00/04/28 第24回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 第24回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事次第 1.日 時:平成12年4月28日(金) 14:00 〜16:00 2.場 所:中央合同庁舎5号館(7階) 特別第1会議室 3.出席委員:高久史麿部会長        (委員:五十音順:敬称略)     軽部征夫 木村利人 柴田鐵治 竹田美文 寺田雅昭        (専門委員:五十音順:敬称略)         入村達郎 小澤えい二郎 加藤尚武 金城清子 廣井正彦 松田一郎 4.意見参考人:「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究における生命倫理 問題に関する調査研究検討委員会」 より     委員 東海大学法学部教授       宇都木   伸            委員 国立がんセンター研究所副所長  山 口   建 5.議 事 <審議事項> 1.「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針(案)」について 2.「組織バンク事業を通じたヒト組織の移植等への利用のあり方について(案)」 について 3.千葉大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(食道がん)について 6.配付資料 資料1 「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針についての報告  書(案)」(別添参考資料含む) 資料2 「組織バンク事業を通じたヒト組織の移植等への利用のあり方につい(案)」 資料3 千葉大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(食道がん)について 7.参考資料 参考資料1−1一般の方々の意見募集に対して寄せられた意見について(各意見の写)  (平成12年3月16日第4回ヒト組織専門委員会提出資料) −2一般の方々の意見募集に対して寄せられた意見に係る主な論点 (事務局メモ)(平成12年3月16日第4回ヒト組織専門委員会提出        資料) 参考資料2  「遺伝子治療用医薬品の品質及び安全性の確保に関する指針」に係る確        認について(平成12年4月25日中央薬事審議会バイオテクノロジー        特別部会) ○事務局  傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たりましては、既にお配りしております 注意事項をお守りくださいますようお願いいたします。  定刻になりましたので、ただいまから第24回厚生科学審議会先端医療技術評価部会 を始めます。 本日は雨宮委員、曽野委員から御欠席との御連絡をいただいております。また、柴田 委員からは若干遅れてお見えになるという御連絡をいただいております。 さらに、議題1につきまして、東海大学の法学部宇都木伸教授と国立がんセンター研 究所の山口建副所長、議題2につきまして、ヒト組織の移植等への利用のあり方に関す る専門委員会の野本亀久雄委員長(日本移植学会理事長)に御出席をいただいておりま す。 最初に、本日の会議資料につきまして配付の確認をいたします。 (資料の説明と確認) それでは、部会長よろしくお願いいたします。 ○高久部会長  本日は3件の審議事項が予定されています。最初に、「遺伝子解析研究に付随する倫 理問題等に対応するための指針の(案)」について審議いただきたいと思います。この 指針(案)に関しましては、先週の金曜日の21日に、この会でいろいろ御議論をいた だきました。その御議論を踏まえて、事務局の方で本日、資料1として報告書の(案) をつくっています。事務局の方から前回の御議論を踏まえて、どのようにこの報告書 (案)が訂正されたかを説明よろしくお願いします。 ○事務局  初めに、配付資料につきまして追加をさせていただきます。  先ほど「脳死状態の者等からの組織の摘出の取扱について(要望書)」というタイト ルで衆議院議員の金田誠一先生、北村哲男先生、海江田万里先生、枝野幸男先生、山本 孝司先生連名の要望書を本部会長あていただきました。資料番号はついておりませんが それを席上に配付させていただいております。国会議員の先生からのお話ですので、パ ブリックコメントと同列にはできませんが、そういうような御要望の意見があるという ことを御紹介させていただきます。  それでは、資料1につきまして御説明をさせていただきます。  ただいま部会長から御指摘いただきましたように、前回御議論いただきまして、そこ で先生方から指摘された論点、意見、それから原案を作成しました研究班の委員の若干 の方から追加的に何点か論点の指摘をいただいております。また、先週提出いたしまし た学術審議会からの御意見も再度見直しまして、先週お示ししました案を修正させてい ただいております。修正箇所につきましては、お手元の資料1の下線が引いてあるとこ ろが修正箇所に該当しております。  まず表紙ですが、厚生科学審議会先端医療技術評価部会の指針として、この冊子全体 が指針になるということ。しかも、それは先端医療技術評価部会の指針であるというこ とでタイトルを入れ、前回お示ししました案におきましては、「1.はじめに」となっ ておりました部分を「前文」の形に改めて、以降、2.以下を1つずつ繰り上げており ます。  それから本日お配りしました資料の中で「前文」に相当するところにつきましては、 第2段落と第3段落のところでございますが、2つの内容を以前は1つの段落にまとめ ておりましたが、内容的に若干異なっているという御指摘もありまして、2つに分けた 方がいいという御指摘でしたので、それを2つに分けさせていただいております。  それから若干日本語的な修正なのですが、「厚生省が取り組むべき」という文章が第 4段落のところで入っておりましたが、前はもう少し後ろについておりましたので、診 断または治療に行われる遺伝子診断のあり方や、その結果の取り扱い方針などにつきま して、医療を担当する厚生省が行うというような文章がかからないかのような誤解を生 じるような文章になってしまっておりましたので、語調を整えるように直しておりま す。  それから(1−3)でありますが、これまで基本方針のところでは「研究を行う者 は」という主語で始まっておりまして、「人権を尊重すべきである」という結びになっ ておりますが、これでいきますと、研究機関に対しましては、人権尊重につきましての 基本的な考え方が示されていないということになるのではないかという御指摘がありま したものですから、下線にございますような形で追加いたしまして、研究機関における 人権の尊重の対応の原則を追加しております。  それから(2−1)「試料等」の取り扱いでございます。前回きちんとした文章とす べきであり、しかも、脳死判定を受けた方からの試料等の提供につきまして、慎重な対 応が必要ではないかという御指摘があった部分でございます。この指針(案)がミレニ アムプロジェクトに適用されるものであること。そうしますと、ミレニアムプロジェク トとして行われる研究として、遺伝子解析研究として、臓器移植法に則った脳死判定を 受けた方から、試料等の提供を受けなければできないような、そういった研究が本当に あるのだろうかということを考えますと、そのような研究は想定できないということで すので、そのようにしまして文章を修正しております。  それから次に(2−9)「代諾者」の部分でございます。初めに、第1段落の一番最 後に、「試料等提供者本人が死者の場合には遺族をいう。」という文章をつけ加えてお りますが、遺族の方は当然代諾者に含まれるということでございますけれども、これは 必ずしも明確ではないというような御指摘もありましたので、そこで明記をすることに いたしております。  それから(注)でございますが、実は本年4月1日からそれまでの禁治産者、準禁治 産者等の民法の制度が改められておりまして、それに対応する形で文章を修正させてい ただいております。民法の世界におきましては、主として財産権に関しまして、自分の 意思を表明する際に、その意味を十分に理解できない方につきまして、その財産的な利 益を守るような制度として、これまで禁治産制度、準禁治産制度というものが用意され ていたわけでございますけれども、今般、さらにできる限り御本人自身の判断を尊重で きるように制度が改正されておりますので、その新制度のもとでの対応に合わせまして 文章等を直しております。  それから次に(2−11)「試料等の提供が行われる機関」、以前の指針(案)では 「試料等の提供を受ける機関」という言葉でありましたけれども、ここでの御議論によ りまして文章を直しております。ちょっと手違いによりましてアンダーラインが消えて しまいましたが、そこが直っております。なお、ほかの箇所につきまして、かなりの回 数で「試料等の提供が行われる機関」という言葉に置き換わった部分がございますが、 たくさん引いていると若干目ざわりですので、そこは省略をさせていただいておりま す。   それから次に(2−17−1)「第一群試料等提供者」でございますが、前回御説 明申しあげましたように、定義の冒頭にどういうことを書いてあるかがイメージできる ような文章を挿入いたしましたが、その際に括弧の中で「一つの遺伝子の変化による疾 患」という文章でしたが、それでは不正確ではないかという御指摘がありまして、「遺 伝素因の明らかな疾患」という形で正確な記述に心がけたつもりでございます。  それからその下の(2−17−2)「第二群試料等提供者」でございますが、ここで は点の位置という語法的な用語ではありますが、以前の文章でいきますと、「遺伝素因 の関与の程度が明らかでない薬剤反応性異常等を有する人、およびそれらの可能性のあ る人」ということになってしまいますが、関与の程度が明らかでない薬剤反応性異常な のか、そもそも薬剤反応性異常というのは、遺伝素因と関係するかどうかこれから研究 を考えておりますので、その研究内容を正確に踏まえた文章として、今の修正のような 形で修正しております。  それから、その次の(2−18)「既提供試料等」の「この指針の作成前に集めら れ」、ここのところは前回の資料では「既に」という文章を使っておりましたが、より 正確に書くべきではないかという御指摘がありましたので、そこを「この指針の作成前 に」という形に文章を改めております。   その次の修正箇所は(3−2−3−2)がございまして、ここで学術審議会からの 御指摘がありまして、その方法としてどういうことを想定するのか、あるいは望ましい 姿について例示をして明らかにした方がよいのではないかという御指摘がありましたの で、物理的な保存方法等につきまして(注)を追加いたしました。  その次の修正は、(3−2−3−5)と(3−2−3−6)でございますが、ここで 参考資料の取り扱いについて(注)をつけておりますが、この中でインフォームド・コ ンセントのための説明文書あるいは同意文書、さらには、その説明を担当する者に対し て研究責任者が作成する説明事項の文章でございます。これは別添参考資料という形で この指針に添付されるものでありますが、これは1つのモデルでございますので、その モデルをたまたま疾患の名前であるとか、研究者名等を埋め込んでそのまま使っていい というものではございませんので、個別にきちんとつくっていただきたいという旨で注 意書を少し厳重な書き方に改めております。  