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医療保険福祉審議会 第25回運営部会議事要旨

1.日時及び場所

平成12年1月24日(月)13:00〜15:00
特別第一会議室

2.出席した委員等

塩野谷、見坊、下村、中西、青柳、喜多、山崎、柳、水野、堀江、野中、蒲生、成瀬の各委員
桝本参考人
井出本専門委員

3.議題

(1) 健康保険制度等改正案について
(2) 平成12年度における老人保健拠出金関係政令の制定について
(3) その他

4.審議の概要

1)はじめに事務局より、議題に関する資料の説明があり、その後、発言及び質疑応答が行われたが、その概要は以下の通りである。

(塩野谷部会長)

○ 本日は資料076の第3項及び第4項を中心にご審議いただきたい。まずは、第4項から審議を行う。

(下村委員)

○ 4月から6月まで介護保険料の徴収ができないけれども、介護納付金は年間で算定するから、7月以降多く徴収するということであるが、それはおかしいのではないか。介護保険料が基礎にあるのか、それとも介護納付金が基礎としてあるのかという議論であれば、もともと介護保険の保険料は個人別に賦課するという原則があるのだから、本来介護保険料が基本となるべきである。

(事務局 間杉保険局保険課長)

○ 介護保険制定当初において、保険料徴収の性格については徴収代行論や医療保険としての受益者論等のさまざまな議論があったが、実際に法制度から見れば、介護納付金が介護保険法において決まり、その年間を通じて決まった納付金に見合うだけの介護保険料を設定するという流れになっている。

(下村委員)

○ 今まで一人当たりの負担額を主に議論してきた。介護保険とは、そもそも保険料が基礎にあるはずである。それを介護納付金が先にありきの論理を組み立てるというのは都合が良すぎるのではないか。
○ 介護保険料率について上限を設けない理由は何か。保険料をいくらでも取って良いということになれば、保険料としての性格が薄れていくことになるのではないか。新しく介護保険料率についても上限を設けるべきである。

(事務局 間杉保険局保険課長)

○ 介護保険料については、医療保険から見れば外在的に決まってくるものである。上限を別立てにすることについては、介護保険料率は基本に市町村の介護事業計画があり、それに基づいて1号ないし2号保険料が決まってくるものであり、介護保険料率が無限定に上がるという仕組みにはなっていないと考えている。
○ 介護保険料率は、健保組合にとってみれば、40才から65才という特定の年齢層に対して賦課されるものであり、その年齢層の賃金や扶養の状況によって保険料率にばらつきが出てくるため、一律に上限を設けることは難しい。

(喜多委員)

○ 介護保険料を医療保険料と一緒に徴収することになれば、制度間で不公平が生じるということは、ずっと前から言ってきたことである。それを無視しておいて、今になって制度間の不公平を介護保険のせいであるかのごとく説明するのは、納得できない。
(事務局 間杉保険局保険課長)
○ 介護保険料の性格として、介護保険の制度の中でほぼ一意的に決まるものであり、しかもばらつきも大きいということで、この介護保険料率に対して医療保険として固有の上限を決めることが難しいのではないかということである。
○ 上限の問題についてはこれまでさまざまな議論があったが、現状としては、本来介護保険の導入によって下がるはずであった医療保険料率が、その後の経済状況の悪化や医療費の伸びによって医療保険側として保険料率を下げられないということになり、そこに介護保険料分を上乗せした結果、一般医療保険料に大きな穴があきかねないという事態が生じたものと考えている。

(喜多委員)

○ 介護の方では、法律を変えないということであった。早くから分かっていたことなのに、今になって法律を変えると言われても納得できない。個人的に大阪府下の市町村職員の健康保険組合の理事長をしているが、既に理事会も総会も開いて決定しており、今から国の都合で法律を改正すると言われても困る。

(事務局 間杉保険局保険課長)

○ 上限問題については、今回の諮問で初めて明らかになったものではなく、夏以降、運営部会においても上限問題については法律改正を伴う問題としてご審議いただくようお願いしてきたところである。
○ 介護保険制度が制定された当初から医療保険をめぐる状況が変わってきたこと、また、当初から保険料率が上限に張り付いている保険組合も存在していたわけであり、現行の法律のままで施行するということになれば、医療保険者にとっては運営上非常に厳しいということで、ご審議をお願いしているところである。

