00/07/11 生殖医療技術に関する専門委員会(第16回)議事録     厚 生 科 学 審 議 会 先 端 医 療 技 術 評 価 部 会     生 殖 補 助 医 療 技 術 に 関 す る 専 門 委 員 会                 ( 第 16 回 )                 議   事   録         厚 生 省 児 童 家 庭 局 母 子 保 健 課      厚生科学審議会先端医療技術評価部会        生殖補助医療技術に関する専門委員会(第16回)議事次第 日 時 平成12年7月11日(火) 15:30〜18:30 場 所 霞山会館(霞山ビル9F) 1 開 会 2 議 事  (1)第三者の配偶子提供等による生殖補助医療のあり方について  (2)その他 3 閉 会 〔出席委員〕   中 谷 委員長   石井(ト)委員  石井(美)委員  加 藤 委 員  高 橋 委 員   辰 巳 委 員  田 中 委 員  丸 山 委 員  矢内原 委 員   吉 村 委 員 ○大平課長補佐 時間になりましたので、ただいまから「第16回 厚生科学審議会先端医療技術評価部 会・生殖補助医療技術に関する専門委員会」を開催いたします。  本日は、大変お忙しい中、おいでいただきましてありがとうございます。 それでは、早速ですが、中谷委員長に議事の進行をよろしくお願いいたします。 ○中谷委員長  きょうは特別お暑い中を、皆様そろって御出席いただきまして誠にありがとうござい ました。議事に入ります前に、事務局から本日の資料の確認をお願いいたします。事務 局の方、どうぞ、よろしくお願いいたします。 ○小林主査 それでは、私の方から資料の説明をさせていただきます。  資料でございますが、本日の資料は「議事次第」と、前回も配付させていただきまし た「第三者の配偶子提供等による生殖補助医療のあり方に関するたたき台」、この2点 を御用意しておりまして、また、参考資料として、石井トク委員から御提供いただきま した「電話による不妊相談の実態」と「インターネットで寄せられた御意見」という2 種類の資料を用意させていただいております。  本日の資料は、以上となっております。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。私、今回、この日に向けまして、改めて13回、14 回、15回の議事録を拝見いたしまして、先生方、このたたき台の作成についても非常に 苦慮をなさって御検討いただきまして、本当にありがたいと思いますけれども、医系の 委員と法律系の委員との間の理解に何となくちょっと行き違い、すれ違いみたいなもの があるような気がいたしまして、また、議事録を先生方、御検討いただけたら大変よろ しいのではないかと思いました。  それから、日本弁護士連合会の人権擁護委員の方たちの御報告についてですけれど も、あれで私一番疑問に思いましたのは、前、石井美智子委員に申し上げたかと思いま すけれども、出自を知る権利が保障される。そこはいいんですけれども、それが扶養義 務まで含むのだという発言があったのです。例の出自を知る権利がどうのこうのという ことが問題になったのは、1983年3月にスウェーデンでハパランダ事件の最高裁の判決 があり、少しおくれて4月の初めにドイツのベーゲーハーの判決があって、どちらも出 自を知る権利を認めるような、そういう判決だったのですが、その後、スウェーデンで は法律をつくって、1985年3月1日から施行されておりますが、ドイツでは判例だけ で、私、4例か5例までは知っているんですけれども、扶養義務を認めたというような 判例を知らなかったものですから、あのときに来られました男性の方、光石さんの方 に、それについて福武さんに聞いてほしいと。その月日がわかれば、年月日を、もし、 あれだったらば、ベーゲーハーの判例集の何巻であるというのを教えてほしいというふ うにお願いしておきましたら、結局それは誤解だったのではないでしょうか。御返事を いただいておりません。だから、それは気にしなくてもいいのではないかということを 御報告申し上げておきます。  それでは、どうぞ、一般の御議論に入っていただきたいと思いますけれども、御自由 に御発言いただきたいと思います。 ○母子保健課長  きょうは、前回、御議論いただいて、ちょうど3ページの(3)の「提供者等の条件 について」からお願いできればと思っておるのですが、前回、一応そこまで議論してい ただいております。 ○辰巳委員  ちょっと前回のところに戻るのですが、少しよろしいでしょうか。 ○中谷委員長  どうぞ。 ○辰巳委員  Aの1の一番最初の文章なんですけれども、「第三者の配偶子提供等による生殖補助 医療に対する有効な規制制度が存在せず、かつ親子関係等に関しての法的整備が不十分 なために子の権利保護が十全でないこと、商業主義による反倫理的な行為が規制できな いこと、が指摘されるようになった。」ということなんですが、この文章のつながりが もう一つよくわからないのですけれども、すなわち、この三つのフレーズが並列になっ ているのか。それとも、どういうふうに係っているのかがもう一つすっきりしないんで すね。第三者の配偶子提供等による生殖補助医療に対する有効な規制制度が存在しない ということが一つ。それが、その次に係っているのかどうか。すなわち「〜せず、かつ 親子関係等に関しての法的整備が不十分なために子の権利保護が十全でないこと」とい うところに、第1フレーズが係っているのかどうか。  点で区切ったところ三つが並列になっているのかどうか。それとも文意から言えば、 第1フレーズは、第3フレーズに係っているのかという気もするんですけれども、ちょ っとこの文章がもう一つすっきりしないような気がするんですが、いかがでしょうか。 ○辰巳委員  だから、第1フレーズの終わりを「有効な規制制度が存在しないこと」として、第2 フレーズの最初に「かつ」がなくて、「親子関係等に関する法的整備が不十分なために 十全でないこと」。それから、第3に商業主義による反倫理的な行為も規制できないこ と。その三つということなんでしょうか。 ○中谷委員長  前の2段は関連あるけど、最後のあれはちょっと違いますよね。 ○辰巳委員  最後のは1番と。 ○中谷委員長  「〜商業主義による反倫理的な〜」。 ○辰巳委員  「〜反倫理的な行為も規制できないこと」は一番最初のフレーズに係っているわけな んで、これは三つ並列ということであれば「〜存在せず、かつ〜」というところがすご く不自然な気がするんですけれども。 ○中谷委員長  それはワーキンググループの執筆された方。 ○吉村委員  これは三つの意味で書いたんですが。 ○辰巳委員  三つの意味で書いたんですか。 ○吉村委員  はい。 ○辰巳委員  そうすると「〜せず、かつ〜」というところが、第1フレーズ、第2フレーズのつな がりのところが何か……。 ○吉村委員  おっしゃるとおりです。 ○辰巳委員  だから、存在しないこと。それから、点で、「親子関係等に〜」……。 ○加藤委員  最初、2項目だったのを、3項目目で足したから変になったんだろうと思います。 ○吉村委員  そうですかね。 ○中谷委員長  この二つならね。 ○加藤委員  二つなら「かつ」でよかったんですよね。 ○母子保健課長  御指摘受けたところは何か文言を事務局の方で考えましょう。 ○辰巳委員  お願いします。 ○中谷委員長  「かつ」を「また」にして、「権利保護が十全でないこと」と、「商業主義」との間 にも何か接続詞を入れた方がいいのではないかと思います。 ○辰巳委員  すいません、それと、次、2ページの「生まれてくる子の福祉を優先する」というこ となんですが、最優先が「優先」になったということなんですが、優先というからに は、何かと比べるということになると思うんですね。そういたしますと、比べる相手が 夫婦の希望ということなのかなと思うんですけれども、それが変にとられると、母親の 命より生まれてくる子どもの方を優先せよ。  例えば、私たち凍結保存をしているわけなんですね。凍結保存、卵巣過剰刺激症候群 などを防ぐために全部の胚を凍結保存して、それを回避しているんですけれども、子ど もにしてみれば、凍結されるというのは非常に嫌なことだと思うんですね。だけど、母 親のリスクを少しでも少なくするために、子の方は少し犠牲、犠牲という意味はないん ですけど、少し危害を加わることになるけれども、一たん凍結保存するというふうなこ とをしているわけで、子どもの方をすべて第一優先にしているというわけではないとこ ろもあるんですね。  ですので、「優先する」というと、何と比べて優先するのかというふうなことになる ので、ここは「重視する」とかそういった形の方がいいのではないか。「優先」という と、何と比べるかということにならないかなと思うんですが、いかがでしょうか。 ○中谷委員長  それはいかがでしょうか。ワーキンググループの委員の方たち。 ○石井(美)委員  私の個人的意見としては、今、辰巳先生がおっしゃったように、両親の希望よりも優 先するという趣旨でございます。命と命のバランスは、既に生まれている人の方が優先 されるのではないでしょうか。 ○辰巳委員  それが明確であればいいんですけれども、後で何か「優先」ということにひっかかっ てこないかなというところがありまして、ちょっと確認させていただきました。 ○中谷委員長  普通に考えますと、今、石井美智子委員が言われたとおりだと、私は単純に思うんで す。でも、余りこういう問題に関連のない人が読んだら別な意味にとられるかもしれな いおそれがあると思いますので、その点をもうちょっと限定的な表現になさったらいか がですか。  いろいろ御指摘ありがとうございました。 ○田中委員  今の点ですけど、「優先」という言葉を普通の人が読むと、子どもを欲しいと思って いる夫婦の希望よりも子どもの生まれてきた後のことを、ととれると思うんですね。  それと、今、辰巳先生が言ったこととちょっと私は違う意見なんですけど、凍結する ことは子どもにとってもいいことだと思うんです。というのは、たくさん採れて、たく さんできちゃって多胎になるよりも、凍結しておいて少しずつ戻す、多胎を防ぐという ことは子どもにとっていいことだろう。  それから、妊娠率を考えると、やはり凍結しておいた方が、卵巣が腫れて、内部環境 が乱れたときも、随分高くなるという事実がありますから、凍結することが胚にとって ダメージであるというふうに、先ほどおっしゃったように聞こえるんですけれども、違 う部分もありますので、凍結は子どもにとってもいい。 ○辰巳委員  もちろんそうなんですけれども、ちょうどOHSSになるかならないか、ちょっと危 ないなといったときに、OHSSが怖くて凍結の方を選んでしまう傾向が私にはありま すので、そういうふうなときなどは、子どもにとっては、そのまま戻した方がよかった なのかなというときもあります。だけど、本質的にはもちろん凍結ということは非常に いいというか、必要で重要なオプションですので、これはそれを否定するものではもち ろんありません。 ○中谷委員長  ここに表現されている限りでは、凍結保存のことは直接には関係がないと思いますの で。 ○辰巳委員  はい。 ○中谷委員長  では、先に進んでくださっていかがでしょうか。 ○矢内原委員  総論のAのところで、「子どもを欲しながら何らかの病気のために子をもつことがで きない人に」云々というのは、前文の中に入れていただければ、「子どもの福祉」とい うことが最重要点であるということが言えるというふうに、この間、私は言ったつもり だったんですけれども、つまり、この技術というものを使うということは、前文の中に 入れたらどうでしょうか。ですから、七つの条件ではなくて六つの基本姿勢ということ ですか。  あと、そのものの応用ということの議論なんですから、これをわざわざポッチをつけ た条件の中に入れなくてもいいのではないか。 ○中谷委員長  いかがでしょうか、ほかに、御意見は。今、矢内原委員の御意見に対する意見です か。 ○田中委員  違います。 ○中谷委員長  違いますか。 ○田中委員  はい。 ○中谷委員長  矢内原委員の御意見に対してはいかがですか。 ○加藤委員  矢内原さんの2ページ目の七つで提示されているののうちの第1番目は。 ○矢内原委員  一番目は、文章の中に入れてしまった。そのための議論。 ○中谷委員長  これは「子を欲しながら何らかの病気のために」というのは「不妊症のために」とい うふうに変えましたよね、前に。 ○吉村委員  変えました。 ○矢内原委員  それを実施するためには、次、こういうことを考えなければいけないというふうにし ないと。 ○加藤委員  1番を行うについての一種の附帯条件が2、3、4、5、6なんだから、それを並列 しているのはおかしいのではないかということですね。 ○矢内原委員  そういうことです。 ○丸山委員  前文というのは、最初の背景ですか。辰巳先生が問題点を御指摘になった。ではなく て、また別途。 ○吉村委員  矢内原先生おっしゃったのは「意見集約に当たっての基本的な考え方」の前文じゃな いですか。それとも前ですか。 ○矢内原委員  この中でいいならば、1のところで、こういう技術があるのだから、こういういきさ つには応用してあげるというか、ポジティブに考えていますよということ。だけど、そ れを行うためには、こういうことが必要ですというのが、2ページの上の七つある項目 のうちの六つですよと。1番目とほかの六つと意味が違うように私は思うんです。 ○石井(美)委員  ただ、私は気になるのは、不妊症という限定をしているという、そこの意味だと思うん ですね。いわゆる便宜的な技術利用というものをここでは認めない考え方が基本的な考 え方としてあるということが示されているのだと思っていたんですけど。 ○矢内原委員  生殖補助医療技術というのは、それをするために使うのだということを、私は前提 で、常識だと思っていたんですけれども、言わなければだめですか。 ○石井(美)委員  可能性としては、不妊症ではない人の利用もあり得る。 ○石井(ト)委員  私は、これは不妊症の人のための大前提でつくられていると思っていますよ。それ以 外のものという考えは全然ありませんから、そこは一番重要だと思いますので、確認し ておいた方がいいと思います。 ○矢内原委員   例えば、どういうことですか。それ以外の利用というのは。 ○丸山委員  自然妊娠が不可能な高齢の女性が、生殖補助医療技術で子どもの出産を試みる。自分の 卵では妊娠できないような、例えば、60歳の女性。 ○矢内原委員  高齢の方たち。 ○丸山委員  それは認めないという趣旨ですね。 ○石井(美)委員  一番はそうです。もっと極端に言えば、モデルさんが妊娠したくないからという利用 もあり得ますし、同性愛の人たちが子どもを持つとかいろいろな利用の仕方はあるだろ うと思います。 ○中谷委員長  そういうのは全部だめですか。 ○矢内原委員  それはだめです。 ○中谷委員長  独身の女性がどうかしたいという……。 ○加藤委員  このガイドラインではだめです。 ○矢内原委員  ですから、一番最初のAの1になりますけど、「本委員会による検討を必要とした背 景」というのは、いろいろ生殖補助医療技術が進歩してきましたと。そして、従来の方 法では、子どもができない方に子どもができることになりました。そういう人たちにこ ういう技術を提供しますと。だけども、というのがその次の段階で、その方が各項目が 強く出てくると思うんです。 ○中谷委員長  オーストラリアの最新のARTのガイドラインを手に入れたんです。一両日中にそれが 入りますので、また、ご覧にいれようと思いますけれども。 ○矢内原委員  もっと厳しくなりましたか、フリーになりましたか。 ○中谷委員長  まだ、わからない。手に入れたというところであり、プリスデンで会議がありまして、 それに出席している人から連絡をもらいまして、一両日中に帰国するはずですから、そ れはもらうつもりでおりますけど、また、お目にかけます。 ○矢内原委員  私は、こういうことをこの前から固執した理由は、何か見ると、これはNO、NO、 NO、NOという印象をみんな受けるんですね。 ○中谷委員長  そうなんです。 ○矢内原委員  そうではなくて、こういう技術をポジティブに我々は考えているのだという、そのた めの委員会。だから何でもやってもいいのではありませんよと、こういうことを気をつ けてくださいという点を強調したいんです。これは文章の問題ですけど、姿勢として は、そうあってほしいなと。 ○丸山委員  文章の問題、先ほどの辰巳先生の御指摘もそうなんですけど、前回からの御指摘のいろ いろあるのを織り込んだ文章はだれがつくるんですかね。 ○母子保健課長  たたき台を先生方に作っていただきましたので、後はこの会議での議論をもとに事務 局の方で作成いたします。本来、きょうは前回の修正したのを出すべきところだったん ですが、ちょっと手違いでまだ直ってないものが出ておりまして申しわけありません。 先生方の議論の中で、これはこう訂正するとか、あるいはこう入れるとか、言われたこ とについて、文言が確定できれば、そのままやりますし、できない場合はこちらで少し 案を考えて、先生方でまた議論していただくと、そういうことでやらせていただきたい と思います。 ○高橋委員  よろしいでしょうか。 ○中谷委員長  どうぞ。 ○高橋委員  2ページの「商業主義を排除する」という表現は、漠然としていてわかりにくいと思 います。「商業主義的行為を禁止する」とか、そういうような表現の方がよろしいので はないかと思いますが。卵の提供、これを売買しないとか、謝金は禁止する、これはわ かります。 ○加藤委員  「優生思想を排除する」というのはもっとおかしいですね。 ○石井(ト)委員  この間の意見で、ある程度修正されたと思いますが。 ○中谷委員長  修正されましたよね。 ○石井(ト)委員  随分あると思うんですけど。 ○中谷委員長  「優生思想を排除する」、これもありましたですね。「商業主義を排除する」、これ も修正されましたよね。 ○石井(ト)委員  そうです。 ○加藤委員  直しましたのを、後でまた。 ○母子保健課長  きょうは手違いで古い方を持ってきてしまいまして申しわけありません。 ○加藤委員  でも、これは気合が入っているのがよくわかるんですよね。ちょっと舌足らずの表現 がね。 ○中谷委員長  ガイドラインとしてはそうだけれども、恐らくそれに反することは十分に考えられま すから、それに対してどうするかということになってきますね。 ○母子保健課長  申しわけありません。そういう手違いで大変御迷惑をおかけしているんですが、前回、 直って確認できているのは、次回、きちんとした形でお出しいたします。  それから、今の矢内原先生の件の確認ですけれども、これはそうしますと、一番上の ポチを外して、これはAの1のどこかに入れろという御指示と考えてよろしいですか。 それとも3の方がよろしいですか。 ○加藤委員  これは、石井さんが今おっしゃったことは、これ自身がARTに対する一つの条件づ けなんですね。最初は「不妊」というふうに書いてあったんですよね。「不妊」という 言葉を外したので、無意味なことが書いてあるみたいなぼけた表現になったんだけれど も。 ○石井(美)委員  「不妊」に変えました。 ○加藤委員  変えたんですか。 ○母子保健課長  これは前回、不妊症のために。 ○中谷委員長  不妊症のためというふうに変えたんです。 ○加藤委員  変えたんですか。これは本来一つの条件なんじゃないですか。総論的なものではなく て。 ○吉村委員  だから入れるとしたら、3番の前文のどこかに入れるのだったらわかりますけど。 ○中谷委員長  3番というのはどの3番ですか。 ○吉村委員  「意見集約に当たっての基本的考え方」です。 ○矢内原委員  安全性の前。 ○中谷委員長  1ページです。 ○吉村委員  1番に入れるとしても、先生、どこに入れるのかなかなか難しいんじゃないですか。 ○矢内原委員  私はAに入れてくれればいいんです。 ○吉村委員  3番のAの。 ○矢内原委員  Aの前の方に入れてくれればいいんです、前文の中に入れちゃいますから。項目に挙 げることは私はないと思う。 ○丸山委員  可能性を提供しますよというメッセージもあっていいような気がするんですね。 ○矢内原委員  項目としてですか。 ○丸山委員  いや、項目ではなくて、そちらのメッセージは背景の方におさめて、こちらのクライ アントは「不妊症のために子ができない人に限る」という、その説明をこちらに残した らどうですかね。 ○吉村委員  なるほど、そういう考え方もある。 ○丸山委員  この文章だと、もし石井美智子先生のおっしゃるようなものだけだとすると、クライ アント、依頼人なり利用者は不妊症のために子をもつことができない人に限る、という 方が意味が明らかですね。 ○中谷委員長  法文として、Bが本論であれば、Aは総論とするんですか。 ○丸山委員  本論の方で全部限っていますね、不妊症の場合に。ですから、それを括る原理とし て、ポツの中のどこかに入れていいと思うんです。しかし、後ろの方の「可能性を提供 する」というところは、生殖補助医療があるから利用してもよろしいよというか、肯定 的な側面が出ているような気がするのですが、そちらを生かそうとするのであれば、そ ちらは背景の方におさめる方が自然ではないかと思うんですね。 ○矢内原委員  Bの本欄の1の「(1)被術者」というところに同じことがちゃんと書いてあります ね。ここは「法律上の夫婦」というふうに書いてあります。 ○丸山委員  その次などが特にそうですね。「加齢により妊娠できない夫婦は対象とならない。」 とか。 ○中谷委員長  「専門カウンセラーの事前のカウンセリングを受けなければならない。」、こういう カウンセラーは十分いらっしゃるんですか。 ○矢内原委員  いや、十分いないんです。どこまでをカウンセラーとするかという定義もまだできて ないんですね。 ○中谷委員長  これは臓器移植でもそうなんですよね。コーディネーターにそういう意味でのカウン セリング、心理療法士というんですか、そういうような。 ○矢内原委員  これは産婦人科学会の方も、各いろいろなグループが最近気がつきまして、それで私 的に、これをもって自分のところの講習を受けなさい、そしたらカウンセラーとして認 めます、というような動きが方々出てきているので、これではばらばらになってしまう から、何かの形で統一しなければいけないと。 ○石井(ト)委員  私は、臓器移植でコーディネーターをつくった背景のプロセスを見ますと、きちんと した教育カリキュラムが必要なんですね。ですから不妊専門の教育カリキュラムの下で 養成しなければならないと思います。ただ、心理のカウンセラーだけでは不足です。専 門的知識や技術を持ってませんと目的は達成できませんので、ですから教育カリキュラ ムをつくって、それにのっとって養成を図るという方向でやっていただけると大変あり がたいと思っています。 ○中谷委員長  今、なかなか難しいので、いわゆるトラウマの問題などもありまして、それにもちゃ んと対応できるようなものですよね。 ○石井(ト)委員  すべてです。ですから教育カリキュラムを決めましたら、受講の資格に条件をつけ て、それでトレーニングする。トラウマの問題もすべて、妊娠経過中の合併症の問題も 起きてきます。例えば妊娠した場合、お産のときやその後の問題。トータルな形でカリ キュラムをつくらなければいけないと思っています。そういう形で提案したいと思いま す。 ○田中委員  カウンセリングのためのカウンセラーは日本では精神科に専門のカウンセラーがいま すが、彼らの条件は物すごく厳しいようですね。マスターを出てなければいけないとい う条件があって、専門の精神科医の下でインタビューを何十時間以上しなければいけな いという条件があります。それ以外の場合は、普通、大学の心理学科を出た方が自称カ ウンセラーと言っておられるようです。自他共に認められる本当のお墨付きの方は非常 に少ない。プライベートな組織がそれぞれやっているようですけど、あれは要は出席し ただけで資格を認定するようなもので、私は意味がないと思います。やるならばやはり 権威ある組織が認定したものでなければ、自称カウンセラーというものがいっぱい出て くるのではないでしょうか。ここはちゃんと明記して書いていただきたい。 ○石井(美)委員  ワーキンググループの全体の意見としては、中央の機関をつくって、そこがカウンセ ラーの資格認定も行うという考えです。 ○田中委員  そうなれば一番いいんですけど。 ○中谷委員長  国家資格みたいなものはないんですか。 ○吉村委員  ありません。臨床心理士だけはあります。 ○中谷委員長  臨床心理士はありますね。 ○高橋委員  精神科の医師は、そういうことを治療して保険請求できる。 ○中谷委員長  あれは指定医、認定医の。 ○加藤委員  もし、そういう制度をちゃんと決めるとすると、何人ぐらいカウンセラーは必要なん ですか。 ○矢内原委員  計算しました。実は今度、厚生科学研究のテーマにそれを申請いたしましたら通っ て、吉村先生と鈴森先生と。これはどうしてそういう必要性があるかといいますと、ず っと今までの調査の中で、ここのカウンセリングが非常に必要だという認識が強まった んですけれども、一方、産婦人科学会が動いているのは着床前診断からそれが始まって いるんですね。いわゆる人類遺伝学会とかそういうところとの提携を非常に望んでいる というか、学会の動きはそういうことになっている。  それを計算いたしますと、産婦人科医で人類遺伝学会の認定医を持っている人は二十 何人しかいない。それではとてもカバーできませんし、今、大体6万サイクルあると。 最初のサイクルを受ける人が年間にきっと2万人ぐらいだろうと。各施設にそれは必要 ないので、1人が一体どのくらいカバーをできるかということで、全国の中にちゃんと した養成された、つまり遺伝の問題、心理の問題も全部カバーできる人を少なくとも 200人は当初要るだろうと。それが一番少ない数なんですけれども、まず、そこの養成 だったら、何年か、これから施行するまでの間に実現性はあるのではないかと。 ○加藤委員 そうすると、その 200人は、例えば遺伝子診断、出生前診断とかの場合のカウンセ ラーも兼ねることができるわけですね。 ○矢内原委員 そういうのも全部含めた。 ○中谷委員長 武部さんが国際高等研究所で非常に大きなプロジェクトチームで、遺伝子診断治療、 データの保存、そういう方面やってらっしゃいますよね。そういうものとも。 ○矢内原委員 余り最初ガーッと締めてしまうとなかなかスタートできないと思うんですね。要する にこれを人類遺伝学会に委託するということではなくて、もう少し広い意味でとりたい なと。今年その研究が始まるか……。 ○中谷委員長 少なくともカウンセラーというのは、そういう資格が認定されて……。 ○矢内原委員 それは将来必ず必要だと思います。 ○中谷委員長 その役割を果たして、それの地位が施設なり何なりで確立されていないといけません ですね。そういう国家資格というのはなかなか難しいんですね。 ○矢内原委員 これを認定制度的な形でカウンセラー制度の資格を国家が与えるとか、また、ある学 術団体が与えるということになると、非常にそことの兼ね合いが難しくなる。ですか ら、これはこれから調査をしてみないとわからないですが、幅を広く持って、といって 余りルーズにならない、いい落としどころというのが、中央の中で、そういうものはつ くらなければいけないのではないかと思っています。 ○中谷委員長 今、非常にその点はよくなっているような気がします。前にそういう問題があったと きに、そこに出て来られた委員の中で、お医者さんは全部反対でしたね。何でもお医者 でなければだめだというので、そういう国家資格は認めがたいという、医師会長なんか そうでしたね。 ○矢内原委員 何年か前に相談センターという構想がございましたですね。そのときに結局、東京と 大阪と全国の中で5カ所ぐらい補助金を出してやっていただけるということだったんで すけれども、とてもそれではカバーできない。そのときに、結局最終的には、各保健所 にそういうセンターができればいいのではないかというようなところの話がきましたで すね。そうなると、別にそれは遺伝の専門家でなくてもいいわけなんですけれども、少 なくとも遺伝の専門家の人は、遺伝のことは詳しいかもわからないけど、体外受精の成 功率はどのくらいかなんていうことは知らない。そういう、いわゆる一般的なインフォ メーションすら患者には与えられていないんですね。ですから、そういうものを何施設 か、一つの町に一つでも、ちょっと大きなところでも一つでもいいのではないかと。余 り広げてしまいますと、各自分のところで、こんな人がいますよ、というのではこれも 困りますし、そうすると、お医者さんが自分でやるということになりますから、今まで と同じになってしまう。何か中央で必要性をちゃんと把握して、ちゃんとインフォメー ションを患者さんに与えてあげるという機構が必要である。 ○中谷委員長  そういう点になりますと、私から考えますと、お医者さんたちも非常にレベルアップ したと言ったら失礼ですけれども、非常に理解が行き届くようになられたなと思って、 大変心強く思います。でも養成については、養成のスケジュールといいますか、こうい う科目を何時間とか実習はどのくらいとかというようなことが必要ですよね。  ドイツなどは、1970年ぐらいに、そういう医療補助者たちのいろんな養成をしていま して、それで施設に行って、どういう聞き方をすれば、本当のことを聞き出せるかと か、そういうのをやってましたね。 ○加藤委員  日本も教えてもらいたい。 ○中谷委員長  本当にそれをやって、非常におもしろかったですよ。病院にも行くし、あとは老人 ホームみたいなところにも行くし、あるいは刑務所などに行っても、その聞き出し方に よって、事実が発見できるかどうかということにかかっているものですから、いいこと やっているなと思って感心しました。どうぞ、田中委員。 ○田中委員  今のカウンセラーの養成の矢内原先生の件、非常に斬新な新しい今までにない考え方 だと思います。というのは、現在カウンセリングをする専門家を育成しようという構想 は、多分、この仕事を自分の施設内のだれかにやらせる為に教育を受けさせようと一般 内に受け入れられている。だから施設内の看護婦や検査技師に行かせるということにな ってしまう。  ところが、いま矢内原先生のおっしゃったことは、中央に組織があってそこが全てを 管理するということですが、この機能をさらに拡大し、不妊症の治療全体を中央でこれ から管理するというシステムになれば、おのずとカウンセラーの育成も中央管理下にお かれることになる。将来的な展望として国に準ずる組織がすべてを統括していくのだと いうふうに一元化すれば、おのずとカウンセラーもそうなるし、データの集積も全部そ うなる。私は非常にクリアーカットだと思うんです。だから、一番最初に出ました、国 に準ずる組織が全部管理するのだという点をもっとクリアーにしていただくと非常に簡 単にいくような気がします。 ○中谷委員長  もっと施設が少なければいろんなことができるような気がしますけれども、今、日本 では非常に多いわけですから、それについてどういうようなガイドラインを示すのか。 あるいは国なりほかの公的な機関が関与していくのかということを考えるのもこの委員 会でやらなければいけませんけれども、なかなか難しゅうございますよね。 ○田中委員  日本はプライベート・クリニックが外国に比べすごく多いですね。このクリニックを束 ねていく為には、そのような統制力のある組織が必要だと思います。 ○中谷委員長  イギリスのあたりですと、施設がそう多くないですから、1991年に始まって、98年か99 年か、その報告によりますと、全体として3施設しか増えてないんですね。それで、ど の施設ではどういうことを年間どれだけやったかという全部報告がありまして、あの施 設はこれが上手らしいからここへ行こうとか、患者さんのためのそういう報告書が出て いるんですけれども、なかなか日本ではそういうことができませんですね。 ○吉村委員  ちょっとよろしいですか。 ○中谷委員長  どうぞ。 ○吉村委員  もとにまた戻しますが、カウンセラーのことについてはちょっと置いておきまして、 先ほど石井先生がおっしゃったことなんですが、私の個人的な意見は「基本的な考え 方」の一番初めの項目を矢内原先生がどこか前文にとおっしゃったのですが、私は前文 に入れるとするならば「意見集約に当たっての基本的な考え方」のところに入れた方が いいと思うんです。例えば1ページの3番の一番初めに「第三者の配偶子提供等による 生殖医療は、子を欲しながら不妊症のために子をもつことができない人に子をもつ可能 性を提供する技術である。この医療が認められるか否かの意見集約に当たっては、種々 の価値観の間での調整が必要となる。例えば〜」と言えば、お二人の意見、両方ともう まくいくのではないかという感じがするんです。その基本的な考え方に「不妊症である 夫婦」とするとか、そういうことは入れるかをどうかについては、私はどちらでもいい かなという考えなんですが、それでどうでしょうか。 ○矢内原委員  文章うまいね。 ○吉村委員  いやいや、そうではなくて、これを入れたらどうですかねと思ったんですが、そうし ないと進んでいかないような感じがします。 ○矢内原委員  御迷惑をかけて。 ○吉村委員  「生まれてくる子の福祉を優先する」を一番初めにしてもいいのではないかと思うん ですけど、どうでしょうか、先生。 ○加藤委員  ともかくその議論は事務局から前回の議事録に基づいた修正案をつくっていただいた 上で、もう一遍検討した方がいいんじゃないですか。 ○中谷委員長  その方がいいですね。 ○加藤委員  これで見るとつい直したくなる。既に直っているかもしれないし。 ○中谷委員長  そうですね。今までのところはそれでよろしゅうございますか。よろしければ先に進 んでいただきましょうか。 ○吉村委員  3ページの(3)ですね。 ○中谷委員長  はい。 ○吉村委員  一つ言わせていただきたいんですけど、これを皆さんにお見せしたところ「精子提供 者は成人で40歳以下とする。」その次、「卵子提供者は、すでに子のいる成人に限り35 歳以下とする。」この両方の項目に「配偶者の同意を必要とする」と入った方がいいと 言われました。 ○中谷委員長  それはそうですね。精子提供者は成人で、この場合は既に子がいるということは必要 ないんですね。フランスはこの場合も必要としていますけれども、よろしいんですね。 ○吉村委員  それは特に。 ○加藤委員  40歳以下にしたというのはどういうわけなんですか。 ○吉村委員  これは余り医学的な根拠はないです。 ○加藤委員  35歳以下というのは医学的な根拠があるけど、40歳以下というのは。 ○吉村委員  ありません。 ○田中委員  そうしますと、お父さんの精子をもらうというのはできなくなるんですか。 ○吉村委員  父母は禁止なんです。 ○石井(美)委員  兄弟姉妹は認めるとしても。 ○田中委員  ドナーは家族はだめということですか。 ○吉村委員  いや、そういうことじゃなくて、お父さんはだめということです。兄弟はいいという ことです。1世代違うのはだめだということです。 ○田中委員  それはどうしてでしょうか。お父さんの精子が欲しいという人もいますけど。 ○石井(美)委員  世代が食い違うことになることは避けた方がよいという考え方だったと思います。兄 弟であればそういう世代のずれはないので。 ○田中委員  患者の中には、提供者が兄弟だとずっと身の回りにいますね、おじさんですね。お父 さんだと、本人が成人したころには他界していないから……。 ○加藤委員  後くされがない。 ○田中委員  後くされというか、お互いに心理的な影響を引きずることがある。おじさんだけど、 本当はお父さんですね。向こうもそういう目で子どもを見るし、自分も後で聞くと、本 当のお父さんはあの人なんだと暗黙の内に了解してしまう。そういう部分を嫌がる患者 さんもおられますよ。お父さんからの提供も、私はいいかなという気がするんですけれ どもね。 ○中谷委員長  親族からの提供というのは外国にはない考え方ですからね。 ○田中委員  日本ではそれが強い感じがするんですね。 ○中谷委員長  強いんですね。だから、私もよくわからないんです。 ○矢内原委員  養子のときには、儒教の思想で韓国あたりは世代が違ってしまうと養子ができないん でしょう。 ○田中委員  お父さんは残してもらいたいですね。 ○高橋委員  以前、私もそういう意見で或る事実を申し上げたことがあります。父親が自分の子ど もが無精子症だったときに、私の精子を嫁に使ってほしいということを言われたという こと、その経験を話したことがありますが、日本では確かにあります。田中委員の言う ことに賛成かどうか別にしましても、日本ではそういう事例が結構あります。これは儒 教的な物の考え方が影響しているのだと思います。 ○吉村委員  ただ、田中先生、医学的に考えて、父親からもらうというと、無精子である子ども が、de novoであるということであればいいんですけど、遺伝子はある程度受け継いで いたとすると、父母だと、また、同じような子どもができるということはあり得ますよ ね、父親だと。ほとんどが、多分こういう場合de novoだと思うので問題はないと思う んですけど、そういう可能性もないわけではない。 ○田中委員  先生、兄弟でも同じじゃないですか。 ○吉村委員  兄弟でも同じなんですが……。 ○矢内原委員  親子が兄弟になってしまう。 ○田中委員  それは確かにありますよね。 ○吉村委員  兄弟でもそれは同じですね。 ○田中委員  ええ。 ○吉村委員  ただ、そういう点が私は気になったので、別に40歳以下というのは余り根拠はありま せん。50歳でもいいと思いますけど、父母は禁止したいというのはワーキンググループ では一応コンセンサスが得られたんですけど。 ○加藤委員  それだったら父母はやめてもらいたいと書いた方が正直じゃないんですか。40歳なんて 書かなくて。 ○田中委員  望ましい、にしておいてはどうですか。 ○石井(美)委員  それは後の方で出てきます。 ○加藤委員  「40歳以下とする」というのは医学的な根拠がないのだとすると、別の表現にしても らった方がいい。誤解を招くと思うんですけれどもね。 ○吉村委員  そうですね。 ○加藤委員  おれ、40過ぎたら、もう子どもつくらない方がいいんじゃないかと。 ○吉村委員  わかりました。私もそう思います。父は禁止をしたいというのが、私どもの考え方だ ったですよね。丸山先生。 ○矢内原委員  全く根拠はなかった。 ○吉村委員  根拠はないんです。 ○辰巳委員  男性も年齢がうんと上がっていくと染色体異常の頻度が増えてきますよね。それは幾 つぐらいから、60ぐらいからでしょうか。 ○吉村委員  50過ぎて、60歳ぐらいからです。 ○辰巳委員  おじいさんのドナーは大体60ぐらいですか、先生。 ○田中委員  そうですね。60……70という人もいますよね、年を取った。 ○辰巳委員  それが医学的根拠ないわけではないんじゃないかなという気もするんですけど。 ○田中委員  私は、禁止するべきだという根拠はないと思います。 ○吉村委員  そうですね。 ○石井(美)委員  根拠となる数字があれば、その年齢を書く方が合理性はありますね。 ○加藤委員  「成人」でというのは、これは自己決定能力があるという意味で成人なんですね。 ○吉村委員  そうです。それから、商業主義とかいろんな点もあるから。 ○加藤委員  そうですね。 ○田中委員  例えば、父親に限り40以上でもいいと、そういうことですか。ドナーで40以上はだめ だけど、父親に限り40以上でもいいと。 ○中谷委員長  父親が娘というのはまだ何かわかるような気がするけれども、父親が息子の嫁という ことになると、何となく私はぞっとしますね。何か、不倫、本当にそういうのは私なん か古くさい人間だから……。 ○吉村委員  いや、それは先生、古くさくないですよ。私もそう思いますから。 ○田中委員  逆に、お父さんをという方も実際おられるんですよね。 ○矢内原委員  お父さんの意見であって、本当に御主人がそう思っていますかね。 ○田中委員  いや、先生、おられます。 ○矢内原委員  いますかね。僕のがだめだったら、お父さんのを。 ○田中委員  だんなの血が入っていなきゃ嫌だという考えがあるんですよね、お嫁さんにしても。 そうすると、お父さんからもらうか兄弟からもらうかになりますよね。だったら、兄弟 よりはお父さんの方がいいという方はおられます。兄弟だと、ずっと身の回りにおられ るということですね。 ○中谷委員長  こういう議論は日本的な文化人類学ですよね。香原先生の講義をもう一度承らなけれ ばだめみたいな気がしますけれども、難しいですね。 ○辰巳委員  HFEAでは、満55歳を過ぎた男性からは配偶子を採取してはならないということに なっています。これは多分医学的理由からなんでしょうね。 ○中谷委員長  そうでしょうね。 ○田中委員  それは匿名の場合でしょう。 ○中谷委員長  匿名です。 ○田中委員  私が言っているのは匿名ではなくて肉親の話ですからね。 ○中谷委員長  肉親の話で、だから、全然違うんですよ。 ○田中委員  肉親に限りお父さんの場合は望ましいという、そういう用語があってもいいと思うん ですけど。 ○中谷委員長  匿名の場合でも、がんや何かに罹患しているような場合だとまた別になる。 ○辰巳委員  イギリスでは例外的な理由のある場合を除く。例外的な理由がある場合には、治療記 録において説明していなければならない。これはそういうことが含まれておるのでしょ うかね。 ○田中委員  どうでしょうかね。そういう中に入れていただければいいと思いますよ。例外として ですね。 ○矢内原委員  辰巳先生、精子が何歳から異常が増えるという、そういうデータがありますか。 ○辰巳委員  読んだ記憶がございますが、先生、いかがでしょうか。 ○矢内原委員  例えば、がんのあれみたいに……。 ○吉村委員  余りそういうデータはないんです。55歳とか60歳を超えると増えてくるデータは私は あると思いますね。ただ医学的に言いますと、根拠が、40歳も55歳も非常にあいまいだ と思うんですよね。例えば、disomyの精子が増えるとかそういうデータは最近増えてき ています。年齢が増えるとX精子、Y精子であるのにXY精子が増えてくるとかそうい うデータは最近あります。今までは余り詳しく調べたデータはなかった。1990年代以降 ですから、ないと思うんですね。 ○石井(美)委員  調べていただいて、その根拠に基づいた数字に変えるということにした方がよろしい と思います。 ○吉村委員  わかりました。 ○丸山委員  田中先生の御意見は、4ページの匿名性でもう一度取り上げてということですね。 ○石井(美)委員  それに基づいて、こちらにも「原則として」を入れるかどうかですね。 ○吉村委員  卵子提供者は、田中先生、「すでに子のいる成人に限り、35歳以下とする」というこ とでよろしいですかね。 ○田中委員  これはいいと思います。卵子と精子は違いますからこれは非常に医学的です。 ○吉村委員  そうですね。 ○加藤委員  「すでに子のいる」というのは、卵子の提供で不妊になっちゃう危険があるという意 味ではないんですね。 ○吉村委員  そうじゃありません。これは商業主義です。若い女性がそういう提供になるというこ とを予防することをここの案に含めている。 ○中谷委員長  もう一つの、健全な子どもを生めるかどうか、それがあると思うんですけど、だから そういう意味では、精子についても言えるんですね。だからそういう意味でフランスは 両方について「既に健全な子どもがいること」というのがその前提要件になっているわ けですね。 ○石井(美)委員  加藤先生がおっしゃったことも含まれると思います。一人も子どもを持っていない人 に排卵誘発の薬を与える危険性はあるのではないでしょうか。 ○吉村委員  そうですね。 ○矢内原委員  一回排卵誘発すると、多分その女性の1カ月分は1年分に相当するぐらい卵を消費す ると。逆に言えば、卵巣が1年寿命が……。 ○加藤委員  生殖寿命が縮まっちゃう。 ○矢内原委員  女性の場合、通常月経が一生あればいいんですけれども、だけどそれは月に一つずつ 排卵したという感覚ですよね。同時に何個もありますけれども、胎生期、生まれた時、 思春期とけたが違うぐらい減ってきますから、ですから思春期にスタートしたのは数万 個の可能性のあるものからしかスタートしません。で、 500個、だけど途中で1周期の 中で10個ぐらいずつ一緒に育っていきますから、5,000 個ですね。それも 5,000個にな ってしまっているということは、その10倍を何回も何回もやるということなんです。 ○中谷委員長 死者の卵子を使うというのは考えていませんね。 ○吉村委員 それは考えてないです。 ○矢内原委員 胎児とかそういうことなんか……。 ○中谷委員長 胎児はもっと大変だけれども、韓国でやったでしょう、死者の。 ○田中委員 先生、ちょっといいですか。 ○中谷委員長  はい。 ○田中委員  矢内原委員先生に申しわけないんですけど、私は逆の立場から言いますと、生殖期に は大体20万個ぐらい卵があると言われております。胎生期はもっと10倍ぐらいあるんで すけど、生殖期を30年とすると一生で消費する卵は約500個、99%の卵は手付かずのまま 閉経を迎えることになります。ですから、たとえ何回か排卵誘発剤を用いて卵子を多数 採取したとしても、卵巣の機能の正常性を障害するようなことはないと思います。 ○加藤委員  琵琶湖の水が、水門1回開けると半分減っちゃうというわけではないと。 ○田中委員  ほとんどなくなる、そういうリスクはないと思うんです。ただ数的に言えば、そんな に急に卵巣機能が落ちるようなことはないと思います。先生、すいません。 ○矢内原委員  いや、そうなんですけれども、でも限りはあるという。 ○田中委員  限りはありますけど、それで閉経してしまうとか卵巣機能不全になるとかということ はまずありません。確かに採卵した後1〜2カ月は月経周期が狂うことはありますが、 もとに戻ら ないということはないと思うんです。 ○加藤委員  でも人によっては、卵子を採るということは、非常に危険な場合、そういう人もいるわ けですか、個人によっては。 ○田中委員  それはあります。 ○加藤委員  それは事前に診断がつくんですか。この人はそういうをすると危ないとか、よくない とか。 ○田中委員  前もって子どもを生んでいる成人の方で35歳以上ということであれば、その危険性は 私はあまりないと思います。危険性の高いグループは20歳代の若年者層かPCOのよ うな排卵障害を持つグループであり、35歳以上の経産婦ではまず卵巣の過剰反応はない と思います。 ○矢内原委員  模式図的に、この間の学会でそういう特別講演があったんですけれども、胎生期に何 百万個、生まれたときに何十万個、思春期には何万個からスタート、50歳で0という カーブが書かれてましたね。ということは、思春期の17〜18でスタートしたときに数万 個あったものが、50歳の間に0になるというふうに考えて、その途中に10倍のものを刺 激、年間に3回ぐらいやったり、医者が5回やるというのは私は余り賛成しませんね。 ○中谷委員長  中絶胎児なんていうのはすごく多いわけでしょう。何百万個ですよね。 ○吉村委員  しかし、それを卵を採ってきて体外で成熟させるということは現実においては報告あ りますけれども、なかなか難しい。しかもそれを凍結ということはまたもっと難しいと なると、現実的ではない。我々がここで今議論するのに現実的な方法ではない。10年後 にできるかもしれませんが。  精子に関しては精子の染色体異常がどうやって増えてくるか、40歳という根拠はあり ませんので、そういう医学的なことをもう少し調べます。 ○加藤委員  高齢化すると染色体異常が出やすくなるとすると、この問題ではなくて一般的な子ど もづくりの常識として知っておかなければならない。 ○吉村委員  ただなかなかそういうデータはないと思うんですよね。最近まで、FISHなんかで調べる ことができませんので、XY精子を、あるいはX精子、Y精子とか、その他の胎細胞を 調べているデータがなかなかありません。最近、当院でも調べているんですけれども、 例えば、55歳以上は高くなったとかというデータはなかなか難しいだろうと思うんです けれどもね。 ○矢内原委員  奥さんの年齢を20代に固定しておいて、50代、60代、70代の子どもを見なければいけ ないわけですよね。そういうデータはない。 ○加藤委員  奥さんを10年ごとに取りかえていって、いつも20歳の奥さんに産ませていると。で、 比較すれば、一番いいわけですね。 ○矢内原委員  そういう事例があれば一番いい。 ○中谷委員長  新潟の例の逮捕、監禁のあれは、父親が65歳で母親が35かなんか、そういう六十幾つ の父親の子どもをつくったというのに憤慨したというのが一つの原因になっているんで すよね。 ○矢内原委員  アメリカなんかだとノーベル賞をもらった方の精子はすごく高いらしいんですよね。で も50歳、40歳ではみんなもらえませんからね。ですから多分高齢者の……。 ○中谷委員長  それだけの精子バンクがあるんですね。 ○矢内原委員  あれはECCが。 ○加藤委員  今度は値段をうんと高くして、40歳のときの精子ですとか、30歳のときの精子ですとか というふうにして、ノーベル賞もらう前からためておくという手は。 ○矢内原委員  ノーベル賞の賞金どころでないぐらいたくさんもらえる。 ○石井(美)委員  受精能力に違いはないですか、年齢によって。 ○田中委員 それはかなり落ちます。 ○吉村委員  それは落ちますね。 ○矢内原委員  元気がない。 ○吉村委員  運動率が特に落ちますよ。 ○矢内原委員  イクシーの頻度が増しますね。 ○田中委員  そうなります。 ○中谷委員長  顕微授精の方で可能性が出てきます。 ○田中委員  年齢が高くなると染色体異常が増えるということよりも、これは年に関係なく、極端 に動きが悪い人とか形の悪い奇形精子では染色体異常が多くなることが発見されており ます。だから、いちがいに年を取ったから……。ただ、お子さんを産んでいるわけです から、そういう方は年を取っても妊孕力は十分にあると思います。ただ、運動性が落ち てくることはありますので、その場合には顕微授精が必要になってくると思います。 ○石井(美)委員  とすれば、提供者としての適性ということは言えるわけですね。 ○田中委員  ええ。提供者としては私はいいと思います。 ○石井(美)委員  精子を提供してもらった場合は、通常、人工授精ではないのですか。 ○田中委員  それは限らないんじゃないですか、卵側に原因があれば。だから非配偶者間の精子を使 った体外受精が可能になれば、当然そこで顕微授精は一つの方法になりますから、精子 が元気であろうが悪かろうが、卵側に原因があれば顕微授精。 ○石井(美)委員  それはそうですが。 ○田中委員  提供精子はすべてAIHを目的にしていましたが、実際には体外受精が必要な精子も含 まれていると思います。 ○石井(ト)委員  提供者の条件としてつくるならば、最高の品質のいいものを欲しいわけですね。ですか ら、そういうことでこの条件をつけるのであって、できたらなるべく堅実的なところが いいのであって、それは顕微授精までしなくてもいいという形で決めたらいいと思いま す。いただくわけですから。 ○中谷委員長  でも提供受けるよりは、夫の精子で何とかできればいいという意味で顕微授精を希望す る。 ○石井(ト)委員  これは第三者の精子をいただくときに、やはり質のいいということを条件にしません と。そういうことを考えて、年齢の配慮を前提にしませんと、いろいろな方法の技術が あるのですから、あらゆる方法を使ってという、多少無限になるわけです。質が悪くて も、要するに奇形が入っていても、その中から採って顕微授精可能だとか、そうすれ ば、受ける側の人もそれはリスクになるわけですから、いただくからにはいい条件の状 態で提供していただく。 ○田中委員  現実的に精子をもらうとなると、なかなか提供者を見つけることは難しいと思います。 慶應大学のような特別の施設以外では、精子を提供してくれる人を探すのはすごく難し いと思います。大学の学生課に頼むとか個人的に知っているクラブの後輩に頼むとか、 その中で常に良好な精子だけを集めることは難しいでしょう。先生、どうですか。 ○石井(美)委員  50、60の人だと運動能力が落ちるのであれば、40歳程度に制限する。その辺をお医者様 の方から提示していただいて。 ○中谷委員長  それは調査の結果によって決めると。 ○吉村委員  わかりました。 ○辰巳委員  女性側に原因がなくて、AIDを求める患者さんに、提供された精子が悪かったからと いって体外受精とか顕微受精をするというのはやっぱりおかしいですよね。 ○田中委員  それはそう思います。しかしAID対象のカップルをよく調べてみますと、妻側に卵管 障害があり体外受精が必要となる場合も決して少なくないと思います。 ○吉村委員  これはやります。 ○丸山委員  石井トク先生のおっしゃった最善の精子となると、卵子と同じように、既に子のいると いう要件を付することも必要かなとは思うんですが、他方、精子提供者の確保は難しい ということであれば、現在の先生のところがなさっているようなんだと、学生さんで結 婚……。 ○田中委員  学生がほとんどだから、子どもを作ったことのある実績となると学生からもらうのは… …。 ○丸山委員  難しいと思いますね。 ○吉村委員  これは卵子提供者に「子のいる」と言ったにもかかわらず、精子提供者に、「子のい る」というのを書かなかったというのは、現実にAIDを今やっているのが、子のいる という子はほとんどいません。  当院では、一応 6,000万の運動性60%以上という人を提供していただいています。精 子側に原因がないという明らかな、そういう精子を使ってますので、石井先生がおっし ゃるような御心配はないと思います。なかなかそういう人を、田中先生は見つけてくる というのは大変なんじゃないかとおっしゃっているわけですよね。 ○石井(ト)委員  ちょっとお聞きしたいんですけど、先生のところで、今、奇形の率はどのくらいです か。 ○吉村委員  当院では20%を奇形率の限界にしています。WHOの基準は、今、20%以下の奇形率 で、50%が前進性の精子で、そして、1ccあたり2万です。非常にだんだんと精子が減 少してきたというのもあってWHOはどんどん基準を下げていっているわけですね。正 常の下限がそれですから、今のうちの基準だと、まったく正常な精液ということになり ますけど。そういう方しか、初めにチェックをしまして使いませんし、ただ、健康人で は比較的元気な方が多いですね。数も十分な方が多いと思います。 ○丸山委員  先ほどちょっと話題になりました同一人で加齢とともに運動性なんかが落ちてくるとい うのは、あるいはより早く幼少の時から見ていくと上がるんでしょうか、生殖年齢にな ると。高校生、大学生になると。 ○吉村委員  そうではなくて、全体の平均が下がってきたということでありまして、それは環境ホル モンだという説もあります。 ○丸山委員  じゃなくて、運動性が加齢とともに下がっていく。 ○吉村委員  下がります。 ○丸山委員  それは同一人でも下がっていく。 ○吉村委員  同一人でも下がっていきます。それは50過ぎたら、私は下がっていくと思いますけど。 ○丸山委員  50ぐらいまでは同じなんですか。 ○吉村委員  同じぐらいですね。50でも、先生、十分な精子を持たれる方は、先生なんか十分かもし れません。 ○丸山委員  それは妊娠させるには十分であるけれども、かつてよりは下がっていく。 ○吉村委員  そういうことです。 ○矢内原委員  老化するんだね。精子の数というのは非常にいいかげんなんですね、ある意味で。つま り若い子というのは、しょっちゅうそういうチャンスがあるので、続けて何回もあって もちょっと減りますでしょう。若い子に、ちゃんと提供するんだから6日間禁欲しなさ いよと言っているとちゃんとしてくる。 ○矢内原委員  ところが50歳になりますと、そんなに元気ありませんから、同じ条件で比べるというこ とはきっとできないんだと思いますね。 ○中谷委員長  全く個人差がありますからね、それは。 ○矢内原委員  個人差と生活の。 ○吉村委員  現実面で、今、私どもの患者さんでも、60歳以上の男性の方が欲しいといって人工受精 されている方が4〜5人お見えになるんですけど、全員、数はあるんですね。初めに落 ちるのが運動性でありまして、 8,000万あって10%とか、といった数値を示していま す。そういう感じで運動性が悪くなってくると思うんですね。こういうのを決めるとき に、そういうデータはないんですかとおっしゃるんですけど、なかなかこういうデータ が現実面でないんですよね。昔の30年か40年前ぐらいのデータを見れば、あるかもしれ ませんけど。 ○矢内原委員 先生のところ、ずっと男性のあれをとっていますよね。 ○吉村委員 とっています。 ○矢内原委員 いわゆるWHOの規定に満たない人は何%いますか。 ○吉村委員 いや、それは先生、出せば出ますけど、30人に1人か、20人に1人ぐらいしかいないで すよ。 ○矢内原委員  男性不妊が非常に今多いと言われていますね。私は本当に多いのかなというのは非常に 疑問だと思うんですね。 ○吉村委員  当院では、男性不妊と言われる方は48%から52%ぐらいを占めています。 ○矢内原委員  全体の中の。 ○吉村委員  全体の中の。だから、ほかの機関は30%か40%ぐらいですけど、AIDをやっている方 が多いというせいもあるんでしょうが、男性不妊の方が48%から52%。 ○矢内原委員  ということは、概算すると、10組に1組の夫婦が仮に不妊になるとしますね。そのうち の50%があれだとしたら、20組に1人でしょう。 ○吉村委員  うちの場合はですよ。 ○矢内原委員  いやいや、一般に。 ○吉村委員  一般には30%ぐらいじゃないですか。 ○矢内原委員  ということは、 200人の学生さんに1人いるということになりますよ。 ○吉村委員  そのくらいの頻度ではないかなと思うんです。私は20〜30人に1人ぐらいかなと思った んですけど。 ○矢内原委員  もっと頻度が多いような気がするんですが。 ○吉村委員  30人に1人ぐらいだと思います。 ○矢内原委員  100 人に3〜4人いていいはずですよ。 ○吉村委員  そのくらいはいるかもしれませんね。 ○矢内原委員  そういうのはインフォームドするの、しないの。 ○吉村委員  いや、提供は「あなたは受けられません」と言います。 ○矢内原委員  「なぜ」と聞かれませんか。 ○吉村委員  数が少ないから。 ○矢内原委員  ちゃんと言うの。 ○吉村委員  もちろん言います。あなたは提供者、ドナーにはなり得ません。それは言います。 ○中谷委員長  そういうとき、どういう反応を示しますか。 ○吉村委員  別に何の反応も示されませんよ。初めにドナーになっていただく前に、まず精液検査を してその後エイズの検査をさせていただきます、と言いますよね。そしてそのときに数 を見て、エイズの検査はマイナスでした、数が幾つ幾つですので御遠慮願いますという ふうには言います。 ○丸山委員  その場合の、自分の不妊を考えて落ち込む人なんかにカウンセリングが要るとか。 ○吉村委員  アゾの方はお見えになったこともありますけど、まだ経験はしておりません。 ○丸山委員  数が少ないだけで。 ○吉村委員  数が少ない。提供者にはなり得ません。WHOの基準を満たしていませんのでドナーに なっていただくわけにはまいりません。 ○丸山委員  だけど自然妊娠は可能かもしれない。 ○吉村委員  それは十分可能だと思いますけど。 ○高橋委員  私にもそういうスペインダーが2人いたのですけど、私はだめだとは言わないで「間 に合ったから結構です」と言った。2人とも無精子症でした。 ○矢内原委員  金払いました? ○高橋委員  最初に採ったときの検査だけは金払いましたけれども、後は払いません。「ない」と は言えませんでしたね。  先ほど石井先生が言った質がいいとか悪いとかいうことはなかなか難しいです。WH Oで作った基準の 2,000というのは、以前は日本では 4,000としておりました。 ○吉村委員  そうですね。 ○高橋委員  4,000以下だったら自然妊娠はしないというように、私たちの若いときは教えたんでこ ういう精子に関する論文は、今から10年くらい前まではたくさんありました。例えば精 子の運動でも、顕微鏡下で見る運動のスピードと実際に射精された膣の中とか頸管の中 でのスピードでは全然違います。 アメリカにこういう論文があります。手術場で手術を受ける女性ボランティアの膣内 に精液を注入した後にすぐ開腹手術して、卵管から出る精子の数をはかって何分でくる か調べたのです。そうすると、イン・ビトロとはスピードは全然違うんですね。 ○矢内原委員 それは吸引とか収縮とかありますからね。精子のスピードを計算したことがあるんで すよ、論文で。えらい速かったですね。 ○高橋委員 驚くぐらい速いんです。 ○矢内原委員 ジェット機並みに速いですね。普通歩くのと比べると。 ○高橋委員 その時代によって論文の中身は変わってきますし、方法論でまた違ってきますので、 論文はあくまで参考だと思います。質がいいとか悪いとかいうのは、実際は難しいで す。 ○中谷委員長  素人はね。 ○石井(ト)委員  素人ではないですけど、年齢とかそういうもので差が出ているということであれば微 細のレベルではないのです。ですから60歳とか70歳でなくて、ある程度年齢がいったと ころで抑える必要があるということを言っているわけです。 ○矢内原委員  精子の場合は35歳の卵子の問題に対応するから、医学的な根拠を探してから年齢決め ましょう。 ○吉村委員  はい。胚の余剰胚はいいですよね。次は「対価」、これは大きな問題なんです。 ○矢内原委員  対価と匿名性、この二つが問題だね。きょうの攻防戦。 ○吉村委員  胚提供の無償は、余剰胚を提供するわけだから問題はないですよね。 ○中谷委員長  そういう御説明でしたね、この前。 ○吉村委員  これは案1と案2が、配偶子に関して、これが非常に大きな問題だと思うんですね。 石井先生が最も。 ○田中委員  胚は提供してよろしいですか、これは。治療に使っていい。 ○石井(美)委員  それはまだ……。 ○田中委員  余剰胚はいいんですか。 ○矢内原委員  いいとするならば、胚の提供3案ありますから。 ○吉村委員  いいとするならばです。 ○田中委員  わかりました。 ○中谷委員長  前回は、余剰胚だからというようなお話があったんじゃなかったですか。 ○吉村委員  そうです、そうです。 ○石井(美)委員  余剰胚に限ることは一致しています。 ○吉村委員  一致しました。 ○丸山委員  どのようにしてもそこまで。 ○吉村委員  胚をそのためにつくってはいけないということです。配偶子提供は原則として無償と する。これはなんですが、献血、骨髄提供に準ずる。 ○高橋委員  献血とか骨髄移植というのは、治療のため、救命のためにする行為だと思います。け れども卵や精子の提供は、それとは違うのではないかと思います。臓器提供のような崇 高な精神と同じ心になって、あの方に何とか子どもを授けたいという気持ちになれるか というとそれは難しいんじゃないでしょうか。  今、いろんな施設でやっている治験などでも、症例によっては1例5万とか10万とい う治験も結構あります。特に産婦人科関係の治験は安いけれども、内科などの治験は非 常に高いです。この幾らという値段を決めることは非常に難しいんですが、もう少し議 論する余地があるのではないかと思います。無償といっても、どこまでが無償なのか。 ○田中委員  よろしいですか、先生。 ○中谷委員長  どうぞ。 ○田中委員  お金の問題と提供者の匿名性とは関連しております。無償で卵子を提供してくれる方 は、身内しかいないと思います。ということは、卵子提供は無償にしておいて、なおか つ姉妹は認めないということになると、実質的にそういう提供者は殆ど存在しないとい うことになると思います。要するに、実質、卵子の提供は認めますと言っておいて、い ざ実際にやってみる段になると実はできないということになるのでは。だから卵子提供 をこの委員会が認めるというのであれば、できる余地というものを残してほしいと思い ます。これだとお金はなしで、今、高橋先生が言われたように、リスクを覚悟し無償で 注射を打って、卵子を採ってくださいという人は多分いないと思います。身内しかいな いと思います。  もし無償にするなら私は、兄弟、肉親からも認めてほしいと思います。肉親がだめな らば、ある程度お金をあげるということを入れてほしい。そうしないと現実問題、卵子 提供の治療は多分できないと思います。どっちかを譲ってもらうなり、どっちかを入れ ておいてもらえると。 ○中谷委員長  イギリスの場合は前は配偶子の提供は有償だったんです。それを最近になってから無 償にするということにしまして、ただし、無償といっても実費は支払っていいというふ うになっていますね。前は結構高かったです。1回につき 100ポンドとかなんか。一番 高いのは 500ポンドぐらいまであったようですけれども、今は、だから無償だけれど も、ただし実費、交通費とか、それからそのために……。 ○高橋委員 所得保障。 ○中谷委員長 所得の保障とか、そういうものを含むということのようですけれども。日本の場合 も、吉村先生、1回につき 5,000円とおっしゃいましたか、卵子の場合。 ○吉村委員 この前調べていただいて、 7,000円だったですね。 7,000円が治験に準ずる。大体14 〜15回は来なくちゃいけないですね。そうすると10万ぐらいですか。 ○矢内原委員 アメリカが 3,000ドルぐらい。 ○吉村委員 2,500 から 5,000ドルですね。 ○矢内原委員 だから、30万円ぐらいでしょう。 ○石井(美)委員 この間テレビでは、 5,000ドルという話をしていました。 ○吉村委員 モデルさんが 1,000万とか。 ○石井(美)委員 そうではなく普通の女性。 ○吉村委員 普通は 2,500から 5,000ドルぐらいだと思います。 ○石井(美)委員 5,000 以内だったのが高くなった。 ○吉村委員 上がりました。 ○吉村委員 きっと、それは提供者がいないからだと思うんですね。 ○石井(美)委員 どんどん上がっているんですね。 ○吉村委員 提供者がいないと当然値段は上がってくると思います。 ○辰巳委員 吉村先生のところで、もし精子の方の提供でも、無料、牛乳1本ぐらいということに した場合、集まりますでしょうか。 ○吉村委員  難しいと思いますね。 ○辰巳委員  難しいですね。 ○中谷委員長  今、1万円です。 ○加藤委員  そうするとその1万円というのは、無償とするということじゃなくて、ただし実費相 当とする、が入るんですか。 ○吉村委員  そうですね。 ○加藤委員  精子の実費なんてもともとないんじゃないですか。 ○吉村委員  1回来ていただくでしょう。今、治験でも1回来ても出るんだから、そういうことを 考えると別に 7,000円から1万円というのは妥当と思いますが。 ○中谷委員長  昭和40年代から50年代ぐらいまでは2万円でしたからね。 ○加藤委員  下がったんですか。 ○中谷委員長  それよりは安く、半額になったわけです。 ○辰巳委員  学生さんにとってはむしろアルバイト感覚でしょうね。 ○中谷委員長  2万円のときはアルバイト感覚でした。 ○石井(美)委員  それは、問題ではないですか。 ○吉村委員  2万円のときはそうですけど、やはり非常に少なかったですよ。だから、みんな隠れ て今はそういう意識はあまりないと思いますけれどもね。今、60人ぐらいをリクルート してますから、血液型四つで。これは結構大変な仕事です。 ○田中委員  大変ですよね。 ○矢内原委員  日吉の連中は募らない。 ○吉村委員  日吉の連中もやってます。 ○矢内原委員  せいぜい 600人いるかいないかだね。 ○吉村委員 ええ。医師もやってますけどね、頼んだ人は。 ○矢内原委員 昭和30年代は卵1個くれただけだったのに。 ○辰巳委員  献血、骨髄提供に準ずるというのはやはり無理じゃないでしょうか。 ○吉村委員  どうですか、石井先生の意見を聞かないと。 ○石井(美)委員  侵襲性からいくと骨髄提供も相当な侵襲性ですよね。 ○加藤委員  骨髄提供の場合は純粋にただなんですか。全く交通費も出ないんですか。 ○母子保健課長  交通費もないです。 ○加藤委員  実際には出ているということもないんですか。 ○母子保健課長  と思いますけどね。あくまでもボランティアと理解しています。 ○加藤委員  大変ですね。 ○田中委員  だから骨髄が足らないんでしょう。だから臍帯血という次の方法が始まったのでしょ うか。骨髄をとるのはちょっとびびりますね、私もあれは。 ○高橋委員  臍帯血の場合も国から10万円の補助金がその施設に出るんです。それは臍帯血の分 離・貯蔵などにかかる費用の補助です。それでも足らなくて、患者といいましょうか、 受ける側から幾らかでもいただこうかといったような議論がされているようです。 ○田中委員  私は無償でいいと思うんですよ。本当にその人のために卵を提供してあげたいという 気持ちは骨髄でも献血でも一緒だと思うんですね。そういう人の気持ちを大事にするな らば無償でいいと思います。逆に無償でいいという人の方がいいと思うんですね。いろ んなことでトラブル起こらないと思いますから。ただし、あとのここだけを直していた だかないと。 ○加藤委員  匿名性ですね。 ○田中委員  ええ。日本人の特質かもしれませんが、やっぱり兄弟姉妹ないしは友人ですか、親 友。それ以外の方で提供される方はいないのでは。 ○加藤委員  匿名性の場合、友人は匿名に入らない……。 ○田中委員  ならないですね。 ○加藤委員  ならないんですか。 ○田中委員  “あの人の為ならかまいません、どうぞ私に注射を打って卵を採ってください”とい う気持ちは非常に崇高だと思います。それは大事にしてあげたいと思う。その場合には 対価の請求は問題にはならないでしょう。ここを認めていただければ私は日本なりのegg donationが息づくような気がしますけど、だめでしょうか。 ○吉村委員  こういった対価とか匿名性といった議論は、胚の提供、卵子の提供、精子の提供が許 されたという前提で話しているという。 ○中谷委員長  それはそうですよね、当然です。 ○田中委員  そうです。 ○吉村委員  そうですか。 ○石井(美)委員  許されるとしてもこれだけの条件をかけなくちゃいけないということですよね。 ○田中委員  そうすると、許されるけど、条件をかけるというと、一応許しているけどやらせない というふうにとれるんですよ。一応そういうポーズはとっておいて実際はやらせたくな いというね。 ○加藤委員  受けられますという看板かけておいて、実際受けられないという。 ○田中委員  先生たちの気持ちが伝わってくるんですよ。やらせたくないという気持ちがひしひし と。そこに矛盾を感じるんですよ。 ○石井(ト)委員  先生は、前から兄弟とか父母からというのはずっと前からおっしゃっていましたよ ね。 ○田中委員  私が知っている限りの人は大体。 ○石井(ト)委員  匿名の中にそのままつながっていますけど、これに対しては本当にどうなのかという ことでもうちょっと議論してもいいかなという気がしますね。 ○加藤委員  実例はあるわけですね。 ○田中委員  言っている方はうちにおられます。 ○加藤委員  匿名というのはどの程度匿名なんですか。関係者だけでひたすら……。 ○田中委員  私は匿名じゃない方です、肉親です。 ○加藤委員  例えばだんなさんのお父さんが精子を提供した場合、それをみんなに言いふらすわけ じゃないでしょう、別に。 ○田中委員  言いふらしませんよ。 ○加藤委員  だから、親戚だから匿名でないというふうに言っても実際にはかなり隠して、そんな に多くの人が知っているわけではないですよね。 ○丸山委員  ここは表題が、おっしゃるような議論に結びつくんですけど、匿名性と別個の問題と して、だれが提供者になり得るかという問題ですので、そこはからめない方がいいんじ ゃないですか。 ○石井(ト)委員  ここの文章がそういうふうになっているから混乱しているんです。匿名のところで 「第三者からの提供は匿名とする。兄弟姉妹・父母からの提供を認めない」ということ になっているからちょっと混乱があって、提供者のところで、対象を限定したディスカ ッションをもう一度詰めてした方がすっきりすると思うんです。先生も相変わらずそこ を気にしていて、日本的な文化のことを考えたら、何とかという気持ちをもうちょっと 考えたらみたらいかがかと思います。 ○田中委員  認めない根拠はどこにあるのですか。どうして認められないのでしょうか、匿名性が いいというのはわかるんですけど。 ○中谷委員長  第1案と第2案ではどちらの方がワーキンググループの中では支持が多かったんでし ょうか。 ○石井(美)委員  半々なんじゃないですか。 ○吉村委員  半々ですね。私が案1ですね。 ○矢内原委員  田中先生 これは私の個人の考えなんですけれども、提供・ドネーションということ は、これはどこから来たかわからないのがドネーションなんですね。 ○田中委員  どうですかね。 ○矢内原委員  要するに、赤い羽根をくれますけれども、募金をしますよね。国境なき医師団に寄付 をしますね。そこのお金には名前を書いて渡しませんね。 ○田中委員  ええ、そうですね。 ○矢内原委員  ですから、ドネーションという限り、これは私は匿名であるのがドネーション、いた だく方もそうなんですね。 ○加藤委員  赤い羽根の場合、名前を書いてお金 1,000万円渡したって受け取ってくれますよ。 ○矢内原委員 赤い羽根と同じにして、申しわけない。 ○加藤委員 普通10円、20円だから匿名になっちゃうので、 1,000万円だと匿名にならないんじゃ ないですかね。 ○矢内原委員 だけどそれは10円と 1,000万円との差別ですね。精子と卵子の差別。 ○加藤委員 だから、匿名というのが、匿名であるということに特別な意味があるかないかという ことですね。 ○吉村委員  そうですね。 ○加藤委員  例えば、汝の右手で行うことを左手に知らすなという感じでもって、自分の功績をい ちいち知らせてはいけないという考え方もあるんだけれども、この場合にはそんなこと を考える必要はないんじゃないでしょうかね。 ○矢内原委員 功績に私はなると思うんですね、その人を助けてあげたということの。あの人に助け てもらった、あの人にもらいましたというやっぱり貸し借り的なものが必ず残ってくる と。胚の提供の場合に、例えばオプションとして、こういう血液型の組み合わせだとか その程度はいいとしても、どこどの何々ということまでは言うんだったら、もらう方に もその資格はないし、あげる方にもそれを、要するにPL法にひっかかるかもわかりま せん。質が今度問題とされたりルーツが問題とされたり、そこに。 ○吉村委員  私は田中先生に御質問したいんですけれども、兄弟からもらうといった場合に、将来 の子どものことを考えた場合に、最も大きな問題が起こりうるのは兄弟からもらった場 合じゃないかなということを私は推察するわけですよ。こういう同胞からもらったと き、例えば、その子がいい子に育てばいいですよ。私はいつも言っているんだけど、そ の子がもし非行に走った場合、やっぱりおれの子でなかったじゃないかという意識とい うのは、例えば、精子のお父さんがそう感じないだろうか。あるいはそのドナーに対し ていろんな問題点ができてくる可能性が、こういった兄弟というのは起こりやすいので はないかなと。 ○田中委員  私もそう思います。実際は、先ほどの精子と一緒なんですけど、兄弟からもらうと、 おじさんがずっと身の回りにいるわけですね。卵をもらった場合には、おばさんが遺伝 子上の母親ですよね。そういうことに耐えられるかどうかということは大事な問題です ね。それは決して、本来、精子、卵子を他人からもらうということ自体いいことではな いわけですし、また、本当の不妊の治療でもないわけですから、その辺のことは、それ こそカウンセラーの出番でしょう。起こりうるネガティブな部分をよく話して、それで も受けたいという場合には受容する。それ以外のことまで我々医者が責任を負う必要は ないんじゃないかと思うんですね。 ○加藤委員  精神的な適性もあると思うんですね。そういうことをやってもそんなにトラブルが起 こらないようなメンタリティーの人もいるし。 ○田中委員  逆説的に聞こえるかもしれませんけれども、この提供の治療を強く望む方には特にネ ガティブな話をたくさんしています。それでも欲しいですかと。将来、いろんな期待に 反するようなことが起こる可能性がありますよ、それでもあなた受けますかと。また、 卵を提供する方にも、こういうことはありますよと、それでもいいですかということを 言って、それでも欲しいといった場合には、我々の手を離れるのではないかと思うんで すね。 ○石井(美)委員  ここで規制するときは、そういう問題が起きる可能性があるということを考慮して認 めるか認めないかということを考えなくてはいけない。妻側に問題がある場合いろんな トラブルがありますと言われても、周りからあなたが悪いんでしょうと言われると妻は 拒否できないという状況になる可能性はあります。そういうことを十分考える必要性が あるとは思います。 ○田中委員  吉村先生のおっしゃるように、我々、目の前の患者さんと接しているときにそこまで やっぱり考えます。本当に子どもをつくってこの夫婦が幸せになるのだろうかと。かえ って不幸になる可能性もあると思います。確かに、肉親からもらうことにはリスクがあ ると思います。ですから、理想は匿名がいいと思うんです。全くの無償ではなく、匿名 性にしていただいて、ある程度の対価を払うということにしていただければ一番いいの ではないでしょうかね。 ○中谷委員長  田中委員に伺いますけれども、確認ですが、匿名性について案1と案2があります が、案1ですか、2ですか。 ○田中委員  私は2です。 ○中谷委員長  2ですね。そうしますと父親なり母親からの提供も認めるわけですね。 ○田中委員  母親は無理だと思います。 ○中谷委員長  父親からのは認めるわけですね。 ○田中委員  精子の場合は認めると思います。 ○中谷委員長  そうしますと、それによって生まれた子どもは父親が亡くなったときの相続権がある わけですか。 ○田中委員  それはわかりません、ちょっと。 ○加藤委員  今の我々の前提では、その場合には相続権は全くないという前提で考えているわけで しょう。 ○中谷委員長  匿名だから。 ○加藤委員  いや、匿名だからというか……。 ○石井(美)委員  親子関係がないから。 ○吉村委員  親子関係の判定で。 ○加藤委員  法律的な意味での相続関係の問題は一切発生しないと。全くアカの他人と同じだとい う建前でやっている。 ○中谷委員長  それはそういうふうな法律をつくるわけですね。 ○吉村委員  そうです。 ○中谷委員長  それは大変ですね。 ○丸山委員  5ページの下から6行目ぐらいに……。 ○加藤委員  それが実際できるかどうかが、一番の障害になるかもしれないですね。 ○中谷委員長  それが問題のような気がするんですけれどもね。それはまだ後でくるのですから、も うちょっと。 ○丸山委員  先ほどもちょっと指摘しましたけど、この匿名性のところに、第三者以外の場合であ っても匿名というのも理屈の上ではあり得るので、匿名の問題と提供者の問題と、それ から下の中黒にあるように、提供の条件、先ほど吉村先生指摘されたのはここに入って いますね。配偶者の同意が。 ○吉村委員  そうですね。 ○丸山委員  ですから、ちょっと三つの問題……。 ○石井(美)委員  分けてる。 ○吉村委員  そうですね。 ○丸山委員  入っていますから、分けて、特に表題を分けて表記していただいた方がいいと思いま す。 ○中谷委員長  どうぞ、随時御意見をおっしゃってください。 ○吉村委員  石井先生と丸山先生は案2でしたよね。 ○丸山委員  ええ。 ○吉村委員  匿名性に関してはそうですよね。 ○石井(美)委員  匿名性でなく、兄弟姉妹を認めるかという問題。 ○吉村委員  兄弟姉妹を認めるということですね。 ○石井(美)委員  父母を認めるかと、兄弟姉妹を認めるかとを分けて考える。 ○丸山委員  田中先生の御意見は、父母を認め、母はないかもしれませんけど、父を認める、案3 なんでしょうね。ここに挙がっているもの以外の。 ○田中委員  ということですね。 ○石井(美)委員  3案もあり得なくはない。35歳で切るともうあり得ないですか。 ○田中委員  難しいね。 ○石井(美)委員  外国では。 ○丸山委員  婚姻できるのが16ですよね。そのルールにのったらあり得ることはあり得る。 ○石井(美)委員  論理的に。 ○加藤委員  すれすれで。その父母を認めないというのは心理的なトラブルが発生するかもしれな いという理由なんでしょう。 ○石井(美)委員  世代間の問題、つまり親でありながら兄弟であるということになることです。 ○吉村委員  そういうことです。 ○石井(美)委員  実質的には。 ○田中委員  そうですね。 ○丸山委員  遺伝的には……。 ○加藤委員  それは何か混乱のもとになるんですか。 ○丸山委員  ということを考えた。 ○加藤委員  心理的に変な近親相姦みたいな気持ちになるから気持ち悪いとかというのはあるかも しれないけど、法律的には一切親子関係が成立しないのだとすれば、別に兄弟だって親 だって、兄弟と親とどっちが遺伝的に近いかということがわからないし、別に関係ない んじゃないですかね。むしろ気味が悪いとか近親相姦みたいな感じがするから。 ○丸山委員  遺伝的には親と兄弟になるんですね。 ○加藤委員  ええ。 ○丸山委員  そういう気持ち悪さがあると思うんですね。 ○矢内原委員  母親の違う兄弟。 ○丸山委員  逆に心理的な問題性は、吉村先生のお話とか田中先生のお話だと、親の方がむしろ少 ないかというような感じですね。 ○矢内原委員  子どもにとってはどっちがいいですか。同定できた子。田中先生どう思われますか。 生まれた子どもが匿名性がない場合には、私の卵はおばちゃんからきたのよということ を知ることになりますよね。 ○田中委員  そうですね。身内だと当然わかりますよね。 ○中谷委員長  わかりますね。 ○矢内原委員  私は兄弟が一番ののしり合うと思うんですね。いろんなことを言い合う。だけど、兄 弟からののしり合いがいずれ解消できていると思うんですよ。そこに子どもが巻き込ま れていいかということがすごく心配なんですね。 ○辰巳委員  通常の養子であればこういうことはよくありますよね、おばさんが本当の母親とか。 それでそんなに大きな問題、これと本質的に違う問題があるのでしょうか。 ○丸山委員  それを例に挙げると世代を飛び越すこともありますね。 ○石井(ト)委員  娘が未婚で産んだ子どもを自分の子どもにするとか、そういう関係の家族はかなり多 かったです、つい最近までは。 ○加藤委員  実際、自分が養子をとるといっても、養子が実は同世代で、実は自分の遠いいとこで あるという場合もあるわけですね。いとこを養子にしちゃうと。だから、そういうふう な世代を飛び越して、本来ならば水平にあるものが垂直になったり、垂直のものが水平 になっちゃったりすることはあるわけでしょう。もちろんそれはやめた方がいいだろう しいろいろ心理トラブルの原因になるから避けた方がいいにしても、禁止するほどの理 由になるんですかね。 ○矢内原委員  養子とは全然違うんじゃないかと思うんですね。養子というのは一つの制度の中で組 み込まれてきて、ちゃんと明記されてオープンになっていますね。全く他人であろうと いとこであろうと何であろうと、そこからいただきました。また、わからない人からも らう。本人も初めからそういうことは自覚をしてスタートして、今度の場合、自分の子 どもだと。 ○辰巳委員  本人がまだわかってないんじゃないですか、養子縁組をした時点では。 ○矢内原委員  小さいうちは。つまり20歳になったら、仮に知ることができる権利を与えたとします ね。それよりはるか以前のときに、そういうことを偶発的に知るということがあり得る と。それこそ16〜17歳で、一番怖い年代。このときに果たして子どもが受けるショック が、だったら初めから、あなたは養子なんだから、あなたはおばちゃんからもらってい るんだから、といって小さいときから育ててあればいいと思うんですよね。 ○加藤委員  やっぱり養子でも、後から養子だとわかる場合はあるんじゃないですか。 ○高橋委員  ありますね。 ○矢内原委員  それはあるかもわからないけれども、他人も認めて、周りのみんなも認めているわけ でしょう。 ○中谷委員長  昔から、小糠3合あれば養子には行かないと言いますものね。 ○矢内原委員  昔はあった。養子制度は長い間日本にもあったことだから、案外ある決まった考え方 をそれぞれみんな持っていると思うんだけど、今度の場合、全く新しい試みですから。 ○加藤委員  よくないというのと法律で禁止できるというのとは全然レベルが違いますから、例え ば、私が30歳若い女性と結婚すると言ったら友達も反対するだろうしみんなごうごうた る反対だろうけど、憲法上の権利だと言えば押し切れるわけですからね。極めて不適切 な結婚の場合だって法律では禁止できないんですから、提供の場合も……。 ○石井(美)委員  ただ、婚姻は当事者だけですが、先ほど子の福祉を優先するとしました。生まれてく る子、当事者でありながら承諾できない人がいますから。 ○加藤委員  ここでもって、例えば、自分の親から精子を提供されても非常にうまくいく場合も十 分あるわけですよね。 ○石井(美)委員  それはもちろん。 ○加藤委員  全然問題ない場合もあり得るわけですね。ですから何%うまくいって何%悪くいくか わからないけれども、禁止する、ということは全部うまくいかないというふうに判断す るのと同じことなので、だから、いろんな状況を見て、この場合は問題ないんじゃない ですかという場合まで禁止する必要は、全くないと思うんですけれどもね。 ○吉村委員  朝日新聞で何年も前に、根津先生がおやりになった後に読んだんですけど、提供され た側は余り悩まないんです。卵子を提供した側というのはすごい悩むみたいですね。本 当に私は提供してよかったのだろうか。男性と女性の違いというのはそこに私はあると 思うんですけど、やっぱり母性というのはこれは全然男親にはわからないものがある。 これは心理的なもので法律では禁止できないとかいうようなものではないと。母性とい うのは特殊なもので、そういったときに悩んでいる人がいた場合に、例えば、妹があげ たわけですよね、卵を。妹が悩んでいるわけです。お姉さんは全然悩んでないです、子 どもができて。「よかった、よかった」と。  私はそういう葛藤がずっとその妹にはついて回ると思うんですね。そして、大きくな っていい子に育つと、ああ、私の子だったのかなと思うかもしれない。でも、こういっ た医療というのは、母性といったものも考えていかないと何かしっくりこないんですけ どね、先生。 ○加藤委員  例えば人工妊娠中絶をした人の後の後悔とか、水子供養で 200万円のお金を出すとか というような事例を見ていると、あれは精神的なトラウマが物すごく大きいので、だと すると、人工妊娠中絶は禁止するというのが正しいということになると思うんですね。 実際問題として調べてみると、ものすごく高齢になっても水子供養に行くとか、それで やっぱり自分が生きているうちに供養しないと子どもがかわいそうだと。大体、人工妊 娠中絶してから水子供養行くまで40年かかっている人もいるんですね。40年間ずっと悩 んで、年を取れば取るほど悩みが深くなって、それでよせばいいのにお金払っている と。おれのところへ来ればただでやってやるよというので、おれがやったって全然供養 にならないからしょうがないんですけれども、そういう例があるんですね。 ああいうトラウマの例を見ていると、本当に人工妊娠中絶そのものが問題だというふ うに思うんですよ。だけど、今の我々の法規制の限界というのは、そういう事例があっ ても、それはあくまで個人の、自分で解決すべき問題で、それについてのカウンセリン グなどがもっとあった方がいいと思うけれども、それは法の規制対象とは考えられない というのが今の法の建前だと思いますね。 ○石井(美)委員 人工妊娠中絶のトラウマは、今の不幸や苦痛が人工妊娠中絶にあるというような宣伝 がなされることにもあるのではないかと思います。 ○加藤委員 それはそうですね。大学受験の一家の失敗したのは水子のせいだとか、いろい ろ……。 ○矢内原委員 水子供養というのは日本だけですか。 ○加藤委員 韓国のカトリックの中にも普及したそうですね。 ○石井(美)委員 すみません、話がそれてしまって。兄弟姉妹を認める立場をとったのですが、大変迷 うんです。一つは、ほかに提供者がいない場合に提供圧力をどうやって防ぐかを考えな くてはいけない。子どもがいることを条件にするので負担は少なくなると思いますが、 それでも、自分が現に育てている子よりかわいいとか、いろんなトラブルが生じる可能 性はあると思うのです。けれども日本では養子も血縁が多数を占めているという背景を 考えると、認めるという考えもあると思いました。 ○中谷委員長  私、これを拝見しまして、委員会の皆さん方がまさしく日本人だなというふうに思い ました。私なんかこういう発想できないものですから、非常にそういう点で感心して承 っております。 ○丸山委員  石井美智子委員の御発言だと、案3にも与される可能性もあるということになるんで すか。 ○石井(美)委員  案3というのは。 ○丸山委員  父母も可。 ○石井(美)委員  父母は、加藤先生はああいう言い方なさいましたけど、私はやはり不妊治療でどこま で治療かというのがあると思うんですけれども、基本はやはり本来は起こらないことは 起こらないようにしたい。世代的にそうなるということは自然界では起きないことには したくないという。 ○丸山委員  医学的にはそうですけど、社会的には養子でなされていることですよね。 ○石井(美)委員  養子では、現にある子どもの福祉のために養える人をそこで選ぶというシステムだか ら、そこのところは違うのではないか。 ○丸山委員  違うとして。 ○矢内原委員  逆に言えば、石井先生は兄弟姉妹からドナーを認めるということだと、それも子ども の福祉につながると。 ○石井(美)委員  そこはちょっとわかりませんですね。私はかなり提供者を他方でお金で買うことを制 限したいという気持ちがあるものですから、田中先生じゃないですけど、それではゼロ になっちゃいますよと言われると、そこはかなりあります。 ○加藤委員  今、いろんなところで人体の組織をお金で処理した方がいいという意見が物すごく多 いですよね。例えば、非常に患者の数の少ない組織を実験用に提供する機関があって、 それはお金でちゃんと使っていいですという書類をつくって処理しているのを世界的に いわば給付する、そういうシステムがありますよね。いろんなところで、今、手術で切 り屑、あらゆる切り屑というと素人くさいんだけど、あらゆる切り屑を再利用させても らいたいというのは物すごい勢いで起こっていますから、かなり人体の金銭化というの はすごい勢いで進む可能性があると思うんですね。  この妊娠に関する問題については、むしろ提供者の制限をしないで、ともかく今はお 金で取引されないような形を考えておいた方が全体としてはいいのではないかなと思い ますれども。それはほとんど焼け石に水かもしれないけれども。 ○中谷委員長  ほかに御意見は。 ○加藤委員  さっき丸山さんが言った、三つに分けて、提供者の条件と匿名性と、もう一つは何で したか。 ○丸山委員  配偶者の同意が要るかどうかという提供の条件ですね。 ○加藤委員  中谷先生、配偶者の同意というのは外国では多いんですか。 ○中谷委員長  ええ、当然に、配偶者がいる場合はその配偶者の同意ですね。正式婚姻夫婦でなくて も、事実婚のカップルでも、他方のカップルの同意が必要であるというふうに考えられ ているんですが。 ○加藤委員  日本では、例えば精子の提供で、結婚した人が精子提供したという例はないんです か。 ○吉村委員  それはあると思いますけど。うちではやってないだけで、それはあると思いますけれ どもね。欧米はほとんど結婚している方が多いですね。 ○中谷委員長  今、アメリカは精子バンクやなんかは別ですよね。 ○吉村委員  そうです。半数以上の方は結婚されているんじゃないですかね。 ○中谷委員長  アメリカですか。 ○吉村委員  ええ。 ○中谷委員長  学生が大体だそうですよ。ホワイトとか。 ○吉村委員  髪の毛も、色も、眼も。 ○中谷委員長  眼の色も。 ○吉村委員  全部書かなくちゃいけないから。 ○中谷委員長  血液型から、スポーツ選手であるとか、何のスポーツかとか。 ○吉村委員  バイセクシャルも許されているぐらいですから。 ○中谷委員長  未婚でもいいわけですからね。 ○吉村委員  ええ。女性や男性両方とも相手する方でも結構ですから。 ○中谷委員長  そうですよね。 ○吉村委員  ええ。 ○矢内原委員  ちょっとわからなかったんですけど、アメリカで今、卵子の売買が行われていて、実 際にお金を払っていますよね。一応匿名ですよね。かなりのお金になる。 ○加藤委員  匿名じゃないです。例えばモデルの名前なんかちゃんと挙がっているわけです。 ○矢内原委員  まあ、そうですね。なぜ、それでは兄弟姉妹というのは少ないんですか。兄弟姉妹の 話というのは余り聞かないですね。 ○中谷委員長  聞かないですね。 ○吉村委員  でもイギリスなんか結構あるみたいですよ。アメリカはほとんどないですね。余り聞 かないです。 ○矢内原委員  なぜだろう。 ○吉村委員  それはニュースバリューがないからじゃないですか。例えば、お金幾ら払いましたと いうとニュースバリューになりますけど、兄弟から献身的に払いましただとニュースバ リューがないから。アメリカはそういう国だと私は思いますけど。 ○矢内原委員  アメリカ人だったんですけれども、その問題が起こったときにある学会でこういうこ とがあって、妹の卵子で子どもができたんだと言ったら、ワンダフルと言ったわけで す。私はその前に、その人を除名しましたということを言っておけばよかったんだけ ど、言う前に言ったものでこれはその人を除名いたしました、学会は。それで会話が続 かなくなった。アメリカ人のドクターの奥さんはそれを美談だとしましたね。というこ とはアメリカには余りないのかな、と思ったんですけれどもね。  ドナーは匿名で、兄弟姉妹は認めるというのは非常にそこに矛盾があるように思う。 オープンならオープンにしちゃいなさい、匿名なら最後まで匿名。ただし、親・兄弟の 場合は匿名では私は無理だと。 ○丸山委員  アメリカで養子になる人と養子をもらう人の関係は、やっぱり日本と同じように血縁 が多いかあるいはそうでないかというのは調べておられているんですか。 ○石井(美)委員  わかりません。 ○丸山委員  赤の他人同士が多そうに思いますね。 ○加藤委員  アメリカの場合、跡継ぎを確保するために養子をもらうというのではなくて、孤児院 に置かれている子どもがかわいそうだから養子として育てたいという人がいますね。 ○中谷委員長  アメリカだけじゃなくたって、ドイツなんかでもそうですよね。むしろ自分の子ども がいても、さらに黒人のね……。 ○加藤委員  障害者の子どもを養子にするとかね。 ○中谷委員長  それがむしろ社会的なステータス、シンボルになるとか、養子に対する考え方が違う んだと思いますね。 ○加藤委員  それから、お金だけ出している養子もいますしね。この間イギリス人の友達がこれか らインドへ行くというからどうしてと言ったら、養子がいるんだよと言って、久しぶり に会うんだというのがいたけれども。 ○矢内原委員  今、中国も多いそうですね。お金払って。 ○中谷委員長  そうですね。 ○加藤委員  跡継ぎ意識を中心とした養子と、いわばかわいそうな子どもを引き取ってあげたいと いう意識を中心とした養子ではかなり違うんじゃないでしょうかね。 ○吉村委員  そうですね。 ○中谷委員長  よろしいですか。数の制限の方はどうですか。「確認できる出生児が10人までとす る」、AID。今、そうですか。 ○吉村委員  今は私のところでは、確認できるのは15人ぐらいですかね。15人ぐらいにしてまし て、4分の1から3分の1わからないので、20人絶対超えないような感じでいってます けれども。 ○中谷委員長  1990年の調査のときは、石井美智子委員なんかがやられたときは50人と答えられたん ですよ。 ○吉村委員  それはないですよ。 ○中谷委員長  それでびっくり仰天して、50人までもですかと聞いたの。そしたら法医の先生が、僕 が聞いてみようというので聞いてみたら、助教授が50人までだと言ったと比較法学会誌 に書いてあるんですよね。それが出たときに取材を受けたんだからその結果を読んでら っしゃるはずなのに、クレームが来なかったというのでびっくりして、そしたら柳田法 医の先生が調べてみたら、いや、このごろは20人までだそうだとおっしゃって、じゃ あ、大体そんなところ。 ○吉村委員  50人というと、年間大体 200人ぐらいですから4人のドナーで終わってしまうという ことですね。 ○中谷委員長  そういうこと。 ○吉村委員  極端なことを言いますと、そういうことはないと思います。 ○中谷委員長  そうですね。これは確認が難しいんですよね。 ○吉村委員  ええ、そうなんです。本当に、これは10人までとすると言っても、本当にやった人が 妊娠の有無を必ず言ってきていただかないと。 ○矢内原委員  これは制限をしようというのは近親相姦のことでしょう。 ○吉村委員  そういうことですね。 ○矢内原委員  その可能性を少なくしようということですね。非常にばかな質問をして申しわけない んですけど、法律的に近親相姦というのはどうしていけないんですか。 ○中谷委員長  親殺しと近親相姦というのは現代の二大基本的なタブーなんでしょう。 ○矢内原委員  どうしてですか。 ○加藤委員  近親相姦がなぜいけないかということですか。 ○矢内原委員  遺伝学的な意味でなくてですよ。 ○加藤委員  法律学的にですか。 ○石井(美)委員  一つは遺伝学的なことを基礎にして、もう一つは社会的というか家族の中の秩序維持 ですよね。親子関係、兄弟、そういう家族関係秩序と相反する男女の関係がそこに生ま れないように秩序を保つ倫理的な理由と説明しております。 ○中谷委員長  セクシュアル・アビューズで、母親が息子にどうかするというのと父親が娘をどうか するのと全然意味が違いまして、父親が娘にそういう関係を持つとその娘が父親の権威 をかりて威張っちゃうんですね。それで家庭の秩序が崩壊するという研究論文がありま すね。我妻洋さんが『家族の崩壊』という、1970年から1980年にかけてのアメリカのそ れについて書いたものの中にそういうふうに書いてありました。 ○加藤委員  ベリストロースは私らは引用しますよ。近親性というものの定義は婚姻制度によって 違っていると。今、日本で使われている近親性というのは、先進国は皆同じなんだけ ど、原始社会にある近親性と比べるとはるかに自由度の高い近親性であるけれども、し かし、人類の文化はすべて、ここからここまでは結婚していい、ここからここまでは結 婚してはいけないという近親相姦タブーというものを文化の最も基本的な構造としてき たと。だから日本の民法は随分できそこないかもしれないけど、それを守っているとい うのはしょうがないし、それを崩すと何が起こるかわからない。やっぱり非常に危険だ という。 ○矢内原委員  ほかの国でも全く同じですか。 ○加藤委員  民法で近親相姦を禁止する理由ですか。 ○矢内原委員  理由というか、その範囲。 ○加藤委員  それは近代民法を持っている国はみんな日本と同じように近親の範囲を決めていて、 いわゆる原始社会の何とか婚という、またいとこ婚だとか無数にありますよね。それに 基づいて近代的な法制をつくっているところはないんじゃないですか。 ○中谷委員長  日本は割合緩やかじゃないですか。 ○加藤委員  だから、日本は緩やかですよね。 ○中谷委員長  緩やかですね、ほかの国より。 ○加藤委員  韓国なんかでも、民法のレベルで言えば結婚できる範囲は日本と同じ定義をしている わけでしょう。だけど、実際には社会的な習慣として見れば日本よりはるかに厳しい拘 束をしているわけでしょう。 ○吉村委員  後学のための教えてください。何親等までいけないんですか。 ○高橋委員  三親等。 ○矢内原委員  いとこはいい。 ○中谷委員長  いとこはいいわけ。 ○高橋委員  いとこはいいんです。 ○石井(美)委員  日本は慣習的に多かったのです。 ○矢内原委員  それも遺伝的に証明できるいとこだけ。 ○石井(美)委員  法律上の関係です。 ○矢内原委員  法律的ですか。 ○石井(美)委員  ですからAIDで生まれたというときに、問題が起こると思いますね。 ○矢内原委員  起こりますね。 ○石井(美)委員  法律上の関係がどうなっているかということで決まりますから。 ○矢内原委員  そうですね。だから法律的にはいいけれども、実際は遺伝的には兄弟になにわけです ね。 ○石井(美)委員  そうですね。法律上いとこであるときにどうするかという。 ○矢内原委員  同じいとこでも本当のいとこじゃない。 ○加藤委員  だから連結可能匿名性という制度をとって、それで最終的に結婚していいかどうかと いう判断が問題になったときには、それは今現行の民法でやっている三親等までいけな いという、その規定と同じ判断枠でもって……。 ○矢内原委員  そういうルールが不文律になっているアフリカとか、そういう法律のない地域という のはどの辺に線引いているんですか。 ○加藤委員  それは物すごい厳しいんじゃないですか、恐らく。 ○矢内原委員  どの辺が妥協しているんですかね。ルールが多いんですかね。 ○加藤委員  知りませんけど、どんどん崩壊しつつはあるけれども、大体原始社会の方が近親相姦 タブーは厳しいわけですよね。 ○矢内原委員  あいつはおばさんだからいかんとか。 ○加藤委員  ともかく日本だと、おばさんと結婚して、どこかへ逃げちゃう人もいるかもしれない けど、逃げるわけにもいかないし、どういうサンクションがあるから知らないけど、実 際に起こらないんじゃないですか、ほとんど。 ○矢内原委員  人類の文化のあれだというので、背景から出た法律ならば、そういう法律のないとこ ろの文化ではどうなのかと思ったんです。 ○中谷委員長  ギリシャ、ローマの時代はどうだったんでしょうね。 ○加藤委員  さあ、どうですかね。だってエジプトでは近親相姦が法律的に認められていたわけだ し、ギリシャでもかなりあったんじゃないでしょうかね。  でも今回のこの問題はそんな難しい話ではなくて、我々の常識的な世界の許容度の中 でちょっと血縁関係が結婚する危険をどうやってチェックするかというので、チェック の基準というのも今まで習慣的にやってきた、三親等までいけない、四親等からいいと いう基準のまんまでいいんじゃないかと私は思うんですけど、先生はどうなんですか。 別の基準……。 ○矢内原委員  私は数を制限するのは、もし近親のことであるならば、これは大した大きな問題では ないと。その前に言った匿名性の問題の方がはかるかに大きいなと思って、ほかに何か 理由があるのかなと。 ○辰巳委員  次の「提供精子」のほうへ行ってよろしいでしょうか。「提供精子による体外受精 の、一回に移植する胚は2個までとする」となっておりますが、次の「胚の提供による 体外受精」は、このときは2個。これは35歳以下の卵ですから、2個でもいいと思うん ですけれども、提供精子による体外受精の場合は、女性の年齢がある程度高くなってい る場合もあるわけで、2個に完全に制限してしまうのではなくて、前のように、原則2 個、場合により3個とか、3個の含みも残してもらった方がいいのではないかと思うん ですが。 ○吉村委員  3個というのは。 ○辰巳委員  提供精子の場合ですね。提供卵子の場合は卵が若いので2個に制限しても別に構わな いと思うんですけれども、提供精子による体外受精の場合は、原則2個、場合により3 個といったぐあいに3個の道も残した方がいいような気がするんです。 ○吉村委員  これはそうじゃなくて、確認できる精子がAIDも制限しましょうと、10人としたん ですよ。 ○辰巳委員  違う、違う、すいません。一回に移植する胚の数です。 ○吉村委員  ええ、それはわかっています。それを10人というふうにしましたので、5回までとし ましたので2個までにしたんです。最高10人までというふうに意味を持っただけなんで す。 ○矢内原委員  できる子どもの数。 ○吉村委員  できる子どもの数は。 ○矢内原委員  可能性の最高は。 ○吉村委員  可能性の最高は。それで合わせたんですよ。 ○高橋委員  すべて妊娠したときでしょうね。 ○吉村委員  ええ。ですから、例えば一回に移植する胚は、原則で3個でももちろんこれは別に構 わないんですけれども、そしたらば、3個だと5回までの妊娠とするとなると、15人生 まれる可能性が出てくるわけですよ。可能性としては。それで2個までとしただけであ りまして。 ○加藤委員  それは10人までという規定をしておいて、これを3個までとした場合には、10人以内 でやめるというふうにしておけばいいわけで、別に掛け算をして10人にぴったり合わせ る必要はないんじゃないですか。 ○吉村委員  もちろんそうなんですけれども、それはだから3個まででも結構です。 ○石井(美)委員  数の制限は全体として同じ提供者から生まれる子は10人とまず書いてしまうというこ とですね。 ○吉村委員  そうですね。それは3個まででも。 ○辰巳委員  ちょっと2個に限定すると厳しいんじゃないかと思います。 ○吉村委員  これは機械的に5回×2という計算だけですから、それは先生、全然3個でも、私は 現実面として、確かに先生おっしゃることよくわかりますので。 ○石井(美)委員  多胎の問題の議論では、なるべく2個の方がよいという話があったので。 ○吉村委員  そうです。 ○石井(美)委員  提供を受けて減数手術をするということはやめていただきたいです。 ○吉村委員  そういうことですね。 ○辰巳委員  ただ、現実38〜39歳ぐらいで、提供精子をいただいて何とかというときに、2個だと ちょっと心もとないというようなところがありますので、ここは原則2個でもいいと思 うんですが、場合により3個というふうなところも残しておいていただきたいなと思い ます。 ○高橋委員  「原則」をつければ、場合によったら3個でもいいんじゃないですかね。 ○矢内原委員  日母のあれは変える気はないんですか。 ○高橋委員  この前、日産婦・日母の連絡協議会がありました。日産婦側から日母は3個にしまし たが、日産婦側の意向では3個じゃなしに2個にしてくれという要望だったのではない でしょうか。 ○矢内原委員  3胎以上を減数するならばね。 ○高橋委員  日産婦側からの提言は、再度検討してみますと、そういう返事になっています。 ○吉村委員  あれは先生、ちょっと確認しますが、日母の案は3個を減数する。3個を減数可、日 産婦の案は4個を減数の適用とするという案だと思いますけど。 ○高橋委員  違いますね。 ○矢内原委員  日産婦の場合は減数の適用まで言ってないんですよ。3個を戻すと言っている。 ○吉村委員  この前、日母と話し合いしたときに藤本先生がおっしゃっていたのは、要するに日母 の案では3個を減数可ですよね。 ○高橋委員  そうですね。3個は減数可です。 ○吉村委員  日産婦が3個戻していいと言っているのに、3個できる可能性があるわけですよね。 そうすると、3個戻してもいいのに減数をしていいということになりますから、日母の 案に対して、日産婦が要望したのは、4個からを減数可能にしてくださいというふう に、そういうことです。 ○中谷委員長  それなら理屈に合いますね。 ○吉村委員  と思います。 ○矢内原委員  そういう意味ではここのところの3個でもいいんですよ。 ○矢内原委員  4個にすると言えば。 ○吉村委員  これは私は3個でも、別にそういう意味ではなくて、減数をしないということが前提 ですね。 ○辰巳委員  提供卵子は2個でしょうか。提供卵子、35歳以下の人の卵子だから、結構いいだろう なと思うので2個でもいいかなと思いますが、これはどうでしょうか。 ○吉村委員  この提供卵子の場合はドナーがいいので、妊娠する確率は高いということで、私はあ えて、日母の案が3個なので2個というふうに私はここはしたんです。 ○辰巳委員  田中先生、いかがでしょうか。 ○田中委員  原則2個がいいと思います。いろんな状況がありまして、子宮の形だとか入りにくい だとか内膜が薄いとかいろんなパターンがあるので、原則2個で、場合によっては3つ ということを残してほしいです。 ○石井(美)委員  最高で3個としておいた方がよいと思います。原則で、というと……。 ○加藤委員  原則で、とやると、原則で20個だとか出てきちゃうから。 ○吉村委員  そうですね。最高3個と、それは入れて私は構わないと思いますけど。 ○中谷委員長  一つ伺ってよろしいでしょうか。提供者の記録は永久保存とすると。永久保存という のはどういう意味ですか。 ○吉村委員  永久保存というのは、何年も保存しておくということです。 ○石井(美)委員  原則廃棄しない。 ○吉村委員  廃棄しない。 ○矢内原委員  国家が存続する限り。 ○加藤委員  この生まれた子どもが生きている期間は保存するという意味なんでしょう。 ○吉村委員  ええ。スウェーデンのように、80年でしたか? ○中谷委員長  70年です。記録の保存方法はどういうことなんですか。 ○吉村委員  それまで具体的にはまだ検討しなかったですけど。 ○石井(美)委員  集中管理方式を検討したと思います。 ○吉村委員  それはそうですけど、先生がおっしゃっているのは、何を記録しておくか、そういう ことではなくて? ○中谷委員長  そうじゃなくて、それが他に漏れることがあるとするとまた問題になってきますか ら、集中管理方式ならまあまあないだろうとは思いますけれど、それにはそれなりのや っぱり準備が必要ですね。 ○吉村委員  そうですね。 ○辰巳委員  胚の提供による体外受精の場合なんですけれども、これは凍結胚を用いた場合だと思 うんですけれども、凍結胚の両親のデータについては余り多くを得ることができないん じゃないかと思うんですね。