00/06/22 公衆衛生審議会精神保健福祉部会議事録                             平成12年6月22日(木)                                          公 衆 衛 生 審 議 会 精 神 保 健 福 祉 部 会                 議  事  録                                                    厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課                                        公衆衛生審議会精神保健福祉部会議事次第             日 時 平成12年6月22日(木) 10:30〜12:00 場 所 厚生省特別第一会議室  1 開 会  2 議 事   (1)専門委員会の設置について   (2)社会福祉事業法の改正について   (3)西鉄バスジャック事件について(報告)  3 閉 会 〔出席委員〕                                  高 橋 部会長   北 川 委 員  浅 井 委 員  生 田 委 員  池 原 委 員   伊 藤 委 員  大 熊 委 員  吉 川 委 員  窪 田 委 員   小 西 委 員  佐 野 委 員  白 倉 委 員  津久江 委 員   冨 永 委 員  西 島 委 員  新 田 委 員  町 野 委 員   谷 中 委 員  吉 澤 委 員 【重藤補佐】 定刻となりましたので、ただいまから、公衆衛生審議会精神保健福祉部 会を開会いたします。  初めに、本日の委員の出欠について、事務局よりご報告いたします。本日は精神保健 福祉部会委員23名中19名の委員にご出席いただいております。定数の過半数を満たして おりますので、部会の開会は成立しております。なお、本日欠席される旨のご連絡いた だいている委員は、阿彦委員、木下委員、高杉委員、牧野田委員の4名でございます。  以上でございます。 【部会長】 ありがとうございました。  それでは、まず事務局より本日の配付資料の確認をお願いしたいと思います。事務局 よろしくお願いします。 【重藤補佐】 それでは事務局より本日の配付資料のご説明をいたします。座らせてい ただきます。  本日の配付資料でございます。まず最初に「議事次第」でございます。それから、資 料の一覧でございます。  資料1といたしまして「精神病床の設備構造等の基準に関する専門委員会の設置につ いて(案)」でございます。  資料2、「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する法律要綱」で ございます。  資料3でございますけれども、「バスジャック事件被疑者に係る入院手続き等に関す る調査報告」でございます。  以上でございます。過不足等ございましたら、事務局までお申しつけいただければと 思います。 【部会長】 よろしゅうございます。資料、配付されていますでしょうか。  それでは、議事に入りたいと思いますが、まず議事の第1番目でございますが、「専 門委員会の設置について」でございます。事務局より趣旨等について説明をお願いいた します。 【重藤補佐】 資料1でございます。「精神病床の設備構造等の基準に関する専門委員 会の設置について(案)」でございます。委員、ご承知のとおり、医療法の改正につき ましては、本年2月10日に、医療審議会において、医療法等の一部を改正する法律(案 )要綱が諮問されまして、2月21日に医療審議会に答申をされたと。それから、社会保 障制度審議会においても、2月24日に諮問されて、3月3日に答申をされた。さきの国 会に医療法の改正案が3月21日に提出をされました。しかしながら、衆議院の解散に伴 いまして、6月2日廃案となってございます。  そういう状況でございますけれども、医療法の改正については、次回の国会等でまた 提出されるということでございますので、医療法の改正に盛り込むべき精神病床の設備 構造、人員配置の基準等定めなければなりませんので、そのたたき台をつくるという専 門委員会の設置をしたいということでお諮りを申し上げております。  資料1でございますけれども、委員の案ということで、それぞれ本部会の委員、それ から、新たに医療経済等の専門家の先生を入れて具体的な案を作成していただいて、ま た部会にお諮りしたいということで、このような委員で専門委員会を設置したいという ことでございます。ご審議よろしくお願いをいたします。 【部会長】 どうもありがとうございました。医療法が次の国会でまた取り上げられて 審議されるという見通しでございますので、それに向けて、病床の設備基準であるとか 人員配置であるとか、そういったものを検討しておこうと、そういう趣旨の委員会でご ざいますけれども、案では11名の方が挙げられております。吉川委員が委員長でござい ますが、これに関しまして、ご意見、ご質問ございましたら、どうぞ順次ご発言願いま す。 【生田委員】 ありがとうございます。この委員のメンバーの件でございますけれども 、日本看護協会から入れていただいたこと大変ありがたいことだと感謝申し上げます。  実は、私、5月31日付で2期8年の退任ということで、日本看護協会を退任させてい ただきました。したがって、この精神保健福祉部会のメンバーも協会の公認という形で また推薦させていただければありがたいと思っておりますことと、そして、この委員の メンバーにつきましても、その部会の担当になりました理事を充てていただければ大変 ありがたいというふうに考えておりますのでよろしくお願いいたします。 【部会長】 ただいまの件、何か事務局からございますか。 【重藤補佐】 そのように取扱いさせていただきたいと思います。 【部会長】 どうも生田委員御苦労さまでございました。それでは新しい委員に引き継 ぐということで。どうぞ、伊藤委員。 【伊藤委員】 私も委員として参加させていただくことはありがたいと思っております が、このメンバーを見ますと医療の委員というのが単科の精神科の病院の方ばかりで、 できたら、一般病院というか総合病院といいましょうか、そこで医療を担当している方 を1名追加するのがよろしいのではないかという意見です。 【部会長】 メンバーの委員の中には、単科精神病院の関係者はいるけれども、総合病 院的な施設の関係者はいないというご意見ですが、いかがでしょうか。その点に関して 、どうぞ、白倉委員。 【白倉委員】 私も同じように考えまして、総合病院の中の精神科をやってらっしゃる 方に、専門委員に入っていただくのがいいのではないか。あるいは恐らく大学病院の多 くは、総合病院として関与している部分ございますので、その辺をご審議いただければ というふうに思っております。 【部会長】 確かに大学病院であるとか自治体病院や国立病院の中には総合病院の精神 科があるわけで、いろいろな面で活躍されているわけですから、そういう状況をこの委 員会に伝えられるような方に1人入っていただくということはいいのかもしれませんが 、よろしいですか。どうぞ、大熊委員。 【大熊委員】 私も賛成で、精神科医のうちどのくらいが総合病院に働いていらっしゃ るかを記憶では大体4人に1人ぐらいの方がそうでありますし、患者さん、特に通って らっしゃる方もおられますので、ぜひ総合病院は入れていただきたいと思います。 【部会長】 ありがとうございました。ほかにございますか、どうぞ、吉澤委員。 【吉澤委員】 前回、別の専門委員のときに、生田委員から女性が入っていないという 話がありまして、大熊委員の方から、やはり原則15%までは女性の委員を入れるという ことになっていたのではないかということが非常に私も記憶に残っていたので、まず、 頭数を見ましたところ、やはりお一方だけということで、後任の方も多分女性にはなら れると思いますけれども、15%という意味合いからもう1人ぐらい女性が入ってくださ ってもいいのではないかというのが1点と、今回、池原委員は入ってくださっています けれども、いわゆるユーザーの立場といいますか、病院を利用される立場の方をやはり 委員の中に加えていただいた方が望ましいというふうに考えます。 【部会長】 どうもありがとうございました。生田委員の後任は女性の方でらっしゃい ますね。 【生田委員】 多分そうだと思います。 【部会長】 2人分ぐらい働きをされる。 【生田委員】 それはわかりませんけれども、ただいまの吉澤委員のご意見に私も賛成 です。 【部会長】 ありがとうございました。どうぞ、池原委員。 【池原委員】 私も委員に入れていただいていて、全家連として、家族会のコンシュー マー側として入れていただいているのだろうと思いますけれども、今の吉澤委員のお話 しのとおり、むしろ第一次的な直接的な利用者といいますか、方は患者さんですので、 やはり患者さんの代表をぜひ加えていただきたいと。