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平成12年11月15日

インフルエンザの臨床経過中に発症した脳炎・脳症の重症化と解熱剤(ジクロフェナクナトリウム)の使用について

1.これまでの経緯

(1)重篤な疾病であるインフルエンザ脳炎・脳症については、平成11年度より、「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班」(班長:森島恒雄名古屋大学医学部教授)において、その発症機序等の解明のための研究(厚生科学研究)が行われている。

(2)11年度の同研究では、インフルエンザ脳炎・脳症例181例についての解析が行われたが、特に52例の死亡例のうち、ジクロフェナクナトリウム又はメフェナム酸の使用群と未使用群とを比較した結果、使用群について、わずかながら有意に死亡率が高いと報告された。

(参考)

1.我が国のインフルエンザの学童における罹患数は、年間50万〜100万人とされ、このうち、脳炎・脳症となる症例(インフルエンザ脳炎・脳症)は100〜300人、その死亡率は30%前後とされている。

2.ジクロフェナクナトリウム製剤は、慢性関節リウマチ、腰痛症等の鎮痛・消炎剤、解熱剤の効能効果を有しており、小児に適用を持つ解熱剤として承認されている効能効果は次のとおり。

ア.他の解熱剤では効果が期待できない場合の急性上気道炎の緊急解熱
イ.他の解熱剤の投与が不可能な場合の急性上気道炎の緊急解熱


2.今年度の調査結果

 12年度の調査では、91例のインフルエンザ脳炎・脳症発症例について検討が行われ、ジクロフェナクナトリウム使用群と他の解熱剤使用群とを比較した結果、使用群について昨年より高い有意性をもって、死亡率が高い(他の解熱剤使用群38例中5例に対しジクロフェナクナトリウム使用群12例中7例)ことが示された。
 また、今年度の調査では、頭部断層撮影(CTスキャン)や剖検による病理学的 検査が行われ、脳血管に損傷が生じていることが特徴的に見出された。なお、これ らの症例での解熱剤の使用状況については調査中である。

3.今回の対応

(1) 厚生省においては、明確な因果関係は認められないものの、次の理由から、インフルエンザ脳炎・脳症患者に対するジクロフェナクナトリウムの投与を禁忌とすることとし、本日、ジクロフェナクナトリウムを含有する解熱剤を製造、販売する関係企業(別紙のとおり)に対し、使用上の注意の改訂、「緊急安全性情報」の作成及び医療機関等への配布を指示した。

ア.ジクロフェナクナトリウム使用群については、昨年度に引き続き今年度も有意に死亡率が高いことが示されたこと、

イ.ジクロフェナクナトリウムは血管内皮の修復に関与する酵素を抑制する作用が強いことが海外の臨床的研究において報告されている。一方、今年度の調査で報告された脳炎・脳症に特徴的な脳血管の損傷が見出されたことを考え併せると、その修復を遅らせるおそれがあること

(2) また、インフルエンザ脳炎・脳症の重症化と解熱剤との因果関係等について、更なる調査研究を実施する予定である。


(照会先)
医薬安全局安全対策課
工藤、郡山
TEL([現在ご利用いただけません]
内線2757,2752


別紙

内服剤
 (25mg)
ボルタレン錠(日本チバガイギー)
アデフロニック錠(大洋薬品)
イリナトロン錠(辰巳化学)
サフラック錠(日本新薬)
サンナックス錠(三恵薬品)
ジクロフェナクナトリウム錠「ホクエイ」(大原)
シーコレン錠(日医工)
ソファリン錠(日本ケミファ)
ソレルモン錠(東和薬品)
ダイスパス錠(ダイト)
チカタレン錠(イセイ)
ドセル錠(日本化薬)
ニフレリール錠(模範)
ネリオジン錠(帝国化学)
バレタン錠(東菱)
フェナドシン錠(竹島製薬)
ブレシン錠(沢井製薬)
ボナフェック錠(日新山形)
ボラボミン錠(鶴原)
ボルマゲン錠(大正薬品)
ヨウフェナック錠(陽進堂)
ワンフェロン錠(東邦新薬)
プロフェナチンカプセル(菱山)

坐剤
 (12.5mg,25mg,50mg)  
ボルタレンサポ(日本チバガイギー)
アデフロニックズポ(大洋薬品)
アナバン坐剤(富士化学)
ジクロフェノン坐剤(オリエンタル)
ネリオジン坐剤(帝国化学産業)
ピナナック坐剤(東光薬品工業)
フェナシドン坐剤(竹島)
フェニタレン坐剤(長生堂製薬)
ベギータ坐剤(シオノケミカル)
ボナフェック坐剤(日新山形)
ボラボミン坐剤(鶴原)
ボルマゲン坐剤(大正薬品工業)
ボンフェナック坐剤(京都薬品工業)
メクロフェン坐剤(日本ガレン)
メリカット坐剤(太田製薬)
アスピゾンズポ(協和薬品)
ジフェナック坐剤(小林化工)
ジクロニックズポ(大興製薬)


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