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少子化に関連する諸外国の
取組みについて

人口問題審議会
(平成11年6月)




問い合わせ先
厚生省大臣官房政策課
石井(内線2250)、米丸(内線2931)

− 目 次 −

I はじめに

II 基本的な視点

III 各国の出生率の動向と各種取組みの総合的な観察

1 出生率の動向と人口の年齢構成
(1)フランス・イギリス
(2)ドイツ
(3)オランダ
(4)デンマーク・スウェーデン・アメリカ
2 各国の取組みの総合的な状況
(1)フランス・イギリス
(2)ドイツ
(3)オランダ
(4)デンマーク・スウェーデン・アメリカ
(5)総合的な横断的観察

IV 各国別詳細報告

(別紙)

V おわりに

(別添)報告書の基礎とした意見聴取等一覧

− 別 紙 目 次 −

1. フランス
2. ドイツ
3. オランダ
4. デンマーク
5. スウェーデン
6. イギリス
7. アメリカ


少子化に関連する諸外国の取組みについて

人口問題審議会
平成11年6月

I はじめに

(少子化への対応に関する議論の進展)

少子化への対応のあり方に関する議論が深まり、様々な対応方策に関する検討や取組みが進められようとしている。
政府が関係する横断的な取組みに絞って見ても、まず、当審議会が1997年10月に「少子化に関する基本的考え方について --人口減少社会、未来への責任と選択--」と題する報告書をとりまとめ、国民的議論の出発点となることを期待して公表した後、1998年6月には「少子社会を考える」という副題で平成10年版厚生白書が出され、幅広い問題提起が行われた。また、その直後の7月には、内閣総理大臣主宰の「少子化への対応を考える有識者会議」が開催され、約半年間にわたる討議を経て、12月には具体的な対応方策の案も多数含む提言が提出された。
その後、この提言を受けて、本年5月には18の閣僚から成る少子化対策推進関係閣僚会議が新たに設けられ、本年末までに、各分野にわたる総合的な施策に関して、今後政府が進めるべき少子化対策の基本的方針が策定されることとなった。
また、同じく有識者会議の提言を受けた新たな推進体制のもう一つの大きな柱として、内閣総理大臣の呼びかけにより、各界から参加を得て国民的な広がりのある取組みを進めるための「少子化への対応を推進する国民会議」が6月中を目途に発足する予定とされている。

(外国の動向を報告する目的と基礎とした情報)

このような状況を踏まえ、当審議会では、我が国における少子化への対応に関する今後の各方面の検討や取組みに際し参考となる情報を広く提供するという観点から、これまで当審議会で逐次欧州各国の専門家を招いて聴取してきた内容や我が国の専門家による調査報告を得たところに基づいて、これらの諸国における少子化の動向と関連施策に関する知見の概要を整理し、発表することとした。対象国はフランス、ドイツ、オランダ、デンマーク、スウェーデン、イギリス、アメリカの7か国である。
なお、基礎として用いた各国専門家からの意見聴取や調査報告等の件名は別添のとおりであり、そこに注記したとおり、それぞれの全文は人口問題審議会総会議事録及び提出資料として別途公開している。

II 基本的な視点

(個別制度の単純な国際比較は問題)

結婚や出産に関する各国民の行動は、性別役割分担や家族や職場のあり方に関する各国民の意識と実態、歴史や文化など、各国ごとに固有の多様な組み合わせがある様々な背景要因に深く関わっている。
また、これらの要因への対応に関連すると思われる各国の取組みも、様々な組み合わせの中で機能しているものである。このため、少子化の要因への対応に関連すると思われる各国の施策について、これらの背景の差異や各種の取組みの総合的な姿を十分に吟味することなく個別に抜き出して単純な国際比較を行うことは問題があり、ある国の少子化への対応の総合的な組み合わせを検討する観点からは基本的にふさわしい方法ではない。

(総合的・大局的な観察に重点を置く)

一方、各国における上記の様々な背景要因を短期間に網羅的に把握することは極めて困難である。また、個別の施策が出生率に与える影響を厳密に定量化することは基本的に困難との認識は各国の専門家に共通している。
このような事情を踏まえ、本報告においては、各国の出生率の動向と個別施策との関係につき細かい分析を試みたり、個別の施策の内容に関する単純な国際比較を行うことを目的とするのではなく、各国の状況を総合的・大局的に把握することに重点を置くこととする。

(働き方、保育サービス、経済的負担への対応の3分野の全体像に注目)

少子化の要因への対応に関連する施策の分野は多岐にわたるが、今回、当審議会において諸外国における少子化の動向と関連施策の概要を報告するに際しては、各国について、近年の出生率の動きを概観した上で、(1)仕事と育児とのバランスに配慮した働き方に関する制度、(2)保育サービスのあり方、(3)子育ての経済的負担への対応という3つの政策分野の取組みの全体像に特に注目して整理することとする。理由は次のとおりである。

(ア)当審議会の基本的な考え方

当審議会は、1997年10月の報告書において、我が国における少子化の影響や要因、またこれらへの対応のあり方などについて、基本的な考え方を提示した。その中で、少子化の進行による社会経済全体へのマイナスの影響を小さくする方策を「少子化の影響への対応」と呼び、他方、少子化の進行の背景にある要因自体を軽減する方策を「少子化の要因への対応」と呼び分けた。そして、結婚や出産に関する個人の自由に踏みこんではならないことを大前提とした上で、「少子化の要因への対応」も行っていくべきであるとの考え方を提唱し、多岐にわたる対応分野の中で中核となるのは、(1)固定的な男女の役割分業や雇用慣行の是正と、(2)育児と仕事の両立に向けた子育て支援であると整理した。

(イ)少子化への対応を考える有識者会議の提言

その後総理主宰で開催された「少子化への対応を考える有識者会議」は、男女ほぼ同数、30・40歳代が過半数という構成であり、若手の実感を踏まえた議論を重ねた結果、当審議会の基本的な考え方における用語法に沿って言えば「少子化の要因への対応」を議論の中心に据えた。
具体的には、現在の日本には、若い男女にとって、新たな家庭を築き、子どもを育てていくという責任ある喜びや楽しさを経験することを困難にするような社会経済的・心理的な要因があるという認識に立ち、そのような制約要因を取り除いていく環境整備が必要として、働き方に関する事項と家庭、地域、教育のあり方などに関する事項に大別して、多くの具体的方策の提案を含む提言を提出した。なお、有識者会議の提言では、これらの環境整備により、結果として、少子化の影響への対応も進むこととなると展望している。

(ウ)今回注目する具体的な分野

今回当審議会において諸外国の経験を整理するに際しては、このような議論の進展を踏まえ、少子化の影響への対応よりも、少子化の要因への対応のあり方に焦点をあてることが適切と考えた。
具体的な分野については、本来、可能な限り幅広く調査することが求められる。しかしながら、今回の調査においては、時間的な制約などのため、資料等の入手できた3つの分野に限定し、その組合わせの状況に着目することとした。
まず、子どもが誕生したあとの一定の期間親が育児に専念できる時期を確保しながらその後も雇用継続することを可能とするための育児休業制度などの働き方に関する取組みに注目する。なお、働き方に関連しては、少子化の要因との関係では職場や家庭における男女共同参画のあり方が重要な要素と考えられるため、可能な範囲でこの点に触れることとした。
次に、育児休業しない場合やその終了後、親が就労している時間における子育てを担う保育サービスに関する制度を取り上げる。
また、子育ての経済的負担に対する社会的支援の仕組みについては、当審議会の基本的考え方の中で、その有効性・効率性等について賛否両論があり、それぞれの方策の持つ意義、現実的な可能性や効果を総合的、多面的に考慮し、検討する必要性を指摘しており、また、有識者会議の提言においても、政策としての有効性・効率性などの観点に着目しながら検討を進めることとされている分野であることから、あわせて取り上げる。

(エ)家族政策という捉え方

これらの分野の関連施策は、諸外国ではいずれも「家族政策(family policy/family policies)」と総称される範疇に属するものとして共通の括りで認識される場合が多く、その意味でもあわせて把握することが望ましいといえる。
ただし、等しく「家族政策」といっても、その内容に必ずしも共通の理解があるとはいえない。例えば、我が国では「家族・家庭の有する諸機能の低下に注目し、これを補強・強化していくことを目的とした施策」とする例もあるが、今回調査した諸国では、家族政策の定義と内容について必ずしも共通した明確なものは見られず、各国のそれぞれの特性がその背景にはあるものと考えられる。

III 各国の出生率の動向と各種取組みの総合的な観察

1 出生率の動向と人口の年齢構成
(各国とも出生率は人口置換水準を下回っているが、幅がある)

欧州の6ヶ国は、いずれも合計特殊出生率(注)が人口置換水準(2.0強)以上であった時期は過ぎているが、最も高いフランス、デンマーク、イギリスで1.75(フランスは98年、他は96年)、最低のドイツで1.32(96年)と、その水準には幅がある。
一方、米国では、2.03(96年)と、比較的高い水準にある。
(注)ある国又は地域のある年における15歳から49歳までの女性の年齢別出生率(その年のある年齢の女性の人口を分母とし、その年にその年齢の女性が出産した子どもの数を分子とする比率)の合計値。

(変化の軌跡は大別して4つの類型)

欧州の6か国及び米国はいずれも1960年代半ば前後から合計特殊出生率の相当な低下を経験しているが、変化の軌跡を大別すると下記の4つの類型に分けることができる。

(1) 60年代半ばから70年代半ばまでに大きく低下したあと80年前後に若干回復し、その後はかなり緩やかな低下傾向にあるフランス・イギリス

フランス・イギリスは、低下傾向が始まる直前の60年代前半ピーク時の合計特殊出生率は2.9程度(欧州6か国中の上位2・3位)と相対的に高めであった。その後10数年程度の間に1.0以上の大幅な低下を経験した上で、80年前後に若干回復した。その後は、長期的には、かなり緩やかな低下傾向にあり、最近では1.7台となっている。

(2) 低下の趨勢が続いてきたドイツ

ドイツでは、低下傾向が始まる直前のピーク時1964年の合計特殊出生率は2.5程度であったが、その後、上下の波はあるが低下傾向が趨勢として続いており、94年には1.24と最低値を経験している。なお、その後、若干の回復がみられ、96年には1.32となっている。

(3) 60年代から70年代半ばにかけて大きく低下したあと、1.5〜1.6程度で比較的安定して推移しているオランダ

オランダでは、低下傾向に転じる前の60年代のピーク時点では合計特殊出生率は3以上と欧州6か国中最も高い率であったが、70年代半ばまでの急速な低下期に1.6程度まで下がり、その後は1.5〜1.6程度で比較的安定して推移している。

