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平成11年6月24日

水道基本問題検討会報告
「21世紀における水道及び水道行政のあり方」について

 今後の水道及び水道行政のあり方について検討を進めてきた「水道基本問題検討会」が、約1年間の検討を経て、今般、報告を取りまとめた。
 本検討会は、厚生省が水道関係の有識者に呼びかけて、昨年6月から開催してきた勉強会で、今後の水道にとっての基本的な問題について、自由に議論し、水道の目指すべき将来的な方向性について論点の整理を行ってきた。
 今回の報告は、検討の途中段階で一般からの意見公募を行いつつ、このような論点整理の結果を取りまとめたもので、「国民の立場に立った多様な水道の実現」を基調とする今後の水道のあり方と、これに対応する行政施策の方向を提言する内容となっている。
 厚生省においては、本報告における提言を踏まえ、実行できるものから行政に反映させるとともに、必要な制度的検討に速やかに着手していく。

1.検討の経緯

 わが国の水道は、社会に不可欠な施設として定着し、成熟段階に入っているが、その一方で、水質問題の多様化・複雑化、安定した水源確保の一層の困難化、地震に対する脆弱性等様々な課題を抱えている。また、近年の規制緩和、情報公開の進展など、水道を取り巻く社会的情勢も大きく変化しつつある。
 これらを踏まえて、厚生省では、今後の水道に関する制度の在り方を構想するとともに、その実現方法について自由に議論し、論点を整理することを目的に、水道関係の有識者を招いて「水道基本問題検討会」(座長 住友 恒 京都大学大学院教授)を開催し、昨年6月から検討を行ってきた。10回に及ぶ検討会での広範な論議を経て、今般、報告の取りまとめに至ったものである。

2.一般からの意見公募

 厚生省では、検討の過程において論議を深めるため、水道問題に関心を有する一般の方々から広く御意見をいただくことが有効であると考え、昨年10月、意見公募を行った。具体的には、検討会において中間的に整理された「今後の水道及び水道制度のあり方の検討に当たっての基本的認識及び論点」を、厚生省のホームページを通じて公開し、これに対する意見を公募した。いただいた御意見については、整理の上、検討会に報告し、本報告の取りまとめに際して貴重な参考となった。

3.検討会報告

 検討会報告「21世紀における水道及び水道行政のあり方」は、「需要者の視点」、「自己責任原則」及び「健全な水循環」という3つの基本的視点を提示した上で、「国民の立場に立った多様な水道の実現」を基調とする今後の水道のあり方を整理し、これに対応する行政施策の方向を提言する内容となっている(別紙検討会報告の概要別添検討会報告(案)参照)。

4.今後の対応

厚生省においては、本報告における提言を踏まえ、実行できるものから逐次行政に反映させるとともに、制度的な検討が必要な提言については、速やかに具体的な検討に着手する予定である


(別 紙)

水道基本問題検討会報告の概要

《基本的視点》
○ 需要者の視点:需要者である国民の立場に立った多様なサービスの提供

○ 自己責任原則:規制緩和・地方分権を踏まえ、自由で公正な経済社会における関係者の責任ある役割分担

○ 健全な水循環:水循環に係る多くの制度、関係者との協調と連携

《今後の水道のあり方》
○ 全国的に全ての水道が達成すべき「ナショナル・ミニマム」に加えて、それぞれの地域ごとに需要者のニーズに応じた多様な水準の「シビル・ミニマム(ローカル・スタンダード)」を設定し、その達成へ

○ 行政が主導し牽引していく時代から、需要者である国民との対話を通じ、水道事業者が自らの意志と努力で方向を決めていく時代にふさわしい関係者の役割分担へ

○ 具体的には、

−安全に飲用できる水の供給を全ての水道で維持しつつ、需要者の選択に応じたおいしく飲用できる水の供給
−節水型社会の実現を前提として、平常時に必要量の水を安定して使用でき、渇水や災害にも強い水道
−受益者負担を原則とし、政策的な財政支援により大幅な料金格差や高料金を抑制すると同時に、国民のコスト意識を高め、節水を誘導するような費用負担

※ ナショナル・ミニマム:安全に飲用できる水を、通常時に安定して使用できる水準
※ シビル・ミニマム:おいしい水の供給や、非常時における安定供給も視野に入れて、需要者自らが決定していくより高い水準

《行政施策の方向》
○ 水道事業の経営基盤の強化のため、地域の実情に応じた多様な形態による水道の広域化を推進するとともに、単独で十分な運営管理が困難な水道事業者が、経営基盤の強固な第三者(他の水道事業者又は一定の資格を有する民間の受託会社)に対する水道運営を委託する方式について、制度的枠組みを検討

○ 現行の水道法による規制が適用されない、小規模の受水槽以下の施設や飲用井戸等に衛生規制を適用するとともに、現在設置者の責任に委ねられている簡易専用水道の検査を、水道事業者が責任をもって実施する方向で検討

○ 水道事業の運営やサービスに関し、需要者自らが判断できるような情報の公開が不可欠であり、一般行政情報の公開に関するルールとは別に、水道事業者に対して、需要者に必要な情報を知らせる義務を課すことを検討

○ 流域の市町村や住民の積極的な参加のもと、水道事業者を含めた水循環の関係者が、流域単位で水質監視や取水調整のためのネットワークを整備するとともに、取排水体系の見直しや用途間の転用等の具体的な対策を推進できるような体制を整備


生活衛生局水道環境部水道整備課
課 長 岡澤 和好(4020)
課長補佐 山本 昌宏(4023)


「21世紀における水道及び水道行政のあり方」


平成11年6月

水道基本問題検討会

はじめに

 本検討会は、水道を取り巻く様々な環境の変化を踏まえて、21世紀における水道に関する制度の展開についてグランドデザインを行うべく、国・都道府県・市町村、民間、需要者等の役割分担を検討し、今後の水道に関する制度の在り方を構想するとともに、その実現方法について、自由に議論し、論点を整理することを目的に、平成10年6月から検討を行ってきた。
 検討会には、学識経験者を含めて、広く水道関係者の参加を得て、これまでに10回に及ぶ広範な審議を重ね、今般、本報告の取りまとめに至ったものである。
 歴史上前例のない「情報化社会」の到来という新しい時代背景を踏まえ、ここで取り扱っているような国民生活に深く関わりのある水道の基本課題については、供給者の事情を優先するのではなく、需要者である国民の立場に立って、時間をかけて納得を得ながらまとめていくことが重要である。本報告の取りまとめに当たっては、約1年間という限られた期間ではあるが、できる限りこのような基本認識をベースに置いた。
 また、量的に氾濫する未整理の情報の中で、将来の予見が困難な実情を考慮すれば、不動の正論を求めるのではなく、いくつかの試案に対する国民の反応を見ながら、迅速かつ柔軟に方向性を定着させていくのが、今日的な方針決定の手法と言え、その意味で、本検討会では、将来の水道のあるべき姿を示すというよりも、21世紀に向けての議論の方向性を整理することに最大の力点を置いて検討を行ったものである。
 約1年間に及ぶ検討の間には、各方面から様々な御意見をいただくことができた。特に、検討の中間段階で、インターネットを通じた公募の形で広く一般の御意見をいただいたことは、本報告を作成する上で大いに刺激となり、参考となった。謹んで謝意を表したい。


委員名簿

  足立 則安  全日本水道労働組合中央執行委員長
  粟井 知良 前京都府日吉ダム対策事務所長
  今井 裕隆 社団法人日本水道協会顧問
  奥 利江 主婦連合会常任委員
  岸 博志 全日本自治団体労働組合公営企業局長
  小泉 明 東京都立大学大学院教授
  齋藤 博康 株式会社日水コン顧問
  白濱 英一 神奈川県内広域水道企業団副企業長
  須藤 隆一 東北大学大学院教授
座長  住友 恒 京都大学大学院教授
  高木 光 学習院大学教授
  高橋 裕 芝浦工業大学客員教授
  南部 鶴彦 学習院大学教授
  藤田 正樹 大阪府水道部長
  藤原 正弘 財団法人水道技術研究センター専務理事
  眞柄 泰基 北海道大学大学院教授
  松本 和雄 危険物保安技術協会理事長

(五十音順)


目 次

1.水道の現状と課題

(1)水道を取り巻く環境の変化
(2)水道の使命の変化
(3)水道の抱える様々な課題

2.今後の水道行政の基本的視点

(1)成熟した市民社会への対応(需要者の視点)
(2)自由な経済活動を基調とする経済社会への対応(自己責任原則)
(3)健全な水循環への対応

3.今後の水道のあり方

(1)清浄、豊富、低廉の今日的意味(「ナショナル・ミニマム」から「シビル・ミニマム」へ)
(2)関係者の役割分担
(3)水質管理対策
(4)安定供給対策
(5)料金問題

4.対応する行政施策の方向

(1)水道経営と財政支援
(2)水道事業規制のあり方
(3)需要者とのパートナーシップ
(4)関係者とのパートナーシップ
(5)その他

参考資料

 今後の水道及び水道制度のあり方の検討に当たっての論点等に関する意見募集の結果について


1.水道の現状と課題

(1)水道を取り巻く環境の変化

 わが国では、明治以来、消化器系感染症の蔓延を背景に、衛生対策の強化を目的として水道が整備されてきたが、その後、社会の発展に伴い、人が生活していく上で水道が不可欠の施設であるとの認識が定着し、近代社会の発展が水道の普及を加速してきた。その結果、わが国の水道は、他の公共事業と比較しても、早い時期に世界に誇りうる見事なシステムを備えるに至っている。
 近年、水道を取り巻く環境にも様々な変化が生じている。少子・高齢化といった人口構成の変化は、水道水の使用量や使用形態に変化をもたらし、化学製品の多用といった生活様式の変化も、様々な水質問題を引き起こしている。また、建物の高層化や都市構造の変化は、渇水時や地震等の災害時を含めた都市への水供給のあり方に影響を及ぼしている。さらに、近年の少雨化傾向は、水資源の利用を制約する要因となっており、水資源をますます希少なものとしている。

(2)水道の使命の変化

 水道行政は、これまで需要者である国民の公衆衛生の向上と生活環境の改善に資することを目的として進められてきた。そして、これまでは、その目的の達成のため、水道の普及促進と水道水供給の量的確保に主眼を置き、主として、供給側である水道事業者の体制を整備、向上させるための施策が講じられてきた。
 その結果、わが国の水道は、昭和30〜40年代の高度経済成長期の目覚しい拡大、発展を経て、今ではほとんどの国民が水道を利用でき、国民生活とは切り離すことができない存在となった。この間、水道は、住民に最も身近な行政主体である市町村が経営することを原則として整備され、これらの施策の実効性の確保に大きな貢献を果たしてきた。
 しかし、水道が普及するにつれ、今日では公衆衛生の向上と生活環境の改善という観点のみならず、国民生活や事業活動、都市機能を維持するための社会基盤施設として、社会経済全般にわたって多様かつ高度な機能が求められるようになってきている。

(3)水道の抱える様々な課題

 水道の面的整備はほぼ終わりつつあるとはいえ、未だに約4%、500万人の未普及人口を残しており、これを早急に解消することは、言うまでもなく緊急の課題である。加えて、普及の進んだ今日の水道についても、その使命を果たす上で、次のような様々な課題が残されている。
 水道の普及に伴い、今後は、既に整備された施設の維持管理の重要性が増すことになる。特に、水道水の安全性は国民の最大の関心事であるが、生活排水による河川の汚濁や化学物質による河川・地下水の汚染、湖沼の富栄養化など、水道水源の水質悪化が問題となっている。そのため、水道事業者における水質管理体制の強化に加えて、水道水源の水質保全が極めて重要な課題となっており、「水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律」等に基づき、一部地域で対策が進められているが、全国的には必ずしも十分な改善がみられず、環境行政、河川行政、下水道行政等との連携による対策の一層の強化が求められている。
 一方、水源の確保についてみると、地域によって差はあるものの、これまでの水資源開発の努力により、水道用水需給の状況は大きく改善されてきている。しかし、水資源賦存の地域性や水系ごとの利水安全度の違いなどから、水源開発に要する費用や水源の安定性には大きな差があり、水道事業間の格差の構造的な要因となっている。
 また、近年、ダム適地の減少に伴う開発効率の低下と遠距離化、さらに水源地域対策や環境保護の観点などから新たな水源開発はますます困難となってきており、今後は、むしろ既存施設の活用等により、いかに限りある水資源を有効に利用していくかがより大きな課題となっている。
 また、水道事業の多くが市町村単位の小さな規模で実施されてきた結果、地形的な要因に加え、水道ごとの成り立ちや水源、需要構造等の違いを背景として、災害時の対応や供給する水の水質等のサービス内容、料金などの面で格差が生じている。特に、小規模水道において財政面、技術面での立ち遅れが見られ、こうした小規模な水道における適切な経営・維持管理も今後の大きな課題と言える。
 なお、都市のマンション等の共同住宅の住民の中には、受水槽を介した水道水の供給に対して水質面での不安を抱く人が多く、また、水槽の清掃や検査の費用を余分に負担することに対する不満もある。受水槽を介した水道については、一定規模以上のものが簡易専用水道として規制されているが、規制導入から25年が経った今日でもその目的が十分達成されているとは言えない。また、水道法により規制を受けない学校・幼稚園の水道が水系感染症の原因となる事例もみられており、未規制水道における衛生確保も今後の課題の一つと言える。


2.今後の水道行政の基本的視点

(1)成熟した市民社会への対応(需要者の視点)

