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平成12年12月15日
1.血液製剤に係る安全性の向上
2.献血による血液製剤の国内自給の確立
3.血液製剤の適正使用の推進
4. 公正かつ透明な実施体制の確保
1.関係主体の責務
2.献血による血液製剤の国内自給の確立
先般の海外原料に由来する非加熱血液製剤の投与によるHIV感染問題の発生は、血液製剤の安全確保対策等を含め、献血並びに血液製剤の製造及び供給に関する血液事業並びに血液製剤の使用等(以下「血液事業等」という。)について、広範な問題を提起している。
このような状況の下、平成8年の薬事法改正においては、「血液製剤の投与によるエイズ問題を踏まえ、医薬品等による健康被害を防止するための措置に関し、速やかに総合的な検討を加え、その結果に基づいて法制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする」との規定が盛り込まれ、平成8年10月には「血液行政の在り方に関する懇談会」が開催され、平成9年12月には報告書がとりまとめられた。
本部会においては、上記の非加熱血液製剤によるHIV感染問題の反省の下、このような甚大な被害が再び発生することのないよう、血液事業等を全体的に見直し、国及び関係主体の責任を明確にした新たな血液事業等のあり方の検討を行うべく、平成10年3月より、23回にわたって審議を行ってきたところである。
なお、審議に当たっては、現行の「薬事法」及び「採血及び 供血あつせん業取締法」による法制度のあり方についての議論も行い、血液製剤の安全性の確保・向上という観点から、両法の枠を超えた議論もあわせて行った。
言うまでもなく、国内献血に由来する血液製剤には、善意に基づき自発的に行われる献血により得られた血液が原料として用いられており、このことは常に関係者の念頭に置かれるべき重要な事項である。血液製剤は、さらに、原料である血液を介した感染症及び免疫反応(以下「感染症等」という。)の発生の危険性を完全には排除できないものであるという特性を有している。
また、血液製剤は人体の一部である血液を原料とするものであり、倫理性の観点及び未知のウイルス等による感染症等が発生した際の迅速な対応の観点に加え、我が国において昭和39年の閣議決定以降、無償献血の推進により血液製剤の安全性が向上した経験に基づき、血液事業等においては、高い公共性と倫理性を備えつつ、安全性の高い国内の献血による血液製剤を安定的に供給できる体制の確立が求められている。
我が国の血液事業等は、献血者をはじめ、国、都道府県、市区町村、日本赤十字社、血液製剤製造業者、医療関係者などの幅広い主体によって支えられているものであり、新たな血液事業等についても、国民各層の理解と協力を得て、国の主導の下、関係主体が一体となった努力により、初めて推進できるものである。
こうしたことから、本部会には幅広い委員の参加を求め、国民各層の理解と協力を得られるよう、広範な意見を得て審議を重ね、血液事業等の改革と新たな血液事業等のあり方の実現に向け、その理念及び具体的な方策の議論を行い、本報告書をとりまとめた。
その内容は、以下のとおりである。
国内献血に由来する血液製剤には、善意に基づき自発的に行われる献血により得られた血液が原料として用いられており、献血者の善意に応えるためにも、血液事業等の実施体制は、高い透明性と効率性を有する公正なものとするべきである。
また、血液事業等に係る国民の理解と協力を求めるためにも、国及び関係主体は、国民に対して十分な情報を積極的に提供するべきである。
都道府県及び市区町村は、献血に対する住民の理解を深め、その支援と協力を得るため、また、日本赤十字社が行う献血の受入の円滑な実施のため、各般の措置を講ずるべきである。
日本赤十字社は、献血が日本赤十字社の掲げる人道・博愛の理念につながるという性格にかんがみ、献血の受入を推進するとともに、血液製剤の安定的な供給の確保に協力するべきである。
なお、この点については、日本赤十字社の血液事業の組織体制について、上記の責務を果たすにふさわしいものとなるよう、今後とも努力するべき、との意見があった。
