00/04/21 第23回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 第23回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事次第 1.日  時:平成12年4月21日 (金)  16:00〜18:00 2.場 所:中央合同庁舎第5号館  特別第1会議室 3.出席委員:高久史麿部会長        (委員:五十音順:敬称略)    軽部征夫 木村利人 柴田鐵治 寺田雅昭        (専門委員:五十音順:敬称略)         雨宮 浩 入村達郎 小澤えい二郎 加藤尚武 廣井正彦 松田一郎 4.意見参考人:「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究における生命倫理 問題に関する調査研究検討委員会」 より           委員長 国立がんセンター中央病院長   垣 添  忠 生     委員 東海大学法学部教授       宇都木   伸            委員 国立がんセンター研究所副所長  山 口   建 5.議  事:<審議事項>    ・遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針(案)について       <報告事項>    ・ヒト組織の移植等への利用の在り方に関する報告書(案)の検討状況について    ・疫学的手法を用いた研究等における個人情報の保護等の在り方に関する専門委    員会の開催について    ・その他 6.配付資料 : 資料 1 遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針についての報 告書(案)(別添参考資料含む) 資料 2−1  インターネット等を通して寄せられたパブリック・コメント −2  パブリック・コメントの概要 −3  遺伝子解析研究に係る倫理問題について(意見のまとめ・案)         (12.4.18 学術審議会バイオサイエンス部会) 資料 3−1  「ヒト組織の移植等への利用の在り方について(案) 」にたいする意見・ 情報の募集について   −2 一般の方々の意見募集に対して寄せられた意見に係る論点(事務局メモ)         (平成12年3月16日第4回ヒト組織専門委員会提出資料)    −3 ヒト組織の移植等への利用の在り方に関する専門委員会における検討経緯    −4  ヒト組織の移植等への利用の在り方に関する専門委員会委員名簿 資料 4 疫学的手法を用いた研究等における個人情報の保護等の在り方に関する専 門委員会の開催について 7.参考資料 参考資料1:遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針(案)       (2月4日版)(別添参考資料は省略) 参考資料2:ヒトゲノム研究に関する基本原則(案)(平成12年4月10日科学技術 会議生命倫理委員会ヒトゲノム研究小委員会) 参考資料3:ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案 ○事務局  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第23回厚生科学審議会先端医療技術 評価部会を始めさせていただきたいと思います。  本日は、曽野委員、竹田委員及び金城委員から欠席の御連絡をいただいております。 また、「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究における生命倫理問題に関す る調査研究検討委員会」から垣添忠生委員長、山口先生、宇都木先生の3名の方に御出 席をいただいております。  更に、本日は資料として学術審議会の御意見を配付しておりますが、御担当の文部省 学術国際局研究助成課の河村課長にも御出席をいただいております。  最初に、本日の会議資料について配付の確認をお願いいたします。 (資料の説明と確認)  それでは、部会長、よろしくお願い申し上げます。 ○高久部会長  議事を始めさせていただきます。  初めに、科学技術担当の堺審議官がお見えですので、御挨拶をよろしくお願いしま す。 ○堺審議官  堺でございます。本日は、足元のお悪い中、御参集いただきましてありがとうござい ます。  しばらく前になりますが、遺伝子解析研究の倫理指針について、御検討いただいたも のに対しまして、パブリック・コメントということをお約束させていただきました。そ れで、私どもの方に個人のお立場、あるいは団体のお立場でいろいろなコメントが寄せ られてきております。それに基づきまして、垣添研究班の方で揉んでいただきまして、 改めた指針(案)を提出しておりますので、御検討いただきたいと思います。  本日は、そのほかに「ヒト組織の移植等への利用の在り方に関する報告書(案)の検 討状況について」ということと、「疫学的手法を用いた研究等における個人情報の保護 等の在り方に関する専門委員会の開催について」という報告事項を報告させていただき たいというふうに思っております。どうぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。 ありがとうございました。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。本日は、まず審議事項が1つありまして、それから 報告事項が2つ、その他を含めますと3つありますが、一番重要なのは、前回も非常に 御熱心に御議論いただきました「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するため の指針(案)」ですので、この(案)について主に御議論願いたいと思います。それが 終わった後に報告事項に移らせていただきます。  まず、審議事項の「指針(案)」ですが、かなり長い内容になるということと、十分 に御議論を願いたいので、資料1の「報告書(案)」について、一部分づつ、まず事務 局から説明をしていただきまして、各部分について皆様方の御意見をお願いしたいと思 います。資料1をあけていただきますと、9つのパートに分かれています。そのうちの 1、2、3の3つについて、まず事務局の方から説明してください。 ○事務局 それでは、これまでの経緯も含めまして御説明申し上げます。  前回2月4日に行わせていただきましたこの部会の御議論を受けまして、「指針 (案)」を公表させていただいたところでございます。その後、3月初めには、「指針 (案)」で引用させていただいております説明文書、同意文書の例も併せてイメージと して公表させていただきました。これを受けまして、4月5日まで、いわゆるパブリッ ク・コメントとして一般からの意見を募集をしたところでございます。いただきました 御意見は、資料2−1をご覧いただきますと、ここに全文が載せられております。意見 の総数として49件であります。その内訳は、個人から35件、団体から14件であります。 具体的に申し上げますと、生命倫理に御関心をお持ちの市民の団体、あるいは大学の研 究者、あるいは日本臨床遺伝学会等の学会関係者、あるいは日本製薬工業協会、バイオ インダストリー協会などの事業者団体等から御意見をいただいております。資料2−1 がその全文でございまして、資料2−2がこれを項目ごとに整理し直したものです。資 料2−2は、タイトルの下に書いておりますように、あくまで先生方の御参考になりま すように目次的に整理したものでございますから、その中身の御確認は資料2−1に当 たっていただきますようお願いを申し上げます。資料2−1及び資料2−2につきまし て、どういう指摘があったかというのは説明申しあげますと大部でございますし、また あらかじめ先生方にはお送りいたしておりますので、詳細な説明は今回は御遠慮させて いただきたいと思います。  次に、資料2−3でございますが、学術審議会バイオサイエンス部会の方から、公開 いたしました「指針(案)」に対しての意見がまとめられて提出していただいておりま す。これらの意見を踏まえまして、国立がんセンター中央病院の垣添忠生院長を主任研 究者といたします「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究における生命倫理 問題に関する調査研究班」の意見も聞いた上で、事務局で再整理しましたのが資料1で ございます。この整理に当たりましては、参考資料2をご覧いただきたいと思います。 参考資料2「ヒトゲノム研究に関する基本原則(案)」、4月10日付で科学技術会議の 生命倫理委員会ヒトゲノム研究小委員会から公表された資料で、5月の初めまでの間、 いわゆるパブリック・コメントの手続きを行っているものでございますけれども、この 「ヒトゲノム研究に関する基本原則(案)」との整合についても十分留意したつもりで ございます。  主な変更点を申し上げますと、2月4日付で公表いたしました版から比べますと、ま ず第1点目は、文章が難解であるというような御指摘が多々ございましたので、文章を 全体的に平易なものになるよう努めて整理したところでございます。  2番目といたしましては、2月4日に公開いたしました報告書は、垣添先生を主任研 究者とする研究班の報告書という体裁をとっておりましたけれども、この部会で御議論 いただいておりますし、この部会の報告書として出していただくために、その体裁を整 えさせていただいております。  それぞれの項目の説明に入ります前に、参考資料2として、今ご覧いただきました 「ヒトゲノム研究に関する基本原則(案)」との関係について御説明をしたいと思いま す。  科学技術会議のヒトゲノム研究小委員会で検討されております「基本原則(案)」と 申しますのは、いわば憲法的な文書という整理がされておりまして、その憲法的な文書 を受けて具体的な指針を作成する必要があるということがうたわれておる訳でございま す。その指針の1つというのが、今回、資料1でお示ししております「報告書(案)」 に当たるのだろうと考えております。すなわち、ダブルスタンダードになるというよう なものではございませんで、この指針を遵守している限り、憲法的な文書であります原 則も遵守していることになるということで、憲法と具体的な指針という形で御理解を願 えればありがたいというふうに考えております。  それでは、資料1に基づきまして、それぞれの部分について、特に変更した部分につ いて説明申しあげたいと思います。  