余り固有名詞は穏当でないかもし れませんが、例えば私も前回の法改正のときに参議院の参考人として意見を述べました けれども、そのときに大阪の方の患者さんの代表の女性の方ですけれども、立派にご意 見もおっしゃっていますので、女性であり、かつコンシューマーの代表という意味では 、今の吉澤委員の意見を両方とも満たすものとして、そういう点では非常にいいのでは ないかと思います。 【部会長】 どうぞ、大熊委員。 【大熊委員】 私も賛成で、今この11人のメンバーを拝見しますと、そのうち9人まで はお医者さんです。すごく異常に高い比率で、2人がナースですから、患者さんと私は できればPSWの方も入られた方がいいのではないかなとは思うのですが、私もその大 阪の女性を存じあげていますが、非常に冷静な方ですし、入院の体験も持っておられま すので、設備構造等というのには非常に適切な方だというふうに思います。 【部会長】 ありがとうございました。ほかにご意見ございますか。何か事務局からご ざいますか。よろしいですか。  いろいろご意見いただきました。若干の委員の追加を検討した方がよろしいというこ とでございますので、そのように事務局とも相談したいと思いますが、その際、人選に 関しましては、もし私にご一任いただけば大変ありがたいと思いますけれども、そうい う形で検討するということでよろしゅうございましょうか。 【大熊委員】 当事者の方を入れていただきたいというのは、これまで何度もいろんな 委員会のたびに申し上げてあるのですけれども、なぜか実現していないのですが、どう しても何か実現できない重大なことがあるのであれば、女であって、ユーザーを代表し ますから、私をお入れください(笑)。でも、とかにく当事者の方を入れていただきた いと思います。  もう一つ、この委員会は別段プライバシーにかかわるものではありませんので、委員 会を公開していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 【部会長】 わかりました。その点も含めて検討させていただきたいと思いますけれど も、内容につきましては、先ほど申し上げましたように、私にご一任いただくというこ とでよろしゅうございましょうか。吉川委員、委員長として何かございますか。 【吉川委員】 突然でございまして、私の方、98年、99年と続けて、こうした専門委員 会の座長をさせていただいてきましたので、ちょっと楽をさせていただけないかなとい う気がしないでもないんですけれど、ご指名でございますのでお引き受けをしたいと思 いますが、今、委員に関しましてもいろんなご意見がございましたので、ぜひ、部会長 としてご勘案いただいた上で委員の最終決定をしていただければと思います。よろしく お願いいたします。 【部会長】 ありがとうございます。それでは、ご議論いただきましたように、委員を 若干追加するという形でこの委員会をお認めいただければと思いますけれども、よろし ゅうございましょうか。               (「異議なし」の声あり)               【部会長】 吉川委員には再三大変重要な役をお願いしていますけれども、これも非 常に重要な課題かと思いますので、くれぐれもよろしくお願いいたします。どうもあり がとうございました。  それでは、議題の2番目でございますけれども、「社会福祉事業法の改正について」 に移りたいと思います。それでは事務局から説明をお願いいたします。 【田中補佐】 それでは、事務局の方からお時間いただきましてご紹介申し上げます。 お手元の資料2をお開きください。2ページになります。  皆様御承知のとおり、表記の「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改 正する等の法律要綱」につきましては、先般第 147国会におきまして、5月29日成立し たところでございます。この法律の中には、精神保健福祉にやや関係する部分がござい ます。そこで資料をお配りいたしまして、簡単にご紹介させていただくものでございま す。  まず、今回の改正の趣旨でございますが、昭和26年の社会福祉事業法制定以来の大き な改正でございまして、社会福祉事業法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童 福祉法、民生委員法、社会福祉施設職員等退職手当法、生活保護法の7法を一部改正い たしまして、以前ありました公益質屋法を廃止したものであります。  このうち、社会福祉事業法については「社会福祉法」に名称変更されております。  改正の趣旨を3点ほど絞ってご紹介いたしますと、2ページの資料2の「第一 改正 の趣旨」のところでございますが、それの2行目になりますけれども、一つ目は、社会 福祉サービスに関する情報提供、利用援助、苦情解決の規定を整備して、社会福祉サー ビスの利用者の利益を保護するというものでございます。  もう一つは、その3行目あたりになりますが、従来の措置制度から利用者の申請に基 づく支援費支給制度への改正ということでございます。  三つ目は、そこの4行目になりますけれども、市町村地域福祉計画等の策定の義務づ けを行って、地域福祉の推進を図る規定を整備するということでございまして、この三 つが趣旨ということでございます。  続きまして、改正の概要でございますが、お手元の資料2では、例えば2ページ以下 に、「第二 社会福祉事業法の一部改正の要点」とありまして、さらに進んで、11ペー ジまで行っていただきますと、「第三 身体障害者福祉法の一部改正の要点」というよ うな形で、改正された法律ごとに項目を立てて記述しております。  ただ、各法律にまたがる改正事項もございますので、これからご紹介申し上げる際に は横断的に共通項は繰り出す形で紹介させていただきたいと思っております。その改正 の概要を大まかに横断的にとらえますと、次の4点ございます。  1点目は、措置制度を改めて福祉サービスの利用制度化を図るということでございま す。  2点目は、サービスの質の向上ということでございます。  3点目は、社会福祉事業の充実、活性化ということでございます。  4点目は、地域福祉の推進ということでございます。  それでは、1点目から、あちこち資料飛びますけれども、ご紹介申し上げます。改正 の概要の1点目、福祉サービスの利用制度化でございます。これは措置制度を支援費の 支給制度に改めるものでございまして、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福 祉法を改正して行ったものでございます。  身体障害者については14ページをごらんください。  「4 支援費の支給」というところでございますが、身体障害者が、身体障害者居宅 支援のサービス、あるいは施設支援のサービスを受けたときに、それぞれ所要の支援費 が支給されるという形の改正になっております。  知的障害者については19ページをごらんいただきたいのですが、そこにも「支援費の 支給」という項目が立っておりまして、同様に居宅支援のサービスや施設支援のサービ スを受けた場合には、それぞれ支援費を支給するという改正がなされております。  なお、障害児についても23ページに同様の改正のご紹介がございます。  これらにより、従来、行政処分によってサービス内容を決定する措置制度が行われて おったわけですが、今後は利用者が事業者といわば対等な関係で契約を結んでサービス なり事業者を選択すると。その選択した際の利用料のファイナンスは支援費という形で 市町村が支給するという形になったわけでございます。  ただし、やむを得ない理由によって支援費を受けることが困難な場合、例えば急に親 御さんが亡くなって、事業者と契約を結んでいるいとまがないような場合については、 居宅介護や施設入所の措置制度を存続しております。例えば15ページをごらんいただけ ればと思うんですが、「6 居宅介護、施設入所等の措置」のところで、(1) 、(2) そ れぞれでありますが、やむを得ない事由により支援費の支給を受けることが著しく困難 であると認めるときは、居宅介護等の措置を採ることができるものとする、ということ で措置制度を残しておるわけであります。 同様の規定は、知的障害者福祉法についてもございまして、20ページをごらんいただ ければと思うんですが、「7 居宅介護、施設入所等の措置」というところで、同様の 制度を仕組んでいるところでございます。  また、児童についても24ページでございますが、「居宅介護等の措置」ということで 、4のところで同じような制度を仕組んでいるところでございます。  こうした利用制度化、すなわち契約化に伴いまして、社会福祉法において、利用者保 護制度を創設したところであります。利用者保護制度の一つ目は、福祉サービス利用援 助事業でございます。これは3ページの3の(3))をごらんいただければと思うんですが 、福祉サービスの利用に関して相談に応じたり、助言を行い、また必要な手続等につい て便宜を供与するような事業ということでありまして、例えば痴呆性の高齢者の方のよ うに、契約を要したり何なりする自己決定能力が低下した方について、その福祉サービ スの利用をお助けするという趣旨の事業でございます。