00/04/13 生殖補助医療技術に関する専門委員会(第14回)議事録                                             厚 生 科 学 審 議 会 先 端 医 療 技 術 評 価 部 会      生 殖 補 助 医 療 技 術 に 関 す る 専 門 委 員 会                 ( 第 14 回 )                 議   事   録                                         厚 生 省 児 童 家 庭 局 母 子 保 健 課            厚生科学審議会先端医療技術評価部会        生殖補助医療技術に関する専門委員会(第14回)議事次第 日 時 平成12年4月13日(木) 15:30〜18:20 場 所 はあといん乃木坂(健保会館)6Fそれいゆ  1 開 会  2 議 事   (1)生殖補助医療技術に関する提言についての説明聴取     ・福武 公子氏 日本弁護士連合会 弁護士     ・光石 忠敬氏 日本弁護士連合会 弁護士   (2)その他 3 閉 会 〔出席委員〕                                     石井(ト)委員  石井(美)委員  加 藤 委 員 高 橋 委 員 辰 巳 委 員 田 中 委 員  丸 山 委 員  矢内原 委 員 吉 村 委 員 ○大平課長補佐  定刻になりましたので、ただいまから、「第14回厚生科学審議会先端医療技術評価部 会・生殖補助医療技術に関する専門委員会」を開催いたします。  本日は、大変お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。  本日は、中谷委員長が検査入院されるということでご欠席でございます。このため、 中谷委員長より、吉村委員に本日の委員長代理をご指名されておりますので、吉村委員 に本日の委員長代理をよろしくお願いいたします。  また、本日の議事であります「生殖補助医療技術に関する提言についての説明聴取」 ということで、日本弁護士連合会の弁護士・福武先生と光石先生にもご出席いただいて おります。ありがとうございます。  なお、母子保健課長が、本日国会の用務がございまして、おくれて出席となります。 ご了承いただきたいと思います。  それでは、議事に入りたいと思います。吉村委員長代理、議事進行の方よろしくお願 いいたします。 ○吉村委員長代理  それでは、私が中谷先生の代わりをさせていただきます。よろしくご協力のほどお願 い申し上げます。  本日は、福武先生、光石先生、お忙しい中、当委員会にご出席いただきましてまこと にありがとうございます。よろしくお願いしたいと思います。  議事に入ります前に、事務局から本日の資料の確認をお願いいたします。 ○武田主査  それでは資料の確認をさせていただきます。  まず初めに「議事次第」、1枚紙でございます。  次に、資料1でございますが、こちらの方は、日本弁護士連合会が3月に出されまし た「生殖医療技術の利用に対する法的規制に関する提言(概要)」でございます。  次に、資料2でございますが、こちらが先ほどの提言の本文でございます。  資料は以上となっております。 ○吉村委員長代理  ありがとうございました。  では、早速議事(1)の「生殖医療技術に関する提言について」のヒアリングを行い たいと思います。  前回の委員会におきまして、事務局からこの提言が配付されました。委員会におきま して、この提言のご説明を受けたいということになりました。以前、当委員会におきま して、福武先生には日弁連における検討の経過をお聞きしたわけですけれども、今回す ばらしい提言がまとまったようでございます。再度、ご説明を受けたいと思うわけであ りますが、私も一読させていただきました。第1章から第5章までございますが、1章 2章は簡単なご説明で結構ですが、3章と5章の提言について、詳しくお話をお聞きし たいと思います。福武先生からご説明お願いできますでしょうか。 ○福武弁護士  福武から説明させていただきます。  まず日本弁護士連合会でどのような検討をしてきたかということについて簡単にお話 しさせていただきます。日本弁護士連合会の中には人権擁護委員会がございます。その 第4部会が医療に関する部会であります。その中で、94年ごろから生命倫理小委員会を 設けて議論を重ねてきました。そして98年から、両性の平等に関する委員会、これは男 女両性の平等に関する委員会です。及び子どもの権利委員会から委員の派遣を得て、生 殖医療プロジェクトチームをつくりました。そこで大体の議論をまとめた上で、第4部 会でこれを承認して、その後、人権擁護委員会で承認をして、その後に日弁連の理事会 で承認をして提言に至ったという経過でございます。  まず何がこの法律的なところで問題になっていたかということを申し上げたいと思い ます。  それは一番大きなものは子どもの権利ということです。つまり生殖医療技術によって 生まれた子どもの視点がどうも今まで欠けていたのではないか。それをきちんと考えな いと今後はこのような医療技術がどんどん進展をして、子どもさんが生まれてきたとき に、その法的地位が不安定になるのではないかというのが最大の点です。2番目が、実 際にこの不妊治療を行うのが女性なものですから、経済的並びに身体的な侵害がかなり 大きいのではないか。それをどのようにとらえるか。その2点でございます。  ページを追いながらいきたいと思います。3ページを見ていただけますでしょうか。 これは、第1章の「生殖医療技術がもたらした法的諸問題」のうち、3、「子どもの法 的地位は権利についての検討の欠如」という点でございます。これにつきましては、子 どもが生まれて生物的な親と法的な親が分離をしてしまうという点で、子どもにとって は生物学的な親を知ることができないと言う点と、それにもかかわらず、実際に生殖医 療の現場で、親子関係の問題などについてきちんと専門的なカウンセリングやインフ ォームド・コンセントが行われてこなかったのではないかという点。それから、実際に 慶應義塾大学のような大きな病院であれば、何らかの形で倫理委員会があるのかもしれ ませんけれど、実際に産婦人科の医院はやはり小規模なものだと考えられますので、実 際には何のチェックも経ないまま来ているのではないかという点。それから、実際に長 野県下の産婦人科の医師が、学会を除名されたとしても、医療行為として同じようなこ とをやっているという点で、登録制度その他についてもかなり実効性に大きな疑問があ るということが、日弁連で非常に危機感を抱いたということでございます。  それから、実情に関しては飛ばしますので、第3章にいきます。12ページをごらんく ださい。  私どもは法律家なものですから、そもそも家族のあり方を決定する権利をどこに求め るかという点が大きな問題になります。つまり自己決定権の問題です。これは憲法13条 が規定する幸福追求権というものがありますが、それに対する解釈がかなり変化をして きました。その中から、プライバシーの権利というものが独立して導かれておりました が、プライバシーの権利そのものは一人でほうっておかれる権利や自分に関する情報を コントロールする権利ということでかなりネガティブなものだった。  しかし次第にそれがより積極的な権利として、自己決定権となってきた。その自己決 定権の中には、自分の生命、身体に関する権利もありますし、家族のあり方を決定する 権利も存在するというふうに積極的になってきているわけです。そして、家族のあり方 を決定する権利の中には、リプロダクティブ・ヘルスに関する権利も含まれると考えら れます。これに関しては、男性も女性も同じように持っている自己決定権であるという ことであります。  ただ、実際にそれが世界的に見て、男性も女性も同等に持っていたかということに関 してはかなり疑問がありましたので、女性のエンパワーメントということで、いわば低 かった地位を同等に持っていこうという動きが現実にかなりありまして、1994年のカイ ロ宣言で正面から取り上げられて、95年の世界女性会議北京宣言に基づく行動綱領の中 で、性と生殖に関する権利として結実したと考えております。  ただ、生殖補助医療を利用するに関しては、リプロダクティブ・ヘルスに関する権利 があるからといって、何でもできるのかというと、やはりそれはそうではないだろう。 特に生まれて子どもは親から独立した意思を持った存在でございますので、それを尊重 することによって、リプロダクティブ・ヘルスに対する制約になる。内在的な制約は当 然あると考えております。  子どもの権利としては何があるかといいますと、1つは父母に養育される権利であり ます。そこでいう父母とは何かという問題が出てきます。これは法律上の父母及び生物 学上の父母が現実に分離することによって発生する問題ということであります。特に分 離したことによって問題になるのは、父母を知る権利が妨げられてくるということで す。つまり、生殖医療技術を使って、子どもが生まれた場合には、法律上の父母しか戸 籍上は知ることができません。そのような中では、どうしても生物学的な親を知りたい と考えたときには、それは子どもにとって、自分のアイデンティティーを確保する権利 なものでございますから、それをないがしろにするのはおかしいのではないかというこ とでございます。  第4、16ページの「子どもの法的地位を確定する必要性」につきましては、父親を確 定する必要があるということです。これは特に日本では血統主義の考えに立つ実務処理 がなされておりますので、実際の生物学的な親子関係がないと言われたときには、父親 からの直接の嫡出否認はできなかったとしても、親子関係不存在確認の訴えというもの がかなり幅広く認められている現状の中では、子どもの地位は覆される可能性があると いうことです。そして母親に関しても、それは同じものではないかと考えております。  では一体どういった形で考えるのが一番いいかというと、1つ法形式の参考として考 えられるのは、特別養子制度であります。これは20ページをごらんください。これも実 際には産婦人科のお医者さんが、1973年に表面化させた事件であります。つまりいわゆ る「実子斡旋」の問題です。それを契機として「特別養子制度」というものができまし た。その一番の中心は、実際の生物学的な親と子どもとの関係を法律的な意味で断ち切 るということを可能にした制度であります。ただ、実際には、形式的には特別養子とい う形をとって、ちょっと見た感じでは実子のようには見えますけれども、探していけば 養子ということがすぐわかりますし、そういう意味では、養子となったものが実際の父 母を探す手がかりというものはしっかり残っております。その上で、しかも実際に養父 母が親としての適格性を欠くというようなところに至った場合には、実際の父母及び養 子の双方からもとの親、実際の親との親子関係をもう一度もとに戻すことも可能である というような仕組みになっています。  ところが実際にはそのような特別養子制度は余り使われておりません。それは21ペー ジの表を見ていただければわかるのですが、当初、昭和63年には1747件の申し立てがあ ったのに、平成10年では 472件ということで非常に少なくなっております。それの原因 は余りはっきりいたしませんが、2つやはり考えられて、1つは少子化、子どもの数が 少なくなっているということと、もう一つは、生殖医療技術が進展して、自分の子ども を持つことが可能になってきたことが大きな影響を及ぼしているのではないかと考えて おります。  次に第4章、「各国における法的対応」というものを見ていただきたいのです。  私どもが検討したのはやはり外国との比較です。特に先ほど申しましたように、日本 において、産科婦人科学会で会告が出て、その会告どおりに行われなくて、いわばそれ に違反した場合に、除名されても、なおかつ医療行為が行うことができるという状況と 世界各国ではどのように違うかということの調査をいたしました。  それによってわかったのは、生殖医療技術にかかわる政策は、27ページをごらんいた だければわかると思うのですが、家族、親子・夫婦という社会の基本的な単位を対象と いたしますので、非常に社会の意思形成過程によって差が出てくるということでありま す。  もう一つは、医者という職能集団がどのような団体になっているかということも大き な問題です。つまり職能集団が強制力を発揮できるようなところであれば、そこでの自 主的な管理というものが非常に有効になります。しかし、もしそれが任意団体で、そこ からの排除が、医者の資格を奪うというところまで及ばない場合には余り有効な手段に はなっていないということです。  それから、国によって随分差があるのですが、法律で規制するのか、それとも何らか の社会的な職能集団のガイドラインで規制するのかということも随分差があるというこ とがよくわかりました。  ということで、27ページに書きましたが、医者の職能集団の法律的な性格の違いが随 分大きいのだということが私どもにはよくわかったのです。ドイツにおいてもイギリス においても、フランスにおいてもアメリカにおいても、医師は強制加入団体ですので、 そこでのガイドラインがかなり有効である。そして、その医師のガイドラインに重きを 置いていくやり方と法律でドイツのように規制していくやり方とそれは両方あると思い ます。  むしろ日本では、ある程度緩やかな形にせよ、とにかく法律的なものをつくって、実 際のガイドラインは別個につくっていった方がいいのではないかと私どもは考えまし た。その結果つくったのがこの提言でございます。  51ページをごらんいただきたいのですが、まず提言1としては、「生殖医療法を制定 する」必要があるということです。これは、まず目的を定めることが大きな課題です。 これは生殖医療技術そのものにつきましてプラス面があります。と同時に濫用されると いう面がありますので、それの規制をするということでございます。そうすれば、それ に伴って、民法その他関連法規も同時に変えなければいけないというふうになります。  提言2は「生殖医療管理機関と生殖医療審議会の設置」するという2つです。特にこ の管理機関の参考としては、イギリスにおけるHFEAを参考にいたしました。ここで は政府の登録認可機関であって、そこが任務、次のところに書きましたけれど、生殖技 術を使うことができる医療機関を認可する。そして、それは機関と同時に、医師その者 をも認可する。そして、毎年1年1回に報告を受けて調査を行うということです。  そして、報告させるということで、認可を取り消すというペナルティーを科すことで きちんとした生殖医療技術を行わせることが可能になると考えております。  それから、管理機関は審議会というものが横につきますので、審議会が決めたガイド ラインに従わせるというような形で力を持つことが可能になるということです。  審議会につきましては、2つ考えました。1つはガイドラインをつくるということで す。つまり法律で全部決めるわけにいきませんので、そこでガイドラインをつくる。と 同時に、例えば第三者の精子、卵子の提供を受けるケースについては、審議会そのもの が、大規模な医療機関における倫理委員会的な役割を持って、是非を審議して決定をす るところまで審議会が行うべきではないかと考えました。  これは先ほど述べました日本の生殖医療技術を使っているところが、小さな医療機関 であって、倫理委員会的なものを持つことができないというところから導きだしたとこ ろであります。  次に提言3としては「情報の一元的管理と子どもの出自を知る権利の保障」です。  これは情報の一元的管理を行わないと子どもの出自を知る権利は保障はされません。 先ほど述べました特別養子制度では、戸籍をよくよく見れば産みの親までたどることは できます。しかし現在、生殖医療技術を利用して、例えば第三者の精子又は卵子を使っ た場合には、それはどこにもあらわれません。戸籍上何も出てきません。