平成11年12月19日
照会先:
水道環境部リサイクル推進室
容器包装リサイクルシステム検討会報告書について
平成12年7月から、容器包装リサイクル法の実施状況と問題点を整理し、改善方策の選択肢を提示することにより、今後の議論の方向を明確化することを目的として、関係省庁と連携しながら有識者、市町村、事業者等をメンバーとした標記検討会で検討を行ってきたが、このたぴ最終報告書が別紙のとおり取りまとめられた。
この報告書は、厚生省の廃棄物・リサイクル行政が来年1月から環境省に移管された後の容器包装リサイクルの具体的な施策の展開に資することとする。
|
(参考)
1.検討会のメンバー
永田 勝也 早稲田大学理工学部教授
荒木 亨 紙製容器包装リサイクル推進協議会事務局長
岩田 功 (財)日本容器包装リサイクル協会専務理事
大平 惇 PETボトルリサイクル推進協議会推進委員会委員(第3回まで)
郡嶌 孝 同志社大学経済学部教授
崎田 裕子 環境カウンセラー
高山 光史 京都市環境局環境企画部地球環境政策課担当課長
槌屋 勝嘉 柏市環境部長
日向寺昭夫 プラスチック容器包装リサイクル推進協議会事務局長
平野 明 PETボトルリサイクル推進協議会推進委員会委員(第4回から)
堀込 辰雄 PETボトルリサイクル推進協議会会長
宮野 忠幸 ガラスびんリサイクル促進協議会企画会議委員
寄本 勝美 早稲田大学政治経済学部教授
2.検討経過
第1回 平成12年7月6日
第2回 平成12年8月21日
第3回 平成12年9月21日
第4回 平成12年10月5日
第5回 平成12年10月26日
第6回 平成12年11月14日
第7回 平成12年12月13日
容器包装リサイクルシステム検討会報告書
平成12年12月
容器包装リサイクルシステム検討会
目次
I.はじめに
- 1.容器包装リサイクル法の制定の経緯
- 2.容器包装リサイクルシステムの目的
II.現状把握
- 1.分別収集、再商品化の実績
- 2. 今後の分別収集計画・能力の整備
- 3.ペットボトルの引き取り停止
- 4.ペットボトルの生産量増加
- 5.紙製、プラスチック製容器包装の状況
III.ペットボトル等飲料容器についての主な論点
- 1. 市町村からの引き取りが停止した問題の論点
(1) 当面の可能な措置
(2) 一時的な能力不足に対する方策
- 2. ペットボトルのリサイクル率の向上が、生産量の増加に追いつかずに、焼却・埋立されるペットボトルはかえって増加しているという問題の論点
- (1) <消費者側の問題>
(2) <市町村側の問題>
(3) <特定事業者側の問題>
(4) <リターナブルシステム>
IV.プラスチック製、紙製容器包装等非飲料容器についての主な論点
V.その他、効率的なリサイクルシステムの発展を図るための論点
VI.まとめ
- 1. 容器包装リサイクルシステムを円滑に動かしていくために当面行うべき対応策
- 2. その他の容器包装リサイクルシステムを生かすための対応策
- 3. 今後の課題
容器包装リサイクルシステム検討会報告書
I.はじめに
1.容器包装リサイクル法の制定の経緯
容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)は平成7年6月に制定された。当時から市町村の最終処分場はひっ迫しており、燃やして埋める処理から、リサイクル、循環型への転換へ社会的な要請がなされていたが、こうした背景のもと、家庭ごみのうち容積で5〜6割、重量でも2〜3割を占め、また、分別によりリサイクルが比較的しやすい素材でできている容器包装に焦点があてられ、この制度が誕生した。
従前、家庭ごみについては、市町村が処理責任を負うこととされていたが、本制度は、この責任の在り方を見直し、消費者、市町村、事業者の間での新たな役割分担の下、リサイクルのシステムを構築したものである。その後、平成12年6月に循環型社会形成推進基本法が制定され、この中で、拡大生産者責任の考え方が整理されたところであるが、容器包装リサイクル法は、基本法が制定される5年前に、生産者の責任によって再商品化を行うシステムを構築したという意味で、画期的な制度であると考えられる。
この制度は、平成9年4月にびん、缶、ペットボトル等を対象とし、再商品化の義務を負う事業者も大企業者に限定して開始されたところであるが、さらに平成12年4月からは、紙製、プラスチック製容器包装等を対象に加え、また、再商品化義務を負う事業者の範囲に中小企業者を含めて完全実施されている。
また、容器包装リサイクル法に関連して、平成13年4月から、資源有効利用促進法に基づく紙製、プラスチック製容器包装の識別表示がなされることとなっている。
なお、容器包装リサイクル法の附則には、この法律の施行後10年を経過した場合に、施行状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる旨規定されているところである。
2.容器包装リサイクルシステムの目的
容器包装リサイクル法は、一般廃棄物の減量及び再生資源の十分な利用等を通じて、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図り、もって生活環境及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的としている。
すなわち、この法律によって構築が求められる容器包装リサイクルシステムの目的は、「一般廃棄物の減量及び再生資源の十分な利用等を通じた」、「廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保」にある。法制定当時は、一般廃棄物については、市町村による焼却・埋立処理が主流であり、一部の有価での引き取りが期待できるものについて資源ごみとしての分別収集が行われていたのが実情であった。容器包装リサイクル法の制定により、容器包装はリサイクルされることを前提に分別収集されることとなり、制定時の議論を踏まえて言い換えると、容器包装リサイクルシステムの主たる目標は、資源の有効な利用のほか、容器包装の、
