00/02/03 第1回「健やか親子21」検討会議事録 第1回 「健やか親子21」検討会議事録 厚生省児童家庭局母子保健課 第1回健やか親子21検討会議事次第                   日時:平成12年2月3日(木)13時30分〜17時                   場所:霞が関東京會館シルバースタールーム 1 開会 2 挨拶 3 委員紹介 4 議事 (1)「健やか親子21」の趣旨について (2)今後の進め方について (3)その他 (資料) 1「健やか親子21」について 2「健やか親子21」の主要課題について 3「健やか親子21」人会の今後のスケジュール(案) (参考資料) ○ 少子化対策推進基本方針 ○ 新エンゼルプラン ○ 生涯を通じた女性の健康施策に関する研究会報告書 ○ 健康日本21 ○ わが国の母子保健 ○大平課長補佐 定刻になりましたので、ただいまから「健やか親子21」検討会を開催いたします。本日 は大変お忙しい中お集まりいただきまして、大変ありがとうございました。開会に当た りまして、厚生省科学技術・児童家庭担当堺審議官から御挨拶させていただきます。 ○堺審議官 ただいま御紹介いただきました科学技術・児童家庭担当審議官の堺でございます。 本日は御多用中、「健やか親子21」検討会の開催の御通知を申し上げましたところ御参 集いただきまして、まことにありがとうございます。また、日ごろから母子保健行政の 推進につきまして多大な御尽力をいただいていること、御協力をいただいていること、 また我々に対して御叱声あるいは御援助をいただいておりますことに対しまして、この 席をかりて厚く御礼申し上げます。  御案内のとおり、近年の急速な少子化の進行がいろいろな分野に影響を及ぼしている ことは既に御承知のとおりでございます。そういうことでございまして、広く国民的な 取り組みを進めることが大切だということで、政府といたしましては昨年末に少子化対 策推進関係閣僚会議におきまして少子化対策を推進する基本指針を策定したところでご ざいます。この基本指針におきまして特に重点的に取り組むことが必要な分野でござい ますところの働き方とか保育サービス、相談支援事業、母子保健、教育・住宅等につい ての施策の具体的な実施計画を定めることにされたところでございます。  また、与党の少子化対策検討会の提言を踏まえまして、厚生大臣を初めとする6大臣 の合意によりまして重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画、いわゆる新エン ゼルプランを策定したところでございます。この新エンゼルプランは仕事などの社会活 動と育児を初めとする家庭活動の両立にかかる負担感や子育ての負担感といった少子化 の要因を緩和し、安心して子育てが出来るようにするための環境整備を進めるに当たっ て特に重点的に取り組むことが必要な働き方や保育サービスなどの分野における対策を 具体的にかつ計画的に推進するために策定したものでございます。このうち厚生省関係 につきましては、低年齢児の受け入れの拡大など保育サービスの充実、地域子育て支援 センターの整備などの在宅児を含めた子育て支援の推進、周産期医療ネットワークなど の母子保健医療体制の整備の推進を柱として平成16年度の目標を設定いたしまして、対 策を推進していくことにしております。 今後は、少子化対策推進基本指針並びに新エンゼルプランに基づいて総合的な子育て支 援対策を推進することとしている訳でございます。母子保健の分野につきましては、新 エンゼルプランの中で計画的に整備すべき重点施策として位置づけられました妊産婦死 亡、周産期死亡等のさらなる改善、より安心して出産することの出来る体制を整備する ための周産期医療ネットワークの整備、不妊に悩む方々に的確な情報を提供し専門的な 相談に応じられる体制を整備するための不妊専門相談センターの整備の推進などを行う こととしておりまして、母子保健施策の一層の充実に努めてまいりたいと考えている訳 でございます。  さて、我が国の母子保健の水準はおおむね世界のトップレベルに達した訳でございま すが、妊産婦死亡や乳幼児の事故死について改善の余地があるということなどの残され た課題、あるいは思春期における健康問題、親子の心の問題の拡大など新たな課題が出 てきております。このため、本年中にこれまでの母子保健の取り組みの成果を踏まえま して、残された課題と新しい課題を整理、21世紀の母子保健の取り組みの方向性を提示 すると同時に、目標値を設定して関係機関・団体が一体となって推進する国民運動計画 として「健やか親子21」を策定し、実施することといたしました。また、この計画は少 子・高齢社会におきまして国民が健康で明るく元気に生活出来る社会の実現を図るため の「健康日本21」の一環となるものでございます。  本日お集まりいただきました先生方には以上の趣旨を御勘案の上、「健やか親子21」 を策定するに当たりまして幅広い見地から、いろいろな角度から御検討いただきたいと 考えております。改めて申し上げるまでもなく、母子保健は生涯を通じた健康の出発点 であると同時に、次の世代を健やかに産み育てるための基礎であることから極めて重要 なものでございます。私どもといたしましては、皆様方の御協力を得て策定・実施する 「健やか親子21」が21世紀の我が国の母子保健のさらなる向上に寄与するものと確信し ております。どうか御検討のほどをよろしくお願い申し上げまして、私の御挨拶とさせ ていただきます。よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。 ○大平課長補佐 誠に申し訳ございませんが、堺審議官は所用のため退席させていただきます。 次に、本日御出席の委員の先生方を紹介させていただきます。本日は26人の委員の方が 出席予定でございますが、現在4人の方が遅れております。  岡本委員でございます。  神谷委員でございます。  北村委員でございます。  小池委員でございます。  巷野委員でございます。  古平委員でございます。  小林委員でございます。  澤委員でございます。  清水委員でございます。  新家委員でございます。  多田委員でございます。  田中哲郎委員でございます。  田中昌子委員でございます。  藤内委員でございます。  櫃本委員でございます。  平山委員でございます。  前川委員でございます。  美濃輪委員でございます。  矢内原委員でございます。  柳澤委員でございます。  山縣委員でございます。  渡辺委員でございます。 以上でございます。 次に、厚生省の職員を御紹介させていただきます。 児童家庭局・藤崎母子保健課長でございます。 保健医療局地域保健健康増進栄養課・野村保健指導官でございます。 母子保健課・椎葉課長補佐でございます。 同じく武田補佐でございます。 最後に申し遅れましたが、私、同じく母子保健課課長補佐の大平でございます。どうぞ よろしくお願いします。  議事に入ります前に、本検討会の座長、副座長を決めたいと思いますが、委員の皆様 方、御意見はございますでしょうか。  御意見がないようですので、事務局の案といたしまして中央児童福祉審議会の母子保 健部会長で、日本子ども家庭総合研究所長の平山委員に、そして副座長に東京大学教授 の柳澤委員にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。 (拍手) ○大平課長補佐 それでは、皆様の賛同が得られましたので、平山委員に座長を、柳澤委員に副座長をお 願いしたいと思います。 それでは平山委員、座長席に移動願います。 (平山委員、座長席に移動) ○大平課長補佐 それでは、平山委員に御挨拶をお願いいたしまして、以降、議事の進行をよろしくお願 いいたします。 ○平山座長 平山でございます。ただいま司会役の御指名をいただきましたので、私より先輩の先生 もおられますけれども、これから「健やか親子21」検討会の進行役を務めさせていただ きます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  お手元の資料にもありますが、以前に「健康日本21」が発表になりましたときに内容 的に母子保健が抜けているなということで気になっていたのでございますけれども、今 日は「健やか親子21」という格好で別に、この一環としてと申しましょうか、検討会が 開かれる運びになりましたので、私としても大変うれしく存じている次第でございま す。これから内容等を伺いながら先生方の御意見を集約していきたいと思いますので、 御協力のほどをどうぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、お手元に議事次第がございますし、資料をいろいろ配っていただいており ますが、まずお手元の資料の紹介と申しましょうか、チェックをお願いしたいと思いま す。事務局からお願いいたします。 ○椎葉課長補佐 それでは、資料の御確認をいたします。  まず、議事次第をごらんいただきたいと思います。この議事次第の中に資料の種類が 載っておりますので、これを御参照いただければと思います。 まず1枚目が議事次第でございます。そして、1枚めくっていただいて本日の検討会 の委員名簿でございます。右肩に資料ナンバーがついておりますけれども、資料1「健 やか親子21」でございます。次の資料2でございます。「健やか親子21の主要課題につ いて」資料3が「健やか親子21」検討会の今後のスケジュール(案)でございます。そ して、委員の先生方にお配りしてございますけれども、検討会の名簿の住所録がついた 3枚紙でございます。  以上が本日の資料でございまして、参考資料といたしまして、資料ナンバーは振って ございませんけれども、「少子化対策推進基本方針」でございます。同じく、新エンゼ ルプランと称しておりますけれども、「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計 画について」でございます。それから、「生涯を通じた女性の健康施策に関する研究会 報告書」でございます。以上3つが白いものでございまして、次に平山座長から今御説 明がございました「健康日本21」のパンフレット、ピンクのものでございます。それか ら、「わが国の母子保健」という日本地図の載っている茶色の冊子がございます。これ が本日の資料でございます。  また、先ほど直前に先生方のお手元に配られたと思いますけれども、渡辺委員から 「アタッチメントの暁とそのリスク」という冊子も配られてございます。  最後でございますけれども、日程調整のときに使う3月のカレンダーが載っておりま す。以上が本日の資料でございます。もし落丁等がございましたら事務局までお申しつ けいただければと思います。 ○平山座長 ありがとうございました。  お手元の資料はそろっておりましょうか。もし不足がございましたら、後ほどでも結 構でございますが、事務局におっしゃっていただきたいと思います。  それでは早速、議事に入りたいと思いますが、議事の最初が「健やか親子21」の趣旨 についてでございます。これを十分理解することがまず先決でございますが、この「健 やか親子21」の全体的な内容につきまして御説明いただきたいと思います。よろしくお 願いいたします。 ○藤崎課長 それでは、お手元の資料の1と2を用いまして、「健やか親子21」の趣旨並びに主要課 題等につきまして御説明させていただきます。  「健やか親子21」のイメージをとらえるのに多少分かりにくい部分があるかと思いま すが、少しお時間をいただきまして詳し目に御説明させていただきたいと存じますの で、おつき合いのほどをよろしくお願いいたします。  まず、資料1でございますが、3枚ございまして、「健やか親子21」の概略とイメー ジ、それから「健康日本21」との関係の図を示したものがございます。資料2の方では 具体的な主要課題について、なぜこのような主要課題を選択したのか、それらについて どういう基本的な考え方を私どもが持っているかという事務局としての考え方を述べた ものがございますので、それを御説明したいと思います。  まず、資料1でございます。「健やか親子21」についてということで、最初の「○」 のところにございますが、先ほどの審議官の話にもございましたが、なぜこういう「健 やか親子21」ということで21世紀の母子保健ビジョンをつくっていく試みをしようとし たのかということでございます。まず、基本的な立脚点は私ども20世紀、この母子保健 領域というのは大変大きな成果を上げてきたのではないかという認識を持つ訳でござい ます。そういう認識に立つ中で21世紀を来年迎える中でどのように考えていったらいい のかという考え方の整理でありますが、1つはこれまで母子保健の水準、いわゆる健康 指標をあらわす水準が大変よくなってきた、世界的にもトップレベルである。また、母 子保健法などを含めました母子保健医療のシステムもかなり完備したものになってい る。そういう中で何がまだ少し足りない部分か、よりよい状態にしていくには何をして いったらいいかというところでの改善の余地のある部分をまず同定していこうというの が1つであります。  そこで、ここに挙げましたように特に指標的に申し上げれば妊産婦死亡率であります とか乳幼児の事故死、あるいはSIDSなどが国際的水準から見てまだ足りないという ところでかなりはっきりとした部分ではないかと考えております。  また、新しい課題は何なのかということでありますが、私自身は一言で申し上げれば からだの問題につきましてはこれまで随分よくなってきた。これから先も既存のシステ ム、制度あるいは学問の進歩などを通じて、いわば粛々とからだに関する健康というも のは継続して向上していくであろう、またしていかなければならない。しかし新しい課 題、現在より取り組まなければいけない課題として考えるならば心の問題というものが 出てきたのではないかと考える訳であります。それは1つには思春期における心を含め た保健の問題ということにもなりますし、一方では育児不安の問題、ストレスの問題、 子供が生まれてから育っていく成長過程での心の問題、そして両者をつなぐ問題として の児童虐待の問題、こういう心の問題として一括されるような新しい課題というものが かつて感染症対策に取り組んだり生活習慣病対策に取り組んできた我々の公衆衛生の新 しい課題として大きく浮かび上がってきているということではないかと考える訳であり ます。  さらにもう1つの視点といいましょうか、考え方はここにも示しておりますが、小児 医療あるいは地域母子保健活動のようにこれまでの高い保健水準を支えてきた、実現し てきた客観的な条件がこのまま放置しておくと侵食されかねないような状況が実はある のではないだろうか。小児医療に関して申し上げれば、後の方に出てまいりますが、小 児病棟の閉鎖の問題あるいは小児科医師の確保の困難性の問題でありますとか、そうい うことが小児救急医療、新生児医療あるいは小児精神医療という領域において非常にし わ寄せが来ているという問題。これは放置しておく、つまり我々が何も手を打たなけれ ば、ひょっとしたら5年後、10年後に取り返しのつかないようなことが起きているかも しれない。あるいは地域母子保健も、非常に母子保健はいいから、よくやれているから ということで、ともするといいのではないかということで人員の配置の問題なり予算の 配分なり、取り組みの重点といいましょうか、そういうところになかなか目がいかない 危険性があるのではないかということであります。  こういう今までよくやれてきたことを支えてきた客観条件を侵食させないような、い わばそういう意味では予防的な措置と申しましょうか、今手を打っていこうという課題 を21世紀に向けて我々は早目に考えておかなければいけないのではないかと思う訳であ ります。後段の方になりますが、そういうことを問題意識と持った上でこれまでの母子 保健の取り組みの成果を踏まえるとともに、残された課題と新たな課題を整理して21世 紀の母子保健の取り組みの方向性を提示していきたい。この検討委員会で御議論いただ いて、それを国として全国のいろいろな関係団体等にお示しして、これが21世紀に重点 的に取り組んでいくべき課題として位置づけようではありませんかというメッセージを 発信していくものにしたい。そして、それはまたただ抽象的にやっているのでは具体性 がありませんので目標値を設定いたしまして、関係機関・団体が一体となって推進する 国民運動計画という位置づけにしていこうと考えている訳です。  なぜ目標値であり、なぜ運動計画なのかということでありますが、これまでの国の施 策の持っていき方というのはこういう検討会でいろいろ御議論いただいて、こういうこ とが重要だということを御提言いただいて、そういうものを予算化して事業として地方 自治体に補助金として、あるいは国独自の事業として、あるいは関係の専門職能団体の 方に委託のような形でお願いして何かを進めていくという形態が中心だった訳でありま すが、これからお話しする4つの主要課題につきましてはそのような手法では問題の解 決がなかなか困難な部分が多いだろうと認識しております。  つまり、関係する自治体あるいは職能専門団体等、いろいろなボランティアのグルー プ、公益法人、そういう方々がそれぞれの分野で独自の努力といいましょうか、そうい うことを行っていただくような形で進めていかないとなかなか成果の上がらないような ものであろうと考えているからであります。それを具体化していくためには、1つの努 力目標のような形でここを目指そう、10年後にこういうものが達成されるようにこうい うふうに目標値を設定しようと明確に出していきたい。そして、その中間年あたりで見 直しといいましょうか、中間評価をして、今までの達成状況がどうか、方法論的に見直 していくべきものはどうかということを考えながら進めていくことになるのではないか と考えております。  「健やか親子21」のイメージという破線で囲ってあるところですが、この中でお示し しているように今こういうことになる訳でありまして、主要課題として4つ提示いたし ております。1つが、思春期の保健対策の強化と健康教育の推進であります。2つ目 が、妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援。3つ目が、子供のから の健やかな発達を図るための環境整備。