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平成12年9月20日

第2回雪印食中毒事件に係る厚生省・大阪市原因究明
合同専門家会議の結果について


 本日、13時から、大阪市において標記専門家会議が開催され、雪印乳業食中毒事件の原因究明調査結果(中間報告)の概要が別添のとおり取りまとめられましたのでお知らせします。



雪印乳業食中毒事件の原因究明調査結果について
(中間報告概要)

平 成 1 2 年 9 月 2 0日
厚生省・大阪市原因究明合同専門家会議

1 経緯

 本年6月末に発生した雪印乳業(株)大阪工場(以下「大阪工場」)製造の低脂肪乳等を原因とする食中毒事件の有症者数は、9月8日現在、14,849名に達し、近年例をみない大規模食中毒事件となった。7月2日、低脂肪乳から黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンA型が検出されたことから、大阪市は、これを病因物質とする食中毒と断定して、大阪工場を営業禁止とした。
 また、8月18日に低脂肪乳等の原料に使用されたと思われる大樹工場製造の脱脂粉乳からエンテロトキシンA型の検出が確認され、23日、北海道は当該脱脂粉乳の製造に関連した停電の発生、生菌数に係る基準に違反する脱脂粉乳の使用等について公表した。
2 発症状況及び喫食状況調査結果
 大阪市在住有症者は3,511名、うち3,488名の喫食した主な製品は、「低脂肪乳」2,763名(78.7%)、「毎日骨太」639名(18.2%)であり、品質保持期限が6月28日以降の低脂肪乳を喫食した、黄色ブドウ球菌による食中毒症状を示したと考えられる1,402名の品質保持期限別喫食状況をみると、6月30日が666名(47.5%)、7月2日が444名(31.7%)であった。
3 検査結果
 製品の検査では、品質保持期限が6月28日から7月4日までの間の低脂肪乳からエンテロトキシンA型が検出され、このうち6月30日分及び7月2日分は陽性率が高く、0.4ng/ml以上検出したのも両日が品質保持期限のもののみであった。
 発酵乳では、品質保持期限が7月13日及び14日の「のむヨーグルト毎日骨太」及び品質保持期限が7月12日、13日、14日の「のむヨーグルトナチュレ」からエンテロトキシンA型が検出された。
 原材料については、エンテロトキシンA型が発酵乳の回収タンクについては、T7(のむヨーグルト毎日骨太専用、6月28日製造分)及びT8(のむヨーグルトナチュレ専用、6月29日製造分)の内容液から、サージタンクについては、T35(品質保持期限7月14日のむヨーグルトナチュレ)、T40(充填せず)及びT42(品質保持期限7月14日のむヨーグルト毎日骨太)の内溶液から検出された。
4 施設調査結果
 エンテロトキシンA型が検出された製品の共通の原材料は脱脂粉乳であるが、原材料使用記録に不備が多く、どのロットがどの日に使用されたかは正確に把握することはできなかったものの、以下の事項が確認された。
 発酵乳については、6月28日サージアップ分までの製造工程において、エンテロトキシンA型を検出した製品は大樹工場製脱脂粉乳011007 ACQを使用した還元乳タンク由来の脱脂粉乳溶解液を使用していることが確認され、6月28日及び29日サージアップ分のエンテロトキシンA型を検出した製品は、脱脂粉乳のロットが不明である別の還元乳タンクが共通となっていた。
 また、「低脂肪乳」については、エンテロトキシンA型を検出した脱脂粉乳のうち、品質保持期限7月2日については、大樹工場製脱脂粉乳011007 ACQが使用されていたことが確認された。
 発酵乳、低脂肪乳いずれの場合もエンテロトキシンA型が検出された製品で共通原料としての脱脂粉乳のロットが記録では確認できないものもあったが、当該ロットが不定期に使用されることは推定することが可能と考えられた。
 手洗浄の工程において、逆止弁については6月の「清掃洗浄点検計画表」では、実施頻度が週1回であるにもかかわらず最長で21日間洗浄されていなかった逆止弁もあった。また、仮設ホースについてはローリー受入ホースの一部の洗浄記録以外に洗浄記録は確認できなかった。移動式脱脂粉乳溶解機については作業手順書に洗浄方法が規定されているが、洗浄記録はなく、大阪工場の従業員からの聞き取りでは、実際に適正な洗浄がなされていたかは確認できなかった。屋外での調合作業は、ストレージタンクにおけるミックスの最終成分調整のために行われ、成分濃度が高い場合には冷却水を、低い場合には移動式脱脂粉乳溶解機(80L)を使用して脱脂粉乳溶解液をストレージタンクに投入していた。
5 関連事例の調査結果
 雪印乳業(株)の神戸工場及び福岡工場においても、大樹工場で製造された黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンA型に汚染されたと考えられる脱脂粉乳が使用されていたが、福岡工場においては苦情はなく、神戸工場の製品に係る苦情は398件であった。神戸工場については、有症者の発生状況、エンテロトキシンの推定濃度、製品の検査結果等から当該脱脂粉乳を使用したことによる食中毒とは判断することは困難であったことが報告された。
6 まとめ
(1) 本食中毒事件の主たる病因物質は、多くの有症者の潜伏期間が短く、嘔吐又は嘔気、下痢を主徴としていること、多くの有症者が喫食した低脂肪乳から黄色ブドウ球菌の産生するエンテロトキシンA型が検出されていることから同毒素と判断される。
(2) 主たる原因食品については、雪印乳業(株)大阪工場で製造された「低脂肪乳」に加えて、エンテロトキシンA型が検出された「のむヨーグルト毎日骨太」、「のむヨーグルトナチュレ」も疑われる。
(3) 雪印乳業(株)大阪工場の調査の結果、同社大樹工場で製造されたエンテロトキシンA型に汚染された脱脂粉乳が「低脂肪乳」、「のむヨーグルト毎日骨太」及び「のむヨーグルトナチュレ」に使用されたことが確認又は推定されたことから、本脱脂粉乳が本食中毒の主たる原因であったと判断される。
(4) 本脱脂粉乳の使用が確認できない「低脂肪乳」、「のむヨーグルト毎日骨太」、「のむヨーグルトナチュレ」、「毎日骨太」、「カルパワー」、「特濃」、「コーヒー」、「フルーツ」を摂取した有症者も報告されているが、その原因となりうる病因物質は確認できなかった。
(5) 本食中毒調査の過程において明らかとなった大阪工場におけるずさんな衛生管理も要因として否定できない。
(6) 今後は本食中毒の主たる原因となった大樹工場での脱脂粉乳のエンテロトキシンA型による汚染メカニズムの解明が再発防止の観点から必要である。


照会先:厚生省生活衛生局
    高谷乳肉衛生課長
担当者:滝本(内線2473)

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