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平成12年12月7日

米国EPA(環境保護庁)に専門家会議から提出された、スターリンク中で発現する
Cry9Cタンパク質のアレルギー誘発性に関する報告について

 米国EPAは、12月5日に、遺伝子組換えトウモロコシ「スターリンク」の安全性に関する専門家会議から12月1日に報告書の提出を受け、その報告書を公表したと発表しました。この報告書の概要は以下の通りであり、結論が出されたものではありませんが、厚生省としてはこのような報告書が公表されたことに対応し、引き続き情報収集に努めることとしていますのでお知らせ致します。

【専門家会議報告書(概要)】

○骨子

 提出されたデータだけでは結論を出すのは極めて困難であるCry9Cタンパク質のアレルギー誘発性について、食物アレルギーを誘発する既知のアレルゲンと比較した場合、Cry9Cタンパク質の物理化学的性状からは、食物アレルギーを誘発する可能性を否定する根拠はなく、アレルギーを誘発する蓋然性は中等度と判断した。また、Cry9Cタンパク質の食品としての暴露量等のデータも併せて検討したところ、アレルギーを誘発する蓋然性は低いとしている。

○判断材料

 専門家会議は、全てのタンパク質はアレルギー誘発性が完全に否定されるものでないので、タンパク質に関する6つの物理化学的条件に照らし、あえてタンパク質のアレルギー誘発性を高度、中等度、低度の3つに分類した判断基準を示し、Cry9cタンパク質については「中等度」の蓋然性と判断される物理化学的性状をもっているとした。(なお、専門家会議は今回示した判断基準については、科学的妥当性を保証するものではないとコメントしている。)

※ 専門家会議が用いた判断基準(6つの条件)

(1)タンパク質が酸に対して比較的安定である。

(2)タンパク質が消化酵素に対して比較的安定である。

(3)タンパク質の分子量が通常のアレルゲンの分子量の範囲内(10-70KD)である。

(4)タンパク質は糖タンパク質である。

(5)タンパク質(分離されたもの又はトウモロコシ内の)がブラウンノルウェーラットに対するアレルギー反応を誘発する。

(6)タンパク質がラットモデルに対する摂食試験後も血流内に見つかる。

※ 蓋然性の分類

・ 高度の蓋然性:タンパク質のアミノ酸組成が既知の食物アレルゲンと相同性を有し、かつ該当 する条件が3個以上
・中等度の蓋然性:該当する条件が4−5個
・低度の蓋然性:該当する条件が1−3個

(注)専門家会議においては、Cry9Cについては、(1)〜(3)及び(6)については提出されたデータから明らかであり、(4)については資料が不足しており、(5)については、ブラウンノルウェーラットに対してアレルギー反応を誘発するが、そもそもこの実験系がアレルギー性の評価に適しているか不明であるが、程度の違いこそあれ(to some degree)、この6つの条件に該当するとしている。

 一方、Cry9Cタンパク質と既知のアレルゲンとの構造相同性が認められておらず、また、Cry9Cタンパク質が食品に入った場合の暴露量が少なく、アレルギーを誘発する可能性は低いと推定される(ただし暴露量の推定方法は確立していない)と報告している。

○今後必要な情報

 なお、専門家会議から勧告のあった、Cry9Cタンパク質のアレルギー誘発性の検討に係る今後必要な情報は次のとおりである。

・Cry9Cタンパク質に特異的な抗原・抗体反応試験
・加工食品中のCry9cタンパク質の定量法の確立
・食品に入った場合の暴露量の推定法の確立
・FDAが報告した患者の詳細なデータ(IgE抗体価、チャレンジテスト等)


照会先:厚生省生活衛生局
    松原 食品保健課長
担 当:今村(内線2444)
    中村(内線2454)
    三木(内線2447)


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