(4) 比較的大きな回復を経験しているデンマーク・スウェーデン・アメリカ

デンマーク・スウェーデンでは、低下傾向が始まる前の60年代半ばのピーク時の合計特殊出生率は、それぞれ2.6、2.5程度であった。その後80年代前半まで低下傾向が続いたが、いずれの国も、その後回復基調に転じ、0.5ポイント前後の比較的大きな幅の上昇を経験している。但し、スウェーデンについては、91年以降は再び大幅に低下し、1997年には1.52となっている。
アメリカでは、60年代前半の合計特殊出生率3.6以上の水準からその後大きく低下し、76年には1.77と最低水準を経験した。その後は、緩やかな上昇を経験し、89年からは2.0を若干上回る水準を維持している。

(年少人口割合と老年人口割合の状況)

年少人口割合(0〜14歳)は、ドイツが16.1%と最も低い。デンマーク、オランダ、スウェーデンは18%台、フランス、イギリスは19%台となっている。(フランスのみ93年、他は96年)また、アメリカは21.6%(97年)と、最も高率となっている。
老年人口割合(65歳〜)は、アメリカが12.7%(97年)と最も低い。次いでオランダが13.3%、フランスは14.5%、デンマーク、ドイツ、イギリスは15%台、最高のスウェーデンは17.4%となっている(フランスのみ93年、他は96年)。
なお、日本は98年で年少人口割合15.1%、老年人口割合16.2%となっている。

2 各国の取組みの総合的な状況

各国の取組の総合的な状況に関し、近年における合計特殊出生率の軌跡の類型ごとに大局的に観察する。

(1) フランス・イギリス

これら2ヶ国については、合計特殊出生率の推移の傾向には相当類似したものが見られるが、今回整理した3つの政策分野の内容と組み合わせのあり方には下記のような異同が見られる。
フランス
フランスは、働き方の関係では最長3年と長めの期間の育児休業制度が設けられているが、休業中は原則無給であり、取得者の95%以上が女性であるなど、固定的な性別役割分担の慣行の存在がうかがわれる。
また、育児休業期間の長さとの関連は明確ではないが、結果として3歳未満の低年齢児に対する社会的な保育サービスの供給の割合は保育所定員でみると6%程度と低めになっている。
経済的負担軽減措置については、税制において家族除数制度(いわゆるN分N乗方式)を採用するとともに育児経費についての控除制度を設けており、また、多子世帯ほど金額が逓増する児童手当制度を有している。なお、フランスは伝統的に国策として、出産奨励的な政策をとっていることに留意する必要がある。
イギリス
イギリスは、働き方の関係では、育児休業制度について、休業期間は3月と短く、かつその間は無給という法律案を99年3月現在で国会提出中であり、法制的には就労と育児の両立を図る休業制度はまだ整備されていない。ただし、個別の労使交渉等に基づき家族に関する責任と仕事の両立を可能とするための様々な多様な働き方を実施している個別企業の例はみられる。
保育については、集団型の保育サービス提供の場である保育所の定員と、個別の保育者による家庭型の保育サービスを提供する個別保育者の対応児童数を合算しても、5歳未満児数の10数%程度であり、1998年に全国保育戦略を策定して計画的な保育サービスの量の確保と質の向上につとめている。
経済的負担軽減については、児童手当導入時に税制における児童扶養控除制度を廃止した。なお、児童手当の金額設定に際しては第2子以降は第1子よりも低額としている。

(2) ドイツ

働き方に関しては、育児休業制度は期間は最長3年と長めであるが、育児手当は出産手当と合わせて月600マルク(4万円)とされており、取得者の98%は女性と、固定的な性別役割分担の慣行の存在がうかがわれる。なお、男性の育児休業取得を促進するため所管省庁においてキャンペーンを行うとともに、父母による同時取得等の制度の弾力化を目的とする法改正の検討が行われている。
保育については、3歳未満児数に対する保育所利用可能人員の割合は旧西ドイツで2%、旧東ドイツで41%、全体では6%と低くなっている。
経済負担軽減に関しては、税の児童扶養控除制度と児童手当との選択制という制度が採用されている。なお、児童手当は、第3子、第4子以降でわずかずつ高くなることとされている。

(3) オランダ

働き方に関しては、育児休業制度は期間3月程度でその間無給というものであるが、子どものいる女性の40%、男性の10%が取得と、比較的男性の取得割合が他国よりは高くなっている。なお、98年にはこの既存の育児休業制度と別に、育児、教育、介護を理由とした休業制度が採用されている他、近年、政府・労使一体でパートタイム労働(賃金、休暇等においてはフルタイムとパートタイムの間で労働時間数に比例して同等な取扱いがなされている)を推進している点に特徴が見られる。
保育に関しては、5歳未満児数に対する保育所定員の割合は8%となっており、保育所3万か所で待機児が発生しているとの調査がある。
経済的負担軽減策については、税制上保育費用に対する控除制度がある他、子どもの年齢に応じて金額が逓増するという方式をとる児童手当が支給されている。

(4) デンマーク・スウェーデン・アメリカ

デンマーク・スウェーデンは、いずれも、25〜44歳の女性の労働力率が8割程度から9割弱と高くなっているとともに、3歳未満児数に対する社会的な保育サービスで対応している割合が40〜50%と高い。また、育児休業制度における休業中の給付額の水準は、「親保険」等により、相対的に高くなっているが、デンマークでは給付率は順次引き下げられてきている。育児休業期間は、デンマークでは13〜52週、スウェーデンは合計では18月までであるが子どもが8歳に達するまでの部分休暇取得を権利化しているなど、弾力的に活用できるようにするための配慮がみられる。取得者の約10%(デンマーク)から30%(スウェーデン)が男性と、職場面でも家庭面でも男女共同参画が進んでいるものと見受けられる。
社会的な保育サービスの提供形態については、保育所施設において集団 的に対応するという方式のほか、子育て中の親が自分の家で他の家庭の子どもも預かるという方式や、家庭に赴いてそこで個別に子どもをみるという方式など、いわゆる個別保育者による保育についても、地方政府が何らかの支援を行っていることが多いことがあげられる。
これらの個別保育者については、地方自治体の許認可と研修受講を求めるなど、サービスの質を確保するための方策が講じられている場合が多い。
経済的負担軽減に関しては、両国とも、税制における児童扶養控除制度はなく、児童手当が支給されている。
アメリカは、働き方に関する制度では、育児休業については1年間に12週間の無給休暇の制度が法定されているにとどまる。なお、イギリスと同様、個別の労使交渉等に基づき家族に関する責任と仕事の両立を可能とするための様々な多様な働き方を実施している個別企業の例はみられる。
保育に関しては、全国一律の制度はなく、詳細は把握できていない。
経済的負担への対応に関しては、税制において、児童扶養控除(所得控除)の制度がある。児童手当制度はない。

(5)総合的な横断的観察

基本的な視点の箇所で述べたとおり、各国の関係する取組みは様々な組合せの中で機能しており、その全体的な姿を見ていく必要があるが、まず、今回取り上げた3つの分野毎に横断的に見てみると、各分野の中でも個別の施策の組合せには多様なものがある。
働き方の関係では、例えば育児休業制度については、期間設定はイギリス(法案)の3月からフランス、ドイツの最長3年までと約12倍の開きがある一方、その間の所得補償についてはイギリス(法案)やアメリカの無給からスウェーデンの所得の80%までと相当な幅がみられ、かつ期間と所得補償の組合せ方には様々な形態がみられる。
保育の関係では、保育所において集団的に対応するという方式と個別保育者による保育という方式との組合せについてみると、後述するように必ずしも地方政府レベルの施策の実態を含め詳細は明確ではないが、今回の調査で把握できた範囲でみた場合、スウェーデンやオランダなど集団的保育の比率が高い国と、イギリスやフランスなど個別保育者による保育の比率が高い国がみられる。
経済的負担軽減措置についても、税制のみで児童手当での対応はみられないアメリカ、税制と児童手当の双方で対応しているフランス・オランダ、税制と児童手当で選択制のドイツ、児童手当のみで税制での対応はみられないその他の国と様々な組合せがみられる。
このように多様な組合せの下にある個々の施策と、出生率の関係については、IIで述べたとおり、厳密に定量化することは極めて困難である。例えば、ドイツは7か国の中でも、高い給付水準の児童手当制度を有するが、結果として合計特殊出生率は最も低い水準にあることからわかるように、個別の施策の充実が直ちに出生率にプラスの影響を与えるというような推論を行うことには無理がある。また、アメリカのように出生率の回復について、必ずしも特定の施策と関連づけることが難しい例も見られる。
むしろ、当審議会が97年秋にとりまとめた少子化に関する基本的考え方における我が国の少子化の要因分析を踏まえて大局的に捉えると、自国の置かれた固有の状況の下、総合的な視角の中で個別分野に位置付けを与えることが肝要となる。そのような中で、固定的な性別役割分担の是正をはじめとして、我が国の状況にふさわしい施策を各分野にわたり適切に整備していくことが、結果として子どもを産み育てることと仕事のバランスを確保する上で重要ではないかと考えられる。

IV 各国別詳細報告

(別紙)

V おわりに

(今回の報告の性格)

今回の報告においては、我が国において少子化の要因への対応につき今後さらに検討し、取り組んでいく上で参考になると考えられる他国の経験を、働き方、保育、経済負担への対応という3つの分野を中心に、可能な限り総合的に把握して整理するよう努めた。その整理から浮かび出る重要な一点は、各種の取組みを個別に抜き出して比較するのではなく、総合的な判断を基礎に据えて吟味することの重要性である。したがって、さらに、例えば住宅分野における家族支援的な取組みなど、諸外国で「家族政策」というときに含まれてくる今回は整理するに至らなかった他の関連する政策分野については、別途検討を要する。また、取り上げた3つの分野それぞれについても、次のように各分野ごとに固有のいくつかの未整理な部分があることに留意する必要がある。
まず、働き方については、今回は法制面の把握に重点を置いているが、例えばイギリスにおける法制化されていないが個々の労使交渉や改革の取組みの結果として既に実行されているであろう多様な働き方の情報などについても、これを取り上げることができれば参考になることが分かる。
保育については、今回の作業においては、各国とも中央政府の保有している情報の範囲で整理することとせざるを得なかったが、さらに実際には、この分野は地方政府が担っている部分を位置付けて吟味する必要のあることが分かる。
経済的負担への対応については、各国の税制や児童手当をめぐり、その評価について各国内で様々な議論がある模様であり、それらの議論の動向にも留意する必要がある。また、企業の賃金体系における年功的な要素の強弱や扶養手当制度との関係にも留意する必要がある。
さらに、今回取り上げた3つの分野に位置付けを与えるための視角としては、個別分野の背後にある全体にわたる総合的な背景要因ともいうべき男女共同参画を含む各国社会の慣行・文化それ自体に着目する必要がある。なお、国際的な側面では、移民問題など、出生率への影響の可能性も考えられる問題についての分析は今回は行っていない。