この事業は、第二種社会福祉事 業に追加されております。  8ページの2の(2) をごらんいただきたいと思いますが、こうした福祉サービス利用 援助事業につきましては、都道府県の社会福祉協議会が実施することについて予定され ておるということでございます。 利用者保護制度の二つ目でございますが、苦情解決の仕組みの創設であります。同じ く8ページでありますが、(3) であります。社会福祉事業の経営者は、常に、その提供 する福祉サービスについて、利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならない ということで、事業経営者に苦情解決の義務を負わせております。 また、その次の(4) でありますが、苦情解決のためのいわば第三者機関として、都道 府県社会福祉協議会に苦情解決のためのボード、運営適正化委員会というのを設置する ということでございます。 利用者保護制度の三つ目でありますが、1ページ前に戻っていただきまして、7ペー ジの1の(3) にございます利用契約についての事業経営者による説明義務、そして契約 が成立したときの書面交付義務であります。事業経営者は、サービスの利用の希望者か ら契約の申込みがあったときは、契約内容等を説明するよう努めなければならない。契 約が成立したときは、重要事項を記載した書面を交付しなければならないというような 制度ができているわけであります。 以上、従来の措置制度が利用制度化されたことに伴いまして、大まかに三つ利用者保 護制度があることをご紹介申し上げました。  続きまして、改正概要の2点目、サービスの質の向上についてでございます。これに ついては、同じく7ページの1の(4) をごらんいただきたいと思います。この社会福祉 法におきまして、自己評価制度というのを創設しております。事業経営者が、自らの提 供する社会福祉サービスについて、その質の評価を行うよう努力義務を課しているとい うことでございます。 次にサービスの質の向上のための施策の2点目として、1ページ前に戻りますが、1 の(1) のところでございまして、「情報の提供」というところであります。 社会福祉事業の透明性の確保、それから、利用者の選択のために事業経営者に情報提 供を義務づけております。また、6ページの少し前の方になりますが、「3 報告書等 の閲覧」という項目がございます。これは社会福祉法人に対して、事業報告書、財産目 録、貸借対照表等の開示を義務づけているというものでございます。これらによって、 社会福祉事業自体の透明性を確保して得られる情報によって利用者が選択の参考にする という趣旨のものでございます。これらによって、サービスの質を図っていくというこ とを意図しております。  続きまして、改正の概要の3点目でございます。社会福祉事業の充実、活性化でござ います。これについては、社会福祉法におきまして、おおむね二つの点を改正しており ます。一つは、3ページの3の(2) をごらんいただきたいと思います。社会福祉事業の 範囲の拡充であります。社会福祉事業の需要の多様化に伴いまして、この3の(2) にご ざいます、ごらんのとおり、相談援助事業、手話通訳事業等々9事業を新たに追加して あります。  社会福祉事業の充実、活性化の二つ目は、社会福祉法人の設立要件の緩和でございま す。次のページの(4) をごらんいただきたいと思います。失礼いたしました(4) ではな くて、ちょっと失礼しました。少々お待ちください。  失礼しました。4ページの冒頭の(4) であります。社会福祉法人の設立要件の緩和で ありまして、障害者の通所授産施設の規模要件の引下げであります。20人以上から10人 以上に引下げておりまして、精神障害者通所授産施設もこれに当たりまして、小規模作 業所の運営主体の法人化が見込まれるところでございます。 続きまして、改正概要の4点目でございまして、地域福祉の推進であります。9ペー ジをごらんいただきたいと思います。「五 地域福祉の推進に関する事項」というとこ ろでございまして、1の(1) にありますように、市町村は、地域福祉計画を策定し、ま た(2) にありますように、都道府県は、その地域福祉計画の達成に資するために、地域 福祉支援計画を策定するというものでございます。これによって、計画的に地域福祉を 推進していくという仕組みを整えていくものでございます。 なお、これに知的障害者福祉法及び児童福祉法の改正によりまして、知的障害者福祉 に関する事務が市町村に委譲される改正も同時に行っております。 最後に29ページをごらんいただきたいと思いますが、公布、施行関係であります。改 正法は6月7日に公布され、施行されております。ただし、社会福祉事業9事業ほど追 加いたしましたが、そういったことについては、13年4月1日から施行。  それから、措置制度の利用制度化、地域福祉計画の策定等については、15年4月1日 に施行となっております。  以上でございます。 【部会長】 どうもありがとうございました。4本の柱を基本とした改正ということで ございますけれども、ただいまの説明に関しまして、ご質問、ご意見ございましたら、 順次ご発言をお願いいたします。どうぞ、窪田委員。 【窪田委員】 ちょっとお聞きしたいんですが、今度の改正で社会福祉法人の設立が容 易になったというようなお話をお聞きしたのですが、それはこの中で言うとどこに相当 するのでしょうか。 【部会長】 どうぞ、遠藤課長。 【遠藤課長】 企画課長ですけれども、法人の設立が容易になったという改正内容につ いて幾つかございまして、一つは、社会福祉事業の範囲を広げたというのがあるんです ね。それはこの資料で言いますと、3ページの3の(2) でありますけれども、社会福祉 事業の範囲として、いろいろな相談事業も対象になるとか、盲導犬の施設とか手話通訳 とか、こういう事業も社会福祉事業だということでございますので、このような事業を 目的として、法人をつくるというときに、社会福祉法人をつくれるというのが第1点で あります。  それから、次の4ページの(4)で、規模要件を20人から10人に引き下げたというのが ございます。これも従来、小規模作業所といわれている小さいな授産施設、無認可の授 産施設が、20人未満ということもあって、社会福祉事業とされなかったということであ りますけれども、ここで10人まで引下げがされましたので、10人以上であれば、社会福 祉法人をつくる道が開けたということであります。  それから、あと、今回の法律改正では直接出てこないのですが、運用事項として、今 回の改正に合わせて社会福祉法人設立に際しての資産要件を緩和しようという改正を行 う予定であります。具体的に言いますと、ただいまごらんいただいた4ページの(4)の 小さいな授産施設、これを目的として法人をつくるというときには、その施設について 借地借家でもいいと。そういう従来こういう施設物については、土地も建物も自己所有 という原則で、それを前提としての法人設立の認可をしておりましたけれども、そこは こういった小さな授産施設については特例として緩和しようと。そのかわりに当面の安 定的な、あるいは継続性のある運営を確保するための一定の財産を持っていただく。具 体的に言いますと、お金にして 1,000万円をめどにして、まだ、これは具体的に決まっ てないんですけれども、それぐらいを目安にして、そういう財産を持っていれば、借地 借家でもこういう施設の経営を目的とした社会福祉法人の設立を認めよう、こういう特 例をつくるということで、現在最終的な詰めを行っているところでございます。 以上でございます。 【窪田委員】 ありがとうございました。そうすると、実際にそのことの実施というの はいつごろになりそうでございましょうか。 【遠藤課長】 最初に申し上げた社会福祉事業の範囲を拡大したことに伴いますのは、 事業の拡大についての施行時期というのがすぐもう実施されているものと、来年の4月 1日から実施されるものと2種類ございまして、先ほど施行時期ということでごらんい ただきましたように、盲導犬の施設とかそういうものは来年の4月でございます。  それから、二つ目としてご説明した小さな授産施設の関係で言いますと、これは現在 いろいろな基準なりを詰めている最中でございますので、これはもう少々時間いただい て、速やかに実施できるようなことで現在準備中でございます。 【窪田委員】 ありがとうございました。 【部会長】 よろしゅうございますか。どうぞ、谷中委員。 【谷中委員】 今の小規模作業所のことですが、法内施設化されたということはすごい 評価できることです。そこで、今作業中と申されましたけれども、基本的にはこの法内 化されたときに、これは社会復帰施設体系の中に入るものなのかどうか。  それから、例えば、これを見ますと、従来の授産の半分ですから、予算規模とか建物 の広さであるとかさまざまなことも2分の1と考えてもよろしいのではないかと思いま すが、まだ作業中かもしれませんが、その辺の大枠がもし決まっておられたらお話し願 いたいと思います。 【遠藤課長】 社会復帰施設かどうかということですが、これは社会復帰施設の中の授 産施設であります。