表1 ワクチン別副反応報告数
(平成10年4月〜平成11年3月)
ワクチン |
症 例 数 |
副反応件数 |
D P T |
167例 |
206件 |
D T |
16例 |
17件 |
麻 し ん |
34例 |
58件 |
風 し ん |
26例 |
26件 |
日本脳炎 |
84例 |
103件 |
ポ リ オ |
7例 |
7件 |
B C G |
57例 |
58件 |
計 |
391例 |
475件 |
※ 症例数は副反応が起こった人の報告人数であり、副反応件数はその人数に対する副反応の発生数(重複あり)である。
(参考)ワクチン別接種者数
(平成9年4月〜平成10年3月)
ワクチン |
接種者数 |
D P T |
4,800,894 |
D T |
1,025,621 |
麻 し ん |
1,116,218 |
風 し ん |
2,084,395 |
日本脳炎 |
4,204,981 |
ポ リ オ |
2,346,628 |
B C G |
2,567,675 |
計 |
18,146,412 |
II 各 論
1.DPT,DTワクチン(表2-1〜3参照)
報告されたDPT,DTワクチン接種後の副反応の症例数は183例(男98例、女85例)で、件数は223件であった。このうち基準外報告は64件(28.7%)であった。日数別に見ると223件中210件(94.2%)が接種後3日以内に副反応ありと報告された。年齢別にみると0歳児が36件、1歳代が55件、2歳代54件、3歳代30件が特に多くみられた。
報告された副反応でもっとも多かったのは接種局所の異常で81件(36.3%)であった。副反応の回復率は79.4%であるが、これは回復したという報告の単純計算で、報告時に追加報告のない例がみられた。報告時に未回復と回答されたのは局所反応の18件と全身じんましん4件、発熱4件、脳炎・脳症3件、けいれん3件その他の異常反応1件、基準外13件の46件であった。
アナフィラキシーは1件、けいれんは8件が報告された。
なおDPT接種後1例死亡例が報告された。この症例は1歳の男児でDPTワクチン初回1期1回接種後翌日に発熱、3日目にけいれんを認め入院、翌日死亡した。剖検により脂肪肝、脳浮腫、脳ヘルニアが確認された。臨床診断は急性脳症の疑いである。
2.麻しんワクチン(表3-1〜3参照)
報告された麻しんワクチン接種後の副反応の症例数は34例(男14例、女20例)で、件数は58件であった。23件(39.7%)が24時間以内の副反応であり、1〜3日2件(3.4%)、4〜7日12件(20.7%)、8〜14日19件(32.8%)15〜28日2件(3.4%)であった。
年齢別にみると、1歳代46件、2歳代7件、3歳代5件であった。
神経合併症では、熱性けいれんが6件いずれも6日目から10日目の間に発症している。
アナフィラキシーが4件、すべて24時間以内の発症であった。急性じんましんが7件で10日目に出現した1件を除いてすべて24時間以内の発症であった。
発疹は18件報告されているが、確実にアレルギー反応と思われる24時間以内の発症は6件であった。一方、麻しんワクチンウイルスの増殖に伴うと判断される4〜7日あるいは8〜14日の発症は合わせて10件であり、そのうち6件は発熱を伴っていた。
局所反応は4件のみであった。
その他の異常反応の1件は急性血小板減少性紫斑病で1歳10月の男児で、8日目に発症した。基準外報告の1件は7日目に転倒、左膝関節炎を起こしたものである。
3.風しんワクチン(表4-1〜3参照)
報告された風しんワクチン接種後の副反応症例数は26例(男8例、女18例)で、件数は同じく26件であった。日数別にみると26件中14件(53.8%)が24時間以内、1〜3日2件(7.7%)、8日以降10件(38.5%)であった。年齢別にみると1歳代7件、2歳代5件、3歳代3件、5歳以上11件であった。
副反応の内訳としては、即時型全身反応として全身じんましん2件(7.7%)、神経合併症では脳炎・脳症1件(3.8%)であった。その他の異常反応(発疹、発赤、腫脹等)14件(53.8%)、基準外報告は9件(34.6%)であった。
予後別にみると2件(7.6%)が治癒、入院10件(38.4%)内回復例6件、その他5件(19.2%)内回復例2件、無記入が9件(34.6%)内回復例5件であった。報告時点で回復していない症例が11件で入院中4件となっているが詳細は不明である。脳炎・脳症は回復していた。
4.日本脳炎ワクチン(表5-1〜3参照)
報告された日本脳炎ワクチン接種後の副反応の症例数は84例(男36例、女48例)で、件数は103件であった。
最も多い副反応は即時性全身反応で、40件あり、そのうち24件はアナフィラキシー、16件は全身じんましんで、アナフィラキシーの23件、全身じんましんの12例は24時間以内、アナフィラキシーの1件、全身じんましんの4件は1〜3日以内に発症した。次に多かったのは39℃以上の発熱12件で、多くは24時間以内、少なくとも3日以内に発症しそれ以後の発症は1件に過ぎなかった。
