00/02/29 生殖補助医療技術に関する専門委員会第12回議事録                                             厚 生 科 学 審 議 会 先 端 医 療 技 術 評 価 部 会      生 殖 補 助 医 療 技 術 に 関 す る 専 門 委 員 会                 ( 第 12 回 )                               議   事   録                                         厚 生 省 児 童 家 庭 局 母 子 保 健 課            厚生科学審議会先端医療技術評価部会        生殖補助医療技術に関する専門委員会(第12回)議事次第 日 時 平成12年2月29日(火) 15:00〜17:25 場 所 厚生省 別館 特別第1会議室                       1 開 会  2 議 事   (1)精子、卵子、受精卵の提供等について   (2)その他  3 閉 会 〔出席委員〕                                    中 谷 委員長   石井(ト)委員  石井(美)委員  加 藤 委 員 高 橋 委 員 辰 己 委 員 田 中 委 員  丸 山 委 員  矢内原 委 員 吉 村 委 員 ○大平課長補佐  定刻になりましたので、ただいまから、第12回厚生科学審議会先端医療技術評価部会 生殖補助医療技術に関する専門委員会を開催します。  本日は大変お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。  本日は委員の先生方、全員御出席をいただいております。 それでは、議事に入りたいと思います。中谷委員長、議事進行よろしくお願いいたし ます。 ○中谷委員長  きょうは珍しく時間が1時間半ほどおくれまして3時からということでございますが 皆様おそろいで御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  本日の議事に入ります前に、事務局から本日の資料の確認をお願いいたします。 ○椎葉課長補佐  本日の資料につきまして御説明いたします。  まず「議事次第」でございます。  それから、右上の方に資料ナンバー振ってございますけれども、資料1「精子、卵子 受精卵の提供について(たたき台)」でございます。  資料2は中谷先生からの御提出の資料でございます。民法研究会第 177回の資料、 「非配偶者間人工授精(AID子)と嫡出推定」でございます。  資料3、これは1つだけB4の資料でございまして「精子、卵子、受精卵の提供につ いての各委員の意見」、これは昨年の6月22日の第6回の会議に用いた資料でございま す。  資料4、「生殖補助医療技術に関する専門委員会ヒアリングの概要」で、8回目から 11回目の各界の先生方にヒアリングしておりますけれども、それの概要をまとめたもの でございます。  それから、本日机上配付としておりますけれども、参考資料1ということで「イン ターネットで寄せられた御意見」というのを配付しております。  それから、後ほど先生方にはお回しいたしますけれども、中谷委員から、こういう緑 色の資料をいただきましたので、これは後ほど参考までにお回しいたしますけれども、 これにつきましては、コピーして各委員には配付する予定でございますので、よろしく お願いいたします。以上でございます。 ○中谷委員長  次に議事(1)の「精子、卵子、受精卵の提供等について」に入りたいと思います。 まず、先日、日本産婦人科学会の倫理審議会で、この件について答申をまとめられたよ うですので、倫理審議会の委員をされている吉村委員から、その審議の状況や答申の内 容についての御説明をお願いしたいと思います。よろしくどうぞ。 ○吉村委員  それでは御報告申し上げます。  この倫理審議会は8名の委員から成っておりまして、産婦人科の会員が3名入ってお ります。女性が3名、法律関係の方が2名、NHKの解説委員だった方、小児科医が入 っておられます。こういった8名から構成される委員会でありますが、8月から約10回 程度倫理審議会を行いました。新聞では容認ということだったのですが、そうではなく て、これは中間答申でありまして、最終答申ではないということ。審議内容をもう一度 諮問するということになりましたので、中間答申であります。  その内容を申し上げますと、さまざまな問題点が非配偶者間の体外受精、特に卵子提 供による非配偶者間の体外受精についてこの会では議論を持ったわけであります。精子 提供に関する非配偶者間の体外受精に関してはほとんど話し合いをしておりません。卵 子提供だけに関してのさまざまな問題点が出されました。私たちのところでも問題とな りましたが、第1番目の問題点としては、正常なドナーに過排卵をかけなくてはいけな い。要するに採卵や麻酔に伴う重大な身体的リスクを負わせるということ。  第2番目には商業主義的な濫用の問題。  第3番目の問題点は、この卵子提供による非配偶者間の体外受精が許されますと、当 然高齢者が利用することが考えられる。それに伴う妊娠中、分娩後の母体合併症の増加 の危惧がある。  提供者は同胞といったものではどうかという意見が出たのでありますが、将来家族関 係などに様々な問題点が起こることが予想されるのでドナーにすべきである。そういっ た場合にドナーが本当に集まるのであろうか、といった問題点もあるということ。  法的地位を明確にし福祉を保障する法律がないこと。  こういった5つの問題点が挙げられたわけでありますが、その結論でありますが、現 時点において、我が国で卵子提供による体外受精を一般的な不妊治療として実施する条 件は整っていないと判断したと。しかしこの場合、一番問題となったのが、武部委員長 あてに「ひまわりの会」という会からお手紙がありました。「ひまわりの会」というの は、卵巣性無月経(ターナー症候群)の会であります。45のXO、索状卵巣で、卵子が ないというターナー症候群の会から、こういった卵子提供による非配偶者間の体外受精 が受けられないだろうかという真摯な訴えがあったわけであります。  その辺を委員長が十分考慮されたというわけであります。いろんな問題点があるから できないということでは、こういった真摯な問いかけに対して対応することができない だろうということをお考えになりまして、要するに一例一例こういった症例をやりたい 場合には、自分の施設の倫理委員会あるいは日産婦における何らかの第三者機関でもい いのでありますが、そういった機関に一例一例答申をして、それが認められた段階にお いてのみ行うと。武部委員長おっしゃっておりましたが、そういった条件が整わない限 りは行うべきではないという御判断であります。  その際に一番問題となるのが、法的地位、福祉を保障する法律がないということであ りましたが、委員長のお考えは、そういった法律ができるのを待っていると非常に時間 がかかるということで、こういったことを一例一例審議して、問題点がなければ許可し てもいいのではないかと、簡単に申しますとそういうことであります。  何かもし御質問があれば、私のわかるところで答えさせていただきます。 ○加藤委員  内容はホームページかなんかに載っているんですか。 ○吉村委員  載っていないと思います。これは委員長の許可を私は得ておりませんので。 ○中谷委員長  私どもは新聞報道ぐらいしか知らないものですから、この委員会のメンバーであった ことを幸せに思うほど大変詳細に伺わせていただきまして、ありがとうございました。 御質問、御意見。 ○石井(美)委員  新聞報道ですと、提供者に適切な報酬を認めるようですが。 ○吉村委員  報酬に関しては一切お話をしておりません。 ○石井(美)委員  そうですか。 ○吉村委員  はい。 ○田中委員  今現在、ここで行われている厚生省が主導しているこの会と、私はよく知らなかった のですが、日本産婦人科学会の倫理審議会というのがありますね。1つの形として新聞 に容認ということで大きく出た以上、次の厚生省の結論は非常に注目されていると思い ます。それを日産婦がどういうふうに、ずるい言い方ですけど、待ってどうかするのか もし日産婦の倫理審議会と厚生省の委員会の議論が一致しなかった場合、どちらの意見 が説得力をもつのか。 ○吉村委員  田中先生の御質問はもっともだと思うのですが、この審議会の結論は新聞に出てしま ったのを見ますと、本当に最終答申のような感じで出てしまったのでありますが、これ に関しても倫理委員会では非常に問題となりまして、倫理委員長がその答申案を受け取 っていないにもかかわらず新聞報道が出されてしまったという経緯があります。  私この審議会の委員だったのですが、その新聞記事が出たときにびっくりいたしまし た。私は厚生省の方からお電話をいただいて、新聞に載っているということを知った次 第です。私はその委員会に夜の8時までいたのですが、ああいう結論になるとは全く思 っていませんでしたので、その辺は非常にまずかったのではないかと私は思います。こ れから先、日本産婦人科学会の倫理委員会の方からいろんな質問が出てくると思うんで す、まだ、この内容では不備だろうということで。もう一回諮問をされて、倫理審議会 でお話し合いがなされるだろうと思うんです。その際には、厚生省の厚生科学審議会の こういった専門委員会の意見が非常に尊重されるのではないかと私は思っています。  ですから倫理審議会の案は全くの中間答申案でありまして、その中にはひずみがいっ ぱいあります。厚生科学審議会の専門委員会でのお話し合いが大切になるのではないか なと個人的には思っています。 ○高橋委員  新聞報道で見ますと、武部委員長はこれを最終答申という形で受け取ってもらいたい という意向であったようですが、学会では中間答申として、さらに審議してくれという ような、何か見解の違いがあったように見受けられました。 ○吉村委員  そのように私も思っております。あの新聞報道がされた日は、武部先生が考えられた 案が出されまして、その日、3時間か4時間お話し合いをしたんですね。内容をかなり の部で直しました。その直された文章を私たちは見てないところで新聞が出たわけです ね。  先週の金曜日の倫理委員会でもお話が出たのですが、この文面を見たときに、とても 最終答申としては考えられないと、いろんな問題点があるということで、武部先生もそ の点についても御了承されまして、これは中間答申で結構ですとおっしゃいました。  ですから、もう一度この内容については、精子の提供による非配偶者間の体外受精を 含めて、もう一回、この倫理審議会でお話し合いはなされるだろうと思います。あと、 まだ半年くらいは少なくともお話し合いになるのではないかと私は思います。 ○中谷委員長  ありがとうございました。丸山委員どうぞ。 ○丸山委員  形式的なことなんですが、新聞報道の後、この倫理審議会から倫理委員会にはちゃん と答申はなされたのですか。 ○吉村委員  先週の金曜日になされました。 ○丸山委員  その後、これは中間答申ということで、最終答申の名宛人も理事会でなくて倫理委員 会に、これからどれだけかかるか、今、先生、半年余りとおっしゃいましたけれども、 その後で、この倫理審議会が最終の答申を出す名宛人は倫理委員会ということでよろし いんですね。 ○吉村委員  はい。 ○丸山委員  ありがとうございます。 ○石井(美)委員  審議会の答申を受けて、倫理委員会もまた審議するのですか。 ○吉村委員  そうです。 ○石井(美)委員  それをまた理事会で審議する。 ○吉村委員  そうです。 ○石井(美)委員  その後で最終決定ですか。 ○吉村委員  そういうことになると思います。ですから武部先生のお考えでは、当初はこの案をも って倫理委員会でお話し合いをしていただいて、それを理事会へというお考えだったと 思います。 ○中谷委員長  そうしますと新聞報道とかなり違いますよね。その場合にマスコミ・報道の方へ事実 みたいなものを。 ○吉村委員  土曜日の日にマスコミに対して日本産科婦人科学会の会長及び倫理委員長がインタビ ューなされたと思いますけれども、ですから報道が何もなかったというのは、初めの報 道と全く違っていたから何も書かなかったのかどうか、私は知りませんが、土曜日の日 にちゃんとやられていると思います。中間答申であるということと、これから先、もう 一回諮問をし直すということ、それはのべられたと思います。 ○中谷委員長  インタビューに答える方は決まっているわけですか。 ○吉村委員  インタビューに答える方は会長と倫理委員長がやられたと思います。 ○中谷委員長  いつもそうですか。 ○吉村委員  いつもそうです。 ○石井(美)委員  朝日新聞にはもう一度検討を求めたということは書いてあったと思います。「中間答 申」とは書いてなかったように思いますけれども。 ○吉村委員  これは中間答申として、文面も直されたと思います。これは「答申」と書いてあるん ですけど、「中間答申」というふうに。 ○石井(ト)委員  参考のために聞かせてほしいのですが、8人のメンバーの先生はわかったんのですが 何人かここのメンバーの中に参画なさっているのでしょうか。 ○吉村委員  いいえ。名前を挙げてもいいんですけど、これはわかっていますので、落合(和徳) 先生というのは、私たちの学会の幹事長です。斉藤加代子先生は小児科のお医者さんで す。武部(啓)先生は近畿大学の先生、委員長です。三木妙子先生は早稲田大学の法律 の先生ですね。行天良雄先生というのはジャーナリストですね。相良洋子先生というの は産婦人科医で開業なされている先生です。平岩敬一先生というのは、日本産婦人科学 会の顧問弁護士です。それに私です。 ○石井(ト)委員  当然こういう専門委員会があるということを前提にした形でのそこら辺の審議会の答 申ということですね。 ○吉村委員  それはそのように私も理解しています。私がそのメンバーであることは、その先生方 の皆さんは知っておられたと思います。 ○中谷委員長  よろしゅうございますか。ほかに。 ○田中委員  吉村先生のお話聞いていると、まだ完全に結論ないという話なんですけれども、青野 先生のコメントを読みますと「当事者の医者がみずから律する規範をつくることは難し いので、審議会に議論してもらった。今回で答申の大枠がまとまり、生殖医療に1つの 大きな節目を迎えることができた。皆さんに納得してもらえる内容だと思う」、肯定的 なんですね。私は個人的には非常に喜んでいます。1つこういうふうに形がはっきり出 たということはいろいろ審議しやすいし、皆さんも意見・・・・・・。 ○吉村委員  ただ、先生、そのとき、ある新聞社の記者が来ていたことは事実なんです。その新聞 社が来たときには、青野先生はこの答申案を御存じないんですよ。こういう中間答申案 が出ましたということだけを聞いて一般的なお話をされたと思うんです。ですから青野 先生の立場から言いますと、この答申案何も知らないで、そのことをコメントをされて いると思います。こういった何らかの案が出ましたということだけを聞いて、新聞にコ メントされているようなことをお話になったのではないでしょうか。だから、この答申 案はコメントしているときには知らないというふうに御理解していただきたいんです。 ○中谷委員長  高橋委員、何か御意見があったのではないですか。 ○高橋委員  今のようなお話、青野会長から、日産婦・日母連絡協議会という席上で、青野先生も 非常に驚いておりますというような発言を聞いたので、そうかなと(笑)。 ○矢内原委員  これは世の中も誤解を非常にしているんですけれども、倫理審議会というのは、日産 婦の理事会があって、倫理委員会があって、倫理委員会が諮問する機関なんです。審議 会が答申する場所は倫理委員会なんですね。諮問するのも答申も倫理委員会。倫理委員 会で整合性を保って、理事会に上げて、理事会から会告として出す。ところが実際に世 の中も会員も誤解しているのは、審議会が直接理事会への答申というような形をとって いるのではないかと思っている。  ですから、この問題を審議会に議論をしてもらおうかということは、通信のファック スの協議だったんですけれども、ですから反対した人もいたでしょうし、賛成した人も いたと思いますが、倫理委員会に本当は実際通らなければいけないんですね。ですから そのときに武部委員長は倫理委員会の方に来られて、答申を示していただいたときに、 倫理委員会の中で、あるディスカッションがあって、翌日の理事会には最終答申として は出さないでほしいという意見が倫理委員会であったもので、それで翌日中間答申にな ったのだろうと思うんです。 ○中谷委員長  何か伺っていますと、組織それ自体の、組織運営といいますか、それがちょっと問題 みたいですね(笑)。 ○矢内原委員  よく皆さんが知っておられないということだと思います。 ○田中委員  失礼ですけど、武部先生というのはどういう専門なんですか。 ○吉村委員  加藤先生が、よく御存知じゃないですか。 ○加藤委員  東大植物学科出身です。放射線学の専門家でいらして、京都大学では放射線医学とい うことで講座を持っておられたけれども、一般的な意味での遺伝学の授業をしておられ て、武部先生のところには「ひまわりの会」だけではなくて、障害を持った人々のグ ループが相談によくやって来られたですね。大変人柄も立派な方ですが、東大新聞会の 出身で、ジャーナリズムに対しては非常にオープンな態度を持ってらっしゃいます。 ○中谷委員長  7人で構成されているフューゴーというのがありますが、それの一員でかなりその方 面では世界的に有名な学者ですね。  この件はこれで終了ということでよろしゅうございますか。  それでは審議に入りたいと思います。昨年の7月の第7回の専門委員会で多胎減数手 術については大体の御意見の集約をみましたけれども、「精子、卵子、受精卵の提供に ついて」は、本日の資料1で出されておりますものをたたき台として議論いたしました が、意見の集約には至りませんでした。本日はこの件を集中的に議論したいと思いま す。なお、代理出産や凍結受精卵等を用いた出産の問題等については、第三者による配 偶子の提供についての基本的な議論が済んでから取り扱いたいと考えております。事務 局から資料1のたたき台について御説明いただきたいと思います。よろしくどうぞ。 ○椎葉課長補佐  それでは、資料1をごらんいただきたいと思います。今、中谷先生から御説明がござ いましたけれども、この資料1でございますが、昨年7月23日の第7回生殖補助医療技 術に関する専門委員会のときに提出した資料でございますけれども、このたたき台をも う一度振り返りまして、これ以降、8回〜11回まで約8人のヒアリングをやってきたわ けでございますけれども、このたたき台の中に、いろいろと精子、卵子、受精卵の提供 について検討すべきことがほぼ載ってございますので、これをもとに本日の議論をして いただきたいと思います。  まず、このたたき台でございますけれども、7つの項目につきましていろいろとたた くべき議論を集約してございます。  まず1番目でございますが、精子、卵子、受精卵の提供についての対象者についての 問題でございます。この資料に、私どもが御議論していただきたいと思うものにつきま して、下線を引いてございますのでそちらを参照していただければと思いますが、まず 対象者につきましては、2ページ目の(3)にございますが、「各技術の対象者」とい たしましてAID、ここに書いておりますが、特に夫婦間の人工授精、体外受精等にお きましては、妊娠・出産することができないことが確認された者とすることが適当では ないか、この点について御議論いただきたい。  2番目は、対象者でございますけれども、法律的に結婚していることを条件とすべき ではないかという点についても御議論いただきたい。また、一方で、不妊症ではなくて 結婚したくはないが子供を産みたい女性については、父のない子供を生み出すこと等の 出生児への影響を考えると認めるべきではないのではないかということについても議論 いただきたい。  そして、対象者でございますけれども、出生児を愛情と責任を持って養育できる者で あるかどうか判断する必要があるのではないかという点。また、第三者の配偶子提供に ついては、インフォームド・コンセントいろいろありますけれども、この者が出生児の 養育を容易に放棄できないような制度的な仕組みを整える必要があるのではないかとい う点について御議論いただきたい。  また、最後のマルでございますが、この技術を使う女性につきましては、生殖年齢を 著しく超えた者については対象とすべきではないのではないかという点でございます。  以上、これに載ったとおりに御説明しておりますけれども、対象者につきましては、 以上の点が大きな争点となるところではないかと思います。  それから、2番目でございますけれども、「実施方法」についてでございます。これ は3つの項目について分けております。まず(1)でございますが、「性感染症の予 防」でございます。これは特にHIVの検査や人工授精に伴う感染症を予防するための 必要な検査などについての対策を講じる必要があるのではないかという点でございま す。  (2)でございますが、「提供者」でございますが、アメリカ等の事例を見ますと、 特に商業主義の問題と出生児の特質等を選択することにつながるといった倫理的な問題 があるということで、提供者につきましては匿名とすべきではないかという点について 御議論いただきたい。  それから、次に4ページでございますけれども、被提供者の血液型と合わせておく必 要があるのではないか。これは容易に親子関係を被提供者に遺伝的親子でないことをわ からないようにするために合わせることも必要があるのではないかということでござい ます。  それから、3点目でございますけれども、近親者からの提供、特にこれは我が国特有 のことだと思われますけれども、特に出生児と血のつながりがあるため提供を希望する ということでございまして、この考え自体は理解できるのではないかということも御議 論いただきたい。  そして、こういった近親者からの提供を認める場合でございますが、いろんなインフ ォームド・コンセントやカウンセリングを実施するということと、提供者と出生児は親 子関係がないということを法的に明確にする必要があるのではないかという点につきま しても御議論いただきたい。  また、少し繰り返しになりますが、提供者につきましては、性感染症等の検査のほか ここが御議論いただきたいところでもありますが、遺伝性疾患の検査や健康診断といっ たものも実施する必要があるかどうかといったことを御議論いただきたいということで ございます。  それから、(3)でございますけれども「配偶子の提供数」でございます。  特に近親婚といった危険な問題があるわけでございまして、1人の提供者の配偶子に よって出生する子供の数を5人までに制限するということと、提供者や被提供者、出生 児の情報を特定の機関が保管し、出生児が結婚する際に、必要に応じて、当該出生児に 情報を提供することとすべきではないか、といったことについても御議論いただきたい という点でございます。  そして、3は「実施する機関について」の論点でございます。  まず1点目でございますが、第三者の配偶子提供につきましては、個人情報の保存と 保護、社会的信用の向上、カウンセリング体制を含む一定水準以上の生殖補助医療の提 供を図る必要があるのではないか。要は限られたといいますか、ある程度の水準でしか 認めないというようなことでございます。  次の5ページでございますが、技術の十分でない医療機関やルールを遵守しない医療 機関によって実施された場合、幾つかの健康被害、法的な紛争などを提供者、被提供者 出生児等に生じさせる可能性があるのではないかという点を御議論いただきたい。  また、適切に実施することが可能な医療機関を学会等が認定・登録し、これらの技術 の実施をこれらの医療機関に限定する等の措置を講じる必要があるのではないか。この 3つは同じような事柄でまとめさせていただいております。  続きまして4番目「商業主義について」でございます。  これにつきましては、高額であっせんするケースがアメリカ等でみられるということ でございますけれども、こういった提供者を選択可能な配偶子の売買といったことは、 人身売買的でもあり、被提供者による出生児の特質等の選択につながることから倫理的 な問題があり、許されるべきではないのではないかという点でございます。  さはさりながら、一方、配偶子の提供者に実費程度を支払わなければ、提供者が集ま らないという指摘もございますので、適正な費用の設定についても検討する必要がある のではないか、この2点につきまして御議論いただきたいということでございます。  それから5番目「遺伝的な親を知る権利について」ということでございます。6ペー ジをめくっていただきたいと思いますが、出生児の遺伝的な親を知る権利につきまして は、前で述べました近親婚の防止のためにも、婚姻する際には、本人の希望により、本 人のみに対し認めてはどうかという点でございます。また、このためには、配偶子の提 供者の情報については、特定の機関が保管する必要があるのではないかと、一部再掲で ございます。  それから、2番目でございますが、この行為によりまして、提供者に対し出生児の養 育の義務が生じることや、出生児に相続の権利が生じたりすることがないよう法制的措 置を講じる必要があるのではないかという点でございます。  また、提供者の情報をどの程度まで通知すべきか、提供者のプライバシーの保護に配 慮した出生児への通知のしかたについて検討されるべきではないかという点でございま す。  6番目「出生児の法的地位について」でございます。これは7ページをごらんいただ きたいと思いますが、7ページの(3)にまとめておりますけれども、出生児につきま しては、法的な地位の安定を図るためにも配偶子の提供を受けた両親の嫡出子とする法 制的措置を講じることが適当ではないか。この場合、一般の妊娠・出産による出生児と 同様の取り扱いとするのか、特別養子制度のように、第三者の配偶子による出生児に特 別の地位を与え、効果や戸籍上の表記は嫡出子と同様の扱いにするかについては検討が 必要ではないかということでございます。  また、配偶子の提供者につきましては、出生児と親子関係がないことを法的に明確に する必要があるのではないかという点でございます。  7番目でございますが、「出生児の心理や取り巻く環境への対応」ということで、い ろんなショックがあるとか偏見といったものもありますけれども、出生児や配偶子提供 を受けた両親に対しましてカウンセリングを行う体制の整備といったことも必要ではな いか。  以上、こちらで用意した、前回の資料をそのままなぞったものでございますけど、こ れにつきまして、最初から、このヒアリングの結果も含めまして、御議論いただければ と思います。よろしくお願いいたします。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。まさに生殖補助医療技術に関する問題点のオンパ レードといいますか、全部勢ぞろいした感じがありますので、第1の「対象者」の件か ら順次進めてまいりたいと思います。何か御質問、御意見おありの方はどうぞよろしく お願いいたします。AIDについていかがでしょうか。 ○石井(美)委員  質問なんですが、きのうの新聞に、精巣の中に、無精子症でも精子があるというよう なことが出ておりました。また、顕微授精などが進んできますと、もうAIDは必要な くなるという話も聞くのですが、その点はどうお考えでしょうか。 ○吉村委員  私どものところは男性不妊の患者さんが多いのですが、確かに以前はAIDをしてい た患者さんが精巣内の精子、精巣状態の精子を使って妊娠できるようになってきた、こ れは事実だと思います。ところがやはり精巣内にも精子ができない方が多いわけであり まして、ですからそういった患者さんにおいてはAIDは絶対になくなりません。 ○石井(美)委員  数は減る。 ○吉村委員  数は、わずかに減るだけでありますが、AIDでしか妊娠できないといった症例は非 常に多いと思います。ですから、その考え方で何%とは私は言えませんが、10%や20% は減るかもしれませんが、大多数のものは余り減らないと思います。産婦人科の医師で もAIDは必要なくなったと思っておられる方もいるのですが、私はそうではないと思 います。田中先生どうですか。 ○田中委員  実際にやってみて思うのですがAIDは絶対必要です、なくなりません。石井委員の 言われた新聞というのはきのうのどういう新聞ですか。 ○矢内原委員  朝日でクラインフェルターで10例のうち7例ぐらいが、10カ所ぐらいで、見尾さんの ところも入っていますね。 ○田中委員  あれはインチキですよ(笑)。この前の不妊学会で彼は発表したんですが。クライン フェルター症候群の患者のほとんど睾丸は萎縮しており、本当にたまに精子らしいのが いるということで見つかると珍しくて報告するような状況ですが、教科書と全く違う。 君のところだけ、どうしてそんなに精子がいっぱいいるのかと、私は見尾君に学会でお かしいと食いついたんですよ。あれはほとんど医学的には間違っていると思います。A IDは絶対必要です。できないものは本当にできません。だからAIDは要らないとか AIDは半分はなくなったというのは間違っていると思います。 ○中谷委員長  先ほど御紹介いたしましたイギリスのHFEオーソリティーの第8年次報告書(19 99年)によりますと、生殖補助医療によって生まれる子供は数は増えているんです ね。その増え方は顕微授精によって産まれる子供が割合に多く増えますけれども、AI Dも増えているんですね。だから減ることはない、そのように思います。  ほかにいかがでしょうか。 ○石井(美)委員  今の点に関連するのですが、ここでは自然になされることがということですから、精 巣にある夫の精子が使える可能性がある場合にはAIDは認めない、という考え方です か。 ○吉村委員  当然そうだと思いますけど、御両親も自分のお子さんを希望されますし、私たちはA IDを勧めているわけでも何でもありませんので。 ○中谷委員長  補論ほかにはいかがですか。 ○辰巳委員  AIDに関してはそうでもないんですが、精巣内の精子を使った顕微授精などになっ てきますと、先々の児の予後についてまだしっかりとした確証はないわけでして、です から、そのようなことを考えて、どちらでも選択できるといった場合に、AIDも認め るというような道を残してあげた方がいいのではないかという気がいたします。 ○吉村委員  今、辰巳先生がおっしゃったのは、例えば精巣内の精子しかできないという患者さん においては、精子が成熟してくる過程の異常があるわけです。そうするとこういった異 常がある人を無理やり、例えば1個の精子を精巣内から採ってきて受精させたりすると その遺伝的な異常が男児だったらば伝播される可能性があると言われています。ですか らそういった両方の選択肢を残しておいた方がいいのではないかという御意見ですよ ね。 ○中谷委員長  石井委員いかがですか、よろしいですか。 ○石井(美)委員  はい。 ○中谷委員長  医系の先生方に伺いますけれども、生殖補助医療の実施について、生まれるお子さん の福祉、幸せ、そういうものについてはどの程度お考えになっていらっしゃるでしょう か。それが第一に頭にくるのか、それともそういう医療を求めて来られる御両親といい ますか、大人といいますか、そのニーズに応える方が優先するのでしょうか、どうでし ょうか。 ○矢内原委員  現場で患者を診ている立場からいうと、どうにかして何でもいいからつくってあげた いと思います。それは感情的に医師と患者という立場の1対1になったときには、とに かく今妊娠させてあげるということが第一なんだと。もちろんそのお二人のお子さんと いう意味で、今それしか許されていませんからそうなっていますけれども。  ちょっとこういうふうに立場を離れて、同じドクターでも、その先どうなるのだろう ということを考えたときにふっと本当にこれでいいのかなと思う。ですから同じ産婦人 科医がこれだけ集まって、時どき意見が違うのは、その場その場のそのときの立場によ って違ってくると思うんです。ですから私は患者を実際診ていたときには、何でもいい から子供ができたらいいなと、本人が望んでいるんじゃないですかと思いますね。  ところが一歩下がって全体を見たときには、こういう問題もくる、こういう問題もく る、こういう問題もくるということを考えると最初の立場と違ってきます。ですからこ れは医師であるかないかということよりかも、こういうところでの皆さんから御意見を 伺ったことですごく影響もされます。医系でない場合も同じだと思うんですね。  ですから簡単に精子の体外受精がいいのだから卵子もいいのではないか、同じ配偶子 ではないかというふうに一般には考えられますけど、実際に現場にいると、そこにはす ごく大きなジャンプアップがあるんですね。  今、精子と卵子の体外受精ということがきょう問題になるとするならば、そこにすご い飛び越えがあるのだという認識はドクターは持っておられると思います。だけど、一 般の方にはそれはおわかりにならないと思う。 ○中谷委員長  大変率直でかつ良心的なお話を伺って感銘を受けましたのですけれども、そういう意 味でもコード・オブ・プラクティスといいますか、実施要綱みたいなものがどうしても 必要なのではないかと私は考えますけれども、先生方いかがですか。 ○加藤委員  精子の提供がどうしても必要だという症例と比べて、卵子の提供がどうしても必要だ という症例は数としてどうなんでしょうか。例えば卵子提供を認めると物すごい数の卵 子提供による子供が生まれるというふうに考えるのか、それともAIDよりも数が少な い程度でそういう症例が起こっていると考えられるのか、症例の予測ですけれども。 ○吉村委員  私どものところは無精子症の方が大変多いので私の意見は余り役に立たないだろうと 思うのですが。卵子提供が必要な女性も結構おられると思いますが、無精子症の人に比 べると数はちょっと少ないのではないかと思います。しかし卵子提供による体外受精の 適用となる患者さんは相当な数いると思います。それは精子提供による体外受精よりは 圧倒的に多いのではないかと私は思います。 ○石井(美)委員  具体的にはどういうような症例が適用になるとお考えですか。 ○吉村委員  どちらですか。 ○石井(美)委員  卵子。 ○吉村委員  例えば38歳、36歳で閉経になってしまう方は結構お見えになると思うんです。例えば 32〜33歳で結婚されても卵子がない方は結構おられるのではないでしょうか。 ○石井(美)委員  年齢的な問題ですか。 ○矢内原委員  一番おそれているのは1つは年齢の問題なんですね。この間の答申などでは約45歳ぐ らいまでだろうというようなことが書いてありましたけれども、どうして45なのかと、 だれも線が引けないんです。産婦人科学会の定義で早発閉経や、例えば三十何歳という ような定義を決めていても、そんなことはどうでもいいことであって、実際に45でも50 でも産めるのだわと思えば、もし女性が他人の卵を自分のおなかを痛めてまで産むとい うことを受容できるならば、これは潜在の患者さんはすごく多くなると思う。 ○吉村委員  私が先ほど言ったのは医学的な適用であって、今、先生がおっしゃったのは社会的な 適用ということも言えるかもしれません。48歳で子供を産みたいという方や55歳で産み たいという方や、閉経して3年たっても、私はどうして産めないのといって外来で来ら れる方も私のところにはこられるわけです。今おっしゃった潜在的な適用となるのはか なりの頻度でないかと私は思います。 ○石井(美)委員  閉経というのは病気ではないですね。 ○吉村委員  閉経は病気でありませんが、早発閉経は病気です。閉経というのは普通大体48歳〜52 歳ぐらいで閉経になるものですよね。これは自然の形の閉経だと思います。ただ、卵の クオリティーを評価いたしますと、45歳以上のクオリティーは下がると思うんです。自 然妊娠が当然のことながら減っているわけですから、45歳以上で妊娠できる方は普通に はそんなにお見えになりませんね。ですけど、45歳以上で、子供を産みたいという方は いっぱいお見えになると思います。だから、アメリカへegg donationで鷲見さんを経由 して行かれているのはそういう方たちですから。 ○中谷委員長  辰巳委員何か。 ○辰巳委員  同じことなんですけれども、要するに無精子症と対応するものが早発閉経、早発卵巣 不全ということですね。それ以外に女性は年を取ってくると自然に卵の質が落ちてしま うから、どうしても妊娠できなくなってくる、そういう人たちがすごいたくさんいる と。だから無精子症に対する早発卵巣不全、早発閉経というのは大体同じぐらいか、早 発閉経の方がやや少ないぐらいかなという感じがいたしますけれども、それ以外に卵の 質が落ちてくるためにできなくなってくる。すなわち生理的な不妊の中に適応となる患 者さんがいっぱいいらっしゃるということです。 ○加藤委員  卵子の提供者の年齢制限というのは考えてないんですか。 ○吉村委員  卵子のドナーですか。 ○加藤委員  はい。 ○吉村委員  それは考えていないと思います。この倫理審議会では全く考えてなかったです。 ○加藤委員  私たちの常識でも高齢になると、卵子の側からの異常が発生しやすいということがあ りますね。そう考えると、卵子の提供者については年齢制限なり、さっき健康診断なん ていうこともありましたけれども。 ○吉村委員  それはもしやるとなったら当然決めなくてはいけない問題だと思います。例えば提供 者を35歳以下にするとか25歳以上にするとか、その辺はわかりませんけれども。 ○加藤委員  自分が36歳になったときに、35歳の卵で産みたいという人も出てくるわけですね。 ○吉村委員  そうですね。 ○中谷委員長  イギリスみたいに提供できるのは何歳の誕生日までという制限もあるようですけれど も、の場合に、体外受精なり何なりいたしまして、そして子宮に戻すのは受精卵は3個 以内ですよね。 ○吉村委員  2個か3個。 ○中谷委員長  もっとたくさん卵の提供を受けたときに、そういう場合はどうなさるんですか。 ○吉村委員  それは凍結しておくのではないでしょうか。 ○中谷委員長  卵は凍結できませんよね。 ○吉村委員  卵ではなくて受精させてから凍結させる。 ○中谷委員長  イギリスではたくさんの場合は医療費をただにするとか、さらにそれに報酬を払うと かいうこと(egg sharingと報酬)を問題にしていますけど、そんなことは考えてらっし ゃいませんね。 ○吉村委員  私は考えてないです。要するに私は全然認めようとも思っていませんので、全く考え てないです。 ○中谷委員長  どうぞ、どんどん問題をこの資料に基づいて提供していただきたいと思いますが、い かがでしょうか。 ○吉村委員  私、皆さんに御質問したいのですけれど、例えば、AIDは、会告で認められていま す。AIDが是が否かという根本的な問題点あるかもしれません。第三者の精子を用い た体外受精や第三者の卵子を用いた体外受精が認められず、AIDが認められるという のはスウェーデンと同じ方式なのですが、例えば第三者の精子による体外受精が許され る場合に、第三者の卵子を用いた体外受精が許されないということはもっと論理的に合 わないことですか。今、AIDが認められているのにどうして卵子提供による体外受精 が許されないのかということがよく言われてます。私はこれに対して論理的に反対する ことは不可能だと思っています。医学的に反対することはいくらでもあるのですが。 ○辰巳委員  私は精子提供による体外受精まではいいと考えています。そこの分かれ目は、提供者 に対して負担を与えない範囲でできるからというところです。ドナーに対して卵を採る のはすごい抵抗があるんですね。ところがドナーの精子を採るということに関しては全 然抵抗ない。だから、提供者に対する負担というところをつければ、精子を使った体外 受精までは許されるということは全く論理的に問題ないのではないかと思います。 ○中谷委員長  AIDは認めておきながら、どうしてIVFのときは精子の提供を認めなかったのか そういう問題がありましたよね。それも厚生省である委員会をつくりまして検討したん ですよね。その結果、こういうふうになったのですが、どうしてかというと、IVFの 場合は人工授精よりももっと社会的な抵抗感を持つだろうと。それには最初はおとなし くといいますか、社会的に認められやすい範囲でやった方がいいのではないかというの がそういう理由だったように私は思っております。  だから、そういう意味で、辰巳委員が言われるように両方認めて当然だということに なるのだろうと思いますけれど。 ○石井(美)委員  審議の進め方がいいかどうかは別として、最初に是非の問題は後でとおっしゃったよ うに思ったのですが。 ○加藤委員  提供者の危険についてなんですけれども、お医者さんがこれはリスクが大きいからや めなさいと説得するのは正しい説得かもしれませんが、被治療的身体侵襲というカテゴ リーがあるわけですよね。治療目的でない形で体に侵襲を加えるケースがありますが、 最も代表的な場合には生体臓器移植の場合なんですね。