「はじめに」でございますが、この資料の右あるいは左に*(アスタリスク)印を打 ったところが主に変更したところでございます。「はじめに」の部分で申し上げますと 第2パラグラフに、いわゆるミレニアム・プロジェクトを政府として実施することが決 まっているということが文章として出てまいります。  また、一番最後のパラグラフでございますけれども、前回の御議論も受けまして、あ るいはパブリック・コメントの中にも、一般的な研究、すなわちミレニアム・プロジェ クトだけではなくて、一般的な遺伝子解析研究に対する指針も検討すべきというような 御議論をたくさんいただいておるというのが1つ。もう1つには、指針の対象範囲、指 針が適用される範囲を明確にしてくれという御指摘がございまして、この2つを踏まえ まして、この指針の適用範囲について、ミレニアム・プロジェクトとして行われるすべ ての遺伝子解析研究において遵守されるという点は維持しつつ、一般的な遺伝子解析研 究に適用される指針の必要性が指摘されているということをまずここで書いておりま す。  次に、これを受けまして、国立・公立、または私立を問わず、すべての研究機関及び 研究者が一般に実施している研究についても、指針を引き続き審議することが適当であ って、その次の段落でございますが、関係省庁との連携をもってそれに当たるという趣 旨のことが書かれております。具体的には、本日、各省庁の担当にも集まっていただき まして、この統一的、一般的な指針をつくるということについて御相談をし始めたとこ ろでございます。  次に、2の「基本方針」でございますけれども、(2−1)から(2−6)までの6 つの基本方針につきましては、内容は基本的に変わっておりませんけれども、それぞれ の項目の趣旨がわかりますよう、それぞれについて見出しをつけさせていただいており ます。  次に(2−1)でございますが、(2−1)につきましては、前のバージョンで「研 究参加者を尊重する」という表現がございましたけれども、研究への参加をお断りされ た方は尊重しないのかというような御指摘をいただいておりますので、それに対応する ために、研究への協力を要望された方全体を尊重するということでまとめさせていただ いております。  次に、(2−6)透明性のところでございますが、「研究状況を社会に公開する」と いうのが前にございましたけれども、誰がという御指摘をいただいておりましたので、 「研究に責任を持つ者」ということを明示させていただいておりますし、「研究責任者 の責務」にその項を追加させていただいております。  3の「用語の定義」でございますが、(3−1)の試料等の項でございますけれども 死者から提供された試料の中で「脳死を除く」というふうに書いていた訳でございます が、法的脳死と臨床的な脳死の区別がつかないというような御指摘をいただきましたの で、この項は、その趣旨が明確になるよう整理させていただいております。  次に、(3−4)の遺伝子解析研究の第2パラグラフをご覧ください。前回のこの部 会でも御議論されましたし、パブリック・コメントの中にもあった訳でございますが、 一般の臨床、一般の診療の場で行われる遺伝子解析が含まれるのか含まれないのかとい うことを明確にさせていただいたところでございます。  (3−9)代諾者の(注)の項でございますけれども、先ほど参考資料で御説明させ ていただきました「基本原則(案)」との整合性をとるために、代諾者の項を整理させ ていただいております。  次が(3−11) 試料等の提供を受ける機関でございますけれども、従来「試料等採取 機関」という名称にしていた訳でございますが、用語をやわらかくして、文章を平易に した際にこういう名称に変えさせていただいております。また、1つの機関が病院部門 と研究部門を持つという場合において、試料等の提供については、病院部門と研究部門 は別機関とみなすという規定を置いていた訳でございますけれども、研究機関の概念が 混乱しているという指摘に対応するため、その規定を削除いたしますとともに、試料等 の提供に関する規定で、これらの2つの機関、すなわち病院部門と研究機関は分かれる というのを、そちらの項で規定したところでございます。  次に(3−17) 試料等提供者の項でございます。ここで第一群から第四群まで分けて おる訳でございますが、それぞれの群の性格がわかりにくい。あるいは、三群と四群の 違いがわかりにくい。例えば癌ですと、癌の告知をした人を対象にするのか、告知をさ れていない人も対象にすることが許されるのか、それらの点が不明確であるというよう なたくさんの御指摘をいただいております。  これに対応いたしますために、まず、それぞれの群について、一言で言うとどういう 患者を考えているのか、あるいは、どういう人を対象にしているのかをわかりやすくす るために、(3−17−1)の第一群のところでございますと、単一遺伝子疾患の患者が 基本的に念頭にあるというような小見出しをつけさせていただいております。また、 (3−17−1)の3行目を見ていただきますと、告知を受けている人にその対象は限ら れるということを明確にさせていただいたところでございます。  第三群のところをご覧いただきますと、従来の第三群と第四群を逆転させていただい ております。すなわち、第一群が単一遺伝子疾患。第二群がいわゆる多因子の疾患。第 三群がその対象となります健常者を中心とするグループ。第四群というのは、いわゆる 疫学研究と呼ばれておりますコホート研究というような特殊な研究スタイルをとる場合 のグループということで再整理をさせていただいたところでございます。  次に(3−19) 、遺伝カウンセリングの項でございますが、従来の定義ですと、遺伝 子解析研究のために遺伝カウンセリングがあるというような誤解を招きかねないという 御指摘をいただいております。これに対応するために、遺伝子研究というよりは、遺伝 カウンセリングという観点から定義を再整理いたしております。  以上、簡単でございますが、3「用語の定義」までの御説明とさせていただきます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。今、3番までの説明をしていただいた訳ですが、こ れにつきまして御質問、御意見をお願いしたいと思います。 ○木村委員  どうもありがとうございました。今、事務局から御説明いただいて、私ども各委員の 発言、それからパブリック・コメントを大変詳細に検討された上、具体的な項目につい て非常にわかりやすく文章を直していただいたということの跡がよく見えまして、大変 にいいものができつつあるというふうに思いました。  全般的な事柄で1つだけお伺いしたいのですが、先ほどの事務局のお話ですと、これ は一番最初の中間報告書とは違って、厚生科学審議会の中の先端医療技術評価部会のド キュメントとして出てきた報告ということになる訳でございますか。 ○高久部会長  その事は私が最初に説明すべきだったのですが、そういうふうにしたいと事務局は考 えているようです。ですから、垣添班の報告ではなくて、この部会の報告、更に、恐ら く厚生科学審議会の報告として厚生省から出ていくものだと、そういうふうに事務局は 考えています。 ○木村委員  もしそうだとしますと、本日の資料の(案)という形の表紙のところでございますが 当然「厚生科学審議会先端医療技術評価部会」というふうに入ることになる訳ですね。  もう1つ、それに関連してお伺いしたいのですが、これが先端医療技術評価部会の報 告書として審議会の方に出て、審議会でこれを受け取った形で結論が出た場合、これが 「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針」になる訳でございます か。 ○高久部会長  ミレニアムに関してのものになると考えています。ミレニアム研究での遺伝子解析研 究についての指針ということになると思います。 ○木村委員  わかりました。それで、この報告の中には、にもかかわらず、そういう一般的な遺伝 子解析研究に適応される指針の必要性が指摘されている形の報告になっている訳で、そ の方向性、未来展望が出ている訳ですけれども、私がお伺いしたいのは、手続き上、こ れが指針となって出てきた場合に、「はじめに」というところから全部が指針になるの か。それとも「基本方針」の前で一応終わって、指針といった場合には「基本方針」の ところからくるのかということで、内容に、これは報告書なので前文の「はじめに」が 付いているのか。指針となった場合にはどこから入るのか。私の見解では、これの成り 立ち、由来、今後の動向を含めて、「はじめに」というところから含めた形で指針とす るのがいいのではないかというふうに思います。その場合には、「はじめに」はやめて むしろはっきりとこれを前文にしまして、そして前文から始まって、1「基本方針」と いうふうにして、番号を全部ズラすのも大変ですけれども、そういうふうにした方がい いのではないかと個人的に思いました。  したがって、2ページのところをご覧いただきますと、これは提案ですけれども、2 ページの*(アスタリスク)印のところの文章が「当厚生科学審議会」から「報告す る」まで極めて長い文章なんですね。ですから、これを真ん中で切りまして、「『遺伝 子解析研究に付随する倫理問題に対応するための指針』を取りまとめた」というふうに 切って、次のところをずっと読んでいきまして、「更に、…遺伝子解析研究の指針につ いても、厚生科学審議会先端医療技術評価部会において引き続き審議することが適当の 結論に至った」というふうにすると、このまま指針の前文として、報告するとか何とか ということになりますと時間的な要素が入ってきますが、「指針として報告する」とい う言葉よりも、こういうふうに決まったというふうに書いた方がいいのではないか。た だいまは前半の3までのところでございますけれども、全般的な事柄につきまして、そ ういういわばきちんとした、これがそのまま指針であるということの明確性を出した方 がいいのではないかというのが私の提案でございます。いかがでしょうか。 ○高久部会長  そういうふうに考えたいと思います。ほかにどなたか。  これは、先ほど事務局から説明があったのですが、5ページの「試料等の提供を受け る機関」、前回は「採取する機関」となっていました。「採取」という言葉が強過ぎる という話ですが、今度は逆に、(3−11) のタイトルだけ見ますと、「試料等の提供を 受ける機関」というと試料をもらう研究機関みたいになるので、やはり余り気にしない で「試料等を採取する機関」で良いのではないかと思います。意味がかえってわかりに くくなっていると思いますが。 ○木村委員  これは、やはり「採取する」というと、主体性がいわば研究を行う方が主語になって きますね。ですから、そういう意味では、一般の人たちが読んで「試料等の提供を受け る」という表現の方が、このままでいいんじゃないかと私自身は思いますが。 ○高久部会長  どちらでも良いです。ただ、「提供を受ける」というと、病院で採った試料を研究所 がもらうことがある。そうすると、「提供を受ける機関」というと研究所になる可能性 があるので、何かうまい言葉にしないと。日本語の問題ですが。 ○入村委員  「試料等の提供が行われる機関」と。 ○高久部会長  そうですね。「試料等の提供が行われる機関」なら正確だと思います。どうもありが とうございました。 ○雨宮委員  私も班員になっております垣添研究班で述べるべきだったのかもしれないんですが、 (3−1)試料等というところに臓器移植法との兼ね合いが書いてございますが、これ を何となく読んでしまいますとどうもはっきりしない。要するに、臓器移植法に基づい て、移植用に提供を指された臓器については、使用されなかった場合に焼却しなくては いけないと書いてあるのですが、それ以外のことは特に規定がありませんので、これで いきますと、すべていわゆるドナーとなった人のものからは遺伝子解析をやってはいか んという、ちょっと飛躍したような結論になりかねませんので、この辺はもう少しはっ きりお書きいただいた方がよかったんじゃないかと思いました。 ○高久部会長  ほかにどなたか御意見は。この点はどうですか。 ○事務局  お答えさせていただきます。ここにつきましては、1つは、こういう趣旨に直しまし たときには、「脳死」という言葉を不用意に使ってしまいましたが、先ほどの事務局か らの説明で申し上げましたように、臨床的な脳死と法的な判定を受けた脳死の区別がつ かないという御指摘があった際にこういう文章に直した訳でございますが、ただいまの 部会長の御指摘に沿いまして、担当課と相談してきちんとした文章に直しておきます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。ほかに1から3まででどうぞ。 ○木村委員  そこはやはりきちんとしませんと、これは非常に重要な問題点が含まれている文章に なっておりまして、何でもかんでも使えないというふうに言っているところにむしろ意 味がある。ですから、そういう意味では、今、企画官から御説明がありましたとおり、 きちんとした対応でここのところを書きませんと、一般の人たちへの誤解を生む文章に なりかねないということを感じましたので、法的に脳死移植法に沿ったきちんとした対 応、しかも、ヒト組織についてはまたほかのところで出てくる訳でございますので、そ の点、慎重な配慮を要した文章にすべきであるというふうに私自身は思います。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。では、次の4に移らせていただきます。事務局の方 で宜しくお願いいたします。 ○事務局  それでは、4「研究および審査の体制」の項について御説明申し上げます。  まず、(4−1)が研究実施機関の長の責務でございますが、(4−1−1)に、実 施機関の長が、遺伝子解析研究が倫理的、法的、社会的問題を引き起こす可能性がある ことを周知徹底をするという条項がございますけれども、従来の版におきましては研究 遂行者のみを対象としていた訳でございますが、個人識別情報管理者も当然加わるので はないかというような御指摘をいただきまして、この項を改めております。  また、(4−1−3)の倫理審査委員会の設置の規定でございますけれども、この項 をわかりやすく再整理するとともに、既に類似のものが設置されているときの規定を明 確化してほしいという要望がございましたので、(4−1−3−1)にその項の明確化 を図ったところでございます。  次に(4−1−8−2)でございます。外部の有識者に実地調査をさせるという項で ございますけれども、実地調査の範囲と申しますか、力点を明確化すべきだというよう な御指摘を賜りまして、この外部の有識者の役割というのが人権の保護にあるという観 点から、インフォームド・コンセントのための手続きの実施状況及び個人識別情報の保 護の状況について、研究計画書に沿って行われているかどうかを実地調査させるという ことで、その範囲を明確化させていただいております。  (4−2)研究責任者の責務の項でございますけれども、この項につきましては、倫 理審査委員会へ提出する研究計画書の記載の充実を図っております。  また、(4−2−3)の項をご覧いただきますと、研究計画書を作成し、機関の長に 許可を求める。機関の長が倫理審査委員会に諮る訳でございますけれども、この項に従 来の版では研究責任者以外の研究実施担当者と呼んでおりますけれども、研究者の人事 異動があった場合におきましては、事後報告にかえることができるというような規定が ありましたが、この事後報告の規定について反対の意見がございました。また、アメリ カとか、あるいは我が国の治験のGCPを見ますと、そういった軽微な変更につきまし ては倫理審査委員会に迅速審査手続きを設けることができるという項がございますので 事後報告という規定を削除いたしまして、後で説明いたします迅速審査の手続きを新た に導入したところでございます。  具体的な研究計画書のについては(4−2−3−1)でございますけれども、試料等 提供者の選定が恣意的なものであってはならないという御指摘を幾つかいただいており まして、その指摘に対応するために、新たにこの規定を追加いたしました。  次が(4−2−3−5)でございますけれども、幾つかの機関が共同して研究を行う 場合に、その整合性、例えば提供者に対する説明文書でございますとか、あるいはイン フォームド・コンセントの手続きに加わります説明者への説明項目でございますとか、 そういった整合性をとるべきではないかという御指摘を賜っておりまして、その観点か ら、この項を改めるとともに、後で説明いたしますところで、中心となる機関が整合性 をとるという規定を新たに追加させていただいております。  次に、(4−2−3−7)の規定、痴呆等により有効なインフォームド・コンセント を与えることができない、あるいは未成年者のいわゆる代諾が必要となってまいるよう な事態でございますけれども、この項に、その試料等の研究のために必須であるという ことで、従来は「必要である理由」となっていたと思います。「必須である理由」とい う形に変えさせていただいております。  次は(4−2−5)でございますけれども、(4−2−5)は従来(4−2−4)と 一緒の規定でございましたが、匿名化を行うというのは、「試料等の提供を受ける機 関」、この用語が不適当ではないかという御指摘を今いただいたところでございますが とりあえずこの用語で呼ばせていただきますけれども、「試料等の提供を受ける機関」 のみに関わる事項でございますから、(4−2−4)から分離独立したところでござい ます。  次に、(4−2−7)の規定でございますが、先ほど申し上げました共同して研究を する場合の整合性をとるという規定をここに新たに付け加えたところでございます。  また、(4−2−8)でございますが、最初に御説明申し上げました「基本的考え 方」の6番、すなわち研究の進みぐあいを社会的に公表していくという規定が従来から でございますが、それに対する責務規定がないということで、ここに研究責任者の責務 規定として設けさせていただいております。  次に、(4−3)研究遂行者等の責務の項でございます。研究遂行者が所属外の研究 機関に提供する場合の規定につきまして、表現がわかりづらいという御指摘をいただい ておりましたので、この項を明確化させていただいております。  (4−3−6)の規定でございますが、外部の調査実施担当者が知り得た個人に関す る情報を正当な理由なしに漏らしてはならないという規定でございますけれども、この 「正当な理由」とは何かという御指摘をいただいております。これに対応するために、 「法令または裁判所の命令に基づく場合など」という例示をすることによって明確化を 図ったところでございます。  次に、(4−4)の個人識別情報管理者の責務については特段の変更はいたしており ません。  次に、(4−5)の倫理審査委員会の責務および構成の項でございます。(4−5− 2)倫理審査委員会の構成等というところを見ていただきますと、この構成につきまし ては従来と変えておりませんが、表現を平易に工夫するために、(4−5−2−1− 1)から(4−5−2−1−3)まで、どういう方々が念頭にあるのかというのを一言 で言いあらわしております。すなわち倫理面の有識者、科学面の有識者、市民の立場の 人ということで平易になるよう工夫したところでございます。  次が(4−5−2−3)でございますけれども、審査の対象となる研究遂行者が倫理 審査委員会の審議・採決に参加してはならないという規定でございましたが、これに実 施機関の長も加えるべきだという御指摘を賜っておりますので、実施機関の長もあわせ て倫理審査委員会の審議・採決に参加してはならないという規定に変えさせていただい ております。  (4−5−3)の迅速審査手続きでございますが、これは先ほど御説明を申し上げま した「研究計画の軽微な一部変更であって、次に掲げるような試料等提供者の人権保護 に重大な支障を来さないと考えられる事項を審査するために、その決定により」という ことで、倫理審査委員会が決定をすることによって迅速審査手続きを設けることができ るという規定を設けさせていただいたところでございます。例えば研究実施担当者が異 動した、あるいは共同研究機関の類型を記載した遺伝子解析研究において具体的な研究 機関が定まった、あるいは当初の研究計画では連結可能匿名化をするということであっ た試料を連結不可能匿名化をするというような場合を挙げております。この迅速審査の 手続きというのは、倫理審査委員会の委員の中から委員長が指名した人が行う。また、 16ページをご覧いただきますと、この手続きによって審査された案件については、その 手続きが終了した際に倫理審査委員会の委員すべてに通知をするという規定を置いてお ります。先ほど申し上げましたアメリカの連邦規則集に載っております倫理審査委員会 の迅速審査手続きと基本的に同じ制度を導入したいというふうに考えておるところでご ざいます。 以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。