(喜多委員)

○ 老健審のころから、介護保険を実施すれば医療保険の保険料率が下げられるということを言ってきたが、それが実際にはできないということは、前回の議論からはっきりしていることである。
○ 保険料の上限については、保険局の仕事なのか、老人保健福祉局の仕事なのか。

(事務局 間杉保険局保険課長)

○ 介護保険の2号被保険者にかかる保険料の問題は、健康保険法の規定となるので、保険局の仕事であると考えている。

(喜多委員)

○ それは違うのではないかと思う。もともとは老人保健福祉局の介護保険が主体となって起こった問題。それを今までよそ事かと思って放っておいたのではないか。

(下村委員)

○ 喜多委員の言う通りであり、これは介護の問題である。形の上では医療保険であっても、本質的には介護である。それなのに、介護保険施行準備室にこの問題について訊ねると保険局の問題であるとの回答が返ってくる。
○ 介護の保険料を社会保険の仕組みを使って徴収することはおかしいことや、その時にも上限の9.5%に近い組合があったため、このままでは保険料をとれなくなるのではないかという危惧も申し上げた。それでもやるというので第1期3年位はこのままやるのではと考えていた。また、そもそも保険料上限を別枠化するというのは、保険料の負担増を容認するものなので、我々も日経連も連合も実益がなく主張しづらかった。
○ 介護保険の保険とはどういう意味でつけられているのか。40歳以上の人々で平等に負担すると言っているのに、頭打ちになったら割り振るとか、時期的に片寄せをして保険料を徴収するとかいうことでは、保険の本質がゆがめられていることになる。どうして、保険料がとれないような時期に介護納付金を納める必要があるというのか。

(喜多委員)

○ 別の観点から質問させて頂くが、介護保険は個人で加入するのか、所帯で入るのか。

(事務局 高井介護保険施行準備室長)

○ 個人で加入する。

(喜多委員)

○ 個人で入る保険の保険料を所帯でとるというのはどういうことか。

(事務局 高井介護保険施行準備室長)

○ 介護保険は個人を原則としているが、各医療保険の方に納付金をお願いしており、その保険料については、各医療保険制度に沿って徴収される仕組みになっている。ただし、介護保険の基本にあるのは、40歳以上の方にそれぞれ同額の保険料を負担していただくということであり、65歳以上の方については被保険者それぞれから保険料を出してもらう。40歳から65歳未満の方についても、それぞれが被保険者としての扱いとなっている

(喜多委員)

○ そうおっしゃるが、実際には所帯に対して保険料は課せられているのではないか。これは、本来個人に課せられるべき保険料を既存の保険制度に上乗せして行おうとしたことから生じた問題である。マクロで見れば同じかもしれないが、介護で国の拠出金が25%といってもこれだけの補助金が受けられない市町村が存在するのと同様に、個別でみれば問題が生じることになる。そういった問題に目をつぶっておいて、制度が続くとは思えない。

(事務局 高井介護保険施行準備室長)

○ 介護保険制度の仕組みについて、繰り返しご説明させていただくと、考え方としては、40歳以上の方々に同じ額の保険料をお支払い頂くが、ただし、その支払いの方法について、40歳から65歳未満の方々については、介護保険納付金という形で医療保険の方にお願いしており、それは医療保険の仕組みにそってお支払い頂くということになっている。

(喜多委員)

○ 繰り返しになるが、各個人から2号保険料を徴収するわけではない。例えば、同じ世帯に所得を同じくする2号被保険者が2人いても3人いても保険料は世帯に課され、1人分となる。これで個人別に保険料が徴収されており、平等であると言えるのか。
(事務局 高井介護保険施行準備室長)
○ 法律の審議の段階でもあったことだが、納付金を計算する段階では、各被保険者それぞれ同額ということで行うが、実際の徴収にあたっては、健康保険なり、国民健康保険の徴収方法で行うこととなる。

(喜多委員)

○ その感覚を変えないからおかしなことになる。1人づつ徴収しているといっても、健保・国保の制度に乗ったとたんに所帯単位となる。国は人数かける2号保険料の金額がとれればいいと、末端にあって苦労している我々の立場を理解せずに、自分の立場だけから言うのであれば、こんな制度はやめてしまうべきではないか。

