00/01/26 第11回生殖補助医療技術に関する専門委員会議事録 第11回 厚生科学審議会先端医療技術評価部会 生殖補助医療技術に関する専門委員会 議事録 厚生省児童家庭局母子保健課                                        厚生科学審議会先端医療技術評価部会 生殖補助医療技術に関する専門委員会議事次第 日 時 平成12年1月26日(水) 13:30〜16:00 場 所 霞が関東京會館 議 事 1) 生殖補助医療技術に関する有識者からの意見聴取   (対象者)  ・根津 八紘氏 諏訪マタニティクリニック院長  ・浜崎 京子氏 中央クリニック 不妊カウンセラー 2) その他 開 会 ○大平課長補佐  定刻になりましたので、ただいまから第11回厚生科学審議会先端医療技術評価部会、 生殖補助医療技術に関する専門委員会を開催いたします。  本日は、お忙しい中をご出席いただきましてありがとうございます。  委員の先生方は本日全員出席ということでございますが、矢内原委員が遅れておりま す。  また、本日の議事(1)にありますように、有識者からの意見聴取ということで、諏 訪マタニティクリニックの根津八紘先生、中央クリニックの不妊カウンセラーでありま す浜崎京子先生にもご出席いただいております。  なお、前回、代理母出産情報センターの鷲見様をヒアリングにお招きするということ でございましたが、事務局の方で連絡をとりましたところ、本人から辞退の申し出があ りました。これにつきましては、鷲見様から資料が提出されておりますので、後ほどご 紹介させていただきます。  それでは、議事に入りたいと思いますので、中谷委員長、よろしくお願いいたしま す。 議 事 ○中谷委員長  本日は、根津先生と浜崎先生にはお忙しい中、当委員会にご出席いただきましてまこ とにありがとうございました。また、公開のためにたくさんの方にご出席いただきまし てありがとうございました。幸いにいいお天気に恵まれまして、気分よく議事が進行で きるのではなかろうかと思っております。  では、議事に入ります前に、事務局から本日の資料のご確認をお願いしたいと思いま す。どうぞよろしく。 資料確認 ○椎葉課長補佐  本日の資料でございますが、まずお手元の資料をごらんいただきたいと思います。  まず、1枚目が議事次第でございます。  それから、事務局の方で用意した資料でございますが、右の方に資料ナンバーを振っ ておりますけれども、資料1が根津先生からご提出の資料でございます。資料2でござ いますが、浜崎先生からご提出の資料でございます。資料3でございますが、きょうご 欠席でございますけれども、代理母出産情報センターの鷲見先生からの資料でございま す。それから、参考資料1といたしまして、インターネットで寄せられましたご意見を 配付してございます。あと2つございまして、根津先生から配付いただきました『先端 医療を考える』という水色のパンフレットと『“減胎手術”から“非配偶者間体外受精 ”そして“借り腹へ”』というタイトルのB5の資料でございます。  以上、落丁等ございましたら、事務局の方にお申しつけいただければと思います。 ○中谷委員長  よろしゅうございますか。ご確認いただけましたでしょうか。 ○椎葉課長補佐  それでは、先ほど事務局から申し上げましたが、鷲見先生からご提出いただきました 資料につきまして、若干ではございますが、概要をご説明したいと思います。資料3を ごらんいただきたいと思います。  事務局の方で中谷委員長にご指導いただきまして、質問項目を約5点ほどピックアッ プさせていただき、これを鷲見先生にお送りいたしましてご回答をいただいたものでご ざいます。  主な質問事項でございますが、1ページにございますようにこの代理母出産情報セン ターの概要について、それから代理母、借り腹などの仲介の具体的方法についていろい ろと教えていただきたい、特に契約の条件とか、契約書をいただけるとありがたいとい ったことなどを聞いております。それから、代理母、借り腹を依頼する不妊夫婦につい て、その傾向や具体的な例、そして代理母、貸し腹になる女性についての具体的な例、 その他問題点など、行政などに対して希望がありましたらお聞かせくださいといった項 目のご質問をさせていただきました。  2ページ以降が鷲見先生からのご回答でございます。2ページから5ページが質問に 対する回答、6ページから7ページが代理母を通じて出産に成功した個別事例でござい ます。そして、8ページ以降でございますけれども、このセンターと代理母に関する合 意書そのものでございます。  それから、最後のページでございますが、一昨日、鷲見先生の方にコメントを聞きま して、幾つかこういったことを話してほしいということで5点ほどまとめております。  内容でございますが、また2ページの方にお戻りいただければと思いますが、設立し た年が1991年ということでございます。それから、自由にご意見をということで、4 ページの真ん中より下あたりでございますけれども、「何十人ものクライアントのお世 話をしてまいりましたが、結果的には本当に代理母出産ということがよいことなのか、 自分でも考えるようになりました」というような、お仕事を通じてのいろいろな迷いと いったことを書いてございます。後でお読みいただければと思います。  それから、6ページ、7ページでございますが、妊娠に成功した方々の概要が載って おりまして、36例成功してございます。年齢は28〜50歳までになってございます。7 ページには、授からずに契約終了となった方が、5人載ってございます。8ページから は合意書でございます。  最後の17ページでございますが、最近の傾向についてのコメントということで、代理 母の希望者がかなり減ってきているようでございます。それから、特に外国の例でござ いますけれども、米国ニューヨーク州やミシガン州などでは廃止になったということで 代理母そのものに対する疑問が持ち上がり、反対も強くなってきたようだと。そして、 これから代理母というのは行われなくなるのではないかというようなこともコメントと して書いてございます。以上、簡単でございますけれども、概要でございます。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。  鷲見さんからのご回答、こちらからのご質問も適切だったようでございますが、非常 に参考になるのではないかと思います。委員の方たちは初めてごらんになるわけですか ら、後でまたゆっくりとお読みおきいただきたいと思います。  それでは、引き続きまして、議事1の生殖補助医療技術に関する有識者からの意見聴 取に入りたいと思います。  事務局から根津先生と浜崎先生のご紹介をお願いしたいと思います。 ○椎葉課長補佐  それでは、本日のヒアリングの対象の先生でございますけれども、根津先生と浜崎先 生をご紹介いたします。  根津先生でございますけれども、諏訪マタニティクリニックの院長でございます。特 に、不妊治療に関して我が国の第一人者ということで、減胎手術についてそれから第三 者の精子、卵子、受精卵などの提供についていろいろとお話をしていただけるというこ とでございます。  もう一方でございますけれども、浜崎先生でございます。医療法人三秀会中央クリニ ックの婦長でございまして、ご出身は助産婦さんですが、不妊のカウンセラーを幅広く 手がけておられます。特に不妊相談に関しましては、不妊学級や公開講座また不妊看護 ネットワークの世話人などもされておりまして、不妊相談、不妊に悩む方々についてい ろいろお話しいただけるということでございます。以上でございます。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。  根津先生につきましては、根津先生ご自身がたくさん著書もおありでございますので 委員の方たちもお読みになっていらっしゃると思いますし、きょうこちらに傍聴といい ますか、ご参加くださいました一般の方たちもお読みになった方も多いだろうと思いま す。  それでは、根津先生から30分程度ご意見をお伺いしたいと思いますので、よろしく お願いいたします。 (1)生殖補助医療技術に関する有識者からの意見聴取:根津八紘氏 ○根津氏  先生方、きょうはお忙しいところ、今回の問題に関しましてご検討いただく機会を持 っていただきましたことに感謝申します。ありがとうございます。  どういう形でこのヒアリングが行われるかちょっとよくわからなかったものですから ご質問いただく内容にお答えしていく形のお話かというふうに思っておりました、しか し、30分間話をしろということでございますので、お手元に今日お渡しいたしました 『“減胎手術”から“非配偶者間体外受精”そして“借り腹”へ』と書かせていただき ました、これは議事次第の中に入っているところとかなり重複いたしますけれども、き ょうのためにまとめさせていただきましたので、これを中心にしながらお話をさせてい ただこうと思います。  「はじめに」というところであげさせていただきましたこと、即ち、科学が利便性を 求めてどんどん進歩していく、そういう中で日々それに向かって進んでいく部門とそれ から全然そういうものには動じないでいる2つの部門が私たちの生活の中にはあるので はないかというふうに思います。本来、私はどちらかというと“わび”とか“さび”の 生き方というものが自分の性に合っておりましたが、たまたま医者になりまして、そし てたまたま産婦人科になり、そして不妊治療にかかりを持つようになりました。  不妊治療の中で患者さんとかかわって来る中で、治療薬や、技術がこの20年間くらい に一気に進歩して来たことを感じます。そういう科学の進歩とともに、今までは妊娠さ せることができなかった方たちを妊娠させることができるような治療薬や技術が進歩し て、今までは「諦めてください」と患者さんに言っていたことが、5年たち10年たつ中 で、諦めという領域ではなく現実の問題として不妊治療の領域に入ってきた事柄が多々 あります。体外受精をとらえてみたときに、今から考えれば、10年前、20年前に不妊と いう悩みの中で諦めさせてしまった数々の患者さんを振り返ることができます。今だっ たら、あの人を妊娠させることができたのではないか。ああやって通ってきていた患者 さんに何とか子供さんを授けることができたのではないかという、後悔とも言えるよう な思いを抱くことが多々あるわけであります。  同時に、私たち医療者の担当していく治療部門の情報は、マスコミ等もろもろを通じ て多くのお母さん方または不妊のペアに届くことにより、その方たちからの要望が多数 出てきました。そのような要望を受ける中で感じた幾多の悩みを私自身の治療を通じ、 思い出されます。その一つはAID(非配偶者間体外受精)でありました。これを男性 不妊の治療法として患者さんが求めてきたときに、私は非常に疑問に感じたわけであり ます。夫婦というのは、自然の中で妊娠し、そして出産していくというのが本来の姿で あるというふうに私自身考えておりましたから。しかし、私の考えとは異なり、他の人 の配偶子を使ってでも子供をもうけたいという希望のご夫婦がいて、その熱意を度々感 ずることがあったのです。では、この問題の中で何が引っかかってくるか。即ち親子と いう血族的な関係というものが絶たれた形の中で親子が存在してくるということです。 これを“生物学的親子”に対して“社会的親子”という言い方ができるかもわかりませ んが、そういう社会的親子というものを望んでくる方たちがおられるということを知っ たわけです。  そういう人たちはどういうふうに考えているのかと、最初は違和感を感じました。