(1) 発生抑制
(2) 焼却・埋立処理からリサイクルへの移行
(3) 最終処分量の削減
にあると考えられる。
また、分別収集されたものについては、特定事業者が再商品化の義務を負うことから、よりリサイクルしやすい素材への転換や減量化の効果も期待されている。
II.現状把握
1.分別収集、再商品化の実績
- 容器包装リサイクル法に基づく分別収集の実績と指定法人の引取量の実績については、表1、表2のとおりである。なお、同表の数字は市町村からの報告に基づくものであり、再商品化量は指定法人に引き取られたものとは限らない。
- これによれば、容器包装リサイクル法が制定される以前から分別収集が行われていたびん、缶については、ガラスびんが7割以上、缶は9割以上の市町村が分別収集を行っている。事実上、容器包装リサイクル法の施行後に分別収集が開始されたペットボトルについても、分別収集に取り組む市町村数は急激に増加しており、6割以上が取り組んでいる。
- この結果、容器包装廃棄物の発生量は減少している。また、再商品化義務の課された特定事業者は容器の薄肉化等による原料使用量の削減が進められている。
- 一方、ペットボトルの生産量は急増し、ガラスびんやスチール缶の消費が減少するなど、従前からリサイクル体制が存在していた素材からリサイクルシステムが整備途上にある素材への移行も生じている。
表1 容器包装リサイクル法に基づく分別収集・再商品化の実績
品目名
|
分別収集計画量(t)
|
分別収集実績量(t)
|
再商品化量(t)
|
分別収集実施市町村数
|
無色ガラス
|
H9 |
406,133 |
292,775 |
275,119 |
1,610 |
H10 |
486,025 |
322,284 |
303,240 |
1,862 |
H11 |
542,451 |
326,110 |
307,237 |
1,991 |
H12 |
458,559 |
181,159 |
170,120 |
2,584 |
茶色ガラス
|
H9 |
299,536 |
243,916 |
228,170 |
1,610 |
H10 |
358,012 |
274,374 |
256,227 |
1,866 |
H11 |
396,894 |
290,127 |
272,559 |
1,992 |
H12 |
369,346 |
166,639 |
155,079 |
2,596 |
その他ガラス
|
H9 |
118,536 |
107,533 |
95,190 |
1,535 |
H10 |
140,443 |
136,953 |
123,227 |
1,784 |
H11 |
155,603 |
149,332 |
134,084 |
1,915 |
H12 |
180,459 |
81,817 |
72,680 |
2,504 |
紙 |
H12 |
86,724 |
13,126 |
8,910 |
306 |
ペットボトル
|
H9 |
21,180 |
21,361 |
19,330 |
631 |
H10 |
44,590 |
47,620 |
45,192 |
1,011 |
H11 |
59,263 |
75,811 |
70,783 |
1,214 |
H12 |
103,491 |
66,694 |
61,248 |
2,241 |
プラスチック |
H12 |
239,174 |
41,262 |
28,051 |
813 |
スチール缶
|
H9 |
526,701 |
464,662 |
443,506 |
2,411 |
H10 |
590,858 |
471,638 |
461,347 |
2,572 |
H11 |
636,099 |
471,127 |
456,892 |
2,625 |
H12 |
576,461 |
253,996 |
246,578 |
3,046 |
アルミ缶
|
H9 |
148,885 |
112,527 |
107,455 |
2,420 |
H10 |
170,535 |
121,214 |
117,315 |
2,587 |
H11 |
187,025 |
128,541 |
124,690 |
2,647 |
H12 |
172,889 |
73,875 |
70,780 |
3,053 |
段ボール |
H12 |
434,888 |
169,481 |
167,071 |
1,651 |
紙パック
|
H9 |
23,028 |
6,644 |
6,419 |
993 |
H10 |
30,072 |
8,939 |
8,670 |
1,111 |
H11 |
36,630 |
9,574 |
9,416 |
1,176 |
H12 |
28,065 |
6,313 |
6,011 |
1,554 |
平成12年度の実績は4〜9月の速報値で、斜字で示した。
表2 指定法人の引取量の実績 (単位:トン)
|
平成9年度 |
平成10年度 |
平成11年度 |
平成12年度 |
無色ガラス |
52,452 |
60,167 |
66,063 |
39,956 |
茶色ガラス |
61,130 |
75,621 |
87,698 |
58,865 |
その他ガラス |
34,781 |
52,483 |
66,607 |
42,652 |
紙 |
|
|
|
2,204 |
ペットボトル |
14,014 |
35,664 |
55,675 |
50,198 |
プラスチック |
|
|
|
22,942 |
平成12年度分は4月〜9月の集計値であり、斜字で示した。
表3 容器包装リサイクル法による容器包装廃棄物の発生量(試算) (単位:万トン)
品目名 |
8年度 |
11年度 |
ガラスびん |
218 |
208 |
ペットボトル |