もともと提供すると決められていた精子や卵子に関しては 遺伝情報とかそんなことも入るのかもわかりませんが、いろんな情報が入ると思うんで すけれども、もともと最初は2人の間の体外受精ということでできた胚ですよね。それ の場合には両親に関しては余りいろんな検査というか、詳しいデータというのはとりま せんよね。 ○吉村委員  とりません。 ○辰巳委員  それを凍結しておいて、次、それが両親がもうよろしい、ほかの人にあげてもいいと いうことになって、そのときにその胚の出生に関するデータというのは余りそろわない ように思うんですけれども。 ○吉村委員  これは先生、どういうようなことを思っているかというと、例えば、その場合に何個 採れて何個戻した。残ったのが三つである。御両親はだれである。何歳のときの卵であ る。それだけのことですけれども。 ○辰巳委員  それだけのこと。 ○吉村委員  それだけの。 ○辰巳委員  ほかのことに関してもそうですか。提供……。 ○吉村委員  提供卵子に関してもそういうことになると思います。 ○辰巳委員  それだけのデータということですか。 ○吉村委員  そうですね。 ○辰巳委員  出自を知る権利のところでは。 ○吉村委員  だから出自を知る権利がどこまでかということによって、また違ってきますけれど も。 ○辰巳委員  出自を知る権利のデータがこれだけ欲しいというところが多分胚の場合にはそろわな いんじゃないかなと思うんですね。 ○矢内原委員  私は胚が一番そろうのではないかと思うんですね。 ○辰巳委員  でも、その人にもう一遍、再調査しなくちゃいけないわけですか。 ○矢内原委員  どこどこのだれだれと、だれだれの子どもというのは、戸籍を確認されますよね。当 然血液型もわかる。 ○辰巳委員  御主人の血液型は、私は調べていません。 ○加藤委員  でも出自を知るというときに、本当の父親の血液型まで知りたいということは、別に 保証しなくていいんじゃないですか。 ○辰巳委員  例えば、乳がんの保因者であるとか、そういうふうなことに関しての出自を知る権利 というところ……。 ○吉村委員  そんなことは全然関係ないです。 ○辰巳委員  全然関係ないですか。 ○吉村委員  全く考えてないです。 ○辰巳委員  そうですか。じゃあ出自を知る権利というのは、人を同定するというところに限って いると考えておられるんですか。 ○吉村委員  ええ。 ○加藤委員  それを書いていけないかどうかというのはちょっとわからないですけれども、乳がん で死んだとか肺がんで死んだとか長年こういう病気を患っていたとか、そういう記録を 書いていいかどうかということは問題だけど、普通は戸籍と同じように、何年何月に生 まれて何年何月にこの卵子を提供したという程度じゃないですか。 ○辰巳委員  そういうことですか、それでは結構です。 ○石井(美)委員  もう少しわかってもよいとは思いますけれども、どういう人でということが。名前が わからなくても提供者がどんな人物像であるということがわかるような情報を。 ○加藤委員  それはだからどこまで入れてもいいかという問題で、最低限の問題ではない。 ○吉村委員  だから出自を知る権利も、皆さんもすごく強調されるのですけど、親をだれか知りた いかどうか。要するに父親はAさんであったと。それが出自を知る権利だと私は思って いるんですけど。それ以上のことを教えるといってもどこまで教えるのか、これは大腸 がんの保因者であるとか、これは当然やり過ぎですしそんなこと全然考えていません。 だから、何年生まれのだれだれさんであると。それを本当に子どもが必要なのかどうか ということについて私も非常に疑問に思っているし、別に出自を知る権利はそこまで認 める必要もないのではないかという考え方を持っているんですけど。 ○辰巳委員  この間、出自を知る権利のところで、どこどこのだれだれということを知るというこ となのか、それともその人がどういうふうな危険因子を持っているのかということを知 ることなのかというふうな議論がありましたので、だからそのときに、だれだれという ことを同定するのは簡単にできますけれども、それ以外のデータについては凍結胚の場 合には得られないなと思ったので。 ○中谷委員長  よろしいでしょうか。「凍結期間は5年とし〜」、これはこれでよろしいんですけ ど、それで「両者の合意によって更新することができる」、これは最長どこまでです か。10年ぐらいを考えるんですか、それともいつまでもと、永久に。 ○吉村委員  これは生殖年齢を超えないということがこれに係るんですよね。 ○石井(美)委員  そうですね。ここには書いてあります。 ○中谷委員長  そうするとさっきの生殖年齢というのに戻るわけですね。 ○吉村委員  そうです。だから、それもまた難しいところですけれどもね。45歳にするのか50歳に するのか。現実面でこれを見ますと、45歳以上でも妊娠している人は何人いたかな。 ○矢内原委員  1万 2,000ぐらい。 ○吉村委員 そんなんじゃないです。45歳以上で妊娠している方は、平成9年あたり、第1子、第 2子、第3子、第4子以上とかいろんなことありますが、 410人いますから。となる と、生殖年齢は50歳というふうにして考えるしかないですね。 ○高橋委員 そんなにいるのですか。 ○吉村委員 45歳以上が 410人もいるんですよ。 ○辰巳委員  全部で何人ですか。 ○吉村委員 全部でというのは。 ○辰巳委員 16歳ぐらいから計算して。 ○吉村委員 平成9年は 119万 1,665。 410いるんですよね。私もこんなにいるとは思わなかった です。 ○石井(ト)委員  それは45歳以上。 ○吉村委員  45以上です。50歳以上となると書いてないんです、統計がないので。 ○石井(ト)委員  そうするとわからないですね。 ○吉村委員  わからないですね。 ○石井(ト)委員  中には50歳もいるということですね。 ○石井(美)委員  そこまで入れなくてもいいんじゃないですか。 ○石井(ト)委員  統計をどういうふうにとっているのかなと思って確認したんです。 ○吉村委員  50以上はいるんですか。ちょっとそれはわからないですね。 ○石井(ト)委員  統計のとり方で、そこまで多分いないだろうけど、一緒くたに混ぜちゃったという、 だから、どうなっているのかなと思って確認したんですね。 ○矢内原委員 40 、44。 ○吉村委員  母の年齢、50歳以上2人ですね。 ○矢内原委員 50歳以上ある。 ○吉村委員 ありますね、ここに。出生数でしょう、母の年齢ですから、50歳2人。 ○矢内原委員  45から49が4人。 ○吉村委員  これは4人ですね。これが平成10年ですね。 ○石井(美)委員  死産も含めて。 ○吉村委員  これは 2,500未満ですから何とも言えないですよ。確かに平成10年の段階で50歳以上 で2人産んでみえますね。これは 2,500未満の人です。結構いるんですね、私知らなか ったです。勉強になりました。 ○辰巳委員 でもドネーションかもしれませんね。 ○吉村委員 それはそうかもしれないですよ。平成10年ですからわかりませんね。ですから50歳以 上はほとんどいないというふうに考えて結構ですね。 ○中谷委員長 では、一応これは50歳、生殖年齢は50歳を超えないということでよろしいわけです ね。 ○吉村委員 ええ。 ○中谷委員長 それでは解決しました。 ○田中委員 保存期間を5年で区切ったのはどうしてでしょうかね。 ○石井(美)委員  5年は合理的かどうかわかりませんが、一定期間で医師の確認をきちんとしていかな いといけないのではないかと。 ○中谷委員長  それはそうですね。 ○田中委員  日産婦の受精卵の凍結のガイドラインの中には、保存期間はなかったと思うんです ね。 ○吉村委員  生殖年齢を超えない。 ○田中委員  までですよね。何年という数字じゃなくて、その患者が死別、離縁するまでとか、生 殖年齢の限りで、5年間という数字はなかったと思うんですけど。 ○吉村委員  これは非配偶者間の体外受精であるからということですね。そういう理解でいいです よね。 ○石井(美)委員  非配偶者間なのですか。 ○田中委員  胚ですね。 ○石井(美)委員  胚一般です。 ○吉村委員  胚をもらう場合ですね。 ○田中委員  胚のドネーション。 ○吉村委員  先生、自分たちの夫婦の子どもであるならば、生殖年齢を超えないでいいわけです よ。 ○田中委員  ずっといいです。 ○吉村委員  生殖年齢を超えなければ、その凍結は。 ○田中委員 50歳でも。 ○吉村委員 ところが、これは胚をいただく場合だから、5年ごとに確認をしましょうということ じゃないですか。 ○石井(美)委員  一般的に保存されている胚を5年ごとに、まだ保存しますかということを確認してい こうという趣旨です。 ○吉村委員  そうです。だから、これは非配偶者間の胚の提供だからこそこういう言葉が出てくる わけであって。 ○田中委員  わかりました。 ○石井(美)委員  というと、よくわからなくなる。 ○加藤委員  石井さんの理解は違うわけ。石井さんの場合にはすべての凍結されているものについ て。 ○石井(美)委員  そういう趣旨です。 ○矢内原委員  そういうのは、これからどのくらい出てくるかわかりませんけど、いわゆる今仮に使 っている余剰胚というものがすごいたくさんに永遠に保存することになるとすごくたく さんになってしまう。いつかどこかで廃棄しなければならないときに、どういう基準で 廃棄していいかわからない。 ○石井(美)委員  死別や離婚しても、患者さんは届けてこないですね。 ○矢内原委員  凍結胚は5年ごとに確認を。 ○田中委員  石井先生、実際は私たちは凍結している胚の凍結保存を更新するかどうか毎年通知を 出し、本人達に確認を取っております。というのは液体窒素の費用がかかることや、サ ンプリングチューブが沢山たまってきますので、いらない場合には廃棄するようにと実 際毎年やっています。 ○吉村委員  通知してちゃんと来ますか。 ○田中委員  来ない場合は電話します。実際には毎年できると思います。 ○吉村委員  ということは、普通の体外受精でも、これは適用されるということですね。普通の体 外受精で胚を凍結している場合にも適用されるということですね。 ○石井(美)委員  体外受精後、保存している胚……。 ○田中委員  そうですよ。 ○吉村委員  そうですね。わかりました。 ○中谷委員長  その保存の費用としては、年間どのくらいかかるんですか。 ○田中委員  液体窒素ですか。 ○吉村委員  結構かかりますよ。 ○田中委員  液体窒素自体は多分1万円ぐらいですかね。液体窒素の力で保存する安全装置つきの タンクだとか、部屋の温度を一定に保つ為の管理費だとかがかかります。 ○中谷委員長  その費用はどのくらい請求なさるんですか。 ○田中委員  1年間、たしか4〜5万円だと思います。 ○中谷委員長  そうですか。辰巳先生のところもそうですか。 ○辰巳委員  5万円だと思います。 ○中谷委員長  大体相場というのがあるんですね。 ○加藤委員  念のために保存するといってもお金がかかるんですね。 ○辰巳委員  これはその2人が、もう私たちは要りません、これをだれかのために使ってください と言った時点で、この5年ということが適用されるようになるわけですか。 ○吉村委員  いや、それは違うみたいですね。私はそう思っていたんですよ。 ○石井(美)委員  そういう意味ですか。 ○吉村委員  私はそう思っていたんですよ。だから、石井先生と私とでギャップがあったんです。 例えば、私たちは生まれました、もう要りませんと。そうすると我々は廃棄しているん です、今完全に。そういう症例だから、先生の場合には5年でということで、先生と私 とで意見が食い違っていたんですけど、初めから、そういうもののために胚をとってお かなくちゃいけないということになりますね。今後は、もし、これを許すとする。 ○矢内原委員  私の理解は、あのときには、もう要りません、と夫婦が言いますね。そしたらこれは ドネーションに回していいですかと。よろしいと言ったときに、中央管理にしますね。 そうすると、それは5年ごとに。 ○吉村委員  私もそういう理解です。 ○石井(美)委員  それは5年ごとに、両者が合意しないと廃棄されてしまうということですか。 ○吉村委員  それはそうですね。 ○辰巳委員  そこから先、両者の合意は要るんでしょうか。今さら5年たったのに、また聞かれて きても困惑するんじゃないでしょうかね。 ○矢内原委員  それはそうですね。 ○石井(美)委員  ドネーションを決定したらもうよいのではないか、と思っていたので。 ○中谷委員長  私もそう思いますね。もう要りませんということで、あげてもいいですと言ったら、 よろしいんじゃないんですか。 ○吉村委員  私はこれは別にそんなことは全然考えていませんので、なくてもいいと思うんですけ ど。 ○辰巳委員  5年で切っちゃってもいいんじゃないんですか。どこかで切らないと……。 ○高橋委員  そうですね、保存費用もかかるし。 ○辰巳委員  保存費用もかかりますが、余り……。 ○吉村委員  これ、丸山先生が言われたんじゃないですか、「由来する両者〜」。 ○丸山委員  そっちはいいかもしれませんけど、5年というのは余り要らない。 ○吉村委員  5年は何で出たんでしたか。 ○丸山委員  生殖年齢を超えることがチェックできますよね。 ○吉村委員  ええ。 ○石井(ト)委員  余剰胚を提供しているわけだから関係ないですよね。生殖年齢だとかそういうことの ……。 ○丸山委員  提供者の生殖年齢は書かなくてはいけないとするんでしょう。それはいいんすか。 ○吉村委員  私はこの「かつ生殖年齢を超えないものとする」というのは必要ないんじゃないかと 言ったんですけど。 ○石井(美)委員  私は普通の夫婦のことも含めて考えていたので。 ○田中委員  提供は要りませんよね。 ○矢内原委員 ただこれ、返せ、戻せということはあり得ますね。 ○吉村委員  それはあり得ますよ。 ○矢内原委員  あげちゃったり。そうですね。 ○吉村委員  それは昔おっしゃったかもしれない。自分たちの子どもが死んじゃったから戻してく れ、と言われるかもしれないですね。 ○矢内原委員  そうですね。 ○石井(ト)委員  これも最初、インフォームド・コンセントのところで、もう完全に要らないのか、そ ういう状況のときにはどうするのかというあたり、いくらか選択余地は入れておいて、 聞いておけばいいんじゃないですか。そういう可能性は確かにあろうかと思うんです よ。 ○辰巳委員  多分ほうっておいたら1000年でももつと思うんですけれども、やっぱりどこかで決め ておかないと、ジェネレーションということもありますから、だから5年が適当かどう かわからないですけれども、もう何年と決めちゃった方がいいんじゃないでしょうか。 ○石井(ト)委員  先生、理論的には1000年も2000年ももつんですか、凍結保存は。 ○吉村委員  もつと思いますよ。永遠にもつと思います。 ○中谷委員長  離婚の場合に、離婚したという通知があるんですか。 ○吉村委員  ないでしょう、これは。 ○田中委員  ないですね。 ○中谷委員長  「離婚によって、胚は廃棄される」というのは、何も根拠がなければ、廃棄もできな いんじゃないですか。こう言ってみたって。 ○吉村委員  離婚しましたという事象があったときにこれは廃棄できますよということを言ってい るだけなんですけど。 ○高橋委員  結局は、保存費用の請求があったときでしょう。そういうときは、離婚したかどうか ということはわかりますよね。 ○吉村委員  ええ。 ○高橋委員  実際に私が聞いたのでは、そういう保存費用を請求したときに連絡先がわからなくな ったり返事のないのが結構あるそうです。最初のうちは保存すると言っておいてそのう ちに連絡しても連絡つかなくなったり。非常にクリアに議論は進んでますけど、実際そ ういうケースだけではないようです。 ○田中委員  そうですね。 ○高橋委員  ですから5年なら5年で切った方がいいと思います。 ○石井(美)委員  管理料を請求して払わなかった場合にお医者さんが廃棄当然してよいものかどうかは 問題になるのではないでしょうか。 ○丸山委員  当初の預ける際の合意じゃないんですか。だから自分たちが使うための保存について は規定してもしようがないような感じですね。提供後の扱いについて規定する。この三 つ目の「離婚によって、胚は廃棄される」というのは、何か提供前のことを考えていた ような感じですね。 ○辰巳委員  提供後は別に廃棄されても関係ないですね。 ○丸山委員  関係ないですね。 ○吉村委員  いやいや、あのたたき台のときにはそうじゃなかったですよ、先生。 ○丸山委員  両方、何か混じってませんでしたか。 ○吉村委員  そんなことないです。 ○矢内原委員  あのとき、2人で子どもができて、これを提供しましょうとしますね。だけど、1年 後に2人は別れてしまうことなる。そういえば、あのときに胚があったなと。あれはど うしようかということになったときに意見が分かれてしまったら困ると。それから5年 後の確認を2人にとらなければならないというのはおかしな話で、もう離婚になったら やめましょうと。同定もできなくなる。 ○田中委員  一度提供を夫婦で同意したけれどその後どちらかの申し出があれば撤回できる、とい うのを入れておけばいいんじゃないですか。使用していなければその申し出を優先する と。そうすれば、使わないでほしいという意見の方が。 ○加藤委員  廃棄するというのはこの場合には、別の人にドネートするというそういう意味も含む んですか。 ○石井(美)委員  いいえ。 ○吉村委員  捨てるんです。 ○石井(美)委員  両者の合意によって、胚を提供する。 ○矢内原委員  どのくらい全国で胚が保管されているかというのをテトラークに計算するとどのくら いまでいくかね。6万周期やったとして。 ○吉村委員  比較的ないですよ。 ○矢内原委員  意外に少ないですね。30万個。 ○吉村委員  それは先生、何回もやってますからないですよ。 ○矢内原委員  3回ずつ……いやだけど、何回採っていても、年に3回ぐらいしかやらないでしょ う。 ○吉村委員  だから、意外と何回も返しているでしょう。凍結を返して。 ○矢内原委員  年に3回ずつ、10個できて、やったとしても、三つ、3回戻せばなくなっちゃうもの ね。 ○吉村委員  だから、なくなっている方、結構多いですよ。 ○中谷委員長  この場合に「両者の合意によって、胚を提供することができる」とありますね。