00/03/21　第１８回厚生科学審議会研究企画部会議事録


                  第１８回厚生科学審議会研究企画部会議事次第

１．日　　時：平成１２年３月２１日（火）　１４：００～１６：００
２．場    所：中央合同庁舎第５号館　共用第９会議室
３．出席委員：矢崎義雄部会長
           （委員：五十音順：敬称略）
              柴田鐵治　竹田美文　
           （専門委員：五十音順：敬称略）
              菊地眞　東條毅　中村隆一　埜中征哉　眞柄泰基　眞崎知生
            　栁澤信夫

４．議    事：
＜審議事項＞
１　　平成１２年度厚生科学研究費補助金（ヒトゲノム・再生医療等研究事業）
　　　の公募方針について
２　　平成１２年度厚生科学研究費補助金（ヒトゲノム・再生医療等研究事業）
　　　の指定研究課題について
３　　遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業の実施について
＜報告事項＞
１　　厚生科学研究費補助金による研究事業の中間・事後評価について
２　　遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針（案）につ
　　　いて
３　　ヒト胚性幹細胞を中心としたヒト胚研究に関する基本的考え方
　　（科学技術会議生命倫理委員会ヒト胚研究小委員会）
４　　ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案（仮称）について
５　　その他

５．配付資料：
１　　遺伝子解析による疾病対策・創薬等推進事業予算の概要
２　　平成１２年度厚生科学研究費補助金（ヒトゲノム・再生医療等研究事業）
  　　公募方針について
３　　平成１２年度厚生科学研究費補助金（ヒトゲノム・再生医療等研究事業）
      指定研究課題について
４　　遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業の実施について
５　　厚生科学研究費補助金による研究事業の中間・事後評価について
６　　遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針（案）の概要
７　　「疫学的手法を用いた研究等における個人情報の保護等の在り方に関する
 　　　専門委員会」の設置について
８　　ヒト胚性肝細胞を中心としたヒト胚研究に関する基本的考え方
　　　　　　　（科学技術会議生命倫理委員会ヒト胚研究小委員会）
９　　ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案（仮称）について

６．参考資料：遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針（案）
○事務局
　それでは定刻になりましたので、ただいまから第１８回厚生科学審議会研究企画部会
を開催させていただきます。
  本日は大石委員、寺尾委員、寺田委員、黒川委員及び高久委員の５名が御欠席という
ご連絡をいただいております。
　では、最初に本日の配付資料について事務局から確認させていただきます。
（資料の説明と確認）
　それでは部会長、よろしくお願いいたします。

○矢崎部会長
　本日は年度末で大変ご多用のところをご参席いただきましてありがとうございまし
た。
　それでは本日、堺科学技術審議官がお見えでいらっしゃいますので、一言ごあいさつ
をよろしくお願いいたします。

○堺科学技術審議官
　先ほど矢崎部会長からもご挨拶ございましたように、年度末慌ただしい中ご参集いた
だきましてありがとうございました。今年初めての研究企画部会でございます。本年も
よろしくお願いしたいと思います。
　前回は１２月２８日にございましたが、継続する厚生科学研究の公募方針についてご
審議をいただきました。２月４日から３月１日まで、官報、インターネットなどにより
まして数多くの研究課題の応募がございました。現在、各研究事業の事前評価委員会が
毎日のように開かれておりまして、12年度の早いうちに課題の決定を行うべく作業が進
んでございます。
  本日ご審議いただく事項は、平成１２年度の新規事業でありますヒトゲノム・再生医
療等研究事業の公募方針についてでございます。ミレニアム・プロジェクトの推進に向
けまして先生方のお知恵をおかりしたいと思っております。
  また、報告事項といたしましては、厚生科学研究の中間並びに事後評価の状況、先端
医療技術評価部会でご検討いただいている、「遺伝子解析研究に付随する倫理的問題に
対応するための指針（案）」の検討状況、科学技術会議で審議されているヒト胚研究に
関する考え方などを用意してございます。ぜひ厚生科学研究の推進に向けまして、本日
も忌憚のないご議論をよろしくお願いしたいと思います。
  ありがとうございました。

○矢崎部会長
　どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。
  それでは審議事項に入らせていただきます。まず平成１２年度における厚生科学研究
費補助金（ヒトゲノム・再生医療等研究事業）の公募方針につきまして厚生大臣より諮
問され、研究企画部会に付議されておりますので、これにつきましてご検討いただきた
いと思います。最初に事務局から説明をよろしくお願いします。

○事務局
　本日ご議論いただきますのは、ヒトゲノム・再生医療等研究事業の公募方針でござい
ますが、まず資料の１をごらんください。
  ここにまとめておりますのが来年度の厚生省科学技術関係予算、うちミレニアム・プ
ロジェクト関係ということで 100億円の予算、これが国会で成立したわけでございます
けれども、この予算のうち、具体的には事業内容として３つに分かれております。
　すなわち遺伝子解析による疾病対策・創薬関係、再生医療関係、バイオテクノロジー
応用食品総合研究関係の３つでございますけれども、この中の１番目、遺伝子解析によ
る疾病対策・創薬関係のところでございます。
　内容を申し上げますと、厚生科学研究費補助金25億 8,100万円と、医薬品副作用被害
救済・研究調査機構費61億円の２つに分かれておりまして、前回のこの部会でご説明申
し上げましたとおり、医薬品副作用被害救済・研究調査機構費61億円につきましては、
がん、痴呆、糖尿病、高血圧などを中心として国立高度専門医療センターにおいて実施
するということで、前回ご報告させていただいたところでございます。
  本日ご議論願いますのは、この遺伝子解析のうちの厚生科学研究費補助金でございま
す。
この内訳はどうなっているかと申し上げますと、資料３の４ページをごらんいただきま
すと、「ミレニアムプロジェクト（ヒトゲノム）」という形で簡略化させていただいて
おりますが、この中が具体的には３つに分かれるわけでございます。
  まず最初がヒトゲノム解析研究分野、２番目が遺伝子治療基盤研究分野、３番目が研
究資源基盤研究分野、この３つでございますけれども、このうち遺伝子治療基盤研究分
野と研究資源基盤研究分野というのは、いわゆる指定の研究で研究を進めさせていただ
く。一番上のヒトゲノム解析研究分野、ここが公募という形で、本日ご議論を願うわけ
でございます。
　そこで諮問されておりますのは資料２でございますが、厚生大臣から厚生科学審議会
への諮問を受けて、厚生科学審議会の会長から研究企画部会へ付議した文書でございま
すけれども、「ヒトゲノム・再生医療等研究事業の概要」ということで、先生方はすで
にご承知のとおり、ミレニアム・プロジェクトのうち高齢化分野のプロジェクトを構成
する事業の１つであること。高齢者等の主な疾患遺伝子の解明に基づく個人の特徴に応
じた革新的な医療の実現。すなわちオーダーメイド医療の実現。あるいは自己修復能力
を利用した骨、血管等の再生医療の実現。生命工学を利用した疾患予防・健康維持のた
めの高機能食品の開発。
この３つがミレニアム・プロジェクトのこの分野の目標になっているわけでございます
が、このうちの疾患遺伝子、薬剤反応性遺伝子の解明というところが今回、公募になる
ということでございます。
　先ほど申し上げましたとおり、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構を通じた研
究費によって、痴呆、がん、糖尿病、高血圧、喘息につきましては、国立高度専門医療
センターあるいは国立小児病院、あるいは国立医薬品食品衛生研究所で実施されること
になっておりますので、今回の公募につきましては、２の公募研究課題のところにござ
いますように、１番から４番、すなわち、いま申し上げましたような疾患を除いた疾患
に関連する遺伝子の同定、あるいはその機能の解明、また、それらの疾患に用いる薬剤
の反応性遺伝子の同定、あるいはその機能の解明ということを目標にしたかどうかとい
うことでございます。
　また、資料２の２ページでございますけれども、いまご説明申し上げましたような研
究について、１課題当たり 1,000万円から 5,000万円程度で、研究機関としては１から
３年、また、新規採択予定課題数というのは、先ほどごらんいただきました資料３の４
ページにございますとおり、平成12年度まで継続予定の課題が２課題、また平成13年度
まで継続予定の課題が11課題すでに採択されておりますので、そういう点から申し上げ
ますと、予算的には４億円から５億円程度ということになりますので20課題程度の採
択、もちろんこれは研究費の規模に大きくよるところでございますけれども、1,000万
円から 5,000万円程度で、このような形でいかがかと考えている次第でございます。
  なお本件につきましては、今月の初めに開催されました事前の評価委員会、委員長が
高久自治医科大学学長でございまして、十数名の委員からなります事前評価委員会にお
諮りをして、このような方針をつくっていただき、本日、部会に上げさせていただいた
ところでございます。
  以上でございます。

