00/02/08 第24回臓器移植専門委員会議事録       第24回公衆衛生審議会疾病対策部会臓器移植専門委員会       日時   平成12年2月8日(火)17:00〜19:10       場所   弘済会館「萩の間」 出席者 (○:委員長 敬称略)   井形 昭弘   大久保 通方  大島 伸一  大塚 敏文  菊地 耕三  ○黒川  清   小泉  明   小柳  仁  田中 紘一  谷川 久一   野本 亀久雄  藤村 重文   町野  朔  眞鍋 禮三  矢崎 義雄   山谷 えり子   (参考人) 西山 謹吾  大庭 正敏  北村 惣一郎 1.開 会 2.議 題   (1)移植医療に係る現状と課題について      (2)肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準の一部改正について      (3)その他 〇事務局  ただいまより第24回公衆衛生審議会疾病対策部会臓器移植専門委員会を開催いたしま す。はじめに本日の委員の出席の状況でございます。桐野委員から、ご欠席とのご連絡 をいただいております。なお、本日は、議題の1にありますように、昨年、臓器移植法 施行後はじめて臓器提供がありまして、1年が経過しようとしております。この機会に 臓器提供施設、日本臓器移植ネットワーク、臓器移植実施施設で、それぞれ担当された 先生方からご意見を伺うということを予定いたしておりまして、高知赤十字病院の西山 先生、少し遅れておられますが古川市立病院の大庭先生、国立循環器病センターの北村 先生にご出席をいただいております。よろしくお願いいたします。  次に、資料等の確認をさせていただきます。お手元に配付してございます。本日は議 題大きく3点予定しております。  1.移植医療に係る現状と課題について、この中で各先生方からご説明いただきま す。  2.肝臓移植希望者選択基準の一部改正について。  3.その他。  本日予定している議題は以上でございます。  次にお手元に配付しております会議資料の一覧がございます。 資料1   移植医療に係る現状と課題について。 資料2   肝臓移植希望者選択基準の一部改正について。 参考資料1 腎臓移植希望者の選択におけるグループ抗原保有者とスプリット抗原保有      者との関係等について。私どもエイズ疾病対策課長通知でございます。 参考資料2 小腸移植について。 参考資料3 平成12年度予算案の概要について。 参考資料4 眼球提供者適応基準について。私ども保健医療局長通知でございます。 参考資料5 眼球のあっせんに関する技術指針について。保健医療局長通知です。 参考資料6 これはナンバーはございませんが、ご審議いただきました臓器提供意思表      示カードについて改訂版がこのほど完成しましたので、カード及びリーフ      レットを参考資料として配付させていただいております。  資料等は以上でございます。不備等ございましたら事務局にお申しつけください。  黒川委員長よろしくお願いいたします。 〇黒川委員長  久しぶりでございますが、お集まりいただきましてありがとうございます。去年の2 月の終わりに第一例目が高知からありまして、移植が行われたわけであります。その後 3つ続き、4例終わってから大体半年たったと思います。その後は脳死による移植がさ れておりません。ご存じの通りでございます。その間にいろいろなことが起こっており まして、例えば、肺移植の施設の認定、あるいは実際には田中委員のところを中心にし た肺の生体肺移植、それから生体の小腸移植なども少しずつ着々と試みられておりまし て、それなりの成果を上げているということろでございます。  一方でヒト組織の利用の実際のシステム、あるいは検討も立ち上がっております。き ょうはある意味では時間の経過もそうですが、過去の4例の脳死下での臓器移植のあっ せん移植の関係者団体から、現状と課題について、一体どういうことを、先生方・当事 者の方々が感じておられるのか、あるいは実際に経験された方のコメントも貴重ではな いかと思いますので、きょうはまず提供施設の立場からということで、お二人の先生に 来ていただいております。提供施設の立場からということで高知赤十字病院の西山先生 と、古川市立病院の大庭先生に来ていただいておりますので、まず提供側の立場からと いうことを、ご自身の経験を踏まえて10分ずつお話をいただきまして、その後10分程 度で先生方のご意見をいただきたいと思いますのでよろしくお願いします。西山先生か らお願いします。 〇西山先生  皆さんこんばんは。西山です。私はスライドにまとめましたのでスライドを供覧しな がらお話を進めたいと思います。  今回、私がお話をしようと思っているのは、手続き上の、あるいは制度上の問題点を 指摘してくれ、ということが厚生省から私に命じられた課題であります。そういうこと をお話する前に、もう一度、我々としても提供施設側として見直しておかなければいけ ない点ということで、もう一回この法律を出させていただきました。  この法律、臓器の移植に関する法律の、第2条及び第3条の点についてお話をさせて いただいて、問題点を考えてみました。  第2条というのはまさしく基本的理念というものです。死亡したものが生存中に有し ていた、自己の臓器の移植術に使用されるための臓器の提供に関する意思は尊重されね ばならない。こういったことを、我々も、移植施設も、それから国民全ても、尊重しな がら進めていかなければいけないもの、そういう基本的なことが示されていると思いま す。  ところが、その法律の後に、移植の要件のようなことが書かれております。そこには ドナー本人の明確な意思表示と家族の同意の両方が必要であると書かれております。そ うしますと私はこれを読んでおりますと、第2条の基本的理念は、ドナーの意思を尊重 せねばならないということに対して、これは反していないかということをちょっと疑問 に思っているわけです。  といいますのもドナー本人がいくら臓器を提供したい、そして臓器提供意思表示カー ドというものをわざわざ作って持っていても、家族の末端の誰か一人でも反対すればで きない、そうしたら何のためにこのカードを持っているのかということにもなってしま います。そういうことで第2条には、とにかく「ドナーの意思を」と書いてあるのです が、移植の要件のところには家族も入ってきて、しかもこれが対等の立場であるという ことが、ちょっと引っ掛かるところであります。  そうしますと私自身が考えますのは、改善するべき移植の要件というものは、「ド ナー本人の意思が最優先される」これが基本的理念ではなかろうかというふうに考えて おるわけです。ドナーの意思確認ができなければ、家族の意見を取り入れるということ が移植の要件に書いてあるのかなという気がします。  今回の法律とは関係ありませんが、患者が15歳未満の場合にはどうするのか、家族の 意見なのか、これが3年後に見直されることになっているのかもしれませんが、今回の 法律では上の2点のことについては、このような形で基本的理念を読み取れるのではな いと私自身は思っております。  その基本的理念を踏まえながら、我々は法的脳死判定、その他を行っていかなければ いけないのですが、どうもこの基本的理念と法的脳死判定の間が、合わないところが何 か所かあります。それをまず提示させていただきます。  臓器移植を目的とした患者搬送の禁止。臓器提供施設マニュアル、去年の平成11年10 月1日に発行されております。そちらにはこのように書かれております。臓器提供施設 以外で脳死状態に陥った患者の臓器移植を想定とした患者搬送は、当面の間控えるべき である。ただしこれはマニュアルでございます。ですからマニュアルと法律はどちらの 方が上位規則なのかというと、法律の方が上位規則になるのではないかと思います。そ うしますと、これは法律的には基本的理念から、ちょっと反しているのではないかとい うことを思っているわけです。  そのことと、次に原疾患が確実に診断されていなければならないというふうに書いて あります。これは移植の前提条件というところです。原疾患が確実に診断されていなけ ればいけないということは、例えば心肺停止で患者さんが来ました。その方を蘇生しま した。何とか心拍だけは再開したが、脳の蘇生ができなかった、原因はなんだったんだ ろう、不整脈だろうか、どうだろうか。  そしてその方がカードをもっていたとしますね。この場合は現疾患はっきりと画像上 にとらえることができなければ、臓器移植はできないというようなことであります。折 角、患者さん自身がカードをもっていても、こういうことで脳死判定ができないという ことが今の法律であります。  そして知的障害者以外に、視覚障害者、あるいは聴覚障害者、視覚障害者なども臓器 提供を実はできないという事実があるわけです。  そういうこと以外に、法的な脳死判定ができない例といいますのは、ここに上げてあ るものがあります。例えば頸髄損傷のある方、これは交通事故などで頸髄損傷がありま すと、眼球頭反射というのは首をぐりぐり回しますので、そういうことはしてはいけな い。鼓膜が損傷されている症例。これは藤田保健衛生大学の方であった例なので皆さん もよくご存じであると思います。さらに、虹彩が癒着しておりますと瞳孔は散大いたし ません。それから角膜の高度損傷、あるいは目に関していいますと片方が義眼の方、そ ういう方は両眼での対光反射その他が調べられないために、法的には脳死判定とはいえ ない。それから末梢の三叉神経麻痺あるいは顔面神経の完全麻痺、こういったことも深 昏睡の判断不可ということでカードをもっていても、実はこのような病気になってしま うと、法的な判定はできないということが今の規則です。  そうしますと医学的な脳死ということと、法的な脳死手続きというものが、決してこ れはイコールではない、かなりの隔たりがあるのだ。このことを我々自身、実は1例目 をやってから、我々自身も気づいたわけです。ここをいかに近づけていくかということ を、今後努力しなければいけないのかなというふうに思っております。  脳死判定の前提条件で、我々提供病院の方にかかってくる非常に負担の多いのが2番 目です。「原疾患が確実に診断されており、それに対して現在行いうる全ての適切な治 療をもってしても」という表現です。現在行いうる全ての適切な治療。こういうことが 非常に負担になってくるわけです。  例えばこの様な場合はどうでしょうか。例えば脳内出血でやってきました。担当医は これは手術適用がある、手術をすれば、50%で社会復帰ができる。30%の人は駄目かも しれない。植物状態になるかもしれない。20%の人は脳死状態に移行してしまうかもし れない。そういう場合でありますと、当然手術をしましょうというお話をしますが、適 用があると考えたわけですが、手術を勧めたのですが、患者さんの家族が手術を拒否さ れました。その結果、不幸にもその患者さんは脳死に至ってしまった。そうした場合に 意思表示カードが出された。これは臓器移植できるのでしょうか、出来ないのでしょう か。この判断が提供施設の方にかかってくるわけです。  ある考えによりますと、これは適切な治療、家族がそのように望んだのだから、これ は止むを得ない、臓器移植は適用だという考えもあれば、医者として自分はこれは絶対 にしたらいいと思ったのに、それをしていないわけだから、それで結果的に脳死になっ てしまった場合だから、これは不適だという考え方、いろいろな考え方があると思いま す。  それに関して平成9年6月16日、参議院の方できまりました附帯決議というところで こういうことが書いてあります。脳低温療法を含め、あらゆる医療を施したのちに行わ れるものであって、判定が臓器確保のために安易に行われるという不信を生じないよう に、医療倫理の確立に努めることと書いてあります。  ということからしますと、あらゆる医療を施した後に行われるものであってというこ とからすると、先ほどのは不適、しかし我々はインフォームド・コンセント重視の時代 ですから、患者さんがそれに納得しなければ、そういうことはできないということにも なるわけです。  さらにこの附帯決議について一言申し上げますと、脳低体温療法ということが、ここ になぜか一つだけの治療法が書かれております。