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平成12年7月31日(月)
14:00〜16:00
厚生省特別第1会議室
(議事概要)
○ 本検討会の座長を阿部志郎委員に決定した後、炭谷茂社会・援護局長より挨拶及び本検討会設置の趣旨説明があった。さらにその後、検討会の公開及び配布資料の説明の後、各委員から自己紹介及び関心のある事項について自由に発言をしていただいた。
(炭谷局長による挨拶及び趣旨説明)
○ 津島大臣も大変この問題に対して関心を持っておられ、できれば本日ご挨拶申し上げたいということであった。
○ なぜこのような検討会を設けたのかというと、社会福祉の基礎構造改革の議論の中で、福祉関係者、中央社会福祉審議会や国会の中から、どうも忘れている分野があるのではないかといった指摘を受けていた。
その一番大きいものは生活保護の問題だが、これを含めて、どうも最近、社会福祉制度の網の目から落ちてくる層が大変目立つようになってきているのではないか、こういうところに我が国の社会福祉制度の中で忘れられている部分、十分に対応し切れていない部分があるのではないかといった問題意識を持つようになった。
したがって、一つは貧困者を中心とした生活保護的な面、もう一つは社会福祉のサービス・制度から脱落しているという部分の二つの問題意識からこのような検討会を設置するに至った。本来、このような検討会を行う手法としては、制度論からのアプローチが非常に分かりやすいのだが、今回はあえて制度からではなく、現在生起している実態面からのアプローチという手法を取ることによって、より根底から本当のニーズに合う施策作りができるのではないかと考えている。
○ 我が国の近代的な社会福祉事業のスタートは大正7年の米騒動の時にあったと考えている。それに対応するために、大正9年に内務省社会局が設置され、今年がちょうど社会局80周年を迎える。
その後、昭和4年に救護法ができ、13年に社会事業法、21年、25年に生活保護法の旧法、新法というのものができた。そして38年に老人福祉法ができ、このほか身体障害者福祉法、知的障害者福祉法などで、福祉六法体制が確立した。
これによって、我が国における社会福祉のニーズはすべてとらえられるという風に思い込まれてきたが、ここに一つの社会福祉制度のパラドックスが生じている。すなわち、制度ができればできるほど、その制度の枠の中でしか問題をとらえられなくなってしまい、その制度の谷間に落ちるニーズが生じることとなった。
○ 最近の「環境の変化」も見逃せない。一つは家族の問題で、ひとり世帯の増加により、家族の本来持っていた相互に助け合う機能、生活を支える機能を脆弱にした。二つ目は地域社会の問題で、都市部を中心にして助け合いとか地域の絆といったものが失われてきている。三つ目はいわば働く場の問題で、企業の終身雇用制度の崩壊、また中高年を中心とした企業のリストラの進行、若い世代でのフリーターの増加など、これまで企業によって守られてきた体制がやや崩れ始めていると感じられる。
社会福祉制度を整備すればするほどその谷間の問題が生ずるわけだが、それをこれまで家族、地域、企業というような場で守ってきた。しかし最近はこれらの環境がやや脆弱になり、崩れ始めているために、こうした問題が一層顕在化してきたのだと思う。
○ 具体的にはどのような問題があるのかといえば、まずは社会的・経済的に孤立をする人。中でも大都会で孤独死するといったような事例。また、中高年で失業した人の保護率が徐々に上がってきているが、必ずしも生活保護が十分に機能していないということ。
さらにホームレスや、大都市にあるスラム街の問題。こうした問題について、密接に隣接するのは貧困という問題だと思うが、貧困というのは、現在は見えない問題、もしくは見えても見えないふりをしている問題になっていると思う。
○ 現行制度がこれらの問題に対応しきれないのは、まずは視点という問題がある。現在の社会福祉行政の視点においては、女性という目で福祉サービス行政を見ていないし、外国人についてもしかりだと思う。次に要件の問題だが、近代的な社会福祉法制度を作ろうとすれば、制度によっては国籍、居住、資産、収入といった様々な要件をつけざるを得ないため、そのところから漏れてくるといった問題が生じる。三つ目には、給付されるサービス等は種類もしくはその内容を法定化してくると、その法律で給付されないニーズというものが実際存在するということである。
