00/02/04 第22回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事録 第22回厚生科学審議会先端医療技術評価部会議事次第 1.日  時:平成12年2月4日 (金)  14:00〜16:00 2.場 所:中央合同庁舎第5号館  共用第9会議室 3.出席委員:高久史麿部会長        (委員:五十音順:敬称略)    軽部征夫 木村利人 柴田鐵治 竹田美文 寺田雅昭        (専門委員:五十音順:敬称略)            雨宮 浩 入村達郎 小澤えい二郎 金城清子 松田一郎 4.意見参考人:遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究における生命倫理問 題に関する調査研究検討委員会 より            座長 国立がんセンター中央病院長   垣 添  忠 生     委員 京都大学大学院法学研究科教授  位 田  隆 一            委員 国立がんセンター研究所副所長  山 口   建 5.議  事:(1)審議事項          遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針について        (2)報告事項          1)厚生科学審議会先端医療技術評価部会ヒト組織の移植等への利用の 在り方に関する専門委員会からの報告について          2)財団法人癌研究会附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(乳が ん)の説明と同意書の変更について          3)東京大学医科学研究所附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(腎 がん)の変更について          4)米国ペンシルバニア大学研究所の遺伝子治療臨床研究(OTC欠損 症)における死亡に対する米国FDAの対応について          5)「遺伝子治療臨床研究に関する指針(抄)」(平成6年2月8日厚 生省告示第23号) の一部改正について          6)その他 6.配付資料:  1)「遺伝子解析による疾病対策創薬等に関する研究における生命倫理 問題に関する調査研究」遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対 応するための指針(平成11年度厚生科学研究費補助金厚生科学特別 研究事業) 中間報告書    2)ミレニアムプロジェクト (新しい千年紀プロジェクト) について (平成11年12月19日内閣総理大臣決定) バイオミレニアム関連部分 抜粋          3)「遺伝子解析研究に付随する生命倫理に対応するための指針(案) 」に関する意見の公募について      4)「ヒト組織の移植等への利用のあり方について」 (主な論点)        5)財団法人癌研究会附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画 (乳が ん) の説明と同意書の変更について          6)東京大学医科学研究所附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(腎 がん) 変更報告書          7)米国ペンシルバニア大学研究所の遺伝子治療臨床研究(OTC欠損 症)における死亡に対する米国FDAの対応について        8)「遺伝子治療臨床研究に関する指針(抄) 」(平成6年2月8日厚 生省告示第23号) の一部改正について 7.参考資料:  1)生命倫理ガイドラインの検討経緯と今後の予定          2)「遺伝子解析による疾病対策創薬等に関する研究」に関する意見及 び要望書 ○事務局  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第22回厚生科学審議会先端医療技術 評価部会を開催させていただきます。  本日は、加藤委員、廣井委員、曽野委員が御欠席でございます。 また、本日は、「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究における生命倫理 問題」を議題としておりますことから、参考人として、主任研究者で国立がんセンター 中央病院の垣添忠生先生、京都大学大学院法学研究科教授でユネスコ国際生命倫理委員 会委員長でもあられる位田隆一先生、国立がんセンター研究所副所長の山口建先生、御 3名にお越しいただいております。 (資料の説明と確認)  開会に先立ちまして、科学技術担当審議官の堺から御挨拶申し上げます。 ○堺審議官  科学技術担当審議官の堺でございます。本日は、お忙しいところ、御参集いただきま してありがとうございました。  御案内のとおり、生命倫理に関しましては、これまで遺伝子治療臨床研究、あるいは 生殖医療問題などにつきまして、当部会、それからこの部会の下のヒト組織の移植等へ の利用の在り方に関する専門委員会において検討を進めていただいているところでござ います。前回の部会におきまして御報告させていただきましたとおり、厚生省のミレニ アム・プロジェクトとして、来年度からヒトゲノムの塩基配列の解析及びそれを利用し た個人の遺伝子構造の違いを調べる研究を推進いたします。その際、特定の疾患をもっ た人を含む多くの人々から試料の提供を受けるということになる訳でございまして、試 料提供者の個人情報の保護、確実なインフォームド・コンセントなどの人権の保護など について検討する必要が生じている訳でございます。そこで、倫理的観点から、研究者 が遵守すべき事項につきまして、「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究に おける生命倫理問題に関する調査研究」におきまして検討がされてまいりました。この たび、概ね検討がまとまったというところでございまして、部会としての御審議をお願 いしたいというふうに思います。そして、できますれば今年度内に一定の部会としての 見解を取りまとめていただきたいというふうに考えております。  また、調査研究における報告書策定に当たりましては、14名の委員のほか、遺伝子解 析研究の現場の研究者、それから法律・倫理の研究者による約40名の作業委員によって 検討されたものでございますが、更に広く一般の方々をはじめ、研究者から意見を募集 しまして、次回の3月17日の部会以降の審議の参考資料にいたしたいというふうにも考 えております。各委員の皆様方におかれましては、どうぞ専門的な見地から活発な御議 論をよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。 ○事務局 それでは、部会長、よろしくお願いいたします。 ○高久部会長 ただいまから先端医療技術評価部会を開かせていただきます。 部会の皆様方には、今年お会いするのはこれが最初だと思います。遅くなりましたが 本年もよろしくお願いします。 本日の最初の審議事項であります「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応する ための指針」については、ここにいらっしゃいます垣添先生が委員長になられ調査検討 委員会が昨年の11月に発足し、非常に精力的に検討をしていただきました。その結果が 資料1にまとめられています。御出席の3人の先生から御説明をいただきたいと思いま す。まず最初に、垣添先生から調査検討委員会の経緯と総括的な御説明をよろしくお願 いいたします。 ○国立がんセンター中央病院 垣添院長  国立がんセンターの垣添でございます。どうぞよろしくお願いします。  それでは、私の方から総括的な事項を御報告させていただきたいと思います。  今、堺審議官の方からも御紹介がありましたように、平成12年の4月から内閣総理大 臣決定のミレニアム・プロジェクトが開始されます。その一環としまして、遺伝子解析 による疾病対策・創薬等に関する研究が進められる訳でありますが、御承知のように、 遺伝子解析研究には倫理的・法的・社会的問題を惹起する可能性があります。したがい まして、厚生省としてミレニアム・プロジェクトを推進する上で、研究者が遵守すべき 指針が必要であるということで、その取りまとめが私どもに要請された訳であります。  今、この検討委員会は14名で、私が委員長を務めさせていただきましたが、国立高度 専門医療センターや国立試験研究機関の長、あるいは生命倫理に関する有識者等合わせ て14名にお集まりいただきまして取りまとめたものが、今、資料1としてお手元に配付 されているものであります。この取りまとめに当たりましては、作業委員会36名の現場 の研究者、あるいは法律や倫理に詳しい方がお集まりいただきまして、国立がんセン ター研究所の山口建副所長が委員長で、非常に精力的な取りまとめをしていただきまし た。それで、具体的な指針が起草された訳であります。 まとめられました指針に関しましては、ポイントとしては大きく3つあります。  1つは、インフォームド・コンセントということでありまして、これは、御承知のよ うに、自由意思に基づいてなされるヒト由来試料等の提供の同意ということであります が、インフォームド・コンセントを取得するに際しての非常に細かな取り決めがこの中 に盛られております。  2番目に、倫理審査委員会の重要性であります。遺伝子解析の研究を進めるに当たっ て、研究計画の倫理性、あるいは科学性を審査委員会で審議するということになります が、その構成としまして半数以上は外部の者を加えるということで、その外部の方の半 数以上は、更に倫理を審査するに必要な識見を有する専門家、あるいは提供者の人権保 護について広く一般の人々の意見を反映できる方というふうな取り決めをしておりま す。  3番目に、遺伝カウンセリングの重要性であります。提供者またはその家族が抱える 遺伝子解析研究や遺伝性疾患に関する悩みや不安を解消できるように援助・支援すると いうことがポイントでありますが、このように、この指針に関しましては、インフォー ムド・コンセント、倫理審査委員会、遺伝カウンセリングの3点を非常に重視して取り まとめてあります。  中身にもう少し触れますと、ヒトに由来する試料等の提供者を4つの群に分けており ます。第一群というのは、遺伝素因の関与が非常に明らかな方々。第二群は、遺伝素因 が明らかでない、あるいは重篤な薬剤反応異常性などを伴う方などもここに含めており ます。第三群は、疫学調査など、いわゆるコーホートスタディなどに協力する方です。 第四群は、集団検診などに加わっている方でインフォームド・コンセントをいただいた 方から試料を提供していただく。こういう4群に分けております。  もう1つ、提供される試料でありますが、その試料も3つの群に分けました。