国は、上記の血液製剤製造業者の取組を定期的に評価する等、安全性の確保のために必要な指導及び支援を行うべきである。
医療関係者は、血液製剤の適正使用に努めるとともに、血液製剤の安全性に関する情報の収集及び提供に協力するべきである。
献血による国内自給の趣旨を踏まえ、供血及び供血あっせんへの対価の支払いを禁止するべきである。
(3)輸入の取扱い
献血による国内自給を推進し、血漿分画製剤の輸入については段階的に削減していくことが必要である。
なお、この点については、以下の意見があった。
3.血液製剤の適正使用の推進
血液製剤に係る安全性を確保し、献血による国内自給を推進する観点から、国及び都道府県は、血液製剤の使用状況を定期的に調査するとともに、血液製剤に係る標準的な使用の指針の医療機関への普及を行うべきである。また、国は、関係学会・関係団体と連携の上、標準的な使用の指針の必要な見直しや、標準的な使用の指針のない血液製剤に係る指針の策定を行うべきである。
医師等は、血液製剤の使用に当たって、適切な説明を行い、患者又はその家族の理解を得るよう努めるとともに、血液製剤に係る標準的な使用の指針をもとに、血液製剤を適正に使用するよう努めるべきである。
医療機関は、輸血療法委員会等の院内の組織を通じ、血液製剤が適正に管理され、使用されるよう努めるべきである。
また、関連する遺伝子組換え製剤についても、適正使用の推進が行われるべきである。
なお、具体的な方策については、以下の意見があった。
(1) 血液製剤の標準的な使用の指針をもとに、適正使用を推進するとともに、国は、使用状況について定期的に全国調査を実施し、適正使用推進のための具体的方策について中央薬事審議会の部会において検討するべき、との意見
(2)血液安全監視委員会等において、医療機関における血液製剤の使用を監視し、血液製剤の標準的な使用の指針の実効性を確保するべき、との意見
(3)医療機関に輸血療法委員会及び輸血業務の責任医師の設置を義務付けるべき、との意見
4.血液製剤の製造・供給体制
血液製剤の製造・供給体制については、献血者の理解が得られるものであり、かつ、国内自給の推進が十分に図られるものであることが必要である。このため、国は、原料血漿の配分に係る役割を明確化するとともに、原料血漿の配分についての考え方の明確化及び献血の利用に関する情報の公開等の透明性の向上に努めなければならない。
また、血液製剤が善意の無償献血に由来することにかんがみ、血液製剤の製造・供給に当たっては、不当な利潤追求を認めるべきではない。
なお、上記の考え方を踏まえた具体的な方策については、以下に掲げる4つの意見があった。
(1)国が日本赤十字社及び民間製造業者に対して血液製剤の 製造を委託し、血液製剤の供給については国の委託を受けた 供給組織により一元的に行う方式とするべき、との意見
(2)ブロック毎に設けられた非営利の供給機構が日本赤十字社及び民間製造業者に対して血液製剤の製造を委託し、血液製剤を一元的に供給する方式とするべき、との意見
(3)現行の方式を前提としつつ、日本赤十字社の製造能力を超える量の原料血漿については国の責任において民間製造業者へ配分するべき、との意見
(4)現行の方式について、日本赤十字社から民間製造業者に対する原料血漿の配分に係る国の役割(利用計画・標準的提供価格の提示等)を明確化し、あわせて配分の決定過程の透明性の向上と配分に当たっての考え方(製造能力、製造効率等を勘案)を明確化するべき、との意見
これらの意見について、以下の議論がなされた。
5.血液製剤の安全性の確保・向上のための措置
血液製剤は、原料である血液を介した感染症等の発生の危険 性を完全には排除できないものであるが、その安全性を可能な 限り向上させるよう、不断の努力が求められるものである。
こうした血液製剤の特性にかんがみ、血液製剤については、その時点における科学的知見に基づき、最大限の安全性の確保及び向上が図られるべきである。
また、関連する遺伝子組換え製剤についても、同様に、最大限の安全性の確保及び向上が図られるべきである。