重篤な副反応である神経系副反応として、脳炎・脳症が5件あり、1〜3日に3件、4〜7日に2件報告された。今回はけいれんの報告はなく、運動障害が1件報告された。脳炎・脳症の5件をみると、何れもその詳細は不明であるため判定が難しいが、主治医の報告から抜粋、解説する。
1件は発熱を伴う喘息発作で入院、高熱持続とともにせん妄、意識混濁などの意識障害のためステロイド投与、一旦回復したが、再び発熱、炎症反応の悪化とともに歩行時のふらつきが出現、ステロイド再開で消失した症例で、髄液、MRI、脳波で異常がなかったがADEMの可能性が否定できないとしている。ADEMと診断された報告例は1件、ADEM様所見をMRIで認めた症例1件、髄膜炎で入院、MRI上異常所見はないが、髄液でミエリンベーシック蛋白が陽性であったためADEMが合併したと判断したADEM疑い例が1件あった。詳細不明であるが、急性脳炎を疑われて死亡した1件がある。ワクチン接種後3〜4日目盗汗、顔面湿疹、5〜6日嘔吐、7日目傾眠、8日目MRIで白質を中心とする異常、9日目呼吸停止、脳波上電気的活動なし。16日目に死亡、剖検なし。ウィルス感染も否定できないとのコメントがあった。
運動障害の1件は接種後18日に発熱、2日後歩行障害で、来院、右単純性股関節炎の診断で1カ月で治癒。化膿性、ウィルス性関節炎の可能性もありとのコメントがあった。
全身の発疹は5件であり、そのうち4件は3日以内に発症しているが、1件は29日以降に発症と報告されている。異常局所反応は2件、その他の異常反応は7件で、多くは3日以内、遅くとも7日以内に発症した。
31件は基準外報告で軽度の発赤、腫脹などの局所反応は16件、微熱などの全身反応、その他はそれぞれ10件、5件の報告があった。
年齢別にみると1歳代の接種が3件みられ、全身じんましん1件、運動障害1件、その他基準外報告が1件あったが、副反応の多くは3〜15歳の接種年齢層に多く、接種対象年代に対応しており、副反応の種類も年齢的特異性を示す所見も男女差もみられなかった。
予後別にみると、いずれの副反応もその詳細については記入がなく、その他の項目が多かった。今回は神経系副反応があり、重症例や入院例が多く、神経系後遺症のうち脳炎・脳症の2件、運動障害の1件は回復したが、脳症の1件は重篤な後遺症を残し、死亡例1件は上述したとおりである。報告時は回復しておらず後遺症を残したか否か不明な例が多かった。即時性全身反応、脳炎・脳症などの神経系副反応、高度の異常局所反応、高熱を来したものは入院加療を要した。
5.ポリオワクチン(表6-1〜3参照)
報告されたポリオワクチン接種後の副反応症例数は7例(男4例、女3例)で、件数は同じく7件であった。
日数別に見ると7件中4件(57.1%)が24時間以内、1〜3日1件(14.3%)、4〜7日2件(28.6%)であった。
年齢別にみると0歳代4件、1歳代2件、3歳代1件であった。
副反応の内訳としては麻痺例3件(42.9%)で、すべて男児であり0歳代、1歳代、3歳代各1件であった。これらの症例はすべて免疫不全のない者であった。基準外報告は4件(男1件、女3件)で0歳代3件、1歳代1件であった。
予後別にみると7件中治癒1件、その他(全身反応)1件、記入無し5件であった。記入のない症例のうち、報告時点で回復している症例は1件(麻痺例で免疫不全のない者)、回復していない症例は3件で、麻痺例2件(免疫不全のない者)であった。死亡例の報告はなかった。
6.BCGワクチン(表7-1〜3参照)
報告されたBCGワクチン接種後の症例数は57例(男38例、女19例)で、件数は58件(基準外報告4件を含む)であった。性別では男児が多かった。
年齢別には0歳27件(46.6%)、1〜4歳12件(20.7%)、5〜9歳11件(19.0%)、10〜15歳8件(13.8%)と乳幼児の被接種者が多かった。
副反応の種別では、腋窩リンパ節腫脹33件(56.9%)が最も多く、次いで接種局所の膿瘍が10件(17.2%)であり、その他の異常反応として急性の局所反応が4件(6.9%)あった。
腋窩リンパ節腫脹例33件の大半(32件)が乳幼児で、特に0歳児が21件(63.6%)を占めていた。他では1歳が10件(30.3%)であった。その発生時期は8日〜1カ月が5件(15.2%)、〜2カ月で累計22件(66.7%)と大半がこの時期までに発生していた。遅い者では3カ月を越えるものが4件あった。報告時点までに「回復している」と答えたものが16件、「回復していない」と答えたものが17件であった。経過中に入院したものが6件あった。
接種局所の膿瘍10件中3件は0歳児、5件が5歳〜9歳であり、発生時期は接種後1日〜1カ月(4件)から〜6カ月(1件)の間に分布している。回復状況については5件が「回復している」、同じく5件が「未回復」であった。急性の局所反応については、4人のうち2人が24時間以内に発生しているが、8日〜1カ月以内という者もいた。4名全員が回復していた。