 わが国の社会は、経済の面では拡大成長から安定した成熟期を迎えつつあり、また、市民意識の面でもその高まりと広がりによって成熟期を迎えつつある。こうした中で、水道をはじめ、電気、ガス、通信等の公共サービスに対し、サービスの内容や質に対する需要者の関心が高まっており、需要者への説明や需要者の意見の反映が従来にも増して求められている。そのため、今後の水道、水道行政の在り方を検討するに当たっては、これまで以上に「需要者の視点」に立つことが必要となる。
 これからの水道は、最低限の給水サービスの水準を確保するだけでなく、需要者の多様なニーズに対応できるサービスのあり方を模索することが重要であろう。しかし、現実の水道は供給独占であり、需要者は供給者を選ぶことができない。水道事業者は、このことを謙虚に受け止め、サービスの内容や質の検討に当たっては、需要者のニーズを十分考慮すると同時に、需要者間の公平性の確保に十分留意する必要がある。また、サービスの内容や質の決定に際して、需要者の参加を促進することが重要である。
 さらに、水道は、需用者である国民の生活や事業者の事業活動を直接支えていることに加え、生活圏、経済圏としての都市の機能そのものを維持するために不可欠な社会基盤施設となっており、災害時等においても最低限、都市機能を維持するための用水を確保するというような考え方を導入する必要があろう。
 サービスの質や内容の決定に際し、需要者の参加を促進するための前提条件として、需要者側もこれを自らの問題と受け止める意識を持つことが重要であり、そのためには、水道事業者側からの適切な情報公開が不可欠である。特に、サービスの水準は、その対価である料金と密接に関係することから、コスト主義の原則に基づいた意思決定を行えるよう、コストに関する情報公開を進めることが重要と言える。また、最近では、水道メーターやダクタイル鉄管業界における独占禁止法違反が問題となるなど、水道事業者が有すべきコスト意識が問われている状況があり、水道事業者及び需要者の双方のコスト意識を一層高めることが不可欠と言える。

(2)自由な経済活動を基調とする経済社会への対応(自己責任原則)

 世界の経済は急速にグローバル化、ボーダレス化が進んでおり、わが国の経済社会もそれに対応した様々な改革に取り組んでいる。特に、国際的に開かれ、自己責任原則と市場原理に立つ自由で公正な経済社会を実現することは、わが国経済社会全体の喫緊の課題である
 このため、行政の様々な分野における規制の撤廃・緩和が進められており、水道の分野においても、これまでに、給水装置の構造及び材質の基準、指定給水装置工事店制度、指定水質検査機関、認可申請書類等に関する規制の緩和が図られている。国民の健康に重要な関わりを持ち、また、事業として地域独占的に行われ、様々な公的関与の規定が設けらている水道事業の特性を十分踏まえる必要があるが、成熟した経済社会に即して、今後、可能な限り自己責任原則と市場原理の活用を図る方向で検討していくことが望まれる。なお、ここに言う市場原理とは、単に競争原理に基づく利潤の追求を意味するものではなく、適切な環境面の費用など広く社会的なコストまで含めて、最適な効率と内部化の努力を求める概念であることに留意する必要がある。
 規制緩和と同時に、それぞれの行政における地方分権が進められており、水道行政における国と都道府県との役割分担についても、認可権限、監督権限等について見直しのための制度改正が行われている。さらに、官と民の役割分担の見直しも課題となっており、水道についても、その公益性を踏まえ、国、地方公共団体、民間及び需要者である国民を含めた適切な役割分担のあり方を検討していく必要がある。
 一方、経済のグローバル化に対応して、水道事業の資機材等についても、国際調和を推進し、わが国の市場を国際的に開放していくことが必要となっている。また、水道事業の運営や、水道施設の維持管理に関する業務についても、市場原理の導入が多くの国で進められてきており、こうした動向も注視していかなければならない。

(3)健全な水循環への対応

 水道事業は、循環資源である水を利用する事業であり、水の循環系が健全に機能していることに依存して成立している。したがって、できるだけ自然の水循環が保全されていることが、水道にとっての必要要件と言える。
 また、水道は、水循環系の一構成要素であると同時に、水道のための取水は、水循環系を人為的にかく乱し、さらに水道水を利用した後の下水は水循環の量と質に影響を及ぼす要素でもある。したがって、より安定した良好な原水を得るためには、水循環系における水道の位置づけを明確にするとともに、水循環に係る多くの制度、関係者との間で協調と連携を図り、計画的、体系的に水源保全を図ることが必要である。
 さらに、マクロな水循環系に大きな影響を及ぼすおそれのある地球温暖化などの地球環境問題は、全ての人類に関わる共通の問題であり、水道の運営に当たっても、省エネルギー等適切な配慮が求められる。


3.今後の水道のあり方

(1)清浄、豊富、低廉の今日的意味(「ナショナル・ミニマム」から「シビル・ミニマム」へ)

 水道法に掲げられた「清浄にして豊富、低廉」という理念は、今日まで、水道のあり方を律する基本となってきた。この理念は、水道のサービスの基本要素である水質、水量及び料金の面について、需要者に対するサービスのあり方を規定したものでもあり、需要者の望む水道を検討する上で、まず、この理念について今日的意義付けを行っていくことが必要であろう。
 生活に不可欠な水を手に入れることにおいて、すべての国民が等しく公平であるべきことは言うまでもないが、同じ水質の水を、同じ量だけ、同じ料金で享受できる環境にないことは、国民誰もが実感しているところであろう。したがって、何を公平にすべきかは国民的合意を得つつ、国民が決定していくべき問題と考えることが、需要者である国民の立場に立つ水道の原点と言える。
 従来、水道のサービスについては、全国どこの水道でも達成しなければならない水準として議論されてきた面が強い。しかし、成熟した市民社会の中で、今後は需要者である国民の意向を水道のサービスに反映させていくことが求められている。そのため、サービスの基本要素である水質、水量及び料金についても、全国どこの水道でも達成しなければならない水準(ナショナル・ミニマム)と、それぞれの地域の実態に即して地域住民自らが決定していく水準(シビル・ミニマム)とに区分して考えることが適切と思われる。
 この場合、21世紀の水道を考える上で、全国いかなる地域においても、現状のサービス水準を決して低下させないということを基本とすべきである。水道の「ナショナル・ミニマム」を「安全に飲用できる水を、通常時に安定して使用できること」と定義すれば、全国的にほぼ達成しつつあるといえるが、今後の水道は、その水準を維持しつつそれぞれの水道ごとに、ローカル・スタンダードである「シビル・ミニマム」を達成することが基本的な目標と考えることができる。
 さらに、わが国をはじめとする先進国は、水やエネルギーを大量に使用しているが、地球環境問題まで視野に入れると、今後はなるべくこれらの消費を抑制していく方向が、地球人としての立場から求められている。そうした意味では、量的な目標としては、むしろ一人一日の限度として、いわば「ナショナル・マキシマム」の水準をも検討していくべき時代になってきていると言えよう。

(2)関係者の役割分担

 需要者の視点や自己責任原則ということを踏まえれば、従来のように行政が主導し牽引していく時代から、今や需要者である国民との対話を通じ、また、民間の創意と工夫を活用しつつ、水道事業者が自らの意思と努力で方向を決めていく時代に大きく転換しつつあると言えよう。その際、国、地方公共団体、水道事業者、民間、国民それぞれが以下のように適切な役割分担をしていくことが必要になるものと考えられる。
 国は、ナショナル・ミニマムを支えるために必要な、水質基準、施設基準等の設定を行うとともに、水道事業の規模等に応じて都道府県と分担して水道事業者に対する必要な規制、監督を行う。また、都道府県域を越えるような大きな圏域として取り組むべき水道水源の水質保全、水資源の確保、渇水対策、地震等の災害対策、健全な水循環の構築等について、必要な施策を講じる。さらに、これらの施策の基礎となる調査研究を実施し、水道事業者に対して積極的な情報提供等の技術支援を行うとともに、政策的な財政支援を行う。
 都道府県は、現在進められている地方分権の制度改正後(平成12年度施行予定)は、固有の事務(自治事務)として、国と分担して水道事業者に対する必要な規制、監督を行うことになる。また、広域的水道整備計画の策定等を通じて、あるいは、必要に応じ、広域水道の事業者として、水道の広域化に関して主導的な役割を果たす。同時に、流域として取り組むべき水道水源の水質保全、水資源の確保、渇水対策、震災等の災害対策、健全な水循環の構築等について、国と協力して必要な施策を講じる。
 市町村を主とする水道事業者は、需要者との対話を通じて、需要者の立場に立った水道を実現する。具体的には、需要者の求める情報公開、広報活動を積極的に進め、緊密なパートナーシップを形成するとともに、適切なシビル・ミニマムを設定し、それに応える水準のサービスを提供する。また、サービス水準を維持できる適切な施設の更新計画を確立し、シビル・ミニマムに必要な財政基盤・技術基盤を確保できるよう、最適な経営形態を選択するとともに、コスト意識を徹底し、需要者に節水を誘導していくような取り組みを行う。
 民間の事業者は、指定水質検査機関や指定給水装置工事業者、水道事業者からの業務の受託者、あるいは、性能・品質の良い資材や装置の提供者等、特定分野の専門家として今後一層幅広く水道事業を支えることが期待される。また、多様な需要者のニーズに応えることのできる創意と工夫に富んだ水道技術やシステムを水道事業者に提案するとともに、将来的には、水道運営の受託者として重要な役割を果たすことが期待される。
 需要者である国民は、水道事業者が提供する給水サービスの価値に常に関心を払い、受益者負担の原則に最大限協力することを前提に、自らの積極的な参加によりシビル・ミニマムを決定していく。また、水の大切さを理解し、地球人としての意識をもって、節水型社会を実現していくとともに、健全な水循環の構築に積極的に貢献する。

(3)水質管理対策

 水道は、安全に飲用できる水準の水を供給する施設として普及してきたが、ボトル・ウォーターや清涼飲料水が普及した結果、特に大都市部においては、水道水を直接飲用する市民の割合が低下していると言われる。しかし、直接飲用することはもちろん、水道水は調理用、風呂用など飲用に準じた、衛生性を求められる用途にも広く使われており、飲用できることを前提とした水道水の供給は、国民の権利である安全で安心できる生活を享受するために必要不可欠である。
 したがって、引き続き「安全に飲用できる水」の供給を使命として、全ての水道で同一の水準が達成できることをナショナル・ミニマムとして維持すべきである。そのために、水道事業者は、水道水質基準を遵守することはもちろん、クリプトスポリジウムや有害化学物質等による汚染などの水質問題に対し、的確な対応ができる水質管理体制を整備することが求められる。また、未規制の有害化学物質については、国が水質管理の方針を示し、それに基づき水道事業者が必要に応じて水質監視を行うとともに、測定データや関連する情報を関係者で共有し、一般に公開していくなど相互に連携をとりながら、迅速に影響の発生を未然に防止できるよう対応していくことが必要である。
 また、飲用水として国民が口にする水のうち、小規模の受水槽以下の施設や飲用井戸等については、現行の水道法では規制が適用されていないが、水質基準を満足している水道水と同程度の安全性が確保されるべきであり、「飲用水の水質基準」の設定を含めて、そのために必要な措置が望まれる。
 一方、「おいしく飲用できる水」に対する国民のニーズは高く、それが水道水離れの原因となっているとの指摘もある。そのため、水道における高度浄水処理施設の導入が進められているが、需要者からも評価されているところでもあり、今後とも、可能な限り「おいしく飲用できる水」という水準を目指すことが望ましい。しかし、高度浄水処理の導入は、料金の値上げを余儀なくするものであり、安全性以上の付加価値については、基本的に対価との関係で需要者の選択によってシビル・ミニマムとして決定されるべきものと言える。
 安全でおいしい水道水の確保のためには、水道水源の保全が不可欠であり、健全な水循環系の構築という流域管理の視点から、国や都道府県が中心となって枠組みを整備し、流域の市町村や住民の参加のもと、関係者が協力して取り組む必要がある。その際、水質の目標としては、原則として高度処理をせずに通常の処理で水道水の水質基準を満足できるような原水の確保を目指すべきである。一方、水道事業者自身は、水道水源の保全に直接的な対応措置を持ち合わせていないことが問題とされているが、水の専門家として汚濁発生源となっている他の分野の事業者に対して働きかけるなど、健全な水循環系を維持する観点から積極的な役割を果たしていくことが必要である。

(4)安定供給対策

 水道水の安定供給を考える前提として、水資源が限りあるものであることを踏まえ、これを節度を持って利用するとともに、雨水等の身近な水の有効利用や雑用水の再利用に努めていくことが、21世紀の国民として、また、地球人としての基本的な責務と言えよう。
 こうした節水型社会の実現を目指しつつ、水道に求められている常時給水義務を達成できるよう、異常な渇水時や災害時を除き、国民が必要量の水を安定して使用できるような水道水の供給を、ナショナル・ミニマムとして確保する必要がある。
 しかし、都市の諸活動や都市機能そのものが水道に大きく依存している今日、渇水時や地震等の災害時にも普段どおりの給水を求める声が少なくない。そのため、多くの水道事業者において、渇水対策、災害対策のための水源確保や水道施設の増強が行われており、近年では、徐々に渇水や災害に強い水道が整備されつつある。しかし、あらゆる渇水や地震にも耐えられる水源の確保、水道施設の整備は、費用面からも現実的ではなく、一方では水源開発に伴う環境問題の発生も懸念される。そのため、その整備水準は、地域の特性を踏まえつつ、需要者の求める水準と費用負担との関係を考慮した上で、シビル・ミニマムとしての整備目標を定め、渇水や災害に強い水道の整備に計画的に取り組む必要がある。その際には、ロスアンジェルス地震において、都市全体を制御するコンピュータの冷却不能により、都市混乱を生じさせたという事例にも象徴されるように、水道は、都市そのものを支える社会基盤施設となっており、個々の住民に対する給水の確保のみならず、国家的見地から、非常時において一定の都市機能を維持するための、最低限の給水の確保にも留意すべきである。
 渇水や災害対策としては、多額の経費を必要としないソフト面の対策も重要かつ効果的であり、近隣の水道事業との相互支援体制を確立しておくことが望ましい。また、流域内の利水関係者相互の水運用や、地域によってはこれまでの広域水道圏や流域を越えた相互水運用が重要となっており、そのための様々な施策が検討されるべきである。さらに、渇水や災害が生じた場合の国レベル、都道府県レベル、地域レベルの危機管理対策についても併せて確立しておくべきである。
 阪神・淡路大震災の際に、飲料水は何とか確保できたものの、生活用水の不足により多くの都市流出者を出したことが教訓として挙げられ、建物の高層化や生活形態の多様化の進んだ都市においては、飲料水以外にも生活に必要な水を確保することが必須と言える。そのため、雨水、下水処理水、河川・水路の水など水道水以外の水を消火用水や水洗便所用水等として活用することについても日常的に検討しておくことが必要であり、具体的な活用方策について、関係者を交えて明確にしておくことが望ましい。
 一方、渇水に関しては、これまでも渇水調整を通じて、利水関係者間での相互の水融通が行われてきたが、特に、水道の減断水を生じるような異常渇水時には、国民の生活にできるだけ障害を生じさせることのないよう、生活用水としての水道用水を優先して確保すべきである。そのため、他の利水者からの水融通がより円滑に行われるよう、例えば水利権を一時的に借り上げるといった弾力的な仕組みも検討する必要がある。一方で、災害時と同様に、用途によっては、水道水以外の多様な水源の活用を検討することも重要と言える。
 なお、災害時を含めた安定供給対策が、一方で過大な施設の設置に結びつくことのないよう、事業計画の策定に当たり慎重な検討が必要であり、適宜、事業計画の見直しを図ることが必要である。また、現在、少子・高齢化が進行しているが、このことは水道水の需要構造を変化させるものであるとともに、断水等の影響を強く受けやすい人々が増加するという意味を有していることについても十分な配慮がなされるべきである。