通所の授産施設。 【谷中委員】 授産施設のB型というふうに考えてよろしいのでしょうか。 【遠藤課長】 そういう整理の仕方もあろうかと思いますけれども、とにかく授産施設 の一つの類型であります。  それから、具体的な基準などについてなんですが、この点については、先ほど社会福 祉法人設立に当たっての資産要件について非常にハードルを低くするということを現在 検討中と申し上げましたけれども、同じように施設の基準についても、現在の授産施設 の基準そのまま当てはめていいのかどうか。そこについては、私ども現在かなり皆様地 域に根ざして非常に多様な活動をされているということもありまして、余り現在の授産 施設と同じような基準をそのまま当てはめてしまうとかなりハードルが高くなってしま うのではないか、そういうことも踏まえて、現在基準を検討しておるところでございま す。  さらに運営費の補助などについても、そういう基準について、ある程度ハードルを低 くしていく。従来の授産施設よりもハードルを低くしていくと、そういう方向で検討し ていますので、そういうことも踏まえての運営費の補助のあり方ということで検討して おるところでございます。 【部会長】 よろしゅうございますか。 【谷中委員】 はい。 【部会長】 ほかに何かございますか。それでは、もし、またご質問などございました ら、個別に事務局の方にお問い合わせいただければよろしいかと思います。  それでは、次の3番目の議題に入らせていただきますけれども、「西鉄バスジャック 事件についての(報告)」に移らせていただきます。この事件に関しましては、国民の 関心も高く、また、精神病院に入院中の少年が起こしたということでございますので、 厚生省として、精神保健福祉法上の手続等に関しまして、佐賀県と国立肥前療養所、そ こへ調査に行ったということでございます。その結果につきまして、事務局よりご報告 いただきますけれども、この調査には指定医といたしまして、宮城県の樹神ホスピタル 医院長の樹神先生、それから、島根県の八雲病院長の角南先生が同行されましたので、 本日、当部会に参考人としてご出席いただいております。先生方、どうぞ、ご着席いた だけますか。             (樹神参考人、角南参考人着席)  両先生には、事務局の報告の後、質疑のときに適宜ご発言いただけましたらありがた いと思います。よろしくお願いいたします。  それでは、事務局から調査結果につきまして報告を願います。 【重藤補佐】 それでは事務局から調査結果についてご報告申し上げます。資料3、「 バスジャック事件被疑者に係る入院手続き等に関する調査報告」というものでございま す。この中身については読み上げさせていただきたいと思います。  1.調査の趣旨   西鉄バスジャック件については、被疑者の少年が精神病院に医療保護入院として入 院中の事件であったことから、厚生省より当該少年の医療保護入院に係る精神保健福祉 法上の手続き等に関する事実関係について、佐賀県及び国立肥前療養所に対して聞き取 り等による調査を行った。  なお、この実地調査は、精神保健福祉法の38条の6に基づく立入調査ではなくて、精 神保健福祉法上の手続き等に関する事実関係を把握することを目的として、佐賀県及び 国立肥前療養所の協力を得て行ったものである。  2.調査日時   ・ 佐賀県    :平成12年6月19日(月)  10時〜12時   ・ 国立肥前療養所:    〃        14時〜17時  3.調査者   厚生省精神保健福祉課職員2名、また、精神医学的な観点から助言を受けるため、 指定医2名が同行した。   さらに、国立肥前療養所の調査には、佐賀県の担当職員が同行した。 4.調査方法  医療保護入院届け等の書面を基に、聞き取り調査を行った。 5.調査結果  (1)佐賀県   ○ 医療保護入院届けについて     平成12年3月9日に佐賀県において受理された。   ○ 医療保護入院に関する精神医療審査会の審査内容について     提出された医療保護入院届けについては、平成12年3月16日に開催された精神 医療審査会において審査がなされ、医療保護入院は妥当と判定された。   ○ 退院請求の受理等、佐賀県の対応について     平成12年3月7日、電話により被疑者の少年から佐賀県に対して退院請求がな された。3月27日、佐賀県においては精神医療審査会で審査を行うため、退院請求を行 った本人からの請求書、保護者及び病院からの意見書等を受理した。   ○ 退院請求に対する精神医療審査会の審査内容について     4月20日の精神医療審査会においては、書面による審査を行い、5月11日に審 査会委員による面接を実施することとし、少年からの退院請求を保留とした。事件のた め、5月11日の面接調査は中止となり、5月18日の精神医療審査会において医療保護入 院等の経緯について報告が行われた。その後、5月19日に佐賀県が被疑者の少年の退院 届けを受理したため、6月15日の精神医療審査会において被疑者の少年の退院請求は審 査終了となった。   ○ 医療保護入院に至るまでの保健所等の対応について     3月4日以前に保健所に対して、被疑者の少年に関する相談等はなかった。3 月4日午後9時20分頃、保健所の担当者に警察署より被疑者の少年の入院先について相 談があった。担当者は、管内の精神病院を照会したが当日の入院は無理ということであ ったため、精神科救急休日相談窓口を紹介した。その後、同日午後10時頃、警察署から 、翌朝肥前療養所を受診予定であるとの連絡があった。   ※ 以上、総合的に判断をいたしまして、佐賀県における被疑者の少年についての 医療保護入院届けの処理及び退院請求の処理に関しては、精神保健福祉法上、適正に行 われていたものと判断される。  (2)国立肥前療養所   ○ 医療保護入院のための指定医の診察に至るまでの病院の対応について3月4日 午後7時頃、被疑者の母親より被疑者の少年の入院について電話で照会があり、電話を 受けた当直医が診察を行わなければ判断できない旨を説明し、不穏な動きがあれば警察 に連絡するよう指示し、翌朝10時に再び電話を懸けるよう回答した。     3月5日午前10時30分頃、被疑者の少年の母親より入院させて欲しい旨の電話 があり、当日の当直医が対応を行い、まずは警察に相談した上で必要に応じて病院を受 診できるよう旨を説明した。   ○ 医療保護入院のための指定医の診察等について     3月5日午後4時頃、被疑者の少年が、被疑者の両親、警察官に伴われ国立肥 前療養所に来院をした。同療養所の指定医が診察を行い、医療保護入院が適当と考えら れる所見を認め、医療保護入院とする判定を行った。同日、被疑者の少年の保護者の同 意を得て、被疑者の少年が医療保護入院となった。   ○ 退院請求に対する病院の対応について     3月7日、院内の電話により被疑者の少年から佐賀県に対して退院請求がなさ れた。これを踏まえ、肥前療養所において主治医の意見書、病状報告書を作成し、それ ぞれ3月15日付、3月17日付で佐賀県に提出した。   ○ 入院中の状況について     入院初期は家族への暴言がみられたが、その後穏やかで問題なく経過していた ため、本人と家族との面接を頻回に行い、社会復帰に向けて治療を段階的にすすめるた め外出を行った。経過が良好であったため、5月3日に初めて外泊を行った。   ※ 以上、総合的に精神保健福祉法上の観点から見ますと、医療保護入院のための 指定医の診察及びそれに基づく入院については、精神保健福祉法上、適正な手続きが執 られていた。また、入院中の被疑者の少年に対する処遇についても、適正に行われてい た。    以上が調査結果報告でございました。 【部会長】 どうもありがとうございました。医療保護入院においての処理及び退院請 求の処理に関しては、精神保健福祉法上、適正に行われていた。それから、その入院、 精神保健福祉法上、適正な手続がとられていた。また、入院中の被疑者の少年に対する 処遇についても適正に行われていた。こういう報告内容でございましたが、これにつき まして、ご質問、ご意見がありましたらご発言願います。  ただ、この問題に関しましては、精神保健福祉法の手続ということ以外の個別的な診 療内容につきましては、当事者のプライバシーということもございますので、その保護 するという観点から、当部会でそれを直接取り上げるのは適当ではないかと思いますの で、その点は委員の先生方にはご理解いただきたいと思います。  当部会としましては、こういう問題に対してどういう対応をすべきかといったことな どについて大所高所から意見を交換するというようなことで会議を進めたいと思います ので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、どうぞ、ご質問、ご意見等ございましたらお願いいたします。どうぞ、池 原委員。 【池原委員】 2点教えていただきたいんですが、3月5日の午後4時の段階で少年が 両親と警察官に伴われて来院したということなんですけれども、この段階ではいわゆる 措置入院の方の要件というか、自傷他害の可能性とか、そういうことがあって警察官が 伴ってきたのか、その辺の事情がどうなのか。