00/03/29 第3回知的障害者の高齢化対応検討会議事録 第3回知的障害者の高齢化対応検討会議事録 1 日 時   平成12年3月29日(水)15時〜17時 2 場 所   厚生省別館 共用第12会議室 3 出席委員 (五十音順)         今村理一、牛谷正人、大林美秋、小野沢昇、北沢清司、吉川武彦         末光 茂、玉井弘之、丹下芳典、遅塚昭彦、新堀裕二、橋本泰子         前田大作、室崎富恵、山梨昭三  吉川座長 定刻でございますので、全員お集まりではございませんが、始めさせていただきま す。  きょうは第3回目の会合でございますが、事務局から、本日配布されました資料に関 してご説明をいただくところから始めたいと思います。  事務局  資料でございますが、資料1として論点メモがございます。  資料2といたしまして「知的障害者の高齢化対応検討会参考資料」がございます。  それから「平成11年度の年間指導計画案」と「地域福祉権利擁護事業」のパンフレッ トでございます。  最後に前回の検討会の未定稿の「知的障害者の高齢化対応委員会 第2回議事録」が ございます。これにつきましては各先生方にお目通しいただき、確認をお願いいたしま す。  それから、第1回議事録につきまして修正等をいただきましたので、でき次第、各先 生方の自宅にお送りいたします。その後に厚生省のホームページで公表していきたいと 考えております。 吉川座長 どうもありがとうございました。今も話がありましたように、第1回の議事録はホー ムページにもう近々載るということで、皆様方のところにもお送りできると思います。 それから第2回のものは、きょうお手元にお渡ししましたので、これについて発言が不 適切であるとか、不的確であるとかということがありましたら、それをお変えいただく のももちろんけっこうですが、それからテニヲハを含めてご修正をいただければ、事務 局で直したいと思います。ぜひお申し出をいただきたいと思います。  きょうは、これまでの2回の検討を通じて出てきましたさまざまな高齢問題に関して の検討メモを作成いたしました。事務局で作成したものを私も含めて検討させていただ いて、ここに提出してございます。これをまずお目通しいただきたいと思います。ただ 皆様方に黙って目を通していただいてもしかたありませんので、事務局で説明してきた だきたいと思います。そのうえで、後ほど皆様方のご意見をいただきたいと思います。 それではお願いいたします。  仁木障害福祉課長  論点メモについて、趣旨をご説明いたします。  これは、大きな三つの柱で整理をいたしております。一つは地域生活の支援、二つ目 が施設における高齢化への対応、三つ目が高齢者施策の活用と連携のあり方ということ でございます。  まず「地域生活の支援について」ということでございます。なお、今回の検討会は高 齢の知的障害者の方の対策ということでございますが、ここに書いてありますことは必 ずしも高齢の方だけではなくて、比較的若い方にも関係してくることもございますの で、そういう前提でお聞きいただきたいと思います。  1番目は住まいの確保ということでございます。  その1として、単身の知的障害者の公営住宅の利用についてどのように考えるか、と いうことでございます。県なり市町村なりが運営している公営住宅は、単身入居が認め られておりますのは特定の方に限られております。それは、公営住宅法の施行令で定め られております。資料2の1ページに関係条文がございますが、その施行令で書かれて おりますのが、一つは50歳以上の方、あるいは身体障害者で4級以上の方、あるいは原 爆被爆者の方、そして生活保護受給者の方、そして海外からの引揚者で5年未満の方。 そういう方々が例外的に公営住宅単身入居が認められておりますが、知的障害者につい ても民間のアパート等の住宅が得にくいという事情がありますので、単身の知的障害者 もこういう公営住宅を単身で利用できるようにする必要があるのではないかというこ と。  また、今申し上げましたような方については、単に単身入居が認められるだけではな く、制度的に優先的な入居という運用になっておりますが、知的障害者についても同様 のことを考えていく必要があるのではないか、という問題意識でございます。  2番目がグループホームでございます。グループホームにつきましては、計画的に箇 所を増やしてきておりますが、それと同時に使い勝手の良いものにするために、私ども としても改善をはかってきております。  まずその一つは、グループホームの利用者については従来は就労要件を課しておりま した。つまり、一般就労しているか、あるいは福祉的就労をしているか、いずれにして も就労していることを前提でグループホームの利用者を想定しておりました。  しかし、そういう要件を課しますと比較的重度の方が利用しにくいということがござ いますので、平成12年度から就労要件というものは外しまして、就労していなくてもグ ループホームが利用できるようにしたいと思います。具体的には通所の更生施設とかデ イサービス、そういうものに日中通っているような方もグループホームが利用できるよ うにということを考えております。 もう一つは、グループホームを利用している方にホームヘルパーを派遣できるように ということです。今まではグループホームの利用者はホームヘルパーは受けられないと いう整理をしておりましたが、重度化あるいは高齢化をにらんで、ホームヘルパーをグ ループホーム利用者に派遣することができるようにいたしております。  3番目は福祉ホームについてでございます。福祉ホームは、制度化されたのはかなり 以前でございますが、なかなか数が増えてこないという現状がございます。これはグ ループホームが制度化されたということもあろうかと思いますが、必ずしもそれだけで はないのではないか。やはり福祉ホームというものも知的障害者の方が地域で暮らす住 まいの場として、重要なメニューとして考えていくべきではないか。そのためにはどの ようにして増やしていくべきかということでございます。  カッコ書きで、たとえばということで書いてございますが、一つは福祉ホームの定員 が今、制度的には10人以上となっでおりますが、身体障害者の福祉ホームは5人以上と なっておりますので、身障並みに定員を下げるということはどうだろうかということ。  もう一つは利用料についてでございます。現在、福祉ホームの利用料は、参考資料に 要綱がございますが、徴収するのは共益費のみとなっております。そうしますと極めて 少額の自己負担だけで利用できる仕組みでございますが、一方で、福祉ホームを運営す る社会福祉法人が利用料は実質的にはほとんど取れない。そうなりますと、法人が自ら 福祉ホームを設置、運営しても、いわば持ち出しになるということでなかなか法人の側 でも増やしていこうというインセンティブが働きにくいのかなと。その辺で、もう少し 利用料を取ってもいいというふうにしてはどうかという問題意識、それでカッコ書きで 定員と利用料というのを記載をしております。  もう一つは、福祉ホームにつきましては現在、自己所有が原則でございますが、土地 建物の賃貸借でもいいとすべきではないかという議論もございます。それについては社 会福祉法人のあり方に関わるものですから、社会援護局のほうで検討しているというこ とをご紹介させていただきます。  4番目が軽費老人ホームで、これは措置施設ではございませんで契約施設として60歳 以上の方が利用できる施設でございますが、こういうものの利用についてどう考えるか ということでございます。  大きな2番目が「在宅福祉サービス等について」でございます。  まずその1はホームヘルプサービスでございます。制度的な改正としては、12年度か ら中軽度の知的障害者の方もホームヘルプサービスが利用出来るように対象者の要件を 拡大いたしました。従来は重度の方のみに限定されておりましたので、結果的に家族と 同居している方のみが対象になっておりましたが、中軽度まで広げることによってひと り暮らしの知的障害者の方も利用できるようにという制度改善を図りましたが、今後、 どのように量的、質的に充実を図っていくべきかということでございます。 2番目はデイサービスでございます。デイサービスについてはまだまだ数が少なく、 全国で 100カ所程度という段階でございます。これは身近なところで利用できなければ 意味がございませんので、今後どのように増やしていくか。また実施メニューも今のま までいいのかどうか、高齢化をにらんでメニューの拡充も必要ではないのかという問題 意識でございます。  3番目が配食サービスということでございます。知的障害者の地域での生活を考える 場合に、食事の確保ということが重要な課題かと思います。現在、老人向けの給食サー ビスは全国でも普及しつつありますが、同じような仕組みで知的障害者を対象としたも のが必要ではなかろうか、という問題意識でございます。  4番目が、現在、地域生活を支援するための社会的な資源といいますか人材、制度と いたしまして、生活支援ワーカー制度、もう一つが地域療育等支援事業の中のコーディ ネーター事業。いわゆる地域生活支援事業でございますが、高齢化をにらんで、コーデ ィネーターという方々にどういう役割を担っていただけばいいのかということでござい ます。 なお生活支援ワーカーにつきましては、従来、支援の対象は地域で暮らす就労してい る知的障害者ということで、比較的軽度の方を考えておりましたが、来年度からは就労 要件を撤廃いたしまして、仕事に就いていない方も生活支援ワーカーの支援の対象にし ていこうと思っております。  大きな3番目が「日中の活動について」でございます。  