(国民的な議論と取組みへの期待)

これらの未整理な部分はあるが、本報告は、各国における少子化の動向と対応方策の概要につき基本的な認識を持つために有用と考えている。少子化の進行は各国にとって程度の差はあるが共通する現象であり、その対応の総合的なあり方について相互に参考にしていく余地があると考えられる。
また、特に広く各方面に情報提供するために、各国の出生率の動向や3つの分野における関連する取組みを本報告書として整理する作業を進める中で、上記のように、個別の施策を見るだけでは不十分であり、各種の取組みの全体像をその社会的文化的背景も含め総合的に把握することの重要性が改めて明確になったと考える。
我が国が、今後、将来の展望を切り拓いていく際にも、これらの国々と我が国における背景要因の異同も十分に踏まえながら、総合的な取組みのあり方を考える視点が求められている。
この報告が、そのようなものとして広く参照され、今後の国民的な議論と取組みの推進に資するものとなることを期待する。


(別添)

報告書の基礎とした意見聴取等一覧

○ 平成8年10月22日

Britta Hoem氏(スウェーデン統計局企画部長)
資料:Britta Hoem and Jan M.Hoem "Family Policies and fertility trends in Sweden"

○ 平成9年2月6日

Charlotte Hoehn氏(ドイツ連邦人口研究所所長)
資料:Fertility and Family Policy in Germany
-Experiences from one to two to one Germany-

○ 平成9年12月16日

Kathleen E.Kiernan氏(ロンドン経済大学講師)
資料:Parenthood and Family Life in the United Kingdom
Jean-Claude Chesnais氏(フランス国立人口研究所部長)
資料:Below-Replacement Fertility in the European Union(EU-15):
Facts and Policies,1960-1997

○ 平成10年11月26日

Lisbeth B.Kunudsen氏(デンマーク人口研究センター研究講師)
資料:Recent Fertility Trends in Denmark - a Discussion of the Impact
of Family Policy in a Period with Increasing Fertility ."
Gijs Beets氏(オランダ学際人口研究所研究員)
資料:Population issues in the Netherlands

○ 平成11年6月22日

伊奈川 秀和氏(九州大学助教授)
資料:フランスの少子化対策、イギリスの少子化対策
網野 武博氏(上智大学教授)
資料:少子化への対応に関する諸外国の状況:ドイツ及びオランダ
津谷 典子氏(慶應義塾大学教授)
資料:スウェーデン・デンマークの出生動向と家族政策

(注)議事録は厚生省ホームページ(http://www.mhw.go.jp)において、資料は厚生省大臣官房政策課において閲覧可能である。


別 紙

1.フランス

(1) 合計特殊出生率の動向とその背景

(1) 動向
 フランスは、人口が5,850万人(1997年:本土)で、その出生率は、西欧諸国の中では、比較的高い水準にある。
 すなわち、その合計特殊出生率は、1964年(2.87)を境に1970年代後半までの10数年間に大きく低下した(1976年で1.87、1978年で1.86)。1980年代以降は緩やかな低下傾向にあり、1993年及び1994年には最低の1.65を記録した。
ここ数年はやや上昇し、1998年現在で1.75(暫定値)となっている。
 なお、年少人口割合は19.9%、老年人口割合は14.5%(1993年)となっている。
(2) 背景
 フランスにおいては、18世紀半ば以降出生率が長期的には低下してきたこともあり、第2次大戦前から出生奨励主義的な政策がとられてきている。

(2) 働き方に関連する施策

(1) 育児休業
【休業の期間及び形態】
 1年以上の勤務期間がある被用者は、出産休業(第1子又は第2子については、予定日前6週間及び出産後10週間)明けから児童が3歳に達するまで、児童の養育のための育児休業(conge parental d'education)又はパートタイム就労(travail a temps partial)を取得することができる。
【休業中の所得補てん】
 休業期間中は、労働協約に定めのない限りは、無給である。ただし、被用者については、育児や創業などのために休暇を長期にわたり繰り越すことができる「労働時間貯蓄勘定制度」(compte epargne-temps)により、収入を得ながら休業することができる場合がある。また、第2子以降の場合には、家族給付制度の1つである育児手当(allocation parentale d'education)について、就労時間を調整する程度に応じた額を、被用者であるか自営業者であるかにかわらず、最長36月(子どもが3歳に達するまで)受給することができる。
(参考)育児手当月額(1998年)
家族手当算定基礎月額(2,131.68フラン)に次の割合を乗じた額
全面休業 142.57%(約 3,039フラン≒60,100円)
法定労働時間の50%までの就労 94.27%(約 2,010フラン≒39,800円)
法定労働時間の50超〜80%までの就労 71.29%(約 1,520フラン≒30,100円)
注)円への換算レートは、1フラン19.79円(1999年4月1日日本銀行発表)を使用。以下同じ。

【取得状況】

 育児休業取得に係る届出制等がなく、正確な統計はないが、制度所管省によれば、休業取得者の95%以上が女性である。
(2) 35時間労働制
 2000年1月から(小規模事業場については2002年1月から)法定労働時間が週35時間となる。なお、当該時間はその実施に一定の手続を要することとなる時間外労働の基準としての効力を持つものであって、労働時間の上限を定めるものではない。

(3) 保育サービス

(1) サービスの類型
 サービス形態に着目すれば、施設で保育を行う集団的受入(accueil collectif)と、個別保育者による個別的受入(accueil individuel)に分けられる。また、それ以外にも、自宅に保育者を雇って保育する場合(在宅保育:garde d'enfanta domicile)がある。なお、3歳児以降については幼稚園(ecole maternelle)もある。
ア.集団的受入
大きく分けて、次の3つの類型がある。
(ア) 集団型保育所(creches collectives)
 親が働いている3歳未満児を対象に、肉体及び精神の健全な発達に必要な保育を実施する施設である。規模や運営形態が多様化しており、伝統的なもののほか、親が非営利法人を設立して運営する「親保育所(crechesparentales)」、あるいは、個別保育者が集まり保育する「家庭型保育所(creches familiales)」がある。
(イ) 児童園(jardins d'enfants)
 3〜6歳未満児(入所に適応する場合には2歳〜)を対象に、遊戯を通じて児童の発達を確保するための保育施設である。
(ウ) 託児所(haltes-garderies)
 6歳未満児を対象に、非定期的に、かつ、短時間(数時間又は半日)だけ親が子どもを預ける保育施設である。
イ.個別的受入
 母親補助者/個別保育者(assitante maternelle)は、自宅において児童を受け入れて保育を実施する者であり、県の認可を受け、さらに研修を受けることが必要である。
 なお、6歳未満児の保育を個別保育者に委託する場合には、個別保育者雇用家庭補助(aide a la famille pour l'emploi d'une assistante maternelle:個別保育者の雇用主として親の賃金に賦課される社会保険料負担を家族手当金庫等が補てんする制度)の対象となる。
(2) サービスの需給状況
3歳未満児の主要な受入施設である集団型保育所の定員は、13.6万人(97年)であり、これは国内の3歳未満児(213.5万人:96年)の6.4%程度である。
(参考)各種保育サービスの供給の状況(1997年)
集団型保育所 (定員)※親保育所を含む 136,000人
家庭型保育所 (登録児童数) 59,100人
児童園 (定員) 10,700人
託児所 (定員) 71,900人
認可日中個別保育者(受入可能人員) 292,500人

(4) 子どもを養育する家庭の経済的負担軽減の措置

(1) 税制
 扶養控除制度はないが、所得税について、家族除数制度(いわゆるN分N乗方式)が採用されており、子どもの数に応じ税負担の軽減が図られている(軽減額の上限あり)。
 また、共働き世帯の家計等が保育所や個別保育者等に要した費用(育児経費:frais de garde des jeunes enfants)の控除や、育児に限らず日常生活に係るサービスのために人を雇った経費(在宅被用者雇用:emploi d'un salaries adomicile)についての控除がある。
(参考)家族除数制度
夫婦及び子ども(家族)を課税単位とし、世帯員の所得を合算し、不均等分割(N分N乗)課税を行うもの。

(2) 家族給付の種類と概要
 多様な家族給付(prestations familiales)が制度化されている。家族給付制度は、扶養児童の増加を保険事故と構成して、これに対する費用補てんをその基本的な性格とするものであるが、所得制限があるもの、就労の有無等を要件とするものなど、その政策的意図は多様なものとなっている。

ア.家族手当
 代表的な家族給付制度である家族手当(allocations familiales)は、その前史は19世紀末まで遡り、1930年代に制度化されたものである。
 第2子以降について、原則義務教育終了(16歳)まで給付される(子どもが被用者でない場合等には、19歳ないし20歳到達まで延長して給付される)。
所得制限はない。
 給付額は、子ども2人の場合は家族手当算定基礎月額(2131.68フラン)の32%、3人の場合は73%、4人の場合は114%などと、多子世帯になるほど重点的に給付され、また、子どもが10歳超ないし15歳超の場合の加算制度がある。

(参考)家族手当の給付月額(1998年:本土)
家族手当算定基礎月額(2,131.68フラン)に次の割合を乗じた額
子ども2人 32% (約 682フラン≒13,500円)
子ども3人 73% (約 1,556フラン≒30,800円)
子ども4人 114% (約 2,430フラン≒48,100円)
子ども5人 155% (約 3,304フラン≒65,400円)
第6子以降1人当たり 41% (約 874フラン≒17,300円)
10歳〜15歳到達までの加算 9% (約 192フラン≒ 3,800円)
15歳以降の加算 16% (約 341フラン≒ 6,700円)
イ.その他の給付
○ 補足家族手当(complement familial)
 3人以上の3歳以上の子どもを養育する場合に給付。
○ 乳幼児手当(allocation pour jeune enfant)
 妊娠4月から3歳まで給付。
○ 育児手当(allocation parentale d'education)
 2人以上の子どもの養育のために未就労等となる場合に給付。
○ 在宅児童保育手当(allocation de garde d'enfant a domicile)
 6歳未満の子どもを養育するために保育者を雇う場合に給付。
○ 個別保育者雇用家庭補助(aide a la famille pour l'emploi d'uneassistante maternelle)
 6歳未満の子どもの保育を個別保育者に委託する場合に補助。
○ 新学年手当(allocation de rentree scolaire)
 6歳以上18歳以下の子どもが新学年を迎えるに当たって給付。
○ 単親手当(allocastion parent isole)
 単親が1人で子どもを養育する場合に給付。