し かし、歴史的な形の中で、また身近な仕事の中で、男の生殖にかかわる役割というもの をとらえたときに、女性の役割と男の役割との違いを私なりに感じたわけです。こんな 言い方をすれば非常に変な感じになるのですが、我が子を見て、「これが我が子である か否か」ということは男にとっては、神のみぞ知るという領域の中にある、そういう面 があります。なぜかといえば、最近は私どもの施設では見られなくなってまいりました が、2年に1度くらい血液型の違う親子関係が存在していたことがありました。その場 合、奥さんに問いただしてみますと、要は不倫をしたことを告白したわけです。夫婦の 問題ですから、それ以上私どもが立ち入る必要もございませんので、そのままにしてお きましたが、この場合「知らぬは亭主ばかりなり」という言葉になるでしょうか。  男というのは、これが自分の子であると思えばそれを信じて一生懸命育てていく、そ ういう宿命的なものを私は持っているのではないかと感じます。そういう非倫理的な関 係の中で成り立つ父親と子供という関係も成り立つわけです。AIDを考える時、男性 にとっては「これが自分の子である」と意識すれば、親子関係が成り立つものだという ふうにとらえていけばいいのではないかと考えるようになりました。そのことを了解し た上でAIDによる親子関係が成り立つのであるとするならば、私がとやかく言うこと ではないと思いまして、それからはAIDを施行している施設へ紹介する形をとったわ けであります。  では、なぜ自分の施設でしないかといったときに、ドナーを探すことが非常に難しい ということがございました。それと同時に、信州という限られた範囲の中でそういうこ とを始めますと、アッという間に地域の中にそれが行き渡って、どこのだれの精子がだ れのところに行ったのではないかという話が出てきて、それがまたトラブルを起こすこ とになるだろうというふうな懸念がございました。結局、私は紹介してお願いするとい う形で行ってまいりました。  AIDとかかわる中で、そうはいっても私の中にはまだわだかまりがありました。し かし、月日がたつうちに、社会的にもうある程度認められてしまったAIDが存在して いるにもかかわらず、卵巣不全という形で自分の卵を使えないという女性の立場を考え るようになって来ました。即ち、男性だけはサポートされているものの女性がサポート されていないということに対する不平等な感覚を非常に持つようになったわけでありま す。何も私はフェミニストということを大見得を切って言おうとは思いませんが、やは り平等という中に置いて、男性の足らないところはサポートされるにもかかわらず、女 性の足らないところがサポートされないということの不自然さというものに日ごろから 違和感を持っていたわけであります。  体外受精施設をつくることにいろいろと迷っていて、最終的に体外受精ができる状態 になったときに、それまで見過ごしてきた卵巣不全である一人の患者さんに、もろもろ の事情の中から姉妹の卵を使って体外受精をすることを決心することになりました。最 初の施行例は今から4年前ですか、それから非配偶者間体外受精例は、次のごとくで す。18〜19ページはドナーエッグのケース、20〜21ページのところはドナースパームの ケースでございますが、それぞれ10人の妊娠例を経験しています。ドナーエッグに関し ては4名の方が出産し、6名の子供さんをもうけ、2人の方が妊娠を継続し、4名の方 が流産に至っております。それから、ドナースパームのケースに関しましては、3例の 方が出産し4人の子供さんをもうけ、それから2例の方が流産し、1例の方が常位胎盤 早期剥離で子宮内胎死亡に至り、4例の方が妊娠を継続されておられます。  このことを行うようになって、初めて男性と女性が対等の立場になれたという感じを 持つようになりました。思い返してみれば、私たちは不妊治療をしていく中において、 さまざまなハードルを越えてまいりました。最初に越えたハードルは、排卵できない人 に排卵誘発剤を使う──これも一つのハードルであったのではないかと思います。それ から、普通の形で妊娠できない方に、精子を取って子宮内に注入するといういわゆるA IH(配偶者間人工授精)という形で妊娠することも、やはりハードルを越えなければ いけなかったことではないかと思います。  非配偶者間の中で成り立つ妊娠ということは非常に大きなハードルであったのではな いかと思います。しかし、このハードルに関しましてはAIDがスタートした時点に国 民的な中でこの問題が論じられなければならなかったにもかかわらず、論ぜられること なく現在に至ってまいりました。それが、数年前に産婦人科学会が会告の中でAIDを 認めるという方向で、産婦人科学会としては一つの決着を見たわけであります。しかし 最初から私が申しましたように、AIDによる妊娠の成立ということの中には、血族的 な関係がそこで絶たれているという大きな問題がありました。これは、日本の法律にお いて血族的な関係が主とされているという基本的なものからいたしますと、必ずや何か 問題が起こったときに、例えば親子鑑定をするということになったときには、大きなト ラブルの要素になっていくのではないか。そういう問題も解決せずして、産婦人科学会 という集団の中だけでこの問題を白黒つけてしまうということの不自然さというものに 非常に憤りを感じたわけです。  私は、たまたま医者になった、たまたま産婦人科医になっただけでございます。もし 私が医者でなく、医者以外の一般の人であったときに、もし私が不妊という立場に置か れたときに、この不自然な形で国民の合意もなく決められてしまい、そういう決まり、 即ち、精子提供はよくて、卵子提供はよくないという会告の中で強制され、自由な選択 を選べなかったとしたら、きっと憤りを感じたのではないかと思うのです。  私には、幸福なことに5人の娘がございます。この娘がもしいなかったら、私は人生 をどういうふうな形で生きてこれたのか。不妊ということの中で、子供を欲しい、子供 とともに人生を歩みたいと思っている人のことを考えたときに、自分が恵まれたことの ありがたさと同時に、恵まれていない人のために少しでもお役に立ちたい。そして、そ こに起こってくるいろいろな問題点は何とか解決してあげて、そしてその人たちに「親 子」という、または「家族」というものを届けることができたら、医師になった意味が あるのではないかと思うのです。そして多くのお母さん方のまたはお父さん方の声を聞 く中で、その声が耳の中に残り、そして私を現在の方向に導いてくれているのではない かと思うわけであります。  不妊治療の中で、治療を受ける患者さんは一般の人たちのほんの一部、一般的には10 組に1組という割合で不妊が存在しております。その中で、配偶子がない人はその中の またごく一部です。先日もこの会から中谷先生が全国に向けて、2000名か3000名の方た ちにアンケート調査をされたという結果もお聞きいたしました。私は一般の人たちの意 見も当然のことながら、本当は不妊に悩んでいる人たちが一体この問題をどういうふう にとらえるのかというところを聞いてほしかったと思います。ドナーを必要とする限ら れた人たちの意見はどう考えても多数決では負けてしまうわけであります。本来は、そ の人たちの多数決をとって、私たちが考えてあげるべきではないかというふうに思うわ けであります。  本日はこういう機会をいただきましたが、ここに患者さんが出てきていただければ、 きっとその切実な思いを皆さんにお伝えすることができるかもわかりませんが、残念な がら、そういう方たちはひなたのところで堂々と話ができる立場にはございません。も し、出てきたとすれば、本日はマスコミの方たちが来ておられますが、「そんな不自然 な夫婦または親子という関係の中で子供を育てていることに違和感を感じませんか」と か「ふとこれが他人の子であるというふうに思うようなことはございませんか」とか、 そんな質問がきっと出るのではないかと思うんです。そんな渦中に私はそういう人たち をさらす気持ちにはなれません。  ですから、きょうはその方たちの意見を少しでも述べられるようにと思まして、代弁 者という形で出てまいりました。また、後でご質問をいただく中で、そういうペアの方 たちのお気持ちをお伝えしたいと思っております。  前後いたしますが、私にはもう一つ、減胎手術の問題が課せられております。不妊治 療をする中で起こってきた一つの副作用、いわゆる多胎妊娠がございます。排卵誘発剤 を使って子供をつくっていく段階で、いっぺんに卵がたくさん排卵されてしまい、その 結果、多胎が生ずる。このことは、徐々に修正されつつはあるものの、現在なお残り続 けている問題でございます。又、体外受精により、受精卵を多く戻すことによる多胎妊 娠の問題が出てきました。データ的にはたくさん戻しても妊娠率はあまり変わりないと いう意見もありますが、それでも一つだけ戻すかといったら、一つだけ戻すことはしな いわけであります。少しでも可能性のある卵があったら一度に多く戻したいと思うのが かかわっていくドクターの心情だと思います。  現在は、産科婦人科学会の会告により、戻す胚は3つ以下という規定が設けられてお りますが、しかし、本当に3つ以下ということでいいのだろうかということも疑問にな ります。お手元の資料の6ページの表4と表5を見ていただければと思いますか、私ど もの施設で減胎手術をしたケースの中の3分の1くらいを3胎妊娠例が占めておるわけ であります。その中で、IVF・ETによるものが半分近く占めておりますが、いずれ にしても、3胎でも減胎手術を受けているわけです。さらには体外受精の場合、データ が出ておりませんが、一般の妊娠に比べ一卵性双生児の発生率が高いという感じを持っ ています。すなわち3つ戻しても4胎ができてしまうというケースをたびたび経験する わけで、送られてくるケースの中にもそういうケースが多々含まれております。  すなわち、戻す胚は3つ以下としておきながらも4胎になってしまうケースもあると いうことと、治療スタートのときには「3つでいいですね」と了解していても、実際に 妊娠したときに「やはり3つ妊娠してしまいましたか。あのときは妊娠したいがために 先生にはいと言いましたが、よく考えてみましたら3人を一度に育てることは不可能で す」。また、サポートしてくれるはずであった祖父母が病気がちになってしまって、当 てにならなくなった。またはご主人がリストラの中で失業してしまったとか、妊娠をス タートする段階においては3人育てようと思っていた人たちも時間の流れの中で考え方 が変わるのは当然のことだと私は思います。  もし数を決めてしまうなんていうことになったときに、では、その子供を養育したり またはそこで起こってきたトラブルを国がサポートされるのか。私は数を限定してはな らないと思っております。なぜかといえば、2胎でも前回子宮に外科的な負荷が加わっ ていたようなケース、例えば前回は帝王切開とか、子宮筋腫核出術のあったケース、そ ういうケースにしてみれば3胎どころか2胎でも妊娠していくということは非常に危険 を伴うことになります。  実は、今朝方、私が出てくる前に、前回帝王切開のケースが陣開して入ってまいりま した。前回の創部が緊張した状態で、どう考えてもこれは子宮破裂につながるのではな いかとういことで、予定していた時間を1時間ずらしまして帝王切開して出てまいりま した。案の定、帝王切開したところ、前回の創部のため、胎児を娩出するときに創部が 斜め上に切れ上がっておりました。もし下から出産させていたら子宮破裂になり、もし 帝王切開せずして出て来ていたら、ここで話をしている最中にその母親も子供も瀕死の 状況になっていたのではないかと身の引き締まる思いがするわけです。  