その一つは、高齢の方ということで、お仕事はリタイヤした方を前提にいたしまし て、老後の生活の中でレクリエーションとか余暇活動をいかに支援していくかというこ とでそのための支援ボランティアの育成についての問題意識でございます。  次に2ページ、知的障害者の方自身によるボランティア活動などの社会貢献活動を、 どのように支援していくかということでございます。前回、白井委員から、たとえば老 人ホームの中で、知的障害者の方にボランティア活動をやっていただくということも考 えられるのではないかというご示唆がありまして、そういうものを踏まえたものでござ います。  大きな4番目の柱が「地域での支え合いについて」ということです。まず「地域」と いいますのは、一般の住民の方々が知的障害者を理解して、温かく地域で見守り支援し ていく態勢が必要ではないか、そのためにどのようにその態勢をつくっていけばよい か、という事でございます。  (2) が「知的障害者相談員の活動について」でございます。全国で約4900名の知的障 害者相談員の方がいらっしゃいます。これは各市町村長の推薦に基づいて知事が委嘱い たしますが、こういう活動をいかに活用して地域での支援を考えていくべきかというこ とでございます。  5番目が「離職後等の生計維持について」でございます。退職したあとの生活の維持 につきましては、年金がございますが、年金だけでは生活が維持できない場合、生活保 護という制度がございますので、そういうものを利用していただいて生計の維持を考え なければいけないと思いますが、それをいかに円滑に利用できるように支援していくべ きか、ということでございます。  6番目が「知的障害者の権利擁護について」でございます。前回、丹下委員からもご 指摘がありましたが、一つは福祉サービスの利用についていかに支援をしていくか。も う一つは日常的な金銭管理の支援、あるいは非日常的な財産管理という問題もあります が、そういう財産、金銭の管理についてどのように権利擁護の観点から支援をしていく かということでございます。  この二つにつきまして制度的には、一つは厚生省の制度として、先ほどご紹介しまし た緑のパンフレットにあります地域福祉権利擁護事業というものが、昨年の10月から国 の補助事業としてスタートしております。全国の約 350カ所の中核的な市町村社協、実 施主体は各都道府県の社協でございますが、そういう市町村社協の窓口に申し込んでい ただいて、サービスの利用を援助するとか、あるいは日常的な金銭管理の援助をすると いうような事業が始まっております。 これは、知的障害者の方のみならず、介護保険の導入をにらんで、痴呆性老人の方な ども対象として制度化された事業でございますが、こういうものをいかに地域で暮らす 障害者の方の権利擁護に機能させていくかということでございます。 もう一つ大きな制度的改革としましては、この4月から成年後見制度というものが発 足いたします。これは財産管理、あるいは場合は身上監護ということで、施設の利用の 契約等についても成年後見制度が機能することが期待されておりますが、いかにうまく 制度の趣旨にのっとって機能させていくかという問題意識でございます。 最後の7番目が「健康管理と医療について」でございます。地域で暮らす障害者の 方々の健康管理について、なかなか自分で十分な管理ができない面もございますので、 それをいかにサポートしていくか。  一つは、市町村が健康診査というものを実施しておりますが、それをできるだけ円滑 に受けていただくにはどうするべきか。  そして市町村の保健婦の訪問活動というのがございますが、今は主として妊産婦とか 乳幼児、高齢者が中心になっておりますが、知的障害者の方々も訪問活動の対象として 明確に位置づけていただく必要があるのではないか。  三つ目が地域療育等支援事業。資料2にも事業の実施要綱がついておりますが、この 地域療育等支援事業の中の一つの柱として訪問健康診査という事業がございます。訪問 健康診査というのは、地域の医療機関では健康診査を受けがたい在宅の重度の知的障害 者の方を対象として、専門医師等が家庭を訪問して健康診査をし、そして同時に相談に 乗ったり、助言、指導するという事業でございます。これが地域療育等支援事業の一つ として位置づけられておりますが、実際は約3割しか実施されていないという現状がご ざいまして、これをどう進めていくか。それによってどう地域で暮らす障害者の方の健 康管理を確保していくかという問題意識でございます。  3ページに、 2「知的障害施設における高齢化への対応について」ということで三つ 書いております。  一つ目が、高齢者向けの援助プログラムはどのようにあるべきか。これにつきまして は、きょう、小野沢委員から資料を出していただいておりまして、ご説明いただければ ありがたいと思っております。  二つ目が、高齢化に対応してその施設の構造、設備はどうあるべきか、どのような点 に配慮する必要があるかということでございます。  三つ目が、施設の職員の職種は高齢化への対応としてどのようにあるべきか、という ことでございます。  最後に 3「高齢化施策の活用と連携のあり方について」でございます。  まず一つは、介護保険サービスあるいはそれ以外の老人福祉サービスを、知的障害者 の方も受けやすくするためにはどのような工夫が必要かということでございます。  これにつきましては、資料2の26ページ以下に添付いたしておりますが、介護保険の 対象となります特別養護老人ホームに知的障害者の方を15人以上受け入れた場合には、 専門職員を1人加配できるような仕組みが制度化されております。これは、知的障害者 の方のみならず、視覚障害者の方、聴覚障害者の方、あるいは言語障害者の方、そうい う一定以上の特定の障害者の方を受け入れる特養には、障害者生活支援員と称する専門 職員を配置できるような介護報酬の仕組みになっております。ほかの分野でも同じよう な考え方で、知的障害者の方等が一般の老人福祉サービスを受けやすくする工夫が必要 ではないかということでございます。  最後に、老人福祉サービスを利用する際の年齢制限についてでございます。最後の方 に資料をつけてございますが、何歳から老人福祉サービスを利用できるか。一般的には 60歳とか65歳という年齢になっておりますが、知的障害者のうち、特にダウン症の方な どにつきましては明らかに早老傾向があるわけで、そういうことを考慮して、60歳未満 の年齢でも老人福祉施策を利用できるようにということは考えられないかという問題意 識でございます。  まだまだこれ以外に論点があろうかと思いますが、とりあえず今までの2回の議論を 踏まえまして整理をいたしましたので、ご審議のほど、よろしくお願いいたします。 吉川座長 ありがとうございました。事務局の大変なご努力で、先日までお話しし合いましたこ とを、ともかくもまとめていただいたわけでございます。ほかに、こういうこともある のではないか、あるいは、この前のときにお話しになられて私どもが気がつかなかった といいますか、あまりそこのところに重点を置けなかった問題がありましたら、皆さま 方からご指摘をいただいて、論点として中に組み入れておきたいと思いますが、いかが でございましょうか。  今すぐに思いつかなくてももちろんけっこうでございまして、今後の進め方でござい ますが、この論点メモに従いまして順序よく考えていきたいとは思ってはおります。ま たその節でも、それぞれのときにご意見をいただければ幸いでございます。  では、小野沢先生からお話をいただきましょうか。論点メモの 2「知的障害施設にお ける高齢化への対応について」というところに関して、小野沢先生からご報告をいただ けるということでございました。知的障害者の更生施設における高齢化への対応という ことでございますが、特にその中での援助プログラムに関して、高齢化棟をつくって実 践しておられるはるな郷のお話をしていただければと思っています。資料は「一般棟」 と「高齢者棟」と書いてある2枚紙のものをお出しいただいて、小野沢先生のお話を伺 っていただければと思います。  では、お願いします。  小野沢委員  現在の高齢者棟の様子を少しお話ししてから、資料のほうをご説明させていただきた いと思います。  私どもで、やまぶき棟という名前の高齢者棟をつくりましたのが昭和51年です。つく った背景がいくつかあるのですが、一つは、知的な障害の程度が重くてなかなか施設か ら地域に出ていくことができなくて施設生活が長くなって、悪い言葉でいえば施設に滞 留化して、結果として高齢化した人たちに対してどういうケアをしていったらいいか。 もう一つ、私ども法人ができましてことしで40年経過したのですが、その間にかなり 多くの方が施設から社会自立という形で出ております。その方たちが就職した企業で定 年退職を迎えまして、実際に帰って生活をする場がないという現実の中で、受け入れて いただいた企業から、また施設で受け入れてもらえないかという要望がありました。 もう1点は、地域生活をしている方たちの中で、身内の方がいらっしゃらなくなっ て、地域の中で生活していくことが難しくなってしまった人たちに対してケアをしてほ しいと、これは福祉事業所などから要望がありました。 そのような要望を受けて、昭和51年に、高齢者棟ということで更生施設の中に一つ寮 舎をつくりまして、比較的年齢の高い人たち、あるいは年齢が高くなったために特別な ケアをしなければいけない人たちの生活の場ということで、設備をいたしました。 発足当時は男女10名ずつの20名の寮舎をつくったのですが、現在は定員を増やしまし て26名の方が生活しております。 どのような年齢階層の方たちが生活していらっしゃるかといいますと、男性は60歳未 満の方が3名、61歳から65歳の方が2名、66歳から70歳までの方が6名、71歳以上の方 が5名、それで16名。