4つ目が、育児不安の解消と子供の心の安らか な成長の促進であります。これは私どもが随分と考え、いろいろな方々の御意見などを お聞きしながらこういう柱でどうかということに至った訳でございますが、もとよりこ の柱に含まれないこれ以外のことが重要ではないという意味では全くございません。今 まで母子保健上あるいはさまざまな補助事業、あるいは関係団体等によりますいろいろ な自主的な活動等すべて重要なことばかりでございます。それはそれとして進めていた だきながら、特に先ほど申し上げたような視点で21世紀の冒頭、10年間にどこに力点を 置いてやっていくか、主要課題として位置づけて共通して進んでいく課題かというもの をこの4つの柱で考えていったらどうかという趣旨でございます。したがって、これか ら御説明していく事項に含まれないものが不必要であるということでは全くございませ ん。それはそれとして事業として継続していくものはたくさんございます。  その下の「○」でありますが、この性格を少し違う視点から述べたものでございま す。「健やか親子21」は、安心して子供を産み、健やかに子供を育てることの基礎とな る少子化対策としての意義もあるということでございます。審議官の説明にもございま したが、昨年の暮れにはいろいろと大きな動きがございまして、少子化対策関係閣僚会 議で今後の基本方針をまとめましたし、それを早急に進める具体策として新エンゼルプ ランが示された訳であります。また現在、通常国会には少子化社会対策基本法案という ものが出されておりまして、少子化対策に向けてどういうふうに法律をつくってやって いくのかというお話がございます。そういう中に母子保健がかなり大きな柱としてすべ て取り込まれております。そういう意味で母子保健対策はもちろん少子化対策のために 母子保健があるという意味ではございませんが、今の少子化に向けて日本がどうしてい くのかという大きな課題の中に母子保健も包含されていく側面があるということであり ます。あわせて現在、少子・高齢化社会において国民が健康で明るく元気に生活出来る 社会の実現を図るための国民の健康づくり運動ということで「健康日本21」の一環とな るものという位置づけもなされております。この点につきましては後ほど3枚目に図が ございますので、簡単に説明いたします。  続きまして2枚目になりますが、具体的イメージのところで、今お話ししたのは非常 に抽象的なところから始めている訳ですが、そこをもう少し具体的にイメージを持って いただきたいということでお示しするのがこれであります。  柱のところは今申し上げたことです。  2として構成ですが、この4本の主要分野につきまして、まず現状なり問題点の分析 の後、具体的な方策をそれぞれに提示していくことになるだろう。可能な限り具体的な 方策、方法を提示していくような形にしていただきたいと思います。目標値をそれぞれ 設定していく訳でありますが、これはまだ本当に粗いものでございまして、先生方の御 議論の中でこれを精査していただき、またもっと増やしていただき、あるいは削ってい ただき、具体的に数字を入れていくことをお願いしたい訳ですが、2010年に向けた10年 間の目標ということであります。  例えば思春期の保健対策ということであれば、今は10代の人工妊娠中絶手術率が増加 しておりますけれども、こういうものを下げていくことが目標値として妥当なのかどう か。あるいは、避妊の実施率も思春期ということで基本的には10代を考えておりますけ れども、避妊の実施率ということでもって見ていくのはどうだろうか。また性感染症の 罹患率、あるいはビヘイビアの問題としての喫煙率等々、こういうものはどうかという 例でございます。  妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援についてはどうだろうか。 例えば妊産婦死亡率、先ほどのお話にありましたように国際水準から見ると必ずしもト ップレベルにはいっていない。決して悪い方ではないのですが、まだ改善の余地がある 分野である。例えばこれを10年間で半減させていくような目標として設定し得るであろ うか、早産の問題あたりを1つの予防的な観点から何か指標として位置づけられるのだ ろうか、周産期医療ネットワーク整備のように仕組みを整備していくというものは指標 になり得るだろうか等々であります。  3つ目ですが、子供のからだの健やかな発達を図るための環境整備。これはからだの 問題と環境整備でありますので、乳幼児死亡率が世界トップである訳ですが、事故死亡 率などをまたさらにある程度下げるという前提のもとでさらに下げるという目標値が設 定していけるのだろうか。小児救急医療もいろいろ問題になっており、今日の朝刊に大 きな記事が載っていましたが、そういうことは一体どうなのだろうか。それから、予防 接種実施率は今後心配ではないだろうか。こういうものが落ちないようにどういうふう にしていくかということはいかがだろうか。  育児不安の解消と子供の心の安らかな成長、親子の心の問題はいかがでしょうか。こ れを一体何ではかったらいいのだろうかというのは大変難しい訳でありますが、例えば 育児ストレスの度合いをアンケートではかるのか。何か主観的な指標になるかもしれま せんが、こういうものをベースラインでどこかにとって、これが10年後にどう変化して いるかというので見るような方法はあるだろうか。小児の心身症は本年度の厚生科学研 究の方でいろいろとやっておりますが、小児の心身症の数をある程度の推移で取り組み の成果が見られるだろうか。それから、産婦人科・小児科の連携は後ほどもお話し申し 上げますが、非常に重要な要素を持っている訳です。こういうことを何か連携が進んだ という具体的な指標で見ていくような手はないだろうかなどなど、アウトカムにかかわ るものとかプロセスにかかるものとか、あるいはインパクトにかかわる部分、そういう 指標の種類の幾つかのものが盛り込まれております。そういうものを含めて指標をどの ように設定していくのかということが1つ重要な課題だろうと思います。  その次に国の役割の明示とあります。これは国と地方公共団体及び関係団体と分けて ありますが、広い意味では一緒であります。それぞれがどういう役割を果たしていくの かということでありますが、言い出しっぺでありますので、国として申し上げるなら ば、ここに掲げたことを責任として果たしていく必要があるのではないかということで あります。  4つ目の地方公共団体及び関係団体等の役割の明示ということでございます。これは 本当に例示でありますので、ここに名前が入っていない団体等が関係ないという意味で は決してなくて例示として挙げたものでございますが、それぞれの専門団体あるいは公 益法人、地域活動組織、ボランティア団体等、こういう方々がそれぞれの柱の具体的な 項目についてどのような役割を果たしていただけるのかということが10年後に成果が上 がるかどうかのかぎであろうと思っております。  3枚目に入りますが、先ほど申し上げた「健やか親子21」と「健康日本21」の関係で ございます。線が引いてあって平成12年と分かれておりますが、平成11年末までに少子 化にかかわる先ほどの国のいろいろな動きがございまして、そういう流れと平成12年に 「健やか親子21」ということでこれから考えてまいりますので、「健やか親子21」が発 進するときの「健康日本21」との関係を時間的に図示したものであります。  昨年までは少子化対策に取り組んでいく中に母子保健対策が保育や教育と並んで入っ ていくということがございましたし、また並行して「健康日本21」は国民の健康づくり 運動ということで進めておりますが、主として生活習慣病対策に力点を置いた進め方に なっておりました。それは今年になっても変わらない訳ですが、今度は平成12年になり ますと事情が少し変わってまいりまして、「健康日本21」のフレームが広がっていくと いうことで、従来の生活習慣病対策も大きいフレームの主要部分であり、1つのボック スになってまいります。我々の立場で見ますと母子保健対策として今までやっていたも のがあるのですが、これを国民運動として展開して、ここに掲げましたような目標値の 設定、関係機関・団体等の役割の提示を示して、広く「健やか親子21」という取り組み をボックスで設定した訳であります。それが「健康日本21」という中の一構成要素とし て入ってまいりました。  このほかにも例えば全体の事故対策とか、場合によって将来は精神保健とか感染症対 策とか、他の分野ですので分かりませんが、そういうものも「健康日本21」という大き な運動計画の中に入ってくる可能性もあるとは伺っておりますので、母子保健の「健や か親子21」もそういう中にこういう形で入っていくと御理解いただければと思います。  続きまして、資料2であります。これは「健やか親子21」の主要課題について。話が だんだん具体的になってまいりますが、このペーパーそのものはまだ未完成でありまし て、もう少し体系的に書いてお示し出来ればとは思ったのですが、そこまで準備が間に 合いませんでしたので、「健やか親子21」の主要課題を語るペーパーということで全体 の構成のイメージも含めてつくってございます。中途ですけれども、主要課題について はIIにございますが、この主要課題については私どもとして一応こういう考え方でこの 柱を考えた。そして、これについてこういう方向性を念頭に置いているという事項でご ざいます。  まず1本目の柱、思春期保健の強化と健康教育の推進であります。これは先ほども少 し申し上げてありますけれども、この資料に沿って御説明いたしますが、なぜ思春期保 健の強化と健康教育の推進が柱として必要なのかということであります。これは思春期 において現在、性の逸脱行動に伴う人工妊娠中絶や性感染症、薬物使用、喫煙・飲酒、 過剰なダイエット等が増加しておりまして、現在の彼ら自身の健康をむしばんでいる訳 であります。また、あわせて心身症など思春期特有の心の問題も深刻化しております。  これらは現在の問題であるということもそうですが、これから先の日本を考えたと き、あるいは本人たちの成人以降の生涯にわたる健康、あるいは配偶者、子供へのイン パクトを考えたときに彼らが今この思春期保健の問題として健康に問題があるというだ けではない、もっと大きな広がりを持つ事項ではないかと思う訳であります。これはそ ういう意味で非常に重要な問題であって、考えていかなければいけないというのが基本 認識である訳であります。  ただし、このことは我が国の社会環境の反映であり、時代的刻印を強く受けておりま して、当然のことですが、これを母子保健の領域だけで解決できようはずもございませ ん。しかし、10年という目標を立てて考えていこうということで申し上げましたように 今から手をつけていって、10年たったときにこういう問題が少しでも改善の方向に向け て、今は悪くなる一途でありますから、それがよくなって日本の将来のために何か役立 つような形で取り組んでいく意義があるのではないかという意味で、この分野は一般的 に思春期保健が大事だという部分的な取り組みではなくて、柱として1本立てて集中的 に取り組んでいく課題ではないかと考えた訳であります。そしてまた同時に、この時期 は将来母となり父となる準備段階でもありますので、母性・父性に対する正しい理解と 自覚を与える必要があるということであります。  では、具体的に取り組みはどうするのかということです。大変難しい訳ですが、基本 的には教育・啓発普及・相談といった問題の正しい理解と情報の提供を通じた問題行動 の是正を目指すことになる訳ですが、今までいろいろやってきてなかなか効果が上がら ない訳です。したがって、量的また質的にかなり違う発想で、あるいは量的な場合には かなり拡大を目指して、質的には転換を図りながら取り組んでいかなければいけないだ ろう。そこにどう知恵を絞っていくのかということでありますが、量的拡大に関しては 医療、地域保健、児童福祉、学校保健等の関係各分野の取り組みをとにかく強化してい く。量的拡大ですから、そういうことである訳です。それから、青少年対策ということ で今まで行われてきましたキャンペーン等がありますが、こういうものの強化。それか ら、民間団体やボランティアグループ、マスコミ関係者の協力も不可欠であると考えて おります。  質的転換につきましては、効果的なメッセージを提供する教材、媒体、教育手法の開 発が急がれると思います。何をどういう方法で訴えていったらば具体的な行動変容につ ながることが期待できるのかということであります。特に性教育につきましては避妊方 法も含めた、より踏み込んだ男女の関係や相互理解の必要性の説明等も避けるべきでは ないと私どもは考えております。これをどのようにしていくのかというのは大変な問題 であります。また、ポジティブな理解を促進するようなアプローチも大変重要であろう と思っております。  もう1つ大事なことが、親への教育・支援を含めた思春期の問題を有する子供たちを 持った本人あるいは親へのケアの充実が具体的な成果を実現する有力な方法。その方々 をどう支えていくのか、支援していくのかという部分であります。これについては関係 者・機関の連携の強化が重要であり、特に学校保健と医療・地域保健・児童福祉との連 携システムが非常に重要でありまして、これを日常活動としてどう位置づけられるの か。これは大変な労力を要する分野でありまして、これを恒常的にやっていくのは大変 難しい訳です。しかし、このシステムを何か考えていかなければいけませんし、組織的 対応と管理者・関係者がどういうふうにこれをつくっていくのか。大変困難な課題であ りますが、ここは避けて通れないという気がしております。  第1の柱の最後になりますが、こういう取り組みを支えるための人材の担保が必要で あります。いろいろな専門家がおられますが、特にここで強調したかったのは行動とし て性の逸脱行動その他があらわれてまいりますが、根っこは心の部分にかかわってくる お話でありますので、小児精神科医や相談業務に従事するカウンセラー等の専門職の確 保をどうしていくのかということであろうと思いますし、関係者それぞれがそういう知 識の習得とかカウンセリング技術の修得が必要であろうということで基本的な方向性を 私どもとして考えているということを提示させていただきました。  そして、これはあくまでも基本的な視点、方向性でありまして、今申し上げたことを 具体的にどうやっていくのかということを次のステップとして議論していかなければな らない訳であります。さらに関係者それぞれはどういう方々がどういうことをしていく のか、目標値を何に置こうかということについて次回以降、それぞれの柱について毎回 御議論いただきますので、事務局案としてそういうものをお示ししつつ先生方で御議論 いただいて、どういう方向にしていったらいいかを御議論いただきたいと思います。  続いて2本目の柱でございます。安全で快適な妊娠・出産の確保と不妊への支援。な ぜこの柱を主要課題として取り上げたかということであります。これはまず問題認識と しまして、妊娠・出産に当たっては女性に身体的かつ精神的負担が大きく課せられてい るということでありまして、いろいろな意味での負担が妊娠の過程から分娩・出産に至 るまである訳です。  これを今の時代の流れからいたしますと、1つはリプロダクティブ・ヘルスという国 際的な動向。これを受けた男女共同参画の流れなどもございますが、いわゆるリプロダ クティブ・ヘルス、女性の性と生殖に関する健康と権利の観念、あるいは少子化対策の 中で強調されました安全で安心して出産出来る環境の実現の位置づけが今急速に普及し ておりまして、これは21世紀の課題として取り組んでいかなければいけない領域ではな いかと考えております。それから、安全ということは分かりやすいのですが、快適な妊 娠・出産の「快適」という部分の持つ意味と不妊への支援というところが従来から見ま すとかなり踏み込んだと申しましょうか、新しい時代を見越した視点と私どもは考えて いる訳であります。安全という観点からいけば、まず第一に目標としては妊産婦死亡率 を下げていくということでありますし、ハイリスクケースを初めとした妊娠・出産にお ける母体・胎児の安全を最大限に追求していくという努力を継続して行っていくことが 1つあります。  続いて、妊娠・出産にかかるQOLの向上を目指す、いわゆる快適性の問題でありま す。これは妊娠期間中に女性の側から見て種々の苦痛や不快感などがある訳であります が、これをどのように解消・軽減していくのか。そのために理解ある家庭環境や職場環 境等の実現を図っていくのかということであります。具体的な例として受動喫煙の防止 とか乗り物での優先的な席の確保とか、かなり具体的なことも例として書いてございま すが、こういうところにどのようにかかわっていけるのかということであります。  また、一方で少子化の中で乳幼児との触れ合いの経験が少ない妊婦が増えておりまし て、出産に当たっての不安あるいは出産後の育児不安が大変強くなっておりますので、 この解消・軽減に向けた支援が大変重要ではないか。こういうことは妊婦たち自身のQ OLにも当然つながる訳ですが、広い意味で妊娠・出産が快適な環境の中で行われるこ とによって子供をもう1人もとうということをあきらめないで済むようなことに若干で も貢献出来ればという側面もあるのかなとは考えております。本人が子供をもう1人も ちたいと思ったときにこういう妊娠・出産の不快な経験なり、そういうものが判断をネ ガティブな方に持っていくという要素もあるのではないかと考えております。  さらに、自然かつ希望する形態で分娩したいという要望も今の中に入ってまいりま す。これが大事な訳ですが、安全性を確保しつつ、このような希望にどれだけこたえて いけるのか。先般、育児文化研究所につきまして私ども通知を出させていただきました が、医師や助産婦の立ち会いのない分娩がいいのだという宣伝をされている団体があっ て、真に受けたために死亡した胎児があった訳です。そういうことが起きてはいけませ んので、安全が第一でありますが、それを押さえた上での快適さ、本人の要望、入院中 の母児同室の希望もかなえられるようにしていくことが必要かと思います。  そして、不妊への支援であります。これは不妊治療の医学的進歩を最大限に享受出来 る治療が適切に受けられるような体制づくりと同時に、不妊の技術が進歩したがゆえに 逆にそれによって混乱が起きる。