(5)料金問題

 水道料金については、生活必需品である生活用水の対価であるということから、全国的に同一水準とすることが望ましいという考え方と、水は地域に属する貴重な天然資源であり、その資源を使用することの対価である水道料金は地域ごとに差があるのは当然であるとする考え方がある。従来は、そのバランスを取る方向で、国の補助や地方自治体の一般会計からの繰り入れ等の措置が行われてきており、その結果、そのままでは著しく高料金となる水道の料金が抑えられているが、それでも現状では、最高と最低で水道事業者間で約10倍の格差がある。
 いずれにしても、水道事業はサービスを供給する事業であり、資源消費に伴う費用を賄うという観点からも、受益者負担の原則は維持すべきであろう。その結果、地域ごとにある程度の料金格差が生じることは基本的に容認せざるを得ない。むしろ、水道水の供給のためのコストを需要者に知らせる上では、コスト全体を料金に転嫁することが望ましいと言える。ただし、それによって同じ水準のサービスに対して、大幅な料金格差が生じたり、逆に高料金を抑制するために、必要な設備投資が行われず、供給機能の低下を招くことになれば、それは水道の意義からみても問題であり、政策的な配慮が必要と言える。
 例えば、過疎地や辺地の簡易水道では、受益者負担の原則の適用が困難な場合もあり、そのような地域における水道施設の建設費や、水源開発や水資源の広域的融通など莫大な先行投資を要する事業にかかる費用は、その全てを受益者の負担とするには無理があり、一定の公費負担が必要と考えられる。しかし、水道事業への公費負担は、資源の適正配分、所得の再配分、事業者の経営努力等の観点からの問題も指摘されているところであり、国の補助や一般会計の負担は、一律ではなく、政策措置として限定的に行うことが適当と考えられる。
 なお、健全な水循環系を構築する上でも、国民のコスト意識を高め、水の価値について十分な認識を得ることが重要である。その際、水道を通じて利用された水は、下水として排出され適正に処理される必要があり、水利用のコストとは、これらを一体のものとして捉え、下水の処理費用まで含めたものとして認識することが重要である。
 水道料金は、水量抑制の観点もあって、従来、逓増型の料金体系が取られてきたが、その結果、大口需要者の節水が進んだ反面、もともと低く設定された家庭用料金については、需要者のコスト意識が十分働いていないという指摘もある。また、基本水量制についても、単身者等の節水意識を阻害しているという面もあり、その意味を見直す必要があろう。節水型社会の実現に向けて、節水を誘導するという観点から、水道料金体系についても、季節料金、渇水料金といった弾力的な運用ができる新たな工夫が必要と言える。


4.対応する行政施策の方向

(1)水道経営と財政支援

(1)経営形態の多様化
 自己責任原則の下で、需要者との対話を通じて、その要求に基づく多様な水道を実現するためには、水道事業者は、自立した水道を運営できる経営基盤を備えていることが不可欠であるが、現在、規模の小さな水道の多くは、財政的にも、技術的にも、水道の抱える課題に適切に対処できる十分な能力を備えているとは言いがたい。
 今後、維持管理を中心とする時代になるにつれ、水道ごとにみれば、施設の改築・改良等の大規模な投資が必要になっても、そのための財政基盤や技術者の確保がますます困難な状況となることが予想される。その意味で、経営基盤の強化のための様々な施策を総合的に講じていく必要があるが、財政基盤や技術基盤の共有化という観点から、地域の実情に応じて、広域水道、共同取水、共同経営、共同維持管理など多様な形態による水道の広域化を進めることも重要と言える。
 水道の広域的整備は、近年では、主として水道用水供給事業という形態で行われてきており、この形態による水道の広域的整備は、経営基盤の強化を図りつつ、安定した水源の確保や水の広域的な融通に大きな役割を果たしてきている。今後も引き続き、水道の広域的整備を図る必要があるが、経営基盤の一層の強化を図る観点からは、地域の実情を踏まえ、できるだけ末端給水までの水道事業の形態で広域的整備を推進することが適切と考えられる。なお、広域的整備に際しては、自己水源の放棄や遊休施設を発生させることなく、コストの縮減や技術者の確保などを通じて、実際に経営基盤の強化や事業の効率化につながるような計画とすべきである。また、広域的水道整備の目標に照らして、適正な規模となるよう配慮されるべきである。
 一方、同一市町村の簡易水道施設など、施設の一体化がコスト等の面から必ずしも合理的でない場合には、まず、経営のみの一体化を進めることが望ましい。また、例えば、同一水系から取水する水道事業者が組合を設置して共同で取水を行うなど、事業の一部を共同化することも有効と考えられる。さらに、緩やかな広域化として、例えば、災害等の非常時の対応を目的とした相互応援協定による体制の整備や、単独で実施するとコストのかさむ水質検査等の共同実施体制の整備など、特定の目的、あるいは特定の業務に関して広域的な体制を整備することも望ましい。
 また、水道の適正な運営という観点からは、単独では十分な運営管理が困難な水道事業者が、経営基盤の強固な第三者に対して水道運営を委託する方式も有効と考えられる。受託者としては、他の水道事業者のほか、一定の資格を有する民間の受託会社が考えられるが、委託事業の適正を期すため、委託に際しての明確な基準の設定が必要となる。こうした方式が定着すれば、委託先の技術力等の活用が期待できるなど、経営基盤強化のための選択肢が増えることになるため、国としても、適切な委託のための制度的枠組みについて検討する必要がある。
 なお、水道の民営化については、わが国の水道が市町村公営原則で実施されてきた経緯を踏まえ、それぞれの地域において、需要者を含めた十分な議論を経て検討されるべきものと考えられる。今後、経営基盤の強化を前提として、水道事業に求められる公益性を維持・増進する形での適切な民営化のあり方について、更に検討を深める必要があると考えられる。
(2)財政支援
 水道経営は、経済原則に則るべきものであるが、水道水は国民が等しく必要とする代替性のないものであることから、国民にとって大きすぎる負担にならないようにするという考え方に立ち、水道の国庫補助のあり方についても適宜検討を加える必要がある。
 個々の市町村では負担が困難な多大の投資を要する水源開発や広域的な事業を中心に行っている現在の国庫補助の考え方は、高料金化の防止と国家的見地の施設整備という2つの目的を併せて配慮した補助制度となっている。さらに政策的要素を強めていく必要はあるが、基本的にこの考え方を踏襲することが適当と言える。ただし、公費投入を行う以上、そのことによる便益を、費用対効果の評価等により明らかにしていくことが求められる。
 その際、過疎地の簡易水道等では、独立採算による経営が困難な場合がみられるが、そのような事業者に対しては、必要な国庫補助を行うことを検討すべきである。また、施設の老朽化に対応した施設の改築・改良に対する財政支援についても検討する必要がある。水道施設の改築・改良は今後ますますその必要性が高まるが、そのための投資は必ずしも直ちに収益の増加にはつながらず、水道料金の値上げに直結するものであることから、適切な時期に必要な投資がなされないおそれがある。そのため、水道事業者として、施設の更新計画を確立し、これを適切に考慮した長期的な財政計画に基づく事業運営に努めることが不可欠であるが、国としても、安全な水道水を安定的に供給する能力の確保と同時に、施設の改築・改良に伴う高料金化を抑制するためにも、この分野における国庫補助の導入を検討する必要がある。
 なお、当面発生しない需要を見込んだ先行投資が、高料金の一因となっている面があることを踏まえ、施設計画の適正化を強力に進めていくと同時に、相当将来の需要を見込んだ水源開発などの長期的な先行投資については、後世代のために現世代の負担を求めることとなるため、利水水道事業者を特定せずに、公的に負担する方策を検討すべきである。

(2)水道事業規制のあり方

(1)衛生規制
 水道には様々な規制が設けられているが、このうち人の健康の保護に係る衛生規制については、全国一律の水準として、国において明確な基準を定め、それを水道事業者に遵守させるなど、国として必要な規制を引き続き確実に行っていく必要がある。
 一方で、水道水の水質基準は、今後とも対象項目が追加されるなど規制強化の方向にあり、これに適切に対応するための水道事業者の負担も非常に大きくなってきている。
 そのため、衛生的な安全性を確保しつつ、特に小規模の水道事業者の負担を軽減するような合理的な水質管理のあり方について積極的な検討も必要である。
 また、水道法による現行の規制が適用されていない施設であっても、事実上不特定多数の人々の飲料水を提供することとなっているものについては、衛生規制を適用する必要がある。
 さらに、簡易専用水道については、利用者の不安感を払拭するために、その供給者である水道事業者が簡易専用水道の管理が適切に行われているか否かの検査をする方向で検討を行うことが適当である。その場合、現在その業務を担当している指定検査機関に委託してその検査を行えるような方式も検討すべきである。
(2)事業規制
 自己責任原則に基づき、事業者の創意工夫を生かした自由な事業活動を確保させるために、水道事業の運営等に関する国の規制はできるだけ縮小する方向とすべきである。事業認可の制度については、国と都道府県とが水道事業の規模等に応じて分担することが既に決まっているが、その運用に当たっては、事前審査重視から事後チェック重視に比重を移すことを念頭に置き、できるだけ事業者の自己責任に委ねるよう配慮すべきである。
 一方で、国及び都道府県においては、事業の運営に関して十分な監視が行えるような行政体制の整備を図る必要がある。特に、民営水道については、給水区域の市町村による十分な監視を行うとともに、情報の開示や、公的機関または適切な資格を有する第三者機関による定期監査を義務付けるなど、業務の公正かつ適切な運営を確保するための制度を整備する必要がある。

(3)需要者とのパートナーシップ

 水道が需要者の料金によって運営されるものである以上、水道事業の運営に需要者の意思を反映できるよう、水道事業者と需要者とのパートナーシップを進めていく必要があり、双方向の情報伝達を図るべきである。
 そのためには、水道事業の運営やサービスに関し需要者自らが判断することが可能となるような情報の公開が不可欠である。特に、水道事業者及び需要者双方のコスト意識を高める観点から、料金関係の情報や水資源開発まで含めた水のコストに関する情報を積極的に公開すべきである。さらに、水道事業者による工事発注関係の情報公開も、公正で開かれた市場の形成に資するものであり、より適切な工事発注を実現していく契機ともなろう。
 また、需要者に対する積極的な情報提供として、様々な広報が行われているが、さらに、水質の安全性に関する情報など需要者の求める情報を十分含めた広報を行う必要がある。米国などでは需要者への年次報告を義務づけている例もあり、一般行政情報の公開に関するルールとは別に、水道事業者に対して、必要な情報を需要者に知らせる義務を課すことも検討する必要があろう。また、健全な水循環系の構築に向けて住民の参加を促すために、国民一人一人が水循環に果たすべき役割についても、広報を通じて啓発していくことが必要である。
 さらに、水道事業者として、需要者の要望を正確かつ迅速に把握し、求められている情報を速やかに開示していくことが重要であることから、これを専門とする部署や窓口の設置を含めて、適切な対応のできる体制の整備が急がれる。

(4)関係者とのパートナーシップ

 水道事業は、今や様々な制度や枠組みの中に組み込まれており、水道と関係機関との密接な連携なしには適切な事業運営が困難となっている。また、水道は、下水道とともに、水循環系の主要な構成要素となっており、水源の水質管理の強化、水源涵養を含む水資源の安定的確保、特に渇水時における水資源の相互融通を含む総合的な利用・調整を推進していくためには、他の利水、河川管理、環境管理など関係制度間の連携を強化することが必要である。
 このため、流域の市町村や住民の積極的な参加のもと、水道事業者を含めた水循環の関係者が、流域単位で水質監視や取水調整のためのネットワークを整備するとともに、取排水体系の見直し、用途間の転用等の具体的な対策を検討し、推進できるような体制の整備が必要であり、国もこれを積極的に支援すべきである。