つまり、むしろ医療保護入院を使うより は措置入院の対象になるような患者さんであったのかどうかということをちょっと知り たいのと、それから、この記録だと5月19日に、被疑者の少年の退院届けを受理したと いうふうになっていますけれども、このときまで医療保護入院が継続していたというこ とでよろしいんですか。  そうすると、医療保護入院は継続していたけれども、外泊の許可は何回かその間に与 えられていると。その場合に、それであれば、むしろ任意入院に切り替えた上で、外泊 とか外出を許すというような、そういう可能性というか、そういう類型ではなくて、や はり入院形態は医療保護入院として維持しながら、かつ外泊の許可を与えるという、そ ういう取扱いがちょっとイメージとしてわかりにくいんですけれども、その辺はどうな んでしょうか。 【部会長】 事務局お願いします。 【重藤補佐】 まず、第1点目の措置入院には該当しなかったか、そういうような判断 はなかったかということでございます。少年の状態につきましては、犯行声明とか凶器 を所持していたということでございますが、それを使ってどうのこうのということでな くて、居宅でごく通常な生活をしていたということでございますので、ご両親は心配で 警察等に相談しているようでございますけれども、警察の方としても、ただ持っている というだけでは措置入院、警察の対応ということでは、ちょっと境界線かもしれません けれども、そうしたものとして判断というのはちょっと難しかったということでござい ます。  それから、外泊については、まず医療保護入院であれば、任意入院に切り替えてから 外泊手続をとるべきではないかということでございますけれども、その点につきまして は、医療保護入院であったとしても、治療上、経過等を観察して外泊ということについ ては、私ども特に精神保健福祉法上、外泊としては好ましくないということではありま せんで、それが治療上必要であれば、それはやっていただく。ただ、そこはきちんと手 続とってやっていただく。 【部会長】 はい、どうぞ。 【池原委員】 私も申し上げたのは、医療保護入院で外泊をするのはおかしいというこ とを必ずしも申し上げているのはなくて、つまり入院形態としてはどうも医療保護入院 ではなくて、任意入院に切り替えてしまうと、例えば離院してしまうとか退院してしま う可能性が高くて、結局入院を継続させるためにはある程度医療保護入院という形態を 維持しておかなければいけないということがあったのかなというふうにちょっと想像し て、そうすると外泊とか外出の判断というのはかなり微妙な、つまり、もしかすると外 泊すると戻ってこなくなっちゃうかもしれないとか、相当難しい判断がそこにあったの か。  逆に十分外泊させても、必ず約束どおり戻ってくるだろうし、治療の継続が確保でき るであろうということであれば、そこまでいっていれば、むしろ任意入院に切り替えて もよかったのではないかというか、その辺の、つまり外泊の判断が適正だったのかなと いうか、その辺がよく見えないところだと。余り細かいことまでは適当ではないかもし れませんけれども、もし、参考になることがあれば教えていただきたいと思ったんです が。 【部会長】 いかがでしょうか。 【重藤補佐】 診療の内容については、私ども行政機関として、専門領域に立ち入って コメントは差し控えさせていただきます。これについては、同行していただいた指定医 の先生のコメントが適切かと思いますが、事実関係から申し上げますと、少年は医療保 護入院ですから閉鎖病棟に入っていたということでございます。それで病状を観察して 、両親との面会、外出を数度して、経過を観察しつつ外泊に至ったという病院からの報 告でございました。閉鎖病棟できちんと少年の病状を観察するためということでござい ます。  ただ、任意入院になりますと、私どもで処遇については開放処遇が原則ということで しておりますが、そこら辺のところの病院側の病状からの判断であったであろうという ふうに推測されますが、ここのところは私の推測の域を出ないところであります。 【部会長】 それでは、樹神先生あるいは角南先生、ご一緒に行かれまして、ただいま の点など、その他のことでも結構でございますが、ご発言いただけますか。 【樹神参考人】 今、おっしゃられたのは、医療保護入院で外出とか外泊をさせるのは どうか、あるいはそれは妥当かというふうにお聞きしますけれども、やはり日常の我々 の臨床の中ではやはり経過観察という中では医療保護入院の形態のままで外出とか外泊 で経過を見ていくということは常に行われているというふうにお考えいただきたいと思 うんです。ということは、外出・外泊等が任意入院でなければできないということでは なしに、医療保護入院の形態で医療と保護が必要だけれども、現在の病状は一体社会の 中でどうかというようなことを見ていくためには、やはりその形態のままで行われてい るというのが現状だろうと思います。 【部会長】 よろしゅうございますか。 【池原委員】 私も医療保護入院で外泊させてはいけないという趣旨で申し上げている のではないので、ご意見はわかります。 【部会長】 角南先生お願いいたします。 【角南参考人】 外出があり、外泊がある。そして、その外出の前に極めて慎重に主治 医とご本人とで院内を一緒に歩いたりしながら、手順を踏んで、しかも一回一回きちん と評価をしながら進んでいるということで、そこで行われた内容は、私ども精神医療に 携わる立場として十分な配慮がなされていたという形跡を認めることができました。 【部会長】 指定医の立場からは非常に慎重に診療が進められていたということでござ いますね。 【吉川委員】 もちろんきょうでここで議論になることは法的な手続上どうだったかと いうことだろうと思いますから、それに関しては、今、ご報告ありましたように、手続 的には正当に行われたのではないかというふうには理解はしました。  ただ、問題はご本人が医療保護入院になったということは、要は精神障害であるとい うことが前提でございますよね。ですから精神障害であるということの診断根拠が一体 何であったのかということが明らかになりませんと、法的な手続そのものは正しく行わ れたということであっても、根拠そのものがあやしければ、これはちょっと後で問題に なるだろうと思います。  ここで議論されることとは異なっていることは十分承知した上で、ぜひ参考人のお二 人の先生方に漏らしていただけるとありがたいんですけれども、本当に精神障害と診断 しなければいけなかったケースなんでしょうか。このことが一番の問題点だと思うんで すね。これは、私は診断が間違っていたかどうかということを問題にしようとしている のではなくて、精神医学そのものの問題でもあるんですが、この少年たちが今示してい る、いわゆる「17歳事件」と称されるようなこの事件にかかわる思春期の子どもたちの 心性そのものが、従来からの精神医学だけで本当に判断できるような状態であるのかど うかということにまず問題があると思っているんです。  そのために、従来からの精神医学の判断だけでこのケースを精神障害であるというふ うな診断を下したこと自体にまず精神科医として考え直さなければいけないことが隠さ れてはいないかというのが私の判断です。ですから従来からの診断としてでも結構でご ざいますし、その範囲の中で本当にこの少年に精神症状というものが一体どういうもの として認められたのかということが、もし漏らしていただけるものであるならば、私は 大変幸いなんですが。 【部会長】 大変大きな課題かと思いますけど、いかがでございましょうか。どうぞ、 樹神先生お願いします。 【樹神参考人】 大変難しい問題だと思うんです。と申しますのは、現在審理中の事件 であって、そして、病院側もやはり守秘義務がありますから、したがいまして、個人の 些事にわたっての精神医学的内容について立ち入るためには、相手方の刑訴の代理人た る弁護団の了解がなければ困難だというのが見解でした。  そうおっしゃられればそのとおりでして、したがいまして、精神医学的に内容はどう だというところまで踏み込むことはやはり今回に関しては困難だというふうにご理解願 いたいと思う。  したがいまして、診断がどうだった、あるいは精神障害であったか、精神病であった かというようなことについて立ち入ることは困難でした。ただ、肥前の療養所は見解出 しておられるように、精神病ではなかったというふうなことはこの見解の中にあります けれども、したがいまして、広い意味の精神障害であったということにはなろうかと思 うんです。ただ、それ以上のことにつきましては、病院の方でもそのことは、今回に関 してはそれをお話しすることは困難だということでしたのでご了解願いたいと思います けれども。 【部会長】 そうしますと、医療上の判断は精神障害という判断だと。先生方は行かれ て、その判断は妥当であろうと、そういうことはよろしゅうございますか。 【樹神参考人】 その判断が妥当であったかどうかという中身までは検証できないと思 うんです、現在では。あくまでも手続上の問題にすぎなかったと。 