戻る

医薬品等安全性情報
Pharmaceuticals and Medical Devices
Safety Information No.156

目次

塩酸チクロピジンによる血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)について

プロポフォールの高齢者への投与等について

クエン酸シルデナフィルの症例報告について

医療用具における「コンピュータの西暦2000年問題」への対応について(その3)

使用上の注意の改訂について(その115)

 この医薬品等安全性情報は,従来の医薬品副作用情報を改めたもので,厚生省において収集された副作用情報をもとに,医薬品等のより安全な使用に役立てていただくために,医療関係者に対して情報提供されるものです。

平成11年(1999年)8月

厚生省医薬安全局

 

【情報の概要】
No.1
医薬品等 塩酸チクロピジン
対策 緊急安全性情報の配布 使用上の注意の改訂 症例の紹介
情報の概要

塩酸チクロピジン投与に伴う血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)については,海外文献を基に平成7年6月に「海外での重大な副作用」として注意喚起を行ったが,その後,国内においても同様の症例が報告されたため,平成8年9月に「重大な副作用」の項に記載を行った。しかし,本年3月までの半年間で報告数が増加し,発売以来22例(うち死亡例が6例)が報告されたため,本年6月に「警告」の項を設け,併せて「緊急安全性情報」の配布を指示し,医療現場への情報提供の徹底を図ったので紹介する。

No.2
医薬品等 プロポフォール
対策 使用上の注意の改訂 症例の紹介
情報の概要

プロポフォールは平成7年9月に「全身麻酔の導入及び維持」の効能・効果で承認された全身麻酔剤であるが,本年3月に「集中治療における人工呼吸中の鎮静」の効能・効果が追加となった。国内における使用成績調査の集計結果において,高齢者に対する副作用発現率が高齢者以外と比較し有意に高かったこと,また,国内での報告はないが,海外において本剤を集中治療における人工呼吸中の鎮静を目的として,通常量より高用量にて投与した場合に横紋筋融解症が報告されていることからこれらについて紹介する。

No.3
医薬品等 クエン酸シルデナフィル
対策 使用上の注意の改訂 症例の紹介
情報の概要

クエン酸シルデナフィルは,勃起不全治療薬として本年1月に承認され,3月より販売されているが,承認後約7ヵ月間に,心筋梗塞10例を含む33例の報告があった。これらのうち,医師から処方を受けていたことが確認されているのは8例であり,その他は個人輸入と思われる外国製剤,友人から譲渡された製剤を使用した例,又は入手経路不明の例であり,承認後も依然として不適切な個人使用が多いことが示唆されているので注意喚起を行うものである。

No.4
医薬品等 2000年問題
情報の概要

医療用具における「コンピュータの西暦2000年問題」への対応状況については,本情報第152号(平成11年2月)及び第155号(平成11年6月)において,調査結果を紹介してきた。今回,平成11年3月末日時点での医療用具業界における2000年問題への対応状況を把握するため,医療用具の製造業者,輸入販売業者,外国製造承認取得者及び国内管理人を対象とした調査を行ったのでその結果を紹介する。

No.5
医薬品等 塩酸チクロピジン他(31件)
情報の概要 使用上の注意の改訂について(その115)

 

1 塩酸チクロピジンによる血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)について

成 分 名 塩酸チクロピジン
該当販売名

アンブレート錠(堀田薬品合成)
イパラジン錠(マルコ製薬)
ジルペンダー錠(日新製薬(山形))
ソーパー100mg錠(日本薬品工業)
ソロゾリン錠(小林化工)
チクピロン細粒(沢井製薬)
チクピロン錠(メディサ新薬)
ニチステート細粒10%・錠(日本医薬品工業)
ネオピジン錠(オリエンタル薬品工業)
パチュナ錠(東和薬品)
パナピジン錠(日本ヘキサル)
パナルジン細粒10%・錠(第一製薬)
パラクロジン錠(三和化学研究所)
ピエテネール錠(陽進堂)
ピクロジン錠(太田製薬)
ピクロナジン錠(大洋薬品工業)
ヒシミドン錠(菱山製薬)
ビーチロン錠(辰巳化学)
ファルロジン錠(東洋ファルマー)
プロパコール錠(日清キョーリン製薬)
マイトジン錠(鶴原製薬)
ロベタール錠(大興製薬)
ロンドリン錠(大洋薬品工業)

薬効分類等 抗血小板剤
効能効果

・血管手術及び血液体外循環に伴う血栓・塞栓の治療並びに血流障害の改善
・慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍,疼痛及び冷感等の阻血性諸症状の改善
・虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA),脳梗塞)に伴う血栓・塞栓の治療
・クモ膜下出血術後の脳血管攣縮に伴う血流障害の改善

(1)経緯

塩酸チクロピジンは昭和56年6月に承認された抗血小板剤である。塩酸チクロピジン投与に伴う血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)については,海外文献を基に平成7年6月に「海外での重大な副作用」として注意喚起を行ったが,その後,国内においても同様の症例が報告されたため,平成8年9月に「重大な副作用」の項に記載を行った。更に,その後,塩酸チクロピジンによるTTP発症に関する論文や米国での添付文書改訂が行われたことから,平成10年9月に使用上の注意をより詳細に記載する措置を講じてきた。しかし,平成10年10月以降本年3月までの半年間で報告数が増加し,発売以来22例(うち死亡例が6例)が報告されたため,本年6月に「警告」を設け,併せて「緊急安全性情報」の配布を指示し,医療現場への情報提供の徹底を図った。
「警告」の新設に伴い,無顆粒球症,重篤な肝障害も併せて「警告」の項に記載した。

(2)症例の紹介

塩酸チクロピジンによるTTPの典型的な例として2例を紹介する(表1)。 「表1PDFファイル 49KB

 PDFファイルを見るためには、アクロバットリーダーというソフトが必要です。アクロバットリーダーは無料で配布されています。
 次のアイコンをクリックしてください。 getacro.gif

図図

パナルジンR(第一製薬)服用患者において発症した19例を分析したが,性,年齢,本剤使用理由,合併症,併用薬について特記すべき事項はなかった。本剤1日投与量は1例(100mg)を除いてすべて200mgであった。初期症状として倦怠感,紫斑等の出血症状,食欲不振や意識障害等が多くみられ,これらの発現時期は全症例において投与開始後2ヵ月以内であった。TTPの臨床上の特徴である1血小板減少,2破砕赤血球を認める溶血性貧血,3動揺する精神・神経症状,4発熱,5腎機能障害の5主徴のうち,特に1〜3の3主徴は高率に出現した。TTPの治療については,血漿交換の施行有無により救命率に大きな差が出ることが報告されている(表2)。