○矢崎部会長
　どうもありがとうございました。ただいまの説明につきましてどなたか、ご質問ある
いはご意見がございますでしょうか。いかがでしょうか。
　平成12年度における公募の方針ですけれども、いまご説明のとおり、予算としては４
億円から５億円で、１課題当たりの研究費から申しますと20題前後の採択ということで
ございます。

○眞崎委員
  審議会の会長から部会長にあてた文書の３ページ目の２、公募研究課題１、２、３、
４というのがございますけれども、この２、３、４あたりが分類がすっきりいかないよ
うな感じがしますけれども、この１、２、３、４というのは同等に力を入れてやられる
ということなんでしょうか。

○矢崎部会長
　原則としてどうでしょうか。

○事務局
　３ページ目の公募研究課題のところでございますが、１と２が疾患遺伝子分野でござ
いまして、３と４が薬剤反応性遺伝子の分野ということで書いております。
  また、その中でおのおの遺伝子を同定をする。もちろん遺伝子を同定するために若干
の機能解明というのは当然あるんだろうという考えを持っておりますけれども、一応遺
伝子の同定と、遺伝子あるいはたんぱく質の機能の解明という形で、それぞれを細分化
しているというところでございます。

○矢崎部会長
　おそらくほぼ同じような位置づけだと思いますけれども、応募された課題の評価によ
ってある程度変わってくる可能性はあるのではないかと思います。だから、内容次第で
もあるかと思いますけれども。
　そのほか何かございませんでしょうか。おそらくこの研究企画部会での審議が終了す
れば、これは厚生大臣のほうに諮問が、後で述べますように、いくと思いますので、も
し先生方ご意見があれば、いまここでお話しいただければ大変ありがたいと存じます。

○柳澤委員
　高度専門医療センター、ナショナルセンターで行うプロジェクトにおいては、こうい
った公募研究を行う対象が疾患としてあまり列挙されていなくて、高齢者の病気に関係
するものであれば何でもいいという形なんですけど、これは事前評価委員会では、対象
疾患について、たとえば高齢者であれば骨粗しょう症とか、具体的に非常に大きな問題
をもつ病気が、ミレニアム・プロジェクトの指定で取り上げられるもの以外にもあるわ
けですね。そのへんはあまり議論されなかったのでしょうか。
　それとも、公募の対象としてかなり広く、どういう課題でも一応可能性を、プロポー
ズされたものについて審査する段階でそういった重みづけをしていこうという考え方な
のか、そのへんの事前評価委員会の考え方を知りたいんですが、いかがでしょうか。

○事務局
　いま柳澤委員からご指摘のあった観点から申し上げますと後者の考え方でございま
す。すなわちすでに指定をされている、昨年の12月のこの部会でもご報告申し上げまし
たとおり、総理のもとですでに指定されております痴呆、がん、糖尿病、高血圧、喘息
などにつきましては、すでに指定されているところで実施をする。それ以外の分野につ
いては具体的な研究計画、その重みづけあるいはその疾患の重要性などにつきまして計
画を練っていただいた後でご議論をしようという考え方で整理されているかと思いま
す。

○柳澤委員
  わかりました。そういうふうな観点であるならば、一応公募研究課題としてこの４つ
を取り上げて、それぞれ疾患遺伝子の同定と機能解明、それから薬剤反応性遺伝子の同
定と解明ということで、一応の大まかな分類をされるということは結構だと思います。
しかし、当然のことながら、対象となるいろいろな老化関連疾患において、研究の進行
の度合いというのはかなりまちまちですね。
　その中で、非常に大事な領域であっても、まだなかなか研究が進んでいないものもあ
ると思いますし、できるだけこの４つの課題は、ある程度研究テーマの整理ということ
でつくられるのは結構だと思いますけれども、全体としては、ミレニアム・プロジェク
トの基本的な方針に沿った形で老化関連疾患の研究を進める観点から、なるべく広く対
象を選んで、研究費を支給することを検討するような、そういうプロセスをとることを
ぜひ、実際の作業の過程ではお願いしたいと思っております。
　以上です。

○矢崎部会長
　どうもありがとうございました。先生のご趣旨に沿って進めていきたいと思っており
ますけれども、何せ研究期間が１年から３年ですので、あまり遠い将来のプロジェクト
を提示されても対象にならない可能性がありますので、その点はやはり念頭に置いてい
ただければ大変ありがたいと思います。

○柳澤委員
　おっしゃるとおりだと思います。

○矢崎部会長
　そのほか何かございますでしょうか。
　柴田先生は実際に研究の現場におられませんけれども、いつもコメントをいただいて
いるのですが、何かご意見ございますでしょうか。

○柴田委員
　ニュースを追っているだけなんですけれども、遺伝子解析による疾病対策・創薬関
係、ヒトゲノム計画の推進というのは、最初のうち非常に強くうたわれていたと思うん
ですね。
　今回のここのところでは特にそれは入っていませんけれども、ヒトゲノム計画が世界
的規模で、いま非常なピッチで進んでいるのと、その後の問題ですね。特許を取ろうと
いう動きと、それに対して対抗的に全部公開しようというような動きがありますね。そ
ういうことの絡みは、このミレニアム計画の中の遺伝子解析問題はどんなことが、いま
の段階で議論されているのか。もし教えていただけたらと思うんですけれども。
　確かにヒトゲノム計画、日本はおくれているからミレニアムでというのが最初の動機
だったというふうに私は聞いているんですが、それよりも上回る、世界のテンポがいま
早すぎるんだろうと思うんですね。ヒトゲノム計画というような言葉が、あるいは取っ
払われてしまったのか、まだ依然として促進というような意味合いが入っているのかど
うかも含めてちょっとお聞きしたいと思うんですが。

○矢崎部会長
　世界の状況も日々変わっておりますので。よろしくお願いします。

○事務局
　本日、資料１としてお配りいたしておりますのは、厚生省にかかわるミレニアム・プ
ロジェクトということでございまして、ミレニアム・プロジェクトのこの分野、すなわ
ちゲノム分野と通称呼ばれております分野の中には、ヒトの完全超能ＣＤＮＡを解明を
する。あるいは１塩基多型、スニップスと呼ばれておりますけれども、標準的な日本人
のスニップスを解明するという分野が含まれております。
　従来から言われてきたヒトゲノム分野という観点から申し上げますと、ヒトの標準的
な遺伝子を解明をするということで、そちらの分野が近いのではないかと考えておりま
すが、ミレニアム・プロジェクトの中で厚生省が受け持っております分野は、医療の現
場に近いという厚生省の特色から申し上げて、いわゆる疾患に関する遺伝子、あるいは
薬剤に関連する遺伝子、ここの部分を解明するということがその目的になっているわけ
でございます。
  もちろん各省庁一体となってこの計画というのは進められるわけでございまして、わ
れわれとしても、最初に申し上げましたＣＤＮＡの解析とか、あるいは標準スニップス
の解析の部分にも興味を持っているわけでございますが、予算的な割り切りから申し上
げますと、そのような形になっているということでございます。

○柴田委員
　特許の問題については何か議論がなされているんですか。ここで政府の研究費を注ぎ
込んだものについては一切公表していくというふうな基本方針があるのか、あるいはそ
うではなくて、むしろ製薬会社などがこの後、製品化する上にどういうような方式を、
この研究費との間に見ていらっしゃるのか。
　まだ、いまは始まる前ですから見通しだけでいいんですけれども、どんなことを考え
られているのかだけ。特許に関してですね。

○矢崎部会長
　特許に関してはきわめて関心が深いところ。私どももそうなんですけれども、事務局
からよろしいですか。

○事務局
　特許の問題につきましては、総理のご決定のペーパーの中にもたしかあったかと存じ
ますが、これらの研究機関、たとえば国立がんセンターであればがんセンター、あるい
は循環器センターであれば循環器センターなど、あるいはこれは補助金でございますか
ら、研究費の補助を受ける方々、これらの方々が知的財産権にも注目をして、従来です
と学会発表がまずありきだったんですけれども、知的財産権を申請できるものについて
はまず申請をするという方向で督励されているところでございます。
　もちろんこの遺伝子のどの部分に特許を与えるかというのは日米欧の特許当局によっ
て話し合いがなされている。あいまいな合意といたしましては、遺伝子の配列がわかっ
ただけでは特許にはならない。その遺伝子がどのような機能を持っているのか、その部
分が解析されて初めて特許になるという包括的な合意が特許当局同士の間ではあると聞
いておりますけれども、そのような制限の中で、知的財産権が押さえられるものについ
ては知的財産権を申請をしていくということが督励されているところでございます。

○柴田委員
　つい最近ですけれども、アメリカとイギリスが、いわゆる政府機関による解明した部
分については公開するというような、これは多分にベンチャー企業を意識した対抗策と
いうような形の打ち出しだと思うんですけれども、そういうようなものについては日本
は相談にはあずかってないのか、あるいは日本のスタンスはどのへんにあるのか、ちょ
っとそれも、よければ教えていただけませんか。