すなわち、単に皆さんが集まって3人にした方がいいのか、2人にした方がいいのか という、数あわせをする問題ではないと私は思っております。あくまでも医学的な見地 そしてその子供を取り巻く家族、社会的なサポートの有無も考慮した中で残す胎児の数 を決めていかなければいけないと感ずるわけです。  さらに、借り腹の問題までも質問が出ておりますので、残された1分か2分でまとめ たいと思います。私のところに来ているケースの中に、生まれながらにして卵巣はある けれども、子宮のないご婦人がございます。また、結婚したてで妊娠し、前置胎盤で帝 王切開し、胎盤が取れた後、出血多量で子宮摘出を受けてしまった。即ち、結婚して7 カ月で子宮がなくなってしまった、そういうご夫婦もまいりました。そのケースは妹さ んが「お姉ちゃんが気の毒だ。私は子供を2人産んでいる。卵巣はおねえちゃんには残 っているから受精卵を私の子宮の中で育てて、子供をおねえちゃんに届けてあげたい。 先生、何とかしてくれませんか」と言って来たのです。それでは考えてあげようと思っ ていたのですが、ご両親の反対で現実にはなりませんでした。そのようなケース話が私 どものところに何例か届いております。自分がその人のためにボランティアでかかわっ てあげたい、そういう人の心を何とか満たしてあげたい。非配偶者間の体外受精の問題 もそうですし、借り腹の問題もそうですが、アメリカ的な考え方で、単なる契約だけで 金銭を伴い行うべきものではない。やはり日本的な兄弟愛とか人間愛の中で、ボランテ ィア精神のもとに成り立つべきものであって、単にお金でそれを売買したり、貸し借り をするということで解決してはならないと思います。  本当に限られた方たちのことかもわかりませんが、その人たちの立場に立っていただ いて、少しでもその方たちのご希望がかなえられるような形で、公平なご判断をいただ きたいと思います。  長くなりましたが、こういう機会をいただけたことを感謝いたしまして、終わらせて いただきます。ありがとうございました。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。あらかじめ資料をご提出いただきました上でのお話 で大変よくわかったと思いますが、皆さん方のご質問・ご意見、どうぞご自由にご発言 いただきたいと思います。 ○石井(美智子)委員  非配偶者間体外受精について、3点質問させていただきます。  1点目は、「子供が欲しい」という親の希望について述べられたのですが、生まれて くる子供についてどうお考えになっていらっしゃるのか。  2点目は、資料提供に対して、「謝金程度」を支払うということが書いてありますす が、それはどの程度のことをなさっているのか。金銭の授受は謝礼の範囲内であるとい うことの趣旨をご説明いただければと思います。  3点目は、インフォームド・コンセント、提供者と配偶子をもらう夫婦両者に対して その結果生まれる子の親子関係についてどのような説明をしているのか、以上3点で す。 ○根津氏  最近、「子供の権利」という話がいっぱい出てきております。私は、非常に無謀な結 論的な言い方をしますが、子供には権利がないというふうに思っております。なぜかと いえば、子供にもし権利を持たせたとすれば、子供から「なぜ、お父さんはあんなお母 さんと一緒になったの。隣のおばさんの方が私はよかった。なぜ、隣のおばさんと一緒 にならなかったの?」と言われたらどうなるのか。そういうことからしてみて、子供に は自分の出生に関する権利はないというふうに考えております。  「父ちゃんと母ちゃんは好きだったら一緒になって、おまえができた」「お父さんと お母さんが好きになるのは勝手だけれども、俺をどうしてそんな関係でつくったんだ」 と主張されたら、どなたも答えられないと思うんです。すなわち、子供にはそういう権 利はない。だからこそ、親は全身全霊をもって、その子供の養育のために尽くさねばな らないという大原則があるのではないかと私は思っております。それを最近の親が“権 利”とか“義務”とかいう言葉の中で、親の義務を喪失している。そういう親が多数出 ていることは、権利という問題をそこに出してくるがゆえではないかというふうに思っ ております。権利を持っている者には必ず義務が存在する。子供にもし権利を持たせた ら、義務はどうやって果たさすつもりであるかと私は思うわけです。  それから、金銭の授受でございますが、例えば非配偶者間体外受精を行うに当たり病 院へ出向いてもらう旅費──そのレベルは当然負担すべき問題ではないかというふうに 思います。しかし、あくまでも私はボランティアという考えですから、「いいですよ、 自分たちは何とかやっていられるから、お姉ちゃんも大変だろうから、この旅費くらい 自分で払うよ」と言ったら、それでいいだろうと私は思います。あくまでもそこにかか わっていく経費くらいの授受は当然あってしかるべきだろうというふうに思っておりま す。  それから、親子関係に関することですが、私がかかわっているケースは兄弟、姉妹に 一応限定しています。今、非配偶者間体外受精に関しては法的整備がされておりません から、信頼関係がより成り立ち易い、兄弟姉妹間で行うようにしています。後になって 「これは俺の子だ」とか、後になって「私のお父さんはおじちゃんだ」とか「私のお母 さんはおばちゃんだ」とかいうことが起こって、その結果、遺産相続の問題や、様々な トラブルが起こるようなことだけは、絶対起こさないことをここで誓ってほしい。今、 そうやって、一生懸命、兄弟、姉妹のためにお互いが努力しようとしているのであれば これをどうか守っていっていただきたい、と話し、私は行うときに誓約書を書かせてい ただいております。同意書ではなくて、誓約書を書かせていただいております。キリス ト教であれば、「聖書に誓って」ということになろうかと思いますが、私たちには聖書 がございませんので、お天道様に誓ってとか、先祖に誓ってとか、各人には何か誓うも のがあろうかと思います。良心に誓うということもあろうかと思いますが、そういうも のに誓って、子供の幸せのためにどうか尽力してほしいということをインフォームド・ コンセントの中で話をさせていただいております。  しかし、これはすべてに通じることではなかろうと思います。必ずや信頼関係が崩れ てしまうことがあるから、どうかこういうことに先立って、配偶子、胚の授受に関する 法律とかまたは配偶子、胚の銀行とか、法の整備や半ば公的な形での施設というものも 早急に作っていただかなければ、AIDも含めて、これからはトラブルの起こってくる ことが多々あり得るのではないかと思うわけであります。以上です。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。  恐らく、法的な関係については多少すれ違いがありまして、特に子供には何も権利が ないという点については、石井委員の方からまたご異論があろうかと思いますが、いか がでしょうか。 ○石井(美智子)委員  伺いたかったのは、子供に権利があるかどうかということよりは、医師がかかわって 人工的に生まれてくる子供について、子供の福祉を考えなくてよろしいのか。何も言え ない子供について、周りの人間が考えてあげる必要があると思います。医師として人工 的に生まれさせる子の福祉ということも考えて医療を行う必要性があるのではないかと いうことを伺いたかったのですけれども。 ○吉村委員  時間の短縮もありますので、同じようなことを先生にお伺いしたいんですが、不妊症 の患者さんがいて、私たちも治してあげたい、その気持ちはきょうのご発表で大変よく わかりました。  ただ、子供を持ちたいという願望は無条件の願望であっていいのかということと、先 生がされている生殖医療に対して、やはり普通の医療との違いがあるということをどう いうように認識されているのか。  例えば、夫婦が子供が欲しいといった場合に、その子供を持ちたいという気持ちから 不妊症を治療するわけですが、そこにおいて全く親とは人格が違う子供ができてくると いうのが生殖医療です。石井先生と同じような質問かもしれませんが、そういうことに ついて先生はどういうふうにお考えになっているのかということをあわせてお伺いした いと思います。 ○根津氏  私はこの中に書きましたが、患者さんのニーズかあるから私たちの医療が成り立つの であって、患者さんのニーズがなければ、私たちは存在する必要はないわけでありま す。ただし、ニーズに全部従うかというと、それはそうではない。そのニーズが本物で あるか否かということを見抜く技も医師に課せられた技ではないかと思っております。 そのためには非常に崇高な考え方が必要かと思いますが、私はそんな崇高な考え方の中 で人間が育ってきたわけではありませんし、医者になったわけではありません。しかし できる範囲の中で患者さんのニーズにどこまでこたえてあげたらいいか・いけないかと いうことを自分の尺度の中でしか考えられないというのが現実のところでございます。  それから、「普通の医療と違う」ということでございますが、確かに私も普通の医療 だとは思っておりませんでした。ただし、普通の医療で解決できない人たちはどういう ふうな形でこのハードルを越えていったらいいかということをいろいろ考えました。そ こで一つ考えたのは、精子の養子縁組、卵子の養子縁組、胚の養子縁組というふうにと らえればいいのではないかと考えたわけです。養子縁組というのは、生まれてきた子供 が、またはある程度自我が出てきた子供が親のもとに行くわけであります。その中で完 成する親子関係よりも、子宮の中で育ち、そして出産を迎え、おっぱいをあげて育てて いく中に形成される親子関係の方が養子縁組という形の親子関係よりも、よりベターで はないかというふうに考えたわけであります。  先ほどの石井先生からの質問とダブるかと思いますが、そういう中で完成されていく 親子関係というものの方が、私はより濃厚な形で成り立っていくのではないかと考えて おります。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。  時間が迫っておりますので……。 ○田中委員  中谷委員長にお願いしたいんですが、この委員会はこの根津問題を検討する為にある のだと僕は個人的に思いますから、できればもう少し質問を受けてください。  根津先生のお話はいろいろな機会で耳にしたり目にしたりしていますのでよくわかり ましたが、僕が一番言いたいことは、今まで過去にこのように夫婦の間でない精子を使 った治療の報道というのは2回ありますが、そのいづれもうやむやになっているという ことです。その一番最初が昭和62、63年ですか、鈴木病院の鈴木先生のところで第 三者の精子を用いた体外受精を自分たちの倫理委員会で承認したからやりますという新 聞が出ました。マスコミが騒いで、立ち消え。次は、平成4年くらいですか、関西の施 設で非配偶者の精子を使って妊娠したという報道が出て、直ちに福岡県から同じ報道が 出ました。うちだろうと大分言われたんですが、うちではありません。一時的にマスコ ミが騒いでキャンペーン用の記事が出たんですが、それで終わりとなりました。  今は、根津先生は渦中の人ですけれども、これをこのままに終わらせたくないと思い ます。この問題は、やはり大きな問題です。私も毎日目の前にたくさんの子供ができな くて困っている患者さんがいます。卵ができなくて、欲しいという患者さんがいます。 ただ、僕は根津先生とはやり方が違います。根津先生の気持ちはよくわかります。ただ 僕が根津先生に一番言いたいのは、僕たちはこういう不妊の治療──今、吉村教授が言 われた不妊治療が違うところはどこかといいますと、第三者が関与する。