○ 提供体制においては、実際にサービス給付体制があったとしても、情報が十分得られないという層もあるし、都会のひとり世帯のように孤立化してくるという問題もある。
さらに、福祉事務所や社会福祉事業に携わる人々の意識の中に、どこかこれらの人に対する差別感というものがないだろうかということについて自省する必要がある。また、提供者側の縄張り意識というものも存在する。
また、社会福祉行政においてはケースワークや、ケアマネジメントといった様々な技法があるが、現在持っている社会福祉技法ではやや不十分ではないか、新しい技法が必要ではないかと思っている。
○ 先進国、特にヨーロッパではどのように取り組んでいるのかということに関心を持ってきた。今年の1月に訪問したイギリスにおいては、現在のブレア政権の最大の課題はまさにこの部分にあるということである。現在ブレア政権は第三の道というものを標榜しているが、第三の道においては、まさにこのように社会的に疎外・排除されている人に対してどのように対応していくのかということが、内政問題の最大の柱だということであった。
フランスにおいては、1988年に社会的に排除されている外国人または失業者を中心にして最低所得保障制度(RMI)ができ、1998年にはホームレス対策である社会的疎外対策法ができている。
○ 今後検討されなければならないのは、「生活福祉」の安全・安心の確保・保障のあり方ということである。その視点としては、縦軸と横軸があると考える。縦軸としては、低所得者層や貧困であり、横軸としては、都市などを中心にした、環境の変化により個別施策から脱落する問題が挙げられる。
理念としては、社会福祉基礎構造改革で掲げた人権擁護、自立支援といった理念に加え、最近イギリスやフランスで重視されているソーシャル・インクルージョンという理念、すなわち社会の仲間に入ることによって、自立や社会への参加を求めるということである。
また、提供体制のあり方、サービス給付のあり方、技法のあり方が検討されなければならない。また、市町村よりもっと小さい地域、例えばイギリスで行われている、より小規模な地域での対策の進め方なども検討に値する。
(各委員からの発言の概要)
○ 米国と比べた日本のホームレス問題の特徴として、(1)職場でリストラされて居場所がない、(2)何らかの精神疾患を持っている、(3)マイノリティーの問題である、といった点が挙げられる。特にマイノリティーの問題は、日本人がこれまで避けてきた問題であり、最も弱い点である。
このような公的支援がない分野にフィランソロピーは有効である。
○ 東京都のホームレスは平成8年は3500人程度だったが、平成11年には5800人となっている。この間、平成9、10、11年とマイナス成長だったが、この成長率と反比例してホームレスが増えてきているという事実がある。これはひとつの失業問題としてホームレスをとらえる必要があるということではないか。
○ 東京都のホームレスは、平成11年で5800人に上ると資料にあるが、そのうちの9割以上は、公園、道路、河川といった建設行政の対象となるところを生活の拠点としている。
ホームレス対策というと福祉行政ととらえられがちだが、こうしたギャップを考えると、ホームレス対策は他の行政分野との連携が必要であることが分かる。
○ これまでは、就労対策は白手帳で行っていたが、現在のホームレスは高齢化しており、白手帳による日雇い就労に合わないこと人もかなりいるため、白手帳によらない日雇い就労対策が必要。
緊急地域雇用特別交付金事業を拡充し、これを恒常的な施策にして、非ホームレス対策と就労対策をセットで実施していくことが重要ではないか。
○ 痴呆老人のケアの研究・研修のフィールドとして特別養護老人ホームを作ろうとしているが、痴呆のケアを専門とするケアワーカーの確保が難しい。医療であれば専門医制度あるが、痴呆を専門としているケアワーカーはそれほど育っていないと思う。介護の世界も専門化が必要ではないか。
○ これまで自治体等の援助を受けていた人が介護保険制度の施行により制度から漏れてしまうというケースもある。このような人に対する生活の場の提供が必要ではないか。
○ 今回の社会福祉基礎構造改革の法改正により、市町村が市町村地域福祉計画できることとなったが、この計画を市町村の総合計画にどう組み込んで行くべきか考える必要がある。
○ コミュニティーに包含(inclusion)できない人々のためのケアはいかにすべきか。外国人不法滞在者などの問題も含めて考える必要があると考える。
○ 現在の貧困は、地域差が大きく、周りの豊かさとのギャップも大きい。19世紀の貧困と似ているという特徴がある。