さらに、脳低体温療法をここまで書く ならば、私は厚生省で保険に認めた治療にしてほしいというふうに思っているわけで す。  さらに法的脳死判定に係わる医学的な問題点を考えてみました。その次に手続き上の 問題点を上げさせていただきます。  医学的な問題点として、ひとつ厚生省の判断にも載っておりませんが、各病院で考え ていることは何かといいますと妊婦さんの問題があります。例えば32週の妊婦さんであ る。脳死状態になった。そして臓器摘出できるかどうか。子供さんは現在生きていま す。32週ほどになりましたら、そのまま帝王切開して出しても、生きつづけることはで きると思います。さらに妊婦さんが子供を生んだというようなこともあります。こうい う妊婦さんの場合にはどうするのか、これは非常に問題であると思います。  さらに人工心肺を装着している患者さん、こういう人も脳死判定をしていいのかどう か、この二つに関してです。  次は薬物の血中濃度がよく言われております。痙攣を起こした。痙攣を起こせば我々 はどうしても痙攣を止めるお薬を与えざるをえません。その痙攣を抑えるお薬を与える と、ディアゼパムというお薬が一番よく使われますが、それについては血中濃度が、有 効血中濃度の10分の1になるという時点を目指すとすれば、17日間かかるということを 船橋医療センターの先生が出されております。一端、痙攣を止めるお薬を投与すれば、 17日間脳死判定はしてはならないのだというふうに決めている施設もあるくらいです。 そういう薬物の血中濃度については、どのように考えたらいいのかという問題です。  次は観察時間についても問題です。これは原因経過を勘案して、必要な場合にはさら に時間を延長すると書いてあります。つまり、具体的にいいますと溺水、あるいは窒息 あるいは縊頸、首吊りですね。そういう方の場合は、6時間、1回目と2回目の観察時 間は6時間以上をあけるようになってますけど、さらにもっと時間をあけなさいと書い てありますが、どれだけ時間をあけないといけないのか書いてありません。ですからこ ういう点は、我々は厚生省の方に聞くという形で思っております。  それから外傷患者さんなども眼球や鼓膜損傷してしまうと、もう法的な問題でできな いということになります。  次に臓器提供施設マニュアルというのが作られたわけですが、そこで新しく書いてあ ることは何かといいますと、最善の治療とはその施設で行われている通常の治療のこと であって、先端医療のことは指さないというようなことが書かれております。そして脳 死判定で迷うことがあれば、厚生省に問い合わせなさいということで、特に薬物の影響 消失の確認、及び二次性脳障害の判定時間の間隔については聞きなさいということが書 かれております。  さらに一番問題になりますのは、報道機関への対応は、希望のみ提示されておりまし て、報道機関は承知しておりませんから、各施設ごと、報道機関と話をつめなさいとい うことが書いてあります。これは結構我々提供施設全てのところに負担が係っておるの ではないかと思います。  さて次に手続き上の問題点です。私が思うに臓器提供施設の要件というところを読ん でみますと、「施設内の倫理委員会等の委員会で認められた」と書いてあります。倫理 委員会といいますと、これはまだ法で決められてない新しい先端治療、あるいは倫理上 の問題ある治療を検討する委員会であると思うのですが、もう既に我々は法で決められ たことを行おうとするのに、どうして倫理という委員会が必要なのか。この倫理という 言葉は私は法で決められた以上はもう要らないのではないかと思っております。  次にこれは聞きたいのです。脳死判定の記録書です。これは二人の脳死判定医が判定 することになっております。記録書は一つです。そして二人の署名を書く。すると二人 で一つのものを書くのか、それとも二人の判定医がそれぞれ一つずつの判定書を書いて それが全く一致していると見るのか、我々の施設はそのようにやったのですが、厚生省 でマニュアルにありますのは、二人で一つの判定記録を作成するようになっております が、これで実際によろしいのかどうか。ここはお聞きしたいところです。  摘出手術等の手続き等に関する問題点です。脳死確定後に例えば我々のところでも気 管支ファイバーをしたり、あるいは心エコーをしたりしました。そういう検査は、どう いう検査が必要なのか、また誰が行うのかということは、これははっきりと決められて いるのでしょうか。肝臓移植をするときには、例えば肝臓のエコーをしなければいけな い、あるいはCTをしなければいけない。その辺が我々としてもちょっとわかりにくい なと思っております。これは移植施設の問題かもしれません。  我々はコーディネーターと移植チームと控室を準備しなければいけません。さらに費 用の問題というのは腎臓しか認められておりません。その点は早く解決していただきた い。これはコーディネーターからいろいろ出てくると思います。  あとは提供事例の際の情報の開示です。我々は今回第三者機関の方に開示するという ことが決まっているようですが、いつ開示するのか、何をどう開示するのか、どこで開 示するのか、この点について具体的なことを私たちは聞かされておりません。それを教 えてほしいわけです。そして家族が開示を拒んでも開示しなければならないのでしょう か。それとも開示を拒むのなら拒んで、開示せずに、それとも開示せずに臓器移植を行 うのでしょうか。この開示について困りますのは、開示であってこれは公開とは違うと 私は考えております。  例えば私どもの症例などは、公開という形で新聞紙上に脳波が載ったり、週刊誌にC T写真か載ったりしております。さらにそういうことが物凄く出回っておりますために 10月28日の毎日新聞の方にはこういう記事も出ました。高知赤十字病院の方の脳の中の 出血量と、慶応病院の脳の中の出血量の体積を比べると、慶応病院の方がずーと多いの に、慶応病院は手術したのに赤十字はしなかった、これはおかしいのではないか。この ような考えが出されました。  これは原疾患が全く違うわけです。我々の場合にはくも膜下出血です。向こうの場合 は恐らくAVMの破裂かなんかの脳内出血を作っているわけであって、原疾患が違うの に、そういうことを云々されても困りますが、新聞紙上に堂々とそれが載せられてい る。ですから公開というものも、それをはっきりと審議する人達はちゃんと知識を得 て、そして審議していただきたい、そうしないと我々の病院のことを、そのように書か れているわけですが、我々は反論する気も全然ありませんが、そういうことで公開する のであれば、ちゃんと審議していただきたいと思っております。開示については我々は 積極的にしようと考えております。  公開をするのであれば、公開の時期はどこで行うのかということについてです。私自 身の希望としては脳死確定後に厚生省、あるいはネットワークでやっていただきたい。 そして摘出が行われれば、それは厚生省やネットワークに任せておくのではなく、これ は提供病院の役目ということで、我々病院はこれをしなければいけないだろう、そして 皆さんの疑問に応えなければいけないというふうに考えております。  リアルタイムについては今はあまり言われておりませんが、第三者機関に対してなら リアルタイムもできるかと思います。  脳死臓器移植というものは、自分で移植を選択する時代がやってきたのではないか。 そのためには脳死臓器移植を知らないことには選択することはできないと思います。  それを知るためにはどうするのかといいますと、第3条に書いてあるわけです。国及 び地方公共団体は移植医療について、国民の理解を深めるために必要な措置を講じるよ うに努めなければならない。つまり皆が移植について理解を深めるためには、国及び地 方公共団体がしなければいけないと書いてあるわけですが、この辺をいかに国あるいは 地方公共団体がやっているのか。提供カードを配って、意思表示カードを配って広める ことはできてはおりますが、理解が深まっているのかといいますと、今でも脳死及び植 物状態の違いについて分からずにサインをしている方がいるということが、ある新聞の アンケート結果に出ておりましたので、やはり理解を深まったということにはなってな いと思います。  ぜひ国及び地方公共団体はマスコミを入れて、こういうことをやっていかなければ、 法律違反ではないかと私は考えているわけです。  臓器移植の4つあります。健常人では臓器を提供したい人もいれば、臓器を提供した くない人もいるでしょう。また病人で移植を受けたい人もいれば、移植はいらない人。 これはぞれぞれ独立した意見であると思います。尊重しなければいけないと思います。  我々提供病院の使命は何かといいますと、僕は移植を進めるというよりも、移植医療 というものを一つの治療の選択肢に加えられるようにするべきことであって、あくまで もそれを選択するのは我々が勧めるわけではなく、選択するのは患者さん及び患者さん のご家族である。それに対して選択肢を広げるようにする、これが我々提供病院の使命 ではないかと考えているわけです。以上です。どうもありがとうございました。 〇黒川委員長  ありがとうございました。では続いて大庭先生からお願います。 〇大庭先生  スライドお願いします。当院は宮城県仙台市より北に約40キロの田園地帯に位置する 病床数379床の中規模自治体病院であります。平成6年に併設型の39名救急センターが開 始されました。ICU10床、HCU17床を有し、救命救急センターとしての医療人口は 約42万人をカバーしております。  平成10年6月17日、臓器提供病院に指定されたため、同年7月1日、倫理委員会及び 脳死判定委員会を設置。10月9日、倫理委員会において臓器提供に協力するとの院内に おける合意を確認しました。私は脳神経外科課長、救命救急センター長、及び脳死判定 委員会委員長を兼務しております。  スライドお願いします。臓器提供施設としての名乗りを上げたものの、脳外科医とし ての本音は、脳死の宣告から始めねばならない移植医療は自分たちには全くメリットが ない、負担ばかりが大きい仕事であり、できることなら係わりたくないという消極的姿 勢でありました。しかし反面では脳死になった提供者と家族のLife・Giftの善意は報わ れるべきであり、もし患者と家族からの臓器提供の意思表示があった場合には、こちら の都合でできないと断るわけにはいかないだろう、その時がきたら: 我々の責務として 全力をあげて行うしかあるまいと覚悟しておりました。  平成11年6月14日、臓器移植法施行後第3例目の脳死からの臓器提供が当院で行われ ました。今回はその概略について報告します。  スライドお願いします。患者さんは20代の男性、平成11年6月9日夜9時30分頃、事 故により受傷、救急車によって当救命救急センターに搬入されました。初診時の意識レ ベルは200 、両側瞳孔散大、対光反射消失の状態でありました。頭部CT上はギマン性 の脳ふちょう、チョウリョウの急性硬膜血腫を認めましたが、その時点でガイゲンアツ などの手術適用はなく、血圧は低めで脱水状態及び多臓器損傷の可能性もあり、ICU に収容し、人工呼吸器を装着し保存的に治療を行いました。  受傷翌日6月10日の朝9時頃、CT施行直後に意識レベル300 、自発呼吸停止、急激 な血圧低下を行いました。脳圧降下剤を投与し、一方では昇圧剤を用いて循環状態の維 持管理を行いましたが、受傷3日目の6月11日朝、3回目のCTを施行、脳全体に及ぶ ギマン性のテイキュウシュウイキを確認し、回復不能の基質的脳障害と判断しました。  スライドお願いします。無呼吸テストを除く一連の脳死判定を行い、臨床的脳死状態 と家族に報告しました。このとき家族から患者本人及び父親の署名のあるドナーカード を提示され、患者及び家族に臓器提供の意思があり、臓器移植に関しての説明を受ける ことを希望されたため、臓器移植ネットワークのコーディネーターに連絡を取りまし た。  また今回は事故による受傷であり、所轄警察署所長に法的脳死判定を行う可能性のあ る患者が入院中と連絡いたしました。  6月13日午後9時、脳死判定、臓器移植に同意するとの承諾を得て、脳死判定承諾書 臓器摘出承諾書を受領しました。  同13日午後11時より、第1回法的脳死判定、午後7時より第2回法的脳死判定を行い 家族に2回目の判定終了時刻が患者の死亡時刻となることを告げました。  