要するに、治 療に直接関係のない第三者が関与する。この人の安全性、人間としての尊厳性を失って いないか、この点だと思います。その判断というのは我々個人では難しいものと考えま すから、僕たちにはガイドラインが必要になってくるのです。  このガイドラインは常に柔軟性があって、そういうニーズに対して反応してくれるよ うなものを望みたいんです。ところが、残念ながら、今までのガイドラインは一度でき たらなかなかそれを見直すとか、そういうことがないように思います。ですから、私は この根津先生の問題を一つの問題として葬り去らないで、よく検討して、せっかくこの 委員会が10人のうち5人の方が法律関係の専門家ですから、第三者が加わった治療に 関しては法的な解釈なり指導を含んだガイドラインをぜひつくってほしいと思います。 ○中谷委員長  私どもの委員会としては、法的な対応をどうするかというところまで考えようとして いるわけでございますので、きょうのご議論を踏まえまして、参考にしていただきたい と思います。  根津先生に伺いたいのは、スウェーデンとドイツで1週間くらいの差でAIDによっ て生まれた子供について、夫の方が「自分の子供ではない」という訴えを起こしまして どちらも最高裁判所で夫の主張が認められました。そのために、その子供は父親のない 子になってしまったものですから、スウェーデンでは早速に人工授精法というのをつく りまして対応したわけでございますので、「子供に権利がない」と言われるのはちょっ と問題ではないかというふうに考えております。  ただ、その場合に、子供としては生物学的な父親を知る権利というものは残っている のではないか。スウェーデンでは法律をつくりました。ドイツでは法律はつくりません けれども、最高裁判所の何回もの判決で、それを認めるような判決が出ておりまして、 法的には同じような結果が得られている。もちろん少数意見として、かえってルーツを 知るということはナチスドイツのときのユダヤ人狩りにつながるからいけないのではな いかという異論も少しはありますけれども、そんなふうになっているわけです。  日本では、スウェーデンやドイツであったような夫からの「自分の子供ではない」と いう訴訟は一件もございません。親子関係について、外国と日本では特殊な違いがある ような気がいたしますので、その点もご考慮いただきたいと思いますのが1点。  もう1点は、ドナーについてのある程度の謝金は認めるべきではないかということで ございまして、これもイギリスではかなり長い間ある程度の謝金を認めていたわけです けれども、つい最近になりまして、それは実費程度にしようというので始めまして、そ れについての意見公募をしております。結論もやがて報告されると思いますので、その 結論が出ましたら、また先生の方へ情報を提供させていただきたいと思います。私から 申し上げることはそれだけでございます。  丸山委員の方からも何かご意見があるそうですので。 ○丸山委員  減胎術についてはあまり質問が出なかったようなので、私の方はそれと提供配偶子の 方を少しお尋ねしたいと思います。  先ほどお使いになりました冊子の6ページの表4を見ますと、一番下の2胎の場合に も減胎がわずかですがなされた例があるようなんですが、先ほど先生は「数で固定的に 決められるものではない」というふうにおっしゃいました。そのことが2胎の場合でも 減胎手術をする必要がある場合があるんだということに一番よく出てくるのではないか と思うんです。  2胎でも減数術をする必要があるような具体的な場合を教えていただきたいのが1 つ。時間がないようですので、あわせて質問だけさせていただきたいと思うんですが、 受精卵、胚提供あるいは代理母、借り腹についても別の資料1の方で先生は「すべて肯 定」というふうにお書きなんですが、これは提供卵あるいは提供精子の体外受精は現在 もう既に先生ご自身でなさっていますけれども、こういうふうに今からでもそれを必要 とする患者、依頼者の方が来られればなさるお気持ちなのか、あるいはこちらの方はも う少し制度が完備してからなされる、あるいはそういう制度を整備すべしというより一 般的なお考えなのか。そのあたり、肯定という意味をもう少し具体的に、現在の提供卵 あるいは提供精子の体外受精と同じくらいの、今からでもなさろうかというくらいの強 いご意志なのか、それとも制度の整備を待って、あるいは制度の整備をすべしというご 意見なのか、そのあたりを教えていただければと思います。 ○中谷委員長  きょうの会は一応3時半までということになっておりましたけれども、30分は延長で きそうですので、先生方のご了解が得られればそういう形でちょっとゆっくりさせてい ただきたいと思います。いかがでしょうか。              〔「はい」という声あり〕 ○中谷委員長  よろしゅうございますか。  では、全員賛成のようでございますので、先生、ごゆっくりとお答えいただきたいと 思います。 ○根津氏  まず、最初に2胎の減胎の理由ということですが、先ほど申しましたように、既往手 術例、いわゆる帝王切開とか、子宮筋腫核出術とか、特に子宮筋腫核出術で不妊で体外 受精というケースなどがございます。そういうケースの中で、この子宮を2人を入れた ままゴールまで行っていいかどうかというと非常に迷うわけであります。やってみなけ ればわからないわけでありますが、危険率が高いものをスタートからそういう危険率を 抱えたままゴールまで行くということは、もしアクシデントが起こったときには医者の 判断が間違っていたのではないかという結論に達せられるかもわからない。そういう意 味において、2胎への減胎手術は医学的な適用で7〜8割くらいが行われております。  それから、あと残りは「やってくれなければ全部中絶します」という脅迫まがいの願 望です(笑)。私は「じゃ、勝手にしろ」と言えば済むことなのですが、でも、せっか くできている命を一人でも助けたいというのが減胎手術の基本姿勢にございましたので そういう半ば脅迫的なケースに対してもやむを得ず減胎手術をしているというのが2〜 3割くらいはあるということをご理解いただきたいと思います。 ○中谷委員長  よろしゅうございましょうか。  受精卵を3個子宮へ戻すという時点で、患者さんに対して3個くらい戻さないと確率 が非常に悪いというお話をなさって、患者さんが「お願いします」と言ったけれども、 実際に3胎の多胎妊娠ということがわかった時点で、ご本人が「やっぱり3人は大変だ から……」。 ○根津氏  また「2人は大変だから」という話があって。 ○中谷委員長  そういうことで減胎を希望する場合は、それはお断りになるんですか。 ○根津氏  いや、それは断れば、その人は「そうだったら中絶します」ということになりますか ら、私がしてあげなければどこかへ行って中絶してしまうでしょう。断るということは 妊娠を継続してくれるということではないものですから、そのくらいだったら一人でも 助けてあげたいということです。  もう一つのご質問でありますけれども、代理母までやるつもりであるかと。借り腹の ケースは何例か来ておりまして、やはりこれは考えてあげるべきというふうなケースが ございますので、実際に行う方向で体制はつくっております。 ○中谷委員長  どういう場合をお考えですか。 ○根津氏  先ほど言ったようなケースです。いわゆる妊娠して子宮を取ってしまったケースとか ……。 ○中谷委員長  医学的なことですか。 ○根津氏  医学的なことです。 ○田中委員  根津先生にお伺いしたいんですが、僕は先生の問題に賛同できなかった点は医療の現 場に第3者が参加し、新しい個体が発生するという生殖医療には倫理的問題のみ含まず 法的な判断の問題が出現してきますが、この点に対して患者のニーズがあるからという だけで、個人の価値観に基づき治療を断行してしまったことにあります。日産婦、日母 へのアピールが不十分、賛同を得られると判っているからしないということでは、単な る自己満足にすぎない。自分一人の責任で対処できない諸問題(社会に対して)に対し て立場の異なった専門家の意見を聞くべきと考えます。僕たちも着床前診断を申請して 却下されていますけれども、まだどんどん何回もやるつもりです。それは、申請してい くうちに一人二人の方は賛同してくれる時期が来ると思うからです。先生、あえて借り 腹もやりたいとおっしゃいましたけれども、これは大変なことをよくおっしゃっている ということをおわかりになっているのでしょうか。あなた一人の考えで勝手にされるの と、マスコミに公表するということの違いがおわかりでありますか。安全性、法律面の 問題が全く検討されていない治療を、簡単にできるような安易に間違った情報を与えて しまう危険性があります。ご自身の言動がいかに多くの方を不幸にする可能性が潜んで いることはご存じだとは思いますが。 ○根津氏  当然、私もかつては日本産科婦人科学会の会員でありまして、その会員の中でものを 考えていきたいというふうに思いました。それと並行して日母の会員でもございます。  こういう問題を問題提起しようとしたときに、まず学会があると思うんですね。学会 発表を求め減胎手術の問題をエントリーいたしましたけれども、産婦人科学会では却下 されております。本来は、学会というところはそのような問題を論ずる場所だと思って おります。しかし、例え問題提起しても抄録の段階でそれを却下してしまう。先ほども 田中先生がいみじくもおっしゃいましたが、鈴木先生が非配偶者間の体外受精、すなわ ち精子を使った体外受精をしたいと言った段階で、それが鈴木先生ですら却下されてお るわけです。  そのような産婦人科学会の中で、例え問題提起してもいつになったらそれが解決され ていくのか。その中にどういう公的で、オープンなディスカッションができる場がある のか。それを、先生、私はお尋ねしたい。先生が今おっしゃられているお話、もっとも です。私もできたらそれをしていきたい。しかし、目の前には患者さんが時を待たずに いるわけであります。先ほども言ったように、振り返ってみて、10年前のあの患者さん はこの技術があったら何とかしてあげられたのに、それがなかったことによって……と いう自責の念に──これは自分に責任はないのですけれども、でも何か産婦人科医とし ての自責の念に駆られる面があるわけであります。  ですから、もっと産婦人科界がオープンな形で、そういう意見をどんどん取り入れて 前向きな形で患者さんを主体とした形の中でディスカッションができる場であるとする ならば、私はその場に出て問題提起して解決していくことは何らやぶさかではございま せん。先生がそういう努力をなさっておられる、先生は会員でございますので努力なさ っておられることは非常にすばらしいと思いますし、ぜひやっていっていただきたいの ですが、その結論が出るのがいつになるのか。私にとっては患者さんを目の前にして、 とてもではないけれども無理なことです。  現在、私は産婦人科学会の会員でございませんので、問題提起しても産婦人科学会で は問題をディスカッションしてくれる前に、会員ではない者の意見は一切取り入れない という姿勢にございますから、どこに私が問題提起をしていったらいいのかお教えいた だきたいと思います。 ○中谷委員長  よろしゅうございましょうか。産婦人科学会との関係になると、またいろいろ問題が 出てきそうですけれども(笑)。 ○吉村委員  先生がやられている具体的なことでお伺いしたい点がございます。  代理母に関しましては、先生はやるとおっしゃっていますが、そういう適応の方もい られることは事実だと思います。その代理母に関しましては、例えば法的に母親でなく なってしまうわけですね。そういうような点についてはどうお考えになるのかというこ と。