(成瀬委員)

○ このような問題が発生した根本的な原因は、医療保険に上乗せして保険料を徴収するシステムをとったことにある。このようなシステムを導入した背景が、事業主に保険料を支払わせたかったからなのか、あるいは単に便利だったからなのかはよく分からないが、日経連は従来より、介護保険は個人をベースにした地域保険なのだから、保険料は個人で1人づつ支払うべきだと主張しており、そのための被用者の徴収事務代行は無料で行うと言ってきた。個人ベースにしておけば、このような問題は発生しなかった。
○ そもそも最初の決め方が悪かったからこのような問題が生じているわけで、間違いの上に間違いを重ねていっても膨大な社会コストがかかるだけ。改めるにはばかる事なかれで、根本部分を改正することをお願いしたい。

(桝本参考人)

○ 使用者の保険料負担の議論は別として、連合としては、当時、被用者について、便宜上その保険料徴収メカニズムを利用するということはあっても、医療保険と介護保険はそもそも別々の性質のものであるので、その上限の別枠化には賛成していた。
○ 問題の所在は、介護保険料を医療保険の保険料の内数としても天井に収まるであろうと判断したことである。その後、この判断が狂った一番の原因は経済成長率が鈍化したということではなく、当時の自社さ政権が決定した医療保険制度の抜本改革が今日に至るまで進んでいないことにある。全体の医療費の伸びが抑えられ、社会的入院の費用が介護保険に移行されるという前提が抜本的に狂ったのである。
○ 今の議論は問題のつけ回しと言え、保険料が上限にぶつかるから、この上限を引き上げるか、別枠にするのかというもの。筋の通った制度論ではなく、如何に財源をかき集めるかというもの。これについては、何度も警告が発せられたのに、財源を組むという土壇場になって持ち出されたものであり、反対である。そもそもは、医療保険の抜本改革が結局のところ一歩も進んでいなかったことが原因。これを改革案として抜本改革の一環であると言うが、全く理解できない。

(見坊委員)

○ この議論は介護保険制度の組み立て上、基本的本質的な議論と認識している。現在、高齢者はいよいよ保険料を支払うという段階にあり、我々としても、甘いバラ色の説明は行わず、厳しい姿勢で望み、我々一人一人は1号被保険者として、これまでの認識を180度変換し、新たな社会保障制度へ踏み出すものであると言っている。しかし、今まで夫婦で一緒になって財布も一つでやってきた。それをこれからは、妻の年金と夫の年金を別々に査定し、場合によっては夫が4,500円、妻が1,500円の保険料を別々に納めるのはどうしてなのか。65歳未満の保険料はどうして所帯単位なのか。といった素朴な質問が出てきている。その際に一人一人の社会保障といっても納得してもらえない。こう言った不満は、4月以降はもっとはっきりと出て来るであろう。新しい社会保障の考え方や方向といったことについて、個人の独立や扶養者制度をどう考えていくのか、一般の国民にすっきりと説明出来るようにしなければならない。
○ 介護保険の創設当時は、これに批判するのが既に時代遅れとの風潮があり、冷静な議論をする時間もなかった。高齢者としてこの問題にどうということは言わないが、制度の根幹に関わるこれからの課題として、厚生省は腹を据えてかかって欲しい。
○ 老人保健制度でもそうだが、高齢者は現役世代からの支援を受ける立場となるのであり、第2号被保険者とは違うとの説明があるが、皆も制度の実施を前によく勉強しており、そんな説明ではごまかされなくなっている。

(野中委員)

○ 国保と介護は特別会計を設ける別々の制度であるのに、2号被保険者についてはこれを同じにしてしまい、保険料の徴収だけ上乗せすることとしたために住民にとってわかりにくくなっている。医療機関への支払いと介護事業所への支払いも別々であり、そもそも立て分けをしっかり行うことが必要。そのあたりについて、どのような認識にあるのか、説明願いたい。

(事務局 渡邉保険局国民健康保険課長)