(5) その他

 フランスでは、「家族に関する全国会議」が毎年6月頃に開催されている。この会議は、首相、関係大臣、関係団体(労働組合、経営者代表、父兄代表等)が参加するものであり、政府の政策発表のほか、関係者の意見・情報交換が行われている。
 また、この全国会議の成果を実施に移すため、1998年に、家族政策を推進する政府組織として、「家族関係省代表部」が設置された。

2.ドイツ

(1) 合計特殊出生率の動向とその背景

(1) 動向

ドイツの総人口は、8,270万人(1997年)でEU15か国中最も多い。
合計特殊出生率は、旧西ドイツでは、1965年の2.5程度から低下を続け、85年に1.30を記録した後、若干回復した。一方、旧東ドイツでは、同様に60年代後半から低下し、74年に1.54を記録したものの、その後は回復し80年代半ばまで1.7〜1.9で推移した。しかし、人口置換水準に達することなく再び低下した。
東西ドイツ統一後の出生率は、人口置換水準を大幅に下回る低い水準で推移し、94年には1.24と過去最低を記録した。96年は1.32となっている。
なお、年少人口割合は16.1%、老年人口割合は15.7%(1996年)となっている。

(2) 背景

1960年代後半からの旧西ドイツ、旧東ドイツの両国における出生率の低下は、結婚率の低下と子どもを持たないカップルの増加によると考えられる。
旧西ドイツでは、70年代以降も引き続きこの傾向が継続したが、特に、子どもを持たない夫婦の増加の影響が大きく、子どもを2人以上持つ家庭と、子どもを全く持たない家庭との二極分化が生じた。
旧東ドイツでは、70年代後半に出生率はある程度回復した。これは、この時期に保育所の整備など育児と就労の両立支援策が強力に進められた結果といわれている。中でも、未婚の母親を優遇する政策を背景に婚外子の割合が急増した。しかし、2人の子どもを持つ家庭は増加したものの、3人以上の子どもを持つ家庭は余り増えず、人口置換水準までに至ることなく、80年代後半に再び低下することとなる。
ドイツ統一のあった91年以降、旧東ドイツ地域で出生率が急激に低下したが、出生率だけでなく結婚率や離婚率等も合わせて急低下したことからみて、社会的混乱や失業の増大などにより、将来に対する不安が高まり、家族形態を変えないという志向が強くなったことが、出生率にも大きな影響を与えたものと考えられている。また、東ドイツ時代の家族政策が、統一に伴い縮小される結果となったことも影響を与えたものと考えられる。

(2) 働き方に関する諸施策

(1) 母体保護(Mutterschutz)

妊娠中又は授乳期間中の被用者については、母体保護法に基づき、産前6週間、産後8週間は就業させてはならないこととされている。
また、妊娠期間中から分娩後の4か月後まで解雇されないことが保証されている。
休業期間中は、出産手当(Mutterschaftsgeld)(給付額は、加入する医療保険等によって異なる)が支給される。

(2) 育児休業(Erziehungsurlaub)

【休業期間】
3歳未満の児童を養育する被用者は、「育児手当及び育児休業に関する法律」に基づき、最長3年間の育児休業を取得することができる。

【所得保障(育児手当)】
家庭における両親の育児時間を確保するため、2歳未満の児童を養育する者であって、1週間の労働時間が19時間未満の者に対して、月額600マルク(約40,000円)の育児手当(Erziehungsgeld)が支給される。被用者に限らず、専業主婦や自営業者も支給対象となる。
生後6か月までは年収10万マルク(約6,636,000円)を超えると支給されない。7か月目以降は、所得制限が段階的に強化される仕組みとなっている。
児童手当等の他の手当と併給されるが、出産手当が支給される場合には、その額が600マルクに満たない場合に限り、育児手当として差額を支給する。
州によっては、生後3年目の児童の養育について、引き続き育児手当を支給することとしているところもある。

(注) 円への換算レートは、1マルク66.36円(1999年4月1日日本銀行発表)を使用。
以下同じ。
【取得状況】
夫婦のいずれも取得可能であり、また、夫婦の間で3度まで交替することが可能であるが、所管省庁によれば、取得者の約98%は女性である。
現在、男性の取得を促進するため、所管省庁においてキャンペーンを行うとともに、制度の弾力化(父母による同時取得、3歳未満の育児とする要件の緩和等)を目的とする法改正の検討が行われている。

(3) 保育サービス

(1) サービスの類型等
ドイツでは、全国統一の保育制度はなく、16の州ごとに独自の保育サービスの類型がある。典型的な保育サービスは以下のとおり。
デイ施設(Tageseinrichtungen)

デイケア(Tagespflege)

 

  保育所及び学童保育所については、全日(午前+昼食+午後)のサービスを提供する施設が約9割となっているが、幼稚園については、全日でサービスを提供する施設は3割強程度にとどまる(特に旧西ドイツ地域では2割以下)。
最大の州であるノルトライン・ヴェストファーレン州では、以下のデイ施設がある。

(2) 需給状況
旧東ドイツ地域では、0歳児の保育を含め保育サービスは比較的充実している。
旧西ドイツ地域においては、3歳〜6歳児のデイ施設の利用可能人数は児童数の 85%をカバーしているが、3歳未満児のそれは6.3%にとどまっている。
近年では、3歳未満児の保育不足解決の糸口として、保育ママの処遇改善等を通じた、デイケア(家庭型保育)の普及も検討されている。

年齢層別デイ施設の利用可能人数/各年齢層の児童数 (1994年)
  0歳〜2歳 3歳〜6歳 小学校期
全 国 6.3% 90.7% 17.2%

旧西独地域

2.2% 85.2% 5.1%

旧東独地域

41.3% 116.8% 58.2%

(出所)"Einrichtungen und tatige Personen in der Jugendhilfe"(Statistisches Bumdesamt)

(4) 子どもを養育する家庭の経済的負担軽減の措置

(1) 税制
児童の最低生活を保障することを目的とした児童扶養控除と、単親 世帯等の育児に係る経済的負担を軽減する控除制度がある。

ア.児童扶養控除(Kinderfreibetrag)
18歳未満の児童を扶養する世帯に適用がある。対象者は、児童扶養控除の適用と児童手当の受給のいずれかを選択することとなっている。

イ. 育児費に係る控除
就業しながら16歳未満の子どもを養育する単親世帯、又は長期の疾病や障害のある子どもを持つ両親世帯が、保育所、幼稚園、学童保育所、昼間保育施設又は保育ママによる保育に要した費用について、控除が認められている。
この育児費に係る控除については、両親世帯への適用の拡大を検討している。

(2) 児童手当(Kindergeld)
児童手当は、18歳未満の児童(失業者は21歳未満、学生等は27歳未満、障害のため生計維持困難な者は無制限)の最低生活を保障することを目的として、所得税法等に基づき支給される。
また、第1子から支給される。
所得制限は、18歳未満の児童についてはないが、18歳以上の者については、子ども本人の所得が年収13,020マルク(約864,000円)以上のときは支給されない。
給付額は、次のとおり多子世帯に重点がおかれている。

(参考)児童手当の給付月額(1998年)
・第1子・第2子 250マルク (約16,600円)
・第 3 子 300マルク (約19,900円)
・第 4 子 以 降 350マルク (約23,200円)


3.オランダ

(1) 合計特殊出生率の動向とその背景

(1) 動向
 オランダの総人口は、1,570万人(1998年)である。
 第2次世界大戦後に比較的長期間のベビーブーム期を経験したが、合計特殊出生率は、60年代半ばから、それまでの3強の水準から低下を始め、70年代半ばに1.6台となった後、近年まで1.5〜1.6程度で推移し、96年現在で1.53となっている(最低は83年の1.48)。
 なお、年少人口割合は18.4%、老年人口割合は13.3%(1996年)となっている。

(2) 背景
 1970年代からの合計特殊出生率低下の要因としては、女性の高学歴化と労働市場への参加の拡大、家族に対する価値観の変化などを背景として、結婚・出産年齢が上昇したことが指摘されている。
 第1子の平均出産年齢は、1970年の24.0歳から97年には29.0歳まで上昇している。

(2) 働き方に関連する施策

(1) 出産休業(Maternity leave)
妊娠中又は授乳期間中の被用者は、疾病給付法(Sickness BenefitAct)に基づき、産前6週間から産後12週間まで、出産休業を取得することができる。この休業は、フルタイムであるかパートタイムであるかに関わらず、また、雇用期間に関わらず取得することができる。
休業中の最低16週間は、通常の賃金の100%が保障される。

(2) 育児休業(Parental leave)
【休業期間及び休業中の所得保障】
 1年以上雇用されている被用者が8歳未満の子どもを養育する場合は、育児休業法に基づき、労働する13週の間又は連続した3か月間の育児休業を取得することができる。
 フルタイム労働であるかパートタイム労働であるかは問わないが、1週間の所定労働時間が20時間未満の被用者は適用除外とされている。
 休業期間中は、労働協約に特別の定めのない限りは、無給である。

【取得状況】
 男女のいずれも取得可能であるが、所管省庁によれば、子どもを持った女性の約40%、男性の約10%が取得している。

【育児に係るその他の休業制度】
 男性の育児への参加を推進するとともに、ワーク・シェアリングによる失業率低下を図るなどの観点から、「就業中断期間の所得保障に関する法律」(Financing of Career Interruption Act)に基づく新たな休業制度が1998年1月より施行されている。
 この制度は、育児や介護といったケアに従事したり教育を受けることを理由として就業を一時中断する場合に、休業取得者に対して一定の所得を保障するともに、そのために空席となった部署に代替要員を充てるというものである。代替要員には、生活保護受給者等の求職者が充てられる。
 休業期間は18か月を限度とし、1月当たり960ギルダー(約56,000円)が支給される。
 なお、この新しい法律による育児休業は、従来からの育児休業法による育児休業とは別に取得することが可能である。
(注) 円への換算レートは、1ギルダー58.30円(1999年4月1日インターバンクレート)を使用。以下同じ。