女性は、61歳から65歳までの方が1名、66歳から70歳までの方が 3名、70歳以上の方が6名、生活しています。 年齢的には、男性でいちばん若い方が57歳、年齢の高い方が74歳。女性は、いちばん 年齢の低い方が64歳で、いちばん上が78歳になります。平均年齢が、68歳をちょっと出 たところです。 そういう方たちが生活していますが、私どもでは、これは多くの更生施設の中でこう いった取り組みをしているかと思うのですが、年齢が高くても、本人の気持ちがあれ ば、日中の活動として、若い人たちと一緒に作業をしたりレクリエーションをしたりと いう場を設けるようにしています。 というのは、私どもで高齢者棟をつくった当時に、今、吉川先生がいらっしゅいます その前身の国立の精神衛生研究所で知的障害者の早期老化に関する研究ということで、 櫻井先生たちの研究がたまたま時期を同じくしてスタートしました。その中で櫻井先生 からもアドバイスをいただきまして、年齢が高くなって行動が遅くなった、ほかの若い 人たちについていけなくなったという人たちだけを集めて、それだけで閉鎖的な自己完 結的な生活の場をつくってしまうのは問題ではないかというご提案をいただきまして、 できるだけ年齢の若い人たちとも一緒になって活動できる場をつくっていこうというこ とでした。  ただ、その中でそれぞれの方の生活空間といいましょうか、自分の自由になる時間に 関しては自分の生活空間をつくれるような環境で、生活支援のほうに重点をおいた生活 の場をつくろうということで、今の高齢者棟がつくられています。  現在、高齢者棟でどのようなことをしているか。皆さんのお手元にお配りしてありま す資料はほんとうに雑駁な、あわててつくったので意味がよくわからないかと思うので すが、現在、高齢者棟の特色を何点か説明をいたしておりますので、読ませていただき ます。  やまぶき寮は、高齢者の生活支援を目的とした寮である。利用者が少しでも快適な生 活を営むことができるよう、健康管理に配慮し、余暇活動の充実や食生活の改善等を中 心とした支援を行い、利用者が少しでも潤いのある生活が行えることを目指す。また、 高齢者だけの生活の場となってしまわないよう、可能な限り多くの年齢層の人たちとの 交流が保てるよう、日中活動の場の確保ができるように配慮していくということを、こ の寮の生活支援をしていくうえでの課題として取り上げております。  平成11年度ではどんなことをしてきたかといいますと、一つは、利用者の嗜好とか健 康状態などを考慮した高齢者向けの食事のあり方を、栄養士、調理員あるいは看護婦等 を含めたグループの中で検討して、提供していけるようにしていこうということです。  個人に合わせた生活環境を設けていこう。これは、個人個人のケアプランをつくる中 で、個人個人からいろいろな希望が出ておりますので、できるだけその希望に沿った生 活環境をつくっていこうということです。  小グループによる旅行等の活動の実施につきましても、今までは、どうしても更生施 設の悪い面として、何かをするときには必ず集団で、あるいは寮単位でとかいうことで 活動していたのですが、その辺は見直す中で、それぞれの人たちが行ってみたいという 旅行の希望がかなり出ておりましたので、それを実現していこうということです。  これに関しては、皆さまのお手元に10年前に厚生省の心身障害児研究で行いました報 告書のプリントがあるかと思いますが、そこで利用者個人に対するアンケート調査をし た中にも、これに関連するような意見がかなり出ておりました。これは、私どもの施設 の中での利用者に対するアンケートの中からもかなり強いものが出ておりましたので、 とにかくこれを実施しようということでいたしております。 私どもの施設のあるところは榛名山の中腹で、かなり土地等も広いのですが、何がで きるかわからないのですが、自分たちで自由に利用できる家庭菜園をつくっていこう。 そんなことを通して、少しでもゆとりのある生活環境をつくっていこうということで、 取り組みを行ってきております。 1週間、どんな活動をしていてるかということですが、基本的には私どもの法人で は、月曜から金曜までなんらかの作業あるいは集団活動を、午前2時間、午後2時間ぐ らいの範囲でやっております。  高齢者棟の方たちも、主に午前中はできるだけそういうグループの中に参加をして、 若い人たちと共同の活動をする。午後は、今お話ししました家庭菜園とか外出とか、い ろいろなことを余暇活動として取り入れてやっていこう。入浴とか爪切りとか、身の周 りの衛生管理、そういったことを中心にやっていこうということです。  土曜日は、余暇活動ということで外出をしたり、その週によって違うのですが、利用 者の希望に沿った活動をするようにしております。  一般棟と高齢者棟と何が違うのかといいますと、私どもの高齢者棟は現在、職員が8 名、介助員1名の9名で運営しているのですが、その指導員の1名に看護婦を配置して おります。これは、私どもの法人の中でも初めての試みであったのですが、看護婦を配 置したことによって、週1度、必ず血圧測定とか、看護婦の立場での問診ができるよう になりまして、健康管理という面ではかなり効果があるのかなと思っております。  たまたま今、お聞きしました論点メモの中にも職員の配置の問題もありましたので、 この辺も含めてご協議いただければと思っております。  あとは、年間、どんなことをやっているかということで、ざっと今やっていることを 書き出してみました。特別なことというわけではなくて、若い人たちとのかかわりの中 での生活支援をしているということでご理解をいただければと思います。 吉川座長 どうもありがとうございました。せっかくのご報告でございますので、何かご質問が おありになれば、いただきたいと思います。  これは、日勤、夜勤、勤務の体制そのものはどのようになっていますか。  小野沢委員  現在は宿直制でやっております。 吉川座長 今それをお聞きしたのは、看護婦さんを配置したというその看護婦さんも、その当直 体制の中に入っているのですか。  小野沢委員  はい。 吉川座長 何かほかにございましたら。  橋本委員  一つは、私は高齢者の領域をみているものですから、一緒に議論に参加させていただ くために、言葉をどんなふうに使っていらっしゃるか知っておきたいと思っております が、生活支援ということを何度かおっしゃいましたが、どういうことをいっていらっし ゃるのか教えていただきたい。  もう一つは、資料の中で、個人に合わせた生活環境を設けておられるということが高 齢者棟の一つの特徴であるように書いてありますが、それは具体的にどういうご配慮な のかを教えていただきたいと思います。  小野沢委員  生活するという事柄に関してなのですが、現在、更生施設の場合には通過施設という ことで、あくまでも指導訓練を行うということが法律で定められております。それに対 して、もう高齢の方ですから、指導とか訓練とかということではなくて、本人が自分の 生活をエンジョイできるという意味で生活支援という言葉を使っております。  それから、個人に合わせた環境ということなのですが、環境といってもいろいろな環 境があるわけです。物理的な環境に関しては予算的なものもつきまといますので、改善 することが難しい面があるのですが、特に家族との関係の中でも、こういう言い方をし ていいのかどうかわからないのですが、施設でお預かりしている方の中には、ときとし て家族がお亡くなりになってもなんの連絡もないというケースも多々みられるのです。  それに対して、施設で生活している方からはいろいろな意見、希望も出るわけで、そ れに対しての連絡調整、生活環境の改善ということで、私どもが中に入って家族とのや りとりをしながら、施設に目が向いていなかった家族に対して、施設に目を向けさせて いくという意味合いを一つ含めております。  あとは、できるだけ個人の状態に合わせて、施設等についても法人の中で改善できる 部分については改善していこうということで今、取り組んでいますが、具体的にどれと どれということで挙げられてきていないのが現状です。ただ、集団の活動だけに重点を 置かない、できるだけ個人の生活ペースに合わせた活動の場を設けていこうということ で、それに伴う施設の中でのいろいろな運営に関する連絡調整等も行っております。 吉川座長 ほかにいかがでしょうか。  新堀委員 2点ほどなのですが、指導員さんと介助員さんの仕事の違いと、週間援助 予定ですか、ここにあります「班・教室別」というので、居室とかというのはどういう ことなのかお伺いしたいと思いまして。  小野沢委員  指導員と介助員の仕事の中身ですが、指導員に関しては有資格者ということで、生活 指導員としての仕事をしてもらっています。この寮舎にいらっしゃいます介助員の方 は、今は、障害をもった方を職員の補助ということで職員として採用して仕事をしても らっています。ですから仕事の内容とすれば、掃除であるとか洗濯であるとか食事の準 備の手伝いであるとか、そのような範囲でございます。  「班・教室」というのは、施設の中で共通で使っている言葉で、直さないでそのまま 提出してしまったのですが、班というのは作業活動をしている場です。教室というのは 障害の重い人たちのグループなのですが、作業活動に参加できない方たちが相当数いら っしゃいますので、そういった方たちの中に入って機能訓練を受けたり、あるいは一緒 にリトミックとか音楽活動をしたりという活動をしております。  大林委員  近くなので内容を存じあげているもので、質問しづらいのですが、こういった目的の 中に、いわゆるケアプランに基づいて生活支援を行う、またリタイヤした人たちの受け 皿としてこのことをやられていると私は受けとめたのですが、その中に快適な生活をと いう意味からすると、ここで余暇指導の「指導」という言葉は、あえて余暇とか入浴と いうのは援助されているという意味と受け取ったのですが、それでよろしいでしょう か。  