それから(3−2−3−7)、死者の取り扱いにつきまして全般に手続を明確にする 1つの修正として、痴呆等により有効なインフォームド・コンセントを与えることがで きない人、それから未成年だけではなく、死者から試料等の提供を受けることをあらか じめ予定している研究につきましても、倫理審査委員会に事前にその研究計画書にきち んと書いた審査を受けるような手続の修正をすべきということで直しております。   次が(3−3−2)でございます。(3−3−2)の第2段落「試料等の提供が行 われる機関の研究遂行者は」の以降の下線部分の文章は無かったのですが、下線部分が ないと、その職を退いた後に守秘義務がかからなくなってしまうというおそれが出てく るという御指摘がありましたので、全般にこの守秘義務関係につきましては、同趣旨の その職から移った、あるいは辞められた後も当然に職務上知り得た個人に関する秘密は 漏らしてはならないということで規定を改めております。  その次が(3−4−4)でございます。この点は学術審議会の御指摘にあったところ なのですが、個人識別情報管理者が、その管理する個人識別情報を開示する場合に、倫 理審査委員会に諮るという手続を入れまして、きちんとした方がいいのではないかとい う御意見がありましたので、その御意見を踏まえた修正を加えております。   それから(3−4−6)下線がついておりますが、先ほどのように現職ではなくて 元そうであった人も含めて守秘義務がかかるという修正を加えております。  その次の16ページにつきましても、(3−5−1−5)のところは同じような修正 を加えております。  それから(3−5−2−1−2)でございますけれども、ここのところで今までの読 み方でいきますと、研究機関の研究者も恐らく倫理審査委員会に入ってくるんだろうと いうことなのですが、その可能性が前回の文章では全く読み取れないという懸念があり ますので、そこのところの修正を加えております。   それから(3−5−2−2)でございますけれども、前回の審議会で御議論があり ましたが、A機関とB機関で相互に倫理審査委員会の委員を外部の委員として推薦し合 うというようなこともあるのではないかという御指摘がありましたが、そういった相互 に外部の委員を指名し合うといいますか、というものも恐らく一律に否定されるべきも のではないとは考えられますけれども、ただ、利害関係があった場合には、それは適切 なこととは考えられませんので、その場合には外部の方という中には、今申しましたよ うな相互に委員が推薦し合うというような場合について、外部の委員とは認めないとい う修正を加えております。  それから(3−5−2−2)の注書きにつきましては、GCPの運用方針につきまし て、この指針の適用をどうするのかという御指摘がありましたので、GCPの運用並び ということで注書きを追加しております。  それから(3−5−2−4)でございますけれども、前回の議論におきまして、倫理 面の有識者だけではなくて、法律面の有識者でもあるというべきとの御指摘がありまし たので、そこのところの修正を加えております。  それからその次の(4−1−3−3)「試料等提供者の代諾者に対する開示に関する 原則」でございます。ここのところの段落といいますか、この項につきましては、全体 に親権者として代諾をした方については、全体に代諾者から除いて考えており、親権者 に対する開示の問題は、その次の(4−1−3−4)で特別に1つの項を立てておりま すので、(4−1−3−3)に示しました「試料等提供者の代諾者に対する開示に関す る原則」の代諾者には、親権者は含まれないということを明確にすべきという御指摘が ありましたので、その修正を加えさせていただいております。  その次の修正が(4−1−3−4)でございますが、下線を引き忘れてしまって申し わけございません。段落の後ろの方でございますが、「必要に応じ、開示の前に、開示 についての倫理審査委員会の意見や未成年者と親権者の話し合いを求めるべきであ る。」という文章が入っておりますが、その場合の「必要に応じ」というのがどういう ことを想定しているのかがわかりづらいという御指摘がありましたので、その例示とし まして、(4−1−3−4)で「差別、養育拒否、治療への悪影響が心配される場合に は」という形で明確化を図っております。  それからその次(4−1−4−12−3)でございます。ここは先ほども申しました 開示に関しまして、親権者以外の代諾者と親権者に対する開示の原則2つに分けている ということで、代諾者の範囲に場合によりまして親権者は含まれないというケースがあ りますが、代諾者の範囲に親権者が含まれていないところですので、その旨を明記して おります。  それからその次の修正は、(4−1−6−1)でございます。死者からの提供を受け る場合につきまして、先ほどと同じように手続をきちんと書くということで明記をして おります。   (4−1−6−3−1)代諾者の選定等につきましての基本的な考え方でございま すけれども、先ほど定義の(2−9)のところで代諾者につきまして、新しい民法など の後見人制度の問題をきちんと整理するという意味で文章を整理しましたので、下線を 付しておりますが、このような形で言葉を整理しております。  それから、その次の(4−2−1)関係でございますが、先ほど別添参考資料の取り 扱いにつきまして、これはあくまでもモデル的なものであって、それをそのまま使って 単純に右から左に流すような形の使い方をするのではないということを、きちんと注意 書をする趣旨から、(4−2−1)(4−2−2)(4−2−3)あるいは(4−2− 4)のところで、研究責任者の説明事項の文章、それから提供をお願いする方に対する 説明のための文章、あるいは同意を明らかにしていただく文章の関係につきまして、あ くまでもモデルであるということを明記するための修正をしております。  本文の修正は以上でございまして、同じような対応から別添参考資料として添付する 予定の各第一群から四群の方用の説明資料のイメージでございますけれども、これにつ きましても、冒頭にそれぞれの群用の説明、資料として、ただいま申し上げましたよう な注意喚起のための修正を加えますとともに、前回御提出いたしましたときには、例え ば、第一群用をご覧いただきますと、代諾者の関係のところにつきましては、必ずしも きちんと整理されておりませんでしたので、本文同様に代諾者の範囲の問題、あるいは その次の開示関係につきまして本文と平仄を合わせる形で修正を加えております。  指針の案につきましての前回と今回の修正点につきましては以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。今の事務局からの説明に対して何か御意見おありで しょうか。 ○木村委員  御説明ありがとうございました。御苦労のあったことかと思います。私の発言、各委 員の先生方の発言も踏まえて、前文そしてまた基本原則ということで、全体的に大変整 合性を持ったきちんとした内容のものができたというふうに思います。ただ、今お読み いただいたというか、御説明いただいた中に、先回と違ったところがあるのをはしょっ たところがあるんですが、(4−1−4−13)のところは、先回も他の委員の先生方 からも御指摘がありました。これは念の為に読みますと、「将来、研究の成果が特許権 など知的財産権を生み出す可能性があること」。これを説明するわけです。それから 「特許権などの知的財産権を生み出した場合は、その権利は試料等提供者には帰属しな いこと、およびその権利の帰属先」ということで、これもきちんとここにはっきりと書 いて、そしてインフォームド・コンセントの文章の方との整合性を持たせたことと、そ れからまたヒトゲノム研究に関する科学技術会議の生命倫理委員会のヒトゲノム研究小 委員会の基本原則とも整合性を持たしたということは、それなりに法的に見ても、これ はいいことだと思うんです。ただ、権利というものの帰属先を明確にするわけですが、 前回も指摘させていただきましたが、諸外国では権利によって生ずる収益についての争 いが起きているという状況もあるわけで、先般の御説明の中には、研究者の方々でそれ について何か特定の配慮をするというようなこともあるやに説明があったわけですが、 その点、仮に権利から莫大な利益が生じたというようなことも、これは当然諸外国の例 であるわけですが、そこら辺のことは想定して何か決めているのでしょうか。ただ、権 利は試料等提供者に帰属しないというだけの規定の背景に、そういうことを踏まえて何 か厚生省の方ではお考えなのでしょうか。それとも、それは全然考慮していない。訴訟 その他は日本では起こらないというふうにお考えなのでしょうか。そこら辺の点だけち ょっとはっきりさせていただきたいと思うんですが。 ○事務局 説明を落としましたのは、事務作業の中で何回か修正するうちに一部下線が落ちてし まって、私の方で説明し忘れたということで申しわけございません。 ただいまの木村先生から御指摘の点につきましては、これがガイドラインであるとい うことを考えますと、法律的なある線を越えたような内容を書くことはできないと考え ておりますので、あくまでもインフォームド・コンセントをいただく際に、あなたには 権利はいきませんということを承諾していただいた方からのみ試料等の提供をいただく ということを前提にしております。その際には権利は御本人にはいかないということは すなわち、イコールそこから生まれた利益につきましても、御本人にはいかないという ことを踏まえて書いております。 ○高久部会長  ほかにどなたか御意見おありでしょうか。 ○金城委員  ちょっと2点ばかりなんですが、大変まとまったものになって感謝いたします。ただ 人権について、ずっと「人権保護」という言葉が使われているんです。例えば「前文」 を読んでいきますとたくさんあります。やはり人権は「保障」であって、研究者があえ て「保護」という非常にパターナリスティックな言葉を使う必要はないのではないかと 思いますので、これは「人権保護」ではなくて「人権保障」というふうに使う方がいい のではないかと思います。 それから次なんですけれども、ちょっとこれを読んで1つわからなかったのは、遺伝 カウンセリングをどうするかということです。どうも中を読んでおりますと、第一種の 提供者については、遺伝カウンセリングはその親族も含めて義務的なものとする。です から、遺伝カウンセリングをしなければいけないというようなこと。そして後の人につ いては、提供者の方が遺伝カウンセリングを受けたいと言ったときに受けられるように するというようなことなんでしょうか、それともすべてについて提供者の方から遺伝カ ウンセリングをしてほしいと言わない限りはやらないのでしょうか。その点、これを読 んでいると、中には第一種提供者については義務的なんだみたいに読めるところもある んですが、それについてのきちんとした説明がないものですから、その点ちょっとお伺 いしたいと思います。 ○高久部会長  「保護」か「保障」というは、私もよくわからないのですが、どちらがいいのか。法 律的な立場ですか。 ○金城委員  法律的によると人権は今「保護」なんて言わないですね。当然その人が持っているも のですから、それを「保障しましょう」ということであって、この研究をする人が、じ ゃ、あなたの人権を「保護しましょう」というのでは、非常にパターナリスティックだ と思います。 ○高久部会長 後の方はどうですか。 ○事務局 まず初めの方につきましては、宇都木先生、加藤先生、法律的な観点から、あるいは 木村先生、よろしければ、それで直させていただきますが、よろしいでしょうか。 ○高久部会長  どうぞ宇都木先生。 ○東海大学法学部 宇都木教授  「Protect」という意味で「保護」を使ったつもりでおります。「保障」の方がより良 いよいということであれば、そんなに強い異議はございません。 ○加藤委員  「Protect」という意味で使っているのだとすれば、「保護」の方が自然だと思いま す。 ○金城委員  ただ、「human rights Protect」とは言わないですよね。何と言うかなと私も考えた んですが、英語のときに「Protect human rights」という言い方ではないと思います。 ○木村委員  そういう言い方もないわけではないんです。ただ、「Secure」とか。 ○金城委員  「Secure」の方は使うと思うんです。 ○木村委員  「Guarantee」とか、「Secure」とかがあると思います。 ○加藤委員  「Guarantee」だとか、「Secure」というと輪郭がはっきりしないというか、「Protec t」の方が意味が明確で、「Protect」をする人にちゃんと責務が発生するという意味が あると思います。「Guarantee」の場合に、必ずしも「Guarantee」の責務が発生すると いう意味になるのかどうか疑問に思いますが。 ○木村委員  この場合、英語からきているんじゃなくて、やはり大事なのは日本語ですから、「Pro tect」とか、「Secure」とか、「Guarantee」とかというのはあくまでもレファレンスで あって、これは日本語の語感として、我々は権利を「保障する」というのは、これはバ イオエシックスの立場から見ても当然の表現ですので、「保護」というよりもはるかに 「保障」の方がいいんではないかというふうに私は考えます。金城委員の意見に賛成で す。 ○高久部会長  ほかにどなたか。 ○加藤委員  全般的なことなんですけれども、特に(2−4)「遺伝子解析研究」というのを3つ 挙げていますが、このガイドラインでやってはいけないことというのはどこかに書いて あるのかということなんです。例えば提供してもらった組織を生殖細胞に移植すること をやってはいけないとか、禁止条項がどこにあるのかというのが私にはよくわからなか った。そして2「用語の定義」に解析研究を3つ挙げてありますが、この解析研究以外 の研究をやってはいけないという趣旨で挙げられているのか、あるいは、これは代表的 な研究という意味で挙げられているのか、それをちょっと知りたいんですが。 ○事務局  初めに金城先生からの御指摘の点につきましては、「保障」という形で文章を直させ ていただいてよろしいですね。  それから、もう1点の遺伝カウンセリングにつきましては、(4−1)の部分は試料 の提供をお願いする方に対する説明事項を列記している部分でございます。ここの(4 −1−4−17)「遺伝カウンセリングの利用についての情報提供をすること。」。そ れで第一群につきましては、本人及び第一群試料等提供者を対象する遺伝子解析研究の 場合には、本人及び家族に対して遺伝カウンセリングが行われること。それから二群以 下につきましては、倫理審査委員会において、その必要性があると認められた場合には その情報を提供するということにしております。ただ、(4−1−5)にございますよ うに、遺伝カウンセリングというのは、必ずしも遺伝子解析研究があるから遺伝カウン セリングがあるのではないという御指摘もございまして、あくまでも遺伝カウンセリン グという行為は解析研究とは全く別ものという、別個独立のものということであって、 したがって、遺伝解析研究を行うときには遺伝カウンセリングが行われるのではなくて それは必要があれば遺伝カウンセリングは研究があってもなくても行われるものであり ますけれども、一群に関しましては、定義にございますように、遺伝素因が明らかな疾 患、専門家の方に申し上げますと怒られてしまいますが、平たく言うと遺伝する疾患と いうことですので、御本人だけではなくて、血縁関係のある方に影響するような疾患に ついて、実際に治療を受けている方から血液をいただいて、さらに難しい研究を進める という方を対象としている研究でございますのて、一群はそういう意味では、遺伝カウ ンセリングが恐らく行われているとは思いますが、さらに遺伝子解析研究に一群の方と して御参加いただく場合には、その方たちに対して遺伝カウンセリングの情報は提供す る。ただ、御本人たちが嫌だとおっしゃったときには、強制的に遺伝カウンセリングを するというものではございませんので、提供する情報としては、第一群の方に対しては 必ず遺伝カウンセリングの情報は提供するというような形で文章を構成しております。 ○高久部会長  あと加藤委員の御質問には。 ○事務局 加藤委員の御質問にお答え申し上げますと、遺伝子解析研究というのは、この指針が 対象とする範囲を定めたものでございます。また、先生御指摘の生殖細胞の遺伝子を一 部改変することを禁止するという条項等につきましては、平成6年でございますか、平 成10年でございますか、ちょっとそこまでは覚えておりませんけれども、この部会で 議論していただきました遺伝子治療に関する指針の中でうたわれております。 ○加藤委員  ここでは必要ないということですね。 ○事務局 と考えております。 ○高久部会長  ほかにどなたか。 ○金城委員  ちょっと確認なんですけれども、そうすると、こういう解析のために提供される場合 には、遺伝子カウンセリングは要件ではないということですね。遺伝カウンセリングは ありますよということをいって、御希望なら受けられますよというだけですね。 ○事務局 1つは遺伝カウンセリングという体制が遺伝カウンセリングそのものずばりできちん とある場合には、当然それは提供されるべきだと思いますし、それから御希望される場 合には、何らかの形で研究機関の長に対する責務のところで、遺伝カウンセリングの体 制を整えることにしておりますから、御本人から提供を受けたいと、何らかの形で情報 が提供される場合と、それから第二群のような方の場合、普通の病気のような方につき まして、疾患と遺伝子の関係を調べる場合というような遺伝的な要素がまだはっきりわ からない研究の場合、こういう場合では扱いが違うものとは考えておりますけれども、 倫理審査委員会で必要性があると判断された普通の疾患の場合、あるいは第一群の方の 場合につきましては必ず情報提供をいたしますけれども、情報提供をした結果、遺伝カ ウンセリングを受けたいとおっしゃる御希望があったときには、当然研究機関の長に対 する責務のところの遺伝カウンセリング体制に関する責務がありますので、それにより まして、何らかの形の遺伝カウンセリングが受けられることにはなるというふうに考え ております。 ○金城委員  わかりました。それで、私は思うのですが、第一群については、やはり遺伝カウンセ リングというのは、本人の希望ではなくて要件にした方がいいと思うのです。遺伝カウ ンセリングについては(7−1)というところにありまして、業務ということで書いて あるんですが、この書き方ですと、あくまでも遺伝子解析研究における遺伝カウンセリ ングは試料提供者またはその家族等の求めに応じて行わなければならないということな んです。ですから、求めがないとこれは要件にはならないので、ちょっとここら辺はき ちんと書いておいた方がいいんじゃないかと思いますが。 ○高久部会長  求めがないのに無理に行うことはできないと思います。そうじゃないでしょうか。そ れは受けない権利もあるわけですから、遺伝カウンセリングは家族や御本人が求めたと きにやるのであって、求めないのに無理にやるのは、むしろ強制にならないかと思いま す。松田先生いかがですか。 ○松田委員  遺伝子解析をする。特に遺伝子病について遺伝子解析をするという場合にはインフ ォームド・コンセントをもらわなきゃなりませんから、そうすると、そのやり取りがあ りますので、それを説明ととるか、カウンセリングととるか、その辺のところは非常に 微妙ですが、厚生省の先ほどの説明で私は十分に納得していたんです。つまり、ジェネ ラルな話ではできませんので、第一群、第二群、第三群でそれぞれに立場は違いますの で、一群の場合には当然しなければいけない。それはインフォームド・コンセントをと ると決まっていますから、当然その前に提供するわけですから、そのところをディスカ ッションするわけですから、これはこれで私はいいと思います。ただ、第二、三、四群 に関しましてはデータが出た上で、そこで初めて必要かどうかは決まってくるわけです から、これは求めに応じてするべきであって、これは情報提供を拒否することもできる わけですから、それは知られざる権利ということもありますので、このようになってい いと思います。 ○木村委員  この遺伝子解析研究における遺伝カウンセリングがあることについての情報を提供す るということです。 ○松田委員  それは大丈夫です。 ○高久部会長  それはインフォームド・コンセントのときに当然とるべきだと思います。 ○木村委員  その言葉は中に入っているんですか。どこかにございますか。遺伝カウンセルがあり ますよということをきちんと言っておかないと、その上でこれは受けたくないというな らいいんだけれども、遺伝カウンセルがあることを知らないまま、求めがないからとい うことになりますと非常に。 ○高久部会長  それはおかしいと思います。それは入っておりますか、どうですか。 ○事務局 (4−1−4)でございますけれども、真ん中ほどでございますが、遺伝カウンセリ ングの利用についての情報提供をすること。ただいま松田先生からも御指摘ありました が、一群の場合には必ず情報を提供するという形にしておりますので、「必要に応じ」 という言葉を入れておりません。それから第二、三、四群につきましては、必ず提供す ることが必要かどうかというのは、研究の内容に応じて多分異なってくるだろうという ことで、ここにつきましては、倫理審査委員会で研究計画を審査する際に、遺伝カウン セリングに関する提供の情報を必要だと判断されたときにはということで、倫理審査委 員会において遺伝カウンセリングの提供の必要性があるとされたときは、利用可能な遺 伝カウンセリングについての情報を提供するという形にしております。 ○松田委員  もう一言つけ加えさせていただきますと、我々の日本人類遺伝学会で決めたのも第一 群です。単一遺伝子病、この場合には遺伝子解析をする前に、必ず遺伝カウンセリング をすることというふうに言っています。第一群に関してはそうなっています。 ○金城委員  そういう書き方には、解釈はできるのかもしれないのですが、この条文を全部読みま しても、必ず遺伝カウンセリングをするんだ。それは要件なんだというふうにはどうし ても読めないですね。嫌な人にとおっしゃいますけれども、これはちゃんとわかりやす く説明をするわけですから、その本人の不利益になることではないので、第一群につい ては遺伝カウンセリングを受けることを遺伝子解析研究の要件にする必要があると思い ます。 ○松田委員  第一群のは書いてあったんじゃないかな。 ○事務局 もう一度御説明申し上げますと、松田先生が御指摘いただいたインフォームド・コン セントに当たって、やさしく十分に遺伝カウンセリングのことも考えながら説明をする というような条項というのは、実は(4−2−1−1)にまず規定がされているわけで ございます。ここでインフォームド・コンセントのための説明について、遺伝カウンセ リングを考慮した説明がなされなければならないということがまず規定をされている。 その後に、また説明を受けた、あるいは試料提供したんだけれども不安になったと。