生殖医療技術 を使った医療機関のカルテに残っているだけであります。そうすると、例えばそこが閉 鎖するとかどこかに統合されるとか、あるいはカルテだから5年で廃棄されるとか、そ ういう話になった場合にはたどる余地がなくなるわけです。それでは子どもの出自を知 る権利は保障されませんので、一元的な管理をする機関として管理機関が必要であると いうふうに考えております。それは全国に1つつくれば大丈夫ではないかということで す。  そのためには、まず「子どもの出自を知る権利の保障」というのを53ページに書きま したけれど、自分が成人をした、あるいは未成年の場合でも、何らかの事情によって、 自分のために妊娠・出産の記録を閲覧することが必要になった場合には、その子どもに 対しては記録は開示されなければいけないということと、それから、その内容としては 精子又は卵子の提供者に関する記録は、やはりどこのだれというところまで開示される べきだと考えました。  それから、提言4といたしましては、「精子・卵子・胚の一元的管理と保管」です。  これは物理的な意味で全部管理機関が保管するという意味ではありません。これは情 報を一元的に管理するという意味です。  提言5としては「生殖医療技術利用者の条件」としては、これは随分はっきり言いま すと議論があったところです。婚姻関係にある夫婦または事実上婚姻関係にある夫婦に 限るというのが日弁連の現在の提言でございます。独身者でもいいのではないか、ある いは同性愛者でもいいのではないかという意見もあることはありましたけれども、日本 の現在の状況においては、そこまで考えるのは時期尚早であろうというところで、婚姻 関係にある夫婦または事実上婚姻関係にある夫婦というふうに限りました。  次に提言6につきましては、「第三者の精子・卵子を利用する際の厳格な条件」とし ては、まず夫婦側の条件としては、カウンセリングは不可欠であるということと、同意 をしたということを明確にするために、公正証書による同意書を作成するということで す。  それから、法律上の夫婦に関しては、出産の届出をすれば、父は推定されますけれど 事実上の夫婦に関してはそれはありませんので、胎児認知の義務付けまで必要になると いうふうに考えました。  そして、同意書の管理・保管は、一元的な管理機関が管理をして、必要があれば、子 どもに対しては開示をするということにいたしました。  それから、提供者の側の条件といたしましては、これは医療機関による検査が必要で すし、さらに生まれる子どもの数の制限をするということで統一的な管理が必要である と考えました。  提言7は「カウンセリング制度の確立と義務付け」でございます。   これも日弁連では非常に気にしていた点であります。つまり小規模の医療機関にお いて、どの程度カウンセリングが独立して行われていたかに対しては大きな疑問を持っ ております。したがいまして、施術をする医療機関とは別個独立のカウンセリングが必 要であるということです。  提言8については「インフォームド・コンセントの義務付け」です。  これはかなり医学的な意味での、体に対する影響が大きいものですし、特に卵子提供 を行うことに関しましては、卵子提供者に対する身体的な負担も大きいですから、それ はきちんとインフォームド・コンセントを義務付けるということが提言であります。  提言9、これが「子どもの地位」です。  精子の提供を受けて出生した子どもについては、その技術を利用して出産した妻の夫 とするということです。これは今の民法が「推定規定」となっているのと比較して、こ れは「みなし規定」です。つまり父親とみなすということです。  それによって、精子提供者と出生した子どもとの間には、養育義務、扶養請求権、相 続関係などの親子関係は原則として発生しないということにしました。では例外は何か という問題がありますが、これについては特にきちんと詰めていることではありませ ん。ただ、100 %切ってしまうことが妥当かどうかについてはかなり議論はありまし た。  それから、提言10、母親との関係ですが、「子どもの母親は出産した女性とする」と いうことで、これもみなし規定を置くべきではないか。つまり第三者の卵子をもらって 出産した場合には、出産した人が母親になります。  ただ、自分の卵子を別の女性に移植することによってということについては、代理母 及び借り腹については禁止することにいたしましたが、ただ、禁止をかいくぐって、な おかつ出産した場合については、母親は出産した女性とみなしておく、あとは養子縁組 その他で対処するということにすべきではないかと考えております。  提言11に関しては「代理母及び借り腹、胚の提供は禁止する」ということにしまし た。  これは女性が実際に妊娠し出産をすることに対して、その女性に与える影響が大き過 ぎるということですし、商業主義に発展するおそれが多いということで禁止することに いたしました。胚の提供に関しましては、これは議論はありました。第三者から胚の提 供を受けることについては、余剰胚だったらいいのではないかという意見もいろいろあ ったのですが、実際には依頼者男女のいずれとも生物学的な親子関係がないわけです。 つまり 100%養子ということになりますので、そこまで生殖医療技術として認めるのは どうなのかということで、現時点ではやはり禁止されるべきではないか。ここに提言で 置きましたが、「時期尚早である考えられる」ということですので、何らかの条件が今 後整っていく、あるいは社会的な許容度の変化があれば、それはその時点で考えるべき であろうというふうに考えました。 提言12は「多胎減数手術の条件整備」です。 これは妊娠中絶と同じ条件で行うことがやはり妥当だろうと思います。妊娠中絶が日 本ではほとんど野放しになっているという問題がありますが、一応それは置いておきま すと、母体に対して影響があるということですから、母体保護法を改正することによっ て、多胎減数手術の条件整備は可能であろうと考えております。 提言13は「商業主義の禁止」です。 第三者から精子や卵子の提供を受けるに当たっては、実費などの金額を除いて、有償 を禁止するとしました。ただ、これについても結構議論はあります。というのは、卵子 の提供を受けるについては、実費は一体何なのかという問題点が出ますので、そこにつ いては、きちんとそこまで具体的に詰めているものではありません。 精子、卵子の授受の斡旋を有償で行ってはならない。これは大体どこの外国の法律で もそのようになっておりますので、それは規定すべきである。 代理母や借り腹の斡旋を有償で行ってはならないというのも商業主義の禁止として行 われるべきだと考えております。 提言14、「刑罰」に関しましては、認可を受けない医療機関が生殖医療技術を使用し た場合及び認可を受けた専門医以外の人が行った場合には、刑罰を科するということで 刑罰規定を設ける必要がやはりあると考えております。  秘密漏洩については、これは刑罰を科す。  商業主義の禁止に違反に関しては刑罰を科す、そこまでは必要だと考えております。  ですから、提言についてもいろんなレベルの提言がいろいろ入っておりますので、い ろいろな議論もあろうと思いますが、日弁連としては、現時点ではこのような形がよい のではないかということで提言をまとめた次第です。  簡単ですが、報告はそのぐらいにさせてください。 ○吉村委員長代理  どうもありがとうございました。生殖医療技術の利用に対する法的規制に関する提言 について、大変わかりやすく要領よくご説明をしていただきました。内容的には、法的 規制の必要性から始まりまして、各国の法的な対応、提言ということでお話をしていた だきました。  ご質問をこれから受けたいと思いますが、この中でお読みになって、何かここは事実 とは違うとか、そういったところがもしありましたら。  私ちょっとあるので言わせていただきたいのですが、私、自分の大学の名誉にかかわ るものでちょっと間違っていることがありますので。 ○福武弁護士  失礼いたしました。 ○吉村委員長代理  7ページ、AIDなんですが、「同病院では、学生等が」というふうに書いてあるの ですが、これは私たちはドナーの匿名性を守っておりますので、これは削除していただ きたいと思います。  それと、「ドナーの特定を避けるために複数の精子を混合てし行うこともある」とい うのは、私が医局が入ってから26年たちますが、こういうことは一切やっておりません ので、ここも削除していただきたい。  それから、各箇所いろいろあると思いますが、体外受精は手偏は入りませんが、顕微 受精は手偏が入ります。(正・顕微授精)です。それだけ直していただきたい。  それでは、大変よい機会ですので、さまざまなご質問あるかと思いますが、フリーで どんなことからでも結構ですが、1時間ちょっとありますので、ご質問していただきた いと思います。 ○田中委員  今までの話の中で先生のお話は非常にわかりやすくて、これから先の展望が開けるの ではと思っております。はっきりとお聞きしたいのですが、管理機関というのは一体こ れは何を指しておられるのでしょうか。年に1回だとかそういうのであれば、日産婦の 理事会とどう違うのか。  それから、不妊の治療が今まで管理下におかれずに行なわれてきた理由の1つは、不 妊治療が保険診療になっていないことにあると思います。不妊治療は正規の診療でない という考え方があるのではないでしょうか。保険適用外の診療だから自由にやりなさい とか、余り学会も細かく言わない。ですから、もしもこれほど厳しく不妊治療に対して 法を制定したりいろいろ制約をするのであれば、不妊症の治療に保険を適用してほし い。保険適用になるということは、不妊治療に対する見方が変わると思いますから。  それと管理機関というのは一体だれの力で任命され、だれがなって、その人達はどう いう場合に招集できるというんですか、我々一般医師がこういうことを検討してほしい と言えば、いつでもしてもらえるのか、その辺がはっきりしてもらわないと、今の日産 婦の理事会とどういう差があるのかよくわかりません。 ○吉村委員長代理  まず管理機関というのはどういうようなイメージを持っておられるのかお願いいたし ます。 ○光石弁護士  これは国立の機関としてイメージされておりますので、税金で運用するということに なろうかと思います。したがって、今の学会のそういう機関とはちょっと違うと理解し ております。 ○田中委員  裁判所みたいなものですか。 ○光石弁護士  いや、そうではないんですけど、ここにありますように、ライセンシングをやって、 下支えをしていただくと。余りひどいような場合には資格を取り消してもらうとか、そ れとガイドラインをつくって、イギリスのようなコード・オブ・プラクティスのような もっともっと柔軟な規範を少しずつ少しずつ形づくっていってもらいたい。そういう意 味で、そういうものを審議会を招集してやっていくと。 ○田中委員  それはどこが招集するんですか。 ○光石弁護士  管理機関です。 ○田中委員  管理機関はどこに属するんですか。 ○吉村委員長代理  国だと思います。 ○光石弁護士  国。ですから、それは生殖医療法という法律をつくりますから、その法律に基づいて 設置する。 ○田中委員  厚生省という意味ですか。 ○光石弁護士  それは何省というのは、実は今厚生省の管轄と科学技術庁といろいろ入り乱れていて それ自体、私ども大変問題があると思っています。それは後で申し上げようと思ってお りましたけれども、ですから生殖医療というと、何も厚生省だけではなくて、今盛んに 問題になっているようなヒト・胚の問題も含めて広い意味で生殖医療に入ってまいりま すから、従来のような厚生省、科学技術庁とはいかないのではないかと思っておりま す。 ○吉村委員長代理  田中先生、管理機関はそんなイメージでよろしいですか。 ○田中委員  今は卵子の提供、借り腹が問題になっていますけれども、もっとびっくりするような ことが不妊症の治療法として将来出てくる可能性あると思います。例えばクローン。例 えばドネーションがだめになれば、自分の体細胞を使えばいいということになるかもし れない。ドナーのプライバシーが公開されるのであればドネーションは期待できない。 となると自分の細胞を使うという考え方が自ずと芽生えてきます。次に来るのはクロー ンだと思うんです。自分の体細胞はみんな持っていますから、卵子ができない人は自然 に体細胞へいく。そういう方向に行く可能性もないとは言えない。  だから今の時点で論議しているほかに、これから先いろんな新しい予知のできないよ うなことが出てきたときに、それに敏感に正確に反応してもらえる管理機関であってほ しいと願います。それが今までと同じようなもので、それに関しては機能しないような 会であればかえってマイナスになる。かえって、今度ペナルティーがつきますから、 我々一開業医にとって一番やりたいことは、ある程度自由な診療といいますか、そうい う雰囲気はやはり残してほしいんですね。がんじらめになったようなものではなくて、 そういう部分を十分理解していただいていくような審議会であれば、私は大歓迎です ね。  そこへの人選といいますか、機関の機能といいますか、そういうものをよく理解して いただいて、今までの厚生省のエイズ問題とかいろいろ見ていますと、とても信用でき ないですね。 ○吉村委員長代理  その問題は別に置いておいて、ちょっと論点が違ったようなので。では保険診療に関 してはどういうように。 ○光石弁護士  保険診療にするかしないかというのは、1つには医療行為が実験的段階から次第次第 に日常診療へ移っていくことがあって、それがある程度のところまで来ると、保険診療 の適用になると理解しているのですが、そういう意味では生殖医療というのは、最初か ら顕微授精にしてもそうですが、かなり実験的な段階があって、それが端的に言えば 「治療」という言葉を使うことによってどんどん実際行われていた。そういう意味では 臨床研究の一分野だった時期もあるし、また幾つか行われている中にはいまだにそうい う段階にあるのもあるだろうと思います。  したがって、本当はそういう実験段階にある臨床研究段階のものは、きっちりそうい うこととして、被験者の権利がプロテクトされるようなシステムが必要だったわけです けれども、現状になってみますと、いわばなし崩しにどんどん行われていますから、も ちろん中には実験段階を脱しているものもあります。だから、それを社会が、もうそれ は通常の診療ですよというふうに認めて、保険適用することは大いにあり得ると思うの ですが、そのためには、実際に生まれてきている子どもの、そういった法的な地位、子 どもの権利、女性の権利、そういったインフラの整備をした上でないと、なかなか社会 としてという、そういうふうに考えます。 ○吉村委員長代理  わかりました。そのほかございますか。 ○福武弁護士  今のことでよろしいですか。 ○吉村委員長代理  どうぞ。 ○福武弁護士  保険の関係はよく出てくるのですが、1つは、夫婦間で子どもをつくるという話と、 第三者の精子又は卵子を使うということは別問題だという意識はかなり強いんです。つ まり、第三者のものを使うということは、治療の範囲とは別ではないか。そうすれば、 そもそも不妊治療の範囲ではないのではないか。これはどこかから養子をもらうとか、 それとほぼ等しい話ですから、そういったことがあるものですから、保険適用というの が、どこの範囲までやるかということについてはかなり疑問を持っております。 ○吉村委員長代理  そのほかございますか。どうぞ。 ○辰巳委員  どのあたりまでを法律で決めて、どこからをガイドラインにするか、どのようなイ メージを持っておられるか、お聞きしたいと思います。 ○光石弁護士  私どもでディスカッションしているときに、生殖医療法というものをまだ確定したわ けではないんですけど、そういうものもイメージしながらやっておりまして、法律で決 めることというのは、必要最小限のことに限られるだろうと思うんです。たまたま我々 で議論した、当然のことながら管理機関のことですね。