを混ぜて使うといったよう な、私でもわかるような初歩的なミスで赤ちゃんの命が亡くなっているというようなこ とが実際に起こっているわけなんです。そういった報道を聞いて、女性たちはあんな危 ない病院には行きたくない。そうやって逃げて行った先が助産院である。かなりリスク を実を持ったケースであっても、助産院では、もうほかでは産みたくないといってごね られて、困って多少のリスクを持っていても出産を扱うというケースも私自身見てまい りました。こういうようなことがあってはならないと思うんです。ですから、本当に医 師と助産婦さんが対立関係でお互いを責め合うのではなくて、女性たちが本当に安全 に、どこででも安全にお産ができるという状況をつくるためには、手を取り合いまし て、多田先生がおっしゃったように、どこで産むにしても救急の連携をしっかりとと る。それから送るべきときに送るといったことを専門家同士で、助産婦さんたちだけの 中ではなく、産科医も新生児科医も、それから一般のお医者さんたちも一緒になって、 そして何よりも産む女性側の意見も聞いていただいて、ガイドラインをつくるなり、プ ロトコルをつくりなりといったようなことが今求められているのではないかというふう に思います。  以上です。 ○平山座長  このケースについてやりますと、それぞれいろいろございまして、水かけ論ならぬ、 油かけ論になってしまいますので。 ○岡本委員  神奈川の方で、何か月に1回か忘れたんですけれども、助産院からの搬送に関しての 勉強会をやって下さっておりまして、そういう症例を具体的に検討したときに、恐らく いっぱい問題もあるかもしれませんが、分娩監視装置は普通どこの助産所でも大体あり ます。それから嘱託医をお願いすることに関しては、必要書類の関係で、知らぬ間にさ れていたというのはちょっと考えにくいんですけれども、もしそういうことがあったと したらとんでもないことですので、きちんと対応したいと思います。今後とも、ぜひそ ういう勉強会のような、症例の検討会をいろんなところでしていただけたらありがたい なと思っています。ありがとうございました。 ○平山座長  渡辺先生どうぞ。 ○渡辺委員  人生のスタートラインの一番大事なところなので、大事な議論だと思うんですけれど も、私はお話を伺いながら、自分自身が見てきたフィンランドの市民病院の産科の家族 病棟のことを思い出しました。そこは助産婦さんが普通のTシャツとGパンを着たヘル パーみたない感じで常駐しているんですけれども、家族病棟、病室が13個あって、そこ には自由にお母さんとお父さんが出入りして、そしてお父さんはもちろん一緒に住みま すし、お母さんが望むのであれば、お母さんの友だちも来てもいいわけです。赤ちゃん がそんな感じで自然にお産をしてもいいというチェックを、産婦人科医が責任を持って 助産婦と組んでやりまして、あなたの場合は自分の力で産んでいいでしょうという、そ の承認のもとで希望者は家族病棟に行くんです。そうしますと、ほとんどできるところ は御本人たちは自分でやりますし、それから最初の初乳も沐浴も全部自分たちでやっ て、そして必要なときには幾らでも対応するというやり方です。  行きましたらば本当に静かでしたし、入れていただいたら、12畳ぐらいの病室にお父 さんはグーグーいびきをかいて寝ていました。そして、赤ちゃんは本当にシンプルな ローラーがついている赤ちゃんのベッドに寝ていまして、お母さんはにこにこ笑ってい ました。そしてその助産婦さんが言ったんですけれども、やはりここまで自然な家族の スタートラインのお産をかち取るのに、フィンランドの産科も大変闘ったけれども、や ってみたら何ということはない。本当にバタバタ助産婦や看護婦が走り回る必要はない というのです。赤ちゃんとお母さんが寝たいだけ寝ていて起きて、そしてそれから授乳 したときに必要があればいつでも呼んでくれとなると、実際に今までやってきた業務は 一体何だったのだろうか。不必要にルーチンに朝、妊婦さんたちをたたき起こして、次 から次へとやっていた、あれは本当に愚かだったということを言っていました。新生児 医療もそうですし、例えば、保育器のあり方なども、どんどんミニマルハンドリングと いって暗くしていじくらない。子宮に近い状態にしているという、自然の一つの知恵か ら学ぶということも医療の中で起きているわけです。ですから、やはりその助産婦さん がいみじくも言ったように、本当に私たちは、必要があるときはもちろん出番だけれど も、必要がないときにはお母さんに任せるんです。ですから、助産婦か医者かという議 論じゃなくて、お母さんが主体になってやるお産を、どんなケースもリスクがあるけれ ども、リスクがあったときに、本当に最善のことをするために専門家がいるんだという ところまで謙虚にシンプルにやっている。そういう実例を一目見てみれば、私たちもも うちょっと問題を難しくなく考えられるんじゃないかと思いました。 ○平山座長  ありがとうございました。  それでは櫃本先生。 ○櫃本委員  安全という言葉の中で、妊婦の死亡率をこれ以上下げるとか、あるいは周産期の死亡 率をこれ以上下げるとかという、確かに下げることは、それはそれで重要なことかもし れませんけれども、今またこれ以上そちらを下げるということに重みを持たせるのか。 それとも先ほどから渡辺委員の話もありましたけれども、要するに受皿として選択でき るようなものを、もう少し専門家同士がうまく連携してやっていくということを、つま り選択肢を増やすということを考える方が、どうしても専門家というか、そういう立場 は、それで実際効果も上げてきたし、現実にそれを担保できなかった助産所は実は消え ていった世界があって、今こうなんでしょうけれども、ただ、今この状況になって新た に出てきている助産所というのは、形を随分変えてきていると我々も聞いてきています し、そういう意味では、選択肢として増えてきているということは、やはりはっきり位 置付けていって、それを選ぶための情報を提供していったり、そういった連携を確保し ていくということであるんだろうというふうに思うんです。だから、はっきり死亡率を 下げるとか何とかということに、極端に言えば、今の段階では重点を置くべきではない んじゃないか。選択する時代になるんじゃないか。僕らは地域協会の健診なんかをやっ ていましたけれども、健診をこれまで受けさせるということを我々の役割にしてきた時 代が、これからは、ただ受皿として受けたい人が活用してくれという時代になってきて いる以上は、あえて、こちらの方が安全なんだから、こちらを選びなさいという情報提 供は、その情報提供はあっていいんでしょうけれども、そちらにシフトさせていくとい うことは、これからは避けていくべきじゃないかというふうに感じるんです。 ○多田委員  今のことは、「健やか親子21」の根本にかかわる問題だと思います。私は、先生がお っしゃるように、これ以上無理をして下げる必要はないと思います。しかし、上げてい いとは思わないんです。したがって、何も助産所か、医療機関かということを議論して いるわけではないつもりです。これは先生がおっしゃるような選択できるような、医療 や保健のシステムをぜひこの「健やか親子21」ではとってもらいたい。今、渡辺委員が 言われたような問題は、問題があったときには、いつでも医療機関としてのケアもでき る、助産婦さんのケアもできる、そして親だけで産むこともできるという選択が同時に できるような場と、人を確保しなければできないことなのです。それがばらばらになっ ているのに、先ほど私が申し上げましたように、助産院を勧めるということは、その場 を分けてしまおうということです。母子同室制を採用したり、あるいは産科医療の中 に、そういう快適性を求められるような条件を付けていただく。それだけの余裕を持た してもらうということがないと、先生がおっしゃられるような人生の始まりであり、育 児のスタートであるこの時期を快適なものにすることはできない。選択すればいいんだ から、別々のところでやればいいじゃないかということをシステムとしてつくっていく ならば、今、分娩監視装置も使っていると言われましたが、それだったら産科の診療所 レベルと同じであっていいはずなわけですから、産科診療所でも同じような快適性を求 められるようにしていったら、それでいい問題なんだろうと私は思います。母子同室制 ができるのには、部屋も広くなければいけないし、看護婦さん、助産婦さんも大勢いな ければ、今の体制ではできないわけです。したがって、そこのところをどうするかとい う議論をぜひこの中に入れていただいて、そういうものが担保されるということが大事 だろうということを私は前にも申し上げました。 ○田中(哲)委員  私と考えが違うかもしれないんですけれども、1つ議論の中に、死亡率はこの辺でい いんだという議論は非常に危険な議論ではないか。やはりあくまでも死亡率を下げるた めの努力はすべきだろう。しかし、安全だからということで、例えば何か特別な人権を 無視するようなことをしてまで、それは必要ないと思うんです。あくまでも我々医療関 係者は、死亡率を下げる努力というのを基本に置かなければ議論は成り立たないだろ う。ですから、とりあえず、この辺でいいんだというのは医療関係者としての議論では ないんじゃないか。あくまでもリスクはゼロに近いようにしていくというのが私たちの 責任じゃないか、使命じゃないかというふうに思います。しかし、それと同時に、クオ リティを上げるための努力というものもしていかなくちゃいけない時期に入った。です から、その辺を上手にあれしていかなければ。例えば、80歳まで平均余命が延びたか ら、この辺でいいというような議論は、あるいは乳児死亡率がここまで下がったんだか ら、もういいんだという議論は私は非常に危険な議論じゃないかなというふうに思いま す。 ○藤内委員 今の助産院と産婦人科医療機関という選択ができるということはとても重要なことだ と思いますが、先ほど来助産院で特に新生児の管理、多田先生から御指摘のあったよう に、新生児の管理というのが問題になるケースが多いようですし、うちの管内でも実は 同じようなことを経験しておりまして、この議論のたたき台の2ページから3ページの 終わりになるんですけれども、この産科医療機関との連携の必要が述べられているわけ ですが、ここに、実は新生児医療機関との連携をぜひ書き加えることが必要ではないの かなというふうに思います。例えば、出生後1週間以内に新生児科医が助産院を訪問し て診察が受けられたりとか、もちろん緊急時のサポートもそうですけれども、そうした 部分が、これから不可欠になってくるんじゃないかと思われます。  それからもう1点、そういう選択を可能にするためにはやはり情報公開が不可欠だと 思うんですが、そういう母児同室制をとっているかとか、今いったように浣腸をした り、会陰切開や剃毛にしても、そうした処置をしているか、それから今言ったように新 生児科医との連携がどうされているかというような情報が、妊婦さんにどう伝えられる か。例えば、それを行政がやるというのはまたいろいろ難しい問題がありますし、地域 によってはお母さんたちが自分たちでそういう情報を集めてきて、そういう子育てとい いますか、妊娠から出産を支援する、そういう情報を自分たちでつくって、それを活用 しているという地域もあるんですけれども、少なくとも、そうした情報提供できるよう な仕組み作りというのも必要ではないかというふうに考えます。 ○櫃本委員  田中委員さんから死亡のことですけれども、ちょっと誤解をされているので、私は専 門家が死亡率を下げると躍起になる時代ではもうないと。住民自身が死亡率を下げるな り、全体で見ていく時代になってきている。それを死亡率を下げることだけに専門家が 終始してきた時代はもうそろそろ、そのために500 グラム、600 グラムの子どもが産ま れて、命は何とか保てても、その後どうなんだという問題も実は出てきている。これは 専門家のこれまでの勇み足と言ったら失礼かもしれませんが、さっきから言っています けれども、妊婦さんの本当に望んでいることの部分の対話が十分なかったために、命と いうことが最優先で、確かに命はそれだけ重いものではあるのでしょうけれども、そう いう中で、そろそろ死亡率ということも含めて、トータルで住民とも分かち合ってやっ ていく時代がきたんだろう。そういう意味で医療が死亡率を下げる、下げるということ を、情報提供として出すのは大事なんですけれども、余りそれを重きにした方向性を専 門家が組み立てていくと、結局また戸田さんのように、せっかくこういう委員会に出て 意見を言っている方とのギャップが開いていくだけではないか。そういう意味で伝えた ので、私は死亡率を下げる努力はもうやめてくれという意味ではなくて、そろそろバラ ンスをとる時代にきたんじゃないか。