そ こで本格的な遺伝カウンセリングがあるんだろうと思いますけれども、これについて遺 伝カウンセリングは用意されていますという情報を第一群については提供する。その情 報をもらって遺伝カウンセリングを受けたいという方に対して遺伝カウンセリングを実 際に実施するという仕組みになっているわけでございます。 ○金城委員  そうすると今のお話ですと、研究者がやるインフォームド・コンセントのためのいろ んな説明が遺伝カウンセリングを考慮してということで、研究者と独立した人が遺伝カ ウンセリングをするわけではないわけですね。 ○高久部会長  研究者は遺伝カウンセリングはできないと思います。カウンセリングの専門の人です から、研究者は、インフォームド・コンセントをとるときに、遺伝カウンセリングを含 めた説明をしなければならないということだと思います。 ○金城委員  考慮した説明ですよね。ですから、これは遺伝カウンセリングにはならないと思うん です。 ○高久部会長  説明であって、カウンセリングを研究者がするのではないのです。研究者はカウンセ リングはできないと思います。 ○金城委員  そうですね。独立した人がやって初めて遺伝カウンセリングということの意味がある んじゃないかと思うんです。 ○高久部会長  だから、下の方に「遺伝カウンセリングの担当者等」と書いていますから、研究者が 自分でやるのではないのです。  ほかにどなたか御意見おありでしょうか。 ○加藤委員  (3−1−6)に試料等の営利を目的とする団体への提供ということが書いてあるん ですが、提供先でその試料の不正利用が行われた場合に、提供元に責任があるかないか ということについてはどういう判断を持って臨んでいるんでしょうか。 ○事務局 そのような場合につきましては、特に契約書をもって提供することについて、契約上 でお互いの権利義務関係につきまして書面による契約を研究機関の長に締結していただ くことになっております。したがいまして、そこの法律関係で定められたとおりに従っ て、万が一の不正な行為を行った場合についての責任関係は確定すると考えますが、そ の場合に、例えば個人情報は漏らしてはならないと。通常出ないとは思いますけれども 出すようなものをもともと提供することはないと思いますけれども、あるいは売買して しまって利益をもうけたというようなことがあったときに、その場合に何らかの形での 恐らく刑法上はなかなか難しいと思いますけれども、民法上の損害賠償責任等が生じる のは、契約の相手方、民間の契約機関であって、出した方の研究機関に対して、それが 有責性があるというのは難しいのではないかと思います。 ○加藤委員  確かに法律論から言えば、提供者が提供を受けた人に対して法律的な責任を追求する という形になるんですけれども、しかし提供者の側に、いわば道義的な責任がないかど うかとか、この点は一番トラブルが発生しやすい領域かと思うんです。例えば、そうい うことがあったときには、このもとの研究機関の活動を認可した倫理審査委員会に必ず 報告しなければならないとか、何らかの形で提供者の側にも注意を喚起するとか、ある いは法律的な意味ではないにせよ責任を要求するとか、そういう条項があった方がいい のではないかという気がするんです。 ○高久部会長  つけ加えると、具体的にどこにつけ加えれば良いのでいいんですか、。 ○加藤委員  「結ばなければならない」の後に、もし提供先で不正があった場合には報告しなけれ ばならないとか、そんなふうな条項を入れておいた方がいいんじゃないかと思うんです が。 ○高久部会長  では入れておきましょうか。わかりました。 ○事務局  では、そのような条項を追加させていただきます。 ○高久部会長  金城委員の御意見もわかるのですが、今まで何となく人権の保護という言葉がずっと 使われていて、保障という言葉は、厚生省の文書の中で余り使われてこなかったような 気がするので、ここで「保障」という言葉を使って、本当に皆さん方良いのですか、委 員の方全員が「保護」じゃなくて、「保障」でいいというなら私は良いのですが、そこ のところは、皆さんどちらがいいか言っていただかないと。 ○東海大学法学部 宇都木教授  これは語感の問題に近くなってくると思います。普通使われている保障というのは、 制度をもって、それこそギャランティーするという感じだと思います。ここの場合は研 究者と研究機関と資料提供者という個人的な関係の中で、研究者がどういう基本的な態 度をとるかという、そういう規定なので、どうも「保護」という感じで使われてきてし まっていたんだと思うんですが。 ○金城委員  「保障」というのは。 ○高久部会長  議論はもう皆さんわかっておられるので、個々の委員の方がどちらがいいか。今まで 余り「保障」という言葉を使われていなかったと思います。私が関係してきた会では、 今までは「保護」という言葉が使われてきた。ですから、皆さんがこの部会の報告で 「保障」で良いといわれるなら構わないし、やはり「保護」にしようとするのか。語感 が違うし、「保障」というのがいいのかどうかということについてちょっと御意見を言 っていただきませんと。今2対1だけで「保障」という言葉にかえていいのかどうかと いうことです。  どうぞどなたか御意見を言っていただければ。木村委員は「保障」とおっしゃったわ けですから。 ○寺田委員  私は「保護」でいいと思うんです。要するに人権保護とか、人権保護団体とか、普通 の常識的な考えからいくと、そこまで考えなかったですけれども、「保護」でいいよう な私は気がします。 ○廣井委員  私たちも「母性保護」という言葉をよく使いますので、漠然とした何かを言う場合の 人権保護の方が何となくよさそうな気がします。 ○高久部会長  意見のない方は、ニュートラルな方はニュートラルで結構ですから。 ○松田委員  私は非常に難しいと思います。ただ、今、廣井委員のおっしゃった「母性保護」とは 少し意味が違うと思います。それは例えばとして挙げられないと思いますが、「補償」 というとお金を払うとか、極めて具体的なことを僕たちは「補償」するということで、 理系の人間はそういうふうなものがイメージで浮かんできますし、「保護」というと漠 然とその人の立場を守ってあげるという意味で使えるので、僕たちがもし文を書くとす れば、「補償」という言葉は余り使わないのではないか。例えば「補償」という場合に は、薬を使って何かアクシデントが起きた場合に、その人に対して何らかの「補償」し なければいけないということはいうのだけれども、このような場合に、実際にそういう 経済行為も何もない場合に、「補償」という言葉は余り僕たちは使わないものですから 何とも言えないんですけれども、語感としては、「補償」というのは突っ込んだような 僕自身は極めて具体的なものが浮かんでくるんです。 ○金城委員  ちょっと今誤解があるようですので、字について御説明をいたします。「保障」とい うのは、「保つ」という字に、こざと偏に「章」という字を書くんですね。決して「債 権を保証」するとか、そういうことではないんですね。それから「損害を補償」すると いう補償でもない。「人権保障」ということで。 ○高久部会長  わかります。ほかの方の御意見をお伺いしたい。 ○金城委員  ちょっと一言だけなんですけれども、今までは患者さんとか、試料提供者とお医者さ ん、研究者ということになると、やはり順序があったと思うんです。ですから、弱い立 場にある患者さんの人権を保護しましょうというような感覚が非常に強かったのではな いかと思います。しかし、これからは対等な立場で考えていくということであれば、私 は「保障」がいいと思うんですけれども。 ○高久部会長  御意見のある方はどうぞ。 ○木村委員  今宇都木先生は、医師と患者との個人的な観点から「保護」という言葉がここに出て きたとおっしゃったんですが、僕らはこれは厚生省厚生科学審議会先端医療技術評価部 会がきちんとした形で制度としてつくったわけですので、そういう観点から、むしろ医 師、患者関係を超えた国全体が人権を「Secure」していこうということがはっきりと見 えてきているわけですので、その点からいうと、むしろ、その方が時代の流れに即した 表現。個人のレベルを超えたところが、政府が「Guarantee」しているというところが非 常に重要なポイントなんですね。ですから、先生のお考えとは私はちょっと違うので、 この場合ははっきりと「保障」というふうに言った方がいいのではないかと思います。 ○高久部会長  この先端医療技術評価部会で「保障」という言葉を使いますと、今度ずっと「人権の 保障」という言葉を使う事になるので、本当にそれで良いのですかということをお伺い しているんです。 ○金城委員  私はそういう方向にいくべきだと思っております。 ○高久部会長  ほかにどなたか御意見ありませんか。 ○事務局  そこの「保障」と「保護」につきまして、十分情報を手元に持っておりません。言葉 の遣い方の問題として文章の例を持っておりませんが、もう1つ、原則案を検討されて おりますヒトゲノム小委員会におきますヒトゲノム研究に関する基本原則案では、その 際、私がぱっと見て1か所だけ使われている言葉としまして見つけましたのが、「提供 者の人権保護の基本的な要素」という形になっておりますので、前回の説明の中では、 この原則案と今御審議いただいております指針の関係は、1つの原則を適用されるもの の1つということになっておりますので、原則の方が「保護」となっておりますので、 とりあえず、それに合わせるというのが役人的な整合性という点ではありがたいと考え ます。 ○金城委員  実はずっと前に「女性(ウィメン)」という言葉を巡って議論したことがあるんです ね。昔「婦人」と使っていた。法律用語にないからということで、「女子」とか、「婦 人」とか使っていたんですけれども、最近はついに「女性」になったんですね。ですか ら、時代の流れもございますので、その点は慎重に御討議いただきたいと思います。 ○高久部会長  この問題は議論がほかの方は出ませんので、少しこちらの方で検討させていただきた いと思います。もう時間も予定より大分過ぎましたので、先ほど加藤委員の方から具体 的に少し訂正する御意見がありましたので、その点はつけ加えさせていただきたいと思 っています。その他の点については、もしも特に具体的な訂正の御提案がなければ、こ の案を、加藤委員の意見を入れたものをこの部会の報告として厚生省に出したいと思い ますけれども、いかがなものでしょうか。 ○東海大学法学部  宇都木教授 研究班員がこんなところで言って大変申しわけないんですが、厚生省の 事務局で大至急「代諾者」のところをかえていただいたんですが、ぜひ御訂正いただき たいとところが2点と、あともう1点、金城先生等の御意見を伺いたいことがございま す。  1つは、(4−1−6−3−1)のところでございますが、「代諾者」を今度一定の グループの人たちに委ねて、その中から代諾者を互選していただくという非常に新しい ルールをとったんです。これは今までになかったルールだと思いますので、今後この種 の方式が利用されていく可能性が高いと思いますので、ちょっと厳密にしておく必要が あると思います。まず訂正いただきたいことは、(4−1−6−3−1)括弧の中の 「または配偶者」というのが2回出てきている。これは恐らく誤植かと思いますので、 「父母をいう」ということになろうかと思います。 その次に括弧の後に「または」となっておりますが、「または」となっていると、恐 らくそれに準ずる人というのは、前の人がいれば、準ずる人は入ってこないということ になろうかと思いますので、ここは「および」の方がいいのではないかと思います。  