あるいは、そうしなければいけないというようなプレ ッシャーを受ける。あるいは、幾ら不妊治療を行っても、体外受精をやっても子供が出 来ない場合の心の問題への対応を含みます。これはカウンセリング体制を前提とした形 で行われなければいけないのではないかということを含めた標準化といいましょうか、 こういう課題があるのではないかと思っております。  これらの取り組みを進めるには、この分野は極めて専門家の役割が大きい分野だろう と考えておりまして、専門職の方々の意識の変革というと失礼な言い方でありますが、 今言ったような方向での意識を持って取り組んでいただくというお話、あるいは産科と 小児科の連携、あるいは分娩・入院環境の改善とか地域保健サービスにおける内容の転 換、こういうものが必要になってくるだろうと思っております。これらをそれぞれ具体 的にどうするのかという課題になってまいります。  さて、3番目の柱であります。子供のからだの健やかな発達を図るための環境整備。 これはどういうことを考えているかということでありますが、先ほどの冒頭の御説明の 中で申し上げましたように、これまでよくやってきたものの水準が低下していく危険性 があるという領域がこの分野ではないかと主として考えている訳であります。ここをど ういうふうに食いとめていくのかという取り組みが主とした課題でありますが、あわせ てさらに保健水準を向上させていく課題も当然にございます。水準の向上に向けては先 ほど申し上げましたようにSIDS、事故死の予防あるいは周産期医療、小児救急医療 等の体制の整備を通じて、さらに死亡率の低下が期待出来ると思います。また、もう一 方で周産期医療の進歩等によって救命された低出生体重児につきまして、その子たちが 健やかに育つ体制をどうしていくのかということがさらに保健水準を向上していくべき 分野の課題だろうと思います。  次からが予防しようということについてであります。まず小児医療の不採算の問題で あります。これは診療報酬の問題が大変大きい訳で、それを外して有効な対策というの はなかなか難しい訳で、これは何遍かの診療報酬の改定なども経ながらトータルなコン センサスを得ながら進んでいく方向かとは思います。そういうことに対する提言などと あわせまして、しかし今現在その他に何が問題で、どういうことが改善されていけばい いのかということをここで明確にしておく必要があると思います。  私どもは新生児医療、救急医療、小児精神医療等の分野、特に専門医師の不足が懸念 されていると認識しておりますが、これは先生方によって随分とらえ方も違うだろうと 思いますし、このあたりは十分に御議論いただきたいと思います。また、小児病棟の閉 鎖に伴う医療水準の低下の問題もどのようにお考えかあたりもぜひお出しいただいて修 正していただければと思います。この部分などにつきましても、だんだん体制が崩れて いきますと臨床研修体制を整えていくのも大変時間がかかる訳でありまして、そうなら ないうちに何とかしたいという思いであります。  地域保健も同じでございます。現在、介護保険や高齢者対策も大変重要な訳で、自治 体としてはそちらの方に介護保険の実施に向けて今取り組んでおられることは我々も十 二分に承知いたしておりますが、そういうことでそちらの方に力がいくことによって母 子保健が等閑視されていくことの怖さを、これから先21世紀を考えたときに我々が思わ ざるを得ない訳でありまして、そういう意味で自治体の責任者を初めとした関係者の理 解を求めて体制を図っていくということであります。このあたりも具体的にどういうふ うにしていくのかということを考え、また目標なども設定していかなければいけないな と思います。  個別対策の分野としては予防接種率の低下が今までの保健水準を向上させてきた1つ のメカニズムとして重要だったものが今後若干心配がある分野でありまして、このあた りが落ちないようにどういうふうにしていったらいいのか。ただ、これはあくまでも義 務接種ではございませんので、安全と効果とリスクを冷静に判断して最善の注意を払っ た上でそういうことが達成されるような取り組みということになっていくのではないか と思いますが、ここも具体的な課題として我々の問題意識の強いところであります。  最後に4本目の柱でありますが、育児不安の解消と子供の心の安らかな成長の促進。 これは先ほど申しましたように親の問題、主として母親。父親も当然入る訳ですが、そ れから子供が育っていく過程、そしてその両者の接点としての今社会問題化している児 童虐待の問題。こういうことを一くくりにして親と子の心の問題というとらえ方でこの 問題を大きな柱として正面切って取り上げていかなければいけないのではないか。これ までも心の問題は随分言われてまいりまして、私どもも国の補助事業として子供の心の 問題とかいろいろやってまいりましたが、全体の取り組みの中で必ずしもそれが主要な 柱という形で位置づいていないうらみもございますし、また医療の側面においても直接 心を扱うような局面での診療の場においては十分にそういうところが対応される訳であ りますが、日常のそのほかの分野の診療の中で心の問題をもっと考えていけば効果が上 がるのにと思うところに、しかしなかなかそれが出来ないということも種々ございまし た。そういう意味でこれをとにかく主要課題に据えて取り組んでいかなければならない という問題認識であります。  このことも実は社会環境の変化を思春期保健と同じように影響を受けている訳であり まして、簡単に解決出来るとも決して思っておりません。ただ、この心の問題も感染症 対策とか生活習慣病対策のように公衆衛生上の問題として考えたときに、かつて感染症 死亡が重要な問題であったように、そして生活習慣病が今問題であるように、小児の問 題あるいは母子保健の問題であれば心の問題という形で問題のマグニチュードが公衆衛 生対策の課題として非常に大きなものになってきている。そして、因果関係がかなり明 確な部分がある。どう介入するかが難しい訳でありますが、そういう意味では同じよう な位置づけをしていっていいのではないかと思っております。とにかく社会がそういう 環境をつくり出してきてしまった訳です。核家族化であり、地域社会の崩壊であり、少 子化に伴う子育て経験の不足とか、そういう社会が日本に出現してきてしまった訳であ りますので、これは過去はそうではなかったと言っても仕方がないので、それに正面か ら向き合う。多少くどく申し上げておりますが、そういうことであります。根本原因の 解決なしにはなかなか難しい訳ですが、具体的に方向性としてはどんなふうに考えてい ったらいいだろうかということが次であります。  まず、妊娠−出産−育児期にかけて育児に焦点を当てた心の問題の観点からのケアシ ステムを構築するということで、今までも母子健康手帳が妊娠のところからスタートし て母子保健の体系というのがありましたし、また妊婦の委託健診などを医療機関の方で やっていただくということもございました。そういうところを基点にしてケアがなされ てきた訳でありますが、今まで申し上げたような心のケアという視点からの流れで見た ときにそういうふうになっていただろうかということです。  そういう見方で考えていく必要があるのではないかということで、妊娠−出産−育児 期にかけて育児に焦点を当てた心の問題の観点からのケアシステムを構築するというこ とであります。別な言葉で言えば、一人の人間を最適な環境で見守っていくということ であります。これを効率的にやるにはどういうふうにしたらいいかというと、リスクの 高い方に対するアプローチと全般的なそれ以外の方とを分けた形で対応していくという ことであります。具体的には虐待、子育て不安とかストレスを持つ可能性の高い妊婦を どう見つけて、どういうふうに位置づけて対応していくのか。特に虐待を起こしやすい お母さんあるいは家庭がある訳ですので、そういうところに対しては早期に介入してい く。継続観察・指導、問題発現の早期発見と対応というアプローチが必要でありましょ うし、もう一方で一般の妊産婦等に対しては相談、教育、予防的環境の提供あるいは早 期発見に留意する。これは総論的な言い方で、具体的には方法をもっと御議論いただく 訳ですが、そういう視点になるのではないかと思います。  また、次にありますが、心の問題に対応するには医療と地域保健とも従来のルーチン の業務形態を心の問題を常に意識したものに変えていく必要があるのではないか。心、 心とくどいようですが、そういうふうになっていく必要があると思います。  医療の場合でありますが、例えば産科であれば発育や出産の安全性にかかわる事項だ けでなく、育児への意識・不安のチェック、それに基づく関係者への紹介等であります し、小児科であれば通常の疾患の診察時に診断・治療だけでなく親子関係や母親の意識 云々につきまして観察やカウンセリングが行えるように日常的にしていただく。これは 既にやっておられる先生方が双方ともたくさんおられます。これをよりシステマティッ クにそういう専門職能団体の努力として、あるいはシステムとしてどういうふうに確保 していくのかということでもあろうかと思います。  地域保健の方であれば、例えばでありますが、今の乳幼児の集団健診を発達異常や障 害の発見だけでなくて親子関係、親子の心の状態を観察したり育児の交流の場として活 用していく、話を聞いてもらえる安心の場として活用するという形でのパラダイムの変 更が出来ないだろうかということ。思いつくものをいろいろと考えております。  そして、より重要なこととしては、こういう心の問題にかかわるお話は専門家が上か ら押しつけるのではなくて、自主的なグループの取り組みがなされることがより効果的 なケースが多い訳ですので、それがどういうふうに形成されていくのかということにつ いて、それをサポートしていく、支援していく、組織化という言葉も使いましたが、そ ういうものがやりやすくなるような方向に地域保健の関係者が力を注ぐ。あるいは、そ ういうことを可能にならしめるような技術を身につけていくことも必要ではないかと思 っております。  児童虐待に関しても基本的にそういうものを通じて対応していくのが本筋でございま すが、我々が確認すべきこととして医療とか地域保健での対応が児童虐待の予防と早期 発見に極めて大きな役割を果たし得るということと継続的観察・介入が可能という認識 と位置づけをまずきちんとするところから始める必要があるのではないかという点で す。これまで虐待の問題は随分と注目を浴びておりますけれども、どちらかというと通 報があってから、児童相談所がそういう連絡を受けてから危険を除去するためにどうい うふうに措置していくか、あるいは対策をとっていくのかということがかなり重点的に 語られてきております。母子保健という観点からは予防、早期発見の方に重点を置いた 取り組みをしていく必要があるのではないか。そういう部分と、現在ある児童相談所も 含めた地域のいろいろな資源との連携が重要になっていくというふうに役割を整理しな がらやっていったらいいのではないかと思います。  現在、児童虐待に関しては必ずしも保健所、市町村保健センター等でも事業の1つと して位置づけられていないところもございます。熱心なところはかなりいろいろやって いただいています。これを、児童虐待に対する対策としての予防、早期発見というふう に明確に位置づけていく必要があるのではないか。そうしないと日常的な取り組みとし てなかなか動きにくいということがあるのではないかと思います。  最後になりますが、心の問題に対しましては思春期のところでも申し上げましたが、 心の問題に向けての専門家の役割が重要でありますし、関係者が心の問題に対する理解 と関係する技術と申しましょうか、そういうものを磨いていく必要があるということで はないかと思います。  最後に IIIでございますが、こういうことをそれぞれの柱について次回以降、具体的 な取り組み、役割、目標値を御議論していただく訳ですが、こういうものが整理された 暁には推進協議会という形で関係団体・機関にお集まりいただいて、それを推進してい く母体をつくって行動計画などを策定して進めていくことになるのではないかと考えて おります。  以上、大変長時間いただきましてお疲れかと思いますけれども、第1回目であります ので、私どもがどういう問題意識で取り組んできたか、どういう方向を考えているかと いうことを御説明させていただきました。これはあくまでも私ども事務局の現時点での 考えでございますので、どうか先生方の御専門のお立場からどんどん違う視点で、また いろいろな発想で御議論いただければと思います。どうかよろしくお願い申し上げま す。 ○平山座長 ありがとうございました。 ただいま藤崎課長から「健やか親子21」という事業と申しますか、これからこの委員 会がやらなければいけない、考えていかなければいけない問題につきまして細かくお話 しいただきました。ここに挙げていただいた4本の柱が21世紀に向けての母子保健の主 たる課題ということでございまして、伺いながら大変広い分野にわたっての内容を上手 にまとめていただいたなと思いました。もちろん課長御自身がおっしゃったように漏れ があるかもしれませんけれども、そうしたものも含めながらこれから委員の先生方の御 意見を伺ってまとめていこうということでございます。  さらに10年後の目標値が定められるものについては定めて、達成の具合を見ていこう ということもお考えおきいただきたいし、結果としてこれらは21世紀から国民運動の展 開として広めたいというお考えでございますので、その方向での御意見をこれからちょ うだいしたいと思います。  ただいま御説明いただいたこと全体についての御質問はございましょうか。この点が よく分からなかったとか、いろいろございましたら最初にその点を御質問あるいは御意 見としてちょうだいしたいと思いますが、いかがでしょうか。  もし全体としてこの方向について御了承いただけるならば、4つの柱についてのそれ ぞれの先生方の御専門分野を中心とした御意見をいただければと思います。この4つの テーマはそれぞれ関係が深いところが1つの特徴でもありまして、そのうちのどれかと 言われても困るということがございましょうけれども、御意見をいただく進行上、今日 は殊に初めてでございまして、初めてお顔合わせの委員の方もおありかと思います。そ ういう意味で今日は恐縮ですけれども、全委員の先生方に一言はお声をいただきたいと 思います。つきましてはどこで御発言いただくかは、この4本の柱に私が独断と偏見で どこかで御指名させていただきますので、その柱にかかわりなく御意見をいただければ と思います。  先ほど課長のお話にありましたように、いずれこれから何回か委員会を開いていく間 にそれぞれの柱ごとにまとまった議論をしていただくことになりますので、今日はあく までも最初の顔合わせの機会に日ごろ先生方が考えていらっしゃる、感じていらっしゃ ることをお話しいただければと存じます。  では、4本の柱とその他、地域の保健行政関係の先生方ということで5つぐらいのグ ループに分けて順次指名させていただきますので、ひとつお許しいただきたいと思いま す。 ○田中(哲)委員 その前にいいですか。  今回、どちらかというと保健分野のことについてということですけれども、例えば妊 産婦死亡率を減らすということで医療、医学が非常に関係する分野もあるかと思うので その分野については今回余り触れないで、出来れば国民運動的な分野を中心に行うとい う考えで進めるということでしょうか ○藤崎課長 申しおくれましたけれども、今回の特徴はむしろ保健も医療も両方巻き込んだ総合的な 取り組みが特徴だと考えております。妊産婦死亡率であれば医療の役割が大変大きい訳 でありますし、周産期医療ネットワークをどうつくっていくかという問題とかハイリス クの妊婦を臨床場面でどういうふうに搬送していくかなどいろいろな課題がございま す。それはむしろ医療界の方が目標に向けてどのように取り組みをしていただくのかと いうことも具体的な役割の中に入っていく議論だろうと考えております。 ○平山座長 ありがたいことに母子関係では医療の立場の先生方も皆さんが保健に大変力を入れてい ただいているので、余り違和感なしに両方一緒に御議論いただけるかなと期待しており ます。  それから「健康日本21」の方で生活習慣病対策を主に取り上げられるものですから、 この委員会の中には生活習慣病にかかわりが特に深い例えば栄養関係の方とか体育・ス ポーツ関係の方は入っていないと理解したのですが、大体そういうことでございましょ うか。 ○藤崎課長 そのとおりでございます。 ○平山座長 それだけはひとつ御了承いただきたいと思います。  もし全体としての方向を御理解いただいたことにさせていただければ、この4本の柱 と全体をひっくるめた地域保健サービスということでの区分けを勝手にさせていただい て、ひとつ御発言いただきたいと思います。今日は時間としては4時ぐらいまでをめど に御意見をいただけて、その後、今後の方針について御相談が出来ればと存じますので よろしくお願いいたします。  それでは1本目の柱、思春期の保健対策の強化と健康教育の推進。これも大変大事な 点でございますが、名簿順でこれに関係が特に深そうな先生から御発言いただきたいと 思います。  まず北村先生、この辺でいかがでしょうか。 ○北村委員 今、課長の説明を聞きながら、思春期において性の逸脱行動に伴う人工妊娠中絶、性感 染症という「逸脱行動」という言葉が唐突に出てきたことに私はとても違和感を覚えて います。というのは、彼らにとっての性交というのは逸脱なのだろうか。実際、東京都 の幼少中高性教育研究会などのデータを見ても、高校3年生の性交経験率は女の子が39 %、男の子が37.8%という現状があります。これを認めるとか認めないということでは なくて、現実にこの世代の若者たちが従来の婚前性交の是非などということを全く問題 視しない状況の中で性交をとらえているという現実をきちんと受けとめなければいけな いだろうと思います。そういう意味で彼らの行動をもって「逸脱」という表現をしてし まうことは、むしろその時点で彼らとのギャップをつくり出してしまうのではないかと いう感じがしてなりません。このあたりはぜひ御説明いただきたいと思います。  