生体臓器移植の場合にはリスク が限度内であるということと、当人が同意しているということと、それによる効果があ るというような条件で被治療的身体侵襲を日本の医療は既にある限度で認めているとい う状況にあると思うのです。ですから卵子の提供にリスクがあるということは禁止の理 由として十分ではないと思います。 ○石井(ト)委員  今十分です。 ○加藤委員  ただリスクがあるというだけでは禁止の理由にならない。 ○吉村委員  非常にそのことが、私もこの前の倫理審議会でよくわかりました。加藤先生にお伺い したいのですが、今の状況ではAIDだけ認められていますよね。例えば、ここで第三 者による精子を用いた体外受精が許されたとする。それは是非の理論を言っているので はないんです。例えばの話。体外受精が認められたとしたときに、第三者による卵子の 体外受精が許されなかったとしたらば、今の状況よりももっと論理的に合わない状況で すか。 ○加藤委員  と思います。 ○吉村委員  そうですよね。当然第三者の精子による体外受精が許されたらば、論理的には第三者 の卵子による体外受精も許されなくてはいけない。 ○加藤委員  ただ、リスクが非常に大きい場合には禁止できるということはあると思うんですね (笑)。 ○辰巳委員  リスクが大きい、小さいではなくて、精子の場合は他人に対するリスクは全くない と。リスクがあるものとないもの、その大きさではなくて、あるものとないものという ことで大きな違いがあるのではないか。 ○加藤委員  だけど、生体臓器移植できなくなっちゃいますよ。 ○辰巳委員  でも生体臓器移植はあくまでも人の命にかかわることなんですね。非配偶者間の配偶 子を用いた治療というのは、これは治療というよりも、根津先生も言っておられました 私も同じことを考えたんです、これは養子の話だと思うんですね。あくまでも不妊治療 の延長とは私は思わないんです。養子の1つの形という形なんですね。ですから、これ はやはり人に全く侵襲を加えないというのと、人に侵襲があるというので大きな区別に なるのではないかというふうに考えるのですが。 ○高橋委員  私は卵の提供も認めるべきだと思います。現在は卵の提供ということに対して抵抗感 あるいは排卵にともなうリスクもあるので反対もあるでしょう。しかし、将来いろいろ な医療技術が進んできて、もっと安全に卵を採れる時代がきたときに、現在禁止したの を改正するという事は大変難しいと思います。それよりも認めておいて、どういう施設 でこれを行うか、管理をどうするか、それから、いろんな検査はどこまで行うか、こう いうものについては学会登録をすべきであるとか、要するにガイドラインをきちんと作 っていれば卵の提供を認めてもよいというのが私の考えです。 ○中谷委員長  なかなか議論が伯仲しまして前に進みませんけれども、どうぞ、田中委員。 ○田中委員  こういう問題を議論するときによく感じることがあります。今話している内容はほと んど治療を行う側といいますか、医療従事者という立場で上から下を見ている意見だと 思います。もう一つ、考えなければいけない点は、患者の立場から見た意見があると思 います。患者ないしは患者の周りの人間。そこには生体肝移植という例もありますけれ ども、何かをその患者さんに、先ほど加藤さん言われたように被侵襲だと言われました ね。 ○加藤委員  被治療的身体侵襲というんです。 ○田中委員  患者さんに提供してあげたい、患者さんもそれを受けたい、そういう技術があるとい うとき、もしくは内容が医学的にまちがっていないと判断できるとき、学会なりそうい う人たちの立場から、それはできませんよと言ったときの説得力に欠ける様に感じられ ることがあります。これからの時代は個人の要求や意見を一元的に無視できなくなるよ うに思えます。 ○吉村委員  田中先生、それは辰巳先生の言われていることを間違ってとらえられていると思うん ですけど、要するに辰巳先生がおっしゃったのは、全く関係のない第三者に身体的な侵 襲を負わせるということですよ。患者さんのことを思わないのではなくて、逆の言い方 すれば、患者さんは子供を産みたいとなったら、人にどんなことを与えてもいいのかと いうことを先生おっしゃっているのと同じことだと私は思うんですけど。 ○田中委員  そんな極論を例えているつもりはありません。 ○吉村委員  結局立場を変えればそういうことと同じことだと私は思うんですね。ですから、私も 不妊症の患者を毎日診てますし、これは本当に精子があったら楽だろうな、卵子があっ たら楽だろうな、それは思います。それは一人の臨床医として同じ気持ちだと思いま す。ただ、そこにおいて、例えば鷲見さんがこの前言っておられたことは、非常に大切 なことをおっしゃっていると思うんですよ。例えば、egg donation受ける、借り腹を受 ける。患者さんは子供欲しいという気持ちはみんな同じだと思うんですよ。  例えば、一方で胚の提供を受ける人たちが旅行している。第三者・代理母がおなかが 大きくなり妊娠を継続している間に、依頼した夫婦は旅行しているというような現実を 見るにつれて、これを続けていくことが非常に疑問に思いましたということをおっしゃ っているわけですよね。ですから、いろんなことをやっぱり考えていかなくちゃいけな いと私は思うんです。例えば、患者さんのことを考える以上に、患者さんもドナーのこ とをどうやって考えていくかということを考えない限り、この問題は私は解決しないよ うな感じだと思うんです、先生、どうでしょうか。 ○田中委員  ドナーのことを考えることも大事だと思います。私が言いたかった点は、これから先 いろんな新しい治療法がどんどん出てくると思います。そのときに、日本産婦人科学会 のガイドラインなり倫理基準なり、もっと柔軟性を持って対応してほしいと思います。 だから一度決めたことであっても、患者の意見や取り巻く状況は変わりますから、柔軟 性を持って反応していただきたい。特にこういうような場を持って日産婦の方でも取り 扱っていただければ、我々も非常に納得しやすいんです。何年も凍結したままのガイド ラインではなくて、卵子の提供、精子の提供、私は基本的には一緒だと思います。精子 だけよくて卵子がだめとか、そういうふうに私は考えません。 ○中谷委員長  いずれにせよ、当委員会といたしましては、10月には最終報告書を出さなければいけ ませんし、その前に中間報告書も書かなければいけませんので、ワーキンググループに ついてもこれから進めていただくつもりですので、なお御検討いただきたいと思いま す。  時間がだんだん押せ押せになってまいりましたので……。 ○石井(美)委員  事実関係について、質問よろしいですか。第三者の卵子を用いた体外受精を認めるか どうかは別として、先ほど卵子の凍結はしてないとおっしゃったのですけれども。 ○吉村委員  受精卵。 ○中谷委員長  卵子は凍結できないというコメントはありますね。 ○吉村委員  できたという報告はありますが、難しいだろうと思います。田中先生どうですか、難 しい。 ○田中委員  染色体異常の発生が高くなる。 ○石井(美)委員  余剰卵ということは考えがたい。 ○吉村委員  余剰卵というのは、受精させないと保存は困難です。 ○中谷委員長  受精卵としてということですね。 ○石井(美)委員  不妊治療をしている人の夫の精子で受精させた場合には胚提供になってしまう。 ○吉村委員  精子はいつでも採れますから、例えばドナーの卵子を採ったときに精子に取っていた だければ可能です。精子は凍結することもできますし、ですから余剰卵も使うことは可 能ですよ。 ○石井(美)委員  余剰卵ではないです。 ○吉村委員  余剰卵も使うことは可能です。余剰の未受精卵も使うことも可能です。 ○矢内原委員  つまり卵を採りますね、夫婦の体外受精するときに、1群の何個かの卵は御主人のを やって残りを凍結しておく。残りの卵を、残りと言っていいかどうかは別として、別な 群の卵はクライアントの精子で受精させておいて、これはこちらに所属させる。こちら の奥さんに移植すればいいわけです。 ○石井(美)委員  そうですけれども、もともと体外受精をしなくてはいけない人にとっては貴重な卵で すね。 ○吉村委員  非常に貴重です。 ○矢内原委員  ですから仮に30個採れば29個は上げてもいいですよと。だけど、29回失敗して、しま った、1個あの人にあげたのが、あれがうまくいったかもわからないと思うかもわから ない。 ○田中委員  それをどう思うかは患者さんの場合によって変わってきますね。全く患者じゃないボ ランティアの場合もあり得ますよね。治療に参加しない人が、いいですよ、私の卵採っ てくださいと言って注射受けて、採卵して、クライアントの精子と受精させて凍結して おけばいいんですね。 ○石井(美)委員  私はそういう場合しか考えがたいと思っていたものですから。 ○田中委員  2通りあると思うんです。 ○矢内原委員  無償でああいうことがあり得るかどうかということが1つの大きな疑問です。もう一 ついいですか。 ○中谷委員長  はい。 ○矢内原委員  いつも私は同じことを言うんですけれども、この間からこういう問題を非常に真剣に 考えてみたときに、あと残っているのは代理母と貸し腹ですね。そこまで認めてしまっ たとします。そのときに何がネックになるかということを考えていったんですね。そう すると法律的には代理母と貸し腹だけなんですね。あとは法律的にはクリアーできるだ ろうと。つまり親子関係ということを考えたときに。ですから1回そこまで開いてみて そして詰めて考えられると、皆さんどこに線が引かれていくかということがわかるよう な感じがいたします。  学会の内部にいていろいろなこういうレギュレーションのところに関係していますと 実務ということを考えたときにいろいろな弱体条件、今度の答申案にも出てきましたけ れども、こういうことを気をつけてこういうことをやらなければいけない、一例一例を 検証して許可すべきだというようなことがもしあったときに、一体それはどこの組織が どういうことでやるのか、いつもそう考えてしまうんです。そうすると大変条件をつけ ればつけるほどできないということになってしまいます。  いつも人の生殖は何かということを考えてくださいと申し上げているのは、その2点 があるんですね。1つは実務的な問題。機関がない。 ○中谷委員長  日本の場合、生殖補助医療技術は非常に進歩しまして、実務においてはいわゆる先進 国と言われている国と比肩しているわけでしょう。にも拘わらず、そういう問題につい ての基本的な制度や組織ができていないわけですから、それがこの委員会にも課せられ た大きな課題なんだろうと私は考えております。  まだまだご議論は続きそうですけれども、ちょっと先を急ぎまして「実施方法」につ いて、ようやく3ページ目でございますので・・・・・・。 ○辰巳委員  そこまで飛ぶと思ってなかったので、対象者なんですけれども、法律的に婚姻してい る。そこをもう少し議論していただくとか、ほかの道も残す。当院に来ておられて体外 受精がどうしても結婚してないのでできないという方が結構おられるんですけれども、 その方々が決して問題である方でなくて、それなりの理由があって籍を入れておられな い方がおられるようなんです。 ○中谷委員長  加藤委員に伺いますが、京大は初めから内縁を認めたんですよね。 ○加藤委員  ええ。 ○中谷委員長  内縁を排除するというのはどうなんでしょうか。 ○加藤委員  あれは中谷先生の意見じゃないんですか、内縁を排除しないという。 ○中谷委員長  私、排除しなくたっていいと思う。ただし、きのうから同棲したというような人では だめなんで、やっぱりそれなりの。 ○吉村委員  法律的にその倫理審議会で問題になったんですけれども、内縁というのはどうやって 定義するんですか。例えば、内縁といいますか、事実婚の定義というのはあるんです か。法律的にはないでしょう。 ○中谷委員長  法律的にはありますでしょう。 ○石井(美)委員  保険などの事実上の配偶者は住民票を出すのでしょうか。 ○加藤委員  税務署の同一家族と認めるかどうか。 ○中谷委員長  労働法関係法上は正式婚姻夫婦も内縁の関係も同じに扱われていますよね。 ○矢内原委員  証明の方法があるわけですか。 ○中谷委員長  住民票だと思いますね。 ○吉村委員  その辺問題になったんですけど、三木先生がおっしゃるには、その辺が日本では難し い。 ○加藤委員  いろいろ条件つけて、同居しているかどうかとか、いろんな書類を出せとかいうのも あって、それで配偶者手当を出したりするとき、事実婚であっても出せるという方式を 実行しているところあります。 ○石井(美)委員  手当を出すのとは同じにできないと思います。 ○中谷委員長  問題が違います。 ○加藤委員  事実婚を婚姻として認めるマニュアルは存在するんですね。 ○石井(ト)委員  あります。 ○矢内原委員  それは裁判所が決めるんですか、だれが決めるんですか。 ○加藤委員  私が知っているのは、いろんな手当を支給したり、税務署にもあったと思うんです。 ○吉村委員  その場合、子供はどうなるんですか。 ○中谷委員長  非嫡出子。 ○吉村委員  子供は非嫡出子ですよね。それはそれでもいいんですか。 ○石井(美)委員  内縁配偶者でも認めるということにした場合には、子供を嫡出子にするというような 措置が必要になるのではないでしょうか。 ○丸山委員  嫡出子にするならば、民法をいじらないといかんですよね。 ○石井(美)委員  そうです。 ○丸山委員  民法典のレベルで考えるなら、まだ内縁関係は認められていないですね。 ○中谷委員長  例えばスウェーデンなどはアンレージスタード・マリッジが過半数ですから、あそこ だと全然問題ないわけですがね。 ○石井(美)委員  諸外国で内縁関係で認めているところは非嫡出子と嫡出子の差別がないところが多い のではないでしょうか。 ○吉村委員  差別がない。 ○矢内原委員  戸籍がないということもあるんじゃないか。 ○中谷委員長  フランスは両方認めているんですけれども、法律的にはどうなんですか、家族法上 は。 ○石井(美)委員  非嫡出子概念はまだ残っていますが、いわゆる不倫の場合以外は、相続分などの差別 はないと思います。 ○中谷委員長  生命倫理法では認めているんですね。 ○石井(美)委員  あれは父としては責任を負わせるという形の規定を置いていると思います。 ○矢内原委員  これは前にもお話しましたけど、パリで同じ質問をしたときに、出生届の40%が正式 な結婚ではないんだそうです。同居しているという証明はどういうふうにしているのか といったら、それはガスの料金のあれだとか、そんなことを言っていましたね。非常に レベルが低い。それは我々でもわかるような。 ○加藤委員  日本の場合に正式結婚してない人の出生率はアメリカなどと比べたらはるかにクラシ ックですね。ですから正式に結婚してない人の法的な権利を認めるという社会情勢にな るのに、まだ違う社会だというふうに評価しても構わないかもしれない。 ○高橋委員  将来のことを考えた場合、「法律的」という言葉はとった方がよいのではないかと思 います。昔は「シングルマザー」なんてなったら、社会に顔向けできない程の大変な時 代だったのです。それは今は普通で、普通ではないでしょうけど(笑)、比較的容認さ れているような傾向にありますね。少なくとも「法律的」というしばりを余りつけます と、日本産婦人科学会の最初の会告と同じように、そのために今悩んでいるわけですか ら「法律的」というがちっとしたしばりはとるべきだと思います。 ○中谷委員長  かつて石井美智子委員はご記憶があるのだろうと思いますけれども、昭和54年、親族 法の改正のときに嫡出子、非嫡出子の区別を置かないというような提案があったんです よね。それは法務省民事局でそういう提案をしたのだと記憶していますけれども、その ころ、私、日本女子大と東京女子大で法学を教えていたんですよ。その話をして皆に意 見を求めましたら、圧倒的多数が嫡出子というのは正式婚姻夫婦から生まれた子に限る と。そうしないとお母様がかわいそうだからというようなことが書かれていまして、若 い人がそういうふうに考えるのかと思ったことがありましたけれども、日本の場合はま だまだそういう正式婚姻夫婦から生まれた子とそうではない子との差別というのが残っ ているような気がしますね。それが難しいところですね。 ○吉村委員  これは非常に大事な問題ですね。 ○加藤委員  これだけで1年かかる(笑)。 ○中谷委員長  あるいはお子さんが生まれてから、できちゃった婚じゃないけれども、生まれてから 正式婚姻の届けを出せば、それはそれで嫡出の子になるわけですけれども。 ○吉村委員  この場合、婚姻関係がなくてもいいということになりますと、子供の地位の保全とい うのは大丈夫なんですか。 ○石井(美)委員  現行法では、たとえ夫が認知したとしても非嫡出子と嫡出子は、法律上も差別があり ますし。 ○吉村委員  子供の側から考えると結婚している方がいいということ。 ○石井(美)委員  私はそう思います。子供の福祉を考えて、なおどうしても届け出られない理由がどれ だけあるのかという問題だろうと思います。 ○加藤委員  でも今どき子供ができたら籍入れてやるなんていうのは余りないでしょう。 ○石井(美)委員  はい。 ○石井(ト)委員  多いです。子供ができてから籍を入れるというのは。 ○加藤委員  子供ができちゃったら籍入れるというのはあるけれども、子供ができないと籍を入れ てあげない、子供ができたら籍を入れてあげるというのは余りないのではないか。 ○石井(美)委員  それはないと思います。そもそも成人になれば法律上は親の許可など必要ないです し。別姓を通したいから事実婚でいる夫婦もいるという可能性はないわけではないです けれども、日本人で婚姻届けを信条として出さない。しかし子供は欲しい。不妊治療を 受けたい。そういうときに社会として、不妊治療を受けるのだったら婚姻届けを出して くださいという要求をすることも不当だろうかということなんだろうと思うんですね。 ○辰巳委員  そう言って婚姻届持ってきた人もいますし、それならやめますと言って帰っていった 人もいます。 ○石井(美)委員  それは意見が分かれるところで、法律家でも、事実婚でもよいという人もいらっしゃ ると思います。 ○中谷委員長  そういう場合、子供の幸せを考えますと、婚姻届が出ていなければ、認知されたとし ても嫡出子ではありませんから、そうしますと相続のときにその差が出てくるわけです よね。 ○辰巳委員  でも存在しない事に比べれば、相続のない方がまだいいのではないかということもあ ります。治療を受けられないのだったら、その子は存在しなかったわけだから(笑)。 ○中谷委員長  法律専門の方たちの間でも十分に御検討願って、宿題にしておきましょうか。よろし いですか。  それでは、今度は「実施方法について」、性感染症の予防というのがありますね。こ の場合は、HIVの検査ですけれども、これは6ヶ月間凍結し、検査は2回やらなけれ ばだめなんですね。 ○吉村委員  今やっています。先生申しわけないですが、実施方法についてですけど、一番大切な のは提供者だと思うんですね。提供者があって、初めて実施方法も変わってくるだろう と思いますので、2番目から議論していただいた方がいいかと思うんです。 ○中谷委員長  そうですか。HIVは今まで大体議論も出ていたことだから、それはそちらに委ねま して提供者について考えてみましょう。これも非常に日本の特色があらわれてきた点な んですけれども、委員の先生方いかがでしょうか。 ○吉村委員  これは問題点を挙げてあるのだから、大きく分けて匿名にするかドナーにするか、近 親者・同胞にするかという問題点だと思うんですね。 ○石井(美)委員  匿名に限るかどうかということですね。 ○吉村委員  そういうことです。 ○田中委員  匿名にした場合、精子はまだいいんですけど、卵の場合にはかなり難しいと思うんで すね。 ○吉村委員  そうですね。 ○田中委員  そうしますと一番端的にいいますと、卵子バンクみたいな、輸血の日赤みたいにある 機関がやってくれればいいと思います。各施設で卵子を集める方法は2通りあると思い ます。1つはイギリスのように完全にボランティアベースでやる。今まで治療受けた患 者さんで自分も苦労したから協力したいと、そういう患者さんは中におられますけど、 頻度少ないと思います。第三者にもらうか治療している患者、もう1つは近親者や友人 からもらう方法があります。近親者が一番もらいやすいのではないでしょうか。私は第 三者の匿名でも近親者でも構わないようにしていただいた方がいいと思います。 ○中谷委員長  これは非常に日本的な特色があらわれる分野ですね。それがいいか悪いかはそれぞれ お考えが、お立場が違うだろうと思いますけれども。 ○加藤委員  ほとんど近親者ではないでしょうか。臓器移植の例を見ていると、見ず知らずの人に 渡すということはしないみたいだ(笑)。 ○高橋委員  そうですね。 ○石井(美)委員  近親者にした場合、提供が半強制的になってくる可能性をどう防ぐかが問題になって くると思うのです。心情的にも別に周りから言われなくてもそうせざるを得ない気分に なりますよね。 ○中谷委員長  生体肝移植の第1号のときはまさにそれが一番問題でしたね。どうしてもお母さんが 強制されるのではないかということで問題になったことがありましたね。今は余りそん なこと問題にしませんけれど。 ○矢内原委員  世界的にはほとんどが匿名ですよね。 ○中谷委員長  特にフランスは絶対匿名ですね。 ○吉村委員  日本では、例えば、全く関係のない人に商業主義的に行って卵を提供してもらうか、 近親者しかないと思いますね。 ○石井(美)委員  ボランティアは。 ○吉村委員  私はボランティアは難しいと思います。 ○加藤委員  不妊治療受けている人が同じ患者に同情するというケースはどうでしょうね。 ○吉村委員  それは非常に少ないと思いますね。それで卵を提供、カバーできるということはあり 得ないので、もし認めるとするならば、全く商業主義的にアメリカみたいに走って幾ら というふうにしてやるか、近親者でしか、不可能だと思いますね。イギリスのような形 は私は無理だと思いますね。 ○中谷委員長  イギリスも初めは大変でして、卵の提供というのは非常に難しいということで、婦人 少女、成人の死体、さらに中絶胎児は大変たくさん卵胞を持っているからというので、 それからの提供をもらおうという案が出て、かんかんがくがくやったことがあります。 結論はその場合は研究に使うことはいいけれども、臨床には使わないという結論で落ち ついたわけですけれども。 ○田中委員  商業主義という中に病院の医師が提供者に採卵をしてクライアントの精子と受精させ て凍結するということは含まれるんですか。医療従事者でない人間が会社をつくってや るというのではなくて、病院の医師が、例えば、私が近くの女子大の学生に頼んで採っ てもらってやる、これも商業主義になるんですか。 ○中谷委員長  だと思いますね。 ○田中委員  それも入るんですか。 ○中谷委員長  はい。 ○石井(美)委員  卵子を買うということが問題だと思います。 ○吉村委員  そうですね。お金を払って卵子をもらうということですので、例えば、私がだれかに やる場合には、私はいつも「渋谷の女の子」と言うんですけど、渋谷の女の子が来てく れる。若い女性から卵子をもらう。その子に排卵誘発剤を打ちますね。その場合にお金 を例えば10万円、20万円払う。これが商業主義の典型ですけど、そういうふうにやるか あるいは近親者しか私はないと思います。 ○丸山委員  吉村先生の分類だと、今の慶應でなさっている精子提供も商業主義の方に分類される のでしょうか。 ○吉村委員  1万円は商業主義というか交通費というか、でよろしいのではないでしょうか。 ○丸山委員  動機はそこなんでしょうか。 ○吉村委員  動機といいますと? ○丸山委員  動機は博愛主義なのか、1万円をもらうことなのか。 ○吉村委員  それは私提供してませんのでわかりませんけど。 ○田中委員  私が思ったコマーシャルというものは、医療従事者関係ない人が会社をつくって、医 療機関を使って卵を回収するというようなイメージがあったんですけど。提供を受けた い患者さんがいます。精子を凍結してあって、その医療責任者が女子学生でもいいです が、そういう方に注射を打って卵を採って、御主人の精子と受精させて凍結する。これ は私は許してもらえるんじゃないかと思っていたんですか、これもだめなんですか、商 業主義なんですか。 ○中谷委員長  対価にもよりけりではないですか。 ○田中委員  それは常識内といいますか。 ○中谷委員長  実費程度のものはいいけれども、何十万とか。 ○田中委員  アメリカのような、カタログで見ながら、卵子提供者のクラスによって価格が違って くるというようなものが商業主義と考えていました。 ○中谷委員長  どの程度の金額をお考えですか。 ○田中委員  大学生ぐらいだったら10万、20万ぐらいじゃないですか。そのぐらいだと多分提供し てくれると思います。 ○吉村委員  アメリカは先生おっしゃっているように 2,500ドルが最低で高いところは 5,500ドル ぐらいですから、やっぱり20万〜30万ぐらいになると思うんですね。それはなぜかとい うと毎日毎日注射を打っていきますよね。今、製薬会社の治験やるときも患者さんに対 してプリペイドカードを払っていますよね。あれが1回来てもらうと大体 5,000円ぐら い払っていますよね。それを10回来てもらうと5万円払うわけです。それは採血したり するだけですけど、そうなりますと20万円ぐらい払うのは妥当な線だと私は思います。 ○石井(美)委員  20回も。 ○吉村委員  7〜8回ですね。 ○石井(美)委員  1回の採卵のために7〜8回。 ○吉村委員  最低7〜8回は来るんじゃないですか。10回近く来ることになるだろうと思います よ。しかも身体的に、例えば体外受精は、最近では安全になってきたんですが、例えば 麻酔の副作用のことも話しますし、出血する場合もありますと言いますし、こういった 場合には入院してもらうことがあるかもしれませんということをお話しすれば、その実 費程度、5万円とか3万円でやってくれるとは思えないですけれどもね。 ○田中委員  それは無理だと思います。私もやってくれと言えないです。 ○石井(美)委員  実費というのは幾らですか。 ○田中委員  社会の当時の常識範囲内で。 ○吉村委員  丸山先生、先ほどおっしゃいましたけど、例えば、精子を出す人に10万円も払えば、 これは商業主義だと言えますけど、1万円をどういうふうに言うかですよね。 ○田中委員  商業主義と言えませんよね、そうなってくると。 ○吉村委員  例えば今製薬会社の治験で1回来てもらうのに 5,000円払っているわけですから、そ れを2回来てもらったら1万円ですから、例えば、その人は検査にも来ているし、やっ ぱり1万円を1回払っても、別にそれは商業主義とは言えない。また、商業主義も幾ら から商業主義だというふうに言うのかというのは非常に難しいですよね。 ○石井(美)委員  臓器提供は無償ですし献血も無償ですね。交通費さえ払わないと思いますが。 ○吉村委員  払いません。 ○丸山委員  骨髄移植は第三者だから。 ○田中委員  匿名だからです。 ○石井(美)委員  献血も匿名ですね。 ○田中委員  卵子提供も匿名でなくていいのであれば無償ですよね、身内は無償ですね。 ○加藤委員  治療した患者が自分の要らなくなったスペアエッグを人に提供しないというふうに考 えた場合は。 ○吉村委員  それはわかりますけど、できないのではなくて、例えば10個卵が採れたとして受精を させますよね。2個は違うBさんのためにとっておこうとしますよね。