00/03/30 第2回健やか親子21検討会議事次第 第2回 健やか親子21検討会 厚生省児童家庭局母子保健課             第2回健やか親子21検討会議事次第                             平成12年3月30日 (木)                             13時30分〜16時38分                             霞が関東京會館 1 開会 2 委員紹介 3 議事 (1)「育児不安の解消と子どもの心の安らかな成長の促進」について (2)今後の進め方について (3)その他 (資料) 1 健やか親子21検討会議論たたき台 2 第一回健やか親子21検討会議事次第 (参考資料) ○ 健やか親子21検討会資料集1 ○ 熊谷委員提出資料 ○ 巷野委員提出資料 ○ 小林委員提出資料 ○ それでいいよだいじょうぶ ○ 小さな赤ちゃん ○ 少子化対策推進基本方針と新エンゼルプラン ○大平課長補佐  定刻になりましたので、ただいまから第2回「健やか親子21」検討会を開催いたしま す。本日の予定は22人でございますが、3人の方が若干おくれてまいります。  本日は年度末の大変お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。  まず初めに、前回御欠席で本日初めて出席された委員の先生方を紹介させていただき ます。  岩永委員でございます。  熊谷委員でございます。  中野委員でございます。  それでは、平山座長に以後の議事の進行をお願いいたします。よろしくお願いしま す。 ○平山座長  お忙しい中をありがとうございます。  それでは、本日の議事に入ります前に、まず事務局から本日の資料の確認をお願いい たします。 ○椎葉課長補佐  それでは、資料の確認をさせていただきます。  本日は大変重い荷物、文字どおり重荷の資料でございますけれども、よろしくお願い いたします。  最初に議事次第でございます。この議事次第の中に資料の数字と参考資料のタイトル が載っておりますので、これを参照に御確認いただければと思います。  まず、最初に資料1は健やか親子21検討会議論たたき台でございます。  それから資料2は、第1回の会議の議事次第をそのまままとめたものでございます。  参考資料でございますけれども、健やか親子21検討会資料集ということで3人の子供 が載っている資料集でございます。これは各先生方から御提出いただいた資料を機械的 にまとめたものでございます。  これとは別に熊谷委員提出資料(1)(2)と2部と巷野委員と小林委員からの提出 の資料がございます。  以上が紙の資料でございますけれども、色がついた資料集が3つございます。  1つが「それでいいよだいじょうぶ」、これは巷野先生が中心となっておつくりいた だいたものでございます。  「小さな赤ちゃん」はきのう出来たばかりで、まだ温かい資料集でございます。未熟 児のいろいろなことにつきましてまとめたものでございます。  また、少子化対策基本方針、新エンゼルプランについてのPR用のパンフレットをお 付けしてあります。  以上でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。お手元にそろっておりますね。  それでは、本日の議題に入らせていただきますけれども、前回は「健やか親子21」の 全体につきましてそれぞれ委員の先生方のお立場から御自由に御発言いただくフリーデ ィスカッションということで過ごさせていただきましたが、今回初めて御出席されまし た先生方から、まず最初にそれぞれまた追加という格好で御発言をお願いしたいと思い ます。先ほど御紹介いただきました3人の先生方ですが、まず岩永先生からお願いいた します。 ○岩永委員  私は今、公衆衛生院の行政学部というセクションにいまして、保健計画などこういう 保健活動を進めていくときに全体の枠組みからまず考えていく必要があるだろうという ことを仕事でやっています。  私自身は1980年から1990年まで保健所で所長として仕事をしてきて、1990年から公衆 衛生院のポストに移ったのですけれども、保健所にいたときにデータを集めてどのよう な母子の問題があるのかということを探ってみてもなかなか解決しない訳です。例えば 新生児死亡、赤ちゃんが生まれて死んだといったときには、保健所ですから保健所の所 長は権限がありますので、一言いうと妊娠中のデータがすぐ集まるようになっていて、 それと診断をつき合わせてみても特に見えない訳です。数字でそういう子供がたくさん いる訳ではないし、そういう資料を集めて私が保健所にいるときに計画をつくっている のですけれども、そういうデータを集めてつくった計画は何かというと、母親学級をさ らに充実しなければならないというような、データがなくても出てくるような計画しか 私たちはつくれなくて、何か違うのではないかなと思うことがありました。  もう一つは、お母さんたちの中にもいろいろな人たちがいて、仲間づくりといっても 仲間づくりの上手な人もいるし下手な人もいるし、保健婦さんたちはとにかく仲間づく りを一生懸命しなければというようにして頑張るけれども、もしかしたら苦手な人にと っては苦痛なのではないかなとも思っていた訳です。  今回は「育児不安の解消」という言葉が出てきて、以前から私の関係したところでい つもお話ししていたのですけれども、育児の不安は解消出来ないのではないか、もとも とあるのが当たり前なのではないか。そうだとすると、育児不安はあるのだよ、みんな 不安を持っているのだよというところから出発する方がいいのではないかと思います。  これは思春期の悩みも同じだと思います。悩むのが当たり前なので、大事なことは自 分でどう悩みを楽しむかといいますか、そこまで言うと大げさかもしれないですけれど も、きちんと悩める人をつくらなければいけないのではないか。例えば育児不安を解消 するために友達をつくって、集まる場をつくって知識を与えてというようにするから、 「助産婦さんや保健婦さんは育児に全然不安がないんでしょうね」と言うのですけれど も、特に保健婦の研修会などであなたたちは育児に不安を感じたことはないですかと言 うと、みんないろいろな不安を感じている訳です。だから、そこから出発して、むしろ お母さん自身が自分はどんなお母さんになりたいのか、どういう子育てをしたいのかと いうことを確立するための支援を考えていかないと本質的な解決にならないのではない かと思います。  私の資料にも書きましたけれども、幾ら友達をつくって何とかしてと言われても、ど うしても不安が残る。そうするとまじめなお母さんほど、どうしても不安は消えない、 やはりだめなのではないかと思うとさらに不安を募らせてしまうようなことを、特に保 健所の乳児健診などをしながら、この健診でそのように思わせているのではないかと思 っていました。  私は基本的に、子育てにしてもそうですし、思春期の問題も、子供自身がどう育つか ということについても子供自身が自分の行き先を見つけていく力をつけていくプロセス が思春期の悩みだと思うので、今日の資料にある「それでいいよだいじょうぶ」という 表現がすごく大事なのではないかと思っています。またいろいろ勉強させていただきた いと思います。 ○平山座長  ありがとうございました。  岩永先生は、地域の母子保健に限らないと思いますが、保健計画づくりの指導で東京 へ研修にいらっしゃる保健婦さんたちの教祖的な方でいらっしゃいますので、またいろ いろお知恵を拝借したいと思います。  それでは、続きまして熊谷先生、お願いいたします。 ○熊谷委員  今日の重荷を2つもつくりまして申し訳ありません。  1万3千人の小規模な町の現場の保健婦として30年間働いてきました。昨年退職し 全国の保健婦仲間と一緒に力量形成のための研修・学習会を行っているフリーの立場の 保健婦です。 前回の委員会の内容を読ませていただいて、小林先生等、いろいろな先生方から系統 的に乳幼児検診ををどう考えていくかという提言がされておりまして、私といたしまし ては大変うれしく思いました。と申しますのは、発達チェックや病気の早期発見という ことが中心になっていました乳幼児検診は、医療の充実などで改善されてきました。今 の問題点は、お母さん自身が育児そのものに基本的な悩みを抱えています。そこで、お 母さん自身が育児をどう考えていくかという、母親の育児力形成の学習の場に切り替え てきたのが松川町での乳幼児検診です。相当早くからそういう場としてまいりました。 おかしな話ですが、他町村の保健婦が自分の子供を連れて松川町の乳幼児検診にやっ て来たり、実家に帰ってきた時に参加する母親もいました。保健婦自身が小林先生の 「育児学」の学習をしながら、母親自身が子供の成長・発達の実態を見る力をつけてい く支援をしてきました。そういう面で生物学的な存在として生まれ、社会的な存在とし て育つプロセスを系統的に支えきれたら保健婦として本当に嬉しいと思って仕事をして きた人間です。 重い荷物をしょわせて申し訳ありません。以上です。 ○平山座長  ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。  それでは、九州大学の中野先生からお願いいたします。 ○中野委員  中身につきましては、恐らくこれからも会合が重ねられるのでありましょうからおい おい申し上げていけると思います。前回の皆様方の御発言を知りませんので、とんでも ないことを申させていただきます。  我々は「行間の行」とか「言外の言」とか「すべて腹のうち」とか「それを言っては おしまい」という文化を持った民族で、すべてがあいまいさの中で理解しながらあいま いさで表現している訳です。そういうことをどのように次を変えていくか、こういうこ とを思っています。  およそ9年ぐらい前でしょうか、中長期プランを出しました。あの中で4つぐらいの 大きな軸があって、3つの軸は大変即物的といいましょうか肉体派といいましょうか、 分かりやすい話ですが、もう1つの軸は大変あいまいなものを取り上げて、勇気をつく り上げたのがあのときの行政だったと思います。10年たちました。それをどう実現する かは大変困難な仕事で、しかし、それをしなければいけない。こういう気持ちでいる訳 です。  そうしますと、あいまいさがたくさんありまして、今日押し寄せてきますのは、例え ば情報開示、カルテの開示等々がありますけれども、我々はそれと全く逆行して動いて きています。医療法と医師法の上では応召の義務と善管者の義務を課せられて、何をど う求められているか分からないままにこたえていこうというあいまいさでやっていく。 これをどのように育児等々に生かせるのか。恐らくは討論の末が測定可能なものでしか 提言出来ないということに落ちつくのではないかという、大変大きな悲しみを持ちつつ 進めなければいけないのかということが不安であります。文化に即した測定不可能な、 しかしながら分解予測した経験のようなものからつくり上げられたものに思い切って挑 戦出来ないか。こういうつもりでいきたいと私は思っております。 ○平山座長  ありがとうございました。よろしくお願いいたします。  それでは、本日の議題に入らせていただきまして、議題1「育児不安の解消と子供の 心の安らかな成長の促進」から入りたいと思います。  事務局から御説明をお願いいたします。 ○椎葉課長補佐  それでは、先生方から御提出いただきました資料に基づきまして、私の方から簡単に 資料を御紹介いたしまして、議論の最初といたしたいと思います。  資料でございますけれども、子供の絵が載っている資料集をお開きいただければと思 います。  最初に目次が載ってございまして、目次の中に全員で15名、それからもう1人は追加 でございまして、16名の先生方から資料の御提出をいただいております。  まず、岩永先生のところで3ページをお開きいただければと思います。  岩永先生から御提出の資料でございます。先ほど岩永先生から御説明がありましたけ れども、育児不安というのはそもそも持つのは当たり前ということを前提にすべきであ ろう。そして次の第2パラグラフですけれども、子育ては親と子の関係のあり方のよう なものであり、その親子を取り巻くさまざまな環境に影響を受ける。次のパラグラフで すけれども、本質的な解決への道は母親が自分自身の子育てに対する気持ちをしっかり と持つことではないか。母親自身の子育てに対するコンセプトづくり、自己実現意識が 大事である。どういうお母さんになりたいのか、どういう子供に育てたいかというコン セプトを形成することが必要だとおっしゃっております。  その次のパラグラフですけれども、今の乳幼児健診は異常のチェックに重点が置かれ る余り比較の場になっているということ、それが画一的な支援になっているといった御 指摘。次のページでございますけれども、まず支援をするという考え方で保健所や市町 村で行っている事業を組み立てることが必要ではないか。そして、この指標としては自 分だけで育児をしていると感じている母親の割合など、幾つかの指標がこの取り組みの 評価の指標となり得るのではないかという御指摘でございます。  5ページからは、地域で親子をケアするにはどうしたらいいかということを資料とし て御提出いただいております。  続きまして、日本助産婦会の岡本事務局長から御提出の資料でございます。13ページ でございます。  具体的に何をすべきかという御指摘に関しまして、特に子供にとっても親にとっても 困ったときにいつでも対応してくれる拠点が必要だという御指摘でございます。その拠 点ですけれども、24時間 365日電話で対応している、しかも専門家のいるような「健や か親子支援センター」という無料で相談出来る施設が必要ではないか。この中には看護 職の常在が望ましい。そして、2次対応としては病院、保健所、児童相談所、虐待防止 センターなどと連携をとるようにすべきである。  また、親の支援教育ということで、親になる人が育つように育児を含めた指導を含め た親教育を行うことが必要であると述べられております。  また、次のページ、8番目でございますが、産科のある病院などにおいて助産婦が継 続的にケア出来る体制づくり。気軽に助産婦に相談が出来、育児不安の解消につながる という御指摘でございます。  そして、その他助産婦会の取り組みといたしまして子育て女性健康支援センター活動 を行っておりまして、この充実を図ることが必要だということでございます。  それから専門以外の分野の領域ということで、何をすべきかというところの中で子供 の虐待防止活動が全県で同じサービスの質のレベルで対応されるような取り組みがなさ れるべきだという御指摘でございます。  その次には関連する資料が挙げられておりますけれども、18ページに助産婦会で手が けておられます子育て女性健康支援センターの概要などについて御紹介しております。 19ページの上の方に実際に行っている都道府県と相談の件数、相談の内容などが書かれ ておりまして、20ページに特に問題となった症例ということで16例御紹介いただいてお ります。ほとんどが虐待、マタニティブルー、育児不安という問題でございまして、こ の分野における取り組みの必要性を認識させていただくような資料となってございま す。  続きまして、小林先生提出の資料、39ページでございます。  39ページに母子保健に関する子供虐待の対応策につきましてまとめていただいており ます。特に小林先生の資料で特徴的なのは保健機関の役割と医療の役割を区別されてお り、保健機関の役割につきましてはまず虐待児そのものに対する対応、そういうリスク の高い児に対する対応、そして一般の方々への予防という3点でまとめられておりま す。これにつきましては後ほど小林先生から詳しく御説明をいただけると思いますの で、私の方からは簡単に御紹介させていただきます。  2番目が医療の役割ということで、保健機関と医療機関では役割が違う。医療機関の 役割の中で挙げられているのは、まず早期発見。それから児相への通告、子供の治療、 そしてハイリスク児の発見と発生予防対策について特に新生児医療の時点からケアとフ ォローアップをする必要があることと、残念ながら死亡した方々の分析などを行うとい うことでございます。  そして3番目でございますけれども、特に虐待の問題に関しては発生予防の具体策が 挙げられております。