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児童相談所における児童虐待相談の処理状況報告

問い合わせ先
厚生省児童家庭局企画課
 03−3595−2491(直通)
 内線3114

○ 平成10年度厚生省報告例において把握した、児童相談所における児童虐待相談処理件数の内容について調査

○ 今回の調査は、新たに、

(1)経路別相談のうち

(1) 虐待者本人からの相談件数
(2) 保育所・幼稚園からの相談件数
(2)立入調査
(1) 立入調査の件数
(2) 立入調査に至った事例の通告経路
(3) 当該児童の処遇状況
(3)死亡事例
(1) 児童相談所が関与した死亡事例の全事例報告
(2) 児童相談所が非関与で関係機関や報道により把握した死亡事例数について把握
○ 厚生省報告例の数字と併せて報告


1 虐待に関する相談処理件数の推移(厚生省報告例)

平成2年度 平成3年度 平成4年度 平成5年度 平成6年度 平成7年度 平成8年度 平成9年度 平成10年度
〈100〉
1,101
〈106〉
1,171
〈125〉
1,372
〈146〉
1,611
〈178〉
1,961
〈247〉
2,722
〈373〉
4,102
〈486〉
5,352
〈630〉
6,932
(注)上段〈 〉内は、平成2年度を100とした指数(伸び率)である。

2 虐待の経路別相談件数(厚生省報告例)

  総 数 家 族 親 戚 近 隣
知 人
児 童
本 人
福祉事
務 所
児 童
委 員
保健所 医 療
機 関
児童福
祉施設
警察等 学校等 その他
9年 (100%)
5,352
(29%)
1,557
( 3%)
186
( 8%)
437
( 2%)
103
(15%)
783
( 3%)
140
( 3%)
183
( 5%)
250
( 5%)
284
( 6%)
311
( 13%)
687
( 8%)
431
10年 (100%)
6,932
(27%)
1,861
( 3%)
224
( 9%)
616
( 2%)
159
(14%)
939
( 2%)
142
( 4%)
292
( 6%)
395
( 5%)
324
( 6%)
415
( 13%)
895
( 9%)
670
(その他:救急関係など)

【今回調査】

(1) 相談経路において、「家族」のうち「虐待を行っている」保護者等本人からの相談件数について調査した結果、虐待実母本人からの相談が86.6%と大部分を占め、本人以外では、虐待者が母親のとき、父親からの相談が低い状況となっている。

  家 族
本 人 本 人 以 外
父 親 母 親 そ の 他 父 親 母 親 そ の 他
内訳件数 98
〈11.3%〉
754
〈86.6%〉
18
〈2.1%〉
196
〈19.8%〉
595
〈60.0%〉
200
〈20.2%〉
(13%)
870
〈100%〉
(14%)
991
〈100%〉
(上段( )は、虐待相談処理件数6,932に対する割合、下段〈 〉は、計を100とした割合)
(その他は、養父母、継父母など)

(2) また、幼児が日中過ごす「保育所」、「幼稚園」からの相談件数について調査した結果は、下記の通り。

  児 童 福 祉 施 設 学 校 等
保 育 所 そ の 他 幼 稚 園 そ の 他
内訳件数 (2.7%)
185
〈57.1%〉
139
〈42.9%〉
(0.4%)
31
〈3.5%〉
864
〈96.5%〉
(5%)
324
〈100%〉
(13%)
895
〈100%〉
(上段( )は、虐待相談処理件数6,932に対する割合、下段〈 〉は、計を100とした割合)

3 虐待の内容別相談件数(厚生省報告例)

  総数 身体的暴行 保護の怠慢
ないし拒否
性的暴行 心理的虐待 登校禁止
平成9年度 (100%)
5,352
(51.9%)
2,780
(32.3%)
1,728
(5.8%)
311
(8.6%)
458
(1.4%)
75
平成10年度 (100%)
6,932
(53.0%)
3,673
(30.4%)
2,109
(5.7%)
396
(9.4%)
650
(1.5%)
104

4 主たる虐待者(厚生省報告例)

  総数 その他
実 父 実父以外 実母 実母以外
平成9年度 (100%)
5,352
(27.0%)
1,445
(9.1%)
488
(55.0%)
2,943
(3.8%)
203
(5.1%)
273
平成10年度 (100%)
6,932
(27.6%)
1,910
(8.2%)
570
(55.1%)
3,821
(2.8%)
195
(6.3%)
436
(その他は、祖父母、兄弟姉妹、叔父叔母など)

5 被虐待児童の年齢構成(厚生省報告例)