○ 国民健康保険の医療保険料と介護2号保険料は、制度上、一体的に徴収していただくようお願いしているところである。また、実際の運用上、医療保険料部分と介護2号保険料部分をそれぞれ明示した形で、納付義務を負う世帯主に対して納付通知を行うようお願いしているところである。
○ また、医療保険料と介護2号保険料は、それぞれ分けて計算されることから、その賦課限度額については法令上別々に定めており、その関係で一部地方税法に係る部分についても、3月末までに整理される予定である。
○ いずれにしても、住民の段階では、国民健康保険料(税)のうち、どの部分が医療保険料であり、介護2号保険料であるのか、が明示された形で運用されるよう手当てをする予定である。

(下村委員)

○ こうなっていますということばかり聞かされても、我々はその実態が納得いかないと言っている訳であり、1つ1つの問題点について、どうするつもりかということを含めて質問に答えて欲しい。
○ 結局、介護保険料は青天井なのか。
○ 政管健保についていうと、2号被保険者には保険料の納付義務があるはずだが、被扶養者となった場合は給付は受けるが保険料の支払いは免除されるケースが出てくる。これをそのまま見逃していくつもりであるのか。
○ 政管健保も最近徴収率が約97%と下がり未納者がいると聞くが、介護保険料の未納分は、その分をあらかじめ見越して被保険者から徴収する必要があり、勘定は分けてあるとは言え、結局これは、政管健保の40歳以上でないグループからとるという話になる。この未納というリスクについては、どのように考えるのか。
○ そもそも介護保険の導入により社会的入院が減り、老人医療費は減るので、それによって介護保険料は支払えるとの説明を受けてきた。今回の積算におて、社会的入院の解消についてはどれくらいと見なしているのか。
○ 保険料が、青天井であるかどうかとか、別枠化するとかいうことや、他の改革案は、抜本改革の一環であり、恒久的にこうしたいというものなのか、それとも取りあえず2〜3年の間の話なのか、その制度的位置づけをしっかりして欲しい。それが分からないと答申をまとめろと言われても答えの出しようがない。

(事務局 間杉保険局保険課長)

○ 市町村のサービス計画や条例によって1号保険料が決定され、それに連動して介護納付金及び2号保険料が決定される介護保険の仕組みにあって、介護保険料が青天井であるとは考えていない。
○ 介護保険の納付金のために、一般医療に穴があくというのは論理的にどうかということや、また、医療から介護に移行する部分があるものの、下げきれない部分があって、ぎりぎりのところであったということについては当時としても認識していた。これまで91‰や95‰という範囲内で運営してきた医療保険の枠組みからすれば、外在的に決まる介護保険料率については、外に出すのが論理的にもいいのではないかと考えたということである。
○ 2号保険料の徴収方法については当時からさまざまな議論があり、4月から施行される介護保険法にも、何年かごとに見直しをするということになっている。医療保険に上乗せするという徴収方法についても、この見直しの項目の一つに挙げられているものと考えている。今回、お示ししたものは未来永劫という意味でお示ししたものではない。

(事務局 高井介護保険施行準備室長)

○ 2号被保険者の介護保険料納付義務について、2号被保険者は介護保険の被保険者となっているが、保険料については医療保険の保険者に介護納付金という形でお願いしており、その中で医療と介護と併せて負担していただくということになっている。被扶養者についても医療保険のルールに則って保険料が支払われているという位置づけであると考えている。
○ 保険料を徴収できない場合は、滞納処分ということで、保険者にお願いすることになる。但し、どの部分ということは書いておらず、保険者の吸収・合併があった場合はその先にお願いするという老人保健並びの仕組みとなっている。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 介護保険制度の創設に伴う医療費の動向については、概算要求時に細かな資料をつけて説明を行ったが、その当時から若干の変化を除けば基本的には数字は変わっていない。約2兆3,000億円が、介護保険制度の創設に伴い、医療保険や老人医療保健から、移行・縮減される。そのうち、一般病床から老健施設等に移行する社会的入院の解消と言われる部分は約1,000億円程度と見込んでいる。

(下村委員)

○ 予算で決めましたということではなく、何故1,000億になったのかを根拠を含め、またそれが妥当であるかということを含めて聞きたい。
○ 口頭で言われても分からない。今のような点は問題になることが分かっている訳であり、重要点は資料を出して説明して頂きたい。
○ 保険料の上限の問題は、当時の保険局長が施行前に見直しを行ってもいいと言っている問題である。介護報酬を急ぐということで、保険料についてもある程度前提をつけておきたいと思って、関係することを拾い上げて質問している。きちんとした対応をとって欲しい。