これは高齢者の、いわゆるホスピスとか、そうい う問題もまさにそうでありまして、何でも抗がん剤でという時代でなくなったのも、み んな周知のことなわけですから、そういう意味で申し上げた次第です。 ○平山座長  もう1回どうぞ。 ○戸田委員  ようやく私自身の中でも安全性と快適さの言葉の持つ違和感というのが何かというの が見えてきたような気がするんですけれども、今、議論になっている死亡率を下げる努 力というところなんですが、やはり私は医療の使命というのは、命を何よりも大事に重 んずるというところにあると思うんですけれども、これらかの医療のもう一つの大事な 役割として、WHOも健康の定義を変えました。社会的、精神的(spiritua)も含めた 長期にわたる健康であるという状態、そして幸せという言葉を付け加えてもいいんだと 思うんでけれども、こういったものも視野に入れつつ、医療を行わなければならないと いうことなんだと思います。ですから、生命倫理にもかかわることなんですけれども、 一つ一つのケアを見た場合にも、非常に未熟な赤ちゃんのケアをしていく場合に、今ま でNICUで隔離していったために、あと虐待が起こるというような問題があったわけ ですけれども、これを例えば、タッチケア、カンガルーケアといったような愛着も深 め、しかも救命もできるといったようなケアに変えていくことで、この両方の目的を達 成することも可能なわけですから、こういった視点を持って医療を追求していく必要が あるだろう。その視点を持って、患者さんと私はあえて言わないんですけれども、産む 女性、そして赤ちゃんの健康を支えていくという医療の役割を果たすことができるんだ ろうというふうに思います。  それからもう一つは、藤内委員の御発言に関してなんですが、確かに私たちは情報を 集めるために、産んだ経験をされた方にアンケートをとったり、医療者の方にアンケー トをとったりということを、もう十数年も努力してまいりました。ただ、医療者側が談 合してまで情報を提供しないということを実際に経験してきております。こうした状 況、こういうアンケートが出回るから、これには答えるなと、どうも談合しているらし いというようなことまで経験してきているわけなんです。それほどまでに医療側の情報 は私たちは把握しにくい。これはやはり何らかの、どこかからのプッシュをして、医療 の情報は公開しなければならないということを義務付ける必要があるのではないかとい うふうに思います。 ○渡辺委員  死亡率などをめぐる皆様の議論を聞きながら、現実に私たちが慶応でやっていること で、一つ考え方のヒントになると思うものがありましたのでお話しいたします。それは 産科と一緒にやっているハイリスク外来なんですけれども、そこに小児精神保健医が行 きまして、そしてエコーで奇形があるということが宣告された時点から、お母さんとお 父さんとで家族のケアをいたします。ハイリスク外来は水頭症とか、脳障害とか、先天 性心疾患が妊娠中にわかってしまうという非常に悲惨な外来ではあるんですけれども、 でも、やはり我が子を産んで育てていこうという思う親御さんたちは幾らでもいるんで す。ですから、乳児死亡率云々よりも、一緒に取り組む段階で、このお子さんは産まれ たらすぐに死ぬかもしれない、あるいは妊娠中に死産になるかもしれない、あるいは、 産み終えてから何か月生きるかわからないという親子のスタートもあるわけです。その 親子のスタートに対して私たちが応援して、その理不尽な運命に対する親御さんたちの 闘いに私たちは素直に寄り添っていくんです。結果的には、やはり高い率でお子さんた ちは亡くなるんです。お腹の中で、あるいは出産直後、あるいは数か月経って、でもな おかつ応援するのはどういうことかというと、そういった親心がわき起こってくる時期 のいろんな運命との闘いの中で親たちは確実に成熟するんです。そこら辺の問題を、例 えば、嘆きとか怒りとか、あるいは子どもを産んで欲しくない気持ちとか、あるいは子 どもの奇形を拒絶したい気持ちとかを乗り越えながら、夫婦の関係が深まり成長してい くんです。  私どもがなぜそれを応援するかというと、そこら辺の問題が単に生きた死んだの問題 で解決されていますと、その家族の兄弟や、次に産まれる子どもたちに必ず思春期に問 題が起きます。私の思春期外来に来ている子どもさんたちの背景の中には、周産期の問 題ですね。自分の兄弟や自分の1歳、2歳下の赤ちゃんが心臓疾患で数日後に亡くなっ たとかという、その状況を目撃して母親がうつ状態になったり、あるいは家族が不安定 になったり、それに巻き込まれている子どもたちです。ですから先ほども清水委員から 御指摘がありましたけれども、私の方にメモで回ってきましたけれども、資料の「健や か親子21検討会議論たたき台(案)思春期の保健対策の強化と健康教育の推進」という のは、1ページ目の真ん中に「また、思春期保健の問題は、幼少期の発達過程と深い関 連を有しており、特に3歳未満までの環境の影響を強く受けていることを認識する必要 がある」というこのラインは、実は線は3ミリ間違って高く引かれているのであって、 アンダーラインの線だと私は思っております。ですから、家族のケアというのは、単に 命が生きる死ぬじゃなくて、そのプロセスの中で、どれぐらい親たちが深い人間として の思いやりや、そういうものをちゃんと発揮しながら成長し、かつ、それを医療機関に ちゃんとフィードバックしてくれるんです。それができたのは産婦人科医が私たち新生 児のスタッフを受け入れてくれる寛大さがあったんです。それにより、非常に医療も、 産婦人科医もやりやすくなったというふうに言っております。これは非常に価値あるや り方だと思います。ただし、費用からマンパワーはどうかというと、今の段階ではあく までも小児科のボランティアです。 ○多田委員  ただいまの意見も含めて、先ほどから超未熟児の話も出ておりましたが、死亡率だけ 下げるという医療だけではなくて、今、戸田委員も言われたような、お母さん、お父さ んたちと子どもたちとのケア、あるいは亡くなるような重症な子どもでも、渡辺先生が おっしゃったようなケアというのは随分進んでおりますし、先ほどありましたけれど も、ボランティアだけではなくて、それができような医療にすることをここで議論すべ きことなんだろうと思います。  したがって、死亡率云々というのは一つの形であらわれるかもしれませんが、死亡率 は非常に厳しくとりますと、僕のところで少し調べてみたのですが、1,000 グラム以上 の低出生体重児の8割は18トリソミーその他の重症奇形です。したがって死亡率という のは、田中先生もおっしゃったように下げるべきなのですが、かなりのレベルまできて いることは確かです。まだまだ下がりますけれども、かなりのレベルまできています。 渡辺委員が言われたようなことができるような環境を整えるというのが、この「健やか 親子21」であって、それは低出生体重児などに対する医療云々ではなくて、それが結局 正常に産まれた子どもたちや、その育児にも関係してくるということだろうと思いま す。したがって私どもは、NICUとか、そういう施設には必ずケースワーカーみたい な方とか、そういう相談に乗れるような人を配置してもらいたいと思っておりますし、 それから母子同室制にできるだけの人員をぜひ確保するような医療をしていただきた い。今までそれがないところで、戸田委員が言われたように、ここはどういうケアをし ているかというのをばかり聞けば、当然ハイリスクを扱っているところはそこまで手が いかないから、そういうことができていないじゃないかということでおしかりを受ける んです。そうすると、どうしても情報を流さないということになってしまうわけです。 それだけのきちんとしたことができる、あるいは、そういう医療だけではなくて、そう いう快適なサポートができるようなものを、少子化時代の子どもを育てたり、産むとこ ろに対してはやはり配慮すべきであるということが、この検討会ではっきり出していた だくということが大事なのではないかと私は思っております。 ○平山座長  ありがとうございました。  妊娠、出産をめぐまりして、安全・安心・快適、いろんな面からの非常に幅の広い貴 重な御意見が出たと思います。最終報告書を書く上では、これはマニュアルではありま せんので、今後への提言という意味で、文書については今日出たような御意見を上手に まとめながら、将来に向けての文章としてまとめていくように努力したいと思っており ます。  今回のテーマの中で、妊娠・出産のほかに、もう一つ不妊の問題があるんですけれど も、不妊の問題について、何かぜひというのがございましたらお願いします。矢内原先 生。 ○矢内原委員  不妊のことをいろいろな委員会でかかわっておりますので、この文章の中でぜひ強調 してほしいところを一つ、二つ言わせていただきます。  まず1ページなんですけれども、「○」の1のところで、「高齢出産や働く女性の増 加や多胎児や低出生体重児などハイリスクとなる要因」というのが書いてありますけれ ども、高齢出産はこのとおりなんですが、このところの多胎児の問題というのは、これ は不妊治療に非常に関係をしておりますので、繰り返しになるので、後の方にこの多胎 児の問題は入れていただきたいと思います。これを読みますと、高齢出産が多胎児を増 やしているように聞こえますが、間接的にはそうなんですが、ここのところは具体的に 多胎児や低出生体重児と言わなくて、ハイリスクだけでいいんじゃないかと思います。  それから2ページのところなんですけれども、私ども不妊治療にかかわっている者と して一番感じていることはドクターの反省なんです。生殖補助医療そのものが非常に進 歩しているということは、ある意味で大変な福音であるには違いないんですけれども、 それに伴う副作用とか多胎児の増加、ここに多胎児とか低出生体重児が出てくるんです けれども、また、それに続いてゲンスイシュッサンとか遺伝性のものが起こってきてお ります。こういうものをどうにかしなければいけないということが我々の反省にあるん ですけれども、ここでは適正に運用されるということは中に含まれていますが、ちょっ とここに反省の文章を、そういう問題もあるんだよということを入れていただきたいと 思います。  それから(2) の「○」の2番目になりますか、そこに同じように「親子関係の特定の 問題等について法的な体制が必ずしも十分に整っておらず、今後整備が必要だとの指摘 も」というふうになっておりますけれども、これはまさに「指摘が」でございまして、 たった1字の問題ですがニュアンスが違いますので、その辺のところはちょっと配慮し た文章にしていただければと思います。 ○平山座長  ほかにございましょうか。  清水先生お願いします。 ○清水委員  不妊医療に関して、この委員会ですと、どうしても産科医の発想というか、視点にな るのですけれども、今現在、私の病院で1人不妊治療を受けている作業療法士がおりま して、彼女に休まれますとたちまち収益が減るので非常に苦労しています。そのことよ りも、彼女は7月末で年次休暇を使い切る。その後どうするかとなると、これは普通に いきますと無断欠勤扱いになってしまいます。療養休暇でもないし、このあたりを労働 省と協議していただいて、不妊医療を安心して受けられる労働条件を法整備して下さる よう働く女性の権利の保障にまで広げていただければと強く期待しております。 ○平山座長  ありがとうございました。 このたたき台の中の問題認識に絡んで具体的な取り組みまで実際にはいろいろと御討 議いただいたんですけれども、具体的な取り組み、あるいは、その後の地域保健、産業 保健の取り組み、関係者の役割、このあたりで何か御発言がございましたらお願いした いんですけれども、いかがでしょうか。 ○戸田委員  地域保健の取り組みといいますか、ちょっともとに戻ってしまって大変恐縮なんです けれども、女性のウェルビーイングという視点からいいますと、前にも討議されました ドメスティック・バイオレンス(夫ないしパートナーからの女性への暴力)に関しまし て、産科の現場というのは非常にスクリーニングがしやすい、またケアがしやすい。長 期的にわたってかかわっていくわけですから、一定期間かかわりますので非常に対処し やすい場所かと思います。支援しやすい場所かと思いますので、医療機関同士もそうで すし、病院は外のいろんな機関と連携をとるのが、社会資源との連携をとるのも非常に 下手なところというふうにお見受けします。警察とか、裁判所ですとか、シェルターで すとか、そういった女性を支える民間団体、あるいは他科の精神保健にかかわる専門家 の方々ともぜひ連携をとって産科医療の現場でもドメスティック・バイオレンスに対し ての対処をしていただきたいなというふうに思います。  