そうすると8個 で、御主人で受精させたとしますね。それがうまく受精しなかったときは、私、あの2 個持っていればよかったんじゃないかと必ず思われるんじゃないですか。 ○加藤委員  それはそうですね。でもうまくいったと。まだ冷凍したのが残っているということは あり得ないんですか。 ○矢内原委員  卵は冷凍できませんから。 ○吉村委員  卵はなかなか難しいですから、受精をさせてしまえばできますけど、卵が冷凍するこ とができれば、先生のいわれることはできるかもしれません。精子はそういう点で比較 的簡単ですので。 ○加藤委員  技術的に非常に困難だということですね。 ○吉村委員  未受精卵は、受精する前は。 ○丸山委員  先ほど石井美智子委員もおっしゃいましたけど、不妊治療の患者が自分がまだ受精卵 妊娠、挙児が得られるかどうかわからない段階で第三者のために卵を使うことに進んで 同意するというイメージが描きにくいんですね。 ○吉村委員  私もそう思いますね。 ○田中委員  そこで何個か提供すれば全治療費を持つとなるとちょっと違ってくるのではないでし ょうか。10個未満だったら、まず人にあげようという気にならないと思うんですよ。た くさん採れて、20個、30個採れた場合に、1割、2割をあげますから、そのかわり自分 の治療費を全部カバーしてくださいと、カバーしてあげると言えば、私は提供してくれ る方はおられるのではないかと思うんです。 ○丸山委員  商業主義ですね。 ○中谷委員長  それをやろうというわけですよ。 ○加藤委員  商業主義をとるというのは、提供するためではなくて、治療だとか検査のために卵子 を採取して、それが要らなくなるというケースはほかにはないんですか。 ○丸山委員  もらう方が提供してただにしてもらうのは。 ○吉村委員  そういうことはしません。 ○田中委員  それは商業主義ですか。 ○石井(ト)委員  いつも思うのですが、こういう話になりますと、臓器提供のことが出ますが、これは 区別したいと思います。辰巳先生がさっきおっしゃいましたことと関連があるのですが やはり臓器移植は治療ですので、生殖の問題と違ったカテゴリーに入るのではないかと 思います。卵子の場合はドナー側にリスクがすごくあり、そこのところの実態がよくわ かっておりませんので安易に考えているという気がするので、私は絶対反対です。商業 ペースに移行するのではないかと思います。またドナーとなった若い人のこれからの健 康をどういうふうに保障するのかという問題もあります。そのような意味で、私はどち らかといえば、むしろ近親者の方がドナーになった方がいいと思います。  質問ですが、リスクのないような採卵方法も将来考えられるというような話を高橋委 員から出たのですが、イメージとしてはどういうことが考えられますか。 ○高橋委員  今、日本産婦人科学会では生殖補助医療を行う医師の資格、施設、条件、特に高い医 療技術と倫理観を持った医師に資格を与えようという作業を行っているところです。要 するにトレーニングを行い、適応する対象者から、技術のいい人が行うとリスクがずっ と下がってきます。 ○石井(ト)委員  私そういう意味で聞いたのではないんです。今の医学のレベルではなくて、ちょっと 無限な何か方法で、本当に全然リスクを与えないような形で採卵方法があるのかどうか ということです。 ○高橋委員  医学・医療にリスクが伴わないことはあり得ないと思います。どんな医療でも少しは 必ずあるし、薬であっても、リスクがありますので、そこまでいくと議論がかみあわな いのではないかと思っています。 ○石井(美)委員  先ほどの産科婦人科学会の倫理審議会では採卵に負担はなくなってきたから認めても よいというようなことを理由に挙げてらしたと思いますが。 ○吉村委員  身体的に重大な侵襲を与えるものではないけれども、採卵や麻酔に伴う身体的リスク を健常者に負わせることを考えなくてはいかんと。ただ、それをやってはいけないとい うぐらいの身体的リスクはないと私は思うんです、現在の体外受精の方法において。た だ、全くそれは関係ない人にそれをするわけですから、ある程度の、例えば 100人に1 人とか、もうちょっと起こりますけど、 100人に4〜5人、卵巣が腫れたり出血をした りする人はいるわけですから、そういうことは健常者に言わなくてはいけないというこ とですね。 ○石井(美)委員  先ほどの話ですと7回から8回病院に行く。 ○吉村委員  注射・排卵誘発剤を打って、来ていただいて、卵胞が成熟した段階で穿刺するわけで すね。麻酔はいろんなところによって違います。私のところは静脈麻酔ですぐ終わっち ゃいますけど、ここにいられる先生方はたくさんやってみえるからそうされていますけ ど、いまだに腰椎麻酔でやっているところもありますし、いろんなタイプがあると思い ます。ですからそれで入院していただいて、その日は一応3時間ぐらいは出血があるか どうか見て、ということになるだろうと思います。その後、採卵した後、卵巣が腫れて いるか腫れてないか見なくてはいけませんので、やはり10回は病院に来なくちゃいけな いと思いますね。 ○丸山委員  今の排卵誘発剤の注射はすべて病院でするという前提ですね。 ○吉村委員  日本ではそうです。アメリカなどは3日に1回注射しています。 ○丸山委員  自分で注射する。それで 2,500ドル。 ○吉村委員 最低 2,500ドルですね。 ○丸山委員 今、先生がおっしゃったように、病院へ注射のたびに来なければならないとなるとも う少し高くなるかもしれないですね。 ○吉村委員 幾らでやるかどうか私はわかりませんが。 ○矢内原委員 自費になりますから高くなりますね。 ○丸山委員 石井トク委員がお触れになったことなんですが、精子提供、卵子提供で、近親者から の提供というのですけれども、無精子症とか乏精子症、卵巣不全は遺伝性のものは少な いんですか。近親者からの提供だと遺伝性で兄弟・姉妹で同じような状況になる可能性 はありますか。近親者間での提供、通常は同胞間ですね。 ○吉村委員 私の知り得ている限りでは遺伝も少数ありますが……。 ○丸山委員 少数。 ○吉村委員  少数だと思います。 ○矢内原委員 精子にあるかもわからないけど、卵子に関してはまだわかってない。 ○吉村委員 まだわかってないことが多いですけど、例えば、親がそうだったから子供もそうなる とか、精子以外はそういうこともあるのではないかということはいろいろ言われており ますね。しかしそれがすべてではないと思いますけど。 ○中谷委員長 それではもうちょっと先まで進めていただいて、血液型はこれは当然でしょうね。よ ろしいですね。なるべく血液型を合わせておくと。 ○石井(美)委員  提供が少ないのに、そう言えますか。 ○矢内原委員  血液型が当然というのは、要するに子供に知らせないということが前提ですね、そう なると。 ○加藤委員  難しいのではないか。生体肝移植でも血液型不適合のままやるというケース結構多い んですよ。ですから近親者から提供受けた場合に血液型を合わせるというのは大変確率 少なくなります。 ○吉村委員  先ほど田中先生もおっしゃった卵子の提供を、ドナーでやるとしたら、血液型まで合 わせていたら。 ○加藤委員  血液型を合わせる方が望ましいというのか、血液型が合った場合でなければ違法だと いう扱いにするのかというのは、血液型は法的な規制の対象にはならないのではないで しょうかね。 ○中谷委員長  やっぱり望ましいぐらいでないといけないでしょうね。 ○丸山委員  生まれてくる子供の立場だったら、私がこの子供だったらやっぱり合わせてほしいで すね。親子間では、体外受精で生まれたんだよ、それもドネーションを伴うので生まれ たんだよというのがわかっているとしても、周りの友達なんかには知られたくないです ね。日本の社会ではいじめの原因になるんじゃないですかね(笑)。 ○加藤委員  血液型が合っていなければいけないということを法律的なしばりとするのか、あくま で、なるべくそうした方がいいとか、どうしても提供者がいないのでやむを得ずそれで やるというレベルにするかのかという問題ですよ。 ○中谷委員長  望ましいということしか言えないですね。 ○丸山委員  子供は選択できないわけですよね。ですから、もう少ししばりはきつくて、法律で刑 罰を科すというところまではいかないかもしれませんけど、ルールとしては血液型は合 わせることが必要なんだと思いますね。 ○加藤委員  非常に難しいと思います。 ○丸山委員  現実に実施できるかどうかは確かにおっしゃるとおりだと思いますね。 ○中谷委員長  これまでいろんなご意見を承りましたけれども、医系の委員と法律系の委員との間の 前提認識にかなり差異があるようで、その点は報告書を作成してくださるワーキンググ ループの先生方に全権を委任いたしますのでよろしくお願いいたします。  よろしいですか、それではその次に進めていただいて。 ○丸山委員  どこまでいったんですか、その次というのは。 ○加藤委員  3ページが終わったので。 ○丸山委員  4ページですね。 ○中谷委員長  4ページはまだ。 ○石井(美)委員  数とか提供数。 ○丸山委員  その前の遺伝性疾患の検査なんですが、今、不治の遅発性疾患については、発症前診 断は余りしない方がいいという雰囲気ですよね、ハンチントンなんかは。ですから、そ ういうところまでドナーとなる人に検査してくださいというのはどうなんですか。何か 酷であると同時に非倫理的であるような感じがしますね。少なくとも不治の遅発性の疾 患については検査はやってはいけないのではないでしょうか。じゃあ、早発性はどうか ということになりますけれども、これもどうですかね。よく考えないといけないと思い ますが。 ○中谷委員長  難しいですね。 ○田中委員  これは染色体検査という意味で書かれているんですか、遺伝性の検査というのは。 ○椎葉課長補佐  含めてです。 ○田中委員  含めてですか。 ○丸山委員  遺伝病の方でしょう。 ○田中委員  染色体検査しようと書くと多分たたかれるでしょうね。 ○高橋委員  そうですね。 ○矢内原委員  どんどん進歩していったら、先はわかりませんからね。 ○高橋委員  どの程度までの検査だとなるし、問題があります。後で、不十分な検査であったとか 何かいろいろと言われてくる危険性もあると思います。面接などで、こういう人はいま せんかとか、そういう調査だったら許せるでしょう。 ○中谷委員長  検査をして、検査結果の保管というか保存といいますか、それがまた大問題になりま すよね。 ○田中委員  染色体検査をルーチンでやっていくとなると。 ○丸山委員  染色体は何が念頭に置かれているのですか。 ○田中委員  染色体異常。表現系は正常でも異常がある場合がないと言えないと思うんですね。 ○丸山委員  ですから、どういう疾患を念頭に置かれているのですか。 ○田中委員  モザイク。 ○丸山委員  クラインフェルターなどですか。 ○田中委員  クラインフェルター、モザイクもありますけど、正常な部分入っていると卵が出てく る場合があります。完全なターナーではできないんですけど。 ○丸山委員  そういうのは遺伝するものですか。 ○田中委員  遺伝は普通はしないと思います。 ○丸山委員  それはこの範疇とは別の問題じゃないですか。 ○田中委員  ただ、染色体検査をルーチンでやるということは非常に今アレルギーですよね。 ○丸山委員  それはあるんですけど、ここで想定されているものは……。 ○加藤委員  染色体検査を義務づける最初のケースになってしまう危険がありますよね。 ○丸山委員  ここでお書きの遺伝性疾患の検査というのは、不妊治療を受ける側が思わぬ遺伝性の 疾患を持った子供を持つことになることを懸念されてのことだと思うので。 ○田中委員  ドナーのそれを調べるわけでしょう、事前に。 ○吉村委員  簡単に言えば筋ジスとかそういうものですね。 ○丸山委員  本来の遺伝子疾患。 ○吉村委員  そういうのもありますけど、先生おっしゃったようにターナーのモザイクだってあり ますし。 ○矢内原委員  キャリアはどうなりますか。 ○田中委員  キャリアですね。 ○丸山委員  発症しておれば、聞くのはいいと思いますが、キャリアは・・・・・・。 ○吉村委員  卵子提供者となるとキャリアになっちゃいますから。 ○田中委員  キャリアをいかにして見つけるかですね。 ○丸山委員  劣性のX連鎖。 ○吉村委員  X連鎖の劣性は・・・・・・。 ○田中委員  入っちゃいますね。 ○吉村委員  入っちゃいますね。 ○田中委員  後で家族に文句を言われる場合がありますから、変な卵をもらったとか、そう言われ ないためにも、ある程度ですね。 ○丸山委員  筋ジスは必要、血友病はどうかしら、色盲はどうかとか。 ○吉村委員  それは言えないんじゃないですか。 ○丸山委員  いろいろだからグラデーションがあるでしょう。 ○吉村委員  ありますよね。ですから、もしやるとなったら、そういうことについていろんなこと 言ってもらったら困りますね。 ○石井(美)委員  やらなくてよいと言えるのかどうか。 ○丸山委員  発症してたらやっぱり教えてほしいと思うんですが、発症してない保因者について は。 ○田中委員  家族に治療前に言っておけばいいんじゃないですか、 100%安全でないと。キャリア の場合には出てくる可能性があるわけですからね。 ○吉村委員 あります。 ○石井(美)委員 検査しないとすればきちんと説明する必要があると思います。 ○田中委員 ある程度リスクがあるということを含めて言っておけばいいでしょうが、検査をルー チン化するのはまずいと思いますね。 ○石井(美)委員 フランスは検査しているようでした。 ○丸山委員 やっている国あるんですね。 ○中谷委員長 ドイツでもデュシェンヌ型の筋ジストロフィーについては男女の産み分けを認めてい ますよね。