今、項目の4について、これは長い項目ですが説明 をしていただきました。どなたか御質問、御意見がおありでしょうか。 ○軽部委員  (4−2−8)に「提供者およびその家族等の人権保護や、特許権などの知的所有権 の保護に配慮しながら」ということが書いてあるのですが、この場合ですと研究者が知 的所有者になる訳ですが、アメリカで大分裁判などが起こっていますけれども、日本の 場合には、いわゆる試料の提供者自身の権利というのは知的所有権の保護の中には入ら ないんでしょうか。 ○高久部会長  前に一回議論したときには、入らないのではないかという御意見でした。アメリカの 場合でも、たしか裁判で負けて、入らなくなったと思いますが。 ○軽部委員  ええ、負けた例が多いですね。抗争中の例もまだあると思いますけれども。 ○木村委員  この点に関しては後で出てくると思うのですが、一番最初の垣添先生から出てきたと ころでは「知的所有権は提供者に帰属しない」というはっきりとした文言があったので すが、書き直された方は、そのことについて「帰属しない」という表現にはなっていな いんですね。ただ、それについての情報を十分に与えるというふうに、いろいろなパブ リック・コメント、我々の討議を踏まえて変わったように思いましたので、恐らくそれ は後ほど出てくるんじゃないかと思いますが。 ○高久部会長  ほかにどなたか。 ○木村委員  ただいまの項目つきましても、我々の討議並びにパブリック・コメントを踏まえて、 いろいろな細かい修正が加えられたことについて一応評価したいと思います。今の点に つきましてはも、軽部先生の御指摘も非常に重要な点で、これは後で出てくると思いま すが、特にバイオエシックスの立場から申し上げますと、「倫理審査委員会の責務およ び構成」というところでわかりやすくしていただいたということがあると思うんです。 ただ、14ページの(4−5−1−4)のところでございますけれども、「倫理審査委員 会の議事要旨は、公開されなければならない」というふうに原則を打ち出している。こ れは当然のことですが、「ただし、公開することによって、試料等提供者またはその家 族等の人権、研究に係る独創性または特許権などの知的所有権の保護に支障が生じるお それがある部分は公開してはならない」と、ガイドラインでこういうふうに言おうとい うことのようですけれども、「支障が生ずるおそれがある部分」というのは、当然、倫 理審査委員会の中での討議を踏まえてそういうふうに決めることだと思うんです。です から、一方的にここで「してはならない」というのではなくて、「倫理審査委員会の決 定に基づき、公開しないこともできる」というふうにしておかないと、一体これを決め る判断の基準が、こういうのがあると、これとこれとこれとは公開してはいけないとい うふうに最初から決めてしまうのではなくて、やはり審議の上でこことこことここは公 開しないということを「審議の決定に基づき公開しないことができる」というふうにし ておかないと、この文章だと、一方的に「公開してはならない」というふうになってし まうのではないかというふうに感じましたが、いかがでしょうか。 ○高久部会長 上の方は「公開しなければならない」となっていますので、ここのところは「公開す る必要がない」とか、そういうふうにした方が上の文章と合いますね。ですから、私も 木村委員の意見に賛成で、そういうふうに直した方が良いと思います。 ほかにどなたか。 ○木村委員 あと、パブリック・コメントの中に、この指針ができてしまうと、自分たちの今の研 究施設でやっている倫理審査委員会が基本的に成り立つ要素がなくなるのではないかと いうおそれを表明しているコメントがあったんです。これは、将来的な構想として、人 文科学、社会科学、その他市民一般を含めた開かれたものにするという、これは日本で 最初の非常に大事なバイオエシックスの考え方に基づいた倫理審査委員会ですが、現在 のが全くだめじゃないかというおそれがあるというふうに言っていることに対して、厚 生省当局としては、今どういうことで回答するというか、お考えなんでしょうか。 ○事務局 一番最初に申し上げましたとおり、この研究はミレニアム・プロジェクトを対象にす るということですので、具体的に申し上げますと、国立がんセンターほかを対象にする 訳でございますが、そこにおいては、少なくともこの指針にのっとって早急に対応して いただく。一般的な指針を考える上で、先生に御質問いただいた点も含めて、例えばあ る程度の一定期間の経過措置みたいなものを設ける必要があるのかどうかを含めまして 検討させていただきたいと思っております。 ○高久部会長 今、事務局から説明がありましたように、ミレニアム・プロジェクトの研究をする機 関はかなり大きな機関ですね。そういうところは、この構成で十分できると思うのです が、例えば地方の大学などになりますと、ミレニアム・プロジェクトでない一般的な遺 伝子解析研究問題のときに、この委員の構成を厳格に守るのはかなり難しいことがあり 得ると考えています。私の大学でも、栃木にありますから、これを実施するのは大変だ と思います。毎回、東京から倫理審査委員会の先生方に来ていただく必要があるという ことになる可能性がある。東京に近い機関はまだいいのですが。 ○木村委員 今、事務局並びに部会長から現在ある倫理審査委員会に対する配慮に富んだ御発言が あった訳ですが、私としては、やはりこれに沿って、例えば東京から遠くても、地方の 諸機関もその方向でやるようにという明確な意思を厚生省としては出していただきたい と思います。これは私の私見ですけれども、それに伴って、厚生省として、こういうこ とをやる場合にどうしたらいいのかというような全国的なレベルの倫理審査委員会のコ ンサルテーションを開くとか、こういうときには倫理審査委員会というのは権威を持っ た1つの行政的な判断、あるいはリサーチのレビューの判断であると同時に、いろいろ な市民の方も入って、いわば教育的な機能を持った、その中で育っていくといいますか 周りの市民が、そこで一体何が行われているかということを含めて勉強していく機能も ある訳でございますので、適当な人がいないとか何とかというのじゃなくて、やはり基 本的には日本はこれからそういう方向に進んでいくんだということを厚生省としてもは っきり見通しとして出していただいて、その上で、こういうようなコンサルテーション 全国的な研修会その他を開いて、積極的な予算を付けてそういうことを考えていただく ということもご検討いただければという考えでございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。ほかにどなたかご意見は。 ○柴田委員 私も木村先生の言うことに基本的には大賛成ですし、倫理審査委員会の重要性と方向 性は大切なことだと思うんですけど、確かにこれを見ていると、ちょっときついだろう なという気がするんです。そもそものところへ戻って、これはミレニアム・プロジェク トだけに課すのだからそこは大丈夫というのはわかるんですけれども、そうじゃないと ころにはとても無理だということで、逆にうんと緩んでしまうよりは、ここのところは むしろ「ねばならない」ではなく、例えば「望ましい」という表現でもこの場合はいい のかなと思います。つまり、やはり第三者の目がきちんとそこに注がれているというこ とが大事だと思うし、その構成が余り偏ってはいけないという基本的な考え方ははっき り出ている訳なので、ここをきつくすればするほど、それ以外のところはとても守れな いよというふうになってしまわないかというような逆の心配を若干するので、ここは 「ねばならない」じゃなくて、例えば「することが望ましい」とか、そういう表現の方 がいいのかなという感じがしたものですから、基本的には木村先生の意見に賛成ですが ちょっときつ過ぎませんかというような感じがします。 ○高久部会長 確かに、木村委員の御意見の様に一般の方に、理解をしていただく必要があると思い ます。「半数以上は倫理面の有識者または市民の立場の人」と書いていますので、「市 民の立場の人」ということからすれば、それほど難しくないのかもしれません。「倫理 面の有識者」となると、その基準というか、御自分で考えておられても周りの人はそう 思っていない人もいるかもしれないし、いろいろだと思うのですが、市民の立場の方が 入っていただくのは必要かもしれない。例えば、地方の大学でどういうことが行われて いるのか、どういう研究が行われているのかということを周りの方に知っていただくの は有意義なことで、そういう意味では、その範囲を倫理面だけに限らないで、市民の 方々を入れるということは不可能ではないし、そういう努力をすべきだと思います。 ○木村委員 結局、何よりもこの研究は国民の税金を使ってやる訳ですので、国民の一人ひとりに ある意味で関係の深い研究プロジェクトになる訳ですので、今の柴田委員の御発言の内 容もわからない訳ではないですけれども、やはりきちんとしたものを出していく。余り ここで心配するよりも、ともかくこれで一応前に向かって進んでいくということは明確 に出しておいていいんじゃないかと思うんです。これはそんなに縛っているように私自 身は感じませんし、そういう点で大変に意欲的な取り組みへの展望が見えているという ふうに私自身は理解したいと思っています。 ○高久部会長 ほかにどなたか。 ○小澤委員 実際に各機関でいろいろな審査をしている頻度は相当高いものですから、恐らく木村 先生にお願いしても、全部できるということはほとんど不可能だろうと思います。しか し、それはそれとして、今は一般的な遺伝子研究の問題ではなくて、ミレニアム・プロ ジェクトですから、それでしたらこれは可能だと思います。一般論のときはまた別な議 論に入るんだろうと思います。 ○加藤委員 外部制の導入ということを明確に打ち出したという点は大変高く評価できると思いま す。最近、倫理審査委員会では、内部の人だけではいけないというので、私などもずい ぶん頼まれるんですけれども、卒業生というのがまず第一の候補者ですね。それから、 半数以上外部の人というと、A大学の倫理審査委員会の委員の半分は辞めてB大学に移 り、B大学の倫理三叉委員会の委員の半分がA大学に移るという、いわば半分ずつ移動 すればいいじゃないかという考え方も出てきつつあると思います。ですから、外部制の 導入というものを、どういう精神でやるとか、どういう目的でやるとかということを考 えないと、ただここでその機関に5年以内所属していなかったというような形式的な規 定になると、むしろ抜け道の方をみんな一生懸命考えるということになるおそれがある んじゃないでしょうか。 ○高久部会長  そうですね。