特にハイリスク児対策につきましては、まず健診の場など母子保 健活動でのハイリスク児を把握して育児をサポートするシステム。それから、周産期医 療の立場からメンタルヘルスケアとフォローアップの重要性、そしてハイリスク児への 育児支援の指針の作成、ハイリスク児の親向けの育児のパンフレットも必要だというこ とでございます。一般対策といたしましては子供の発達情緒理解などについての啓蒙と Shaken Baby Syndrome(ゆさぶりシンドローム)の啓発。次の40ページでございますけれ ども、在宅児の再発防止の保健機関の役割ということで幾つかのことが挙げられており ます。  システムとしては、虐待予防、早期発見、再発防止、治療につきまして母子保健活動 には必ずしも明確ではなかった訳でございますが、これを位置づけるということ。しか も、保健所と市町村の役割や児童福祉と保健の役割を明確化する。それから、子と親の メンタルヘルスケア体制を整備する。そして、医療での虐待への取り組みの促進を行 う。そして、育児の支援理念を転換して親と子供の心について、これを守る育児支援の システム、社会が子供と親を大切にするシステムの重要性を挙げております。  親と子供のメンタルヘルスケア全体につきましては4つほど挙げられておりますけれ ども、まず児童精神疾患の医療体制の整備が必要であろう。そして、母子保健での子供 と親のメンタルヘルス。それと、病気になった子供自体のメンタルヘルス。そして、そ の他の臨床心理士、カウンセラー、小児科医自身の小児精神医療の研修が挙げられてご ざいます。  その後は児童虐待のいろいろな取り組みの理論的な発生の機序や、大阪府での取り組 み、周産期医療体制から地域保健につなげるいろいろな取り組みなどが書かれた資料の 御提出をいただいてございます。  その次は、 199ページの古平先生御提出の資料でございます。  まず、10年後はほとんどの母親が職業を持って働く女性になっているのではないかと いうことを前提として出されてございます。その中で幾つか挙げられておりますけれど も、まず健康な赤ちゃんを産む努力が必要である。その次に、特に若いときに育児の経 験を積む。例えば保育園での保育の体験や、アルバイトとしてのベビーシッターの普及 ということが挙げられております。それから、父親の生活態度、ライフスタイルの変更 を強いる。厚生省がSAMのポスターで人気がありましたけれども、「育児をしない男 を父とは呼ばない」、これを言われると私も大変困るのでありますが、そういうことで ございます。それから、次世代を親の世代で応援する育児保険、保育園と幼稚園の融合 という問題でございます。  次のページでございますが、子供の心の安らかな成長の促進に関する用語が「健全な 成長」の方がよろしいのではないかという御意見でございます。その中で幾つか挙げら れておりますけれども、まず大人が変われば子供も変わるということと、母親は全員1 年間の育児休暇をとっていただく。現在は必ずしも全員とっていただけないような形に なっておりますけれども、これを全員とっていただく社会にしていく。それから3人子 政策の推進。どうも兄弟が多いといろいろな人間関係、社会性を学ぶのでこういうこと はどうであろうかということ。ちなみに私のところは3人の子供でございます。  続きまして、乳幼稚園の保母の養成。保育の専門家、よい人材を育成していただく。 それから、経験がある母親を保母に育成するような取り組みはどうであろうか、そして いろいろな相談に乗っていただく。5番目がテレビの子供に与える影響が大きいという ことで、こういう問題もあるという御指摘でございます。  続きまして、熊谷委員御提出の資料でございます。先ほど先生から御紹介いただきま したけれども、少し補足でございます。   203ページでございますが、まず乳児健診を通して保健婦さんたちにいろいろな悩み があったということで、 203ページの下に表が載っております。母親の意識と保健婦の 意識と分かれておりまして、保健婦さんは健診という事業を流している。ところが母親 は、一生懸命やっているのに褒めてくれないとか、何か指摘されるのは嫌だと。保健婦 は異常を発見して押しつけている、母親の方は問題を指摘するだけでどうすればいいか 教えくれない。それから理想と現実は違うという、まさに母親の意識と保健婦の意識を パラレルに出した画期的な資料ではないかと思っております。 次の 204ページの上の方でございますが、母である保健婦自身が我が子を3歳児健診 に連れていかなかったという保健婦自体のこともありまして、そういう問題を指摘して おられます。 205ページの下の方でございますが、松川町での取り組みの中で健診を行ってどうも 気分が重い、充実感がない、指導内容に自信が持てない。それから、疾病の早期発見が 目的とされていたあり方についておかしいのではないかと気づき始めた。その過程の取 り組みを書いてあります。  最後の 218ページの下の方の「おわりに」でございますけれども、乳幼児健診に対す る考え方の変化があった。いろいろ検討した結果、やっと母親の育児形成の場として位 置づいてきたということが書かれておりまして、今後の乳幼児健診のあり方などについ ても議論が深まるのではないかと思っております。 熊谷先生からはほかの資料で2部構成で出されておりますが、これは松川町の取り組 みなどについて書かれた資料でございます。 それから、澤委員からの資料は 221ページでございます。 澤先生からは保健所の立場から、新しい事業を始めるのではなくて今行っている母子 保健法に基づいた事業を時代に合わせて充実することが重要だという御指摘でございま す。具体的に何をなすべきかということで、まず母子健康手帳の交付時にリスクが高い と考えられる人に対して保健婦が面接をして保健所とのつながりをスタートさせること が必要である。それから極小未熟児などへの対応、4カ月や3歳児健診という場のカン ファレンスの徹底、医師会の委託健診について保健所の方に返ってくる例が少ないとい う御指摘。そしてハイリスク児については、地域保健の方に連絡していただけるような ケアシステムの必要性。あとは育児支援、地域のネットワークを御指摘いただいており ます。 保健所以外の領域に対する要望ということで児相に対する御意見がございまして、頑 張ってほしいということと、医療機関、特に傘下の保健所の仕事、役割に対する理解を 深めてほしいという要望。それから、医学生の保健所実習の制度化といった御指摘がご ざいます。あとは保健所のいろいろな活躍の資料でございます。  続きまして、新家先生御提出の資料でございます。  日母の取り組みにつきまして、特に思春期の保健対策と妊娠出産がメインでございま すけれども、今日の育児不安の解消と心の安らかな成長の促進に関するものについて御 紹介したいと思います。  まず、 227ページの2番目でございますけれども、既婚・未婚者を問わず「子供を生 みたい」と思っている女性に安心してお産ができ、健やかな子供を育てていくための支 援が必要だということで、分娩の一時金や保育園の増設という御指摘。 次のページでございますけれども、分娩・育児終了後の職場復帰対策、育児休暇の給 料の総額、出生前の育児相談という御指摘がございます。御提出いただいたものにつき ましては今後検討を行う予定のところでまた御紹介したいと思います。 それから、多田先生御提出の資料、 233ページでございます。 まず出産直後から始まる母と子への支援ということで、新生児が入院中の育児指導を 充実していくべしということでございます。1つ目は、母子同室の普及の点でございま す。母子同室にすることによりまして母乳の哺育率や育児不安や虐待の減少が期待され るという御指摘でございます。それから、新生児も1人の人間としての医療費の請求が 出来るようにするということ。プレネイタルビジットという制度がございますけれども 退院直後から相談が出来るよう、出産前あるいは直後から相談出来る小児科医と知り合 うことが育児不安解消に有効であるという御指摘でございます。 続きまして次のページは、ハイリスク児に対する育児の支援でございます。NICU につきまして、それから新生児病院入院中から育児の支援を行っていくという御指摘で ございます。そして退院後の継続した育児の支援ということで、特にNICUから育児 不安、被虐待児のハイリスク児が退院するということで継続した支援が望まれている。 このためには医療機関の追跡診療のみならず、地域保健との連携強化が必要であるとい うことでございます。  そして、具体的には入院中から地域の保健婦に面接や訪問などをしていただく。そし て、退院した後その保健婦が訪問出来るように退院の連絡の徹底ということが挙げられ ております。  また、安心して妊娠・分娩・育児が出来る医療体制の整備について、 235ページでご ざいますけれども、出産後からの家庭の整備ということで、育児への父親の関与や家族 の重要性、社会での配慮という御指摘がございます。  そして、NICU、新生児医療を担っておりますので、そういう御経験からの資料を 多数いただいております。  続きまして、徳永委員からの資料は 273ページでございます。  特に虐待について絞って御提出いただいておりますが、虐待について自治体の役割を どうするかということでございます。まず乳幼児健診などで育児不安や虐待危機の発見 が出来るという御指摘でございます。その発見するためのスクリーニングシートの開 発。今のものは子供の発達チェックに偏り過ぎていて必ずしも使いやすいものではな い、母親と子供の心の問題も表出出来るような指標を作成すべきであろう。  そして、もう1つは育児不安、産後うつ病の早期発見をする必要がある。現在の産後 うつ病の罹患率は平均7%、これも発見するためのスクリーニングシートの作成が必要 であるというご指摘でございます。また、望まない妊娠を避ける取り組みでございま す。あと、専門的な領域で何がなされるべきかということで、育児不安・虐待のケース 数の把握が必要だという御指摘や関係職員の系統的な研修、対応技術のレベルアップ。 それから、グループセラピーの手法などの導入・普及。大阪にある母子保健医療総合セ ンターのように周産期から地域ケア、研修まで総合的にプログラムのある中核センター の整備。それと、保健所と保健センター(保健福祉センター)との連携、役割分担とい う御指摘でございます。   274ページにはその他産婦人科と小児科医の連携や保健所、保健センターとの連携、 児相との連携、ネットワークなどを御指摘いただいております。あと、いろいろな資料 をいただいてございます。 続きまして、戸田委員からの資料は 359ページでございます。 戸田先生からは、バースエデュケーターとして母親の立場からどのようにしたら伸び 伸びと安心して育児を楽しみ、子供に愛情を注げるのか。そして、子供の豊かな心の成 長をはぐくむには何が必要と思われるかについて提案をいただいております。全部で6 つの提案がございます。1つは、心の問題にリスクのある女性の早期発見を援助するシ ステムをつくる。2つ目は、妊娠前後から女性とパートナーが親としてのポリシーを培 い、育児を社会で共有出来るような環境の整備。3つ目は、妊娠から乳幼児の育児期ま で一貫して出来る母子への心身のプライマリーケアの確立。4つ目は、育児不安に陥っ たときのサポートシステムの充実。5つ目は、産後直後からの母児同室、母乳育児の強 力な推進。6つ目は、吟味された質のよい情報の公開でございます。  以下、詳細に書かれておりまして、まだ御到着いただいていないようでございますが これは後ほど御説明いただけると思います。かいつまんで御説明いたしますと、まず360 ページにはドメスティック・バイオレンス、家庭内の暴力などについての対応が必要で あろう。 361ページには特別なケアを必要とする児の誕生を控えた親に対するカウンセ リングとサポート。それからピアサポート、同じ悩みを持った当事者・経験者たちのグ ループの相談という方々の支援という御指摘がございます。 362ページでございますけれども、この中でいろいろなバースエデュケーションプロ グラムの開発やバースエデュケーターの養成という御指摘。それから、妊娠・出産・育 児に関してナマ情報と生きたモデルとの出会いを促し、出産までに少なくとも1回はす べての妊婦カップルが赤ちゃん連れカップルと触れ合ったことがあるようにするという 実物を見てやりましょうというナマの情報でございます。それから、地域内の世代を越 えた人々の交流の場を増やすということでございます。 363ページには女性が安心して心身の悩みを話せる関係を築くための助産婦のケアの 推進という御指摘。 364ページには、育児不安に陥ったときのサポートシステムの充実の中で夜間でも気 兼ねなく診てもらえる小児科医療の確立や、いろいろな相談に乗っていただくwell baby   clinic が身近にあるような御指摘が挙げられてございます。 365ページでございますけれども、母乳育児を成功させるための10カ条。これはユニ セフとWHOの共同声明がありますけれども、これを強力に推し進める。それから、完 全母児同室制をとるような取り組みはいかがか。働く女性にとっても母乳育児がしやす い社会について御指摘いただいております。 366ページには、吟味された質のよい情報を公開し、EBMを促進するいうことで、 エビデンスに基づいた医療の推進のためのデータベースを作成し、公開するという御指 摘でございます。それに関する資料をかなりいただいておりますので、御参照いただけ ればと思います。  続きまして、中野委員からの御指摘は 413ページでございます。中野先生からは、特 に育児行動を含む母性の健全育成を目的とする母子精神保健施策の拡充が必要である。 特に産後の精神機能障害の早期発見・治療と予防について助産婦のいろいろな教育カリ キュラムの御指摘。特に、全人口サーベイランスによって産後うつ病の発見・治療、精 神面的支援、発症の防止。それから厚生省と文部省などの垣根を取り去るような、ヘゲ モニー闘争を抑制するというようなこと、家庭内の母から娘に情動伝達の道を拓くとい う御指摘などでございます。 続きまして、樋口委員御提出の資料は 417ページでございます。実際の育児に見られ る問題点についてかなり類型化して出されておりまして、家庭機能が弱くなった、マニ ュアルにこだわる、育児情報に振り回される母親、子供への過剰な期待と過干渉が日常 化している、思いどおりにいかない焦り、失望、責任感からストレスが高まって自信を なくしている。1人で密室の中で四六時中、子供と向かい合って過ごす傾向がある。そ して、父親の協力が得られないということ。自己の生き方を優先させる余り育児を怠っ たり放棄する無責任なこともある。また近所づき合いなどがなくなっているという問題 点。  それから、親の世代に見られる問題点、高度経済成長期に何不自由なく育っていると いうことと教育や学歴へのこだわりが高い、特に競争意識を学習している。子供との触 れ合い、さまざまな種類の生活体験がない。テレビなどの情報、コミュニケーション方 法に変化が始まった、人間関係の希薄化ということでございます。  成長する子供に見られる問題点が三ない主義で、時間や空間、仲間がないということ で生活体験不足と耐性の未発達という傾向。それから、思考やコミュニケーションの方 法が大人と違ってきた。また、対人関係のあり方に希薄さが目立つという御指摘がござ います。  どういう目標を立てるべきかということで、一時的に子供を預ける場所を増やすこと とか、同じ悩みを持った親同士が語り合える、仲間が支え合う場を設けること。それか ら、父親の育児参加を促すような社会制度。それと、地域の援助策、相談出来る場を増 やす。それから、ハイリスク者、リスクの高い親子を特別に援助するシステム作りやそ ういう専門家を増やすという御指摘で、これまで御紹介してきた方は、大体同じよう問 題点を御指摘している傾向がうかがわれております。  続きまして 421ページ、愛媛県の櫃本課長からの資料でございます。 まず、健康日本21と新エンゼルプランとの関連性が重要だという御指摘でございまし て、ちょうど真ん中あたりに数字がついているところがありますけれども、健やか親子 21に期待するポイントとして幾つか挙げられております。