スライドお願いします。事故のため所轄警察署県警より数名の検視官及び東北大学よ り法医学の教授が同行し検視が行われましたが、死亡解剖は不要と判断されました。 コーディネーターにより摘出チームの要請、派遣が行われ、臓器摘出は翌6月14日の午 後から、各移植施設の医師によって、心臓、肝臓、腎臓の順に行われ、約2時間で終了 いたしました。  遺族の希望により遺体は一晩霊安室に安置し、翌6月15日朝、病院長、総婦長、主治 医、看護婦及びコーディネーター一同でお見送りしました。  スライドお願いします。患者のドナーカードは事故の現場で救急隊と警察によって発 見され、これを元に警察が身元を確認いたしました。そして救急隊員がその後患者と一 緒とカードを病院に運び、救急外来看護婦に引き継ぎました。看護婦はそれを医師に渡 し、医師はそれを確認したのみで患者の所持品として衣類と一緒に一まとめにビニール 袋に入れ、入院翌日朝に主治医の指示で家族に返されました。  スライドお願いします。移植コーディネーターによる第1回の説明は、本部のチーフ コーディネーターの到着を待って6月11日午後9時30分過ぎから行われました。説明に はICUの婦長が同席しました。これはコーディネーター側からの要請でもありまし た。あくまでも説明に徹し、説得などは一切なされなかったことを確認いたしました。  第1回目の説明の際、家族は受傷前から本人の臓器提供の意思を承知しており、家族 の中でもよく話あい、よく理解していたことはわかりましたが、当然のことながら家族 全ての同意のためには時間が必要で、脳死判定臓器摘出の承諾まで36時間を要しまし た。この間、家族が患者の面会に来院した際に、主治医の側からはその都度、患者の状 態及び脳死についての説明を行いました。  しかし臓器提供に関しては十分に考えてください。決して急いで決断していただく必 要はない、受容ができなければ無理をして提供していただく必要もない。また一端承諾 してもいつ撤回していただいても構わないと再三説明しました。この説明は摘出直前ま で行い、家族に確認しました。  スライドお願いします。受傷3日目、回復不能の基質的脳損傷を確認し、臓器提供の 可能性が現実味を帯びてきて時点で、脳死判定を行うに際し、母体組織である東北大学 脳神経外科に相談しました。大学からのアドバイスは、臨床脳死以後はもはや救命救急 医療の段階ではない、したがって決して移植のために性急に事を運ぼうとしてはならな い。十分に時間をかけて家族の受容を待つべきである、さらに家族が何らかの決断を下 すまで、患者の生命維持に全力を尽くすべしであるというものでありました。  また、これまでの事例から脳波の記録がもっとも重要であり、この点は日本脳神経外 科学会、脳死臓器移植専門委員会が既に応援体制を確立しており、早速、脳神経外科学 会の脳波専門委員を派遣してもらえることになりました。臨床脳死判定は主治医と専門 医の2名で行いました。  スライドお願いします。法的脳死判定は専門医の立会いの元に、臓器移植に関する法 律施行規則、厚生省令第1条75号に基づいて、主治医を除く2名の脳死判定医が行いま した。重点は脳波と聴性脳幹反応におき、後日の厚生省での検討委員会では脳波はノイ ズが少なく、見やすく記録されていると評価されました。無呼吸テストの際、検査前の 血中の二酸化炭素がやや低いという指摘を受け、厚生省に伺いをたてるという事態も生 じましたが、その他には特に問題点は指摘されませんでした。  ところが脳幹反射検査の一つである前てい反射については、外傷による頭蓋てい骨折 の存在の可能性からチュウスイシケイは感染の危険があり適当でないと考え、耳鼻科医 と相談し、エアーカロリーテストを採用しました。これは後日、刺激温度が十分低くな かった可能性があるとの指摘を受け、この検査はその後、脳死判定における問題点とし て注目されました。  スライドお願いします。主治医は他の重症患者の治療も平行して行わねばならず家族 の決断を待つ間の患者の全身状態の維持管理は重要な問題となりましたが、集中治療医 のみならず、循環器、内分泌、代謝、及び人工透析のそれぞれの専門家からなる内科医 のチームが自発的に参加し、ゼンカイシツ、血糖、尿量などのホセイを行ったため、一 時危篤に陥った患者の全身状態は良好に保たれ、このことで脳外科医の負担は軽減され ました。  スライドお願いします。病院としては院内における合意が既になされていたため、対 応は速やかに行われました。病院長、事務長、総婦長を中心とし、まず院内に患者のプ ライバシーの厳守を基本とする体制が引かれました。ついで倫理委員会が開かれ、私が 法的脳死判定臓器摘出の可能性を報告、脳死判定、臓器提供における実行手順書マニュ アル細則の承認が行われました。病院長、事務長がマスコミ厚生省と連絡を、総婦長が 患者家族、コーディネーターへの対応、及び摘出チームのための手術室の手配をそれぞ れ担当することとしました。  家族の承諾確認後、再度倫理委員会が開かれ、病院としての臓器提供の承認を再確認 し、引き続き脳死判定委員会を開き、脳死判定員2名を専任しました。  事務職員は経過中終日病院内の警備を行い、マスコミ関係者の院内立ち入りを監視し ました。  スライドお願いします。当院事務から報告された経費は約600 万円でした。11日から 14日までの土曜日曜日を含む事務職員延べ157 名の時間外勤務手当て、及び夜間の警備 委託が主なもので、これはマスコミの病院内立ち入りを監視する業務に事務職員の大半 が携わっていたためでした。  スライドお願いします。情報開示については摘出終了日の夕方、地域保健所の会議室 において記者会見を行いました。また後日厚生省の公衆衛生審議会疾病対策部会臓器移 植専門委員会脳死判定等に係わる医学的評価に関する作業班に私が参考人として呼ばれ 経過報告を行いました。  マスコミ各社からの取材の依頼は相次ぎましたが、患者のプライバシー厳守が最優先 であること、後日医学的評価に関する作業班からの報告が公表されることを理由に全て お断りしました。  スライドお願いします。脳死は脳神経外科救急医療に携わったものにとっては、全て の治療努力が報われなかった結果であり、敗北を認めることであります。また脳死判定 とは救命と延命との境、すなわち救命救急医療と終末医療の境を判定することでありま す。我々にとっては患者を救えないという無力感とむなしさの中で行わねばならない厳 粛な責務であり、移植医療のために行うものではありません。  脳死移植が提供者の死の上に成立するものであり、その死を我々医師が判断しなけれ ばならない以上、十分な誤りのない判断が行われたのかどうかの検証は当然のことであ りましょう。しかしその過程で、提供者の善意が他者の思惑により歪められ、逆に提供 者の家族が不幸に陥ることのないように、その医療に携わったものとしては、最後まで 提供者とその家族のプライバシーは守り通さなければならないと考えております。  発表の中で患者さんとご家族と敬称を省かせていただきました。以上です、ありがと うございました。 〇黒川委員長  ありがとうございました。お二人の先生から実際の経過とその他にいろいろな問題点 を指摘されました。これについてご質問コメントその他ご自由に発表をいただければと 思います。  大変だったなというのがひとつであるし、西山先生にはいろいろな法律あるいは行政 的なものと現場とのそごがいろいろと指摘されております。大庭先生からは現場のいろ いろな救急医としての大変さを伺ったわけであります。いかがでしょうか。 〇野本委員  ご苦労様で大変な思いをさせましたという気持ちしかありません。いずれにせよ国民 レベルで全体で考えればいいという立場である以上、命も救わなければいけないという のは当然ですが、脳死に携わる提供現場の先生方はどれくらい苦労されているのかとい うことは、十二分に我々は理解しなければいけないし、どうやってできるかということ を政府を医学界も考えなければいけないということだと思います。 〇西山先生  お聞きしたいのですが、基本的理念、患者さんの意思を尊重しなければならないとい うことから考えますと、救急車による患者さん搬送、救命治療目的であればOKだが、 脳死状態を運ぶのは駄目だというようなことになっておるようですが、これは救命治療 のために運んでいるのか、それとも脳死状態という形で脳死ではないですね、非常に曖 昧です。実際に搬送したら、恐らくマスコミあるいは反対派からはそこをついてくると 思うのです。けれども基本的理念を考えれば、患者さんの意思を尊重しなければならな いのであって、うちの病院にまず運ばれる、直近病院からまず運ばれてきた、それで点 滴だけを取って、これは危い状態である、それにカードももっている、そうしたらもう 提供施設に運んであとはやってもらいましょうと考えるのは、すごく自然であると考え るのですが、これはやってはいけないのでしょうか。 〇大塚委員  西山先生ね、その話は救急医学会の中でも随分実はディスカッションされました。ご 存じのように脳死という状態は非常にラビームな状態でございます。ですからそういう 状況でもって救急車に乗せたり、あるいは救急車でがたがた道を運んだりということは 非常にリスクが高いということであって、それはなるべく避けてほしいということにな ったわけです。  ですから今のようなことでもって脳死の患者さんを病院に運んで、そこで脳死判定を やるということは、まず今の状況では不可能という結論に達して、ああいうことになっ たのです。 〇黒川委員長  その他にいかがでしょうか。いろいろな思いが先生方の委員の中にも事務局でも、ま た聞いている人の間にもそれぞれの立場で違うが、立場を乗り越えて、もう一段高くな るとという発言で結構だと思います。 〇朝浦室長  臓器提供施設マニュアルに西山先生がおっしゃるような言葉が入っております。臓器 施設マニュアルの説明会のときにも同じようなご質問がありました。私どもとしては大 塚先生がおっしゃったような側面とは別に、移植医療が定着するまでの間は、ややもす ると移植に向けての動きとか、そういう形での社会的な抵抗感がありますので、現時点 においては、まだまだそういう救急施設からの脳死状態の移植に向けた脳死判定のため の搬送というものに、非常に躊躇を覚えているということでございます。 〇黒川委員長  いかがでしょうか、特別なご発言がなければ、この後はまだネットワーク側からの報 告、それから移植施設の立場からの報告もありますので、きょうは大庭先生、西山先生 にそのままいていただいてよろしいですね。ただそこでまた総括的なご質問を受けると いう格好でいかがでしょうか。またいろいろなご意見があると思います。ありがとうご ざいます。では次にあっせんに係る日本臓器ネットワークですが、これも例の小泉委員 会の方で随分検証していただきまして、この4つの脳死下での移植についてのネット ワークについてはかなり検討されました。菊池委員から移植ネットワークの立場からと いうことで、この4つの経験からのお話を伺います。よろしくお願いします。 〇菊地委員  臓器移植ネットワークの菊地でございます。前回の専門委員会におきましても問題点 は発表させていただきましたので、違った視点からの問題点として、新たに発言させて いただきます。  まず私どもの社団法人日本臓器移植ネットワークの役割です。大きくわけて臓器移植 についての普及啓発、それから提供臓器の公平・適正なあっせん、この二つに分けるこ とができます。2番目の中には患者さんのデータ整備等が入ります。まず臓器移植につ いての普及啓発というところで意思表示カードの配付状況の説明をさせていただきま す。  スライドを使います。この後ろの山が現在の意思表示カードの配付状況でございま す。1998年4月に郵便局に設置されました。同年7月には国民健康保険更新時に配付が 始まっております。1999年1月には運転免許証・健康保険証用のシールが配付され、コ ンビニエンスストア等に設置れております。1999年9月には公共広告機構でのテレビ等 の公報が開始されてございます。そういう背景、また協力機関からの多大なるご協力、 それから移植団体等の配付等によりまして、意思表示カードの配付枚数は1999年10月の 段階で5,400 万枚、シールが1,000 万枚を越えている状況でございます。  