いずれにせよ、もっと広い範囲というか、施設を対象にした遺伝子解析 についての倫理問題を検討する場合には、木村委員がおっしゃったように、少し調査を する必要があると思います。頻度の問題なども現実的には大きな問題になると思いま す。 ○加藤委員  それから、「倫理面の有識者」と書いてあるけど、「倫理・法律」というふうにした 方がいいんじゃないかと思います。 ○高久部会長  おっしゃるとおりだと思います。ほかにどなたか。  それでは、また後で御議論していただくことにしまして、次に5から9まで、それか らお手元にありますインフォームド・コンセントに係る例文を含めて、事務局から説明 していただけますか。 ○事務局  「試料等提供者のインフォームド・コンセント」の項から御説明申し上げます。 このインフォームド・コンセントの項につきましては、従来の版におきましてかなり 整理されていない事項がございましたので、内容を(5−1−1)、(5−1−2)、 (5−1−3)という具合に整理をしております。すなわち(5−1−1)が試料等提 供の依頼を受ける人についての注意事項、(5−1−2)が説明の原則、(5−1− 3)が遺伝情報の開示に関する原則。(5−1−4)が実際に説明する事項というぐあ いに、まず大項目を整理しております。 (5−1−1)の試料等提供の依頼を受ける人の項でございますが、試料を提供して いただく方の選定にあって、不合理あるいは不公平な方法が行われるということがない ことを担保するために、ここに総括的な注意事項を規定させていただいております。 次に、(5−1−3)遺伝情報の開示に関する原則ですが、これは従来、説明事項の 中で一部ところどころに触れていたものをここに再整理をして、その考え方を原則とし て取りまとめております。  内容で変わった点と申しますのは、(5−1−3−3)試料等提供者の代諾者に対す る開示に関する原則というのがございますが、旧版では、試料等提供者と並びまして代 諾者についても試料等提供者の遺伝情報を希望により開示をするというのを原則にして おりましたが、提供者の人権保護という観点から見ますと、原則として代諾者には開示 をしないというふうに方針を変更いたしております。ただ、代諾者に開示をするという のが、その下の例外といたしまして、(5−1−3−3−2)として、代諾者が開示を 希望する場合には、その理由、必要性を倫理審査委員会に諮った上で、その委員会の意 見に基づき対応を決定するという規定をつくっております。  また、(5−1−3−1−4)をご覧いただきますと、提供者がその情報の開示を希 望していない場合でありましても、その遺伝情報が提供者の生命に重大な影響を与える ことがたまたま判明した、また、有効な治療法もあるという場合におきましては、研究 実施機関の長は、それを開示するかどうか倫理審査委員会に諮った上で、研究責任者あ るいは診療を担当する医師と調整、その対応を協議をするという規定をここに設けてお ります。従来から倫理審査委員会に諮るという規定はあった訳でございますが、これに 加えまして、実際に開示を担当する診療担当医との調整を規定したものでございます。  次が(5−1−3−4)でございますが、試料等提供者が未成年者である場合の開示 に関する原則ということで、旧版には明示的に示されておりませんでしたけれども、今 回これを明記したところでございます。すなわち、要点を申し上げますと、未成年者の 遺伝情報は、代諾をした親権者の希望に応じて開示をする。ただし、その場合にあって も、未成年者の意向を確認し、それを尊重するということ。更に、必要に応じて、開示 の前に倫理審査委員会の意見、あるいは未成年者や親権者との話し合いを求めるという ことが書かれております。更に、未成年者の遺伝情報について、未成年者が開示を明確 に希望している場合についての規定をここに置いております。更に、未成年者への情報 開示に当たりましては、特に丁寧な情報提供を(5−1−3−4−3)で規定したとこ ろでございます。  次に(5−1−3−5)でございますが、旧版では、遺伝情報を開示する場合に、遺 伝カウンセリング担当者との協力ということを書いていた訳でございますが、「協力」 ということでは開示をする方と遺伝カウンセリング担当者の間に主従関係を生じてしま うのではないかというような御指摘を幾つか賜っておりましたので、「連携」という並 列的な言葉に変えさせていただいております。  次が(5−1−4)の説明事項でございますが、説明事項につきましては、その記載 の充実を図っております。また、明示的に遺伝子解析研究の目的、対象とする人、ある いはその中身に応じて一部の省略ができるというのは当たり前の規定でございますが、 それを明記しております。  次にその説明事項の中身でございますけれども、(5−1−4−8)をご覧いただき ますと、予測される研究結果及び予測される危険・不利益とございますけれども、危 険・不利益の内容を明確に示したところでございます。  その下の(5−1−4−9)でございますが、研究計画あるいは研究の方法について の資料の入手あるいは閲覧に関する規定でございますけれども、これにつきまして、特 許権等の知的財産権が取れなくなってしまうという事態もあるのではないかという御指 摘を賜っておりますので、それとの調整の規定をここに置いている訳でございます。  次が(5−1−4−12−3)、あるいは(5−1−4−12−4)でございますけれど も、先ほど御説明いたしました遺伝情報の開示の原則をつくりましたのと併せまして、 この2つの規定を整備したところでございます。  次が(5−1−4−13) でございますが、先ほど御議論を賜った知的財産権を生み出 した場合の問題でございますけれども、研究者の意向によりましては、提供者に権利が あるという場合もあってしかるべきではないかというような御指摘を賜っておりまして それらを受けまして、「その権利の帰属先」という表現にさせていただいたところでご ざいます。 次が(5−1−5)遺伝カウンセリングとの関係につきまして、遺伝カウンセリング とインフォームド・コンセントのための説明というのは考え方として別個のものである という御指摘を賜っておりますので、それに沿いまして、遺伝カウンセリングとの関係 の項を整理させていただいております。  次に(5−1−6−3)代諾者の規定でございますが、先ほどお示ししました科学技 術会議のヒトゲノム研究委員会の原則と整理をするために、基本方針として、試料等提 供者の利益を最もよく代弁できると考えられる人であるということ、更に、その細項目 としましては、法定代理人、親族、同居人の中から選ばれるべきこと、また、その選定 に当たっては、法定代理人、親族、同居人のいずれかに依頼をして協議して選定しても らうべきという規定に再整理しております。  次に、(5−2)インフォームド・コンセントに係る一連の具体的な手続きの項でご ざいますが、(5−2−1−3)遺伝情報の開示の項でございますが、実は旧版ではこ こに主語がございませんで、研究者・研究実施者も開示して差し支えないのか、研究実 施者も開示できるのかというような御指摘を賜っておりますので、開示をするのは診療 を担当する医師であるという規定をここに置きますとともに、その下の(5−2−1− 4)診療を担当する医師は、提供者が希望しない場合には開示してはならないという裏 打ちを担保する規定をここに設けております。  次に(5−2−1−5)、一番下の行でございますが、試料提供者が開示を希望して いない場合でも特例的に開示をした方がよろしいのではないかという事態、倫理審査委 員会に諮った上で対応を考える訳でございますが、先ほど御説明をした開示の原則と整 合をとることで再整理をしております。  以上が第一群、いわゆる単一遺伝子疾患の場合の取り扱いでございます。  次に(5−2−2)第二群、多因子疾患の場合でございます。この場合におきまして は、(5−2−2)にあります「その結果を開示しようとする場合にあっては、第一群 試料等提供者等に対する…」、すなわち開示の原則を守るようにここに記載を付け加え ました。  6「既提供試料等の研究利用」につきましては、基本的に変更はございません。  また、同様に、24ページの7「試料等の保存および廃棄の方法」につきましても、基 本的な変更はなされておりません。  8番の「遺伝カウンセリング」の項でございますが、最初に申し上げたとおり、遺伝 カウンセリングが遺伝子解析研究に付随するという誤解を生みかねないという指摘を受 けておりましたので、その御指摘に対応するために、「遺伝子解析研究における遺伝カ ウンセリングは」というぐあいに、その関係を明示させていただいたところでございま す。  第一群試料等提供者に係る規定でございますが、第一群というのは単一遺伝子疾患で ありまして、事態が深刻であると見込まれることから、研究参加をいただく時点、すな わちインフォームド・コンセントの説明を行う時点におきましても、カウンセリング的 な要素に配慮すべきことを明記したところでございます。  最後に、9番の「見直し」の規定でございますが、今後の事態の推移に合わせて改定 をすることもあるのではないかというような御指摘を賜っておりますので、改定見直し の規定をここに入れさせていただいたところでございます。  以上でございます。 ○高久部会長  説明者用の説明資料はいいんですか。 ○事務局  続けて説明させていただきます。  説明者用の資料というのが第一群から第四群までそれぞれの冊子になっておりますが 基本的な内容は同一でございますので、単一遺伝子疾患を対象といたしまして、第一群 に基づいて御説明をしたいと思います。  まず、第一群の(注)というのがございまして、「以下のイメージは、連結可能匿名 化等一定の条件を仮定して作成してあります」という(注)を加えさせていただいてお ります。  御指摘の中で、例えば連結不可能匿名化の場合に関する規定がないのではないかとい うような御指摘をいただいておりますので、ある一定条件を置かないと、こういうイ メージであろうとインフォームド・コンセントの説明を行う人の注意事項でありますと か、説明文書の例をお示しすることはできませんので、これはある一定の条件のもとで 書かれているのだと、特に人権の保護という観点からいろいろなことが想定されます匿 名化については、連結可能匿名化を前提にしておるということを明示したところでござ います。  説明者用の説明資料は、今御説明を申し上げました指針(案)本文の変更に合わせて 変更をしておるところでございますので、1つ1つの説明は省略させていただきます。 