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平成12年11月17日

墓地経営・管理指針等作成検討会報告書について

1.趣旨

 本検討会は、「これからの墓地等の在り方を考える懇談会」報告書(平成10年6月)において検討事項として指摘があった、

・ 墓地の経営、管理の方法について、利用者の期待権保護のための適切な対策を講ずること、
・ 利用者保護の観点から墓地使用契約の内容の明確化等を図るための標準契約約款の作成
等について、本年1月より具体的に検討を進めてきた。
 今般、その検討結果を取りまとめ、報告書として公表するものである。

2.概要(別紙

3.参加者

浦川道太郎 (早稲田大学法学部教授)
  塩見 戎三 (産経新聞社客員論説委員)
  藤井 正雄 (大正大学文学部教授)
  本江 樹 (弁護士)
  井出 三郎 (社団法人全日本墓園協会理事長)
  松浦いづみ (前東京都建設局公園緑地部霊園課長)
 (第1回〜第3回)
  大坂 隆 (前東京都衛生局生活環境部環境指導課長)
 (第4回〜第7回)
  中谷 肇一 (東京都衛生局生活環境部環境指導課長)
 (第8回〜第10回)
  田村 寿男 (前横浜市衛生局生活衛生課長)
 (第1回〜第3回)
  宮崎 保典 (横浜市衛生局生活衛生課長)
 (第4回〜第10回)

(◎は座長)


照会先 厚生省生活衛生局企画課
課長補佐 峯村(内線2413)
企画法令係長 生田(内線2417)
(代表)[現在ご利用いただけません]
(直通)03-3595-2297


墓地経営・管理指針等作成検討会報告書(概要)

墓地経営・管理の指針

1 序論

(1)本指針の趣旨

・ 墓地経営の許可を始めとした墓地の指導監督に関する事務は、都道府県等の「自治事務」であり、墓地行政において地方公共団体に期待される役割は増大。一方、実際の墓地経営においては、不適切な事例もある。
・ 墓地埋葬法は、墓地等の経営を都道府県知事等の許可によるものとし、報告徴収、許可取消し等の権限を付与。この権限には広い裁量が認められており、その適切な運用が求められている。
・ 本指針は都道府県等の行政運営のための指針(自治事務における国の技術的助言)であり、これを参考として、各都道府県等で墓地の経営・管理の向上が図られることを期待。同時に墓地の経営者にも参考とされることを期待。

(2)墓地経営を取り巻く厳しい現状

・ (1)墓地使用権の販売等により一時的に多額の金銭が集まることによる危うさ、(2)金利が低く財産の運用が困難、(3)経営の見通しが難しいなど、地方公共団体以外の者が安定的に経営するには大変厳しい状況。

(3)墓地埋葬法と墓地行政

・ 墓地経営の許可は、その後の墓地経営にとって重要。
・ 知事は正当かつ合理的な理由があれば許可しないことができる。安定した適切な運営ができるか審査し、不適切な申請については利用者保護の観点から許可しないことが重要。
・ 墓地埋葬法の目的は、墓地の管理及び埋葬等が「国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われること」。
・ 近年の火葬率の上昇にかんがみると、公衆衛生以外の部分、例えば墓地の永続性(安定的な経営・管理)の確保等の利用者の保護、需給バランスの確保、周辺の生活環境との調和等の公共の福祉との調整が重要。この調整は、諸般の事情を総合的に勘案して判断せざるを得ず、一律の基準を定めることが困難であるため、広範な行政裁量権に委ねられているもの。
・ 地方公共団体が墓地を設置経営することも重要な住民サービス。住民のニーズを十分に検討した上で、自ら設置、経営することを含めて、主体的にその要否を判断すべき。都市計画の中で墓地について配慮されることも重要。
・ 経営許可の審査時から許可後の経営管理のチェック時を通じて、自治体相互間及び同一自治体内で連携をとることが重要。