いずれにせよ思春期の子供たちと長い間かかわっておりますと、この報告の中にもあ りますように彼らはまさに私たちが生きている社会の反映そのものであって、我々が大 人としての反省をもっと進めていかないと事態はいかようとも変わらないのではないだ ろうか。私は平山先生などがおつくりになられた家庭保健基本問題検討委員会の報告な どをまだ医者になりたてのころ勉強させていただきましたけれども、当時もそういうこ とを含めてずっと議論がされ、そういう取り組みがなされてきた割には、あるいは性教 育なども学校を初めとし、我々の保健医療の部分でも相当取り組みが始まっているよう な印象を持っているにもかかわらず、彼らが一向に我々の期待とはそぐわない方向とい うか、人工妊娠中絶の増加、性感染症の蔓延という現実をつくり出しているということ は我々の視点が違うのではないだろうか。我々の視点が彼らの意識とかなりギャップが あるのではないかということを痛感しております。  そういう意味で国として本当に思い切って、乱暴な言い方をすれば政治を変えるぐら いの意欲があるのか。あるいは、大人たちが若者たちに今いかなる影響を及ぼしている か、メディアの問題あるいは大人たちの不正の問題とかさまざまなものが、あるいは援 助交際ひとつをとってみても金さえあれば事は動くということを教え込んでいるのは実 は大人たちなんですね。その部分にまできちんと入り込んで議論するつもりがあるのか というのが私の興味の1つであります。  それと指標の問題が出てきましたけれども、どうも違和感があるのは、人工妊娠中絶 指標を下げるという目標が果たしてそぐうのかどうかということです。例えば妊産婦死 亡率を下げよう、あるいは乳幼児死亡率を下げようというのはよく分かるのですけれど も、人工妊娠中絶のようなものは、だれ一人として望まない妊娠をしたいとか中絶をし たいと考えている訳ではないが、しかし現実には確実な避妊法を提供出来ないがゆえの 産物である訳であります。これを思い切って下げようという考え方がもしあるとした ら、私は従来のキャンペーンあるいは性教育の充実などということだけによっては不可 能なのではないかという感じがしてなりません。あるいは、その目標が定められること によって、それがややもすると1つのノルマのような形で国民に影響を及ぼして、こう いうことを言っていいかどうかわかりませんが、日本母性保護産婦人科医会(日母)の 代表がいらっしゃいますから、例えば産婦人科医の人工妊娠中絶登録をやや消極的にさ せてしまうとか、こんな事態が起こることはないだろうか。  スウェーデンの例を見ますと、例えば低用量ピルが承認されましたけれども、こうい うものを国費で援助して非常に格安で手に入れることが出来るようになる。こういうこ とがもし積極的に進められるようなことになれば、ひょっとしたら中絶率の際立った減 少を期待出来るかもしれませんけれども、そのあたりまでこの施策を進めていく意思が あるのかという勝手なことを申し述べさせていただきたいと思います。 ○平山座長 ありがとうございました。  これはこれからの議論ですので、ここで課長の御意見を伺う必要はないと思います が、今のお話の中で私が思い出したのは、2年ぐらい前に文部省が幼児期からの心の教 育を考える委員会を立てて中教審に報告書を出していますけれども、あの議論の中で一 番最初に出たのが今の子供たちは変わったのかということがあって、結論としては子供 は変わってはいない。要するに、子供は大人を映す鏡だから大人が変わったのが子供に 反映していろいろな問題が起こっているというのがその席の結論だったように記憶して おります。今の北村委員のお話を伺いながらそういう話を思いましたが、そういう意味 で北村委員は若者の代表意見を代弁していただけると思いますので、これからもそうし たお立場で御意見をいただければと思います。  そういう意味では学校教育の場で健康教育、性教育、今ではエイズ教育といろいろや っておられるし、文部省もこのごろは性教育という言葉をはっきり使い出されたようで す。文部省の直接ではございませんが、そういうお立場の埼玉県教育局の田中昌子委員 いかがでございましょうか。お願いします。 ○田中(昌)委員 小学校、中学校、高校では性教育やエイズ教育をどう進めるかということは教科として 扱う内容がありますが、各学校の児童生徒の実態に合わせて指導することになっていま す。しかしながら、研修会等で取り組みを発表していただきますと、指導内容と現実と の間には大分ギャップがあるようです。例えばエイズ教育などではコンドーム等の使用 についてもっと早い段階から教えるべきではないかとお医者さん方の指摘がありました り、また、小学校の低学年から性教育を行いますが、余り早くから扱う必要はないので はないかとする保護者もありまして、どう取り扱えばよいのか苦慮しております。  文部省では、エイズ教育等の地域指定委託研究を行っておりますが、児童生徒の発達 段階と現実に即した性教育をどのように進められたらよいか話し合っていただきたいと 考えております。 ○平山座長 ありがとうございました。  御存じのように文部省も性教育、エイズ教育にかなり積極的に取り組んでおられるよ うで、少なくとも中学校を卒業するころには望まない妊娠を避ける具体的な方法までは 教えておかないと間に合わないというのが性教育関係の専門家の方の共通した認識には なってきているようでございます。日本では欧米に比べて性教育がやや立ちおくれてい るようでございますけれども、これからそれを含めていろいろお願いいたします。  それでは、さらに学校の現場、中学校で先生をしていらっしゃいます美濃輪先生、い かがでしょうか。 ○美濃輪委員 中学校の現場で性教育を28年ほどやらさせていただいておりますが、先ほど北村先生の お話にもあったように社会現象に非常に翻弄されている子供たち、男子も女子もでござ いますけれども、そういう子供たちに向き合いまして、私どもとして健康教育は時間的 に中学生としては65時間、高校生としては70時間ほど今確保されている訳ですけれど も、それが実際に身につくほどものかといいますと、非常に不安を感じるところでござ います。これが保健と体育とをしっかりと分けて確立した形で授業が展開されていけ ば、義務教育を出るときにはきちんとした避妊教育でありますとか、その辺までやれる のではないかと思います。私も担任と一緒にTT(チームティーチング)をやりました り、「愛とは何か」というふうに根本的なところからやっておりますけれども、なかな か子供たちの中に浸透するほどの時間がないのが現状です。新教育課程が今度平成14年 度に完全実施となりますけれども、総合学習や、特別活動の中でどのくらい健康教育の 時間を利用することが出来るかというのが私たちの課題と思っております。ぜひ環境整 備も含めた中でこれからの思春期の子供たちが心も身体も健康なすばらしい女性や男性 に育つようなことをやっていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思いま す。 ○平山座長 ありがとうございました。  私も性教育の専門家から性教育とは人間教育そのものだというお話も伺ったことがご ざいまして大変感心したことがございますが、よろしくお願いいたします。  勝手に進めさせていただきますが、今の問題と大変近い部分がありますので、2番の 妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援を中心にしながら、今の1番 のお話の部分に戻っていただいても一向に構わないのですけれども、その辺でまた指名 させていただきたいと思います。  最初に、安達先生からお願いいたします。 ○安達委員 今日は20分ぐらいおくれてしまいまして済みません。東京女子医大の産婦人科に勤めて おります。  妊娠・出産に関する安全性と快適さへの確保、このあたりはこちらに産婦人科の先生 が、快適さという点ではバース・エデュケーターの戸田委員もいらっしゃいますのでい ろいろな御意見が出るのではないかと思いますが、少子化と関係したことで私がいつも 思っていることを一言述べさせていただきます。  不妊への支援がありますが、これは先ほどの藤崎課長のお話にもありました生殖補助 医療技術のことやその値段やいろいろなもの、カウンセリングの問題等もあります。私 が常に感じていることは、少子社会の中に子供を本当に欲しいと思っている人たちが子 供を産めるような、妊娠出来るような支援はとても大切なのではないかと思っていま す。今は働く女性が増えてきている中でやっと妊婦健診その他を勤務を少し配慮しても らいながら受けたり、何かリスクがあったときに休んだりということが出来るような体 制になりつつある訳ですけれども、不妊のいろいろな検査や治療に関してはそういう面 での配慮がなされておりません。  これはもちろん労働省やいろいろなところも巻き込んで考えなくてはいけないことで すけれども、私は不妊症が専門で、頑張って仕事をしながら外来に通っていらっしゃる 方などを見てみますと、少し来られるようになったなと思ってよく聞いてみますと、常 勤の勤務から外れてパートになりましたという状態。そういう方が妊娠なさり、産休の 証明などを書いて差し上げましょうとお話をしますと「いえ、私はもう常勤ではなくて パートなので一応退職のような扱いで、その後でまた新たに再就職という感じ」という ことになっておりまして、いろいろな選択が迫られ、そして不妊症の治療や検査に通う ことに対する支援が出来ていないなというのが政策面でも個人の企業のレベルでも感じ ていることです。  こういう本筋とは違ったことで少子化対策とも非常に大きな問題があると思っており まして、私も前に有識者会議の委員をやっていたことがあるのですが、そういうことを 産婦人科医として言わなくてはと思っていたのに言いそびれてしまっておりましたの で、ここをぜひ強調していきたいと思っております。  思春期の保健対策に関してはまさにいろいろな方がいろいろな考え方を持っている中 でどの年齢の人にどういう教育をしていくかということは非常に難しいと思いますが、 先ほど北村委員からもお話がありましたけれども、従来のやり方のただ漠然としていた イメージや総論的な概念だけで教育を進めていってもいい政策というか結果は得られな い。かなり具体的なものを出して、そういう私の言い方も非常に漠然とした言い方で申 し訳ないのですが、昨日も保健課長のもとで諮問の委員会があったのですが、思春期の 方たちを対象にして思春期の方たちがみずから進んで読みたいような性教育関係の冊子 をつくっていくことを厚生省として、あるいは国としてその旗振りをしたら非常に効果 的なのではないかと考えている次第です。  またいろいろな御意見が出たところで意見を述べさせていただきたいと思っておりま す。 ○平山座長 ありがとうございました。  それでは、お隣の岡本委員、お願いいたします。 ○岡本委員 4つのどの分野のことも助産婦として非常に関心が深いのですけれども、2つ目の妊 娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援ということで、特に妊娠・出産 に関する安全性と快適さの問題に関しましては、助産婦として特に開業の助産婦の課題 は非常に大きなものがあります。しかし、本当に安全性に関してここ何十年の間、日本 がすばらしい向上を遂げたと同時に、その快適さの部分でどうしても看護のケアの質の 面などでは問題も非常に残されております。  そういうことで、今、助産院につきましてもいろいろと検討もしておりますけれど も、より安全性の対策のためには嘱託医という制度というすばらしい制度はございます けれども、それだけではなくて緊急の対策の嘱託医療機関制度のようなきちんとした二 次、三次医療とどう連携出来るかというところでの対策がこれからの緊急の課題かなと 思っています。  あと、思春期のことに関しましては命の尊厳ということを一番の切り口としていろい ろな地域で助産婦が「命の出前講座」と申しますか、そういったことをやりながら避妊 のことも含めてきちんと指導していく避妊の具体的な話が余り抵抗感なく入るという活 動をしておりまして、去年、文部省の方にも陳情させていただきましたが、そういう性 教育を学校教育の中で助産婦も時々やらせていただけたらなということも考えておりま す。 ○平山座長 ありがとうございました。  それでは、日母の副会長でいらっしゃいます新家先生、お願いいたします。 ○新家委員 少子化ということで産婦人科の医師としてどういうことが出来るかなと3〜4年ほど前 から一生懸命考えている訳ですけれども、産婦人科が少子化に対応出来るものははほと んどないんです。1つは、安達先生が今おっしゃったように本当に赤ちゃんが欲しいと いう不妊症の方をいかに妊娠させるかということが少しは少子化の対応にはなるかもし れませんけれども、では産婦人科の医療機関で少子化を防ぐためにどうすればいいのか と言われると、全部バックに政治的なものが絡んでまいりまして、せいぜい精神的にそ の病院がよかった、もう一人産んでみたいという気持ちを起こす程度ということになっ てしまいます。  先ほどの中絶の問題もそうで、10代の中絶が非常に増えているという話がありますけ れども、10代の方でも決して望まない妊娠だけではないんですね。聞きますと、半分ぐ らいの女性は産みたいとおっしゃる。ただ、産みたいときにどういう社会的な支援が出 来るかというところで我々はいつもストップしてしまう訳でありまして、それが10代で あっても、あるいは結婚していなくても安心して産める状況だけつくってやれば相当解 決が出来るのではないかと思っております。したがって、人工妊娠中絶の10年後の目標 値を定めるというのは非常に難しいと思います。望まない妊娠の数をある程度押さえら れるかもしれないけれども、望んでいても産めないという状況を解決してやらないとだ めかなと思っております。  不妊症の話でございますけれども、やはり欲しいという御夫婦ですから我々としては 何とか努力して赤ちゃんをつくってあげたいと思いますけれども、今言ったように保険 収載が全くないものですから、各医療機関で値段がかなりまちまちである。あるいは、 国として少子化の一環として不妊症の御夫婦にある程度の経済的な支援が何か出来れば 少しは助かるのではないかと思いますけれども、余りにも額が違い過ぎまして、治療が そう長続き出来ないという状況が今一番の問題点ではないかと思います。だから、不妊 症の方も安心して医療機関にかかれる体制をつくらないとだめだと思います。  もう1つ、こういうことをここで言っていいかどうか、不妊専門の相談センターが今 24ぐらいあるのでしょうか、果たしてそれが本当に国民のために働いているのかなとい う疑問を私自身は持っておりますので、そのお話もはまたおいおいさせていただきたい と思っております。 ○平山座長 ありがとうございました。  お隣の多田先生は新生児・未熟児が御専門ですが、お願いいたします。 ○多田委員 私は今御紹介がありましたように新生児をやっております。したがって、次の3と4に も関係があるのですが、先ほど課長も御紹介くださいましたように未熟児や、そのほか の子どもが今後健やかに育っていくためにどうするかというのが大きな問題でございま す。これには医者や看護婦を初めとする要因が大きな問題になっているということも1 つはあるのですが、こういう子供たちのフォローをしている上で非常に大きな問題にな っているのは、今、新家先生の方から産婦人科の先生からの問題が出されましたが、お 母さんたちの子育ての背景が非常に悪くなっていることです。大人云々というのがあり ましたので、そのときに赤ちゃんのときからスタートしていろいろな対応をしてあげる ことがこれから非常に大事になるだろうと思っております。  特に未熟児などの場合には、なかなか普通の子供と同じように育っていない。例えば 発育のおくれとか、あるいは未熟児でなくてもそういう方がいっぱいいらっしゃるんで す。産科で産まれた赤ちゃんたちをフォローして、小児科、あるいは中間におります私 ども新生児科で診ておりますと、ボーダーラインといいますか、うまく育ってくれれば 幸せな一生を過ごせるのに、家庭的背景が問題になったり、社会的な背景があったり、 先ほど虐待という問題もありましたし、なかなかうまく育てていけないという部分があ ります。この4つの柱はみんな関係することだと思うのですけれども、ぜひここに何と か光を当てて援助していっていただきたいと思います。  例えばいろいろな問題の中には、先ほどの児童心理などの精神的な問題での相談もあ るのですけれども、そこにつなげるような方法をどうやったらいいかということが非常 に大事ですし、先ほど学校のお話がありましたが、子供の教育は学校に行ってからでは もう遅いので、その前からぜひ厚生省と文部省とがうまく連携して、赤ちゃんのときか ら教育につながっていくように、教育は教え込むばかりではなくてサポートしてあげる のだというシステムをこの「健やか親子21」の中でぜひつくっていただきたいというの が私の最大のお願いです。  もう1つは、今の子供たちはほとんど親と一緒に食事をする機会がないということが ございます。これも少子化対策推進基本方針に労働省やいろいろな省も入っているよう でございますので、せめて週1〜2回はお父さんが家へ帰って家族一緒に食事が出来る ような体制も考えていくというように、個々の具体的なことももちろんですけれども、 子供を取り巻く全体の環境をほかの省も含めてぜひこの中で議論していただければと思 います。  新生児の医療体制などのことはまたそのときになっていろいろお願いいたしますが、 全体としてそういうことを希望しておりますので、よろしくお願いいたします。 ○平山座長 ありがとうございました。  窓側の方へまいりまして戸田委員、バース・エデュケーターというお仕事の紹介を兼 ねてお願いします。 ○戸田委員 遅れて参りまして申し訳ございませんでした。実は思春期真っ盛りの子供がおりまし て、今日、中学入学の手続が手間取りまして遅くなりました。居並ぶすばらしい委員の 皆様の中で私は恐らく子供を持つ親に非常に近い立場でお話しさせていただけるのでは ないかと思っております。  仕事といたしましては、妊婦を対象にいたしまして出産準備クラスを開いておりま す。