それからもう一つ、ぐっと戻るんですけれども、例えば仰向けの姿勢でお産するです とか、これも20年前のヨーロッパでもう既になくなりつつある診療状態で、分娩姿勢を 開放するということは、産婦さんのお産するときの分娩台に縛られた苦しいお産という イメージを払拭するものなんですけれども、こういったようなことも含めて、それから いろいろな不必要な処置をどうしたらなくていけるかという一つの提案なんですけれど も、今の診療報酬というのは、処置をすれば点数が入るという形、これは妊娠・出産に 関しては人頭割りでいいのではないか。そしてもっとEBM処方に基づいた医療という ものを、手順に沿ってやっていく診療報酬の指針をもっと明確に各専門団体が打ち出し て提供していく必要があるのではないかというにふうに思います。  さらにもう一つつけ加えさせていただきたいんですけれども、いろいろ話が飛んで大 変恐縮なんですが、住民が病院に対して苦情を持ったときに、これを持っていく行き場 がありません。ぜひこれは地方公共団体等がアレンジをいたしまして、住民が医療に対 して苦情を持った場合に、これを集める場所というのをつくっていただきたいというふ うに思います。  以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。もう一方ぐらい、前川先生。 ○前川委員  周産期のところに「育児支援」という言葉が出ているんですけれども、これはむしろ そうじゃなくて、「触れ合いの重要性」とか、そういう具体的なことになさった方がい いと思うことが一つと、それからもう一つ、ぜひここにお母様方、産んだ母親に対する 心の安定と余裕とか、そういうことをもし具体的に加えるのでしたら、加えていただい た方が、それから周産期の従事者が、ネガティブな言葉を使わないで、ポジィティブな 問いかけ、かわいい赤ちゃんとか、丈夫そうなとか、そういうこともある程度加えると よりお母さんの心が安定するんじゃないかと思います。 ○平山座長  ありがとうございました。医療全般、地域保健までにわたっていろいろお話をいただ きましたけれども、雪下先生、何か医師会のお立場でございましたら一言お願いしたい んですが。 ○雪下委員  前回もちょっと申し上げましたけれども、私、産科の方からはちょっと離れたところ におりますので、具体的なそういうことについてはただびっくりして聞いているような わけで、先ほどからの命の尊さ等について、死亡率のそれを下げるとか、そういう問題 がありましたが、医療においては命の尊さ、それは基本的に大事なことは誰しも医者は そう思っているところであります。その中でも、今、私も予防接種等において特に感じ ているのは、例えば何百万人が助かっても、それによる1人の犠牲者が出ては、それを 許されない世の中になってきているということ。それも当然のことかもしれませんが、 そういうことになりますと、やはり今の助産所あるいは産婦人科医師、病院の選択の問 題にも出ておりましたが、これは例えば、助産所を見ると産婦人科の病院から逃げてき た者が多いとか、産婦人科の医者を見ると助産婦から逃げてきた者が多いとか、これは 施設の数から言っても当然どっちが多いかはわかるわけで、そんなことで争ってない で、やはり今助産所というものも正式に分娩の場所として認められているということだ とすれば、産婦人科の医院あるいは産婦人科の病院、あるいは助産所についての正しい 情報の提供を十分に妊婦の方にして、お互いメリットもデメリットもあるわけですが、 その中から自分に適しているところを選んでもらうということしかないかないと思うの です。あとは、正常分娩を助産所でやるとすれば、分娩の大部分は正常分娩なわけで、 それが今の体制で、あるいはこの先対応して助産所で全部できるのかどうか、その実際 の問題もあると思いますし、その辺のところを考えた上で、どうしても役割分担という ものをしていかざるを得ない。しかも、お互いのデメリットを埋めてメリットを上げて いくような役割分担と連携というものがどうしても必要であろうというふうな感じが私 はいたしておりました。  それから今、地域の連携のところで医療機関に対する苦情処理の問題がありました。 医療情報につきましては、医療情報の特殊性から、これは日本医師会としましては自主 規制ということで、かなりその対策に力を入れているところでありまして、苦情処理の 場所につきましても、今、具体的に各郡市の医師会まで苦情の窓口というものをつくら せていただき対応していくとともに、郡市で対応できないものは県、県に対応できない ものは日本医師会という形で対応しているところでありまして、医者のやることは信用 できないと言われれば、それまででありますが、医療の特殊性から、国でそういうもの をやるということについては私たちは余りなじまないというふうに理解し、医師会の組 織の中で十分対応していけると思っておりますので、それを御利用いただければという ふうに思います。  また、大変初歩的な話で、私もどういうことなのかこの間から出て疑問に思っており ましたが、例えば、剃毛の問題、浣腸の問題、あるいは導尿の問題、会陰切開、あるい は今言われた分娩の姿勢の問題、こういう問題につきまして、決して私は外国が進んで いて、日本がずっと遅れているというふうには認識しておりませんで、その辺に対して は、産婦人科の先生がたくさん今日おられているわけで、適正なそれに対する反論とい うものは、この際やはりきちっとしておかれるべきではないかというふうに私は思いな がら聞いておりました。あるいは、ちょっとあきれ返って言われないのかもしれません が、マスコミも来ているところですから、それはきちっと反論するところは反論すべき だというふうに感じました。  以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。  先生方には、まだまだ御意見がおありだろうと思いますけれども、次の議題がござい ます。この妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援につきましては、 本日の検討を踏まえまして、事務局で最終のまとめをつくっていただくということにさ せていただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。  なお、目標値につきましては、これまでと同様に少し先送りにさせていただきたいと 思います。  それでは、時間の都合で議題2の「子どものからだの健やかな発達を図るための環境 整備」への問題に移りたいと存じます。資料がございます。資料集の5でございましょ うか。事務局から御説明ください。 ○椎葉課長補佐  それでは、簡単に御説明いたします。資料集5です。  本日は、子どもの体の健やかな発達を図るため、環境整備につきまして、多くの先生 方から御意見、資料をいただいております。  まず5ページですけれども、多田委員からの御提出の資料で「これからの周産期医療 と関連領域の整備」ということで、周産期医療に関しまして主に3つに分けまして、集 中治療が必要な重症な患者、それから集中治療は不要ではあるけれども、特殊な治療が 必要な患者、また特別な治療は不要であるが、異常を生じないような医学的な管理が必 要な妊産婦及び新生児と3つの段階に分けまして、それぞれに対する取り組みなどにつ いて御紹介をいただいております。  また、次のページ、6ページの真ん中ぐらいの6番目ですけれども、「小児保健・福 祉領域との連携」で福祉のコーディネーターの必要性や入院や外来におけるフォローア ップ中のカウンセリングなどの項目がございます。またそれ以降は様々な資料ですけれ ども、これにつきましては、後ほど多田委員の方から御説明をいただければと思いま す。多田委員の提出の資料の中の34ページですけれども、「母子救急医療に関する検討 委員会答申」ということで、日本医師会の検討委員会がまとめました報告書が載ってお りまして、これにつきましても御紹介をいただければと思います。 続きまして47ページ、田中委員からの提出の資料です。田中委員の方からは、子ども の事故防止対策、またSIDS対策、小児救急医療の3つにつきまして資料をいただい ております。47ページの方が小児事故防止対策の必要性ということで、不慮の事故とい うのが小児の死因の第1位である。がんの2倍、それから国際的に比較しても、かなり 我が国の死亡率が高い。スウェーデン並みにやれば、 500人程度救命ができる。また死 亡者1名に関しまして、10数倍から数千倍の被害者が発生をしているという御指摘と、 また48ページですが、子どもの事故は科学的に防止可能である。子どもの発達を見据え て的確に対応することによって大部分は防げるということです。また費用対効果の点で も優れているという御指摘と、また具体的な事故防止対策の方法論といたしまして、地 域レベルにおける取り組みなど、また保護者に対する啓発普及などにつきまして御指摘 いただいております。これにつきましては後ほど御説明いただこうかと思っておりま す。 53ページからはSIDSの疫学などにつきましての資料で、SIDSの対応策につい ても御指摘いただいております。  それから54ページ以降からは、我が国の小児救急医療の現状の資料で、特に54ページ の一番上ですけれども、小児救急医療の最大の問題点ということで、この救急医療を支 えるためのマンパワー不足と小児医療の不採算性といった御指摘でして、それぞれ小児 科医のマンパワー不足や、不採算性についての記載と21世紀を踏まえて小児救急医療に 対する提言などもいただいております。これも後ほど御説明いただければと思います。 また田中委員からは、本日、先生方にお配りしておりませんが、このような我が国の 死亡事故だとか、小児救急医療SIDSの本も御提出いただいております。これは回覧 しますので、御参照いただければと思います。  澤委員からの御提出の資料でございます。147 ページから具体的な資料ですが、澤委 員の所属されております池袋保健所におきましては、子ども事故予防センター( Kidsaf e)が開かれてりまして、我が国でもこういった施設があるのは珍しく、最先端の事故防 止センターとしての役割につきまし、後ほど御説明いただければと思います。また、併 せて「のびのび子育て」という朱色の資料もいただいており、これについても御披露い ただければと思います。  続きまして201 ページですが、美濃輪委員からの提出の資料でございます。学校にお ける予防接種につきまして、特に小学校・中学校での取り組みや、また、その資料集の 中にも中学生の予防接種についての新入学者用の資料や予防接種のしおりということ で、206 ページからですが、予防接種に関するどういったもので、どういう注意が必要 だとか、予防接種はどういうふうに受けるべきかとか、問い合わせ先などにつきまし て、わかりやすい資料を御提出いただいております。これにつきましては、美濃輪委員 の方から後ほど御説明いただければと思います。 227 ページからですけれども、柳澤委員からの提出の資料でございます。主に小児科 学会全般の小児救急医療システムや小児科医の確保対策という資料をいただいておりま す。幾つか御紹介いたしますと、最初の方は小児救急医療に関する様々な問題点や御提 言です。後半部分ですが、240 ページからはこれからの医療における小児科医の役割と いうことで、現在の小児医療、小児保健の課題につきまして、小児科医はどのようにな すべきかといったことにつきまして幅広く御紹介をいただいております。 そして245 ページからは、小児科医志望者の最近の動向ということで、とかく今医学 部の卒業者が小児科医を希望する人が減っているという御指摘であり、それに関する具 体的な資料です。  248 ページからは、小児科医に入局する女性医師についての資料です。 また、259 ページですが、これは平成10年に日本小児科学会の理事会でまとめられま した「医師の育児環境改善に関する提言」ということで、特に育児について院内の保育 環境の整備や勤務環境の整備、医師の育児環境改善に関する御提言ということでして、 この小児医療全般に関する御説明を後ほどいただければと思います。 また、妊娠・出産に関しまして、中野委員から資料を提出いただいておりまして、こ れは前回、中野委員の御説明を文章にまとめられたものでございまして、これを踏まえ まして、事務局の方でたたき台の修正などをしたいと考えております。 271 ページからは、事務局の方で用意した資料ですけれども、予防接種に関連する資 料、これは結核感染症課からいただいたもので、感染症の発症動向の年次推移だとか、 276 ページ、277 ページに関しましては、届け出患者数や接種率の資料です。 