下の棒グラフにつきましては意思表示カードをお持ちなってお亡くなりになられた方 のネットワークに入った情報の件数を示してございます。このように、この配付枚数で 約6%から7%の国民が、意思表示カードを所持しているのではないかというのが現状 でございます。  その意思表示カードの配付における今後の課題です。まずカード保持率の増加という ことで、現状の意思表示カードの配付を継続すること、カード設置場所等の新たな開拓 これにからめて、新たな意思表示カードの配付方法を検討しなければならないことが上 げられる。  2番目に記載不備の解消です。すなわち正しい記載方法の周知です。現在約160 件く らいの意思表示カードの情報をいただいておりますが、その中で記載方法の1番に〇が ついてないとか、臓器に〇がついてないというカードが約20件ございます。記載方法の 周知徹底が望まれます。言いかえればカード記載方法が非常に難しい、1番の臓器に〇 というのがなかなかご理解いただくのが難しいカードではないかということも考えなけ ればいけません。  3番目に家族と対話ができる啓発です。私どもとしましては学校教育の中に臓器移植 を取り入れていただきたい。それから皆様と家族で話ができる啓発ということで、最も 有力な情報の提供としてはメディアとタイアップしたキャンペーンの実施等が今度必要 であろうと考えます。  4番目に意思表示カードの確認です。医療機関への説明と協力依頼を今後も行ってい かなければいけません。  続きまして2番目の臓器提供の公平・適正なあっせんについてです。私どもネット ワークの役割として、コーディネーターのドナーの発生施設内での主な業務を列挙しま した。まず1)情報の収集と一時評価、2)ご家族への説明と承諾書の作成、3)血液 検体の搬送とHLA及び感染症関連検査の手配、4)摘出手術の院内調整および摘出 チーム間の調整、5)必要書類の確認、6)臓器搬送の手配、7)情報公開の打合せ、 8)ドナーご家族への支援が上げられます。  一方、本部におきましては、1)コンサルタント医師との連携、2)レシピエントの 選定、3)レシピエントの意思確認、4)摘出チームの派遣要請と交通手段の確保、 5)摘出臓器の搬送の手配、6)情報公開といった業務がございます。  その中での純粋にあっせんに係わる私どもの問題点を取り上げてみました。1)ド ナー感染症検査ですが、臓器の提供に必要な感染症検査が実施できなかったHLAセン ターがございます。何とかHLAセンターにおける感染症検査を充実させていただきた いと考えます。  2)次に保存血清です。レシピエントとして選定されましたが、輸血が行われていた 等、保存血清が送られていなかったという理由で保存血清がなく患者さんの選定に時間 を要した事例がございます。血清の迅速な保管ということも検討していかなければなり ません。そういうところはきちんとシステム化をして、必ず登録された患者さんの血清 は保存されるというふうにしていかなければならないと考えております。  3)臓器搬送についてです。連絡体制のシステム化というところで、私どものネット ワークの本部からは空港、航空会社に連絡を入れる等、あちらこちらに連絡をいれなけ ればならないわけですが、そういうところをもう少し一本化できないかというところと 現在費用の面に関しましては、請求は行っているのですが、飛行機のチャーター料等が ネットワークに入ってきておりませんので、費用の流れについても、今後検討していか なければならないと思います。  4)情報公開についてです。私どもが4件経験させていただいて、いつも問題になる のはドナー発生施設の中でも情報公開です。内容・時期・場所がはっきりと決まってお りません。それでメディアの方々はドナー発生施設に押し寄せてきます。通常の業務が 滞る場合もありますし、ああいう状況がありますと、ドナー発生施設の先生方から、次 からの協力を行う気にはなっていただけないのではないかと懸念しております。ですか らこの4番の情報公開ということにつきましては、すぐにでも、どういう内容、時期、 場所等をメディアの方々と相談をして決めていただきたい、決めていかなければならな いと考えております。  最後になります。臓器移植ネットワーク全体としての視点から今後の課題を考えてみ ました。1)普及啓発の継続と新規開拓というところは先程申しましたので、まず2) の広報の関する検討です。ネットワークとして患者さん、例えばレシピエントのフォ ローアップでありますとか、私どもが所持しているデータをどこまで公表して、どうい うふうに広報するのかということも、今後は検討していかなければならないと思いま す。  3)4)5)6)につきましては、あっせんに従事するコーディネーターのことにな りますが、まず3)移植コーディネーターの増員と教育、それから研修制度の充実があ げられます。  4)移植コーディネーターの専任化と常勤化と記載してございますが、コーディネー ターの中には週に二日の勤務でありますとか、全く常勤化されてない者、専任化されて ない者、各病院に所属している者、各バンクに所属している者等がございます。そうい う場合におきましては、その病院等の方針でありますとか、病院の勤務体制等によりま して、常勤化しているコーディネーター、専任化しているコーディネーターとの業務差 能力差が生まれてきますので、コーディネーターを業とする者は専任化・常勤化を目指 すべく検討していかなければならないと考えております。  5)移植希望者データ管理の育成と拡充及び設備強化というところです。今後、移植 施設が増えることになります。ネットワークではデータ管理者をまた新たに育成して、 充拡及び設備を強化していかなければならないと考えております。  6)移植コーディネーターのサポート体制の充実ということで、かなり少ないコーデ ィネーターで業務を行っておりますので、あっせんに係わる本部の機能を強化して、地 方に点在しておりますコーディネーターのサポート体制を、今後は更に充実させていか なければならないと考えてございます。以上です。  前回の専門委員会で発表した部分については割愛させていただきました。 〇黒川委員長  ありがとうございました。これについては小泉委員会からのいろいろな報告、それか らそれによるいろいろな提言がありましたが、それを踏まえて実際の現状も踏まえてお 話したわけです。どちらかというと総論的なアイテムが多かったわけです。これについ て何かご質問はありますか。 〇西山先生  我々提供施設側としましては、例えば僕は自分で起こったことは分かっているのです が、古川の方では何が一体特に問題になったのかということ、あるいは慶応病院、それ から千里の救命救急センターでは何がどこが問題であったのか、どの点が困ったのかと いうデータが入ってこないのです。結局は4例は行われているが、全然情報の共有化が されないという現状です。ネットワークの方にコーディネーターの方から聞きますと、 ネットワークはあまり喋らないというお話を聞いているのです。それは実際には勿体な い話で、実際にもう4例行われたわけですから、その4例の情報の共有化ということも 進めていただきたいと思っております。 〇菊地委員  先生のおっしゃる通りかと思います。私どもの方につきましてもどのような情報を コーディネーターに知らせて、どのようにそれらの情報を共有化するのかを非常に検討 しました。遅くなりましたが今年度のはじめに全ブロックのコーディネーターを集めま して、全ての情報を提供いたしました。それから臓器移植のこの4例の流れ等につきま しては、研修会を催しまして伝えてございます。先生のおっしゃる通りであると思いま す。 〇黒川委員長  事務局としてはこれについては何かありますか。4例の全部の整理した上で、例えば マニュアルをもう少し分かりやすく作りなおすとか、そういうことがあったわけですが その他には何かありますでしょうか。 〇朝浦室長  全国の臓器提供施設、数百ございますが、昨年の秋に厚生省の方でブロック別に提供 施設マニュアル、あるいは法的脳死判定マニュアルをもとに説明会を開かせていただき ました。来年度におきましても、同じような形になるかどうかわかりませんが、臓器提 供施設あるいは都道府県の担当者の方等々、関係者の方にお集まりいただいて、臓器提 供に係るいろいろな手続きなり、あるいは疑問点なりにお答えする場を設定して開催し たいと考えております。そういう場を通じながら機会があるごとにご説明していきたい と思っております。 〇大久保委員  今のネットワークの発表と、それから先程ありました西山先生が指摘をされた部分と ダブっていたのでお話をさせていただきたいと思います。当然ネットワークの方も我々 も、カードの配付ということで非常に頑張っております。実際にシールと合わせて6,000 万枚という状況になってます。  その中で実際に我々が配付をして、それから皆さんに記入をしてもらう、その記入方 法については、かなりその場でお話させていただいたりできるのですが、実際に記入を する人の立場に立ちますと、臓器提供ということと、実際の現場ではどうなるのかとい うこととか、脳死というのはかなりテレビでは言われておりますが、実際に脳死判定と いのはどういうことをするのかというようなこと、先程も出てきましたが、では実際に どういう状況になったら、かなりたくさん、先生が指摘されたように提供できないこと が出てくるわけです。そういうことの状況はほとんど一般に知られてない。  今の腎の心停止後の提供というのがあるのですが、では脳死での提供と心停止後の提 供の違い、こういう実際に自分が提供するときに、必要となる情報というのは今の一般 の方々にはほとんど知らされてない。これは非常に大きな問題です。  西山先生が指摘されたように、こういうことというのは自治体なり厚生省なりが、き ちんと一般の国民の方に理解していただくように、これは情報を公開し、皆さんに流す そして理解していただくよう努力をするということが非常に大きいと思います。そうで ないと皆さん実際に記入するときに非常に困られる。心停止と脳死はどう違うのか、脳 死の時はどういう判定をするのかということで、実際にはカードをもったが、なかなか こういうことに書いてあるだけでは、細かいことまではわからないので、非常に困って いるということを、一般の方からよく聞きますので、ぜひ広く一般の方に、実際の臓器 提供とはどうなるのか、現場ではどういうことが問題なのか、どういう時にはできない のかという先程、西山先生が指摘されたような問題点をぜひ一般の方にわかるように、 広報していただきたいと思います。 〇黒川委員長  それについて何か。事務局どうぞ。 〇朝浦室長  今後検討させていただきたいと思います。 〇藤村委員  ただいま大久保委員から大変に重要なお話を伺いました。確かにその通りかもしれま せんが、また別な見方をしてみたいと思います。先程、西山先生と大庭先生から、現場 からの情報を非常にビビットにお話を伺って、いろいろな問題があるということはわか りました。またネットワークの立場からも、特に最初に見せてもらったスライドをみる と、カードの普及が大変に進んできているというのがわかりました。もう6.? 何%でし ょうか進んでるということがわかりました。ただそれに比例するように脳死のドナーが 出ていないというのが一番大きい問題の一つだと思います。その辺に問題点が一つ隠さ れているのではないかと思います。  カードを持つ方が増えても、提供しようとする方がいても、提供するまでには至らな かったということにも、大きな問題が隠されていると思います。その辺の分析が必要だ と思います。  もう一つ、脳死以外というか、心臓死の提供が多くみえました。ああいうところにも 問題がある、この3つの大きな問題があると思いますので、その辺のところはきょうは 後は1時間くらいしかありませんのてよくわかりませんが、そういうところを分析した ら何か出てくるのではないかと考えます。 〇井形委員  きょういろいろとお話を聞きました。この委員会で議論したこともありますし、新た なご指摘を受けた点も多かったと思います。