A群 は、採取をするときに遺伝子解析研究に使われるということが明示されている試料で す。B群は、医学の研究に使用されますといった一般的な同意が得られているような試 料です。C群は研究利用に関わる同意が得られていないサンプルということになります が、このA、B、Cの3群に分けております。  それから、研究者が法令、指針、あるいは研究計画に反して遺伝子解析を行った場合 には、研究費の返還義務が求められる。それから、もし提供者に身体的、精神的、ある いは財産的な損害を与えた場合には、民事上あるいは刑事上の責任を負う可能性がある ということもうたっております。  それから、個人識別情報管理者というのを設けました。これは、個人識別情報が外部 に漏れないように管理して、匿名化して取り扱うということを担当する方であります。  それから、痴呆とか、あるいは未成年者から試料提供を受ける場合には、代わって承 諾をする代諾者を規定しております。  それともう1点、研究機関の長は、定期的に研究責任者に報告を求めるということに しております。これは、外部の方にその役割をお願いして、1年に1回以上、計画書ど おり研究が進められているかどうかということを実地調査して報告をする。その結果、 場合によると研究の差し止めということもあり得るということがうたわれております。  概略は今申し上げましたような経緯と内容でありますが、この報告書は昨年11月から 今年の1月にかけて前後4回の検討委員会と作業委員会における多数のメールでのやり とりの意見を取りまとめたものであります。このまとまりました報告書は厚生科学課に 提出いたしまして、厚生科学課の中で更にもみ、あるいはアドバイスをいただきまし た。したがいまして、本日、質問等の一部には事務局として厚生科学課からお答えいた だく場合もあるということを御了解いただきたいと思います。  今、私が申し上げましたガイドラインのもう少し細部にわたった部分に関しまして は、このガイドラインを起草するに最も貢献した国立がんセンター研究所副所長の山口 建委員の方から御報告するようにいたしまして、あと、倫理的な面、その他補足するこ とがありましたら、位田委員の方から御報告いただければというふうに思います。よろ しくお願いします。 ○高久部会長  それでは、山口先生、よろしくお願いします。 ○国立がんセンター研究所 山口副所長  着席のまま説明いたします。資料1の中間報告書に沿って説明をさせていただきま す。  2ページ目に検討委員会の諸先生のお名前、その次のページに作業委員会でこの案を つくるに当たって一緒に作業をした先生方のお名前が記載されています。  このガイドラインは、目次の部分に書いてありますとおり、大きく8項目に分けて書 かれています。「はじめに」という部分、それから「基本方針」、「用語の定義」、 「研究及び審査の体制」、「ヒト由来試料等提供者のインフォームド・コンセント」、 「既採取ヒト由来試料等の研究利用」、それから「ヒト由来試料等の保存及び廃棄の方 法」、最後に「遺伝カウンセリングの体制」、この大きく分けた8項目であります。以 下、中身について説明を加えさせていただきます。  最初の「はじめに」という部分では、まず、このガイドラインの対象となる、厚生省 で行われるミレニアム・プロジェクト研究の2つの大きなテーマを述べています。1つ は疾病の予防・早期発見・早期治療に関すること、もう1つは薬剤の開発に関すること であります。そういう研究が「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究」とし て行われますが、このガイドラインはこの研究に向けて作成されたものであるというこ とを記載してございます。  その次に、こういう遺伝子解析研究で留意しなければいけない点を書かせていただい ております。大きく2つございまして、こういう研究が一部において未来の疾病を今元 気な方に予測してしまうこと。もう1つは、ある方について解析した結果が、その血縁 者にも影響が大きく及ぶ可能性があること。この2点であります。その結果として、さ まざまな倫理的・法的・社会的問題が招かれる可能性があるので、被験者の尊厳、人 権、更には利益を保護することが重要である。それがガイドラインの大きな趣旨である ということを書いてあります。ただ、今回のミレニアム・プロジェクトでこういう状況 が起こり得る方は、数としては非常に少ないと考えられます。しかし、やはりそういう 可能性がある以上、ガイドラインとしては、たとえ数は少ないにしても、そういう方を 非常に強く念頭に置いて作成してきたところであります。  それから、このガイドラインが作成された背景がその後に書かれてございます。大き い目次の2番目の基本方針の部分であります。この基本方針においては、2つの点を考 慮いたしました。1つは、当然のことながら、研究に協力してくださる方々、あるいは その家族の立場に立ってガイドラインを作成しようと努力をした点であります。もう1 つは、こういうガイドラインを利用する方は、非常に研究に長けた方のみならず、例え ば採血をされる方とか、いろいろな方がこの研究に関わってきます。このガイドライン がそういう方にも十分に理解していただけるよう、さらには、本当にガイドラインを守 っているのかどうかを確認できるよう、可能な限り具体的にガイドラインを書くよう心 がけました。そういう考えの中で、まず基本方針として6点を最初に掲げました。  まず、(2−1)では、先ほどお話のありましたインフォームド・コンセントに関わ る事項を記載してございます。(2−2)では、倫理審査委員会の役割を大変重要視し ております。更に、従来の倫理審査委員会から一歩出たような形になりますが、その実 施状況を外部の有識者によって実地に調査をするという1項も加えられております。( 2−3)では、研究を行う方々の役割として、この指針を含めて、法令・研究計画を遵 守するということを、提供者や家族の人権保護を考えながら行うことが書かれておりま す。(2−4)では、既に採取された試料の研究利用についての指針を書き込みまし た。(2−5)では、遺伝カウンセリング体制について、その重要性を指摘し、(2− 6)で研究を行う者が、協力者、試料を提供してくださった方や社会に説明責任を持っ ているということをうたってございます。  大きな目次の3番目「用語の定義」であります。「用語の定義」では、このガイドラ インの中で特殊な使い方をしているもの、あるいは、このガイドラインでその概念を規 定したもの等々を中心に、20項目について書かせていただきました。主なものを拾って 簡単に御説明いたします。  (3−1)においては、今回規定している「ヒト由来試料等」の定義を書かせていた だきました。そういう試料とともに、診療情報も付随して考えているという点が重要な ポイントであります。一方、例えば培養細胞でHela細胞とか、そういう有名な細胞 がございますが、それを一律にヒト由来試料等として扱いますと、それをすべて倫理審 査委員会にかけなければならないという大変ぐあいの悪いことが起きますので、そうい うものについてはヒト由来試料等には含めないということをただし書きで入れさせてい ただきました。その次、(3−4)で「遺伝子解析研究」を定義してあります。特に、 提供者に危険・不利益が及ぶということを強く念頭に置いて、その重さ軽さを考慮しな がら、あるいは、ほとんど危険・不利益を与えないというようなものも含めて、遺伝子 発現解析研究、体細胞遺伝子解析研究、それから生殖細胞系列遺伝子解析研究、この3 つに大きく研究を分類いたしました。最後の生殖細胞系列遺伝子解析研究が、先ほど来 お話のあります倫理的・法的・社会的問題を引き起こす可能性が最も高いものでありま すので、これについてガイドラインの中では特に注意をするよう心がけております。そ れから(3−7)において、「個人識別情報管理者」というものを定義しております。 試料を採取する機関において、個人識別情報を含む情報を管理し、匿名化を行う者とい うふうに考えております。  それから、先ほどもお話がございましたが、(3−17) において提供者を一群から四 群まで分類させていただきました。繰り返しになりますが、第一群では遺伝素因の関与 が明らかな、遺伝性疾患や重篤な薬剤反応性異常等を有する被験者を想定しています。 この群では、遺伝子解析研究の結果が、その方の健康状態の評価や、あるいは疾病の予 防、診断、治療方針に大きく影響します。第二群は、一般のさまざまな疾患、例えば高 血圧、がん、痴呆等々を指しております。今回のプロジェクト研究の最も大きな対象は この第二群と思われますが、現時点では遺伝素因等々は余り考えられていない被験者で す。第三群は、疫学研究に自発的に参加・協力する方を言います。第四群は、集団検診 等の健康診断受診者、あるいは健常者としてこの研究に協力していただき、疾病のデー タを理解するための基礎データとなっていただくような方々です。  (3−18) で、既に採取され、研究機関に保存されている試料について、A群、B 群、C群と分けさせていただきました。戻りますが、一群から四群の方はあくまでも被 験者で、このプロジェクト研究が始まった後にインフォームド・コンセントを得て試料 をいただく方ですが、今申し上げている(3−18) は既にサンプルが存在している場合 であります。この場合、採取をした時点でどのようなインフォームド・コンセントが得 られているかによって群分けし、それを研究計画の中で明らかにし、倫理審査委員会で その利用に関しては可否を判断していただくということを基本姿勢として書いてござい ます。 以上で用語の説明を終わらせていただきまして、次に大きな項目の4番で「研究及び 審査の体制」について説明させていただきます。ここでは大きく5つのテーマについて 書かれておりますが、機関の長、研究の責任者、実際に研究を担当する研究者の方々、 個人識別情報の管理者、倫理審査委員会、この5つの重要な部分について、その責務を 中心に書いてございます。  まず、(4−1)で「研究実施機関の長の責務」という項目がございます。この中で 10項目書かせていただいております。まず(4−1−1)でありますけれども、研究実 施機関の長は、遺伝子解析研究が倫理的・法的・社会的問題を引き起こし得ることを周 知徹底せしめる必要があること。2番目に、それに違反した場合、処分の対象になり得 ることを周知徹底せしめること。3番目に、倫理審査委員会を設置すること。4番目 に、さまざまな場面で倫理審査委員会の意見を聞くこと。それから、5番目と6番目 が、民間との共同研究あるいは研究委託を行う場合の規定、7番目がその研究が適正に 行われているか、チェックする必要性で、例えば実施状況について研究責任者から報告 を得ること。更には、外部の者を調査担当者に指名して実地調査をさせること等が書か れております。必要な場合には改善の勧告、中止または研究計画の変更を命じることも 責務に入っております。