17 |
33 |
スチール缶 |
126 |
113 |
アルミ缶 |
27 |
27 |
合計 |
388 |
381 |
(注)リターナブルガラスびんの回収量をを除いた量を示している。
- 平成12年4月から制度が実施された紙製、プラスチック製容器包装の分別収集に取り組んでいる市町村は、平成12年9月現在で、紙製容器包装が306、プラスチック製容器包装が813である。
2. 今後の分別収集計画・能力の整備
- 平成11年度に各市町村は平成12年度から5年間の分別収集計画を策定している。これらの計画による分別収集見込み量は表4の通りである。
- 平成11年度中に計画した分別収集計画の平成13年度の分別収集見込み量を上回る見込みであること、ペットボトル入り飲料等の生産量が急増していることから、平成12年度に平成13年度以降の数値の見直しを行っており、表4の数値は見直し後の見込みの数値である。なお、平成13年度以降のペットボトルの再商品化能力については現在精査中である。
表4 平成12年度から5年間の分別収集見込み量 (単位:千トン)
品目名 |
12年度 |
13年度 |
14年度 |
15年度 |
16年度 |
無色のガラスびん |
459 |
484 |
505 |
525 |
537 |
茶色のガラスびん |
369 |
388 |
406 |
420 |
431 |
その他の色のガラスびん |
180 |
190 |
198 |
205 |
211 |
紙製容器包装 |
87 |
120 |
153 |
197 |
213 |
ペットボトル |
103 |
173 |
199 |
217 |
231 |
プラスチック製容器包装 |
239 |
389 |
487 |
636 |
701 |
- ペットボトルの今後の生産量、回収量等については、表5、表6のような予測がある。この予測については、平成12年3月のものであり、また必ずしも合意を得られたものではなく、現在、業界団体において精査中である。
- 表5による生産量と、表4による分別収集量を合わせ考えると、平成11年度に23%であったペットボトルの回収率が、平成16年度には50%を超えることとなる。
- 表6のBTB(ボトルtoボトル)の需要量は、他の需要によって賄いきれない分を計上したものであり、分別収集量が表5の予測以上に伸びた場合には、ボトルtoボトルなどの新規用途により対応することが不可欠である。
表5 再商品化施設能力の確保計画 (単位:千トン)
|
12年度 |
13年度 |
14年度 |
15年度 |
16年度 |
生産量 |
388 |
406 |
427 |
440 |
453 |
分別収集量 |
113 |
137 |
157 |
172 |
186 |
分別収集されない量 |
276 |
269 |
271 |
268 |
267 |
指定法人委託量 |
90 |
123 |
141 |
154 |
167 |
再商品化能力 |
91 |
|
|
|
|
再商品化能力の不足量 |
|
33 |
50 |
64 |
76 |
表6 再生樹脂量及びその用途の予測 (単位:千トン)
|
12年度 |
13年度 |
14年度 |
15年度 |
16年度 |
指定法人委託量 |
90 |
123 |
141 |
154 |
167 |
再生樹脂量 |
63 |
86 |
100 |
110 |
120 |
用途別需要 |
|
|
|
|
|
繊維 |
41 |
52 |
60 |
60 |
60 |
シート |
17 |
26 |
30 |
30 |
30 |
ボトル(非食品) |
2 |
2 |
2 |
1 |
1 |
BTB(新規) |
|
|
|
10 |
20 |
射出成型品 |
2 |
3 |
5 |
5 |
5 |
その他 |
2 |
4 |
4 |
4 |
4 |
3.ペットボトルの引き取り停止
- 平成11年度に分別収集されたペットボトルは、再商品化計画上の再商品化見込み量(再商品化能力)を上回った。
- 指定法人は、分別収集されたペットボトルの量に比べ再商品化能力が不足したため、一部市町村からの引き取りを停止するという事態を生じた。
- 法律制定時には、このような事態に対しては市町村が保管することにより対応することを想定していたが、保管量が多く一部の市町村では独自の処理を行った。
- 今後はこうした事態の再発を防ぐことが必要である。
4.ペットボトルの生産量増加
- 容リ法の施行後、廃棄物となった主に飲料に使用される容器のうちリサイクルのために回収されないものの量は、ペットボトルを除いたびん、缶については減少傾向にあり、また、ペットボトルを含めた飲料用容器全体についても、重量ベースでは減少傾向にある。
- ペットボトルのみについて見ると、平成8年に飲料業界が小型ペットボトルの製造の自主規制を解除したこともあり、消費者の選好を背景に生産量が急増している。分別収集量の増加、再商品化能力の拡充によりリサイクル率が急速に向上しつつあるが、ペットボトルの生産量はそれ以上のテンポで増加しているため、埋立・焼却されるペットボトルはかえって増加しており、ペットボトルに着目した場合、再商品化義務の発生により、軽量化等は行われているものの、廃棄物の量としては発生抑制効果が発現していないのではないかとの指摘もある。
図1 ペットボトルの生産量・回収量・再商品化量の推移
5.紙製、プラスチック製容器包装の状況
- 紙製、プラスチック製容器包装については、平成12年4月の法の完全実施に伴って、分別収集が開始されたばかりであり、対象容器包装や対象地域について部分的に実施している市町村もあるため、十分な評価は難しい。
- 4月〜6月の実績を見る限り、分別収集見込み量、再商品化見込み量に比べて、分別収集量が少ないが、本年7月以降に分別収集を開始する市町村や平成13年度以降に開始する市町村もあることから、今後、分別収集量が増加していくものと推定される。