これはもちろん健康教育、からだの健康ということも特別なニーズのある妊婦に向 けて、あるいは夫、それからお舅さん、お姑さん、家族全員、今度産まれくる赤ちゃん をめぐってかかわる人たち全員が対象ですが、からだだけではなくて実はいろいろなラ イフスタイルの変化あるいは人間関係の変化に対してサポートを与えようというのが目 的とされるクラスでございます。  先ほど中・高では保健の時間に子供たちがなかなか思うように学んでくれないという お話がございましたけれども、実は妊婦というのは心もからだも健康に過ごしたいとい う動機が非常に強い時期でございます。そして、医療とも深くかかわる特殊な時期だと 思います。健康な人でも医療を踏んでいくという意味では非常に特別な時期にあると思 います。その中でうまく情報を与え、自己決定に基づきますけれども、なるべく安全、 そして快適なお産、そして育児へとつなげていくことを目標にやらせていただいており ます。  この検討会の中で私の目標としていることは、こうしたすばらしいお考えを持つ医療 側と保健関係者の皆さんと、それから私たち一般の距離が余りにもある、相談したくて も気軽に相談出来るような場所がない。ですから、アクセシビリティといいますか、非 常に身近に心身の相談の場所あるいは情報を受ける場所があってほしい。そのためにど うしたらいいかということと、ライフスタイルも一人一人変わっておりますので個別的 な対応が非常に重要になってまいりました。出産のケアにいたしましても、今までルー チン作業で来たことであっても、それぞれの人の希望も入れますとそれぞれ個別的な対 応、難しい対応も迫られるのではないかと思うんです。それが出来るような医療者側の 皆さんの、ケアを受ける側に近づいた開かれた物の考え方が望まれるのではないかと感 じております。  最後に、教育者として感じておりますのは、余りにも皆さんが情報の嵐の中にいるに もかかわらずいい情報、優れた情報、本当に自分の決定をサポートしていく質のよい情 報にはめぐり会っていないという現状です。ですから、これに関しまして皆様のお知恵 で何かいい方策が出てくることを期待しております。 ○平山座長 ありがとうございました。  それでは矢内原先生、お願いいたします。 ○矢内原委員 私の専門は生殖内分泌ということで、そういう立場から新規の問題にも、最近では不妊 治療の問題にかかわってきております。  本日は既に安達先生、新家先生が不妊の問題にも触れられておりますが、恐らく不妊 の立場でメンバーに加えていただけたものと思っております。と申しますのは、厚生科 学研究で不妊治療のあり方という研究班を3年間ほどお世話させていただいたことと、 また倫理の問題に関しては厚生科学審議会の専門部会で討議に加えさせていただいてお ります。また厚生科学研究の中では、本日も後ほどお話があると思いますけれども、山 縣先生と不妊治療に対する国民の意識調査等をさせていただきました。  本題に入りますけれども、今日の中で不妊治療に関して事務局が用意された5行の言 葉によく集約されている、我々がこれからやらなければならない課題をポイントアップ されたと感心いたしました。まさにこれから考えていかなければならないことでありま す。これを解説ではございませんけれども、医療サイドと一般の人々に分けて少しつけ 足しをさせていただきたいと思います。  確かに生殖補助医療技術は著しく、いわば先行している形で技術そのものが先走って いくおそれが今生まれてきております。ところが、実際の医療そのものは技術の上塗り をとっている訳です。この根本にある医療に対する認識と申しますか、ここでは適正な 技術が適用されているかという言葉で書かれておりますけれども、まさにそのとおりで はないかと思っております。  そこにあります一番大きな問題は今回のテーマに国民の問題も、それから医療サイド の問題も心の問題とカウンセリングという言葉で言っておりますけれども、心の問題と いうのは目標テーマの非常に大きな地位を占めておりますし、先ほど安達先生が言われ ましたように社会のそれに対する支援ということもここに含まれていると思います。次 の課題として、医療サイドとしては生殖補助医療が適切に使われ、それに対して患者さ んに正しいインフォーメーションを医療専門職の人たちが伝えているかどうかというこ とをもう少し考えなければいけないとこの前の調査の中では感じました。  一般国民も特に享受希望者と国民の意識そのものに非常に大きな隔たりがあります。 享受希望者、つまり患者側に対しては正しい情報を医師から正しく得ることが一番大切 なことでありまして、それはメディアの方々も、専門職の方々も含めた大きな運動と申 しますか、動きをしなければ適正な医療を受けられないことになります。国民の意識の 中では享受希望者に対する理解が極めて乏しいと思います。  これは国民の意識調査の中で浮かび上がったことでありますけれども、子供を持って いらっしゃる方が大切なポイントをもし3つ挙げるとするならば、これは享受希望者、 つまり患者側が持っているベスト3のことと重ならない。今、患者さんが困っていらっ しゃることの1つは医療費の問題であり、もう1つは自分たちがいかにつらい思いをし ているか、ある意味では社会から隔絶されているというつらさを訴えておられます。と ころが、実際の一般の国民の方、これは特にお子さんがおられる方がほとんどだろうと 思いますけれども、むしろ生殖医療補助技術、新しいアクトに対しては批判的な気持ち が強いし、そういう技術の結果生まれた子供との親子関係を非常に重視されておられま す。ところが、患者さんが持っている気持ちのつらさなどに対する理解はないし、患者 さん側としては妊娠するのが1つの目的であって、その後の親子関係に関することまで は考えていないという大きなギャップがあります。  そういう意味で医療面の問題、それから一般の患者さん、国民の方々に対する正しい 情報の提供がこれから専門職として、またこの問題に関してはこの委員会の1つの大き な役割ではないかと思いました。  ちょっと長くなりましたけれども、そのような感じを持っております。 ○平山座長 ありがとうございました。  それでは、時間の都合もございますので、どんどん先へ進めさせていただいてしまい ます。3本目の柱に移らせていただきまして、子供のからだの健やかな発達を図るため の環境整備ということで、これも幅の広い内容になると思います。  最初に神谷先生、お願いいたします。先ほど課長が予防接種率の低下などを大分心配 しておられましたが、神谷委員は予防接種関係の厚生省の委員会の責任者をしておられ ますので、よろしくお願いいたします。 ○神谷委員 それでは、予防接種のことは2番目に申し上げますが、もう1ついわゆる小児医療の不 採算ということにつきまして、小児関係では小児総合医療施設の協議会というものがご ざいます。これは全国の小児病院と、国立病院は国立小児病院、私たちと香川小児病院 等が入りました組織がございます。そこで絶えず問題になりますことは、やはり小児医 療の不採算ということに関して子供ぐらいもう少し自由に医療をさせてもらえないか。 例えばゴールドプランは非常にうまくいって、お年寄りには非常に手厚いものがありな がら、小児のエンゼルプランは今度は新エンゼルプランだそうですので大変期待してお りますけれども、過去のエンゼルプランは一体何だったのか、何もなかったではないか という気がしております。具体的にはそういうことに関してこれからデータを少しまと めて、この辺のことをお話ししたいと思います。  ここへ私が出させていただくということで、小児総合医療施設協議会の会長をしてお られます小児科医の秋山先生からお電話をいただきまして、お前にすべて権限を任せる からしっかり発言してこいと言われておりますので、不採算ということに関してはまた しっかりお話ししたいと思います。  新生児のことは先ほど多田先生がおっしゃいましたけれども、小児の救急医療の問題 も現実問題として私の病院は療養所で、結核を全くやめて小児の救急医療をやっており ますが、24時間を1人の医者で、例えば日曜日などにやりますと、インフルエンザがは やる今の時期は医者がほとんど寝られません。しかし、その医療に対して国からいただ く人員は非常に貧しい。看護婦さんもほとんどおりません入院患者を診ながら、しか も、新しく入ってくる人を診るということは現実問題としては非常にハードでございま す。課長も先ほどおっしゃいましたけれども、今日はたまたま新聞にも小児の医療費を 上げるとか小児科医が若死にするからそれをもう少し何とか考えようというお話があり ましたが、これは基本的なことを、ただそこにお金だけ出せばいいということではなく て、社会の中で子供を一体どういうふうに大事にしていくつもりなのかということを、 先ほど北村先生も言われましたようにしっかり原点に踏み込んでやらないとだめではな いかということを思っておりまして、ぜひその辺を前向きに御討議いただけるとありが たいと思います。  予防接種の問題は、接種率の低下についてはまず理解不足ということがかなりあると 思います。もう1つはPRの不足ということもあるかもわかりません。例えば今年イン フルエンザの予防接種は本当はお年寄りを対象にやったのですけれども、子供のお母さ んがどんどん打ちに来る訳です。打ちに来る人の母子手帳の予防接種記録を見ると、中 にはほかの予防接種は全くやっていないけれどインフルエンザだけやりに来るという方 がある。そういう方はなぜやりに来たかということを聞くと、マスコミでいろいろ聞い てテレビや新聞を見てどうも怖そうだからやった方がよさそうだというだけの理由で す。余り信念も何もないんです。では何か事故が起こってもいいんですかと聞くと、み んながやるから大丈夫ではないかと思って来ましたということでとりあえずやってくだ さいと。ほかにもっと大事な病気がありますよと言っても、じゃあ次はやりに来ますと いう答えはなかなか返ってこない。これは私たちが今までやってきたこと、今日ここに も本がいろいろありますけれども、こういう本をしっかり読めるお母さんが極めて減っ ております。今のお母さんたちはとにかくテレビと新聞に書いてあることはかなり信用 しますから、もう少しPRの仕方も変えて、そしていろいろ規制もあるようですけれど も、いかに上手に予防接種の問題をPRするか。  もう1点は、先ほど美濃輪先生がおっしゃったと思いますが、学校での保健の方の教 育が極めて貧しい。それを教えておられる先生はほとんど体育の先生ですね。我々の三 重大学にも教育学部がありまして授業を手伝いますと、体育の先生が保健の勉強をする のは10時間ぐらいです。そのぐらいの時間ですべてのことを子供に本を見ながら教える だけですから私は大変貧しいと思っておりますので、その辺も先ほどのお話のように今 後やっていけば予防接種に対する考えもまた変わってくるのではないか。それには厚生 省と文部省がセクトをしっかり外していただき連携をとっていただかないと、改善はな いと思います。よろしくお願いします。 ○平山座長 ありがとうございました。  厚生省と文部省は地域の母子保健、子供のしつけ、あの辺では割合に連携がとられ始 めたようですので、さらに広げていただきたいと思います。  それでは、同じように小児科の本当の第一線で仕事をしていらっしゃいます古平先生 お願いいたします。 ○古平委員 日本小児科医会から推薦されました古平でございます。小児科医会というのはお聞きな れない点もあると思うのですけれども、小児科の実地医科が70%を占めている組織でご ざいます。  今、小児科の病気の方は割とうまく治るようになったのですけれども、心の病気に対 する対応がなかなか出来ていないというので昨年度から子供の心という研修会を4日に わたって行いまして、その研修会を全部聞いた方には子供の心相談医という認定証など を渡して指導者になれるということをしております。今年も行いますが、お母さんたち からアンケートをとりますと小児科医は育児とか子供の問題が起きたときに相談すると いうのが1割ぐらいです。ほかの9割は親とか友達とか保母さん、そういう方に聞いて いるということなので、小児科医だけが心の問題に対して勉強してもなかなか広がらな いので、こういう運動が母子保健に関係する人たち全員に行き渡っていただきたいと思 っております。  それから育児指導ですけれども、東京などは6カ月、9カ月、1歳6カ月、3歳で健 診をしております。これは今まではからだの進歩、発達を主に診察して母親に伝えてい たのですけれども、これからは診察の前のアンケートで父親の育児参加があるのかどう か、育児問題でのお姑さんとのギャップがあるのかどうか、本当に子育てを楽しいと思 っているのか、もう子育てなどはやめたいと思っているのかという設問をして、それを とっかかりにして育児について小児科医ももっと真剣に取り組んでいかなければいけな いと思っておりますが、先ほどもお話ししたように小児科医は病気のことは聞いてくれ るのですけれども、育児ということについて普段聞いていただくことが余りないので、 その点も改善していかなければいけないと思っております。  私は常々、ハッピーな子供というのはハッピーな親がいるから生まれるのではないか と思いますので、ハッピーな親をつくるような問題解決をこの会で目標にしていただき たいと思っております。 ○平山座長 ありがとうございました。  それでは、この3の環境整備の中にも入りますが、SIDSとか事故の予防を専門に していらっしゃいます田中哲郎先生、お願いいたします。 ○田中(哲)委員 詳しいことは後ほどということですけれども、今回、母子保健の課題を整理していくこ とは非常にいいことなのかなと思っております。  先ほど乳幼児の死亡率がいいと課長からお話があったのですけれども、乳児死亡率は 世界でトップですけれども、1歳から4歳の幼児期は先進国の中では例えば15カ国で見 てみると13位と非常に成績が悪いということで、まだまだ課題は多いのかなと思ってお ります。そういう中でこういう検討が行われるのは非常にいいことだと思っておりま す。  もう1つ、標値をいずれ設定するということで設定も大切だと思うのですけれども、 どのようにして目標値に向かうかという議論が一番大切なのかなと思っております。新 しい課題はどうも厚生省だけで解決できる問題は少なくなっている。社会全般でサポー トしなければ恐らく解決しないような問題が残っているのではないかということで、い わゆる国民運動的なものに持っていかない限りこれらの課題は解決しないだろう。先ほ どからも文部省というお話がありましたけれども、例えば健康教育に関しても母子保健 は新しい学習指導要領の中では精選という名前のもとにほとんど切り捨てられ、ですか ら健康面に関してほとんど教えられていない、病院についてはほとんど教えられていな いという現状です。しかも、保健体育の先生は病気は教えられない。医者でも看護婦で もない保健の先生はほとんど教えない。実際に効果も上がっていない、子供たちはほと んど理解出来ていないという調査結果も出ているということで、非常に厳しい世の中だ と思っております。  報告書ですけれども、内容を総花的な話で非常にわかりやすく具体的なことが実行で きるような報告書を書いていかないと、何だか検討会の報告書が出たけれども世の中で 使われなかった、実行出来ない、あるいは関連の団体でうまく消化できないことになっ てしまうのかなと思って、そういう意味で今後の検討が非常に大切なのかなと思ってお ります。 ○平山座長 ありがとうございました。  報告書をつくるときにまたお知恵をかしていただきます。  窓側にまいりまして、前川先生、お願いします。前川先生は今、小児保健協会の会長 でもいらっしゃいますので、よろしくお願いします。 ○前川委員 地域の子育て支援というか、子供の健全育成について3つのことを申し上 げさせていただきます。  1つは、つい最近私が母親教室で話をし、新生児期に赤ちゃんを診て、健診をして、 かつ育児サロンなどで地域における支援をやっています。それでおもしろいことに気が つきました。新生児期に助産婦さんとか、看護婦さんに聞きますと、ハイリスクの家庭 の親が判るのです。それを早期に保健所とかいろいろなところにつなげますと割とうま くいくことが多いのです。心がひねくれたり虐待してからでは遅いので、ぜひ周産期の 小児科と産科の壁をなくし、かつ保健所とか福祉とか児童相談所の連携をよくされて、 もう少し周産期からつなげると心の問題と支援が非常にうまくいく。現在、地域の小規 模の支援センターなどもお考えですけれども、それが1つです。  もう1つは先ほどのお話で小児保健レベルの低下を防止するということが出ていまし たけれども、実は私はここ数年、ハイリスク、特に極低出生体重児の早期介入と発達フ ォローをやっています。ある男が人口 600万人の県で10の保健所を巻き込んで人口 250 万人をカバーする地域のハイリスク児の支援体制をつくったのです。すばらしいではな いかと言ったら、ところが、それに関係している市町村の保健婦さんが今年定年で17人 やめたのです。そうしたら補充がゼロで、2つの保健所が事業を中止したのです。  私が関係しているもう1つの県は県が支援事業をやっているので、今でもおもしろい ようにハイリスク児と保健所がうまくいった症例とか、どういうところがまずかったか という症例がどんどん出てきています。ですからここで申し上げたいのは、個人の善意 には限界があるということで、ぜひそれをカバーする制度を作っていただきたいという ことです。  最後に、小児保健のレベルではどうにもならないことがたくさんございます。「健や か親子21」の運動を大人の反省を促して社会の風潮が変わるような国民的運動に発展さ せていただきたいと思います。ぜひお願いいたします。 ○平山座長 ありがとうございました。  それでは柳澤先生、お願いします。 ○柳澤委員 私はここに書かれていることの全般にわたって非常に関心がありますけれども、今日は 3のうちの3番目の「・」に書かれている7行のことについて触れてみたいと思いま す。  小児科医が不足している、殊に現在の医療保険制度における小児医療の不採算という ことがあって、それを解決することが非常に重要である訳です。その点は神谷先生も触 れられました。この提言のいろいろなところに小児科医の役割が記されております。そ ういうことからも小児科医の責任はこういう少子化の時代でむしろ大きくなっていくと 思っています。