  総数 0〜3未満 3〜学齢前児童 小学生 中学生 高校生・その他
平成9年度 (100%)
5,352
(19.3%)
1,034
(25.6%)
1,371
(35.9%)
1,923
(13.9%)
741
(5.3%)
283
平成10年度 (100%)
6,932
(17.8%)
1,235
(26.9%)
1,867
(36.6%)
2,537
(13.4%)
930
(5.2%)
363

6 虐待相談の処理種類別内訳(厚生省報告例)

年 度 総 数 施設入所 里親等委託 面接指導 その他
平成9年度 (100%)
5,352
(21.8%)
1,166
(0.6%)
32
(67.7%)
3,622
(9.9%)
532
平成10年度 (100%)
6,932
(20.1%)
1,391
(0.5%)
35
(69.6%)
4,826
(9.8%)
680
(その他は、児童委員指導、福祉事務所送致、訓戒・誓約など)

【今回調査】

○ 相談処理の結果を前年と比較すると、施設入所が必要となった児童は、相談総数に占める割合は減少したものの、実数で225名の増加となっている。また、複雑困難な家庭環境に起因する問題を有する児童等、処遇に専門的な知識、技術を要する事例に対し児童福祉司等が継続して指導する児童福祉司指導の増加(対前年度 68%増)からも問題の深刻化が伺える。

種 類 平成9年度 平成10年度
件 数 件 数
施 設 入 所 措 置 1,166
〈100%〉
21.8 1,391
〈100%〉
20.1
  児童養護施設 925
〈79.4%〉
17.3 1,100
〈79.0%〉
15.9
乳 児 院 160
〈13.7%〉
3.0 192
〈13.8%〉
2.8
児童自立支援施設 21
〈 1.8%〉
0.4 23
〈 1.7%〉
0.4
情緒障害児短期治療施設 28
〈 2.4%〉
0.5 37
〈 2.7%〉
0.5
その他の施設 32
〈 2.7%〉
0.6 39
〈 2.8%〉
0.5
里 親 等 委 託 32 0.6 35 0.5
面 接 指 導 3,622 67.7 4,826 69.6
  助 言 指 導 *1 1,854 34.7 2,593 37.4
継 続 指 導 *2 1,382 25.8 1,675 24.2
他 機 関 斡 旋 *3 114 2.1 100 1.4
児童福祉司指導 *4 272 5.1 458 6.6
そ の 他 532 9.9 680 9.8
  5,352 100 6,932 100

(注)
*1 助言指導とは、1回の助言、指示、説得、承認、情報提供等の適切な方法により、問題が解決すると考えられる児童、保護者に対する指導をいう。主に電話相談。

*2 継続指導とは、複雑困難な問題を抱える児童、保護者等に対し継続的にソーシャルワーク、カウンセリング等をいう。

*3 他の専門機関(病院、保健所等)において、医療、指導、訓練等を受けることが適当であると認める場合に、機関を斡旋することをいう。

*4 児童福祉司指導は、複雑困難な家庭環境に起因する問題を有する児童等、処遇に専門的な知識、技術を要する事例に対し、継続的に行う指導をいう。

7 立入調査【今回調査】

○ 法第29条に規定する立入調査は、虐待等の事実の蓋然性、児童の保護の緊急性、保護者の協力の程度などを総合的に勘案して、法第28条(注)に定める承認の申し立ての必要性を判断するために、児童の住所、居所等に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができることとしている。通常は、ねばり強く親を説得のうえ調査への協力を得ているが、今回報告された事例は、児童相談所の説得にもかかわらず調査に応じなっかたため、立入調査したものが13件あり、そのうち、特に緊急を要するため警察官同行のもとに立入調査のうえ児童を保護したもの2件となっている。

年 度 件 数
平成10年度 13件(20名)
(平成9年度報告した16件は、件数人員の区分がないため比較ができない。)

○立入調査に至る事例の通告経路

経路 件数
近隣知人
福祉事務所
児童委員
医療機関
警察等
学校等
13

○立入調査を行った児童の処遇

種 類 人数
施設入所措置 16
保育所入所により解決
親族引き取り(虐待者以外)
関係機関の連携によりフォロー
20

(注)
 児童福祉法第28条は、保護者が、その児童を虐待し、著しくその監護を怠る等その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において、施設入所の措置を採ることが児童の親権を行う者又は後見人の意に反するときは、家庭裁判所の承認を得て、施設入所措置をとることができる旨を規定。