- すでにプラスチック製容器包装の分別収集に取り組んでいる市町村数は本年9月現在で813にのぼっており、これは平成9年度末のペットボトルの実績(631市町村)を上回っている。
- プラスチック製容器包装の家庭系の廃棄物に占める割合は、ペットボトルよりも高いことから、プラスチック製容器包装の分別収集量は近い将来、大きく増加するのではないかとの指摘もある。
III.ペットボトル等飲料容器についての主な論点
ここでは、現状認識で触れた主な課題のうち、ペットボトル等、主に飲料容器に使用される容器で顕在化したものについて考察し、解決のための論点を整理した。すなわち、(1)市町村からの引き取りが停止されるという事態の再発を防ぐための論点、(2)ペットボトルのリサイクル率の向上が、生産量の増加に追いつかずに、焼却・埋立されるペットボトルはかえって増加しているという問題の論点、について議論を整理した。なお、ここで述べていることは、必ずしもペットボトル等飲料容器に特有のものではなく、他の容器包装について同様の事態が生じる場合には、当然にその解決のための論点として考えられるものである。
1. 市町村からの引き取りが停止した問題の論点
この項では、市町村からの引き取りが停止されるという事態の再発を防ぐために可能な措置について考察するが、2.の項で後述する生産量、廃棄量が増加している問題に対する解決策は、本項で述べる事態に対しても構造的な解決策となりうることから、今後の課題については2.の項でまとめて考察し、この項では主に短期的に可能な対応策を中心に述べることとする。
(1) 当面の可能な措置
- 現行制度においては、再商品化義務総量は再商品化能力と分別収集見込み量の低い方として年度開始前に決定される。しかしながら、リサイクル施設の整備が進展し、その年度内に再商品化能力の増強が図られている情勢にあっては、国においても必要に応じて再商品化義務総量を柔軟に改定すべきであり、また当面は再商品化が可能な量までは柔軟に特定事業者が引き取っていくことが求められる。
- 分別収集されながら再商品化されない容器包装が出るようであれば、分別収集に協力した消費者等の理解を得られないだけでなく、負担の面についても、市町村や他の素材の容器包装の利用者等と不公平が生ずることとなる。ペットボトルの生産量・収集量に飽和する状態が見えないという情勢下では、特定事業者は自主的に再商品化能力の拡充や再商品化された原材料の用途ならびに再商品化手法の拡大に努め、分別収集量の全量を引き取れるようにしていくべきである。
- リサイクルの推進のためには、再商品化能力や再生原材料の利用用途の拡大と上記のようなそれに応じた柔軟な対応が必要であるが、一方で計画的なリサイクルを推進していくために、市町村も中期的で精度の高い分別収集計画を策定し、再商品化能力の円滑な整備の観点から、計画と実績の乖離をなくしていくべきである。
- このためには、国や事業者も例えば地域ごとの容器包装の使用量などの情報を収集し、提供していくことも必要である。
- 再商品化能力の拡大に向けての方策については、2.の項において述べるが、再生原材料の利用用途の拡大については、需要側からの対応も重要であり、グリーン購入法の施行に伴い義務の生ずる国の機関のみならず、地方公共団体や消費者においても積極的に再生品を利用することが求められる。このためには、国、地方公共団体、関係事業者等が消費者に対する情報提供を行っていくことも肝要である。
(2) 一時的な能力不足に対する方策
- 先に述べたペットボトルの引き取り停止措置への対応策として、緊急避難的にマテリアルリサイクル以外の再商品化手法を考慮すべきとの意見もあった。しかしながら、循環型社会形成推進基本法でも、マテリアルリサイクルを優先することが明確になっており、安易に例外措置を認めることは好ましくない。発生抑制への歯止め効果の面でも問題があり、仮に、ペットボトルのマテリアルリサイクル以外の再商品化手法を検討する場合には、その前提として、市町村における保管にかかる能力や負担、生産量の見込みや再商品化能力の拡大、再生品の用途の拡大への取り組み、成果の状況及び見通し等を明確にしなければならない。
- 季節的な要因により生ずる一時的な能力不足については、まず、再商品化施設の処理実績等を精査し、それらを効率的に融通利用することにより対処すべきであり、これによっても引き取りができない場合には、保管による対処を行うべきである。
- 今後の課題として、一時的な分別収集量の変動のために引き取りができない状況が生じた場合、現在は市町村の役割とされている保管について、その負担が過大である場合には保管費用の一部を特定事業者側で負担することも考えられ、また、これに関連して分別収集費用全体の一部を特定事業者に負担させることについては2.の項で述べる。
2.ペットボトルのリサイクル率の向上が、生産量の増加に追いつかずに、焼却・埋立されるペットボトルはかえって増加しているという問題の論点
この項では、廃棄物として排出されるペットボトルの発生抑制効果が十分でない場合に、これを強化するために必要な措置や1.の項で述べた当面の措置では対応しきれない場合における再商品化能力の拡大のために必要な措置についてまとめたものであり、今後の課題となるべき事項を含んでいる。ここでは、課題をそれぞれの関係者の主体ごとにまとめている。
(1) <消費者側の問題>
- @) 消費者において、ペットボトル以外の容器を選択するなど発生抑制が行われるようになっていない。
- 消費者は容器包装廃棄物の排出者であり、一義的には発生抑制を実践すべき主体である。したがって、まず消費者が発生抑制を自覚することが肝要であり、このためには、環境教育等による一層の情報提供が必要である。また、消費者における発生抑制を促進するための環境整備が必要であり、消費者がリユース性、リサイクル性の高い容器を選択できるような状況にすることが重要である。また、容器包装を利用した商品を製造・販売する事業者は、消費者の環境配慮に基づく行動が実践できるよう選択の幅を狭くしないようにすることが求められる。