(5)その他

(1)技術開発、試験研究の推進
 施設の老朽化、水源水質の悪化等の課題に対応し、渇水時、災害時、水質汚染事故時等の非常時においても安定的な供給を確保できるよう、水道施設の質的な改善・改良が求められている。そのため、高度浄水処理に関する一層の技術開発を進めるとともに、より安全で良質の水道水を適切なコストで供給できる処理技術の開発に取り組む必要がある。さらに、クリプトスポリジウム、サイクロスポーラなど新たに対応を迫られている感染症や寄生虫疾患などについての、水道におけるリスク管理技術についてや、内分泌攪乱化学物質等の微量化学物質についても研究が必要である。また、効率的な老朽化施設の改良方法、都道府県域や流域を越える水道原水の相互水運用などに関する調査、技術開発が必要である。
 技術開発、試験研究の体制として、国、水道事業者、大学等研究機関、水道関係業界等水道関係者の連携が重要である。特に、新たな技術開発には、民間の自由な創意・工夫を最大限に引き出すような体制が重要であり、国は、開発された先導的・モデル的な技術を実用化し、普及させていくような支援を行っていくことが必要である。
(2)人材育成、技術の継承
 人材育成には、水道分野の活性化が不可欠であり、大学における研究・講座の充実、人事交流を含めた水道事業者間での交流の強化などにより、積極的に活性化を図っていく必要がある。また、今後、水道分野における技術の継承が大きな課題となるものと予想されるが、産・学・官の水道関係者が連携して、水道関係技術の調査研究を進め、水道関係者全体で技術を承継していくような体制を強化すべきである。
(3)国際協力の推進
 わが国は、これまでも水道を重点分野の一つとして技術協力、経済協力を進めてきているが、世界には未だに衛生的な飲料水の確保に事欠き、水系感染症の脅威に曝されている人々が少なくない。開発途上国の水道整備に対する技術的、財政的支援を行なうことは、世界有数の経済力と優れた技術力を持つわが国の責務であり、今後、一層、開発途上国の水道整備を支援していく必要がある。その場合、それぞれの国の実情を十分踏まえ、相手国の立場に立ったきめ細かな協力が必要であり、また、技術移転に関しては、効率的で維持管理が容易であることに加え、節水型社会を指向した水道システム、技術を移転するよう配慮することが望ましい。さらに、このような国際協力を支える人材育成及び支援システムを充実していくことが重要である。例えば、人材をプールして、開発途上国の要望に応じて随時派遣できるようなシステム作りが望まれる。
 一方、WHO等の国際機関を通じた国際協力も重要であり、飲料水水質ガイドラインの見直しをはじめ、水道に関わる基準や指針の策定に際して、わが国としても積極的に参加、貢献していくことが必要である。
(4)規格面等での国際調和
WTO体制の下で技術の国際標準化が進められており、工業製品については、原則として国際規格に準拠することが必要であることから、水道用資材、給水装置、水道用薬品等について、規格の国際調和を図っていく必要がある。


(参考資料)

今後の水道及び水道制度のあり方の検討に当たっての
論点等に関する意見募集の結果について

平成11年6月
厚生省水道環境部水道整備課

1.意見募集の趣旨

 厚生省では、水道を取り巻く様々な環境の変化を踏まえて、今後の水道に関する制度の在り方を構想するとともに、その実現方法について自由に議論し、論点を整理することを目的に、水道関係の有識者を招いて「水道基本問題検討会」(座長 住友 恒 京都大学大学院教授)を開催し、昨年6月から検討を行ってきた。検討の過程において、個別の論点について論議を深めるため、関心を有する一般の方々から広くご意見をいただくことが有効であると考え、意見募集を実施したものである。いただいた御意見については、整理の上、検討会に報告し、検討会報告「21世紀における水道及び水道行政のあり方」の取りまとめに当たって、貴重な参考として活用された。

2.意見募集の方法

 水道基本問題検討会において、中間的に整理された「今後の水道及び水道制度のあり方の検討に当たっての基本的認識及び論点」(以下「論点等」という。)を、厚生省のホームページを通じて公開し、これに対する意見を募集した。意見の募集期間は、平成10年10月14日〜10月末日、郵送又は電子メールにより受け付けを行った。

3.募集結果

 募集期間内に、合計53件の意見が寄せられた。
 意見の内容を、論点等の項目に沿って分類すると、次表のとおりである。主な意見の傾向として、水道水供給の理念については、水質に関する意見が最も多く、水道水の安全に直結する水質問題への関心の高さが伺える。給水サービスの公平性については、特にサービスの格差に関連して、水道の広域化に関する意見が多く寄せられた。また、健全な水循環の確保についても多くの意見があり、特に、水質管理の強化や水利権の円滑な調整に関連して、関係者との協調・連携に関する意見が目立った。水道における関係者の役割分担については、民営化や公共関与のあり方に関心が集まり、多くの意見が寄せられた。
 なお、意見が複数の項目に分かれる場合は、内容ごとに分割して整理を行っており、重複がある


意 見 の 分 類 件 数
(1)水道水供給の理念の明確化
 ○総論的意見 5件
 ○水質に関する意見 25件
 ○水量に関する意見 15件
 ○料金に関する意見 14件
(2)給水サービスの公平性
 ○総論的意見 3件
 ○水道の未普及による格差に関する意見 10件
 ○水質、水量面での給水サービスの質(水準)の格差に関する意見 40件
 ○水道料金の格差に関する意見 9件
(3)健全な水循環の確保
 ○水道事業者の役割に関する意見 14件
 ○水道事業者と需要者のパートナーシップに関する意見 10件
 ○関係者との協調・連携に関する意見 25件
 ○省エネルギー等地球環境問題に関する意見 2件
 ○水道事業サイドから他の分野への働きかけに関する意見 3件
(4)水道に対する市民参加
 ○総論的意見 4件
 ○水道事業者の説明責任・情報公開に関する意見 10件
 ○政策決定における住民意見の反映に関する意見 5件
(5)水道における関係者の役割分担
 ○民営化、公共関与のあり方に関する意見 22件
 ○国と地方の役割分担を踏まえた財政負担のあり方に関する意見 5件
 ○水道の地方公営企業方式に関する意見 2件
(6)その他
 ○技術開発、試験研究に関する意見 6件
 ○人材の養成、技術の承継に関する意見 3件
 ○国際協力に関する意見 4件
 ○制度、規格面での国際調和に関する意見 2件

4.意見の概要と検討会報告における取り扱い

 項目ごとに分類した意見の概要と、今回の検討会報告における当該意見の取り扱いについて、別添1のとおり整理した。
 なお、寄せられた意見全体については、別添2に整理しているので、参照されたい。


(別添1)
意 見 の 概 要
(かっこ内は意見の件数)
検討会報告における取り扱い
(1) 水道水供給の理念の明確化
○総論(5件)  
 水道法の目的にある「清浄、豊富、低廉」という理念を維持すべきとの意見(3件)と、より高い水準を目指すなど制度を見直すべきとの意見(2件)がある  水道法に掲げる理念については、水道基本問題検討会(以下「検討会」という。)において活発な議論があり、報告においては、今日的な意義付けが必要とされ、ナショナル・ミニマムとシビル・ミニマムの考え方が提言された
ア 水質
○ 供給する水質の水準について(9件)  
 飲用に適する水の供給を継続すべきとの意見(2件)に対し、用途に応じた水質の水の供給を検討すべきとの意見(7件)があり、全体としては、飲用と生活用とを分けて考えるべきとの意見が多い  検討会では、二元水道の可能性も含めて議論されたが、水道水は直接飲用することはもちろん、調理用や風呂用など飲用に準じた衛生性を求められる用途にも広く使われていることから、報告においては、水道水としては、引き続き飲用できる水の供給を前提とすることが不可欠と整理された。一方、水道水以外の、雨水等の身近な水や雑用水の積極的な活用を図るべきとされ、用途に応じた水の利用がなされるよう提言された
○ クリプトスポリジウムや有害化学物質等への取り組みについて(10件)  
 水質監視を強化すべきとの意見(3件)や水質保全のための新たな制度を検討すべきとの意見(2件)等があり、全体的には、取り組みを強化すべきとの方向  検討会では、水道水の安全性は最大の課題として議論され、報告においても、これらの問題に、的確な対応ができる水質管理体制を整備するよう提言がなされた
○おいしい水の供給について(5件)  
 おいしい水の供給まで必要ないとの意見(3件)と、目標としてはあってもいいとの意見(2件)があり、全体としては、水道に対して「おいしい水」まで期待する意見は少数  報告においても、一律に目指すべき目標ではなく、対価との関係で需要者の選択によってシビル・ミニマムとして決定されるべきものと整理された
イ 水量
○通常時の安定供給について(5件)  
 ダム等の安全度や先行開発の考え方を整理すべきとの意見(2件)、自己水源の確保が重要との意見(2件)等がある  報告においては、今後は既存水源の活用等により、いかに限りある水資源を有効に利用していくかが課題と整理された
○緊急時の供給の確保について(6件)  
 様々な方策により緊急時の供給の確保を図るべきとの意見(3件)、非常時の給水確保について十分な検討をしていく必要があるとの意見(2件)等があり、全体としては、異常渇水時や災害等への備えを十分検討し、必要な施策を講じておくべきとの内容  報告においても、渇水や災害に強い水道の整備への計画的な取り組みが必要とされ、ソフト面での対策を含めて、様々な施策が検討されるべきと提言された
○都市機能の維持等について(3件)  
  水道の役割としては、特に消火用水の評価、位置づけを強化すべきとの意見(3件)で一致  報告においても、都市においては、飲料水以外の水の確保が必須とされ、水道水以外の水の、消火用水や水洗便所用水への活用も含めて検討するよう提言された
ウ 料金
○受益者負担について(4件)  
 公費負担が必要であり、場合によっては受益者負担を見直すべきとの意見(3件)に対し、受益者負担を前提とすべきとの意見(1件)があり、全体としては、水源開発、水源保全、災害対策等については公費負担を求める意見が多い  受益者負担の原則については、検討会においても、高普及時代の水道について引き続き妥当と言えるかどうか議論がなされ、報告においては、需要者に対して水道のコストを認識してもらう観点からも維持すべきと整理された。ただし、大幅な料金格差が生じたり、高料金の抑制のために必要な設備投資が行えないのは問題であり、政策的な配慮(公費負担)が必要とされた
○家庭用料金について(3件)  
 全体としては、コストに見合った費用負担を求めつつ、家庭用料金を抑える措置が必要などの意見(3件)がある  家庭用料金については、むしろ政策的に低く設定されており、需要者のコスト意識が十分働いていないという指摘もあり、報告においては、これを抑えるということではなく、需要者のコスト意識を高め、節水を誘導していくことが必要と整理された
○料金の弾力的な運用について(4件)  
 弾力的な水道料金の運営に賛成する意見(3件)等があり、全体としては、季節別の料金や、渇水時の節水効果も考慮して、弾力的な運用を求める意見が多い  報告においても、左記の意見と同様の提言がなされた
(2) 給水サービスの公平性
○総論(3件)  
 何が公平かの議論、需要者の立場に立った柔軟なサービスの検討が必要などの意見(3件)がある  検討会においても、最低限のサービス水準をどう考えるべきかについて活発な議論があり、報告においては、現状のサービス水準を決して低下させないことを基本とし、「安全に飲用できる水を、通常時に安定して使用できること」をナショナル・ミニマムと整理された
ア 水道の未普及による格差
○未普及地域解消について(5件)  
 一般会計や国庫補助の負担等を行うべきとの意見(2件)等がある   報告においても、独立採算による経営が困難な場合には、国庫補助を検討すべきとの提言がなされた
○未普及地域の小規模水道等の未規制水道に対する規制について(5件)  
 安全性のため規制強化には賛成との意見(5件)で一致  報告においても、水質に関して規制強化の方向での提言がなされた
イ 水質、水量面での給水サービスの質(水準)の格差
○ 最低基準としてのサービスの質(水準)について(7件)  
 水質に関する取り組みの強化を求める意見(4件)等があり、安全性を求める意見が多い  報告においても、水質に関しては取り組みの強化を求める提言がなされた
○水道ごとの多様性について(3件)  
 需要者のニーズに応じた水道ごとの多様性に賛成する意見(3件)で一致  報告においても、左記の意見と同様の提言がなされた
○小規模水道の維持管理体制について(8件)  
 維持管理の統合も含めて、統合、広域化、管理委託などにより、維持管理体制を強化すべきとの意見(8件)で一致  報告においても、左記の意見と同様の提言がなされた
○広域化の進め方について(17件)  
 様々な手法により水道の広域化を進めるべきとの意見(9件)に対し、現状の広域化には問題があり見直しが必要、あるいは安易に広域化すべきではないとの意見(6件)等があり、全体としては、広域化を進めるべきとの意見が多いものの、現状のままでの広域化に対して強く見直しを求める意見もある  広域化の進め方については、検討会においても活発な議論が行われ、左記の意見と同様に、経営基盤の弱い小規模水道を中心として広域化が必要との点については一致したが、現状の広域水道についての問題点も指摘された。報告においては、地域の実情に応じて多様な形態による広域化を進めることが重要とされたが、自己水源の放棄や遊休施設を発生させることなく、実際に経営基盤の強化や事業の効率化につながる計画とすべきとの提言がなされた
○小規模受水槽の管理体制について(4件)  
 小規模受水槽についても、蛇口での安全性を確保することが必要との意見(4件)で一致  報告においても、左記の意見と同様の提言がなされた
ウ.水道料金の格差
○コスト主義の考え方について(4件)  
 コスト主義を徹底すべきとの意見(2件)等がある  報告においても、左記の意見と同様の提言がなされた
○地域間の料金格差について(3件)  
 好ましい状況ではないなどの意見(3件)がある 報告においては、ある程度の料金格差は基本的に容認せざるを得ないが、大幅な料金格差は問題であり、政策的な配慮が必要と提言された
(3) 健全な水循環の確保
○水道事業者の役割について(14件)  
 清浄な水源の確保が基本との意見(4件)、他の利水や様々な水の用途との連携、調整を図るべきなどの意見(3件)、地下水の問題について水道として考えるべきとの意見(3件)等があり、いずれの意見も水道としての対応を図るべきとの内容  検討会においても、同様の意見があり、報告においては、関係者とのパートナーシップを、行政施策の柱として位置づけ、これらの課題に取り組む方向が提言された
○水道事業者と需要者のパートナーシップについて(10件)  
 需要者とのパートナーシップにより節水型社会の実現などを進めるべきとの意見(10件)で一致 報告においても、左記の意見と同様の提言がなされた
○関係者との協調・連携について(25件)  
 水道水源の保全など水質管理の強化を図るべきとの意見(8件)、水利権のより円滑な調整、渇水調整などに関する意見(7件)、水行政の一元化を図るべきとの意見(4件)、水資源の安定的確保に関する意見(2件)、雨水や下水処理水の有効利用を図るべきとの意見(2件)等があり、いずれの意見も関係者との協調・連携を強化すべきとの図るべきとの内容  報告においても、概ね左記の意見を取り込んだ内容について、関係者との協調・連携を図るべきとの提言がなされたが、水行政の一元化までは、検討会としての検討の範囲を超える部分でもあり、触れなかった
○水道事業サイドから他の分野への働きかけに関する意見(3件) 
 水源の水質保全など積極的な働きかけが必要との意見(3件)がある  報告においても、左記の意見と同様の提言がなされた
(4) 水道に対する市民参加
○総論(4件)  
 市民参加による民意の反映が必要などとの意見(4件)がある  報告においても、「需要者の視点」を基本的視点の一つとして位置づけ、需要者とのパートナーシップを、行政施策の柱として推進していくべきとの提言がなされた
ア 水道事業者の説明責任・情報公開
○需要者に対する説明と需要者からの意見について(9件)  
 コストや水道水の安全性などに関する適切な情報公開を進めるべきとの意見(5件)、需要者との良好な関係、情報交換の場が重要との意見(2件)等があり、全体として、需要者に対する情報公開やパートナーシップを強化すべきとの意見が多い  報告においても、左記の意見と同様の提言がなされた
イ 政策決定における住民意見の反映
○住民の意見を反映した意思決定について(4件)  
 住民意見の反映の重要性や反映方法に関する意見(4件)があり、全体的に適切な形で意見の反映を図るべきとの内容  報告においても、左記の意見と同様の提言がなされた
(5) 水道における関係者の役割分担
○民営化、公共関与のあり方について(22件)  
 民営化や民活を推進すべきとの意見(4件)に対し、公営の原則を維持すべきで民営化に反対との意見(9件)、民営化に対する賛否以前に検討すべき課題があるとの意見(4件)等があり、全体としては、民営化に対しては反対あるいは慎重な意見が多い  水道事業の経営形態に関しては、検討会においても活発な議論が行われ、民営化に関しても賛否両論があったが、まだ検討すべき課題も多く、短期間の検討で結論を得ることは困難との判断から、報告においては、今後、更に検討を深めていくべき課題として整理された
○国と地方の役割分担を踏まえた財政負担のあり方について(5件)  
 財政措置の見直しに関する意見(3件)と、国と地方の役割分担に関する意見(2件)があり、全体としては、両者の役割分担や財政措置のあり方について、再検討していくべきとの意見が多い  報告では、左記の意見と同様の観点から、新しい時代の国、地方公共団体等の役割分担が提言され、財政措置についてもより政策的に限定していく方向が提言された
(6) その他
○技術開発、試験研究について(6件)  
 研究体制の充実を図るべきとの意見(2件)、国の役割の関する意見(3件)等がある  報告においても、左記の意見と同様の提言がなされた
○人材の養成、技術の継承について(3件)  
 水道の活性化、OBの活用、交流人事などにより人材の育成を図るべきとの意見(3件)がある  報告においても、左記の意見と同様の提言がなされた
○国際協力について(4件)  
 相手国の実情に応じた支援、国際協力のための人材育成や体制整備を図るべきとの意見(4件)がある  報告においても、左記の意見と同様の提言がなされた