(事務局 大塚老人保健福祉局長)

○ ご指摘の問題は、大変本質的な問題を含んでいるものと認識している。当時、事業主負担をどうするのかといったことや、事務コストの問題や、保険料を個人に課すか所帯に課すかという理念的な問題などいろいろな問題があった。これを右か左かともかく決めなくてはいけないということで総合的に判断した結果が現在の仕組みであると考えている。
○ したがって、今後、他の制度の改革の動きと関連させながら、見直しの必要があると考えている。率直に言って、大きな制度であるので動かしてみないと分からない部分が残るが、そういった理由もあって、5年に一度、特に負担の部分の仕方について、見直しを行うということにしている。
○ 現在の、介護と医療の保険料率の上限を別々にするという案も、基本的には正しいと考えているが、制度の運営によっては、問題が出てくるかもしれない。よって、介護保険としては、時限を切っているものではないが、当然総合的な見直しの対象とされるものである。
○ 介護保険創設に伴う費用負担構造の変化については、概算要求の段階で可能な限り資料を提出して説明させていただいたところであり、実際に制度が動きはじめれば変更はあり得るものの、その時と構造的には現在でも同様である。新しいデータはないが、必要であれば資料を出して説明させていただく。

(桝本参考人)

○ 我々は今回の提案に対しては反対である。制度発足時の筋論としての議論で、介護と医療は違う保険制度であるから、その費用負担についても区別をすべきであるが、徴収実務については、既存のツールを使うことでコストの最も低いやり方をすればいいと言ったまでである。介護保険料率を医療保険料率の内数とすることについては、抜本改革の議論が盛んであったときに、改革が進めば上限の範囲内に収まるということで、深い議論をすることなく現在に至っているものである。よって今回このような問題が発生した原因は、2年半又は3年前から抜本改革が遅々として進んでいないことにある。

(事務局 間杉保険局保険課長)

○ 介護保険制度によって医療保険料率が下がり、介護納付金を上乗せしても、上限の枠内にぎりぎり収まるのではないかという考えがあったことは確かである。ただ、それはぎりぎりどうかという線であって、政管でもなかなか保険料を下げられないこと、また、財窮健保の存在など、上限問題が生じるということについては当時から問題意識はあり、議論を留保してきたという面があると考えている。
○ 抜本改革が進まないために医療保険料率が下げられないのではないか、という指摘については、確かにそういった面は否定できないが、抜本改革については決してあきらめたわけではないものの、現実問題として医療保険から介護保険へと移行する約1兆円について、それを解消するだけの改革案が直ちに準備できないということである。

(桝本委員)

○ 一般医療保険の中には老健拠出金が含まれているが、最近の医療費膨張については、医療給付費の伸びではなく老健拠出金の伸びが主たる要因である。そこで老人医療費の性質についての分析が重要であり、前回資料をお願いしたところであるが、要求資料に関する今回の説明を聞いていると、改革の議論と結びついた議論がなされているとは思えない。
○ 高齢者の一人当たり医療費が若人の5倍かかっている要因については、諸外国における数値との比較が出発点となっているはずであるが、今回の資料ではそれがない。
○ 資料083の8ページ、平成9年と平成10年では老人医療費の伸び率が下がっているとのご説明であったが、平成11年の月例の数字を見れば、前年同月比で月によっては二桁の伸びを示しているものもある。直近の数字を隠さず出してもらいたい。
○ 高齢者が医療費をたくさん使ってけしからんというのではなく、我が国の医療が、例えば外来の薬剤を多量に処方するなどして、これまで高齢者をいわば食い物にする形で医療費を増加させてきたのではないかということである。
○ 資料083の10ページ、老若比率の推移について、昭和58年以降定常状態に入ったかのような印象を受けるが、このような比率で定常状態に入ってしまっては問題なのであって、今後どうやって全体としての費用の効率化を図っていくかということが課題であるはずである。
○ 今回の改正が抜本改革の一部であると呼べるのかということに疑問を呈したのは、現実として全体としての改革が進まず、その結果医療費の膨張を招き、結局患者や支払い集団にしわ寄せがくるという構図が続いているからであり、これではとても改革とは呼べない。そもそも抜本改革をやる必要性というのは、医療費膨張による負担増という悪循環を断ち切るためであったのに、依然として悪循環が続いており、その一環として今回の改正があるものと言わざるを得ない。
○ 老健拠出金の保険集団に対する費用転嫁を臨時に是正する措置を取ることを検討すべきである。抜本改革が遅れているのは政府の責任であるのだから、現在の老健拠出金に対する公費負担率を引き上げて、保険者の財政を助けるべきである。介護納付金の分を医療保険者が負担しないで済むためには、老健拠出金への国庫負担割合又は額がどのくらい必要であるのかという試算をしていただきたい。