- 容器包装リサイクル法は再商品化費用の転嫁について規定しているが、消費者の自覚による発生抑制が十分な効果が得られるよう、商品価格に転嫁されるべきリサイクル費用、その容器包装をリサイクルするのに必要な費用等を消費者に明示すべきとの指摘もあった。
- 選択肢としてのリターナブル容器については、(4)の項で後述する。
- 家庭ごみの有料化も発生抑制へのインセンティブになりうるとの指摘がある。
- 一方、容器包装を分別収集している市町村において、当該容器包装以外の家庭ごみの量に応じて手数料を徴収することにより、容器包装の分別収集が促進されるものと考えられる。この場合、分別収集の質が低下しないような工夫も必要である。
- A) 消費者において、必ずしも適切な分別排出が行われていない場合がある。
- 分別排出の方法を市民にわかりやすいものにすることも、市民の協力を得る上では重要である。資源有効利用促進法に基づく紙製、プラスチック製容器包装の識別表示については効果が期待される。
- ペットボトルのキャップをはずすなどの事項については、市町村の普及啓発に加え、国、事業者も積極的に啓発していくべきであると考えられる。
- さらに、回収量や用途、費用等を含めたリサイクルの実態について、積極的に消費者に対し広報し、リサイクルと分別の必要性などについて理解を得ていくべきではないかと考えられる。
- 消費者の分別排出への協力を損ないかねないという面はあるものの、将来的には、品質の確保を前提としつつ一括収集して機械選別することにより、異物の除去や異種の素材を選別し、リサイクルの促進を進めていくことも検討の余地がある。
(2) <市町村側の問題>
- 現行法では、容器包装リサイクルシステムを実効的かつ効率的に構築するため、主に法制定前から一般廃棄物の収集をしていた市町村ルートを活用することとされたが、市町村の経費面、労力面の負担が重いため、分別収集への取組が進みにくいとの指摘がなされている。
- この容器包装リサイクルシステムは、市町村が分別収集を開始し、回収率を上げていくことが前提となって構築されているものであり、市町村がそれぞれの実態を踏まえながら、積極的に分別収集に取り組んでいくことが重要である。
- 市町村の収集経費等の負担が大きく、これが市町村が分別収集に取り組むことの阻害となっているとの指摘がある。この点に関しては、市町村の費用負担の実態を定量的に評価し、公表していくことが必要である。なお、市町村の分別収集コストの増加分はリサイクルによる中間処理費用、最終処分費用の減少分とほぼ相殺されるとのモデル的な試算も示されている。市町村の費用負担の実態の評価は、市町村ごとに分別収集の方式が異なることなどから、難しい面があることも指摘されているが、指標化を検討することなどにより客観的な分析ができるよう努めていく必要がある。
- 一方で、市町村は小規模事業者分のリサイクル費用を負担しており、これについても分別収集の阻害要因となっているとの指摘がある。
- 小規模事業者分については再商品化義務を負う者が存在しない。この部分について、一般廃棄物の処理責任を有する市町村が再商品化しなければならないかという視点も含め、この問題について検討していく必要がある。
- 市町村においては、分別収集の取組を進めるために必要に応じて民間事業者の活用を検討することも考えられる。施設の整備など初期投資が阻害要因となっているのであれば、施設整備の補助金を活用するほか、PFI制度を活用していくことも考えられる。民間委託による選別・梱包・保管を行っている自治体も出てきている。
- 今後の検討課題として、市町村の費用負担の実態を定量的に評価すべきであり、また、市町村の取組をさらに促進するためには、実効性、効率性を確保しつつ、分別収集費用の一部を特定事業者が負担する方法も考えられる。これに関連して、(3)のA)に述べるような再商品化の実費にこだわらずに費用を負担するという議論の際には、この費用の使用方法の一つとして、市町村の収集運搬費の一部に充てることも考えられる。
- 上記の点は、リターナブル容器へのインセンティブの付与の強化にも資するものと考えられる。
- 効率的なリサイクルの推進のためには、市町村が分別収集した容器包装の品質向上が重要である。このためには、品質の確保に成果を上げている市町村の情報を公開していくことなども考えられる。今後は、指定法人への小規模事業者分の委託単価に差異を求める等の手法も考えられる。また、分別収集費用の一部を特定事業者が負担する場合には、分別収集された容器包装の品質によって負担額に差異を設けるなどの手法も考えられよう。こうしたインセンティブの採用は、再商品化費用の削減にも寄与し、特定事業者にもメリットがあると考えられる。
(3) <特定事業者側の問題>
- @) 分別収集量の増加に合わせて再商品化能力の拡大が一層図られなければならない。
- 1.の項で述べたとおり、当面は、特定事業者自らが自主的に再商品化能力の拡大に努め、分別収集量の全量を引き取れるような努力を継続すべきである。
- ペレット、フレーク化を行う再商品化施設の能力拡大はもとより、ペレット、フレークを原料とした繊維、シートなどの用途先の量的な拡大も図っていくべきである。
- 本来、バージン資源、再生資源の需要を考慮すれば、リユースは別として、リサイクルする場合はもとの製品にリサイクルすることが望ましく、ボトルtoボトルの技術はペットボトルのリサイクル技術の中心となるべきものである。この技術が実用化すれば、能力の大幅な増加とこれに伴う回収率の上昇が期待され、さらにはリサイクル率の向上に伴い増大するリサイクルコストが商品価格に転嫁されることにより、発生抑制へのインセンティブにも資するものである。