いずれも厚生省がまとめて、これはこうい う対処をしていくということで、この委員会の意見を聞く会をもっていただきたいと思 います。先程出ましたように私は経験したのは、藤田保健衛生大学の問題です。ああい うふうにドナー情報がありながらうまくいかなかったところの先生の情報は、取ってい ると思うのですが、そこの先生がどういう提案をなさっているのか、そういうことも一 緒に聞いていただいて、そういうものに対する全体的な厚生省のお考えなりこの委員会 の意見をまとめるようにしていただけるとありがたいと思います。 〇大島委員  いろいろなお話ありがとうございました。西山先生のご指摘の法的な解釈判断の問題 と医学的な判断あるいは解釈の間のギャップが埋まらない。これを埋めないといけない というご指摘は、本当に私も常々そう思っております。その間にあるのは、恐らく社会 的判断というのが非常に多くて、その社会的な判断が右の方にシフトするのか左にシフ トするのかによって、随分話が変わってきてしまうのだろうと思っています。  それで今、井形先生が保健衛生大学の話を出されましたが、一つの参考的な状況とし てお話しておきます。  名古屋大学のことでして、6年生の学生に、保健衛生大学の問題をどう考えるのかと いうことについてレポートを書かせました。医学部の6年生ですから、脳死というのは 何かということは普通の人よりはよくわかっている、将来、臨床医になるのが圧倒的に 多いわけですから、自分が専門家としてどう判断していくのかという問題と、社会の状 況との間で大きなギャップが起こったときに、どう考えるのかということで、ある部分 では切実な問題であろうと考えレポートを出してもらいました。  私は五分五分くらいで、多分、専門家の意見というものは社会に認知されるべきだと いう意見が来るのかと思っていたのですが、学生の答えは、専門家の意見が優先される べきではなくて、社会が求めている方向でいくべきである。あの時の厚生省を含めた社 会の対応というのは、間違っていなかったという意見が圧倒的でした。  それを見て、一体どう考えたらいいのかなというので私自身本当に考えました。とい うことは世の中を動かしている、あるいは世の中の考え方はまだそこまで至ってないと いうことか、あるいは専門性に対する信頼度というのが、本当に回復されてないという ことを如実に表しているのかなというように感じました。 〇黒川委員長  いろいろあるかと思います。確かにここの委員会では、いろいろな検討された報告を いただいているので、皆さんは割合に意見の共通の認識はあると思います。確かに西山 先生がおっしゃったように、では提供施設にはその結果がどのくらい浸透しているのか ということは、ここでは2時間とか3時間とかという議論をしておりますので、比較的 に浸透しておりますが、その同じレベルでそれが伝わるのかというのは、そこにはまた ギャップがあるのは確かにそうだな、先生がおっしゃる通りであると思いました。  ここで移植をされた側の立場ということで、二つお話を伺いたいと思います。そこで まず国循から北村先生に来ていただいておりますので、遠くからご苦労さまでございま すが先生からお話を伺いたいと思います。 〇北村先生  国立循環器病センターの北村です。本日は公衆衛生審議会の場で意見を述べさせてい ただく機会を得まして大変に光栄に思っております。  昨年度、2例の心臓移植を循環器病センターの方で施行させていただきました。いず れも順調に経過しておりまして、現在お二人とも社会復帰に向けて、もうすぐに元の仕 事に戻っていただけるというところまでに回復しております。  はっきり申しまして、わが国での心臓移植は法律をお作りになっていただかなされば やはり出来ていなかったとはっきり思います。その面で公衆衛生審議会の先生方と、あ るいは国会関係でご努力いただきました方々に、厚く御礼申し上げたいと思いますし、 提供してくださった方々、あるいは施設、コーディネーター、ネットワーク、全ての 方々の連携がなければ成り立たなかったということで、大変に私もありがたく思ってお ります。  しかし移植側の問題として、一つにまとめてみますと、その後進まないということが あります。したがいまして、実際に、内科医が移植の必要な患者さんを紹介してくる施 設は増えてきておりますし、日本でも移植ができるということを患者さんが知っており ますから、患者さんが紹介されて、我々も政策医療の重要なポイントとして、そういう 患者さんを積極的に遠方からでも受けようということで、対処してまいりましたけど、 実際のところはそういう患者さんの収容がいささか難しくなってくる。  しかも遠方で、航空機を使わないとすぐには移動できないくらいの遠方の方々を長期 間、いつまで待っていればできるのかということが不明な状況での入院加療が、いささ が難しくなってきております。  循環器病センターは厚生省の直轄病院ですから、私も管理者の端くれとして、あまり 言いにくいこともあるのかも知れませんが、今は外科医の側から実際に起こっている問 題をちょっと紹介させていただきます。  スライド。ご存じのようにネットワークからお宅の患者さんが一位ですという報告が この時点でやってまいります。それから1時間で大体インフォームド・コンセントを採 取して、摘出班を派遣することになります。しかし多臓器でございますので、飛行機が 小さくで乗り切れないために、速やかに旅客機、民間航空機の予約から出発しなければ なりません。今申しましたように、すでに遠隔の地で、ネットワークに入って、移植手 術は国立循環器病センターで受けるという形になっている患者さんの移動が必要になる 場合が、もう出てくる可能性が高い。そういう方々が第一番に選ばれる機会というのは まだ少し時間かあるように思いますが、そうしますと遠隔の土地から移動するには、か なりの時間がかかります。3時間は必要になってまいります。  そうしますと非常にハイランクに位置している患者さんはネットワークではわかるは ずです。したがいまして、ある程度遠隔のどこで待っているのかということも、もうネ ットワークが把握していただいて、それを移植施設病院に移動する時間もある程度見て いただかないと、1時間では正式なインフォームド・コンセントの採取、それから患者 さんを収容するのはいささか難しくなってくる状況があります。  これは現実に、患者さん自身が長期間、不定期の期間、遠く離れたところで、つまり 循環器病センターで待機するのは嫌だという患者さんもございますし、実質上は家族の サポートが得られないということになりますので、これの一つの解決は、各地での移植 施設が増えていくことになれば、対応がある程度は可能になるかもしれませんが、現状 ではかなり航空機以外では移動が難しい遠隔の土地の人が、ネットワークにセンターを 通して入っております。そういう人の対応が、いささかこのままの形態では難しかろう ということがあります。  移植待機時間が長くなってくるにつれまして、補助心臓が必要になる患者さんが増え ております。現在、国立循環器病センターでは、急性期の対応ということで保険承認さ れております東洋紡の補助ポンプを使用しておりますが、その患者さんはケアが大変に 必要になります。このように小型冷蔵庫くらいの大きな機械とガス管くらいのパイプで 体に繋がっておりますので、移動するにも一人とか二人の看護婦は最低必要になりま す。エレベーターに乗せるには二人の看護婦が必要になりますと、この人達が今は9名 センターに収容されております。この人達のケアをするのが大変に大きな問題になって おりまして、各病棟で分散して診ることになるのですが、それでないと看護力が不足し てくるわけです。しかし患者側からの不満も極めて多いのでございます。  ここでは適切な言葉ではないような気もしますが、正直にあえて患者さんの言葉をい いますと、私たちは犬より悪いと。つまり毎日の散歩すらさせてもらえないと。結局は 自分たちで動けないのです。ですからそういう看護力で今センターでもどうしてもこう いう患者さんを集約的に入れる施設、つまり重症心不全の病棟あるいは移植の病棟が必 要だということで、篠崎先生の方にお願いしていろいろと援助をしてもらっておるとこ ろでございますが、このポンプは体外的にありますために退院はできません。不可能で あります。そうして不定期間待っている、そして多くの人が約5割が、1年以内にこの 状態でも死んでいきます。死因は脳梗塞と感染症です。そうしますとかれらは、我々が ターミナルにあるとういことを知っておりまして、患者あるいは看護婦との間にしばし ば口論・喧嘩をします。  そういうことから、私は今の移植施設には、早晩、ホスピスが必要であるというふう な気すらもっております。こういう患者さんは今は元気そうに一見は見えますが、実際 には大変なケアがいります。この人に運動をさせて状態を改善させてから移植に向かう ということのために、そこでこういうポンプではもう対応は不可能になってくる。しか らば体の中に埋め込んで、こういう患者さんで、補助心臓を付けているのが2年間に20 数名の患者さんがおりますが、その中で死亡が43名、実際にトランスプラントにできた のは、1例のみであります。  ネットワークに多くがポンプを付けたままで登録しておりますが、今のような状況に なっているということです。  これを是非とも解決したい。実際にこれがICUでの一つのときですが、DCM、D CM、DCMとこのLVASというのが今のポンプですが、こういう患者さんがずーと なってますと、死ぬまで退院できません。ごくまれにポンプから外れて帰れる人がごく 僅かです、しかし1割前後です。そうしますと後は今申しましたように、脳梗塞あるい は感染症で死亡するか、移植に繋げないかぎり、一切、一歩たりとも病院から出るのが 難しい状態です。それが半年間になってまいりますと、大変にやっかいな問題が出てき てます。  やはり外国の同じように移植をしている施設のように、体の中に埋め込んで家に帰し てあげるポンプをぜひとも認可していただくということが、早晩、既に必要になってお ります。こういうポンプは高額ですので、いかに扱うか、これは大変な問題だと思いま すが、ポンプをつけたままでも家に帰らせてあげれるというシステムを取らない限り、 こういう患者さんは増えつづけるという状況になってきて、病院としても非常に難しい 問題が生じております。こういうポンプの認可ということも、外国と同じようにしてい ただかないと、難しいと考えます。  こういうポンプを付けますと圧倒的に生存率がよくなります。ああいうポンプをつけ て移植になりますと、ポンプをつけた人の6割が欧米では心臓移植にまわり、その6割 の受けた人の9割が生存して家に帰っております。はっきり申しますと、このポンプだ けでは無理で、現状では心臓移植につなぐ必要があります。そういうことから、このポ ンプを用いることによって掛け算しますと、約5割の人を社会に戻すことができるとい うことですので、少しでも少ない移植の機会を与えるためには、埋め込み型のポンプが わが国でも既に必要であると考えます。  これはいろいろな薬をつかいますが、もはや医学の進歩と保険医療とはかみ合わない と申しますが対応できない状態になっているのは、ご存じのとおりであります。腎臓移 植で承認されている薬、承認されていない薬、さらに新しい薬を導入しての治療、この 4例からの多臓器提供の患者さんで腎臓等々を含めまして、10名以上の人達が、全て元 気にされているというのは薬のせいであります。こういった薬を早期に導入するシステ ムと保険をまたお考えいただきたいというお願いですし、先程から出てましたように、 5例になれば私どもも高度先進医療を申請しようということで、小柳先生、松田教授 等々とも話し合っておりますが、それとても保険までの道のりとしての一歩でありまし て、そういうことを考えていただきたいということが問題であります。  この人達がいつできあがるのかということになると、これの対応策は補助人工心臓の 埋め込み型が必要である。  私から申し上げることではなくても厚生省の方はよくわかっておられますので、蛇足 と思いますが、否指定病院の方に収容される臨床的脳死の方が多いということから、そ れに対応する脳死判定班、ごく近くの提供施設と指定されているところから派遣するシ ステム等もお考えいただきたいと思いますし、頭部外傷のドンテキ外傷が殆どで、鼓膜 損傷等々にも対応する方法を早くお考えいただきたい。