管理機関のいわば構成であると か、そういうものは決めなくてはいけないし、管理機関の任務としてのガイドラインの 決定、ライセンシングのこと。  大体この提言で書いてあるような、第三者から精子、卵子の提供受ける場合のどうい う条件にするというようなことが大枠は法律で決めざるを得ないのかなと。しかし、ど んどん動いていくと思われる、例えば一番難しいのは、先ほどの夫婦に限るのか事実上 の結婚もいいのか、そのあたりがどう法律で決めるのかというのはなかなか微妙な問題 かなと思いますけれども、いずれにしても、法律で余りがんじがらめにするつもりはな くて、最低限子どもの権利、子どもの法的地位、女性の権利をしっかりと保護する。そ の限度では法律で決める。だから出自を知る権利も、これはやはり法定事項かなと。 ○吉村委員長代理  丸山委員先生何か。 ○丸山委員  出自を知る権利が出てきましたので、それについてお尋ねしたいのですが、比較的詳 しく書かれているところは16ページ中ほどですね。上から15行目ぐらいでしょうか。 「子どもにとって、生物学的な親である提供者を知ることは、一般的な知る権利の一つ であるというよりもアイデンティティ(自己同一性)の確立にとって必要である」。そ の後、近親婚防止のことが書かれているのですが、近親婚の防止はさて置くと、アイデ ンティティの確立にとって必要だというご主張だと思うのですが、ちょっと抽象的で、 こちらのアンテナも悪いのですが、よく意味が把握できないんですね。もう少し具体的 といいますか、出自、遺伝上の親を知ることでアイデンティティの確立、子どものため になるという道筋を説明していただければありがたいと思います。 ○光石弁護士  やっぱり遺伝的なことというのは、自分自身の経験を振り返ってみても、親と子ども の間に何か容貌であるとか動作であるとか、性格であるとかいろんなところが似ている とか似ていないということでだんだん成長していくと。ですから1つひとつの日常生活 の中で、そういうつながりを子どもが確認したりしていくということが、いわば自己確 認の機会が与えられるということだと思うんです。それが極めて子どもの生育にとって 大事なことだと思っています。  したがって、自己確認の機会をよほどの理由がないのに奪うのは、これはそういう子 どもの権利を侵害することになるのではないか。 ○丸山委員  そうなりますと養子の場合とか特別養子の場合は、特に特別養子でしたら、一たん親 子関係切れた人と確認をまた続けるということになりますですか。 ○福武弁護士  親子関係を切るかどうかということと親を知るということは同じだとは考えてないん です。つまり親子関係があるというのは、親に対して何らかの要求をする、あるいは親 を扶養するとか、そういった権利義務関係が出るのですが、親がだれであるかを知ると いうことは子どもにとって必要であると考えているんです。  ドイツのように、子どもが親を知る権利があって、親に対して扶養請求権もあるのだ とか、いろんな議論ももちろんあるのですが、そこまで考えているわけではないです。 ○丸山委員  特別養子の子どもだったら、現在の養親ではなくて、産んでくれた遺伝上の両親の方 との関係を養子縁組をしてからも確認しながら成長するということになりますか。 ○福武弁護士  もしどうしても知りたいのだったら知る手段はあるということですね。ただ、それで も特別養子になっていれば、例えば、この人が自分の産みの親ですよということがわか ったとしても、親子関係が復活するわけではありません。 ○丸山委員  なるべく出自を知る権利を詳しく見ておきたいものでもう少しお尋ねしたいのですが 児童の権利、子どもの権利に関する条約の7条1項に子どもは「できる限りその父母を 知りかつその父母によって養育される権利を有する」とありますが、この「父母を知 り」というのは、必ずしも遺伝上の父母というふうに理解する必要はないのではないか と思うんですが、その点いかがですか。 ○福武弁護士  それはおっしゃるとおりです。もともと子どもの権利条約、この第7条が出てきたの は、親と子どもが離れ離れに生活せざるを得なくなった、例えば戦争だとかいろんなこ とで。そういう場合には子どもは親を知る権利があるということで、子ども自体をユニ セフにしても何にしても子どもを大事にしてちゃんと権利を守っていこうという話にな っているんですね。ただ、「父母を知り」ということについては、やはりそれが、例え ば自分を育ててくれた親がいた。だけど、それ以外に本当に生物学上の親がいるとした ら、そこまでをやっぱり保護するというのが子どもの権利条約の趣旨であるというふう には考えています。 ○丸山委員  続けてよろしいですか。事実婚でもいいかというあたり。 ○吉村委員長代理  ちょっと出自で。 ○加藤委員  イギリス方式が紹介されておりますけれども、その場合にはいわば合理的な根拠に基 づいて、自分の判断に資する。例えば婚姻関係を結ぼうとするときに近親婚にならない かどうかとか、その限度で知るということであって、だれが本当の親であるかという固 有名詞、どういう顔した人だとかということまで知る権利をイギリス方式では認めてい ないのではないかと思うんですね。 ○福武弁護士  現在ではそうですね。 ○加藤委員  ええ。それとこの方式ですと、私の言葉で言うと、合理的な理由というのは、婚姻、 遺伝病を回避するための合理的な根拠もあって、親を知りたいという場合で、もう一つ は、自分の親がだれだれかわからないということは不安であるとか、どういう人なのか ともかく知りたい、ある意味で合理的で必ずしもないような理由で自分のアイデンティ ティを知りたいという場合に、それを権利としてもし認めるならば、精子の提供者の何 まで教えなければならないのかということですね。 ○光石弁護士  前提として合理的なとおっしゃる意味がちょっとよくわからないんですが。 ○加藤委員  例えば近親婚を回避するとか、あるいは自分の遺伝病についての情報を得たいとか。 ○光石弁護士  それはわかります。そうではなくて、生物学的な親を知りたいというのは、別に合理 的なことではないかもしれない。 ○加藤委員  2つ場合があると私は考えて、合理的である場合には、イギリス方式で、これは近親 婚にはなりませんという返事をすれば、出自を知る権利について、その機関は満たした ことになるけれども、このアイデンティティの権利であるとするならば、必ずしも合理 的な理由がなくても親を知りたいという要求を満たさなければならない。その場合に、 親の何を知らせなければならないのかとお聞きしているんです。 ○光石弁護士  ですから、それはさっき提言にありましたように、住所、氏名まで当然知らせなくて はいけないと。イギリスのことですけれども、イギリスは少し動いている、議論が非常 にあって、そういうことで、子どもの権利がいいのかという反省があるというふうには ちょっと聞きましたが、したがって、固定はしてないと理解しています。 ○丸山委員  フランスのような制度はどう評価されるのですか。知らさないという。 ○福武弁護士  もともとフランスは父を捜索してはならないというのが民法上の話としてあったんで すね。つまり親子関係というのがもともと育ててくれた人が親であればいいのだという ような発想がかなりあります。そこは日本とはかなり違っているのではないかと思った んですね。 ○吉村委員長代理  日本と違う。 ○福武弁護士  日本は血統主義でそこが違うと思っています。フランスの人たちがどのように考えて いるかはよくわかりませんが、社会制度としては随分違っている。国によってそれぞれ イギリスもフランスもドイツもアメリカも全く違う。日本はどのような方向が一番いい のかというふうに考えるべきではないかと思っているんですが。 ○吉村委員長代理  この先生方の提言を見せさせていただいて、非常に「子どもの権利」というものが織 り込まれている。それは非常によくわかるんですが、例えば生殖医療を受ける人間が、 そういうことをしたということを知られたくないという権利もあるはずですよね。これ は全く盛り込まれていないような感じがするんですね。それとドナーが匿名であるとい う権利も、ここでは全く否定されているような感じがするんですね。  ですから、この3つの権利のうち、この提言だと「出自を知る権利」、子どもの権利 だけが非常に前面に押し出されている感じがします。ドナーの権利、ドナーの匿名性の 権利も全くなければ、親が子どもに対してそういうことをやったということを知られた くないという権利、不妊症の人たちが悩んでいる、例えば自分に精子がない人が、自分 は精子がないということを知られたくないと子どもに対して思う権利もあると思うので すが。そういうものは出自を知る権利によってすべて抹殺されてしまうような感じがす るんですね。 ○光石弁護士  それらの権利はいずれも同列にはないだろうというのが我々の理解なんです。やはり 利用者が知られたくないという権利があると思いますが、しかし、それはほかの子ども の権利とか、そういうものによって覆される部分があってもやむを得ない。それから、 ドナーの匿名性の権利も覆されることはやむを得ないと。子どもにとってはひょっとし たら一生の問題です。自分の本当の生物学上の親がどうなんだというようなことは。し かし利用者にとっては、人生のごくわずかな時期に子育てに熱中すると。それは楽しみ かもしれません。しかし、それによって生まれてくる子どもの一生を左右していいのか と。やはりそこはおのずと同列にないのではないか。一番ベースのところには、生まれ てくる子どもの人権というのがあるのではないか、そういう考え方です。 ○吉村委員長代理  そのときには、利用者に対しても出自を知る権利があるということを厳密に言ってい かなくてはいけないですね。 ○福武弁護士  そういう意味ではカウンセリングについてはきちんとやるべきだと思っています。 ○吉村委員長代理  そうですね。そういう利用者は、当然のことながら極端に少なくなるということです ね。 ○福武弁護士  その辺はどうなのかとは思いますが、ただ、今までの生殖補助医療技術を利用して子 どもさんが生まれてきて、子どもさんの立場からどうこうというのは、日本では余り表 には出ていないんです。ただ、外国ではかなりそれが表面化している面もあります。子 どもに対する考え方が随分違うかなという気はいたしますけれども、そうしたときに、 別個独立の人生を歩む子どもですから、その子どもにとって知らせない権利というのが あったとしても、子どもがもし何らかの形で知りたいと思ったら、そちらを優先すべき ではないかというのが私どもの基本的なスタンスなんです。 ○吉村委員長代理  大変よくわかりますけれども。 ○田中委員  まず1つは、「子どもの出自を知る権利」ということを盛んに言われておりますが、 この世界的な大会で子どもの権利を宣言した背景には、多分難民だとか大きな戦争で自 分がどこで生まれたのか、どこの親から生まれたかがわからないという様に、子どもの 権利と福祉を守ろうという考えがあったのではないでしょうか。私たちが今治療しよう としている患者さんが子どもをつくろうとしている子どもとは全然違う様な気がしま す。自分がどこの国のどこの人種の子どもなのかわからない。そういう子どもが自分の 出自を知りたいということと、我々が今治療している、親がちゃんといてちゃんとした 環境の下で育てようとしている子どもとを同じ様に考えていいのでしょうか。  それともう一つ、私はあなたの言っていることは反対ですね。やっぱり子どもの権利 権利と言いますけれども、いま目の前に生活している夫婦が子どもを得たい、そして責 任をもって育てたいという気持ち、権利、ご夫婦の為に匿名ならばお手伝いしましょう というボランティアの方の気持ちよりも、子どもが生まれてきてその先、親またはボラ ンティアにとって知られたくない部分を知りたいという権利の方が上だとおっしゃるの でしょうか。  あなた方が言っていることがもし正しいというのであれば、非配偶者の精子や卵子を 用いた治療は実際には行えなくなってしまう。そうすると、夫婦以外でできないものは いいじゃないかというふうになってくるような気が私はします。 ○光石弁護士  後半の反対の点はそれでいいんですが、前半の部分の難民の場合とか、それは必ずし もそうではないのではないか。やはり子どもの権利条約で言っている子どもの権利は、 そういう特殊なことではなくて、もう少し一般的な権利だと私どもは理解しています。 ○田中委員  それはわかるんですけれども、余りにもそれにこだわり過ぎないですか。 ○吉村委員長代理  ほかの先生方、どうぞ。 ○石井(美)委員  子どもの出自を知る権利ということを強調されるということは、親は子どもにこうい う形で生まれたということを知らせるべきである。それを法的に義務づけるのかどうか というのが1点です。出自を知る権利、子どもが知りたいと思ったときに知らせる態勢 を作っておくという考え方に賛成ですけれども、実際は親は知らせないから、結局有名 無実ではないか、絵にかいた餅だという意見もあるので、その点をどう考えていらっし ゃるのか。  もう一点、価値判断として、子どもの権利を保障するために匿名性を否定し、提供者 が減ってもよいという判断をとられる。この提言はそういう立場に立ってらっしゃると いうことなのかどうかということです。 ○光石弁護士  後半については、いいというか、やむを得ないというのが、私どもの共通の認識だと 思います。いいとは思いませんがやむを得ない。  前段の件について言うと、少なくとも養子制度は子どものための制度です。だから、 子どもの幸福とか子どもの保護が中心にしてでき上がっている制度だと理解していま す。  ところが生殖補助医療というのは、大人のカップルのためのものですから、それを大 人のカップルの意欲や希望だけでは不十分であると。やはりそこに存在しない、これか ら生まれてくる子どもを一番尊重しなくてはいけないと、こういうふうに考えて、養子 とはそこが根本的に違うのだと、こういうふうに私どもは考えました。 ○石井(美)委員  質問の意味は違うんですけれども。 ○福武弁護士  要するに言うかどうかですね。 ○石井(美)委員  そうですね。親は子どもにそれを言わなくてはいけないのか。 ○福武弁護士  別に言わなくてはいけないということはないです。 ○石井(美)委員  ではないんですね。 ○福武弁護士  それは養子制度の問題なんですね。養子制度に関して、なぜ、特別養子制度が出たか という……。 ○石井(美)委員  特別養子については、早い段階で親は子どもに養子であるという事実を知らせるべき であると一般的に指導されていると認識していたのですが。 ○福武弁護士  だれがですか。 ○石井(美)委員  特別養子制度をすすめる方……。 ○福武弁護士  そういう話ではないんです。少なくとも弁護士の方の感覚としては、特別養子制度に せよ、普通の養子制度にせよ、親が子どもに言う義務があるというふうには考えていま せん。特別養子制度の方は、一見して実子のように見えるような形の戸籍をとってい る。ただし、それはよくよく見れば、1行ちょろっと書いてあるので、ずっと追っかけ ればそれは特別養子だということはわかるということです。 ○高橋委員  子どもが生物学的な親を知る権利が行使されるときに、その調査として、まず医療機 関に行って、そこから調査が入ると思うんですね。医療機関に、私の親はどういう住所 の方でどういう方か。そのときに、医療機関に届けているドナーの住所とかそういうも のが、もしも間違いとか誤り、自分で意識して別な住所を書いたりしたときに、それは 実際はわからなくなっちゃうのではないかと思います。そうするとドナーは医療機関に 登録するときに、しっかりした戸籍というものをそこで届ける義務があるのか、あるい は従来どおり、その方によっては虚偽の届けというとおかしいかもしれませんけれども 実際はそういうこともされていると思うんです。  もし、そういうことが実際に起きたときにペナルティー科されるようなお考えなのか そういうことはいかがなんでしょうか。 ○福武弁護士  私どもが議論したときにかなり疑問に思っていたのは、ドナーという人たちの、先ほ どずっと匿名だとおっしゃっていましたけれども、それが本当に、悪い言葉で言うと、 おかしな人たちが入っていないか。例えば病的なものとかどこの馬の骨かようわからん みたいな人まで入っているのではないかという疑問がないわけではないんですね。フラ ンスは物すごくそれはきちんとチェックをしているんです。だから「CECOS(精子 の研究保存センター)」というような組織をつくって、そこが一元的に管理をすると。 それによって医療の質を高めるというのがあるんです。  実際の日本の方が、非配偶者間人工授精がかなりの大病院でなされたということもあ ったのでしょうけれど、それがインターネットで売買するとか、そういった話になって きたときに、それをきちんとチェックできないようなシステムを野放しにするのはおか しいということなんですね。ですから管理機関がきちんとするというのは、偽名でやる あるいは住所も一切わからないままドナーの提供する、これは一切排除したいというよ うなことが……。 ○吉村委員長代理  本籍が書いてあるということなら、戸籍謄本とかそうなりますね。その場合に、先生 方はどういうドナーを想定されてますか。要するに我々は、例えば実際にやる場合に、 これをやろうとすると、まず一切できないと思うんです。 ○加藤委員  提供者ゼロになっちゃう。 ○吉村委員長代理  提供者ゼロで、報酬、ドナーは一切なし。精子の提供者はあるかもしれないが、卵子 の提供者は、これだとまずありません。兄弟とか同胞にならざるを得ないという点が私 は出てくると思うんです。  これをお読みしますと非常によくできています。よくできていますが、これをやろう とすると、まず一切できないと思います。例えば出自をちゃんと知らせますよ。そうい う段階でドナーをどういうふうにして考えておられるか。 ○福武弁護士  むしろイギリス型を私どもは考えています。 ○吉村委員長代理  イギリス型。 ○福武弁護士  はい。 ○吉村委員長代理  イギリスは大体同胞が多いですね。同胞とか友人。 ○福武弁護士  いえ、そういうわけでもないですね、イギリスは。 ○吉村委員長代理  無報酬でですか。 ○福武弁護士  むしろイギリスとかそのあたりでは、子どもさんを現実に持っている人で、年齢の何 歳から何歳ぐらいまで。それで配偶者の同意も得ると。かなりそういう意味ではきちん とした条件をつけています。それで今イギリスで問題になっているのは、どこまで名前 まで教えるかという話が現実の問題になっています。そういった形をとるべきだと思っ ているんですね。 ○田中委員  今イギリスではその制度があるがためにイギリス制度は破綻していると、ヒューマ ン・リプロダクションに載っていました。イギリスでは最初はボランティアベースでス タートしました。子どもを生んで、教養があって、経済的にも余裕のある人達がボラン ティアとして参加しました。しかし現在ではボランティアが集まらず、卵子提供を希望 される方はイギリス以外の国へ治療に出かけているそうです。イギリスでは実際は今ど ちらかというと、ボーナス制度という、患者さんに治療費を払うから卵を半分提供して くれというコマーシャルベースに傾いているようです。 ○加藤委員  議論の筋道についてですけれども、こういうやり方をとるとドナーがいなくなるから この制度は間違いだという議論は、それは日弁連さんの責任ではないと思うんですよ。 日弁連としては、あくまで法律上の観点から、子どもの権利がしっかり守られる方式を どういう条件だったらできるかということをお話していただきたいので、そんなことし たらドナーいなくなりますよ、先生どうするんですかって、聞いてもしようがないじゃ ないですか(笑)。 ○吉村委員長代理  そうですね。 ○矢内原委員  ありがとうございました。いろいろなことを、今のご質問の中でわかったんですけれ ども、日弁連の中の、2つ質問があって、1つは根本的な考え方のスタンスの質問、も う一つは具体的なことです。  その前に、幾つか数値的なことをお伺いしたいのですけれども、特別養子制度の件数 が書いてありますね。 ○福武弁護士  何ページですか。 ○矢内原委員  21ページにそれぞれ63年から、これは申立て件数が減ってきて、認容数、却下数と書 いてありますけれども、この認容数と却下数の比率を見るとどんどん却下数の比率が減 ってきているんですね。この理由は却下した条件又は認容した条件ですか。これはどう してこういう差の違いが出るのか。つまり63年の発足当時は、却下数が大体10分の1ぐ らいかななんて思って計算していったんですけれども、認容数と却下数の比率が変わっ てきているんですけど、どういう理由なんですか。 ○福武弁護士  これは司法統計に書いてあるものですから、理由が余り書いてないんですが、大体想 像できるところは、昭和63年に運用開始されて、どういう場合に却下するか、どういう 場合に認容するかというのが少しずつ積み重なってくるんですね。そうすると申立てを したときに、あなた、このケースでは却下されますよという話になってくると、もう申 立て自体をしないとか、あるいは取り下げてしまうとか、そういう話になってくるんで すね。 ○矢内原委員  却下の理由の大きなものは、例えば養育能力がないとか、そういうことですか。 ○福武弁護士  具体例が余り書いてない。 ○矢内原委員  ないんですか。 ○福武弁護士  はい。 ○矢内原委員  わかりました。では、さっきの質問に戻ります。  さっき田中先生がイギリスの制度が今破綻をしているというようなお話がありました けれども、逆に今アメリカは非常にレギュレーションをスタートを始めたんだそうで す。アメリカは野放しなので、かなりこれからレギュレーションしなければいけないと いうことをこの間の学会のときの向こうの代表の方は言っておられました。  質問なんですけれども、日弁連のこの話を伺いますと、根本的に生殖というものの基 本的な概念が夫婦の遺伝子をつなげるということが非常に強く根底にあるように思うん ですけれども、そういうふうに解釈してよろしいですか。夫婦が次の世代に遺伝子を残 していくということが根本的にあるように思いますけれども。 ○加藤委員  先ほどの説明だと、現段階においては、夫婦の遺伝的な要素を含まないような補助医 療は、今現在下では認めないとおっしゃったので、根本的な考えとして認めないとおっ しゃったわけではないんじゃないんですか。 ○矢内原委員  そうですか。 ○福武弁護士  日弁連の場合、例えば体外受精だとか顕微授精とか、そういったことについて、夫婦 の間の子どもであれば、それは技術的にいろいろ問題があるのかもしれませんけど、そ れについてどうこうというつもりはないんですね。それはやっぱりお医者さんと患者さ んの関係で決めていけばいい。  問題にしているのは、第三者の精子なり卵子を使ったときにどうなるかということ で。 ○矢内原委員  ですから、それを問題にするから。 ○福武弁護士  その場合には、今の時点では少なくとも片方はそのものでないと家族としてやってい けない。 ○矢内原委員  それはフランス方式ですね。ですから、やはりどちらかのはということの意味では家 系的な遺伝子的なものを求めると。 ○福武弁護士  そうです。 ○矢内原委員  そうなると胚の、つまり貸し腹が一番遺伝的にはいいわけなんで、それは全く否定さ れてますから、そういうところに1つ……。 ○光石弁護士  それは別の理由で、女性の……。 ○矢内原委員  わかります。ちょっとそれを確認したかった。実際に具体的なことなんですけれども 先ほどおっしゃいましたように、最小の法律をつけておいて、あとは自主規制又はある 機関が任意団体に依頼するなりしてきちんとしましょうということですね。政府機関で もいいんですけれども。 ○福武弁護士  ガイドラインをつくる、審議会もつくる。 ○矢内原委員  ガイドラインをつくり、審議会をつくる。そのときに具体的に我々はこういうものに タッチしておりますと、ガイドラインができて、認定制度というのがここに入ってきて いますから、そうするとその調査があって、かつそれに今度罰則というものの規定がつ ながりますね。これは産婦人科学会のような任意団体の場合には、これをやることは全 く不可能なんですね。  そうなると具体的なお考えとして、審議会とか、これは政府の関係の方にお伺いした 方がいいかもわかりませんけれども、イメージとして、政府がある、例えばイギリスの あれみたいに、ある機関にオーソリティーに、産婦人科学会でも不妊学会でもいいんで すが、それを委託する。それとも政府自身がそれを行う。どういう方式をお考えです か。 ○福武弁護士  国立管理機関を設立するという意味です。 ○矢内原委員  国立の管理機関。 ○福武弁護士  別にそこから学会に委託するというイメージは持ってません。 ○矢内原委員  ないんですか。 ○福武弁護士  はい。 ○矢内原委員  そうすると、こういう医療行為そのものが保険制度も含めて、田中先生の心配は私は そこにあると思うんですけれども、いわゆる医師の自由診療の権利というものが、生殖 医療に関しては、国家管理の中に置くということになるわけですね。 ○光石弁護士  そうではないと思いますが、やはり個人、家族・夫婦・親子の問題ですので、言って みれば、社会秩序の根本ですから、そういったものを基本的なところでやっぱり国家が 管理するということであって、個々の診療行為を国家管理に置くというのは考えていな い。  さっき法律と言いましたけど、例えば現行の民法とか母体保護法とか、そういったも のが現実にある以上、それをひっくり返すためにはどうしても法律が必要だろうという ことはありますから、最低限の法律というのはそういう意味もあると思うんです。だけ ど、個々の診療行為のやり方で、どの範囲まではどうだということになってくると、や はりそれはガイドラインの問題かなと思っています。 ○矢内原委員  ガイドラインはある審議会がつくりますですね。そのガイドラインが守られたか守ら ないかという調査が必要ですね。実際に違反者が出る。罰則規定があるわけですから、 JRBが必要だと思うんですね。また、統計が必要だとか報告義務があるとか。 ○福武弁護士  例えば第三者の卵子を使うということで、一応ガイドラインをつくっておいて、第三 者に全くの第三者なのか、それとも親族なのかというのがわからないままやってしまっ ては困るということなんですね。だから、そういうことについては、こういう場合には きちんと審議会で審議をした上で、オーケイだったらやりなさいよと。今、倫理委員会 なんかでよくやっていますよね、いろんな治療について。そういったことをやらないま ま施術してしまったということになるのを阻止するということです。 ○加藤委員  倫理委員会でも、この患者さんにこういう施術をしていいかどうか、個別審査やって いるところと、一括審査で、大体このレベルだったらばやっていいというところと両方 あるし、この審議会は個別審査をするというおつもりなんですか。それとも個別審査は しないと。 ○福武弁護士  個別審査もします。ただ、それは第三者の精子又は卵子を使用する場合ということで す。私のところの考え方が間違っていたら申しわけないんですけど、年間数百件ではな いかと思うんですね。そうすれば、個別審査をしても、それがおかしくなるようなレベ ルの数ではないと思っています。 ○加藤委員  年間数百件というと、1つの機関で処理すると毎日やっていなければならないです ね。 ○福武弁護士  いえいえ、それは審議会の中でブランチつくっても、それは構わないわけですから、 提携的なところで処理できるのやら、そうでないのやら、それはいろいろ出てくると思 うんですね。 ○矢内原委員  私はこの提言に反対をしているわけではないんです。ただ、それのベースにあるもの と、実際にこれを行うときのシミュレーションを学会の倫理委員会とか学会の中の機構 の中にいて考えていたシミュレーションで本当に可能かなというふうに、そのときには どこがどういう形でオーソリティーをとるのかというようなことで、ちょっと具体的な 質問をしただけです。 ○福武弁護士  私どもが例えば産科婦人科学会が弁護士会のような形での強制加入団体で、そこでガ イドラインをつくって、それに違反したら、例えば、あなたは何カ月間の業務停止です よとか、退会命令ですよという話になれば、それは私はかなり強制力あるのだろうと思 うんです。そこがほかのところと比べて随分違う。 ○加藤委員  アメリカの医師会だとか弁護士会のような場合には、弁護士会の除名というのは、弁 護士会内部で除名処分をするのであって、第三者が入ったり、国家機関が介入して除名 をするわけではないですよね。 ○福武弁護士  委員に裁判所、検察庁、全部入っております、懲戒には。 ○加藤委員  そうですか。日弁連モデルみたいな形になるんですか。 ○福武弁護士  法律で規定されています。 ○加藤委員  会計士学会はどうでしたか。会計士学会もたしか除名されると会計士できなくなるん だったと思います。 ○福武弁護士  と思うんですが、ちょっとすいません、会計士は私は余りわかりません。 ○田中委員  ペナルティーが科せられるということですが、具体的に審議会で考えられているのは どういう事例になるのでしょうか。具体的に、こうなった場合にはどういうペナルテ ィーが科せられると。例えば3個を入れたはずなのに胎児が4人できた場合とか。 ○福武弁護士  そういうことよりも、例えば代理母をやってはいけないと言っているのに代理母をや った診療機関があったとか、そういうことになるとやはりそれはペナルティー。それこ そ何カ月間業務停止みたいな形はもっていくべきであるとは思っています。 ○田中委員  あとは出自の権利を知らせなければいけないという、インフォームド・コンセントを 得ていなかった。 ○福武弁護士  そうです。 ○田中委員  でもそういうことの事実関係を明確にすることは難しくないですか。 ○福武弁護士  それはきちんとした調査機関が調査能力があるかどうか。 ○吉村委員長代理  許可されてない機関で第三者に配偶子を使った場合、それは刑罰規定になるわけです よね。おっしゃっていることは非常によくわかりますね。 ○石井(ト)委員  医師会が今任意団体で、要するにいろいろと強制力がないということで、仮に日本の 医師会がそのような形に整備されたらば、それはこういう国家的な機関は必要ないと、 どうお考えでしょうか。 ○光石弁護士  私は少なくともやっぱりあると思います。といいますのも、情報の一元的管理とか、 それはいくらそういうものになっても、委員は統廃合でなくなっちゃうということもあ るでしょうし、やはり何十年のオーダーで保管しておかなくちゃいけないと。それはど こがやるのということになったら、これは国立の機関しかない。 ○石井(ト)委員  わかりました。私はこれを読んでいて、我々がどういうスタンスで話し合うのかとい うことで切実に認識したのですけど、私の意見言いますと、やはり子どもの権利だかと 女性の権利というスタンスに立って、こういう形で整備することが私は希望します。そ のためには先ほどおっしゃいましたように、子どもを絶対的に持つという以前に夫婦の あり方とか家族のあり方を、治療を受ける以前のご夫婦に対してかなりカウンセラーは 必要ではないかと思っているんです。  ですから、そういう点で考えると、まずそこをクリアーして、本当に夫婦だけの問題 は、これは治療で保険医療が適用できるかもわからないし、もし第三者の卵子なり精子 なりが介入した場合にはやはり国家的に管理する。私もそう思っているんですけど、そ れでよろしいわけですよね。今までの話の中では。  話が変わりますけれども、保険医療が治療という名目はあくまでも夫婦間の問題のた めに、保険は適用することが可能だということですか。 ○福武弁護士  保険のことについては、どの範囲がどうこうというのは余りこちらの方でも考えてま せん。 ○石井(ト)委員  そこまで言及してませんでしたか。 ○福武弁護士  ええ。 ○吉村委員長代理  非配偶者間の体外受精とかそういうことになると、これは保険医療はいかがなものか というようなことはおっしゃっただけで、夫婦間においては、保険医療も考えられるべ きだというふうにおっしゃっていましたですけれどもね。 ○福武弁護士  第三者のを使うというのは治療とかという範囲ではないという、そういう意味で保険 の適用はどうかなというふうな感じは受けています。 ○吉村委員長代理  そういうことですね。丸山先生、さっき事実婚とかおっしゃっていましたですね。ご 質問あったらどうぞ。 ○丸山委員  利用者についてどこまで認めるかなんですが、法律婚の夫婦だけでなくて事実婚の夫 婦についても認めるべきだというのは、24ページの上半分以下でお書きなんですが、そ の際に挙げられている根拠として、法律婚と事実婚については、当事者が自由に選択し てよいというのが1つですね。2つ目が非嫡出子の法定相続分が嫡出子の半分であると いうような規定が廃止される方向にあること。  この2つ等を考慮すれば、我が国において事実婚を法律婚と同視する方向に動いてい ると考えられるということなんですが、もしこういうことを根拠に挙げられるのであれ ば、とりあえずは法律婚の夫婦に利用者を限定して、事実婚についても法律婚と同じ保 護が与えられるということが法的に保障されてから範囲を拡大させるのが制度論ではな いかと思うんですね。そういう動きがあるというだけで、そちらも利用者の範囲に入れ るというのは、子の保護にもとるのではないかと思うのですが、いかがですか。 ○福武弁護士  結構議論はあったんですね。そもそもシングルで子どもを持って何で悪いという議論 まであることはあったんです。結構それを否定するのは難しいのは難しいのですが、1 つは男女のカップルで子どもが生まれるということを考えれば、シングルというのは余 り望ましい話ではないとか、同性愛者には望ましい話ではないというところまではいく のですが、では事実婚というのが現実にどこまで、差別されているという話がやっぱり あることはあるんです。子どもに対する差別ですよ。事実婚のときに子どもに対する差 別があって、それを前提にしたまま、それでも事実婚の夫婦の子どもをつくるというこ とを認めるのはおかしいのではないかという議論も確かにあったんです。  ただ、今の考え方で、やはり法律婚に近寄りつつあるというふうに考えていますし、 現実にそのような事実婚の夫婦が多い。身の回りには結構いるということを考えますと そこまでもやっちゃいけないよというのは難しいのではないかと思ったんですね。 ○丸山委員  子どもにしてみれば、将来、あなたの後輩というか、次に生まれてくる子は、法律婚 の夫婦の子どもと同じように保護されますよ。だからあなたは我慢しなさいというのは 説得力がないのではないですか。 ○福武弁護士  ただ、それで認めない理由まではいかないのではないかという感じがしています。 ○丸山委員  認めない理由になると思いますけれどもね。相続分が半分、これだけでも大きいので はないですか。それが対等になる。なるなら、なった段階で適用を広げて、それと逆に これは私のオリジナルな意見ではないのですが、こういう生殖補助医療を使いたければ 婚姻なさいというふうに利用者に要求することは、そんなに過大な負担を課すものでは ないという意見もありましたので、なぜ、法律婚に入らずにこういう先端的医療の利用 を求めるかというようなところを考えると、バランスとして法律婚に限定することが選 択として望ましいと思いますけど。 ○福武弁護士  国によってはそういうところもあります。ただ、そうでないところもある。 ○丸山委員  ですから婚姻形態については、先取り的な見解をおとりで、それと子どもの保護とが 何か平仄が合ってないような感じ受けましたけれども。 ○光石弁護士  子どもの権利とか子どもの法的地位ということをもっともっと徹底するという考え方 もあるだろうと思います。だけど、これは結局実際上どうかというようなこととか、端 的に言って、サロゲートにしても何にしても、今世界じゅうあちこちみんなが移動する 時代ですから、多少諸外国の法制も参考にせざるを得ないというようなことで、非常に そこは、ではなぜここで線引くのと言われると、正直言って理論的にスパッとはいかな い。先生のようなお立場は当然あるだろうと思います。 ○石井(美)委員  話がちょっと変わるのですけれども、非配偶者間の生殖補助医療は治療ではないとお っしゃった。これだけのシステムをつくるには相当な国費を使いますね。これだけのシ ステムをつくらないとこの医療がなされない。治療ではないけれども必要性があるとい う判断ですね。 ○福武弁護士  というか、現実にそのようなことがなされてきていて、それも何十年もたっていて、 それをこのまま放置するのはおかしいという発想なんですよ。 ○石井(美)委員  子どもの権利の保護がはかれない以上、非配偶者間の生殖補助医療は認めないという 考え方も有り得ますね。 ○福武弁護士  それもあると思うのですが、ただ、私どもは、ではやめなさいよと言ってやめるよう な話であれば、別に法律つくれ云々ではないのだと思うんですよ。 ○石井(美)委員  やめなさいと言うことはできるのではないですか。 ○光石弁護士  でもAIDで1万何千人生まれ出ていますね。 ○石井(美)委員  今まで生まれた子どもには、これは適用にならないのですね。 ○光石弁護士  ないにしても、結局は存在の法的な根拠を失わせるわけでしょう。ですから、そうい うやっぱり現実というものはある程度考えざるを得ないと。体外受精も何千とあれば、 生まれてきた人たちというのはある程度考えざるを得ないと。この法律を確かにさかの ぼって適用する云々は、それはないでしょうけれども。 ○石井(美)委員  私も基本的にはこの構想に賛成なのですけれども、これを国民に納得してもらえるか それだけの根拠を示せますかということを伺いたいのです。 ○福武弁護士  子どもの権利保護のために必要だと。 ○石井(美)委員  そうすれば、こういう子どもをつくらない方がよいという考え方もありますね。 ○福武弁護士  それはあると思います。そういう意味で禁止はできないのではないか。世界的に見て も禁止しているところはない。 ○石井(美)委員  AIDはですね。 ○福武弁護士  はい。 ○田中委員  卵子提供も認めるというのが原則ですね。 ○石井(美)委員  ドイツは禁止している。 ○吉村委員長代理  卵子提供はドイツは禁止しています。 ○田中委員  日弁連のあなたたちの考えは、片方ならば認めるというのがベースですね。両方の提 供はだめだけれども。 ○光石弁護士  それは差があることはあるにしても。 ○田中委員  それが基本的なんでしょう。 ○光石弁護士  はい。 ○田中委員  認める上で、こういうことをしましょうということですね。 ○福武弁護士  現実にやるのを、あんただめだよというわけにいかないし、それはそれで、夫婦及び 家族の平和が保たれるというのもあるんですが、ただ、それにしても今のままではなく て、こういったシステムをきちんと金かけてでもつくっていかないとだめではないかと いうことなんですね。  それで、システムのつくり方としては、やはり国家的な機関及び審議会が必要だとい うのが大前提なんです。結構お金はかかると思いますよ。それはしようがないんじゃな いでしょうか。 ○加藤委員  この問題では、提供者と子どもとの親子関係が法律的な権利義務の関係にならないこ との確認というのがかなり重要な意味を持ってくると思うんですけれども、このシステ ムだと、それについては十分だというふうにお考えなのでしょうか。たとえ顔見知りに なって、名前も知り合うようになっても、親子関係の権利関係は発生しない。 ○福武弁護士  法的にない。 ○加藤委員  血統主義の考え方からすると、卵子提供の場合に、女性が親子関係を否定するという こともあり得るわけですね。これは私の卵ではないかといって。それはさっき産んだ母 親を母親にすれば十分だとおっしゃいましたが、例えば、その場合には、あれは私の子 どもではないのよ、と訴えても全部却下できる、そういう形になるわけですね。 ○福武弁護士  そうです。 ○加藤委員  例えば、おじさんから精子をもらったり、おばさんから卵子もらったりした場合に、 親子関係ではなくても、例えば実際養育の義務などが発生する可能性があるわけです ね。例えば実の親が死んじゃったとか、あるいは相続関係が成立するとか。 ○福武弁護士  それはおじさんだからということで発生するものであって、その技術を使ったからと いうことで発生するわけではない。 ○加藤委員  その前には普通のおじさん関係と同じに処理するということになるわけですね。 ○福武弁護士  はい。 ○加藤委員  血のつながったおじさんだけれども、血のつながらないおじさんと同じような関係に なるわけですね。 ○石井(美)委員  2つあるのですが、1つは養子のアナロジーをとられるけれども、胚の提供はだめと いう特別養子の発想でいけば、胚提供を認めてよい。余っている胚の利用を認めないと いう考え方に対する疑問です。産んだ人を母とするのであれば、血のつながりは確かに ないけれども、産むことができるという点では、胚提供を認めないという考え方は出て こないのではないかというのが1点です。 ○光石弁護士  余剰胚についてはいろいろ調べているんですけれども、なかなかわからないんです ね。具体的に実際の場面でどういうふうに余剰胚が発生していくのか。そういうことに ついて、私ども漠然とした危惧を持っていて、これを今ヒト・胚の、この間の考え方に も出てきてましたように、要するに余剰胚は使ってよろしいというのが出てきてまし た。あのあたりが実はよくわからないんですね。 ○吉村委員長代理  例えば非配偶者間の体外受精を考えた場合に、ドナーに全然リスクを負わせないで、 そして一番ドナーになりやすいものは余剰胚なんですよ。例えば、あるAという夫婦が 体外受精して子どもをつくった。それで子どもができてしまった。例えば、4個の余剰 胚がある。それを他人に、じゃあ、私たちはこれは廃棄するものですからお渡しします と言えば、これは一番ドナーになり得るものなんですね。 ○光石弁護士  法律的にはそうだと思いますが。 ○吉村委員長代理  それは一番卵子の提供よりも危害を加えることはないわけですよ。ただ、遺伝的には 全く両親とは違うわけですね。生物学的な両親ではないということはあります。 ○福武弁護士  それについては各国によって差がいろいろあるのだと思うのです。私どもがいろいろ 考えたのは、胚は除いて、今の第三者の卵子及び精子をもらったときには法律上は実子 としての扱いになっているわけなんですね。つまり戸籍上はどこにもドナー云々が出て こない。そういったところでは、いわば特別養子というのはそれはそれなりのきちんと した実態を反映するシステムになっているのに、生殖医療技術を使った場合には、実体 を反映しない戸籍になっているということに対する危惧がかなりあるんです。  ただ、その場合でも、少なくとも片方が遺伝的な親子関係がちゃんとあって、それで 夫婦及び親子としているんだったら、それはそれで意味があるのだろうと。だけど、そ れも純粋に全く違う第三者の胚、父親も母親も違うのがまともに入ってきて、実子とい うのは、それは乖離が大き過ぎるのではないか、そういうことなんです。  ですから、そこまで必要だということだったら、もう少し戸籍制度を考えるとか、あ と実際に生殖医療技術を使ったときに、国民の意識調査を見たときに、例えば精子をも らったら、妻にとっては実子だけど、夫にとっては養子だから、そういった形で表現で きる方がいいのではないかという意見も結構あるのはあったんです。ただ、戸籍上届出 のときに多分それはしないだろうというふうなことを考えれば、半分でも合っていた方 がまだいいのと、日本人はまだ血統主義的な意識がかなり強いので、余剰胚をそのまま 使って、技術的には確かに使えるのだろうと思いますが、そこまでは今の段階ではまだ 認める必要は特にないではないかということなんです。 ○石井(美)委員  これだけ斬新な提案をされ、親子関係確定について民法改正を言われながら、実子と して届ける。今の体制をそのまま維持するのですか。 ○福武弁護士  というか、実子としてしか皆様は届出をしないだろうという前提なんです。 ○石井(美)委員  審議会で個別の審査まですれば把握できます。確実に生まれた子どもについて一元的 な情報管理をする。今の状態とは違うにもかかわらず、今の届出制を前提とした親子関 係の確立を考えられるのですか。 ○福武弁護士  届出をしなさいといって届け出るとは思えない。 ○石井(美)委員  今は実子としてしか届け出ないと思います。 ○福武弁護士  ですから、今後このような技術が、特に違和感がなくて、国内で広がって、この子は 提供精子の子ですよ、提供卵子の子ですよという形で戸籍上出るんだったら、それは可 能性はあると思いますけれど、ちょっと難しいのだろうと思っています。 ○石井(美)委員  戸籍上出る必要性がありますか。法的な親子関係が戸籍でわかればそれでよいのでは ないですか。特別養子制度とアナロジーとして考えなければいけないことは子の保護が 図れるかどうかだと思いますが、それは審議会が判断するのですか。  審議会は一体何を個別に判断するのですか、裁判所ではなく審議会が。 ○福武弁護士  審議会はそれをオーケーするかどうかですが、ただ、夫婦の間で、例えば第三者から の提供を受けるときに、なぜ公正証書で同意書をつくるかというと、そこのところなん ですね。つまり親子である意思というものを確定をさせるということで公正証書をやる ということです。  ただ、私は個人的なことを言えば、裁判所が関与した方がより望ましいとは思ってい ます。ただ、そこまで必要ないという意見が多かったものですから、この提言では公正 証書でという話になりましたが、件数とかそういうのをやっていると、多分裁判所がや るというふうにしたとしても、そんなに裁判所の負担が多くなるわけではないと考えて いますが、ただ、戸籍上の実子と養子の明確な区別があるものですから、実子という戸 籍の中で、本当は血のつながりのない人が入っている、一部として。というような状況 は余り望ましいとは私も思ってないんです。だから両方とも違うというまでいくのは難 しいのではないかということなんです。 ○高橋委員  この中でカウンセリング制度を非常に強調されている、これは私も必要だと思いま す。いろんな問題もカウンセリングが十分に行われることによって防げるようになると 思います。しかしながら、ここの中には、カウンセリング制度を医療機関とは独立した 制度として認めるべきであると書いているのですが、これはどういう議論からこういう ようになったのか、実際は医療機関から離れて独立した制度として認めるというとなか なか大変ではないかと思うのですが。 ○福武弁護士  大変だろうと思います。ただ、私どもがやはり気にしたのは、例えば、あるクリニッ クに通って、どうしたらいいのかカウンセリング受けるときに、やっぱりクリニックの 方は、あなたはやめなさいよという方向でのカウンセリングはなかなかしないだろうと 思うのです。例えば養子制度がこうありますよと、特別養子の制度もこうありますよ と。こういう治療を続けることによって、これだけのリスクがありますよというのは、 やはり客観的な第三者だったら言いやすいのですけれど、そこはクリニックでは難しい というような意識がやっぱりあるんですね。  そういう意味で、もっと公的な、公的というか、第三者的なカウンセリングの制度を つくらなくてはいけないと思うのですが、具体的にどういった形にしていいかというの が、管理機関の中にそれなりのカウンセリング部門を設けるとかそこが指導するとか、 そういったことを今後考えていくことしかイメージとしては出ていないところです。 ○高橋委員  今のところはそういうイメージですね。 ○福武弁護士  はい、そうです。 ○高橋委員  わかりました。 ○石井(ト)委員  この間、ヒアリングで浜崎さんというカウンセラーやっている方から話を聞いたので すけど、その中で非常にそこの治療を受けている病院だと聞きづらいと。あとは嫌われ たくない、そういうことを指摘しておりましたので。 ○福武弁護士  カウンセラーと病院から。 ○石井(ト)委員  治療を受けているところで、カウンセリングしておりますと、やはりなかなか言わな い。ですから、第三者の機関の方が率直な意見が聞かれる。そういうようなことが出て おりましたので、いずれそちらの方でまとめられると思います。 ○丸山委員  感染症にわたる質問なんですが、ですから、すぐお答えしてくださればありがたいと いうのでお聞きいただきたいのですが、56ページの下の方の「提供者の条件」ですが、 マル1の4行目、「医療機関は、血液検査、感染症の検査等必要な検査を行い」という ことで、これは遺伝病の検査は、外国の現状の中で、フランスなどでは調べるというの をお書きですけれども、日弁連のこの提言としては、何かお考えおありだったでしょう か。 ○光石弁護士  結局ここは一番日弁連としてはまとまらないだろうと。つまり出生前診断の問題も同 じですけれども、これは結局いずれだんだんあらわになっていくのかどうかわかりませ んが、やはりこれは実施していく中で、ガイドライン等でやっていく事柄かなと。です から、ここはとりあえず「等」と。感染症は1つの代表例だと思いますけれども、場合 によっては重篤な遺伝病もあるかもしれませんが、それはもし書き出すと、これは多分 日弁連では合意できないだろう、こういうふうに思いました。 ○丸山委員  それから、感染症に戻るのですが、感染症にかっていた、一番わかりやすいのはHI V感染者などはドナーとしては困るということだろうと思うんですが、レシピエントと いうか、依頼者側の夫の方がHIV感染者で、奥さんが卵がないというような場合、ご 主人のHIV感染者が卵の提供を求めることは許されるか許されないか、そのあたり伺 えればお願いしたいのですけれども。 ○光石弁護士  実際にその問題起こってまして、結局精子洗浄法をいくらやっても、技術的に今なか なか限界が……。 ○丸山委員  AIHの場合ですね。 ○光石弁護士  AIHの場合ですね。ですから、その問題独特な問題があって、結局今余り洗浄して いけばいくほど、今度は少なくなっていって妊娠が成立しないというようなことで、結 局その医療機関では今のところストップしているというふうに理解していますけれども ですから、それはちょっとこれと性質が違う問題かなと思っていますが。 ○丸山委員  違うんですが、確かにおっしゃるように、では置いておいて、失礼しました。 ○辰巳委員  ちょっと気になったんですけど、26ページの下から2列ぐらいなんですが、「多胎妊 娠に至る原因の一つに体外受精において受精卵を多数子宮内に戻すことがあげられてい るのであるから」の一番最後のところですが、「排卵誘発剤を使用する場合には使用方 法を工夫したりして単一妊娠をすすめ、それでも多胎になった場合には、母体保護法の 要件をみたしている限りにおいて堕胎を行うべきである」となっておりますが。 ○福武弁護士  何ページ。 ○辰巳委員  26ページ。これは現在のところは減数中絶を行わずに、多胎妊娠ができてしまった場 合は全部中絶してしまわなくてはいけないとおっしゃっているのでしょうか。 ○福武弁護士  母体保護法の要件を満たしているというのは、母体に対して悪い影響があるという条 件ですから。 ○辰巳委員  これは減数中絶をしてはいけないということをおっしゃっているわけではないんです か。 ○矢内原委員  減数手術を母体保護法の堕胎の中の適用の中に認めてしまえば、やってもいいでしょ うということなのではないですか。 ○辰巳委員  上の文脈からいくと、当たらない。 ○矢内原委員  当たらない。この言葉どおりです。 ○辰巳委員  そうすると、今のところでは、多胎妊娠ができてしまった場合には、減数中絶ではな くて全部中絶してしまいなさいということが書かれているのでしょうか。 ○福武弁護士  そう言っているわけではない。 ○矢内原委員  先ほどのご説明では、そうではなくて私が言ったようなことです。 ○石井(美)委員  「母体保護法の要件をみたしている限りにおいて堕胎を行うべきである」はそう読め ますね。 ○辰巳委員  これだけ読んだら、あれと、どうかなと思ったんですが。 ○福武弁護士  多胎妊娠で、例えば中絶をするということが母体保護法の人工妊娠中絶に直接には定 義として当たってないということなんです。そうすると堕胎罪の適用の話の方が出てく るというふうに考えているんです。そうすると母体保護法、いろいろ議論はあるのです が、母体に非常に影響があるというようなことだったら、それが2胎であれ3胎であれ 多胎であれ、その場合には中絶はやむを得ないのではないかというふうに思います。で すから、そこはあいまいな形のまま堕胎中絶、減数手術をするのは、これはおかしいの ではないかという意味なんですが。 ○辰巳委員  今の日弁連の考え方としては、減数中絶はしてはいけない。 ○福武弁護士  そうですね。直接には、法律上の疑問はあることはあります。 ○吉村委員長代理  そのほかございますか。 ○石井(美)委員  確認なのですけれども、先ほどから出ているおじさんとかおばさんとか、知り合いの 人を提供者として、本人が連れて行くことを認めるのでしょうか。 ○福武弁護士  審議会で審議をしてオーケイだったら。 ○石井(美)委員  審議会で個別に審議をする。一般的には定めないということですね。 ○福武弁護士  基本的には余り好ましいとは思ってません。むしろ、そういう意味では匿名性の方が 前面に出るのではないかと思っています。 ○石井(美)委員  それと関連して、精子、卵子の一元的管理と言われている臓器移植ネットワークのよ うな形のものなんですか。情報ではなく、保管その他も一元的に行うのですか。 ○福武弁護士  ですから保管については委託することができるという話にはなっている。情報の管理 です。Aというドナーがいて、その人がいろんな医療機関に行って提供していたとして も、それは一元的に管理をしておくということです。 ○石井(美)委員  提供数が減ると言われているのですが、限られた提供で患者の希望の方が多い場合も 審議会で誰に提供するかを決定するのですか。 ○加藤委員  コーディネーターと同じ感じの、移植センターとね。 ○福武弁護士  そこまでは検討しておりません。 ○加藤委員  これは既に卵子提供や精子提供が行われしてしまったケースについて、そのいわば台 帳というか、帳簿を管理しているという感じなんでしょう、イメージは。情報の一元的 管理というのは。 ○福武弁護士  過去のものについてはもちろん情報の管理ですが、今後についても。つまり私どもが 気にしているのは、医療機関というのは、ずっと何十年も続いているかどうかわからな いというのがあるんです。今の戸籍管理でしたら、それこそ百何十年ずっと続く形にな っているものですから、それと匹敵するような形での管理ができるのは、一元的な国家 的管理しかないだろうということです。 ○吉村委員長代理  わかりました。そのほか、ございますか、どうぞ。 ○辰巳委員  卵子提供がいいというのは割合簡単に出た結論なんでしょうか。 ○福武弁護士  いや、結構もめました。もめましたけど、だめだよといって、やらないことになるか というと、そうでもないのではないかと思います。 ○吉村委員長代理  例えば、こういう非常にすばらしい提言を決められて、こういうふうになったとしま すね。ドナーが少な過ぎて希望者が多いと。そういうような状況で海外へまた行くと、 こういうような状況についてはどういうようにお考えですか。 ○光石弁護士  審議会でしっかりそういうところを議論してもらうということではないでしょうか。 ○吉村委員長代理  ドナーの少なさというのは、コマーシャリズムでアメリカがやっているにもかかわら ず卵子提供は少ないわけですよね。ですから5000ドル、1万ドルというふうにして値段 が上がっていくわけですよね。審議会で審議するということですか。 ○光石弁護士  はい。 ○吉村委員長代理  そのほか、先生どうぞ。 ○石井(ト)委員  60ページなんですけど、先ほどの減数中絶のことなんですが、現法の母体保護法は、 刑法上の堕胎罪を阻却するために、「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由」、 それがあるから堕胎罪を阻却する理由ですよね。ここでは定義を変えないと堕胎罪に相 当すると読めるんですけれども。 ○福武弁護士  そうです。形式的には堕胎罪に該当する可能性のおそれはある。 ○石井(ト)委員  定義ですか、これは。 ○福武弁護士  そうです。 ○石井(ト)委員  定義ですか。このように、例えば「胎児を、母体外において」ということを、あるい は「母体内において」とすることによって、これは堕胎罪にならないということなんで すか。 ○福武弁護士  ここに書いてあるのは手段を書いているんですね。もちろん母体保護法によって、こ ういう場合には中絶ができますよというのが書いてあるんですが、それは置いておいて 手段として母体外に取り出すとか、中で減数手術するというのは目的は同じなのに、結 局母体保護法で規定しているのは、外に取り出してという形なものですから。 ○石井(ト)委員  私がご質問したのは、刑法上の堕胎罪の違法性を阻却するということは、要するに保 護法でいう妊娠の継続又は身体的、母体の健康を著しく害するおそれのあるものという ことによって正当性があるのかなと思ったんです。ですけど、これを読みますと、定義 そのものを変えることが堕胎罪の罪を阻却するという形に読めるんですけど、それが私 よくわからないんです。 ○光石弁護士  おそれがある場合に中絶ができると書いてある。ですから中絶の定義が今のままだと ……。 ○加藤委員  今の法律や表現がちぐはぐででき損ないだから、もうちょっとわかりやすくちゃんと 通せということなんでしょう、ここで言っていることは。 ○福武弁護士  わかりやすくというか、要するに減数手術も可能なようにきちんと……。 ○吉村委員長代理  変えるべきであるということですね。今はそういう提言は日母からも出ていますか ら。 ○高橋委員  日母の法制検討委員会で、表現について別の文言も検討しているんですが、この文言 は非常に参考になりました。法律家はこういうような表現をするのかなと思いました。 ○吉村委員長代理  田中先生、時間が余りないんですが、どうぞ。 ○田中委員  私は思うんですね。今は卵子提供とか精子提供、非配偶者間の問題ですけれども、多 分これから人マッピングは全部わかってくる時代、これが診断とか治療に必ず関与して くる時代が来ると思うんです。そうしますと、あなた方が今されようとしている管理機 関というのは、今は申し入れに対する審議だけではなくなると思うんです。例えば、生 まれてきた子どもに対して、将来もっといろんな情報がわかってくる可能性がある。そ のときに、その子どもが産まれる前に診断してよろしいかとか、そういう部分がかなり これから出てくると思うんです。要するに出生前診断ですね。着床前診断とか、そうい うことを踏まえて、これから我々が治療している中で、そういう決定する場所になる可 能性ありますね。国のものであれば一番決定力あるわけですから、そこまで将来的に、 あなた方がやられることは敷衍していくといいますか、広がっていくようなものだとい う認識をお持ちですか。 ○福武弁護士  ただ、今回はいわゆる出生前診断とか遺伝子診断についてはカットしました。 ○田中委員  でも、これからカットできなくなる時代も来ると思うんですね。 ○福武弁護士  いや、そうじゃなくて……。 ○吉村委員長代理  そうではなくて、先生、これは今の現実面でこういうことを直ちに検討しなければい けないということで、日弁連がこの提言をおまとめになった。私は非常にその趣旨はよ くわかりますし、将来いろんな問題起こってくる。クローンの問題も起こってくる、い ろんな遺伝子治療の問題も起こってくる。それはやはりその都度その都度、今現実面で こういう問題が起こってしまっているわけですから、それに対してどう対応していこう という考えで、こういうものをつくられたと思うんですね。  今後は田中先生がおっしゃっているように、そういうことも絶対に考えていかなくて はいけない時代にはきている。 ○田中委員  そういうものに柔軟に対応していただきたい。 ○福武弁護士  第1次の提言ということで、ちょっと違う提言はいろいろあると思うんですが。 ○吉村委員長代理  そうだと思います。まだあるとは思いますが、長時間にわたりまして、本当に両先生 私たち勝手なことを言いまして、こんな立派な提言に対して申しわけなかったと思いま すが、その都度その都度答えていただきまして本当にありがとうございました。 ○光石弁護士  一言ちょっと希望を申し上げたいのですが。 ○吉村委員長代理  どうぞ。 ○光石弁護士  この秋におまとめになると伺っておりますが、実際日本で縦割行政でほかの省庁はヒ ト・胚についての法規制をどんどんやっていますが、やっぱりそういうものとずっと整 合性を保ってやっていくためには、省庁間のことをきっちり、ばらばらにならないよう にしてほしいと、それをぜひ。 ○吉村委員長代理  事務局の課長さんにお願いしたい。 ○光石弁護士  そうしないと、自分の守備範囲のクローンのところだけはこれでいくとか、これはあ れでいくとか、それが今現実起こってきているんです。それが私は大変憂慮しておりま す。 ○吉村委員長代理  私たちもそれは本当に感じておりますので。 ○加藤委員  同じ省庁内でもちぐはぐの答申出ているんじゃないですか。 ○吉村委員長代理  それは事務局の課長さんの方によくお願いいたしまして。  きょうは本当にありがとうございました。長時間にわたりまして、拍手で。                  (拍 手) ○吉村委員長代理  ご質問に行ったりすることがあるかもしれませんが、またよろしくお願いしたいと思 います。 ○光石弁護士  またいろいろと教えてください。どうもありがとうございました。 ○吉村委員長代理  きょうのヒアリングはこれで終わりでございます。本日の議題、その他がありますけ れども、帰る前に、丸山先生から、30分ぐらいか1時間ぐらい、ワーキンググループで たたき台をつくり出す前に是非論について討論したいことがございます。  一応このヒアリングは終わりですので、傍聴の方は、これから非公開ということにい たします。議事録では示しますので、退席をしていただきたいと思います。 ○吉村委員長代理  私たち何回もこれまで会合を持ってやってきたわけですから、今後何らかの提言みた いなものを出さなくはいけない。ワーキンググループでそのたたき台をつくる上で、先 生方のお一人ずつのご意見が大切になってくると思います。非配偶者間の体外受精、精 子提供による体外受精、卵子提供による体外受精、胚提供、ホストマザー、サロゲート マザー、その点について、石井先生からお考えをお聞きしたいと思っております。 ○石井(ト)委員  精子、卵子、胚はOK。あとは反対です。 ○加藤委員  精子賛成、卵子も賛成。胚も場合によっては賛成でいいと思うんですが、ホストとサ ロゲートは禁止でいいのではないかと思います。 ○石井(美)委員  「場合によって」とはどういう意味ですか。 ○加藤委員  希望者胚とか、余り金銭化しない、割合スムーズに受け入れられるのであればという ことです。 ○丸山委員  質問ですが、今、毎年体外受精児1万人というオーダーですね。そのうちで何割かが 凍結胚があるわけですね。1組当たり4つ5つあっても、5万個とかあるわけですね。 そういうふうに考えてよろしいのですか。 ○吉村委員長代理  そういうふうには言えないと思います。胚がどのぐらい余っているかということです か。余剰胚。 ○丸山委員  ええ。 ○吉村委員長代理  それはちょっと言えないと思います。