【部会長】 そういう判断はされていたという事実はあったということですね。 【樹神参考人】 そうですね。 【吉川委員】 すいませんが、ちょっと。 【部会長】 どうぞ。 【吉川委員】 一言だけでよろしゅうございますけれども、先生方は、立入りではあり ませんが、お出でになられて、少なくとも肥前療養所の方でつくられていた診療録はご らんになられたのでしょうか。 【樹神参考人】 拝見しておりません。聞き取りにすぎません。 【吉川委員】 わかりました。 【部会長】 大熊委員どうぞ。 【大熊委員】 お母さんから相談を受けたという町沢というお医者さんがあちこちでい ろいろ書いておられまして、それによると、最初はベッドが空いていないからだめと言 われたけれども、自分が病院に直接かけ合ったところ、ベッドが一つ空いているという ことが判明したので入院することになったというようなことを言っていますが、それは 事実でしょうかということと、この紙に書いてあります当直医が警察と相談してという のが何度も出てくるんですけれども、そこのところがちょっと理解不能なんですけれど も、これは精神病じゃないというふうに思ったためにそのような行動とられたのでしょ うか。 【部会長】 どうぞ、事務局お願いします。 【重藤補佐】 聞き取り調査を行ってきた事実関係だけ申し上げますと、肥前療養所に よりますと、ベッドが満床であったというふうに回答した事実はないというふうに院長 から聞き取りを行いました。  それから、警察については、凶器等を持って犯行声明のようなものを持っているとい うことで、診察してみないと、とにかくわからないということでありますが、そうした ような少年でありますので、医療は受けるべき分野なのか、それとも警察がまず見て、 それで保健所へ通報して措置手続をとるような事案なのか、それについては判断が困難 であったということで、まず警察で見てもらって、本当に精神障害者で措置該当するか しないとか、医療保護入院とか、そういうような物事を考えて警察とも相談してという ことで言ったということでございました。 【部会長】 角南先生ございますか。 【角南参考人】 吉川先生が先ほどご質問いただいた、この少年が精神科医療の対象と いいましょうか、精神障害者、精神保健福祉法の定義に当てはまるものか否かという問 題に関しては、当該病院としてこのケースとかかわった当初から最も神経を使われたそ ういう経緯、状況がうかがえます。したがって、警察からであったりいろいろな今具体 的な固有名詞の出たどこかの先生であったりいろいろなところから、本人も診察以前か ら入院をとという、そういう圧力といいましょうかお願いといいましょうか、ございま したけれども、そのことだけをもって患者を見る以前に入院をお約束するということは できない。あくまでも精神障害者である定義に合っているか否か、それをまず患者さん と直接診察をした上で返事をさせてほしいと、そういう態度で臨んでおられたというこ とであります。  したがって、国立療養所で発表された狭い範囲の精神病ではないということ。これは 病院の発表でありまして、しかし精神障害者であったということを私どもは確認したと いうことでございます。 【部会長】 大熊委員よろしゅうございますか。どうぞ、伊藤委員。 【伊藤委員】 ちょっと細かな、今、報告の中の一部でちょっと疑問があるんですが、 一つは、電話で退院請求があってから、5月11日に面接予定と、審査会の方ですか、こ の2カ月という期間が、これはこの事件に関してというよりは、一般に審査会の機能が こういうように退院請求があってから、2カ月以上結論が出ずにいるという、その辺が やはり私はもう少し迅速な審査会の機能があってもいいのではないかなということを、 この報告の中でそれを感じましたので、この辺は今後の一つの課題になるのではないか と思って、この報告を見ておりました。 【部会長】 その点、いかがでしょうか、事務局。 【重藤補佐】 事実関係を申し上げますと、電話で受けた佐賀県につきましては、病院 から意見書、保護者の方からの意見書、本人からの直筆による意見書というものを取り そろえて書面を整備していたという間に精神審査会があって、整備をした次の4月の審 査会にかけたと。そこで書面審査だけではなく、実調の調査が必要だという審査の結果 で、5月11日に面接調査を行うということとなったということでございます。  確かに先生おっしゃるように、時間的にはもう少し早くということが必要かと思いま すけれども、私ども聞き取りやった限りにおいては、もう少し早くということはありま すけれども、不適切に怠っていたというまでは言えないという判断で、許容の範囲であ ったというふうに評価いたしました。 【部会長】 よろしいでしょうか。 【伊藤委員】 はい。きっと事情がいろいろあっておくれたと思いますが、ただ、一般 的にこの審査会の機能という観点から見ますと、退院請求なり処遇の不服請求があった ようなときに、どうしても今おくれがちで、私どものところから請求が上がっていって もなかなか実地に来ていただいて面接していただいて結論出していただくというのに少 し、私の場合は北海道ですけれども、時間かかり過ぎているなという印象がありますの で、一つこのことに直接関係しないまでも、間接的にはその問題も考えておくべきでは ないかということを申し上げたわけです。 【部会長】 どうもありがとうございました。ほかにご質問等、どうぞ、小西委員。 【小西委員】 まず、一つ質問したいんですけれども、警察と相談を先にした方が望ま しいということを、先ほどもご質問がありましたが、これについてもう少し詳しくお話 ししていただきたいというのは、警察と相談するということが、先ほどの精神障害であ るかないかということが微妙なケースとおっしゃいましたけれども、そうだとしたら、 もし精神障害でないということがあり得るという判断の上で警察に相談して、その後、 どういうことを期待されていたのか。どうして、そういうふうにアドバイスされたのか というところがちょっと混乱しているように思うんですけれども。 【部会長】 事務局お願いします。 【重藤補佐】 私ども聞き取りによって、電話を受けた医師から聞き取り調査をしまし たので、そこの内面の機微のところまで入り込んで深くお答えということはできないと 思いますけれども、報告いただいた限りにおいては、とにかく凶器を持ち、犯行声明が あるということで、警察官が保護をして、それで措置の通報ということもあり得るしさ まざまなことが考えられるので、とにかくそういうことを考えてまず警察とも十分な相 談をして、また、必要であれば受けますというふうなことであったと聞いております。 ただ、そこのところの機微については、ご本人でなければ、それ以上のことは私どもお 答えはできませんということでございます。 【小西委員】 この場では精神保健福祉法上の適正な手続についてのみ議論するという ことですから、とても質問しにくいんですけれども、じゃあ、これがすべて適法な手続 だったとして、ではそれでよしとしていいのかということが非常に問題があるわけです ね。むしろ吉川先生が言われたことと重なることかもしれませんけれども、ではそれに のりにくい、しかも、でもこういう人たちはやはり何かの介入を必要としているわけで すね。引きこもり状態というのはたくさんのいろんな原因のことを総称しているもので 非常に粗雑な概念ですけれども、その中には凶器を持っている人もいれば、家庭で非常 に暴力を常習的に行っている人もいるわけですね。実際に困っていて、周りの者もどう していいかわからないけれども、適正な手続上、これしかないのだと言われてしまって は、やはりこれは精神保健上の問題ですよね。  その点がそこで終わってしまって、ここ以外に議論する場はないと言われると非常に 問題は大きいと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。 【部会長】 今のご質問は、これからこういう問題に対してどのような対応をしていく かということにもつながるかと思うんですが、この会議の一つの目的は、そういうこと に関して、先生方のご意見をお聞きしたいということもございますので、余り時間も残 されていませんので、そういう観点からのご意見もできるだけちょうだいしたいと思い ますけれども、今の小西委員のご質問に対して、何か特別ございますか。どうぞ。 【今田部長】 今回のこの不幸な事件のその後の事実経過等の検証もさることながら、 今、ご指摘のように、家庭内暴力、あるいは家庭内への引きこもり、これが精神保健の 部分はもちろん入ると思いますし、あるいはもっと子どもとして見た場合、子どもの児 童福祉のような視点、あるいは教育の視点幾つかあるんだろうと思うんですね。  私どももこういった問題について、従来こういうケースについて見逃されてきたとい うか、器から必ずしも塗り切っていなかった部分がありまして、何かをしなくちゃなら ない部分があるのではないかという気持ちは私たちも今回こういう事件が重なることに よっても受けているものですから、そういう意味で、きょう皆さん方のご意見を伺いた いと思っているのは、そこがもう一つなければ、単に事実だけの検証をするだけでは余 りにも実りがないのではないかという気持ちは持っています。  