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平成12年8月10日

厚生科学研究「画期的な医薬品等の開発促進のための基盤技術開発研究等の在り方に関する研究」の中間報告の公表について


 平成7年に厚生科学研究推進の一環として厚生省が提唱した「厚生科学基盤技術開発研究所(仮称)」の在り方などについて検討を行ってきた検討班の成果が、中間報告として取りまとめられ、平成12年8月10日、公表された。その概要は次のとおりである。

検討班 岸本 忠三 大阪大学総長を主任研究者として検討班を設置(厚生科学研究費補助金、検討班の構成については別添1

検討の経緯 平成12年2月 検討班の設置
平成12年8月 中間報告の公表

中間報告の内容  中間報告の概要は別添2のとおり。中間報告の全文は国立医薬品食品衛生研究所のホームページ(http://www.nihs.go.jp)に掲載され、本年9月末まで、一般からの意見を募集。

今後の予定 本検討班は、一般からの意見も参考に、今年度末を目途に、より具体的な構想を検討し、最終的な報告を取りまとめる予定。

 なお、厚生省としては、検討班の検討成果を踏まえ、「メディカル・フロンティア戦略」の一つとして、「厚生科学基盤技術開発研究所(仮称)」の具体化につき、検討を進める方針。


「画期的な医薬品等の開発促進のための基盤技術開発研究等のあり方に関する研究」検討班(名簿)

氏 名 所 属・役 職 備 考
岸本 忠三 大阪大学総長 座長
内山 充 (財)日本薬剤師研修センター理事長 副座長
市川 厚 京都大学大学院薬学研究科教授
岡田 善雄 (財)千里ライフサイエンス振興財団理事長
菊池 晴彦 国立循環器病センター総長
小林 秀資 国立公衆衛生院院長
塩野 元三 大阪医薬品協会会長
(塩野義製薬(株)代表取締役社長)

首藤 紘一 国立医薬品食品衛生研究所所長
高杉 豊 大阪府健康福祉部長
竹田 美文 国立感染症研究所所長
田中 登志於 田辺製薬(株)代表取締役社長
寺尾 允男 国立医薬品食品衛生研究所名誉所長
西塚 泰美 神戸大学学長
畑中 正一 塩野義製薬(株)代表取締役副社長 平成12年6
月5日まで
馬場 明道 大阪大学大学院薬学研究科教授
藤野 政彦 武田薬品工業(株)代表取締役会長
藤山 朗 藤沢薬品工業(株)代表取締役会長
堀 正二 大阪大学大学院医学系研究科教授
本庶 佑 京都大学大学院医学研究科長
矢崎 義雄 国立国際医療センター総長
(アイウエオ順)


「画期的な医薬品等の開発促進のための基盤技術開発研究等の在り方に 関する研究」(主任研究者:岸本忠三大阪大学総長)中間報告(概要)

I.はじめに

○ ゲノム科学、たんぱく質科学等の驚異的発展が見られ、病態に的確に対応する画期的な医薬品等が開発される学問的な基礎が整いつつあること。厚生科学審議会においても、画期的な医薬品開発の必要性が指摘されたこと(11年5月)。
○ 平成7年に国立衛生試験所(当時、現在の国立医薬品食品衛生試験所)の大阪支所を発展的に改組し、画期的な医薬品等の開発のための基盤技術の開発研究等の充実を目的とする「厚生科学基盤技術開発研究所(仮称)」の設立が厚生省によって提唱されたこと。本検討班の目的は、現時点における同研究所の必要性を再検討し、それを踏まえた具体的な構想を提示すること。
○ 本検討班は、今回の中間報告に対する関係者の意見も広く参考にしながら、本年度末を目途に、より具体的な構想を検討する予定であること。

II.現状と課題

○ 働き盛りの世代を襲うがんや心臓病、要介護の原因となる脳卒中、痴呆や骨折への対応は緊急の課題であり、ゲノム科学、たんぱく質科学等を応用した画期的な医薬品等の開発が期待されること。
○ 基礎研究の成果を画期的な医薬品等の開発研究に結びつけるための橋渡しとなる基盤的な技術開発のための研究(トランスレーショナル・リサーチ)が特に重要であること。医薬品等の開発研究の効率化のため、信頼できる研究資源(細胞、生理活性物質等)が適時に供給されることも必要であること。

III.基本的な考え方

○ 医薬品、医療用具の開発を促進し、医療への速やかな提供を実現するため、関連する基礎研究の成果を医薬品等の開発に橋渡しするための基盤的な技術開発や研究資源の適切な提供を目的とする中核的な研究所の整備は、緊急に具体化すべき課題であること。
○ 研究の内容については、保健医療上の必要性を基本に、学問の進歩や産業界のニーズを的確に反映した、集中的、効率的な研究を実施すべきこと。今後10年から20年程度はゲノム科学、たんぱく質科学、生物工学、情報科学を利用した医薬品等開発のための基盤技術の研究、中でも細胞情報伝達(セル・シグナリング)に着目した技術開発に注力することが適当であること。
○ 研究の組織については、学問の進歩などに対応するため、プロジェクトチーム制や研究者の任期制を採用するなど柔軟な組織を採用すべきこと。
○ 研究の運営については、産官共同研究の積極的な導入など産官の連携を図るとともに、国立高度専門医療センター等との密接な連携を図ること。
○ 研究成果の評価については、厳格な外部評価を実施すべきこと。このため、産官学で構成される外部評価委員会を設置すべきこと。

IV.具体的提案

○ 細胞情報伝達に着目した技術開発に集中すべきこと。例えば情報伝達に関与する生体分子の高次構造や相互作用などを解析する技術やその作用を阻害あるいは促進する化合物を設計する技術(分子設計)などであるが、具体的には、今後、詳細に検討すること。
○ 産業界のニーズを反映した世界的レベルの研究の実施や速やかな技術移転を図るため、学界、経済界、産業界等からなる助言委員会の設置、いわゆる「寄付講座」の設置や積極的な研修生の受け入れなどを図るべきこと。
○ 研究所の性格としては、産業界への研究成果等の速やかな移転や研究資源の適切な供給の観点から、独立行政法人とすることが適当であること。また、公平性などの観点から、国家公務員の身分を与えることが適当であること。
○ 基盤研究部門、研究資源部門のほか研究所内外の研究内容の企画調整、産業界・経済界との連携を図るための企画調整部門を設置すべきこと。
○ 研究所としては、動物施設等の管理を外部委託するとしても、最低限50名程度の職員とほぼ同数の研修生や研究支援者が必要であること。建物の規模としては13,000m2程度が適当であること。

V.おわりに

○ 大阪大学、国立循環器病センターなど北大阪の集積立地を活かし、ライフサイエンスの新たな研究拠点などの形成を図るため、彩都(国際文化公園都市)建設事業が進められていることなどから、彩都ライフサイエンスパーク構想の中に、本研究所を創設することが適当であること。


照会先
厚生省大臣官房厚生科学課
担当 中垣(3803)野口(3804)
代表番号 [現在ご利用いただけません]
直通番号 03−3595−2171


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