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医療保険福祉審議会 第24回運営部会議事要旨


1.日時及び場所

平成12年1月19日(水)10:30〜12:30
特別第一会議室

2.出席した委員等

塩野谷、見坊、下村、中西、村上、青柳、喜多、山崎、柳、水野、堀江、野中、蒲生の各委員
平井参考人

3.議題

(1) 健康保険制度等改正案について(諮問)
(2) 平成12年度における老人保健拠出金関係政令の制定について(諮問)
(3) 船員保険制度(失業部門)改正案について(諮問)
(4) その他

4.審議の概要

1)はじめに事務局から諮問書が朗読され、その後、発言及び質疑応答が行われたが、その概要は以下の通りである。

(塩野谷部会長)

○ 本日諮問された船員保険制度の一部改正案については、船員保険固有の問題であるので船員保険専門委員会において専門的見地からご検討いただき、後日、専門委員会での議論を当部会にご報告頂きたいと考えるが、いかがか。

(各委員)

○ 異議なし。
2)次に事務局から、議題に関する資料の説明があり、その後、発言及び質疑応答が行われたが、その概要は以下の通りである。

(村上委員)

○ 改正の趣旨についてであるが、今回の改正は、医師会の反対によって抜本改革が進まず、また診療報酬をプラス改定したことによる財政の穴埋めをする必要があって、このような改正事項となったのではないか。改革なき負担増、給付削減には応じられない。抜本改革の道筋ぐらいは示してもらいたい。
○ 診療報酬が1.9%上がるという話があるが、2年前に1.5%改定をしたときに用いた公式に基づくと、今回の改定はどのくらいになるのか。
○ 老人外来の一回当たり費用はどのくらいかかっているのか。
○ 老人の医療費が現役の5倍といわれているが、この辺のところの要因分析はどこまで進んでいるのか。医療保険制度の維持にも直結する問題である。
○ 医療保険制度の理念の変更につながるような問題が出てきている。理念を変更するつもりがありやなしやで考えたらどうか。
○ 薬剤一部負担の見直しについては目を疑った。平成14年度までに所要の財源を確保してと書いてあるが、所要の政策を通じて、あるいは制度の抜本改革を通じて、というであれば理解できるが、財源を確保し、とはどういう意味か。結局できないということで財政の付け回しが保険料や患者負担に来るのではないか。

(下村委員)

○ 「保険財政の安定」が趣旨というのはおかしい。赤字構造が続いているのに現実と違いすぎている。
○ 「給付と負担の均衡」とあるが、診療報酬改定財源を生み出すために、患者負担を上げることが給付と負担の均衡を図るという意味なのか。
○ 改革の内容が、全体の理念とどう結びついているかということが今日の説明ではよく分からない。高額療養費で上位所得者という概念が新しく出てくるが、現在の保険料の上下限というのは医療費の水準を考慮して一応決められている。国民健康保険法についても同様で、一人当たり医療費がどの程度の水準か、ということを考えて、保険料の最高限というのをバランスを取って決めている。上位所得者はある程度の所得再分配的な効果も考えて、多少高い保険料を払う、というのが現在の考え方であるが、高い保険料を払ったものは給付も切り下げる、というのが今回の改正の趣旨ではないか。高額療養費の見直しについての必要性は理解できるが、上位所得者に限って今回改正を行う理由は何か。
○ 介護保険料については上限を設けないということであるが、別立てにするのは議論の余地があるとしても、上限を設けないというのはどういう趣旨なのか。介護保険料を青天井にすることが改革の本来のねらいなのか、とりあえずそうしたいということなのか。
○ 今後、改革はどうやって進めるのか。今回の改正で改革の一部分であるのは何で、一部分でないのは何なのかがはっきりしなければ、それぞれの項目についての考え方が分からない。経済状況が悪いということでの当面の措置なのか、あるいは理念を変更して新しい制度を作ろうとしているのか、そこをはっきりさせることが重要である。今後のスケジュールを含めて、改革の展望を文書ではっきり出してほしい。口頭で言われただけではわかりにくい
○ 介護保険料については7月から上げるということで、4月から6月までの保険料については6‰とあるが、7月以降はいくらになるのか。資料を出して説明してもらいたい。