- これまで、リターナブルペットボトルの可能性やボトルtoボトルの技術について、種々の検討がなされてきたが、現在では、モノマー化によるボトルtoボトルの技術が平成14年度の実用化を目指して研究が進められている。この技術については、食品衛生上のクリアーを含め、用途拡大の一環として関係者が協力して早期に飲料用容器への利用を実現していくべきである。
- なお、モノマー化技術については、モノマーが従来と同様に製品原料として利用されることから従来の手法と同等に位置づけるとともに、再びペットボトルとして利用される場合には、これがペットボトルのリサイクルの中心となるべきものであることに鑑み、従来の手法より優先的に位置づけることが適当である。
- A) 特定事業者において、リユース性、リサイクル性の高い容器を選択するなど発生抑制が行われるようになっていない。
- 特定事業者は、再商品化能力の整備が進まない場合には、自主的に生産抑制、素材転換をすべきとの指摘がある。
- この場合、特定事業者は価格に転嫁されるべき単価のみならず、製造、利用する個々の容器包装のリサイクルに必要な費用を、自ら負担していない費用も含め理解しているべきである。
- また、ペットボトル業界ではリサイクルし易いペットボトルの設計、製造、使用のための自主基準をもっているが、例えばペットボトルへの着色が、再商品化能力を阻害しているとの指摘があるなど、業界でのリサイクルに対する自主的な取り組みが十分とはいえないことも指摘されている。
- 今後の検討課題として、容器包装リサイクルシステムにかかる社会的コストの最小化を図りつつ、生産抑制、素材転換への経済的インセンティブを制度的に付与すること、再商品化の実費にこだわらず特定事業者に負担を求めていくことについて議論していくこと、指定法人が集めた費用の使用方法についても柔軟に考えることなどが考えられる。
- 現在は回収されたもののリサイクルの実費のみ負担しているが、例えば回収率、分別収集したものの品質、再商品化能力、再商品化手法等の向上へのインセンティブが働くようにできないかといった点につき、現行制度の仕組みを精査しながら検討していくことも考えられる。特に、現行制度では回収量に基づいて義務量を算定しているが、生産量に基づいて算定すべきとの意見が提示されている。この際、再商品化されたものの用途によって、負担金を算定すべきとの指摘もあった。
- LCAについての調査研究を進め、効率的なリサイクルが可能な容器包装の製造、利用等を図ることも重要である。
(4) <リターナブルシステム>
- @) 容器包装リサイクル法では自主回収ルートが認められているが、これが十分に機能していないのではないか。
- リターナブルボトルのシステムを今後も維持していくべきではないか。特定事業者の中には、素材の原価差、企業の姿勢などからリターナブルボトルのシステムを維持したいと考えているものもある。
- 消費者の選好、流通形態の変化等により、リターナブル容器の使用が減少してきた面があるが、これを維持するためにどのようにすればよいか。
- 容器包装リサイクル法は、自主回収ルートを認めており、従前に比較すれば、リターナブル容器を使用するインセンティブが働いているといえるが、さらにリターナブル容器が普及するよう、消費者、製造、流通、回収事業者へのインセンティブの強化を図る方策を検討していく必要がある。
- 現時点では、概ね90%が回収されれば自主ルートとして認定され、その残り分の負担については免除されているが、さらに、この基準以下であっても自主回収の努力を評価し、推進する具体的な方策を検討すべきではないか。例えば、自主回収している者とその他の者で指定法人が行っている再商品化に係る費用負担の割合を変えていくことはできないか。
- A) その他の方策
- リターナブルシステムの維持・促進のために、製造業者、流通業者、自治体、消費者がそれぞれアイディアを持ち寄って、多様な試みを積極的に行っていく必要があり、例えば以下のような観点が考えられる。
- 消費者が物理的に返却しやすいシステムを考えられないか。
- 業界が自主的にリターナブル容器の定着に対する方針をまとめるようなことはできないか。また、環境教育と関連させながら消費者等が中心となって自ら地域におけるリターナブルシステムの構築をしていくことも考えられるのではないか。さらに、流通事業者が積極的な役割を果たしてはどうか。
- 資源有効利用促進法等のスキームを利用して共通びんの利用促進をしていく手だてはないか。
- デポジット制度も検討課題になるが、かつてのシステムが衰退した原因の精査とともに、先進的な取組の事例の評価を行う必要がある。
- 例えばドイツのようにデポジット制度を法的規制と関連させて導入すべきとの意見もあったが、特定事業者、流通事業者に過大な負担となるとの指摘もあった。
- また、現在ドイツでは、法によりデポジット制度を導入することが決められている時点となりつつあるが、現時点ではデポジット制度のみならず、課税による対処も含め、様々な議論が展開されているとの報告もあった。
IV.プラスチック製、紙製容器包装等非飲料容器についての主な論点
ここでは、現状認識で触れた主な課題のうち、プラスチック製容器包装等主に飲料容器以外に使用される容器包装についての論点、すなわち、紙製、プラスチック製容器包装についてリサイクルがうまくいっていないのではないかという点について議論を整理した。
- 制度発足後間もないことから、十分な評価はむずかしいが、先進的に取り組んでいる市町村、特に大都市の実情を注視し、評価していくことが必要である。
- 紙製、プラスチック製容器包装は、ペットボトルに比べて家庭から排出されるごみの中に占める割合が高いことから、ごみ減量の効果が大きいものと期待される。
- 能力拡大のための方策としては、III.の2.で述べたことは紙製、プラスチック製容器包装にも当てはまるものが多いと考えられる。
- 一方、識別が困難なこと、食品残さが多くなりやすいこと、異種の素材(プラスチック)が混在することなど、ペットボトルと異なる点もあるため、消費者、市町村の負担が重い、マテリアルリサイクルがむずかしいといった問題が指摘されている。