表2PDFファイル 19KB

図

(3) 安全対策

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は,重篤な転帰をたどる場合が多く,適切な処置をとらない場合は致死率が50%以上に上ると報告されている疾患であり,早期に診断を行い,適切な処置を行うことが大切である。
以下のとおり使用上の注意の改訂を行い,「緊急安全性情報」を配布し注意喚起を行った。

《使用上の注意》

〈塩酸チクロピジン〉
警 告
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP),無顆粒球症,重篤な肝障害等の重大な副作用が主に投与開始後2ヶ月以内に発現し,死亡に至る例も報告されている(「重大な副作用」の項参照)。

1.投与開始後2ヶ月間は,特に上記副作用の初期症状の発現に十分留意し,原則として2週に1回,血球算定,肝機能検査を行い,上記副作用の発現が認められた場合には,ただちに投与を中止し,適切な処置を行うこと。本剤投与中は,定期的に血液検査を行い,上記副作用の発現に注意すること。

2.本剤投与中,患者の状態から血栓性血小板減少性紫斑病,顆粒球減少,肝障害の発現等が疑われた場合には,投与を中止し,必要に応じて血液像もしくは肝機能検査を実施し,適切な処置を行うこと。

3.本剤の投与にあたっては,あらかじめ上記副作用が発生する場合があることを患者に説明するとともに,副作用を示唆する症状があらわれた場合には,服用を中止し,ただちに医師等に連絡するよう患者を指導すること。

重大な副作用
(1)血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(主徴:血小板減少,破砕赤血球の出現を認める溶血性貧血,動揺する精神・神経症状,発熱,腎機能障害)

TTPがあらわれることがある(特に投与開始後2ヶ月以内)ので,観察を十分に行い,TTPの初期症状である倦怠感,食欲不振,紫斑等の出血症状,意識障害等の精神・神経症状等が出現した場合には,ただちに投与を中止し,血液検査(網赤血球,破砕赤血球の同定を含む)を実施し,必要に応じ血漿交換等の適切な処置を行うこと。

(3)重篤な肝障害(初期症状:悪心・嘔吐,食欲不振,倦怠感,`痒感,眼球黄染,皮膚の黄染,褐色尿等)

著しいGOT,GPT等の上昇,黄疸等の所見を伴う肝障害があらわれることがある(特に投与開始後2ヶ月以内)ので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,肝機能検査を実施し,必要に応じ適切な処置を行うこと。

〈参考文献〉
1)Ariyoshi, K., et al.:American Journal of Hematology,54(2):175−176(1997)
2)中嶋千也他:脳卒中,18(3):236−240(1996)
3)Bennet, C. L., et al.:Annals of Internal Medicine,128(7):541−544(1998)

 

2.プロポフォールの高齢者への投与等につい

成 分 名 プロポフォール
該当販売名 1%ディプリバン注(ゼネカ)
薬効分類等 全身麻酔薬
効能効果 全身麻酔の導入及び維持

集中治療における人工呼吸中の鎮静

(1)経緯

プロポフォールは全身麻酔・鎮静用剤であり,平成7年9月に「全身麻酔の導入及び維持」,平成11年3月に「集中治療における人工呼吸中の鎮静」の効能・効果で承認され,現在,米国,EU各国等でも広く使用されている。
今般,高齢者における副作用の発現についての調査結果が報告され,また,海外において横紋筋融解症の症例が報告されているので紹介する。

(2)高齢者における副作用発現

本剤は主に肝臓で代謝され,尿中に排泄される。一般に高齢者では,肝,腎,圧受容体反射機能が低下していることが多く,循環器系等への副作用があらわれやすいので,投与速度を減速する等慎重に投与することが求められてきている。
高齢者における副作用発現傾向について国内の企業から,平成7年12月より平成10年11月までに実施された使用成績調査の結果が報告された。集計によると高齢者(65歳以上)は高齢者以外(65歳未満)と比較し副作用発現率が有意に高かった(表1)。高齢者において発現率が高い副作用は低血圧(高齢者発現率18.74%,高齢者以外発現率7.75%),徐脈(高齢者発現率6.32%,高齢者以外発現率3.72%),肝機能異常(高齢者発現率2.93%,高齢者以外発現率1.04%),GOT上昇(高齢者発現率2.81%,高齢者以外発現率1.88%)等であった。また,高齢者(65〜85歳)に本剤を単回投与した場合,全身クリアランス値は若年者群(18〜35歳)に比べ高齢者群で有意に低かったとの報告がある1)。
高齢者への投与については,既に現行の「使用上の注意」の「高齢者への投与」の項に慎重に投与する旨記載し,注意喚起しているが,高齢者において副作用発現率が高いこと等から,更なる注意喚起が必要であると考えられるため,「慎重投与」の項に新たに「高齢者」を追加記載することとした。

(3)横紋筋融解症

横紋筋融解症については平成11年6月までに,国内での報告はないが,海外において15例報告されている。当該症例の多くは,本剤を集中治療における人工呼吸中の鎮静を目的として,通常量より高用量で投与した場合に本事象がみられている。報告された症例の一部を表2に紹介する。
横紋筋融解症については,効能・効果として追加承認された「集中治療における人工呼吸中の鎮静」を目的とした使用において,今後国内においても本事象が発現する可能性があり,「使用上の注意」の「副作用」の項の改訂を行い,医療関係者への注意喚起を行うこととした。

〈参考文献〉
1)Kirkpatric, T., et al:Br. J. Anaesthesia,60:146(1988)
2)Hanna, J. P., et al:Neurology,50(1):301(1998)

表1 年齢別副作用発現頻度
要 因 調査症例数 副作用発現 副作用発現 副作用発現 検定
    症例数 件数 症例率(%) (χ2)
年齢65歳未満 2,503 725 1,055 28.97 p<0.001
65歳以上 854 299 467 35.01
総症例数 3,357 1,024 1,522 30.50

平均年齢:49.84歳(0〜93歳)