8番目は、苦情等々が提供者から出た場合、適切な処理を行う こと。9番目は個人識別情報管理者を置くこと。10番目は遺伝カウンセリングを行う体 制を整備すること。以上、10項目が機関の長の責務として書かれてございます。 次に、(4−2)に「研究責任者の責務」が5項目にわたって記載されております。 (4−2−1)で、研究責任者が、法令、このガイドライン、更には研究計画を遵守す ること。それから、(4−2−2)で処分、これには研究費の返還義務、職務上の処 分、更には民事上または刑事上の責任を負う、こういった処分を受ける可能性があると いうことを責務として知る必要があります。3番目には、研究計画書を作成することが 大変大事な研究責任者の責務でありますけれども、(4−2−3)では、更に枝で、14 項目について研究計画書の中に盛られるべき事項をまとめて書かせていただいておりま す。その詳細はここでは省略させていただきます。それから、(4−2−4)において は、研究責任者がその研究を実施している状況を報告する義務があること。それから、 (4−2−5)において、インフォームド・コンセントの手続きに関して、実際にそれ を行う担当者に周知徹底せしめることを書いてございます。  次に(4−3)では、研究責任者を含め、その研究に従事する人々の責務を4項目、 それから外部の調査担当者について1項目をまとめて書きました。(4−3−1)は、 問題が発生したとき、研究に従事している人々は機関の長及び研究責任者に報告してそ の対処方法について判断を仰ぐこと。(4−3−2)は、ヒト由来試料等を外部に出す 場合には匿名化して、提供しなければならないこと。例外規定が若干付いております。 それから(4−3−3)に、外部調査に対しては協力をすること。(4−3−4)は、 法令、ガイドライン、研究計画、あるいは研究責任者の指示等に反した場合の処分。( 4−3−5)には、調査担当者の守秘義務、そういうものを記載してございます。  次に「個人識別情報管理者の責務」でありますけれども、まず最初に、その資格とし て2点を掲げてあります。(4−4−1)には、刑法によって業務上知り得た秘密の漏 示を禁じられている資格者として医師ないしは薬剤師等がございますが、そういう方を 充てることが必要であるということと、実際にプロジェクト研究を担当してない者を個 人識別情報管理者に充てるという点が書かれてございます。(4−4−2)では、所属 外の研究機関に試料を出す場合、匿名化を行うこと。(4−4−3)では、試料を外部 に提供するとき匿名化により除かれた個人識別情報を提供する場合の種々の規定、そう いうものが書かれております。(4−4−4)は、実地調査に協力すること。その時点 では情報を開示することが可能であること。それから(4−4−5)で、情報の厳重な 管理が必要であること。その5点についてここでは記載してございます。  次に、(4−5)において「倫理審査委員会の責務及び構成」が書かれてございま す。その責務としては、(4−5−1−1)で倫理的観点を中心に、科学的観点も含め て厳格に審査をし、文書により意見を述べる、このように書かれてございます。倫理 面、科学的観点、両者が記載されています。(4−5−1−2)に、運営方法等に関す る規則を定めて、それを公開することという規定を定めました。それから(4−5− 1−3)に、意見を求められた場合に、倫理審査委員会として意見を述べること。 (4−5−1−4)に、議事要旨を公開すること。(4−5−1−5)に、委員は守秘 義務を負っていること。この5点が責務として掲げられ、また、(4−5−2)におい て倫理審査委員会の構成が記載されておりますが、まず(4−5−2−1)に、倫理的 及び科学的事項を総合的に審査するのに必要な優れた識見を有する専門家と、一般の人 々の意見を反映できると考えられる方々、こういう方で委員会を構成することを記載し ました。更に(4−5−2−2)では、委員の半数以上を外部の方にする。外部の方の 更に半数を倫理的事項を審査するのに必要な優れた識見を有する専門家か、あるいは一 般の人々の意見を反映できる方、したがって、全員の4分の1程度は、そういう方を含 めてくださいという趣旨であります。それから(4−5−2−3)に、研究を行う者は その審議・採決には参加できないこと、(4−5−2−4)に、外部の委員が1名以上 出席しないと会議は成り立たないということも書かせていただきました。  大きい項目の5番目はインフォームド・コンセントに関わることであります。(5− 1−1)で被験者への説明事項を書いてございますが、17項目をインフォームド・コン セントで述べるべき項目として記載をさせていただいております。時間の関係で詳細は 省かせていただきます。それから、(5−1−2)において、遺伝カウンセリングの部 門の協力という部分がございます。(5−1−3)で、被験者が、年少者あるいは痴呆 等で有効なインフォームド・コンセントを与えることができない場合の代諾についての 規定を掲げてございます。特に未成年者の場合、いろいろ議論がございましたが、原則 として代諾者がインフォームド・コンセントを与える。ただし、未成年者に対しても十 分な説明を行う。更に、16歳という年齢で一応分けまして、16歳以上の方に対しては、 代諾者がインフォームド・コンセントを与え、同時に、本人もインフォームド・コンセ ントを与えた場合にのみ研究に提供していただく。16歳未満の場合は代諾者の可否で構 わないが、その場合でも、なおかつ可能な限り本人に説明を行い、同意を得るよう努力 をするということが書かれてございます。(5−1−3−3)は代諾者の選定。(5− 1−3−4)は、もしその代諾者が提供者と血縁関係を有し、その検査等々によって不 安を抱くような場合の配慮が記載されてございます。  次に、(5−2)で「インフォームド・コンセントに係る一連の具体的な手続き等」 を書かせていただきました。ここで、先ほどから分けられている一群から四群までが出 てまいります。こういう方からインフォームド・コンセントの手続きを行う場合、本日 は添付してございませんが、本ガイドラインが完成した暁に、それに沿った形で実例を 3つほどつくろうということで現在進んでおります。それは、インフォームド・コンセ ントがなされる場合の説明者が十分理解しておく文書、それから被験者にお示しする説 明文書、それから同意文書、それらを3点セットと呼んでおりますが、それを作成し、 それを例として研究責任者が個々の研究に応じた同じような文書を作成し、研究者でそ れを理解し合い、患者さん、あるいは被験者に説明をし同意をいただく、そういう仕組 みで考えております。(5−2−1)で、一群の場合は必要に応じて遺伝カウンセリン グを行うことを明記いたしました。また、解析結果の開示が特に一群の場合は問題にな ります。この点に関しましては、提供者あるいは代諾者が求めた場合、更にその意思を 十分確認した上で、結果を医師により開示をするという形にいたしました。一方、求め はないが、血縁者に対する開示が医療上適当と認められると医療者側が判断した場合 は、倫理審査委員会の意見に従って、研究実施機関の長が最終的にはその対応を決定す るという文案にいたしました。第一群については、危険等々が考えられますので、そう いう厳しい対応となっております。二群は遺伝が明らかではない一般の疾病の群、第三 群が疫学研究、第四群が集団検診あるいは健常者でありますけれども、この3つの群に ついても、それぞれ先ほどの3点セットを例示をして、それに沿って個々の研究に特化 した3点セットを改めてつくっていただき、倫理審査委員会に承認を得ていただく。そ のような形で進めるよう、ここでは記載をさせていただきました。  大きな項目の6番目でありますけれども、「既採取ヒト由来試料等の研究利用」とい う項目であります。これは、各研究機関で過去何年も前から、多くの場合、それぞれの 研究としてインフォームド・コンセントを得て研究を続けてきたような試料がございま す。そういう試料の使用に当たっての留意事項という形で、A群、B群、C群に分けて 書かせていただいております。  A群は、遺伝子解析研究を行わさせていただくという同意をいただいたもので、この 場合、最終的には倫理審査委員会の審査が必要ですが、原則として同意の範囲内でその 試料を使うことができるといたしました。  B群というのは、医学研究に用いるという非常に広い同意は得られているものの、 「遺伝子解析研究」としての同意は得られていない場合であります。こういう場合に は、可能な限り同意を再取得するということがまず原則となっておりますが、危険等々 がほとんど考えられない遺伝子発現解析研究及び体細胞遺伝子解析研究については、こ のB群試料についても同意の範囲内で研究に利用できるといたしました。一方、最も問 題が生じ得る生殖細胞系列の遺伝子解析研究については、同意の再取得が得られない場 合、以下の2つの条件のいずれかが満たされた場合にのみ利用できることにいたしまし た。その1点は、匿名化の中でも最も御本人に到達できない連結不可能匿名化がなされ た試料である場合であります。2番目に、倫理審査委員会の承認を要しますが、危険・ 不利益が及ぶ可能性が極めて小さく、研究に高度の有用性が認められ、ほかの方法では 実際上研究の実施が不可能または極めて困難である。この3点をすべて満たしていると いうことを倫理審査委員会が確認した場合、B群の試料も生殖細胞系列遺伝子解析研究 に利用できるという形で記載してございます。  一方、C群というのは、研究に利用するというインフォームド・コンセントも含め、 一切そういうものが得られていない場合であります。この場合は、同意の再取得がない 限りは原則として研究には利用できないということをまず掲げております。ただ、非常 に厳しい幾つかの条件を満たした場合には、遺伝子解析研究に利用できるといたしまし た。まず、連結不可能匿名化がなされている場合。2番目に、危険・不利益の及ぶ可能 性が極めて少ないこと。それから、社会の利益に大きく貢献すること。それから、ほか の方法ではその研究がなし得ないこと。更に、情報の公開を図り、実際にそういうサン プルを提供した可能性のある方が問い合わせることができたり、あるいは拒否の機会を 何とか保障できる、そういうアクションをとった上で、そういうサンプルを遺伝子解析 に利用できる、そのようにまとめてございます。  7番目の大きな項目は、そういう試料の保存及び廃棄の方法を4項目にまとめまし た。(7−1)で保存をする場合の規定。(7−2)に、そういう試料を細胞・遺伝子 あるいは組織バンクに寄託する場合の注意事項。(7−3)に、そのバンクから他の研 究者に提供するときの条件。これは連結不可能匿名化が必須であるということを書いて ございます。それから(7−4)に、保存期間が研究計画書に定めた期間を過ぎた場合 には、匿名化の上、廃棄しなければならないという1項を書いてございます。  最後の大きな項目ですが、「遺伝カウンセリングの体制」について8番目に書かせて いただいております。