まず方法論を規定して地域に 押しつけるものではよくない。地域の情報不足についていろいろ働きかけをしてほし い。一律のシステムをかぶせるのではなくて、現状を十分把握した上で体制を補完すべ きだ。それから、ルーチンワークの重視であるということでございます。それから、エ ビデンス・ベースド・メディスンの解釈の問題と地域の医療資源の活用という御指摘が ございます。 そして、具体的に何から手をつけるべきかということで、いろいろな先生方もおっし ゃっておりますけれども、まず既存事業を見直す。それから、第一線のスタッフのサ ポートネットワークシステムをつくっていく、保健所の役割ということで市町村におけ るルーチンワークへの参画という御指摘がございます。 前川先生からの御指摘は 425ページからでございます。特に前川先生からは日本小児 保健協会会長のお立場から協会が何をやってきたかという御指摘と、乳幼児健診のあり 方、早期介入のあり方などにつきまして資料をいただいておりますので、これも後ほど 先生の方から御紹介いただければと思っております。 最後でございます。 481ページからは渡辺先生御提出の資料でございます。 特にアタッチメントの曙とそのリスクということで、母子の愛着の問題でございま す。これについては私の御説明よりも後ほど科学的な御説明をいただけるものと期待し てございます。  そして、巷野先生から御提出いただいた資料が別刷りでございます。 1枚めくっていただいて、まず1ページでございます。育児不安の解消につきまして は育児が孤独にならないような取り組みということで、母親同士の交流の場の機会を多 くする、外出しやすい社会環境の促進。それと、親子の触れ合い時間を十分にとれるよ うにするという幾つかの取り組みの御指摘がございます。 2ページ目でございますけれども、子育てについての知識・技術の普及。特に義務教 育の課程で最も身近な人間についての教育を最優先して行う。特に命の大切さが社会生 活の基本である。それから、先祖から子孫に受け継いできた子育てを子供のころから身 近に感じさせるような教育の機会を持たせることが重要であるという御指摘でございま す。 それから、情報化社会のよりよい子育ての知識と技術の普及のためのテレビ、ラジオ インターネットなどの利用について。また、子育てについての経費の援助の問題、実際 に育児を委託される保育者の質の問題ということで、ベビーシッターや保育所で働く保 育士の問題。特に保育士の養成校における教育課程などの検討も必要という御指摘でご ざいます。 子供の心の安らかな成長に関しては3ページでございますけれども、親子の環境の問 題、子供同士の触れ合いという問題でございます。3番目が自然との触れ合いというこ とで、小さな庭、庭木1本でも虫でも鳥でも犬でも、その存在は子供にとっては大宇宙 の一部ということで、こういう自然と触れ合うことの出来るような環境の整備が挙げら れてございます。 以上、大変駆け足で申し訳ございませんが、御提出いただいた資料についての概要で ございます。 ○平山座長  ありがとうございました。  たくさんの資料を御提出いただきました先生方、ありがとうございました。また、そ れをまとめてこの厚い資料集にしていただいたり、内容をまとめていただいた椎葉課長 補佐、ご苦労さまでございました。  こういうことで多くの先生から資料をいただいておりますが、またこういう資料集は 今後もつくっていただけるそうですので、資料を出していただいた先生、あるいはまだ の先生方もこの調子で必要な資料を今後とも出していただけますとありがたいと思いま すので、よろしくお願いいたします。  今まとめて御説明していただきまして、これから何人かの先生に補足説明をしていた だきたいと思いますけれども、ただいまの椎葉課長補佐の御説明について何か御質問等 はございますでしょうか。  もしよろしければ、各先生方からの補足説明をお願いしたいと思います。資料集の最 後に出てまいりましたけれど、渡辺先生から親子関係の学問的な裏づけについての御説 明を補足していただけますでしょうか。お願いいたします。 ○渡辺委員  今、椎葉課長補佐からそれぞれの現場や領域の方たちの非常にリアルで、そして生き た資料が挙がっている中で、特にアタッチメントの問題に関してもう一度皆さんと共有 出来ればと思いました。アタッチメントの問題というのは、つまり人がゆりかごから墓 場まで自分の生まれ落ちた場所で安心して日々のストレスや不安を、自分なりに一生懸 命乗り越えていくプロセスの中で安心してだれかに頼ったり、あるいは守られる環境が その中で発達していくということですけれども、これはそれぞれの人にとって独特の愛 着体験や愛着関係や愛着システムがある訳ですから極めて個人的で主観的で、これを学 問的に論理化してしまうこと自体に抵抗はあるのですけれども、恐らく私たちがここで 集って考えようとしているのは、みんな一人一人生まれた以上良い人生を送りたい、あ るいは子供を産んだ以上その子は本当に幸せになってほしいと願いながら、なぜそうで はない結果が出てきてしまうのか、そのためにだれかを恨んだり、あるいは自分自身の 罪悪感に悩んだりしなければいけないのかという疑問の中で、私たちは日々生きている 安心感と、その安心感に基づいて冒険して自分を発達させていく喜びの質を高める社会 をつくろうということだと思います。  これは極めて主観的な世界の問題を社会的に扱うという非常に複雑な次元のことに取 り組んでいる訳ですから、私がアタッチメントのお話をするときも無味乾燥な殺伐とし た言葉でお話ししなければいけないのは残念ですけれども、あえてアタッチメントにつ いてコメントさせていただきたいのは、恐らく地球規模で全世界が工業化によって、生 き物としてあるいは柔らかい心を持った人としての生活環境、心理的なエコロジーが急 速につぶされていくのだという認識が日本、欧米だけではなくてアジアの人々とも共有 出来るようになってきていると思います。事実、テクノロジーインターネットなどの発 達によってすさまじい生活のシステムの変化が起きております。そういう中で私たち人 間が毛皮もないし、牙もないし、恐竜のような図体がないにもかかわらず、ここまでと もに生きて、例えば不運にして欠陥や問題を持ちながら生まれてきた命さえも出来る限 りはぐくんでいくという社会をつくった。それは一体何の力によってかということに戻 りますと、それはアタッチメントだと思います。  アタッチメントというのは、皆さん御存じのことをあえて私流に言わせていただきま す。それは私の独断と偏見も混じっておりますので申し訳ないのですけれども、多くの 科学的な研究や臨床的な研究、人の知恵の中で私たちが生き延びるために一番大切なも のは何かということが考えられたときに、ある人は物と言い、ある人は食べ物と言い、 ある人はクルミと言ったのですが、今の時点で生まれ落ちた乳幼児あるいは死んでいく お年寄りにとって大事なのは安心感。その人の主観、その人の感性にとって安心と思わ れる安心感だということが分かりました。ですから、安心感がすべての存在のプライオ リティにある。おいしいものがこなくても、まずいものであっても、その人といると、 そこにいると安心出来るところに人は行くものだということが共有出来たと思います。 その安心感の中にいるときには、その人はその人自身が生まれ持った資質の中の一番い いものが表現系としても出てくるし、無意味な不安や緊張から自分自身を警戒したり防 衛することに費やさないので、その人の持っているエネルギーが外との触れ合いに向か って最大限開いていくことになると言われています。  アタッチメントは赤ちゃんとお母さんの触れ合いということから始まったのですけれ ども、過去20年の研究の中で明らかになったのは、アタッチメントは決して血のつなが りに捕らわれない。それから母・子ではない、年代なども余り関係ない。むしろ人とい う生き物と生き物の響き合いみたいなもの。この人といると、あるいはこの子といると すごく安心だなというものを呼び合って波長がうまくいくと、そのときにともにある感 じで安心出来てすごく楽観的になる。楽観的になると気持ちが外に向いてフルにいろい ろなものを細かく見て、そして上手に落ちついてプランを立てて、最も有効な建設的な 行動がとれるものになっていくことが分かってきました。  私たちはこういう原理をつかんで国際的にみんなで研究しています。二番煎じになっ て申し訳ないのですけれども一つ確認しますと、赤ちゃんは自分自身が命として生き延 びるためにかなり早い時期からアタッチメントのシステムを作動させていて、早くは生 後4〜5週目の赤ちゃんは自分が温かい人という刺激の中にいるかどうかを大体識別し ていると言われています。これは赤ちゃんの主観ですから赤ちゃんが細やかな表情をす るのがよく分かる保母さんやお母さん、おばあちゃんなど、赤ちゃんとともに生きてい る人ははっきり分かりますけれども、もう少し見えた行動としてだれから見ても分かる のが5〜6カ月と言われています。それはお母さんと目を合わせたり、お母さんにしが みついたり、お母さんと一緒に笑ったり、お母さんと一緒に行動して、2人の行動が ハーモニーを持つ。そして、ともに生きていることを楽しんでいる行動に出てくると言 われています。  これはお母さんと子供を一つの原型として研究したからで、波長の合うお父さんと赤 ちゃんでもいいし、血のつながっていない保母さんと赤ちゃんでもいいのですけれども そういうフレキシビリティがあって、そして置き換えがきくと言われています。非常に デリケートな感性で、それが成り立つためには、その赤ちゃんがどんなときに喜んで、 どんなときに居心地が悪いと感じるかというその子の感性を細やかにキャッチする感受 性のある相手がいることです。  もう一つは、その赤ちゃん自身がその相手を自分自身の中に心地よいものを誘発する 相手だと認知していること。そして客観的には、より専門的になりますけれども、細か く見ていくと2人の生きている感じ、呼吸とか視線とか笑い方とか体の動きなどの生き 生きとしたリズムの波長が合っているということです。これがうまくいくと大体生後1 年目に安定した普通の愛着が形成されて、そのときには行動系から見ても不安になった ときにだれから見ても不安なように泣いたり追いかけたりする。満たされるとちゃんと 1人で遊ぶことも出来るという自分自身の実感の主観性が外から見てもよく分かって、 周りの養育者にとってありのままの行動自体を読んでいけばその子がどれくらいのケア を必要としているかが分かる。そういう意味でその子は自分1人で生きている気持ちに なっていながら既に周囲の環境とうまく連動しながら生きているという形だと思いま す。  その最初の1年間に何らかのアタッチメントの形成を阻んでいくものがあるときに不 安定型の愛着が出来て、それを大きく分けると、子供が泣きわめかないでやけにおとな しい、そして一見自立的であるという回避型。おじいちゃん、おばあちゃんが「お利口 さん」と言いかねないですね。あるいは保育園の先生方は「手のかからない」と言いか ねない一つのシステムを形成していく。  第2は、やけに泣いたりわめいたりして全体として落ちついた行動が少ない行動系を 発達させてしまう場合もあります。  もう一つは精神病理とか将来のいろいろな問題につながると言われているのですけれ ども、自分が頼っているはずの養育者が戻ってくると奇妙な不可解な支離滅裂な、ある いは凍りついたり不自然な行動をして反応する赤ちゃんの行動系が出てきます。この場 合、その赤ちゃんがお母さんのことをすごく心配している。例えばお母さんがてんかん 発作を起こすのではないか、あるいは殴るのではないか、いなくなるのではないか、す ごく落ち込むのではないかなど、赤ちゃんが全身をかけて養育者に対してアンテナを張 って全神経を集中しなければいけないような、つまり普通の子供らしいゆとりのある伸 びやかな行動が見られない形が出ると言われています。  これは一つの原型ですけれども、これが乳幼児期、0歳から3歳にかけて、そして5 歳にかけて、そして12歳にかけてとかなり一貫した連続性を持って安定型は安定した愛 着を親以外の周りの人と、あるいは友達や近所の人やほかの大人とつくりやすいし、不 安定型の愛着は不安定型の愛着をほかの人ともつくりやすいという連続性があるので、 乳幼児精神保健の分野では1歳前後に愛着系のゆがみ、不安定型を早く見つけてあげて 決してレッテルを張るような、さらに2次的な愛着システムを壊すようなことを一切せ ずに、さりげなく、工夫や知恵によってそれをほぐして安定型にもっていくというアプ ローチをしています。  そしてこの愛着型は、例えばお母さん自身の心の中にお父さんとの愛着関係がうまく いっていると、おのずと子供との愛着関係もうまくいく。だれかとの愛着関係が一つう まくいっていると、その人のそばの乳幼児はいい愛着が生まれる。お父さんとお母さん がいて、お母さんのぐあいが悪くてもお父さんの精神状態が安定していたら、その子は そちらを選んで生き延びる。そういう融通性がきく。それから、二者関係から三者関係 に発達する可能性を持っていると言われています。そして、家族全体がのんびりとして 一人一人のペースがいいなという感じの人が中心になっている家族ですと非常に安定し た愛着型の家族が出来て、その家族の周辺の人はその家に行くだけで落ちついたりのん びりすると言われています。  愛着というのは母子関係から発達したのですけれども、父母子関係も家族関係も社会 関係も網羅していて、しかも0歳からライフサイクルにわたって一つの展開があると言 われています。  そしてもう一つ大事なのは、特に乳幼児期に起きることですけれども、お母さん自身 が持っている愛着系は育児を通して赤ちゃんの愛着系に伝播しやすい。どういうことか というと、自分自身が一番頼っている人によく受けとめてもらって、そして安心して自 分を出し切って、ゆったりとした感じがしているお母さんは、赤ちゃんに対してもその ように自然になる。ところが自分自身を出してしまうと、お母さんがしかめっ面をする お父さんが大声を出す、だから引っ込めていくことを覚えてしまい、そして我慢が上手 になったために我慢すると心地よいと思い込んでいて、自分自身の本音に余り気がつか ないで来てしまった我慢型のお母さんは、知らない間に手のかからない子供をつくる。 そういうことが世代間伝達として特に過去5年間、ビデオなどもはっきりと示して実証 的に研究されています。  私自身は今小児科で、既に乳幼児期を過ぎてしまった思春期の子供たちのゆがんた愛 着関係を小児科病棟を使ってやっています。10年前の小児科病棟では1〜2年目の研修 医は心身症の子供のケアには1%ぐらいの時間しか使っていませんでした。ところが2 週間前に調査したのですけれども、現在の慶應の小児科医の1年医は実働週78.9時間の うち30%を拒食症など心身症の子供のケアに使っています。そして、すごくよくなって います。ということは、愛された若者や志を持って人をケアしようとしている人たちの 中にあるはぐくまれている愛着、アタッチメントを研修システムの中に上手に組み入れ て、病棟を一種の村のような温かいのんびりとした小児科村のようにしていきますと、 そこでゆがんでいるアタッチメントの子供たちがかなりよくなるということが出ていま す。  実はこれを台北で開かれているアジア小児科学会で同僚のタカハシ助教授が今週月曜 日に発表したところ、各国の人たちからそれこそが大事なのだと。いろいろな領域で社 会心理学的な問題が起きている、その場合には長い年月にわたるいろいろないきさつが あって、良質なアタッチメントを経験出来なかったために生じてしまった行動系がある のだろう。これからはそれを変えていくアタッチメントシステムを豊かに持っている専 門家、あるいはそういう技能を持っている小児科医を育てていかなければいけないとい うことが言われています。  長くなって申し訳ないのですけれども、アタッチメントがそういう意味で国際的にみ んながともに考えていく共通用語になっていることを私の方からも申し上げたいと思い ました。 ○平山座長  ありがとうございました。  ただいま親子関係あるいは家族あるいは人間関係でもあるのでしょうか、そういうも のの成立、愛着の成立ということについて基本的なお話を伺いました。  