今後の先生方のご意見をお聞きするわけですけれども、我々に対して、行政にとって も、どういうアプローチを、そうなるまでにできたことはなかったのか。そのためには どういうものが用意されるているべきではなかったのかという点について、私ども自身 が持っているノウハウ、必ずしも十分ではないという面もありますので、ぜひ、こうい うことをやったらどうかということがあれば、各委員の先生方に教えていただきたいし 、それをもって、私どもいろんな検討をしていきたいというふうには思っております。 【部会長】 ということでございます。どうぞ、小西委員。 【小西委員】 言いだしっぺですので、とりあえず私の意見を言わせていただきますと 、まず児童の枠で対応するというのは、こういうケースについては、今回は17歳という ことですけれども、実際には不十分であろうと思います。多くの場合に20歳以上の人に もたくさんこういうことで問題を持っていらっしゃる人はいらっしゃいます。家に引き こもっている人の中の暴力の問題は一部であるということも承知をしておりますけれど も、でも、その暴力が「家庭内」という名前がついただけで非常に過小評価されている ということも事実だと私は思います。  私の専門はその暴力被害ですので、家庭の中の暴力で虐待とかドメスチック・バイオ レンスをふだん扱っていますけれども、子どもの家庭内暴力のケースで、実際には聞い てみますと、虐待やドメスチック・バイオレンスのときに起こるようなかなり追い詰め られた心理状況と同じような状況に親の方がなっているケースも実際に見聞きするわけ ですね。こういうものを保護者としてだけ親を扱っていてはやはり介入しきれないと実 際に思うことがあるわけです。たくさんの難しい問題を含んでいることは承知していま すけれども、やはりもうちょっと積極的に出ていく必要があるのではないかというふう に考えます。 【部会長】 ありがとうございました。どうぞ、吉川委員お願いします。 【吉川委員】 全く小西先生がおっしゃるとおりだと思います。ただ、私が精神科医を3 0年も40年も長いことやってきて、従来からのさまざまな精神障害者に対する処遇の問 題を振り返ってみても考えるのですが、少なくとも精神保健福祉法という法律が持って きた役割の中で、従来から精神障害者に対するいわゆる治安的な役割を負わされてきた 精神科医のある一部あるいは精神病院が担ってきたある一部というものをできるだけ少 なくしながら、精神障害者の医療を中心にして考える。そしてリハビリテーションを中 心にして考えようとしてきたこの30年ぐらいの精神保健福祉の行政のあり方と精神科医 たちの努力、あるいは精神科医以外の精神保健福祉関係者の努力はやはり大きなものが あったと思うんですね。  その中で考えたときに、これを精神保健福祉の従来からの精神保健福祉法と言ってい るその法の体系の中でこの問題を解決しようとすることは、やはり私は無理があると思 っています。すなわちこれはあくまでも精神保健福祉法というのは狭い限定の中で使わ れるべきものだと私は考えているということです。  これは1999年の法改正に向けて、専門委員会の中で、私がたびたび主張しましたよう に、精神障害者の定義というものをこの精神保健福祉法の中でどういうふうにするのか ということが一番大きな問題だと主張してきたことと非常に深い関係がありまして、精 神保健福祉法がいう精神障害者というのは一体何かということを明確にしない限りはこ の問題は、今、小西先生が言われるような形で、これは精神保健福祉の問題じゃないか という、その論理の中にみんな包み込まれてしまって、再び精神障害者をこれまでのよ うに、病院の中に閉じ込めておくような機能と同じような機能をこの精神保健福祉法が 担わされてしまうという、私は危険を感ずるんです。  ですから私が考える、その考え方に従えば、やはり精神保健福祉法はもっとより狭い 意味で限定的に使われるべきものであって、新たに別の体系としても、こうした子ども たちの精神発達の悪い子どもたちがたくさん生まれてきているわけですから、そして、 その親たちがたくさん今いるわけですから、この中で私たちはどういうような新しい体 系を持ち、新しい意味での精神保健のあり方というものを考えなければいけないかとい うところに私は到達していると思っているわけです。  この精神保健福祉部会も、私は本来こうした従来の分け方で言えば、まさにメンタル ヘルスと言われてきたものですけれども、そのヘルスの部分に関しても十分に機能する ものでなければ、この部会も私は本物ではないような気がする。すなわち従来からの精 神保健福祉法だけにとどまるような、そうした精神障害者対策だけを行う、それにかか わる精神保健福祉部会であってはいけないと、私は思っていることは、これはこの部会 の中に参加してからたびたび申し上げてきていますし、そのことに関してもまだ申し上 げたいことはありますけれども、とりあえず現在の段階では、私はこれは精神保健福祉 法体系とは別な形でやはり考えていくという、そうした視点をしっかりと持って、なお かつ小西先生が言われるような意味で、これも精神保健の問題ではないかという、その 考え方を私はとりたいと思っています。 【部会長】 どうもありがとうございました。どうぞ、伊藤委員。 【伊藤委員】 今の吉川先生のお話、私もそのとおりだと思います。具体的にこういう 少年をどうやってサポートしていって、こういうことにならないような上手な支援対策 を組めるのかということですけれども、そこは今のところ空白になっている。今、吉川 先生がおっしゃったように、精神保健福祉法を限定的に使うということであれば、なお 、その空白はまた広がっていくわけですが、それはそれでよろしいと思いますが、それ ではその空白を埋めるためのどんな具体的な手だてがあるかということになるわけです が、私は具体的な例として、今、私のところに児童病棟がありまして、児童の精神科医 がいるんですが、もう医療だけではこういうケースは無理であると。実際にはこういう 相談が持ち込まれたときには、児童相談所の方、司法の方、三者が一緒に相談して、ど ういう手だてが一番いいのか。恐らく医療が必要になる時期もサポートの間には出てく る。そのときは精神科医療が乗り出す、やれることはやるという、幾つかの違う分野の 方が一緒にこういう少年たちをサポートしていくものをぜひつくらなければならないと 思います。  実際にこれに関連してちょっと調べたんですけれども、北海道警察の中には非行少年 サポートチームというのをつくって、これは法律も何もないわけで、独自な活動ですけ れども、そこには児童精神科医と児童福祉の関係者、それと司法の関係の方が集まって 、定期的に会合を開いて具体的な相談例について、どの部署が今の段階では責任を持っ て支援したらいいかと。そして、ある部署で、これはもう我々のところの手に、限界を 超えているということであれば、他の部署からまた乗り出していくというような弾力的 なサポートを行っているわけですね。  ぜひ、そういうような形、実践としてあるわけですから、それを政策に生かせるよう なものに持っていくようにしていただきたいと思っているわけですけれども、そういう 一例です。 【部会長】 どうもありがとうございました。どうぞ、西島委員。 【西島委員】 今回の事件はちょっと横に置いておきまして、まさしく前回の精神保健 福祉法の改正のとき、それから精神病床をどうするかというときに私申し上げたと思う んですが、精神保健という部分は、生まれてから患者さんが死ぬまでの間をずっと継続 的に続いていかなければいけない話だと思うんですね。それが今、例えば母子保健はほ かの課でやるし、それから学校保健は文部省でやるし、産業保健は労働省と、それから 今度は老人保健という形で継続性が全くないと。  こういう子どもたちがどうしてこういう問題が起きてくるのかとずっとたどっていき ますと、やはり3歳前後あたりの母親の対応はどうだったのか、父親の対応はどうだっ たのかという問題にやはりぶち当たっていくわけですね。ですから、そういうことをき ちんと継続的に学ぶ、教育をする、そういうシステムをつくっていかなければ、この問 題はいつまでたっても解決しないと私は思うんですよね。  ですから、先ほどの吉川委員の精神障害者の定義の部分も、ああいう形で限られてい る部分での定義しかないから、皆さん方、国民の関心がそこに結びついてこないという ふうなところで、例えば精神科医に対する偏見も当然そこからなかなかなくならないで しょうし、今回の一連の事件も、全く見てない医者が好き勝手にああいう形で言うこと によって、ますます混乱を来してきたという部分もあると思うんですね。あれははっき り申し上げて、刑法違反ですよね。医師の守秘義務違反でございますから、ですから、 そういう問題も含めて、これをきっかにしてきちん整理をしていかないといけないのか なと。  