まず、遺伝カウンセリング部門の業務として、(8−1)に掲げ たとおりであると考えます。それから、(8−2)の部門構成ですけれども、遺伝カウ ンセリング部門は、遺伝学に関する十分な知識・技能を有し、遺伝カウンセリングに習 熟した医師、医療従事者等により構成されなければならないというふうにいたしまし た。ただ、共同研究機関も含めて、すべての実施機関の中には非常に小さい機関が含ま れる可能性がございます。そういうところが遺伝カウンセリング部門を持てるかどうか という点がございまして、(8−3)には、遺伝カウンセリング部門が整備されていな い試料等採取機関においては、遺伝カウンセリングの求めが提供者や家族からあった場 合は、適切な施設を紹介する等の対応を必ずしてください、そういうことを書いてござ います。  以上、このガイドラインの趣旨を8つの項目について縷々説明させていただきまし た。以上でございます。 ○高久部会長  詳細な説明、どうもありがとうございました。位田先生、何か御追加ございましょう か。 ○京都大学大学院法学研究科  位田教授 京都大学の位田でございます。先ほど御紹介がありましたが、96年からユ ネスコの国際生命倫理委員会の委員をしておりまして、98年の末から委員長を仰せつか っております。国際的な状況も含めて、ごく簡単に説明をせよということで伺っており ます。もう時間も大分過ぎておりますので、ごく簡単にお話をしたいと思います。 御承知のように、この四半世紀の生命科学の発展、とりわけ遺伝子工学の発展が、ヒ トの生命・健康、特に医療の分野について大きな影響を与えてきたというのは御承知の とおりでございます。特に1990年にアメリカでヒトゲノム計画が打ち出されてから、人 間の遺伝子に関する研究及びその影響、とりわけ倫理的な観点からの影響というもの に、さまざまな国際機関もしくは諸外国が関心を抱いてまいりました。 例えば、私が関与しておりますユネスコに関して申し上げれば、93年から国際生命倫 理委員会というものが設立されまして、ヒトゲノムの研究に係わる倫理的な問題につい ての国際文書をつくるということを1つの大きな任務としてまいりました。97年の11月 にその作業の成果が、「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」という形でユネスコ総会 で採択されました。この「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」、簡単に「ゲノム宣 言」と申し上げますが、この「ゲノム宣言」は翌98年の12月には国連総会におきまし て、これをエンドースするという形で、単にユネスコの文書であるという位置付けだけ ではなくて、国連というより大きなフレームワークの中で御承認をいただきました。も っとも、ユネスコだけがこういうゲノムもしくは遺伝子解析についての文書を扱ってき たわけではなくて、とりわけ医療・保健の分野では、御承知のように、WHOがこれま でさまざまな形で議論を行っておりますし、ガイドラインも出しております。また、 ヨーロッパにおきましては、ヨーロッパ審議会、いわゆるCouncil of Europeでござい ますが、これが条約をつくったりしております。同じくヨーロッパ連合(EU)などに おきましても、ヒトゲノム解析の研究やその成果の応用について、委員会でありますと か、アドバイザリーグループを設けまして議論をしてきております。その一部はガイド ラインにもなっております。各国を見ましても、イギリス、フランス、ドイツでは既に これに関連する法律ができておりますし、アメリカでも、法律ではありませんけれど も、ガイドラインを出している部分がございます。そのほか、CIOMSでありますと か、WMAをはじめとして、多数の科学、医療・保健関係の国際機関、NGO等で宣言 とかガイドラインが出ております。  今日提出されましたガイドラインにつきまして、少しユネスコの観点から申し上げれ ば、ユネスコにおきましての議論の焦点は、ヒトゲノム研究の自由ということと、その 研究のサンプルを提供する被験者・患者の尊厳及び人権というもの、この2つの観点が ある意味では対峙しているものとして扱われてまいりました。特に被験者・患者の人権 という観点におきましては、2つの大きな中心点がございます。もう既に垣添委員長及 び山口委員の方からお話がございましたけれども、第1に倫理審査委員会による審査を 受けるということ。これは、特にユネスコの宣言の中では独立の学際的で多元的な倫理 委員会を設けるということがうたわれております。第2に、インフォームド・コンセン トを確実にとるということが重要視されております。このインフォームド・コンセント は、先ほども御説明がありましたが、事前の説明を十分に受けた上での自由意思による 同意ということでございまして、この3つの要素を含まなければインフォームド・コン セントとは言えないという立場でございます。同時に、先ほど年少者、痴呆の方々を例 に取り上げて御説明がありましたが、同意能力のない者の場合の同意について、これを 弱者グループという形で位置付けて、特に厳格な同意を得ることを中心に規定をしてお ります。  こういった国際的な観点からいたしまして、我が国では、遺伝子解析も含めて、生命 倫理分野一般での法令とか指針等については、他の先進国に比べて遅れております。幾 つかの発展途上国でも生命倫理関連の法律がつくられてございます。この遺伝子解析に 関するガイドラインというのは、ある意味では我が国で全国レベルの初めての詳細なガ イドラインであると思います。これは確かにミレニアム・プロジェクトという、ある意 味では限定されたフレームワークにおける遺伝子解析の問題であるにしましても、この 内容そのものについては、国際的基準に照らしても、そう劣ってはいないと私は考えま す。問題は、むしろ現場でこのガイドラインが厳格に適用されなければならないという ことでありまして、その際には、現場で従来の研究のシステムを大きく改善する必要が ある場合もあり得るということを認識して、このガイドラインを適用していっていただ きたいというふうに考えております。更に、このガイドラインを手がかりにして、現場 での適用状況を勘案しつつ、遺伝子解析研究及び診療一般のガイドラインへと改善して いくことが望まれると思います。  以上、少し長くなりましたが、国際的な動向も含めて、このガイドラインの位置付け をさせていただきました。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。3人の方々、特に山口先生からは詳しい御説明をい ただきました。この報告書に対して委員の方々からの御質問、御意見をお伺いしたいと 思います。どうぞ御自由に御発言ください。 ○松田委員  私の立場は、昨年までは日本人類遺伝学会の生命倫理の担当の委員長でして、今年か らは日本人類遺伝学会の理事長ですけれども、幾つかの点でお伺いいたしたいと思いま す。  まず最初に、大変立派なものを短期間につくっていただいて大変ありがとうございま した。今までの話を聞いていると、アメリカの昨年出されましたガイダンスに比べて も、見劣りしないどころか、かなり厳しい、アメリカの場合には、インフォームド・コ ンセントが要らないというような場合でも、この中ではインフォームド・コンセントが 必要だというところまで書いてありまして、実際に行う人たちが行う上でどういうふう に対応できるのかというところもちょっと考えました。  具体的なところが幾つかあるんですけれども、まず代諾者のところですが、これは子 どもの問題です。16歳という年齢をどういう理由で切られたかという問題が1つ。それ から、アメリカの場合には、メイチャードマイナーとか、別な言い方もありますけれど も、16歳以上の場合には本人の承諾だけで医療行為が行われます。しかし、この文章で いきますと、16歳以上の場合でも、二十歳未満の場合には、両親といいますか、親権者 の方の承諾が要るというふうになっていますけれども、その辺のところはどのように考 えられたのか。特にアメリカで16歳というのは、幾つもの大変膨大な研究資料がありま して、それに基づいて16歳という年齢が推計されている訳ですけれども、日本の場合に はなぜ16歳というのが突然ここに出てきたのかということをお伺いたいと思います。 それから第2点は、代諾者が承認するという場合でも、先ほど位田先生がおっしゃい ましたけれども、弱者が関与しなければできない研究、弱者が参加しなければできない 研究に限ってこれは認められるというのが基本だと思うんです。それを、いきなりここ で代諾者がオーケーと言えばできるということであるとちょっと問題があるのではない か。つまり、代諾者が参加できるための条件がここには出ていないんですね。普通、フ ラジヤイルグループが参加しなければできない仕事に関しては彼の参加を認めるという のが基本だと思います。  それから、一番最後の遺伝カウンセリングのところですが、これは多分、大変議論が あったと思いますけれども、この文をこのまま読みますと幾つかの問題があると私は思 うんです。1つは、カウンセリングをいつやるかという時期的な記載がないというこ と。それから2番目には、ちょっと読んでみますと「遺伝カウンセリングにおいては、 正確な情報提供及び対話を通じて、ヒト由来試料等提供者又はその家族等が抱える遺伝 子解析研究や遺伝性疾患に関する悩みや不安を、その者の価値観と考えを整理すること により」と書いてあります。「考え方を整理する」というのは、この文脈からいくと、 カウンセラーがすることになるんですよね。実際にはそうではなくて、整理したりする とすれば、これはカウンセリー(カウンセリングを受ける者)がするということになり ますし、それから、ここにはカウンセルを受けた者の理解を深めるという言葉もありま せんし、価値観と考えを整理するというだけではないんですよね。今まで遺伝カウンセ リングの中に「価値観と考えを整理する」という言葉は余り出てきたことがないので、 その辺が非常に奇異に考えたんです。もし書いていただくすれば、「遺伝カウンセルに 習熟した医師、医療従事者は、ヒト由来試料等の提供者及び家族に正確な情報を提供 し、対話を通じて、彼らが遺伝子研究や遺伝性疾患に関する理解を深め、彼ら自身の不 安や悩みを解消できるように支援・援助する」というのが正しい表現だと思います。  ほかにまだありますけど、ほかの方もディスカッションしたいと思われるので、私は これで終わります。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。山口先生、何かお答えになることがございますか。 ○山口副所長  まず私からわかる範囲のことをお答えさせていただき、あとは位田先生、更には事務 局の方から補足をしていただこうと思います。  