それに対して現在確かに小児科医は不足していると私も小児科医自身と して思います。医師の数全体としては過剰だと厚生省は認識しておられる訳ですけれど も、小児科医の立場から言えば小児科医は不足していると思います。  そういう状況に対して、今日ここで小児科学会の役員をしておりますのは私だけです ので小児科学会の立場として申し上げますと、理事会の中に「小児科医確保に関する検 討会」を組織して現在数回にわたって検討を進めております。しかし、検討したからと いって問題が解決する、小児科医の数が増えるという問題ではなく、非常に難しいこと である訳ですが、卒前・卒後の教育、特に卒後研修が必修化されることとの関連での小 児科の研修も含めていろいろ検討しております。いずれそのことについての学会として の見解が出されると思います。  小児科学会での調査によると、1983年から95年までの13年間にわたる統計を見ると、 医学部卒業生で国家試験を合格した者のうち小児科医を志望する者の数が多少減少の傾 向にある訳ですけれども、その後ここ5〜6年の間はどうかということはまだ正確には つかめておりませんで、横ばいか今は少しもち直しているのではないかという見方をす る人もおります。そういう点を調査しなければいけないと思っています。ただ、全体と しての数のほかに、小児科医の中に女性医師の割合が非常に高くなっているということ は明らかで、新しく小児科医になる人の割合は数年のうちにフィフティ・フィフティに なります。そういう状況で、女性医師には妊娠・育児がありますので、全体の数が例え ば横ばいであっても小児科医のマンパワーとしてはかなり影響を受ける可能性があるこ とが問題になります。そういうことが話題になったことがあるのですが、それは小児科 の女性医師だけの問題ではなく、女性医師全体としてもちろん増えていますし、しいて は社会における専門的な職業を持った女性の問題になって、ここで少子化対策の中にも 触れられているような問題に通じることではないかと思います。  小児科医が特に不足しているといいますか、そういう問題として新生児、救急、小児 精神医療といったところがこの中に挙げられています。確かに新生児、また子どもの心 の問題に関して小児科医がもっと強くかかわらなければいけないということがあります が、特にこの中で子どものプライマリ・ケアを含めた救急、そこにかなり問題が大きい のではないか。病院小児科の非常に危機的な状況があって、それを立て直すことが今求 められています。小児科医の勤務が非常に過酷だという話も出てきましたけれども、病 院小児科の立て直しが今求められていると思います。  プライマリ・ケアといいますか初期医療については、かつては子どもの初期医療の非 常に大きな部分を内科の開業の先生が診てくださっていた訳です。今も多くの先生に診 ていただいていますけれども、一方で現在の少子化の状態でお母さんたちが子どものぐ あいがちょっと悪い、熱が急に夕方から出たというときにも小児科の専門性を求める傾 向が非常に強くなっているのではないかと思います。そういう観点からも、小児医療を 立て直していく上での方策が検討されることを大いに期待しております。 ○平山座長 ありがとうございました。小児専門医の育成の問題でございますね。 それでは、この順番でいいのかどうかわからないのですが、お隣ですので山縣先生、お 願いします。 ○山縣委員 私の専門は公衆衛生学と人類遺伝学というのをやっているのですが、私どもの地域では 12年前から私どもの教室の初代教授の日暮眞教授が始められた地域の母子保健調査とい うものがございます。例えば育児の不安ということですと、お母様方で育児に対する何 らかの不安を抱えていらっしゃる方は1、6、3歳も5歳の健診も来られる方の大体4 割からいらっしゃる訳です。その中でどういうことが問題かというと、しつけの問題と か食事の問題だったりということはここ10年間ほとんど変わっていなくて、さらにお母 さんのストレスがある訳ですけれども、お母さんのストレスの原因は決して御主人のこ とや舅、姑ではなくて、やはり育児のことが一番であるという現実を見たときにそのあ たりをどういうふうに支援していこうかということを地域の保健婦さんたちとずっと考 えてきているところでございます。  そういった地域の住民のニーズをもとにして母子保健のサービスのあり方をこれから どうやっていくかということを考える上で、1つはこれまでやってきているサービスの 評価をいかにきちんとしていくか。そのためには課長も言われたように評価するための 数値設定をいかにするか。そう考えると目標値を立てるためには根拠となるものが必要 である訳で、そういう根拠をどういうふうにしてきちんと吟味していくかということが 重要だろうと思っております。戸田委員や矢内原先生が言われましたように母子保健医 療情報の活用が非常に重要でして、柳澤先生の班に入れていただいて母子保健医療情報 の収集と活用の問題について検討させていただいているのですが、その部分をしっかり と行っていく。いわゆる今はやりのEBM(エビデンス・ベースド・メディスン)のエ ビデンス・ベスト・ヘルス・ポリシーというところでエビデンスをいかに構築していく かということを中心に考えていく必要があるだろうと思っております。そういう意味で も一般住民の方にインターネットを通じて膨大な情報が入っていく訳ですが、我々専門 家はそれをいかにきちんと評価して、意味のある情報とそうでない情報を分けた形での データベースを構築し、それを地域の皆様に提供していくか、または専門家にそれを提 供していくかということを考えていくことが必要であろうと思っております。それが1 点です。  もう1つは、この中にひょっとしたら少し弱いなと思う部分が、例えばミレニアム・ プロジェクトとして新しい先端医療技術に対することも入ってきて、小児の分野でも先 生方がおやりになっている不妊治療や出生前診断の問題のような先端医療技術が小児医 療、母子保健の中に導入されるに当たって、そういう先端医療技術と社会との接点を 我々がどういうふうに埋めていくかという問題も考えていかなければいけないのではな いかと思っております。 ○平山座長 ありがとうございました。  それでは時間も押してまいりましたが、4番目の柱、育児不安の解消と子供の心の安 らかな成長の促進。この柱の中には育児不安、育児支援のほかに障害児の問題、心の問 題、カウンセリング、児童虐待の予防、いろいろな分野がさらに入ってまいりますけれ ども、この面でお願いいたします。  最初に、保育園保健協議会の会長でいらっしゃいます巷野先生、お願いいたします。 ○巷野委員 私の協議会は、この名簿のとおり保育園に入っておられる子供たちの保健を対象として います。全国に保育園が2万 2,000カ所ございまして、現在、保育園には 180万人ぐら いの乳幼児が入っております。その乳幼児に対して保健をどう堅持していくかというこ とを嘱託医だけではなくて看護婦さんとか保健婦さん、あるいは園長さん、それから保 育士を養成する学校の先生方、いろいろな職種の方々と一緒に勉強しております。  そこで一番感じますのは、今、保育園にどんどん低年齢の児が入園してきておりま す。老人の方はどんどん家庭に帰って手厚い介護が行われておりますが、現在、子供は 保育園の集団の中に入れられております。これは母親の労働その他が関係する訳です が、中には自分で育てたくないという気持ちがあって、形をつくって保育園に入れてい るようなお母さん方もいらっしゃるようです。それに対して保育園の方ではそれこそ我 が子のように保育士さん方が一生懸命やっておりまして、恐らくお母さん以上の保育を していると思います。それでもお母さんが夕方迎えに来ますと子供はお母さんの方に飛 んで帰ってしまいます。どんなにいい保育園が出来ても親のかわりにはならない、これ は私たちだけではなくて働いている保育士さん、職員の方々が言っている言葉でござい ます。  今日は専門の方もいらっしゃいますが、そういうことから私は子育て、家庭での母と 子をどう結びつけるか、この辺がこれから私たちがしなければならない大きなことかと 思います。現実に家庭で育てているお母さんと働いて保育園に預けているお母さん方と の子供を産む数から言いますと、家庭のお母さんの方が倍ぐらい産んでおります。勤め ないで家庭で働いているお母さん方はそれこそ一生懸命やっております。そういうお母 さん方に育児雑誌その他がアンケートをとったものが随分とございます。「子育てをし ていて何が大変ですか」というのをとりますと、多くの場合は子育てにお金がかかる、 あるいは教育をどうしたらいいか心配と出ます。保育園に預けているお母さんも含めて 少子化についてのアンケートをとりましても、やはりそういう答えが返ってまいりま す。お金がかかる、あるいは教育が心配。しかし私は今、青山にございます「こどもの 城」というところで診療しており、そこでは育児相談も贅沢ですけれど大体1時間かけ てやっておりまして、じっくりとお母さんの話を聞きますと、お金がかかるとか将来の 教育がどうだということは一言も出てまいりません。お母さん方の言葉は「どう育てて いいか分からないんです」という言葉がいかに多いかです。  そこでこれから10年間ということを考えますと、もちろん保育園も大事です。私もそ の仕事をしておりますから、入ってきたお子さんを立派に育てることを検討する訳でご ざいますが、保育園は御存じのように、産休明けといいますから8週間、約2カ月たつ と保育園が預かっている。しかも、従来は1日11時間という線がございましたが、13時 間、14時間と保育園で預かっている。さらに最近は病気の子供も保育園で預かるという ようなことで、保育園の子育て支援は大きく展開してきておりますが、果たしてこれで いいのだろうかという気持ちがいたします。老人は家庭で家族がということで大変な予 算が出ておりますが、子供はどんどん施設の中に入っていって、そういう子供が育てら れて幼児期、学童期。もちろん集団という中でいい体験をした子供も多い訳ですけれど も、小さいころの母と子の信頼関係というところでややもしますと薄れたまま幼児、学 童になっていく子供も多いかと思います。  今度、労働省と厚生省が一緒になりますが、職業というものにいろいろな種類がある でしょうけれども、夕方早く帰って家庭というものをどう構築するか。その辺をこの会 でも声を大きくしていただけたらと思います。これは前の文部大臣だったでしょうか、 文部大臣になったときにすぐに経済団体に行って小学生、中学生を持っている子供のお 父さん方が早く家に帰って子供と生活出来るようにしてほしいという要望書を出したこ とが載っておりましたけれども、ましてや若いお母さん方が夜遅くまで働くのではなく て、なるべく早く帰って親と子供が一緒になる時間を多くしていただきたいと思いま す。それが1つです。  そして、お母さん方が子育てを知らない。だから、昔からあります日常お母さん同士 が触れ合う機会をつくる。私どもの「こどもの城」で赤ちゃんとサロンをやっておりま すが、お母さん同士の触れ合いをつくる。そして、お互いの子育てを見る、自信を持つ 機会を多くしていただきたい。  それから、子供を持っているお母さんがまちの中に出たときに社会がそれを受け入れ る体制をつくっていただきたいと思うんです。それこそ今はベビーカーでまちの中を歩 くのもやっとです。そういう中で、これは水戸黄門ではないですけれど、赤ん坊がいる ぞという錦の御旗で堂々と世の中を歩く。こういう国民運動を展開して車でも何でも乗 せていただきたいと思う訳です。そして、お母さん同士の触れ合いの場をつくってあげ るということ。時間を多くするということ。  もう1つは、お母さん方は本当に子供というものを知りません。生後1カ月、2カ月 の赤ちゃんを持っているお母さん方にいろいろな質問をたまにやってみるんです。こん なことを知っていますか−−知りません。私は今、女子大学に行っておりまして、高校 を卒業して入ったばかりの女子学生に子供のいろいろな問題を出して書かせるのです が、例えばお母さんになると大泉門という頭のぺこぺこするところをよく知っていま す。1年生に聞いても大泉門などは知らない、どこにありますかと。お尻にあるとか胸 にあるとか背中にあるとか、まあ知らないです。そのほかいろいろ子供についての質問 をしても、本当に驚くことばかりです。  それにつけて思い出しますのは、ある民間放送の方が世界の教育を調べるために世界 じゅうを回りました。しばらく前の話ですが、北欧の義務教育では人間、からだ、健康 というものを徹底的に教える。義務教育が終わる14〜15歳になりますと、自分の健康を 自分で分かることが出来る。だから、自分で世界を駆けめぐることが出来る訳です。も う1つついでに申し上げますと、税金のことを徹底的に教えるそうです。税金を払うこ とによって自分が社会の一員になるという健康と税金。それについて私も女子大生に小 学校、中学、高校のときにどの程度、保健について勉強しているか聞きますと、体育の 方に時間が回って保健の勉強が少ない。  それから、何をならっているか。例えば保健の教科書を全部やったかどうかというア ンケートをとりますと、ほとんどの学生が終わっておりません。たいていは本の終わり の方に救急などが載っている訳ですけれども、ほとんど勉強していない。ですから、自 分が子供を産んで目の前に自分の赤ちゃんがいたときに何も知らない。私はゼロと思っ ております。ぜひともこの辺は文部省などと話し合いまして徹底的に人間というもの、 人間の仕組み、構造、健康あるいは自分自身の危機管理、こういうことを徹底的に教え るようにぜひお願いしたいと思います。10年間という計画のようですので10年たちます と、小学校からやれば立派なお母さんが出来るのではないかと思う訳です。 ○平山座長 ありがとうございました。  それでは小林先生、お願いいたします。小林先生は子供の虐待の問題を先駆けて手が けていただいておりましたが、お願いいたします。 ○小林委員 私は小児科医としての初めの10年を保健所で働き、その後大阪府の3次母子医療セン ターで働いています。ここ10数年は虐待が主なテーマになっています。  日本でも虐待への関心が高まり、国も真正面から取り組み始めたことを嬉しく思って います。わが国の虐待対策は児童福祉から始まりましたが、母子保健での取り組みが重 要です。児童福祉では、虐待を発見した後の児童相談所への通告や、子どもを親から分 離保護する時の困難さへの対応についての議論が中心でした。しかし、虐待対策はそれ だけでは不十分で、今後は早期発見や発生防止や治療についての対策が必要です。  虐待の始まりは周産期で、私が働くセンターの経験からもハイリスク児は新生児が退 院する時に殆どが把握できます。そしてハイリスク児の親に周産期から3歳頃まで育児 支援することで発生予防しうるとも言われており、母子保健こそが発生防止できると言 っても過言ではありません。早期発見も母子保健こそが担えます。虐待は、発生率が子 ども1000人に1人、ハイリスク児は100人に1人私は推測しており、膨大な数の子どもの 問題です。わが国の母子保健は整っており、施設分娩が100%近くであり、公的乳幼児検 診の受診率も高率ですので、全ての子どもの実態を把握しうる周産期医療や乳幼児検診 で取り組めば悉皆的な早期発見が可能です。母子保健が取り組むことでハイリスクから 軽度も含めた発見と予防と対応が可能になり、虐待対策の裾野が広がり、国家的対策が 初めてできます。 母子保健での実際的対策の1つは、「育児をする親の心と子どもの 心のケア」という視点を系統的に入れ込むことです。最近発行された巷野先生が関与さ れた「それでいいよ、大丈夫」のような視点に母子保健が転換することだろうと思いま す。しかし、それだけではハイリスク児への援助は不十分で、もう1つは、ハイリスク 児の親をどのように支援して子どもを守り親子関係の発達を守っていくのか指針と対策 を具体的に出すことです。例えば今育児に困っているー育児が負担で放棄したいと感じ ている親・育児不安に圧倒されている親・叩いてしまうことを悩んでいる親や、心理社 会的背景がある場合ー例えば被虐対歴がある親、離婚や再婚、片親家庭、親の慢性疾患 や精神疾患、兄弟の死亡や障害の時などの多様な子育てについてです。  健やか親子21の4本柱は全て虐待対策に関係しています。虐待する親の一群である 若年親には非行歴が高率です。でもその方達とお会いすると、共通するのは皆淋しく て、大人とのつながりが幼少時も今も薄く、ネグレクトや心理的虐待を受けてきた人達 です。また、合併症妊娠やNICU入院など虐待のハイリスクですが、その要因は分離 による愛着形成不全だけではないように思います。恐怖感も大きな要因のように思いま す。妊娠合併症が恐かったし、お産が恐かったし、赤ちゃんが死ぬかもしれないと恐か った、その恐怖感や不安感が解消しないまま、つまりトラウマを解消しないままその子 どもの子育てをすることで起きてくるように思いますので、周産期医療での親への心の ケアの重要性を感じます。小児医療においても、乳幼児期から難病を持って高度先進医 療に支えられて育つ子どもの、心の発達を守る医療や社会の取り組みの充実の必要性を 痛感しています。   わが国の母子保健に親と子の心のケアを大きな課題とすることは少し遅すぎたかもし れませんが、今まさに時期を得ていますので、思い切った対策を打ち出していただきた いと思います。心のケアは条件整備も行わないと不可能です。その1つは、心のケアを するのは人であり、母子保健関係者の教育・親や子の心のケアを担う専門家の養成・母 子保健現場への心のケア要員の配置が不可欠です。第2は、小児医療は不採算ですが、 子どもの心のケアはもっと不採算です。この不採算性をどのように解消するのかの対 策、将来のための投資として、無料の相談治療窓口をつくること・公費助成や補助をす ることなどの検討が必要で、それなしには取り組みは進まないと思います。先程の提案 には含まれていませんでしたが、子どもの心を守る大きなシステムを進めるために、そ の中核となる医療保健の技術的センターが都道府県に1ヶ所くらいは必要なのではない でしょうか。 ○平山座長 ありがとうございました。  私の司会の不手際で申し訳ないのですが、4時半に終わらなければいけない会場の都 合と伺っておりまして、あと8人の先生からお話を伺わなければいけないので、大変恐 縮ですが、お1人3分ぐらいでお願い申し上げたいと思います。  