(塩野谷部会長)

○ これまで保険料率の上限の見直しついての議論をしてきたが、おしなべて言えば、委員の意見は反対あるいは批判的である。事務局側は、諮問案を維持するのであれば、宿題として残されている事項について、資料をしっかり出して説明をする必要がある。
○ 次に、高額療養費の自己負担の問題についての審議に移る。

(野中委員)

○ この事項については基本的に賛成である。保険制度を維持していこうとすれば、所得に準じて負担を求めていくことが必要である。1ヶ月にあまりに高額の医療費がかかるケースがあるが、こういったケースにメスを入れなければ、医療保険制度そのものが崩壊してしまう危険性があるのではないか。
○ 1%を上乗せするという案については、低所得者や多数該当について免除としており、一定の配慮が見られる。
○ 超高額の医療についての実態を放置しておけば大変なことになる。厚生省は医療機関に対する姿勢をもっと厳しくすべきである。
○ 給付に関する事項については、即実施を求める。

(桝本委員)

○ 今回の提案については反対である。所得に応じた負担という理念は合理的であると考えるが、今回の改正案では重い病気にかかった人が多く負担するという制度になっている。所得に応じた負担については、保険料で行うべきであり、病気にかかったときの負担については平等であるべきである。したがってもし合理的な理由で総費用が膨張し、その費用を賄うということであれば、標準報酬月額の上限を引き上げるか、保険料率を引き上げることで対応すべきである。今回の1%分の上乗せについては、保険の理念を変更するものである。
○ 上位所得者については、大体年収900万円以上の中高年層が多数であるが、そもそも高額療養費の制度を必要とするようなケースでは、療養を終えて会社に戻っても席がないという事態も生じうるわけであり、単に医療費の負担が加わるだけではない。少なくとも病気の時に安心して医療にかかれるというのが医療保険の基本的理念であるはずであり、この考え方を変えるのであればその議論が必要である。この案には反対である。

(事務局 間杉保険局保険課長)

○ 確かに高所得者は受けるサービスに比べて高い保険料を負担しているという側面はあると思われるが、公的社会保険制度として、所得再分配の側面は否定されるべきではない。
○ 高額療養費については、これまでは上限を越えた分については保険料という形に転嫁して、広く負担がなされてきた。これを、上位所得者や医療サービスを多く受けた人が、患者負担という形で負担することによって、それを切り分けるということである。
○ 高額療養費については、家計負担に応じてということで設定されているが、限度額が一律である現行制度においては、所得が高い方が所得に対する負担の割合は低くなっており、これに着目してイーブンなご負担をお願いするというのが今回の上位所得者に対する負担の考え方である。
○ 1%条項については、サービスを多く受けた方についての負担を、保険料で行うのが良いのか、あるいは患者負担に着目して行うのが良いのかということでご議論いただければと考えている。

(柳委員)

○ 所得に応じて負担をし、給付は一定であるというのが社会保険の一般的な考え方であるのに、今回の改正において給付だけを改正するのは反対である。
○ 仮に給付の面で所得比例というものを考えるのであれば、諮問案では通常の場合と上位所得者との間で負担上限が折れ線になっており、これでは所得比例としても中途半端ではないか。

(事務局 間杉保険局保険課長)

○ 標準報酬に対する一定率という形で高額療養費上限を設定できないかということについては、当方でも検討したが、実務上そういった制度が直ちに組めないという問題もあり、今回のような案を提示したものである。