- 識別が困難とされることについては、平成13年4月から資源有効利用促進法に基づき紙製、プラスチック製容器包装の識別表示がなされることとされており、効果が期待される。罰則等については2年間適用しないとされているが、すでに表示を先行的に行っている事例もあり、できるだけ早期に表示が完了することが望まれる。他方、識別表示を行うことが企業の環境姿勢を示す方策の一つとして、積極的に対応が進むことも期待されている。
- また、市町村ごとに分別排出の方法ができる限り共通である方が、消費者にわかりやすいため、こうした点についても関係者間で検討を行ってはどうかとの指摘があった。
- 他方、容器包装のリサイクルとは別の話ではあるが、紙やプラスチックという素材に着目して効率的なリサイクルを進める観点からは、通常の家庭ごみ等として排出されるもののうち、同種の素材で容器包装以外のものの扱いについて検討すべきとの指摘もあった。
- また、これと関連して、事業系の容器包装について、どれだけリサイクルされているのかが不明確であるとの指摘もあり、これについても今後どのように対応を考えていくのが適当か検討する必要がある。
- プラスチック製容器包装に関しては、異種の素材が混合しており、マテリアルリサイクルが難しいという課題がある。この課題を克服していかにマテリアルリサイクルを進めていくかは、今後の課題である。
- また、紙製、プラスチック製容器包装については複合素材の問題がある。容器包装の機能の充実のために、軽量化と易リサイクル性は必ずしも両立しないことから、現状の制度では、ややもすると複合素材への転換が行われがちであり、マテリアルリサイクルを進める障害となりかねない。複合素材の容器包装の取り扱いについても、今後の課題であると考えられる。
- さらに、容器包装リサイクル法で想定していない素材との複合素材の問題についても指摘があった。容器包装リサイクル法の義務を逃れるためにリサイクルしにくい容器包装の出現があるとすれば、法の目的に合致しないものである。
- この問題は容器包装区分の仕方と、区分が増えることに対する負担の増大の問題であるが、当面は、容器包装の区分の基準となっている「主な素材」の適用を柔軟に行って、このような素材についても本制度の対象とすることを検討することとし、さらに今後、こうした傾向が更に進むようであれば、III.の2.で述べたような実費にかかわらずに費用を徴収していくこと等の検討を急がなければならなくなると考えられる。
- また、資源有効利用促進法等のスキームを利用して複合素材が採用される容器包装のリサイクルをし易くしていく手だてはないか、また、サービス業にかかる容器包装や事業系の容器包装について、減量やリサイクルをし易くするという対策ができないかとの指摘もあった。
- ごみの減量化を図る上で、プラスチック製、紙製容器包装のリサイクルをさらに促進する必要があり、再商品化手法のあり方を含め様々な観点から検討する必要があるが、この際上記の点にも考慮して検討を行って行くべきである。
- また、上記の点とあいまって、現段階での分別収集量は分別収集計画を大幅に下回るのではないかとの指摘があった。このままの状況では、再商品化事業者の採算等の面で問題が生じるとの指摘もある。
- 市町村は精度の高い分別収集計画を策定し、再商品化能力の円滑な整備の観点から、計画と実績の乖離をなくしていくべきである。
- なお、紙製容器包装については古紙一般との関連が大きく、市況によって市町村の分別収集の取組に変化が生じうるなど、その独自性を十分考慮した対応が必要である。
- 他方、質の高い分別収集を行っている市町村を適正に評価することにより、取組を促進していくことも考えられる。
V.その他、効率的なリサイクルシステムの発展を図るための論点
- 効率的なリサイクルシステムを構築していくためには、まずマテリアルフローを把握することが重要であり、国、地方公共団体及び関係事業者等は、国内に限らずにデータを整理していく必要がある。
- 元来、リサイクルは地域社会が支えてきており、輸送時の環境負荷をも考えあわせれば、指定法人による再商品化事業者への委託に際して地域で確立したリサイクルルートをコストにも配慮しつつ有効に利用すべきであり、特に市町村が関与して構築したリサイクルルートを利用することは市民の協力を得ることに効果的であるとの指摘があった。
- また、市町村による分別収集量の今後の増加等に対応するため、多様なリサイクル手法を確保していくことが必要である。
- 再商品化事業者は義務こそかかっていないものの、リサイクルシステムを支える重要な関係者である。再商品化事業者が安心して事業が行えるよう配慮すべきであり、指定法人との契約が単年度契約であることが新規参入の阻害要因になっているのではないかという指摘もあった。また、再商品化事業者が施設を設置していく上で地方公共団体の許認可等が円滑に進んでいない事例が報告されていることから、地方公共団体の理解と協力が必要であるとの指摘もあった。
- 流通事業者も、リサイクルシステムを支える重要な関係者であり、市町村への協力等によりこのシステムを支えるほか、消費者に近いという特性を生かすなどして、流通事業者が中心となって自主的なリサイクルルートを構築するなど、さらに重要な役割を担っていくことが可能な立場にあるのではないかとの指摘があった。
- システムの信頼性を維持するために、フリーライダー対策も重要である。指定法人との契約者の公表が検討されており、また、指定法人との契約者の商品にマークを付することも考えられる。
- なお、効率性と公平性は時として相反する場合があり、効率性を求めるのであれば、今後の課題として、指定法人との契約者のうち少額契約者については委託費を免除することも考えられるのではないかとの指摘があった。この場合、小規模事業者の市町村負担についても併せて検討すべきである。