8 一時保護【今回調査】

○ 法第33条に規定する一時保護は、法第27条の(注)の措置をとるに至るまで、児童を一時保護所に一時保護し、又は児童福祉施設、警察等に一時保護を委託することができるものであり、虐待、放任等の理由により家庭から一時引き離す必要がある場合等に行われる。
 406件の増加は、虐待のため家庭から一時的に引き離す事例の増加を示すものであり、虐待の深刻化を示すものである。

事 項 平成9年度 平成10年度
件数 件数
一時保護所 1,386 1,645
一時保護委託 261 100 408 100
  児童養護施設 176 67.5 272 66.7
乳児院 37 14.2 53 13.0
児童自立支援施設 5 1.9 7 1.7
情緒障害児短期治療施設 0 0 6 1.5
障害児関係施設 2 0.8 6 1.5
その他社会福祉施設 4 1.5 0 0
警察署 9 3.4 12 2.9
その他 23 8.8 52 12.7
不 明 5 1.9 0 0
1,647 2,053

(注)
 児童福祉法第27条では、都道府県は、通告を受けたケース等について必要があると認める場合は、児童又はその保護者に、訓戒・誓約、児童福祉司等の指導、里親委託、又は児童養護施設等の児童福祉施設に入所させる等の措置をとらなければならない旨を規定。

9 死亡事例【今回調査】

(1)児童相談所が、関与しているか、または、関与していた事例

年 度 件 数
平成 9年度 15件 (15人死亡)
平成10年度 8件 ( 8人死亡)

○ 今回報告を受けた事例では、不適切な養育状況にあり育児方法の指導中に起きた事件、あるいは施設入所要件の解消等により指導終結後に起きた事件、また、通報に基づく初期対応中の事件が示されている。

関与状況 件数
初期対応、情報収集中
指 導 中
指導終結後

(2)死亡事件の概要

(●虐待者)
事例1 群馬県(初期対応中の事件)
○相談の経路
 母方伯母から子ども家庭110番に電話相談有り。
○虐待の状況
 3歳の女児が母の内夫に顔などを平手で殴打され、更に頭突きを受ける等の身体的虐待により頭部打撲による硬膜下血腫と脳挫傷で収容された病院で死亡したもの。
○ 家族構成
 母親、●内夫、姉、本児(3歳)
○児童相談所の対応状況
 母方伯母から電話相談が入り、担当児童福祉司が、即日、伯母宅を訪問する。
 伯母の話から児童の家庭を訪問しても、不在とのことであったのでとりあえず伯母に今後の連絡依頼するとともに、警察、児童委員、市役所等子ども虐待防止ネットワークを組んでいる関係機関にも連絡。しかし、同日夜、内夫の暴力が原因で緊急入院となり1週間後に死亡。

事例2 埼玉県(指導中の事件)
○相談の経路
 市福祉事務所(家庭児童相談室)の紹介で母親(虐待者本人)から相談。
○虐待の状況
 本児をかわいいと思えない。暴力(たたく、つねる)を振るってしまうという訴え。
○家族構成
 実父、●実母、兄、姉、本児(2歳)
○児童相談所の対応状況
 児童相談所に2回来所し、施設入所等指導を受ける。2回目は、母方祖母、母の姉も来所。祖母は、協力的で母と交流もあった。
 3回目の来所予定日に来所せず。祖母を通じて児童が亡くなっていたことがわかる。

事例3 愛知県(一般ケースとしての対応で終結後の事件)
○相談の経路
 両親
○虐待の状況
 午前6時頃、長女(2歳)を寝かせようとした父親は、本児が泣きじゃくったことに腹を立て、頭部を強くつかんで布団に押し倒して、硬膜下出血などで13日後死亡。
○家族構成
●実父、実母、本児(2歳)
○児童相談所の対応状況
・両親及び本児来所。父親は現在無職で、母親は夜のスナック勤めをしている。父親は自宅から通勤出来る適当な仕事がないので、出稼ぎする考えで、このため、本児をしばらく施設に預かって欲しい旨の申し出があった。児童相談所で入所施設を当たる等調査して、後程、連絡する旨伝えた。
・翌日、母親から「さびしいので、本児と離れたくない。」「施設入所を取りやめたい」旨の申し出があった。
・父親に対し「困ったときは、すぐ対応するので連絡して欲しい旨」電話で伝えた。