要するに、日本では出産した人が母親になります。養子縁組ということもお考えに なったのかもわかりませんが、それが問題点の一つです。  それと、非配偶者間の体外受精におきましては、例えば先生はドナーを家族、同胞に 依存されています。先生のお考え方からすると、そのときに先生は45歳までという規定 をされております。これは、やはり先生は産婦人科医として45歳以上の妊娠は非常に危 険であるというお考えからだと思うんですが、例えば先生が初めにおっしゃった「子供 を持ちたい」という気持ちというのは、それを本当に45で区切っていいのかということ ですね。そういうようなことを必ず患者さんは同じようにおっしゃると思うんです。例 えば、先生がおっしゃったような、この人は卵巣がないから卵子の提供を受けたいんだ というのと同じような気持ちで、45歳の人だっておっしゃると思う。そういうふうな規 定を決めていくということは非常に難しい。  それから、同胞からいただきますと、例えば先生がおっしゃっていました遺産相続の 問題もあるかもしれません。先生が非常によくその患者さんを指導されているというこ とはわかるるんですが、例えば家族関係において親子の養育とかいろいろな問題点が今 後30年、40年たって起こってくることは想像されることなんですね。こういった医療を 今後続けていくことは非常に難しいのではないかという点がございます。  それから、報酬の点であります。同胞であれば、非常に少ない交通費でよろしいとか そういうことは可能かもしれません。これをドナーに広げておくということは、私はも し行うなら理想的なことだと思うんですが、ドナーにするとやはり報酬ということが非 常に問題となってまいります。アメリカでも、先生もご存じのように卵子の提供でエッ グが 150万とか1500万とする時代になってきています。こういった報酬の問題点をどう されるのか、具体的にもし行うとしたらいろいろな問題点が出て来るだろう。先生が行 われている同胞というのはいろいろな問題点が起こってきて、その時点のカウンセリン グだけでは全く無意味です。これは10年たったら、20年たったらいろいろなことが起こ ってくるわけですから、そういう点を先生どう考えておられるのか、その点をお伺いし たいと思います。 ○根津氏  まず、借り腹のケースに関しては、当然、日本の法律によれば産んだ人が親であるわ けですから、その人の戸籍に入れて、そしてそこから養子縁組をするという形をとりま す。それと、子供にある程度の判断力ができてきたと同時に「おまえはお母さんには子 宮がなかったので、あのおばちゃんのお腹の中で育てられた。それでこの世に出て来れ たのだから、おばちゃんもおまえをここまで育ててくれた大切なお母さんだ。あのおば ちゃんもお母さんと同じに大切にしていってほしい」ということを常にオープンにして 対応していく。それをさせようということであります。  それから、年齢を45歳に区切るのは非常に難しい。これももっともな話なんです。45 歳を1秒たりとも過ぎたらもうだめであるということを法律で決めたら、そこで区切ら ざるを得なくなってしまうわけであります。しかし、一応、45歳ということが生殖とい うことを考えたときの問題と、それから子供を養育していくという、それ以後の親の体 力とか生命力とかいうものを考えたときに、やはり45歳くらいまでで考えておかなけれ ばいけないだろうというふうに考えたわけであります。  現に、私のもとに先日は57歳の方が61歳のご主人とともに訪れまして、姪が卵を提供 してくれるから何とか子供をつくってくれないかという方がございました。私が先ほど 子供に「権利はない」と言ったのは極端な言い方でありまして、子供に当然権利がある わけですけれども、あまりいろいろ権利、権利というと、それはちょっと待ってくれと 言いたくなるのです。子供にもちゃんとした親に育てられる権利がある。これは先ほど 申しましたように、57才と61才の親では親の義務を果たせないわけですから、親の 義務を果たせない子供が生まれてくるということになっては困ることからすれば、その ような意味では子供には権利があるわけです。子供は親がちゃんと守ってくれるという そういうもとでここに生まれてこなければいけないわけですから、親が単なる「欲し い・欲しくない」という感情だけで子供を産んでいったらどうなってしまうでしょう か。「あなたたちはよく考えなさい。子供は決してあなたたちのペットではないから。 あなたたちの気持ちを私は叶えてあげられない。北アルプスでも眺めながら、安曇野で も散歩しながら帰りなさい」と言って帰してしまいました。  それと、先ほど先生がおっしゃられたように養育ということですね。後になってどう なるのか。これを考えられる範囲で考えていこうと思いますが、しかし、自分たち夫婦 が愛し合って結婚して子供を産んでも、その夫婦が途中で離婚したり、またいろいろな ことが起きてしまうかも知れない。特に、日本の場合には離婚率が非常にまた高くなっ てきているという状況をかんがみたときに、普通の結婚によって、妊娠・出産していく 人たちだって保証されていない世の中になっているのに、なぜそういう人たちばかり、 最後まで 100%養育というものを考えで成就させてあげなければいけないのですか。当 然、それは考えてあげるべきだと思うので、「あんたがもし亡くなったときには親戚の 方がサポートしてくれるかどうか」まで私は確認しております。そういうことですね。  それから、報酬の問題は、私はこれは先ほど言ったように、経費──かかる費用ぐら いは何とかと。しかし、あくまでも私はボランティアと考えております。ボランティア は報酬がないというのが基本だと思っておりますので、そういう範疇でとらえておりま す。 ○中谷委員長  今の吉村委員のご発言の中で、身内の方からの提供というお話がありましたけれども 外国ではそれはないんですね。フランスは絶対に匿名制度をとっておりますし、イギリ スでも、身内からの提供というのはまず出てこないんです。ところが、日本では世論調 査をいたしますと、それが非常に多いんですね。これはどういうわけか私もよくわかり ませんで、今後それにどういうふうに対応したらいいかということを考えていかなけれ ばいけないと考えております。 ○石井(トク)委員  今のお話と関連しますが、先ほど妹さんが借り腹になってもいいという例をお話しな さいました。両親が反対なさったということなんですが、両親というのはどちらの両親 だったのですか。 ○根津氏  妹さんの両親です。 ○石井(トク)委員  その反対の理由はどうだったのかということがちょっと今の問題を考える上でも参考 になるのではないかと思いましたので、その点をお聞かせください。  それから、これは基本的なことですが、先端医療技術が発展したことによって、恩恵 は希望者がいればだれにでも与えるということが果たして許されるかということでディ スカッションの意味があるわけですが、子供を産んでいなければ幸せではないというふ うにお話の中から感じたので、その確認をしたいと思います。もう一点は減胎手術のこ とです。減胎手術のリスクは当然あるのですが、先生の件数の中で果たしてどのくらい の方が流産なさっているのですか。先ほどの同胞のご両親の理由と今の流産の率につい てお話しください。 ○根津氏  この反対理由はちょっとわかりませんけれども、子供を産んでそれを養子にするとい うことは親族の中でわかってしまうわけです。身内の中ではある程度了解した形でなけ れば、このことは行ってはならないというような前提でおりましたので、反対理由は聞 いてございませんけれども、多分、そんなことするなという単純な反対だったのではな いかと思います。結局、協力を得られなかったから、それはもうやめたということです ね。  それから、子供がいなければ幸せではないと。それを僕は大前提で言っているわけで はないのです。自分にとってみたときにもし、私にとって5人の子供がいなかったとし たらという前提での話しです。だから、子供がいないということが不幸せだとは私は言 っているわけではありません。例えとしての自分の気持ちとしての話でありました。  それから、減胎手術に関する流産率でございますが、データの中に挙げさせていただ きました。8ページの表9のケースであります。特に最近のケースの 113例中、分娩ま たは流産したりしたケースが75例ありまして、その中で1例だけ2人とも子宮内胎死亡 に至ってしまっています。これは施行してから4週間以上たっておりますから、本当は それとは関係ない──文献的には手術して4週間以上たったのは関係なしと考えようと いう考察がございますので、そういう点から考えますと 100%成功していたということ になるわけであります。しかし、一般の流産とか死産とかいう率がございますから、そ れを考慮に入れたとしても、最近は減胎手術をしたことによって問題が起こっていると いうケースはまずないというふうにとらえております。 ○中谷委員長  ありがとうございました。もう30分も超過しておりますので、あとお一人だけ。 ○辰巳委員  お姉さん、妹さんの卵を提供するという話は先生から持ち出されるんでしょうか。そ れとも患者さんが姉とか妹の卵を使ってくださいというふうに申し出られるんでしょう か。 ○根津氏  最初のケースは、「だれかの卵でももらわなければ、もうあなたたち夫婦は子供がで きませんよ」と否定を強調する意味で言ったところ、「それじゃ、妹が」と言って、私 が否定した言葉を本気にとりまして、妹が名乗りを上げてきて「私の卵を使ってくださ い」と話を持ってきた、それがスタートなんです。その後はマスコミを通じての話にな りましたので、最初から妹さんとかお姉さんが「私の卵を使ってください」と皆さんが 言って来てくださっています。 ○辰巳委員  こういうふうな形で子供が持てるということになりますと、不妊の方の、妹さん、お 姉さん、それからまたサロゲートということになりますと、もっと姉妹であるドナーに 強い負担がかかるわけですね。そういうふうなことに関して、先生はどういうふうにお 考えになっているのかということと……。 ○田中委員  同じことなんですけれども、それを患者さんに言うときに弁護士を入れていますか。 これから不測の事態が起きたときに、先生の「天地に誓った」ということは何の意味も ないことだと思います。最後は法律ですから、弁護士が入ってちゃんとした手続をして いるかという、これを教えてください。 ○辰巳委員  もう一つ、多胎の方なんですけれども、多胎率というのは減数中絶をしている患者さ んたちを見ておられて、もっともっと下げられると思われませんでしょうかということ その2点をお聞きしたいと思います。 ○根津氏  提供する方の負担は、当然、医学的な観点の中でこういう負担が及びます。最悪のと きには、採卵のときに血管を損傷して、腹腔内出血を起こしたりして開復手術をしなけ ればいけないようなことも起こり得るという危険率──この危険率は非常に少ないんで すけれども、そういうことも話をさせていただいております。 ○辰巳委員  無言の圧力というか、不妊の方の妹さんとかお姉さんたちに、圧力がかかっていくと いうふうには考えられませんでしょうか。 ○根津氏  それはあります。でも、圧力がかかっても、最終的に結論を出すのは当人たちですか ら、協力しようかなとか絶対嫌だとか、それで兄弟関係がこじれてしまったらまたそれ も人生の中の一つのプロセスではないかと。そのことでなくても、ほかのことでいくら でも兄弟がこじれてしまうことはあり得るわけですから、それでこじれたといって、そ れが原因ですべてだめなんだ、それは根津がやり出したから、おれたち兄弟の縁が切れ てしまった。