小野沢委員  意味合いとすればそうですね。まだ私どもの中でも言葉の整理ができていない部分が ありまして、指導であるとか援助であるとかという言葉が交錯して使われている部分が ありますので、その辺はそのようにご理解いただければと思います。  大林委員  おそらく法律の中に、指導・訓練という言葉が入ってくるので、こういう言葉がこう いうところに落ちてくると思うのですが、今後、ホームページということになります と、ここはやわらかいほうがいいなと感じました。  北沢委員  ちょっと長くなるかもしれませんが。  今、たまたま小野沢先生から出た、櫻井先生が最初にやった研究に私も加わっていた ので、きょうは小野沢さんから構成を聞いて、そのまま皆さん、お年をとられたなとい う印象をもちました。高齢者関係の方もいらっしゃるので、少し障害施設関係の高齢早 期老化問題についての推移を説明させていただいて、玉井常務さんあたりから異論があ るかもしれませんが、その辺はまた補足していただければということで、しゃべらせて もらいます。  知的障害関係で早期老化という言葉で出たのが1975年ぐらいではなかったかなと、そ れがいちばん早いのかなという感じがします。それは、『愛護』に1975年の10月から 1978年の1月まで、 215号から 242号、欠けている号もありますので、23回にわたって 「老化シリーズ」というのが組まれたと思います。今出られている玉井さんではない、 そのころの愛護の玉井さんがかなり中心になってこのシリーズを企画をされたと思いま す。 そこに至る経過でいえば、1960年に知的障害者福祉法ができて、それから4年後の 1964年に重度知的障害児収容棟というのができました。それまでの施設は、秩父学園を 除きますと中程度の人を対象にした施設というイメージから、重度知的障害児収容棟で 重い人にもという感じになっていく。 そして1967年に障害者福祉法第3次の改正があって、更生と授産とに分かれたのです が、更生の目的と授産の目的が現場でかなり混乱した時期がございましたが、次の年に 者のほうにも重度知的障害者収容棟ができて、そして1971年に国立コロニーが開設され る。 そういう中で1973年からは民間の施設にも重度棟をということで、これは重度棟をつ くるというよりは、重度加算をつけますよという形で整理をされていった。 そういう中で、重い人という部分がまず基本にあったうえで、1975年ぐらいからの早 期老化等にかかわる関心が非常に高まったと理解されているのではなかろうかと思いま す。 そういう流れの中で、今お話しになったやまぶき寮、それからおしまコロニーの侑愛 荘あたりが1976年にスタートを切った。いずれの施設も私は調査の関係で訪問いたして おりますし、小野沢さんが提示されました小林先生を分担研究者とする早期老化対策の 中に出てまいります長野県の西駒郷から分かれていった悠生寮、山形の施設等、いろい ろな調査をして見せていただいています。 そのときにイメージとして整理できたことは、知的障害者更生施設がどちらかという と青年期を軸に通過していくという部分に対して、障害の重い方が入ってくる、そして ちょうど福祉見直し期になるのですが、なかなか施設から出ていくことができなくなっ てくる時期、一方で国立コロニーを象徴とする地方コロニーが長期間利用を前提にして 全国各地にできていった中で、滞留化という現象が出てきた。 結果的には、30代をすぎてくると、施設の中のいろいろな日課等においてはなかなか ついていけないような感じの人たちの層が認識されてきた。40代を中心にしていたかと 思いますが、中高齢者棟という言い方の中で施設がそれぞれ努力をされ始めたのが、 1970年代の中ごろぐらいだったと思います。 1980年代から1990年代にかけては、地域における高齢者対策等の関係で、知的障害の 施設、法人そのものが、大林委員のところのように特別養護老人ホームを付設していく というスタイルが出てきた。これも全国でいくつかのケースで出てきた感じがいたしま す。 そういう一つの流れの中で、心身障害研究、障害保健福祉総合研究の中でも、何本か の高齢の問題にかかわっての調査がずうっと積み重ねられていく。  当初、壮年期の問題を中心にしていた中から、実は現在になってくると各施設とも、 非常に高齢な方を抱え始めているというよりは、いちばん大きな問題点は、1970年代に かなり入所更生施設がたくさんできたのですが、その中心層の人たちが対処をしないま ま長期利用になって、そのころにできた施設、地方コロニーを中心にして、どの施設も 45から55歳の年齢層の方を厚く抱えていらっしゃる。その方たちは、第1期の重度の方 たちという、これは言い方が微妙なところなのですが、かなり重い人たちが年齢を重ね てきている状況にあるかと思います。  そういう意味合いで、いろいろな研究がされてきていますが、どちらかいというと今 までの積み重ねは、知的障害の福祉の中でどうしましょうかという、どちらかというと 自己完結的な発想の中でほとんど論議をしてきたような感じがいたします。  そういう意味合いでいえば、この間の障害者プラン、あるいは三審の合同企画の中間 報告、あるいは社会福祉基礎構造改革にかかわっての意見具申等における地域生活とい う課題とのセッティングをどう考えていくのかということが、非常に重要な課題になっ ているのかなと。  かなり早くに問題提起をされたけれども、入所更生施設の性格は、前回、丹下先生か らもご指摘があったように、更生を指導訓練を目的にしているはずですよねというお話 があったけれど、実態的にはかなりのところが生活支援的なところに落ち着いた状態像 をもっていますから、たぶんこの検討会の中で入所施設の問題をどう整理し直すべきな のかというのが、やっと表に出てきたという理解を私などはしているということを、補 足だけしておきます。 吉川座長 ありがとうございました。今は、知的障害者の施設の問題として北沢先生から1975年 あたりからのお話をいただいたわけで、その間にいろいろな提言もあったということだ と思いますが、現在ではこれらの施設問題から地域へどういうふうにということもあっ たわけで、あいだにその時期があったけれども、施設の中でまたケアをしなければいけ ない実情になったときに、新たな問題が出てきたと私は理解をいたしました。 さて、先ほど検討メモということでお出しいただきましたこれにつきまして、ほかに 何かご意見は……。 丹下委員 先ほど先生のお話がありましたように自己完結型ということで、高齢者棟をおつくり になって、そしてそこでお世話になっている。ほとんどはこれは特養の対象者になる人 たちですね。それをご自分のところでやまぶき寮をつくってやっていらっしゃる。その 場合のよい点、悪い点。 これは大林先生のところで特養を併設した、そうするとやはりこういう方々が特養の 中に入っているはずですね。だから、特養でこういう方々のお世話をする場合のよい 点、悪い点、あるいはこれを先ほどのやまぶき寮のようなところでやられる場合と比較 をなさったことがありますか。どういう点がいいのか、どういう点が悪いのか。ぼくら は全然わからないから、その辺が。 ということは、将来、高齢者対象の中にこういう方々を組み入れていって、介護保険 とかそういう面でお世話をしていかなければいけないのではないかと私は思っておるの ですが、その辺はどういう違いがあるのか。端的にいってどちらがその方々にとって幸 せなのか、いいのかということを伺いたいなと思って。  小野沢委員  私から先に発言させていただきますが、いいか悪いかということを論ずる前に、生活 する場がなかったというのが現実の姿なのです。私どもは、そういった方たちをどうし ようかという中で、一般棟で若い人たちと生活するのは大変である。せめて生活の部分 に関してだけは、自分の生活空間をもって生活できる環境をセットしようということで スタートして、現在まできております。 今までの経緯の中で、たとえば大林先生のところとどうかと比較検討しておりません ので、なんとも言いきれないのですが、私どもで高齢者棟をつくって一般棟の方たちと の生活の比較をしてみたときに、よかった点は、一つは、食事の提供にしても、それぞ れの人たちの実態に合わせてできるようになった。それは、そこで働く職員の目の置き どころといいますか、それが指導訓練ということよりも生活支援といいますか、生活を エンジョイしていくという意味合いでの理解のしかたが強いものですから、そういう面 が一つ改善された。 それから、健康管理とかそういった面に関しても、職員の配置とかの問題もありまし て、一般棟にいらっしゃる方たちからみると、小さな異常といいますか、そういったも のに関しても発見が早くなって、対応がしやすくなったということはいえるかと思いま す。 特別養護老人ホームとの比較調査は必要かどうかということもありますので、大林先 生の意見もできればと思います。 大林委員 非常に難しい問題かと思うのですが、10年前、先ほど、北沢先生からいろいろな歴史 の変遷をお話しいただいたものですから、その辺のご理解をしていただけると思うので すが、われわれも指導訓練ということに重視をして、私も指導員として、どんどん自立 という形で社会参加に向けてきたわけです。53年に更生施設がスタートして、54年に卒 業生第1号ということで初めての自立の方が出ましたので、派手に卒業証書などという ものをつくりまして、社会参加していただいたわけです。  