表2 症例の概要
No.1
患 者(性・年齢)男10代
使用理由〔原疾患〕集中治療における鎮静〔難治性てんかん〕
経過及び処置

精神遅滞と難治性てんかんの10代の男性患者(体重40kg)。発作コントロールのため入院。入院4日後に発作コントロールのため本剤80mg(2.0mg/kg),筋弛緩のため臭化ベクロニウム8mg(0.20mg/kg)を投与後挿管。本剤10mg/kg/時の投与により開始1時間以内に4〜6回/分の数秒の脳波群発抑制が得られた。その後,7.5〜13.7mg/kg/時で投与を継続し,脳波群発抑制を維持。フェノバルビタール,フェニトイン,ジアゼパムの投与継続。投与18時間後本剤の投与を中止したが,複雑部分発作が再度発現。本剤による麻酔を再開。脳波群発抑制を維持するために投与量を8.8mg/kg/時から17.5mg/kg/時に増量。投与20時間後,血液量は正常であったが,低血圧が発現。投与44時間後,低酸素症悪化のため本剤投与中止。尿が色褪せた茶色に変色。投与48時間後,代謝性アシドーシス,低血圧,高カリウム血症が発現。38.5℃の一過性の発熱が発現,検査値は血清カリウム7.1mmol/L,血清カルシウム 1.1mg/dL,血清クレアチニンキナーゼ83000U/L,乳酸 19mmol/L。白血球数は7900/μLで,多形核が優勢であった。動脈血測定値は,pH 7.21,PCO231mmHg,PO2 106mmHg,HCO313mmol/L。投与84時間後に死亡。剖検により,横隔膜と検査したすべての体肢筋で横紋筋融解が認められた。ミオグロビン円柱と一致する無晶形の沈渣が尿細管に詰まっていた。

備 考 文献2)
併用薬:臭化ベクロニウム,フェニトイン,フェノバルビタール,ジアゼパム

No.2
患 者(性・年齢)男10歳未満
使用理由〔原疾患〕集中治療における鎮静〔てんかん〕
経過及び処置

両手の間代性運動のため入院した男児(体重28kg)。良性小児期ローランドてんかんと診断され,カルバマゼピンにより治療。持続性右側顔面間代性運動を伴う焦点運動てんかん重積状態が発現。多数の抗痙攣剤が投与されたが,発作のコントロールはできなかった。麻酔による昏睡導入のためICUに移送。本剤2mg/kg/時で投与開始,11mg/kg/ 時まで増量後にてんかんの症状は消失。脳波上でのてんかんが続いたため本剤増量。その後2日かけて投与量を27mg/kg/時まで増量したが,てんかんは治まらなかった。投与38時間後尿が紅茶色に変色。50時間後頻脈が発現。58時間後尿量が顕著に減少し,0.5mL/kg/時以下になったが,血液量と全身血圧値は正常。62時間後に低血圧が発現。63時間後,本剤投与中止。100%酸素投与時の動脈血液ガス分析では,pH 7.11,PCO234mmHg,PO2 89mmHg,HCO3 10.8mmol/L。血清クレアチニンキナーゼ 49992U/L,乳酸 24.9mmol/L,白血球数24950/μL,分節核多形核が優勢であった。頻脈が発現後,引き続き3〜5秒間の不全収縮を伴う徐脈を発現。投与78時間後に死亡。剖検にて四肢の筋肉の横紋筋融解が確認された。尿細管にはミオグロビン円柱と一致する無晶形の沈渣がみられた。

備 考 文献2)
併用薬:フェノバルビタール,ヒドロコルチゾン,ファモチジン
日本における推奨投与速度(集中治療における人工呼吸中の鎮静)

導入時 0.03mL/kg/時(プロポフォールとして0.3mg/kg/時)
維持時 0.03〜0.30mL/kg/時(プロポフォールとして0.3〜3.0mg/kg/時)

3 クエン酸シルデナフィルの症例報告について

成 分 名 クエン酸シルデナフィル
該当販売名 バイアグラ錠25mg,50mg(ファイザー製薬)
薬効分類等 その他の泌尿生殖器官及び肛門用薬
効能効果 勃起不全(満足な性行為を行うに十分な勃起とその維持ができない患者)

(1)はじめに

クエン酸シルデナフィルは,勃起不全治療薬として本年1月に承認され,3月から販売されている。米国においては1年前の平成10年3月から販売されており,我が国でも承認前に個人輸入により米国から入手し使用している例がみられた。平成10年7月には,ニトログリセリン貼付剤を使用中に友人よりもらったクエン酸シルデナフィルを服用した男性が性行為後に心肺停止により死亡した例が報告され,厚生省としては医薬品の安易な個人使用は安全性の観点から問題がある旨の注意を呼びかけてきた。承認後も医師の処方によらない安易な個人使用がみられることから,注意を喚起するものである。

(2)承認後の症例報告状況

クエン酸シルデナフィルが承認されてから約7ヵ月間に,心筋梗塞10例を含む33例の種々の報告が寄せられた。
これらの33例のうち,医師から処方を受けていたことが確認されているのは8例のみであり,その他は,個人輸入と思われる外国製剤を使用した例,友人から譲渡された製剤を使用した例,又は入手経路不明の例であり,承認後も依然として不適切な個人使用が多いことが示唆されている。
クエン酸シルデナフィルの「使用上の注意」には,「警告」として「外国において市販後に死亡例を含む重篤な心血管系等の有害事象が報告されているので,本剤投与の前に,心血管系障害の有無等を十分確認すること」と記載されており,「心血管系障害を有するなど性行為が不適当と考えられる患者」は禁忌とされている。心筋梗塞症例についてみると,10例のうち医師の処方を受けて服用していたことが確認されているのは3例のみであり,処方を受けていなかった7例には,心筋梗塞の既往や胸痛があったなど本剤を服用することが必ずしも適当ではなかったと考えられる例もみられ,また,慎重投与とされる高齢者(65歳以上)も1例あった。なお,心筋梗塞例10例には,硝酸薬との併用が確認された症例はなかった。心筋梗塞の3症例を紹介する(表1)。

(3)安全対策

承認後の国内症例の報告をふまえ,「使用上の注意」の改訂を行うこととした。

《使用上の注意》
〈クエン酸シルデナフィル〉
警 告
死亡例を含む心筋梗塞等の重篤な心血管系の有害事象が報告されているので,本剤投与の前に,心血管系障害の有無等を十分確認すること(「禁忌」の項及び「副作用」の項参照)。

副作用(国内データ)
循環器:心筋梗塞[因果関係は明らかではないが,市販後において本剤投与後に心筋梗塞が発症したとの報告がある(「外国市販後有害事象」の項参照)。]ほてり,高血圧,潮紅,動悸,不整脈,不完全右脚ブロック

表1 症例の概要
No.1
患 者(性・年齢)男60代
使用理由〔合併症〕勃起機能不全〔高血圧,糖尿病〕
投与量・投与期間 25mg
経過及び処置

本剤服用の1時間後に性行為。性行為中に心筋虚血によると考えられる胸痛があったが,性行為継続。痛みが持続するため救急外来受診。急性心筋梗塞と診断された。血栓溶解療法を実施。約1ヵ月後に退院。