○事務局
　アメリカとイギリスの会談においてクリントン大統領が発表した文書の件ではないか
と考えておりますけれども、あれは従来のヒトゲノム計画、すなわち日米欧で進めてき
た、ヒトの標準的な遺伝子をすべて、遺伝子の塩基配列を決めてしまおうというプロジ
ェクトでございます。
　そういう点から申し上げますと、先ほど申し上げましたように、その配列自体をわか
った段階では特許にならないわけでございますが、特許当局の間の包括的な、あるいは
あいまいな合意ということで申し上げましたけれども、アメリカの特許当局がその遺伝
子の配列だけで特許を与えるか与えないかという問題もいまだ若干残っているんだと聞
いておりまして、その懸念を払拭するためにも、遺伝子の配列だけでも、すべてわかっ
た段階で公表してしまおうじゃないか、それによってだれも特許が申請できなくなって
しまうということの合意であったかというふうに聞いております。
　すなわち先ほど申し上げましたように、遺伝子の配列だけでは特許を与えず、その機
能解明がなされた段階で特許を与えるという方向の声明であった。すなわち従来のスタ
ンス、ここ２、３年、特許当局の間で考えられてきたスタンスと同一の歩調に乗った上
での発言であったのではなかろうかと考えております。

○矢崎部会長
　このミレニアム・プロジェクトといいますか、その予算で行われた結果については私
どもは特許の対象として、これからも進めていこうと思っていますけれども、先生のお
っしゃられた、政府の研究として上がってきたものはオープンにするということに対し
て、日本の対応はどうかということですけれども、これに関しては、各研究者がどうい
うふうな位置づけになるんでしょうか。そのへんは。

○事務局
　申しわけございません。柴田委員のご質問に正確に答えていなかった部分があったか
と思いますけれども、アメリカのクリントン大統領のご発言というのも、政府が補助金
を出した、あるいは政府がやったものについてすべて特許を取る前に公開すると言って
いるわけではないんだというふうに考えております。
　すなわち公開すると言ったのは遺伝子の塩基配列の部分、従来、狭い意味で言われた
ヒトゲノム計画、ヒトの標準的な遺伝子の配列をすべて押さえてしまおうと。
　先々月でございますか、アメリカのベンチャーでございますセレーラ社が98％塩基配
列を確定をしたという報道がなされましたけれども、これに対抗するご発言であったん
だろうというふうに、少なくともリマークスを見ているとそういう発言になっておりま
す。
  すなわち塩基配列の部分をセレーラが、特許にならないにしても、一部の方にだけ、
会員として会費を取って、非常に高額だと聞いておりますけれども、会費を取って、そ
の方だけに見せるという方策をとっているのに対して、ヒトの遺伝子の配列部分は公開
をしてしまうおうというのがアメリカとイギリスの、クリントン大統領のご発言だった
というふうに解釈をしております。

○柴田委員
  その部分については日本も全く同意見だというふうに見てよろしいですか。米英と。

○事務局
　その点については先生おっしゃるとおりだと考えております。

○矢崎部会長
　そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
  本日、もしお認めいただければ、厚生科学審議会令第５条第６項に「審議会はその定
めるところにより部会の決議をもって審議会の決議とすることができる」とございます
ので、会長と相談の上、本部会の研究公募方針につきまして、本部会の決定をもって厚
生科学審議会の決定にいたしたいと思います。よろしいでしょうか。

　　　　　　　　　　　　　　（「異議なし」の声あり）

○矢崎部会長
　どうもありがとうございました。それでは、ただいまのヒトゲノム・再生医療等研究
の公募方針を厚生大臣に答申させていただきます。
　今後の手続きはどういうふうになりますか。

○事務局
　ご答申いただきました公募方針につきましては来月の半ば、できれば来月前半に官報
に告示をさせていただくとともに、厚生省のホームページに掲載をさせていただきたい
と考えております。
　なお、遺伝子解析研究に付随する倫理問題につきましては後でまたご報告させていた
だきますけれども、ミレニアム・プロジェクトを実施する厚生省関係の６施設につきま
しては、現在、先端医療技術評価部会で検討していただいています倫理規定の指針の遵
守、これを義務づけたいと考えておりますし、その他の施設につきましては、ユネスコ
宣言をもとに科学技術会議で検討されております倫理問題の基本原則というのがござい
ますけれども、これを遵守していただくということにさせていただきたいと考えており
ます。
　以上でございます。

○矢崎部会長
　それではよろしくお願いいたします。
　では、次の審議事項であります、平成12年度厚生科学研究費補助金 (ヒトゲノム・再
生医療等研究事業) の指定研究課題につきまして、遺伝子解析、再生医療、食品の順
に、それぞれの担当から説明をお願いいたします。
  それでは事務局から説明をお願いします。

○事務局
　それでは資料３に基づいてご説明申し上げます。資料３の４ページをごらんいただき
たいと思います。
　４ページがヒトゲノム分野をあらわした図でございますけれども、先ほどちょっと申
し上げましたとおり、ヒトゲノム解析研究分野、これはいま定めていただきました方針
にのっとって公募をさせていただこうと考えております。
　次が遺伝子治療の基盤研究分野と研究資源基盤研究分野でございまして、ここの分野
というのは指定という形で考えております。
　まず遺伝子治療基盤研究分野でございますが、内容的に申し上げますと、ベクターの
開発を中心といたします基礎研究の分野と、臨床関連の研究の分野、ここの分野につき
ましては、先端医療技術評価部会でご検討いただいている個別の審査計画も当然含まれ
ますけれども、基礎と臨床の２つに大別されるというふうに考えております。
　基礎の分野につきましては、ベクターの種類で３つに分けておりますけれども、ウイ
ルスをベクターとして使う分野、すなわちこれが小澤先生の研究班と早川先生の研究班
の２つがございまして、小澤先生の分野がアデノ随伴ウイルスのＡＡＶといわれるベク
ター、また、早川先生の分野がアデノウイルスのベクターを開発されております。
　次のハイブリッドベクターでございますけれども、これは金田先生のところと早川先
生のところの２つでございます。また非ウイルスベクターといたしましては、リポゾー
ムのベクターを名古屋大学の吉田先生がやられております。
　その他といたしましては、細胞へのターゲッティング、目的とする細胞へ導入する技
術でございますが、これを日本医科大学の島田先生、また、ベクターの発現制御方法に
ついて、国立がんセンターの落合先生の研究班がございます。
　２つ目の分野、臨床の関連研究の分野におきましては、腎がん、肺がん、前立腺が
ん、悪性グリオーマ、乳がん、ＡＤＡ欠損症、閉塞性血栓血管炎という７つの分野に分
かれておりますけれども、このうち前立腺がん並びに閉塞性血栓血管炎、バージャー病
等でございますが、これについては現在、先端医療技術評価部会でご審議を願っている
ところでございます。
　次に研究資源基盤研究分野でございますけれども、この分野は４つに分けることを考
えております。遺伝子バンク、細胞バンク、薬用植物、最後には霊長類、すなわちカニ
クイザルを中心とした、あるいはチンパンジーを用いた研究、この４つに分類をするこ
とを考えております。
　１ページに戻っていただいて恐縮でございますが、おのおのの研究の概要並びに期待
される成果、研究費の案につきましては、１ページから２ページの頭まででございます
が、ここに整理をさせていただいております。
　内容といたしましては、先ほど概要を申し上げましたので省略をさせていただきます
が、このヒトゲノム分野並びに再生医療の分野、最後が食品の分野でございますが、こ
の３分野につきまして、今月の初めに開催させていただきました事前評価委員会で一応
のご了承を得ましたので、本日、部会に上げさせていただいているところでございま
す。よろしくご審議をお願いいたします。
　続いて再生医療の分野についてご説明を申し上げたいと思います。

○麦谷エイズ疾病対策課長（代理）
　再生医療を受け持たせていただきますエイズ疾病対策課でございます。本来なら課長
の麦谷が参ってご説明申し上げるところですが、ちょうど大臣室に呼ばれておりまし
て、私が代理でご説明させていただきます。
　再生医療のほうは２ページ目の頭のほうからになりますが、全部で７分野に分かれて
おりまして、骨・軟骨分野、血管分野、神経分野、皮膚・角膜分野、そして血液分野、
移植技術分野、品質管理分野と７部門に分かれております。
　先日３月13日に行われました事前評価委員会にて、ほぼこちらの17課題で大筋了承と
いうことでございまして、このまま進めさせていただきたいと思います。
  細かい部分について、事前評価委員会で幾つかご指摘出ましたので、そちらの部分を
現在、事務局と主任研究者の間で調整中でございます。
  以上でございます。