しかながら、数年間して、まさに早期高齢といいましょうか、戻ってまいりまして、 たまたま在宅に戻る家族構成にないというケースが多いものですから、家庭に戻るチャ ンスがない。となるとどこへ戻るかというと、本来ならば卒業したはずの更生施設のお 部屋に、卒業証書を持ってまた戻ってくるということがありました。  そのころ、まさにノーマライゼーションということで、通常の社会ですと卒業した学 校に卒業証書を持って戻る方はいないという単純なところに目を向けたわけなのですが そういった方にもう一度、食事は何時に食べなくてはいけない、おふろは何日の何時に 入らなくてはいけないという時代であったものですから、それはお気の毒ではないか。 通常考えれば、ご隠居さんという形になるわけですから、ゆったりとした生活の場がつ くられたらいいね、ということでありました。  そんなことから、その当時、特養が生活の場という位置づけとして個別援助計画とい う言葉が出てきて、個々にとってのケアをどうするかという時代になってきたものです から、障害者であっても在宅からの高齢者と同じように、個々人の機能に合ったものを 提供できる機能が特養にあるのではないかというところに私どもは目をつけまして、特 養を始めさせていただきました。  しかしながら、50人の定員ですが、全員が特養を使っていただくということではなく て、これが3割という根拠は非常にあいまいなのですが、全員が知的障害の方でもおか しいですし、3割程度、15名までの方に利用していただこうというわれわれの決めとい うことでスタートいたしました。 ですから、必ずしも高齢者問題は特養だけでやろうということではなくて、知的障害 者の高齢化問題については、その時点で選択肢を増やしたというふうに考えておりまし た。今でもそうです。 先ほど、グループホームが就労要件等を外してさらにホームヘルプサービスが導入で きるということを聞いて、私は喜んでおりますが、そういった方面ではあってもいいと 思っております。 丹下委員 もう一つ、15名に限定をするというか決まりをつくった。オール知的障害者ではなく て15名にしたのは、何か意味がありますか。 大林委員  3割という点の根拠は非常にあやふやで、ここではなかなか答えられないのですが、 特養というものが地域社会の一部であると位置づけするならば、地域には男女もいて、 障害のある方もたまたまいたり、さまざまな方が社会を構成している。その延長線上に 特養があるとすれば、障害者がたまたまそこを利用していたということでいいのではな いか、こんな考え方でした。  丹下委員 ぼくもそう思います。そうすると、高齢者棟ということの考え方との違い が出てきますよね。ありがとうございました。  大林委員  それと、その制度がなかなか使えなかった(笑い)。  今村委員  北沢先生やほかの委員の方がたのお話に反論ということではないのですが、たまたま 私は1970年、櫻井先生が始められたころに、ここにご出席の前田先生も東京都の老人総 合研究所に関係をもちまして、そこから一般老人の立場から知的障害に取り組んでい く、そういう視野をもってずっとやってきております。そして、1980年代の終わりごろ からは、厚生科学研究などとドッキングをして研究をさせていただいてきているので す。 その中でいくつかの、たとえば全国の調査、これは知的障害者施設と老人施設の知的 障害者、一般老人を含めて調査を行ってきておりますので、そこから二つだけ短く申し あげておきます。 一つは、先ほど丹下委員からお話があった比較調査を行ったことがあるかということ なのですが、これはマクロな形では、知的障害者に利用者像と職員像、それから高齢者 施設にいる知的障害者の利用者像、これを比較しております。ただ、比較をしていきま すと必ずしも年齢が一致しませんで、たとえば知的障害者の施設は60歳代が多く、高齢 者というのは50歳、60歳が多い。老人施設の特養、養護老人ホーム等にいる知的障害者 は、65歳以降、特に70歳代がほとんどです。比較できないので、たまたま65歳前後のと ころをずっと比較していきました。 もちろん全体的にもそこら辺を妥当性を検討する意味でいろいろやってみたのですが 全体的に申しあげて、1970年から80年ごろにやった調査と、10年ほど後の1980年代の調 査と、今回の昨年やった調査と比べますと、そこに入っている知的障害者の全体のプロ フィールが違ってきているということです。 それは、かつて70年代から80年代は、知的障害者の人はわりと特別養護老人ホームで 引き受けなかった時代があります。それは調査の中にも出てきますが、知的障害者とい うのは痴呆とは違うのだからという形で、引き受けられなかった時代が非常に長く続い ております。そのころは、私も東京都に関係していたのですが、東京都などでは、しょ うがないから養護老人ホームに一回入れる。養護老人ホームは比較的同じような日課を 行いますので。それから2年3年たってから、養護老人ホームはどうしても知的障害者 を引き受けにくいですから、そこでトラブって、結局、特別養護老人ホームに入ってい くという過程をとっていたのが、1970年か80年ごろだったと思います。 その後、ご案内のように1990年代になってから痴呆の数が増加して、各施設、特別養 護老人ホームに30%から40%の痴呆の人たち、あるいは寝たきりの人たちがいるように なってきた。私は千葉県の聖徳大学にも関係しているので、そこのグループで千葉県全 体の調査をしたことがあるのです。ちょうど1990年代になってからは、むしろ痴呆の人 を引き受けるよりも、知的障害者のほうがいろいろと日常生活の訓練をしてきています のでやりやすいということで、拒否反応がなくなって、最近、大変多くなってきており ます。 したがって、中にあるプロフィールの状態像も、かつて80年代、90年代は軽度の人が 多かったのを柱に、要するにADLはちゃんとできる人たちだけを老人施設に入れてい った。ところが最近はそうではなくて、むしろ重度の人も特別養護老人ホームに多く入 ってきている。昨年の調査では、特別養護老人ホームにいる知的障害者は、80%ぐらい は重度です。むしろ軽度の人はあまりいない。軽度の人は知的障害者の施設に残ってい るのかなという気がしたほどですが、そういったことで、状態像が違ってきているとい うことが一つです。 話は全然違ってしまうのですが、小野沢さんのところから出てきた昭和50年代後半の 27施設、高齢者棟があったということなのです。これの推移ですが、ちょうど玉井委員 もいらっしゃいますが、現在、20年たっても、高齢者棟の数は27施設から増えていない のです。これは20年前に全国の調査をやったら、将来、高齢者棟が要るのだといった答 えが70%ぐらいあったのです。その答えからいくと、当然、今は高齢者棟がいっぱいな くてはいけないはずなのです。ところが現状では、高齢者棟に入れるのではなくて、む しろ特別養護老人ホームに入れるのだという考え方のほうが、今度のアンケート調査な どでは強くなっております。 それは、特別養護老人ホーム側で拒否反応がなくなったということと、知的障害者施 設のほうでも高齢者は非常に増えてきたのです。20年前の知的障害者施設の高齢者像は 50歳から60歳までしか生きていませんから、40歳の後半になったら高齢者、高齢者と大 騒ぎした。現在は、先ほどの小野沢さんの発表にもありましたように、高齢者は60歳に なってきております。だから知識障害者の施設が抱えている高齢者像が、50歳代と60歳 と違ってきているわけです。 その辺が、細かく説明いたしますと、大きな二つぐらいのポイントとして、入ってく る利用者像が変わってきていることと、引き受ける施設側の考え方も変わってきている ということです。 吉川座長 今、最後のところでちょっとおまとめいただきましたように、まず入ってこられる方 の状態像が違ってきた、そんなことを一つの例としてお話しいただきましたし、あるい は施設の中における考え方が変わってきたようですね。施設の職員も、当然のことなが ら地域で生活ができるようにしたいという意味が非常に大きかった。それがまた、高齢 化することによって実現がなかなか難しくなってきている、その現実をどのように受け とめるか、その辺でまだ完全に整理ができていないのではないだろうか、このように私 は受けとめました。 室崎委員 私のほうのやっていることをお話しして、論点メモの中にどう組み入れていかただけ るかなと思っておりますが。 今、北沢先生がおっしゃったように、私の施設も73年の設立です。そのときに、私は 障害をもっている者の親の一人ですので、更生施設というのはありとあらゆる場面を使 って自立、自活させるべきところだという考えで施設建設に立ち上がったのです。けれ ども厚生省へいったら、重度複合ということにちょうど切り替わったころで、施設のふ たを開けてみると、以前にもいわれた更生施設はどうあるべきかとおっしゃったと同じ ように、やはり抱え込んで出口がなくなっているというのが現実にみえてきました。ほ かの施設も全部。 それで私のところは、40歳になったら試験的に地域に出すということを一つの原則に しました。まだ、グループホームも福祉ホームもないときでしたが、地域に出してみる とけっこう地域の中で支えがあると、すぐ生活ができる。施設の中においておいたら、 あまりにも余分なサービスをしすぎて、施設の職員が逆に重度にしてしまうのです。  そして今現在、私のところでは、50名定員の更生施設と通所の授産施設で 100何人で すが、生活ホーム、グループホーム、福祉ホームへ入っている者が、今、浜田圏域とい うところの1市2町にわたって散らばせています。 その中にいちばん初めに40歳になって出ていった人が、今、65歳になって、その65 歳、62歳、58歳、そして50歳、その小さなホームをみたときに何が必要なのだろうかと いうと、更生施設の重度棟も、高齢者棟と仮にいっても、あの更生施設は再度帰りたく ない、と言っています。  