時間の関係がございますので、現在の人間関係の乱れから生じる児童虐待問題が社会 的に大きな問題になっていますので、何人かの先生方に児童虐待に関係して補足的な御 説明をお願いしたいと思います。  こちらからお願いしてしまって申し訳ございませんが、最初に小林先生から児童虐待 が生じる理論的なメカニズム、地域保健機関の役割などについてお話を伺いたいと思い ます。よろしくお願いします。 ○小林委員  まとまらないたくさんの資料を事務局にお渡しいたしまして、たくさんこピーしてい ただいています。ありがとうございます。  資料集の41ページをごらんいただきたいと思います。虐待という問題は非常に複雑で しかも深く、人間の根源的ないろいろな問題を表していますので、私自身の理解は非常 に偏ったものだと思いますが、30年近く前から保健現場で保健婦さんたちとどう理解し て取り組んでいくかを模索してきた中で参考にしてきたものを御紹介させていただきま す。  41ページに挙げていますのはヘンリー・ケンプの「The battered child syndrome 」 という本、欧米でも虐待のバイブルですが、精神科医のスティールが虐待が発生するメ カニズムを書いておられる章からピックアップしています。42ページの一番上に虐待が 起こる必要4条件と書いてあります。  虐待は養育の問題であり、それが起こるときにはいつもこの4つの条件がそろってい る。親自体が生育歴の中で愛されてこなかったことと、現在の生活にストレスが累積し ていて危機に陥っている。そういう状態なのに援助者がいなくて社会的に孤立している こと。そして、自分の子供の中では親にとって満足出来ない子供が対象になるというこ とです。 援助の方法はまず、出会った者が親の援助者になることによって、3番目の親の社会 的孤立をなくすことから始めて、その援助関係を専門にして2番目の生活のストレスを 減らし、そして虐待によって子供に起きている育ちにくさ(4番目)を改善していき、そ して親の育児自体(1番目)は、親の負担が減った後にもし可能ならば働きかけていきま す。  育児支援という視点からの具体的現実的な援助方法と思い、大阪ではこのことを理解 しての取り組みをしてきています。 そして、41ページでは親の特徴を解説しています。虐待する親は子供時代に愛された 体験がないことが共通している。そして虐待する親に共通するのは、子供への感情移入 が非常に不適切である。これがすべての虐待の親子関係の中にあり、その時の育児は親 のニードが子供のニードに優先してしまう。虐待という現象はいつも起きている訳では ないけれども、親子関係はいつもこういうパターンであって、普段の食事や入浴やおむ つをかえる時さえも子供が親の求めるように従順に正確に適切に反応することが求めら れ、それができないと暴力が起きたり無視される。その親子関係は出産直後の2〜3回 の授乳を観察するだけで区別がつき、虐待に発展しやすい親子は非常に早くから見分け ることが出来ると書いています。  42ページの真ん中から下ぐらいには、ネグレクトはもっと重い背景を持っているとい う理解が要る。そして、育児の支援では知識を伝えることよりも、むしろ母親へのエ モーショナルサポートが虐待の改善に意味があるのだと言っています。 このような事をもとに大阪では、周産期あるいは乳幼児健診の中でハイリスク児を早 期発見して虐待に発展していかないように援助していきたいと、保健領域や大阪府立母 子保健総合医療センターのフォローアップの中でしてきています。  73ページの表5は、大阪の乳幼児虐待の医療保健福祉の合同調査をしたときの背景要 因を一覧表にしています。スティールやケンプが言っているような心理社会的背景が具 体的にこのような率として表れていました。ここを見ますともう一つ気付いていただけ るのは、周産期に把握出来る背景がとても多いことです。虐待の発生予防には先ほど事 務局の方から御紹介がありましたが、これら各々のハイリスク児に対して育児サポート を具体的にどうしていくのかという各論も含めた対策が必要だと思います。  74ページの表8は、大阪府立母子保健総合医療センターは周産期の3次医療センター として20年前にできました。そのフォローアップの中で虐待の子供が多いために予防的 な取り組みを始めました。初期にはフォローアップの中でかなり重篤な虐待に出会いま したけれども、入院中からの虐待についての取り組みを進めてこの分析をした段階では この44人の虐待は、みな退院するときにハイリスクに気づいています。スティールが言 ったように、周産期でハイリスクは把握出来ると思っていいのだろうと思います。  そこで見られた背景要因で有意差があったものを一覧表にしていますが、先ほどの地 域の調査と似たような心理社会的背景があります。育児を懸念する記録は98%とありま す。これは社会的背景ではなくて、助産婦・看護婦が実際の親子の姿を観察する中で育 児を懸念するという記録があった人です。言い換えますと医療現場では社会的背景はな かなか把握しにくいのですが、看護職の方は観察で気付いています。この具体的内容は 親のニードが子供のニードに優先する対応、あるいは子育てをとても負担に思っている 言動で、スティールの観察点が現場でも使えると思ったデータになっています。  そうすると、周産期にハイリスクを把握した後どういうふうに発生予防していくの か。これが母子保健のとても大事な役割だと思いますが、そのことについて参考にして いるのが72ページの表4に挙げさせてさせていただいているものです。これは1986年ぐ らいから何回か米国小児科学会誌に報告された発生予防としてとても有効な方法という ことで、オールズらが出しているものです。出産直後から看護職が家庭訪問をして、頻 度は初め1週間に1回、平均75分。それをだんだん間隔をあけて2歳まで家庭訪問をし て、親への育児支援をしていく方法です。  その内容は3つの柱を挙げていますが、1番目は子供についての理解を増す、2つ目 は育児の私的ネットワークをつくっていく、3番目は公的な育児支援ネットワークをつ くっていくです。2番目、3番目は虐待の援助と同じで、先ほどのケンプ、スティール の方法を予防のときから大事な項目として挙げています。とても興味深かったのが1番 目の内容でした。子供についての理解を増すことに訪問時間の多くを割いていますが、 その内容を見ると、下の3つぐらいが今までの母子保健の中でもしてきたケアについて であり、育児書にも書かれていることです。それよりも上の3つが強調されています。 わが子の気質を知って子供が泣く意味を読み取り、その月齢の社会性、情緒、認知発達 のニードや子供の行動の意味を伝えて、対応方法を母親とともに行動しながら伝えらて いきます。言いかえますと、先ほど渡辺先生がおっしゃっていた、子供を理解して親子 の関係、アタッチメントを深め、発達させていくということを具体的にしているのでは ないかと思います。  このオールズの方法はとても広がっているようで、2年ぐらい前のニューズウィーク の育児の特集にも書かれていました。このやり方が画期的なのは親の育児、環境を整え ることと親が子供の行動の意味や気持を理解できるようにサポートしていることです。 子供が分かるようになれば、子供をかわいくなり、親子関係がよくなり、子育てが楽し くなる。それを産後直後からいかにサポートしていくのかという内容に思われます。 各ハイリスクの育児の困難さについても、もっと理解を深める必要があります。虐待 の中の20%近くが10代の妊娠だと思います。43ページになぜ若年のお母さんの虐待が多 いのか、若年のお母さんの虐待に発展していくことをどう予防したらいいのかについて 見つけた文献です。10代はその人自体が思春期青年期の発達をしていく時期であり、そ の人(親)の発達を守りつつ、その人が子育てをどうしていくのかをサポートするとい うのが基本的な理解です。  そして45ページの表が私はとても興味深かったのですけれども、10代のお母さんは子 供が何カ月のときに何が出来るようになると思っているのかということを調べた表で、 驚くべき結果です。例えば排尿の自立は赤ちゃんがいつ出来るようになると思っている か。12カ月までに出来ると思っている親が43%。権威に服するということは24カ月以上 でないと分からないのに、12カ月までに出来ると思っている親が80%。事の正否を判断 出来る力が1歳までにあると思うのが78%です。これを言いかえますと、このときに子 供が出来なかったらしかるという形に発展していきやすいことになります。子供がそれ ぞれの月齢ではどのくらいの理解が出来、あるいはまだ理解が出来ないかをきちんと親 に伝えていくことをすれば、子供が分かっているのにしないと思い込んで、厳しくしか るということにならないようにできるかもしれません。  虐待をしている親の場合、子供が泣くと自分を責めているように感じたり、あるいは 子供が親の言うことをできないと、出来るのにしない悪い子だととらえる傾向もありま す。そのことで親子関係がより難しくなっていくのを予防していくためには、このよう に子どもの発するサインの意味を正しく伝えていくことということです。これからの母 子保健の中で、親子関係がうまくいかないときに、さりげなくどう働きかけるかの参考 になると思います。 もう少しお時間をいただきますが、大阪では保健機関が虐待の取り組みを10年以上前 から行っています。虐待の保健機関の役割は発生予防や早期発見が大事ですが、もう一 つの大きな役割は在宅乳幼児の再発防止のための援助です。 126ページの下の表3をごらんいただきたいと思いますが、大阪の保健所で援助して いる虐待についての過去4回の調査を挙げています。追加の資料の中に5回目の調査結 果を挙げていますが、虐待の援助数はどんどん増えています。虐待に取り組むことによ って発見数は増え、援助数は増えています。死亡率をごらんいただきたいと思います。 当初は保健機関が援助している虐待の 9.8%が亡くなっていました。ですが、最近の調 査では 2.3%、約4分の1に減っています。医療保健機関の出会う虐待は死亡率が非常 に高く、医療機関からの報告でも1割以上の死亡が報告されています。  大きく変わっている援助をその下に挙げてみました。1回目の1988年の調査の後、大 阪では、医療・保健・福祉が連携しながら早期発見と援助をしていくシステムをつくっ てきました。その中で施設入所率が倍に増えました。発見して危なかったら親と分離し て児童相談所につなげて施設へ入所させていくようになりました。もう一つは、保育所 の入所が22%から42%と倍に増えていました。そして児相との連携をするだけではなく 関係機関が連携してカンファレンスを持ちながら援助していくという事例検討会が63% まで行われるようになりました。この3つの対応が死亡率を下げている可能性がありま す。  特に保健機関の援助としては、保健婦が家庭訪問をして、その家庭の生活背景に合っ た中で育児の基盤を整える援助を行い、さらに育児自体に対する親の相談者になって虐 待を引き起こすマイナスカードをコツコツと減らしていきます。スティールやオールズ の言っていることに近い方法です。その援助を展開していくときに関係機関とネット ワークをつくっていくことがとても大事な方法になっています。 大阪の取り組みを参考にして、今日の資料集の39、40ページに保健機関の役割、医療 機関の役割あるいは発生予防についてどういう方法があるか、あるいは再発防止につい てどのようなことをしていくのがいいのかということについてまとめさせていただいて います。 ○平山座長  御丁寧な御説明をありがとうございました。 ○北村委員 質問をしてよろしいでしょうか。 ○平山座長 児童虐待の説明だけさっとしていただいてからと思いますが、今の御説明に直接です か。 では、忘れないうちにどうぞ。 ○北村委員  小林先生、大変興味深い御報告をありがとうございました。仕事柄ですけれども、2 点ほど質問がございます。  1つは、ニューヨークにある A.Guttmacher Institute が世界の望まない妊娠、意図 しない出産などのデータをまとめているのですけれども、実は日本が望まない妊娠、意 図しない出産、予定外の出産がもちろん中絶も含めて恐らく世界で最も多いぐらいのレ ベルにあります。希望した出産が日本の場合には35〜36%で、それ以外は意図しない妊 娠・出産、中絶となっています。フランスは希望した出産が66%ですが、世界的に見て 例えばフランスなどでの児童虐待の数が少ないというデータはあるのでしょうか。ある いは日本が殊のほか多いという、先ほど意図しない妊娠・出産が虐待に向かう要因の一 つに挙げられておりますけれども。  もう一つは産婦人科医の立場でですが、既に高度生殖医療などを通して生まれる子供 が総出生数の 100分の1近く出てきている訳です。私が不妊というものを社会的な立場 からいろいろ見る中で、そういう医療を受けた人あるいは不妊によってそれが解消して 出産に至った人が虐待に向かうという、不妊と虐待の関係があるのかどうかを教えてい ただきたいと思います。 ○小林委員  その2つともきちんと勉強していないのでお答えしにくいです。ただ、今のところ データとして日本に虐待が多い訳ではなくて、むしろ虐待に一歩先に取り組んでいる欧 米諸国の方がたくさんの虐待の報告があります。ただし、日本が少ないのかは、まだき ちんと比較出来るデータがないとは思います。  不妊との関係については勉強しておりませんが、個人的な体験で、出会っている事例 の中に不妊治療の結果生まれた子供さんが何人かおられます。 ○中野委員  北村先生がおっしゃった最初のほうですが、本当ですか。望まない妊娠が7割ぐらい ということですが、私たちは違うデータを持っています。厚生科学研究で行っている5 大学の方法で1年間 300例収集の母子精神保健プロですが、その中で言いますと、妊娠 うつ病は約15%、妊娠うつ病の第1主因がまさに望まない妊娠です。そうでない集団と 比べて、15%よりも高く上がってくるというのが不思議でしようがないです。今おっし ゃった70%ぐらいは望まない妊娠だというデータがあるとしたら、我々のデータで見る と最大見積もって15%強ぐらいしかない。そのギャップはどこにあるのでしょうか。私 たちのものは今現在の日本のデータです。ちょっと気になりましたので。 ○北村委員  資料は後で先生に。 ○中野委員 それは日本で行った資料ですか。 ○北村委員 恐らく日本は人口問題研究所の阿藤先生あたりが情報を提供しいるのだろうと思いま すが、まとめたのはニューヨークの研究機関です。そのデータはかなりひとり歩きをし ています。 ○中野委員 これは前提にしている数字ですので、討論したらいいと思います。 ○平山座長 ちょっとびっくりしたのですが、また次の機会に資料をお願いいたします。  それでは、時間の関係があるので済みませんが、児童虐待関係の部分の追加のコメン トをいただきたいと思います。あとの先生方は済みませんが5分以内ぐらいをめどにお 願いいたします。  それでは、児童虐待の地域保健の実際の取り組みについて徳永委員、お願いいたしま す。 ○徳永委員  私は地域保健の中で児童虐待に取り組んでおりまして、乳幼児の健診の場面から発見 される虐待もさまざまありますが、それ以外にお母さんの精神病理などから虐待が起こ っている場合もあります。 私の資料は 275ページからです。事例については 279ページから幾つかまとめており まして、発見して介入して、その後お母さんの在宅あるいは施設に入所した後、地域で どのようにフォローアップしていくかというところが非常に難しい訳です。最近では児 童相談所ともネットワークを組みながら対応出来るケースも増えておりますが、保健所 あるいは保健福祉センターだけのかかわりでは難しい。そのネットワークをどのように つくっていくかということが課題であろうと思っています。 もう一つは、発見して介入した後、親のフォローアップをどうするかというところで す。今日は資料をつけませんでしたけれども、実際に虐待母といいますか、育児不安が あったり実際に虐待をしている母親のグループセラピーを月に1回ないし2回行ってい る保健所等があります。そこでお母さんたちが自分の悩みや親から受けた傷つき体験な どを話すことによって仲間との出会いを見つけて心が癒され、虐待の方も少しずつ軽減 していくケース等もあります。