○松原食品保健課長
  続きまして、資料の３の３ページですが、一番下段にあります食品分野のところにご
ざいます「バイオテクノロジー応用食品の安全性確保及び高機能食品の開発に関する研
究」、主任研究者は国立国際医療センター研究所長でいらっしゃいます吉倉廣先生にお
願いしているところでございます。所管は食品保健課でございます。
　ここの研究内容で６本ほど柱が立っておりまして、バイオテクノロジー応用食品につ
いてはもうすでにご案内と思いますが、市場に出回っております。29品目で６添加物で
ございますが、これにつきましては厚生省が安全の評価を行う。これは審査というよう
な形での法律的な義務づけがまだされておりませんで、これを任意に申請をさせて、そ
れを、多数の科学的なチェック項目に従って安全を評価したものが流通しているという
状況でございます。
　これについて消費者あるいは事業者など、いろいろ関係者がおり、とりわけ消費者が
遺伝子組換えについての安全性に大変深い関心がある。そういうところから、この研究
が発足しているという状況でございます。
　その内容の１番目でございます安全性確保に関する研究。これだけではちょっとわか
りにくいので、たとえば内容としましては、具体的には、導入したＤＮＡがどのような
たんぱく質をつくっているのか。つくっているとしたら、それはどのように検出してい
って安全性を確かめるのか。あるいはアレルゲンを含んだものをＤＮＡが産出するの
か、しないのか。そのようなことをチェックする必要があるのですが、それをどのよう
にチェックするのか。あるいは遺伝子組換えについて、世界のある研究者が、たとえば
こういう実験を研究したら、こんな危険性を示唆するようなデータがありましたという
場合に、それが正しいのかどうか。場合によっては、そういう追跡調査も行うというこ
とも含めた安全性の研究でございます。
　２番目のＤＮＡ組換え体の検知といいますのは、市場に出ているものの中で組換えか
組換えでないかという、もちろん検知もございますし、厚生省が確認したものか、まだ
してないものかというような検知をする必要がある。そういった検査方法の精度向上等
に関する研究であります。
　３番目が遺伝子組換え食品の慢性毒性に関するものでありまして、現在、遺伝子組換
え食品については慢性毒性試験というものは基本的には必要がないということで行って
いませんが、遺伝子組換え食品によっては慢性毒性試験が必要なものもあり得る。
　そうした場合に疫学的といいますか、動物実験といいますか、いかにモデルのプログ
ラムを組んだらいいのかということが大変むずかしいわけでございます。遺伝子組換え
食品を食べていない人はほとんどいないと言っては言い過ぎかもしれませんけど、食べ
ていない群と食べている群と分けるということが疫学的にむずかしゅうございますし、
動物実験で行う場合でも、その遺伝子組換え食品だけを食べさせる、大量に食べさせる
と、これ自身がモデルとしても適切かどうかという問題がございます。そのようなこと
を研究する問題です。
　次に４番目は、いま厚生省で確認しているのは植物だけなんですが、ここにございま
すように動物性食品、クローン牛とかいろんなものがございます。そのものの安全性に
関する研究も、今後を見据えて行っていかなければならない。
　５番目はリスクコミュニケーションと言いますが、私どもの特殊な言葉なんですが、
要するに遺伝子組換え食品に対して、消費者がどのように受け入れていくのか、受け入
れているのかいないのかというような調査も踏まえ、また、そういった安全性評価等に
かかわり、あるいは遺伝子食品の行政について消費者がどのように関与していったらい
いのかというようなことを社会医学的に研究するものでございます。
　最後に高機能食品というのは、これまでは遺伝子組換え食品はほとんど、たとえば害
虫に強いなどといった特質を組換え食品によって得るものが多いんですが、今後は、た
とえば特定の栄養素がきわめて多くて、体の健康面で良いものでありますとか、あるい
は「そば」でもアレルゲンフリーであるとか、そのようなものができないか。あるいは
そのような食品が開発されていく場合、そういったものについて安全性をどのように評
価していいのか等々の研究でございます。
　以上でございます。

○矢崎部会長
　どうもありがとうございました。ただいまのご説明によります指定研究課題について
ご意見いただけますでしょうか。
　ご説明ありましたように、３月13日に事前評価委員会を開きまして、一つひとつ提出
されました研究の申請書にのっとって評価を進めまして、１つはその研究の内容と、２
番目は、いままでのどれほど実績を上げられた方かどうかということ。３番目には、こ
の表に書かれてございますように、平成12年度から14年度に終了ですので、所定の期
間、すなわち３年間の間、どれほど到達目標に達するかという予測などを加味しながら
厳正に、リストアップされた研究が選ばれたということでございます。個々の研究の内
容を含めて、先生方でご質問、ご意見ございましたら、よろしくお願いいたします。

○柴田委員
　全く素人質問をして申しわけないんですけど、いまの遺伝子組換えの食品についての
問題で、2001年から表示をすることが義務づけられていますね。これとの関係、むしろ
農林水産省のほうの関係かと思うんですけれども、厚生省としては、表示の義務づけに
どういうふうにかかわってくるのか。また、そのための研究がここに含まれるのかどう
かということが１つと、リスクコミュニケーションのあり方という先ほどの説明だと、
これは純粋な自然科学的なものじゃなくて、かなり社会科学的な研究も含まれているの
かどうか。その２点を質問させてください。

○松原食品保健課長
　それでは食品保健課のほうで２点についてご説明します。１点目の表示の問題です
が、表示制度について若干ご説明をいたしますが、この表示制度によって研究内容が影
響されるということはないと思っております。
　表示につきましては、いまご指摘がございましたように、農林水産省のほうで、こと
しの４月から制度が発足して、来年の４月から実施されるという予定であります。これ
は組換え食品であるのか、あるいは組換え食品でないのか、あるいはどちらとも分別が
つかないものなのかというような３種類で表示がされるということで進んでおります。
　一方で厚生省におきましても、公衆衛生の見地から、すなわち安全性を確保するとい
う観点から表示を、食品衛生法に基づいて行うことをいま検討しております。その内容
についてはまだ検討中でございますので、ここではご紹介できませんけれども、従来、
食品の表示につきましては、いわゆる品質の管理に関するＪＡＳ法と、食品衛生法の安
全性の観点から、両方で表示しておりまして、今後もそのような方向で行っていくこと
でございます。
　リスクコミュニケーションについてのご質問ですが、リスクコミュニケーションにつ
きましては、先ほど申し上げましたように、消費者の遺伝子組換えに対するパブリック
アクセプタンスの状況を調査させていただくことが基本であると思っております。その
ような意味で社会科学的な研究でございます。
　以上です。

○矢崎部会長
　どうもありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。

○埜中委員
　遺伝子治療基盤研究分野で、臨床関連研究にがんがたくさん並んでいますけど、消化
器系のがんとかそういうものがないのは、公募のいいプロポーザルがなかったのか、あ
るいはがんセンのほうのミレニアムであるのか、そのへんの、このがんを選ばれた基準
というか、それを教えてください。

○事務局
　遺伝子治療の臨床関連研究分野に並んでおりますのは、すでに先端医療技術評価部会
で、臨床のプロトコール、試験計画を了承したもの及び現在申請がなされているもので
ございます。したがいまして、来年度の時点で国内で実施される可能性のあるものすべ
てをここで網羅しているということでございます。

○矢崎部会長
　ほかにいかがでしょうか。眞柄先生、何かございませんか。

○眞柄委員
　特にございません。

○矢崎部会長
　神経のほうで、柳澤先生、何かございませんか。

○柳澤委員
　私はこれでいいかと思ったんですが、実は神経のところで取り上げられていますの
は、ＥＳ細胞を用いた、パーキンソン病をはじめとして、神経伝達物質が欠乏する疾患
に対する脳内細胞移植の可能性を探るための基礎研究ということが高坂さんのもとで行
われていて、一方、自治医科大学の小澤さんのほうでは、ウイルスベクターを入れた細
胞の脳内移植のテーマが、この一番最初の研究課題として取り上げられていますね。
　実際には臨床研究の領域では、この２つは違った流れで非常に大事なんですが、神経
においてゲノムを使った研究を推進する領域としては、たとえば神経難病として脊髄小
脳変性症とか筋萎縮性側索硬化症とか、社会的にも問題になっている病気の遺伝子治療
の可能性、ジストロフィーもそうですけど、そういうものもおそらく非常に大事な領域
だと思います。そういったものがどういうふうな形で全体のミレニアム・プロジェクト
に入るのか、ミレニアムというと、ちょっと違うのでしょうか。
　神経疾患に焦点を絞ると、そういった社会的に問題になっている神経変性疾患の遺伝
子治療がどういうふうに位置づけられるのかなということが問題になります。パーキン
ソン病が、もしも高齢関連疾患ということで位置づけられるということで整合性をとら
えるならば、それはそういう理解でもよろしいと思いますが、いまのような点について
何か情報があれば教えていただけますか。