備考 企業報告
併用薬:塩酸ベニジピン,グリベンクラミド,塩酸ベラパミル,塩酸ジルチアゼム

No.2
患 者(性・年齢)男30代
使用理由〔合併症〕勃起機能不全〔高脂血症,糖尿病,肥満〕
投与量・投与期間 25mg
経過及び処置

本剤服用後,性行為を行い,3時間後に胸痛が発現した。救急車で病院に搬送され,心筋梗塞と診断された。PTCAを施行し,ステント留置。ヘパリン,塩酸チクロピジン,塩酸ブプレノルフィン,塩酸モルヒネを投与し,順調に回復。11日後に退院。なお患者には喫煙(20本/日)習慣あり。

備考 企業報告
併用薬:不明

No.3
患 者(性・年齢)男70代
使用理由〔合併症〕不明
投与量・投与期間 不明
経過及び処置

以前より胸痛を認めていた。本剤(入手経路不明)を服用後,性行為を行い,その後,胸痛発作を生じ病院に搬入,心筋梗塞と診断された。PTCA等を施行したが多臓器不全が進行し,11日後に死亡した。

備考 企業報告
併用薬:不明

4 医療用具における「コンピュータの西暦2000年問題」への対応について(その3)

医療用具における「コンピュータの西暦2000年問題」への対応状況については,本情報第152号(平成11年2月)及び第155号(平成11年6月)において,調査結果を紹介してきた。今回,平成11年3月末日時点での医療用具業界における2000年問題への対応状況を把握するため,医療用具の製造業者,輸入販売業者,外国製造承認取得者及び国内管理人(以下「製造業者等」という。)を対象とした調査を行ったのでその結果を紹する。

(1)調査概要

平成10年12月末時点における2000年問題への対応状況調査(以下,「第1回調査」という。)の際,マイコンチップを搭載した医療用具を取り扱うとの報告があった医療用具の製造業者,輸入販売業者,外国製造承認取得者及び国内管理人(559社)及び第1回調査で回答が不十分(81社),あるいは回答が得られなかった製造業者等(171社),計811社を対象とし,794社(指定期日後に回答した5社を含む)から回答が得られた。更に,11社が薬事法上の製造業等の許可を廃止していることが明らかになった。
このうち,549社が2000年問題の対象となるマイコンチップを搭載した医療用具を取り扱っていた。なお,薬事法上の製造業等の許可を廃止したことが明らかになった製造業者等及び回答の得られていない製造業者等が取り扱う医療用具については,製造業者等からの情報が入手できない場合があるため,2000年以降に使用する場合においては,医療機関において十分に注意して模擬テスト等を行う必要があるため,その企業名を厚生省ホームページ等で公表した。

(2)2000年問題発生のおそれがある機器について

1.2000年問題が発生するおそれがある製品リスト
2000年問題発生のおそれがあることが報告されている医療用具は1297品目あり,今回新たに報告のあった医療用具については,重篤な健康被害につながるとされるものはなかった。
2.優先医療用具について
マイコンを搭載した医療用具を取り扱う製造業者等549社のうち,優先医療用具を取り扱っていると回答のあった製造業者等は182社であった。このうち132社はすべての製品について2000年問題発生のおそれがないことを確認していた。残り50社のうち,
ア)18社は2000年問題発生のおそれはあったものの既にすべての製品について修正作業及び模擬テスト等を完了
イ)21社はその作業中
ウ)5社が輸出元国(製造元)に照会中である等,問題発生の可能性について確認中
エ)その他6社のうち,4社は日付の表示・記録上の問題であり本来の機能には影響しないため修正作業は行わない製品がある,2社は製造元が薬事法上の製造業等の許可を廃止したとしていた。問題発生が機能に影響しないため修正作業は行わないとする製造業者等については,予想されている問題発生の程度,状況について納入先への周知を,また,修正作業中,確認中の優先医療用具については早期の完了を求めることとしている。
3.優先医療用具以外の医療用具について
マイコンを搭載した医療用具を取り扱う製造業者等549社のうち,542社が優先医療用具以外の医療用具を取り扱っていた。そのうち,375社ですべての製品について問題がないことを確認していた。残り167社のうち,
ア)61社は2000年問題発生のおそれはあったものの既に修正作業及び模擬テスト等を完了
イ)78社はその作業中
ウ)19社は輸出元国(製造元)に照会中である等,問題発生の可能性について確認中
エ)その他9社のうち,6社は日付の表示・記録上の問題であり本来の機能には影響しないため修正作業は行わない製品がある,1社は当該製品は出荷していない,1社は親会社で一括して対応する,1社は製造元が薬事法上の製造業等の許可を廃止したとしていた。対応の予定がないとする製造業者等については,発生する問題が日付の表示あるいは記録の異常のみで,患者に重篤な障害を与えるおそれがないためプログラム交換等の作業を行う予定がないとするものであったが,優先医療用具と同様,使用者に対する情報提供の徹底を,また,修正作業中,確認中の医療用具についても同様に早期の完了を求めることとしている。

(3)2000年問題が発生しないことを確認した製造業者等について

マイコンを搭載した医療用具を取り扱う製造業者等549社のうち347社がすべての医療用具について2000年問題が発生しないことを確認したとの報告があった。

(4)マイコンを搭載した医療用具を取り扱う製造業者等549社の2000年問題への対応状況等について

1.442社の製造業者等で2000年問題対応窓口を設置していた。第1回調査時においては400社であり,対応の改善が認められた。
2.472社の製造業者等で2000年問題担当役員又は統括部署を既に設置していた(第1回調査時:541社,ただし,医療用具製造業者等として)。
3危機管理計画については,103社の製造業者等で策定済み,183社が策定中,133社が策定を予定していた。第1回調査時においては,策定済み及び策定中を合わせて168社であることと比すると重要性が浸透したことが伺えるが,危機管理計画の策定意義を今後も啓発し,すべての対象企業が策定するよう指導することとしている。
4使用者に対する情報提供については,83社は完了(第1回調査時39社),223社は情報提供中(第1回調査時206社),33社は今後提供を予定していた(第1回調査時101社)。提供を完了した製造業者数が増えているが,今後医療機関等への更なる積極的な情報提供を求めることとしている。また,134社から一部の製品について使用者を完全には把握していないとの回答が得られたことから,製造業者等には,卸,代理店を通じ医療機関等への情報提供に努めるとともに,医療機関等からの問い合わせに十分対応できるよう体制の整備を求めることとしている。一方,医療機関等には製造業者等に対し積極的に問い合わせることが必要であり,供給者,使用者の双方が協力して2000年問題に対応する重要性が示唆された。