そうすればこれだけの数があれ ば、現在ネットワークに入っている心臓移植は全部できるわけです。今のような高額な 補助心臓を買ってくれといわなくても、移植でいける可能性すらあるわけです。ぜひと も否指定施設からの提供も可能になる道をお願いしたい。  あとは、今はステッカーがついておりますが、あのステッカーを求めるという人は カードを持つ人と同じように、自分から持とうという人だけが警察署にいってステッ カーをつけます。ですから当然お分かりのように、そのものに書くこと、脳死は交通事 故と脳出血です。脳出血は健康保険証を必ずもってこられます。病院で。交通外傷の方 は現場で免許証をチェックすることができますから、直接の記入というのはステッカー はできましたが、直接の記入がより有効ではなかろうかと思います。  そういう医学的なものを、ぜひとも救急あるいは脳外科の先生方にお考えいただきた いのと同様に、現在でもこの4年間で4人の患者さんをアメリカにセンターから送り出 しました。2名は子供です。子供への道を開いていかないと、日本での定着というのは 子供抜きの定着というのはいささかおかしな状況になろうと思いますので、今年がそう なっていると伺っておりますが、またよろしくお願いしたい思います。  大人の人も外国に行きたいという人が少なくありません。センターとしてはそれを支 援はいたしません。医学的なもののみ手伝いします。隣にいる人がアメリカに出掛けま す。そして移植を受けたということは新聞にいつも載りますから知るわけです。私は行 けずにあの人は行けた。その差は、お金を集めることができるかどうかの差だけであり ます。こういうことが隣の人はアメリカに行った、僕は行けない。こういうこともセン ターでも起こってきているわけです。  あと質問にございましたマスコミ等々は、実際は私どもの移植側には大きな問題はほ とんどございませんで、患者さんに不利益があった、あるいは苦情を聞いたということ は、マスコミに対してはございません。ただ長期間大勢の方のために、部屋を作って、 そのために紛れ込む人等を管理するための警備等には、かなりの手間隙と費用がかかる ということで、それ以外には移植側のマスコミの問題はあまりこれというものはござい ませんでした。以上です。ありがとうございました。 〇黒川委員長  ありがとうございました。では引き続いて田中先生からよろしくお願いします。 〇田中委員  では肝臓移植の施設のものとして今の課題を報告いたします。2例行われまして、1 例は信州大学で、1例は京都大学で行いました。京大は小さな子への移植でして、現在 退院後の経過はよくて、すくすく元気に成長しているという状態でございます。この子 に関しては全肝、大人の肝臓を縮小して部分肝移植としましたので、その過程で残りの 大きな肝臓についても、役立つ方向で検討していただいたのですが、その際はルールが 決まってないということでありましたので、利用することができませんでした。  現在は分割移植のルールができましたので、その道が開かれたということで、大変に 喜んでおります。  移植施設の一つとして、現在の課題です。これは信州大学の川崎教授とも、肝臓側の 問題点ということで、おおよそ認識は一致しておりますので、本日はそのレジュメに書 きましたような6つの点について述べたいと思います。  一つは現状です。日本臓器移植ネットワークに登録した京大の患者さんは、52名いら っしゃいます。受けた人は1名でこの52名の方の18名、34.6%は生体肝移植に移行して おります。8人の方が14.5%の方が既にお亡くなりになってます。2名の方が何らかの 理由で登録から外れてまして、その結果23名の方、44.2%の方が現在登録して待ってま す。  登録された患者さん、すなわち脳死移植を希望された方のケアは、我々にとっては非 常に重要でありまして、この点が現在の課題になっています。定期的に紹介病院との医 師との間で情報交換をするわけですが、肝臓の場合も急激に悪くなることがありますの で、その病体の把握に努めています。  また患者さんならびにご家族と連絡を取ることは、コーディネーターを中心に行われ ているのですが、現在このコーディネーターは、悩みの数多くの相談を受けていますし また生体肝移植の約400 名の方をフォローアップしておりますので、現在は大変に過労 の状態になっております。その中で最近の一つの傾向としては、移植を希望して受ける 方で、移植に希望を託す思いが、少しずつ低下していることが気掛かりです。すなわち なかなかできないということについての思いが強くなっているようなことが、ちょっと 気掛かりなところであります。  次に初期連絡についてです。現在のところは第2回目の法的脳死移植後に、移植施設 に移植連絡が来るようになってます。肝移植では心臓移植と違いまして保存の許容時間 が長いので、この場合も十分に対応ができると常に体制を整えています。実際に私たち の1例目は九州からという遠方の地でしたが、十分に対応ができたと考えます。しかし ながら病院内の準備体制、それから移植を受ける人やその家族の連絡、その家族がどう いう方法で我々の施設まで来るか、それから来て患者さんへの説明、インフォームド・ コンセントを十分に取る時間をいただく。術前のいろいろな処置で多くのことが要求さ れるわけですが、こういうことの準備をしないといけませんので、これからは少しこう いう初期連絡について、将来積み重ねる中で検討していくことが必要であると考えてい ます。  次に臓器提供についてです。現在は脳死臓器提供者からの状態は刻々と変化します。 現在では日本臓器移植ネットワークによるレシピエント選定で、決定された患者さんを 登録した施設が中心となって、その上で日本移植学会支援体制の支援を得て、臓器摘出 が予定されています。こういうことですが、大阪のケースでは、信州大学が臓器摘出に あたったのですが、患者さんの状態がかなり刻々と変化して悪化の方向になりましたの で、急遽、移植施設の一つであります私たちの施設が距離が近かったので要請をうけて 臓器提供にあたりました。  このような協力体制についても、その近いところで臓器提供チームが編成されるとい うことも将来的には検討されてもいいのではないか。幸いに、移植施設の拡大というこ とが現在検討されておりますので、臓器移植の啓蒙、あるいは地方での活性という観点 からも、今後はこういう臓器摘出ということについても検討しないといけない。その中 で一つ問題になりましたのは、大阪のケースです。  実際には摘出したが、移植施設でさらに精査をしますと脂肪肝を含めいろいろな臓器 障害の問題で使えなかったという経過であります。こういう経過は肝臓の場合にはマー ジナルドナー、つまり移植に適するか適しないかというのは、非常に判断に迷うという ことは、欧米でもありますので、今後こういう事態は今後も予測されることと考えられ ます。  ネットとの関係ですが、臓器提供に対してネットからはよく連絡をきめ細かくいただ いておりますので、私たち移植施設としては、今後もこの方針で協調をお願いしたいい ところであります。  心臓とか肺と異なりまして、肝の保存許容時間が長いので、全てジェットを使うとい う方法ではなくて、肝臓に関しては少し公的交通機関の利用ということも考える必要が あるのではないかと考えております。と申しますのは、搬送費は全て受益者である患者 負担となりますので、それがそのままジェットのお金を含めて患者さんの方にいきます ので、むしろ公的交通機関を使った方が、患者負担を軽減できるという点ではいいので はないかと考えるところでございます。  次に5番目の問題は我々はこれでよいというふうに考えております。というのは日本 臓器移植ネットワークでは今支援体制ということで、多くの方のベストの医療というこ とで支援体制を引いているのですが、今後もこの体制は非常に重要であろうと考えてお ります。2施設ともこの点については一致いたしました。  次に報道機関との関係です。これは北村先生がおっしゃいましたように移植施設とし ては、それほど多くの問題はありません。我々の施設も大きな問題に至りませんでし た。と申しますのは、生体肝移植の実績がありますので、京大記者クラブとの間でしば しば肝移植についての一般的なことを説明する機会を得てますので、またいろいろな肝 移植をする実績を通じて記者クラブの方もかなりご存じです。ただ問題は、記者の方の 交代がしばしばおこりますので、その都度、新しいこととして捕らえる記者が多いの で、この点について、今後も我々は苦慮するところではないかと思います。  事務部の方の問題が大きくて、通常の業務以外に事務局部の過労が問題になるという ことは、北村先生のご指摘の通りでございます。  また、一部京大記者クラブに加盟してないメディアの方は勇み足ということもありま すが、総じて報道機関との移植施設の関係は、現状の状態で対応できるということであ ります。以上です。 〇黒川委員長  ありがとうございました。これについて実はですね、きょうはご案内に5時から7時 までと書いてありますので、先生方は勿論お忙しい方ばかりなので、7時過ぎでもうそ ろそろ終わりかと思っておられると思うのですが、スケジュールの内容としては、後は 一つの承認事項と、あとは報告事項がございますので、ちょっと時間オーバーのお許し を願って、せっかくの機会ですので質問、その他についてお願いします。  提供施設の方から移植施設に、移植施設から提供施設へ、どちらでも結構です。 〇西山先生  北村先生の指摘にもあったのですが、結局、患者さん自身が今脳死が確定していて、 その死亡診断書がネットワークの方にファックスで送られてから選定が始まって、そし てすぐに移植という形になりますね。非常に時間が短いわけです。移植側としてはね。 だから患者さん自身も、病院の中に入院しておいていただかないと非常に難しいという 形だと思うのですが、もう少し早く情報があった方がいいというようなことは、移植側 としてはどうなんでしょうか。 〇田中委員  それはその通りです。ただ実際はですね、かなり早い時期にメディアから流れるので す。最近でこそないのですが、初期の頃はもうぼくらがびっくりするくらい早い時期に 流れますので、実際に困ったことはないです。もし、きちんと判定が終わって流れた場 合には、少し対応としては遅れるのではないかとは考えます。 〇黒川委員長  確かに北村先生がおっしゃったように、今までずーとそうは思っていても、実際に出 たときのインフォームド・コンセント、決めるというのは、相当な大変なことだと思い ます。特に患者さんの家族にとってですね。 〇大庭先生  コーディネーターの菊地さんに伺いたいです。先程、ドナーカードの所有者は増えた が移植になっている症例が少ないというふうに伺ったのです。それは亡くなられた方と いう意味であったのでしょうか。 〇黒川委員長  実際にドナーカードがあったという報告がされましたということですね。 〇菊地委員  意思表示カードを所持されてお亡くなりになった方についてですが、実をいいますと そのカードの分析というのは前回の専門委員会で行いました。心臓停止後の連絡であり ますとか、そういう方が非常に多く移植に結びつかなかったということです。 〇大庭先生  脳死判定までに至らなかったという意味ですか。 〇菊地委員  そうです。 〇大庭先生  わかりました。 〇黒川委員長  実際はですね三分の一ぐらいが、結構ここには出ているのですが、自殺というのが四 分の一くらいあって、それがたまたま後で、そういうものがありましたという報告を受 けることが多いんです。それは一応はレジスターしているわけです。ただ実際には臓器 の提供にならないような状況の場合が多いんです。ですから実際にそういうのはカード の提示があって臓器の提供するかなという判断をしたのだが、という場合は少ないと思 います。  だから遺族からそういうものがあったのですがという話もあるわけで、一応はネット ワークとしては受けたものは全部レジスターしているということです。それがああいう 数字です。 〇大島委員  西山先生と大庭先生にお伺いしたいのです。今の話の続きです。