何故16歳かという問題は、かなり法的な問題が関わっておりますので、後ほど事務局 の方からいろいろ議論した結果をまとめていただこうと思います。 それから、代諾者が必要な場面ですが、作成者としては、当然、先生のおっしゃるよ うに、そういう方から提供していただけないと研究をなせないような場合を想定してい たことは 100%間違いないのですが、文案等が意を尽くしていないかもしれません。さ らに検討いたします。 それから、遺伝カウンセリングのところですけれども、ここはいろいろ議論がござい ました。例えば「遺伝カウンセラー」という言葉を使うべきかどうか。しかし、そうい う資格は今のところ日本ではまだない。そこで、どう整理をしていくかということも考 えました。先生のおっしゃった文案をよく検討させていただこうと思いますけれども、 言っている意味はまさにそういうことだと私は理解しております。 ○高久部会長 それでは、事務局の方で16歳云々について。 ○事務局  まず代諾者の問題、すなわち(5−1−3−2)でございますけれども、この点につ きましては、我が国の現在の法令がどうなっているのかというのをいろいろ調べさせて いただきました。まず1つには、民法の規定では、契約行為の完全な判断能力というの は原則二十歳以上である。また、婚姻した場合には、婚姻した者については認めるとい うことになりますと、女性は16歳ということになる。あるいは、刑法の14歳未満の者に 対する規定、あるいは少年法の規定等々を見ますと、我が国の現在の法令におきます規 定というのは15歳から16歳というところにあるだろうと。ただ、最初に申し上げました ように、民法におきます意思能力というのは二十歳以上であるという、これは我が国の 法令の中で議論するものでございますので、それを考えまして、(5−1−3−2)に ございますように、基本は親にある。ただ、16歳以上の者が明らかに拒否した場合には やりませんというような形で整理をさせていただいたところでございますが、非常に悩 ましいところであるのは先生御指摘のとおりでございまして、今後また議論があるのか もしれないというふうに考えております。 また、痴呆等の代諾者につきましては、研究計画書の中でその理由を書いていただい て、倫理審査委員会の中で議論をしていただくということになっておりますので、そう いう意味では、先生御指摘の点というのはその中で含まれているのかなというふうに考 えております。 ○高久部会長 私も1つ質問いたします。第三群と第四群はわかりやすいのですが、一群と二群の中 にはルーチンの診断のための遺伝子検査が必要な事がありますね。この指針が発効され ると、今やっている検査も改めて倫理審査委員会にかけるということになるのですか。 ○山口副所長  最初に「はじめに」のところでお断りいたしましたように、これはあくまでも研究を 対象としたガイドラインであります。 ○高久部会長  ただ、研究といっても、臨床的研究の中の診断と研究の中間的な問題のときに、例え ばDNAチップを使っての検査を国立がんセンターでずいぶんやっておられると思いま すが、がんの患者さんの標本でのいろいろな遺伝子の発現、この中には診断とか予後 の、一と二の中間みたいな検査もあるし、今、かなりルーチンにやっている検査を改め て全部、審査委員会にかける必要があるのかということです。 ○山口副所長  一群の場合の最も典型的な疾患は幾つかあると思うのですが、それのほぼ診療に近 い、あるいは医療に近いことは、高久部会長がおっしゃるとおり、今現実に行われてい ると思います。ただ、その場合も、少なくとも国立がんセンターを中心としたナショナ ルセンターでは、そういう研究に関しては倫理審査委員会の承認は取っていると思いま す。 ○高久部会長  本当に診療で使っていてもですね。 ○山口副所長  はい。ここで書いております一群というのは、そういうところから更に一歩出て、診 療にも使っているが、まだ謎の部分が残っているようなところを対象にこのガイドライ ン上は書いておりますので、医療とは別であると考えています。 ○高久部会長  ただ、乳がんの患者さんでBRCA1を調べるというのは二群に入るのですか、一群 に入るのですか。 ○山口副所長  それは、この文面のとおり読みますと、明らかな家族歴があって、家族性乳がんと臨 床的に診断できるような形でBRCA1を検討する場合は一群に入ります。それから、 先生おっしゃるとおり、二群の研究が将来進みまして、5年後には二群の研究対象が一 群に入ってくるものが当然出てくると思います。ですから、この一群、二群は決して現 時点で完全にセパレートできるものではないというのが私どもの考え方であります。 ○高久部会長  ですから、これを読みまして、病院の現場の人が非常に困るのではないかと思ったの は、例えば白血病の遺伝子診断などをずいぶんやっているのを、もう一回新たに倫理審 査委員会にかける必要があるのでしょうか。この文章だけだと、そこまでかける必要が あるのかどうか判断に迷います。例えば固形腫瘍のDNA診断もずいぶん行われている と思うのですが、それを全部かけ直すことになる訳ですか。 ○山口副所長 高久部会長の今おっしゃられた例は、生殖細胞系列の遺伝子解析という よりは、むしろ体細胞変異のお話だと思いますので、その点を含めて検討させていただ こうと思います。 ○高久部会長  非常にルーチンに行われているものについては除外していただかないと、非常に混乱 するのではないかという感じがしました。 ○事務局 その点について1点だけ言及させていただきます。今回、垣添先生を中心とする研究 班で御審議願いましたのは、位田先生の御発言の中にもございましたとおり、あるいは 「はじめに」のところに記載してありますように、ミレニアム・プロジェクトという限 定された枠について検討を進めさせていただいておりますので、もちろん、位田先生の お言葉のように、それ以外のところへの適用というのは今後どうするのかというのはま たいろいろな御意見があるだろうと考えておりますけれども、そういう意味でミレニア ム・プロジェクトに限定したというところで、ある面では最初から論議の対象となって いなかったところかなというふうに考えております。もちろん、それを拡大すべき、あ るいはどうしようかというのは今後議論があるだろうと思っております。 ○金城委員  代諾のところでもう1つ御質問したいのですけれども、痴呆等により有効なインフ ォームド・コンセントが得られないときの代諾者ということです。しかし、それについ て、(5−1−3−3)で、代諾者は「ヒト由来試料等提供者と関わっていた者等の中 から選んでもらうようにすること」と書いてある訳です。これは誰が選ぶのですか。そ もそも痴呆等によってインフォームド・コンセントを与えることができないような人は 選べないんじゃないか。ですから、選ぶのは誰が選ぶのかということです。 ○山口副所長  その点に関しまして、「用語の定義」、(3−9)に「代諾者」という項目を設けて ございます。先生の御指摘はもっともだと思うのですが、そこで、なかなかそれが難し いということをその後数行で書いてございます。(注)というところで、代諾者の選定 は、その提供者が置かれている状況によって個別に判断されるべきであり、この指針で 一義的に定義は非常に難しいということをあえて述べさせていただいた点です。確か に、この点は現場で実際に診療を行っていたりしますと大変難しい問題を生むと存じま す。事務局の方から追加していただけませんでしょうか。 ○事務局  これは、山口先生がおっしゃるとおり、提供者となる方が選ぶというのは不可能でご ざいまして、深く関わっていた方々の中でのコンセンサスが得られないものだろうかと いうふうに考えている訳です。と申しますのも、家族というのが一応最初に考えられる 訳でございますが、家族が遠くにいて、ほとんどの生活をすぐ近くの方が面倒をみてい たときに、どちらがその方の利益を代表できるのだろうかというような議論を個別にし てまいりますと、一定の方針というのは示せないということで、この研究班の中でもず いぶん御議論願った訳でございますけれども、ここで書いておりますように、家族、あ るいは日常生活に関わっていた方々の中で何らかのコンセンサスを得られないだろうか というふうにここでは書いたところでございます。 ○金城委員  そうすると、そのコンセンサスというのは誰がやるんですか。例えば、研究者が勝手 にやってしまっていいのか。それとも、やはり問題があるときには倫理審査委員会にか けるのか。 ○事務局  これは、「選んでもらう」というふうに書かせていただいておりまして、家族、ある いは深く関わっていた方の中で、あの人がよかろうということを選んでもらうというこ とを書いている訳で、1例ずつ倫理審査委員会にかけるというのは実務的に不可能でご ざいますので、そこは現場で家族あるいは深く関わっていた者の中から選んでもらうと いうことを考えている訳でございます。 ○金城委員  これは、かなり利害が一致しないでコンセンサスが得られないとか、いろいろな問題 が出ると思うんです。ですから、もう少し明確になさった方がいいんじゃないかと思い ます。まさに選んでもらう。しかし、それが不可能な場合には、まだ成年後見の問題も ありますけれども、そんなことも入れながら、法律上の規定が出ていると思いますの で、それから民法にもそういう規定がありますから、そんなものも参照してやっていた だきたいと思います。  それから、今、私がよくお友達などで見るんですけれども、家族というときに、法律 婚をしていれば配偶者ということになる訳です。ところが、現実には法律婚はしていな いけれども非常に親しい関係にあるということもある訳ですね。ですから、そういう場 合には、法律とは離れてそこいら辺の事情も勘案しなければいけないということで、こ れは本当に難しい問題をたくさん含んでくると思いますので、もう一度御検討いただけ たらと思います。 ○高久部会長  ほかにどなたか。 ○柴田委員  最初に、すばらしい倫理基準ができたと思って大変敬意を表したいと思います。日本 は非常に遅れていたと思うのですけれども、遅れていたことが逆に幸いしたと言っても いいぐらい立派なものができたというふうに思います。そういう意味では全面的に賛成 ですが、ただ、二、三、意見と同時に、一番最初の「はじめに」のところに、ミレニア ム・プロジェクトをやるに当たってというような形の前書きがあるのですけれども、私 は、そうじゃなくて、これは日本の遺伝子解析に関わる疾病・創薬研究の生命倫理基準 だというふうに全部に網をかけていただきたいというのが第1です。これだと、政府の ミレニアム・プロジェクトだけというふうに読み取れないこともない訳ですね。もちろ ん、そうじゃなくなってくるとは思いますけれども、もっとそこを明確にしていいので はないか。といいますのは、ヒトゲノムのような研究がこれだけ世界的にも加熱状況に あって、これは、今ここでは本当に政府の研究機関に依頼されているようなものだけを 想定しておられるように見えるのですけれども、そうじゃなくて、これはすぐ民間も巻 き込んで、それこそ製薬会社なども直接的にタッチしてくるテーマだと思うんです。