そこで、私のほうが昨年から試行的にやっているのは、50名定員の中でダウン症や、 重度の人でどうしても施設からでていけない平均年齢が45から50ぐらいの人を集めて、 6人の部屋をつくり、職員が3人で、地域のおばちゃんを1人というやり方です。  やってみる中で、やはりいろいろ問題が出てきたのです。先ほどおっしゃったよう に、初期の問題が非常にあった。だから、更生施設から食事を運ばないで、そこできち っとニーズに合わせた食事を職員がつくるという形をやってみる中で、この人たちをど う支えていくかといったときには、今、平成12年度に計画しておるのは、50人定員の 人たちをせめて15人ずつに分散してやってみようと、15人が限界だろうと思っていま す。 だからこれをみると、26人といったらこれは大きな集団です。うちは10人の福祉ホー ムをやっていましても、夕ご飯を食べるときを見ると、普通の家庭より多いのです。10 人に職員が入っていたら、ワーッという感じです。それでもケアがいろいろといった ら、6人、せめてそれぐらいの小グループで高齢者棟というかそういうことも考えてい かなければいけないのではないかということ。  それから、痴呆老人のデイサービスをやったとき、私のほうの知的障害の重度の人と 一緒にやってみました。そうしたら、いくら痴呆でも、元何々様とかいう過去があるの です。 私たちの預かっている人たちはあまり過去がないので、そこで逆に入っている 高齢の痴呆の方が非常に嫌がられたケースがあったもので、今現在はそれを分けまし た。そういった痴呆老人のケアはきちんとする。 そうなると、この論点の中にあるように、地域のなかでずっと老い続けていって、最 終的にはどこにいけばいいのか、それから地域の中で生活するには、どういうサポート がいるのか、いまここに7項目あるようなものを一つずつ細かく形をつくっていきなが らある程度制度に乗せていくと、大半が地域のなかで生活ができるのではないかなと思 います。  それからケアハウスというところは、いま私のところも年金をいただいている人たち がおりますので、自分たちが建ててやりたいという部分が相当あります。このケアハウ スとか養護老人ホームに、生活支援とかそういうものを厚く付加した支援の制度が入っ ていくと、既存の養護老人ホームの中にいてもうまく適応できる場面が出てくるのでは ないかなと思います。  だけど日中の活動の仕方が、やはり知的障害の人というのは訓練をある程度しており ますので、それなりに仕事をしたいんです。ただ、おままごとというのではなくて、老 年期を豊かに過ごすためには、私のところも高齢の人は5000円くらい賃金を出しながら 養鶏を、 600くらい飼ってますが、けっこう楽しんでいる。そういうものも織り入れて いくと、地域の病院の掃除の助手にいって3万ぐらいもらっている67歳の人もおりま す。  だからケース・バイ・ケースなので、施設の云々というのも、こういうのもありま す。だけども基本的には、地域の中でどうするか、養護老人ホーム、ケアハウスの中で どうあるべきかということをある程度形を作りながら、更生施設の一方ではどういう機 能を持つか、とやっていかないと、障害の人があの古巣の更生施設に戻るなんて、うち の子どもなどはとても思っておりません。私は以上です。  橋本委員 今のご意見とも関連がございますが、丹下委員の最初のご質問に関してですけども、 実は私がかつておりました特別養護老人ホームに、いわゆる精神薄弱といった知的障害 のある方が、ほんとうに少ないのですが、入所てしおられました。特に違和感はござい ませんでしたけど、やっぱり違うという感じがありました。違和感がないという意味で は、知的障害児・者の施設でずうっと育ってきた方ですから、集団生活への適応が非常 によかったのです。自己主張をなさらないという意味ではお世話のしやすい方でござい ました。 ただ、先ほど大林委員が三割程度だとおっしゃいましたが、これから、知的な障害が あって高齢になった方と、それから普通に生きてきて心身の機能が低下してきた人、そ のなかでも痴呆という知的障害を持った方たちの世話のシステムをどうしていくかとい う時に、選択肢は多い方がいいし、多くせざるをえない。それは生活歴の問題がござい ますが、そのほかに、知的障害の程度がどのくらいなのかということをどうしても考慮 しなければいけません。  それから今の知的障害者、いわゆる精神薄弱者の知的障害者の場合には、単純な知的 障害の人はございませんで、いろんな複合した障害をもってらっしゃいますから、そう いうことも考慮したうえで、どういう体系にしたらいいのかということを考えなければ いけないのではないか。単純に特養でやれる方もあるし、やれない方もある。  そして、3割程度までというのは根拠がないとおっしゃったけど、私は実感として多 分そのくらいだろうなと。特別養護老人ホームで知的障害の方を一緒にお世話するとす れば、ほかのハンディキャップの少ない方が三割くらいというのがいい線じゃないかな と。これは単純な勘です。私もそうです。  そういう要素を考えながら、高齢者領域のなかで対応することがふさわしい方と、知 的障害者の体系の中で考慮した方がいい方とあるのではないだろうかと思います。 吉川座長 今は施設のほうのご報告をしていただきましたので、施設関係から話が入ってきまし たが、だんだんと地域の問題も含めて知的障害者の高齢化問題を、単に施設に入所させ るかどうか、あるいは新しい施設をつくればいいのか、ということではなくて、いろん な選択肢があるだろうという話まで出てきました。実はこれがこの検討会の大きな目的 でもありますので、大変、私は皆さま方のお話をいただいて感謝しております。  実際に今日お出しいたしました論点メモをみていただきますとおわかりのように、ま ず地域生活をどのようにしていったらいいのかということから論点を整理させていただ きました。そのうえで、施設生活も当然のことながら視野に入れていかなければなりま せんので、施設生活はどうあるべきなのか、あるいは施設生活をどうサポートしていく のか、ということをまた考えていただこうというわけでございます。  このようなメモの整理からみて、今もうすでに施設のほうにはかなりいろいろなご意 見をいただきましたが、地域生活支援について、ここのところをこんなふうに広げたら いいのではないだろうかというご意見がありましたら、いただきたいと思います。  玉井委員 地域生活支援ということで、いろいろと施設でのお話がございましたが、知的障害者 の高齢者の方々の就業と申しますか雇用と申しますか、そういう部分も一つ項目として 入れておいていただいたほうがいいのではないかという気がいたします。 これは制度的には厚生省の方にお伺いしたほうがいいと思うのですが、知的障害のあ る高齢者の方がたが、その施設に就職できるような仕組みというのはあることはあるの です。そういう制度、仕組みも活用しながら、もう一歩進んで地域生活ができるような 仕掛けにもっていくことも必要ではないかなという気がいたしました。  今村委員 先ほどの件と今の件と二つあります。 一つは住まいの部分の軽費ケアハウスの部分で、先ほどご発言もあったのですが、私 は、きょうは欠席されています中村委員の施設の理事をやっていますが、理事を引き受 けたときに付帯条件をつけたのです。それはどういうことかというと、私は理事をやる ならば、特養でも知的障害を受け入れるような施設でなければいやだと。その条件の中 で、たぶん来月の『愛護』かなにかに載せていただけると思うのですが、4月にオープ ンするケアハウスは、定員が30名で、2階、3階が個室で、下が夫婦部屋、家族部屋に なっています。その家族部屋のところに、知的障害を持つお父さん、お母さん、高齢者 の人たちが入っていいかどうかというのを、鳩ヶ谷市に聞いてみたんです。そうした ら、いいのではないかと。たしか県にもお伺いをたてたと思うんですけど、オーケーを とれました。  全く新しい考え方で、私は2年も3年も前からそのことは考えていたのですが、知的 障害者の高齢化と併せてもっと大事なこととして、知的障害者のお父さん、お母さんの 高齢化の問題があると思うんです。そのことを一緒に併せて考えていかないと、特に地 域との関連、生活との関連になってくると難しいのではないかと。  そこで、ケアハウスがたまたま夫婦部屋、配偶者については、片一方が60歳以後であ ればいいということで年齢制限がないですよね。それを逆手にとってというとおかしい ので すが、配偶者ではないけれども片一方が知的障害者であって、例えば50歳でお父 さんが70歳だっらどうなのだろうかと。  私も施設をもっておりますが、施設の親に聞いたらぜひそういうのをやりたいという ことを2、3年前からいってたものですから、そういう形で高齢者の親と高齢者の入る 生活の場というものを一つ考えてみたということです。  これは先ほどの件と絡むのですが、昨年から厚生科学研究をやらせていただいていま して、その中でアンケート調査、前回も小野沢、中村委員から発表がありましたが、私 のほうは最終的にまとめているので、そのことについて分析をしている中できょうのこ とに関連が出てきているので、申し上げます。  それは知的障害者の施設の方向づけ、特に高齢者を対象とした施設の方向づけみたい な形です。最初、1970年代から80年代にかけては施設というのは、北沢先生もご指摘に なったように自己完結型といいますか、自分のところで自分の子供たちをみていくのだ という形、そのまま高齢者になってもみていくのだという形であったはずです。