(別添2)

論点等に対する意見

 以下は、事務局に寄せられた53件の意見全体を、論点の項目に沿って整理したものである。枠内は、論点として公開した内容で、その下に、これに関連意見の概要を整理した。なお、下記の意見の内容は、事務局の責任において、分類・要約したものである。

今後の水道と水道行政を検討するに当たっての論点

(1) 水道水供給の理念の明確化

 水道法に掲げられた清浄(=水質)、豊富(=水量)、低廉(=料金)という理念は、今日まで、水道の在り方を律する基本となってきた。この理念は、社会状況が変わっても維持すべき理念であるとしても、その具体的な内容や解釈については、受益者であり、また、その費用の負担者でもある需要者の要求との関係で議論されるべきである。
 そこで、まず、需要者はどのような給水サービスを期待するのかということを整理し、「清浄にして豊富、低廉」という理念の今日的意義を明確化していくことが重要である。


○現在の理念を維持すべきとの意見(3件)

・ 「清浄、豊富、低廉」という理念を今後も貫き通すことが水道の使命(14)
・ どうすれば水道の基本理念を貫徹できるかをまず検討すべきで、その前提として水に関わる行政の役割、権限及び責任を明確にし、制度面の見直しまで含めて質、量の両面で実効性のある水源対策をどうすれば実現することが可能か、その方策を示すことが必要(26)
・特に低廉な水という3本柱の1つを、水道法の原点に戻って明確に目的化すべき(46)

○より高い水準を目指すなど制度を見直すべきとの意見(2件)

・ 都市の利便性や発展の方向性等に着目した高次な信頼性水準を設定し、いまより目線をあげた事業展開が必要不可欠。ますます多様化しつつある需要者のニーズに対して、例えば、需要者側の選択幅を設けたり、土地利用や地域特性に応じた水道整備目標を設定するなど、多様なサービスのための新しい手法を積極的に取り入れることにより、従来の枠組みを超えた水供給システムのあり方を検討すべき(7)
・国民レベルでの水質、水量及び料金を規定するだけの水道基本法(生活環境基本法)と、水道事業法等とに分けて法を整備することにより、国民の生活を守る行政の姿勢が明確になる(21)

ア 水質

・引き続き、飲用に適する水(安全に飲用できる水)の供給を前提とする。

○ 飲用に適する水の供給を継続すべきとの意見(2件)

・ 飲用に適する水の供給が前提(3)
・ 飲用に適する水の供給を前提とする方針に賛成。これがないと、水質改善に対する危機感、意欲がなくなるおそれがある(5)

○用途に応じた水質の水の供給を検討すべきとの意見(7件)

・ 将来的には、飲料水と生活用水とを分離した供給体制も考える必要あり(16)
・用途別に水質基準を定め、供給形態の制約は行わないことにより、地域に見合った供給システムができる(21)
・水道水の水質基準は用途別に考え、飲用以外の用途については誤飲も考慮に入れて現行基準程度とし、飲用は、使用する地点での追加処理により、より高い水質基準を目指す(43)
・浄水であっても飲用水と生活水を分離して考え、水道水を飲み水として口にすることが少なくなることを考慮して、感染症対策に主眼をおき、臭気・味覚等の規制項目緩和を行う(51)
・より低質の水で済む用途には、そうした水の供給を行って水道で供給する量を減らし、また、河川の中流部以降では、水質悪化への備えとして、活性炭程度は標準装備することが重要(5)
・飲用水専用とその他生活用水用等の二元水道論について、配管の途中の浄水施設設置を含めて論議を尽くしておくべき(3)
・多重配管による多元給水は困難であり、浄水器のような使用する直前での追加高度処理や集合住宅などは集中的に追加高度処理をする等の形態が想定される。現行の水質基準程度で十分とするか、それ以上の基準を望むのかは、使用者の自己責任による判断。追加高度処理装置については、民間業者でも水道事業者でもどちらが設置しても維持管理の委託を受けてもかまわないものとし、そのコストは使用者の負担。追加高度処理装置が技術的に可能かどうか、水道事業者の責任範囲の明確化が課題。(43)

・クリプトスポリジウムや有害化学物質等による汚染に対する体系的な取り組みが必要ではないか。

○ 水質監視を強化すべきとの意見(3件)

・ 水道事業体の水質管理、監視システムを強化し、検査頻度を強化することが必要で、水道事業体で対応できない場合は、信頼性のある専門的な検査機関等の活用が必要(16)
・ 事業体による水質管理・監視システムの強化が必要で、事故時にも事業体による監視と迅速な情報伝達で、最小限の被害に抑える(34)
・ 汚染の監視には、水道に限らず、建設、環境、農林水産と水に関わる全ての行政がそして広く住民の協力を得て総合的、恒常的に調査・監視体制を確立すべき(41)

○ 水源保全のための新たな制度を検討すべきとの意見(2件)

・国は水道水源水質が極めて悪いものについて知事に調整させ、水源の位置を上流に移すことなどを勧告あるいは助言し、より良質の原水が得られる仕組みを検討すべき(4)
・ 水源地域には汚染物質等を排出する施設を立地できない法案を作り安全で水循環系を守る対策を講じる。(52)

○ その他、調査研究の充実、規制の強化、水源での立地規制、末端での給湯システム等の規制等の意見(5件)

・国の研究費を有効に活用し、他分野とも連携しつつ調査体制を充実。水道事業体の水質検査と厚生省の指導を強化すべき(3)
・重金属・塩素系化合物等発生者責任を明確にした規制の強化、農薬散布の減量化、各家庭からの合成洗剤などの生活雑排水の減量化が必要。市民向け啓発活動と水道事業体による水源の水質掌握を図るべき(34)
・発生源の汚染物質の種類によってはクローズド処理を導入すべき。生活排水については、合成洗剤など環境や健康に悪影響を与える物質の製造・販売・使用を禁止し、リサイクルやごみ対策を強化して、水環境への負荷を抑えるべき。特に産廃処分場は、水道水源域には絶対に作らない。水源の水質改善には、森林の保護、特に水源涵養林の保護育成に力を入れ、河川改修やダム等の建設は最小限にし、節水社会の確立と身近な水源の見直しを行うべき(41)
・水道器具認定のあり方を考え、酸・アルカリ水についての評価を行い、安全性と毒性評価、コーティング管の環境ホルモン対策、各種端末器具の検定・使用基準の明確化、水道配管の防錆薬品に関する基準・取扱のための資格・管理における基準と罰則等を定める(52)
・給湯システムには素材からの溶出、微生物の繁殖などで衛生問題で留意すべき事項が多く、この分野を水サービスの一環とすることが適切(53)

・安全に飲用できる水の供給に加えておいしい水の供給という概念を取り入れるべきか。

○おいしい水の供給まで必要ないとの意見(3件)

・とりたてて「おいしい水」を強調する必要はなく、現在の大都市の水質は、明らかに異臭味がするのではないが、漠然と不安を与える程度においしくないという程度で、「安全に飲用できる」ことが需要者に信用されないレベル(5)
・おいしい水は個人の嗜好であり、公共サービスで対応すべき問題ではない。浄水器やペットボトルの普及で個人がおいしい水の選択をできる環境が整っているので、おいしい水の供給という概念を取り入れる必要はない(50)
・ おいしさ等までは求めない方がよい。理由は、水道水のうち飲用に使用しているのは数パーセントしかなく、生命を維持するための水はペットボトル等の販売水でという考え方が一般化しつつある。
 水道は、生命を維持するために必要な施設ではなく生活に必要な水を供給する施設と位置づけるべき(47)

○目標としてはおいしい水の供給もあっていいとの意見(2件)

・達成目標として設定し、実行は各水道事業者の判断。法律や規則ではしばらない(3)
・おいしい水であることに越したことはないが、現実に飲用する水は少量であり、コストがかかり料金が高額にならないようにすべき。また、おいしい水に必要なコストを明示すべき(15)

・環境要因に対して感受性の高い集団の増加、その保護と社会参加を念頭において、より安全な水道の効用を考えるべきではないか。

○ある程度念頭におくべきとの意見(1件)

・特に注意を要する物質には留意。水質目標を全てこの集団におくことは無理が生ずる(3)


イ 水量

・通常時の安定的な供給の確保は当然。

○安全度や先行開発の考え方を整理すべきとの意見(2件)

・ダム依存の場合、安全度がまちまちであり、是正が必要。今後は、これまでのような先行的な施設整備の余裕量で安全度不足を補う手法がとれなくなる(4)
・安全度と経済性のバランスをどのように踏まえて将来水源の開発を進めるべきかが重要な課題(9)

○その他、必要水量についての弾力的な考え方、自己水源の確保等の意見(3件)

・季節変動、日変動、時間変動に対する効率の良い供給方法を検討すべき。(3)
・近接する水道事業体間でさえ水量に余裕のあるところとないところのアンバランスが目立ってきており、必要水量確保についてより弾力的な考え方を適用することが必要(6)
・県水依存体質から脱却し、自己水源の充実確保こそが今日の水道事業の基本課題(11)

・異常渇水時や災害等の緊急時の供給の確保を、どの程度まで考えるべきか。

○様々な方策により緊急時の供給の確保を図るべきとの意見(3件)

・渇水対策は最近の気候変動を考慮し、渇水対策貯水池、原水調整池の建設により水源にゆとりを持たせる。複数水源、水系により相互応援のできる施設とする。他の水道との連絡管、浄水場間の連絡管の整備。貯水池に余裕を持たせる。消火用水設備を計画の段階から重点的に配備。地震、災害時全ての施設を守るのは無理で、電気のヒューズのように弱いところを作っておき、短時間のうちに復旧するシステムとする。緊急時の応急給水施設(貯水槽、給水車等)は整備する(3)
・今後、長期的には人口が減少する傾向であり、これにより余剰の生じた水量を、国等が保有し、臨機に活用することはできないか。緊急時の水供給の水準を考えるときに、民営水道と公営水道で違いが生じるのはまずく、民営化の場合は事業を認める条件として緊急時の対策レベルを明確にしておく必要(5)
・渇水時や災害時の給水の確保など、ビル等の大規模受水槽を有する管理者との協定により臨時の水量確保を行い、これを優遇措置により支援(51)