(5)総括

1.総数1297品目の医療用具について何らかの2000年問題が発生するおそれがあるとの報告があったが,放置すると重篤な健康被害につながるおそれがあると報告されたものは放射線治療器1品目であり(第1回調査で既報),その他は,日付の表示あるいは記録上の問題が主であり,重篤な健康被害が発生するおそれはないとするものであった。
(2)優先医療用具については昨年末までに修正作業及び模擬テスト等を完了することを求めていたところであるが,本年3月末日時点においても修正作業中等の製造業者等がみられたことから,今後,製造業者等に対しては医療機関と連絡をとりつつ早期の対応完了を求めることとしている。また,2000年問題の発生はあるものの日付の表示あるいは記録の異常のみの問題であり,本来機能には影響しないため特に修正作業を行う予定はないとする医療用具については早期の情報伝達完了を指導することとしている。
3修正作業中の製造業者等に対しては,今後ともフォローアップ調査を行い遺漏なき対応を求めることとしている。今回,医療機関における自主的総点検の円滑な遂行のため報告が得られない製造業者名等を公表することとした。
なお,マイコンチップを搭載した医療用具を取り扱っているにもかかわらず,問題

のある医療用具への修正作業の対応が不十分な製造業者等及び危機管理計画を策定していない製造業者名等についても,次回以降公表する方針である。また,使用者を完全に把握していないとされる製品リストについても,次回フォローアップ調査で確認し公開することとしている。

5 使用上の注意の改訂について(その115)

医薬品等安全性情報No.155掲載分以降に改訂を指導した使用上の注意について,改訂内容,主な該当販売名,参考文献等をお知らせいたします。

1〈抗血小板剤〉
塩酸チクロピジン
[販 売 名] パナルジン錠(第一製薬)他
[警 告] 警告

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP),無顆粒球症,重篤な肝障害等の重大な副作用が主に投与開始後2ヶ月以内に発現し,死亡に至る例も報告されている(「重大な副作用」の項参照)。
1.投与開始2ヶ月間は,特に上記副作用の初期症状の発現に十分留意し,原則として2週に1回,血球算定,肝機能検査を行い,上記副作用の発現が認められた場合には,ただちに投与を中止し,適切な処置を行うこと。
本剤投与中は,定期的に血液検査を行い,上記副作用の発現に注意すること。
2.本剤投与中,患者の状態から血栓性血小板減少性紫斑病,顆粒球減少,肝障害の発現等が疑われた場合には,投与を中止し,必要に応じて血液像もしくは肝機能検査を実施し,適切な処置を行うこと。
3.本剤の投与にあたっては,あらかじめ上記副作用が発生する場合があることを患者に説明するとともに,副作用を示唆する症状があらわれた場合には,服用を中止し,ただちに医師等に連絡するよう患者を指導すること。

[副作用(重大な副作用)]

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(主徴:血小板減少,破砕赤血球の出現を認める溶血性貧血,動揺する精神・神経症状,発熱,腎機能障害)TTPがあらわれることがある(特に投与開始後2ヶ月以内)ので,観察を十分に行い,TTPの初期症状である倦怠感,食欲不振,紫斑等の出血症状,意識障害等の精神・神経症状等が出現した場合には,ただちに投与を中止し,血液検査(網赤血球,破砕赤血球の同定を含む)を実施し,必要に応じ血漿交換等の適切な処置を行うこと。
重篤な肝障害(初期症状:悪心・嘔吐,食欲不振,倦怠感,`痒感,眼球黄染,皮膚の黄染,褐色尿等)著しいGOT,GPT等の上昇,黄疸等の所見を伴う肝障害があらわれることがある(特に投与開始後2ヶ月以内)ので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,肝機能検査を実施し,必要に応じ適切な処置を行うこと。

2〈勃起不全治療剤〉
クエン酸シルデナフィル
[販 売 名] バイアグラ錠25mg(ファイザー)他
[警 告] 警告

死亡例を含む心筋梗塞等の重篤な心血管系の有害事象が報告されているので,本剤投与の前に,心血管系障害の有無等を十分確認すること(「禁忌」の項及び「副作用」の項参照)。

[相互作用(併用注意)]

チトクロームP450 3A4阻害薬(シメチジン,エリスロマイシン,ケトコナゾール,イトラコナゾール,リトナビル,サキナビル等)[シメチジン,エリスロマイシン,リトナビル,サキナビルとの併用により,本剤の最高血漿中濃度(Cmax),血漿中濃度・時間曲線下面積(AUC)の増加が認められたとの報告がある。]

[副 作 用] 循環器:心筋梗塞[因果関係は明らかではないが,市販後において本剤投与後に心筋梗塞が発症したとの報告がある(「外国市販後有害事象」の項参照)。]

ほてり,高血圧,潮紅,動悸,不整脈,不完全右脚ブロック

〈参 考〉 企業報告

3〈抗パーキンソン剤〉
塩酸セレギリン
[販 売 名] エフピー錠2.5(藤本)
[禁 忌] 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(マレイン酸フルボキサミン)を投与中の患者(「相互作用」の項参照)
[相互作用(併用禁忌)]

選択的セロトニン再取り込み阻害剤(マレイン酸フルボキサミン)[両薬剤の作用が増強される可能性があるので,本剤の投与を中止してから選択的セロトニン再取り込み阻害剤の投与を開始するには少なくとも14日間の間隔を置くこと。また,選択的セロトニン再取り込み阻害剤から本剤に切り換えるときには7日間の間隔を置くこと。]

〈参 考〉 西嶋康一他:臨床精神医学,26(3):339(1997)

4〈電解質補正剤〉
硫酸マグネシウム(補正用液)
[販 売 名] コンクライト−Mg(菱山)他
[副 作 用]

妊婦への長期投与:胎児,新生児の一過性の骨化障害(「妊婦,産婦,授乳婦等への投与」の項参照)

[妊婦,産婦,授乳婦等への投与]妊婦に長期投与した際に,胎児,新生児に一過性の骨化障害があらわれることがある。
[その他の注意]

本剤での報告と同様に,硫酸マグネシウム製剤を妊婦に長期投与した際に,胎児,新生児に一過性と思われる骨の異常所見(上腕骨近位側骨幹端に放射線透過性の横断像や皮膚の菲薄化等)が認められたとの報告がある。

〈参 考〉 企業報告

大嶋義之他:中部日本整形外科災害外科学会誌,40:1024(1997)
Lamm, C. I., et al.:J. Pediatr., 113:1078(1988)
Cumming, W. A., et al.:A. J. R., 152:1071(1989)
Holcomb, W. L., et al.:Obstet. Gynecol., 78:611(1991)
Edwards, D. K.:A. J. R., 161:141(1993)
Santi, M. D., et al.:J. Pediatr. Orthop., 14:249(1994)
Matsuda, Y., et al.:Gynecol. Obstet. Invest., 44:82(1997)