あの根津のせいだと、それは思う人もいるかもわかりませんけれども、そ ういう一点だけでとらえてはいけないのではないかと思っております。  それから、法的な田中先生からの話なのですが、本当は私も弁護士をつけて対応して いきたいとは思っています。しかし、法的なことを何とかしようと思っても、法的に果 たしてサポートしてくれるのかなと。法律がないのにかかわらずサポートしてくれるの かなと。仕方ありませんから、私は本当にお互いが了解できる範囲の中でやっていま す。そして、その結果をもって、問題提起して、一刻も早く法の整備をして頂こうと考 えたのです。ここに法律学者の先生方がたくさんおられますけれども、こういうことが 日本に起きて来るから、前もってその法律をつくろうかとアクティブにやってくれるほ ど、日本の国には余裕のある国だと思いません。問題提起が出てこなければ法が整備さ れていかないので、それまでは法に頼らずに、もうしようがないからある程度は患者さ んとの仁義──ヤクザの世界みたいな感じなんですけれども、それでしか僕はやってい けれないと思います。そのくらいの覇気を感じて頂き、この問題を皆さんがとらえてく ださいということで、とりあえず私のかかわっているケースに対してはしていこうと 思っています。  ですから、もし私が責任を負わなければいけなかったとすれば、私の娘たちが産婦人 科になりましたけれども、きっとああいう馬鹿な親を持ったが因果だと思って、その責 任を子供たちはいくらかでも感じて頑張ってくれるのではないかと思っております。 ○田中委員  いや、先生、そういう意味ではないです。僕が聞いたのは、卵子の提供が合法的か違 法かという法律ではなくて、今、先生がされている、何も法律のない状態でやっている ことに対する法律です。将来何かあったときに、あなたたちはどうしますかということ に対して、弁護士が入って作業をするなり契約をとるかという、そういうことなんで す。 ○中谷委員長  そういう不妊補助治療をなさるときに、説明書と同意書はとっていらっしゃるんでし ょう? ○根津氏  説明は当然しておりますし、説明書もあります。それから、同意書はとらない──と りたくないというのが私の基本姿勢なものですから、ここで約束したら、それがお互い の心の中の同意書であるというふうにとらえておるものですから。  医療は、基本的に僕は信頼関係でしか成り立っていかないと考えています。というの は、毎日診療している中で、注射一本打つにしても、みんな同意書をとっていかなけれ ばいけないということになってしまいますから、そういうことは僕はやっていきたくな い。お互いの信頼関係というものを──どこまで続くかわかりませんよ、私の患者さん との信頼関係というのが。でも、それが続く限りは、僕は医者をやっていきたい。それ が続かなくなってきたときには医者をやめたいと思っているものですから。 ○中谷委員長  現在ではそういう意味でのインフォームド・コンセントというのは非常に重要視され ておりますので、恐らく説明書と同時に、それに対する同意書くらいはあった方がいい のではないのかなと、私はちょっと思いますけれどもね。  いろいろな医療施設で、私、倫理委員会の委員をやっていますけれども、それだけは 非常に慎重に扱っておりますので、一応、ご考慮いただきたいと思いますし、法的な対 応についてはこの委員会でやがて何らかの形でのガイドラインを、法律にするのかある いはそうではない形にするのか、いずれにせよ、そういうものをはっきりさせていきた いと思っておりますので、きょうの先生のヒアリングでのいろいろなお話は非常に参考 になりましたので、ありがとうございました。長時間にわたってご苦労さまでした。 ○根津氏  多々暴言があったかと思いますけれども、お許しいただいて終わらせていただきま す。ありがとうございました。 (1)生殖補助医療技術に関する有識者からの意見聴取:浜崎京子氏 ○中谷委員長  それでは、引き続きまして、浜崎先生から30分程度ご意見をお伺いしたいと思いま す。浜崎先生、ご多用中、ご出席いただきましてありがとうございました。どうぞよろ しく。 ○浜崎氏  このような席で意見を述べるということで大変恐縮しているところでありまして、ち ゃんとお話しできるかどうか不安なところもあるんですけれども、私が日ごろやってお りますことをここでお話ししたいと思います。  最初にお話をいただいたときに、何を申し上げていいのかわからなかったのですが、 私は患者さんと一番近いところにおりますので、患者さんの意見というか、その部分を 申し上げたいと思ってきょうここにまいりました。  私は、今も開院してちょうど6年半になるのですが、不妊専門のクリニックで今カウ ンセラーとして勤務しております。専任というか、カウンセリングを始めましたのはち ょうど4年前になるのですが、病院ができますときに不妊の方のカウンセリングをやり たいということで私は今のクリニックにまいりました。ただ、スタッフの問題もありま して、なかなか最初は始めることができなくて、結局2年たって開始したのですが、実 際に今やっておりますのは当院にかかっていらっしゃる患者さん、外来にいらっしゃる 患者さんと入院の方もそうなんですが、その方の治療に対するカウンセリングを主に行 っております。  それは面接で行ったり、あるいはお電話をいただいたり、ファックスをいただいたり ということがあるんですけれども、行っていることのもう一つは、これはカウンセリン グを始めたときと全く同時に開始したのですが、電話での不妊相談をやっております。 それも4年くらいになるんですが、全国からの電話を受けているということになりま す。これを開始しました理由は、そもそも産婦人科というところにはなかなか入りづら いというところもありますし、自分が病院に行った方がいいのかどうか、放っておいて もいいものなのか、その辺のところがわからない方がいらっしゃる場合に、電話だった ら聞きやすいのかなという考えで電話相談を始めました。  その件数を書きましたが、大体1万5000件くらいの電話をいただいています。ファッ クス相談も受けておりますが、ここに出しました数は 400件になっておりますが、これ は間違えまして2000件を超しております。そのファックスには全部手書きで答えており ますが、そのくらいの件数に上っております。  その内容は、一番最初に私たちが考えていた「病院に行くべきか行かざるべきか」と いうふうなことよりも、実際に病院にかかっている方からのお電話がほとんどなんで す。私の病院に来ている患者さんとの面接ということになると、私はそこのクリニック の人間ですので、向こうはそういうつもりで話をしてくださるかもしれないんですが、 電話に関していいますと、全く全然知らない人に相談をされるので「かかっている病院 でこうなんだ、ああなんだ。今、こういう状況なんだけれども、どういうふうにしたら いいだろうか」とかかなり細かいところまでご質問になったりします。  その件数がそのくらいに膨れ上がっているということなんですが、最初に不妊の方の 相談を受けようと思いましたのは、実は私がおりました大学病院で、不妊の治療をして 妊娠した方がどんどんふえてきたわけです。私は助産婦としてそこで仕事をしていまし たので、助産婦の方がその治療についていけないという部分がありまして、そこまで不 妊治療をどうしてしなければいけないのかしらみたいな考え方が、実は助産婦の中にも ありました。患者さんもどんどんふえてくるわけですが、その患者さんたちの声を聞く ようになりまして、「不妊の治療中に話を聞いてくれるところがどこにもなかった。そ れがとてもつらかった」というようなことを言われたんですね。そういう状況で、不妊 の治療に興味を持って治療の現場を見ることになったのですが、そのときに患者さんが 言われた言葉が出発点になっているんですが、「とにかく、今、こういう治療をやって もらっていることで私はありがたいんです」とおっしゃったんですね。こういう治療を やってもらっているだけで私は満足なので、これに対してこうしてほしいとか、ああし てほしいとかいうことは私からは言えませんということをおっしゃったんですね。その ときに、ここに看護が入らないといけないなということを強く感じまして、それで不妊 の相談ということに入っていったのです。  先ほどの相談の内容の方にちょっと入りますけれども、私が伺う内容は、例えばその 方が病院にかかっています、もう大抵の方が治療を何年やっていますとかこういうこと をやっていますという方が多いんです。でも、本当に細かいことなんですけれども、 「こういう薬をもらったんですけれども、この薬は何ですか」というご質問もありま す。「先生にこのように言われたんですけれども、このことはどういうことなんです か」ということを聞かれるわけですね。そうすると、どうしてその病院で話ができてい ないのかなというのがとても疑問だったのですけれども、私がここに書きましたよう に、不妊の外来は本当に溢れかえっていると思います。うちの病院でも、ちょっとどう かなと思いますが、2時間から3時間くらい待ってもらったりということもあります。 実際にはドクターが患者さん一人に何分もの時間をかけられない。本当に1分、2分で 終わってしまうということも現実にはたくさんあるようなんですけれども、その中で患 者さんがどの選択をするか、何を選択するかということが非常に難しい状況なのではな いかというふうに思います。  ですから、私は聞けない状況というのが、ここにも書きましたけれども、先生が忙し い、ここの病院にかからないと私は治療ができないんだけれども、こういう質問をした ら先生に叱られるのではないか、先生の気分を害するのではないか──そういう気遣い が非常に多いというのに気づきました。どうしてそのときに先生ではなくて、ほかの方 には聞けないんですか。例えばそこには看護婦もいるでしょうし、助産婦もいるでしょ うし、どうしてその方に聞かないんですかということも言うんですが、それに関しては 先生以上にそちらの方が忙しいそうだし、また聞いても「先生に聞いてください。私た ちではお答えできません」ということもかなりあるということを聞いております。  もし、その部分が解消されるのであればというか、しっかりとその辺を聞きながら、 先生とちゃんと話をしながら治療ができていくのであれば、皆さんからのお電話も減っ てくるのではないかというふうに思います。  ですから、治療の内容というか、それは本当にどんどん進んでいけば、それによって 妊娠ということを得られる方もいらっしゃると思いますけれども、どの方法を選択する か、何を選択するかということに関しては、やはりもうちょっと説明が必要なのではな いかというふうに思います。  インフォームド・コンセントという言葉を患者さんの方もよくご存じなんですけれど も、どんなに説明をしても、やはりわかってもらえないというか、医療者側はちゃんと 説明しているし、相手がうなづいてくれているからわかっているというふうに思われる 部分もあるんですけれども、でも実際にはほとんど頭の中に入っていないという方の方 が多いと思います。先生と直でお話ししているんですけれども、その場では本当にさも わかっているのごとく、皆さんうなづいていらっしゃるんですが、そこから出て来て別 のところに行きますと、全く今聞いたことと同じことをこちらに質問してくるわけで す。「今、先生のところで話聞いてましたよね」と言っても、「あのときは真っ白にな って何もわかっていません」ということがすごく多いと思います。  