(3) パートタイム労働政策

ア.労働市場の状況
 女性の労働力率は、1970年代半ばから上昇し、1960年の約16%から、97年には約62%となっている(なお、60年のデータは、15歳未満の女性も含むことから、相対的に過小評価となっている)。
 結婚、出産期の若い女性の労働力率も大きく伸びている。
(参考)女性の労働力率(1960年 → 96年)
20歳〜24歳 52.8% → 78.1%
25歳〜29歳 22.5% → 81.6%
30歳〜49歳 15.9% → 66%〜73%
(出所)Yearbook of Labour Statistics(ILO)
 これはパートタイム労働の拡大によるところが大きい。オランダにおいては、1960年代末からパートタイム労働に対する需要が高まり、70年代末から政府と労使団体が一体となってパートタイム労働を促進してきた。その結果、被用者に占めるパートタイム労働者の比率(以下「パート比率」)は3分の1を超え、特に女性のそれは3分の2に達している。

(参考)
・パート比率の変化

7%(1973年) → 37%(95年)
・男女別のパート比率(95年)
男性 17% 女性 67%

イ.パートタイム労働政策の推移
 パートタイム労働政策が推進され始めた1970年代末においては、財政支援策が中心であったが、80-年代半ば以降、パートタイムとフルタイムの均等処遇の実現へ中心が移っていった。

(参考)パートタイム労働政策の例
【財政支援策】
・パートタイム労働を導入した事業主に対する補助金交付(1979年)
・ パートタイム労働促進等の観点から行う調査に対する補助金交付(1980年代)
【パートタイムとフルタイムの均等処遇の確保】
・ 労使団体に対するパートタイム労働者の処遇改善要請 (1980年代後半)
・最低賃金及び休日に関する法律上の格差是正(1993年)
・パートタイム労働者に対する職域年金の適用排除の禁止(1993年)
・労働法規における均等処遇原則の導入(1996年)
・ 労働時間の短縮に関する被用者の権利に関する法律制定の検討
(1999年現在検討中)

ウ.パートタイム労働の処遇
 現在、パートタイム労働者は、賃金、休暇、公的年金、疾病保険などの面で、労働時間数に比例してフルタイム労働者と同等の取扱いがなされている。ただし、育児休業など、労働時間によって適用の異なる制度もある。

(3) 保育サービス

(1) サービスの類型
 オランダの保育サービスは、保育所(day care center)がその中心である。また、保育所は、その対象年齢により、0歳から4歳までの保育と、4歳から12歳までの学童保育に区分される。
 また、4歳までの児童については、3人以下の児童を対象とする家庭的保育(個別保育者)があり、保育定員の10%程度(6,000人分程度)を占めているとも言われている。

(2) 需給状況
  保育サービスの需給状況については、3万か所の保育所で待機児が発生しているという調査もあり、全体的に不足している。
 特に、4歳から12歳までの学童保育は、保育所定員数75,000人のうち、15,000人分を占めるに止まっており、その不足解消が課題となっている。

(3) 保育施策の方向等
 育児と仕事を両立させ、女性の労働参加を高めるなどの観点から、政策的に保育施設の拡充が図られている。特に、近年は、事業主が、優秀な労働力を確保するために、税制上の優遇措置を受けて保育所を整備する割合が高まっている。
保育サービスの状況(1989年と1996年の比較)
  1989年 1996年
保育を実施している地方自治体数(市) 200 600
保 育 所 の 定 員(人)(a) 20,000 75,000
事業主借上方式による保育定員(人)(b) 2,700 32,000
(b) / (a) 13.5%
42.7%

(出所)保健福祉スポーツ省児童養育課資料

(4) 子どもを養育する家庭の経済的負担の軽減

(1) 税制
税制においては、家族の状態に着目した控除が設けられている。

ア.保育に係る費用控除
フルタイムの労働者が、13歳未満の子どもについて、週5日以上の保育を保育所又は有資格の個別保育者に委ねる場合に、保育費用の控除が認められる。

イ.27歳未満の子の扶養控除
親が児童手当等の支給を受けずに子を扶養する場合に適用される。

(2) 児童手当(Child Benefit)
 児童手当は、児童の生活費を援助することを目的として、一般児童手当法(General Child Benefit Act)に基づき、第1子から支給される。
 給付額は、0歳以上6歳未満、6歳以上12歳未満、12歳以上18歳未満の3段階に分かれており、典型的な子どもの養育費に対して、それぞれその75%、85%、100%となるように設定されている。3か月単位で支給されており、1995年1月以降に生まれた児童については、以下の額とされている。

(参考)児童手当の給付額(1995年)
・0歳以上6歳未満(3か月) 316.82 ギルダー (約18,500円)
  1月当たり (約 6,200円)
・6歳以上12歳未満(3か月) 384.71 ギルダー (約22,400円)
  1月当たり (約 7,500円)
・12歳以上18歳未満(3か月) 452.60 ギルダー (約26,400円)
  1月当たり (約 8,800円)

 


4.デンマーク

(1)合計特殊出生率の動向とその背景

(1) 動向
デンマークの総人口は529.5万人(男性261.6万人、女性267.9万人:1998年)である。
合計特殊出生率は、1960年代中頃までは概ね2.5〜2.6程度で推移。その後低下し1983年には1.37まで低下したが、1980年代中頃から上昇し近年1.8程度で推移しており、1996年では1.75である。

(2) 背景
1983年までの合計特殊出生率が低下した時期は、女性の労働市場への参加が進み、男女の役割に関する考え方が変化し、同棲の増加等家族の変化が生じた時期であり、10歳代、20歳代前半といった若いカップルが第1子の出産を遅らせたことなどが指摘されている。
一方、1980年代中頃以降の合計特殊出生率が上昇した時期は、夫婦がともに働いているのが当たり前となった時期であり、それまで出産を遅らせてきた世代が子どもを産み始めたこと(25〜34歳の出生率が上昇するというコーホート効果)や、出産・育児に係る休業、保育所の整備など仕事と家庭の両立がしやすくなったことなどが指摘されている。
デンマークでは、積極的に出産を奨励する政策をとっているわけではないが、女性の労働市場への参加や同棲の増加等家族の変化に対応し、児童の福祉を重視する観点(「家族は子どもの成長の中核的要素であり、子どもの生活環境は親の責任である」との考え方)から家族政策を推進している。
また、個人の権利を尊重する観点から各種施策は、個人に対して行われる。例えば、育児サービスや児童手当などの受給者は子どもを持つ家庭や親ではなく、子ども自身とされている。

(2)働き方に関連する施策

○ 出産休業と育児休業(Maternity leave and Parental leave)
【出産休業】
 全ての女性は、出産予定日前4週間、出産後24週間の出産休業を取得できる。出産後24週間の休業のうち、はじめの14週間は母親のみが休業を取得できるが、父親も出産直後2週間の休業を取得できる。また、次の10週間は、父母のうちどちらかが休業を取得できる。
 所得保障については、失業給付最高額(月額11,300クローネ(19.5万円、1997年、平均的労働者の賃金の40〜90%程度に相当))までは政府が保障する。これを超える部分については、雇用主との合意による。

(注)円への換算レートは、1DKK=17.28円(1999年4月1日インターバンクレート)を使用。以下同じ。

【育児休業】
 0〜8歳の子どもをもつ親は、出産休業の後、育児のための13〜52週間の連続した育児休業を取得できる。親が育児休業を取得する場合、公的保育所等の利用は制限される。休業期間は、13週(子どもが1歳未満の場合26週)までは休むことが法的に認められているが、これを超える部分については雇用主との合意が必要である。
 所得保障については、失業給付最高額の60%の水準(月額6,780クローネ(11.7万円、1997年))までである。

【出産休業、育児休業の取得状況】
 出産休業や育児休業については、父親と接することが子どものためになるとの基本的考え方があり、父親も取得できることとなっている。
 実際の男性の取得状況をみると、出産直後の2週間の休業については、対象となる男性の58.2%が取得している(1995年)一方、14週経過後の出産休業や育児休業については男性の取得率の低さが指摘されている。男性の育児休業取得者は育児休業取得者全体の10%程度に止まっているとする研究もある。

(3)保育サービス

(1) 基本的事項
 保育サービスについては国が基準を作り地方自治体が運営しており、その内容等は地方自治体により多様である。原則として待機がないよう十分な量を用意することとしているが、その十分な量をどの程度とみるかについては地方自治体が決定する。
 保育サービスに係る費用の負担については、親の負担が最大30%程度であり、残り(少なくとも70%程度)を地方自治体が負担する。
 保育時間は、一般に、7:00頃から17:00頃であり延長等はあまりみられない。フレックスタイムの活用やパートタイム就労などにより、親が就業時間を工夫するのが一般的である。

(2) 類型
保育サービスについては、主に子どもの年齢により、次に例示するように様々な種類がある。
【施設保育】

【家庭型保育】

(3) 利用状況
デンマークでは、0〜2歳児の51.2%(10.7万人)、3歳〜5歳児の86.9%(17.7万人)が保育所(Day-care)等保育サービスを利用している。

(4)子どもを養育する家庭の経済的負担軽減の措置

(1) 税制における扶養控除制度
自分の親や子どもに係る扶養控除制度はない。無所得の配偶者に係る控除はある。

(2) 一般家族手当(General family allowance)
18歳未満の児童に対して、年齢に応じ、一般家族手当(General family allowance)が給付される。
給付対象は第1子以降で、給付期間は18歳未満である。所得制限はない。
(参考)給付額(1999年)
(単位:クローネ)
  (年額) (月額)  
0〜 2歳 11,300 942 (1.6万円/月)
3〜 6歳 10,200 850 (1.5万円/月)
7〜17歳 8,100 675 (1.2万円/月)

(3) その他の手当
以下のような様々な給付があるが、いずれも、子ども及び親がデンマークに居住していること、子どもが婚約していないこと等の要件がある。

(5)その他

 デンマーク政府は、15省庁の大臣からなる"The Government Policy Committee on Children"(議長は社会省大臣)、事務担当者からなる"The Inter-Ministerial Committee on Children"(社会省が事務局)により、省庁間の連絡体制をとり、出生率が上向いた1987年頃から強力に児童福祉施策を推進している。


5.スウェーデン

(1)合計特殊出生率の動向とその背景

(1) 動向
スウェーデンの総人口は884.8万人(男性437.2万人、女性447.6万人:1997年)で手厚い家族政策と比較的高い出生率で知られる北欧諸国のひとつであるが、近年の出生率の動向は独特である。
 1960年代中頃までは概ね2を超える水準で推移していた合計特殊出生率は、1960年代後半から徐々に低下し1983年には1.61まで低下した。
 その後、1980年代後半から上昇し1990年には2.13となったが、再び低下し1997年には1.52と過去最低を記録している。

