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                           平成8年6月10日
厚生大臣 管 直人 殿

                      身体障害者福祉審議会
                       会長  三浦 文夫

        介護保険制度の創設に際して

  本審議会は、介護保険制度について検討を重ねてきたが、今般、別紙のとおり意見
  がまとまったので、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第6条第2項の規
  定に基づき意見を具申する。

(別紙)

   障害者保健福祉施策は、「国連・障害者の十年」、「障害者対策に関する新長期計
  画」及び障害者基本法の成立等を経て、着実に発展してきているが、サービスの質・
  量の充実のためには、今後一層計画的・総合的な施策の推進が重要となる。
  このような中で昨年末に決定された「障害者プラン」や本年7月に予定される厚生
  省の障害保健福祉部の設置は、障害者施策の計画化・総合化に一歩を踏み出したもの
  として評価できる。今後は、新組織の下で「障害者プラン」の着実な推進を図るほか
  、より多くの都道府県、市町村において「障害者プラン」を踏まえた具体的な目標を
  含む障害者基本計画が策定されるよう、国においても強力に支援していくことが必要
  である。
  わが国は、急速に本格的な高齢化社会に突入しつつあり、老齢に伴って生ずる寝た
  きり、痴呆などの介護ニーズに応える施設・在宅サービスの提供体制の整備とそのた
  めの費用の確保の問題はたいへん重要な課題となっている。
   この意味で高齢に伴って生ずるニーズに対応した公的介護保険の創設は極めて大き
  な意義を有するものであり、その緊急性に鑑みて当面高齢者を中心とする制度設計と
  なることについてはやむを得ないものと理解できる。
  言うまでもなく、介護に対するニーズは、年齢や障害の原因を問わず、すべての国
  民が豊かな暮らしを送っていく上で共通して必要なものであり、地域における要介護
  者の支援体制は、高齢者・若年者にかわるところなく整備していく必要がある。
  保険制度については、受給者の権利性が強いこと、本人の選択によるサービスの提
  供ができること、社会連帯による財源確保が図られること等の利点があるといわれて
  いる。しかしながら、障害者施策のうち、介護ニーズへの対応について介護保険制度
  に移行することについては、1.障害者施策が公の責任として公費で実施すべきとの関
  係者の認識が強い点 2.身体障害者以外の障害者施策が一元的に市町村で行われてい
  ない点 3.障害者の介護サービスの内容は高齢者に比べて多様であり、これに対応し
  たサービス類型を確立するには十分な検討が必要であること 4.保険移行に当たって
  は、障害者の介護サービスをはじめとして現行施策との調整が必要と思われる点 等
  なお検討すべき点も少なくなく、また、これらの点についての関係者の認識も必ずし
  も一致していない。
  当審議会においても、昨年来、老人保健福祉審議会の数次にわたる報告等を受けて
  審議をしてきたが、今後この問題については、当審議会としてさらに十分に議論を重
  ね、また、必要に応じて関係審議会とも連携をとりながら、障害者施策にふさわしい
  介護サービスとその財政方式のあり方を模索していくこととする。この検討の結果が
  、介護保険制度案大網で予定されている将来の見直しにおいて、適切に反映されるこ
  とを期待するものである。
  また、これらの検討の結果、施設体系、専門職員のあり方、市町村事務のあり方な
  ど、現行の障害者施策体系において必要となる制度の改善やその他の改善事項につい
  ては、介護保険制度の実施状況も踏まえつつ、可能な限りその実現に向けて検討すべ
  きである。さらに、「障害者プラン」については、今後の国、地方における実施状況
  等を踏まえ、充実させる方向で見直しを行うべきものと考える。
  なお、今回の介護保険の導入に当たっては、現行の身体障害者施策の体系と十分な
  調整が図られるよう留意されたい。
                          ( 以 上 )

  問い合わせ先 厚生省社会援護局更生課
     担 当 吉野(内2832)
          電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
                  (直)3501-4880


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