1点、実は指針(案)との関係でまだ整理がついていない部分がございます。直前まで 指針(案)を推敲しておったところでございまして、そういう意味では整合がとれてお りません。(8)「研究結果の開示」という遺伝情報の開示の項がございますけれども、 ここのところが指針 (案) と整合がとれておりませんので、本日の御議論を踏まえて、 指針 (案) が固まった段階で、この説明事項については再度整理をさせていただきたい と考えております。 次に、患者さん用説明文書でございますが、この項につきましても指針(案)の中身 と合わせて整理をしております。具体的には、最初に「遺伝子とは」という表現で遺伝 あるいは遺伝子の説明を試みておる訳でございますが、正直申し上げまして、わかりや すく説明をするというのは非常に難しいところではないかと思います。例えば、この項 の7行目に「『DNA』は、A,T,G,Cという4つの印の連続した鎖です」という 表現がございますが、この「印」というのがいいのか悪いのかというような御指摘を賜 っております。科学的に申し上げますれば、それは塩基であるのは間違いない訳でござ います。かといって、幾つかの一般への書かれた書物を見ますと、「文字」と書かれて いるものがございますが、「文字」というのもいかがなものだろうかと。では、「化学 物質」というのだろうか。「化学物質」といったらまた訳のわからないことになってし まうだろうということで苦労しております。良い表現がございましたら是非お教えてい ただきたいと思います。とりあえずそういう意見も踏まえているということで、「印 (塩基)」という表現をしております。  次に、大きく変わっておりますのは、これも先ほど申し上げました遺伝情報の開示の 項は実は整理が終わっておりませんで、「提供者の代わりに試料等の提供に同意する場 合の特例」、いわゆる代諾した場合の特例というのが整理が終えておりません。最終的 な整理をさせていただきたいと思っております。指針(案)の方で御議論を賜れればと 思っております。  同意文書の例示でございますが、ここにつきましては、説明を受け、理解した項目に それぞれチェックをしていくということ。更に、1つずつ設問をつくり、その設問に 「はい」、「いいえ」、更にその設問ごとに署名をしていただくという方式につきまし て、例えば署名は1回でいいのではないかとか、あるいは、従来の1番から3番までの 規定がわかりにくいというような御指摘を賜っております。しかしながら、署名につい ては、1項目ずつ残す、その方がより厳格ではなかろうかという観点に立ちまして、1 項目ずつ署名していただくという方式を相変わらず採用しておりますけれども、それぞ れの項目については再整理をしております。すなわち、最初に、この研究に使用される ことに同意するかどうかというのをまず「はい」、「いいえ」でいただく。「はい」と いう答えについては、終了したときに、その試料等を廃棄するのか、それとも将来実施 される研究に使用することに同意していただけるのかという選択肢を用意をする。更に 将来使われる研究に同意をいただいた場合においては、バンクへ提供することに同意を していただけるのかどうかということについて御判断をお願いするという形で再整理を いたしております。  以下、二群、三群、四群につきましてもほぼ同様でございますので、1つずつの説明 は省略させていただきます。 ○高久部会長  今、資料1の5から9までと、試料提供者用のインフォームド・コンセントに係る手 続きについて例文を説明していただきましたが、どなたか御質問、御意見をどうぞ。 ○松田委員  指針の方ですが、特に未成年者に関する項目ですけれども、いろいろ配慮していただ きまして、一口に「子ども」と言っていいと思いますが、子どもを研究に参加させる場 合には条件をいろいろ考えていただいていると思います。前回との非常に大きな違いは 前回は16歳というしっかりした年齢があったのに、今回それがされていないということ で、つまり前回のときには16歳という年齢の根拠はどこにあるのかというふうに質問さ せていただいて、御回答いただいたのですけれども、その項目が全くなくなってしまっ ているということはちょっと奇異に感じました。 それから、(5−1−3−3−1)ですが、「原則として、代諾者に対しても開示さ れてはならない」と書いています。そして、その次の項目に「代諾者(親権者として代 諾した人を除く)」と書いています。上の代諾者と次の代諾者は同じものですか、違う ものですか。もしも同じものであるならば、むしろ上の方に代諾者(ここでいう代諾者 は親権者として代諾した人を除く)」というふうに言わないといけないと思います。こ の条文でいきますと、特に親が質問しても、それに答えられない、開示してはならない という大変大きな問題になると思います。その辺のところはどうですか。その2つ。16 歳を外した理由と、私は非常に大事だと思って、すばらしい進歩だと思って聞いていた のですけれども、それが消えてしまって、子どもを診る者としては大変残念に思いま す。もう16歳になったら自分でものを決められる年齢ですから、そこまで配慮していた だいたと思って大変評価していたのですが。 ○事務局 前回、16歳につきまして事務局からお答え申し上げましたが、今回もインフォーム ド・コンセントをいただくときに、未成年者を対象としたインフォームド・コンセント のための手続きにおきましては、16歳というところは設けております。ただ、その結果 の開示を希望する場合につきましては、いろいろな御意見をいただきまして、開示され た結果を踏まえて、その御両親がどういう行動をするかよくわからないという事情もあ り、そのときに、御両親に対する1つの歯どめとして、お子さんの希望というものがも し明確に示されるならば、その後の治療方針ですとか、どういう治療を受けるかという ことについての御両親に対する歯どめとして、お子さんの希望もちゃんと考慮する、あ るいは必要に応じて倫理審査委員会等の意見も聞くようにということを開示の段階で求 めたというのは、インフォームド・コンセントをいただくときには、自分の決定権を尊 重したいと思っています。16歳未満であっても、開示の結果いかんによって、御自身に 返るときに、16歳未満のお子さんに対しましても、診療行為について参加できる機会を 確保しておかないと、そこは単に研究に参加して結果がわかるかどうかという場面と、 開示された結果、それが命に影響するかもしれないという場面ではちょっと次元が違う のではないかという御意見もありましたので、開示に関しては年齢のところは一応除外 するという考え方に立った案をつくらせていただきました。  2点目の御指摘の点につきましては、(5−1−3−3−1)と(5−1−3−3− 2)と(5−1−3−4)のところでございますが、これは法令上の誤りでございまし て、(5−1−3−4)で未成年者である場合に親権者について特別な規定を置いてお りますので、親権者に関しましては、場合によっては、この手続きによらない場合の開 示の手続きをその下に書いておりますので、(5−1−3−2)のところの代諾者には その意味での親権者は入らないということを書き込んだつもりだった訳です。 ○松田委員  親権者は入らないんですか。 ○事務局  (5−1−3−3−2)でいう代諾者には親権者は入りません。 ○松田委員  この場合はいいですね。つまり、開示しないという場合に対しては親権者は入らない のだから、親権者は開示してもらえる訳ですよね。 ○事務局  はい。 ○松田委員  そうなってくると、「原則として開示されてはならない」というところが、ここの代 諾者がおかしい訳で、代諾者の後ろに括弧書きの説明がないとおかしいのではないです か。 ○事務局  申し訳ありません。そこに至りましては誤りました。 ○松田委員  わかりました。できたら、前の方にも代諾者が出てきますね。だから、ここのところ は印を付けてわかりやすくするとかしていただかないと、ほかの場合の代諾者と親権者 とが突然離れてみたり一緒になってみたり、読んでいる方にしては非常にわかりづらい と思います。 ○事務局  わかりました。では、ちょっと工夫させていただきます。 ○松田委員  基本的な考え方はそのとおりで、私も大変尊重したいと思います。ありがとうござい ました。特に(5−1−4−3)の書き方は、小児科の子どもを扱っている者としては 大変ありがたい説明だと思います。 ○木村委員  これは先ほども問題になって、軽部委員からの御質問があった訳ですけれども、一番 最初のオリジナルのドラフトの方は、垣添先生のグループから出てきたのは「将来、遺 伝子解析研究の成果が知的財産権を生み出す可能性があり、その場合、当該知的財産権 はヒト由来試料等提供者に帰属しないこと」ということをはっきり書いてあったのを、 今度の(5−1−4−13) では、生み出した場合の、その権利の帰属先について、ここ には提供者に帰属しないということではなくて、帰属先について、今の事務局の説明に よりますと、研究している人がいわば患者の治療を願って、患者にその権利が帰属する ようなこともあり得るようなお話があった訳ですけれども、そういうこともあり得るの かもしれませんが、具体的な「説明者用説明資料: 第一群用例文」の4ページをご覧い ただきますと、ここのところで一番最初の垣添先生の方からの表現が生かされていて、 ガイドラインの方では消えたのですが、ここでは (9)のところですけれども、「知的財 産権、研究成果の公表」について、「将来、遺伝子解析研究の成果が知的財産権を生み 出す可能性があり、その場合、当該知的財産権は国や研究者などに属し、被験者には帰 属しないことを説明する」というふうに、これは軽部委員が疑問を出されましたが、こ こで帰属しないということがはっきり出てくる訳ですね。 ですから、この点につきましては、いろいろな問題が実際ある訳ですが、私が厚生省 の担当の方にお伺いしたいのは、こういう国で行われた研究に関連して知的財産権が生 じた場合に、ここに「国や研究者」と書いてあるのですが、研究者も国家公務員ですが その場合に国に帰属するということでやってきたのでしょうか。それとも、「国や研究 者」と書いてあるのは、研究者にも帰属するという例が今迄あったのかどうか。この場 合、もし研究者も国家公務員で、国家公務員が研究したことによって国にパテントが生 じた場合には、それは国に帰属するというふうに通常はなっているかと思うのですが、 その点、この言葉はなぜ入っているのかということと、いろいろな訴訟その他がアメリ カでは、特に民間関連の機関でインフォームド・コンセントが十分でないために起きた ケースが出てきている訳ですね。