(2) 背景
 1960年代後半からの合計特殊出生率低下の要因としては、労働力不足に伴い多くの女性が労働市場に参加するようになったことによる晩産化、第3子以降の出生の減少などが指摘されている。
 1980年代後半からの上昇の要因としては、出産・育児と女性の家庭外就労の両立を目指した包括的家族政策の効果との見方が一般的である。
 1990年代の低下の要因としては、(ア)若年を中心とした失業率の上昇、(イ)社会保障給付の削減による先行きに対する不安の醸成(出生率の低下は給付削減前から始まっているが、最近の低下の要因として指摘)、(ウ)経済の動向などムード、(エ)1980年代後半のベビーブームの反動などが指摘されている。

(2)働き方に関連する施策

(1) 基本的事項
 出産・育児に伴う休業は、出産前後各6週間母親のみが取得できる出産休業の他、子どもが18カ月に達するまでの間父母どちらかがフルタイムの休業を取得することができる。
 また、出産直後の10日間は父母が同時に休業を取得でき、子どもが18カ月以降8歳に達するまでの間父母どちらかがパートタイムの休業を取得することができる。

(2) 親保険(Parental Insurance)

【休業期間】
 親保険による所得保障が行われる休業期間は15ヶ月間である。12ヶ月間は定率の所得保障、3ヶ月間は定額の最低保証額による所得保障が行われる。親保険による所得保障のある休業は、子どもが18ヶ月に達するまでにフルタイムの休業をまとめて取得することもできるし、数ヶ月分(6ヶ月分以上)をフルタイムの休業でまとめて取得し残りは子どもが18ヶ月以降8歳になるまでの間にパートタイムの休業を就業時間に応じて1/4、1/3、1/2といった所得保障で期間を延長して取得することもできる。
 親保険の休業は両親どちらでも取得できるが、父親及び母親がそれぞれ少なくとも1ヶ月取得することが義務付けられている。

【所得保障】
 1974年の制度改正により、出産・育児のために休業した場合、健康保険制度から所得保障を行う仕組み(「親保険」)が創設された。制度発足時には、収入の90%を6ヶ月間保障、12ヶ月以内に次子を出産(「次子出産資格期間」)すれば同額が保障されていたものが、1989年には収入の90%を12ヶ月まで、次子出産資格期間を30ヶ月まで延長といった拡充がなされている。こうした拡充が、出産間隔の短縮や、第3子の増加に影響があったのではないかと指摘されている。
 所得保障の割合については、1995年には80%、1996年には75%と引き下げられたものの、1998年には再び80%に引き上げられている。

【取得状況】
 親保険の休業の取得状況をみると、最近では父親の取得率が上昇しており、取得者全体に対して、日数ベースで約10%程度、人数ベースで約30%程度となっている。なお、子どもが病気の際の看護のための休業もあるが、これについては、取得者全体に対する父親の取得は約30〜40%程度で推移している。
 なお、父親の育児参加については、親保険による休業を父親も取得することの義務づけの他、キャンペーン(「ダディ・カム・ホーム」と呼称)の実施などの取組が行われている。

(3)保育サービス

(1) 基本的事項
 保育所や家庭型保育所をはじめとする保育サービスについては、国が枠組みを決定し、地方政府(コミューン)が実施している。なお、1996年に所管が社会省から学校庁に移管されている。
 保育サービスに係る費用の大部分は、国とコミューンが負担する。親の負担はコミューンにより異なるが10%〜15%程度となっている。
1995年の制度改正により、コミューンは、親が働いている等保育を必要とする全ての1〜12歳児に対して保育サービスの提供を保障することとされており、1996年時点で全国のコミューンの約9割が保育を必要とする就学前児童に長期的に待機させることなく保育所入所を保障しているとする調査がある。
 なお、他の子どもたちの中で育つことが子どもにとっても良いことであるとの考えが一般的である。

(2) 類型
就学前、学齢児について提供される主なサービスの類型は以下の通り。
ア.就学前
保育所 (Daghem/Day care center)
家庭型保育所 (Familjedaghem/Family day care unit)
イ.学齢児
余暇センター (Fritidshem/Leisure time center)
家庭型保育所 (Familjedaghem/Family day care unit)

(3) 利用状況
 3歳未満児の40.9%が保育所(Daghem/Day care center 32.4%)や家庭型保育所(Familjedaghem/Family day care unit 8.5%)などの保育サービスを利用している。親保険(Parental Insurance)が充実しており、0歳児の利用はほとんどないが、1歳児では46.5%、2歳児では71.2%が保育所及び家庭保育所を利用している。

(参考1)3歳未満の子どものデイケア利用状況(1997年)
(単位:万人、%)
  児童数 保育所 家庭保育所 その他
3歳未満計 28.9 9.3 (32.4) 2.5 ( 8.5) 17.1(59.1)
0歳 9.0 0.01( 0.2) 0.01( 0.1) 9.0(99.8)
1歳 9.5 3.5 (36.2) 1.0 (10.3) 5.1(53.5)
2歳 10.3 5.9 (56.9) 1.5 (14.2) 3.0(28.9)
(注)()内は児童数に対する割合である。
資料:Statistics Sweden "Statistical Yearbook of Sweden ' 99"

(参考2)各サービスの利用状況(1997年)
72.3万人
保育所 36.3 (就学前)
余暇センター 26.4 (学齢児)
家庭保育所 9.6 (就学前・学齢児)
 うち0〜6 歳 8.1
7〜12歳 1.5
(注)6歳以下の人口は、76.8万人である。
資料:Statistics Sweden "Statistical Yearbook of Sweden ' 99"

(4) 課題等
現在コミューンによって異なる親の負担の格差等を是正すべきとの意見や、失業中の親をもつ子どもへも保育サービスを提供すべきとの意見がある。

(4)子どもを養育する家庭の経済的負担軽減の措置

(1) 税制における扶養控除制度
税制は個人単位であり、扶養控除制度はない。

(2) 児童手当
【制度の概要】
 原則16歳未満の児童を養育している家庭に給付され、所得制限はない。第1子以降であり、第3子以降に加算がある。
 給付期間については、16歳以上でも義務教育である基礎学校等に在籍している場合には「延長手当」が、高校又は高校相当程度の教育を受けている場合には20歳に達する春学期の終了時まで「奨学手当」が給付される。

(参考)給付額(1998年、月額)
第1子 750クローネ (1.1万円)
第2子 750クローネ (1.1万円)
第3子 950クローネ (1.4万円)
第4子 1,350クローネ (2.0万円)
第5子 〜 1,500クローネ (2.2万円)
(注)1.「延長手当」「奨学手当」ともに、児童手当と同額。
   2.円への換算レートは、1SEK=14.47円(1999年4月1日インターバンクレート)を使用。以下同じ。

【最近の動向】
 親保険の所得保障と同様1996年に子ども1人当たり月額750クローネから640クローネ(0.9万円)に引き下げられ、第3子以降の多子加算も廃止されたが、1998年から再び750クローネとなり多子加算も行われている。

(3) その他の手当
 児童手当の他に、離婚及び同棲解消後の家庭(特に母子家庭)に対し国が一定の養育手当を当該家族に給付しその後養育費を負担すべき者(通常は父親)に国が求償する「先払い養育手当(養育費立替金)」、児童のいる低所得家庭等に対し国やコミューンが給付する「住宅手当」などがある。


6.イギリス

(1) 合計特殊出生率の動向とその背景

(1) 動向
 イギリスは、人口5,900万人(1997年)で、出生率は、西欧諸国の中でも、比較的高い水準にある。
 すなわち、その合計特殊出生率は、1964年(2.89)を境に1977年(1.68)までの10数年間に大きく低下した。その後、1970年代終わりから1980年頃に若干上昇したのち、1990年代始めまで概ね1.8前後で推移してきたが、最近はやや低下し、1996年現在で1.75(暫定値)である。
 なお、年少人口割合は19.3%、老年人口割合は15.7%(1996年)となっている。

(注)イギリスの合計特殊出生率については、1984年まではイングランド=ウェールズの数値を参照。

(2) 背景
子どもを持つ家庭では若い世代も含め2人以上の子どもを持つ場合が多いこと、10代の出生率が他の西欧諸国よりも高いことが、出生率が比較的高いことの主な要因として説明されることが多い。なお、16歳未満の妊娠については、その抑止が政策課題となっている。

(2) 働き方に関連する施策

 イギリスでは、これまで育児休業制度がなかったが、1999年1月、EC指令を踏まえ、出産・育児休業に関する規定を含む雇用関係の法律案が国会に提出された。
 この法律案においては、出産休業の期間延長(産前産後計14週から18週へ)及び3月間の育児休業の制度化が盛り込まれている。また、育児休業中は無給となっている。

(3) 保育サービス

イギリスの保育については、サービスの供給量が不足しており、また公的助成制度が従来はほとんどなかった。このため、イギリス政府は、1998年に全国保育戦略(National Childcare Strategy)を策定し、サービスの質の向上、保育費用の支援、施設数の拡大などの改革に取り組んでいる。

(1) サービス類型
地域ごとに多様な保育サービスがあるが、代表的な保育サービスとして、就業時間中の保育サービスを提供する保育所(day nursery)、午前又は午後の半日の保育を行う遊戯グループ(play group)、自宅等で保育する個別保育者(childminder)がある。

ア.保育所
5歳未満児を対象に親の就業時間中に保育サービスを提供する施設である。自治体、ボランティア団体、民間企業、営利目的の個人、地域の共同グループ等が運営している。
イ.遊戯グループ
3歳から5歳の児童(場合によっては2歳半から)を対象に、親の団体等が教会や公共施設等を利用して、遊戯を中心とした学習体験を通じて子どもに社会性を身につけさせることを目的とする事業である。1回の保育時間は最大4時間(多くは午前又は午後)で、就学前学級(pre school)とも呼ばれる。
ウ.個別保育者
地方当局に登録した親族以外の者が、自宅等で5歳未満児や学齢期の児童の保育をするものである。

(2) サービスの需給状況(イングランド)
 5歳未満児の受入施設である保育所の定員は、19.4万人(1997年)である。
 また、個別保育者の定員36.5万人(1997年)のうち、9%が5歳未満児のみを受け入れるものであり、89%が7歳までのすべての年齢の児童を受け入れるものとなっている。さらに、年齢を特化していないもののうち約半数が5歳未満児を保育している。したがって、個別保育者定員の50%以上が5歳未満児によって利用されている。 したがって、概算でイングランドの5歳未満児童(315万人:1996年)の12%〜13%程度が、保育所及び個別保育者の定員でカバーできていると考えられる。