(青柳委員)

○ 老人保健制度の抜本改革について、自己負担の問題はその一部の問題として取り上げられているということについては承知している。しかし、老人保健制度の抜本改革については、老人をひとまとめにして議論するのではなく、経済面、身体面の背景が相当違っている前期と後期の高齢者を区分しながら議論していく必要があり、そうでなければ抜本改革についての議論は詰まっていかないのではないか。経済的な背景についての資料を出してもらいたい。
○ 社会的背景や保険財政の問題があって、自己負担増によってとりあえずパッチワークをすませる、ということで今回の制度改正が提案されていると思う。自己負担に関して、いろいろと事務処理上の問題が生じてくるが、相当詰めた方法論を検討しておかなければ、実行段階になって利用者、医療機関、調剤薬局にとって大きな問題が起こる。十分それを把握した上で方法論を検討していただきたい。

(喜多委員)

○ 「安定的運営を確保する」というのと「給付と負担の公平を図るため」というのは、この内容から見れば一つになっていないのではないか。
○ 抜本改革の方針を示さない限り、議論は延々と続く。
○ 非常にめまぐるしく制度が変化しており、国民から見たら大変分かりにくくなっている。そのことを考慮してこれから対処していただきたい。
○ 若人の部分については、財源を確保するまでやらないということになれば、若人は保険料も払い薬剤費も払うということになるのだから、負担の公平という観点からはおかしいのではないか。

(野中委員)

○ 改正の趣旨の中で、抜本改革という文字はどこに消えてしまったのか。抜本改革を前提とした改正案であれば、それなりの検討はやむを得ないと思うが、もう厚生省からは抜本改革という字は消えたのか。そうであれば議論をしても仕方ないのではないか。抜本改革は徹底して実行するが、その前提として、当面、このことについては検討いただきたいという謙虚な姿勢が重要である。
○ 給付と負担の公平ということは確かに大切なことであるが、本当の負担と給付の公平とはなんぞや、ということを真剣に考えてほしい。薬剤の一部負担についても、若人と老人を完全に区別することが、公平な負担と給付を実現することにはならないのではないか。何のために若人については薬剤の一部負担を残さなければならないのか。国の財政上であるのか、患者の負担をこれ以上引き上げるわけにいかないから、若人には当面辛抱してもらわざるを得ない、ということなのか。若人について薬剤一部負担を残すことについて、筋を通して明らかにしていかないと、若人から不満が出るのも当然である。

(中西委員)

○ 老人一部負担について、200床による区分や院外処方による区分などがあるが、患者側から見れば、区別がどのようにしてできるのかということが大きな問題である。場合によっては患者が混乱することもあるし、また不公平が生じることもありえる。今後、事務上の手続きの問題も含めて、十二分に検討頂きたい。

(見坊委員)