1990年 頃になりまして、老人ホーム、特に特別養護老人ホームですが、交流をしながら、その 両方の場をとりながら施設の幅が広がってきたと考えられると思います。  今度の調査で、ぼくが非常に驚いたというか、当然の帰趨なのですが、アンケートの 中に、大変多くのところで「地域の交流」と「地域に帰る」ということをいっているの です。この流れは、自己完結型の施設から少し幅を広げていくつかの施設を多様に、そ の中から選択をしていくというやり方から、その中にさらに在宅も含めて選択をしてい くのだという考え方が、施設だけでなくて、その意見は「地域の生活プラス選択」とい う選択肢というのですか、そういった考え方が非常に今回は強く出てきているのが特徴 で、あるいはこれからの施設の方向はそういうほうに流れていくのかな、その中で保護 者の高齢化の問題も含めて検討する必要もあるのかなと、そういうことでございます。 吉川座長 保護者の高齢化という話はここでは初めて出てきたと思いますし、そこへのサポート を考えた地域ケアのあり方とか、あるいは施設の中における運営のあり方も考えなけれ ばいけないという、大変示唆的なご意見をいただいたと思います。 ほかに何か論点メモの中で。 大林委員 3ページの 3で整理されているということで解決するかとは思うのですが、、3の1で 介護保険サービスを受けやすくする工夫がどう必要かということですが、今までの制度 の窓口といいますか、そういうものがすべて違っているものですから、現実にコーディ ネーター事業というものを私どもは受けておりますが、地域での方をコーディネートし ている役割の方と、これから介護保険を動かしていくであろう指定居宅介護支援事業、 いわゆるケアプラン作成機関が全く連携がとれないということがあるものですから、い ちばんの窓口のところですので、コーディネーター事業も含めてケアプラン作成機関と の連携ということは、この中に入っていればけっこうなのですが、ここで大きく取り上 げていただければ。窓口が整わないとなかなかそこまで入っていけないと思ったもので すから、それは論点の中に入れていただければと思っております。  もう1点はすべてのところなのですが、特に 1の地域生活支援のところで「就労」と いう言葉が出たものですから、同じくそこは利用料、収入、その人の所得といいますか 裏付けになるお金の問題、生活していくためのものがどのように検討されるかというの が大事な点だと思っております。その点をよろしくお願いいたします。  小野沢委員  地域生活を支えていくということで、住まいに関連してのことなのですが、グループ ホーム、福祉ホームをいかに活用していくかということで、提言というか私なりの考え を述べさせていただきたいと思います。  一つはグループホームの利用に関してですが、たしかに就労要件が撤廃されて、障害 の重い方もグループホームを利用することが可能になってきている、それが現実の姿だ と思うのです。ただ、その方たちから就労要件をとってしまったときに、その人たちの 日中の活動をどのようにサポートしていくのかということをきちんと押さえないと、グ ループホームを活用していくことに関しては難しさがあるのかなと。  その際、2番の(4) に「生活支援ワーカー」ということが掲げられておりますが、現 実に私どもの施設の生活支援ワーカーがいくつかのグループホーム、それから群馬県の 県単の事業でやっております地域ホームでは、そういったところで生活している人たち の支援を行っているのですが、現実の姿とすれば、生活支援ワーカーの位置づけをきち んとしていかないと、なかなかグループホーム等の活用は難しいのかなと思いますの で、その辺もご検討をいただければと思っています。 福祉ホームについてですが、私どもで福祉ホームを運営しておりますので、福祉ホー ムの運営の難しさに関しては、常日ごろ悩みの種になっております。というのは、10名 の定員に対して管理人が1人。その管理人1人が10人の方をサポートするなどというこ とは、現実には不可能です。それを今の制度ではやらなければいけない。そういう中で 福祉ホームの建設の伸び悩みがあるのではないかと思っております。 就労要件が撤廃されていく中で、自立した生活といいましょうか、企業に勤めていた りという方たちの生活の場ということを考えたときに、福祉ホームの利用はかなり有効 なものがあると思うのですが、ただ現実の制度では、とてもではないですが利用できな い。このあたりは、高齢知的障害者の方の支援のために福祉ホームを利用するというこ とを考えた場合に、その辺の対応をどうするかも含めて検討していただければと思いま す。 吉川座長 たとえばそういうときに、どんな条件があればもう少し運営しやすいかとか、その辺 のところでご経験の中からお話しをいただけるとありがたいのですが。  小野沢委員  福祉ホームの場合には、管理人が1人で10名の方が定員いっぱいで生活しております ので、その方の健康管理からあらゆる面に関してのサポートをしてくださっているので すが、今の労働条件の中で、1人の方が1週なりというふうに活動するなどということ は不可能なのです。せめて数名の、今度、痴呆老人の方のグループホームに関しては、 利用者が9名に対して職員が3名という制度ができますが、せめてそれに近い人的な配 置がないと、やっていけないのではないかと思っています。  現実に私どもでもほかの法人の職員の応援という形でやらざるを得ないのです。 吉川座長 就労要件に外れたことによって、入所してくる者の生活レベルがもう少し低い人たち も入ってくるということも考えられる。  小野沢委員  その可能性もあると思います。 吉川座長 そうすると、そこにはもう少し濃厚にサポートを必要とされる人たちがくるわけです から、その辺は考えなくてはいけないことになろうかと思うのです。  仁木障害福祉課長  先ほど省いたのですが、福祉ホームにつきましては、今お話がありましたように、就 労要件が撤廃されますと重い方が対象として入ってくる可能性が高まるわけで、それに 対応してホームヘルパーも福祉ホームの利用者に派遣できるようにすることと、もう一 つ、生活支援ワーカーも今までは派遣できないと通知で書いてあったのですが、それを 派遣できるようにしようということも、対応の一つとしては考えております。  それと人数も、今までは10人だったのが5人に規模を縮小すれば、1人で10人みるの は大変だということですが、1人で5人みるのであれば今までより負担が少なくなるか なと思って、そんなことも事務局の中では議論をしておるということだけご紹介をさせ ていただきます。 吉川座長 きょうはいくつか論点メモでご説明していただくことの中で、現在、厚生省として考 えておられるものも一緒にご説明いただきましたので、今のお話は先ほどのご説明には なかったものを加えたわけだと思います。  今、お出しいたしました論点メモを、少し私なりに整理をさせていただきます。それ で、今後の検討をどのように進めたらいいのかということを、いくつかお話し申しあげ たいと思います。  事務当局におまとめいただいたこれを少し簡単に整理しますと、少なくとも住まいに ついての問題は優先入居ということをどのように取り扱うかということだろうと思うの です。おそらく優先入居がノーだという方はおられないかもしれませんが、その辺に皆 さま方のある程度の回答といいますか、ご意見がまたいただければいいかなと思いまし た。  今も問題にありました高齢化に対応したグループホーム云々、このことに関しまして は新たに就労要件が撤廃されたけれども、就労要件が撤廃されると一体何が起こるの か、そしてそこにどのようなサポートをしなければいけないのか、新たなサポートの必 要性はないのかということが、おそらく2番のところだろうと思っていました。これに 関しては、今もご意見が出ました。  そして3番目も比較的似たような問題で、福祉ホームですね。これは、数を増やせば いいということだったけれども、法人がほんとうに取り組みやすいものにするにはどう したらいいのかということが、先ほどのお話でございました。これに対して、定員の問 題や利用料の問題は、既に厚生省から先ほどお話しをいただいたので、そのお話の中か らみて、もっとこういうところを工夫してほしいという工夫の中身を私たちに求められ ているように思いました。  軽費老人ホームに関しましては、今は60歳以上ということであるけれども、知的障害 者についてほんとうにそれでいいのかどうか、軽費老人ホームそのものは障害者施策で はございませんので、一般の老人施策の中で考えるときに、知的障害者についてこの年 齢制限でいいのかどうかということが問題になるだろうと思いました。具体的にいえ ば、もっと年齢を下げる必要性はないかということだと思います。 在宅福祉サービスに関しましても、ホームヘルプサービスについては、今もお話があ りましたように、今は要件の緩和ということが進んでおりますが、今度は、こうしたも のの量とか質とかをいかに充実していくかということになりますと、これらのホームヘ ルプサービス提供者に対する教育、研修というものはどのように取り組んでいったらい いのかということが、その次にすぐに出てくる問題だと思いますので、この辺のところ を考えなければいけないかなと思いました。 2のデイサービスについて、これも同じような意味でございまして、実施メニューを どこかで検討していかなければいけないのかなと。もちろん画一的なメニューを提供し なければいけないなどということではありませんが、しかし標準的なメニューをどこか で考えないといけないかなという気がいたしました。このように、このところでも議論 があるかなと思っています。  