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脳死下での臓器提供事例に係る検証項目及び検証手続について

平成12年3月22日
脳死下での臓器提供事例に係る検証会議

 本検証会議における脳死下での臓器提供事例に係る検証項目及び検証手続は、下記のとおりとする。

1.検証項目

○ 本検証会議は、臓器移植法に基づく脳死下での臓器提供事例について、

(1) ドナーに対する救命治療の状況
(2) ドナーに対する臨床的脳死診断、法的脳死判定から臓器摘出に至るまでの状況
(3) 社団法人日本臓器移植ネットワーク(以下「ネットワーク」という。)による臓器のあっせん業務の状況(ドナーの家族に対する精神的支援の状況を含む。)

を検証する。

○ 具体的な検証項目及びその検証に際しての必要書類は、上記(1)及び(2)のドナーに対する救命治療、法的脳死判定等の状況については別添1のとおりとし、また、上記(3)のネットワークによる臓器あっせん業務の状況については別添2のとおりとする。

2.検証手続

○ 本検証会議における検証手続は、以下のとおりとする。

(1) 救命治療、法的脳死判定等の状況の検証手続

(1) 医学的検証作業グループによる医学的評価
・ 検証に当たっては、検証会議を行う前に検証会議の構成員の一部及び参考人からなる「医学的検証作業グループ」により医学的評価を行い、その結果を基に、検証会議において最終的な検証作業を行う。
(2) 臓器提供施設の担当医師等からの事情聴取等
・ 検証会議及び医学的検証作業グループは、臓器提供施設の担当医師、法的脳死判定を行った医師等から一連の経過を聴取する。また、必要に応じて参考人を招聘する。

(2) ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証手続

(1) ネットワークの担当者からの事情聴取等
・ 検証会議は、ネットワークの担当者(コーディネーター又はメディカルコンサルタント)から一連の経過を聴取する。また、必要に応じて参考人を招聘する。

(2) 専門家による家族との面談
・ 必要に応じ、家族の承諾を前提として、検証会議に参集を求めている専門家のうち精神的支援の分野の専門家が直接家族と面談を行い、コーディネーター等の家族に対する精神的支援の状況等について聴取した上で、その結果を検証会議に報告し、検証の参考とする。

(3) 検証作業を行う者の制限

○ 検証会議を構成する者が所属し又は何らかの関与をしている臓器提供施設において脳死下での臓器提供が行われた場合には、当該者は検証作業には加わらないものとする。

(4) 検証会議の非公開

○ 検証会議は、プライバシー保護の観点から原則として非公開とする。

(5) 厚生大臣への報告

○ 本検証会議は、検証結果を厚生大臣に報告する。なお、その検証過程で臓器移植に関する制度上の問題が指摘された場合には、当該問題点についても厚生大臣に報告する。

(6) 検証内容の公表

○ 本検証会議は、上記(5)の厚生大臣に報告した内容を公表する。ただし、 公表する内容については、事前にドナーの家族の承諾を得る。

3.ドナーの家族の状況の把握等

(1) ドナーの家族の状況の把握

○ 2の(2)の(2)の専門家による家族との面談においては、ドナーの家族の精神的支援に資するため、家族が臓器提供を承諾した事情、臓器提供から日が経ってからの心境等ドナーの家族の状況についても聴取するとともに、必要に応じて適当な精神的支援の専門家を家族に紹介すること等を行う。

(2) その他

別添1及びの検証項目並びに2の検証手続については、今後発生する事例の状況に応じて適宜見直す。


連絡先:厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室
    [担当]岩崎、小森、衣笠、木村
    (代表)03-5253-1111
    (内線)2361,2362,2364,2366


<別添1>

[救命治療、法的脳死判定等の状況の検証について]

1.具体的な検証項目

(1) 救命治療の内容

(1) 入院直後の診断・治療内容(※1、※2)
※1 ドナーが最初に受診した医療機関から、より高度な治療を行うために別の医療機関に搬送された場合には、最初に受診した医療機関における入院直後の診断・治療内容を含む。