これ で提供しているもらうときは対価を払うんですか。 ○加藤委員  離婚したとき、けんかしちゃって両者の合意は成り立たないんじゃないかな。 ○矢内原委員  離婚してしまったものはもう……。 ○吉村委員  これは対価を払うということですか。胚は対価は払わないんですから、これは全くド ネーションです。 ○中谷委員長  これは余り期待できませんね。むしろ、廃棄される方へ傾きますね。 ○加藤委員  胚の数が非常に貴重だとすると、例えば死亡した場合は廃棄されるんじゃなくて、死 亡した場合は没収されるという、そういうふうにした方がいいんじゃないんでしょう か。あるいは離婚した場合も没収される。 ○辰巳委員  向こうから何も多分言ってこられないでしょうから、確認のしようもないですから、 だから田中先生のおっしゃるように、向こうから申し出があった場合には廃棄するとい うふうな形で全部をひっくるめちゃって、離婚とか死んだらとかそういうふうなことは 余りない方がいいんじゃないでしょうかね。 ○丸山委員  片一方の見解で廃棄する。 ○矢内原委員  そうですね。 ○吉村委員  こういうときいつも言われるんです。離婚したらどうするんですか、死亡したらどう するんですかと言われるからわざわざこれは書いたんですよ。 ○中谷委員長  ただし書きはカットと。 ○吉村委員  ええ。 ○母子保健課長  すいません。今、どういう形にしたんですかね。 ○吉村委員  離婚したときどうするんですか、死亡したときどうするんですかとマスコミの方は必 ず聞かれますよね。ですから離婚、死亡した場合は廃棄されるでいいじゃないですか ね。それは書いておいた方が私はいいと思います。 ○辰巳委員  知らないで戻したら実は離婚していたと、後で怒られたりしませんでしょうか。 ○吉村委員  知らないで……。 ○辰巳委員  知らないで、もう2人が1年前に離婚していたのに、それを知らずに戻したんだけれ ども、実はその戻した胚の由来する親が離婚していたというのが後でわかったら我々が 罰せられたりするとか。 ○吉村委員  なるほど。 ○矢内原委員  不妊でせっかく忘れていたことを思い出させることになるね。 ○中谷委員長  それは両者の合意によって提供ということはあり得ないわけだから、ないんじゃない ですか。 ○吉村委員  そうですね。 ○田中委員  5年を毎年すればいいんじゃないですか。離婚してもすぐわかります。毎年確認す る。そうすれば離婚、死別したかはわかるでしょう。長くほっとくからわからない。毎 年確認してもいいのではないかと思うんですね、大事な胚ですから。 ○加藤委員  毎年料金をもらうわけでしょう。 ○矢内原委員  ドネーションしちゃったらもらわないです。 ○吉村委員  ドネーションしたらもらわないです。 ○田中委員  お金は向こうは要らないですね。病院が払うんでしょう。 ○石井(美)委員  ドネーションした後でもやっぱりそんなに確認する必要性はあるんですか。それはな いんじゃないですか。 ○高橋委員  ドネーションしたら確認は要らないんじゃないでしょうか。 ○石井(美)委員  ドネーションの決定のときには、インフォームド・コンセントをきちんとしてもらわ なければいけません。 ○吉村委員  そうですね。 ○矢内原委員  返せ、戻せというのが出てくるように思う。              ○石井(美)委員  異議を申立てたときにそれがまだ使われていなければ、廃棄してもらうことはできる ということです。 ○矢内原委員  そしたらその後、ドネーションされてなければ毎年払い続けなければいけないわけで しょう。 ○丸山委員  自分たちの胚に戻るわけですから。 ○石井(美)委員  それはそうです。自分たちの胚も入るのか、まず確認した方がよさそうです。この規 制の対象を。 ○矢内原委員  もう子どもも15歳になったからもういいでしょうといって、20歳で子どもが死んだと きに、ああそういえば胚があったということになるかもわからない。返せ、戻せになら ないかな。 ○吉村委員  今までのやり方では、先生のところは知らないけれども、うちなんかでは1人子ども ができまして生まれますとそれを廃棄していたんです。 ○吉村委員  ですからそれは、死んでも、その胚はありますかと言われても、ない。特別な事例を 除いて。 ○中谷委員長  特別な事例というのはどういう場合を考えておられるんですか。 ○吉村委員  ちょっとこれは言えないところがあるので、それは本当に例外的な事例ですので。そ れは廃棄してますから、これを改めてやる場合には、胚を提供するということを前提に 考えた方がいいという理解でいいですか。 ○石井(美)委員  廃棄すべきなのかどうかは決めなくてはいけない。 ○吉村委員  今まではそうだったんです。 ○石井(美)委員  皆さんのところでもそうですか。 ○丸山委員  提供じゃないですよね。 ○吉村委員  それは提供じゃありませんので、自分たちの子どもですから、兄弟をつくらないとい うことでそうしてましたので。 ○矢内原委員  一転させるためには、ドネーションしたら所有権は返せ、戻せはなしだね。あげちゃ ったものだから。 ○吉村委員  その方がすっきりはしますね。 ○矢内原委員  すっきりするね。 ○丸山委員  使うなというのは言えるでしょう。 ○石井(美)委員  戻せとは言えない。 ○吉村委員  なかなか難しいなあ。 ○丸山委員  その前、ドネーションする前の問題をまず片づけないといかんですね。先生のところ のように、1人お子さんができれば残りの胚は受精卵を廃棄する、というのがこの施設 のルールなんですか。 ○辰巳委員  先生のところ以外にそういうところは多いですか。 ○吉村委員  私らのところはすべて廃棄していますけど、それを研究に使うとか、初めから前提に してますし、同意書にもうちはそう書いてますから。 ○辰巳委員  世界的にもそういう状況というのはあるのでしょうか。先生のところみたいな形を採 用しているところというのは。 ○吉村委員  先生のところは、1人生まれて、2年後に同じのを戻していることあるんですか。 ○辰巳委員  あります。 ○吉村委員  そうですか。それは二卵性と同じですからね。 ○辰巳委員  はい。 ○吉村委員  二卵性双胎ができるのと同じですから。それは保存期間も大変だからということで す。 ○丸山委員  どっちが多いんですか。 ○吉村委員  胚の提供を認めるか認めないかということによって、胚の提供が必要になってくれ ば、それを当然保存しておかなくちゃいけないということになるわけです。私たちが今 やっているのは、胚の提供を全然意識してませんから、ですから胚の提供がこれから 先、許されるということならば、そうやって保存していくということは当然あり得るわ けですから、余りそれを別個に考える必要は全くないので、これから先はすべて胚を保 存していきましょうというのとも全然それは構わないんです。 ○石井(美)委員  保存するかどうかは本人たちが決めることですね。 ○吉村委員  もちろんそうであって、それは本人たちが嫌なのにそんなことはできません。 ○丸山委員  第三者のための提供前は、本人と医療機関の合意でいいんですか。何かよさそうな感 じもしますね。 ○田中委員  いいんじゃないですか。 ○丸山委員  お金も要りますしね。 ○田中委員  要りますよ。 ○吉村委員  本人たちが使うためには本人たちから請求はいただく。ドネーションだったらそれは 病院の負担になる。当然ですね。 ○辰巳委員  その2人のうちのどちらかが廃棄してくれと言われた場合には廃棄する。 ○吉村委員  それは廃棄する。 ○加藤委員  廃棄するのは費用は要らないんでしょう。 ○吉村委員  要らないです。 ○矢内原委員  取ってもいいかもわからない。 ○吉村委員  取って? ○矢内原委員  廃棄する廃棄料。 ○吉村委員  そんなの取れないですよ。 ○矢内原委員  保存料取っているなら。 ○吉村委員  でも、大体それは研究に使わせていただきますね。 ○石井(美)委員  それはそれでまたきちんとしていただかないと。 ○吉村委員  それはちゃんとインフォームド・コンセントとってますから。 ○丸山委員  当事者は夫婦なんだけど、1人でも廃棄してくれと言ったら廃棄。提供前の話です が。 ○中谷委員長  廃棄しないでまたもう一度使うということはないんですか、当事者が。 ○吉村委員  それはもしとっておくという状況があれば、そういうことだって、先生、起こり得る と思いますね。 ○中谷委員長  その場合は、本来ならば双生児みたいになるわけだけれども。 ○吉村委員  二卵性のですね。 ○中谷委員長  二卵性のね。ところがあれですよね。 ○吉村委員  辰巳先生のところはそれをやってみえると。 ○中谷委員長  そうしますと、年が違ってきますでしょう。年が違えばまだいいけれども、年が違わ ないで、3カ月のとか4カ月のとか。 ○辰巳委員  それはあり得ない。1年後ぐらいでの兄弟はいます、何組も。 ○田中委員  双生児といっても多卵性ですから、一卵性じゃないんですね。普通の兄弟ができるわ けです。 ○吉村委員  だから、卵二ついたのと同じですから、それは余り問題にはならないと思います。 ○中谷委員長  問題にはならない。  さあ、だんだん佳境にいったところですけれども、時間が来てしまいましたので続き は次回に議論したいと思いますが、次回は7月25日(火曜日)の15時30分から18時30分 までの予定となっております。 ○吉村委員  先生、ちょっといいですか。 ○中谷委員長  はい。 ○吉村委員  すいません、5分間ぐらいかかると思いますが、日本産婦人科学会の倫理審議会で、 これを読んでいただいたら、質問があったのでちょっとお聞きしたいんです。6ページ に、ワーキンググループの先生に。「管理運営に関わる体制の整備」というところで、 公的審議機関とか公的管理運営機関というのを書いてありますね。 ○石井(美)委員  はい。 ○吉村委員  そうすると、この技術をやっていいと決めるのは、例えば医師なのか、公的管理運営 機関なのかということなんですけど。 ○石井(美)委員  やっていいというのは。 ○吉村委員  この医療をやっていいですかどうですかということをプライオリティーを持って決め るのは管理運営機関として理解していいんですか。 ○石井(美)委員  個別のという意味ですか。 ○吉村委員  そうです。この医療をやってよろしいですかと最終的な判断を下すのは管理運営機関 ということでよろしいんですか。 ○石井(美)委員  個別のというのは、この患者にこの人にということですか。 ○吉村委員  そういうことです。 ○矢内原委員  それはあのときの議論では、まだ……。 ○吉村委員  いや、先生お見えにならなかったから。 ○矢内原委員  違う、これを決めるときのワーキンググループのときに、そのときに申した。 ○吉村委員  この質問を受けたとき、私わからなかったので、それを聞きたいんですけれども、先 生方3人の意見は。 ○石井(ト)委員  そこら辺の意味が、逆にどういうことですか。 ○吉村委員  要するに全く公的な機関によって決定されるということで、あなた方はそれでよろし いんですかと。 ○加藤委員  今までだとお医者さんが大体主導権をにぎって決定していたことに関して、倫理委員 会よりはもっと強い権限で許認可の権限を……。 ○吉村委員  公的運営機関が与えて……。 ○加藤委員  この管理機関が同時に許認可の権限を個別について持つという理解でいいのかと。 ○吉村委員  いいのかということです。 ○中谷委員長  その場合、そういう機関というのは本来お医者さんも入っているし、もちろん女性も 入っているし、学校の先生なんかもいるし、法律家もいるしというそういう機関ですか ら、それでよろしいんじゃないですか。 ○吉村委員  だから、公的管理運営機関が最終決定をするというスタンスでよろしい。 ○石井(美)委員  私は個別の審査までは考えていませんでした。一般的に、第三者の提供する医療を認 めるかどうかということなどを決めるイメージでした。 ○中谷委員長  要するにガイドラインでしょう。 ○丸山委員  ドネーションを伴う胚移植をやっていいかというようなことまでについて……。 ○吉村委員  例えば先生、具体的なことを聞きますけれども、施術を行ってもよいと、許可が公的 な運営機関で得られました。この機関であれば、その機関の倫理委員会を通れば、その 機関で勝手にやってよろしいということですね。 ○丸山委員  認可を受けた、例えばドネーションを伴う……。 ○吉村委員  A病院が基準に合致すると。極端なことを言えば、例えば田中先生のところが認定を 受けた。田中先生のところの考え方でそれをやってよろしいということですか。 ○丸山委員  認可された技術については。 ○吉村委員  認可された技術については。 ○石井(美)委員  基本的な枠組みはガイドラインで定まっているという前提です。 ○加藤委員  だから、この範囲以内であればということですね。さっき言ったドネーション。この 場合、倫理委員会を通す必要はないんじゃないでしょうか。個別について、この事例や っていいかどうかについては。 ○中谷委員長  個別についてはね。 ○石井(美)委員  もし疑義があるようなときはそこに諮ってもらえるように用意しておくということだ と思います。 ○吉村委員  わかりました。 ○丸山委員  倫理審議会の答申、あれみたいに、個別的・例外的に実施施設の倫理委員会から承認 を受け、かつ日産婦の倫理委員会の承認も得なければならないというようなことは考え なかったですね。 ○吉村委員  もう一回確認しますが、第三者の配偶子提供による体外受精は、個別の機関でその指 定を受ければその考え方でやってよろしいということですね。 ○石井(美)委員  考え方でというのは。 ○加藤委員  慶應大学なら慶應大学でもって、患者さんの……。 ○吉村委員  慶應大学の考え方でやってよろしいと……。 ○加藤委員  やりますと決めていいということですね。 ○吉村委員  決めてよろしいということですね。 ○丸山委員  医療機関の決定でやってよろしいと。 ○吉村委員  要するにどちらがプライオリティーを持っているかということです。私の考え方で は、公的運営管理機関が指定をし、公的運営機関がある程度ここでやってよろしいとい うことを決めるのか、そういうようなことを思っていたわけです。質問受けたときに は、それで医療サイドとしてはよろしいんですかと私は言われたわけです。 ○石井(美)委員  医療サイドとして……。 ○吉村委員  現実にやる方です。やる方法として、慶應大学としてそれでよろしいんですかと。 ○矢内原委員  日産婦の倫理委員会の審議会で受けたの。 ○吉村委員  倫理審議会で受けたんです。 ○矢内原委員  倫理審議会で受けたのね。 ○吉村委員  倫理審議会でその質問を受けたんです。ですから、私は公的運営機関からプライオリ ティーを持ってやっておくべきだという考えだと思いますと言ったわけです。 ○丸山委員  もし、その質問の際の個別的な承認の意味がこの公的管理運営機関の承認を得るとい うことだとすれば、Aさんのドネーションの精子を用いた体外受精をやるについてここ の承認を受けて、次、Bさん夫婦についてもまた、改めて承認を得てというふうな考え なんですか。 ○吉村委員  そういう考え方も一つありますが、例えば、私どもの機関が、あなたのところは非配 偶者間の体外受精、卵子提供による体外受精をやってよろしいと許可された場合はそう いう施設がこの基準にのっとってできるということが判定されまして、あなたのところ でやってくださいと言った場合には機関の自由でやってよろしいということですね。 ○石井(美)委員  そうですね。不妊について学会で医学的な適応の基準は示されるのだろうと思います から、それに従ってなさるという前提です。 ○吉村委員  そういうことでよろしいですね。私はそういう理解を思ってなかったので。 ○丸山委員  慶應大学の内部で個別に倫理委員会を通しましょうということであれば、それはそれ で構わないんですね。 ○石井(美)委員  構わないです。 ○吉村委員  加藤先生がおっしゃった、倫理委員会を通さなくてもいいというのはどういう。 ○加藤委員  例えば、臓器移植なんかの場合には危険がいろんな人に及ぶわけですね。京都大学で は大体患者以外の人体に危険が及ぶ場合には、一応倫理委員会を通すという原則があり ますから、肝臓移植などの場合には、一つひとつ個別事例について倫理委員会の審査を 通していますね。そうでしたね、中谷先生。 ○中谷委員長  はい。 ○加藤委員  だけど不妊の治療の場合に、倫理委員会を通せという基準はない。 ○中谷委員長  ありません。 ○吉村委員  よくわかりました。 ○石井(美)委員  問題は、養子の場合には家裁で親として適性かということを判断する。それをこの生 殖補助医療の場合はどこも判断しない可能性というか、お医者さんあるいはカウンセリ ングの段階でそれがチェックされるのかというところは問題になるとは思いますが、医 療的な面での問題は個別審査までは考える必要はないと私は思います。 ○矢内原委員  これの質問の意図は、こういうものを指定するのを国家が指定するということに委託 していいんですかということなんですよ、きっと。それをお医者さんが納得するんです かと。 ○吉村委員  それもあったんですが、いや、そうじゃないんです。 ○矢内原委員  個々の症例についてのガイドラインを設けている、それを。 ○吉村委員  わかりました。 ○石井(美)委員  新聞報道では、審議会は個別審査を考えていたようなのでそれとの対比ということで すね。 ○吉村委員  そうです。わかりました。すいませんでした。 ○中谷委員長  それでは多少時間をオーバーしてしまいましたけれども、事務局の方でどうぞよろし く。 ○母子保健課長  次回、この続きのところをやっていただいて、そうすると一通り議論できますが、も う一回、日が決めてあります8月3日でしたか、そのときに、今、ペンディングになっ ているところあたりをじっくりご議論いただいて、その段階である程度方向性が、この 委員会としてお示しいただけるとありがたい。そして9月以降、今度はその方向に基づ いて、最終報告書の案文として、具体的に経緯ですとか各結論に至った理由ですとかそ ういうものを入れた、対外的にわかるような形のものを準備したものをもとにご議論い ただき、9月以降に3回前後で案文をまとめていただければと願っております。 照会先:児童家庭局 母子保健課 03−3503−1711(代)   椎葉(内線:3173) 小林(内線:3178)