そ ういうことに対して、この基準はすべて当てはめられるケースだろうと思いますし、国 のガイドラインだということを明確にしていただきたいというのが第1点です。  それがはっきりすれば、それだけでも有用ですけれども、そうなると、1つ、製薬会 社までこの基準に全部入ってきたとしたときに、研究機関の長とか、倫理審査委員会の 設定とか、そういうものはもちろんこれでいいと思うのですけれども、同じようなこと を義務づけていくことに対して、もう少しきちんと書いた方がいいのかなというような 気がしないでもないです。  もう1つ、そういうふうに考えたときに、インフォームド・コンセントの中の基準の 1、自由意思の尊重が一番大事なところだと思うのですけれども、ここではむしろもう 少しはっきりと、尊重するというだけじゃなくて、それに対して説得はしてもいいと私 は思うんです。幾ら説得してもいいですけど、いわゆる圧力をかけてはいけないという ような禁止条項的な、「いかなる圧力もかけてはいけない」というような形の言葉もあ ってもいいかなという気がするのが1つ。  もう1つは、ここには書いていませんし、これはヒト組織の提供の方の委員会でも議 論していることだとは思うんですけれども、こういう研究に提供されるヒト組織に対し て、いわゆる対価を支払ってはいけないという部分。それと組み合わせれば同じことに なるかもしれませんけれども、私は、遺伝子解析の問題について、民間の会社などが出 てくることを考えていけば、そういうものに対して対価を支払ってはいけないんだとい うことを明確にここの中に入れた方がいいのではないか。これは私の個人的意見として ちょっと添えさせていただきます。全体の性格づけについて勝手なことを申して申し訳 ありません。 ○高久部会長  垣添委員、どうぞ。 ○垣添院長  今の柴田委員の御指摘は、まことにもっともだと思います。ただ、御承知のように、 ミレニアム・プロジェクトがこの4月からスタートするということで、時間的にかなり 切迫した状況で、ほとんど真っさらな状態から厚生省の倫理ガイドラインをつくるとい うことがありました。ですから、これはミレニアム・プロジェクトに関連する研究に限 定してつくったものです。ただ、これが出てまいりますと、先ほど来、何度かお話があ りましたように、これがより一般化する形で世の中に広まっていくのは当然だと思いま すが、その場合には、先ほど高久部会長から御指摘のように、例えば白血病の遺伝子の 解析とか、あるいは乳がんの遺伝子の解析などの場合、改めて倫理審査委員会にかけな くてはいけないのかどうかということで、やや不明瞭なところがありますので、そうい ったところもすっきり整理された形で出ていく形になるんじゃないかというふうに思い ます。 ○高久部会長  科学技術庁の方でもっと幅の広いヒトゲノムについての研究のガイドラインをつくろ うとしています。その中に当然これが含まれてくると思います。科学技術庁の中で議論 している問題は、必ずしもミレニアムに限っていないと私は理解していました。科学技 術庁の方にもこの報告の内容が含まれることになると思います。御苦労さまですが、そ の点をお考えください。 ○木村委員  バイオエシックスの観点から見ましても、一応、国際的に評価できる内容のものをつ くるべく、垣添検討委員会委員長をはじめ、山口先生、また位田先生に御努力していた だいて、いいものができたというふうに私も思います。  ただ、内容的に、平成12年度に開始される「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関 する研究」のために起草されたと「はじめに」というところに書いてある訳でございま すけれども、これを柴田委員あるいは位田検討委員会委員の御発言等を踏まえて、検討 委員会で既にそういうことについてもお話し合いがされたということでございますの で、二、三、文章を現状に合わせてちょっと語句を変えたらいいんじゃないかという提 案を私はしたいんです。「はじめに」の真ん中のところでございますけれども、「しか るに、我が国においては」というところの文章でございますが、本ガイドラインは確か に遺伝子解析研究ですけれども、ここのところは日本の現状のことを説明している訳で すね。したがって、「しかるに、我が国においては、遺伝子解析研究において、倫理面 を重視した統一的な指針がなく」というのは、遺伝子解析研究だけじゃなくて、我が国 の現状としては、「遺伝子解析研究を含む先端医科学研究」において、倫理面を重視し た統一的な指針がないということになる訳ですね。ですから、むしろその言葉を入れ て、将来への含みを持たせるのが適当かと思います。これから次に「各研究機関では」 という言葉が出てきますが、後ろの方を見ると「研究者」になっているんですね。ミレ ニアム・プロジェクトというのは研究者に基金が出るということですので「研究者」と いう言葉が後ろに出てくるのに、ここでは「各研究機関」となっているので、これは「 各研究者及び各研究機関では、独自の対応をとることを余儀なくされてきたのが現状で ある」というふうに直して、その次の次の章にいきますと、「試料提供者又はその家族 等の人権を保護するため、各研究者及び研究機関が遵守すべき指針を定めることとした 」と直します。その次の文章が「平成11年度に実施することになった」というふうにな ってまいりまして、一番最後のところでございますけれども、「本指針は、平成12年度 に開始される『遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究』のために起草された ものである」、そこで切って、「その指針に盛られた」あるいは「指針に盛られる内容 は」となるのかもしれませんが、「指針に盛られる基本的理念とその内容は、遺伝子解 析研究を含む先端医科学研究に」というふうに入れて、「遺伝子研究を含む先端医科学 研究に携わる全ての」というのは、何が全てかよくわかりませんので、先ほどからのお 話をお伺いした結果、「国・公・私立を問わず、全ての研究機関及び研究者が」として 文章をはっきりさせておいた方がいいのではないかと思いました。 これは、確かにミレニアム・プロジェクトに起草されたものではあるけれども、国・ 公・私立を問わず、どうしてかといいますと、先ほど位田検討委員会委員からの説明、 あるいは山口先生からの説明にございましたように、(4−1−6)のところでは、民 間の研究機関あるいは関連企業が関わる可能性がございますということをはっきりと言 われましたものですから、ここでは、「国・公・私立」という官庁用語があるかどうか 知りませんけれども、あるいは「民間」とか、そういう言葉をどうしても入れておく必 要があるのではないか。それで、「意識の高まりを期待したい」ということで文章が終 わっていますが、もし御検討いただければ、科学技術庁、その他関連機関があるようで ございますけれども、「期待するとともに、関連諸官庁との緊密な連携のもとに、厚生 省としての積極的な取り組みが必要であることを指摘したい」というふうな終わり方に すると、このガイドラインが将来的には非常に広がりを持った形になると思います。今 の時点で、確かにプロジェクト発足のための時期的な問題があって、それに間に合わせ るためにつくったという現状はある訳でございますけれども、将来的にはそういうこと につなげていくことをはっきりと前書きで言うことができるのではないかというのが私 の提案でございますが、いかがでございましょうか。 ○高久部会長  今日は時間が限られていますので、今の木村委員の提案は、この原案をつくった委員 会の方でよく御検討ください。  今後の手順になりますが、既に垣添先生の検討委員会でいろいろな御意見をメール等 を通じて聞いておられると思います。本日出されました報告書については、本日の当部 会委員の御意見を参考にして少し直させていただくと共に、一般にオープンにして意見 を公募してから、次回以後の部会で更に検討したい。できれば今年度中にまとめたいと 考えております。事務局から何かありますか。 ○堺審議官  先ほどから御議論いただいている訳でございますが、別に私、言い訳する訳でも何で もございませんが、最初に、前回お話しさせていただいたときは、厚生省がミレニア ム・プロジェクトに対して取り組むときに何も生命倫理的な基準がないということでつ くっていただきましょうということでお願いして、研究をしていただいた結果を今日発 表していただいた訳であります。そうすると、そのとき念頭に置きますのは、このミレ ニアム・プロジェクトの研究費を使うところ、どこが研究機関かというのが想定されて おりますので、その中、あるいは契約して外と共同研究というのもなされるでありまし ょうが、少し言い過ぎになることもあるかもしれませんが、基本的には国家公務員とい う縛りの中で考えていただいたという事情もございます。  そういうこともございますので、今日いただいた御意見は御意見としていただくこと といたしまして、この報告書をインターネットで厚生省のホームページに掲載しパブリ ックコメントをいただき、本日の部会での御意見も踏まえた上で、また3月にこの委員 会で御検討いただいて、厚生省版というものをつくっていただきたいと思っている次第 でございます。その御議論の中で結果として、柴田委員、木村委員をはじめとして、せ っかくできたのにもったいないという御意見もございます。それが、この部会としての 御意見でございましたら、私どもも一向にやぶさかではございません。ただ、スタート がスタートでございますからという説明をさせていただきました。 ○高久部会長  私も、いろいろなことを言いましたが、一応これはミレニアム・プロジェクトの中で ということにしまして、もう少し幅の広いものについて、また御苦労をおかけすると思 います。これをもとにして、外に広げるときにはもう一回つくり直す必要があるのでは ないか。そうしませんと、このガイドラインがこのままミレニアム以外に適用されると 非常に混乱します。今回は垣添先生、山口先生はじめ、委員の方々に非常に御苦労いた だいて立派なものができましたし、恐らくこれを基本にして、先ほど木村委員もおっし ゃったように、民間での研究も含めた幅広いものがつくられていくと思います。今回は ミレニアム・プロジェクトということにできれば限らせていただきたいと思います。 ○木村委員  基本的に部会長のお話に賛成ですが、前書きですので、そこら辺はある程度修正して いただいて将来への展望を残すということが非常に重要だと思います。  ただ、せっかくの機会ですので、ちょっと御検討いただきたいところだけ言っておき ますと、(4−1−3)でございますが、ここのところは倫理審査委員会を設置しなけ ればならないけれども、既存の委員会があるときにはそれを活用できるとか、それがな いときには共同機関に設置された倫理委員会にかえることができると。