その中には乳幼児健診から発見してグループセラピーに つなぐ場合と、もう一つは重症度の高い虐待の母については精神的なかかわりから発見 してつなぐ場合とがあります。グループセラピーを地域保健の中に位置づけていき、お 母さんが身近なところで自分自身の悩みや困っていることを保健婦等と話し合ったり、 あるいは仲間とそういう出会いをすることが一つの回復のあり方としては必要ではない かと思っております。 あとは、子供の虐待防止センターで首都圏一般人口 500人を対象にした虐待の調査を 行いました。 297ページにその資料をつけてあります。その中では、実際に子供をたた いたりしているお母さんたちが1割近くあったこと。先ほど産後うつのことも出ており ました。中野先生が15%ぐらいあるのではないかとおっしゃったのですが、この調査で は9%ぐらいのうつが存在することが分かりました。もう一つは子供とお母さんの相性 の問題で虐待が起こる場面があるということは、小林先生の文献等からもありましたよ うに子供の虐待防止センターの調査の中でも分かりました。 ○中野委員 訂正させていただきます。先ほど15%と言いましたが、妊娠うつ病は妊娠の初期であ りまして、中期に入ると病態が治るかどうかは別として症状は変貌いたします。産後う つ病とおっしゃったのは、私たちの研究班でも10ないし15%あたりでございます。 ○平山座長  ありがとうございました。 それでは、引き続いて保健所の取り組みについて澤先生、お願いしたいと思います。 ○澤委員 それでは、 219ページに非常に実際的な資料がついておりますけれども、それを見な がらお話ししたいと思います。 私はこの会議に出ることになりましたので、現場の人間ですから実際面からの意見を ぜひ分かっていただきたいということで、この会議に出席するに当たって保健婦と母子 担当の事務員を集めて半日がかりで検討してみました。その結果、職員から出たことで は母子保健ほど保健所できちんと系統だって行っているものはないだろうという意見が 強くありました。その中で窓口でいろいろな問題をやりながら感じていることでこれか ら改善できることは何だろうという話で、順番に母親教室から事業をしている中で1つ 1つ考えてみました。 まずは母子保健手帳の交付ということで、母子保健手帳は区によって、また地域によ って大きく違うのですけれども、池袋保健所の場合は区役所の隣にあるという立地条件 があり、6割から7割ぐらいの方が池袋保健所に取りにまいります。その場面で最近、 事務が気づいたことは19歳未満の人が非常に増えてきているということです。非常に増 えてきているといっても、平成9年度が23人で平成10年度が33人ですけれども、増えて くる傾向がある。一番若い方で15歳の方がいまして、せっかくのチャンスだからこうい う場面でまず保健婦が面接したらどうだろうかということで、4月からこういうことを 始めようということです。 虐待のことをとりましても、極小未熟児への対応ということで保健所に退院の連絡票 が来るのですけれども、退院されたときでは既に親も周辺もある程度の態勢がとれてい る。一番不安な時期にかかわるべきではないかという保健婦の意見がありまして、養育 医療の新生児はどうだろうか。このシステムが変わらない以上は新生児を必ず訪問す る。現在、池袋保健所では結核患者で排菌して入院している人の病院に行って保健婦が 面接調査をしています。それをしないと、電話だけでは情報が得にくい。直接病院に行 かせており、それがかなり有効に働いているということもありますので、これからは未 熟児の場合、病院に入院中に必ず訪問する。これも4月から始めることに決まっており ます。  次は4カ月と3歳児健診ですが、私は目黒区と豊島区しか知りませんで、健診が終わ った後、全部かかわった医療機関から派遣されている職員、心理の職員を全部含めて必 ずカンファレンスを行っています。これはどの保健所でも保健センターでも健診をやっ ているところはきちんとしているものだと私は思っておりましたけれども、保健婦に聞 くと流したままで終わってしまっている保健所も多い。このカンファレンスこそ全職種 が集まってするので後につながる部分では非常にいいということで、出来れば全国展開 してほしいということも言っております。  それから、先ほどもありましたけれども、問診票に子供のことしか書く欄がない。親 に関する情報も問診票に入れようということで、今どういう項目にしたらいいかを検討 して来年度中には親に関する項目も入れることにしております。  4番目の医師会委託事業、産婦検診の結果をどう利用出来るかという話をして、私も 予防課長時代に見ていて、保健所の指導や訪問をお願いするというケースはほとんどな いと思っていたのですけれども、そもそも医療機関の人で医師会の理事とか役員とか健 診に来ている医者以外は保健所が何をしているかはほとんど知らないのではないか。そ れなら、保健所がどういうことをしてどういう役割がとれるのかもしっかり知らせてい くべきではないかということで、せっかく委託してお金を払っているのに、異常なしだ けマルがついて来てももったいないのではないかということです。  5番目が育児支援で、 224ページに豊島区の児童館について書いてあるのですけれど も、豊島区では約20年前から保健所だけで事業を展開するのではなくて各児童館を回っ ております。現在24ある児童館のうち半数以上の児童館に月1回、保健婦と栄養士は必 ず行きます。そのほか保健所の歯科、食品、環境、医薬などの全職種が絡みながら、そ のときのテーマに合わせて、そういう人間の配置で月1回は必ず地域に出ていく。そこ では年齢とか何カ月でなければいけないということはなくて、どんな子供さんでも来て いいということで、それを宣伝しながら事業展開をしております。地域に出ていくとい う非常に大事な事業を20年前からやっていたというのは、私は転勤してまだ6年なので かなりいいということで事例として載せさせていただきました。こういうところで親同 士の交流が非常にうまくいって、一見うまくいってそうなグループでも、ほかの人が帰 った後1人だけ残って、そのグループの中の人の悪口を言いたい放題言ってストレスを 解消している親も多いということなのでいいのではないかと思っています。 その手法ですけれども、 222ページに子供の数が減ったのに出張育児相談に希望して くる親子の数は増えてきているというので、保健婦がこのグラフはおもしろいというこ とで出してきました。これは「広報としま」で宣伝しているだけですけれども、参加者 がだんだん増えてきています。 6番目は地域ネットワークの構築ということで、虐待問題がありまして豊島区では区 役所、保健所がリーダーシップをとって昨年から虐待防止ネットワーク準備会を作成し て仕事をしております。最終的には子育て支援課の方で子どもの権利擁護主査というの をつくって4月から動き始める予定です。保健所としてそういうことをやってきたので すけれども、一方では地域割にして保育園、幼稚園、児童館、身障センター等とネット ワークをつくっております。例えば長崎地域は人口8万人しかいないのですけれども、 そこでは地域別に2つのネットワークをつくって職員同士の意見交換会を月1回しまし たり、親同士の交流を図るためのイベント、情報通信のプログラムを組んだチラシなど を配りながら、地域でいろいろな問題を地域別に解決していく事業を展開しておりま す。町内とか区全体を通したネットワークも必要ですけれども、地域別もいいのではな いかと思っております。これは池袋地域でも4月から3カ所ぐらいを目標に取り組む予 定ですが、出来上がるのは少し先になります。 保健所としては、生まれる前の段階からかなりきちんとかかわれるということを有効 に生かしまして、安心して子供を産み、そして健やかに育てる地域を目標にしていま す。この中で保健所のスタッフだけで行っている仕事ではなくて、地域で行っている仕 事はほとんど地域のボランティアです。子育てグループや民生委員などをすべて導入し て事業を行っております。最近では健診事業にも地域の民生委員を全部導入しまして、 1回につき3人ずつですけれども、この地域育相と健診には全部そのように張りつけま して地域の人たちと子育て中のお母さんが顔見知りになって、何かあったら相談したり 地域で会ったら声がかけられるところからの橋渡しが保健所の役割ではないかという認 識でそういうことも積極的に行っております。 以上が保健所の仕事です。 下にありますのは、職員に聞きましたら、児童相談所の職員は5時15分になると電話 中なのに終わりの時間だからと帰ってしまったなどの不満がありました。こういうとこ ろで言っていいのかどうか分からないのですけれども、いろいろな不満がありましたの で書かせていただきました。 3番目は医学生の保健所実習。医者になる前にきちんと実習すれば、保健所の役割は 若いころに頭に入れておいていただければ役に立つかなと思います。今は保健所の善意 で好意的に自分が卒業した学校とか地域の開業医の子供さんたちをお預かりしているの ですけれども、もう少しきちんと教育していけば役割も認識出来て、つなげるのも比較 的うまく出来るのではないかという気持ちがあり、こういうことを書かせていただきま した。 ○平山座長  ありがとうございました。 それでは、児童虐待というといつもハイリスク群の中で未熟児生まれの子供が問題に なりますが、NICUの卒業生をたくさん御経験の多田先生、補足の御説明をお願いい たします。 ○多田委員  私は平山先生が御指摘になりましたNICUに携わっております。小林先生からも御 指摘がありましたように、このような施設で虐待が出てくるということでございまして 前回の会議の後、実は残念ながら1人失ってしまいました。私のところは小林先生のと ころのようにそういうことに対応出来る施設ではないので、この方は非常に若いお母さ んで、まだ10代ですが、おばあさんも育児背景が非常に悪い若い女性でございました。 超未熟児で、結局亡くなってしまったのですが、そんな反省を踏まえまして今日はお話 をさせていただきたいと思います。  一つは、私が提出いたしました資料は安全で快適な妊娠・出産の確保と不妊への支援 の方の資料のようですけれども、実は虐待あるいは一般の母親の援助についてのデータ は私どもも全然ないのです。したがって、いわゆるNICUなどの資料の裏側を読んで いただくとそこが出てくるだろうと思い、この資料を添えさせていただきました。 時間がありませんので細かいところは御説明いたしませんが、我々のところに入って くる超未熟児や極小未熟児の大部分は産科の先生が既に出産前に送ってくださる患者さ んになりまして、院内で初めから診ていたのは前の子供がハイリスクで入院してきた子 供か、あるいは多胎のようなもの、あるいはお母さんの合併症があって不妊症の治療を したというようなことで最初から診ていたというのが大部分でございます。  したがって、いい管理をしてきちんと産科ケアを受けているものからは比較的異常が 出てこない。送っていただくケースも3分の1は母親が身体的、そのほか病的なものを 持っていたハイリスク。3分の1は社会的なハイリスクがある人。3分の1はそのほか ということになると思いますが、そういう感じがしております。したがって、先ほどか ら出ておりますように出生直後からのフォローアップが非常に大事になってまいりま す。 これは最初のところにまとめを書いておいたのですが、 234ページにありますように ぜひともNICUで管理をしている間からその辺に配慮していかなければいけない。そ れから、明らかにハイリスクというものはかなりの部分が分かります。  以前は確かにそのまま帰ってぐあいが悪くなってしまう、親子関係が悪くなるのが多 かったのですが、このごろは随分そこに配慮するので少なくはなっておりますが、逆に 社会的ハイリスクが増えておりますので、御紹介しましたように残念な例も出てまいり ます。したがって、どのように管理するかということで具体的なことも書かせていただ いたのですが、こういうことに対する心理の専門家などにサポートしていただくことと 退院直後から先ほどのように養育医療のときからという話もありましたが、早くから入 院中から保健所にかかわっていただく。あるいは私たちが今考えているのは、退院した 後に看護婦がそのままケースを訪問指導しながら保健所の保健婦などと一緒にそこを引 き継ぎといいますか、家庭に行きながらケアしたら少し引き継ぎがよくなるのではない かという気もしております。医療機関で診てもらっているから保健所には行かないでい いというように親が考えてしまいます。したがって、帰ってしばらくの間は病院の看護 婦も訪問指導が出来るようにすると同時に、保健所と一緒に行って後につなげることが 出来れば、虐待については随分いいのではないかという気がいたします。  現在はNICUに入る子供がハイリスクなだけではなくて、少子化時代になりまして 一般の普通の新生児もかなり背景が悪くなっております。社会的に問題のある方もいま すし、育児になれておりません。特に超未熟児、極小未熟児になると我々医療機関が一 生懸命やって看護婦もかかわってあげたりケースワーカーが入っているのですけれども それよりむしろ大きい未熟児の方が、うちもそうしてもらいたいのにという不満を持つ ことを表明することが多くなってきました。そこでその背景として1に、正常新生児の 方ももう少し面倒を見るといいますか、一緒になって考えてあげることが出来ないだう ろかということで母子同室制を書かせていただいたのは、NICUの反対側の面という 意味です。  NICUの反対側の正常新生児の方が母子同室というので母乳のことももちろん、そ れでこの期間に育児になれていく非常に大事な期間であると思うのですけれども、今は まだ母子同室制にするとお母さんたちが忙しくなる、大変だと。うちも一時改修中にN ICUと産科の方のICUを整備するので母子同室制にいたしましたら患者さんが減っ てしまいました。今あそこは母子同室になっているから大変だということで入院の予約 が減ってしまったという、まだそういう段階です。したがって、これを実現していただ くには、少子化時代でございますので部屋のスペースを広くしたり、あるいは看護婦、 助産婦を増やしてもらう。あるいはドクターもだと思いますが、そういう人的なものを 十分に備えた上での母子同室制にいたしませんと、ただ母子同室制にしたらいいという 時代ではなくなっているような気がいたします。それをここに書かせていただきまし た。  そのためには赤ちゃん自身も一人前の医学管理をしている時代でございますので、十 分な医療費も払っていいのではないかという気もいたしますし、また看護婦を十分確保 出来るだけの医療費という面でもぜひ配慮していかないと今後出来ないのではなかろう か。そこから産科の方のプレネイタルビジットとの協力でさらに広げていくことが出来 ると、そういうものがある程度解決していくと思いますし、NICUに入った場合にも 継続して医療と保健との協力が出来ていくのではなかろうかという気がいたします。  これは後ほど、安全で快適な妊娠・出産の確保というところで出てくると思いますが 国の方も周産期医療についての整備をきちんしてくださるようになってまいりましたの で、そういう点では産科の先生方から子供の育児にハイリスクになりそうだというのも 含めて総合周産期、地域周産期医療センターが機能を果たせるような形は比較的つくり やすいと思います。また、そこに保健あるいは福祉と一緒になっていくことが非常にや りやすいのではなかろうか。  先ほど不妊の問題も出てまいりましたが、確かに不妊の場合には多胎や早産が非常に 多くなりますので、お母様方が不妊で子供を持つことだけが目的で育児が二の次になっ てしまうということはもちろんですけれども、それを除きましても非常にNICUのハ イリスクでございます。私の資料にも添えておきましたが、NICUの3割から4割、 下手すると5割は多胎が占めるようになっています。したがって、一般のお母様方に対 する援助だけではなくて、多胎に対する援助が二重の意味でのハイリスクになっている という意味での産科的あるいはNICUのデータでございましたけれども、参考にして いただければ幸いでございます。 ○平山座長  ありがとうございました。  それでは、虐待の予防絡みのコメントをいただいております最後に、乳幼児健診のあ り方あるいは早期介入について前川先生からお話しいただきたいと思います。 ○前川委員   426ページをごらんください。国の乳幼児の健全育成の大きな柱が乳幼児健診ですの で育児不安の解消と子供の健やかな成長を願いまして、私たち小児保健協会では平成11 年度から「子どもの心の健全育成は乳幼児期から」という全国キャンペーンを行ってお ります。このキャンペーンは心の健全育成をも指向した乳幼児健診の実際、本当の育児 支援、子育てが楽しくなる育児法、楽しいスポーツなどを各支部の小児保健学会で公演 したり、実施指導するものです。 ちなみに、小児保健協会は現在会員が 6,000人で、全国46都道府県に支部があり、支 部会員を入れると2万から3万の全国組織です。 そして、現在一番問題となっております健康指向、育児支援の中心的役割を果たす健 診とは何かということでまとめさせていただきます。  まず、身体発育の解釈の仕方でございますけれども、普通は母子手帳の3パーセンタ イルから下にあると病的で検査ということになっていますけれども、 100人のうち3人 は正常がいるという解釈です。ですから、目方が少ないからミルクを飲ませろとか大き いから制限ということを言わないで、子供に合った身体発育を考えるということ。もう 1つは行動発達が非常に問題になり、それには3つの考慮が要ります。1つは、正常発 達の幅とパターンを知ることです。例えば歩き始めは早い子では、7カ月から歩いてい る子がいます。遅い人では2歳過ぎで歩く。意味のある単語も9〜10カ月から話し、遅 い子は3歳児過ぎです。おむつを取れるのも早い子は1歳半から取れて、遅い子は3歳 過ぎ。そういう幅のあるものを何も1歳6カ月でしゃべらないから、歩かないからと異 常に決めつけるのはよくないということです。パターンにしてもお座りしてハイハイし てつかまり立ちは60%ぐらいで、あとは這わないで、お座りして立ってしまう子や、い ざって下肢をつかないで歩行の遅れる子、あるいは背這いをして移動する子などいろい ろなパターンがあります。ですから、幅とパターンを知った指導をするということ。  2番目は、階段的発達観から風船型的発達観に変える。これは何かといいますと、従 来の健診は何歳で何をするということが主でした。ところがそうではなくて、子供には それぞれの発達レベルがありますので、それに応じた解釈で子供を評価するということ です。例えばもぐもぐ期の子供はまだかみかみ期にいきませんから9カ月になっても後 期離乳食は無理です。おむつを取るのでもまだ排尿感はあっても我慢出来ない段階でし たらおむつを取れません。ですから、言葉にしても何にしてもそういう意味で年齢で解 釈するのではなく、その子の発達レベルに応じて解釈するということ。 3番目は、境界領域というのは正常と異常が重なっている部分ですが、それを正常の 方から眺めて指導するということです。従来はどちらかというと、境界は異常から眺め ていた傾向があるということ。それから、今までの健診の障害の早期発見、早期養育の 考え方を改める。療育は試みますけれども、療育が治らなかったときはむしろその子の 社会生活や社会参加を主な目的とするということです。治そうということ、療育だけが 前面に歩いて、この子の社会生活が無視されることが意外に多い。 次に、一番悩まされている保健指導です。これは保健指導ではなく、いわゆる相談、 助言の形でいく。すなわちマニュアル的指導をやめて個々の家庭と子供に合った指導を するということですけれども、その第一は親の受容です。これは何かというと、親の話 をよく聞くということです。それから、母親がしていることを認めるということだと思 います。まず親に対して「よくやっているわね」など要するにポジティブな言葉を使う ことから始まるのではないかと思います。同じ相談、助言でも達成可能なことを親と相 談して助言するということ。  もう1つはいわゆる育児相談、助言で必要なことに育児方法の選択があります。これ を親のすべきことと、理論的には正しいけれどもなかなか出来づらいこと、どうでもい いことの3つに分けます。親のすべきことは子供を保護して大きくすること、子供の持 っているものを伸ばすことと家庭教育、しつけです。家庭教育には社会生活のしつけと 家庭生活のしつけがあります。保健婦さんたちの保健指導で親が一番悩むのが理論的に は正しいけれども実際になかなか出来ないことです。早寝早起き、変わらぬ育児態度、 子供を褒める、話を聞くなど、母乳もそうです。それに対しては次の理論でいくと気が 楽になります。1つが、育児は理論ではなく生活である。これは巷野先生のお言葉で す。次は理論を知って、それが出来なければできることでいいというセカンド主義の励 行です。3番目は理論を知ってするけれども、完全主義はやめるということです。最後 の心を育てる子育ては何かといいますと、これも同じように子供の話を聞くことと、バ ットマークの子供の欠点や悪いことを言うのではなくて、グッドマークでいくというこ とです。子供のしていることを認めて褒めることから始める。すなわちしかるより褒め るです。それから、何かしたら達成感を与える。よくやったとか、子供の夢を聞くと か、そういうちょっとした親の態度でこれが変わるのではないかと思います。  こういう健康指向の乳健を行うためにこれからどうしたらいいかという具体的方法で すけれども、これには2つあります。まず第一に大切なことは健診医、保健婦などの健 診従事者の教育です。平成11年度に私は全国20カ所ぐらいで講演や実施指導を行いまし たが、これはなかなか大変なことです。もう1つは、市町村の保健婦と保健所の保健婦 や児童相談所、産院等医療機関の連携が特に必要です。先ほどから話に出ているハイリ スク児の家庭等を含めたことが特にこれからの一つの課題になるのではないかと思いま す。もう1つ、健診として先ほどどなたかがおっしゃいましたが、いわゆるハイリスク 児家庭の選別といいますか、スクリーニングが3〜4カ月健診で出来たらいいのではな いかと思います。これは理想からいけば周産期の産院で出来ますけれども、今の制度で は不可能です。  以上、簡単ですけれども、これからの乳幼児健診として健診を通してこういうことを 今努力しているという報告でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。  以上、何人かの先生方から今日のテーマであります「育児不安の解消と子供の心の安 らかな成長の促進」の中で今問題になっている児童虐待の予防、気づきを中心としてい ただいた資料の補足説明をしていただきました。今までの分を通じてで結構ですけれど も、御質問、御意見がございましたらお願いいたします。 ○樋口委員  児童相談所の側から意見を述べさせていただきます。  私自身が3月3日の資料の締め切りに間に合わせるべく慌てて簡単な資料しか出せま せんで、今後、修正加筆して幾つかの資料を出させていただきたいと思っておりますが 415ページに項目立てした意見に加えまして、第1回に配らせていただきました児童相 談所のしおりの中の虐待に関しての相談件数等の統計をあわせて見ていただければ幸い と存じます。 その前に、先ほど豊島保健所の澤先生から御発言がありましたが、児童相談センター は豊島区を管轄しておりますので一言触れさせていただきます。児童センターでは、5 時15分以降の電話は、休日・夜間の緊急連絡用電話に切りかわります。そこで対応する のは警備相談員という非常勤の身分の方で、そのとき緊急ケース以外では、実際にいな ければ全部帰りましたという表現でまとめられてしまっていることもあると思います。 しかし私などはほとんど7時、8時までおりますけれども、そういうときに電話がかか ってくれば、回してもらうようにしています。なお緊急の場合には連絡網を通じ24時間 対応するシステムが都ではきちんと出来ております。問題点について具体的な内容をお っしゃっていただければ。 ○澤委員 どこでも職員は個人的な差がありますけれども、そういう方がいらっしゃるというこ とですので。 ○樋口委員 そういう人もまだいるとすれば由々しいことと思います。それではご説明させていた だきます。  児童相談所が受理しております児童虐待の相談の件数ですけれども、厚生省の企画課 では平成2年から統計をとり始めています。。そのときが 1,101件で、これを 100とし ますと平成7年度では 2,722件、割合とししては 247となっております。平成10年度で は 6,932件、平成2年度の 100に対して 830という全国調査もございます。また、東京 都におきましては昨年度は 714件を受理しておりますが、今年度は2月末で 1,201件、 昨年統計実績をはるかに超えておりまして、前年比も 181.1%といううなぎのぼりの数 になっている現状にございます。 次に資料では触れてございませんけれども、乳児のハイリスクといいますか、虐待を してしまった子供さんについての問題です。児童相談所の場合には入所の時2歳に達し ていないお子さんについて親子分離を行う場合は乳児院に措置することになっておりま す。こうした子どもの中には急性硬膜化血腫で入院して手術の必要な子供がいて、病院 からどうも怪しいということでまず通報のある場合がございます。この場合児相では警 察の方にも通報していただくようにしておりますが、ここがなかなか難しく、警察の方 では密室の出来事のために事故か事件かという判断がとてもつかないということで引き 下がられてしまうことが多いように思われます。 そうするとお医者さんの診断や児童相談所が行う保護者・関係者の面接等の結果に基 づき、虐待か否かの判断を下すことになりますが、お医者さんの方も虐待の確証につい ては実際に難しいところがあるようでございます。親の方はもちろん虐待を否定しま す。これはうっかりしたのだとか、知らなかった、気がついたらこうだったという形で 主張し、児相でいかに「虐待ですよ、こういうふうに赤ちゃんはやってはいけないんで すよ」ということを申しましても、そこで認める親御さんは本当に少ない。こんな時に は乳児院に措置することの困難性を非常に感じます。法の整備が必要と感じているとこ ろです。こうした事については全国児童相談所所長会でも調査しております。衆議院の 青少年特別委員会で児童虐待対策に対する検討が進められておりますが、参考人という ことで私どもの所長や児童福祉司が呼ばれている状況もあります。私としてはそういう 法整備の問題が急務と感じております。それが1点です。 つぎに心理職として継続的にかかわることが必要なケースへの対応についてです。先 ほど御説明いただきましたように、私ども心理職のもとには親御さんから御自分の子育 てで悩んでいる相談、あるいは子供がうまく育たない、学校から児童相談所に行って相 談しなさいと言われて来たという子供が症状を出しているということで親御さんが連れ てくる相談がある。そういう相談にかかわって感じていることを整理したのですけれど も、幼児が親の目を気にして非常にびくびくして緊張してストレスがたまっているとか 精気がなくて行動を奪われているとか、非常に依存的で親の顔色を見て暗い感じがする とか、逆に多動で度を過ぎたいたずらをしているとか、抜毛や夜尿、夜驚、落ちつきな いという行動を持っているお子さんとか様々ですが、そうした子どもさんを見ますと、 どうしてもお母さんの育児相談に継続してかかわることが必要になります。そのお子さ ん1人ずつと個別的にかかわる場合とお母さん同士のグループで話し合いの場を提供す る場合、の両方が必要だなと思っているところで、これが4番目の対策になる訳です。  (1)と(2)につきましては、今のお母さんたちにはフリーでいろいろ話し合える お母さん同士の交流の場を提供してあげることが必要で、その中に専門家といいますか ファミリーケースワーカーやお医者さん、私ども心理職が参画してリスクの高いお母さ んを発見して個別にケアをしていくシステムがどうしても必要だというのが1点。もう 1つは、東京では子ども家庭支援センターの設置を進めており、いま十数区市で開設さ れています。そういうところでは一時預かりというシステムはありますけれども、今後 はレスパイト的な親の疲れということでも預かれるシステムが必要だと思います。そう いうところで預かったお子さんの様子を見て、これは虐待につながりそうだという心配 を発見出来るような体制の充実をさせていくことを痛感しております。  そして(3)に書きました父親の参画です。平成10年度の厚生白書にありますよう に、父親は仕事に支障を来さない範囲では育児協力の意思が高まっているけれども、職 場優先で、仕事を少し削っても育児に参画するところまでは未だいっていない。母親と 父親が家庭の中で子育てに対して共感し合え、共通の認識のもとに子供を育てられると いうことがとても大事だと私も思いますので、父親の参画の見直しを提案したいと思い ます。  もう1つは、地域のなかで気軽に相談出来るところは今でもございますけれども、質 量ともまだまだ不十分で、PRが足りていない。私どものところに寄せられた相談でも 父親からひどい身体的虐待を受けたお子さんが中学1年になって児童相談所に保護され ています。このお子さんは2歳のときから父親に殴られてきていて、その母親は児をか ばってはきていましたが、児童相談所に相談に行けばいいということを知らないで中学 1年まできている。まだまだそういう現状なのだなという実感で、気軽に相談できる機 関をしっかりつくり、きめ細かく相談できるシステムの必要性を訴えたいと思います。  実務上は身体的虐待・ネグレクト・心理的虐待・性的虐待の4つに区分しております が、虐待そのものの定義は法的には明らかにされておりません。そうしたところから親 への対応が困難な状況があります。児童相談所としては親や子へのケアの必要を感じな がらも、現実的には母子を分離し子供を施設に預かるところまでが精一杯で、その後の ケアについては個別での対応に任され、システム化されておりません。虐待の世代間連 鎖を断ち切ることに踏み込んでいく必要があるが、そのためにはそこをシステムとして 行うためには児童相談所だけでは到底及ばない話で、裁判所、保健所、病院、民間機関 警察等の役割分担をシステムとして構築していく必要があると考えております。  もう1つは、先ほど専門性を確立、質的向上と言われましたが、それは私も本当に感 じております。(6)に専門家と書きましたが、精神科医だけではなくて保健婦、臨床 心理職あるいはファミリーワーカーの養成を確立することが大事であると思っておりま す。  心理職のサイドからご意見を述べさせていただきました。 ○平山座長  ありがとうございました。  まだ御意見があると思うのですけれども、司会の不手際で、いただいている時間が残 り少なになってきてしまっております。今日いただいた資料集などに入れていただいて ある御意見をもとに事務局の方で検討会における議論のたたき台をつくっていただいて おります。それを御説明いただいて、これをもとにたたいていただこうというお願いを させていただきたいと思います。 ○椎葉課長補佐  それでは資料1でございますけれども、「健やか親子21検討会議論たたき台」でいろ いろとたたいていただきたいと思います。  それでは、1ページでございます。この資料でございますけれども、前回のこの会議 におきまして私どもの藤崎課長の方から御説明したペーパーをもとに先生方から今回い ただいた資料をかみ砕きまして入れ込んだものでございますので、いろいろ至らないと ころもありますけれども、議論誘発型の資料ということでたたいていただければと思い ます。簡単に御説明いたします。  まず、1ページ、問題認識と取り組みの方向性でございます。問題認識でございます けれども、親と子の心の問題に関して2つの大きな問題がある。1つは、母親の育児不 安・ストレスと子供の心の病との関係の問題。それから、親子関係の極限の形態である 児童虐待の問題の2つです。子供の心の発達は母親の心の状態や養育態度と密接に関係 がある。そして、母親の養育態度は父親や夫婦関係に影響される。母親の多くは妊娠中 の不安や出産の不安、その後の育児不安に至るまで間断なく悩み続けている。すべての 母親がマタニティブルーの基盤を持っていると言える。これはもはや特別の母親のみの 問題ではない。