○矢崎部会長
　私の理解のもとでは、小澤先生のところはもうすでに動物実験を始められて、ある程
度モデル動物では、プレリミナリーですけれども成果が出ているので、そういう意味
で、この３年間で一応は成果が上がるだろうと。
　本筋はベクターの開発ですけれども、対象としてそういうパーキンソンを選びましょ
うということで、たまたまパーキンソン病でわかるということで、特別に神経疾患とい
うとらえ方ではないと思います。
　それから高坂先生のほうですけど、これはＥＳ細胞ではなくて、神経の幹細胞で、も
うすでにその培養系が確立していますので、そういう状態ですと比較的早く応用できる
のではないかということで、この評価委員会では高く評価されて選ばれたと思います。
　先生のおっしゃる神経難病の遺伝子治療というのは、その次の段階でおそらく展開さ
れるものであろうということで、今回はこういうテーマで選ばさせていただいたという
ところがあるかと思います。

○柳澤委員
　わかりました。ありがとうございました。

○矢崎部会長
　そのほかいかがでしょうか。特によろしいでしょうか。中村先生、何か。
よろしいでしょうか。
　東條先生、何かございますでしょうか。

○東條委員
　厚生科学の事前評価、別な領域でさせていただいたんですが、そのときに遺伝子関係
の応募がかなり多かった。
　そのときに、厚生科学研究というのは文部省の科学研究費とは違って、社会に還元す
る、患者さんに還元するということが比較的近いようなテーマを選ぶべきであるという
ことで、なかなか遺伝子関係の、非常にすぐれた仕事ではあるけれども採択されなかっ
たのがありまして、そのときに議論になりましたのが、これはまた別の、ヒトゲノムの
ほうに応募されればよかったのではないかというような議論がございました。
　12年度はともかくとして、将来的にヒトゲノムに関するような研究を積極的にこちら
に応募していただきたいというような方向でいくものなのかどうか、そのへんをちょっ
と教えていただきたいと思います。

○事務局
　もちろん予算ですから枠に限りはございますが、基本的には、積極的にご応募いただ
いて、その中で事前の厳しい評価をしていただいて、よりよいものを選んでいきたいと
考えております。

○矢崎部会長
　よろしいでしょうか。いろんなところで各省庁間でもゲノムプロジェクトといいます
か、遺伝子解析の研究のサポートがあると思います。東條先生が言われるように、厚生
科学での遺伝子解析研究というのは少し、疾患により関連したものを進めていくという
切り口で、今後もそういう方面は、ぜひ厚生科学のほうに応募していただきたい。ある
いは評価もそういう視点から行っていきたい。
  特に厚生科学の評価に関しましては、先生ご存じのように、行政的な観点からの評価
も加わって総合的に評価点を出すということになっておりますので、もちろん倫理的な
面の評価も厳しくして進めていくというのが現状ではないかと思います。

○柳澤委員
  もう１つ、これは次年度以降の検討課題とすべきではないかと思うんですが、移植技
術のところの、野本教授が班長をなさっている班研究が、３ページですけれども、臓器
の移植技術の問題と、移植医療の社会的基盤に関する研究と、この２つを全体としてま
とめて１つの課題に取り上げられていますね。
　これはやはり臓器の移植技術というのは全く医学的な研究であって、かなり基礎的な
研究を含んだものであるわけですし、一方で社会的基盤ということになりますと、もう
少し社会科学的な側面からの研究も必要であり、当然のことながら脳死体からの臓器移
植を、諸外国に比べて非常におくれてスタートしたわが国においては、心臓や肺につい
ても特にそうであり、肝臓については生体部分肝移植でかなりの蓄積があるからいいか
もしれませんけれども、こういったベーシックな移植技術そのものに関する医学的な研
究というもののニーズというのはかなり高いのではないかと思います。それはそれとし
て、当然１つの班を組んで行うべき研究だろうと思います。それからまた、わが国にお
いて脳死体からの臓器移植が行われないというふうな事柄に関する社会学的な側面も含
めた課題の研究ということは当然必要になってくる大きなものです。これを一緒にまと
めて、しかも２億何千万円という研究費をつけてやるというふうなことが、果して厚生
科学研究のあり方として適切かということが気になるんですね。
　私としては、従来からの厚生科学研究のあり方と考え合わせて見ますと、これはやは
りテーマを２つに分けて、それぞれ別の班を組んでやることを今後の課題として検討し
ていただけたらと思いますが。

○矢崎部会長
　どうもありがとうございました。この経過については。

○麦谷エイズ疾病対策課長（代理）
　先ほど委員のご指摘がありました再生医療の16なんですが、確かに柳澤委員のご指摘
のとおり、１つの班としては大きすぎるというご指摘を、こちらのほうで課のほうに持
ち帰りまして１度検討させていただきたいと思っております。来年度以降、先ほどの意
見を参考にさせていただいて検討させていただきたいと思っております。

○矢崎部会長
　そのほかよろしいでしょうか。
　いまのはやはり脳死臓器移植で、おそらく野本先生が技術的な面から社会的な面まで
全部ひっくるめてやっておられるので、そういう構成になっていると思います。内容は
それぞれ、たとえば移植された臓器の拒絶反応をどうコントロールするかという、その
基礎的な研究班と、片や臓器提供者の、いかに社会的なコンセンサスを受けて数をふや
すかというようなというところまできわめて幅広い。
　野本先生も技術的な面から、拒絶反応の基礎的な面から社会的な面までずいぶん広く
活躍されておりますので、そこの評価委員会では野本先生が、これらをまとめる一番わ
が国では最適な先生ではないかという評価はいただいたと思います。
　それでは報告事項に移らせていただきます。まず、その１の「厚生科学研究費補助金
による研究事業の中間・事後評価について」、事務局から説明をお願いします。

○事務局
　それでは資料の４に基づきまして、中間・事後評価結果についてご報告申し上げま
す。
　厚生科学研究費補助金の中間評価あるいは事後評価のやり方につきましては、前回の
部会にご審議賜ったところでございまして、それに基づいて、現在までに実施された評
価結果を本日ご報告させていただくところでございます。
　１ページ目をごらんいただきますと、まず中間評価の結果といたしまして、７事業の
評価結果がここに並んでおります。すなわちそのほとんどは継続可、継続してよろしい
という評価でございましたけれども、一部には研究計画の変更あるいは研究費の増減、
あるいは共同研究者の変更を検討すべきというふうに評価されたものがございます。
　また、合計３課題につきましては継続不可、継続するのは適当ではないというような
評価をいただいたものが３課題ございます。
　２ページ目が事後評価の結果でございますけれども、この事後評価の結果につきまし
ては、６事業につきまして本日ご報告させていただくものでございます。
　上の欄に書いてありますように、上の欄の左から２番目の欄でございますが、上の段
が学術的評価点数、15点満点でございますけれども、この評価点数でございまして、下
の段が行政的な評価点数、これは５点満点でございます。
　この表の下のほうに学術的評価点数の分布と書いてありますけれども、研究目的の達
成度、学術的・国際的・社会的意義、発展性、この３項目についてそれぞれ５点満点で
評価をしていただいて、それを合計したものがこの分布表でございます。
　もちろんこれを合計するのがいいのか、それぞれの項目によって比重が違うのではな
いかというようなご指摘も賜っておりますけれども、一応前回の部会のご審議の結果に
基づいて合計したものをご報告させていただいております。
　また、行政的な評価の点数につきましては、厚生行政に関する対策貢献度ということ
で５段階評価をさせていただいております。
　この表をごらんいただきますと、行政的な評価と学術的な評価が必ずしも一致をして
いない分野というのもまた考えられまして、この評価のあり方につきましては行政とい
たしましても再度案を絞って、その案がまとまった段階でまた部会のご意見をお聞きし
たいと考えておりますが、本日は、昨年の末に開かせていただきました部会のご審議に
のっとって、中間評価並びに事後評価の結果を報告させていただくものでございます。
　以上でございます。

○矢崎部会長
　どうもありがとうございました。いまのご説明に何かご質問ございますでしょうか。
　いままでの経過ですと、事前評価、中間評価は、行政点と学術的な評価点の分布がそ
う違わなかったんですけれども、事後評価に関しては一部そういう不一致の点があると
いうのはやはり、おそらく厚生科学としてやっていただきたいという研究と、実際に上
がった成果がやはり学術的に見て十分に上がってないというところがあって、柳澤先生
がおっしゃられたように、実際にエビデンスとして出すのがなかなか、研究成果として
出すのがなかなかむずかしい状況にはあったと思います。事後評価というのは何年の研
究の結果ですか。

○事務局
　基本的には10年度で終わったものの事後評価でございまして、それぞれの研究計画は
１年から３年でございますので、３年計画のものでございますれば、３年目が終わった
ものについて評価をしたものでございます。
　なお、最初10年度と申し上げましたけど、後ろのほうで11年度と言っておりますので
訂正させていただきます。恐縮でございます。