279 ページからは、生活衛生局の方でやっております家庭用品に係る健康被害病院モ ニター報告でして、これはいろんな家庭内の事故に関する厚生省の調査ですが、280 ページの真ん中あたり(2) ですけれども、「小児における家庭用品等の誤飲事故に関す る報告」で、誤飲事故につきまして、たばこが多い、または電池、食品といった報告が あります。それに関しては、307 ページを御参照いただければと思いますが、307 ペー ジの表の4、各年度別の小児の家庭用品の誤飲事故の報告件数で、たばこが第1位、あ と医薬部外品、医薬品が続いているという状況でございます。  そして308 ページ、309 ページに関しましては、見やすい資料ですけれども、図の2 が年次別に何が多いかということで、断トツでたばこが多いということと、309 ページ ですけれども、なぜか夕方の6時ぐらいに誤飲事故が多いということと、それから図4 ですが、6か月から11か月に急に多くなりまして、あとはだんだん減っていくというよ うなことで、各年代別に違うという事例です。 それから311 ページからは、本年度に行います乳幼児身体発育調査の概要です。これ は10年おきに行っている調査で、例えば、母子健康手帳にあります発育曲線等に利用さ れます。 315 ページに身体発育調査の調査票がございます。ちょうど健やか親子で目標値を設 定いたしましたら、10年後にこの調査項目がどれぐらい変化したかというのがわかると いうようなことにも使えるわけです。特に315 ページの真ん中あたりの栄養に関しまし て、母乳・人工乳の有無、これから母乳がどれぐらい進むかといったこともわかります し、また妊娠・出産に関しましては、妊娠中の喫煙の状況や飲酒といったものがわかる と思います。  併せて行う健康度調査のアンケート調査を載せております。318 ページからその具体 的な質問項目ですけれども、かなり健やか親子の育児不安に関する情報などを入れてお りまして、例えば319 ページのQ6は、育児に自信がもてないことがあるどうかとか、 子育てに困難を感じることがあるかとか、虐待をしているのではないかと思うことがあ るかとか、そういうデータが出まして、これがベースラインとして10年後同じ質問をす ると、どれぐらい減るのか、もしくは増えてるのかというのが評価できるということで す。 320 ページにも、先ほどのQ19ですが、妊娠・出産の状況で満足したか否かというよ うな問いだとか、SIDSについてがQ20、それから321 ページのQ26などは、急病の 場合に、すぐ診てくれる病院が見つからず困ったことがあるかどうかという小児救急に 関する問いなども入っております。こういう調査をやることによって、10年後の資料が どう変化するかということでモニタリングができるということです。 あと331 ページからは、厚生省の「平成11年人口動態統計月報年数(概要)の概況」 ということで、ちょうど6月末に出たばかりのものでして、妊娠・出産に関する基礎的 な資料がここに載っておりますので、御参照ください。 神谷委員からの御提出の資料、別冊でございます。21世紀の感染症対策ということ で、感染症新法に基づきましてどのような対応が必要かといったことと、5ページ目、 予防接種の現状と将来に関すること。予防接種に関するいろんな問題点の御指摘などを いただいております。これにつきましては、後ほど神谷委員から御説明をお願いしたい と思います。 以上でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。 それでは、前回と同じように資料を出していただいた先生方を中心に、こちらから指 名をさせていただいて、御説明の追加等をお願いしたいと思います。 最初に、小児救急医療とか子供の事故の実態や、その防止対策、SIDS等につきま して、田中先生からお願いをいたします。 ○田中(哲)委員  上手に説明できるかどうかわからないのですけれども、資料集の66ページの表をちょ っと見ていただきたいとういふうに思います。 この表を見ていただくと、これには死因順位、どんなもので亡くなっているかという ものをあらわしたものでございまして、これを見ていただきますと、例えば、ゼロ歳で は第3位に乳幼児突然死症候群、それから第4番目に事故です。それから1歳〜4歳、 5歳〜9歳、10歳〜14歳ではすべて事故が死因のトップを占めておりますし、その中で 割合というのがありまして、全部の死因に対するこれらの疾患、あるいは項目の割合を 見ていただきますと、例えば、1歳〜4歳では事故が25%、5歳〜9歳では37%、10歳 〜14歳では23%、すなわち、いわゆる乳児期を除きますと、子供たちの亡くなる原因の 4分の1ないし3分の1は事故で亡くなっているということがおわかりになると思いま す。 また、ゼロ歳では乳幼児突然死症候群が新しいデータでは約400 名ぐらいということ で、そういう中で、いわゆる国民運動として展開して子供たちの死亡率を減らすことの できるものとしては乳幼児突然死症候群と事故があるのではないか。先ほど死亡率を減 らすだけが究極の目的じゃないということで、私もまたちょっと誤解を受けているみた いなんですけれども、いわゆる「健やか親子21」とかというようなところで、国民運動 として行うものとしては、事故あるいは乳幼児突然死症候群について今後対応していか なきゃいけないし、まだまだこれらは国民運動をすることによって減らすことが可能だ ろうというふうに思っております。また事故に関しては、例えば、死亡数の多さは当然 なんですけれども、少子化の現在、子供たちを健全に育成することが前にも増して非常 に大事になっている。また資料の中に書きましたけれども、最近は子供の事故は特に発 達を見据えて的確に対応すればかなりの部分は防げるであろうし、対費用効果も決して 悪くないであろう。 それから資料集の60ページでちょっと小さいんですけれども、国際比較を行っていま す。一番上にゼロ歳の乳児です。横軸に全死因をとっていまして、縦軸に事故をとって います。そうしますと、先ほどから我が国の小児保健水準はということで、確かにスウ ェーデンあるいは日本がトップで、非常にいいわけでございますけれども、事故に関し て、縦軸を見ていただきますと、日本より悪いのはニュージーランド1か国だけという ことで、そういう面でまだまだ遅れているだろうし、改善の可能性があるだろう。1歳 〜4歳を見ますと日本も少し真ん中に入って、これで見ますと全部の死亡率も決して先 進国の中ではよくない。事故もよくないということで、先ほど来、小児保健は世界的水 準であるということなんですけれども、乳児死亡が世界的水準であって、それより少し 大きい子供たちについてはまだまだだということ。特に事故が非常に改善の余地がある だろうということだと思います。 それから死亡率は結構減っているんですけれども、そのほかに入院したり、外来を受 診するような事故については、この20年余り減っていないというようなことがありまし て、これは何とか対応していく必要があるだろうし、減らせる可能性もかなり高いだろ う。また、先ほど補佐の方からありましたように、もし国際的にスウェーデン並みに死 亡率を減らせれば、毎年ゼロ歳〜4歳で500 人ぐらいの子供たちが救命できる。ある意 味では犬死にをしているというふうにも言えるのではないかと思います。そんなこと で、今後これから対応の急がれる問題、課題ではないかというふうに思います。  それでは、具体的にどうかといいますと、最近では検診の際に発達を見据えて対応す るというようなことで効果があるんじゃないかというようなことも既に報告されており ます。また、保育所から情報発信するようなことも考えられるんじゃないかというふう に思っております。それから澤先生のところから後ほど御説明があるかもしれませんけ れども、保健所に事故防止センターみたいもので啓発をする方法もある、あるいは県レ ベルで協議会をつくっていろんな関係部署が対応していく方法もあるんじゃないかとい うことで、具体的に対応する時期にきているのではないかということで、今後21世紀に 向かって、今回の健やか親子の中で事故防止についてはうたってほしい。そしてまた効 果が上がる問題ではないかというふうに思っております。 それからSIDSに関しては、2年半ぐらい前に全国調査を行いまして、我が国で も、うつ伏せ寝と喫煙と非母乳保育がリスクファクター(危険因子)であるということ が明らかになったので、それらをお母さんたちに啓発していくというようことが大切な ので、その際には育児不安をあおらないで、母乳等も出ないような方もいらっしゃると いうようなことを踏まえていく必要がある。このキャンペーンをしまして、平成11年の データは少しまた戻っていますけれども、少なくてもキャンペーンを開始するよりは減 っているというようなことで、キャンペーンを徹底していくということと、ある意味で はたばこを吸わないとか母乳でということは育児の基本に戻るというようなことで、そ ういう意味で基本に戻った育児をというようなことを進めていく必要があるんじゃない かというふうに思います。 それから救急に関してなんですけれども、既に先生方御承知のように、小児科医が不 足しているとか、あるいは不採算の問題が非常に大きく足を引っ張っていますけれど も、どうしてもこれから子供たちの健康をというようなことを考えていくに当たって、 やはり専門家の小児科、あるいは婦人科、産科医が不足するということは、我が国の子 供たちにとって非常に危機的なことであるというふうに思っております。そういう中で どのようにして、いわゆる医療関係者の人材を確保していくかということは非常に重要 なことになるのではないか。そういう面で、ただ単に健やか親子で国民運動をするだけ ではなしに、基本的なベースをしっかり支えていくというようなことも非常に必要にな るのではないか。これらは育児不安の解消、あるいは今、国を挙げて行っている少子化 対策の中で非常に大きな位置付けを占めるのではないかというふうに思っております。 以上でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。 今のお話にも出てきましたが、実際に保健所において子供の事故防止に取り組んでい らっしゃいます澤先生からお願いいたします。資料の147 ページです。 ○澤委員  資料の147 ページをお願いします。今、田中先生のお話にありましたように、豊島区 の保健婦たちは日々の保健婦活動の中で、事故に対する問題意識が強く従前よりありま した。その中で検診時、4か月検診、1歳6か月検診、3歳児検診の集団指導という場 面の中で、従来パンフレットを使って事故に対する注意啓発活動をしてまいりましたけ れども、親たちの反応がいま一つぴんときていないような感じが非常に強かったという ことがありました。豊島区では平成8年の11月に、保健所が2つありますけれども、そ の中で池袋長崎保健所の会議の中で、事故予防センターというものをつくってみたいと いう意見が出てまいりました。そのときにオーストラリアにあります施設をぜひ見学し てということで、保健婦だけではなくて事務職、それから環境衛生監視員も含めて一回 視察に行かせてみたらという話がありましてオーストラリアの方に行かせてみました。 先ほど田中先生のお話にありましたように、人手とかお金はかからないで、なおかつ効 果はかなり上がるんだというふうな報告を聞きまして、では豊島区でもやってみようと いうことになりまして、平成8年の11月、待合室の壁面を使ってパネルとかいろいろな ものを展示して、そういうセンターを開設いたしました。1年半前ですけれども、平成 10年の12月になりまして、新しく池袋保健所が立ち上がりましたので、そこに日本で初 めてなんですけれども、モデルルームとして1軒のマンションの部屋たいな形ですか、 そんなに大きくないんですけれども、モデルルームをつくりまして、どこの事故が多い かということを、目で見ると「あっ」とわかるような、それでこういう工夫が簡単にで きるということも含めて、そんなものを展示して、台所とか、居間とか、お風呂場、ト イレ、階段、玄関、ベランダなんかがつくってありますので、それぞれの場所の事故の 様子と、それを予防するためその手段を自分でつくれるんだよというものを並べて展示 してあります。 これをやりまして成果ということなんですけれども、事故予防センターをつくるとき に、役割としまして、保護者及びその子供たちへの安全教育とか、教育関係者への学習 資料の提供、それから事故情報の収集、分析、発信というようなことが一応目的とされ ていたんですけれども、全国からかなり今でも視察の方が非常に多くて、大変な状況な んですが、そんなふうな中で、全国各地に事故予防センターとまではいきませんけれど も、展示をしたようなコーナーとかいろんなものが立ち上がってきましたので、ある意 味では保健所としては大きな役割がとれつつあるかなというふうに思っております。