事例4 大阪府(指導中、他の兄弟への事件)
○相談の経路
 双生児の弟(3か月)が硬膜下血腫で入院し、虐待の疑いで、保健所から通報を受けた。
○虐待の状況
 双生児の養育が若年の母には負担が大きく、子どもの扱いが乱暴であった。
○家族構成
●実母、本児(3か月)、弟、祖父母、叔父、叔母、従兄弟
 17歳の母、夫婦関係は安定せず、父と別居し、母方実家に帰り、双生児を育てていた。母方祖父母及び母の兄夫婦と子どもと母子3人で生活。祖父母就労しており、同居の親族の育児の援助はあまり期待できなかった。
○児童相談所の対応状況
 双生児の弟については、弟が入院していた病院を訪問し、乳児院入所を説得したが、同意がえられなかった。
 それで、保育所入所をさせる方向で指導し、入所申請もしていたが、その間に双生児の兄が硬膜下血腫により死亡した。

事例5 香川県(指導中の事件)
○相談の経路
保健所(保健婦)
○虐待の状況
頸部圧迫による遷延性窒息死(司法解剖結果)、それ以前にも乳児健診や保健婦の家庭訪問時に原因不明の顔のアザ等が確認された。
○家族構成
●実父、実母、本児(通告受理時点7か月、死亡時点9か月)
○児童相談所の対応状況
 保健所からの通告受理後、保健所保健婦、町保健婦、実夫の主治医及び小児科医等と関係者ケース会議をその都度開催し、関係者間で処遇方針を検討確認しながら援助を行ってきた。
 母親と関係機関職員との信頼関係を軸に、本児の安全確保、父を含む家族関係の調整等を目差した。父の失職により、在宅が長時間化したため、家庭訪問を予定していたが、父による突発的な事故が起きてしまった。

事例6 香川県(養護問題が解消し施設退所による終結後の事件)
○相談の経路
 県福祉事務所(生活保護担当)
○虐待の状況
 母親は、本児を叱る際に感情的になり、殴ったり、突き飛ばしたりしており、事件当日も言うことを聞かないので、叩いたり、突き飛ばしたりして事件が発生。
 後頭頭頂部打撲傷に起因する左急性硬膜下出血による脳圧迫死
○家族構成
●実母、本児(3歳11月)、妹、母方祖父も事実上同居。
○児童相談所の対応状況
 母親が、本児を置き去り行方不明となり、祖父からの相談により施設入所をしていたが、母親が戻ったことにより、祖父も協力しながら養育可能となったため家庭に引き取られる。

事例7 大阪市(指導中の事件)
○相談の経路
 軽度の知的障害を持つ母は、本児出産後、病院からの指導もあり、本児の乳児院入所を求めてきた。入所後は、本児及び措置中の実兄に対する愛着から許可外泊を中心に養育援助を実施。
○虐待の状況
 本児の外泊中、将来は家庭引き取りをと父親から強く求められ、養育に熱中していたが、本児の状況を推察できず対応も不十分で、ぐずる本児のあやし方も上に放り投げてなだめる等の方法をとり頭から落下したもの。
○家族構成
●実母、実父、本児(1歳3か月)
○児童相談所の対応状況
 夫婦関係の調整、家庭引き取りを強く求める母の相談面接、生活保護ワーカー、乳児院職員とのケース協議を通じて、早期引き取りの拒否、保育所入所事務担当者への情報提供を行った。

事例8 大阪市(初期対応、情報収集中の事件)
○相談の経路
保育園の他の保護者から通報
○虐待の状況
タバコによる火傷跡、顔面の打撲傷が、2か月前からみられた。死因は、急性腹膜炎(胃破裂)
○家族構成
●実父、実母、本児(3歳女児)、弟
(同区内に母方祖父母居住、つきあい有)
○児童相談所の対応状況
 保育所の他の保護者から通告受理。同日、保育所に電話で、本児の状況を聞き取り。4日後、保育所長と面接、さらに6日後、保健所と今後の指導方針について協議、周辺情報の収集を行っていた。
 翌月本児死亡。

(3)児童相談所が、関係機関や報道等により把握した児童の虐待死亡事件

平成10年度 件 数 死亡数
身体的虐待    
  日常的虐待 ( 7.1%)
( 6.1%)
突発的殴打等
(心中を含む)
(53.6%)
15
(54.6%)
18
食事不与・溺死等 (21.4%)
(24.2%)
揺さぶり症候群の疑い
(注)
(3.6%)
( 3%)
保護の怠慢ないし拒否    
  置き去り、車内放置 (14.3%)
(12.1 %)
(100%)
28
(100%)
33

(注)乳児揺さぶり症候群
 むちうち症が起こるようなやり方で、乳児を両手で掴んでゆさぶることによって頭蓋内損傷が発生し、脳損傷により死亡する場合が ある。


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