○非常時の給水確保について十分な検討をしておく必要があるとの意見(2件)

・ 事業活動や都市機能を維持するための基盤施設としての面からの給水対象や内容の質的な多様化を具体的に評価し、給水量の中での位置づけを明確にした上で、震災等における給水確保レベルの検討等が行われることを期待(26)
・ 水使用の優先順位を平常時にきっちり議論してルール化しておく(53)

○その他、平常時の維持管理が重要との意見(1件)

・平常時の維持管理がいざというときの地震災害対策の一つである認識が重要(13)

・供給の対象として、個々の需要者だけではなく都市機能の維持等の概念をどこまで取り入れるべきか。

○特に消火用水の評価、位置づけを強化すべきとの意見(3件)

・消火用水について、消火栓の設置と維持管理費のみを一般会計から負担する考え方ではなく、都市防災上の効用を評価の上、受益者から負担させる方法などの導入を検討すべき(4)
・消火用水確保の観点から、水道を適切に位置づけ、関係者の連携を密にして、計画運営する方向を強化すべき(53)
・飲用水等直接人体に接する部分は水道が受け持ち、水洗用水、洗車、噴水、流水等は状況に応じて自然水、雑用水の利用でよい。消火用水は水道、雑用水、自然水の組み合わせになるが、水道用水が主体(3)

・少子化・高齢化の進行が水需要構造に与える影響を考慮して、事業計画を策定していくべきではないか。

○飲料水の確保、水圧を利用した介護施設への用途も検討すべきとの意見(1件)

・飲料水を全てペットボトルにするのは無理、運搬が困難。水圧を利用する介護施設の設置(例えば風呂にはいるときの持ち上げイス)も今後の検討課題(3)


ウ 料金

・受益者負担という概念は、引き続き前提とする。

○受益者負担を前提とすべきとの意見(1件)

・前提とする。(3)

○公費負担が必要であり、場合によって受益者負担は見直すべきとの意見(3件)

・水道は都市基盤の一つとして、極めて重要で幅広いものであり、受益の内容とその対象者も幅広く考えることが必要。その負担についても、災害時の給水に備えた施策など、国や各都市の一般会計負担でコストを賄うことが適切な場合も多い。受益者負担に公費負担を含めて、今日的な幅広い視点で見直せば、現在の水道料金の水準をかなり抑制することが可能(7)
・外的要因による資本の投入にまで受益者に負担を強いるのは無理。例えば、(1)水源開発、(2)水源保全をはじめとする環境保護の費用、(3)有害化学物質や病原性原虫などによる水源汚染の対策、(4)渇水対策に必要な費用、(5)災害復旧・復興、耐震化事業、災害対策などの費用、(6)水道水質検査に必要な高額の検査費や高度処理施設、(7)節水型社会をめざすこと。受益者負担を大前提にし、独立採算性を原則とする考え方は、今日の時代背景にあわず、抜本的な改革が必要。国民皆水道といわれる成熟期の時代にあった費用負担として、大幅な税負担が必要(17)
・水道事業は住民にとって欠くことのできない、住民福祉の向上という社会目的のための事業で、ほとんどの国民がその需要者であり、受益者負担による独立採算という概念は考え直すことも必要。
 受益者負担の原則を堅持するのであれば、格差縮小の観点からも、設備投資費用、起債の元利返済は独立採算性の枠から外し、税負担・公費負担にすべき(27)

・特に、水道料金は(場合によっては下水道料金も含め)資源である水の消費に伴う費用を賄うものであるという概念を明らかにすべきではないか。

○水の消費に伴う費用である点を常にPRすべきなどの意見(2件)

・渇水時対応として常にPRが必要。経済の需給バランスからすると渇水時に通常より料金を高くするシステムも検討課題(3)
・同一地域内でも設置コストの差による水道単価のサービス価格差を付けても良い(52)

・一方で、すべての国民が等しく使用する水であるということから、家庭用の料金を著しく高額とならないための措置も必要ではないか。

○コストに見合った負担を求めつつ、家庭用の料金を抑える措置が必要などの意見(3件)

・独立採算である限り格差が生ずるのは当然であるが、高額部分の税負担による是正など家庭用料金が著しくならない措置は必要(3)
・家庭用といえども、料金上一定の配慮はしつつも、基本的な方向としては、コストに見合った負担を求めていくことが、今後、検討すべき重要な課題(7)
・二部料金制度を発展させて、生活用にどうしても必要となる水量までは、全国的に税負担として公平性を確保し、その水量を超える部分は各事業体によるという仕組みを考慮すべき(5)

・都市機能の維持といった需要者が特定されない場合の費用負担についてはどのように考えるべきか。

○一般の需要者が分担して負担との意見(1件)

・共同使用だから一般の需要者が分配して負担(3)

・水道料金については、季節によって料金を変えるといった弾力的な運用の工夫も必要ではないか。

○弾力的な水道料金の運用に賛成する意見(3件)

・基本的には賛成であるが、料金でどの程度需要をコントロールできるのか十分に検討が必要。夏期には水の使用量が増えるので使用料増分を丸々料金に反映させるのではなく、時期による料金差という点では渇水時料金が適当(5)
・季節料金を一歩進めて、渇水時の料金設定やそこで期待される節水効果等も検討すべき(26)
・季節別のみでなく原水の確保状況によっての弾力的な運用の工夫が必要(53)

○個々の事業体の問題とする意見(1件)

・個々の水道の特性に応じて考える課題・・全国マターでない。(3)


(2) 給水サービスの公平性

 水道水の水質、水量、料金、緊急時の対応等給水サービスの水準については地域間の格差があり、結果的に需要者間で不公平が生じている。このことは、例えば同一水源を利用する水道事業者間においても見受けられる。水道の給水サービスが事業単位で行われる以上、事業間である程度の格差はやむをえないとも考えられるが、需要者間の公平性の確保という点から、(ナショナルミニマムとしての)給水サービスの質に関して一定の水準を設けるべきではないか。

○何が公平かの議論、需要者の立場に立った柔軟なサービスについての検討が必要などの意見(3件)

・給水サービスの向上が受益者から切に求められており、もっと柔軟な給水サービスに徹するべき。
 需要者の立場に立って水道事業の全般的なあり方を見直すことにより、改めて水道事業者の果たすべき役割を明らかにすることが重要。(6)
・ 何が公平か詰めた議論が必要で、結果としての格差を論じるためには、事業体の構造にメスを入れない限り解決策は出てこない。その中間に調整機能、補助などがあるが総体としての理念、仕組みを考える必要がある。(53)
・水道事業が市町村単位である以上格差はやむを得ない。最低限の水準を確保するためには、法令でしかるべき基準を設けるか、広域化を行うという方法になるのではないか。民営水道まで考えると、料金について行政はどこまで関与するのか、料金の上限額まで定めるのか(5)

ア 水道の未普及による格差

・未普及地域解消のため採算性の悪い地域に水道を布設することは、需要者に大きな経費的負担をかける可能性があり、市町村として行政サービスの均衡をどのように図っていくかとの観点からの対応が必要ではないか。

○一般会計や国庫補助の負担等を行うべきとの意見(2件)

・既利用者に全て負担させるのは無理があり、一般会計の応援があってしかるべき(3)
・水道の広域化を視野に入れ、不採算地域の水道施設の建設に対する補助金制度の創設が必要。都市部の水道料金に一定の水源保全基金を付加することを義務づけ、経費負担の援助を行うことに対するコンセンサスを得て、この基金の一部を未普及地域への水道布設基金とすることも一つの施策。
 具体化には、横断的な水道行政組織の樹立が同時に必要。また、水質管理に万全を期した、水道に匹敵する飲料水供給施設の設置を積極的に推進すべき(14)

○その他、水道の布設にこだわらない、などの意見(3件)

・当該地域の住民の健康を確保するために水道布設以外の方法があるのかどうかによる。飲用井戸や小規模水道対策が十分に講じられるならば水道布設にこだわる必要はない(5)
・これまで需要者が必要な負担をしてこなかったとも言える(53)
・農村総合整備の一環として営農飲雑用水施設を整備する事例では、水道施設とは施設容量(必要水量等)が異なるため、安定した経営基盤が構築できず、一般財源からの補填を行いながら事業を継続しているケースもある。水資源の有効利用を多角的にとらえ、使用実態から総合的に再検討し、関係省庁の施設基準等の整合を図るとともに、地域性を考慮した施設整備の的確な国策及び国庫助成などへの反映が必要(10)

・また、未普及地域の飲料水供給を担う小規模水道や居住者のいない施設の水道等は、法規制対象外となっているが、これらについても、飲料水の安全性を確保することが必要ではないか。
 そのため、水道法の「水道」の定義を見直すべきではないか。これは一面では規制強化の意味を持つが、規制緩和の流れの中で妥当と考えうるか。

○安全性のため規制強化には賛成との意見(5件)

・水道法の「水道」の定義を見直しても、安全性を確保すべきで、規制強化もやむを得ない(3)
・小規模水道について、各種の基準が適用されるようにすることは賛成であるが、行政が事前関与する仕組みは事務量的にも大変であり、事後的関与が望ましい(5)
・法規制対象外の小規模水道や居住者のいない施設も安全のために規制強化を行う。ビル管法での規制を簡易水道と同一化して規制強化を図る(52)
・現行制度は、簡易専用水道は市町村事業の先を都道府県が面倒をみるという不自然な形態であり、受水槽を有する個々の利用者まで水道事業のサービスが行き届くようにすべき。全ての国民に衛生的な水が利用できる施策が望まれており、水道という手段によるかは別として地域での水サービスの主役として水道事業が名乗り出る時代(53)
・給水人口が101人を下回る簡易水道があるが、水道法の対象外となる。このような場合、自治体は、行政上の特例措置(損失補填)を行ってでも安全で安定的な水道水を供給し、衛生基盤を確保したいと考えるが、現行の水道法では、このような財政支援が適正かどうかを含め判断が困難な状況(10)


イ 水質、水量面での給水サービスの質(水準)の格差

・水質、水量というサービスの質(水準)については、水道水質基準や常時給水義務といった一定の水準がおかれている。これらの最低基準については全国一律に適合することが求められる。

○水質について取り組みの強化を求める意見(4件)

・水質基準は数年に一度の割合で見直しをかけ、監視項目も基準項目に採用し、また放射能や農薬等についても新たに基準を設定する。一方、基準項目の現在の基準値を最低限の数値とするとともにより高い目標値を設定する。水質検査の安易な外部委託は避けるべきで、検査体制の確立は「安全でおいしい水」のためにも必要不可欠(25)
・水道水の水質検査のレベルを向上させ、併せて、プロセス毎の水質管理により、水質管理の確実性を高めることが必要。指定検査機関を各都道府県の水質管理体制に組み込み、緊急時の水質監視とともに今後の汚染防止のための体系的な組織作りが必要(2)
・次亜塩素酸消毒による弊害、トリハロメタン、オゾンとBODとの関係等の研究、公表や、おいしい水を供給すること・都市機能を維持するための最低水質基準についての研究が必要(51)
・現行システムは消火のために放水しているときの蛇口の水の安全は保証できないし、水質にも力を入れてきているが、保管している配水管の両端にふたがないなど衛生面への配慮は未だ十分でなく、安全を確保できる水道側のシステム構築が必要(53)

○その他、災害対策の強化などの意見(3件)

・地震などの災害時の水の確保については誠にお粗末。公共施設、公園などの受水槽のみならず、配水管、給水管の何キロメートル毎かに緊急遮断弁を設けた大口径管を敷設し、常に水が動いているようにしながら、緊急時に対応できるようにすべき。そのための全額又は高率の国庫補助制度による早急な実施が望まれる
・最低基準に限定し、それ以外のことは個々の水道が判断して採用すべき(3)
・地域格差解決のため水道のネットワーク日本縦貫配管設置を進めるべき(52)

・これに加えて、例えばおいしい水を供給することや、渇水時、災害時等においても需要に応じることのできる水量の供給という点を考慮すべきではないか。その場合に、市民の求めるレベルに応じて、水道ごとに多様性があって良いのではないか。

○水道ごとの多様性に賛成する意見(3件)

・地域の特性によって水道の質も変わり、水道毎に多様性があって良い(3)
・市民の求めるレベルに応じて差が生じて良いが、そのレベルをどのように把握するかが難しい問題。
 事業体としては、どれくらいの負担ならどのレベルのサービスができるか、またそのレベルは他都市と比べてどうなのか等をきちんと示すことが必要。こうした情報を各事業体が示せるようなデータベースを作ることは国の役割(5)
・水道ごとの多様性は重要で、大規模水道がやむを得ず取り込んできた高度な浄水方式を管理能力の伴わない小規模水道が模倣してしまうところに問題がある。汚染のおそれの少ない水源、管理のし易い浄水施設を大切にすることが小規模水道にとって重要。緩速ろ過池の砂の削り取りを機械的に行う装置の開発や、原水貯留池や配水池の大容量化によって高濁度時の取水を停止して緩速ろ過池の負担を軽減するような施設計画も重要。小規模水道に依存する農山漁村では、年末年始、お盆、お祭りなどの帰省者や観光客の集中で給水量が増加するが、これに対応するための施設が平常時には過大となる例も少なくなく、配水池の大容量化によって日最大をある程度吸収するという考え方もある(20)

・住民の安全に関わる都市機能を維持するための水準についても視野に入れるべきではないか。

○賛成意見(1件)

・特に消火用水、緊急時用水について、視野に入れるべき(3)

・特に、小規模水道にみられる格差の是正、レベルの高い維持管理体制づくりについて、適正な規模という観点も含め検討することが必要ではないか。

○維持管理の統合も含めて、統合、広域化、管理委託などにより維持管理体制を強化すべきとの意見(8件)