最 近ですと、仙台市の保健センターにかなりしっかりしたものが立ち上がったという資料 もいただいております。 それから2番目に区内の32保育園があるんですけれども、そこの看護婦たちが事故予 防センターのあり方を見ておる中で、自分たちでもっともっと活動しよう、事故予防セ ンターだけではなくて、自分たちが普段子供たち、そしてその保護者と接触しているん だから、事故に関してはもっともっと自分たちも役割がとれるんじゃないかということ でかなりの勢いで勉強をし始め、保健所とドッキングしながら、心肺蘇生の体験学習な ども含めて積極的に取り組むようになっております。そういう中では、やはりこれも教 育機関としての効果はかなりあったんだなというふうに実感しております。 それからまた、保健所で行っております母親学級、両親学級などのいろんな授業の中 で、見学とか、いろいろな体験学習ができるようになりましたので、そういう意味でも 非常に効果があるのではないかということで、役割としておりますところが徐々にでき 上がりつつあるなということを実感しております。 次に問題点ですけれども、これを打ち立てて、かなり力を入れて仕事をしている中 で、実際事故がどれぐらい減ったのかというのが非常に難しい状況で、今いろいろ調査 などをやっておりますけれども、知識として親御さんたちは持って帰るんですけれど も、それが本当に実際面でどれぐらいできているのかなというのがしばし疑問になるよ うなこともありまして、これからはお母さんたちのボランティアグループの方たちをこ こに参加させながら、もう少し効果の上がる方法も検討していきたいというふうに思っ ております。 それから2番目としまして、小さな子供の時期というか、事故に遭いやすい時期とい うのが非常に短い時間であるということが大きな理由だというふうに考えているんです けれども、高齢者の住宅改造のように、こちらの方はなかなか進んでいかないなという ことをいつも感じております。例えば、お風呂場での転落事故で年間100 人ぐらいの子 供さんが亡くなっているというふうには聞いているんですけれども、だからといって、 お風呂場のドアの取っ手の高さを15センチ上げれば、子供の手の届かないところにある と言われながらも、絶対業者はそれに手をつけないし、やるべきだという方向性が出て こないというのは何かいま一つだなという感じはします。 それから3番目に、事故が起こった場合、例えばプールでの事故なんかの場合なんで すけれども、原因がわかっていても、どこの所管だ、どこの所管だと。私も公務員であ りながらちょっと批判的なことを言ってなんなんですけれども、やはりお役所仕事とい うのか、責任の所在が明らかになっていかないために、同じ事故が毎年繰り返されてい くというのは非常に問題かなというふうには思っております。  これらの問題を抱えながら、私たちとしましては今後の取り組みとして、保健所とか 保健センターという場所だけではなくて、できれば医療機関でもこのようなことに取り 組んでいただきたいなというふうに考えております。先日、愛知県の子供病院が新しく 立ち上がるということで、先生方とか準備室の方が見学に来られまして、2メートル× 6メートルといいましたか、かなり狭いスペースなんですけれども、事故予防のセン ターがつくれそうなスペースをもらえるのでというので見学にいらっしゃいまして、ぜ ひできるといいですねというお話をされていたんですけれども、できれば医療機関でも そういうものができてくると、もう少しいいのかなというふにも思います。 それから具体的には、豊島区では豊島区の小児科医会というのがあるんですけれど も、500 ぐらいの医療機関があって、小児科の医療機関は15ぐらいしかなくて、小児科 医会15人ぐらいのメンバーなんですけれども、一緒に勉強会を開きながら、うちが持っ ているパネルとか、そういうものを順次展示していただくようなこともこれからはやら なくてはいけないというので、今のところは講演会のパンフレットとかチラシを配らせ ていただいて張っていただくというレベルなんですけれども、今年じゅうにはしっかり やりたいという話し合いを今しているところでございます。 参考までに、この「のびのび子育て」というパンフレットなんですけれども、職員が 全部手づくりでつくっているものなんですが、職場の印刷機で印刷しておりまして、職 員がすべて絵もかいてつくったものです。これに先ほど田中先生のお話にありました成 長の段階に応じた事故の種類などを書いてありますので、4か月検診で全部お配りして お話をさせていただくんですけれども、こんなふうなものを入れてあります。 それからあと手づくり安全グッズといいまして、どういうものがつくれるかというふ うなもの、それから一番人気なのは幼児視野体験メガネというんですけれども、これを こうやってかけますと、かなり視野が狭いので、幼児の視野はこんなものかというのが 実体験できるんです。それとはあとチャイルドマウスといいまして、32ミリの大きさの 筒になるんですけれども、これを見ていますと、大きな電池とかミニカーまでが飲み込 める大きさだということが実際わかりますので、大体この2つは親から「えっ」という 反響が得られるようなものなんですけれども、ですから、そういうものは手近なところ に置かないようにというような指導をやっております。  それからあと、心肺蘇生のことを地域の児童館めぐりの中で、親御さんに体験してい ただいておりますので、そういう中でこういう資料を使っているということで、余りた くさん資料があるので、かえってどれだけきちっと読んでいただいているのかよくわか らないんですけれども、こんなふうなもを職員がいろいろ自分たちで努力しながらつく り上げまして、全員の方に配布させていただいているというのが現状です。 以上でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。今の事故の問題について、何かこの場でという御質問ござ いましょうか。もしよろしければディスカッションは後の時間にさせていただきまし て、次にちょっと話題が変わりまして、子供たちの感染症、あるいは予防接種の実態と か、あるいは国際比較につきまして、神谷先生から御発言をお願いいたします。 ○神谷委員  お手元の資料には、ちょっと遅れて出したものですから別冊になっておりますが、提 出資料というのと、それから先ほどちょっと御説明があった厚生省からの真ん中に青い 枠が入りましたその後の発生率とか、ワクチンの接種率とかというデータがあります が、結核感染症課の方にお願いをして一番新しいデータをそこに載せていただきまし た。  あと、美濃輪先生からもまたお話があるかと思いますが、まず感染症については、100 年前にできた感染症予防法が20世紀へ向けてつくられたもので、今度は21世紀へ向けて 新しい感染症予防法ができたということで、その骨子は後で詳しく読んでくださればお わかりになると思いますが、1つは新しく起こってくる感染症とか、あるいはもう既に 過去となったと思っていたら、また新しく再度起こってきた感染症、そういうものに対 する対応策、例えば結核なんかはそのいい例なんですが、そういう対応策をどうしてい くかということについての考え方と、それから今までは法定伝染病、(今度は分類上な くなっているわけですが、)というのがあって、そして罹患したらすべて隔離して外へ 出してもらう基準が非常に面倒でした。そういうところを、今回の感染症予防法では、 先ほどから赤ちゃんのところでも議論になりましたけれども、1つは情報を公開すると いうことと、それからもう一つは本人のプライバシーを守るということと、もう一つは いる必要のなくなった人をいつまでも置いておかないということで法律の構成ができて おりまして、それに沿った新しい分類に変わりました。したがって、これはそういうこ とでは非常に進歩的な新しいやり方だというふうに思います。新法は細かいところで は、いろいろ問題が出てくる面もありますけれども、しかし、もう少し慣れてくればか なりうまく運用ができるようになってくるんじゃないかと思っております。 次は予防接種の問題ですが、病気は御承知のように、まずかかって治療するよりは予 防するというのが基本的な考え方であります。これは世界共通誰でもそういう考え方を 持っておられると思います。日本でもいいワクチンができておりますし、予防接種の普 及率も高くはなっているんですけれども、しかし、ものによってはなかなか接種率が上 がってこない。1つははしかの問題があります。少し遅れておりますが、WHOはポリ オを2010年までに制圧をするということと、それに続いてははしかの撲滅を目標にして います。はしかの予防接種をすればかからなくて済むのに未だに何百人という子供がは しかで死亡しています。それは予防接種をほとんど接種していない子なんです。接種率 80%をちょっと切るぐらいのところから、進んでおりません。どうPRをするかという ことが非常に難しいのです。ワクチンは怖いものだという意識が非常に国民の中に浸透 している。それを少しでも和らげていくために、努力はしてきました。ちょうど美濃輪 先生の資料の後ろの方に、「予防接種と子供の健康」というのを載せていただいており ますが、これは厚生省で私たちがお手伝いをしてつくったものなんですけれども、(211 ページぐらいから後のところですが、)この文章を委員の先生方がごらんになって難し いでしょうか。とにかくこれだけのものが今のお母さんは読めないんです。読もうとし ないというよりも、読んでも理解ができないということで、今回予防接種法が平成6年 に変わったときにこういうものをつくったわけですが、それに対して今度見直し、委員 会でお医者さんはそういうことを余り言われなかったんですが、一般の委員の方からは 難しい。頭の固いというか、非常に柔軟性に欠けている文章だということを再三言われ まして、私達も随分力を入れてつくったものなので、大分がっくりきました。面白味が 欠けるということがあるのと、それから今のお母さんたちは漫画世代で、もう少しアニ メとか、漫画とかそういものを使ったり、あるいは今回日本医師会が風疹の予防接種の ポスターをつくられて、人気のある女優さんの写真を入れたら、それはすぐ盗まれちゃ うというぐらいポスターには人気がある。ところが、その子か親かわかりませんがワク チンを接種するかというと恐らくやっていない。そういうような現状が日本にあるの で、これをどうするかということなんです。私の資料の一番後ろに、先進国の代表とし てアメリカのスケジュールがありますが、アメリカは日本より少し予防接種の数も多い んですけれども、日本と一番大きな違いは、学校へ入るときに予防接種をやっていなか ったら入れないという学校保健法があるわけです。そこでひとつかせをかけて、もちろ ん、米国でも日本でも今努力義務ですから例外はあります。義務ではないけれども、学 校に入るときにみんなに迷惑をかけないという意識からそれを極力やりなさいというこ とを勧める。宗教的な問題と、どうしても主義でやらないという方は接種しなくてもい いことにはなっていますけれども、それ以外の方はやるということになっており、摂取 率も高くなっています。日本はそれをやっていません。  私たちのところも、(三重県の津市ですが、)私たちが校医をやっている学校で入学 のときに、お母さんを説得して、200 人ぐらいの1年生で入っている子たちの血液をい ただいて、そのワクチン歴を聞いて、どのぐらいの人が抗体(抵抗力)を持っているか につき測定したのですが、大体100 人のうち5人から7人ぐらいは、はしかにしても風 疹にしても抗体のない人がいる。そういう子たちのうちワクチンを打っていないのがそ のうちの70%ぐらいで、ワクチンも100 %つくものじゃありませんから、2%ぐらいは つかない子がいる。そういう人がたまってきますと、5年ぐらいでかなりの数になっ て、それがまた流行するので、何とかそこで流行をとめるためにワクチンを接種しまし ょうということを言うのですが、その年齢まで接種していない人というのはなかなかそ れから接種はしないのです。6年生のときにもう1回聞いてみても、言ったことを守れ ないということになるとやはり規則をはめなきゃいけない。ただ、そういうときにやら なかったお母さんで、僕が一番あきれはてるのが、例えば、アメリカの学校へ今度子供 が留学することになった。そうすると、やっていなかったら入れてもらえないという話 になったら途端に、2か月ぐらいしか行くまでに暇がないのに、その間に全部やってく ださいと。「あなた、なぜやらなかったの」と言うと、とにかく私は予防接種は反対な んですが、アメリカの学校にうちの子が留学できないから、何でもいいから全部やって ください、というようなことを言ってやってくるお母さんが結構あるという現実が日本 にはあるということで、そういうのに対してどう対処していくかというか、そういう風 潮を少し直さなきゃいけない。  