しかしながら、これまで母子保健を担ってきた地域医療や地域保健関係 者ではこのような母親の不安の声に対して必ずしも十分に対応してこなかった。  近年、社会問題化している母親の不安の問題に関しては3つの点が指摘されている。 1つは、社会環境の変化による影響を極めて強く受けている。母と子の心の関係ですけ れども、母の精神状態、親の育児に関する知識や実行力、先輩からの育児の伝承、夫婦 間の育児の負担や楽しみの分かち合い、育児を安心して行える安定した生活基盤などに よって支えられて形成され発達し確立すると言われておりますけれども、近年の少子化 や核家族化、働く母親の増加、地域の育児支援能力の低下など、こういう社会環境の変 化はこれら母と子の健全な心の関係の確立の阻害要因となっており、有効な対策がとら れなければ育児への不安感や孤立感を持つ母親の数が今後増加していくことが予想され その影響を受ける子供の数もまた増加していくであろうという認識でございます。  2つ目が、この問題は21世紀にも引き継がれていく。先ほど虐待が世代間に連鎖する という御指摘がありましたが、そのことを記載しております。  3番目でございますけれども、公衆衛生の観点から見ると問題のマグニチュードと原 因・結果の因果関係が混在している。特に虐待につきましては発生機序が多くの場合が 子供時代に大人から愛情を受けていないことと、生活にストレスがあって危機的な状況 にある。社会的に孤立化して援助者がいない。親にとって意にそぐわない子である。こ の4つの条件がそろったときに虐待が生じるという指摘がなされておりまして、そうい った機序が分かりますと援助方法はこの4条件をそろわなくするためにあらゆる資源を 導入するということで、こういう取り組みによって虐待が改善されるということでござ います。相談相手になることは虐待者の社会的孤立をなくすということで虐待が軽減さ れていくであろうということでありまして、公衆衛生におけるある種の感染症、生活習 慣病対策と同じように有効な虐待予防対策を講じることが可能であることを意味すると いう認識でございます。 そういった中で、妊娠・出産・育児に関する母親の不安を取り除いて伸び伸びと安心 して育児を楽しみ、子供に愛情を注げるよう、また子供の豊かな心の成長をはぐくむた めの取り組みを全国的に総合的に講じることは21世紀の母子保健上極めて重要な対策で あるという認識でございます。  そういう認識のもとに取り組みの方向性でございますが、基本的な方向性は育児の方 法は千差万別でマニュアルによる画一的なことは難しい。そして、不安にはいろいろな 不安がある。各種の不安に適切に対応して親が自信を持って子育てを楽しむようにする ことが本来の支援であろう。このため、妊娠・出産・育児期にかけて育児という点に焦 点を当てた心の問題の観点からのケアシステムを構築し、1人の人間を最適な環境で見 守っていくことが必要であろう。それには母子健康手帳の交付から始まる地域保健の流 れと妊産婦健診により始まる地域医療との流れの融合と、生まれる前のケアと生まれて からのケアの連続性の担保が不可欠であるということでございます。  また、子供についてよく知らない親が出てきているという御指摘でございまして、子 育てについての知識や技術を体験する機会を提供していく。そして、教えるのではなく て親に自分自身の子育てに対する気持ちをしっかりと持たせることが重要で、そのため の支援策を出来るだけ早期に学校教育から行うことが必要だということでございます。  そして、母親の育児の孤立化を防止するために両親や家族、地域の育児能力を高める ことと育児の支援能力を高める。また、子育てのしやすい社会をつくっていく。育児休 暇がとりやすい企業風土の育成などの取り組みも必要だということでございます。  2番目でございますけれども、アプローチの仕方にハイリスクアプローチとポピュ レーションアプローチがあるということで、育児不安に陥りやすい集団や虐待を引き起 しやすいリスクの高い集団はあらかじめ分かっておりますから、こういう方々へのハイ リスクアプローチと、それ以外の一般の方々に対するポピュレーションアプローチの手 法をうまく組み合わせて行うのが効果的であろう。例示でございますけれども、不安や ストレスを持つ可能性の高い妊産婦、虐待しやすい妊産婦に対して早期に介入、継続的 な観察・指導、援助、また問題発現の早期発見と対応を行うこと。一般の方々に対して は、一般の妊産婦に対して相談や教育、予防的環境の提供などを行う。そして、問題が 発現した場合の早期の発見などを行うという取り組みでございます。  次は具体的な取り組みについてです。これは幾つか挙げておりますけれども、まず大 事なことは心の問題対応型へ転換していくということでございます。特に母子の心の問 題に対応するためには地域医療、地域保健とも従来の、ともすると疾病発見・スクリー ニングを中心としたルーチン業務の形態を常に心の意識の問題を意識して対応するもの に変えていく必要がある。  具体的に幾つか例示しております。まず、アといたしまして地域医療の取り組みとい う点を挙げています。医療は従来の救命中心の医療的介入が子供の母親、家族の愛着関 係を阻害することもあるということが指摘されており、愛着関係の良好な形成の観点か らもケアのあり方についてもう一度見直す必要があるのではないかということでござい ます。例えば産科では出産の安全性、快適さにかかわる事項に加えて、育児への意識や 不安のチェック、それに基づいて地域保健ではこういうことをしている、生まれてから 小児科医はこういうことをやっているという紹介を行うということです。それから、心 の問題の発生することの多い出産後でございますけれども、マタニティブルー、精神機 能障害の予防・早期発見・治療という取り組みを推進する必要がある。また、妊娠中ま たは出産直後から始める親と子の愛着関係を促進する支援策としてプレネイタルビジッ トや母子同室、それから母乳哺育の普及を図る必要があるということであります。  4ページでございます。ハイリスク集団でございますけれども、妊産婦、極小未熟児 といったハイリスク集団は退院後も長期に子供の健康の発達や母の健康や愛着形成や養 育などの点で問題が持続することが多いと言われておりますので、医療機関と地域保健 とで連携したフォロー体制、ケアシステムを整える必要があるということでございま す。  また、不妊治療に関する御指摘もございましたけれども、不妊治療を開始する前に治 療の適応や治療のプロセス、今後起こり得る生活の変化などの情報提供をまず行う。そ れから、治療中の不安、妊娠の受容、出産後の育児不安への対応を図ることが重要であ り、特に不妊治療を受ける女性は高齢の方が多い。不妊治療の副作用として多胎や未熟 児を出産することもあるために、不妊治療を受けていない妊婦に比べますと不安が高ま るということで、こういった不安への対応が十分に図られる必要があるということでご ざいます。  そして、小児科については、まず診察時に疾病の診断・治療も大事ですけれども、そ れのみならず親子関係や母親の意識、子供の心の様子、発達への影響などの観察。それ からカウンセリングを行えるようにすることも必要である。  以上のような取り組みが地域医療の現場で総合的に推進されるよう必要な施設整備費 人件費、運営費などの補助、それから診療報酬上での手当も必要となるということでご ざいます。  続きましてイとして、地域保健の取り組みをまとめております。地域保健におきまし てはこれまで疾病の早期発見・早期療養、マニュアル型の保健指導が主に行われていた ということですけれども、これも育児支援の観点から見直す必要があるということでご ざいます。従来の乳幼児の健診は、母親の育児力の形成にも生活改善にもつながってい ないという指摘がある。そして、これらの健診は母親自身が育児力を持つための学習の 場としての役割を果たすことと、母親自身が子供の発達の過程を認識し、みずからが育 児方法を生み出せる力をつけるようにしていくことが必要ではないかということでござ います。  そして乳幼児の集団健診でありますけれども、発達異常や障害の発見も大事でありま すが、これだけではなく、親子関係や親子の心の状態を観察出来るようにすることと育 児の交流の場となること、話を聞いてもらえる安心の場として活用するよう乳幼児集団 健診のあり方を変える必要があるのではないかという指摘でございます。  そして、地域医療との連携によるハイリスク集団に対する周産期から退院後のケアシ ステムの構築を行う必要があり、その場合の保健所の役割が重要であるということでご ざいます。そして、このような育児支援を行うに当たりましては福祉関係を初めとした 地域のさまざまな資源の活用と自主的な民間の育児グループの育成が重要である。そし て、これらの連携、調整、そして地域の組織化につきまして地域保健関係者が力を注ぐ とともに技術を磨く必要があるということでございます。  5ページには、以上のような取り組みが地域保健において推進されるような十分な支 援策が必要であるとまとめてございます。  2番目は虐待について特化しております。虐待に関しましても基本的にはさきに述べ ましたアプローチの中で対応していくということですけれども、特にハイリスクの母子 への周産期から保健婦、助産婦という看護職による家庭訪問による育児サポートが1次 予防としては重要だということで、小林先生の御指摘にもありましたけれども、まず親 に子供の発達の知識を植えつける、育児支援ネットワークをつくる、いろいろな公的な サービスにつなげる、この3つの基本を推進していくということでございます。そして 地域保健や地域医療での対応が児童虐待の予防と早期発見、再発予防などに極めて大き な役割を果たし得ることと、継続的な観察や介入が可能という認識と位置づけを持って いただくことが重要であろう。そして、これまで明確になっていなかった児童虐待予防 につきまして、保健所や市町村保健センターなどにおいても虐待対策を母子保健の主要 事業の一つとして明確に位置づけていただく。そして、積極的な予防活動を展開してい ただくということでございます。これらの活動に当たりましては児相など福祉関係者、 警察、それからいろいろなネットワーク、NPOなどの連携を積極的に図る必要がある とまとめております。  その他でありますけれども、親と子の心の問題につきましては親を含めた関係者がよ く学んでいただくということがまず必要で、医師や助産婦、保健婦、育児支援者等に関 しましては心の問題の早期発見や問題の受け皿、通常の相談、診療場面での担い手とい たしまして、その養成・確保・研修を図っていく必要がある。その中でもとりわけ小児 の精神科やカウンセリングを行う心の専門家の役割が重要である。また、育児不安のカ ウンセリングは無料で24時間 365日利用可能な電話で相談出来るような体制が整備され ることが必要である。また、全般的に言えることですけれども、子供同士の触れ合いや 自然や動物との触れ合いの機会の提供も重要である。今日は戸田先生が御欠席ですけれ ども、ドメスティック・バイオレンスなどへの対応も必要があるとまとめております。  6ページでございますが、そういった中で関係者の役割について記載してございま す。国は関係者による取り組みが国民運動として適切に展開されるよう取り組みを推進 する必要があるということで、国、地方公共団体、専門団体、国民、民間団体などの役 割を幾つか書いてございます。  まず国でございますけれども、育児不安などに関する必要な情報の収集や調査研究な どによって科学的な知見を集める。そして、各主体が参加して国民運動として展開され るよう国レベルの目標や方向・役割分担等の提示、各種制度の整備、育児不安に関する 学習の推進や情報の適切な提供等により各主体の構造の基盤づくりを行う。そして、各 主体が自主的・積極的な行動を展開出来るように促進していくということで、幾つか例 示しておりますが、目標値の設定と評価、それから推進協議会をつくり計画を定期的に フォローアップしていく。これは「健やか親子21」の一番の根本でございます。2番目 が地方の公共団体が地域で支援しやすいような包括的な予算の策定に向けて努力しなけ ればならない。診療報酬における親子の心の問題への対応なども考えなくてはいけな い。また、母子健康手帳などを通じた育児支援情報がうまく提供出来るようなシステム を構築していくこと。そして、何よりも育児不安の実数や虐待の実数の把握を行う。そ れから、健診におけるスクリーニング手法の開発。育児不安や子供、親の心の問題、産 褥期のうつという、ともするとこれまで余り顧みられてこなかった心の問題に視点を置 いたスクリーニング手法の開発。それから各種マニュアル、特に虐待の対処法のマニュ アルの作成、育児不安の解消のためのガイドブックの作成。それから、関係者への系統 的な研修。そして心の問題の専門家、特に児童精神カウンセラーなど。また、国立の成 育医療センター (仮称) が出来ますので、この中で心の問題にどう対応していくか。い ろいろな公衆衛生の手法がございますけれども、ヘルスプロモーションの手法やマーケ ットリサーチ等の手法を用いた母子保健活動の方策の提示。これは例示でございますけ れども、こういうものが必要であろう。  そして地方公共団体でございます。育児に関して地域は必ずしも一定ではございませ んので地方型、都市型といろいろありますけれども、地方公共団体におきましては地域 の育児に関して国に準じた施策を行うとともに、その他独自の施策を自主的・積極的に 策定していただき、いろいろな方々と協力・連携していろいろな施策を地域において総 合的に展開していただく。そして積極的に取り組む必要がある事項の例示といたしまし て、地域における目標値の設定や評価、計画のフォローアップを行っていただく。母子 健康手帳、育児支援情報の提供、特に利用しやすい体系的な情報を提供していく。それ から、外部の専門職、児童精神科医師や助産婦、カウンセラーといった方々を雇い上げ ていただいて育児不安予防対策を推進していただく。また、育児不安・虐待の実態を把 握していただく。  7ページでございますが、育児不安を意識した妊産婦健診・乳幼児健診を実施してい ただく。これは一番大事な柱だと思いますが、地域医療と地域保健の連携によりハイリ スク集団に対する周産期から退院後のケアシステムを構築していただく。そして、母子 保健活動について子供虐待予防対策を展開していただく。また、保健所がケアシステム の重要な役割を担う訳ですけれども、都市型と都道府県型を分けて展開していただく。 都市型は実際に保健所でサービスを行っている健診などとリンクして行っていただく。 都道府県型の保健所は市町村が実施主体で一歩引いた形になっていますけれども、精神 保健などの取り組み、心の対策の取り組みは今でも保健所で行っておりますので、心の 対策とリンクした母子保健活動をやっていただくことを考えていただきたい。それから 研修や地域の育児支援団体などの育成、先進的な自治体からいろいろな情報をいただい て母子保健活動の質を上げていただくという取り組みなどを例示として挙げておりま す。  次に(3)でございますが、専門団体でございます。専門団体におかれましては専門 性を活用いたしまして心の問題の早期の発見、治療、研究、啓発普及、人材の育成、相 談などに積極的にかかわっていただきたい。そして、国や地方公共団体の施策に協力し ていただきたいということでございます。特に産科と小児科の医師の役割といたしまし て、親子の心の問題に対応出来るようカウンセリング機能の向上や地域保健と連携を図 って地域医療を推進していただきたいということでございます。そして、ハイリスクの 妊産婦・極小未熟児などにつきまして退院後も長期に子の健康・発達や母の健康や愛着 形成・養育などの問題があるということでございまして、地域保健と密接に連携してフ ォロー体制の整備にぜひとも協力し推進していただきたいということでございます。  (4)が国民でございますけれども、育児に関する認識を深めていただいて、いろい ろなところが行う施策に協力していただく。日本国みんなでどう育てていくかというこ とでございます。  (5)が民間団体でございますけれども、育児支援に関する活動や調査研究の活動を 行うNPOは国や地方公共団体や専門団体、国民間のコミュニケーションを円滑にする など公益的な視点から組織的に活動を行うことによりまして育児支援対策に大きな役割 を果たす。