ですから、私はこの不妊治療の中で、どうしてもカウンセリングの部分というのを強 調したいなというふうに思っているんですが、ただ、今、どの病院もカウンセリングを やりますとか、そういう相談は対応できますと言ってはいますけれども、現状としては なかなかそれに人を割いているということができていないのではないかと思います。患 者さんの話を聞きますと「カウンセリングできます」と書いてあるんだけれども、行っ てみたらバタバタしていて、どの人に言っていいのかわからないし、それは後でという ふうになってみたり、そういうことが非常に多いということを聞きます。  ですから、インフォームド・コンセントもそうなんですけれども、患者さんの話をち ゃんと聞く場所と時間というか、人もそうなんですが、そういうことがきちんとできな いと治療というのはなかなか難しいのではないかというふうに思います。  治療がどんどん進めば進むほど患者さんの悩みはふえてくると思います。AIDでお 子さんが生まれた方がありまして、ちょうど睾丸から精子を取っての顕微授精が可能に なってきたころのことなんですけれども、お電話をいただきまして、AIDをやって私 は子供がいます。2人目を希望しているんだけれども、2人目もAIDでというふうに 思っていたんですが、あの記事を見てしまったら、もう一回それにトライしなければい けないのかなというふうに思いましたということがありました。その方と実際にお会い してお話を伺ったんですけれども、やはり見なければそこまでは考えなかったんだけれ ども、どうしても夫の精子を使っての妊娠を2番目は希望したいということをおっしゃ いました。ただ、その方は実際に調べてみたら、もう精子の方も無理だったんですね。 ちゃんと検査をした上でそれはだめだということがわかって、その方たちはすっきりと 「これでもう諦めます」ということをおっしゃったのですが、そういう形で進んでくれ ば進んでくるほど、今までは妊娠できないといって諦められていた方たちが、それが大 丈夫になってくる。私もできるのではないかしらと思われますね。林真理子さんが44歳 で妊娠・出産されたという記事のときは、「もう40歳を過ぎたから私は諦めようと思っ ていたんだけれども、彼女の報道を聞いたら、私もやろうと思いました」とか「大丈夫 なんですよね」ということも出てきたんですね。  そういうときに、それが全部が大丈夫だと思われないように、やはりきちんとした説 明をしていかなければいけないと思うんですが、患者さんはそれを聞きにいくところが ないというのが現状だと思います。  もう一つ、ご質問にありました第三者の精子と卵子の提供の件なんですけれども、倫 理的なものとか法的なものとかその辺は本当に難しいところがあって、自分自身でもど う選択した方がいいのかというのはどうしても答えが出ないんですけれども、ただ一つ いつも考えていることなんですが、人って自分の状況ではないものについてはなかなか 判断がつかないと思います。ですから、実際には患者さんたちは妊娠している人、出産 している人、私たち以外の人たちは絶対にわかってくれないというんです。私も子供が 実は3人おりますので、どうせ真のところはわかってもらえないということを再三にわ たって言われたことがあります。今はそういうこともなくなっているんですが、「わか ってくれない」ということを言うんですね。「どうして子供がほしいの?」という質問 をされるのが一番嫌だと皆さんおっしゃるんですが、周りからの「子供がいて当たり 前」というか、もっと言えば「結婚して当たり前」だし「結婚したら子供がいて当たり 前」だし、「子供がいたら1人ではなくて2人で、例えば男の子と女の子で」という図 ができているわけですね。  実際に、不妊の方たちもそういうふうなことを非常に望んでいらっしゃるからこそ治 療を一生懸命やろうと思っていらっしゃるんだと思うんですけれども、例えばこういう ドナーのことを考えるときに、不妊の方たちがどのくらい皆さんがドナーの提供を期待 していらっしゃるかということになると、何が原因でその方たちが不妊なのかというこ とによって多分答えは変わってくると思います。それは、不妊治療をしていらっしゃる からこそ、私たちはどこも問題がないんだということを大変強調されますし、私は大丈 夫なんですということを強調されます。また、夫は大丈夫なんだと。多分それがよりど ころなのかなと思う部分もあります。ですから、例えば卵がちゃんとできる方にすれば 「卵の提供なんて考えられない」ということをおっしゃるんですね。「私はそんなこと までして子供を欲しいとは思いません」というふうにおっしゃいますし、あるいは精子 がある方にすれば「ドナーの精子なんてとんでもないです。夫の子でなければ、私達は 希望しません」ということをおっしゃるんですね。  そうなんですけれども、本当に不妊の方の中でも、一部分の卵がもう取れない方、精 子がない方、そういう方たちの意見も流されないで受け止めてほしいかなというふうに 思っております。  ただ、そういう方たちとずっとお話をしていますと、例えばアメリカに渡りますとい う方もいらっしゃるんですけれども、本当にそこまでしなければいけないのか。カウン セリングを受ける側は、そんな聞いてはいけない、そういうことを言ってはいけないと いう部分も自分の中にどこかあるんですが、やはり聞いてしまうところがあります。そ うすると、日本だけではないのかなと思うんですけれども、子供がいて当たり前、産め なければだめという考えというか、それが本当に根強いものがあると思います。それが いけないとは思わないんですけれども、そのために苦しめられているというか、そうい う方たちが非常に多いということも事実だと思っております。もう少し社会が産めなく てもいいというか、そういうふうな感覚をもうちょっと社会が持ってくれたら、もしか すると情況が少し変わるのではないかなというふうに思います。  1月のこの時期は電話の相談がワッとふえるんですね。それはなぜかといいますと、 お正月で親戚が集まった、それから赤ちゃんの写真が入った年賀状が来ますね。その後 が大変苦しいんだということなんですけれども、「私たちはもし妊娠してもあれはやら ないよね」と皆さんおっしゃるんですが、実際に妊娠された方は赤ちゃんの入った写真 入りの年賀状を送ってくださるんです。ですから、一番皆さんが望んでいらっしゃるの はきっとそうだろうなと。そうなんだけれども、私たちはあの人たちとは違うという感 覚を非常に強く持っていらっしゃるような気がします。  だから、社会の「子供がいて当たり前」という感覚を一番感じているのは多分不妊の 方たちなのではないかというふうに思っております。  全然まとまりがないので申しわけないのですが、私の意見は以上でございます。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。  いろいろな体験に基づくお話を伺いまして、大変参考になるかと思いますけれども、 ご質問をどうぞ。 ○辰巳委員  浜崎さんの施設ではどのような患者さんを選んでカウンセリングをしておらるのかと いうことと、それから主治医の方針との整合性はどうなっているのか。例えば、もう45 歳くらいで、主治医としてはFSHも上がってきてなかなか厳しくなってきているとい うふうに話を持っていっているのに、カウンセリングに行かれて「もっと頑張りましょ う」と言われても困ってしまうところもありますということで、その辺の整合性をどう いうふうにつけられているのかを教えてください。 ○浜崎氏  選択をしているわけではありません。患者さんの方からのご希望でまずは受けるんで すけれども、向こうがカウンセリングが希望だというふうなことを待っているだけでは 多分いらっしゃらないと思いますので、それは状況を見ているような感じです。非常に 外来で悩んでいるというか、例えば泣いていらっしゃる方とか、あるいは今辰巳先生が おっしゃったように先生との話の中でこじれている方がありますね。「私はこうしたい んだけれども、先生はもうそろそろ……」という話になったり、そういう方には声をこ ちらからかけております。  今は、私はこのようなことをやっているということを患者さんもわかっていらっしゃ るので、割と声をかけてくださるようにはなりました。 ○辰巳委員  では、診察室の中で、いつもドクターの横についていらっしゃるんですか。 ○浜崎氏  いえ、ずっといるわけではなくて、今、ほとんどそれができなくはなってきているん ですけれども、できる限り、外来に行くんですね。ドクターとの会話を聞いているとな かなか理解していないなみたいな方がいらっしゃるので、そのときには声をかけますし あとは私だけではなくて、外来にいる看護婦の方から「この方は話を聞いた方がいいか も……」ということで、一応そのようにはしております。ですけれども、全部の方にお 聞きすることができないような状況ではあります。 ○中谷委員長  ほかにどなたかご質問ありますか。 ○高橋委員  具体的なことについてお聞きしたいのですが、一つは、不妊症の患者だけのカウンセ リングをするのですか。妊娠した後のカウンセリングは行いますか。それから、IVF でお産した後にも、その人たちはいろいろと困ることや悩みを持っていることが多いと 思うのです。その方々の経過を通して、すべての方々にカウンセラーとして相談にのっ てくれるのかどうか一つ。  それから具体的に3胎とか4胎になったときに、減胎手術をしたいという相談がある 場合に、どのようなお答えをしているか。  3つ目が1万5000件の電話相談があったといいますけれども、コストはどうしている のか。完全にボランティアなのか。ご承知のように、電話相談というのは点数で保険に よっては40点とれるんですね。これはどういうふうにしているか、そういうことについ ても教えてください。 ○浜崎氏  まず、うちのクリニックは妊娠しまして8週ないし9週くらいで、完全に心拍が確認 された時点で、出産される病院の方にご紹介しますので、実際にはその点までなんです ね。  ですけれども、ずっとかかわっていますと妊娠経過の部分でお電話をいただくことは あります。ただ、そこまでをずっと見ているというわけではないです。そういう場合も ありますということです。  2番目の3胎あるいは4胎とかということですが、これはお電話をいただいたことは あります。「減数のことを考えているんだけれども、どうだろうか」ということを言わ れるんですけれども、そのリスクというか、その部分をお話しします。  ただ、私の場合には「こうした方がいい」ということを言うわけではありませんので あくまでもその方がどうしたいのかというのを聞く方が多いんですね。大体、決めてい らっしゃる方もあります。それを確認の意味でかけていらっしゃるような方が多いもの ですから、その場合にはその方がそうしたいということをおっしゃっているわけなので それは黙って聞いています。  もう一つ、コストの面なんですけれども、いただいておりません。全部ボランティア です。 ○高橋委員  以前にカウンセラーをしている方とここでお話ししたとき、その方がおっしゃるのに は分娩が終わってからもいろいろと悩みを持ってくる方が結構多い。産褥の方々につい てのカウンセラーも必要だというお話を聞いたものですから。  それから、先ほどの点数ですが、20点だったと思います。 ○中谷委員長  どうぞ、丸山委員。 ○丸山委員  細かいことなんですが、診察室などで様子を聞かれて、カウンセリングが必要だと思 われる方を把握されたときは、声をかけて、それで浜崎さんの部屋にお連れして、それ で浜崎さんの部屋でカウンセリングというか、話がなされるということなんですか。 ○浜崎氏  はい、そうです。 ○丸山委員  個室をお持ちということなんですね? ○浜崎氏  はい、あります。  幾つか部屋がありまして、私がいるところは1つなんですが、別の部屋もありますの で、そちらの方にご案内します。