○ 「安定的運営を確保し」とは、抜本改革が行われるまでの間の一時的な安定的運営という趣旨であると善意に解釈しており、一応了承したいと思っている。
○ 若人の薬剤一部負担廃止について、「所要の財源」とは事務当局としてはどのようなものを考えているのかということを例示していただきたい。
○ 老人の一部負担について、診療機関によって定率制と定額制を選択できるということであるが、高齢者としては心配している。どのような事を見通して、選択制を行うのかということを具体的にご説明いただきたい。
○ 200床の区分について、抽象的には理解できるが、実際問題として200床前後の病院というのはかなりあり、しかもそれは地域性の高い病院が相当であるように思われる。市民病院や町立病院など、一般の居住者にとってはかかりつけ医と同じような利用の仕方をしている人も少なくなく、改正案のような区分を設けることは病院の近くに住んでいる人の地理的条件を無視することにならないか。なぜ200床で切るのか、また、病院の規模によっては、定率定額選択制を認めるということがあるのかということについて、ご説明いただきたい。
○ 低所得者はどのように把握するのか。制度によって違いはないのか。また、どうやって高齢者自身も判断できるのか。その目安がなければ言葉だけで終わってしまう。
○ 高齢者としては、年齢で輪切りにするのではなく、患者負担においても、保険料においても、所得相応の負担ということが筋であるというのが過半数の意見である。所得相応の負担ということであれば、高額の所得者というのはそれ相応の負担をしてもよいと思っているが、それは所得の低い人への配慮があってこそであって、後期高齢者についても配慮して、所得のランク付けということについて検討すべきではないか。今回の改正については、低所得者というのはどのような水準の方を対象としているのか。所得収入を持っている方と年金生活者ではかなり違いもあると思うが、何か考えがあればお伺いしたい。

(山崎委員)

○ 指定訪問看護事業について、現行制度では費用負担は定額であるところ、「診療所の場合と同様」ということで定率・定額の選択を提案しているが、もう少し説明を頂きたい。お年寄りにとっては負担が増えるだけでなく、利用の仕組みがこれでは複雑で分かりにくいのではないか。

(平井参考人)

○ 諮問の仕方について、年末の検討案と今回の諮問案とでは違いがあるが、そのことについての説明がない。
○ 抜本改革ということを念頭に置いてこれまで議論をしてきたのに、抜本改革の中での位置づけが不明確のまま、諮問がなされたということについては不満である。
○ 政治が決めたから議論する、というように思えて仕方がない。政治が決めたことを審議会として審議するということは、どういうことなのか。
○ 法定上限の問題について、昨年12月に経済4団体として初めて医療改革についての緊急要望を取りまとめて、総理に提出した。その中で法定上限の見直しについては反対である、と明確に書いている。上限問題の見直しについては、産業界の総意として反対であるということを申し上げておく。

(堀江委員)

○ 現実的な処理と理論的な根拠付けの整合性がないのではないか。例えば上位所得者は高い保険料を払いながら、なお高い医療費を支払わなければならない。
○ 「所要の財源を確保する」とあるが、財源の検討はどういう方法で行われるのか。
○ 定率・定額の選択制については、それを導入した理論的根拠は何なのか、また、実際に導入した場合の差は何なのか。利用者に対してきちんと説明できるような根拠が示されなければいけない。理論的に明確な説明を、この三点についてはぜひうかがいたい。
○ 国保連の立場からいえば、今回の改正については事務処理基準を明確にしていただきたい。

(下村委員)

○ 1月24日には介護報酬の部会があり、できれば答申を決めてほしいといわれている。しかし運営部会では4月から6月の保険料徴収についてこれから議論することになっており、こちらで保険料上限についての話がある程度固まらなければ、介護報酬の部会でも判断できない。4月から6月までと、7月以降の保険料と、上限の関係について、きちんと説明してもらいたい。
○ 予算措置について、4月から6月までの老人の薬剤一部負担に係る予算措置は取ったのか。資料を出して、説明してもらいたい。

(柳委員)