(参考)イングランドの各保育サービスの定員(1997年)
保育所 193,800人
遊戯グループ 383,700人
登録個別保育者 365,200人

(3) 政府の取組の方針
イギリスの保育サービスが直面する課題としては、保育の質にばらつきがあること、保育サービスの費用が高いこと、保育サービスが不足していることがある。このため、1998年に政府が策定した全国保育戦略に基づき、次のような施策が講じられている。
ア.5万人の新規保育職員の養成等による保育関係者の質の向上
イ.宝くじの収益金からの補助等による保育負担の適正化
ウ.保育定員を19万人分追加
なお、1996年からバウチャー制度(親が施設を選択し、その施設の利用料について年1,100ポンドまで補助を受けられる仕組み)が試行されたが、政権交代後、施設の運営に支障を生じたとして、1998年には廃止された。

(4) 子どもを養育する家庭の経済的負担軽減の措置

(1) 税制
 かつて児童税手当/児童扶養控除(Child tax allowance)制度があったが、児童手当制度((2)参照)の導入に伴い、1976年に廃止された。
 また、社会保障給付として、16歳未満(全日制教育を受けている場合は19歳未満)の児童を養育する中低所得の家族に対する補助(family credit)制度があるが、1999年10月以降、この家族補助に代えて、給付水準の引上げになる就労家族税額控除(working families tax credit)制度が導入される予定である。

(2) 児童手当(Child Benefit)
 子どもを持つ世帯がそれ以外の世帯と比較して追加的な費用を要するとの認識の下、子育て費用に対する支援として、児童手当が制度化されている。
 児童手当制度は、1946年より実施されていた家族手当制度をその前身として、1977年に導入された。
 第1子より、原則として16歳未満の児童(全日制教育を受けている場合には19歳未満)について給付される。所得制限はない。
 給付額については、1991年より、第1子に重点が置かれている。これは、大半の家族が、第1子の誕生によって、直接的な金銭負担に加え就労を調整することによる所得水準の低下に直面するとの考え方に立つものである。

(参考)児童手当給付月額(1999年)
第1子  週 14.40ポンド(月62.4ポンド≒12,100円)
第2子〜 週 9.60ポンド(月41.6ポンド≒ 8,100円)
注)円への換算レートは、1ポンド193.99円(1999年4月1日日本銀行発表)を使用

7.アメリカ

(1)合計特殊出生率の動向とその背景

(1) 動向
 アメリカは、総人口26,764万人(男性13,102万人、女性13,662万人:1997年)であり、北欧諸国と同様、一旦低下した出生率が近年再び上昇した国である。
1950年代に上昇し1960年頃には3.6程度であった合計特殊出生率は、1960年代以降大きく低下し、1970年頃に2.5程度、1976年には1.77と最低の水準となった。その後、1980年代半ばまで1.8をやや上回る程度で推移していたが、1980年代後半から上昇し1990年に2.08となった後、2をやや上回る程度で推移し1996年には2.03となっている。
 なお、年少人口割合は21.6%、老年人口割合は12.7%(1997年)となっている。

(2) 背景
 アメリカにおける1960〜1990年代の合計特殊出生率の動向については、1970年代、1980年代前半を通じて20歳代で家族形成を遅らせてきた世代(この時期合計特殊出生率は低下傾向)が、1980年代後半に入って30歳代で子どもを産む(この時期合計特殊出生率は上昇傾向)という、晩婚化、晩産化による出生のタイミングの遅れの影響などが指摘されている。

(2)働き方に関連する施策

○ 育児休業等
 アメリカでは、家族・医療休業法(Family and Medical Leave Act(1993成立))により、男女労働者は、育児、介護、病気を理由に、年間最長12週間の全日休暇を取得することが出来る。権利行使に対する干渉、抑圧、拒否、不利益取扱いは禁止されている。休業中の所得保障はない。
 また、出産休業については、連邦レベルでの期間の定めはないが、各州ごとに定められている医療を理由とする休業と同じ長さの休業が保証されている。

(3)保育サービス

(1) 基本的事項
 保育サービスに関する制度は、州政府その他の地方政府ごとに異なり、全国を通じた制度は存在しない。連邦政府は、州政府を通じて、低所得者家庭を対象として補助制度を実施している。

(2) 類型
おおよその分類は以下のとおり
ア. 施設型(教育施設)
幼稚園(Kindergarden)
   小学校入学前1年間のプログラム
   公立が一般的で、多くは小学校に付設
保育校(Nursery school)
   幼稚園以前の幼児教育プログラム
イ. 施設型(その他)
保育所(Day Care Center)
   教育施設以外の施設型保育サービス
   営利企業や教会等多様な主体がサービスを提供
ウ. その他
家庭保育(Family Day Care)等
   血縁者以外の低年齢児を保育者の家庭で保育する形態等

(3) サービスの利用状況
 就学前児童を有し、母親(既婚)が就業している児童の各種保育サービスの利用状況をみると、5歳未満(994万人)では、施設型サービス30.9%、家庭保育16.6%と5割近くが保育サービスを利用している。また、5〜14歳(2,228万人)では、施設型サービス76.3%、家庭保育1.8%と8割近くが保育サービスを利用している。(1993年)

(参考)母親(既婚)が就業している児童の保育サービス利用状況
  5歳未満 5歳〜14歳
施設型サービス 30.9% 76.3%
(Organized child care facilities)    
うち保育所等(Day/group care center) 18.3% 1.6%
  保育校等(Nursery school/preschool) 11.6% 0.7%
  幼稚園・小学校(Kindergarten/grade school) 1.0% 74.0%
家庭保育(Family day care) 16.6% 1.8%

(注)上記以外は、親、血縁者、ベビーシッター等
 また、保育サービスの定員は、施設型サービスが約8万カ所(定員530万人)、認可された家庭型サービスが約12万カ所(定員86万人)となっており、この他認可外の家庭型サービスが、55万〜110万ヶ所程度存在すると推定されている。

(4)子どもを養育する家庭の経済的負担軽減の措置

(1) 税制における扶養控除制度
ア.連邦所得税

 

イ.州所得税

 

ウ.その他

 

(注) 円への換算レートは、1ドル119.33円(1999年4月1日インターバンクレート)を使用。以下同じ。

(2) 児童手当
児童手当制度はない。

参 考 資 料

少 子 化 に 関 連 す る 諸 外 国 の 取 組

  フ ラ ン ス ド  イ  ツ オ ラ ン ダ デ ン マ ー ク ス ウ ェ ー デ ン イ ギ リ ス ア メ リ カ 日    本
合計特殊出生率の動向 60年代半ばから70年代半ばに大きく低下後、ゆるやかに低下の傾向
【98年(暫定値) 1.75】
60年代後半より低下し、近年は、94年に1.24と最低を記録するなど低水準で推移
【96年 1.32】
60年代半ばから70年代半ばに大きく低下後、近年は1.5〜1.6程度で比較的安定して推移
【96年  1.53】
60年代半ばから80年代前半にかけて低下し、83年には最低の1.38を記録。その後上昇の傾向
【96年 1.75】
60年代後半から80年代前半にかけて低下後、一旦上昇に転じたが、90年を境に再度低下の傾向
【97年 1.52(過去最低)】
60年代半ばから70年代半ばに大きく低下後、1.8前後で安定的に推移。近年やや低下の傾向
【96年(暫定値) 1.75】
60年代始めから70年代半ばに大きく低下したが、その後上昇し、90年代は2以上で推移
【96年 2.03】
70年代半ば以降、低下傾向が継続
【98年 1.38(過去最低)】
○人口
○年少人口割合
○老年人口割合
○人口 5,850万人:97年
○年少人口割合 19.9%:93年
○老年人口割合 14.5%:93年
○人口 8,270万人:98年
○年少人口割合 16.1%:96年
○老年人口割合 15.7%:96年
○人口 1,570万人:98年
○年少人口割合 18.4%:96年
○老年人口割合 13.3%:96年
○人口 530万人:98年
○年少人口割合 17.6%:96年
○老年人口割合 15.1%:96年
○人口 880万人:97年
○年少人口割合 18.8%:96年
○老年人口割合 17.4%:96年
○人口 5,900万人:97年
○年少人口割合 19.3%:96年
○老年人口割合 15.7%:96年
○人口 26,760万人:97年
○年少人口割合 21.6%:97年
○老年人口割合 12.7%:97年
○人口 12,650万人:98年
○年少人口割合 15.1%:98年
○老年人口割合 16.2%:98年

女性の労働力率(97年)
(かっこ内は男性)
20〜24歳 50.2%(60.0%)
25〜34歳 81.0%(94.1%)
35〜44歳 81.5%(97.3%)
20〜24歳 66.9%(76.6%)
25〜34歳 74.0%(91.0%)
35〜44歳 76.8%(95.7%)
20〜24歳 78.1%(81.5%)
25〜34歳 77.1%(93.9%)
35〜44歳 70.3%(94.7%)
20〜24歳 77.8%(83.6%)
25〜34歳 83.9%(93.0%)
35〜44歳 87.3%(93.6%)
20〜24歳 59.6%(66.2%)
25〜34歳 79.3%(86.9%)
35〜44歳 86.8%(90.0%)
20〜24歳 70.1%(83.2%)
25〜34歳 73.4%(93.4%)
35〜49歳 77.0%(91.9%)
20〜24歳 72.7%(82.5%)
25〜34歳 76.0%(93.0%)
35〜44歳 77.8%(92.1%)
20〜24歳 73.4%(74.2%)
25〜34歳 62.9%(96.8%)
35〜44歳 66.2%(97.9%)98年
就業者のパートタイム労働者比率(95年) 女性    28.9%
男性     5.1%
女性    33.8%
男性     3.6%
女性    67.2%
男性    16.8%
女性    35.5%
男性    10.4%
女性    41.2%
男性    11.6%
女性    44.3%
男性     7.7%
女性    27.4%
男性    11.0%
女性    38.8%
男性    12.9%(98年)



出産休業の期間等 予定日前6週・出産後10週(第1子・第2子の場合) 予定日前6週・出産後12週 予定日前6週・出産後12週 予定日前4週・出産後24週(最後の10週は父母いずれかが取得可能)。出産直後2週は父親も取得可能 出産前後各6週 予定日前・出産後計14週(計18週への延長を盛り込む法律案提出中) 連邦レベルでの期間の定めはないが、各州ごとに定められている医療を理由とする休業と同じ長さの休業が保証されている 予定日前6週・出産後8週
育児休業

○休業取得可能期間

○休業中の所得の保障・補てん

○取得状況

○最長3年(パートタイム就労の 選択も可)