それでは、障害の子供たちを世話いただいております清水先生、お願いいたします。 ○清水委員 三重県立小児心療センターあすなろ学園に勤めております。児童精神科の病院でござい まして、全国に12カ所しかございません。こういう母子保健のところに私ども児童精神 科医もやっと入れていただいたというか、子どもの心にも目を向けていただいて本当に うれしく思っております。  今日はどういう訳か児童精神科ではなくて小児精神と書かれているのが気にかかりま す。小林委員が今、子供の心は不採算とおっしゃいました。具体的に数字を申し上げま すと、私どもの病院は 104ベッドでありまして、つい数日前に最終補正を報告いたしま したが、年間経費が11億9,000万弱です。そして、繰入金が5億 9,000万円です。ついに 赤字が50%を超えた訳です。前年度までは何とか50%を超えないようにと言っておりま したが、そういう状態です。赤字の原因についてまた第2回以降でお話しすることがあ ろうかと思います。 冒頭に、医療が入るか入らないかというお話がありましたが、私どもが児童精神科の 入院治療をやっておりますと、こういう仕事は医療、保健、福祉、教育の4つがないま ぜになった土壌の上にやっと成立するものであることをひしひしと実感しております。 これは連携ではなくて4つの領域の積み重ねの上に初めて児童精神科が成立すると言っ ております。 それから、少子化の問題が幾つか論議されております。昨年、ある精神医学雑誌が少 子・高齢化特集を行ったときに「少子化と学校精神保健」という項目を与えられまし た。そこに少子化というのは精神保健の問題ではないと書きました。ちょっと言い過ぎ かもしれませんが、そう思うんです。確かに日本の子供の数は少ない訳ですけれども、 子供がいる御家庭の子供の数を計算しますと、数年前までずっと 2.2人という数が維持 されてきました。マスコミは1.39人というショッキングな数字をばらまき過ぎたところ があります。これは区別して考えなければいけない問題だと思うんです。  なぜそういうくい違いが出来たかを家族社会学が明らかにしつつありますけれども、 結婚したくない、子供を産みたくない若い世代が増えたということもありますし、女性 の高齢出産が増えたこととも関連していることが明らかになってきております。児童手 当が6歳までということが語られておりますが、児童手当を増やすとか年齢を広げると いう政策では子供が増えないことがフランスで証明されていて、それを縮小して保育所 を拡充するとか、安心して子供を産める政策を行ったところ、フランスは出生数が少し 増えてきています。そういうところも考える必要がありましょう。  日本の子供の保健システムは世界最高であると言われておりますが、システムとして はそうですけれども、最近はやっと精神保健が少し入ってきたようで、うれしく思って おります。  私どもの県の人口17万人程度のある市で1歳半健診に私どもが全面協力いたしまして 自閉症児の早期発見・早期療育を行っております。要するに、二次予防です。それは二 次予防するためではなくて、私ども内輪では「自閉症のコスト研究」と名づけておりま す。早期発見・早期療育をすることによって障害の重度化を防ぐ。そういうことをしな くて障害が重度化すれば、その17万人の中から何人の障害児が出て、何人が施設処遇で 生涯を過ごすか。そのコスト比較を研究しようと思っている訳です。これは自閉症のた めに行ったのですけれども、未受診親子を家庭訪問するという形で虐待の早期発見にも 役に立っておりますし、「のび太・ジャイアン症候群」という俗名で有名になっており ます注意欠陥多動性障害も早期にチェックして早く治療するとか、いろいろ役に立つと ころがあります。  この4カ月、10カ月、1半、3歳のシークエンスでいきますと、次に期待されるのは 母子保健の中で7歳児健診をぜひお願いしたいなと思うんです。7歳児というのは何か というと、小学校に入って生活構造が大きく変わったところで子どもの点検を行うとい うことがとても大切だろうと思います。 ○平山座長 ありがとうございました。  それでは、続きまして徳永委員、お願いいたします。地域保健の現場で子育て支援を 直接担当していらっしゃると思います。 ○徳永委員 私も遅れて参りまして、どうも申し訳ありませんでした。私は保健所で長年仕事をして おりまして、母子保健のそれこそ保健の現場でお母さんとか子供たちとかかわってきて いるのですが、こちらの厚生省の案にも示されましたように保健所はどちらかというと 高齢者施策の方が非常に重要視されまして、これまで母子保健の方が軽視されているよ うなところでずっと来ていて、私はずっと虐待の方もやってきているのですが、なかな か歯がゆいなと思っておりまして、今回このような形で「健やか親子21」というプラン を出していただけるというのでとてもうれしく思っております。  小林先生がいろいろお話をしてくださいましたけれども、今のお母さんたちが子育て をしづらい現状であるということで、虐待してしまって通報されてからではなかなか遅 いので早く発見するシステムを保健サイドでつくっていかなければいけないのではない かと思います。  そういう意味で保健婦は、どちらかというとベテランのキャリアがあって、これまで も母子保健を一生懸命やってきた人たちは高齢者の方に抜かれておりまして、母子保健 を現在やっている人たちは大概若手になっているんです。そういう意味でもう一度立て 直しといいますか、こちらにも書いてありますが、人の育成をしていただきたい。国と して人材育成を先行してやっていただきたいと感じております。部署ごとに単発の講演 会等はやっておりますが、最初の思春期保健などへの対応をしていくにも今の状況では かなり厳しいものがあるのではないかと思います。  人材育成については、例えばアルコール依存症の施策を昭和38年に国が国立久里浜病 院にアルコール専門病棟をつくりまして、そこで医師と保健婦、看護婦、ケースワー カーの教育も始めていただきました。それが全国のアルコール医療の展開につながって 今日いろいろな形で広がってきているのを見ているのですが、こういう子育ての問題、 特に児童虐待とか思春期問題については、先ほど小林先生もおっしゃいましたように中 核のセンターをつくって、そこで系統的に教育することが必要ではないかと思います。  今の保健婦も一生懸命はやっているのですが、発見しても次のステップがまだまだう まくいかない。介入とかフォローアップをきちんとつないでいくところがどうしても関 係が切れてしまうという問題もありますので、カウンセリングとかケアがもう少しうま く行えるような教育をやっていただきたいと考えております。  もう1つは母親の精神保健。マタニティ・ブルーとか産後うつ病のお母さんも結構発 見される訳です。私は、産後うつのお母さんを発見はしたけれどその後のフォローアッ プがうまくいかなくて、お母さんが子供を連れて飛びおり自殺をしてしまったという ケースも経験している訳です。こちらの見る目が甘かったとか対応にずれがあったのか なといろいろ思う訳ですが、産後うつを早く発見してきちんとした対応が出来るような システムも必要ではないかと思います。  あとは先ほど先生方がおっしゃってくださいましたように、 現在も健診でかなりの子 育て不安のお母さんたちはそういう目で見ると発見しています。東京都の保健婦の調査 で虐待事例にどの程度かかわっているかということで調べてみますと、 市町村の保健婦 さんたちは5割から6割ぐらいで母子健診でそういう発見が出来るという状況ですので 健診をお母さんの育児不安とか問題が発見できるような仕組みに変えていくような国民 的な意識の改革をしていただきたいと思います。どちらかというと、これまで私たちは 子供に異常がないかどうかと病気を発見することに重点をかけ過ぎてきているのではな いかというところも反省しております。 ○平山座長 ありがとうございました。  それでは、東京都談センターで心理指導を担当しておられます樋口委員、お願いいた します。 ○樋口委員 会議に遅れましたことをおわびします。東京都児童相談センターの相談処遇課心理指導 第一係長をしております樋口でございます。よろしくお願いいたします。  お配りさせていただきました児童相談所の案内は、現在、東京都に11の児童相談所が ございます。その仕事の御案内でございます。その中にもございますように児童相談所 で受けている虐待に関する相談は年々大変な勢いで増加しておりまして、非常に憂うべ き事態と認識しております。以前に各関係機関、福祉局あるいは衛生局、教育庁で虐待 防止のマニュアルをつくりまして防止の啓蒙に努めてきておりますけれども、ここ数年 のテレビや新聞報道の方がはるかに上回って、大変な勢いで相談、通報を寄せられるよ うになっております。いろいろな角度からの相談、通報でございます。  東京の場合ですけれども、児童相談所は各区市ごとに虐待防止連絡会議を定例的に開 くよう組織して、ネットワークをつくって連携を密にするようにしてきております。そ の構成は福祉事務所、保育園、幼稚園、小学校・中学校、保健所、医療機関、警察、そ して家裁の調査官、児童委員というふうに関係される方に御参画を願って定期的に行っ てきているところです。  実際の児童相談所に寄せられました通報、相談につきましては、内部の関係職員が速 やかに集まって、まず状況を正確に把握するための調査を検討します。その場合には地 域の児童委員、主任児童委員、それから警察、福祉事務所の生活保護のワーカー、保健 婦といろいろな方に協力を仰いで調査します。そして、そこで緊急に子供を保護する必 要があるかどうかをまず判断して当たります。場合によっては、29条で立入調査をして 子供の保護を強行することもございます。その後は一般の相談の場合と同じようにいろ いろな関係資料、情報を収集して処遇方針あるいは親への援助方針を検討して決定して いるところですけれども、児童養護施設にお子さんを措置した方がいいという場合は、 まずお子さんがお母さんから虐待を受けて喪失体験を味わい、そしてさらに家庭から離 されて養護施設に行って生活しなければいけなくなるという二重の喪失体験で心が非常 に落ち込む訳です。児童相談所の方でも以前から心理職が中心に個別の心のケアはやる ようにしておりますけれども、1つは安全な生活の場が保証されたということでよしと して、その中で個別のケアをしなければいけないお子さんがやってきておりましたが、 ここのところ対応し切れない数になってきて、もうひとつシステムを改善しないととい うところにおりました。  今年度からは厚生省の施策の1つで児童養護施設に、非常勤ですが心理職員が配置さ れることになりまして、私ども児童相談所と連携をとらせていただきながら、個別の心 のケアを必要とするお子さんにかかわってもらっています。ただ、一方で親御さんへの サポート、援助、親子関係の修復についてはまだシステムが全く出来ていないのが現状 で、この点については早く何とかせねばならないという課題があります。  私自身が親御さんの援助へのかかわりを多々やらせていただいていますが、その中で 感じている点を幾つか述べさせていただきますと、お母さんが葛藤してストレスがたま ってどうしようもないときにちょっとでもいいからすぐに預かってほしいという要望に 応える一時保護の場が必要だということ、その受け皿を用意してあげたいということ。 それから、お母さんが悩みを語り合う場、相手、受けとめてくれる場なり人を地域の中 に確実に保証させるということと、家庭の中に父親がいる場合にはお父さんがどうして も子育てに参画することがとても重要で、お父さんが参画出来ている人の場合は何とか うまく立ち直れるということを実感しているところですが、それがかなわない場合は親 子が大いばりで地域に出て受け入れられるという地域のネットワークが欲しい。やはり 引きこもっている親子が問題なので、まだまだその辺のシステムをもっと工夫していく 必要があるなというのを日ごろのお母さん、子供とのかかわりの中で感じるところで す。 ○平山座長 ありがとうございました。  それでは、渡辺先生にお願いします。小児科仲間で心の問題というといつもお願いし ていますが、お願いいたします。 ○渡辺委員 慶応病院の小児科の渡辺でございます。私は約6年半前に20年ぶりに母校の小児科に呼 ばれ、小児科の研修医の指導と入院と外来の治療をしております。私が慶応に呼ばれた 時点で、私は小児精神科医でした。一般精神科医であり小児精神科医ですけれども、そ の専門分野の人間がフルタイムで小児科に常勤として治療や若い医者の指導をするとい う試みは、世界的に画期的なことでした。ボストンのハーバード大学小児科のブラジル トンがそれはすごいことだと言ったぐらいです。 今から思うとそれは、私が今勤務している小児科の先見の明ですけれども、それに当 たり小児科と精神科の間の調整とか、セクショナリズムを捨てることとか、大変な英断 でした。従来の医学部の講座のあり方では起こり得ないことですけれども、ともかく子 供のために大人が極限を超えて献身してくださいという長の一言で小児科に来ました。 私自身は小児科から精神科、神経内科、イギリスでの精神分析の勉強など、10年以上 かかってやっと子供の心のケアと家族のケアができる専門家になれたと思うんです。心 のケアの専門家をつくるには時間がかかり、できるだけ早く、長期的な計画で、気長な 地道な土台づくりのために良質のいろいろなプランを立てる必要があると思います。 欧米は戦後のユダヤ人迫害のおかげで、ユダヤ人が中心になってユダヤ人迫害のトラ ウマを収拾するための精神科や心理療法士の育成をすごく地道にやりました。私が欧米 のいろいろな人たちに日本の子供たちは心身症になっても遊戯治療を受けられない、場 所がないと言いましたら、私たちは20年前には病院の霊安室を使ってやった、霊安室は ふだん使っていないからそこを即席の遊戯治療室にしてやってきた、あなたも20年かか ればちゃんと私たちのような心のケアの専門システムを作ることはできると言っていま す。 採算は合いませんけれども、これは土を耕し種をまくぐらいの効果があります。私は 小児科で6年半やってまいりましたが、小児科に入りたての小児科研修医の1年生、2 年生の研修医に心を鬼にして拒食症の子供たちの食事介助を毎日やらせてきますと、こ の子たちは母親となごやかに食事を食べていない、どんなに立派な家庭や、学歴の高い お母さんやお父さんでも、テーブルについたときの温かい、柔らかい雰囲気がなかっ た。それをあなたたちは小児科医になるならやりなさいと言って、みんな土日もなく、 デートもせずに大変なトレーニングをしてきました。それを経た人たちが6年医にな り、若者でありながら非常に成熟度の高い心のケアもできる小児科医になっております 。 ですから私は、現在の例えば若い小児科医の育成、あるいは若い保母さんの育成、あ るいは若い先生たちの育成の中に、真心こめて、子供に向き合い寄り添う研修ができる ようなシステムを作れば、まだまだ日本は救えると思います。 私自身は戦後のベビーブームに生まれ、物のない時代に育っています。物のある時代 に大人になり、いざ我が子を育てるときに驚いたのはすごい物の氾濫です。うちはテレ ビを子供たちに見せるかわりに、同じ時間があったらお相撲をしよう、外で遊ぼう、泥 んこ遊びをしようと、共働きで必死に子育てしてきました。それができたのは共にやっ てくれた無認可の保育園があったからです。そのときはサポートとか援助というより、 もっと共に生きてくれた感じがしました。私にとり、無認可保育園は私の母屋で、私の アパートの家は離れのような気持ちでいました。そういう親心が私は日本はまだ残って いると思います。 日本は親心が残っているけれども、その親心にたまたまうまく出会えない赤ちゃん時 期を経た子供たちが思春期に問題を起こしています。思春期の問題を聞きますと、必ず 乳幼児期の親の大変さがあります。さらにその親の大変さを聞いていくと、必ずその親 の両親は戦後の混乱、例えばコンニャク問屋の自分の家が倒産して、仙台から東京へ逃 げてきて、一家離散になったなど、もろもろの日本の戦中戦後の窮乏や、その後の高度 経済成長の残業や過労や父親不在の家庭などの問題がいっぱいあります。 ですから、この「健やか親子21」を軸に、ライフサイクルにわたる日本の心のあり方 をみんなでもう一度考えようということが大事だと思うんです。私は、この中で一番抜 けているのは男性のメンタルケアだと思います。男性が今、不況下で毎日のように都心 の線路に飛び込み、私は職場にちゃんと着かない状況があります。日本の男性が妻子の ため、お国のためにいかに自己の成長を後回しにし、ぼろぼろに疲れているか。その疲 れている父親を見て母親がどんなに一人で育児をしょっているか。育児は不安がつきも のですけれども、その不安を担える伴侶や友がいたら、不安はお互いを深く結びつけ合 うために楽しくなります。ですから、育児不安はあってもいいけれども、その時身近に アクセシブルな大好きな人や、相談できる信頼関係がないところが悲しいと思うんです ね。 そういう意味で私は男性の雇用の問題、出産期の母親の就業体制の問題なども含め て、育児をとりまくいろいろな分野をみんなで考えていく必要があるのではないかと思 います。 ○平山座長 ありがとうございました。 それでは、最後のグループと言っては変でございますが、地域全体のお立場になりま す。最初に日本医師会常任理事の小池先生から診療科を越えたお立場で御意見をいただ きたいと思います。 ○小池委員 先ほどからいろいろなフィールドから非常に格調の高い、あるいは関心の深い事項を伺 って、「健やか親子21」という検討会が今後ますます世の中のオピニオンリーダーであ ればと願っております。 日本医師会では小児医療に関しては今回、病院の小児医療はつけましたが、全体が0.2 %の増額ということでございますので御了承いただきたいと存じております。 さらに、子育て、乳幼児保健あるいは少子化対策などは全般にやっておりますけれど も、少子化の問題は私は根が深いだろうと思います。この民族は物質的繁栄を第一に考 えておりまして、子育てをするにしても、例えば塾に入れていい中学校へ入れようとい う趣味的育児に情緒的な消費をなさる家庭と、まるで、放任をして極端に言えばむしろ 親の人生に邪魔というような拒否的な育児態度をとるものと二極化されて、調和のある 子育てが比較的少なくなってきた。