それから注の1行目の最後の方に、「民法の後見制度の」となっておりますが、任意 後見制度もここは「成年後見制度」といってくださると任意後見も法定後見も入ろうか と思いますので、そこを直していただきたい。  それと、あと御意見を伺いたいところは、(4−1−6−3−1)に戻りますが、任 意後見人、親権者、後見人、保佐人、そして試料等提供者本人に近しい人という新しい 概念を使って今後使われていくのかなという気もします。実態的には一親等の人がここ に入っているんですが、ただ、法律家としては、えらい座り心地の悪い言葉で、あるい は場合によっては、ここのところを、例えばですが、「任意後見人、親権者後見人、保 佐人が定まっている場合にはそれらの人と、試料等提供者本人の配偶者、成人の子父母 およびこれらに準ずる人」の中から選ばれると、グループの中を2つに分けて論ずると いう方が法律家としては安心すると思うんです。  以上でございます。 ○高久部会長  私にはよくわかりませんが、法律的にいって、その点、何か御意見ありますか。 ○金城委員  今、宇都木先生の御意見は賛成でございます。すっきりしたと思います。 ○高久部会長  では、そういうふうに直させていただきたいと思います。  どうぞ。 ○入村委員  先ほどの「保護」、「保障」の件で、私、何も言わなかったので、ひとつ意見を言わ せていただきます。  これは遺伝子情報の内容によって社会的な弱者になり得る可能性があるということな ので、「保護」というのが正しいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○高久部会長  柴田委員が来られましたので伺いたいと思います。金城委員から、2ページのところ に「人権を保護し」という言葉を「人権を保障し」に直したらどうかという御意見があ りまして、御賛成の意見と反対の意見、両方の意見があるんですけれども、柴田委員は メディアの世界に長くおられたので。 ○松田委員  先生、その前によろしゅうございますか。 ○高久部会長  どうぞ。 ○松田委員  宇都木先生にちょっとお伺いしたいのですが、先ほどのこれがほかのことにも適用さ れるのではないかというふうにおっしゃいましたが、遺伝を扱っている人間からすると 血縁者というのは同じ遺伝子を持っているという意味で非常に大事なんですね。ですか ら、そういうところの、ただグループがその中に遺伝情報をお互いに共有している者と 共有していない者と、そういう者の区別がしっかりしていないと非常に難しいことが起 きてくるんです。その辺についてのディスカッションをなさったのでしょうか。 ○東海大学法学部 宇都木教授  うまく答えられるかどうかわからないんですが、遺伝子的な関係を持った人が代諾者 にとってふさわしいか、あるいは、ふさわしくないかということについては、両方とも 論理が成り立つということで、結局のところ、こういうふうなことになりました。 ○松田委員  僕が伺いたかったのはそのディスカッションだと思うんですけれども、これがほかに もという話をなさいましたので、それはすんなりほかに使えるというような内容ではな くて、やはりもう一回議論しないと、内容は非常に複雑なものがあった上でこうなって いるというふうにお考えいただかないといけないんじゃないかということです。 ○東海大学法学部 宇都木教授  それはもっともだろうと思います。代諾者の選定の選定の仕方が新しいので、内容的 には個々の場合ごとに考え直すべきだと思います。ちょっとそのことに関して、もう1 つ発言させていただきます。実はこの代諾の問題を考えておりまして、このガイドライ ンにも入っているんですか、成年後見法がこの4月から動き出して、これが実態がわか るのは恐らく2年、3年後だろうと思うんです。そして、このガイドラインもまた使わ れるようになって、いろんなところでいろんな問題が実は生じてしまうと思いますので 代諾の問題に限りましても、これから2年、3年とこの動きを見て、ちゃんとデータを 集めて、それを解析する研究班というのをぜひつくっていただきたいと思っておりま す。そういう意味でこの問題を提起したい。  そしてあと、実はこれは恐らく次の野本先生のところでも問題になってくるかと思う んですが、承諾能力がない痴呆症の方というのは、だんだん承諾能力を失っていくとき に、どの段階でどのくらいの承諾能力があると考えるのかというのはこれから非常に問 題になってくることで、アメリカのNBACでも、たしか’98年の精神障害者のリサーチ についてリコンメンデーションを出している中でNIHは、こういう種類の研究に金を出せ というリコメンデーションをしているんですね。承諾能力の問題と代諾者のある意味で の範囲の問題というのを検討するための組織をぜひつくっていただきたいと思って、こ れはお願いをする次第です。 ○高久部会長  わかりました。  それでは、柴田委員来られたばかりのところにすぐにすみません。 ○柴田委員  基本方針の中の「資料等を提供する人の人権保護と」というところの文章に限って言 えば、この場合の「保護」は要らないんだと思います。むしろ「人権と適切な研究の実 施の両立を図る」と。文章としてはそれでいいんだというふうに思います。 ○高久部会長  2ページの方の問題なんですけれども、「この指針を契機として生命倫理問題の理解 が進み、人権を保護し、生命の尊厳を守るための意識の高まりを期待したい」、4段目 になるのでしょうか。 ○柴田委員  むしろ、それだったら、「保護」でも「保障」でもなくて、「確立」というような言 葉を使った方がいいような気もしますけれども。 ○高久部会長  もう少し「保護」にするか、「保障」にするかは、また、いろんな方面の意見を聞い て、最終的にはお任せしていただければと思います。両方の意見がございますので、よ ろしいですか。 ○木村委員  (4−1−6−3−2)、文章もこれは非常に問題がある文章があって、例えば(4 −1−6−3−2)のところの、「それらの担当者間で協議して選定してもらわなけれ ばならない」という表現が、してもらうというのはどういうのかというふうに私は思う んですけれども、選ばれねばならないとか、選定しなければならないとかというので、 「もらわなければならない」という表現はどうかなという、ガイドラインの中の言葉の 表現として、してもらうというような表現は余りなじまないのではないかというふうに 思いました。  それから注がきちんとここに入っているわけですが、先ほどの松田委員からの御心配 にもあるように、これがある意味でほかに使われるとしたら、宇都木先生はどういうと ころで使われることを想定して言われたのか、そこら辺、我々、委員にとっては、審議 の内容で、例えば、これが新しいモデルとして出てきたということになりますと、今後 成年後見法その他があって、当面こういう考え方で「適宜見直す」という非常に曖昧な 文章が注の中に入っているわけですが、先生のお考えでは、これがモデルになって、ほ かに使われるというのはどういうことを想定して言われたか、委員会の中でどういうこ とをお考えになったのかということについて一言お伺いしておきたいんですが。 ○東海大学法学部 宇都木教授  委員会の中でモデルに使われるというようなことを論じたことはないのでございます が、要するに今まで「代諾者」という言葉が使われた出したのが今度の新しいGCPのとき に初めて正式に出てきた言葉で、きちんとした定義はなくて、代諾というのがそもそも 本人の意思の推定なのか、代諾者本人の決定なのかということもまだ不明確のまま使わ れ出している言葉なんです。恐らく野本先生の委員会でも、この「代諾」という言葉を 使わざるを得なくなってくると思うんです。先ほど松田先生もおっしゃいましたように これは遺伝子の問題なんだから、これをそのままダイレクトに使ってはいけないという ことは十分私も承知しているつもりなんですが、ただ、代諾者の範囲の指定の仕方につ いて、かなり上手なものを厚生省がこしらえてくれたものですから、ほかの人たちは定 義が今ない状態なままで動いていますから、かなり参考にされるだろう。その程度のも のでございます。 ○高久部会長  この「もらわなければならない」という表現が不適切だとすれば、どういう表現がよ ろしいのでしょうか。 ○東海大学法学部 宇都木教授  そのことについてもなんですが、今までは代諾者というのはどうも文言から言うとGCP もはっきりしないんですが、最終的には、研究者の側がむしろ選び出すということもで きるようなスタイルになっていたんですね。これは研究したい人がその承諾をする人を 自分で選ぶというのは、これは制度としては随分おかしいので、この「もらう」という 言葉が入ったんだろうと思うんです。 ○木村委員  これは「選定する」でいいんじゃないですか。「関係者間で議論して選定する」。 「してもらう」というのは、表現として日本人は好きなんですね。何かしてもらうとか 何かしてあげるとか、そういう表現はなるだけ避けたいというのが私の考えです。 ○高久部会長  「選定する」で、それではそういうふうにいたしましょう。 ○金城委員  もし選定できなかったときにはあきらめるということですね。 ○高久部会長  それは当たり前のことだと思います。  次にまた重要な議題がありますので、倫理問題に対応するための指針について。  どうぞ。 ○柴田委員  すみません。2ページの方も「確立」はちょっとおかしいかもしれませんので、やは り何もない方がいいという気もします。「人権と生命の尊厳を守る」という「守る」に 両方かけた方が文章としては素直だと思います。 ○高久部会長  それでは、ここでは「保護」という言葉を入れないで、「人権と生命を尊厳を守 る」。それで結構だと思います。どうもありがとうございました。  それでは、本日もいろいろ御議論いただきましてありがとうございました。今日の御 議論を踏まえて、修正をして報告書として厚生省に出したいと思います。文言について はお任せ願えればと思います。よろしくお願いします。特に柴田委員には、最後に御提 案をしていただきまして、15分ぐらいかかった議論ですけれども、柴田委員の一言で 決まりましてどうもありがとうございました。  それでは次に、2番目の議題の「組織バンク事業を通じたヒト組織の移植等への利用 のあり方について(案)」です。これについて事務局の方からまず説明をしていただき ます。どうぞ。 ○保健医療局臓器移植対策室 朝浦室長  臓器移植対策室でございます。まず私の方から、前回のこの部会においても御説明い たしましたけれども、専門委員会開催の趣旨とその経緯について簡単に御説明をさせて いただいて、その後、内容につきましては、座長の方から御説明いただきたいというふ うに思っております。  まず、皮膚や骨などの組織の移植につきましては、現在、組織バンク事業を通じまし て、医療の現場で行われております。ヒト組織の移植への利用を目的とする組織バンク 事業に関しては、その倫理的な妥当性ですとか、あるいは具体的な安全性の確保を図る ということが極めて重要であるというふうに考えておりまして、この点について専門家 の先生方にお集まりいただいて幅広い観点からの御議論をいただきたいということで、 開催につきまして、部会長の御了承をいただきまして設置したものでございます。現在 は組織バンク事業につきましての倫理的妥当性、具体的な安全性につきましては、個々 の組織バンクに委ねられてきた、あるいは委ねられているというのが実情でございま す。今後このような移植の事業が拡大するということが予想されますので、現在、個々 のバンクにその問題を任せるということはできないのではないかということで、最低限 求められる事項というものを早急に検討し、示していただきたいということで、そうい った認識に立って先生方に御議論いただいてきております。  