それでは何のた めにこれがきちんとあるのかということを再び考えざるを得ないような文言がここに出 てきているので、この辺は本指針に沿った理念と内容を踏まえた倫理審査委員会である ことを前提にした上での倫理審査委員会でないといけないというふうに思いました。  それから、先ほども位田教授からの御説明がございましたが、「説明文書及び同意文 書」、これがインフォームド・コンセントの別添の添付の資料として本日は出てきてい ませんけれども、これは非常に重要なんです。私、ここにアメリカのボストンの病院の 資料を持っております。これは、ブライガン・アンド・ウィメンズ・ホスピタルという ところのジェネラル・ホスピタルの資料ですけれども、非常にわかりやすいインフォー ムド・コンセントのドキュメントがあって、それを読んで、例えば具体的には内容的に どういうことが言われているかということがはっきりする訳ですので、そこら辺のとこ ろがありませんと、私としては、このままこのような文書が出てくるだけですと納得で きないところなんです。したがって、その点の検討を踏まえた文書も出していただい て、それも審議するということを御検討いただければと思います。例えば目的、手続 き、選択肢、使用、リスク、それから不快感とか、利益とか、その他の必要事項につい ても、具体的なフォーマットがどういうフォーマットであるかという資料が手元にあっ て、それも審査するという必要性があるのではないかと思います。 その他いろいろございますけれども、1つだけ申し上げますと、「倫理審査委員会の 責務及び構成」というところで、「倫理的及び科学的事項を総合的に審査するに必要な 優れた識見を有する専門家」ということですけれども、先ほどユネスコの方の具体的内 容について位田教授から説明がございましたが、結局そこでは「人文・社会・自然科学 分野など学際的な各専門家」と、具体的に「学際的な」とか、そういう分野を入れてお いた方がいいのではないかというようなことをちょっと感じました。 それから、最後に。位田教授ははるばる京都からおいでいただいておりますのでお伺 いしたいのですが、(5−1−1−12) は非常に大事なところですが、バイオマテリア ルは人類共有の財産ということでユネスコでも決めておられますが、「将来、遺伝子解 析研究の成果が知的財産権を生み出す可能性があり、その場合」、この文章のつながり は再考の必要があるのですが、「その場合、当該知的財産権はヒト由来試料等提供者に 帰属しないこと」という項目があります。これは大変に重要な項目で、アメリカでもこ の試料の加工によって製品をつくり、何百万ドルという利益を得た医学研究者や企業が 訴訟されたということもあるのですけれども、法的に見て、この点につきまして位田委 員の御見解をちょっとお伺いしておきたい。将来への討論も踏まえて、知的財産権を生 み出して、これによって利益を得る可能性が極めて高い。アメリカでは、実際にそうや っている人がもういる訳で、その点について法的な御見解をお伺いしておきたいと思い ます。 ○高久部会長  では、短くお願いします。 ○位田教授  短くと言われると非常に難しいと思いますが、二、三分で。まず、ユネスコに関しま しては、知的財産権がヒトゲノム研究において取得できるかどうかということについて は触れておりません。ヒトゲノムはそのままでは経済的利益を生み出さないと書いてあ るだけでございまして、討論の中では、特許もしくは知的所有権の問題は宣言の中には 触れないことにいたしました。触れると意見が分かれて、宣言そのものができないの で、それは回避しました。これが1点目です。  それから、もう1点、知的財産権が試料等提供者に帰属しないというのは、法制度上 どうするかということを決めればいい問題でありまして、日本の知的財産権は法制度の 中でこういう遺伝子解析研究についてどういうふうにするかを決める。仮に知的財産権 が提供者に帰属する可能性があるとしても、インフォームド・コンセントの中で知的財 産権を放棄するという同意を得れば、それはこういう形で帰属しないというふうにする ことは可能だと私は思います。以上です。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。それでは、垣添先生、山口先生、位田先生、本当に ありがとうございました。次回は、位田先生は御都合がお悪いと聞いておりますが、垣 添先生、山口先生は御都合をつけていただきまして、またいろいろ御意見をお伺いした いと思います。  次に、報告事項の方に移らせていただきたいと思います。 ○事務局  報告事項に移らせていただく前に、パブリックコメント、一般からの意見聴取につい て、資料3及び参考資料1、参考資料2に基づきまして御説明をさせていただきます。  これまで垣添先生を班長とする研究班の中では、検討委員あるいは作業委員の中で活 発な御議論をいただいた訳でございますが、一般からの意見聴取というのは今回が初め てでございまして、そういう意味で、資料3でございますが、インターネットの厚生省 のホームページ等々を通じまして意見募集をし、最終的な決定における参考とさせてい ただくということでございまして、いただいた意見はすべてこの場で報告させていただ くということ。また、公表させていただくこと。個別の回答はいたしかねること、ま た、提出期限として3月10日ということを予定しております。本日の御議論を踏まえ、 高久部会長と御相談しながら修文させていただいたものをもとに一般からの意見募集を するという形で進めさせていただき、その御意見等々はこの場へ提出いたし御審議を賜 りたいというふうに考えております。 また、木村先生から御指摘のありました添付資料につきまして、研究班では引き続き 御検討願うということになっておりますので、できれば次回の会合にお示しをしたいと いうふうに考えております。 なお、参考資料2でございますが、既に一般的な意見が出されておりまして、本日配 付させていただいておりますが、これにつきましても、パブリックコメントの後の意見 と一緒に、次回会合におきまして、また御議論の参考資料として活用していただきたい と考えております。以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。  それでは、次に「ヒト組織の移植等への利用のあり方について」の審議状況につきま して、事務局の方からよろしく御報告をお願いします。 ○保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室 朝浦室長  それでは、資料4に基づきまして御説明をしたいと思います。  「ヒト組織の移植等への利用のあり方について」の議論に関しましては、本部会のも とで専門委員会を設置させていただきまして、野本亀久雄教授が委員長になりまして、 これまで3回開催をさせていただいております。  主な論点を紹介させていただきます。1つは、ヒト組織の移植等への利用に係る基本 原則についてということで、ここでは7項目書いておりますけれども、これについて御 議論をいただいております。それから、組織バンクの活動をにらみながら、組織の採取 の問題、それから処理・保存方法の確立の問題。移植施設への提供、移植への利用につ いての問題。それから、移植に利用できなかった場合の組織の研究及び研修への利用に ついて議論をしていただいております。最後に、組織バンクの運営に係る問題について 議論をしていただいております。  実は、昨日、第3回目の専門委員会を開きまして幾つかの御議論をいただきました。 その結果を踏まえて、事務局として議論を取りまとめ、来週中にでもパブリックコメン トをいただきたいというふうに考えております。それで、先ほど御紹介にありました参 考資料1のところで専門委員会の今後の日程が書いておりますけれども、2月24日と書 いてありますが、これは予備日として書いておりますので、次回は3月16日ということ になりまして、意見公募を経てから、その結果に基づいて次の専門委員会を開きたいと いうふうに考えております。以上でございます。 ○高久部会長 どうもありがとうございました。これは、まだ議論中ということでありますが、何か 御意見がおありでしょうか。 それでは、この部会にいずれ詳しい報告が出ることになると思いますので、そのとき にまた御検討いただきたいと思います。 それでは、引き続きまして、報告事項の中の2)から8)まで事務局の方から説明してい ただけますか。よろしくお願いします。 ○事務局 それでは、資料に基づきまして御説明申し上げます。 まず最初が資料5でございますが、前回、この部会におきまして御議論願いました財 団法人癌研究会癌研究所の乳がんの遺伝子治療臨床研究の計画でございますけれども、 これにつきまして、私どもの不行き届きもございましたが、乳癌ネットワークというと ころから御意見がありまして、それについて御検討していただきましたところ、「イン フォームド・コンセントの説明文」を一部修正し、また、留意事項というものをつくっ て、それを「インフォームド・コンセントの説明文」に添付するという回答がきており ます。  具体的に申し上げますと、7ページでございますが、7ページにございますのが今回 新しくつくられました留意事項ということで6点ございまして、遺伝子治療というのが 実験的な段階にあるとか、あるいは対象患者からより詳しく知りたいというような質問 を受けた場合には、質問事項について最新・詳細な情報を開示する等々、要するに、医 師がインフォームド・コンセントの説明を行うときの留意事項という形でまとめられて おります。これも患者さんに渡される訳でございます。  インフォームド・コンセントの文章が変わりましたのは、8ページでございますけれ ども、下線部のところ、すなわち、インフォームド・コンセントの説明文の一番最初で ございますけれども、実験的な段階にあることが入っております。また、9ページの中 ほども同様の趣旨でございます。更に10ページでございますけれども、ここは副作用の 種類を大きく2つに分けて書いている訳でございますが、当初の案では第2段落が下線 部となって、第3段落が「大量化学療法」から始まる段落でございましたので、これは 第1段落に引き続いて書くということで誤解を解くということで回答がきております。 これが資料5でございます。  資料6でございますが、これは現在、既に認められております東京大学医科学研究所 の遺伝子治療臨床研究でございますが、これについて期間の延長の報告があったもので ございます。  具体的には、4ページでございますけれども、当初、平成10年8月10日から1年間の 研究予定でございましたが、これを13年3月31日まで延長するということでございま す。理由といたしましては、長期的な観察が必要だということと、被験者の選定がなか なかうまくいかないという2つの理由から延長の報告がきております。  