あれだけ大騒ぎされ て、救急側のスタンスとしては、きちんと本人やご家族の意思を生かすということが極 めて重要であるということをご指摘されたわけですが、あれ以降どういう形で意思確認 をされているのか。向こうから提示された時だけに、はじめて対応するというのではな くて、入院された方は全てに対応されているのか、気持ちの上では二度とああいうこと は嫌だと思っているのかいかがでしょうか。 〇西山先生  ぼくらのところはあくまでも患者さん及び患者さんご家族の意思、それを尊重しよう と思ってますので、全ての患者さんについてカードを持ってますかという意思確認は行 っておりません。あれから、2例心停止下の腎提供を行っております。カードをもって いる方は2例出てきております。その場合も、心停止下の腎提供についても、我々がも うそろそろ話を切り出さないといけないかなと思っている矢先くらいに、向こうの方か らいってきます。ですから我々の方から言うということ、それを患者さんが受容しはじ めたときに考えるわけですが、その時点でこういうことがあった病院であるということ は、患者さんの家族はわかっていると思いますので、向こうの方から、先生こういうこ とはできますか、というふうに尋ねられたのが1例あります。  もう1例はカードを持っておりました。そして脳死状態でした。我々自身もこれは2 例目かなと感じたのです。ただし前提条件が満たされてなかったわけです。原疾患が確 実に診断されているということができませんでした。そのためにご家族に説明をして、 心停止下ならできるということで腎提供をされた方がおります。  我々自身としては、あれから変わったことといえば、月に一回勉強会を病院の中で定 期的に開いております。我々自身がそういうことをもっと知るという形でやっておりま すが、患者さんに全部にカードをもっていますかというようなことを聞くということは 我々の病院ではやっておりません。 〇大庭先生  我々の施設でも、入院したときにカードをもっているかどうかということを聞くこと はございません。私は脳外科医ですので脳死の患者さんは沢山引き受けて診ているわけ ですが、この法施行前にも、患者さんの側から、提供したいという申し出が何例があっ たというふうに聞いております。私も1例だけ経験したことがございます。こちらから 働きかけたことで向こうがOKしてくるということは、私は個人的な考え方としては、 ないのではないかと思います。やはりご本人及び家族の統一した提供の意思というのが なければ、このことは成立しえないし、こちらからお願いして、向こうがでは考えてみ ようか、ではお願いしますということはあり得ないと考えております。  したがって我々の施設としても確認もしておりません。向こうから提供の申し出があ ったときのみ、患者さんの意思に沿う形で努力しようというふうな同意は院内で行って おります。 〇大島委員  ネットワークの集計の中に百何十人、もう二百人に近いと思いますが、ドナーカード をもっていて、実際には提供につながらなかったという例がリストアップされていると 思います。その多くが黒川先生がご指摘されたように自殺とか、後で何らかの形で所持 品をきちんと調べざるを得なかったような状況とか、というような警察が何らかの形で 関与さぜるを得なかったような状況のときに、はじめて見つかるというような頻度が随 分高い感じがするのです。  実際には他の自殺とかではなく、亡くなる比率から考えれば、ドナーカードをもって いる人の頻度というのは恐らくもっと多いだろうと思います。するとそういう方たちが 実際にはいろいろな救急の現場の中で埋もれているという可能性というのは、かなり高 くあるのではないか。  西山先生がご指摘されたように、臓器提供の意思が尊重されることが大事だと、そこ がスタートで、勿論、法的には家族の意思も尊重されなければならないものですから、 そのステップというのは当然踏まないといけないわけですが、そのスタートの時点の、 本人の意思こそが大事であるというところが、何か非常に無視されているような状況と いうのがあるのではないかという感じがするのです。 〇西山先生  私はちょっと大庭先生とは違いまして、この2例、心停止下の腎提供を2例やってお りますが、そろそろこちらがお話を持ちかけても、つまり患者さんの家族が受容してか らお話するわけですが、そのようにしようかなと思っていると、先に言われておるのが 今の現状です。去年まで、私は心停止の腎提供はもう何例かやっております。その場合 は、患者さんのご家族が受容しはじめたなと思ったときに、私の方から言いだします。 こういうのも一つの手としてあるとね。  ただ私は移植医療というものは、提示しましたように、これは選択肢の幅が広がった ことの一つであると、決して向こうが言うべきことで、こっちが言いだすべきことでは ないということは全然思っておりません。ぼくは幅広い治療の中の一つであると。ただ 我々が臓器提供を行ってからは、案外、患者さんの方から言ってくれるのが早くなった なという印象をもっております。  私どもはこれはもう助からないというような状態になりましたら、患者さん自身がそ ういう気持ちをもっていたのかなというのを、家族が受容できたときに、僕は救急医と しても言うべきではないかと思っております。 〇小柳委員  北村先生が、ウェイティングの現場の雰囲気を伝えていただいたのは大変に意味があ ります。なかなかこの専門委員会ではそういうチャンスがなかったと思います。私ども の立場も代弁していただいたようなものでして、実際には3施設しかありませんので、 重症心不全というのは全国におりますので、かなり患者さんが散らばっている。そして 遠くからリファーされて準備が終わりますと、故郷に近いところでウェイティングに入 る。例えば私どものところも仙台にポンプを付けたのがいたり、埼玉にいたり、横市と か慶応などで患者さんを預かっていただいてるという現場でありますので、先程のネッ トワークから連絡があって1時間という時間は非常に厳しいことだと思っております。 これは将来もう少し初期情報が早く伝わらないと、とてもコーディネーションはできな い。はじめからそういう話題は出てましたが、かなり厳しく、ある時点が決められてお りますので、そこは大変に問題であると思っております。  臓器移植が法の施行後に約10例の渡航移植が既に心臓では行われておりました。一昨 日統計をしめましたが、今は48例になりましたが、それまでの法施行前の平均年齢は29 歳です。それでも若年層ですが、法施行後は10代になりまして、19歳前後ですね。それ で明らかに更に小児に増えはじめております。無力感というのが駆り立てていると思い ます。  それと、これは西山先生と大庭先生にはじめてお会いするので、是非伺いたかったの は、たくさんの摘出チームの医師、メディカルコンサルタントが先生方の病院に出入り されたと思うのですが、私どもも心臓は3施設ですので助け合っておりまして、私ども の教室員が行くこともあるわけです。そういう時に身分がはっきりしないのです。病院 長の権限を離れて施設を越えて、他の地域で働きますので、その辺をどのように感じら れたのか、たくさんの先生が出入りされたと思うのです。  将来は、身分をネットワークに臨時に移すとかの何らかの処置が必要だという感じが するのですが、これは法律の先生にも聞いてみたいし、ぜひこの委員会で議論していた だきたい適当な場所であるかと思っております。実際に現場ではいかがだったのでしょ うか。メディカルコンサルタント、あるいは摘出チームですね。 〇西山先生  私どもの病院の方に、阪大のチームその辺が来るのをネットワークの方が教えてくれ ました。ネットワークの方が今空港の方に着いたようですということです。ああもうそ ろそろ来るんだなというので我々は待っておりました。そして来られてネットワークの 方と、私とが会いまして、そして挨拶して、そして例えば心エコーをしてみたいという ようなことで、既に心エコーをやっているのだが、実際に自分たちの目で見たいと阪大 の先生方はおっしゃいますので、それではもう一回やりましょうということでエコーの 機械をもってきて、うちの循環器内科の者と阪大の移植のチームと一緒にやりました。  例えば肺のほうも、気管支ファイバーで実際に見たいということで、我々と一緒に気 管支ファイバーを、移植のチームの方が来てやりました。この点についてはネットワー クの方が、我々の方にちゃんと紹介してくれます。それから病院に入ったときにわかる ように印というのがあるのですが、それはちょっとほとんどわからなかったのですが、 どなたなのかというのはネットワークの方が紹介してくれましたので、その辺は我々と しては違和感は一切なしに、皆で協力してとにかくやろうというような形でできまし た。 〇谷川委員  一番はじめの肝臓の施設の問題です。これは実は昨年の12月16日に自主合同委員会で 肝臓移植のできるところを増やそうということで、一応許可を得ましたので、各地区で の移植のね。それで西山先生・大庭先生・北村先生、それぞれ非常に核心を突く問題点 を提供していただきました。先程大島先生がおっしゃったように、ドナーカードがたく さん提供されているわりに、ドナー提供が少ない。これは西山先生のお話を聞くと、勿 論、高知はどれだけがしりませんが、積極的に西山先生がやられるのであって、脳死か らの移植以外に2例の腎臓の移植をやられたということですね。したがって多少は積極 的にそういう施設が努力すれば、もうちょっと増える可能性がある。  もう一つは、大庭先生の気持ちがほとんど施設だと思うのです。できるだけ、できる ことならやりたくないということでございました。  この日本の脳死移植が外国と違って法律に基づいてやるということになってしまった のは、これは大きな医療学会での敗因でございます、これはそのようにスタートしたわ けですが、もしドナーの提供する施設にこういうことを少し変えたら、もう少し提供し やすい状況になるのではないかということがあれば、大庭先生はじめ教えていただけれ ばと思います。  というのは、あまり法律というか、例えば耳が片一方駄目なら脳死移植ができないと か、そういうことは他のことを見れば脳死の判定はできるのですね。ですから医者の裁 量権をもう少し増やしていただくとか、そういうことができれば、もうちょっとドナー の提供に繋がるのではないかと思います。 〇黒川委員長  きょうは先程いったように時間が押してしまって、このご意見はこれからの専門委員 会のこれからの議論の参考にさせていただきたいと思います。いろいろなご意見をいた だいて大変に参考になったと思います。基本的に感じるのは、提供施設側が数が多くて も、提供施設側は大庭先生や西山先生がおっしゃったように、本来の使命と違ったとこ ろの挫折感を乗り越えていく使命感というものがないとできないというのがひとつあり ますね。これはパブリックのサポートも大事です。  ところが移植の施設の方は使命感と、やっている目的は全く同じだということで、違 和感がないというミスマッチがあるというのがひとつだと思います。  ネットワークの方はもちろんいろいろなスタッフを充実したりするのですが、では財 政的な基盤をどうするのかということになると、実際の数が増えないのに、国から予算 を取るというのはジャスティファイしにくいという行政の立場もあるわけです。ではど うしたらいいのかという話になるのではないかと思います。  そうすると何でも行政にやれやれというのも、これもまた無責任な話であって、大島 先生がおっしゃったように、ではパブリックは何を考えているのかというのは大事なわ けです。パブリックがしてほしいというのであれば、そういう意見はどう出てくるのか それで予算ももっとつけなさいという話も出てくるかという政治行政というのは、あく までもパブリックの意見を反映するからね。するとマスコミも自分の意見とは関係なく これはうちの社の意見ではなくても、こういうことがありますという話には、もっと積 極的にかかわってもいいのではないかと、毎回いっているのですが、なかなかやってく れない。パブリックの意見の代表であると報道関係はいっているわけですから、ぜひそ ういう話はやってもらいたいと思います。  