この組織バンクと申しますのは、研究のための組織バンクです。あるいは産業開発の ための組織バンク等ございますけれども、本専門委員会でもっぱら議論になっておりま すのは、移植のための利用にかかわる組織バンク事業でございまして、それを念頭に議 論をしております。  以上でございます。 ○高久部会長  それでは、「ヒト組織の移植等への利用の在り方に関する専門委員会」の座長の野本 亀久雄委員長に御説明をお願いいたします。 ○野本委員長  現場のリーダーとしては現にいろいろ努力しているわけですが、お医者さんたちに暴 走はするな、一方では患者さんを助けよと、2つのことを要望するような気持ちでまと めていったというのがこの内容でございます。十七、八分時間をくださるそうですが、 全部読みますと1時間ぐらいかかってしまいます。私が勝手にまとめますと私流にまと めてしまう。これもよくないと思いますので、逐条的に各場所でのポイントを読み上げ て、まず全体を御理解いただくというやり方にさせていただきます。  「組織バンク事業を通じたヒト組織の移植等への利用のあり方について(案)」でご ざいます。  「1 はじめに」(1) 現状でございます。現状の認識にまず努力をいたしました。パ ラグラフ1の後半ですが、皮膚、骨、靱帯、心臓弁、血管、鼓膜、耳小骨等のヒト組織 は、単独の医療機関又は複数の医療期間の連携によって行われている組織バンク事業を 通じて、患者の救命治療等の実際上の必要性から事実上の行為として移植のために利用 されている。これが現状の1でございます。 パラグラフの次へいきますが、真ん中あたりから、ヒト組織の移植への利用を目的と した組織バンク事業における倫理的妥当性及び具体的な安全性の確保については、個々 の組織バンクを中心とした取組に任されているのが現状である。また、現在の組織バン ク事業は、その対象となるヒト組織が広範囲での流通性を有さない形で行われ、医薬 品・医療用具の製造等には当たらないため、薬事法に基づく規制の対象にはならない。 これが2番目の現状把握でございます。  3番目のパラグラフの後半でございますが、最近の臓器提供意思表示カードの普及等 に伴い臓器提供についての社会的理解が進みつつあることを背景に、死体からのヒト組 織の提供は増加傾向にあり、それに伴い、各医療機関によるヒト組織の採取・保存に係 る連携の強化や採取されたヒト組織の共同利用の促進を図る動きも見られる。  4番目の現状把握は、ヒト組織の移植への利用が一層拡大すると考えられる点です。 今後の事業の規模の拡大によって移植への利用に係る安全性の確保の問題も顕在化する 可能性がある。ここらあたりをまず現状として把握をいたしました。  次のページをお願いします。2ページの上の方ですが、(2) 本報告書の位置づけでご ざいます。すべてが流動的な状況で依頼されましたので、本報告書の位置づけに関して 委員で十二分に議論をいたしました。  第1番目のパラグラフの真ん中あたりですが、本報告書は、組織バンク事業を通じた ヒト組織の移植への利用の適正な発展を目指し、当該利用に係る倫理的妥当性及び安全 性に係る事項等について一定の指針を定めるとともに、採取されたヒト組織が移植等に 係る研究及び研修に利用されるための条件を定めている。今後、それらの指針及び条件 に沿って組織バンク事業が適正に行われ、この事業を通じたヒト組織の利用に対する社 会全体の理解と信頼が深められることを期待する。こういうような位置づけをいたしま した。  次の2ページの下の方の大きな2でございますが、「基本原則」ということでござい ます。何をやるときでも当たり前のことですけれども、やはり基本原則はきちんと見据 えるということで議論を続けてまいりました。  「2 基本原則」、ヒト組織を移植等に利用する当たっては、その倫理的妥当性及び 安全性を確保するために次の7つの原則を遵守しなければならない。  (1) ヒト組織の提供に係る任意性の確保。ここでは、ドナー本人、または死後の提供 である場合には、遺族の自由意思に基づく、このように考えております。  次のページをお願いします。(2)ヒト組織の採取及び移植の際の十分な説明と同意。こ れは当然のことでございます。組織に関しても当然のことで、レシピエント側が受ける 場合、当該移植の有効性だけではなくて、潜在的な危険性についても十分な説明を行わ なければならない。  (3) 無償の提供。これは無償で行われるべきものであり、対価として財産上の利益を ドナー側に供与してはならない。このように決めております。 (4)ヒト組織の提供の社会性・公共性及びドナーの尊厳の確保。そこをちょっと読ませ てください。「ヒト組織の提供は、ドナー側の善意に基づきいわば社会全体に対して行 われる公共性を持った行為であり、ドナー側は提供したヒト組織について個人的な財産 上の権利・利益を主張することはできない」。こういうことでございます。しかし、ド ナーの尊厳性は確保するということも当然のこととして列記しております。 (5)提供されるヒト組織に係る安全性及び移植の有用性の確保。これは当然のことを書 いているわけでございます。 (6)個人情報の保護。これは当然この委員会で何度も議論されたことなどを参考にさせ ていただいております。 (7)情報公開。ここは組織バンクは、社会的・公共的な活動主体として、個人情報の保 護に留意しつつ、その活動全般について広く社会一般に情報を公開する体制を整備しな ければならない。このように要求をしております。  次の4枚目で、大きな3で「ヒト組織の採取」ということです。  (1) ヒト組織の採取に係る説明と同意で、1)ですが、初めから読ませていただきま す。「移植等を目的としたヒト組織の採取に当たっては、説明を受ける側の立場に配慮 した十分な説明を行った上で、あらかじめ、当該ヒト組織の提供について本人又は遺族 が自由意思に基づいて書面により同意すること」というのが基本的な条件であります。  あと幾つか書いておりますが、そのな中でマルに関しては4だけ読み上げさせていた だきます。1)(4)ヒト組織の採取が行われた後、7−(8) というのはバンクということ でございますが、7−(8) に定める倫理委員会等において正当と認められた場合を除き 採取された組織は返還されないということであります。もちろん、これは当然クレーム がついて、倫理委員会で返還するのが正当であるときには、返還しなさいというルール になるわけです。  2)ヒト組織の提供に係る説明に当たっては、ドナー側の任意性の確保に配慮し、説 明の途中であってもドナー側が説明の継続を拒んだ場合には、その意思を尊重すると、 こういうことになります。 それから3)ですが、ドナー側に対する説明は、可能な限り組織移植コーディネー ター等の組織バンクに所属する者が行う。こういうことを要求しております。 次の(2) ヒト組織の採取手続でございますが、ここの1)は当然のことですが、その 中で続いて(1)、ドナー本人(生体からの提供の場合)又はドナーの遺族(死後の提供の 場合)がヒト組織の採取及び採取されたヒト組織の取扱いに同意していること。あくま でこれはくどいようですが、任意の同意を繰り返し重要なポイントに入れさせていただ いております。  次のページでございますが、(3)は、当たり前のことですけれども、書かせていただき ました。死者に対する礼意が保持されていること。これは当然のことだと思います。  次の2)でございますが、ここが大問題なところと思います。同意能力のあるドナー 本人に対して説明が行われて、説明を受けたドナー本人が積極的に同意していることが 原則である。ポイントは次の文章です。ドナーが未成年の場合又は意思の医学的判断に 基づき、ドナー本人が同意能力を欠いていると判断される場合にはヒト組織の提供は困 難である。代替困難でできないということですが、もし利用するとしたら、次の(1)、 (2)、(3)とマルをつけたようなことになります。ドナーの意思及び利益を最もよく代弁 できる者が代諾を行うこと。ここで「代諾」という言葉を使わせていただいておりま す。  (2)可能な限りドナー本人に対しても説明が行われ、ヒト組織の提供についてドナーが 明示的な拒否の意思を表明していないこと。やはり拒否をしておれば、どういうことが あってもいただいてはいけないということになります。これは3)のにも繰り返してお ります。  3)ですが、ドナー本人が生前にヒト組織の提供に対して拒否の意見を表示していた ときには、遺族の同意があっても、当該ヒト組織を採取してはならない。こういうよう な項目でまとめておきました。  (3)ドナー適応基準等は非常に医学的な問題で、御質問があったときにお答えすること にさせていただきます。 次のページにいかせていただきます。「4 ヒト組織の処理・保存」、ここでは大半 は医学的な技術論のことになりますけれども、一番最後のところ、(5)でございますが、 いろんなことについて常に記録を作成・保存することということを強く要求しておりま す。具体的なことで御指摘がありましたらお答えいたします。  次の7ページをお願いします。大きな5ですが、「ヒト組織の移植施設への提供及び 移植への利用」ということですが、これも常識的なことですけれども、ポイントだけ幾 つか読ませていただきます。  1)組織バンクがヒト組織を移植施設に提供する際には、明文化された基準に基づき 公正に提供を行うこと。したがいまして、各組織バンクはきちんとした基準を明文化し た形でつくっておくことということになります。  3)組織バンクにおいては、ヒト組織の移植施設への提供に係る記録を保存・管理し プライバシーの保護に留意しつつ、当該ヒト組織のドナー、処理・保存過程及びレシピ エントの記録について必要に応じて確認できる体制を整備すること。記録を保存する期 間は最低5年とするが、当該期間の経過後も可能な限り保存すること。  次の(5) を読ませていただきます。移植施設においてヒト組織を移植に用いた場合に は、診療録等に提供を受けた組織バンク名、当該バンクにより設定されている提供され たヒト組織の識別番号等を記録し、必要に応じて追跡調査が行えるようにしておくこと ということであります。  (6) ですが、望まない情報が外に出ないように厳格に管理すること。こういうような ことを要求しおります。 次のところで8ページの上の方、お金をとってはいけないということなんですが、組 織バンクとして活動を行うことに通常必要とする範囲の交通費とか、通信費、ヒト組織 の採取・保存、移送等に係る費用については「対価」とみなさないと。こういうことで それはいただいてもよろしかろうということにしております。  次に大きな6ですが、「研究及び研修への利用」。議論が、いろいろもめたところで ございます。移植という医療だけに限定して線を引きますと、ガイドライン、方針は楽 なんですが、こういうことへも将来の道を開いておいた方がいいのではないかという意 見もありまして、6を設定させていただきました。  (1) 組織バンクは移植への利用を主たる目的としてヒト組織の提供を受けるものであ ること。しかしながら、ヒト組織を移植に用いることができない事例において、移植に 用いることができなかったヒト組織を、提供時にドナー側に対して十分な説明がなされ かつドナー側の文書による明示的同意がある場合に限り、当該同意の範囲内で研究及び 研修に用いることができる。いただくときに、使えなかったら、こういう研究、こうい う研修に使わせていただきますが、よろしゅうございますかというオーケーをとってお る場合のみ移植以外の目的に使えるということになります。  (2) ですが、研究・研修というのは、大学等の非営利の機関ということになっており ます。研修は主に組織バンクの技術者の技術習得・向上を目的とした研修でございま す。 (3) でございますが、真ん中あたり、いただいた組織を研究者に提供する際には、7 −(8) 、これはバンクということですが、7−(8) に定める倫理委員会等において当該 研究の内容の妥当性について確認し、提供の可否を判断する。こういうことを要求して おります。  それから(4) の一部を読ませていただきます。組織バンクが採取したヒト組織を移植 医療に関する研究又はその他の医学研究に使うときにも、これはやがてつくられると予 想されております「ヒューマンサイエンス研究資源バンク」等の非営利の機関を介して 提供することが望ましいと。こういうように決めております。これは望ましいでござい まして、別にそういうルールをつくっていただかないと身動きがとれないだろうと考え ております。 次の9ページへお移りください。8ページの下の方の7の「組織バンクの運営等」と いうことでございますが、9ページの(1) 組織バンクのシステムの要求性ですが、組織 バンクの代表者が明確であり、事業運営に責任を持てる体制であることというのがまず 第一の要求度になっております。  (3) ヒト組織の採取を行う際の適切性を担保するための体制を整備しておくこと。し たがいまして、倫理委員会をチェックするとか、特に(3) の(2)でございますが、ヒト組 織の採取に係る手続等に関する記録が作成・保存され、倫理委員会において定期的に内 容の確認が行われる。こういうことが自己システムのチェックということに要求してお きました。 ずっと下がりまして(7) です。組織バンク事業の運営に当たっては、その透明性を確 保すること。特に組織バンク事業の実施状況、実績(採取組織の種類、量、保存実態、 利用の実態等)について書面で常備し、求めに応じて開示すること。  (8) でございますが、組織バンクの運営に当たっては、当該組織バンクが自ら倫理委 員会等の団体としての意思決定を行う機関を設置し、又は従来からある病院が組織バン クを置く場合には、医療機関の既存の倫理委員会を活用して、ヒト組織の採取に係る手 続の事後的評価、採取されたヒト組織が移植に用いられなかった場合の研究への利用に 係る承認などを行う。このバンク自身にきちんとした倫理委員会をつくっていただいて そこでチェックをしてくれということでございます。  次の最後の項目になります。「終わりに」はほとんど読ませていただいた方がよろし いと思いますので、読ませてください。 8 終わりに  組織バンク事業を通じたヒト組織の利用には一般市民が関与することから、そのシス テムの定着には社会全体の理解が欠かせない。そのためにも、組織バンクを始めとする 関係者は、本報告書に定められた指針を遵守し、ヒト組織の利用について倫理的妥当性 及び安全性が確保されることが重要である。さらに、今後、各関係学会において国際的 に通用するヒト組織の採取・処理・保存技術の標準化等を推進することによって組織バ ンク事業を技術的側面から活性化することも考えられる。また、組織バンクの経済基盤 の安定化も重要であり、ヒト組織の採取・処理・保存等に係る費用負担の仕組みの確立 や組織バンク事業に対する民間団体等からの寄附の受け入れ等についても検討する必要 がある。今後は、これらの取組によって組織バンク事業が適正に発展し、ヒト組織の移 植等への利用が適切に進められることを望むものである。  なお、本報告書は、臨床上の必要に基づき既に行われているヒト組織の移植目的での 利用を中心として、医療機関による自主的な取組として行われている組織バンク事業の 発展の初期的段階における指針として定めたものであるが、今後、ヒト組織の利用は、 移植のみならず、研究・開発を通して大きな発展が予想される。具体的には、国内にお けるヒト組織の利用に係る体制の拡大、さらにヒト組織の採取・処理・保存技術の高度 化等に伴う民間企業の参入の可能性等が考えられる。また、組織の利用が産業応用につ ながる場合、生じる利益の適正な社会還元のあり方を検討すること、また、提供を受け たヒト組織を用いた研究成果を一般に公開するルールづくりをすることも併せて必要と なってくるであろう。  こうした状況の進展に伴い、組織バンクの活動も医療機関から独立し発展していくこ とが考えられ、そのような発展した段階においては、本報告書に示したものの他に新た に枠組みが必要となってくるであろう。本委員会としては、ヒト組織に関する諸活動を 通じた理念、活動の推進方法、規制のあり方等について、法的枠組みの構築の可能性も 視野に入れた検討が早急に行われることを望むものである。  今言いましたように、現状を何とか国民の安心できるようなものにというのが今回、 委員会での限界でございます。以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。長い間いろいろ御議論いただきまして、この案を出 していただいたわけですが、今、野本委員長から説明がありました案について御意見ご ざいますでしょうか。 ○木村委員  朝浦室長、それから野本委員長には大変重要な内容の事柄につきまして熱心な御討議 をいただき、また、このようにたたき台を出していただいことを心から厚く御礼申し上 げます。どうもありがとうございました。  ただ、確認しておきたいことが二、三ございます。1つは、朝浦室長にお伺いしたい んですが、今日もただいま現場でここに参りましてから配付されました5人の衆議院議 員のペーパーがございまして、そのパーペーの3番のところでございますけれども、ヒ ト組織の移植等へのあり方に関する専門委員会は限定的な公開しかされておらず、一般 国民に広く開かれていたとは到底言えない状況で指針案が示されました。また、イン ターネットなどパブリックコメント募集も、通常4週間が平均とされているところ、た った2週間程度しか行われておらず、手続的にも国民のコンセンサスを得ているとはと ても言うことはできませんという衆議院議員のコメントなんですが、先回、朝浦室長は この委員会の状況を私たちに御報告いただいときには、公開で行われていた。4回やっ たというお話だったわけですが、どの程度の人数が何月何日にお出でになられたという 資料がもしございましたら、ここには限定的な公開としか書いていないわけで、厚生省 側では先回公開というふうに言われたわけですので、どういう形で公開されて、どのぐ らいの人数がおられたかということを御参考までにぜひ委員としてはお伺いしたいとい うこと。  それから野本委員長には、細かいいろんな具体的な点について、大変目配りのきいた いいお話をお伺いできたわけでございますが、今の時点で、先ほど御指摘のあったよう に、いろんな形で統一されていないことへの不安があって、きちんとしたものをつくり たいというお話のようですけれども、特にこれを研究に急いでやらなければいけない最 大の理由と、それから委員長が現在の時点でどこら辺を目標に、例えばこれは今回今日 で確としたものに出したいのか、どこら辺のパースペクティブでこのガイドラインがき ちんとまとまった形であることがふさわしいというふうに専門家、特に委員長としてお 考えなのか。  まず最初に朝浦室長と、それから専員長のお2人に全体的なところでお話をお伺いし て、その次の話にいきたいと思います。いかがでございましょうか。 ○高久部会長  朝浦さんどうぞ。 ○朝浦室長  それでは審議の状況を御報告いたします。第1回の専門委員会が昨年の12月21日に開 かれておりまして、3月27日に第5回の専門委員会を開催して都合5回開いておりまし て、すべて公開という形で行っております。 ○木村委員  何人ぐらいなんですか。 ○朝浦室長  一応場所としては、定員50名程度の大きさの会議室で行っておりまして、報道機関 の方もかなりお見えになっておりました。人数というのは、正式な数字は手元にござい ませんけれども。 ○木村委員  ここには限定的公開と書いてございますけれども、その公開についてはどういう形で アナウンスしたんですが、インターネットにちゃんと出たんですか。 ○朝浦室長  専門委員会は開催するときには、すべて公開しますということで広報室を通じて通知 をしております。 ○野本委員長  今のところ組織移植に関して、これは暴走である、許しがたいというようなことが起 きずに何とか済んでいるという状況です。一方では、ちゃんとしたグループをつくって やってくれているところと、一病院内でやっているところとばらばらなんです。臓器移 植の議論がありましたから、それぞれルールづくりはしてくれているんですが、その ルールづくりも極めてばらばらである。今の時点でできたら暴走するなよと。しかし、 やっぱり患者さんを助けなければいかんから活発に活動してほしいという両方が言える ようなものをつくりたいということです。やがて公的なものは公的につくってもらわな ければいけないわけですが、どういう形かにせよ、方向性を示した方が将来きちんとし たものへのつなぎがうまくいくのではないか、こんな考え方でやっておるわけです。  緊急性というのは今言いましたように、臓器移植よりも組織の移植の方が要求度が高 いんです。心臓弁だけの移植とか、血管だけの移植とか、実に多くの人たちが要求して いる。骨なんかも非常に多い。それに関してこのままほっておくと、下手をすると、つ い患者さんの命を救いたいということが先行して、一方では社会的な面から言ったら暴 走と見えることも起こりはしないか。移植の経験がありますから、できたらなるべく早 くやっていただきたい。いつぐらいかといいますと、私の方は現場のリーダーとしてた たき台をつくっただけでございますから、上部委員会のここであるとか、いろんな組織 が考えてくださって、いつから動かせよとお教え願いたい。ただ、途中でも、これはか なり固まったなということを教えていただいたら、現場のバンクをやっている連中には 今の段階でも少なくともこういうことぐらいは守れよということは言いたいと考えてお ります。私の方が勝手にいつまでにしてくださいと言えるような話ではございませんの で、それはまず第一この部会の方にお願いするということになります。 ○木村委員  これは今何回かおやりになったという話ですが、私もアメリカにおりましてもホーム ページをいろいろ見たり、出張しておりましても厚生省のホームページの見たりするこ とも多いわけですが、二、三関連の方々からも、どうもはっきりした公開という、委員 会をやるということ自体は公開しても、それに一般の方々が自由に参加するような形で の、いわば、いつもやっている形での案内がきちんとした形ではなかったのではないか というふうに私自身思ったものですから、その点についてまず確認させていただいたん ですね。どうしてかというと、議員が限定的な公開というふうにしか言っていないので 全面公開ではなかったということになることだと思うんです。ですから、厚生省として は、これはきちんと限定的な公開ではない。もし全面的に公開したなら、そういうふう に訂正を求めていただきたいと思うんです。それが1つ。 ○朝浦室長  私ども別に臓器移植専門委員会という委員会を持っております。それも公開という形 でやっておりまして、それと同じような方法で事務局としては公開をしたというふうに 考えております。 ○高久部会長  この部会の公開と同じ方法ですか。 ○朝浦室長  この部会の公開のルールがどういうものかちょっと承知しておりませんけれども、少 なくとも臓器移植専門委員会の公開のルールと同じルールで行っております。 ○木村委員  そうしましたら何人来たという記録が残っているわけですね。いつもEメールでやっ て申し込む形になっていますね。ですから、毎回大体何人来られたという形でのデータ はやはり出してもらわないと本当は困ると思うんです。ざっとこれぐらいいましたとい うのは困るので、公開ということを閣議決定で決めて、しかも厚生省の各種専門委員会 並びに審議会で公開ということでやっている場合には、例えば今日も何十何人来ている というのははっきりデータに残っているわけです。ですから、それぞれの専門委員会で 何人一般の方々が来られたかという記録が果たしてどれだけあるのかどうか疑問に思っ たものですから、その点確認したかったので一番最初の質問になったわけです。 ○高久部会長  どうぞ。 ○朝浦室長  会議の傍聴者が何人いらっしゃったかというのは記録を見れば確認できると思いま す。公開した結果、例えばお1人しか来られなかった場合と100 人来られた場合と、そ れで公開したかどうかというのが結果的に評価されるということだと、そうではないな というふうに思っております。 ○木村委員 ぜひ記録を委員の方に回していただきたいと思うんです。それから今の専門委員長の 野本先生の方からお話がございましたが、この問題については、先回朝浦室長からも指 摘されましたように一般の方々の関心が極めて高い状況でございますね。ですから、専 門家としてはなるべく早く一応きちんとしたものをつくりたいということは、暴走しな いようにつくりたいというのは当然のことだと思うので、私もそれは評価したいと思う んですが、ここで素人の方から見ますと、専門家がむしろそうやってつくることが暴走 だというふうな意見も、これはパブリックコメントの中にはいろいろございまして、そ ういう観点から見ますと、例えば10月の臓器移植法の見直しの議論の過程の中で、これ をもっとオープンな形で、いろんな意見をくみ上げる形でやるということについては専 門委員会の委員長としてはいかがなお考えでございましょうか。 ○野本委員長 一切考え方はございません。私はこういうことをやるときは、私は自分の役割だけを 明確にして、みんなを引っ張ってくるという方針にしております。とにかく国民の感情 を逆なでしないような基本的な態度は何かということをまず徹底的に考える。あと、そ れをどう扱うか。さらに国民にどのように公表していくかというのは上部委員会の方で 考えていただくことですし、さらに国会も政府もございますから、そこから後のことに 関しては、私は意見を持ってはいけないと考えているんです。といいますのは、一方で は、臓器移植法がもう既に走っております。一方では、次にやがて必要なもっと難しい と思うんですが、本当の研究開発に組織やいろんなものを利用するというルールづくり が恐らく必要になるんだろうと思うんです。そういうところのちょうど狭間にあります から、私の言えますのは、最低現場としてはこれだけのことをしておけということに絞 り込んで考えておりましたので、あとはひとつよろしくお願いします。御判断くださ い。 ○高久部会長  ほかにどなたか御意見ございますか。 ○廣井委員  御努力は評価いたしたいと思いますけれども、随所に既に行われている組織について のものを合法化しようという形で出ておりますけれども、議論の過程の中に、例えば受 精卵とか、卵子とかいうものも議論の中に入っているのでしょうか。 ○野本委員長  一切入っておりません。私どもはそちらの方の分野は一切触らない。とにかく私の場 合はどれだけの分を考えたらいいのかということをまず最初に議論をしまして、いわゆ る組織の移植と。臓器から外れた組織の移植ですから、ちょっと珍しい話で言いますと 耳小骨、耳の聞こえない方には耳小骨、これはケースは少ないようですけれども、必要 な人には非常に必要である。そういうことをなんです。もっと明確な指針をつくれない かと御意見があるかもしれませんけれども、たくさんの組織が利用されなければいけま せんので、最初にやりましたことは、各分野のリーダーにそれぞれ現状を報告してもら うことでした。それを追うのがまず第一の難しい問題でした。私などは医学部を出て、 若いときは外科医をやったこともあるんですが、今の状況では皮膚、骨、様々な組織の リーダーから現状を聞くので精一杯でした。それ以外のことはどうぞお許しください。 ほかのところでやっていただくと。こんな感じです。 ○高久部会長  ただ、1ページ目に「耳小骨」の後に「等」があるんですけれども、耳小骨以外にま だあるんですか。皮膚と骨と靱帯と弁と血管、鼓膜、耳小骨とありますね。これ以外に まだやられているのは。 ○野本委員長  細かくいきますと、いろんな臓器の部品的なものとかあるんです。これだけで縛って しまうとどうしようもないと。「等」というのはそういう意味で、おかしげなまやかし の「等」ではございませんで、組織と定義されるものというのは、いわゆる臓器として 定義されたもの、それから骨髄のような血液系のシステムとして定義されたもの、それ から生殖系に定義されたもの、そういうものを除いた全部のものが入ってきますので、 「等」ということをつけました。 ○高久部会長  わかりました。どうぞ。 ○松田委員  ひとつお尋ねします。読んでいてよくわからないのは、採取する人と移植する人が同 一人物なのか、それとも違う人なのかということがあると思うんです。一番危険なのは 同一人物である場合が一番危険だと思うんです。その辺のところに対して、読んでいて も、どちらがどちらかよくフォローできなかったんですけれども、その辺のところはど うなんですか。 ○野本委員長  全く別の組織ということです。 ○松田委員  そうすると、あるAという病院でもって採取して、Aという病院でするということは あっても。 ○野本委員長  あり得ても、同一人がしてはいけないと。 ○松田委員  ということははっきりしているんですね。 ○野本委員長  そういうことです。それで言葉も、不完全な事例ですけれども、バンク事業という言 葉を用いました。単に組織の利用云々としますと、それまで規制し難くなります。仲間 うちの規制とはいえ、バンク事業になりますと1人でお金を集めて1人で使うというこ とはありませんから、「バンク事業」という名前をつけさせていただいた。 ○松田委員  とおっしゃるのは、「バンク事業」という言葉を使えば、そこで同一人物ではないと いうふうにお考えなんですか。 ○野本委員長  いえ、とんでもございません。そういう同一人物がしてはいけないということをリー ダーとして要求し易いと考えたわけです。そうじゃないと、誰がやってもいいんじゃな いかという話になりますので。 ○高久部会長  寺田委員と加藤委員、この問題はなかなか難しい問題がありますので、次回もまた御 討論願いたいと思います。  もう1つ御報告がありますので、寺田委員と加藤委員の御質問が終わった時点で、千 葉大学の遺伝子治療臨床研究実施のその後の経過を報告したいと思います。  まず寺田委員どうぞ。 ○寺田委員  大きなところですが、野本委員長、大変御苦労なさったと思いますが、最初に「移植 等」と書いてありますね。「等」というのは、後ろの方の10ページに研修の内容、要す るに移植だけに使うのか、例えば実際にこのバンクからDNAをとったり、バイオ組織 をつくったり。 ○野本委員長  そういうことはありません。 ○寺田委員  そういうことを書いていないと、何となしに、もっと大きな範囲になるのではないか という感じがしたんです。そうじゃないですね。 ○野本委員長  最後の方に書いておりますように、研修も組織バンクの技術者の研修と。 ○寺田委員  移植のためのバンクと。 ○野本委員長  研究も移植のためのと。 ○寺田委員  わかりました。 ○野本委員長  委員の中には、これはちょっと反対もあったんです。そんなに限定してどうするのか と。しかし、私は曖昧にするのはよくないので、まず今回は移植ということに目標を絞 り込んで考えると。その中で研修は必要なんです。こういうものを研修なしにコーディ ネーターたちに参画させると問題があるから、使わなかったものは御本人の許可させ前 もって得たら研修にだけは利用させていただきたい。 ○寺田委員  これは脳死した身体を死体と認めているところがありますね。これがあるためにいろ んなことがあり、問題となるのではないですか。それほどそれが現実には問題になって いないのに、わざわざここに入れる必要がありますか。これは今言ってもしょうがない のですが。私の感じです。 ○高久部会長  加藤委員どうぞ。 ○加藤委員  ちょっと判断を伺いたいんですが、この事例はもう既にすぐでも倫理審査委員会で認 可を下ろしてもらいたいというふうに請求されているところがあります。この文案を作 成された方は、そういうときに、この組織ができるまで待ってくれというふうにモラト リアム型の判断をしたらいいのか、それとも、ちょっと実質的に移行措置として、こん なふうにしたらいいのかという点と、何かそういう案があるかということと、実際にそ の病院レベルで頼まれているのは、採取した人と移植する人はほとんど同一という可能 性がかなり高いんじゃないかと思うんですけれども、この点については絶対それはいか んというふうに言った方がいいのでしょうか。 ○野本委員長  私はいかんと言っていただいた方がいいと思います。といいますのは、移植の問題は 臓器移植法のシステムにつながる形になっておりますので、これは私としてはいかんと いうようにみんなに言っております。 ○高久部会長  いろいろ御意見があると思いますが、前の議題の時間がオーバーしたので、十分に御 議論願えなかったものですから、次回はまた時間をかけて十分御議論願いたいと思いま す。  最後に、千葉大学の遺伝子治療研究のその後の経過について、この研究に関しまして は、昨年の6月2日のこの部会で科学的並びに倫理的に妥当であるということでお認め いただいておりますが、その後の経過についてどうぞ。 ○事務局  資料3をごらんください。千葉大学附属病院の遺伝子治療、資料に不備がございまし て、1の(1) 課題名のところに「進行食道」となっておりますが、そこに「がん」を入 れていただきたいんですが、これにつきまして、平成10年の7月、9月、10月、さらに 部会長から御紹介いただきましたように、昨年の6月と都合4回この部会で御議論を賜 っております。その結果、基本的にこの部会として差し支えないという検討に達してい ただいているわけでございますが、参考資料2にございますとおり、この計画というの は、アールピーアールジェンセルという会社が治験として行うものでございまして、そ の治験に係る部分について中央薬事審議会の方で手続が終わったところでございます。 これをもちまして、この部会としても最後の御了承をいただき、その後の手続を進めた いと考えております。  以上でございます。 ○高久部会長  そういうことで、中央薬事審議会の方の別途審査が遅れた経緯がございまして、1年 近く経ったわけでありますけれども、改めて御承認いただきたいと思います。 <全員了承>  本日はいろいろと御議論いただきましてどうもありがとうございました。先ほど申し 上げましたように、組織バンク事業につきましては、次回のこの部会で十分に時間をか けて御討論願いたいと思います。  これで本日の部会を終わらせていただきます。御審議いただきましてどうもありがと うございました。 (了) 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 宮本(内線3804) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171