○労働時間貯蓄勘定制度により収入を得ることも可能な場合あり。また、第2子以降は育児手当(最高で月3,039フラン)の受給が可能。なお、休業中は原則無給。

○取得者の95%以上が女性

○最長3年

○育児手当(出産手当と合わせて月600マルク)の受給が可能。
社会保険料の免除制度あり

○取得者の約98%が女性

○男性の育児休業取得を促進するための制度改正を検討中

○3月程度。

○休業中は原則無給

○有子女性の約40%、男性の約10%が取得

○育児休業とは別に、育児等を理由とした休業制度あり(最長18月、月960ギルダーを給付)

○13〜52週

○休業中は失業給付最高額の60%相当額(月6,780クローネ)を受給可能

○取得者の約10%が男性

○最長18月(さらに、子どもが8
 歳に達するまで部分休業取得
 の権利)

○休業中12月間は所得の80%を親保険から給付

○取得者の約30%が男性(取得日数の約10%)

法律案の国会提出中(99年3月現在)

<法律案の内容>

○3月

○休業中は無給

育児、介護等を理由に1年間 に12週の無給休業 ○最長1年

○賃金の25%を雇用保険から給付。社会保険料の免除制度あり。なお、休業中は実態として17%の事業所で金銭給付がある。

○有子女性の44.5%、男性の0.2% が取得。男女比で女性99.2%

低年齢児の主要サービスの類型と利用数・定員(利用数・定員数抽出範囲年齢) 集団型保育所 13.6万人:3歳未満
家庭型保育所 5.9万人:3歳未満
個別保育者  29.3万人:6歳まで
保育所 15.1万人:3歳未満
個別保育者 不明
※全国統一制度なし
保育所 6.0万人:4歳まで個別保育者 0.6万人:4歳まで
※個別保育者については概数
保育所等 10.7万人:3歳未満 保育所 9.3万人:3歳未満
個別保育者 2.5万人:3歳未満
保育所 19.4万人:5歳未満
個別保育者 36.5万人:学齢期まで
(イングランド)
保育所、幼稚園等 計420万人
        :学齢前
家庭保育 86万人:年齢不明
※全国統一制度なし
保育所 48.0万人:3歳未満
  (169.1万人:就学前)
個別保育者の位置付け等 ○県の認可と研修受講が必要 ○州によっては個別保育者利用への補助制度あり ○保育所における保育と同様、所得税の控除対象となる ○個別保育者の選定等の決定は地方政府が実施
○地方政府が教育コースを用意
○コミューンが実施責任(保育所との区別なし) ○地方当局への登録が必要   ○自治体による取組例あり
需給状況 ○保育所が不足
○3歳未満児数に対する集団型
 保育所定員の割合→6%
○旧西独の保育所が不足
○3歳未満児数に対する保育所
 利用可能人数の割合→6%
 (旧西独2%、旧東独41%)
○保育所3万か所で待機児発生 との調査あり
○5歳未満児数に対する保育所
 定員の割合→8%
○待機を出さないことが原則
○3歳未満児数に対する保育所等の利用数の割合→51%
○待機はほぼ解消
○3歳未満児数に対する保育所
 ・個別保育者利用数の割合
 →41%
○保育サービス全体が不足
○5歳未満児数に対する保育所
 ・個別保育者定員の割合
 →10数%程度
  ○地域によって需給に偏在あり
○3歳未満児数に対する保育所
 入所児童数の割合→13%








税制
○控除制度の有無等
○家族除数制度(N分N乗方式)
○育児経費について控除あり
児童扶養控除制度あり(児童手当との選択制) 保育費用について控除あり 児童扶養控除制度なし 児童扶養控除制度なし 児童扶養控除制度なし
(児童手当導入時に廃止)
○児童扶養控除あり
○保育費用対象の控除あり
児童扶養控除制度あり



支給対象及び所得制限の有無 第2子より。原則義務教育終了
(16歳)まで。所得制限なし
第1子より。原則18歳未満。原則所得制限なし 第1子より。原則18歳未満。所得制限なし 第1子より。18歳未満。所得制限なし 第1子より。原則16歳未満。所得制限なし 第1子より。原則16歳未満。所得制限なし 児童手当制度なし 第1子より。3歳未満。所得制限あり
支給月額(99年)

(フランス及びスウェーデンは98年)

子ども2人計 682フラン (1.4万円)
3人計 1,556フラン(3.1万円)
4人計 2,430フラン(4.8万円)
5人計 3,304フラン(6.5万円)

第6子以降の子ども1人当たり
  874フラン (1.7万円)

第1子  250マルク (1.7万円)
第2子  250マルク (1.7万円)
第3子  300マルク (2.0万円)
第4子〜 350マルク (2.3万円)
0〜5歳 3月 317ギルダー
 (1月 106ギルダー:0.6万円)

6〜11歳 3月 385ギルダー
 (1月 128ギルダー: 0.8万円)

12〜18歳 3月 453ギルダー
  (1月 151ギルダー:0.9万円)

0〜2歳 年11,300クローネ
 (月942クローネ:1.6万円)

3〜6歳 年10,200クローネ
 (月850クローネ:1.5万円)

7〜17歳 年8,100クローネ
 (月675クローネ:1.2万円)

第1子  750クローネ(1.1万円)
第2子  750クローネ(1.1万円)
第3子  950クローネ(1.4万円)
第4子 1,350クローネ(2.0万円)
第5子〜1,500クローネ(2.2万円)
第1子 週14.4ポンド
  (月62.4ポンド:1.2万円)

第2子〜 週 9.6ポンド
 (月 41.6ポンド:0.8万円)

  第1子  0.5万円
第2子  0.5万円
第3子〜 1.0万円
その他特徴的な取組等 首相、関係大臣、関係団体参加の「家族に関する全国会議」を開催   政府・労使一体でパートタイム労働を推進(賃金、休暇等の労働条件においてはフルタイムとパートタイムの格差なし) 15省庁の大臣からなる児童福祉施策に関する委員会を設置   全国保育戦略を策定   少子化対策推進関係閣僚会議を開催。また「少子化への対応を推進する国民会議」を開催予定。

 


図



表4−5 主要先進国の合計特殊出生率

日本及び7カ国の合計特殊出生率の推移

  日本 アメリカ合衆国 デンマーク フランス ドイツ オランダ スウェーデン イギリス
1955 2.37 3.52 2.58 2.70 2.07 3.05 2.25 2.22
56 2.22 3.63 2.59 2.69 2.16 3.05 2.28 2.36
57 2.04 3.71 2.56 2.69 2.25 3.08 2.28 2.45
58 2.11 3.65 2.53 2.67 2.24 3.10 2.24 2.52
59 2.04 3.66 2.49 2.73 2.33 3.16 2.23 2.54
60 2.00 3.64 2.54 2.72 2.34 3.11 2.17 2.67
61 1.96 3.63 2.53 2.81 2.44 3.20 2.21 2.77
62 1.98 3.47 2.54 2.77 2.40 3.16 2.25 2.83
63 2.00 3.33 2.63 2.86 2.47 3.18 2.33 2.85
64 2.05 3.20 2.60 2.87 2.48 3.15 2.47 2.89
65 2.14 2.93 2.60 2.82 2.50 3.03 2.39 2.81
66 1.58 2.74 2.62 2.75 2.53 2.89 2.37 2.74
67 2.23 2.57 2.38 2.64 2.49 2.79 2.28 2.63
68 2.13 2.48 2.13 2.56 2.38 2.69 2.07 2.55
69 2.13 2.47 2.01 2.52 2.21 2.74 1.94 2.45
70 2.13 2.46 1.97 2.47 2.01 2.58 1.94 2.38
71 2.16 2.27 2.06 2.49 1.92 2.38 1.98 2.38
72 2.14 2.02 2.05 2.41 1.71 2.17 1.93 2.20
73 2.14 1.90 1.93 2.28 1.54 1.92 1.88 2.03
74 2.05 1.86 1.91 2.15 1.51 1.79 1.89 1.91
75 1.91 1.80 1.92 1.96 1.45 1.67 1.78 1.79
76 1.85 1.77 1.75 1.87 1.46 1.64 1.69 1.72
77 1.80 1.83 1.66 1.90 1.40 1.59 1.65 1.68
78 1.79 1.80 1.67 1.86 1.38 1.59 1.60 1.75
79 1.77 1.85 1.60 1.90 1.39 1.57 1.66 1.86
80 1.75 1.84 1.54 1.99 1.46 1.60 1.68 1.90
81 1.74 1.82 1.43 1.96 1.44 1.56 1.63 1.81
82 1.77 1.83 1.42 1.93 1.41 1.50 1.62 1.76
83 1.80 1.80 1.37 1.79 1.34 1.48 1.61 1.76
84 1.81 1.81 1.40 1.81 1.31 1.49 1.65 1.76
85 1.76 1.84 1.45 1.83 1.30 1.51 1.74 1.80
86 1.72 1.84 1.48 1.85 1.36 1.55 1.80 1.78
87 1.69 1.87 1.49 1.82 1.39 1.56 1.84 1.82
88 1.66 1.93 1.56 1.83 1.43 1.55 1.96 1.84
89 1.57 2.01 1.62 1.81 1.41 1.56 2.02 1.81
90 1.54 2.08 1.68 1.78 1.45 1.62 2.13 1.85
91 1.53 2.07 1.69 1.80 1.42 1.62 2.11 1.83
92 1.50 2.07 1.77 1.73 1.29 1.60 2.09 1.81
93 1.46 2.05 1.75 1.65 1.28 1.58 1.99 1.77
94 1.50 2.04 1.82 1.65 1.24 1.58 1.88 1.75
95 1.42 2.02 1.82 1.70 1.25 1.54 1.74 1.71
96 1.43 2.03 1.75 1.72 1.32 1.53 1.61 1.75
97 1.39     1.74     1.52  
98 1.38     1.75        


日本は、厚生省大臣官房統計情報部「人口動態統計」による。
諸外国は、
 UN,Demographic Yearbook
 Council of Europe, Recent Demortaphic developments in Europe, 1997
 U.S.Department of Health and Human Services,Monthly Vitalatistics Report,
 vol.45.No.11,Supplement
 等による。

注) 1. ドイツの数値は1991年以前は旧西ドイツの数値である。
2. デンマークの1997年の数値はStatistics Denmark“Statistical Yearbook 1998”、
スウェーデンの1998年はStatististics Sweden “Statistical Yearbook of Sweden”による。
3. イギリスの数値は、1984年まではイングランド=ウェールズの数値を参照している。1996年の数値は暫定値であり、当該国の資料による。
4. フランスの1998年の数値及びオランダの1996年の数値は当該国の資料による。


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