施設の充実、マンパワーの充実、医療費をどうするのかという話も、全体としてそれ だけが世の中ではありませんので、その辺の日本としてどうするのかというのが、大島 先生がおっしゃったように専門家がいくら言っても、パブリックがどう思うのかという ことで、あまりギャップがあるのも困るものだと思います。  実は先週、会議であったのですが、例えばいまから人間がどんどん飢えの問題で食料 の問題があるからゼネテックカリーモディファド(GM)のフードの話が必ずあって、 確かに人間にとってはいいことだということは皆が思うのです。では中長期的に地球全 体としてそれがいいのかという視点を、もうちょっと出してこないといけないのではな いかということを、イギリス政府の科学技術のチーフアドバイサーが来て講演したとき に、そういう話もでました。  その意味では、この専門委員会は恐らく移植を受ける患者さん方、それからドナーに なる人、もうちょっと一段上の視点でお互いにシェアする必要があるかなと思いまし た。  ところで毎年病院で亡くなる方は今は70万人くらいでしょうか。そう思いますが、そ のうちの7%がカードを持っているとすると、4万人くらいは亡くなっている人のうち でもっているはずです。そのうちに子供のお年寄りを除くと、60%ぐらいの人がドナー に適格な年齢かなと、簡単にやると2〜3万の人が実はドナーカードをもっていて亡く なっているという話があります。慢性疾患などで、勿論、脳死には大部分の人がならな いとしても、そういう話はあまり聞かないのかなという気はします。  さっき数字が6%くらいなら70万人が病院で死んでいるわけですので、それの割には 見えないのはなぜかという話で考えてみたらいいかなと思いました。  きょうは4人の先生方、田中先生は委員ですが、3人の先生方に来ていただきまして 本当にありがとうございました。これを参考にして、今後の議論を考えていきたいと思 っております。  先生方もしお時間かありましたら、残りは後は報告事項ですので聞いていただければ と思います。  では議題の2ということで、肝臓移植待機者レシピエントの選択基準の一部改正とい うことであります。これにつきましては専門委員会をいろいろやっていただいておりま す。藤原先生、埼玉医科大学の教授ですが作業班でやっておられますが、これについて 事務局から説明いただけると思います。 〇朝浦室長  資料に2に基づいてご説明をいたします。肝臓のレシピエント選択基準の一部改正に ついてということで、改正案と現行を並べております。  結論から申し上げます。胆道閉鎖症という肝臓移植の対象疾患を先天性肝・胆道疾患 というものに広げまして、胆道閉鎖症だけではなくて、先天性の肝・胆道疾患といわれ るものを全て含むという形にさせていただく。肝臓移植の適応患者の中で、現行のもの では救えないという患者さんがいらっしゃるということで、先天性肝・胆道疾患という ものを含めさせていただくということでございます。  それに伴いまして、若干の修文をしております。これは文言上の整理でございます。 先天性肝・胆道疾患というところを、先天性肝・胆道疾患及び先天性代謝異常症という ものに加えまして、緊急度を判断する際の考慮事項にするということでございます。  これにつきましては2月6日の作業班で専門家の先生方にお集まりいただきまして、 この決定事項でご了解いただきました。本専門委員会でご了承いただいたあと、厚生省 から臓器移植ネットワークのほうに通知しまて、選択基準として採用するという運びに なると思います。以上でございます。 〇黒川委員長  よろしいでしょうか。以前は胆道閉鎖症という極めて限定的な診断名がついておりま したが、それを先天性肝・胆道疾患というふうに極稀なそうでないものがありますので それを入れさせていただいたということであります。実際の緊急性については従来通り ということです。肝臓の方はこれでよろしいですね。実際、胆道閉鎖症以外の先天性の ものは極めて数が少ないですね。よろしいでしょうか。ありがとうございました。では このようにレシピエントの基準を改定させていただきます。  ではその他の報告事項が幾つかありますので、議事に従いまして事務局からお願いし ます。 〇朝浦室長  ではその他で報告事項です。まとめてご説明をさせていただきます。  (1)HLA型のリタイピングの実施について、参考資料の1でございます。腎臓のレシ ピエントの選択においてはグループ抗原の保有者とスプリット抗原の保有者の関係につ きまして、すでに厚生省が通知しているところですが、この通知との関係でまだリタイ ピングをしていないレシピエントの方については、早急にリタイピングをやっていただ きたいということと、一部のHLA型については、いろいろな点についてグループ抗原 とスプリット抗原を区別する実質的な理由がないと判断されまして、この部分について は同等と見なす取扱いにすることにいたしました。  この問題については専門委員会の下に作っておりますHLAの作業班においても議論 していただきまして、この取扱いにさせていただきたいということで、リタイピングに つきましては、今年の1月から3月にかけまして、再登録の時期に実施するということ で現在その作業をしている状況でございます。  (2)小腸移植について、参考資料の2です。昨年の12月24日に開かれました移植学会合 同委員会で、ここに記載しております9施設が小腸の移植実施施設として選定されまし て、これを受けまして臓器移植ネットワークの方が1月24日に小腸のあっせん業の許可 を受けまして、これから小腸の移植の患者さんが登録をすれば、臓器移植法に規定する 全ての臓器について移植を行うことが可能になるということでございます。  肝臓の移植実施施設につきましても、12月24日の合同委員会の議論の中で、現在の4 施設を見直していくということが確認されまして、現在それの作業をしているところで ございます。  (3)平成12年度予算案、参考資料の3です。来年度の政府の予算案の中で臓器移植対策 関係についての要点を書いたものでございます。臓器移植対策事業予算としましては、 2で書いてありますが4,200 万円の増です。全体で6.5 %の増でございます。主な事項 としましては、臓器移植ネットワークにコーディネーターの増員を図る、医療専門家を 配置する、カードを作成する、というものでございます。  (4)眼球提供者適応基準及び眼球のあっせんに関する技術指針について、参考資料4で す。これはこれまでご議論いただきました眼球の提供者の適応基準についての改正でご ざいます。強膜移植を眼球の摘出の利用として拡大することに伴いまして、強膜を含め た適応基準にしたものでございます。参考資料の5は、眼球のあっせんに関する技術指 針につきまして、これまでの議論を踏まえてまとめたものでございます。  (5)臓器提供意思表示カードについて、お手元に臓器提供意思表示カードの改定版をお 配りしておりますが、これもこれまで随分議論していただきましたが、脳死下での臓器 提供の際に、眼球という言葉はこれまでこの記載から抜けておりまして、なかなかご本 人の意思表示がわかりにくいという面がありましたので、ここに眼球という言葉を追加 させていただいております。  最後に、資料にはつけてございませんが、実は本日、一部の報道機関におきまして、 群馬のアイバンクにおきまして、C型肝炎に罹患された患者さんの角膜が、誤ってレシ ピエントに移植されたという報告の記事が出ておりました。厚生省としましても、昨日 そういう情報をいただきましたので、さっそく群馬の担当者の方とも話をしまして事実 の確認をしました。事実はその通りということでございますので、今後、近々に群馬の バンクのほうに出向いて、少し事情をお伺いしたいと考えておりますし、群馬県のアイ バンクだけではなく、他のアイバンクにおきましてもこれまで厚生省が示しているド ナーの適応基準等々、いろいろなものを再確認をしたいと思っております。  今アイバンク作業班でもいろいろなご議論がありますが、現在のアイバンクの活動に つきまして、もう少し幾つかの点で実態調査をしていく必要があるのかなと考えており ます。以上でございます。 〇黒川委員長  眞鍋委員から何かお伝えすることはありますか。 〇眞鍋委員  先程の群馬のことにつきまして、厚生省から通知がありましてびっくりしたところで す。感染症につきましては、厚生省の指導もありまして、やっと100 %安全なものがで きるということを、この間報告したばかりでしたが、そういう間違いがあったというこ とですので、これはまったく検査した者が取り違えてミスをしたという、うっかりミス だと思いますが、その辺は十分に注意して、そういうことがないようにしたいと思いま す。 〇黒川委員長  新聞の記事だけだと、どうしてそういうことが起こるのかわからないところもありま すので、事務局で事実を調べてくださるということであります。  きょうは本当に3人の先生方にも来ていただいて、この間の調査の結果を伺ったわけ です。  改めて確認したのは、移植医療は、技術としては医療としては定着している。極めて 完成度は高いというのは北村先生の話からも再確認されたわけです。といって実際に、 ドナーという他の方が死んだ場合ということを前提にしているというところに、実際の 救急の現場にかかわるお医者さんの使命感というのがどういうふうに動いていくのかと いうのは、お医者さんだけではなくて、一般の人達のものが大事かなということを再確 認したような気がします。  もう一つは今度1月に出たネットワークのパブリケーションのトランスプラントとい う雑誌を見ていただくとわかると思うのですが、欧米の国のドナーカードのオプティン グインとしているところと、オプティングアウトしている各国の、移植の数の統計が出 ています。もちろん日本は移植が少ないわけです。  スペインが急速に延びているのは、スペインの場合には国もかなりエンカレッジして 救急の患者さんが来たときに、この人はドナーカードに臓器をあげないといってない人 を、積極的にまずスクリーニングしてしまおうということを、病院に人間を配置してお りますので、それから急に延びたのです。  この人はもしかしたら脳死になるかもしれないということを、予め病院でモニターし ながら積極的にフォローするというのは、日本の今の状況で好ましいのかというのは、 これはかなりスペインに特徴的な状況ですから、すぐに真似する必要はない。実際にそ れを見ていただくとわかりますが、日本以外は全部キリスト教の国ですから、神と人間 の契約という宗教的な基本的な文化がある。アジアの国でも移植はされておりますが、 ある程度病院とか移植の技術とか、いろいろなことが進んでいる国での比較というので は、それなりに参考になるかなと思いました。  しかし移植の施設は、今度は小腸についても、膵臓、腎もそうですが、増えてきて大 丈夫かなということは思うところもあるかもしれません。  しかし肝臓・心臓もそうですが、特に肝臓の場合は、やる方が摘出も移植もオールジ ャパンの方がボランタリーに参加されましたから、施設が増えても、しばらくの間は量 的な経験という実体験からいけば、当然オールジャパンのボランタリーな救援体制は必 要だろうと思います。  そういうことはさらに保障されてきている雰囲気がありますので、そういうことから いうと、谷川先生がおっしゃったような、患者さんとの距離とか、いろいな不便を考え れば、施設を少し拡大していくということはあっても、それについてはオールジャパン でボランタリーにドクターが参加するというのが、書く必要はないのですが、必須の条 件になってくるのではないかと思います。またなってくる兆しが見えているというのは 恐らく20年前の移植とは、少し様変わりしているということが予感されるのではないか と思って、きょうの3人の先生方のお話を聞かせていただきました。  また引き続きいろいろな先生に伺い、検討をさせていただきますが、きょうは遠いと ころからありがとうございました。皆様にはまた時間が過ぎてしまって申し訳ありませ んでした。                                    −終了− 問い合わせ先  厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室    担 当  山本(内2361)、木村(内2364)    電 話 (代)03−3503−1711