次が資料7でございまして、資料7は前回の部会でも御議論いただきましたアメリカ のペンシルバニア大学で遺伝子治療に関連いたしまして死亡の事例が報告されたという ことでございます。アメリカのFDAからペンシルバニア大学あてに出された文書が入 手できましたので、それを御報告させていただいております。  具体的には、仮訳を3ページに付けておりますので、3ページをご覧いただきたいと 思いますけれども、FDAの調査の結果、このペンシルバニア大学におきます臨床研究 の監査、あるいはその管理にいろいろな問題があったということでございまして、情報 の提出といたしましては大きく1番と2番に分かれておりますが、今後の実施の監査の ためのモニタリング計画、あるいはプロトコール実施計画に沿って研究を行う。あるい は、その義務を遵守するということを改めて宣誓してくださいということが述べられて おるかと思います。  このような事例を踏まえまして、5ページでございますけれども、厚生省といたしま しては、今までも認められた遺伝子治療臨床研究につきましては逐次報告をいただいて おった訳でございますが、これを通知として明文化化するということにさせていただこ うというふうに考えておりまして、具体的内容といたしましては、1番でございます が、ここの場で御議論いただいて認められた実施計画に従って実施をしなさいというの が大きな柱の1番でございます。もうひとつは、実施計画を逸脱した場合については速 やかに報告をしてくださいということを述べております。  また、大きな2番でございますが、死亡あるいは重篤な副作用などの事態において は、既に指針にあるとおり報告をしてください。その報告のやり方は、まず第一報を報 告し、15日以内を目安に、定められた様式で報告してくださいというのが1つ。それ と、グレーゾーンと申しますか、可能性があるような情報、知見を得た場合には速やか に報告してくださいということを改めて通知をさせていただいております。  次は資料8でございますが、前回のこの部会で御審議いただきました「遺伝子治療臨 床研究に関する指針」(厚生省告示)の改正ということで、大阪大学からバージャー病 の遺伝子治療研究計画が提出され、それをどうするかというのを昨年の半ばからこの部 会で御議論願っておった訳でございますが、前回の部会で対象を拡大しようということ で御議論がまとまりまして、その文案については部会長に一任された訳でございますけ れども、部会長と相談をして、このような文章で告示を近々やらせていただく。具体的 に申し上げますと、「生命を脅かす疾患」の下に「又は閉塞性血栓血管炎その他の身体 の機能を著しく損なう疾患」という表現を加えるということで作業を終わったところで ございます。  以上でございます。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。財団法人癌研究会附属病院から出ています乳がんの 遺伝子治療臨床研究に関しましては、今、事務局から説明がありましたように、日本乳 癌ネットワークの方々から、インフォームド・コンセントにつきまして御意見をいただ きました。ご存じのように、このネットワークは患者さん、あるいは以前に手術を受け た方々が中心になってつくられたネットワークと理解をしていますので、そういう方々 の御意見をインフォームド・コンセントに反映することも必要ではないかと考えまし て、財団法人癌研究会附属病院の方に、インフォームド・コンセントを乳癌ネットワー クの方々の御意見に従って少し訂正をしていただくようにお願いいたしました。その結 果、修正されたインフォームド・コンセントができたという経緯がございます。  その他、何か御意見、御質問がありましたらどうぞ。 ○木村委員  ただいまの御報告にありましたように、厚生省の大臣官房厚生科学課長の名前で、平 成12年2月3日に「遺伝子治療臨床研究に係る重大な事態に関する報告等について」と いう文書がここにございますけれども、適切にこういうものを出していただいて大変よ かったと思います。適切にとはいいながら、これは実は昨年9月に発生している事件で して、しかし、今ずっとリサーチをやって、9月の後、11月21日ですけれども、アメリ カで大きい記事で倫理的な問題があるというワシントンポストの記事がありますし、そ れから、これはご存じかと思いますが、1月31日、ついこの間ですけれども、ハーバー ドでも遺伝子治療に絡んだ死亡があって、これについてきちんと報告がなされていない というワシントンポストのトップの記事があるんです。ですから、厚生省の大使館員が ワシントンDCにもいる訳ですので、そこら辺からも情報を得て、やはり患者さんの生 命に関することにつきましては、いち早く厚生省でも事態を把握して今後対応していた だくということをぜひ御配慮いただきたい。患者の身になって考えますと、それで死ぬ かもしれないという事態が発生している場合には、止めるということもあり得ますの で、その点、御配慮いただければというふうに思います。 ○高久部会長  どうもありがとうございました。ほかにどなたか御意見は。 ○事務局  何もアリバイづくりをやる訳ではございませんけれども、その日のうちにワシントン ポストの情報は入手し、先生方とも御相談をし、木村先生は御欠席でしたが、前回12月 の部会に報告し一応手は打っておるつもりでございますので御容赦ください。 ○寺田委員 私も、遺伝子治療臨床研究作業委員会座長として、事務局からその日の内ぐらいに情 報が入ってきまして、前回の部会でも報告しました。この件に関しましては事務局は非 常に迅速に対応されておられますので、今後も引き続きこういう対応でやっていただき たいと思っております。 ○木村委員 私はちょうどアメリカにいたものですから、失礼いたしました。 ○高久部会長 これは個人的な話ですが、その報道を見てみますと、NIHのRACの委員会がFD Aの方に権限を渡してしまったものですから、報告がFDAの方にはいっていたけれど も、NIHにはほとんどいっていなかった。アメリカの制度上の問題もずいぶんあった と思います。日本では、幸いここに全部情報が集まるようになっています。今にして思 えば、日本では、寺田委員などが非常に慎重に遺伝子治療臨床研究作業委員会をリード していただいたのが非常によかったのではないかとワシントンポストのニュースを見て 思いました。 ○寺田委員  ただ、事務局とも相談しているのですけれども、やはりハーバード大学などでの先生 がおっしゃったように、フォローアップが悪く、副作用を報告していないという問題が あるようです。気が小さいものですから、このような副作用は小さいものでもそういう こともできるだけ報告していただくように日本ではやってもらおうと思っております。 ○高久部会長  次回は3月17日の午後2時からとなっておりますので、よろしくお願いします。今 日、いろいろ御意見をいただきましたし、先ほど事務局からの報告にもありましたよう に、この指針を公開してもう一回御意見をいただいて、その結果について御議論を願い たいと思います。一応この指針はミレニアム計画のための指針である。しかし、今後こ れがミレニアム計画だけではなくて、柴田委員、木村委員からお話がありましたよう に、厚生科学に関係するゲノムについての研究に将来は広げていく。そのときに、また 新たに専門の委員会をつくって、もう少し範囲の広い指針をつくっていただくようにな る可能性があると思います。そのことについても3月17日にはいろいろ御検討いただけ ればと思います。恐れ入りますけれども、垣添先生、山口先生にはそのときにも御出席 いただけるという話なので、よろしくお願いします。 ○柴田委員 いまの件で1点だけ。高久部会長がわざわざそういうふうにまとめられて、異議を言 ってはいけないんですけれども、きっかけはもちろんミレニアム・プロジェクトで、こ れは間違いなくそうですけれども、せっかくこれだけのものができたのと同時に、これ 自身でも、前書きに、すべての研究者がこれを遵守しなさいと言っている訳ですね。で すから、その線よりも後退するようなことは絶対に避けていただきたい。つまり、これ はそのきっかけで生まれたもので、そのためのということだということは言われてもい いとしても、これはやはり日本の国のガイドラインだということは、逆に言いますと、 これができても、日本の国ではまだ生命倫理のガイドラインはあるのかないのかと言わ れたときに、ここまでできていて、ないという国に入るのではつまらないと思うんで す。やはり私は、「ヒトゲノム解析の疾病・創薬研究に関する生命倫理基準」だと。せ めて題はそうしていただきたいという気がするんです。そういう題のもとに1つのガイ ドラインができたと。当面、もちろん対象はミレニアム・プロジェクトの政府予算を使 う機関が確かに対象ではあると思いますけれども、クローン人間の話が出たときも、ア メリカ大統領の研究は政府の研究費は出さないと言ったけれども、民間もこれに準じて くれということをちゃんと言っている訳ですよね。結局、そういう位置付けだろうと思 いますので、当面はミレニアム・プロジェクトかもしれないけれども、これはやはり国 のガイドラインだというふうに、いわゆる世界に対して胸が張れるものだと思います し、そうしていただきたい。ぜひ今の線よりも後退はしないでいただきたいということ だけ一言。 ○高久部会長  私は、後退はないと思っています。ただ、一番問題になるのは臨床的に診断などに使 われている検査や、研究と臨床の間のグレーゾーンにある研究についてはもう少し議論 をしないと医療の現場が混乱するので、この指針を全部に広げるとすれば、後退はしな いとしても、患者さんが困らないように少し視点を変える必要があるのかなと。それが あるかどうかということも含めて、今後いろいろと議論をしていく必要があるのではな いかと思います。柴田委員がおっしゃったように、これが基本になるということは間違 いないと思いますし、先ほども私が言いましたように、科学技術庁の方のガイドライン もこれが基本になる。本日は3人御出席いただいていますが、遺伝子解析による疾病対 策・創薬等に関する研究における生命倫理問題に関する調査研究検討委員会の先生方が 非常に御努力されて立派な指針をつくっていただきましたので、これが基本になるとい うことは間違いないと思います。範囲を少し広げるということを今後また検討していく 必要があるということです。  それでは、そろそろ時間もまいりましたので、これで終了させていただきます。次回 またいろいろと御議論をいただくことになると思います。専門委員の3人の先生方には 改めて御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。                               (了) 問い合わせ先 厚生省大臣官房厚生科学課 担 当 宮本(内線3804) 電 話 (代表)03-3503-1711 (直通)03-3595-2171