1つはインフルエンザの問題で、美濃輪先生はどちらに回っておられたか知りません が、過去は、学校でも養護の先生がかなり反対でした。というのは、効果がはっきりし ないワクチンを1年に2回ずつずっと接種していくのが企業の擁護であって、これはワ クチンが効いていないじゃないかという議論があって、子供たちを中心に、子供たちの 感染が一番大きいからそこをやめていこうということをやってきたのですが、それを受 けて任意接種に変更になりました。そのときにお年寄りたちはやりなさいということは 付記されたけれども、子供がやめちゃったらお年寄りの方には全然広がらなかったの で、今回のようなことが起こったということと、それからもう一つは、お年寄りはその ころはすでに死んでいていかなかった人たちが、65歳を超えてたくさん生きていて、し かも、老人ホームだとか特養だとかそういうところで集団生活をやるようになったとい う環境条件が変わった。ですから、感染症というのは、そのときの時代時代によってい ろいろ変わっていきますので、それにどう対応してうまくやっていくかということが問 題であって、この「健やか親子21」の中では、とりあえず、子供たちの接種率を上げる ということについてどういうアイディアが一番いいのか。日本という先進国として、予 防ということに関する考え方を何とか確立できないかということが私が提案をしたいこ とでございます。あとは内容を読んでくださればと思います。 以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。今お話が出ましたように、実際に学校で予防接種はどうな っているのかというあたりの実情を美濃輪先生からから伺いたいと思います。 ○美濃輪委員 予防接種については、今、神谷先生の方からいろいろ詳しくお話をいただきましたの で、重複しないようにしたいと思いますが、市町村とか、地方行政において、かなり取 り組みが異なっているのではないかというふうに思っています。今回は横浜でやってい ることをお話ししたいと思います。 予防接種に関しては、私自身子供の命を守るという立場では反対するものではありま せんが、養護教諭の立場としては、やはり必要でないものに関しては今までそういう活 動をしてきています。この問題は、横浜市でも養護教諭を主体として行政、医師会等地 方行政の方、衛生局との継続検討課題として現在今まだ続いております。学校でやって いるものとして、勧奨のものについては問診票の配布と、先ほど202 ページから中学生 の予防接種についてとか、神谷先生がつくっていただいたという資料を配布して、子供 たちにぜひ受けるようにという指導はしております。小学校では日本脳炎、二種混合、 中学校では風疹、日本脳炎に関して勧奨をしております。ただ、接種年齢の幅が広いの で、いつ受けているのか、いつ受けたのか、また何歳で受けられるのかつかみ切れない ところが問題点かなと思っています。現在、学校で実施しているものは結核検診のみで して、予防接種に関してはBCGだけです。小1、中1、それから小2、中2、ツベル クリン反応陰性者に対してのBCGは実施しております。集団接種における事故が一番 問題、つぎに副反応が問題であるわけですので、安全性が一番問題ではないかと私たち は認識しております。  現在、横浜市でも、第1回目のツベルクリン反応とBCGに関しては、集団接種は学 校でやっておりますが、受けない子供に関しては、それは学校医にお願いしております けれども、接種医という立場で、かかりつけのお医者さん、または校医のところでやれ るように少しずつは前進をしている実態です。神谷先生のおっしゃるように、お母さん 方の意識の問題が非常に低いと言ってしまうと問題だと思うんですが、その辺の理解を 得ることが難しくて、新入生の説明会ですとか、保健だより、生徒には保健学習の病気 の中での予防接種、ワクチンのところで取り扱ってはおりますけれども、定着している かなというのはちょっと疑問には思います。  そのほかに結核検診を欠席している生徒が、横浜市でも5,000 人ぐらいありまして、 それが二、三年前から問題で、今結核がかなり蔓延してきていることに問題意識を持ち まして、話し合いを三者でしているところなのですが、私は明日、お母さんが連れてい けない子供たちを引き連れて病院の方に行くという実態もあります。そういうことは 我々の教育現場としては非常に負担になってきている。やらないというわけではないん ですが、安全性の問題、危機管理の問題とかを考えますと非常に負担でありまして、ぜ ひ予防接種については法律の枠、予防法ですとか、そういういろいろな枠を超えた中の 「予防接種センター」みたいなものがつくられて、個人個人が一生の中でやらなければ ならない予防接種についてきちんと管理ができていければいいんではないかと願ってい るものです。ぜひそのように、この中にでも盛り込んでいけるとありがたいなというふ うに思います。簡単ですけれども、以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。 予防接種あるいは感染症全般でも結構ですが、何か今の御発言に直接の御質問がござ いましたらお願いいたします。  今申し上げるまでもなく、予防接種は努力義務ということでございまして、接種方法 としては、基本的には個別接種になっておりますので、学校に入る前の乳幼児期は、子 供が嫌だといったってお母さんが連れていってくれればみんな受けられるんですけれど も、学校へ入ってからの予防接種の分が、学校の休みのときは先生の方も休みというの で、なかなか受けられないということもありましたり、痛い思いをしにいくのは嫌だと いう子供が多かったりして、例えば、中学生の風疹の予防接種率なんかは集団接種をや っていない地域では、20%そこそこというひどさでございまして、また風疹の流行が起 こったときに、先天性風疹症候群が多発するのではないかという心配を予防接種の関係 者は皆さんお持ちのようでございます。そんなことで子供たち自身に対する健康教育が 大事だという声が最近私どもの耳によく入ってまいります。そんなことも含めて、また これから御検討をいただきたいと思います。  それでは続きまして、周産期の医療システムについてお話をいただきたいと思いま す。多田先生お願いします。 ○多田委員  それでは今日の前半の部分にも多少関係いたしますので、周産期医療システムの資料 について説明させていただきます。 最初は14ページを見ていただきますと、これは平成6年度で少し古いのですが、厚生 省の心身障害研究「ハイリスク児の総合的ケアシステムに関する研究」という中で周産 期医療システムをどうするかということを、それまでの長い間の周産期医療システムに 対する研究班での成果をまとめた提言でございます。後ほど申し上げますが、3次の救 急的な部分と、それから2次、1次というようなケアが必要であろう。それを各都道府 県にどういうふうに配置したらいいかということをここで提言いたしました。 それから、それに必要な施設、あるいは人員の問題を16、17ページに書いてございま す。これが基本になりまして、今回は資料を提出いたしませんでしたが、総合周産期医 療整備事業という事業に厚生省が平成8年から実施要綱をつり、これを全国に広げる形 で現在事業を進めてくださっております。 それから18ページは厚生省の心身障害研究で、その後、中村班長のもとにこの問題の 検討を続けております。本日お配りいたしました、この青い色の資料がこれの詳細でご ざいます。全国の非常に細かい周産期医療に対するデータが載っておりますので、何ら かのときに御参考にしていただければと思います。ここの資料と、本日の資料集の中に は、それをかいつまんだ報告だけ載せております。特に周産期医療システムについての 部分を抜き出してここに載せてございますが、この全体の報告書の中には、ここにも御 出席の山縣委員も分担研究者になって、その後、長期入院とか、あるいは乳幼児期ある いはさらに大きいところまで、こういうものが引きずっている部分をどうするかという ようなことも検討しております。資料集には載せてございませんが、参考にしていただ ければ幸いでございます。 それから続きまして、31ページにはその前年度に少しまとめました報告書が載ってお ります。それから34ページは、これは「平成7年3月」と書いてございますけれども、 日本医師会が母子救急医療に関する検討委員会というものを設置し、日本医大の荒木教 授が委員長となって検討しております。その報告書を答申として出したものがこの34 ページ以後でございます。母子医療は救急医療と考えて検討すべきであるという考え方 がここに載っております。これが先ほども申しました整備事業にかなり大きく貢献をし たものでございます。それをまとめまして、本日5ページから私が簡単にまとめておい たものでございます。周産期医療の整備の対象というのは、先ほどから議論がありまし たような非常な重症な患者さんと、集中治療は必要ないけれども、普通の診療所、病院 では治療が不可能で、新生児の専門医療施設でケアをすべきである、小児科でケアをす べきであるという患者さんと、それから特別な治療は不要だけれども、異常を生じない ような医学管理、あるいは先ほどの快適な医療を提供するというような意味でのケアが 必要な部分、先ほどの議論の剃毛そのほかの問題は3のところに入る部分と考えており ます。  この各々について一応下に書いてございますが、大体人口100 万について一つの周産 期医療圏と考える。都道府県の中では人口の少ないところは100 万ぐらいですし、大き いところは医療圏が2つ、3つあるということになると思いますが、そこにセンターを つくる。そして重症な患者さん、あるいは母体搬送でそういうものが産まれる症例はこ こに集中をする。しかし、中等度あるいは軽症のものは人口10万から30万ぐらいの2次 医療圏というものにセンターを整備し、産科的な合併症も含めてここで管理をすべきで あろうということです。こういうものが整備されますと、3番の特別な治療は必要ない ような医療機関が、夜間救急24時間体制を組むということが困難なために、診療をやめ てしまう産科の施設がかなり多くなっておりますので、こういうものが外来を中心とし て分娩を扱わない場合には、2のところにあります地域の周産期センター的なところ で、オープンまたはセミオープン的な形で診療を行うことができますし、あるいは御自 分のところで分娩までなさる施設は、異常があればいつでも対応してもらえるというこ とができるようになると考えております。これは後ほど小児科の救急でも恐らく出てく ると思うのですが、私どもがここで産婦人科の先生と一緒に検討しましたところでは、 産科の異常が起こったときには、30分で大体対応ができる体制を各地につくるべきであ るというふうに考えております。というのは、産科的な異常が発見されたら電話してお いて、すぐ帝王切開の用意をしておいてもらって、地域のセンターに急いで行けば大体 30分ぐらいでそこに行き着くであろう。今モータリゼーションが非常に進歩しておりま すので、そういう形での救急体制ということが必要である。これは小児も同じであろう というふうに考えておりまして、大体30分ぐらい車で走れば診てもらえる救急センター というものが今後整備されていくべきであろうというふうに思います。そうでない部分 は、3のところで、その施設が各々クオリティの高い、あるいは満足がいくような医療 を提供できように整備をすべきであろうというふうに考えております。 これが3、4の部分でございまして、そしてこれと同時に周産期センターというもの が整備されますと、当然その子供たちは長期の入院が必要になりますし、退院後も小児 科で再入院が多くなります。それから現在の周産期医療では、いわゆるNICUに入る ような重症の子供のかなりの部分は社会的なハイリスクです。初めから産科的に管理を よくして、祝福されて妊娠・分娩を経過した人たちは比較的異常が起こらない。社会的 に医療機関を受診できなかったり、いろいろ問題がある疾病を持つ、あるいは問題があ るような方から異常で出てまいります。したがって、この周産期医療システムというの は、その後地域の小児医療や、あるいは保健福祉とも密接な関連がないと機能していか ないと思っております。先ほど戸田委員から産科でハイリスクが見つかるんじゃないか という話がありましたが、私たちもこのシステムの中では当然そういうことを考えてお りまして、この周産期医療システムといいますか、センターが産婦人科の先生からハイ リスクを送っていただく。あるいは、それが保健所とか福祉とかそのほかが一緒になっ てケアをしていくということができる。