- このような議論は、公平性の面からは問題点が多いので、慎重な議論が必要である。
- LCAについて調査研究を進める必要がある。
VI.まとめ
本検討会では、7月6日に第1回の検討会を行って以来、委員以外の関係者からもご意見を伺うなど、7回にわたる会議を開催し、容器包装リサイクルシステムに関連する諸問題について、幅広い見地から精力的に検討を行った。現時点で考えられる課題については概ね整理されたと考えているが、平成12年4月に容器包装リサイクル法が完全施行されたばかりであり、平成9年に制度が施行されているペットボトルに関しても、未だ生産量も分別収集への取組も急増している過渡的な状況であり、必ずしもこのシステムと関連する課題について議論を尽くしたとは言い切れない部分もあり得る。
容器包装リサイクルシステムが本格施行されて3年余り、完全施行からは1年もたっていない現段階においては、リサイクルの輪を広げるためには、基本的にはこのシステムを着実に実施していくことが重要である。しかしながら、現在顕在化している課題については、国をはじめとして、関係者の協力により解決していくことが必要であり、そのために次に述べる諸点について配慮していくことが重要である。
1. 容器包装リサイクルシステムを円滑に動かしていくために当面行うべき対応策
- 平成11年度には、指定法人がペットボトルの引き取りを停止する事態が生じたが、このようなリサイクルされない容器包装が保管施設に積まれる事態を繰り返さず、また廃棄物の発生抑制とリサイクルの推進により最終処分量を削減していくためには、当面は、国は再商品化義務量の告示を柔軟に改定すべきであるとともに、特定事業者は告示されている義務量にかかわらずに、法の精神を汲んで、現実の再商品化能力までは自主的かつ柔軟に引き取っていくべきである。
- さらに、特定事業者は、自主的に再商品化能力の拡大、再商品化された原材料の用途の拡大、及び再商品化手法の拡大に努め、分別収集量の全量を引き取れるようにしていくべきである。
- このため、特定事業者は一層の発生抑制に努めるともに、関係者が協力して、できる限り早期にボトルtoボトルの技術を実用化するなど、リサイクルの輪を拡大していくべきである。
- 一方で、市町村も中期的で精度の高い分別収集計画を策定すべきであり、また、消費者がよりよい容器を選択することも重要でそのための環境整備を行っていくべきである。
- また、廃棄物の発生抑制とリサイクルの推進による容器包装リサイクルシステムの実効性を確保していくためには、市町村が分別したものは全量リサイクルされることを前提に、回収率を上げていくことが不可欠であり、ペットボトルについては、平成16年度までにペットボトルのリサイクル率(再商品化量/生産量)が50%を超えることを当面の目標とする。
- 国も調査研究や啓発普及を積極的に行うことにより、このような関係者の努力を支援していくべきである。
2.その他の容器包装リサイクルシステムを生かすための対応策
- このほか、リサイクルしやすい製品設計など資源有効利用促進法等の活用を検討するほか、リターナブル容器のシステムの維持・促進、フリーライダー対策の強化、小規模事業者分の市町村負担の軽減などの課題についても、関係者間で十分な検討を行う必要がある。
- また、リサイクル費用を消費者がわかるようにすることや、分別排出の方法を市民にわかりやすくする方策、環境負荷に配慮して地域で確立したリサイクルルートへの配慮や再商品化事業者が安心して事業に取り組むための配慮についても検討すべきである。
- プラスチック製容器包装や紙製容器包装については、制度の施行後間もなく、分別収集量もまだ少ないことから、未だ評価をするのは難しいが、ペットボトルと同様にプラスチック製、紙製容器包装等ペットボトル以外の容器包装についても、平成12年4月以降の分別収集、再商品化の実績を見極めつつ、順次、中期的な目標を定める等、適切な対応策を検討していくことが必要である。
- なお、今後、分別収集に取り組む市町村が増え、回収率が上昇すると、これまでとは異なった問題点が新たに浮上することも考えられるため、国としても注意深く見守っていく必要がある。
- また、これらの目標をできるだけ早期に達成し、事業系廃棄物の問題も考慮しながら、これを更に引き上げていくことが必要であり、このため、幅広い関係者の協力によって、データの収集整備、具体的な方策の提案等を内容とするアクションプランを作成していくことが求められる。
3.今後の課題
- これらの努力によっても、目標が達成できないなど、課題の解決が見られない場合には、III.の項で議論しているような制度改正を含めた課題の解決に着手することが必要となる。
- この場合、市町村は精度の高い分別収集計画を策定し、計画と実績の乖離をなくすとともに、費用負担の実態を定量的に示すべきこと、市町村の分別収集に係る費用負担の軽減を図ることも含まれる。さらに、再商品化の実費にこだわらず特定事業者に負担を求めていくことや、費用の使用方法を柔軟に考えることなども提案されている。
容器包装リサイクルシステム検討会メンバー
荒木 亨 |
紙製容器包装リサイクル推進協議会事務局長 |
岩田 功 |
(財)日本容器包装リサイクル協会専務理事 |
大平 惇 |
PETボトルリサイクル推進協議会推進委員会委員(第3回まで) |
郡嶌 孝 |
同志社大学経済学部教授 |
崎田 裕子 |
環境カウンセラー |
高山 光史 |
京都市環境局環境企画部地球環境政策課担当課長 |
槌屋 勝嘉 |
柏市環境部長 |
永田 勝也 |
早稲田大学理工学部教授(座長) |
日向寺昭夫 |
プラスチック容器包装リサイクル推進協議会事務局長 |
平野 明 |
PETボトルリサイクル推進協議会推進委員会委員(第4回から) |
堀込 辰雄 |
PETボトルリサイクル推進協議会会長 |
宮野 忠幸 |
ガラスびんリサイクル促進協議会企画会議委員 |
寄本 勝美 |
早稲田大学政治経済学部教授 |