例えば、1回目で妊娠しない人は凍結しておい たものを移植しますから、ほとんどの場合が、うちは凍結胚が余っているというケース は、簡単に考えれば5人に1人ぐらい。 ○石井(美)委員  それでもかなりの数ありますね。 ○吉村委員長代理  5人に1人ぐらいが余っているからという感じ、先生のところどうですか。 ○辰巳委員  その人たちも2人目、先生のところでは2人目を希望する場合に、1人目と同じ時に 凍結した胚を使われないのでしたか。 ○吉村委員長代理  私のところでは使っておりません。 ○辰巳委員  私のところでは1人目、2人目、同じときに凍結したものも使いますので、どれだけ 余るというのは大分先にならないとわからない。 ○吉村委員長代理  田中先生どうですか。具体的にどのぐらい余剰胚が利用できるか。 ○田中委員  胚が要らないという方は、大抵双子ができた人達ですね。双子であとは要らないとい う人は。 ○吉村委員長代理  先生のところは、1人目できて、凍結しておいて、2人目もそれでやる。 ○田中委員  やります。実際そういう意味で、単胎の場合は必ず次に使います。双子ができた人に は大体半分ぐらい廃棄します。5人に1人いないですね。もう少し少ない、1〜2割で はないですか。 ○辰巳委員  基本的には精子までで、卵子提供もだめというか、そういうふうなスタンスです。胚 については、私は考え中というところで、まだまとまっていません。他人に侵襲を与え ずに、養子と考えていますので、できる方法であるので、賛成してもいいかな、だけど 両親とも違った場合にいろいろ問題が起こってくるかどうかなというところで迷ってい るところです。 ○田中委員  精子、卵子、胚、全ていいと思います。夫婦の精子と卵子を使って産ませる、ホスト マザーもいいと思います。ただし、産まれたときは、特別養子縁組、何かの口実がない と、現行では産んだ人が母親になりますから、特別養子縁組が使えるならば、ホストマ ザーがいいと思います。借り腹は認められない。 ○丸山委員  私は結論的には辰巳先生と同じで、精子、卵子はいい。受精卵までのところです。 ○吉村委員長代理  辰巳先生は卵はだめだとおっしゃっています。 ○丸山委員  私は、精子、卵子よし、受精卵が迷うところで、代理母、借り腹は、現時点では認め られない。 ○石井(美)委員  私は代理母、ホストマザーは禁止、卵子、精子、胚については、もちろんいろいろな 条件を課した上で認めてもよいのではないかというのが今の意見です。 ○加藤委員  明日、また変わるんですか。 ○石井(美)委員  変わるかもしれません。 ○矢内原委員  私は基本的には石井先生と近いですが、精子はやむを得ないだろう。卵子、胚も現状 から言うと、要求は非常に多いだろうからやむを得なくなるだろうけれども、それには 非常に厳しい条件をつけなければならない。代理母、貸し腹はだめです。 ○吉村委員長代理  私は非配偶者間体外受精は原則的に認められないという立場です。精子提供による体 外受精は厳しい条件をつけてOKとする。卵子はだめです。精子は厳しい条件をつけて OKとする。私が一番厳しいですかね。 ○加藤委員  実際やっていることと随分違うじゃないですか。 ○吉村委員長代理  そんなことないです。AIDは認めてますから、ドイツとそんなに違ってないと思い ます。実際にやっているのはAIDだけで、非配偶者間の体外受精はやっていません。  今のうちに、丸山先生、皆さんにお聞きしておきたいことございますか。 ○石井(ト)委員  参考のために聞きたいのですが、余剰胚があって、先生方、余剰胚をほかの人に提供 してもよろしいでしょうかと聞いたことありますか。 ○吉村委員長代理  妊娠した人が余って。 ○石井(ト)委員  余っているから、ほかの人欲しがっているんですけど、あげていただけますか、とい うことを聞いたことありますか。 ○辰巳委員  ないです。 ○石井(ト)委員  念のために。 ○吉村委員長代理  聞いたことないです。 ○石井(ト)委員  聞いたことないですか。私ちょっと聞きたいなと思ったんです。 ○辰巳委員  当然頭にそういうことはなかったので、全然聞いたことありません。 ○石井(ト)委員  可能性として、これから。 ○田中委員  逆に余ったのをもらえませんかという人はいますね。 ○吉村委員長代理  それはいるでしょうね。 ○田中委員  例えば、三つ子産まれたとか、そしたら、その子供を1人もらえないかという人いま すね。三つ子のうち、1人くれないかと、半分冗談ですけれどもね。 ○吉村委員長代理  もう一つ、お聞きしておきたいのは、ドナーとなる方は同胞であるのか、全く第三者 であるべきなのかということについては、先生どう思われますか。 ○石井(ト)委員  私は同胞でいいと思います。日本の文化を考えますと、血統主義がどうしてもありま すので、同胞でも可です。 ○加藤委員  私は親子が年取ったら、余りにも似てないというのは精神的に気持ちが悪くなるので はないかと思うんですね。だから似ているというので、兄弟から提供しても、それは認 めるべきだと思います。 ○矢内原委員  AIDはいいんですか。 ○加藤委員  ええ。 ○矢内原委員  それは矛盾している。 ○辰巳委員  本質的には卵子提供はだめと言っているのであれですが、もし認められる方向であれ ば同胞でも構わないと思うんですが、随分圧力かからないかな、姉妹の人にと思って、 それをすごく心配しています。 ○吉村委員長代理  疑問視ですね。 ○辰巳委員  はい。 ○加藤委員  他人が知るという圧力ですか。 ○辰巳委員  そうです。 ○田中委員  ボランティアであれ、身内であれ、どっちでもいいと思います。かえって区別しない 方がいい。私の気持ち的には身内がいいような気がします。自分の遺伝子がお父さんだ と半分入るような気がしますが。 ○矢内原委員  原則的に匿名というのはないわけですね。 ○田中委員  ええ。それとこれは関係ない話ですが、ちょっと聞いた話ですが、将来的に、提供を 受けるときに、日本にいるアジア系の外国人から安く採ろうという動きがあるという情 報入っています。アジア系難民が日本にもいますよね。そういう話が将来出てきます ね。この辺はしっかりしておかないと。 ○矢内原委員  当然あると思います。商業主義的なものですから、それは頑として反対します。きっ と次の話に出てくるでしょう。 ○丸山委員  私はドナーでもシブリングでもどちらでもいいと思います。 ○加藤委員  匿名でなければならないとは考えていない。 ○丸山委員  同胞ではそれが不可能ですから。同胞も可だと思います。 ○石井(美)委員  私は商業主義よりはよいのではないかと思い始めています。 ○矢内原委員  私は全部匿名で非商業。 ○吉村委員長代理  私も匿名、同胞はだめ。 ○加藤委員  何かそういうので問題起こった事例あるんですか。例えば、おじいさんから精子もら ったとか、トラブルの原因になったとか。 ○吉村委員長代理  私のところで、AIDでなくて、AIBというブラザーをやっていた時期もあったら しいですが、問題起こったことは聞いておりませんが、将来その子供が育った場合に、 おれの子じゃないよということが必ず出てくると思うんです。そういう意味で、私は同 胞はやめるべきだと思います。 ○辰巳委員  養子と何か違いありますか。 ○吉村委員長代理  養子と違いないと思いますが、私はこういうことが一般的に行われるようになってく ると、そういう問題は必ず出てくるだろうと思うんです。財産の問題とか、いろんな問 題が難しいので、理想的には絶対に匿名でやるべきである。 ○田中委員  一理ありますね。 ○吉村委員長代理  商業主義は皆さん当然反対だということですが、あとは何でしたか。 ○加藤委員  商業主義も田中流商業主義もあれば、商業主義の定義が違う。 ○石井(ト)委員  反対です。 ○吉村委員長代理  反対ですね。 ○加藤委員  商業主義反対だといっても、田中先生みたいに、こっちの精子が何万円で、こっちの 精子が何万円というふうにランクまでつけるのはいけないけど、ただ、卵子が30万円ぐ らいならいいじゃないのという。 ○田中委員  あれは採卵した人の話ですから、あれはとっておいていいように思うんですけど、半 分、例えば30個採れて、10個あげるから、そのかわり全額治療費を持つと。それだった ら多分納得してくれるのではないかと思うんです。それを商業主義というのでしょう か。 ○吉村委員長代理  商業主義です。 ○田中委員  商業主義ですか。 ○丸山委員  本人とあっせん業者と違いがあると思うんです。本人の場合も、ごくわずかの交通費 の場合もあるでしょうし、例えば半日つぶして、精子提供に来てもらった場合、交通費 だけを渡す場合と半日分の失われた所得、収入をてん補する場合もあるでしょうし、そ れからプレミアつけて、それより2倍、3倍の代金を払う場合もあると思うんですね。 だから、交通費 2,600円か、半日の手当 4,000円か、3万円か、そのあたり、3万円で ないと、私は商業主義に当たらないような気がする。ですから失われた収入を補てんす るのはやっていい。  現在の慶應のお考えの 7,000円は、そのあたり。 ○吉村委員長代理  1万円。 ○丸山委員  1万円は、学生の場合失われた収入とも考えられるし、ちょっとプレミアがあるかな と思いますが、そのあたり迷います。むしろドナーに対する謝礼というか、金銭支払い よりも、エクセレンスみたいに、あと流通させる際に利益を得るようなことをしてはい かん。商業的に流通させてはいかんという方にウエートを置くべきではないか。 ○石井(美)委員  商業主義に反対です。実費というとわからなくなるからゼロ、というのはどうだろう かと思っています。 ○矢内原委員  反対です。ですから卵、胚の提供もまず起こらない。 ○吉村委員長代理  私は卵の提供は反対ですが、もしやることになれば商業主義はしょうがないと思いま す。例えば、1回来ていただいて1万円、8回来たら8万円、それはやむを得ないと思 います。これをやるのだったら商業主義しかない。 ○矢内原委員  先生のは商業主義と言わないですよ。 ○加藤委員  プラスアルファつきの実費主義。 ○吉村委員長代理  1回、例えば、今薬の治験に来ていただいているのも、それは業者側が払うわけです けど、 5,000円のプリペイドカード払っているわけですから、それに対して注射を打っ て、ある程度危険を負わせているわけですから、1日に1万円程度はやむを得ない。 ○矢内原委員  商業主義というのは、それによってもうけが出なければいい。 ○吉村委員長代理  8万円もらうためにやる人いるかもしれませんし、それを商業主義といえば商業主義 だと思います。 ○丸山委員  職業になりましたら商業主義ですね。 ○吉村委員長代理  それはあり得ますよ。 ○丸山委員  かつての売血みたいに。 ○石井(美)委員  1回で1万円もらえるとなると、アルバイトとして悪くはない。 ○吉村委員長代理  次は国家機関みたいなところが一元的に管理をすることについても大きな問題だと思 うんですが。 ○石井(ト)委員  国家機関になるとか、先ほど言いましたように、今現実の状況では、生育機関という のはできますよね。そういうところで一元化には賛成です。 ○加藤委員  やむを得ないと思います、情報の一元化。 ○辰巳委員  情報の一元化ですね。 ○吉村委員長代理  それは先生、やるところはどうするか、そういうことをまた後で聞きますから。 ○田中委員  難しいですね。私は基本的には不妊症治療の情報がしっかりとどこかが握るのは将来 的に考えると反対です。 ○丸山委員  イギリスのシステムがいいと思っていますから賛成です。 ○辰巳委員  ドネーションに限ってのことですね。 ○吉村委員長代理  非配偶者間の体外受精をする場合です。 ○石井(美)委員  賛成です。 ○吉村委員長代理  私も生育医療センターみたいなところでやるべきだと。情報をちゃんと管理すべき。 個人のところでは、無理だと思います。  施設認定ということがもちろん起こってくると思うんですが、施設認定を可とするか 可とするならば、どこが認定するか。 ○石井(ト)委員  施設認定は絶対やってもらいたい。どこがするかとなりますと、今どういう方法がい いのか、考えているのですが、例えば今の産婦人科学会がやっている認定は質の評価を しないで、ただ成績が上がったということで認定していますね。 ○吉村委員長代理  成績も上がってないですけど。 ○石井(ト)委員  成績を上げることによってすごいことをやっているといった、そんなこと言うと、ま た誤解招くかもわからないのですが。 ○吉村委員長代理  日本産科婦人科学会では具備する条件があって、こういう条件が整っていれば認定し ています。医師もこういう今まで教育を受けてきたといった履歴を提出するようになっ て、それが認定されれば、一応認定ということになっています。 ○石井(ト)委員  そこら辺で信頼するかどうか、産婦人科学会でよく評価できるところが認定するのが いいのかなと思っていますが、そこら辺ははっきりしたことは言えません。 ○吉村委員長代理  認定場所はまだはっきりしない。 ○加藤委員  日弁連のこの考えでは、情報管理センターというのと認定センターは同じになっちゃ うという点が問題だと思います。遺伝情報の管理センターは純粋に遺伝情報の管理セン ターとして独立化させた方がいいと思います。  認定については、私は余りよくわからないのですが、今、日弁連やプロフェッショナ ル・エーシックスで自己管理しているシステムにだんだん近づけるべきではないか。除 名されたら営業できなくなる形に近づけるというのが目標だと思います。 ○辰巳委員  ある程度そういう機関があった方がいいと思いますが、不合理な規制をかけられると 非常に困ると思うので、ない方がいいという気もします。しかし、最低限のところは満 たしているということを認定するところは必要かと考えています。 ○吉村委員長代理  認定するところは。 ○辰巳委員  第三者機関でも別に国でも構わないと思います。 ○田中委員  日弁連の提言では、構成委員は半数以上が医師以外と書いてありますね。それはいい 面もあり、悪い面もあると思うんですが、私はこの2年間、この会に参加して非常によ かったと思いますから、この管理機関がいいと思います。 ○吉村委員長代理  それは国みたいのを想定されていますか。 ○田中委員  本当は日産婦がいいのですが、日産婦の理事会が同じように対応を早く柔軟性を持っ てやっていただければ賛成ですが、それが残念ながらできてないということが、今回の 発端だと思うのでこういうところに頼む方が長い目でみるといいのではないか。 ○丸山委員  私は認定制度はいいと思います。するのはどこがいいのか、日産婦も今田中先生がお っしゃったような体制であればいいかと思うのですが、ちょっとわからないですね。 ○石井(美)委員  イギリス方式の集中管理を考えています。 ○吉村委員長代理  国に準ずる公的機関ですね。 ○石井(美)委員  公的機関。 ○矢内原委員  私は今までの条件がずっと整っていれば、実際に「認定」という言葉がさっきから出 ていますが、今日産婦がやっているのは「登録」で「認定」ではないです。これを「認 定」に変えて、学会の中に置けば、いろいろな罰則規定とかレギュレーションがぴしっ とできたときには学会で十分、学会が認定をする。ただ、それは理事会の外に出すべき だと思います。 ○加藤委員  某学会の内部紛争などを見ていると、認定の権限を学会に与えられたときに、除名合 戦をやるのではないかという凄まじいところもある。学会の内部争いなどを見ている と。自己規制で公正に管理ができるかどうかという点は心配はあります。 ○吉村委員長代理  非配偶者間の体外受精に限っては公的な機関をつくった方がいい。とても学会では難 しいのではないかという感じはあります。 ○矢内原委員  私は先生の言うことに全く賛成です。ただし、そういう機構をつくるプロセスに、こ れから何年も何年もかかって、その間にどんどんいろんなことが行われて、既成事実が 積み重ねられていく。