バラバラになっておりますとそういう拠点にな りませんので、今後は周産期医療がそういうことをするということではないんですが、 このシステムを小児とか、育児の方にも広げていくということが必要であろうというふ うに考えております。これが小児保健、福祉領域との連携ということでございまして、 そのコーディネーター的な部分というのはこういう施設が担っていく。もちろん、そこ に本来ならば保健所や児童相談所、福祉養育施設みたいなものが附属しているといいま すか、一緒に仕事ができると良い。虐待の問題でも、警察とか、それから弁護士とか、 あるいは児童相談所とか、いろんなものが一つのところに働かないと意味がないという ことは昨日も放送しておりましたが、そういうような施設として今後整備をされていく べきであろうという考えを持っております。  7から整備すべき項目と根拠というところに、ただいま申しましたような連携が必要 であるということを述べております。1つは虐待防止についてということでございまし て、かなりの部分が周産期から出てくる。これは先ほどお話がありましたように、小さ い子供とか、障害の問題だけではございません。障害の問題は小さい子供に出ておりま すが、ごく小さい500 、600 グラムの赤ちゃんから出ておりますが、それはそういう医 療をきちんとすることによって、それより大きい子供の障害をなくしておりますので、 トータルとしては私どもは社会全体では減っていると考えます。しかも、その障害が出 た子供たちに対しては、クオリティの高い、先ほどのような、それを社会で受け入れて いくシステムをつくっていかなければいけないというふうに思っておりますので、そう いう意味では周産期センターと、こういう福祉や児童相談所なんかと協力をして虐待予 防のために取り組むことが必要であろう。NICUでかなりの部分が把握できますし、 それ以外の社会的なハイリスクも、今後は産科の先生と協力して育児のスタートをこう いう施設で協力をしながら支援をしていくということが必要になるのではなかろうかと いうことから、これは周産期医療だけではなくて、このシステムは小児保健のシステム と一致することが望ましいということが具体的提言というところに書いてある部分でご ざいます。  それから次に9ページには、人的確保ということで、小児を含めて厚生省に先ほどお 話ししましたような、3次、2次の医療を整備していただく、総合周産期あるいは地域 周産期医療センターという形で整備をしてくださっておりますけれども、この整備が進 まないのは、かなりの部分は地方自治体がお金を出してくださらないという今の財政状 態が悪いところもありますし、この「健やか親子21」でも、年度を決めてある程度整備 をするというのを進めていただいておりますが、何せ人がいないということも一方では ございます。施設をつくっていただいても人が得られないということで、その現状とそ の対策、これは小児医療にもつながる問題でございますが、その現状の調査とどの程度 条件が悪いか、医師に負担がかかっているか。そういう負担がかかっている以上は、ま すます若いドクターはそれを見て、こんなところには行かない。学生さんは時間があっ て、ある程度収入の高いところを目指しますので、非常にやりがいがあるということは 言うのですけれども、小児医療、あるいは新生児医療を志す人がいなくなってしまうと いう現状を書いたものでございます。 12ページには、そのために「21世紀の新生児医療を推進させるための戦略」と書いて ございますが、これは小児医療の対策にも共通の部分だと思います。それで、我々はど のように考えるかというと、本日この検討会でかなり議論されておりますけれども、マ ンパワーを何とか増やすということが大事だと思いますし、それはかかる側の御両親や 患者さんだけではなくて、医療を提供する側のクオリティも高めないと結局は人が少な くなってしまう。新生児の医療で周産期医療の整備計画をつくっていただきましたの は、こういう集中化をしていかないと、各病院が自分のところで整備をしていくという のではとても経済的にも成り立ちませんし、人員的にも成り立たない。集中化していく べきであろうということで、整備が進んでおりますけれども、さらに人的なものを確保 する対策というのがないと、これ以上の整備の推進ができないところまできているとい う現状の資料を提出させていただきました。 以上でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。 厚生省でも「新エンゼルプラン」の中では、この周産期医療の地域のシステム化、ネ ットワーク化を大変挙げておられますので、この辺いろいろまたまとめていただきたい と思います。 最後になりましたが、小児医療全般ないしは救急医療、あるいは小児科医の養成等も 含めまして、柳澤先生から御発言をいただきたいと思います。 ○柳澤委員 それでは、私の提出しました資料の説明、あるいはまた意見というものをかいつまん でお話ししたいと思います。  その前に、「子供のからだの健やかな発達を図るための環境整備」という課題になっ ていますけれども、この言葉遣いに、特に小児科医として、あるいはまた小児科をずっ と教えてきた者として大変違和感があるということを、これは前置きですけれども指摘 しておきたいと思います。ですから、この主要課題を「子供の健やかな成長発達を図る ための環境整備」というようにしていただきたい。これは皆さんの賛同が得られればと いうことですが、私としてはそういう意見を持っています。 少子社会であるからこそ小児科医の役割が重要であるというようなことが今まで盛ん に議論されてきましたけれども、また、責任が非常に重いものがあると思います。一 方、社会からの小児科医に対する要請、また期待というものも非常に大きいというよう に思います。小児医療は非常に多岐にわたる、内科に匹敵するサブスペシャリティを抱 えておりますけれども、その中でも、特に現在不足している領域というのは、今までも 盛んに述べられたように新生児医療、それから救急医療、特に初期救急だと思います。 そして思春期の医療、学校保健、こういったところが特にマンパワーの不足というもの が深刻な状況にある領域だというように思います。 小児科医の果たすべき役割に対して、小児科医の数が圧倒的に不足している。これは 実感でもあり、またこの点に関しては、実際データの上でも示されております。現在ど んどん拡大していく役割に対して、小児科の特に境界領域の問題については、他科、こ れは内科ですとか、児童精神科、あるいは産婦人科、そういった他科との協調も非常に 重要ですし、小児科医自体の資質の向上というものも欠かせないと思います。これらマ ンパワーの不足している現状の中で、今回のこの主題に最も関係が深いのは小児救急医 療だと思います。現在、小児救急医療は、特に1次救急、初期救急、それからまた言葉 を変えれば休日・夜間の診療が非常に困難な状況にあるということは皆さんよく御存じ のことではないかと思います。実際、病院の小児科に初期救急患者が集中している。こ れには医療提供サイドにいろいろな問題があり、また患者さん側、保護者の側には小児 科医の専門性に対する非常に強い要望があるというような、医療提供サイド、患者さん サイドの両方に多くの複雑な要因があってそのような状況になっている。  しかし、その中でも最も大きな要因というのは、小児医療の不採算性と小児科医の不 足だということは、今まで田中先生、あるいはまた多田先生から発言もあり、そのとお りだと思います。休日とか夜間診療を現状のように病院小児科が担当している状況で は、マンパワーの不足は決定的でして、これは平成9年の厚生省心身障害研究、これの 班長は慶応大学小児科の松尾教授でしたけれども、そこでの調査でもそういうことが述 べられております。研究班の報告書、これは一応資料として厚生省に提出しております けれども、今回の綴じ込みには入っていませんので、次回の資料に入れていただければ と思います。 病院の小児科医は非常に過労働の状態、過酷な勤務条件で疲弊しきっている。この状 況について、主要課題の説明の中にも、勤務環境の過酷さ等から小児科医師希望者が減 少しているというように書いてありますけれども、また最近マスコミでもよく取り上げ られていることだと思います。この点に関して小児科学会の調査によりますと、小児科 医の志望者数、小児科医を志望して小児科の研修を始めた人たちの数を年を追って調べ ているわけですけれども、1983年から85年の3年間の平均と1993年から95年の3年間を 比べますと約7%減少しています。この減少の中身として、新卒の男性医師の減少が著 しくて、女性医師の増加がそれを補って全体の減少として7%にとどめているという状 況です。新卒の医師では、女性医師の割合は、このところずっと40%以上で、もう間も なく50%になることは確実な状態です。これが新卒で小児科医を志望する人たちの推移 です。  一方、そういう形で小児科の研修を開始して7年から10年経過した時点における状況 の調査、これは、小児科医として研修をして、その後何年か経って、中堅として最も活 躍をしている年代だと思いますけれども、そういう研修開始後7〜10年における状況を 調査しますと、これも平成9年の心身障害研究松尾班の調査ですけれども、小児科の研 修を始めた医師のうち、男女合わせると16.7%の人が小児科の診療から離れている。こ れを女性だけで見ますと、31.4%が小児科の診療から離れております。およそ3分の1 近くの小児科を志望した女性医師が、10年ぐらい経ったところでは小児科の診療から離 れている。このことは小児科のマンパワーの不足に非常に大きく追い打ちをかけている ということになると思います。実際、妊娠・出産・育児と診療の両立の困難ということ がその根底にあると思います。  そういう状況で、学会としても、この現象を非常に重く受けとめて、これは今度の資 料の中に入っていますけれども、「医師の育児環境改善に関する提言」というのを出し ました。女性医師のQOLを向上が必要である。特に妊娠・出産・育児と仕事との両立 を図るにはどうしたらよいかということで、実際第一線の女性医師の先生たちの意見も 聞いたりして議論いたしました。結局これは当然のことですが、小児科医だけの問題で はなくて、女性の医師、小児科医に限らず医師全般に通じる問題であるし、またさらに 話を進めていけば、社会状況全般と深い関係があるということは当然で、そのようなこ とで提言としても女性小児科医師ということは言わず、ただ「医師の育児環境改善」と いうようになりました。  先ほど小児科の志望者数が減少したということを申し上げましたけれども、その調査 は1983年から1995年の13年間についてです。その後、ここ数年間はどうなのかというこ とが非常に皆さんの関心の持たれるところです。印象として多くの小児科の、特に教授 たちは、その後どんどん減少しているという印象は持っていないようです。その点を確 かめてみようということで、学会として、その後の入局者といいますか、小児科の研修 開始者の推移を調査しています。解析にはまだちょっと時間がかかって、大まかな推計 でしかありませんけれども、1996年以降減少はしておりません。横ばいか、やや増加し ている状況にある。そういうことで、現在に至るまで減少を続けているというような言 い方はちょっと具合いが悪いといいますか、小児科の医師数に関して、このままずっと 一方的に減っているというような悲観的な見通しというのは、必ずしも当たっていない ということをこの場で申し上げておきたいと思います。しかし、これは今後長期にわた って確実なことではありません。 しかし、医師全体の数に関して厚生省は過剰というように見ております。実際のとこ ろ、小児科の医師の数も、新卒の医師で小児科医を志す人が減っている傾向にあるとは 言いながら、小児科医の数は全体としては引き続いて増加しているということは、これ はまた事実でして、しかし、そういう状況で小児科医は足りないんだというように申し 上げたいと思います。例えば、日米で比較しますと、全体の医師数に対して小児科医の 割合は、日本は6.0 %で、アメリカは7.0 %です。小児科医1人当たりの小児人口は、 日本は小児科医1人当たりの小児人口は1,428 人に対して、アメリカは1,133 人という ことで、こういった医師の中での占める割合、それからまた1人の小児科医に対する子 供の数といった面でも、日本の方がアメリカに比べて少ない状況にあると言っていいか と思います。 余り長くならないようにしたいと思いますけれども、最後に小児科医の確保というこ とで、現在、学会で検討しております小児科医確保の具体策、これもまだ検討の途中 で、最終的な提言といったものにはなっていませんけれども、箇条書き的に申し上げま す。