○矢崎部会長
　研究は１年から３年で終わるものではないので、ぜひ事後評価で、学術的評価と行政
評価が少し開きがあるような研究については今後ともぜひフォローアップしていただい
て、さらにそのなりゆきを見ていただければ、もう少し問題点が明らかになると思いま
すので、よろしくお願いいたします。

○竹田委員
　表を拝見しますと、長寿科学総合研究事業の学術的評価点数が悪いのが目立ちます。
これは事業によって評価の仕方が違うということはわかりますが、何か特に理由がある
のか。30パーセントは、15点満点とすると60パーセント以下という形になっています
が、特に評価が厳しいのか。

○柳澤委員
  長寿科学の事後評価に関係した者という立場から簡単にご説明させていただきますが
１つは、長寿科学研究はかなり歴史が古いんですけれども、非常に基礎的な医学研究あ
るいは生物学的な研究の領域から、膨大なコーホートスタディーを含んだ社会医学的な
研究、さらに漢方とか東洋医学とかそういうものまで非常に広い範囲を含んでおりまし
て、そして、この事後評価に際して、この次にどうしたらいいかということを委員会で
はディスカッションしたんですけれども、専門でない方が見る評価が、専門家の見る評
価とかなり違っていました。それが専門家の評価の中に一緒になって評価されたという
手続き的な問題があったというふうに私自身は考えております。
　行政のほうはむしろそうではなくて、行政の立場からきちんと見ていただいたという
ことで、ここでは行政の評価が非常に高くて、むしろ学問的な評価が厳しいという結果
になっております。それはやはりある程度専門外の人が、個々の研究についての特殊性
とか困難さとか、そういうことをあまり考慮しないで点数をつけた結果が厳しくなった
というふうに理解すべきではないかなと思っております。３番目の 6.0から 8.9になっ
たもの、一部はもちろん、かなり成果が上がらないということで反省すべきであるとい
うものが含まれていたということはございますけれども、ここに上がっているものすべ
てがレベルの低い研究であったというものではないというふうに理解しております。

○矢崎部会長
　どうもありがとうございました。ミレニアム・プロジェクトの大きな柱が高齢化社会
ですので、ぜひ長寿科学もがんばっていただきたいと思います。
  一方、ヒトゲノム遺伝子治療研究事業については非常に一致しているのは、これはい
ま先生がおっしゃられたように評価しやすいというか、ゴールデンスタンダード的なも
のが存在するので評価しやすかったということがあるかもしれませんね。

○東條委員
  継続不可能という課題が３題ございますけれども、私が関係した中間評価でやはりそ
れが問題になったことがありまして、ただ、それが２年目だったわけですね。それで、
予算の配分時期のことも考えて、それは少しお気の毒ではないかということになったん
ですが、この３題の中で２年目、つまり１年間の結果で不可になった課題がございます
でしょうか。

○事務局
　いずれも３年計画の３年目でございまして、２年目までの結果を受けて、中間評価委
員会の中で問題が指摘され、取りやめるという判断が下されたものでございます。

○矢崎部会長
　そうしますと、３年目はご遠慮願ったということになるわけですね。
　それでは次に報告事項２の「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための
指針（案）について」、事務局より説明願います。

○事務局
　資料の５と参考資料と書いた２つについてご説明を申し上げます。資料の５が概要で
ございまして、参考と書いてありますのが全文でございます。
　この「遺伝子解析研究に付随する倫理問題に対応するための指針（案）」と申します
のは、参考資料を見ていただきますと、主任研究者垣添国立がんセンター中央病院長が
報告書ということになっております。ミレニアム・プロジェクトの遺伝子解析を実施す
るに当たりまして、特に国立がんセンター、国立循環器病センター研究所などのナショ
ナルセンターあるいは国立小児病院、国立医薬品食品衛生研究所で実施するに当たりま
して、研究者あるいは研究機関が実施すべき条件について研究をいただいたわけでござ
います。
　それが参考資料の中間報告書でございまして、これを先端医療技術評価部会に報告を
いたしまして、先端医療技術評価部会の中で現在、ご審議賜っているものでございま
す。
　その概要を資料５に基づいてご説明申し上げますと、内容的には資料５の１番から４
番まで、すなわち個人情報の保護、生命倫理、遺伝カウンセリング、研究の監督等、こ
の４つからなっております。
　まず個人情報の保護という観点から申し上げますと、個人情報を当該機関の外部に持
ち出すことを禁止するとともに、その資料については原則として匿名化を図るというよ
うなことが掲げられております。
　また生命倫理の観点から申し上げますと、あくまで試料の提供というのは自由意思に
基づくインフォームド・コンセントが前提となっております。そのための説明用資料、
あるいはそのための一連の手続き、こういうものを研究計画に記載するとともに、倫理
審査委員会がそれを審査するというシステムを持ち込んでおります。
　３番目の遺伝カウンセリングでございますが、特に遺伝の関与がはっきりしている疾
患、こういうものを研究の対象とする場合には、遺伝カウンセリングの体制を用意をす
るというのが述べられておりますとともに、また、遺伝カウンセリングの専門家が現状
では十分でないというようなことも考えて、研究機関同士の連携あるいは紹介というよ
うなことがうたわれております。
　４番目の研究の監督でございますが、研究機関の長としては、研究計画の作成、また
研究状況の定期報告を研究者に実施させる。それを受けまして外部の者、外部の有識者
が年に１回、特に個人情報の保護の状況等につきまして実地調査をする。その結果がま
た、研究機関の長に報告をされるということが述べられております。
　また、倫理審査委員会の関係で申し上げますと、研究機関で行う遺伝子解析研究につ
いて、研究計画を事前に審査をする。その構成といたしましては、委員の半数以上を外
部委員とする。また、その外部委員の半数以上を、倫理的事項あるいは社会の意見を反
映できるという自然科学以外の者とするというようなことが書いてありますとともに、
審査の概要は公開をするということで述べられております。
　今後のスケジュールでございますが、２月４日に先端医療技術評価部会でご審議を行
っていただいて、この垣添先生の中間報告に基づいてパブリックコメントをとるという
ことになっておりまして、説明書、同意文書のでき上がりが若干日にちがおくれました
ので、４月の上旬、具体的に申し上げますと４月５日までパブリックコメントをとると
いうことになっておりまして、得られましたパブリックコメントを参考にさせていただ
いて、４月の中旬以降再度、厚生科学審議会の先端医療技術評価部会でご審議を賜り、
その結果を踏まえて、厚生省の指針として決定をしていきたいと考えております。
　指針のポイントといたしましては、倫理審査委員会の充実の問題と、個人識別情報の
厳格な管理、インフォームド・コンセント、遺伝カウンセリング、この４本柱からなっ
ているということでございます。
　以上でございます。

○矢崎部会長
　どうもありがとうございました。中間報告書の内容につきましてはホームページで
オープンし、いまパブリックコメントがたくさん寄せられている段階にあると存じます
けれども、何かご意見ございますでしょうか。

○柴田委員
　先ほどの説明で、私の聞き違いだったらいいんですけど、この倫理規定は、ミレニア
ム・プロジェクトの応募者には守ってもらうと。それ以外の、政府研究機関ではない民
間には別の倫理規定をというような説明があったような気がしたんですけれども、ちょ
っと再確認させていただいて。
　といいますのは、大変立派な倫理規定ができたと思うので、決して政府機関の研究機
関だけに守ってもらうんじゃなくて、民間まで含めて守ってもらっていいことじゃない
かというふうに思うものですから、ちょっとその点もう１回確認させてください。

○事務局
　この先端医療技術評価部会でご議論賜っておりますのは、当初から、
ミレニアム・プロジェクトを実施する厚生省傘下の６機関が実施をするという観点から
ご議論を賜っております。そのために、まさしくミレニアム・プロジェクトを実施する
前提として書かれている部分も多々あるわけでございます。
　したがいまして、これをそのままほかの機関まで実施するということは実際上むずか
しい点が、もちろんこれをもとにご議論を賜るということになると思いますけれども、
もう１段の議論が必要であろうと考えております。
　一方では科学技術庁と申しますか、科学技術会議におきまして、「遺伝子解析研究の
ための基本原則」と呼ばれておりますけれども、いわゆる「憲法的な指針」、ユネスコ
宣言を考えていただければよろしいのかと思いますが、そういった基本原則のご議論が
続いております。
　こちらのほうは、垣添先生の研究班の中間報告に比べますと、これが非常に具体的か
つ詳細に決められているのに対して、原則が述べられているということで、その細部ま
で踏み込んでいない代物でございますけれども、それがご議論賜っておりまして、先ほ
どご説明申し上げましたのは、とりあえず来年度の遺伝子解析に関する研究の分野にお
きましては、厚生省のミレニアム・プロジェクト６機関には、この先端医療技術評価部
会で決められてご議論願っている指針の遵守を義務づける。
　一方、それ以外の機関におきましては、科学技術会議でご議論になっている基本原則
をとりあえず義務づけるということで考えている次第でございます。