(ドイツ 胚保護法第3条) ○田中委員 着床前診断になるとまた違う問題が出てきて大変ですね。 ○矢内原委員 日進月歩だからどんどんいろんなものが出てきます。 ○丸山委員 数千の遺伝病があるんでしょう。 ○吉村委員 遺伝病だけでも八千幾つあります。劣性だけで考えるとかなりの数ありますよ。そん なのはとても調べることは不可能です。 ○中谷委員長  一応 5,000ぐらいですか。そのうち医学的な対応が可能なのはその10分の1。 ○吉村委員 10分の1以下ですね。 ○中谷委員長  というふうに言われていますね。 ○石井(美)委員  そういう状況をきちんと受け入れられる、ということが必要だと思います。 ○吉村委員  インフォームド・コンセントをしないといけないですね。 ○石井(美)委員  インフォームド・コンセントだけで済むのかですね。 ○吉村委員  同意書を取っていただかないといけないですね。 ○矢内原委員  同意だけでもいいかどうか、法律的に。 ○吉村委員  大変だと思いますよ。 ○石井(ト)委員  そんな完璧な子供というのはあり得ないのであって、こういうところで遺伝的な疾患 まで入れたら本当に収拾がつかなくなって、昔の優生思想にまた戻ります。ですから性 感染症の検査だけでいいと思うんですよ。それでインフォームド・コンセントを行い、 そういうこともあり得るということで、ここは押さえておきたいなと思います。 ○田中委員  できの悪い子もおられるかもしれないですね。 ○石井(ト)委員  いくらでもいるわけですよ。五体満足だという思いから、今完璧な子という形の考え 方に変わってきておりますので、さらに検査すると問題が出てくると思います。 ○中谷委員長  鳶が鷹を産む場合も両方あるわけだし。 ○石井(美)委員  生まれた子供がその環境で幸せになれるかどうかということです。病気を親が受け入 れられるということも判断した上で、対象者を選ぶということになりますか。 ○吉村委員  そうですね。 ○田中委員  精子の提供を話しするときに、私は患者さんによく話すのは、できがもし悪くても自 分の子なら仕方なく育てますよね。どんなに知恵おくれでもできが悪くても。でも自分 の父親が、これ、おれの子じゃないと思ったときに、本当に最後まで面倒見れるかとい うことを私は言うんですよ。そのときに、「あ、これはおれの子じゃないから」という ふうに思うのだったらもうやめなさいと。ちょっとでもそういう不安があったらやめて くださいと。そういう非常に医学的じゃないんですけど、それを言っておけば……。 ○加藤委員  今までそういうことでトラブルあったことあるんですか。 ○田中委員  一度だけ離婚された人います。娘が生まれて、おやじが暴力働いて、また再婚しまし たけど、1回離婚したケースがあります。 ○加藤委員  だんなさんに断ってやったんでしょう。 ○田中委員  もちろんそうです。ただ、ストレスがあったときに、「この子はおれの子じゃない」 というのがあったんでしょうね、暴力を振るう。 ○丸山委員  そのお子さんが御主人の思うような子でなかったからなんですか。 ○田中委員  いい子なんですけどね(笑)。 ○中谷委員長  日本では法律的にはそういう問題は今まではなかったわけですけれども、外国ではそ ういうのがあるんですよね。少し大きくなってみると、自分と似ても似つかぬ子であっ たりすると、やっぱりあれはおれの子じゃないというので、それでスウェーデンとドイ ツでは同じころに同じような判決が出ていますけれどもね。 ○田中委員  そういうときに、インフォームド・コンセントとサインで法律的に解決されるんです かね。 ○中谷委員長  サインはしているんですが、ドイツの場合なんか、ちゃんと夫婦間の契約書を作成し ているんですよ。それでもなおかつ、夫が自分の子じゃないと嫡出否認をした事例で、 連邦最高裁判所は、摘出否認というのは憲法上保障された男性の権利であるから、一片 の私的な契約の文書でそれを覆すことはできないとしました。 ○吉村委員  今までうちではなかったんですけど、やっぱりこういうことはちゃんとしておくべき ですね。 ○中谷委員長  そうですね。 ○吉村委員  これから先何が起こるかわからない。 ○矢内原委員  ただ、インフォームドを得たとしても、これは感情の問題になりますからね。 ○吉村委員  そうですね。それは何の意味もないと思いますけど。 ○矢内原委員  何の意味もない。 ○吉村委員  誓約書書かせても何の意味もないですから、法律的にそういう点はしばるしかないじ ゃないですか、あなたの子ですと。 ○中谷委員長  よろしいでしょうか。それでは(3)の「配偶子の提供数」。イギリスは10人まで、 生殖補助医療の回数が10回ではなくて生まれる子が10人まで、フランスは5人まで。フ ランスは法律でちゃんと厳しく制限されていますが、どうでしょうか。日本はかつて 1990年〜1991年の日本の調査のときに石井(美)委員も参加されましたが、あのときに 慶應では50人までと書かれた。 ○吉村委員  それはないですけど。 ○中谷委員長  それで余り多いからびっくり仰天した。 ○吉村委員  それはないですよ。 ○中谷委員長  それで医学部のほかの方に伺ったら、いや、最大20人までですということでした。 ○吉村委員  そうですね。 ○中谷委員長  20人でも決して少ないとは思いませんけれども。 ○吉村委員  今確認しているので大体10人〜15人でやめてますから、確認できているのだけで。 ○石井(美)委員  それは確認できるのでしょうか。 ○吉村委員  平均的に言うと3分の1確認できませんので。 ○石井(美)委員  そうですね。 ○中谷委員長  日母もこの間報告しませんからね。 ○吉村委員  3分の1確認できてませんので、せいぜい20人ぐらいまでにしておこうということで 10人〜15人で切っているわけですね。 ○石井(美)委員 きちんと生まれた子を確認できるシステムが必要。 ○吉村委員 非配偶者間の体外受精をもし認めるとするならば5人までで十分じゃないですか。そ れはAIDなんかと違いまして可能だと思います。 ○石井(美)委員  AIDも含めるのですね。 ○吉村委員 含めるんですか、これ。 ○石井(美)委員  そうです(笑)。 ○吉村委員 いや、それは大変だ。 ○丸山委員  AIDの場合は地元なり別の産科に行かれることが多いということですか。 ○吉村委員  そうですね。 ○丸山委員  卵子提供のIVFの場合はそうでない。 ○吉村委員  やっぱり受精卵を子宮腔内に移植しますし、妊娠したかどうか診ますから必ず見える んじゃないですか、恐らく。 ○中谷委員長  そうですね。AIDは来なければ全然確認はできませんね。 ○吉村委員  AIDは普通の状態と同じですから何もわかりませんので、患者さんが来ないという ことはあり得ます。 ○石井(美)委員  今後は、きちんとすることが必要。 ○吉村委員  いや、それは必ずしているんですよ。ちゃんとお手紙を書いていますし、同意書にサ インもらうときにも必ずそうしてくださいと言っているんですけど、なかなかそういう わけにいかないですね。要するにそれはどういうことかというと、地方から来たときに 我々は紹介状を書くときにAIDでご妊娠ですとお書きするわけですね。そうするとそ ういうことを知られたくないというふうにおっしゃるわけですよ。やはり私たちのとこ ろへ来られると必ず書いちゃいますから、そうすると患者さんは来ないということにな るわけですね。 ○石井(美)委員  そうしますと後の、子の知る権利との関係できちんと記録保存がなされるということ と矛盾することになる。 ○吉村委員  だれの精子を使ったかはわかりますから、記録保存はできますよ。例えば、その子供 は慶應で何年何月に人工授精をしたということであるならば、その記録は1回ごとに残 ってますから、その患者さんはドナーはだれでということはわかります。ですから特定 はできます。その本人がAIDをしなかったという嘘を言えばわからないです。 ○矢内原委員 現在不妊治療に関しては患者さんはすべて隠します。IVFによる妊娠か妊娠じゃな いかということを病棟の中で回診するときでも言わないでほしいというのが希望。それ から妊娠していなくなる人が多いです。 ○田中委員  それは日本の大きな特徴だと思うんですね。家族に黙ってきている人がいます。家族 に言わないでくれ、郵便物を病院の名前を書かないでくれという人います。ですから妊 娠しても普通にしたというふうに、だからうちではお産しないんですね。あそこに入院 したら不妊治療でできたなと(笑)。だから、すごく日本人は隠します。ですから追跡 調査をしようと思ってすると怒られることあるんです、電話しないでくれと。だから100 %追跡調査はできないと思います。 ○石井(美)委員 そうするとこれでは困るということですね。 ○田中委員 でも吉村委員も言われたように、事実は残りますから、聞いてくればわかりますよ ね。 ○石井(美)委員 5人に限るというのは。 ○吉村委員  決まれば。 ○矢内原委員  AIDは困っちゃうね。 ○田中委員  連絡のないのは大抵妊娠してないです。 ○吉村委員  例えば5人にしますと、ドナーを、今血液型合わせていますね。今、A型大体15人か 20人で回しているんですけど、各型30人ぐらいずつ用意しなければなりません。だから 大変な数ですよ。それも全部6カ月ごとに凍結するわけですよね。現実面において、非 配偶者間の精子提供による体外受精をやっていこうとするとすごいお金かかりますよ。  だから、こういうのは私はいつも言っているんですが、もしやるとなったら国の機関 でやってもらうしかないと。全部保管してもらって、日本全国そこしかできませんとい うふうにして、国の金を使ってもらってやってもらうしかないですね。 ○高橋委員  吉村先生は何人ならいいわけですか。 ○吉村委員  私は理想は5人〜10人だと思います。最高いっても10人でとどめるべきだと思いま す。 ○矢内原委員  根拠はないでしょう。 ○吉村委員  ないです。20人でも私は本当に問題ないとは思うんですけど、フランスは5人ですよ ね。 ○中谷委員長  フランスは5人。 ○吉村委員  そういうのを見ると、やはりそういうところにならった方が。 ○加藤委員  フランスというのは同一地域の人が結婚する率高いんですよね。人口移動というか、 同じ村の人とか同じ町の人同士の結婚率が非常に高い国ですね。 ○田中委員  多分慶應にはAIDのケースのほとんどが集中しているのではないでしょうか。AI Dが法律的に認められれば、各大学で治療ができるようになります。大学には学生いっ ぱいいますからね。そうすれば患者数は分散するでしょう。大事なことは非配偶者を使 った治療は正しい、堂々とやれるというイメージをもっと広めてほしいことです。何か 後ろめたい。だから手を出したくないというのがあるんです。だから慶應に集中してし まうのでしょう。 ○中谷委員長  後ろめたいというふうにお考えじゃないでしょう? ○田中委員  後ろめたいんじゃなくて、何かあったとき責任とれないわけですよ。九州からもほと んど慶應へ行きますから、大変だと思います、本当に。 ○吉村委員  うちは商業主義的にやっておりませんので(笑)。やっぱり赤字になるんですよ。要 するに採算はとれないんですよ、AIDだけでは。AIDの費用はだんだん少しずつ少 しずつ上げているんですけど、 3,000円とか 2,000円ずつ上げていっているんですけど 1回やるとAIDに関しては2万 8,000円ぐらいしかもらってないんですね。そうしま すと、例えば感染症の検査を6カ月ごとにしなくてはいけない。これも全部病院の持ち 出しになるわけです。保険ききませんし。  そうしましてそれを凍結してタンクから、大きなタンクを3つとか4つか用意してお かなくてはいけませんよね。それはそのまま置いておけばいいわけではなくて、液体窒 素を定期的に補給しなくてはいけません。そういった費用は少ないんですけど、それを 管理する人の人件費、そういうことを考えると、10万円以上もらわないと全然やってい けないんですね。だから非配偶者間の体外受精をこれから先本当にやろうとするといろ んな意味で大変だと思います。 ○中谷委員長  よろしゅうございますか、配偶子の提供数については。  では3の「実施機関について」、いかがでしょうか。私、先ほど伺いましたら、現在 実施機関は 500ぐらいとのことですが。 ○矢内原委員 登録機関は 500を超えました。 ○中谷委員長 登録機関は 500ぐらいだそうです。また、イギリスと比較で申しわけないけれども、 イギリスは1991年発足のときに 114、1999年8月末現在で 117という程度。 ○加藤委員 個人情報の管理というのはイギリスの場合に病院ごとに管理センターがあるんですか それとも全国的な。 ○中谷委員長 全国的なものがあるわけです。 ○加藤委員 全国的なのを1カ所の管理センターで統合しているわけですか。 ○中谷委員長  ありますね。それから、各実施施設には全部倫理委員会というものもあります。 ○丸山委員  提供配偶子を使う不妊治療、体外受精などについて実施できる機関を制限するのは可 能なんですか。もう可能じゃないと考えた方がよろしいですか。 ○矢内原委員  学会のレベルでは不可能でしょうね。 ○吉村委員  私も難しいと思います。 ○丸山委員  難しいですか。 ○吉村委員  ええ。辰巳先生どうですか。 ○辰巳委員  難しいと思いますが、したいと思っているところは余りないのではないか。うちも認 められても余りしたいとは思わない。 ○丸山委員  そういう状況だとしたいところだけ登録してもらって、登録を認めるかどうかの際に 審査をかませるというのが方法としてあり得ますね。 ○吉村委員  田中先生どうですか。したいと思うところが私は結構あると思うんです。 ○田中委員  私は多いと思います。 ○吉村委員  40施設ぐらいあるのではないでしょうか。 ○田中委員  どうしても卵がないとできない患者さんが確実にいます。いくら頑張っても。 ○吉村委員  40施設ぐらい日本ではありそうですか。 ○田中委員  もっと多いと思います。辰巳先生のやりたくないという気持ちが一寸わかりません。 そういう患者がいたらどこかへ紹介する。 ○辰巳委員  紹介します。AIDもやったことないし、私は不妊治療は夫婦間でできるところまで というふうに考えているんですよ。それから先のことはまた別のことだと思っていま す。 ○田中委員  わかりました。私は多いと思います。学会が報告を受けて管理するのが一番いい方法 だと思います。一例一例、新聞にそう書いてありましたよね。症例ごとに日産婦に報告 する、これが一番いいのではないでしょうか。 ○中谷委員長  それが学会という機関がいいのかどうか、それがまた問題なんじゃないですか。 ○田中委員  それは大変ですね。 ○加藤委員  武部さんの案だと一例ごとに倫理委員会を開くという感じになるんじゃないですか。 ○矢内原委員  そういうことを考えられたんです。 ○吉村委員  そういう委員会を設けて、またその委員会が一例一例ごとに開かれるんじゃないです か、それは大変です(笑)。 ○吉村委員  田中先生にお伺いしたいんですけど、例えば、40施設か50施設でも登録があったとし ますよね。精子提供の場合はやはりしなくてもいいような方に、例えば顕微授精を行わ ないでドナーによる精子による体外受精をしてしまうと。これは意外と怖いことではな いかなと。例えば普通の顕微授精、テクニックな上手な顕微授精をできないから、精子 提供による体外受精をやってしまおうと。そういうのは先生どうですか、危険性は結構 あるような気がするんですけど。 ○田中委員  これは実験室の中の状態、密室の中の問題ですから、そこまではわからないじゃない んですか。 ○石井(美)委員  それは施設を限って、一定の条件をクリアーした医師だけはできる。 ○田中委員  条件、どういうふうにしてクリアーさせますか、実地試験させますか。私が思うのは 各施設を見に行ってチェックするのはどうでしょうか。 ○石井(美)委員  もちろん。イギリスなどはそうですね。 ○中谷委員長  だけど、日産婦でやっても、違反があってもできるのは除名処分ぐらいでしょう。そ れでは意味がないんですよ。 ○矢内原委員  除名したら堂々とできます(笑)。 ○中谷委員長  宣伝になって。 ○田中委員  除名という処置は辛いものです。根津先生は除名になってかえって気が楽だとおっし ゃっておられましたが、本心ではないでしょう。 ○石井(美)委員  せっかくここの委員会で決めたら、守られるようにする。 ○中谷委員長  これからの堆積は別ですけど、現在の時点で言えばそうだと思います。 ○田中委員  除名というのは我々にとっては最高のペナルティーですよ。 ○田中委員  それは今のAIDでも言えますよ。AIDしなくても顕微ならできるんだけどという 患者さんいますよね。 ○吉村委員  そうそう。 ○田中委員  それはちょっと。 ○吉村委員  それはなかなか難しいです。 ○田中委員  歯どめは。それはいずれ患者さんがわかるんじゃないですか。 ○加藤委員  費用は全然違うんですか、顕微授精の場合とAIDでは。 ○吉村委員  それは違います。 ○田中委員  AIDの方が安いでしょうね。 ○吉村委員  全然安いです。 ○田中委員  患者さんがわかると思いますよ。何か変だなって。 ○田中委員  でも自然と淘汰されるのではないですか。 ○高橋委員  私は現在のの実施施設は認めざるを得ないと思います。ただし、これから新しく開設 するところは、この間学会より「生殖補助医療の実施施設の具備すべき用件と設備 (案)と実施医師の用件(案)」が配られてきましたけれども、そういう施設の規制、 ガイドラインに則った規則を厳守することによって、簡単に専門外の医師がオープンで きないようになるのではないかと思います。 ○矢内原委員  今でもまだ登録制なんですよ。これは認可制という、認定をするということになった らとても学会の力ではできませんし、医師会がまず反対しますね。医師の自由権を奪う ものだと。そうすると認定みたいな制度を立ち上げるのだとこれから10年以上かかりま す。 ○高橋委員  学会のやる領域ではないと思います。この登録制がもしスタートすれば、学会はただ 除名処分するだけで、それ以上のペナルティーを科すことはできない。日母の場合の母 体保護法指定医師の資格をあげないとか、というようなペナルティーを科すことと全く 別だと思います。これは別な機関でやるべきであって、学会でやるべきではないと思い ます。 ○田中委員  実際難しいでしょう。 ○加藤委員  だれかやらなければならない。 ○高橋委員  イギリスとかどこかの国のように、出来るなら国の機関をつくる。 ○田中委員  この前のヒアリングの方は卵子の提供は家庭裁判所が管理するとおっしゃっていまし たね。 ○矢内原委員  公共的な機関が管理をしないと管理はしきれないと思います。 ○中谷委員長  家庭裁判所が適当とは思いませんけれども(笑)。 ○田中委員  結局そうなるんですね。 ○丸山委員  移植実施施設は8学会ですか、移植関係学会合同委員会で限定していますね。あれほ ど社会的な医療になったから、それができるのかということがあるかもしれませんが、 学会主導で少し厚生省の肝入り、というあたりで無理なんでしょうかね。 ○吉村委員  ただ、辰巳先生いつもおっしゃっているんですけど、結構不妊治療というのは家内工 業なんですよ。例えば移植などのチーム医療というのは、麻酔医がいて、術者が何人も いていろんなチームでやると。例えば、30人、40人という移植医療チームがやるわけで すね。ただ、不妊のこの治療はテクニシャンが1人と看護婦さん1人いればできる医療 なんですよ。例えば 400、 500施設があるところ、あなたのところはいいけど、あなた のところはだめですよと。これを言うことは結構至難の技だと思うし、医学的にも不可 能だと思う。 例えば田中先生のところなんかはすごいいい成績出しておられる。田中先生のところ が認められなくて、全くいい成績を出してない大学病院が認められる、これはおかしい ということになるんじゃないですか。私はそういう意味で、例えばこのところがよくて 8機関選びましょうとか、これはできないと思います。 ○石井(美)委員  数ではなくて、条件をクリアーしたところに限るのではないですか。 ○丸山委員  さっきおっしゃった40〜50がいいんじゃないかと思うんですが、あるいは80でも 100 でもいいんですが、今の 500というのは多いんじゃないかと思いますね。 ○石井(美)委員  多過ぎる。 ○吉村委員 それはそうですね。 ○田中委員 吉村先生が言われたように、例えば移植の手術というのは非常に高度な技術が必要で すね。だから、実施施設が決められても納得できるんですよ。ところが我々の仕事は、 隣がよくてうちがだめだという差異がほとんどない部分なんです。だから線引きをセレ クションするときに大変だと思いますね。また実施施設に漏れたところは非常に残念に 思うと思いますね。 ○加藤委員 移植の場合には各医療機関が自分で申請したわけですね。アメリカで何体手術をした 経験のあるドクターが何人いるという、そういうことを集約して、それでこの大学はこ の臓器をやる、この大学はこの臓器をやるというふうにして、内部で調整して決めてい ったわけですね。決して外から決めたわけではないですね。 この場合には、いわばそういう自己申告型で決めれば、みんなおれもおれもでおりる 人はいないと、そういうことになるわけですね。 ○中谷委員長 まだまだ御議論が続きそうでございますけれども、本当に時間が少なくなってまいり ました。その次の「遺伝的な親を知る権利」、これも大変いろんな問題がありますので 十分に御議論をいただきたいと思いますので、きょうはこの辺でというふうにさせてい ただきたいと思いますけど、次回また引き続き、きょうの議論を継続したいと思います が、事務局の方いかがでしょうか、よろしいですか。 ○加藤委員 集約の方向が見えてきたけれども。 ○中谷委員長 ワーキンググループは活動始めていただきますので、またいろいろ御意見も出てくる かと思いますし、遺伝的な親を知る権利、提供者の法的な親としての権利・義務は何も ないということ、それはぜひ確認をしなければいけないことでございますので、次回に 十分に御議論いただきたいと思います。 ○石井(ト)委員  ワーキンググループという話が出ましたけど、具体的にどのようにしてですか。 ○中谷委員長  医療の方から矢内原、吉村両委員、法律の関係から丸山、石井美智子のお二人の委員 にワーキンググループに入っていただいて御検討いただくわけでございますが、何か石 井トク委員。 ○石井(ト)委員  そのほかの委員は。 ○中谷委員長  医と法というふうに一応代表を。 ○石井(ト)委員  お二方ずつだけで、あとの委員はよろしいのですか。 ○加藤委員  そんなこと言ったら、また全員でやらなければならないじゃないですか。 ○石井(ト)委員  そうではないのです。ワーキンググループとして、倫理的な側面での考え方があると 思いますが。 ○中谷委員長  そのときに御随意にご意見を出していただければ結構だと思います。 ○吉村委員  たたき台をつくる。 ○中谷委員長  たたき台だけですから。 ○吉村委員  こういうものをつくるだけです。 ○石井(美)委員  いつごろまでに。 ○中谷委員長  最終的なものは10月の報告前まですよね。 ○吉村委員  これはいつまでにつくるんですか。 ○椎葉課長補佐  全体の報告書は10月という。 ○吉村委員  たたき台は。 ○母子保健課長  本日御議論いただき、半分ちょっとたたき台をベースに、まだ集約はできませんが、 済みましたので、もう一回、次回もこれを続けていただいて、その次あたりに、ここの 全体の場での議論ではいろいろと先生方の御意見が分かれていることもございますが、 具体的な提言案あるいはガイドライン的なものとして、形になったものとして示すとす れば、とりあえずこんなものでどうかというものをワーキンググループからお出しいた だければありがたいかなと。ですから次々回、この次の次の回に、この専門委員会の会 議をやるときにそれをお示しいただけると大変にスムーズにいくかなというふうに思っ ております。 ○丸山委員  次回の会合の後ですね。 ○母子保健課長  その次の回ということです。 ○吉村委員  その次に皆さんに直していただいてということになるわけですね。 ○母子保健課長  この次の回にきょうの残りの議論をしていただいて、その内容をにらみながらワーキ ンググループで、ある程度のコンセンサスのつく部分、あるいはたたき台として提示す る部分、そういうものをおまとめいただいて、この次の次の回にお出しいただいて、こ の全体会で御議論いただくと。その方が具体的になって話がしやすいのかと考えており ます。 ○吉村委員  5月ぐらいですね。 ○矢内原委員  5月でしょうね。 ○吉村委員  今度いつやるかですね。 ○中谷委員長  私の都合から申しますと、なるべくなら5月の初め、4月いっぱいはちょっと無理で はないかと思いますので。 ○丸山委員  3月は。 ○中谷委員長  3月はいいですよ。 ○丸山委員  3月末に全体の……。 ○中谷委員長  3月末とそれから5月の初めぐらい。 ○石井(美)委員  最終報告を出す前に中間報告的なもので一般の意見を聴くような手続はするのです か。 ○母子保健課長  中谷委員長のお考えもおありかと思いますが、事務局としては特に今そういうことは 考えておりません。当委員会の先生方がどういうような御意見を集約していただいたか ということを提出してまいりたいというふうに考えております。 ○丸山委員  今よくあるパブリックコメントの聴取は、この上の先端医療技術の段階へ行ったとき に行えばよいと、そういう理解でよろしいんですか。 ○母子保健課長  この先の扱いについては、まだ具体的には考えておりませんが、こちらの専門委員会 としては、先生方がどういうふうにおまとめいただいたかをお話しすることで責務は果 たせるのではないかと考えております。 ○吉村委員  これはちょっとわからないんですけど、受精卵の提供までですか。 ○母子保健課長  最終的な報告としては代理母の問題も含めて、また結婚が前提であれば、独身者の受 精卵の凍結とか解除の問題は起きないかもしれませんが、スコープとしては、そこらあ たりまで含んでいただいて最終的にはおまとめをいただきたいと思います。  今回のたたき台はその部分をちょっと外してありまして、余り広がりますと議論がな かなか難しいので、精子、卵子、受精卵の提供という部分でまず1つ、もしコンセンサ スが得られるならば出していただいて、その上で少しその周辺部分といいましょうか、 ここでまだ議論できてない部分まで広げていただいて、10月にはおまとめいただけると ありがたいなと、こういう考え方です。 ○中谷委員長  よろしゅうございますか。 ○矢内原委員  卵子までですか。 ○吉村委員  胚までです。 ○中谷委員長  辰巳委員、何かありますか。 ○辰巳委員  次回の日程はここでぜひ決めていただきたいと思いまして。 ○母子保健課長  中谷先生の御都合のよろしいときで、もし、今先生方の日程調整ができればありがた いと思います。 ○中谷委員長  私はいつでも参加させていただきますので。 ○母子保健課長  今、辰巳先生がおっしゃったのは、この全体会のということでよろしいですね。 ○辰巳委員  はい。                 (次回日程調整) ○中谷委員長  次回は3月27日(月曜日)午後1時半から4時半までということで、どうぞよろしく お願いいたします。 照会先:児童家庭局 母子保健課 03−3503−1711(代表) 椎葉(内線:3173) 武田(内線:3178)