(下村委員)

○ 理念の変更を伴うものであれば、もっとしっかりした説明が必要である。
○ 世代間の公平という点から見れば、これから高齢化のピークにぶつかるような世代から負担をお願いするということであり、極めて問題である。

(桝本委員)

○ 今回の案については、給付における所得比例という方向を見据えた上でなされたものであるのか。そうであるのならば、社会保険に関する理念の変更を伴うものである。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 検討の過程において、給付のあり方についての議論が出たことは事実である。ただ、今回の改正案において将来的な理念の変更にまで踏み切ったかどうかということで言えば、まだ完全には踏み切っていないと考えている。
○ 抜本改革については、当然推し進めて医療費の効率化を目指していくが、高い経済成長が見込めない一方で高齢者を中心として医療費が増加するという状況の中で、給付のあり方については今後考えて行かざるを得ない。
○ 保険については、単純に言えば結局保険料でどこまでカバーし、患者負担でどこまで持っていただくかということであり、厳しい医療保険財政を背景として、どのような選択をしていくかということを考える中で、給付についての議論が今後必要となってくるということである。

(下村委員)

○ 患者負担のあり方を見直すということについて直ちに反対であるという意見が出ているわけでなく、高所得者が保険料を多く納め、また給付を引き下げるということについて、理念の変更につながるものであり、慎重な議論を要するという意見が出ているということである。単純に患者負担の見直しをどうするかという議論をしているのではない。

(成瀬委員)

○ 政策の背後にある哲学や理念が見えない。そこを共有しなければ、議論ができない。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 現行の高額療養費制度においては、家計の負担能力を考慮してということで規定がなされているが、その趣旨から言っても負担能力に応じた限度額の設定についてはそれほどおかしなことではないと考えている。
○ 所得の再配分の方法として、従来は保険料で行ってきたものを、給付と負担を組み合わせて考えるということもあり得るのではないか。特に、現在の高額療養費の給付の趣旨が、7〜8割は全ての人に給付した上で、家計の負担軽減を図るため償還するというものであり、今申し上げた考え方は可能であるというのが今回の提案の理由の一つである。

(下村委員)

○ 上位所得者の給付を引き下げても良いという議論はこれまでなかったはずである。それを、現行の規定でもそういった解釈が可能であるというのは強弁ではないか。

(水野委員)

○ 今回の諮問案については、これまで議論を積み重ねてきて、その結果出てきた案ではない。突然制度の改正案が自民党から出てきて、その尻拭いをさせられているのが現状ではないか。しかし、そうであったとしても厚生省は頑張るべきである。
○ 給付に関する事項の見直しについては、社会保障はいかにあるべきかという根本理念に関わる大問題である。そのような事項についてまで検討案として出さざるを得ないとというところに問題がある。
○ 政治が決めたことに対して審議会が議論をするということについては厳しい面もあり、役所としても政治主導ということで大変であるとは思うが、もう少し知恵をしぼれば、もっと理屈の通ったものができたのでないかという印象を持っている。
○ 平成9年に健保法の自己負担を引き上げたときそれほどの大問題にならなかったのは、保険料でなく自己負担を引き上げたから、大きな問題にならなかったのだ、という意見がある。であるとすれば、日本人は本当の社会保障は分かっていないということではないか。病気になったときには負担すべきであるという理論が通るのは、社会保障の精神からは反するものである。
○ そういった状況の中でどうやるか、ということについては座長がお決めになることであり、自分としてはどちらでも従うつもりである。

(下村委員)

○ 当時2割負担への引き上げを了承したのは、高齢者への1割負担の導入とセットだから我慢しようという説得が通ったものである。

(野中委員)

○ 我々町村の立場で言えば、年間3,000億円の一般会計からの法定外負担を行っており、これが解消されないと新しい施策は何もできない。社会保障の矛盾といっても、この問題の方が重要である。この高額医療費等の見直しは、そういった一面の中で、矛盾を感じつつも提起させていただいているということを他の関係者に理解頂きたい。

(塩野谷部会長)

○ 時間となったので本日の審議はここまでとする。次回は1月26日(水)13:00からを予定している。

(了)


問い合わせ先 保険局企画課 北波(内線3228)


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