2 墓地経営の許可に関する指針

・ 墓地経営者には、利用者を尊重した高い倫理性が求められること。
・ 経営・管理を行う組織・責任体制が明確にされていること。
・ 計画段階で許可権者との協議を開始すること。
・ 墓地経営主体は市町村等の地方公共団体が原則であり、これによりがたい事情があっても宗教法人又は公益法人等に限られること。
・ いわゆる「名義貸し」が行われていないこと。
・ 墓地の設置場所について、周辺の生活環境との調和に配慮されていること。
・ 安定的な経営を行うに足りる十分な基本財産を有していること。
・ 自ら土地を所有していること。
・ 中長期的収支見込みが適切で、将来にわたって経営管理が可能な計画を立てていること。
・ 基本的に標準契約約款に沿った明確な使用契約であること。
・ 契約に際し十分利用者に契約内容が説明されるようにすること。その前提として、契約書及び重要事項の説明書が作成されていること。
3 許可後の経営管理に関する指針
・ 計画的に報告徴収を実施すること。
・ 中長期的な経営の見通しが適切であること。
・ 契約内容が明確かつ適切であること。
・ 十分な基本財産を有していること。
・ 平成11年の墓地埋葬法施行規則の改正事項が遵守されていること。
・ 墓籍簿等の帳簿の管理が適切に行われていること。
・ 管理業務を委託している場合、その方法及び範囲が適切であること。
墓地使用に関する標準契約約款

1 序論

(1)本標準契約約款の趣旨

・ 墓の購入に関し、契約書が存在しない、契約の内容が不明確などの事例もある。公共性のある事業型墓地については特に、墓地使用契約の内容について利用者保護の観点から明確化等を図ることが必要。
・ 本標準契約約款が経営者に一種の雛形として活用されることを期待。都道府県等が経営許可の際に契約内容について審査する場合の参考にもなる。
・ 墓地には公営墓地、寺院墓地、事業型墓地等があるが、ここでは、多数の一般の利用者を予定している事業型墓地における契約約款を示した。

(2)墓地使用権型と埋蔵管理委託型について

・ 本標準契約約款では、代々墓が承継されていく場合の「墓地使用権型標準契約約款」と、承継を前提とせず始めから経営者に埋蔵及び管理を依頼する場合の「埋蔵管理委託型標準契約約款」の2つの類型を示した。これは、両者で契約の性質及び態様が異なり、かつ承継を前提としない方式(「永代供養墓」)が広がってきているため。

2 標準契約約款とその解説

(1)墓地使用権型標準契約約款

・ 使用者は墓所使用権を有する(有期限又は解除されない限り継続)こと
・ 使用に当たっての条件
・ 使用者が使用料及び管理料の支払義務を負うこと
・ 墓所の清掃等は墓所の使用者が、それ以外の墓地の管理は経営者が責任を負うこと
・ 有期限契約の場合の原則更新
・ 祭祀承継者が使用者の地位を承継した場合の届出
・ 使用者及び経営者による契約解除の要件
・ 契約終了の要件及び終了後の措置
等を規定。

(2)埋蔵管理委託型標準契約約款

・ 経営者は委託者が指定する者の焼骨を埋蔵し、付属文書に定めるところに従い適切に管理[供養]を行うこと
・ 埋蔵から一定年数経過後に合葬墓又は納骨堂に移すことができること
・ 委託者が委託管理料[委託供養料]の支払義務を負うこと
・ 委託者等及び経営者による契約解除の要件
等を規定。

補 論

1 墓とは

・ 「墓」の定義は、現状では遺体又は遺骨と関連づけて行われるのが一般的。
・ 現代日本では、「墓」の意味合いとして(1)故人の祈念碑、(2)畏敬の念の表れ、(3)祖先崇拝、一族の結集の象徴、(4)自己存在の確認等が考えられる。

2 墓をめぐる現在の状況

・ 近年、核家族世帯数の増加及び少子化の進行、家意識の希薄化等の傾向が見られ、今後墓の維持承継が困難になることが予想される。
・ 農山漁村から都市への人口の流出、サラリーマン世帯の転勤等、「人のすみか」が流動的な時代にあっては、「終のすみか」とされてきたお墓の維持が困難になっている。
・ いわゆる「永代管理料」として将来にわたる管理費用を一括して徴収する方式は、運用が難しく、不測の事態の対応が難しいこと等から限界があると考えられる。

3 墓地行政の基本原則

・ 現在の墓地行政における「永続性の確保」という原則は妥当であり、当面これを基本原則とすべきであるが、家意識は後退し、個人の価値観が多様化しており、利用者のニーズに応じた墓地の提供がなされることが重要。墓地の経営管理や契約についても、この点を踏まえた対応が求められていることを十分に認識すべき。


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