・広域化の推進とともに、外部の専門家の活用により、小規模水道にあっても、常時高いレベルの維持管理が行える態勢を整備すべき(2)
・ クリプト、環境ホルモン対策等は小規模水道単独では無理であり、適正規模への統合を進め、小規模水道を広範に管理できるシステムを作るべき(3)
・小規模事業者については、現行の水道法の枠組みを超えた積極的な統合・再編を通じて、その組織力の格段の強化を図ることが必要。簡易水道等の小規模事業者の統合管理体制を確立することは、水道の今後の充実と発展のため極めて重要(6)
・適正な規模、維持管理能力という観点から、水道事業者は「市」又は「複数の町村による一定規模の広域事務組合」とし、長期的には民間の参入も認めるべき(15)
・地域事業体の統合を進め、市・郡単位に広げることにより規模の原理を取り入れ安定化を図るべき(52)
・ 小規模水道には、技術部門の人的確保、水道の安全性、維持管理、緊急時の対応技術力の確保、水道技術者の配置等の問題があり、事業規模の拡大が必要。その際、都道府県が地域住民のコンセンサスを得ながら地域の実情に合った適正規模の範囲を調整し設定する必要(44)
・ 施設の統合は不可能なものや極めて多額の費用を要するものが少なくないので、管理の統合を積極的に考えるべきで、施設の統合とあわせてこの方法による町村単位の管理の統合を図り、さらに複数市町村が共同処理するような体制づくりを進め、府県営や企業団営の水道事業がこれをまとるような方式に発展させることが望ましい。末端給水企業団が構成団体の簡易水道をあわせて経営したり、管理の委託を受けている例もあり、このような方式も積極的に進めるべき。小規模水道については、高度の管理技術を要しない水道づくりという観点も必要で、同時に安全性を裏付ける水質管理体制を水質検査機関の指導により整備する方策が望ましい。専用水道についても、管理面について簡易水道と同様の方策を考えていく必要がある。(20)
・広域化ができればよいが、企業団を設立するのは大変だし、料金差から統合も難しいので、大規模事業が維持管理を受託する、共同で維持管理会社に業務委託するなどの方法が現実的(5)

・一方で、今後の水道の広域化の進め方も明確化していく必要があるのではないか。

○ 様々な手法により広域化を進めるべきとの意見(9件)

・現状では進まず、国が主導的に広域化の抜本的進め方を打ち出すべき(3)
・現在の課題は、市町村経営が時代に合わなくなってきているからであり、広域化の必要性は自明。
 水道事業が市町村の枠を超えて活動できる体制が必要。そのため水道に競争原理を導入し、需要者に選択権を与えて、水道事業同士の合併あるいは吸収を促し、都市経済圏クラスの広域化を行う。
 さらに、将来は民営化まで推し進める(49)
・15〜20年程度先を目標に、全県が概ね流域単位の水道に統合・一体化する方向を目指して、法令、補助規定、都道府県の役割の強化などを行うべき(4)
・水道事業の超広域化、水道水の広域融通、水利権の流動化など、経済効率を目指した広域連携が必要。これにより、水道全体としての計画余裕水量を減らすことが可能になる(12)
・もう少し大きな単位として水系及び隣接都道府県を考える必要があり、広域送水連絡管構想などを緊急時だけではなく平常時に運用することで地域全体の安定性の確保とともに、投資効率を高くすることが可能となる(21)
・ 中小規模の水道の比率が著しく高い現状からは、給水サービスの公平性の徹底は構造的に困難であり、大きな水系を中心とする広域水道に編成替えすることについても今後検討されることが望ましく、いくつかの選択肢を設定して、その得失を具体的に議論すべき(26)
・企業団方式による広域化は需要者との距離が遠くなるという点で問題があり、料金統一までを求めない緩やかな広域化の手法(協議会で施設整備、維持管理を共同化など)が必要(5)
・供給能力に余裕のある大規模な水道事業体が核(=ハブ)となり、周辺の水道事業体と連携を図る、ネットワーク的な広域化構想も視野に入れるべき。ハブ水道には、広域化に耐える安定した高度な水道システムと優良な経営基盤を有することが必要最低限の条件となる(7)
・複数の施設を有していても一つの事業として経営・管理することによって、名実ともに給水サービスの公平性が図られる(20)

○現状の広域化には問題があり見直しが必要、あるいは安易に広域化すべきではないとの意見(6件)

・料金格差の縮小に向けては、広域化ではなく別途の補助や税方式によるべき
・現在の用水供給の制度は、各市町村の自己水が余分にあっても県水との契約水量を受水して自己水を送水しないことが問題。受水費が水道事業会計の30%近くを占め、自己水源を廃し・休止せざるを得ない実態があり、県水の拡張計画は、需要の過大見通しをしており見直すべき。(11)
・地方自治確立の問題を抜きにした更なる広域水道・広域行政の拡大は矛盾の拡大、国の権限の拡大であり、民主主義の根幹は地方自治にあるという国家理念に抵触するもの。現実の地方自治体と広域水道事業体の矛盾の解決を国の加入を排して自主的・自立的に行う中で、今後のあり方を問うことが大切であり、安直な広域水道事業体・広域行政の拡大には明確に反対(32)
・現在の広域化の水道政策は、高度成長時の伸びを前提としており、結果的に過大な稼働率の悪い施設を整備したため、水道料金単価に跳ね返り、当初目的の経営の効率化とは逆の結果となっている。
 将来の水源開発の不安から広域水道へ参画した場合、結果として地下水等の身近な水源を放棄せざるを得ない状況を招き、高料金に結びついている。高度成長期に計画された現在の手法では無理があり、国の施策の転換が必要(33)
・広域化はコスト減を保証せず、企業団経営の給水原価は全事業平均より高い(38)
・広域水道整備計画はその前提となる水需要予測が、高度経済成長時期のものであり現在の節水型社会にはそぐわない。その問題は、(1)自己の水源を使い切れず広域水道の水を責任水量として受水しなければならない水余り、(2)新たな水源確保と設備投資のための莫大な時間と費用が水道財政を悪化させ水道料金の値上げを引き起こした、(3)巨大ダム建設により自然破壊はもとより人間生活にも大きく影響を与える、(4)そのことにより、水と切っても切れない森林破壊を引き起こし水質の悪化も引き起こす。広域水道に対し国の政策の転換を求めるとともに、節水の徹底、自己水源の有効活用、身近な水の利用(地下水)などを進め、水不足地域の解消に努めるべき(42)

○その他、水道の全国ネットワーク、維持管理体制の見直しなどの意見(2件)

・渇水時等の水量確保や水質均質化を進めるために水道管の全国的ネットワークを図り、災害等の緊急時には融通できるように整備し、ダム適地の減少開発効率の低下に対しては、開発可能地域を優先的に活用して水源地域対策を考え、地球環境を守り水源を守る。(51)
・広域化と並行して、維持管理について、第三セクターあるいは公益法人を積極的に活用することを視野に入れた管理方式に向かうことが必要と考えます。(2)

・また、小規模受水槽の管理体制に関し、受水槽の有無など水道の利用形態の違いによる実質的なサービスの格差を解消し、蛇口での安全性を等しく確保するための措置も必要ではないか。

○蛇口での安全性を確保することは必要との意見(4件)

・受水槽を有する利用者全てに衛生を確保する方策が必要で、簡易専用水道の適用範囲の拡大が必要。
 現在水道法の規制を受けない水道についても、適切な規制措置を検討することが必要(2)
・受益者中心の水道の概念から、当然、受水槽以下のマンションの蛇口での安全性を確保すべきであり、早急に是正すべき(3)
・水道の定義を見直して、水道法の適用を受けない小規模水道施設や受水槽を水道法の対象として積極的に取り込むことを考慮すべき。受水槽や家庭用浄水器も事業の対象に取り込んで、サービスに応じて別途に料金を徴収して良い。蛇口から出てくる水道水の水質について最終的には水道事業者が責任を負うべきであり、給水装置の法的な取扱について必要に応じて見直すとともに、これに関連する情報の積極的な公開についても努力すべき(6)
・利用者の要望に応じうるサービス体制を是非整えるべき(53)


ウ 水道料金の格差

・水質、水量等の給水サービスの質に見合った費用を料金で負担する以上、質の高いサービスはそれに見合う料金を前提とすることを明確にすべきではないか。

○コストに見合う料金にすべきとの意見(2件)

・明確にすべき(3)
・より高度なサービスを供給する場合、そのためのコストを少しでも抑制する経営努力が求められることは当然であり、その上で利用者に必要なコスト負担を求めることが公平な負担(7)

・受益者負担という観点からは、個々の水道事業及び個々の需用者間でコスト主義の考え方を徹底すべきではないか。

○コスト主義の考え方を徹底すべきとの意見(2件)

・徹底すべき。(3)
・給水サービスの広い意味での質的向上を図りながら、将来に渡って安定した給水を確保していくためには、コストや受益者負担の考え方をより重視した料金を制度化し、お客様側にも、給水に対するコスト意識を常に持っていただくことが不可欠。(7)

○その他、社会全体でコストを負担すべきなどの意見(2件)

・個々の需要者ではなっく、社会共通のコストを共同して負担することが必要(53)
・資材入札の統一化による安価な品物を使用すべき(51)

・さらに、その上で、需要者の選択や供給者の対応を超えた水源開発のような構造的な問題に起因する地域間の料金格差について、公平性確保の観点からどのようにとらえるべきか。

○好ましい状態ではないなどの意見(3件)

・地域性により相当な料金格差があるのは好ましい状態ではなく、水道事業体の企業努力により低価格で地域的な格差を少なくするような対応が必要(16)
・社会的な負担の公平性の観点からとらえるべき(53)
・個々の水道や地域では解決し得ない水源開発等については、税金を投入することによりある程度の公平性が図られており、広域水道の建設は水源確保も含めてその地域の公平性確保に寄与している(3)


(3) 健全な水循環の確保

・水道は、利水の一つとして、水循環の一端を担っているとともに、健全な水道の運営も健全な水循環の確保に依存しているといえる。水道利用者であるすべての国民は、循環資源である水を、循環のサイクルの健全性を損なうことのないよう使用し、廃棄することが求められているが、水道事業者としてどのような役割を果たすことができるか。

○清浄な水源の確保が基本との意見(4件)

・清浄な水源を確保することが基本であり、水源の見直しを図り、より安全な水源から取水するための具体的な取り組みが重要(18)
・水は限りある資源であり、豊かできれいな水を守っていくこと、世界的な視野で水のサイクルを考えていくことが、水道行政を考えるときに最も基本的な大切な視点(40)
・水源涵養を含む水資源の安定的確保、産廃施設、鉱業・工場等(クリーニング廃液)の放出の可能性のある場所立地に対する法的規制を行うべき。最低限の給水サービスの水準を確保することだけでなく、地域環境保全を考えた上で合理的施設整備計画を進めることが必要(51)
・水道水源の土地利用規制を行うことで、水質分析コストの削減、安全管理の簡略化ができ、水道料金の抑制や、不安のない水道を達成できる(52)

○他の利水や様々な水の用途との連携、調整を図るべきなどの意見(3件)

・農業用水、工業用水の水道水への転用、雑用水利用との調整、修景水の利用、下水道計画との整合が重要(3)
・ 工業用水道、下水道、雑用水も含め水循環の中で都市用水の供給と還元はどうあるべきかという視点が必要(5)
・下水道の放流水の資源化、修景用水への活用等も実現できる上水、下水道部局の連携をはじめとした横断的な水行政の展開が必要。様々な施策のコストを、おいしい水、水辺空間の創出という副次的な産物も考慮に入れて検討すべき時代に到達している(14)

○地下水の問題についても水道として考えるべきとの意見(3件)

・地下水の過剰汲み上げにより地下水位が大幅に低下した地域で、豊水期に余剰の表流水を利用して、地下水の涵養を行うことも検討すべき。水道事業の問題ではないといわれるかも知れないが、身近な水資源の確保に関する積極的な提言としての意味はある(26)
・ 水道は循環資源であり、渇水時の地下水利用など水道の基本に係る問題(53)
・ 地下水に対する知見が十分に整理されておらず、他の用途での使用状況を含め、きちんと情報を整理すべき(5)

○その他、汚泥・排水処理の問題、水道水のロスの削減、水源の涵養施策、自己水源の確保などの意見(4件)

・汚泥処理、排水処理などの問題についても、自らの課題として取り上げることが大切(19)
・ 水道が健全な水使用及び廃棄についてのPRを担うことが考えられ、上流域での様々な活動に対してある程度の費用負担を行うような流域全体としての考え方が必要。有効率の向上、浄水過程におけるロスの削減のための技術開発が必要。上水の取水口と下排水の放流口、河川放水路等の位置関係を整理すべき。(5)
・身近な水源を見直し、水の転用などによる有効利用を行う、水源開発を必要としない需要抑制型の節水都市づくりが基本(31)
・ 水道が水循環の一利用過程であることは、理念として大変重要。(39)

・長期的には、環境に悪影響を及ぼさないで持続的に水の利用が図られるようなシステムを構築に向けて水道事業者と需要者とのパートナーシップを進めていくべきではないか。

○需要者とのパートナーシップにより節水型社会の実現などを進めるべきとの意見(10件)

・節水、需要と供給の関係等具体的な事例を明示し、進めるべき(3)
・水道というサービスに限定せず、水循環という広い視点で具体策を検討すべき(5)
・私たち一人ひとりが水の恩恵を受けて快適な生活を送っており、国民が水に対する関心を持てるような活動の展開が必要(16)
・節水意識の浸透とともに、個人レベルでできる雨水桝の設置の奨励と補助金制度の活用、雨水の地下浸透タイプのレンガの敷設等を関係部局と連携しながら実行すべき(14)
・水は限りある資源であり、水質汚濁を少なくし、自然を守るためには節水を心がけることが必要(27)
・水利用者の節水意識の高揚が何より大切で、節水は、自然の回復、清流の回復、水質の回復にもつながる自然との共存を自覚することにもなる(31)
・節水型社会の実現に向けて、自然環境を守り、水循環を回復させるとともに、家庭でも実践できる「節水」を行政と地域住民が一体となり努力・実行すべき課題として、国や地方公共団体が先導して施策を講じるべき(36)
・21世紀の水利用の基本は「節水・再利用」にあることを明確にすべき。水道を多様な水供給体系の1つとしてとらえ、用途にあった水量・水質・供給方法を対応させるのが望ましく、省資源・省エネ・節水型の生活様式を確立し、身近な水源を大切にすることが不可欠(38)
・節水についての論議が必要(39)
・降水量が十分なときは豊かに、渇水時には節水に節水を重ねるように自然条件に合わせて柔軟に生活するスタイルを目指す(53)