○ 女性の貧困については、若い女性の生活基盤が脆弱であるということにも着目する必要がある。
○ ホームレスの問題は、経済的な問題もあるが、現在のホームレスには、人間関係の貧困といった問題もある。
○ 社会保障の問題は、生活共同体が崩壊して個人ベースになってきた過程であるので、これを再構成するという視点が重要である。新しい共同体を再構成するためには、どういう人が軸となるのかが重要であり、そのために、民生委員制度の本質的な見直しが必要である。
○ 救護施設あるいは保護施設、保護更生施設といった施設に関して、今の時点で本格的に存在価値をもう一度問い直すことが大事ではないか。
○ 単身世帯で企業にも属さない者にとっては、所属組織がないためにデパートのカードも作ってもらえないなど「信用」が得られず、非常に心細い。このような人は、地域福祉に期待しているのではないか。
○ 地域福祉といっても、特に都市部では、自治体が地域の単位として大きすぎるということもある。そのような地域の場合、マンションなどの集合住宅という単位の方が、しばらく顔を見せない住民への相互の声かけを行うなど、現実的に機能していく地域の単位として期待できると思う。
○ これまでの社会福祉論は、制度論、給付論が中心となっていたが、これからは社会福祉の原点に戻って現実の貧困にどう対処していくかという論点も福祉関係者の養成に盛り込んでいく必要がある。
○ ホームレスの問題については、社会資源が有効に活用されていない、なかなか機動性が発揮できないといった問題があると感じている。
○ 地域社会という概念が日本には存在しているか疑問である。
○ 社会福祉施設の職員も社会問題には意外に疎い。
○ 社会福祉施設が地域の別の分野の社会問題を掘り下げる場として機能してもよいのではないか。
○ ホームレス対策は、これまで民間の力で対応してきたが、ここ数年で急速に問題が大きくなり、民間のみでは対応が困難になりつつある。
○ 社会福祉協議会が地域福祉問題には無力であったと思う。
○ コミュニティワークが地域福祉問題の有効な解決のための技法として期待でき、この分野にもっと光を当てるべきである。
○ 行政の施策が成果による評価が中心となってきていること、地域福祉がこれまで都市部で都市政策として根付いてこなかったことにより、地域福祉に携わる人が孤立するのではないか心配。
○ 「社会的不安」という概念には、問題を持っている人が感じる社会的不安という問題とは別に、問題を持つ人々に対する地域の不安といったきわどい表現が含まれているように感じる。
○ ホームレス生活を経験した人にホームレスになったときどのような気持ちであったか聞いたところ、「犬や猫の気持ち」という答えが一番多かった。地べたに寝ることによって人格の崩壊が起き、そこから自分を取り戻すためには膨大なエネルギーが必要だと思う。
この点にかんがみれば、地べたに寝かせること自体が人権問題との意識を持って、ホームレス対策に取り組むことが重要ではないか。
○ これからは制度をどうすべきかではなく、民間のエネルギーをどう引き出すかを考えることが重要ではないか。
○ 医療と福祉を総合して考え、援護をしていくという考えが重要である。特に精神疾患等の分野では、このような考え方に基づいて患者に接していく必要がある。
○ 在日韓国人社会には、厚生省が行っている施策の情報が入ってこない。民生委員は特別公務員との位置づけがあって、外国人に認められていない。情報提供の充実について考えていくべき。
○ 政教分離の原則も分かるが、宗教教育が社会福祉に及ぼす影響や果たすべき役割についても考えてほしい。
○ 在日韓国人は、日韓2つの文化を併せ持っており、コミュニティセンターで活躍をすることにより外国人に対する理解も深まるのではないか。
○ 戦前、あいりん地区には5000人の日雇い労働者がいたが、そのうち1500人位は公的宿泊施設に入っていた。現在は全国で約20000人なので、6000人分の公的宿泊施設が確保できると、街の様子もかなり改善できるのではないかと思うが、この点について今まで努力が足りなかった。
○ 外務大臣が、外遊に際してODA170億円の追加を約束しているが、国内でホームレスの人が十分な食事ができないことへの対応方策を論じている時に、どうして国民的合意なしにODAの追加を発表できるのか疑問である。
○ この検討会では、
(照会先) 厚生省社会・援護局企画課 03(3595)2612(直通)
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