まず教育機関の充実ということがあると思います。小児医学というものは広範な専 門分野を擁しながら、教員、教官の数が大変手薄です。それからまた、研修病院の充実 ということも必要と思います。大学病院は卒前教育の面でも、また卒後の教育でも重要 な立場であるわけですけれども、小児科の定員は少ない。それからまた一般病院におけ る小児科医の定員というものも日本は伝統的に少ない。それが近年さらに減らされてい ます。 それから3番目として新生児医療、また救急医療などの部門に小児科医の定員がもっ と確保されなければいけない。例えば、病院に救急部というような部門ができたとして も、そこにかかる患者さんは子供たちが非常に多いわけですけれども、小児科医の定員 がそういったところに確保されていないというような現状が非常に多いように思いま す。 そして4番目として、女性医師の勤務環境の整備が必要だと。それを考えてどんなふ うにしたらよいかということはこの資料の中で触れたとおりです。 最後に、最も根本的には小児医療、特に病院小児科の採算性を確保するということが 重要なことだと思っております。 以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。 補足的な御意見等もおありだと思いますけれども、いただいた時間がなくなってきて しまいました。この次にまた御討議をいただきますけれども、この次の御討議のため に、お手元の資料の2にたたき台の3番、今テーマについて訂正の御要望がありました けれども、健やかな成長、発達を図るための環境整備についてのたたき台がございま す。事務局から5分程度で簡単に御説明いただいて、宿題にして読んできていただきな がら、次回これをもとにディスカッションをしていただきたいと思いますので、簡単に 御説明をお願いいたします。 ○椎葉課長補佐 それでは資料2でございます。  まず1ページ、「問題認識について」ですが、これは一番最初の会議で示したとおり の文章でして、我が国の最高レベルの保健水準のサービスのレベルを低下させかねない 事態が出現している。その対策が重要である。そしていろんな事故の予防、そして小児 医療の不採算に伴う様々な問題へのアプローチ、そして地域保健レベルの母子保健サー ビスの問題、それから乳幼児の予防接種などの低下といった問題があるという認識で す。 2ページ目、取り組みの方向性ですが、「小児期に特有な疾病や事故の予防対策と小 児保健医療供給体制整備の二つに分け、医療・保健・福祉・教育関係者と行政機関の密 接な連携の下に目標値を設定し推進することが重要である」ということです。  具体的な取り組みとして「予防対策における取り組み」では、まず事故防止対策を進 めるということで、これは田中先生がおしゃったことをほぼ網羅しております。  そして、2つ目がSIDSの予防対策で、これもキャンペーンを積極的に展開してい くと言うことです。  それから3つ目、予防接種につきましては神谷先生の御指摘がありましたけれども、 予防接種の関心の低下について、この関心を高めるために情報提供の質的な転換が必要 だということで、わかりやすい、いろいろな情報提供を行っていくと書いております。 また、予防接種の接種率を上げるために、保健所や市町村の活躍を行うということが信 頼感の回復につながって予防接種率の向上になるというようなことも記載してありま す。  (2) 「小児保健医療提供体制整備に関する取り組み」ということで、一応様々な体制 整備がありますけれども、急性疾患対策そして慢性疾患対策、人材確保対策、地域保健 の対策、その他というふうに分けてあります。 まずは「急性疾患対策」で、小児救急問題について、今、小児救急医療は、1次、2 次、3次といった体系的な救急医療体制が機能不全に陥っている。特定の医療機関に患 者がかなり集中するという問題がある。これを解決するために、地域において小児救急 を全体で支え合っていくという取り組みが必要である。特に、1次小児救急機能の強化 や、基幹となる医療機関に小児科医のバーンアウトをなくすために数的な確保対策を図 るというようなことが書かれております。また診療報酬の手当も不可欠である。 そして、2番目ですけれども、これは多田先生の御指摘の周産期ネットワークの全国 的な整備が不可欠であるという記載です。 4ページの最初ですが、小児医療の採算性の問題から小児病棟が閉鎖するというよう な御指摘もあります。それについての対応が必要だということでございます。 そして「慢性疾患等対策」ですけれども、小児の入院環境について、発達途上にある 小児の特徴を踏まえた入院環境の整備、また長期入院児のいろんな心のケアの取り組 み、また家族の支援のための宿泊施設といったことが書かれております。また、NIC Uの長期入院児や急性期を乗り切ったハイリスク児、慢性疾患児の在宅医療を推進する ための体制が不足しているということで、多田先生から御指摘もありましたように、い ろんな福祉や教育機関とのコーディネート機能や、在宅看護ステーションやショートス ティなどの供給体制の整備が求められるというふうに書いております。  それから「人材確保対策」ですけれども、小児科医の確保について、それから女性医 師への対策についてということで、これは柳澤先生の御指摘のようなことを書いており ます。  また、エですが、地域保健についていろいろ業務量が減っている、福祉部局に母子保 健業務が移ったりして、専門職、技術職の確保が難しいといった問題もありまして、そ のような体制の確保を求められるといった記載をさせていただいております。  そしてオですが、そういう小児医療の不採算性に伴います小児科医や小児病床数の減 少など小児救急の問題について、ほかの科と比較して、遜色なく小児科医が確保できる ような診療報酬の改定の必要性といったものを記載しております。  また、「関係者の役割」につきましては、それぞれの主体ごとに簡単にまとめさせて いただいておりますが、これについていろいろと次回御議論をいただければと思いま す。たくさんの御意見をお寄せいただければと思っております。  以上でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。  それでは申しわけありませんが、時間になってしまいましたので、今日はここまでに させていただきますが。 ○櫃本委員  ちょっと疑問があるんですけれども、前から気になっていたんですが、一通り今全部 出たんですけれども、療育というか、障害児だとか、そういったことのフォローアップ というのはこの中で扱われるのか、いわゆる周産期の話もありましたけれども、その後 障害児となって長期フォロー、慢性疾患とはちょっとタイプが違うと思うんです。その 辺については、心の部分と重なるところがあるんでけれども、余り表に出てこなかった し、先生方の御意見の中にも余りなかったので、その辺はどこで扱われるのか。 ○平山座長  今、障害児者の関係が局が変わっちゃっているものですから、あるいは意識的に抜け ているかもしれませんが、ちょっとお話しください。 ○藤崎母子保健課長  これはむしろ先生方の御提案もいただきながら、必要であれば入れるという姿勢でご ざいます。なぜあえて入れていなかったかといいますと、この4つの柱立ては総花的に ならないように、ある程度主要課題として絞ったものです。重要な事業でも通常業務な り、ルーチンのシステムとしてやられているものについては、それとして粛々と進めて いただくという視点で、21世紀の課題として取り上げる事項は、絞り込む方向で考えて おりました。そういう中で小児慢性疾患については、長期にわたる医療の中でクオリテ ィ・オブ・ライフとか、心も含めて成長していく過程に力を入れることが21世紀の課題 として大変重要なのではないかと判断しました。そういう意味で小児慢性疾患対策も主 要課題に入るべきであろうと考えたわけなのですが、今おっしゃられたような、いわゆ る障害児の療育というものが、20世紀に行われていたケアのレベルを、21世紀に飛躍的 に拡充していく必要があるかどうかであります。今までが著しく遅れているという御指 摘であれば、それはやはり主要課題に含めていくべきだろうと思いますし、それなりに やられてきており、量的な拡充が必要であるということならば敢えて含める必要はない のかもしれません。そのあたりが私どもちょっと判断をしかねておったということで す。現在のところは小児慢性疾患部分の遅れを集中的に克服していくのかなと、こうい うふうに考えている段階です。 ○多田委員  私も先生がおっしゃるとおりだと思いますし、それから柳澤先生が指摘されたように 体だけではないので、私も3のところは「子供の心とからだの健やかな成長、発達」と いうふうに直していただいた方がいいと思います。その中で慢性疾患の疾患の問題もも ちろんありますけれども、今おっしゃったような療育的なものというのは、正常との境 がなくなってきていると思うので、ここの中で取り上げてまた一本立てるというのは非 常に難しいと思うので、この中の一つの柱として議論をしていただければ幸いだと思い ます。 ○平山座長  ありがとうございます。そういうことでしたらば、いずれにしても、追加の資料など ございましたらちょうだいしたいところでございますので、今のお話が出ました障害児 者の地域の中での療育、あるいは施設もそうかもしれませんが、そういう問題を含めま して、21世紀に向けてのお考えなり、資料なりがございましたらお送りいただければ次 回取り上げさせていただきたいと思います。 今日のところは時間切れでございますので、心の問題は虐待の防止などを含めて別に 議論はいたしましたけれども、体という格好で取り上げちゃうとまたなかなか難しい点 もありますので、この辺は事務局でもまとめる際のことをお考えになりながら、「健や かな成長、発達を図る」というような表現でよければ、そういうまとめ方をしていきた いなと私も賛成でございます。  ということで、次回にまた持ち越しになってしまいますが、夏休みがございません で、8月も21日に予定をさせていただいております。旧盆明けの時期でございますが、 またお集まりをいただきますようにお願いを申し上げます。 それでは、事務局から最後のまとめ、ないしは課長からのごあいさつをいただいて終 わりたいと思います。 ○椎葉課長補佐 次回8月21日月曜日でございますが、時間が午後1時半からとなっております。次回 の会議におきましては、今日の検討の継続に加えまして、これまでの中間的な取りまと めと目標値及びこの計画の実施方法、どのように進めるかという具体的な方法について の検討を計画しております。関係する資料、意見等につきましては、できれば8月4日 までに事務局の方に御提出をいただければと思います。 ○藤崎母子保健課長 それでは会議の終わりに当たりまして、一言ごあいさつ申し上げます。 本日も大変御熱心な御審議ありがとうございました。妊娠・出産にかかわるお話は大 変激しいやりとりもございましたが、これはまた今日の御意見を踏まえて整理をさせて いただきたいというふうに考えております。このことは、これから21世紀の産科医療を 含めたパラダイムの問題でありまして、みんなで考えていかなればいけない課題ではな いかというふうに考えております。 それから3番目の子供の健やかな成長、発達、そちらの方の課題につきましては、ま た貴重な御意見をいただきました。今日のたたき台は、私ども事務局、大変時間が押し ておりまして、必ずしも十分なたたき台だとは考えておりませんので、今日、先生方か らいただいた御意見のうち、入れられるものは入れて、また少し修正して次回お出しを したいと思います。そのために、このたたき台についての御意見をぜひ事務局にお寄せ いただいて、次回提出する段階で、既に先生方の御指摘がかなり入った形でたたき台が 出されるという形で、少しでも時間を節約して次回のテーマについてやってまいりたい というふうに考えております。  今日で5回目を終了いたしまして、胸突き八丁を過ぎたかなというふうに思っており ますが、余り油断してはいけませんで、これからまた幾つも山があるかもしれません が、ぜひ引き続き先生方の御協力をもちまして、いい報告書に最後まとめていただきた いと考えております。本日はどうも誠にありがとうございました。 ○平山座長  どうもありがとうございました。また、次回もよろしくお願いいたします。                                     (了) +----------------------------------------------------+ |照会先:児童家庭局母子保健課 椎葉(内線3173)| +----------------------------------------------------+