5〈不整脈用剤〉
アテノロール
[販 売 名] テノーミン(住友製薬)他
[相互作用(併用注意)]

交感神経刺激剤(アドレナリン等)[相互の薬剤の効果が減弱する。また,血管収縮,血圧上昇を来すことがあるので注意すること。]

[副作用(その他の副作用)]

循環器:低血圧,胸部圧迫感,動悸,四肢冷感,レイノー症状,間欠性跛行
精神神経系:頭痛,めまい・眩暈,不眠,眠気,うつ状態,耳鳴,耳痛,錯乱,悪夢,気分の変化,精神変調
肝 臓:GOT,GPTの上昇等,胆汁うっ滞性肝炎
その他:倦怠・脱力感,しびれ感,浮腫・末梢性浮腫,高脂血症,脱毛,冷汗,頻尿,高血糖,高尿酸血症,CPKの上昇,乾癬様皮疹,乾癬悪化,抗核抗体陽性化

[妊婦,産婦,授乳婦等への投与]

本剤は胎盤を通過し,臍帯血にあらわれる。また,高血圧症の妊婦への投与により胎児の発育遅延が認められたとの報告があるので,妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

母乳中へ高濃度に移行するので,授乳中の婦人に投与することを避け,やむを得ず投与する場合には,授乳を中止させること。

6〈不整脈用剤〉
酢酸フレカイニド(経口剤)
[販 売 名] タンボコール錠50mg(エーザイ)他
[副作用(重大な副作用)]

循環器:心室頻拍(Torsades de pointesを含む),心室細動,高度房室ブロック,一過性心停止,洞停止(又は洞房ブロック),心不全の悪化があらわれることがある。このような場合には,本剤の投与を中止し,次の処置法を考慮すること(「過量投与」の項参照)。
1)消化器から未吸収薬の除去
2)ドパミン,ドブタミン,イソプロテレノール等の強心薬投与
3)IABP等の補助循環
4)ペーシングや直流除細動

〈参 考〉企業報告

7〈高脂血症用剤〉
フルバスタチンナトリウム
[販 売 名] ローコールカプセル10mg(チバガイギー)他
[原則禁忌]

腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者に,本剤とフィブラート系薬剤を併用する場合には,治療上やむを得ないと判断される場合にのみ併用すること。[横紋筋融解症があらわれやすい(「相互作用」の項参照)。]

[相互作用(原則併用禁忌)]

腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者では原則として併用しないこととするが,治療上やむを得ないと判断される場合にのみ慎重に併用すること。
フィブラート系薬剤(ベザフィブラート等)[急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすい。自覚症状(筋肉痛,脱力感)の発現,CPKの上昇,血中及び尿中ミオグロビン上昇並びに血清クレアチニン上昇等の腎機能の悪化を認めた場合には直ちに投与を中止すること。]

[副作用(重大な副作用)]

肝機能障害:肝炎,黄疸等の肝機能障害があらわれることがあるので,定期的に検査を行うなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
過敏症状:ループス様症候群,血管炎等の過敏症状があらわれることがあるので,このような場合は投与を中止すること。

8〈高脂血症用剤〉
ベザフィブラート
[販 売 名] ベザトールSR錠(キッセイ)他
[禁 忌] (血清クレアチニン値が1.5mg/dLを超え,HMG-CoA還元酵素阻害薬を投与中の患者[横紋筋融解症があらわれやすい(「相互作用」の項参照)。]を削除)
[原則禁忌]

腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者に,本剤とHMG-CoA還元酵素阻害薬を併用する場合には,治療上やむを得ないと判断される場合にのみ併用すること。[横紋筋融解症があらわれやすい(「相互作用」の項参照)。]

[相互作用(併用禁忌)]

(プラバスタチンナトリウム,シンバスタチン,フルバスタチンナトリウム[血清クレアチニン値が1.5mg/dLを超える患者では併用により横紋筋融解症があらわれやすい。]を削除)

[相互作用(原則併用禁忌)]

腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者では原則として併用しないこととするが,治療上やむを得ないと判断される場合にのみ慎重に併用すること。
HMG-CoA還元酵素阻害薬(プラバスタチンナトリウム,シンバスタチン,フルバスタチンナトリウム等)[急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすい。やむを得ず併用する場合には,本剤を少量から投与を開始するとともに,定期的に腎機能検査等を実施し,自覚症状(筋肉痛,脱力感)の発現,CPKの上昇,血中及び尿中ミオグロビン上昇並びに血清クレアチニン上昇等の腎機能の悪化を認めた場合は直ちに投与を中止すること。]

9〈高脂血症用剤〉
シンバスタチン,セリバスタチンナトリウム,プラバスタチンナトリウム
[販 売 名]

リポバス錠5(萬有)
セルタ錠(武田),バイコール錠(バイエル)
メバロチン錠(三共)他

[原則禁忌]

腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者に,本剤とフィブラート系薬剤を併用する場合には,治療上やむを得ないと判断される場合にのみ併用すること。[横紋筋融解症があらわれやすい(「相互作用」の項参照)。]

[相互作用(原則併用禁忌)]

腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者では原則として併用しないこととするが,治療上やむを得ないと判断される場合にのみ慎重に併用すること。
フィブラート系薬剤(ベザフィブラート等)[急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすい。自覚症状(筋肉痛,脱力感)の発現,CPKの上昇,血中及び尿中ミオグロビン上昇並びに血清クレアチニン上昇等の腎機能の悪化を認めた場合は直ちに投与を中止すること。]

10〈高脂血症用剤〉
クリノフィブラート,クロフィブラート,クロフィブラートアルミニウム,シンフィブラート,フェノフィブラート
[販 売 名]

リポクリン錠200(住友製薬)他
アモトリール(住友製薬)他
アルフィブレートカプセル(日研)他
コレソルビンカプセル(長生堂)他
リパンチルカプセル(グレラン)

[原則禁忌]

腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者に,本剤とHMG-CoA還元酵素阻害薬を併用する場合には,治療上やむを得ないと判断される場合にのみ併用すること。[横紋筋融解症があらわれやすい(「相互作用」の項参照)。]

[相互作用(原則併用禁忌)]

腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者では原則として併用しないこととするが,治療上やむを得ないと判断される場合にのみ慎重に併用すること。
HMG-CoA還元酵素阻害薬(プラバスタチンナトリウム,シンバスタチン,フルバスタチンナトリウム等)[急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすい。やむを得ず併用する場合には,本剤を少量から投与開始するとともに,定期的に腎機能検査等を実施し,自覚症状(筋肉痛,脱力感)の発現,CPKの上昇,血中及び尿中ミオグロビン上昇並びに血清クレアチニン上昇等の腎機能の悪化を認めた場合は直ちに投与を中止すること。]

11〈高カリウム血症改善イオン交換樹脂〉
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム
[販 売 名] ケイキサレート(鳥居)他
[副作用(重大な副作用)]

腸穿孔,腸潰瘍,腸壊死:本剤のソルビトール懸濁液の経口投与により,小腸の穿孔・粘膜壊死,大腸潰瘍,結腸壊死等があらわれたとの報告がある。本剤の経口投与により,激しい腹痛又は下痢,嘔吐等があらわれた場合には本剤の投与を中止し,適切な処置を行うこと。

〈参 考〉 企業報告

Rashid, A., et al.:Am. J. Surg. Pathol., 21(1):60(1997)
Gerstman, B. B., et al.:Am. J. Kidney. Dis., 20(2):159(1992)

12〈去たん剤〉
L−カルボシステイン
[販 売 名] ムコダイン錠(杏林)他
[副作用(重大な副作用)]

皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群),中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)があらわれることがあるので,観察を十分に行い,このような症状があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。

〈参 考〉 企業報告

13〈生菌製剤〉
エンテロノンR,エントモール,コレポリーR,ビオスリー,ポリラクトン,ラックビー,ラックビーR
[販 売 名]

エンテロノン−R(HMR),エントモール散(山之内),コレポリーR

散(東和薬品),ビオスリー錠(東亜薬工)他,ポリラクトン(吉富),ラックビー(日研)他,ラックビーR(日研)
[禁 忌]

本剤に過敏症の既往歴のある患者
牛乳に対してアレルギーのある患者[アナフィラキシー様症状を起こすことがある。]

[副作用(重大な副作用)]

アナフィラキシー様症状:アナフィラキシー様症状を起こすことがあるので,観察を十分に行い,症状があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。

14〈消化管運動改善剤〉
シサプリド
[販 売 名] アセナリン錠(ヤンセン協和)他
[相互作用(併用注意)]

マレイン酸フルボキサミン[QT延長,心室性不整脈等が起こる可能性がある。]

15〈経腸成分栄養剤〉
ハーモニック−F,ハーモニック−M
[販 売 名]

ハーモニック−F(エスエス)
ハーモニック−M(エスエス)

[禁 忌]

牛乳たん白アレルギーを有する患者[本剤は牛乳由来のカゼインが含まれているため,アナフィラキシーショックを引き起こすことがある。]

〈参 考〉 企業報告

16〈代謝改善解毒剤〉
チオプロニン
[販 売 名] チオラ錠100(参天)他
[副作用(重大な副作用)]

無顆粒球症:まれに無顆粒球症があらわれることがあるので,異常が認められた場合には直ちに投与を中止し,適切な処置を行うこと。なお,投与中は咽頭痛,発熱等の風邪様症状の発現に十分注意すること。

〈参 考〉 企業報告

17〈タンパク分解酵素阻害剤〉
メシル酸ガベキサート
[販 売 名] 注射用エフオーワイ(小野)他
[副作用(重大な副作用)]

白血球減少:白血球減少があらわれることがあるので,異常が認められた場合には投与を中止すること。

[副作用(その他の副作用)]

血 液:顆粒球減少,好酸球増多(発現した場合には投与を中止すること。)
その他:悪心,顔面潮紅,発熱,高カリウム血症

〈参 考〉 企業報告

18〈アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤〉
塩酸ピラルビシン
[販 売 名] 注射用テラルビシン(明治製菓),ピノルビン注(メルシャン)
[副作用(重大な副作用)]

発熱,咳嗽,呼吸困難,胸部X線像異常等を伴う間質性肺炎があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。

〈参 考〉 企業報告

19〈抗ヒスタミン剤〉
dl−マレイン酸クロルフェニラミン(経口剤)
[販 売 名] プロダミン(岩城)他
[禁 忌]

本剤の成分又は類似化合物に対し過敏症の既往歴のある患者
未熟児・新生児[中枢神経系興奮等抗コリン作用に対する感受性が高く,痙攣等重篤な反応があらわれるおそれがある。]

[慎重投与]

眼内圧亢進のある患者[抗コリン作用により眼内圧が上昇し,症状が増悪するおそれがある。]
甲状腺機能亢進症の患者[抗コリン作用により症状が増悪するおそれがある。]
狭窄性消化性潰瘍,幽門十二指腸通過障害のある患者[抗コリン作用により平滑筋の運動抑制,緊張低下が起こり,症状が増悪するおそれがある。]
循環器系疾患のある患者[抗コリン作用による心血管系への作用により症状が増悪するおそれがある。]
高血圧症の患者[抗コリン作用により血管拡張が抑制され,血圧が上昇するおそれがある。]

[相互作用(併用注意)]

ドロキシドパ,ノルエピネフリン[血圧の異常上昇を起こすおそれがある。]

[副作用(その他の副作用)]

肝 臓:肝機能障害(GOT・GPT・Al−Pの上昇等)

20〈抗ヒスタミン剤〉
d−マレイン酸クロルフェニラミン,dl−マレイン酸クロルフェニラミン(注射剤)
[販 売 名]

ポララミン錠2mg(シェリングプラウ)他
クロール・トリメトン注10mg(シェリングプラウ)他

[副作用(その他の副作用)]

肝 臓:肝機能障害(GOT・GPT・Al−Pの上昇等)

〈参 考〉 企業報告

21〈セフェム系抗生物質〉
塩酸セフカペンピボキシル
[販 売 名] フロモックス錠75mg(塩野義)他
[副作用(重大な副作用)]

間質性肺炎,PIE症候群:発熱,咳嗽,呼吸困難,胸部X線異常等を伴う間質性肺炎があらわれることがあるので,このような症状があらわれた場合には投与を中止し,副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。また,他のセフェム系抗生物質でまれにPIE症候群等があらわれることが報告されている。
(間質性肺炎,PIE症候群:他のセフェム系抗生物質でまれに発熱,咳嗽,呼吸困難,胸部X線異常,好酸球増多等を伴う間質性肺炎,PIE症候群等があらわれることが報告されているので,このような症状があらわれた場合には投与を中止し,副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。を削除)

〈参 考〉 企業報告

22〈複合抗生物質製剤〉
クラブラン酸カリウム・アモキシシリン(錠剤)
[販 売 名] オーグメンチン錠(SBS)他
[禁 忌]