その自主的・積極的な活動が期待されるという認識でございまして、国や地 方などが行わないところを軽いフットワークでうまく行っていただきたいということで ございます。母子愛育会、家族計画協会などの母子保健活動を行う団体につきましては 親子の心の問題に関する取り組みをも推進していただきたい。そして、市町村で組織さ れております母子保健推進員の活動も、育児不安と心の問題を意識した活動を推進して いただきたいということでございます。  最後のページでございます。以上のような施策が展開されるということで、2010年の 目標値を設定することになっているのですが、指標として仮に挙げたものがこの5点で ございます。基盤が2000年、現在の取り組みで、その数値目標を2010年にこういうふう にしたいという具体的な数字が入ることになっております。  5点ほど挙げております。1つは地域保健の取り組みで、思春期の保健福祉体験学習 は赤ちゃんを抱っこさせるなど触れ合う事業を行っている訳ですけれども、この市町村 数を多くしたい。健全な母性を育成するために教えたいということでございます。それ から、心の問題に対応した健診を実施する市町村数を拡大するのはどうか。それから、 ハイリスク集団へのケアシステムを構築している保健所数、医療機関は母子同室の実施 数、プレネイタルビジット、NICUへの心理指導員の設置数を増やす。虐待は先ほど の小林先生の 126ページの大阪府の取り組みのイメージで書いております。それから母 乳哺育の推進と、育児不安の母親の割合の数を減らそうという以上でございます。 ○平山座長  ありがとうございました。  この前の議論あるいは今日までにいただいた資料等をもとにしていろいろ努力してま とめていただいております。これはたたき材料ということなので今日はこれをたたかな ければいけなかったのですけれども、時間切れになってきてしまいましたので、今の大 ざっぱな説明を伺って何かございますか。 ○中野委員  まず事務局にお願いをしていいですか。今日は1次資料が配られたと思うので、これ は委員から提出したもので膨大なものです。作業には敬意を表しますけれども、厚けれ ばいいものではない。 今の御説明が2次資料と思いますけれども、私がざっと見る限りでは余り根拠がない 印象作成になっています。当然のことながら、これは理念から始まって、私自身おかし いと思うところが幾つかあるので、御意見を申し上げて逆にそれを聞きたかったのです けれども、恐らく持ち帰って意見をまた出せということになるのでしょうね。そうした ら、2回に1回ぐらいは通信委員会に変えてください。 1,200キロを超えてくる意味が ないような気がします。どうぞ運営や時間配分、資料の作成、その意義、取り扱い、こ のあたりをよく考えて運営していただきたい。これはぜひお願いしたいと思います。  平山先生、あと1〜2分ですけれどもいいですか。このたたき台で理念について世代 間連鎖という話をきちんと御存じである。私たちの研究班でもそういうデータは出てい まして、女・女連鎖があること、さらには妊娠の開始から夫婦間の心理的なリピドー 等々を介して次の育児生活に入っていくところです。そういう書き起こしで問題認識は 入っているのですけれども、「○」の4番目ぐらいからポツンと消えてしまって、妊 娠・産婦という「女」が消えてしまうんです。子供が生まれてからすべてが目の前にあ らわれてスタートするという論調を意識しておられるのか。そうではなかったら、少し 見直してください。すなわち妊娠の最初から母親が母性の健全育成を介しながら育児に 面していくというプロセスをつくるということが理念の中に入らないとおかしいという のであります。  そして、マル4からのイ、ウと非常に特徴的なものであるところの虐待に特化してお られる。これはよろしいのだけれども、ではというので後の行政施策の中で虐待対策が 詳しくお話がありました。物量を伴うものとしては非常にイメージしやすいのです。今 日の案で申し上げたように、即物的に表現しやすいものから策定していくとなったら総 花になってしまう。ですから、特化されることは一向に構わないけれども、虐待の裏側 で皆さんがおっしゃっておられた育児一般的なものの処置ということが必要。これを忘 れないようにしてほしいのです。  具体的に言います。キーワードふうに、忘れてはいけないからというので問題認識に ついての3番目の「○」の2行目の「母親の全てがマタニティブルー」。マタニティブ ルーがこういうところに出てくるのはおかしいのでありまして、「不安」に変えてくだ さい。「不安の基盤を持っていると言える」。  それから、「○」の4番目のアの第2行目の「母と子の心の関係のなりたち」はマル 1の前に、例えば先ほども出ました夫が望んだ妊娠という夫婦間の心理的なリピドーを 入れてほしいと思います。  それから、イの終わりのところ、21世紀の連鎖で虐待だけをしていらっしゃるけれど も、これは例えば産後うつ病ひとつで3歳、5歳児の情緒とインテリジェンス、認知療 育の発達が遅れるというデータがあるのです。だから、産後うつ病とか不安という健康 サイドの延長からも次世代にを挙げてほしいのです。よろしいですか。  次、2ページに入りまして、2の取り組みの方向性についての3番目の○です。「妊 娠−出産−育児期にかけて、育児に焦点を当てた」と、いきなりプツンとお母さんが切 れています。すなわち「母性の健全育成」という言葉をこの中に入れてほしいと思いま す。母性の健全育成は妊娠中から始まるというスタンスを忘れないようにしてほしい。 これを申し上げておきます。  次に3ページの具体的な取り組みの3のアの4番目の○、「妊娠中又は出産直後か ら」というのは大変いい書き出しで、そうだと思っておりましたら、またポンと「プレ ネイタルビジット」という即物派に変わります。これは前に助産婦、あるいはコメディ カル、括弧を入れなくても入れてもいいけれども、妊産婦を含めた精神面支援、個別支 援を中に入れてほしい。  4ページから後は修正しているうちに説明が先にいったものだから、追いついていか なくてまだ見ていません。 ○平山座長  ありがとうございました。  今の御指摘の点はもちろん全部ごもっともなのですが、「健やか親子21」の柱4本の うち今日は第4本目から始まってしまっています。その前に思春期の保健対策から妊 娠・出産がこれから出てきますので、そちらとの整合性をまた図っていきたいと思いま す。ありがとうございました。 ○櫃本委員  今のお話ではあるのですが、妊婦の時期の問題点というのは既に議論されていますか ら今回出てきていないので、今回は今のようにいろいろな意見が出たということで私は よかったと思っています。事務局をカバーする訳ではないですけれども、やり方につい ても私は非常に勉強になりました。ただ、これを受けてそれぞれの立場から意見があり どう集約していくかその作業がこれから大変なのだろうと思っています。  特に大きなところで誤解を受けやすい点は、どうしても健診がスクリーニングという 位置づけになって心の問題を取り扱う上でも心のスクリーニングになってしまうという あたりを気をつけるべきだろうと思います。その辺の手法が先行して、とりあえず拾い 出してということになると、結局は今までの繰り返しになってしまうように思います。 先ほど前川先生が言われていた検診の意義の重要な点がぼやけてしまうということ。  それと、これまで保健所は随分ダメージを受けてきた。危機管理の担い手とか何とか 言われながら実は大きく傷ついて、しかも保健婦も傷ついてきた中で、今この時期に保 健所のかかわり方は重要だと思います。政令市のかかわり方は、先ほどの澤先生の話で いけば非常にメリットがある訳ですけれども、かといって全部区のような形で政令市が 出来るかというと難しいと思います。そうなると、都道府県型の保健所が地域保健法に よって市町村と分離されてしまった背景がある。本当の法の趣旨は分離ではないはずで すけれども、専門は保健所でルーチンワークは市町村に頼んだよということで区分され てしまっている現状があります。どうやって地域保健全体の中で市町村に保健所が食い 込みやすいようにしていくか。そうできればかなりのルーチンワークが生き返ってくる と私は思っています。その中でルーチンワークが保健行政とか予防という意識をなるべ く捨てて、福祉と医療を結びつける手段なのだという割り切りの中で、実態を把握した り医療とつなげたりというネットワークの手段として保健所がきちんとバックアップ出 来るように裏づけが何か欲しいと考えています。  国の役割として1つ置いてほしいのは、最終的に虐待には法的な支援が要るだろうと 思いますので、その辺の表現なども自分なりに書いてまたお送りしたいと思いますけれ ども、よろしくお願いいたしたいと思います。 ○平山座長  ありがとうございました。  通知を申し上げた中での終わる時間が4時半ということになっておりますので、なる べく急ぎますが、会場の方は若干の延長は出来るようです。 今お話が出ましたようにたたき台を今日この場でたたいている時間がなくなってしま いましたので、今日までの御議論を聞いていただき、またこれをまとめたものを見てい ただきまして、ここのところはこう思うということを書類でといいますか、これに書き 込んでも何でもいいのですが、そういうものを次の回までに送っていただいて、また整 理するという段階を一つ入れましょうか。  そうでないと、この場だけでお話し切れないと思います。普通は会議というと大体2 時間というのが常識ですが、この委員会は遠くから来ていただく先生もおられるという ことで3時間という長い時間をいただいておりますけれども、それにしても十分な議論 をし切れないというのが正直なところですので、書類に書き込んだりしたものをあらか じめいただいて整理する時間をいただきたいと思います。  これからの予定、進め方について今のところのお考えをお聞かせいただけますか。 ○藤崎母子保健課長  本当に先生方には大変に長時間で、しかもこういう形で申し訳ないと思っております が、いかんせん私どもの会の設定の仕方が大変アンビシャスでありまして、21世紀の母 子保健ビジョンを大きな4つの柱を立てて今年中につくって何とか示したいという思い であります。本来であれば1つ1つの柱が1年ぐらいかけてやるテーマかなという認識 は持っておりますので、このような進め方になっておりますことを御容赦願いたいと考 えております。  しかし、議論は当然尽くしていただかなければいけない訳ですので、中野先生がおっ しゃられましたように御議論いただけなければ意味がないという認識は持っておりま す。今日のこのテーマも今日時間が足りなければ次回、思春期保健の前に当然議論して いただくという前提でシナリオも平山先生にお渡ししてある訳ですので、今日の時間の 範囲内で議論していただけるところはしていただきたい。その上で、中野先生からも御 指摘がありましたが、個別の事実認識の問題とか間違いの点、これは具体的に御指摘い ただいて我々の方として最良のものを次回に準備して、それでもって再度議論していた だくことになっております。 そういう意味で前回、これから先のスケジュールと1回1回のテーマを提示した訳で すけれども、これは議論の状況によっては当然に変更もあり得ますし、若干変わりなが ら展開していくということでいきたいと思います。そういう意味では今日のテーマであ りました4つ目の柱の心の問題は全体の4つの柱の中で最もヘビーな内容だろうと我々 も考えておりまして、恐らくあとのテーマはもう少しスムーズにいくであろうと思いま すので、まずこの問題をじっくり御議論いただきながら次にまいりたいと考えておりま す。 ○平山座長  ありがとうございました。  次回を大体いつごろというあたりのスケジュールが何かありましたらお願いします。 ○椎葉課長補佐  次回の開催は、4月の下旬ごろと考えておりますが、そういう日程でもよろしゅうご ざいますか。一応、思春期保健と今日の積み残しのところ、2つの議論ということでお 願いいたします。 ○平山座長  5月の初めは本当のすごい連休のようでございますので、それまでの間でどこか皆様 方の御都合の合う日を出来るだけ選んでいただきたいと思いますが、これは今日伺いま すか。それとも後から表を配っていただけますか。 ○椎葉課長補佐  もしよろしければ今日、4月24日の週であいているところがございましたら、大体午 後のこのような時間にセットしたいという感じもありますけれども。 ○平山座長  それでは強引ですが、4月24日の週で時間帯は午後の今日の時間帯、私が今あいてい る時間で伺いたいと思うのですけれども、24日(月)の午後、御都合の悪い先生、手を 挙げていただきたいのですが、かなり大勢御都合が悪いですね。 それでは25日(火)、御都合の悪い先生。ありがとうございます。 26日(水)、御都合の悪い先生。 28日(金)の午後、御都合の悪い先生。ありがとうございます。  いずれの日もかなりの手が挙がってしまっているのですけれども、どうしましょう か。少し遡って、前の週の後半を伺ってみましょうか。 念のために4月21日 (金) 、ご都合の悪い先生。多いですね、ありがとうございまし た。 先ほど中野先生もおっしゃったけれども、書類をいただいて、整理する時間を少しい ただいて5月に入ってからの御都合をます目でもって至急皆様方にお伺いしていただけ ませんか。 御意見を4月の半ばぐらいまでにちょうだいして整理していただく。それから、追加 しての資料をいただける方も同じようにいただいて、間に合う限りまたこういうものに まとめていただくということでお願いしたらいかがでしょうか。 ○椎葉課長補佐  そのようにさせていただきます。 ○平山座長  それでは、今日このたたき台として今説明をいただきましたこれに赤字ででも書き込 んでいただいても結構ですし、それ以外に書いたものを送っていただいても結構ですが 恐縮ですが、あと整理する都合がございましょうから、これを4月15日ぐらいまでに御 意見がございましたらぜひお送りいただいて、私が拝見してもいろいろ直したいところ 注文したいこともございますので、そういうことでお願いしたいと思います。  今日、全員の先生から御意見を伺う時間をなくしてしまいまして大変申し訳ございま せんでしたが、いろいろ貴重な御意見あるいは大事な資料をちょうだいしましたので、 これを使いながらまた次のステップに進んでまいりたいと思います。  次回は5月になりそうですけれども、今日のたたき台の分を御議論いただくのと第1 の柱に立てておりました思春期の保健対策の強化と健康教育の推進というあたりのテー マを中心にまた議論を始めたいと思います。そういうことでよろしゅうございましょう か。  それから、こういう健康教育ということになりますと厚生省だけという訳にはいかな くて、文部省との連携なども必要になると思いますが、今日私が伺ったところでは文部 省の学校健康教育課健康教育企画室の大場室長にオブザーバーで出席していただいてお ります。またこれからも文部省の御意見を伺う機会があると思いますが、よろしくお願 いいたします。  そのほかにオブザーバーで来ていらっしゃる方で関係がある方はいらっしゃいます か。厚生省の中の方は皆様御関係があると思いますが、よろしゅうございますか。  それでは、ありがとうございました。座長の不手際もございまして、やや不十分な思 いでお帰りになっていただいてしまう方も多いかと思いますけれども、また次回もござ いますし、書類もお願いしたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。  最後に母子保健課長、ご挨拶いただけますか。 ○藤崎母子保健課長  特にございませんが、本当に長時間にわたりましてありがとうございました。不完全 燃焼の部分は重ねておわび申し上げますけれども、日本の21世紀の母子保健にとって大 変重要な課題ですので、ぜひこれからもおつき合いをよろしくお願いいたしたいと思い ます。  本日はどうもありがとうございました。 ○平山座長  どうもありがとうございました。またよろしくお願いいたします。                                       (了) 照会先: 児童家庭局母子保健課 03−35503−1711(代表) 椎葉(内線3173)