○柴田委員
　その事情でわからないではないんですけれども、義務づけるという言葉は非常にきつ
い言葉ですから、それで結構だと思うんですけど、ミレニアム・プロジェクト以外の分
野でも、できたら、この新しい倫理基準を守ってもらうことを要望する、要請する、な
いしは期待する、そういうような方針ぐらいは出してもいいような気がします。
　確かに全部にこれだけのことをというのは大変厳しいということはわかるんですけれ
ども、せっかくできたこの基準を、あまりミレニアムだけに絞らないほうがいいのでは
ないか。
　これは多少私の意見を加えて申し上げたいと思います。

○矢崎部会長
　どうもありがとうございました。私もこの研究にかかわって報告書を作成した一員で
もありますけれども、これは自画自賛ではないんですけれども、先生のおっしゃるよう
な、研究を進めるに当たっての規範というより、実際に研究を進める段階でどういう問
題が起こって、それをどういうふうに対処していったらいいか。
　実際に研究の現場の人たちがお困りの点がずいぶんあるわけですね。それを具体的に
懇切丁寧に指針を出したわけでありまして、したがいまして、先生のおっしゃるような
広い領域を全部網羅した規範的なものではなくて、比較的細かい領域の事項もあります
ので、これを全部に広げることは無理だと思います。
　しかし、こういう一番むずかしい研究を実際に進める現場の人たちに具体的な指針を
与えるようなものができたということ、これは非常に大きな意義があって、私どももぜ
ひ、これをもとに、先生のおっしゃる大きな規範ができれば、これを一生懸命つくった
かいがあったと思いますので、ぜひ厚生科学課でもそういう方向で広めていっていただ
ければ大変ありがたいと思います。
　この調査研究に審議官はずいぶん熱心にご参加いただきましたので、何かご意見ござ
いますでしょうか。

○堺科学技術審議官
　特段の意見というわけではございませんが、前回、先端医療技術評価部会で柴田委員
からも、ほかの委員からも珍しく褒められまして、いいのができたと。ぜひ、あのとき
の最終的な結論といいますか、ポイントとしては、パブリックコメントをいただいてい
る最中でございますが、できた暁には、これの基本原則といいますか、基本的精神は十
分ほかの研究にも生かすようにということでご意見をいただいております。
　ただ、個々に見てみますと、たとえば倫理審査委員会の構成でございますとか等々、
まだ、すべての研究機関あるいは大学、病院というようなところでこういう構成ができ
るかどうか、むずかしい点もあることは事実でございます。けれども、方向としてはこ
ういう方向であろうと思っております。
　でございますので、一気にはいかないにしましても、まずは科学技術庁でやっている
憲法というものを示しながら、また、こういうものがあるので、これも十分参考にして
くれということを言いながら、それで広めていけたらと思っておりますので、よろしく
お願いします。ありがとうございました。

○矢崎部会長
　それでは続きまして、報告事項３のヒト胚研究の件と、報告事項４のクローン技術等
の規制に関する法律案の２件について、まとめて事務局より説明をお願いします。

○事務局
　資料の７と資料の８に基づいてご説明申し上げます。
　資料の７は、科学技術会議の生命倫理委員会の中にございますヒト胚研究小委員会が
３月６日にまとめました「ヒト胚性幹細胞を中心としたヒト胚研究に関する基本的考え
方」という報告書でございます。
  これは30ページぐらいある膨大な報告書でございますので、ポイントだけの説明にと
どめさせていただきますが、10ページをごらんいただきたいと存じます。10ページにヒ
ト胚性幹細胞、ＥＳ細胞についての基本的考え方がまとめられております。
　この５段落目「ヒト胚性幹細胞を扱う研究は」というところでございますが、ここに
大きな基本的な方針がまとめられているかと存じます。
　すなわちヒト胚という人の生命の萌芽を扱うという倫理的な問題があるということが
１つ。その一方、ヒト胚は現在のところ、法的な権利主体とまでは言えない。また、ヒ
ト胚性幹細胞それ自体は個体の産生につながることはないということから、その樹立及
び使用に際して重大な弊害が生じるとは言えないのではなかろうかということが述べら
れておりまして、そのために罰則を伴った法律による規制が不可欠なものではないだろ
う。技術的な進展に適時対応していく必要がある。また、研究者の自主性、倫理観を尊
重した柔軟な規制の形態を考慮することが望ましいということが述べられておりまして
すなわちヒト胚性幹細胞を用いる研究につきましては、国としての指針をつくるという
方向性が示されているわけでございます。
　どのような指針になるかということでございますけれども、21ページに「ヒトＥＳ細
胞の樹立に関する審査手続き」ということで、ＥＳ細胞を樹立する際の手続きが述べら
れているわけでございまして、まず、提供医療機関の中に審査委員会ＩＲＢがある。こ
こでもちろんご審議を願う。
　ヒト胚が提供されて、それを樹立する機関、この樹立する機関にも当然、研究者がお
られますでしょうし、機関の長がおられる。それが倫理審査委員会ＩＲＢに意見を聞
く。その上で、その計画の妥当性について確認を国に対して求める。国が専門委員会を
つくって、そこで意見を聴取をして、その結果を樹立機関の長に返す。いわば遺伝子治
療のやり方、遺伝子治療の機関の中に審査委員会があって、国に委員会があって、その
両者が審査をしていくということを思い浮かべていただければありがたいと思います。
　また、実際の研究のほうは24ページに「ヒトＥＳ細胞を使用する研究の手続き」とい
うことで、こちらも機関のＩＲＢ審査委員会と、国の専門委員会の二重の手続きという
ことが述べられております。この２つを中心とした指針をまとめたらどうだろうかとい
うのが、この小委員会の報告でございます。
　また25ページにつきまして、今度はＥＳ細胞じゃございませんで、ヒトクローン胚の
取り扱いについてでございます。
　これについては前回の部会でご報告申し上げましたけれども、昨年の11月並びに12月
の生命倫理委員会のご決定が、まず25ページの（１）のマル１、マル２、マル３にまと
められているわけでございますが、すなわちヒトクローン個体の産生について、法律に
より罰則を伴って禁止をする。
　マル２でございますが、キメラ個体を産生する行為についても同様に取り扱う。マル
３でございますが、ヒトクローン胚等の研究についてはさらに議論をしていくというの
が、昨年12月の生命倫理委員会のご決定でございまして、マル３について検討した報告
書がこの後半部分でございます。
　どういうことになっているかと申し上げますと、（２）にその基本的考え方が述べら
れているわけでございますけれども、ヒトクローン胚あるいはキメラ胚、ハイブリッド
胚、こういうものの作成・使用というのは個体の産生につながる可能性があるけれど
も、研究をするということは、発症予防の研究や、あるいは拒絶反応のない移植医療に
関する研究の場合には必要ではなかろうか。そういう点を考慮して、研究は原則行うべ
きではないけれども、一定の範囲で、それを厳格な審査により、個別に実施の妥当性を
判断する余地を残すということでございまして、法律の中でそれを整備をするというこ
とが書かれているわけでございます。
　これが資料の７のご説明でございまして、資料の８は、いま申し上げましたクローン
個体の産生あるいはクローン胚の研究、これについて法律化するということで、12年の
３月、本年の３月に科学技術庁によってまとめられたものでございます。
　法律案のスキームの枠囲みのところをごらんいただきますと、ヒトクローン胚等をヒ
トあるいは動物の個体の胎内に移植することを禁止をするというのが１つ。２番目に
は、クローン胚あるいはクローン胚に類似の胚の取り扱いの確保のための措置、すなわ
ち指針をつくる。取り扱い前の届け出、指針に適合しない取り扱いに対する措置命令、
違反には刑罰を科すということが掲げられておりますが、これを法律化しようというも
のでございます。
　具体的には、ヒトクローン胚とその類似の胚ということで決められておりますけれど
も、ヒトクローン胚から、一番左の欄でございますが、キメラ胚、類似胚まで、母体へ
の移植をヒトクローン胚、ハイブリッド胚、キメラ胚については法律で禁止をする。そ
れ以外のものについては指針で禁止をするというようなことが書かれております。
　なお、この法律案につきましては、現在開かれております通常国会、本年の６月まで
の会期でございますけれども、この通常国会に法案として提出をされる予定と聞いてお
ります。
　以上でございます。