6.採血の主体及び採血段階における安全性の向上
日本赤十字社は、今後とも採血を行うことが必要である。
また、採血に当たっては、献血者の安全確保及び血液製剤の安全性の向上のため、採血の可否の判断と安全な血液の受入れのための問診等の健康診断が適正に実施されるべきである。
採血所については、適切な基準に基づき、適正な運営管理及び構造設備が確保されるべきである。
7.血液製剤に係る安全監視体制
(1)安全監視体制
血液製剤は、原料である血液を介した感染症等の発生の危険性を完全には排除できないものであり、安全性の向上に係る様々な取組にもかかわらず、血液製剤に係る感染症等が発生する場合に備え、国及び関係主体は、血液製剤に係る国内外の安全性情報の収集・評価及び安全対策の実施が迅速かつ的確に行われる体制を構築するべきである。
上記の体制においては、国の関係機関・関係部署の横断的な連携が確実に図られるべきである。また、国は、安全性情報が不確実な段階等においては、更に安全性情報の収集を行うとともに、常に最悪の事態を想定して、総合的な安全対策の立案・実施を的確に図るべきである。あわせて、国民への適時適切な情報提供を行うべきである。
なお、具体的な方策については、以下の意見があった。
(2)記録の保存等
遡及調査体制を構築するため、日本赤十字社、製造業者、輸入販売業者、病院・診療所において、血液製剤の製造・供給・使用に関する記録等が保存されるべきである。また、血液製剤に係る感染症等が発生し、又は発生するおそれがある際に、血液製剤製造業者、血液製剤輸入販売業者から国及び関係する他の業者への通報、医師から関係する業者等への通報が速やかに行われるべきである。
なお、この点については、関連する遺伝子組換え製剤の記録の保存及び通報についても、同様に行われるべき、との意見があった。
8.血液製剤に係る健康被害の救済
血液製剤は、原料であるヒトの血液を介した感染症等の発生の危険性を完全には排除できないものである。
現状においては、血液製剤に係る健康被害のうち民事法的な救済を受けられないものについては、医薬品副作用被害救済制度等の対象となるものを除き、健康被害の救済が行われていない。
血液製剤の特性を踏まえ、健康被害の救済について速やかに検討を開始するべきである。
その際、他の健康被害との関係、感染被害の因果関係の認定等の救済を行う上で解決するべき諸課題について検討が必要である。
9.献血者に係る対応
献血者の安全と個人情報の保護については、最善の方策が採られるべきである。
万一、献血者からの採血に伴い、採血者の責に帰すことのできない健康被害が生じた場合における対応について、検討を行う必要がある。
10.院内採血
自己の血液を輸血に用いる場合を除き、原則として、院内採血によらないようにするべきである。また、院内採血による場合においても、採血方法・保存方法の適正を保つとともに、採血された血液の安全性及び適合性の確認が十分行われるべきである。
なお、具体的な方策については、以下の意見があった。
(1)院内採血の際の問診等の健康診断について、指針の策定等の具体的方策を検討するべき、との意見
(2)日本赤十字社の供給する輸血用血液製剤と同等の安全性が確保される場合以外は院内採血は行わないよう規制するべき、との意見
11.表示等
(1)採血国表示等
血漿分画製剤の選択に資するため、添付文書又は容器若しくは被包に採血国の表示を行うべきである。
なお、有償採血由来の製剤であることの表示については、以下の意見があった。
(2)適正使用表示等
血液製剤の適正使用を推進するため、血液製剤には添付文書又は容器若しくは被包に、適正使用推奨表示を行うべき、との意見があった。
血液製剤の広告については、適正使用を推奨する表現を用いるなど、適正使用の確保のために必要な措置を国が定めるべき、との意見があった。
上記の措置については、関連する遺伝子組換え製剤についても同様に行われるべき、との意見があった。
連絡先 厚生省医薬安全局血液対策課 黒田(2902)、西田(2905)
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