※2 ドナーに対する救命治療の状況の全体を把握する観点から、臓器提供施設 に入院するまでの状況(特に救急患者の場合は、発症から入院までの搬送 に係る状況)についても事実関係を可能な限り把握し、本検証会議におけ る検証の資料とする。

(2) 集中治療における検査・治療内容(ICU[Intensive Care Unit]、HCU[High Care Unit]での検査・治療内容)

a)原因疾患に対する治療内容(保存的治療あるいは観血的治療の適応等)
b)全身管理における検査・治療内容
@) 呼吸管理(人工呼吸器の設定等)
A)循環管理(血圧の管理等)
B)水電解質の管理(尿量、各種電解質の管理)
C)脳神経系の管理(脳圧管理、脳圧降下剤の使用、脳低温療法)
c)その他の検査・治療内容

(2) 臨床的脳死診断の内容

(1) 深昏睡の確認
(2) 瞳孔の固定・瞳孔径が4mm以上であることの確認
(3) 脳幹反射の消失の確認
(4) 平坦脳波(脳波の測定方法、感度の評価を含む)の確認
(5) 臓器提供に関する説明を聞くかどうかの家族への意思確認
(6) ネットワークへの連絡手続

(3) 法的脳死判定の内容

(1) 法的脳死判定を開始した時点での脳死判定承諾書及び臓器摘出承諾書の取得の有無
(2) 脳死判定医の選定
a)法的脳死判定を行う医師の選定手続
b)法的脳死判定を行った医師(2人以上)の専門分野及び一般の脳死判定又は法的脳死判定に関する経験
(3) 前提条件への適合の有無
a)器質的脳障害による深昏睡及び無呼吸の確認
b)原疾患の確定
c)回復の可能性がないこと
(4) 除外例への該当の有無
a)急性薬物中毒でないこと
b)低体温でないこと
c)代謝内分泌障害でないこと
d)15歳未満の小児など本人意思が有効でない症例でないこと
(5) 法的脳死判定を行う時点における各種薬物(中枢神経抑制薬、筋弛緩薬等)の影響がないこと
(6) 一定の生命徴候の有無
a)体温が32度以下でないこと
b)収縮期血圧が90mmHg以上であること
c)重篤な不整脈がないこと
(7) 深昏睡の確認
(8) 瞳孔の固定・瞳孔径が4mm以上であることの確認
(9) 脳幹反射の消失の確認
(10) 平坦脳波(脳波の測定方法、感度の評価を含む)の確認
(11) 自発呼吸の消失の確認
(12) その他法的脳死判定における補助検査の実施方法及びその検査所見
(13) 法的脳死判定の所要時間
(14) 第1回目と第2回目の脳死判定の間隔(6時間を大幅に超えた場合はその理由)

(4) 上記(1)から(3)の各段階における家族への説明及び対応

(5) 法的脳死判定終了から臓器摘出手術の開始時までのドナー管理

2.必要資料

○ 臓器提供施設及び家族の協力により、以下の資料を基に検証を行う。

(1) 診療録

(2) 診療録以外の記録

(1) 看護記録
(2) ICUチャート
(3) その他の記録
※ ここで言う記録とは、上記の名称に関わらず、ドナーの体温、血圧、心泊数、尿量等の全身状態の記録、薬物投与の方法、量、投与期間、輸液の種類と量、人工呼吸器の設定条件等の治療記録を指す。
(3) 各種検査結果
(1) 頭部CT検査フィルムその他の画像検査結果
(2) 脳波
(3) 血液、尿検査
(4) 感染検査
(5) その他の検査
(4) 脳死判定承諾書

(5) 臓器摘出承諾書

(6) 脳死判定記録書

(7) 脳死判定の的確実施の証明書

(8) その他関係資料


<別添2>

[ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証について]