伝染性単核症のある患者[発疹の発現頻度を高めるおそれがある。]
本剤の成分による黄疸又は肝機能障害の既往歴のある患者[再発するおそれがある。]

[慎重投与]

肝機能障害のある患者[肝機能障害が悪化するおそれがある。]

[副作用(重大な副作用)]

肝障害:肝炎,黄疸,また,GOT(AST),GPT(ALT),Al−Pの上昇等の肝障害があらわれることがある。(肝障害は,主に男性と高齢患者で報告されており,また,長期投与と関連する可能性もある。兆候や症状は,通常,本剤投与中又は投与直後に発現するが,投与終了後,数週間発現しない可能性もある。これらの症状は通常可逆的であるが,重篤になる可能性もあり,極めてまれな状況では死亡例が報告されている。)

〈参 考〉

Hautekeete, M. L., et al.:Journal of Hepatology, 22:71(1995)
Thomson, J. A., et al.:Med. J. Aust., 162:638(1995)

23〈複合抗生物質製剤〉
クラブラン酸カリウム・アモキシシリン(小児用顆粒)
[販 売 名]

オーグメンチン小児用顆粒(SBS)

[禁 忌]

伝染性単核症のある患者[発疹の発現頻度を高めるおそれがある。]
本剤の成分による黄疸又は肝機能障害の既往歴のある患者[再発するおそれがある。]

[慎重投与]

肝機能障害のある患者[肝機能障害が悪化するおそれがある。]

[副作用(重大な副作用)]

肝障害:肝炎,黄疸,また,GOT(AST),GPT(ALT),Al−Pの上昇等の肝障害があらわれることがある。(肝障害は,主に男性と高齢患者で報告されており,また,長期投与と関連する可能性もある。兆候や症状は,通常,本剤投与中又は投与直後に発現するが,投与終了後,数週間発現しない可能性もある。これらの症状は通常可逆的であるが,重篤になる可能性もあり,極めてまれな状況では死亡例が報告されている。)
小児におけるこれらの症状の報告は非常にまれである。

〈参 考〉

Hautekeete, M. L., et al.:Journal of Hepatology, 22:71(1995)
Thomson, J. A., et al.:Med. J. Aust., 162:638(1995)

24〈セフェム系抗生物質〉
セファトリジンプロピレングリコール
[販 売 名]

セプチコールカプセル250mg(萬有)他

[副作用(重大な副作用)]

ショック,アナフィラキシー様症状:観察を十分に行い,症状があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群):症状があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。

〈参 考〉 企業報告

25〈抗結核抗生物質〉
リファンピシン
[販 売 名] リファジンカプセル(第一製薬)他
[相互作用(併用注意)] クマリン系抗凝血剤

経口糖尿病用剤
シクロスポリン,タクロリムス
テオフィリン
ジギタリス製剤,抗不整脈剤(キニジン,塩酸メキシレチン,ジソピラミド,プロパフェノン,塩酸ピルジカイニド),カルシウム拮抗剤(ベラパミル,ニフェジピン等),ブナゾシン,β−遮断剤(メトプロロール,プロプラノロール等),マレイン酸エナラプリル,クロフィブラート
副腎皮質ステロイド剤
ジアフェニルスルホン,クロラムフェニコール,ドキシサイクリン,クラリスロマイシン,アゾール系抗真菌剤(フルコナゾール等),テルビナフィン,ジドブジン,リトナビル,ネビラピン
フェニトイン,ベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム,ミダゾラム,トリアゾラム等),ゾピクロン,三環系抗うつ剤(ノルトリプチリン等)
トロピセトロン
[本剤の肝代謝酵素誘導作用により,これらの薬剤の作用を減弱させることがある。]

[副作用(重大な副作用)]

劇症肝炎等の重篤な肝障害

〈参 考〉

Wallace, R. J., et al.:J. Infect. Dis., 171:747(1995)

26〈結核化学療法剤〉
イソニアジド
[販 売 名] イスコチン(第一製薬)他
[副作用(重大な副作用)]

血小板減少

〈参 考〉

企業報告

27〈結核化学療法剤〉
イソニアジドメタンスルホン酸ナトリウム
[販 売 名] ネオイスコチン(第一製薬)他
[副作用(重大な副作用)]

イソニアジドでの重大な副作用:血小板減少

〈参 考〉 企業報告

28〈結核化学療法剤〉
塩酸エタンブトール
[販 売 名] エサンブトール錠(ワイスレダリー)他
[副作用(重大な副作用)]

重篤な肝障害:劇症肝炎等の重篤な肝障害があらわれることがあるので,定期的に肝機能検査を行うなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。

29〈結核化学療法剤〉
ピラジナミド
[販 売 名] ピラマイド(三共)
[重要な基本的注意]

本剤の投与により重篤な肝障害があらわれることがあるので,定期的に検査を行うなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には直ちに投与を中止し,適切な処置を行うこと(「副作用」の項参照)。

[副作用(重大な副作用)]

重篤な肝障害:劇症肝炎等の重篤な肝障害,黄疸があらわれることがあるので,定期的に検査を行うなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には直ちに投与を中止し,適切な処置を行うこと。

[妊婦,産婦,授乳婦等への投与]

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
授乳中の婦人には投与しないことが望ましいが,やむを得ず投与する場合には授乳を避けさせること。[ヒト母乳中へ移行することがある。]

〈参 考〉 企業報告

Holdiness, M. R.:Arch. Intern. Med., 144(9):1888(1984)

30〈結核化学療法剤〉
イソニアジド,イソニアジドメタンスルホン酸ナトリウム
[販 売 名] イスコチン(第一製薬)他

ネオイスコチン(第一製薬)他

[相互作用(併用注意)]

イトラコナゾール[イトラコナゾールの作用が減弱するおそれがある。]

[副作用(重大な副作用)]

劇症肝炎等の重篤な肝障害

〈参 考〉

Pilheu, J. A., et al.:MEDICINA(Buenos Aires),49:43(1989)

31〈血液成分製剤〉
抗ヒトリンパ球ウマ免疫グロブリン
[販 売 名] アールブリン(吉富)
[禁 忌]

弱毒生ワクチンを投与中の患者(「相互作用」の項参照)

[重要な基本的注意]

本剤は抗血小板抗体,抗赤血球抗体を有する。したがって,本剤の投与により血小板減少,免疫性溶血性貧血,直接クームス試験の陽性化を起こすことがある。
血小板減少,溶血性貧血:定期的に血液検査を行うなど観察を十分に行い,異常の程度が著しい場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

〈参 考〉 企業報告


戻る