早く対応できるのだったら、学会なりが、今、既存のある団体が それをしなければいけない。不妊学会でもいいし日産婦でも構わない。 ○吉村委員長代理  そのほか、今聞いておかなければいけないことは。 ○丸山委員  さっきドネーションの問題で、矢内原先生が、卵子と受精卵について厳しい条件なら 認めてもよいかなとおっしゃった、その厳しい条件というのは、どのあたりか、少し前 の日産婦の倫理審議会の例外的に個別審査を経てといった案が出ていましたが、ああい うのをお考えなのか、教えていただきたい。 ○矢内原委員  例えば年齢の制限、商業主義を排すれば、まずそこで出てこれませんね。それから記 録の保存と管理、そういうふうすると、多分それだけでも厳しくなってしまう。 ○石井(美)委員  現実には行われない。 ○丸山委員  プロヒビティブな程は厳しくはない。 ○矢内原委員  根本的に今の論議、一番最初に私が言っているのは、こういう逐条審議をしていくと それはNOというだけの論拠ができなくなります。ですから胚まではいいと言わざるを 得ないでしょう、今の法律を適用する限り。ところが精子以外の卵子や胚になりますと 第三者の女性に非常に大きな負担がかかる。商業的なものを排除して出てくることはあ り得ない。現実に厳しいというのは、商業主義とストックする登録ですか、中央の管理 システム、それをやったら出てこないと思います。 ○丸山委員  ドナー側から動かなくなる。 ○矢内原委員  ドナーがいなくなります。 ○丸山委員  この前の倫理審議会の方は、むしろレシピエント側から、あれだけの厳しい審査を受 けると難しいのではないかと私などは受け取ったのですが。 ○矢内原委員  ドナー側。 ○丸山委員  ドナー側の方で厳しくするということですね。 ○吉村委員長代理  そうですね。子供の地位ということから、法的に、例えばだれが親であるとか、そう いうことについては皆さん必要であるというご理解でよろしいですね。例えば、精子を 提供されたと。受けた妻の夫が父親であると、例えば精子だったら。 ○石井(ト)委員  子供の保護のために一応父親、母親をしっかりと特定すると。 ○吉村委員長代理  しっかりと特定する。法的に必要である。 ○石井(ト)委員  それは必要だと思います。 ○加藤委員  建前上は確かに親をどうしても知りたいというのをやめろというのはかわいそうだと 思うんですけど、かなり厳しく制限していいのではないかと思います。ただ、届出さえ 出せば、すぐ親の名前がわかるとか。 ○吉村委員長代理  それは出自を知る権利ですが、そうではなくて、親がだれかということを、要するに 子供のためにそういうことを法律的に決めた方がいい。 ○加藤委員  結構だと思います。 ○吉村委員長代理  それは皆さん。 ○石井(美)委員  産んだ人が母親ということですか。 ○加藤委員  ええ。 ○吉村委員長代理  産んだ人が母親だということはホストマザーは許さないということですね。 ○加藤委員  厳密にはそうです。自動的にそうなりますね。 ○吉村委員長代理  それが法律的に必要だということは皆さん、これをやるためには必要ですということ ですね。  出自を知る権利。今、日弁連が一生懸命言っておられたことですね。 ○石井(ト)委員  子供が知りたいと思ったときには知ることができるような態勢は必要だと思うんです ね。ですけれども、これを知らせなければいけないということはあり得ないと思うんで す。子供はある程度発達段階見ますと、思春期かその前あたりに、自分は実の親の子か 必ずだれでも持つわけです。そういうときに、いとも簡単にどうであるか、そのまま真 に受けることないのであって、だけど、本当に知りたいときは、そういう態勢は整えて おくことは賛成ですが、積極的にだから知らせることに対しては反対。 ○吉村委員長代理  両親が受けるときに、インフォームド・コンセントをするときに、出自を知る権利は ありますよということは言う。 ○石井(ト)委員  ありますよと、そういうことまで言っておいてあげた方がいいと思うんです、将来的 には。 ○加藤委員  出自を知る権利があることは認めるけれども、事実上はかなり厳しく宣言する。ただ し、合理的な理由がある場合、例えば婚姻の近親相姦を避けるとか、遺伝的な傾向を調 べる必要があるとか、合理的な理由があるときは認めなければいけない。 ○辰巳委員  あらかじめ合理的な理由は何かといったフォーマットを決めておいて、そのフォーマ ットで登録をしておいてその範囲を教える。姓名までは教えない。 ○吉村委員長代理  姓名までは教えない。 ○辰巳委員  はい。 ○田中委員  私も同じです。イギリスのコードで見ると、緊急事態が発生し他人に危害が及ぶと判 断されたときのみに公開するとたしか書いてあると思うんですが、その緊急事態という のは感染症だとかそういうことだと思います。私もそういう緊急事態発生以外では、逆 にボランティアの秘密を守るということを保護してあげたいと思います。 ○丸山委員  私ももう申しましたけれども、出自を知る権利は基本的に認めなくてよい。先ほどお っしゃった遺伝病などがわかる可能性があるときにドナーにたどることのできる可能性 は残しておいたらいいですが、近親婚については、この方法でしなくいいのではないか と思っています。 ○石井(美)委員  一定年齢に達した子どもが知りたいと思った場合に知ることができるという態勢をつ くるべきだと思います。 ○吉村委員長代理  それは今回の日弁連の案に近いですね。 ○石井(美)委員  はい。 ○矢内原委員  同じです。 ○吉村委員長代理  私は逆に日弁連とは反対の立場で、特殊な場合を除いて出自を知る権利は準備してお くだけでよいと。要するに誰かということが、最終的な例えば裁判所が誰ですかと聞い た時にのみ知らせるだけでいいのではないかと思います。 ○矢内原委員  特別なときの条件というのは非常に難しいと思うんですね。 ○吉村委員長代理  それは我々が判断できないのではないですか。それは私は裁判所が判断する問題だと 思います。法的に必要性を認めた場合のみ、それ以外は、あえて出自を知る権利を認め る必要はないと言ってもいい。 ○丸山委員  説明のときが難しいですね。 ○田中委員  そうですね。 ○吉村委員長代理  ドナーに対して本当に難しいし、また、子供に出自を知る権利がありますよというこ とを余り全面的にすることは、子供にとっても難しいのではないかと思ったりもするん です。 ○矢内原委員  特別な条件がついたときに、ほかの先生もおっしゃいましたけれども、そのときだけ は権利があるけれども、原則的にはそれはないのだといったスタンスになるのか。 ○吉村委員長代理  原則的にないというスタンス。 ○矢内原委員  そうでしょう。 ○吉村委員長代理  ええ。 ○矢内原委員  そうなると出自を知る権利はないとしないと、いかなる場合でも教えないということ にしないと困る。 ○吉村委員長代理  どちらかといえば、フランスの立場で結構です。  あとはありますか。 ○矢内原委員  先生、御存じだと思いますが、10年後に何が起こるかということをある解剖学者に聞 いたときに、今は代理母とか借り腹の話でNOということの意見がありましたけれども 動物がまたはそういう人工保育器が子供を産むということに関してはどうですか。ブタ が10年後に我々の子供を産む。これはあるイタリアの学者が、10年後に起こってくるこ とはそういうことだと言ってます。 ○加藤委員  人間より高級な生物が代わりに産んでくれるといいですけれども、天使が産んでくれ た子供だったら、すごい子供。 ○矢内原委員  高級である必要はないんですよ。 ○吉村委員長代理  人工子宮ですね。 ○矢内原委員  人工子宮なり動物子宮。 ○田中委員  人工でなくて、生体に借りるわけですね、ほかの動物の子宮を。 ○矢内原委員  それは10年後にはこうなるだろうと言った学者がいたもので。 ○吉村委員長代理  私はそれは考えたくないですね。 ○加藤委員  かなりそれは厄介な問題で。 ○丸山委員  鳥取大学のネズミで精子を育てるのはだめなんですか。 ○吉村委員長代理  精子を育てるということはよろしいが、受精実験はしてはいけないと思いますね。 ○丸山委員  それを使って子供をつくるのはだめ。 ○吉村委員長代理  人の卵子に打ち込んではいけないと思いますね。 ○丸山委員  そうなんですか。 ○矢内原委員  不妊学会はそういう見解です。日産婦はまだ黙っています。 ○丸山委員  不妊学会は公式にそれはだめだと。 ○矢内原委員  出しました。 ○吉村委員長代理  あれには問題点が多過ぎますね。クリアーしなければいけない、受精実験をするため にはですよ。 ○加藤委員  同種の実験を動物と動物の間でやったというケースはあるんですか。人間以外の動物 の。例えばサルの精子をネズミが。 ○田中委員  ありますよ。 ○吉村委員長代理  ありますね。 ○石井(ト)委員  かなり生育したところもあったんじゃないですか。 ○田中委員  種が遠くなればほとんど成功しないです。 ○丸山委員  近かったら成功するんですか。 ○田中委員  マウスとハムスターとか、それはうまくいっていますが、人間はだめです。 ○石井(美)委員  それを含めてですが、最後に光石先生がおっしゃった実験とか、そういうことも検討 する必要があるのではないでしょうか。科技庁の報告書で、ヒト・胚の取扱いについて 包括的に検討する必要性があるということになっているのですが、生殖の問題は、ここ の委員会で検討していると出ているのです。先ほどのネズミで精子を育てるという話も ここの管轄ではないという話で、議論はしてないのですけれども、やはりそういう問題 についても検討する必要があると思います。 ○田中委員  私はそれを言いたかったんです。これから、今考えられないようなことが多分いっぱ い出てくると思うんですよ。それをどこが受け入れて、このような自由な討論していく かなんです。だから先ほど矢内原先生言われたように、例えば今、ヒトブタが、人間の 遺伝子入れ込んで、ヒトの心臓の代わりに使ったりしていますね。こういうことが真剣 に考えられる時代が必ず来ると思います。考えられないような事でもそれを受け入れて 討論して決断を下すような機関が。 ○吉村委員長代理  田中先生がおっしゃっていることもわかるのですが、これをまずしないことには。 ○矢内原委員  10年後と言ったのは、先ほどの遺伝子のことで、田中先生が日弁連の方に言われたこ とに非常に関連して、これは具体的にあったことなんですけど、これは記録に入れてい ただきたくないんですが、実際に血のつながりのない親子がいて、その孫ができたんで すけれども、ある遺伝病を疑ったんですね。そのときに、だれも知らないわけですから 親が心配したのは血液検査なんですね。遺伝子診断。今、親子鑑別は簡単にできますか ら、同じようなことが臓器移植、子供が腎臓の移植がほしいといったときに親があげた いと思いますね。そのときに血液検査が行われる。実際の親子ではないことがそこで明 らかになってしまう。そういう事例はすぐ近くに出てくると思うんですね。ですから、 遺伝情報というものの管理とこれと関連がないわけではなくて、すごく関連があるので す。ですから記録の保存ということと、出自を知る権利、親子関係の記録は置いておか なければいけない。  実際にそれで困られて、その事実を私は知っているので、患者さんから相談を受けた ことがあるんですね。ですからゼロではない。 ○辰巳委員  細胞質のドネーションについて。年齢が高くなって妊娠しない場合、若い人の卵子の 細胞質を注入したり、あるいは自分の核を採ってきて、ほかの人の細胞質に入れる。そ ういうふうなことに関しては、ちょっと先ぐらいに出てくると思うんですね。それはそ れぞれ大学の倫理委員会でいいのか、細胞質だけ借りてくるというようなドネーション に関しては、ここでももう少し話をしなくてはいけなくなるのではないか。ここで通常 のドネーションの結論が出て、法律ができるころには細胞質のドネーションが主流にな っているかもしれない。 ○吉村委員長代理  核をやらないで細胞質。 ○辰巳委員  現実的にすぐ行われるようになるのではないか。 ○石井(美)委員  それは、クローンではないのですか。 ○田中委員  それはクローンにはなりません。 ○吉村委員長代理  ならないですね。 ○矢内原委員  体細胞ではないですから。 ○吉村委員長代理  クローンではならないですよ。 ○加藤委員  核移植の部分は共通だからでしょう。 ○田中委員  厳密には核置換、年取った人と若い人の核を入れ替える。だから、もらってきて入れ るのではなくて、核置換というんですが、アメリカのコーネル大学などでは始まってい ますよ。アメリカの質の悪い卵の核置換はクローンではない、とはっきり言っていま す。体細胞ではなく生殖細胞だから。 ○石井(美)委員  体細胞ではないものもクローンに含めたというふうに聞いているのですが。 ○田中委員  クローンにはないと思います。 ○矢内原委員  クローンの場合はコピーですから、生殖細胞ではなくて、実際の……。 ○吉村委員長代理  クローンではないです。 ○矢内原委員  半分の細胞ですから。 ○石井(美)委員  でも受精卵分割のクローンと言いませんか。 ○吉村委員長代理  受精卵分割も言っています、それはいいんです、クローンと言って。 ○石井(美)委員  同じものをつくれないから。 ○吉村委員長代理  そうです。細胞質だけ借りてくるんです。細胞質が老化するわけですから。 ○石井(美)委員  核移植という点では共通する。 ○吉村委員長代理  出ます。あと、ほかは何でしたか。 ○石井(ト)委員  年齢はいいですか、ドナーの年齢制限。 ○石井(美)委員  ワーキンググループは原案まで作るつもりはないので、たたき台です。 ○吉村委員長代理  あと何かお聞きしておくことありますか。 ○丸山委員  細かいこと言えば、さっきの事実婚、法律婚などもあるのですが。 ○吉村委員長代理  それは基本的なことですね。事実婚も含めるか。 ○石井(ト)委員  含めていいです。 ○加藤委員  大体事実婚はほかの事例でも今認めるようになっているんですか、生殖以外でも。 ○矢内原委員  財産とか税金。 ○吉村委員長代理  税金とか。 ○加藤委員  税金とか相続とか。 ○石井(美)委員  相続はだめです。 ○矢内原委員  だめですか。 ○石井(美)委員  はい。 ○吉村委員長代理  相続はだめですね、この前聞きました。 ○加藤委員  ほかの事実婚関係の承認度に合わせればという形。 ○辰巳委員  公団住宅なんかはいいんでしょう。 ○加藤委員  たしか公団住宅はいいんです。 ○石井(美)委員  福祉関係はよいと思います。 ○辰巳委員  私はOKです。 ○丸山委員  私は認めないです。 ○石井(美)委員  私も否定です。 ○矢内原委員  否定です。 ○吉村委員長代理  非配偶者間体外受精に限っては、ドネーションが伴うのに限っては事実婚は否定。こ ういうものに関しては、婚姻関係に限る。だから、先生がおっしゃったように、非配偶 者間の体外受精をやりたいとおっしゃるならば、ちゃんと婚姻関係を持ってくださいと 言ってお勧めする。 ○吉村委員長代理  普通の体外受精は私は事実婚はいいと思います。 ○石井(ト)委員  私もそれだったらいいです。細かく言えば。 ○吉村委員長代理  ドネーションだったら反対ですね。 ○石井(ト)委員  はい。 ○吉村委員長代理  私は非配偶者間の体外受精に関しては絶対に法律を作ってもらわないと、整合性も合 わないし、だれが親かまたわからなくなってしまう。 ○矢内原委員  私はいいでしょうと言ったのは、今の段階がはっきり浸透してくるときに、日本の事 実婚に対する考え方がまた違ってくる可能性があるんです。今の現状ではそれは認めら れないです。 ○吉村委員長代理  そうですね。  時間も20分になりまして、司会が不手際で申しわけありませんでした。 照会先:児童家庭局 母子保健課 03−3503−1711(代表) 椎葉(内線:3173) 武田(内線:3178)