○ 薬剤一部負担の廃止については、廃止すべきではないと考えている。説明を聞いたところでは、老人については廃止もやむを得ないと思うが、若人については、所要の財源とか平成14年度とか、いろいろ条件が付いている。若人については将来の問題として、今回は改正項目から外す方がいいのではないか。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 抜本改革については、諦めたわけでもないし、現在何もしていないということではない。
○ 薬価については、R幅について思い切った見直しを行い、平成14年度までの検討事項として、先発品・後発品についての取扱いや画期的新薬の取扱いについても一応の道筋が中医協で整理されている。また、診療報酬についても、今後の方向性や検討すべき事項が整理されている。
○ 医療法についても、まだまだ調整の途上にあるが、今国会への法案提出を目指して努力している。
○ 抜本改革の道筋については、示せるものについては示していきたい。
○ 今回の改正事項については、抜本改革の検討の中から出てきたものである。
○ 今回廃止の方針が出されている薬剤一部負担については、平成9年の改正の際に薬剤に関するコスト意識の喚起と薬剤使用の適正化の見地から設けられたもので、4本柱の一つである薬価制度の改革の実現といわば引き替えの形でその廃止が議論されてきたものである。
○ しかしながら、現下の医療保険財政の状況では、薬剤一部負担の廃止に伴う保険料や公費の負担増を回避する必要があり、患者負担増を極力圧縮することに配慮しながら今回の改正項目がまとめられた面があることは事実であるが、改正項目はやみくもに検討されたわけではない。
○ 老人の一部負担についても、現在の一部負担の水準を踏まえた限度額を設定し、患者負担増を抑える配慮をしながら、定率負担の導入により、かかった医療費の額に思いを致すことができるような要素を織り込んでいるところであり、抜本改革の第一歩と位置づけている。
○ 今後医療保険を取り巻く状況は、ますます厳しさを増すものと思われ、給付や負担のあり方についても見直していく必要があるが、今回の改正は比較的所得の高い人について高額療養費の限度額を見直し、負担能力に応じた負担の要素を導入したり、負担増を極力避けるため低所得者や多数該当の場合を除外する配慮をした上で、医療費が高額となる場合にはその費用負担を全て保険者の負担に負うのではなく、患者に医療費に応じた最低限の負担をお願いし、給付を受ける人と受けない人との公平を図る要素を導入することとしており、新たな給付と負担のあり方に関する視点を包含するものである。
○ 健康保険の保険料率の上限の見直しについては、その背景として経済の低迷と医療費の増加により医療給付に必要な保険料率が増加している一方で、このまま上限の見直しをしなければ医療給付費をまかなえなくなるといった懸念があることは否定できない。
○ 以上のことから、今回の改正は抜本改革の第一歩という面を有するとともに、今後の医療保険制度のあり方を視野に入れながら、当面の医療保険制度の安定的運営を確保し、患者負担増を極力抑制しつつ給付と負担の公平を図るものである。
○ 資料077の7ページ、平成12年の4月から6月までの政管健保における介護保険料率については6‰、7月から翌年の2月までは10.8‰である。これは、7月以降の介護保険料率は、不足額を補填できる率に引き上げ、年間を通じて介護納付金を介護保険料でまかなうことができるようにするという考えの下に行うものである。
○ 「所要の財源を確保した上で」とは、保険者に財政的な影響をできるだけ与えないようにという趣旨であると考えている。考えられる方法を単に列挙すれば、医療費の合理化、患者負担の見直し、別財源の確保、保険料負担の引き上げ等が考えられる。

(下村委員)

○ 重要な点についてはきちんと資料を出してもらいたい。抜本改革という点を踏まえると、今回の改革はどうなるのかという点がはっきりするようなものを作っていただきたい。

(事務局 井口老人保健福祉局企画課長)

○ 委員からご指摘、ご質問のあった事項については、次回に関係資料を取りそろえてまとめてご説明させていただきたい。

(見坊委員)

○ 老人医療の推移、動向、特に入院、外来に分けたデータを配布していただきたい。

(塩野谷部会長)

○ 今回委員の意見に対して回答がなされなかった部分については、次回に回答をお願いしたい。

(事務局 柴田保険局企画課長)

○ 諮問案については次期国会に予算関連法案として提出する予定であり、与党の審査等の諸手続を考えると、拠出金政令と併せて今月中を目途に答申をまとめていただければと思う。船保法については、専門委員会のご意見を頂いた上で、1月26日に答申をお願いしたい。

(塩野谷部会長)

○ 本日提起された諮問については全て継続審議とし、これで閉会とする。

(了)


問い合わせ先 保険局企画課 北波(内線3228)


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