もう一つ、臨床心理士ですか、これはスクールアドバイザーという形で学校に置こう とされているわけでございますが、しかし、これもチームでやらないとどうしようもな いわけでして、スクールアドバイザーがひとりでやれる話ではないと思うんですね。そ ういう観点が、やはり一連の2〜3年の間の議論の中で私は欠けているのかなと。縄張 り争いをしている時代ではないというふうに私は思うんですけれども、そういうことも 含めて抜本的な検討をしていかなければいけないのではないかと思います。 【部会長】 どうもありがとうございました。  伊藤委員、西島委員のご意見では、医療だけの対応というのは非常に限界があると。 教育、心理、福祉、さらに司法、そういったものをすべて取り入れて包括的な対応をし ていかなければいけない。それを継続的にやるべきであろうということかと思いますけ れども、ほかにご意見ございますか。どうぞ、町野委員。 【町野委員】 医療がやらないとすると、どこがやるかという問題なんですけれども、 よく言われる、これは保安処分の対象では全然問題にならないということなんですね。 つまり、まだ犯罪を行う前に何かしなければいけないということですから、これはそち らの方の問題でないと。これは恐らくやるとしたら、医療しか私はあり得ないだろうと 思います。医療がもしやるべきでないということだとすると、あとは教育だとかそうい うことでやるしかなくて、強制的な措置はとれないということになります。そこまでや っぱり決断するかどうかというのは一つ私は問題だろうと思います。  もう一つは、これは気になっているんですけれども、医療保護入院の要件は、これは あったのでしょうか。ということは、任意入院にさせることができないときだけ医療保 護入院にさせることができるというような今度の改正法の趣旨だというぐあいに厚生省 のコメンタールでは書いてあるわけですけれども、もしそうだとすると、先ほどのいろ いろご意見ありましたとおり、むしろ、これは任意入院に切り替えて云々というような ことがもし可能であるということだとするならば、これは医療保護入院を最初からした のが誤りということになるのだろうかと。そうだとすると、今現在つくられましたいわ ば移送の制度、それは医療保護入院にドッキングする格好でありますから、それの発動 もむしろこれはできないということで、完全に八方ふさがりの状態だということになり ますけれども、そこは厚生省側としては法解釈の問題としてどのようなことを考えられ たか、ちょっとお聞きしたいと思います。 【部会長】 事務局の方、お願いいたします。 【西島委員】 ちょっとようございますか。 【部会長】 はい、どうぞ、西島委員。 【西島委員】 この問題はここで議論すべき問題じゃないと思うんですね。ですから今 回も法手続だけの問題でしたので、私、この問題をここで議論しますと、またおかしな 話になってしまうと思うんですが。 【部会長】 今の点に限って、簡単にコメントいただいて。 【重藤補佐】 医療保護入院でなくて任意入院相当であったかどうかという委員のご指 摘でございますけれども、これはご両親とも入院を勧めたけれども、なかなか入院に結 びつかなかったということで病院にいろいろ照会があったり、そういうことになったと いうことでございますので、これはなかなか境界事例であろうかと思いますけれども、 医療保護入院という、本人の意思で望んで入院に結びつかなかったということで医療保 護入院としたということについては必ずしも間違いではなかったというふうに考えてい ます。 【部会長】 どうぞ。 【町野委員】 しかし、任意入院するだけの意思能力があるときについては、本人が拒 絶したらだめだと、そういう人は。という場合に、厚生省のコメンタールでは書いてあ ったように思いますけど、いかがなんでしょうか。 【部会長】 お願いします。 【重藤補佐】 もちろんそのような解釈でございますけれども、ただ、入院を強く勧め たけれども、入院に結びつかないということをどのように評価するかというところです が、まさに限界事例だろうと思いますけれども、ここのところで、先ほど申し上げまし たように、なかなか同意をして入院に結びつかなかったということで医療保護入院とし たというところについては、法的に不適切であったとまでは言えない。医療保護入院と してとったということは、その範囲として認められるものというふうに考えています。 【部会長】 どうぞ、角南先生。 【角南参考人】 やはり医療保護入院にしろ任意入院にしろ、精神科の病院に入院する という前提はどこまでも精神保健福祉法の適用の範囲内でないといけない。すなわち精 神障害者でまずなければいけないわけですね。したがって、当該病院がそのことに最も 神経を費やしたというのはその点であります。したがって、この少年については、まず 精神障害者であるという点がきちんと押さえられているということです。そして、しか る後に本人の入院がいろいろ説得したけれども、できなかった。そして、なおかつ保護 者であるご両親が強く入院を望まれた、そういう二段構えになっておるわけで、単に本 人が同意をしない、するというレベルの前に大前提がきちんとあるということだと思い ます。 【部会長】 どうもありがとうございました。今後の対応ということについて、もう少 しご意見を伺いたいと思いますが、大熊委員どうぞ。 【大熊委員】 今、精神病院の方たちに聞きますと、警察が非常に評判が悪くて何もし ないのでこんなことになっちゃったということが言われるものですから、精神病院にど んどん病気ではない人たちを送り込もうとして来るという傾向があって困っているとい うふうに言われています。先ほど来、参考人の方たちが精神病ではなくて精神障害だと いうこと を繰り返しておられますけれども、これはすごくわかりにくい言い方で、ではその間に 何があるかということですけれども、伝えられている行為障害というようなものの定義 は、例えば次のうちの三つを満たしていたら行為障害ですと、けんか早いとか人間に対 して残酷であるとか学校をよく休む、そしたら三つ彼は当てはまるわけでしょうけれど も、それで行為障害だ、精神障害だ、この法律にのっとって入院というのは非常にずさ んなことであると思わざるを得ないと思うんです。  それに対して少年が憤慨して、憤懣やる方なく何かを起こしたとしたら、これは異常 心理じゃなくて、もしかしたら正常心理ではないかと思うくらいであって、素人がわか らないような精神病ではないけれども、精神障害であるというような前の法改正のとこ ろから問題になっていることをよくよく突き詰める必要があるのではないか。  それから、もう一つは、たまたま私はこの日曜から3日ほど北海道の伊藤先生とは別 な病院があるところで過ごしておりましたけれども、そこの方たちは、あの少年が自分 たちの町にいれば、チームを直ちに編成して、その子の家に行くというようなことを言 っていました。そのかかわる人たちはPSWであったりお医者さんであったり、場合に よっては警察であったりということで、病院が収容所的な役割をほいほいと担ってしま わないような態勢をつくる必要があって、多分伊藤先生ではない別な町でもそういう態 勢がとられているとすれば、北海道というのは大いに参考になるようなことをやってお られるのではないかというふうに思いました。 【部会長】 どうもありがとうございました。小西委員どうぞ。 【小西委員】 対応ということですけれども、精神病院と警察が主たる対応先であると いうのは非常にこういうケースについては不適だと私も思います。ただし、そうじゃな い形で危機管理をするとしても、医療と施設はやはり必要だと思うんですね。それを抜 きに話してしまいますと、実際には行き場がなくなってしまうということもあります。 病院を使わないんだとか、あるいは精神病院が主たる関与先じゃないんだということを 言うためにはかなりの覚悟を持って言う必要があるというふうに考えます。 【部会長】 どうもありがとうございました。  こういう新規の危機的な状況の対応というのは一様にはいかないというところが一番 の問題だと思いますけれども、委員の方々のご意見をお聞きしていますと、やはりそれ に対するチーム的なサポート、あるいは対応システムというのをこれから構築していか なければいけないと。それぞれの医療ないし教育、福祉、そういったそれぞれの役割が あるのだろう。対応するときどこが役割を果たすかということからまず検討する、そう いうプロセスも必要なのではないか、そんなふうなご意見かと伺いました。  新規の心の問題というのは非常に重要な問題でございまして、すぐに何らかの対策を 立てるというふうにいかないかもしれませんが、現実にこういう大きな問題が起こって いるわけでございますので、きょういろいろ出された意見を参考にして、厚生省として も前向きに取り組んでいただきたいとお願いしたいと思います。  それでは、時間になりましたので、本日の部会はこれで終わらせていただきます。次 回の開催は事務局から連絡が追ってございます。本日はどうもありがとうございました 。 −了− 照会先  大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課  森(内3056)