この辺に問題があろうと思っております。 したがいまして、これから育ってくる子供たちの資質がいささか心配になると思いま す。具体的に言えば、中学校の10%近くが登校拒否をしている。私どもはネパールで医 療援助を学校保健の場を通じていたしております。ネパールでは1年生には全部入って まいりますけれども、3年生になると半分ぐらいになって、5年生になるとほとんど20 %ぐらいになってしまう。けれども、やめた子供は自分がやめたくてやめたのではなく て、家業が貧しくて働きに行かなければならないからやめた訳でございます。その辺は 昔の日本の社会と現代の物質繁栄した日本の社会との精神構造が全く違ってきていると いうことに脅威を感じている次第であります。 こういうように、無気力あるいは無目標な、「でも」とか「ええっ」というような、 この間、文部省の小田視察官が言っておりましたけれども、「別」にというような非常 に物事に関心がないような子供がかなり多く増えていることは事実でありまして、こう いう子供たちが少子化の中でどんどん増えてくるとなると、私はこの民族の未来はそん なに明るいものではないだろうと思います。 今は経済界の日経連などの方々は雇用・リストラの方に視点を置いて少子の問題、い わゆる労働需要に関して労働の供給の問題に関して全く無関心であるけれども、いずれ トヨタにしろ日産にしろ、ユーザーとなるのは18歳から40歳ぐらいまでの若い年齢層で あって、私どものように68歳になると自動車なんて幾らカタログを見せてもらっても買 いたいと思ったことがない。こういう人間の層が16%から30%まで増えていく訳ですか ら、それは当然に自動車の内需は減ってくる。住宅産業においてもすべての内需は減っ てくる。 この民族は本当は今こそ少子化の問題、あるいは子育ての問題を考えるべき最後のチ ャンスです。申し上げると、日大の小川教授は言いました。「第二次ベビーブームのエ コーが去った。あとは去る前にしっかりやらないとだめだ、去った後はもう惨憺たるも のであろう」と。失礼いたしました。 ○平山座長 ありがとうございました。 それでは、各地域の保健サービスの責任者をしていらっしゃいます先生方に最後にお 話をいただきたいと思います。 最初に豊島区池袋保健所長の澤先生。 ○澤委員 23区では平成7年に53ありました保健所が今年4月になりますと26という数になって、 約半数以下となってきます。その中でも、先ほどの徳永委員の話とはちょっと相反して しまうのですけれども、母子保健事業に関する限りかなりの情熱を持って保健所は取り 組んでいるなというのが私の感想です。 ただ、区の非常な財政難と高齢者施策、特に介護保険絡みで区はパニック状態に陥っ ておりますので、そういう中で今回のこの報告書はかなり具体的な項目を具体的に書い ていただければ現場のいろいろな場面での役には大いに立つのではないかと思っていま す。 豊島区についてお話しさせていただきますと、豊島区では保健婦の発想から平成8年 に日本で初めて家庭内での事故予防センターをつくりました。それが1年前ですが、平 成10年12月に、またこれも初めてなのですけれども、モデルルームという形でこの財政 難にきっちりモデルルームを立ち上げていただいて、全国からかなりの視察者を受けま して、全国の保健所や保健センターでもパネル展示などで事故予防に対してはかなり進 んだ展開ができてきているとは感じておりますけれども、私は保健所だけでは無理では ないか、こういう会議を通して医療機関の先生、私も神谷先生のもとで小児科の医者を 12年間やったのですけれども、そういう視点はあのころはありませんでした。予防とい うことに全力を傾けるならば、保健所だけではなく医療機関も含めた形で子供の事故予 防に取り組んでいただけるようなものも組み入れていただければという気持ちでおりま す。 豊島区でさらに事故予防センターから心肺蘇生の体験学習という授業も地域で展開し ております。モデルの人形を使って心肺蘇生を訓練しています。こういうものはなかな か成果が上がらないというか、成果が上がらないほうがいいのかもしれないのですが、 見えない部分がありまして、いろいろな部分で医療機関も含めて事故予防という観点は 大きく飛躍していきたいと思っています。 それから、後ろから2ページの地域保健では健診の場面をこのように変えていきなさ いという文書を見まして、私はちょっと驚きました。ほかの保健所はわかりませんけれ ども、23区の大方の保健所ではもう十数年も前からこういう視点でほとんどの検診事業 は既に取り組んでいるので、今さらこれなのかなという感じはしました。 こういうことが進んだ中でこれから先は、母子という視点は確かに98%の受診率を誇 る4カ月健診を無にしない手はないというでいろいろなやり方はありますけれども、保 健所だけではなくて地域の住民をいかにこういう問題に取り込んでいくかということが 本当の大きな役割であり、できることではないかということで、保健所の健診というこ とではなくて、地域という視点でこれから先は報告書の中でもいろいろ盛り込んでいた だければというのが今日の感想です。 ○平山座長 ありがとうございました。 それでは、大分県佐伯保健所の藤内先生、お願いいたします。 ○藤内委員 今も保健所の母子保健の取り組みが紹介されましたが、実際に市町村の母子保健事業を 含めて、こうした母子保健事業の効果を評価する意味で「健やか親子21」でその評価指 標を明確にされるのは大変意味があることだと思います。実は、平成7年の心身障害研 究で市町村の母子保健事業の評価をねらって評価指標をつくった経緯がございます。そ うしたこともひょっとしたらこういう目標設定等にも使えるのではないかと期待してお ります。 こういう目標設定だけでなく、何人かの委員が異口同音におっしゃられたように、具 体的な取り組みについての1つの提案、例えば健康教育の取り組みについても具体的な 提案が必要ではないかと思われます。 アメリカでは、ノーエアボディープログラムがかなり機能して、いわゆる生活習慣病 予防を幼稚園のキンダーガーデンから取り組むプログラムが動いておりますが、少なく とも日本においてもそれに取り込まれているライフスキル教育、これは単に生活習慣病 気についての知識を提供するということではなく、自己決定能力であるとか将来の思春 期保健の課題の克服にもつながるようなものも盛り込まれているのですが、そういうラ イフスキル教育についてもできればこの後の検討会の中で具体的に取り上げていただけ るとありがたいと思います。 今、うちの管内で保育園に通う子供たちとその親を対象に親子の健康づくり、親と子 で一緒に子供の健康のことを考え、30歳前後の若いお父さん、お母さんの健康も考え る、お子をユニットとして健康づくりの教育の場を提供できないかと検討しておりま す。 ばらばらに検討されがちではあるかと思うのですけれども、「健康日本21」の特に働 き盛りの生活習慣病予防を考えたときにも、先ほど戸田委員も御指摘されたように、妊 娠や出産、小さな子供を持つ親は健康に対する感受性、関心が非常に高まっております ので、こういうものを健康教育の機会ととえらることも重要ではないかと思います。 ○平山座長 ありがとうございました。 それでは最後になってしまってお待たせいたしましたが、愛媛県の担当課長をしてい らっしゃいます櫃本先生にお願いいたします。 ○櫃本委員 もうちょっと早い時期に話をしたかったのですが、結局最後になってしまいました。実 は私、お話を聞いていて、どちらかというと中身がすべて国レベルの話になっていまし て、私は地方行政におりましていつも思うのは、また国が勝手なことを言ってまた何か 押しつけてきたな、地域の現状も知らないくせに−−ごめんなさい、そういうつもりで 地方は受け取る傾向があります。 今、皆さんが朗々と語られましたけれど、それは皆さんが現場のことを知っておられ て、その現場を反映して言われていると思うのですが、それは地域によって随分違うと いうことなんですね。だから結局は、地方行政の中の地域の行政が伸びない限りは、幾 らこういう方法がいいよと定義しても、先ほど北村委員が言われたけれども価値観の問 題もあるし、そういうことをここでまた書いて、これがいいのだ、こうあるべきなの だ、こういうことをしないといけないのだ、何とか設けないといけないのだというのを 書いても、このカネがないときに、それはただ空中に浮くだけだと私は思います。 今は地方分権、ヘルスプロモーションというのがバックにあるし、これそのものは 「健康日本21」というものにのって動いている訳ですね。その点からいくと、まず住民 を主役にする。私は戸田委員の話が実感として一番感じましたけれども、住民を主役に してその地域の住民が何を望んでいるか、まず住民に一番近い人たちがそれを集めると いうこと、それを知るということがいかに大事か。 私は専門家ではないですけれど、皆さん方専門家ではもう既に限界が来ているのだと いうことをむしろ明記して、先ほど保健所もありましたが、また保健所が何かのサービ スを提供するのではなくて、健診などでメニューを増やしてマニュアルをやってチェッ ク、チェックではなくて、我々が行政あるいは専門家として何をやっているかというの は、サービスを提供する前にまずその地域の実情を知って、それから迷える小羊を導く のではなくて、一緒に考えていくということがこれからのスタイルなのだろう。住民を 信用しないと、相変わらず迷える、分かっていない、これはだめだというスタイルはも う専門家のひとりよがり、これまでの従順な日本人に対する押しつけであったのではな いかと私は思います。 ただ、そういうことで一番変わらなければならないのは住民の意識ですが、その前に 変わらなければならないのは専門家や我々行政職員の改革だと思います。住民の方に視 点を持って、「健康日本21」の11ページの一番上に実は「国民」が載っています。これ はすごくいいことだと思ったけれど、残念なことに全部下からの支援です。住民が主役 で、住民が何かやっていくのではなくて実は支援と言いながら、あるいは教育と言いな がら、専門家の知っていることをただ押しつけているだけで、住民に本当に関心を持た せてそれを行動に変えていくやり方をしていない。つまり、教え込むスタイルをしてき た。 学校教育でよく聞くのですが、末端の先生はいつもこう言われます。「また何かカリ キュラムが変わったよね、第二・第四土曜日はクラブもしたらいけないの」とか何とか 言って、方法論で全部やられる訳ですね。本当はそういう意図でやられたシステムでは ないのに、結果的には中央で考えたことがハウツーやマニュアルという方法論でいった ときに、現場にはただサービスを提供するためのもの。 現に保健婦さんの多くは老人保健事業や介護保険の手足として使われていて、そこか ら得た情報を施策化に変えるまでに、ただ保健婦ノートに記録するだけで終わってしま っているという現状がある訳です。それをこれから本当に「健康日本21」を考える上 で、現場にいる人たち、つまり住民の近くにいる人たちがいかに重要なのかということ を意識し、位置づけて、マスコミに振り回される国民ではなく、本当に我々身近な者が 地域情報をきっちり提供し、またそれを収集してまた提供するという繰り返しの中で国 民の問題意識に変えていく。先ほど子供は親の鏡だと言いますけれども、まさに地域の 中にないと、まただれかがどこかのテレビで「私はこう思います」などと言って、専門 家にとって一番の欠点はそれが一番大事なことだとつい思ってしまう、自分が言ってい ることは一番正しいと思ってしまうのですが、実は住民にとって大事なことはもっとた くさんごろごろしているんですね。 そういう中で本当に考えるのであれば、私は何度も言いますけれども、やはり地域。 地域の開業医の先生方もそうでしょうし、保健婦さんやスタッフもそうでしょうし、ボ ランティアの方々も非常に大事な分野です。そういう人たちが大事なのだということを はっきりしていくべきだと思います。 先ほどルーチンワークの話がありましたけれど、ルーチンワークが危なくなっている のは、結局はサービスの提供の場になっているからですね。そこで情報を得るための場 だというふうにこれから明確に位置づけていくことによって、診療も治療するためでは なくて情報をとる場なのだということを全員が意識すればその中で会話が始まり、それ ぞれの国民意識も上がってくるのだろうと思います。そういう全体的な取り組みの運動 になるべきだろうと思います。 最後にこれだけ申し上げたいのは、この議論の過程はインターネットなり何らかの形 でオープンにしながら議論していくべきだろう。また、専門家の中にあるべき姿をマニ ュアルやハウツーなど、具体的かもしれませんけれども出てきたものがそういう教科書 をつくるためのものではなくて、ディスカッションする場にぜひしていただきたいと思 っています。 ○平山座長 ありがとうございました。 大変長時間にわたって先生方から貴重な御意見をいただきました。これは私が企画し たのではないのですが、たまたま最初と最後の御発言が大変パンチのきいた内容になり まして、これもまた結構だったと思っております。 それでは、時間がなくなってしまって申し訳ないですが、これから先の計画などにつ いて事務局から御説明ください。 ○椎葉課長補佐 大変行き詰まる御議論をありがとうございました。 それでは、資料3でございますけれども、「健やか親子21」の検討会の今後のスケジ ュール (案) でございます。資料3をごらんいただければと思います。本日(2月3日) に第1回の検討ということでございまして、今後、10月下旬までに全部で10回程度の検 討会を開きたいということでございます。 最初の4回でございますけれども、毎月1回開催いたしまして、6月までに4つの課 題について一通りご議論いただく。ただし順番が、次の第2回は3月中旬から下旬を考 えておりますが、「育児不安の解消と子供の心の安らかな成長の促進」の項から始めた いと考えております。そして4月中旬に「思春期」、そして「妊娠・出産、子供のから だの健やかな発達」というふうに流れていきまして、7月上旬の第6回にこういう計画 を推進していくための実施方法、方法論システム、ヘルスプロモーションの手法などに ついて検討いただいて、8月上旬に第7回を開催いたしまして、中間的な取りまとめを していただく予定でございます。その中間取りまとめを踏まえまして、9月から10月下 旬まで3回ほど、最終報告書をどう取りまとめるかという検討を行っていただきまして 10月下旬に報告書を取りまとめたいということでございます。 下に「○」を3つ書いてございますが、次回の課題、次々回の課題もそうでございま すけれども、事務局の方で議論のたたき台を作成いたしまして、この検討会に提示した いと思います。そしてそのたたき台をもとに行われた議論を集約いたしまして、最終的 な報告書として取りまとめることにしたいと思います。 そして各委員でございますけれども、本日のような積極的な意見の提出と、いつでも 結構でございますけれども、こういう資料を配りたいとか、意見があるというものを文 書の形で提出いただければ、会議のときに配付したいと考えております。積極的な文書 の提出をお願いいたします。コピーは幾らかかっても結構でございますので、よろしく お願いします。 各委員から提出していただいた統計資料や科学的なデータなどにつきましては、せっ かくの検討会でございますので、最終報告書とは別に資料集として取りまとめて、最終 的な取りまとめの際にお出ししたいということでございます。 以上、事務局からかなり勝手な言いぐさではございますけれども、ぜひ「健やか親子 21」を実り多き検討会とするために、こちらの耳の痛い御意見も結構ですし、特に住民 の方から得られた情報なども数多く提出いただければと思います。 以上でございますが、時間も差し迫っておりますので、3月の第2回の日程のことで ありますが、各先生方の机の上に日程調整の紙を出していると思いますので、それにつ きましてマル・バツをつけていただいて机の上に置いていただければと思います。3月 中旬から下旬でございますけれども、あいにく平山先生からはもういただいているので すが、今のところ3月中旬からあいているのが16日と23日、27日、29日、30日、31日の いずれかの日に、先生方の一番都合のいい日にセットしたいと考えております。時間帯 は本日と同じように午後を考えておりまして、3時間程度をご議論いただくというでご ざいますので、ご記入のほどよろしくお願いいたします。 ○平山座長 ありがとうございました。 ただいまの事務局の御説明のとおり、次回は3月中旬ということでできるだけ多くの 先生に御出席いただける日を選んでいただきますが、10回にわたる長丁場になりそうで ございます。うっかり座長をお引き受けしたのはいいのですが、この取りまとめはかな り大変だなと考えております。先生方の御協力でいいものができて、21世紀の1つの道 しるべになれば大変幸せと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。ど うもありがとうございました。 ○藤崎課長 大変長時間にわたりまして熱心な御議論をありがとうございました。私の予想していた とおりの展開になりまして大変すばらしい委員の先生方ばかりで喜んでおります。今日 ご指摘いただいたことの中には私共として、織り込み済みものも幾つかございます。例 えば10年かかってやるというのは10年で何かできるのではなくて、10年かけて準備して いくというお話でありますとか、あるいは都市部と郡部では問題が違うというお話であ りますとか、あるいは他省庁との連携の問題の必要性等でございます。それから国が何 をしていくべきかということと関係の団体、個々人が何をしていただけるのかという問 題、これも両方必要であるという前提に立っております。そういう意味で、まさに先生 方のパーティシペーションといいましょうか、御協力が成功のかぎだと思っておりま す。平山先生にも今後ますます御苦労をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げ ます。本日はありがとうございました。                                    (了)  担当者:児童家庭局母子保健課 椎葉 茂樹  内線:3173