○矢崎部会長
　ありがとうございました。ヒト胚性幹細胞に関する研究の基本的考え方と、規制に関
する法律案について、どなたかご意見ございますでしょうか。

○柴田委員
　クローン問題というのは非常にむずかしいんじゃないかと思うんですね。ヒトクロー
ンの個体づくりがいけないというのは世界のコンセンサスとしてでき上がっていると思
うんですけれども、その一歩手前の研究については非常に有用性が高いので大いにとい
う、そういう格好をしているわけですね。
　その形というのはものすごくむずかしいテーマであり、いま世界ですと、そういう意
味では、クローン人間の禁止というのは本当に守られるのかどうかということについて
非常に疑問を持っている人が多い状態だと思うんですね。
　現に、いま大体の国ではみんな禁止の方向に行っていますけれども、たとえばどこか
の国が、それを自由にいいというような国があらわれたとき、一体国際的には、その国
に対してどういう対応措置をとるのか。外交的に、あるいは経済的に、その他どういう
ような対応をするのかというような問題とか、そういうことからいうと、条約にまでい
かないといけないんじゃないかというような話がいま新聞には出ていると思うんです
ね。
　ですから、そういう点でクローン問題というのは国際的な協議というんでしょうか、
それがかなり大切なんじゃないかなと同時に、その線の引き方ですね。どこに線を引く
のかという、個体はいけない、だけど、それに至る一歩手前までの研究は非常にいいと
いう、その線の引き方について、やはり常に何か議論していかないといけないんじゃな
いかなと思うんですね。
　ですから、今回の法律の禁止について、もちろん私も賛成ですけれども、この２つだ
けとらえるとものすごく微妙な問題だと思うので、もう一歩広い立場から、世界的に、
常に国際的な協議をしていく必要があるテーマなんじゃないかなというふうに感じてい
ます。　おそらくまだ外務省などはあまり関心を持っていないテーマだと思うので、こ
の禁止法ができるに当たって、政府内での議論がどうなっているか、もしご質問にお答
えいただけたら、事務局からお話しいただきたいと思うんですけれども。

○矢崎部会長
　条約への動きとかそういうのはあるんでしょうか。

○柴田委員
　そこまではまだいっていませんけど。

○事務局
　政府内におきまして議論されておりますのは、とにかく先ほど申し上げましたよう
に、現在開かれております通常国会へこの法案を提出をしようというところでございま
してもちろん国際的な動き、たしか遺伝子組換えがアメリカで禁止されたときに、アメ
リカ国内でできないから、最初にやった研究者はよその国に行ってやったということが
あったということをどこかの本で読んだ覚えがありまして、確かな事実かどうかわかり
ませんが、そのようなこともご懸念された柴田委員のお言葉ではないかと考えておりま
すけれども、現在のところ、そのような状況でございます。申しわけございません。

○柴田委員
　もちろん言うまでもないでしょうけど、この研究の禁止その他、日本の国内でという
限定つきであるわけでしょうね。外国に行ってやった日本人の研究者という部分はたぶ
んないだろうと想像するんですけれども、その点はいかがですか。

○矢崎部会長
　どうでしょうか。国内というか、日本国籍というか。

○事務局
　基本的には国内の問題であろうと考えております。

○矢崎部会長
　わが国の法が及ぶ範囲ということですか。

○柴田委員
　ですから、日本人でも、外に出て研究することは、これでは規制できませんよね。
できないんじゃないかと思うんですけどね。たぶんそれでよろしいんでしょうね。
　外国へ行ってやる場合には規制は受けないんではないかというふうに、つまり処罰の
対象にはならないんじゃないかというふうに思うんですけれども、違いますか。

○事務局
　若干理念的なお話なので、課長補佐の宮本からお答えさせていただきます。
　通常、刑法の一般的な原則論の考え方といたしまして、その国の法律はその国の領域
内で適用されるというのが原則論でございますが、一方、人的な管轄権というのもござ
いまして、日本の国の政府がつくったものは日本国籍を持っている者にも適用されると
いう２つの縛りがあるということではございます。
　ただ、日本人がアメリカに行ったときに日本の捜査権が及ぶか及ばないかというと、
当然及ばないということですから、観念的には日本人が海外で行った場合に、日本で禁
止されている行為というのは、本来はやってはいけないことではあるけれども、しか
し、それが日本の警察がアメリカまで出向いて捜査する、あるいはアメリカにいる人間
に対して、日本国の裁判所が何らかの形で訴訟で裁くということができない以上は、事
実上そこは日本人、日本国の中で適用されるのが普通の考え方だろうと思っておりま
す。
　ただ、ここで特別な例外を置いておりませんので、おそらくそういった形で本件は処
理されるものと思いますが、具体的な法案につきましては今後、科学技術庁が政府の中
で調整するということでございますので、その際に科学技術庁にも、そのへんにつきま
して問題提起なり相談はさせていただきたいと思っております。

○柴田委員
　先走りすぎているとは思うんですけど、なるべくこの問題は早く国際的な協議の場に
常にあったほうがいいんじゃないか。だから、日本でいえば外務省なんかが関心をもっ
と持つべきテーマなのではないかというふうには思っているんですけどね。
　ちょっと先走りすぎた議論かもしれませんけれども、要望として、意見としてだけ申
し上げます。

○矢崎部会長
　こういう議論はむしろ先走ったほうがよろしいんじゃないかと思いますのは、たとえ
ば遺伝子治療に関しましても、米国とわが国で、遺伝子治療を実施したタイムラグとい
うのは５年ぐらいしかありませんけれども、遺伝子治療に対しての国民の中でのディス
カッションというのはずっと歴史があるわけですね。
　ですから、わが国もやっぱり生命科学の進歩で、次のことが予想されたときはいち早
くそれを察知して、こういう議論を進めたほうがむしろ、もう科学の進歩のほうが先に
行って後追いになってしまいますので、ぜひ議論を詰めていったほうがよろしいのでは
ないかというふうに思っています。
　そのほかございますでしょうか。一応わが国でもこの法律、法制的な整備が行われる
ということになってきたわけです。
　実際に研究はどんどん進展しますので、これが技術の確立によって、その方向性がど
ういうふうに行くかというのは、今後われわれが抱えている大きな課題であると思いま
す。　そのほかよろしいでしょうか。それでは資料６について、事務局から説明お願い
します。

○事務局
　資料６についてご説明を申し上げます。
　資料６でございますけれども、先端医療技術評価部会の中にさらに専門委員会を置こ
うというものでございまして、「疫学的手法を用いた研究等における個人情報の保護等
の在り方に関する専門委員会」、疫学研究を行っていただく際に個人情報の保護、ある
いはそれを中心といたします人権の保護という観点から、必要な基準を定めて検討して
まいろうということで、審議会の会長並びに部会長とご相談をして、専門委員会を置く
ということをご了解いただいたところでございます。
　具体的な検討課題といたしましては、被験者への説明と同意のあり方、また、個人情
報の保護とその適切な利活用、さらにカウンセリングのあり方、あるいは倫理審査委員
会のあり方などが中心となっていくんだろうと考えております。
　できますれば今月末を目途に第１回目を開催させていただいて、専門委員会の中でご
議論を賜り、また、１カ月程度の国民からの意見聴取も行った上で、この秋を目途に成
案を得たいと考えております。
　裏にそのメンバー、現時点のメンバー、まだ確定したものではございませんが、メン
バーの案が載せられておりますけれども、疫学を中心とした先生方、一般的な医学の先
生方、さらに法律系の先生方、また、一般の国民の声を反映するという意味で、マスコ
ミの関係の方々が載っております。
　以上、３月17日にご決定いただきました、新たに先端医療技術評価部会の専門委員会
を置くということについてご紹介とご報告をさせていただきます。

○矢崎部会長
　どうもありがとうございました。わが国でのエビデンスに基づいた医療を進める上で
は、このような疫学的、あるいはコーホート研究というのは、これから欠かせない大き
な課題になると思います。
　そういう意味で、倫理的な個人のプライバシーを保護をするような新しいシステムを
つくっていただければ、わが国における疫学あるいはコーホート研究がさらに進展する
と思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
  以上が本日予定しておりました、本年度最後の厚生科学研究企画部会でございますけ
れども、先生方、何かここで言い残したようなことがありましたらどうぞ。
  それでは、以後の予定について事務局からお願いします。

○事務局
　次回の部会につきましては、昨年の５月に、本研究企画部会でご議論いただきました
「今後の厚生科学研究のあり方」という答申をいただいておりますが、このフォローア
ップについてご報告させていただくなり、また新たなご示唆をいただくなりすることが
必要だと考えておりまして、それらを含めまして、審議事項が固まり次第、また日程を
調整させていただいて開催をさせていただきたいと考えております。
　以上でございます。

○矢崎部会長
　それでは本日の部会はこれで終了いたします。ありがとうございました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　－了－



問い合わせ先  厚生省大臣官房厚生科学課
  担　当  新木（内線3806）
  電　話  （代表）03-3503-1711
          （直通）03-3595-2171