単身者の給食の問題でございますが、これも老人のサービスの一環として考えていく のか、あるいは知的障害者特有の問題があって、配色サービスもまた考えなければいけ ないのかどうかということだと思いますが、原則的には地域の老人サービスシステムを どう利用するかということを考えていくことになるのかもしれませ。。いずれにして も、その辺のところが問題になるだろうと思っています。  4番目に挙げました地域生活支援ということでは、既にあります生活支援ワーカーと いうものの機能が、これも就労条件の撤廃によって大きく変わっていきますし、先ほど もお話がありましたように、グループホームに出かけることもできるようになれば、こ のことに関してもう少し役割を整理しなければいけないということもあると思います。  たとえば、それらの方々に、施設におけるサービスの問題と、地域におけるサービス の問題とになんらかの差異があるのだとすれば、そこのところに、むしろワーカーたち に対する簡単な指導マニュアルみたいなものを考えなければいけないかなと思っていま す。コーディネーターに関しても全く同じでございます。  あとからこれ以外に出てきたものとしては、生活するための経済的な問題をどうする のかということ。それに比較的近い問題として出てきましたのが、就労という、改めて 働くということに関してどう考えていったらいいのか。たしかに高齢者だから働かなく てもいいということではなくて、高齢者の中にも働きたいと思う人たちがいるのは、一 般の高齢者と全く同じでございますので、働く場、あるいは経済的な保障みたいなもの を考えておかなければいけないだろうということが加わったように思います。  そのほか、日中活動につきましては、あまり大きな議論はなかったように思います が、余暇活動、社会活動といわれているものの拠点をどこに置くのかということです。 そんなことも考えていかなくてはいけないのではないかと思っています。きょうは全く そこはお話に出ませんでしたが、私がこれから考えていくときに、どこを拠点にして彼 らが遊び、かつまた社会参加をするためにボランティア活動を組織していくのかと考え ています。  地域の支え合いの問題に入りますが、これに関しては、広報とか啓発活動をどれだけ 工夫しなければいけないのかということに尽きるかもしれません。そのように考えて、 また知的障害者相談員をどのように活用するかということだろうと思いますが、知的障 害者相談員は4900人おられるそうですが、これらの大多数は知的障害者の親の方がたで あることも私は存じあげておりますが、その親たちの年齢によっても、従来から知的障 害者をどのように処遇していったらいいのかというのは、親の年齢によってもかなり考 え方が違うように思います。 それらを含めますと、私たちは知的障害者の相談員に対してどのように働きかけてい ったらいいのかということを考えざるを得ないと思います。すなわち、知的障害者相談 員の方々のさまざまな考え方をこちらが吸収しなければ活用ができませんので、そんな ふうに考えておきました。 離職後の生活維持に関しましては、実際に生活保護をどのように受けるかということ に関して、先ほどのご説明の中にありましたが、もちろんこれだけのことではないと思 いますが、たとえばこれに関しては、周知の方法、手法をどうしたらいいのかというこ とで、これらは先ほどからお話の出ています相談員もさることながら、支援ワーカー等 がどのようなノウハウをもって生活保護の受給ということにかかわってもらうのかとい うことも、少し整理しておかなければいけないのかなと思っています。 知的障害者の権利擁護に関しましては、既に政策的にもいくつか手がついているもの もございますし、そして知的障害者特有の問題は何か考えなければいけないとすれば、 単に今の制度を使えばいいということだけではなくて、そこへどのようにアクセスさせ るか、アクセスする手段を考えなければいけないだろうと思います。 それは、その一つ上にありました生活維持の問題とも共通しておりまして、いかに広 報し周知させるか。特にその中で「だれが」ということとなれば、どういう人たちがそ れにかかわらなければいけないのかということを、皆さま方からまたご意見をいただき たいと思っています。 最後になりますが、健康管理と医療の問題につきましては、すでに皆さま方からもご 意見が出ていましたし、市町村の現在もっています健康診査の機会をどのように活用す るかということでいいのかもしれませんが、ご存じのとおりで、生活習慣病といわれる ものが多いとされています。この問題に関して考えると、予防的な措置、あるいはもう 一つ手前の食生活の改善の問題、こうしたものを考えて、なんらかの形で疾病、合併症 をあまりもたない知的障害者になっていただく。それも、高齢化しても合併症によって 命が縮められることのないような施策を考えなければいけないかもしれません。こんな ことも含めて、健康管理と医療の問題について考えています。 ここで出された問題の他に、そんなことも私は考えてみました。 以上、地域生活支援の問題について私なりに問題を少し整理してみて、論点をそこで 絞ってみました。これでもまだたくさんの問題点がありますので、できるだけ次回は、 こうした問題一つひとつに対して皆さま方がどのような意見をおもちかということをお 聞きしながら、できるだけスピードアップして整理をしていきたいと思っています。 このほか、先ほどからずっとご意見がありました 2のところの施設の問題も、その次 にはもう一度整理をしてお話しを伺いたいと思っています。 そして、 3にありますような高齢者施策の活用、そして一般的な高齢者の施策の活用 と、そちらとの連携をどのようにしたらいいのかということも、しめくくりのところと してまた議論させていただきたいと思っています。 そろそろ時間になりましたので、私は一応このような形でまとめさせていただきまし たが、何かご意見があれば。 橋本委員 吉川先生の整理は非常に整然として、そのことと別に、私は、何度も申しあげており ますが高齢者の領域で働いていることもございまして、ここで使う地域生活支援という 概念がピタッと落ちないのです。要するに地域生活支援というのは、生活の場がサービ ス完結型の施設以外で暮らす人に対するサービスの背景をいおうとしているのか、よく わからない。そして、先ほどからお話がございましたように、結果としてサービス完結 型の施設に戻っていらっしゃる方もあるわけで、そこのところと関連なしに議論は進ま ないのだろうという感じがするものですから、全体像の中の今回はここをやりますとい うような、地域生活支援という概念について少し整理していただけるとわかりやすいな という感じがするのですが、いかがでございましょうか。 吉川座長 私のほうでこういう形で地域生活支援を議論をしていただこうとして出した理由は、 地域生活支援が今いろいろといわれていますし、地域生活支援という言葉が悪ければ、 地域で生活できるようにしたい、その考え方が大きいので、そのためにはどういう方策 があるかということでまず議論をしていただく。ところが、先ほどから施設の議論の中 にもありましたように、やはり帰ってこざるを得ない人たちもいるのだろう。そうする と施設のあり方は、従来型の若いときから施設の中で完結型で運営していったのではだ めなので、おそらく改めて地域生活からリタイヤして施設に戻ってくる人たちもいるは ずだ。そうなると、その人たちをどのように受け入れたらいいのかということなのです ね。 それは、知的障害者施設だけではなくて、一般老人施設に関してもそこへ戻ってく る、戻ってくるというよりは、そこでは初めてくるということになるかもしれません が、そういう意味での施設に入っていかなくてはいけないケースも出てくるだろう。こ のことを議論しないことには、地域生活支援などというきれいごとをいってもだめなの ですね。ですから、地域生活を大事にするけれども、そこに参加できない人たちに対し てはどういう施策を考えなくてはいけないのかということで、これが2番目に位置づけ られているのですね。そんなふうに考えていただいて、なおかつ3番目のところは、先 ほどから申しましたように、では知的障害者の施設だけではなくて、現在の一般老人の 施設やあるいはシステムをどのように活用するのかということで議論を締めくくればい いのかなと、こういう考え方で今まとめているのです。  そこからですが、地域生活支援というのは行政用語なのです。ですから、むしろ課長 からでも、地域生活支援という言葉そのものをどのように使っているかということをひ と言お知らせいただければと思います。  仁木障害福祉課長  先ほど橋本委員から、たとえばということでお話がありましたように、まさに24時間 のサービスがそこまで完結する入所施設以外の人へのサービスということで、地域生活 支援という言葉を使っています。昼間は通所施設なりデイサービスに通いながらグルー プホームなり福祉ホームなりで生活する、それは地域生活支援という概念で考えており まして、そこでサービスが完結する施設入所者以外の生活をどう支えていくかというの を、ここでは地域生活支援というふうに整理しております。 吉川座長 それに関しては皆さま方、またご意見がおありかと思いますが、これで議論を切って しまうのではありません。きょうは時間がきたということで、この問題についてはまた 機会を得てお話しをさせていただきたいと思います。  私からはそれぐらいですが、あと、事務局からご連絡はございますでしょうか。  事務局  次回の検討会の開催予定でございますが、事務局から日程表をお配りいたしますの で、都合の悪い日、よろしい日を記入いただきまして、お帰りにいただければ幸いでご ざいます。  本日は、熱心なご討議をありがとうございました。 問い合わせ先 厚生省障害福祉部障害福祉課   担 当 轟(内3031)、斎藤(内3038)