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平成11年6月25日
1997年から1998年のインフルエンザシーズンは、学童等を対象としたインフルエンザ様疾患発生報告において全国で127万人と過去10年間で最高の患者数となるとともに、インフルエンザの臨床経過中に発生した脳炎・脳症による死亡例が報告された。このため、厚生省では、日本医師会等の関係団体の協力を得ながら、別添通知をもってその実態把握を行うための全国調査を行った。なお、調査の技術的側面については、厚生科学研究費補助金・新興再興感染症研究事業の研究班「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究」 (主任研究者:森島恒雄 名古屋大学医学部保健学科教授)の助言を得た。
インフルエンザの臨床経過中に発生した脳炎・脳炎の実態を把握すること。
なお直接的な因果関係については、本調査が症例調査であることから目的には含めないこととする。
平成11年1月1日から3月31日まで
インフルエンザの臨床経過中に脳炎・脳症を発症した者を対象とした。インフルエンザは、(1)臨床診断のみによるもの、(2)臨床診断に加え、家族等にインフルエンザウイルスが分離されているなど検査等で確定診断がついている例と疫学的に関係があると思われる場合、(3)確定診断がついている場合を対象とし、脳炎・脳症としては発熱と何らかの意識障害があるものを対象とした。
なお、インフルエンザの臨床診断とは、39.0度以上の発熱、呼吸器症状、頭痛を伴って急激に発症するものとした。
調査は、全国の医療機関において上記の患者を診断した場合に、最寄りの保健所に対し連絡を行い、保健所から都道府県を通じて厚生省保健医療局結核感染症課に届出を行う。
(1)全体の報告数
全国から269例の報告があったが、調査対象期間外、調査対象からはずれるもの、後日インフルエンザでないことが判明したものを除外した結果、全体で238例となった。さらに、高齢者については、脳梗塞等が強く疑われる報告など脳炎・脳症の定義との判断が困難な例があることから紛れ込みを避けるため、60歳以下の合計217例を対象として結果を集計した。
(2)年齢階級及び性別
217例の内訳は、男性108名、女性109名と性別に有意な差は認められなかった(表1)。
また、年齢階級は、5歳までに全体の82.5%が含まれており、中央値が3歳と若年層に偏った分布となった(図1)。
(3)診断方法別報告数
217例のうち、(1)臨床診断のみによるものが79例、(2)臨床診断に加え、家族等にインフルエンザウイルスが分離されているなど検査等で確定診断がついている例と疫学的に関係があると思われるものが9例、(3)ウイルスの分離等確定診断がついている例が129例となった。
(4)転帰別報告数
217例のうち、完全に回復したものが86例、後遺症の残ったものが56例、現在経過観察中が17例、死亡したものが58例であった。
転帰別には、性別に有意な差は認められなかった。年齢階級別にも特段の傾向は認められなかった。
(5)インフルエンザの発症から脳炎・脳症の症状を呈するまでの期間
インフルエンザの発症から脳炎・脳症の症状を呈するまでの期間は、全体の平均1.4日となった。死亡例は1.1日であったが、回復例の1.5日と比較して短くなっているものの統計的に有意な差とはなっていない。
(6)脳炎・脳症に関連した症状
連絡票中の脳炎・脳症の状況及び経過に関する自由記載欄に記入があった208例についてみると、何らかの意識障害、痙攣が最も多く、次いで麻痺、嘔吐、異常行動、さらに多臓器不全(MOF)が4例、播種性血管内凝固症候群(DIC)が3例に記載されていた(図2)。
(7)その他
アスピリンを含む市販薬の服用あるいはインフルエンザの診断前の同剤の使用が5例あった。
ワクチン接種を受けているものは1例もなかった。
今後、さらに個別の臨床経過について症例検討を行うことによって死亡した例と回復した例との違いを中心に検討を行う予定である。
照 会 先 : 保健医療局結核感染症課 担 当 : 葛西(内2376)・本田(内2373) 電 話 : 代表 [現在ご利用いただけません]
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