つまり、利益を生み出すことについて、知的財産権そ の他について正確に情報を与えていなかった。何百億ドルという利益が生じたというこ とを後で患者が知って訴訟を起こした訳ですが、基本的には被験者には帰属しないとい うことであって、被験者に帰属するという考え方も先ほどのお考えの中にはあるようで すので、ここら辺のところはいろいろな問題が出てくることになると思います。本文か らは消えた訳ですが、ここで生きている訳ですが、この点についてはいかがでしょう か。 ○事務局  本文とイメージとの関係で申し上げますと、指針に沿って、例えばこういうふうに書 きましょうというのがイメージでございますから、指針で「帰属先」と書かれた以上、 何かのことをそれぞれのイメージの方では書いていかざるを得ない。先ほど申し上げま したのは、恐らくいろいろな研究のやり方があるんだろうと思いますが、ミレニアム・ プロジェクトの場合に、1つには、非常にたくさんの方々から試料を提供していただ く。それを集団として解析をして、例えば1つの遺伝子であるとか、その遺伝子の働き であるとか、そういうものを解明していくということから考えていきますと、知的財産 権の帰属というのが患者にある事態というのはちょっと想定しがたいのかなということ で、まず被験者には帰属しないという説明をするということを決めた訳でございます。  もう1つの御質問の研究者に帰属するという点でございますが、実は今『六法』を持 ってきておりませんので、具体的な法律を申し上げられない訳でございますが、私の記 憶が正しければ、たしか、この5年か10年ぐらいの幾つかの法律改正の中で、一定の比 率で研究者にも帰属すると。もちろん、それは何らかの前提条件があったと思いますけ れども、「国の研究者であっても、一定の条件のもとでは研究者に帰属する場合もあ る」というような法律改正があったかと思いましたので、その条項を受けて「国あるい は国や研究者に属する」という表現になったところでございます。 ○高久部会長 国立でも研究者に権利が帰属する場合がありますし、今までも例があったと思いまし た。 ○木村委員 もしそうだとすると、これは将来のこともありますので、一定の比率で研究者並びに 被験者に帰属することも生じてくる可能性がありますよね。現在カリフォルニアで訴訟 になったケースでは、民間の企業、病院の研究機関が、これは特定できる患者のたった 1人の遺伝子を使ったケースですけれども、今御説明がありましたように、これは相当 広範囲のデータを使うということですので、そういうケースにならないかと思いますが そこら辺はちょっと考えておきませんと、この間、京都大学法律学の位田委員に御説明 をお伺いしたときには、ガイドライン、法律その他でそれを決めれば、それはそうなる というお話ですが、バイオエシックスの考え方からしますと、なかなかそういうふうに はいかないケースもある訳でして、その点につきましてちょっと御検討いただく必要が あるのではないかというふうに私は考えております。 ○国立がんセンター研究所 山口副所長  参考資料として添付されている科学技術会議の基本原則の文案第17条2項で、この点 は非常にはっきりと規定されております。こちらは現在、パブリック・コメント等々が 出されているものですので、この点も含め議論をする必要はあろうかと存じます。 ○高久部会長  現実には提供者に権利がいくことはほとんどあり得ないと思います。科学技術庁から 出ています「ヒトゲノム研究に関する基本原則」では、今、山口委員がおっしゃったよ うに、研究試料の提供は無償、あるいは権利は提供者に帰属しないと書かれていますの で、もちろん参考資料2はまだ最終的なものではございませんが、一応こういう方向に 進んでいるということは間違いないと思います。 ○軽部委員  私も、特許法の範囲から考えますと提供者に所属するはずがなくて、これははっきり しているので、やはりインフォームド・コンセントの問題があって、民間企業が特に特 定地区の住民の遺伝子などを解析するときに、こういう問題がアメリカなどでは生じて いる訳でありますが、基本的には、特許法から見たら、アイデアを出した人が権利を得 る訳でありまして、その試料に依存する場合というのはほとんどあり得ない訳ですね。 ですから、厚生省としても、ある程度はきちんとした態度を示さないと後で混乱が起こ ると思うので、どちらの態度なんですかということを先ほどちょっとお聞きした訳で す。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。まだ御意見があると思いますが、報告の方が2つ残 っていますので、資料1の「倫理問題に対するための指針(案)」の議論はこれで終わ らせていただきます。ただ、引き続き御意見のある方は事務局に文書で提出してくださ い。できれば次回の部会で最終的な報告書にして、「案」を消させていただきたいと考 えていますので、よろしくお願いします。  次に、報告事項に移らせていただきます。まず、「ヒト組織の移植等への利用の在り 方に関する報告書(案)」について、パブリック・コメントの状況を含めて、事務局か ら説明をお願いします。 ○保健医療局臓器移植対策室  臓器移植対策室でございます。お手元にお配りしております資料に沿いまして御説明 をさせていただきたいと思います。  資料3−1といたしまして、「『ヒト組織の移植等への利用のあり方について (案)』に対する意見・情報の募集について」ということで、パブリック・コメントに かけた考え方を付けてございます。それから、資料3−2でございますけれども、パブ リック・コメントとして回答が寄せられた意見を事務局で取りまとめたものでございま す。パブリック・コメントそのものについては今日は資料として配付しておりませんが また後日先生方には配付させていただきたいと思います。それから、資料3−3は専門 委員会における検討経緯、資料3−4が専門委員会のメンバーでございます。  それでは、専門委員会の開催の趣旨でございますが、皮膚や骨などを用いた組織の移 植に関しましては、平成9年の10月に、実は厚生省の通知により、本人または遺族の承 諾を得た上で医療上の行為として行われ、社会的な見地、医療的な見地から妥当と認め られる場合には供されるものであるという基本的な考え方が示されております。この通 知などを踏まえて、現在、幾つかの組織バンク、これは医療機関が単独で行っているも の、それから医療機関が複数で連合体で行っているものがございますけれども、そうい った組織バンク事業を通じまして、皮膚や骨などの組織移植が医療の現場で実態として 行われております。このヒト組織の移植への利用を目的とする組織バンク事業に関しま しては、その倫理的な妥当性ですとか、あるいは具体的な安全性の確保が重要であると いうふうに考えております。これまでは個々の組織バンクの活動に委ねられてきたとい うのが実情でございます。今後、事業の規模が拡大いたしまして、倫理上の問題ですと か、安全性の問題が顕在化することが予想される中で、個々のバンクにこの問題を任せ るという現状を放置するのではなくて、組織バンク事業を行う上で最低限求められる事 項を早急に示すことが緊急の課題ではないかという認識に立って、本専門委員会を設置 いたしたところでございます。 専門委員会の開催状況でございますが、資料3−3にございますように、昨年12月21 日に第1回の専門委員会を開催して、途中でパブリック・コメントの募集を開始しまし て、そのパブリック・コメントに対する検討を含めて、合わせて5回、専門委員会を毎 回公開という形で実施をさせていただいております。  報告書(案)の概要でございますけれども、資料3−1にございますように、まず、 ヒト組織の移植に関する基本原則を7つ立てております。ヒト組織の提供に係る任意性 の確保、無償の提供、ヒト組織の採取及び利用の際のインフォームド・コンセント、ヒ ト組織の提供の社会性・公共性及びドナーの尊厳の確保、提供されるヒト組織に係る安 全性及び移植の有用性の確保、個人情報の保護、情報公開、この7つの原則を基本原則 としております。  個別の項目になりますと、組織の採取に係る項目、それから組織の処理・保存に係る 項目、移植施設への提供及び移植への利用に関する項目、それから移植ができない場合 にドナー側の同意があれば研究及び研修への利用が可能とする項目、それから組織バン クの運営等について記載をしております。  この「あり方(案)」に対するパブリック・コメントでございますけれども、幾つか のパブリック・コメントをいただいておりますけれども、報告書の位置づけそのものに 係る意見といたしましては、組織移植の枠組みについて、指針という形ではなくて法制 化を検討すべきではないかといった御意見をいただいております。それから、報告書の 各章に係る意見といたしましては、ここにまとめましたような意見が寄せられていると ころでございます。パブリック・コメントに関する対応につきましては、2回の専門委 員会で議論をしていただいておりますけれども、現在、その議論を踏まえて最終的な取 りまとめを行っているところでございます。詳細につきましては、報告書が確定した段 階で本部会に御報告をいたしたいと思っております。よろしくお願いいたします。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。今、「ヒト組織の移植等への利用のあり方につい て」の専門委員会での議論の進行状況、それからドラフトのようなもの、更に一般の 方々からの意見などについて事務局から説明がありましたが、どなたか御質問、御意見 がおありでしょうか。 ○木村委員  私は法律が専門で、基本的にはこういうのは法制化という方向でいくべきだというふ うに思っています。いろいろ専門委員会で御検討いただいて、その内容を今日報告を承 ることができまして大変にうれしく思いました。  1つだけお伺いしたいのは、現在、岩尾課長は厚生科学課長ですけれども、岩尾課長 が研究開発振興課長のときに、やはり同じ「ヒト組織を用いた研究開発の在り方に関す る専門委員会」がございまして、黒川清東海大学医学部長が座長となっていろいろやっ たのですが、それとの関連といいますか、あれは創薬との関連で出てきたことかと思い ますが、その専門委員会はじめ、その他がいろいろな形でいろいろな蓄積をしているこ ともある訳でございまして、私も、現在の岩尾厚生科学課長が当時の創薬の担当課長の ときに大変長い時間をかけてやった経験を持っておりますけれども、その点の関連性と いうのはいかがでございますか。厚生科学課長にお伺いしたいのですが。 ○岩尾課長  その節はありがとうございました。今回まとめたものは、ご存じのように、いわゆる 肝臓の組織を利用して創薬につなげていこうというときにどうしようかということを決 めた訳で、その他の臓器も含めたヒト組織の移植の利用というときに、あれをベースに してこれをつくっておりますので、そういう意味では齟齬のないものであるし、また、 矛盾の生じるものにはなっていないというように思っています。要するに、「ヒト組織 を用いた研究開発の在り方に関する専門委員会」では研究者が使う話と開発するメー カーの使うところを最初に分けようという話で、確か議論し始めたというふうに私は思 っておりますので、今度の話は、むしろ研究者を含めて、かなり広い範囲にわたってい るという理解でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。ほかにどなたか御質問、あるいは御意見おありでし ょうか。よろしいでしょうか。  それでは、専門委員会の方の結論が出ましたら、またこの場で具体的にいろいろ御議 論を願いたいと思います。そのときにはよろしくお願いします。  次に「疫学的手法を用いた研究等における個人情報の保護等の在り方に関する専門委 員会」について、これもよろしくお願いします。 ○事務局  資料4に基づき説明申しあげます。  疫学的手法を用いた研究として、コホート研究でありますとか、いわゆるケース・コ ントロール・スタディでありますとか、症例登録、疾病登録でありますとか、いろいろ な研究がなされている訳でございますけれども、これらの研究の実施に当たって、個人 情報保護を含む人権保護への適切な対応を図るという観点から、指針を策定したいとい うふうに考えております。このために、この部会の下に専門委員会を置いて検討を進め させていただいているところでございます。  具体的には、この部会の下に既に3つ専門委員会がある訳でございますけれども、こ れに「疫学的手法を用いた研究等における個人情報の保護等の在り方に関する専門委員 会」というのをつくらせていただいて、3月31日に第1回会合を、昨日、第2回会合を 開いたところでございます。  主な論点となりますのは、インフォームド・コンセントのあり方の問題、また、イン フォームド・コンセントもその一部として成り立つのだろうとは思いますけれども、個 人情報の保護とその適切な利活用の比較考量の問題、3番目としては、カウンセリング 等、被験者等への対応の問題、また倫理審査委員会のあり方、疫学的手法を用いた研究 等の「等」に入るのだろうと思いますが、特殊な症例を報告する、いわゆる学会等で症 例報告と呼ばれている場合の人権保護の問題、このような問題について御議論を賜りた いというふうに考えております。  できますれば専門委員会として指針の案を策定し、更にパブリック・コメントも行い この秋をめどに成案を得たいというふうに考えておりますが、まだまだ議論の行方が見 定まっていない状況でございます。適宜この部会にも報告させていただきますとともに もちろん専門委員会としての指針(案)が得られた段階では、この部会でまた御審議を いただく。その上で、厚生省としての指針を定めていくという方策をとりたいというふ うに考えてございます。  以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。今、「疫学的手法を用いた研究等における個人情報 の保護等の在り方に関する専門委員会」ということで話がありました。この部会の下の 専門委員会の委員長に私がなるというのは少しおかしいような気もするのですが、一応 指名ですので御了承ください。実際に2回の会合に出てみますと、なかなか難しい問題 がたくさんありまして、最終的な案に到達するまでにはまだいろいろと紆余曲折がある と思います。御質問、あるいは御意見がありましたらお願いします。 ○木村委員  疫学のバイオエシックスといいますか、倫理問題については、既にWHO、CIOM S(国際医科学評議会)、その他の国際的な疫学研究機関がガイドラインを策定して、基 本的に世界的なネットワークで動いているという状況がある訳ですが、そういうCIO MSのいわばガイドラインその他についての情報、あるいはWHOの状況なども踏まえ た調査、報告、その他はございましたでしょうか。 ○事務局  その点につきましては、従来から実は厚生科学研究費に基づく研究班がございまして たくさんの資料を集ておりますし、御指摘のCIOMS、あるいはWHOのガイドライ ンを参考にした上で検討がなされております。また、先ほど説明を省略させていただき ましたけれども、専門委員会のたたき台をつくるという意味で、研究班を策定いたしま して、神戸大学法学部の丸山教授を主任研究者といたします研究班での御検討もあわせ てお願いをしているところでございます。 ○高久部会長  確かに、疫学的な研究の場合には国際的な共同研究も当然考えられる訳ですから、W HOとかCIOMSのと合わないとおかしなことになると思います。 ○木村委員  CIOMSのガイドラインをつくった一人として、そのときに問題になったのは、今 部会長の御指摘のように、例えばパキスタンの代表の方が疫学的調査をやる場合に、ど ういう形で国際的な基準に沿って行えるのかということに関連して、文化の差というよ うなこともいろいろ出てまいりましたし、それ以前にもNIHでの共同プロジェクトを やる場合に、インフォームド・コンセントが完全でなければ連邦政府の基金が出ないと いう中で、日本のATL(アダルト・ティーセル・ルケメニア)の研究をある九州の大 学とやろうとしたのですが、日本側ではインフォームド・コンセントがとれなくて、つ まり共同研究が極めて困難な状況になったというような、そういう疫学調査に関連する 具体的な国際研究のいろいろな問題点があるものですから、そういう観点から言いまし て、日本が積極的にガイドラインについて対応し、国際的に取り組んでいこうというこ とは大変結構なことだと思います。  そういう意味では、日本は変わった国、つまりインフォームド・コンセントも非常に とりにくい。例えばアダルト・ティーセル・ルケメニアの場合などは、告知を前提にし た疫学調査が必要になる訳ですが、告知はできないというような状況の中で、非常に変 わった国という印象を与えたということもございますので、そういう点も踏まえた国際 的な展望並びに日本の状況をある程度踏まえた、小委員会、専門委員会での御検討の積 極的な推進を心から願っています。 ○寺田委員  この委員会に出ている一人といたしまして発言させて頂きます。個人情報保護が法律 として成立してしまいますと、疫学的研究、疫学的手法ということは、必ずしも疫学だ けじゃなくて、臨床的な研究、症例報告がすべてアウトになってしまいます。ですから 除外事項をつくるかどうかということで、今、そちらの委員会の堀越委員長がこちらに 入っていただいて検討しているというのが現状です。 ○高久部会長  今、寺田委員がおっしゃったように、個人情報を守る法律ができたときにどうするの かということで、中央大学の堀部教授がそういう方面に非常にお詳しいものですから、 いろいろ御意見をお伺いしながらやっているところです。昨日もかなり活発な議論がご ざいまして、今のところは楽しまさせていただいていますが、これから大変だなと思っ ています。  ほかにどなたか。 ○雨宮委員  当部会の専門委員会を見ますと、遺伝子解析のところから疫学のところまでずっと網 羅されてきたように思いますが、通常、私どもが研究に使わせていただいているヒトの 検体というのは、やはり臨床情報がないと役に立たないものがずいぶん多うございま す。それで、遺伝子解析も非常に大事ですが、その前にもう1つ、一般的なヒトの検体 を扱うということも、臨床情報を付けなくてはいけないということもあって、これをど う扱うかということは私どもの施設でもずいぶん議論されております。その辺のことも 将来的にひとつお考えいただきますとありがたいかなと思っております。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。ほかにどなたか御意見は。 ○入村委員  個人の遺伝情報ということで、先ほど遺伝子というものが説明しにくいというお話が あったように、遺伝子の話が中心になっているのですけれども、昔から誰でも知ってい る個人の遺伝情報というのは、例えば血液型などいうものがございまして、こういうも のは実は、例えば疾病との関係がわかっている訳ですので、ある意味では、これから調 べようとしていることと非常に似たところがございます。だけど、これは気にしないで 調べてわかっている訳だし、これは情報は開示されているような気がします。こういう ものとの関係というとおかしいですけれども、これからこういうものをどう考えていく のかというのも、少し頭の中を整理するために考える1つの材料として大事じゃないか と思うんです。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。ほかにどなたか。  それでは、次回の日程などについて事務局の方から説明していただけますか。 ○事務局  1点、御報告するのを忘れておりましたが、参考資料3をご覧いただきますと、科学 技術会議で検討が進められておりました「ヒトに関するクローン技術等の規制」につい てでございますけれども、前回のこの部会でも検討状況を御報告させていただいたとこ ろでございますが、科学技術庁を中心に法律案がまとめられて、閣議決定もされまして 国会へ提出されましたので、御参考までに御報告申し上げます。  また、次回の日程につきましては、4月28日、午後2時から開催させていただくとい うことで既に御案内させていただいておるところでございますが、よろしくお願い申し 上げます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。それでは、本日の部会をこれで終わらせていただき ます。活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。次回は、是非報告の 形でまとめさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。ど うもありがとうございました。 (了) 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 宮本(内線3804) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171