1.具体的な検証項目

(1) 初動体制

(1) 臓器提供施設から受領した初期情報への対応
a)臓器提供施設から得た情報の各ブロックセンターにおける正確な把握
b)関係者間の迅速な相互連絡(ネットワーク本部への連絡)
c)臓器提供施設から得た情報に基づく状況判断と臓器提供施設へのコーディネーターの派遣決定手続

(2) 臓器提供施設に到着してから家族への説明を開始するまでの手続
a)施設の担当医師等との事前打ち合わせ
b)第一次評価のためのドナーの医学的情報の入手
 第一次評価とは、臓器提供者になることができるかどうかの観点からコーディネーターが行うドナーの入院後の検査結果等に基づく評価をいう。
 なお、第二次評価とは、同様の観点からネットワークのメディカルコンサルタントが行う評価であり、第三次評価とは、あっせんされた臓器を移植に用いることができるかどうかの観点から移植実施施設の医師が行う評価をいう。
c)ドナー情報のネットワーク本部への連絡

(2) 法的脳死判定を行う前の家族への説明及び支援

(1) コーディネーターによる家族への説明
a)臓器提供意思表示カード又はそれに類する書面の確認
b)家族に説明する際の意思決定に影響を与えないための配慮
c)法的脳死判定についての十分な説明(説明内容を記載した文書の交付を含む。)
d)説明後の家族が考えるための十分な時間の確保
(2) 脳死判定承諾書及び臓器摘出承諾書の記載
a)脳死判定承諾書及び臓器摘出承諾書の記載
b)承諾が家族の総意に基づくものであることの確認
(3) 家族への精神的支援
a)家族の立場に立った精神的支援の実施
b)家族への精神的支援を行う上での臓器提供施設内の医療関係者等との連携

(3) ドナーの医学的検査

(1) 組織適合性の検査体制
a)レシピエントの血清のHLA検査センターにおける保管状況
b)ドナーの医学的検査及びレシピエントとの組織適合性に係る検査体制 の整備の状況

(2) ドナーの提供希望臓器の医学的状態の的確な把握(コーディネーターとメディカル・コンサルタントとの連携を含む。)

(4) レシピエントの選択

(1) レシピエント選択基準の遵守
(2) レシピエント選択を行う上でのネットワーク本部と各ブロックセンターの連携

(5) 法的脳死判定から臓器摘出までの活動

(1) 移植実施施設への連絡
a)法的脳死判定終了後、法的に必要な書類の内容の確認
b)移植実施施設への連絡開始時点
c)移植実施施設への連絡手続の迅速性

(2) 家族への説明
a)法的脳死判定終了後の家族への当該判定の結果に関する説明
b)家族への摘出手術に向けた手続の説明

(6) 摘出チーム及び臓器摘出手術の支援

(1) 摘出チームと臓器提供施設の担当医師等との連携
a)摘出チームの編成・人数の正確な把握及びこれらの臓器提供施設への伝達
b)摘出チームと臓器提供施設の担当医師等が連携を図るための配慮

(2) 摘出手術の直前の臓器提供施設の担当医師及び摘出チームのミーティングに対する支援

(7) 臓器搬送の調整

(1) 臓器搬送の計画の立案の迅速性
(2) 臓器搬送の関係者(各都道府県の消防・防災担当部局及び警察担当部局)への適切な連絡

(8) 臓器摘出後の家族への支援

(1) コーディネーターの臓器摘出後の遺体の見送りへの参加の有無
(2) 家族の承諾を受けた上での葬儀への出席の有無
(3) 臓器提供手続終了後におけるコーディネーターの家族への連絡状況(レシピエントの状況の報告等)

(9) その他

(1) 手続全体を通じたコーディネーターと家族との関係
(2) プライバシーの保護
(3) 捜査機関との連絡・調整及び検視・実況見分への協力

2.必要資料

○ ネットワークから提出される以下の資料を基に検証を行う。

(1) コーディネート記録
(2) レシピエント選択に係る記録
(3) 臓器搬送に係る記録
(4) その他関係資料

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