個室で聞いております。 ○中谷委員長  ほかにいかがでしょうか。石井美智子委員、どうぞ。 ○石井(美智子)委員  カウンセリングでどういうことをなさっているのかについてもう少しお話しいただけ ませんでしょうか。一つとして、先ほど周りの圧力があるということをおっしゃったの ですけれども、本人が自分が置かれている立場をはっきりわかる「子供がなぜ欲しいの か」をはっきりさせることは不妊治療の中ではとても大事だと思うのです。そのために 何かをしていらっしゃらないのか。また、情報提供、例えば養子のことなどを話される ことはないのかなどをお聞かせいただければと思います。 ○浜崎氏  もちろん、今先生がおっしゃったようなことを実際には治療をなぜやっているのかの 部分から話としては、そこが先ではないんですけれども、お話を伺っている中で必ずそ れが出てきます。ですから、当然、なぜ二人で子供が欲しいと思っているのかというと ころは出てくるんですけれども、実は私は“カウンセリング”という言葉を使っていま すけれども、最初のころは「相談業務」というふうに言っていたんですね。「相談業 務」という意味は、カウンセリングの中にコンサルティーションも多分入っていると思 うんですが、情報の提供もそうなんですけれども、医療者であるからこそ、私の中でわ かっている情報、それはお伝えしなければいけないというふうに思っています。ですか ら、その部分とそれプラスその方の気持ちを聞く部分というのがあるというふうに思っ ております。  実際には同時でいくんですけれども、そういうふうにしてお話は聞いています。ただ 聞いているだけではないんですけれども。 ○中谷委員長  よろしゅうございますか。ほかにいかがでしょうか。はい、吉村委員の方からどう ぞ。 ○吉村委員  今後、ますますこの生殖医療においてはカウンセリングというのを、そのあり方から 考えていかなくてはいけないと思うんです。カウンセリングの最初というのは、僕は 「聞くこと」だと思うんですが、これが情報提供になり、何らかの先生がお考えになっ ているようなサジェスチョンになり……。  これは、サジェスチョンは強くてはいけないのですが、例えば先生のところに「私は 38歳です。もう卵子がありません。私はここで卵子提供を受けたいと思います」という ようなカウンセリングの方は必ずお見えになっていると思うんですが、その場合に、 「私はこういうふうに悩んでいるんです」ということを聞くだけでカウンセリング業務 は終わるのかということですね。そこで、どういうことが今現実にあって、それをどう やって対応していくのか、あるいはカウンセリングの方ではそれは鷲見さんのように 「アメリカに行きなさい」とおっしゃる方もいるかもしれない。  今、やられていることはよくわかりました。今後の生殖医療のカウンセリング業務に 関して何かお思いのことがあったら、教えていただきたいと思うんです。 ○浜崎氏  38歳の方は、多分、これはその状況だけでは、例えば年齢とか卵がだめなんだとか、 それだけでもって私はこのように申し上げておりますということははっきり言って言え ません。それは実際にその方にお会いして、あるいは直接お話をしている中で、その人 の考え方というのを聞いていくことによってお答えできる部分が出てきますので、38歳 で卵子がない方というだけではちょっとお答えしにくいんですけれども、例えば今IV Fのコーディネーターとしての養成とか、あるいは不妊カウンセラーの養成とかいうよ うことを実際にやっていっているところもあるんですけれども、IVFコーディネー ターといった場合にはIVFをやるに関しての説明、同意を求めたり、そういうことを きちんとやるんだと思うんですけれども、私はあえてそこで“不妊カウンセラー”とい うふうに自分で思っていますのは、それだけではなくて、コーディネートする部分も確 かにあると思いますけれども、その部分だけではだめなのではないかというふうに思っ ております。  もしかすると、情報の提供だけというのはいくらでもできるような気がするんです。 そういう情報を得る方がいて、実はこういうものなんですよということをあらわすこと はできると思いますけれども、それをその方が選択するのに、そこでその方の気持ち、 考え方とかそれを聞いていくという部分がとても大切なのではないかというふうに思っ ております。お答えにならないかもしれませんが。 ○中谷委員長  吉村委員、よろしいですか。ほかにどなたか。 ○加藤委員  相談に来られる方は、男と女のどちらが多いんですか。ご夫婦の方が多いんですか。 ○浜崎氏  もちろん女性の方が多いんですけれども、ご夫婦で見える方もいますし、最近は男性 の方もいらっしゃいます。でも、男性はそんなに多くはないです。 ○中谷委員長  男性の方はパーセントにすると何%くらいですか。 ○浜崎氏  数%です。男性の方が病院にいらっしゃるということがなかなか大変だということが 一つと、それとみんなこうやってじっとしていらっしゃる方が多くて、奥様とご一緒で いらっしゃって、それで旦那さんだけが残られるという方は非常に多いです。 ○中谷委員長  ほかにいかがでしょう。  田中委員、ほかにないですか。 ○田中委員  吉村委員がおっしゃったことに関連した質問です。確かに、日本には今そういう名称 のついたものがあるようですが、ただ、まだ実態がはっきりしていない用に思えます。 というのは、外国では資格の定義がはっきりあるんですが、そういうものがないような 気がします。  ですから、吉村委員のおっしゃったのは、ただ聞いて、心を癒す、なだめる。心のケ アをしてあげることは重要なんですけれども、ただその先の診断ですね。治療の方針を 立てるとか、そういう情報を与える、そういうものをそのカウンセラーができるのか、 そこまで要求されるのかということをお聞きになったと思うんですが、これから先、あ なた方がぶつかる問題だと思うんです。  聞くことは大事だと思うんです。患者自身が心の中の不安を話すことによって半分以 上の人は気持ちが穏やかになっていいんですけれども、それプラス今度は妊娠しなけれ ばいけないわけですから、それにあなた方が「こういう治療もありますよ」とか「その ためにはこういうことが必要です」という医学的な情報と知識を与えられるようになる ものなのか、そういうべきなのか、この辺が将来の課題ではないかと僕は思っておりま す。 ○中谷委員長  いかがですか、今の田中委員の発言について。 ○浜崎氏  私たちがやれることは、提供することはできると思います。ですけれども、最終的に 決めるのはご本人さんなので、それに沿うというようなことだと思っております。だか ら、こちらで「こうした方がいい」とかいうことは当然言えません。ただ、その方がこ ういう気持ちを持っている、こういう考え方を持っているんだということを医師に伝え ることは行います。その中で、また医師と話をしてもらって、それで方向性を決めると いうことだと思うんです。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。  私から、医系の委員に伺いますけれども、先生方の施設では必ずカウンセラーはおら れるわけですか。外国の生殖補助医療については、カウンセリングが必須になっていま すけれども、いかがでしょうか。吉村委員。 ○吉村委員  うちはAIDに関してだけは3人おります。 ○田中委員  うちでは、うちの女房が主にやっています。一応そういう知識がありまして、そうい う教育も受けております。一緒にずっとARTをやってきた、出所は薬学部ですけれど も、生化学の培養室にいましたので、よく聞いております。  ただ、一つは浜崎先生のように話しやすいタイプっていいと思うんです。僕なんか、 よく患者から「院長、話しづらい」と文句を言われるんですけれども(笑)、なおさら そういう存在は必要だと思います。これから患者さんが話しやすくて、そういう窓口は 絶対に必要だと思います。 ○辰巳委員  おりませんが、看護婦をIVFカウンセラーの講座とかそういうところに順番に行っ てもらって、みんなのレベルを上げるようにしております。ただ、専門としてのそうい う職は置いておりません。 ○高橋委員  現在、私が行っているスズキ病院ではカウンセラーはおりませんが、助産婦でカウン セリングを勉強して外国留学をした方がドクターの説明が悪い──不十分の時(笑)、 先ほど話に出たようにインフォームド・コンセントで説明してもなかなか理解されない 時に相談にのるのです。なかなか理解できない方あるいはドクターとの間にトラブルが あったような時、それからいろいろな悩み、人前で話せないような悩みを持っている方 などは別室に呼んで、その方から聞くようにしています。先ほどの田中委員の話のよう にカウンセラーと言ってよいかどうかわかりませんが、置いているようです。 ○中谷委員長  どうもありがとうございました。根津先生のところはいかがですか。 ○根津氏  私のところでも特別置いてはおりませんけれども、講習に出して、担当している看護 婦たちのレベルアップを図っておりますし、テクニシャン──いわゆる検査技師ですが その人たちも当然そういうところに接点を持てるようにカウンセリングの勉強はするよ うにしてやっております。 ○中谷委員長  ありがとうございました。どの施設でもそれぞれのご配慮が見られまして、大変うれ しいと思います。  時間が10分くらいあるようですが、何か追加ご発言ありますか。 ○浜崎氏  よろしいですか。カウンセリングを行う方なんですけれども、私が医療者の方に申し 上げたいと思いますのは、全くの専任でなくてもいいとは思いますけれども、少なくと も時間のとれる方にお願いしたいと思っております。  それと、やはり場所が必要ではないかというふうに思います。話をしたいんだけれど も、横にワヤワヤいろいろな人がいて、いくらそこで「ちょっとお願いします」と言っ ても、「それ以上のことは言えません」という方があります。私も外来の隅っこのとこ ろで聞いたりすることも確かにありますが、ただどうしても別の部屋でないと聞けない ものというのもあります。そこに行って初めて「実は……」ということでお話になる方 が非常に多いものですから、場所、人が必要なのではないかと思っております。 ○中谷委員長  当然だと思います。いろいろなご提案を含めまして、大変いいお話を伺わせていただ きましてありがとうございました。  それでは、おおむねこの部屋の使用時間も間もなくまいりますので、今回はここまで にしたいと思います。根津先生、浜崎先生からは大変貴重なご意見を伺うことができま した。ありがとうございました。今後先生方のご意見も踏まえまして、当委員会の意見 をまとめてまいりたいと考えております。お二人の先生に対して、どうぞ絶大なる拍手 をもってお礼とさせていただきます。(拍手)  次回以降につきましては、精子、卵子、受精卵の提供についての議論に戻りたいと思 います。事務局は日程の調整をお願いいたします。 閉 会 ○辰巳委員  この場で次回の日程を決めていただきたいんですが。 ○中谷委員長  いかがでしょうか。 ○母子保健課長  2月末から3月上旬あたりで、もし委員長の方で幾つかご提案をいただいて、ここで 合うようであればそれでも結構でございます。 ○中谷委員長  それでは2月29日の3時からということでよろしいですか。  では、それで確定ということでございます。  本当にきょうは長時間にわたりましてご苦労さまでございました。                                  ──了──  担当:児童家庭局母子保健課      椎葉 茂樹      武田 康祐  内線:3173、3179