・水道が自然の水循環に直接関わる場面として水源があるが、その水質管理の強化、水源涵養を含む水資源の安定的確保、特に渇水時における水資源の相互融通を含む総合的な利用・調整等を関係者との協調・連携のもとにさらに推進する必要があるのではないか。

○水道水源の保全など水質管理の強化を図るべきとの意見(8件)

・水質管理の強化については、未規制物質の全国的なモニタリングを国の役割として、統一的、継続的に実施すべき。水質監視、測定が様々な機関で実施されており、工夫が必要(5)
・良質な原水の確保について環境行政やその他の関係行政分野との緊密な連携を図るとともに、必要に応じて水道の原水基準を改めて設定することも真剣に考慮すべき(6)
・水源水質の保全の観点から、汚濁負荷の放流側と利水側の間の対話がほとんど行われていないことは残念。社会的費用全体の最適化という観点からも、両者を総合した水質管理が必要であり、水系の一元的管理の制度の実現が望ましい。既成の制度の枠組みにとらわれることなく、今後あるべき制度の実現に向けて大胆率直に議論すべき(26)
・水道水源の安全性の確保は最大の課題であり、水道水源の自然環境、水質保全が今後ますます重要。
 「節水・雨水利用・自然還元」を三位一体とする水循環(自然の水サイクル)の政策を推し進め、自然生態系の復元・保全を基本に、流域住民と自治体等が連携し、流域を基本単位とした施策を講じることが重要。あわせて、自然破壊を招き膨大な費用を投資する水資源開発は今後見直し、まずは、身近な水資源を有効利用していくことが肝要(36)
・高度浄水処理よりも、もととなる水をきれいにするために金を使う方が、自然も守られ、より効果的。そのため、水源涵養林の育成、水質規制・排水規制などの強化、下水道整備の推進、自然浄化能力の回復施策の推進などを図るべき(27)
・有害化学物質やクリプトスポリジウムなどとともに、合成洗剤の自粛と環境に負荷をかけない生活のあり方の提起、さらに非イオン界面活性剤についても水質基準に入れて欲しい
・水道の需要者は、将来に渡っての水道水の安全性、より自然に近い水、清く澄んだ川や汚染されていない地下水を求めている。安全な水道水は、汚染のない水源によってしか得られず、汚染の監視、発生源の規制、水源の水質改善への取り組みによって早急に実現すべき(41)
・将来的にはより厳密な水質管理が必要になり、今の水道システムが耐えられるか疑問。問題点をきちんと利用者に公表し、利用者自らが料金問題を含めてその選択に関与し、利用する水と飲用する水の選択が可能な仕組みを作る必要。水に関する行政全てが連携し、水及び水質に関する環境問題をよりよい方向に向けていくべき。そのためには、水道料金の中に水環境改善に関する費用も含まれるような体系を取らざるを得ない時代が来る(44)

○ 水利権のより円滑な調整、渇水調整などに関する意見(7件)

・制度面の制約から進んでいないが、農業用水の合理化は可能であり、水資源の合理的利用の観点から利水の総合的な再配分を検討すべき(26)
・水利権の安定確保に向けて関係省庁との調整をもっと強力に行うべき(6)
・水利権行政を含めての大幅な改正や改変が必要で、国の強力なリーダーシップがないと実現できない(12)
・利水が行われていない水利権が存在すること、農業政策の転換、工業優先の時代から生活優先の時代転換等を踏まえ、時代にあった民主的な調整による水利権のあり方の検討が必要(17)
・新たな水源開発より水利権の調整を重視すべき(38)
・渇水調整については水道側も謙虚さが必要であり、渇水対策としてきめの細かい配水圧力の調整や、できる限りの給水制限に対応する等の努力も必要(5)
・渇水時には利水の優先順位などの論議もしながら臨機応変な対応が必要。水の管理を一元化し、関係者がお互いに話し合いを進めながら「水(水利権)の転用」を考えるべき。さらに、地下水、中水、雨水などの利用も積極的に考えるべき(27)

○水行政の一元化を図るべきとの意見(4件)

・関係者の協調・連携をさらに推進する必要。本来水行政は一体的に進めるべきで、その中で水道はどうあるべきか準備しておく必要(3)
・水行政は、国、地方を問わず縦割り行政的になっているので、総合的な調整機能、政策機能の発揮できる機関と、総合的な水行政を基本に据えた法律を検討すべき(17)
・水管理が省庁に分散している状況では解決が困難なことが多く、水管理の一元化を図ることが必要(21)
・水循環を全体として扱えるような制度的枠組みが必要であり、水問題を所管する省庁の一元化を進めるべき(39)

○水資源の安定的確保に関する意見(2件)

・水資源の安定的確保、渇水対策については、利水安全度の議論が必要。流域全体で安全度を高める方策として、各事業体に割り振るのではなくて、国(公団)が利水者の負担で一括して容量を確保するという方法もある(5)
・今後の水源開発は、効率が悪くなるばかりであり、既開発水源の有効利用が重要(21)

○雨水や下水処理水などの有効利用を図るべきとの意見(2件)

・水循環について、雨水・再生水の利用、排水系との連携も視野に入れるべき。特に浄化槽など個別あるいは小規模な排水処理は、地域的な水循環を生み出すものであり、供給・排水を総合的に組み合わせる方向に向かうのが適切(53)
・水利システムのより柔軟な運用と節水啓発の実施を図り、雨水や下水処理水などの利用や節水型社会の実現を目指した施策、生活用水、工業用水、農業用水、河川維持用水の有効利用システムを確立することが必要。そのため、水道の蛇口から河川上流部の森林までの一体的な政策を実現する機関で必要。一度使われた水を使い捨てるのではなく、大切な水資源として積極活用する水循環思想の啓発にも努めるべき(34)

○その他、横断的な水道行政組織などの意見(2件)

・上下水道の一元管理、河川管理者と相互に協力し、水道を取り巻く種々の問題を、同時に大局的に解決していく方策の検討が必要。このため、国や流域に属する全ての市町村長が同じ発言権を有した横断的な水道行政組織を樹立し、この組織の決める水道料金に、水源保全費も上乗せして、未普及地域へのハード建設費の捻出も行う(14)
・ダイナミックで健全な水循環を考えるためには、水だけでなく、100年先のまちづくりを思考する中で、自由な発想で水を考えられることが重要(21)

・健全な水循環の確保を含め広く地球環境問題への対応が求められており、省エネルギー等水道サイドでの努力が必要ではないか。

○省エネルギーのための具体的な施策を進めるべきとの意見(2件)

・省エネルギー等の努力は必要で具体的施策の実施が必要(3)
・市町村の行政区域を事業区域とする姿では、エネルギー的に合理性の高い事業にはならず、広域的な事業の連携が行いやすくする工夫が必要。技術的に省エネルギーを進めるためのインセンティブ、省エネ設備への更新、新エネルギーの利用等のための情報提供、財政支援が必要(5)

・一方で、水道水源等に係る地域の環境問題に関しては、水道サイドから汚濁発生源となる他の分野への働きかけも必要ではないか。

○積極的な働きかけが必要との意見(3件)

・より一層必要であり、環境行政との一体化が理想(3)
・水源の水質保全を最優先するような施策が求められており、水道事業者自らが働きかけていけるような体制と姿勢が必要
・解決方法は、水道の立場から検討されるべき(水源に負荷を欠けないよう注意を喚起するなど)(39)


(4) 水道に対する市民参加

○市民参加による民意の反映が必要などとする意見(4件)

・ 情報公開、説明責任、市民意見の反映は、水道に限らず、行政、公全般で必要とされることで、水道でも努力(特に料金について)が必要(5)
・ 水道について、今日の議会制によって民意の反映が十分に行われているかは疑問。情報化システムを駆使し、より分かりやすい情報公開と直接的な民意の反映方法の検討が必要(17)
・市民参加の方法はいろいろあるが、水道水源の問題と質の面から考えて、「節水」への協力が基本(18)
・利用者とともに進む水道という発想が必要(53)

ア 水道事業者の説明責任・情報公開

・水道は需要者の費用負担によって運営される需要者のための施設であり、需要者とのパートナーシップを確保するため、議会の関与以外にも、個々の需要者に対して水道の事業計画、料金、給水する水の水質等について十分な説明をし、必要に応じて個々の需要者が直接意見をいうことができるような仕組みが必要ではないか。

○コストや水道水の安全性などに関する適切な情報公開を進めるべきとの意見(5件)

・水道水の汚染状況や水道水を摂取することによる健康影響の可能性、浄水技術の適用可能性と限界、浄水処理機能の強化に伴うコストの上昇等につき、広く一般に明らかにすることが必要(6)
・コストを含め水道事業の現状や課題などを幅広く開示し、意見を求めていく姿勢が今まで以上に重要。他の水道事業者等と適正な比較評価が可能となるように開示についての一定の基準のようなものを水道界全体や国等で示していくことが必要(7)
・水処理の経費について正しく認識してもらい、節水意識を市民が持つことが必要。このため、水道事業体が情報公開を的確に行い、水資源と必要経費についてガラス張りの経営を行い、広く住民の意見を採り入れる姿勢を示すことが必要(14)
・適切な情報公開により、いろいろな問題点の相当部分が是正される可能性がある。
・水道事業者の説明責任・情報公開、水質情報の公開を進めるべき(51)

○需要者との良好な関係、情報交換の場が重要とする意見(2件)

・市民を中心にした検討会、集会など、市民と事業者の情報交換の場の設置が必要(3)
・ 消費者との望ましいリレーションシップを構築する必要(8)

○その他、住民意識の反映などの意見(2件)

・行政の情報公開が求められている現在、一部事務組合の不透明さの改善と、種々の問題を抱えている広域水道について、住民の意思の十分な反映が必要であり、その方向での論議が進められるべき(33)
・需要者の費用負担により構成されている点から考えると、水道水は常に安心して飲用ができるという意識付けが必要で、需要者サイドに立ち、需要者の利益を考え、良質で衛生的な水の供給に努める必要がある(16)

・また、コスト主義による公平性を確保するために、議会、個々の需要者への情報公開、説明をさらに進めるべきではないか。

○住民本位の認識を持つべきとの意見(1件)

・水道は住民のためのものという認識を持つべき(3)


イ 政策決定における住民意見の反映

・特に、節水型社会の形成など需要者の参加がなければ達成しえないものであり、渇水時や災害時の給水の確保などについては、市民の意見を十分に反映した意思決定がなされるべきではないか。

○住民意見の反映の重要性や具体的な反映方法に関する意見(4件)

・受益者の意見を尊重し、お上意識を捨てること(3)
・どういう手段で、誰に聞き、その結果をどのように集約・整理し、具体の施策につなげるかも具体的に示さないと、誤った方向に行くおそれがある(4)
・市民の水道行政への積極的参加の方法として、水源監視員制度(仮称)を創設し、水道水源の適正な管理及び保全のための具体的な施策に対し意見具申を可能にする施策が望まれる(14)
・水道計画に住民の意思の反映は不可欠。経済性重視の広域化ではなく、住民のライフラインをどう確保するのかに重点を置き、それぞれの地域事情に合った住民意見を十分把握した上での検討を議論の中に取り入れるべき(28)

・そのためにも、水道の需要者が水道の給水に対するコスト意識を常に持つことが必要ではないか。

○コスト意識は当然のこととする意見(1件)


(5) 水道における関係者の役割分担

・規制緩和の議論の中で水道の民営化の問題が取り上げられている。現行法制度の下でも民営水道の経営は認められているが、民営水道については、適切な水道の運営、既存の水道事業との調整といった観点から、公共の関与のあり方について見直すべき点はないか。その場合、どのような方法をとるのが適当か。

○民営化や民活を推進すべきとの意見(4件)

・目標年次を2020〜25年とし、段階的に上水道、工業用水道、下水道の一体化、全国を7水道に統合して、民営化を図る。併せて、水行政の一元化、道州制の導入、大規模流況調整河川の建設、水利権の調整・整理、広域的な水融通・利用について、制度の改革や関連事業の推進を期待(1)
・PFIの積極的導入を行い、市場原理に委ねるべきところは委ね、競争原理に基づいたサービスの向上と同時に、大幅な意識改革に果敢にチャレンジすべき(14)
・事業の経営主体については、市町村に限る必要はない。規制緩和により事業形態に関して制約がなくなり、PFIをはじめとする新たな事業形態の出現が可能となる。管理の時代には行政自らが行う意味が薄れ、むしろ供給企業を管理し、国民に安全で安定した水の供給を保証することが行政サービス(21)
・ 水道料金格差の是正を行うには、全国を数ブロックに分けた民営化が近道であるが、公営による住民の水道に対する信頼感は揺るがすことのできない財産であり、民営化には入念な準備期間とコンセンサスを得るための過渡期的な施策が重要。第一に、現行簡易水道の広域化(統合、経営の合理化、管理業態のアウトソーシング等不採算部門のリストラ)、第二に広域化された水道の管理は、第三セクター方式若しくは公益法人の積極的活用が望ましい。将来の民営化を視野に入れて、国は河川管理を中心とした公部分の管理を中心とし、現行の市町村水道管理者は広域水道の健全な経営の見直しを行い、足腰の強い水道づくりを目指すべき(14)

○ 公営の原則を維持すべきで民営化には反対とする意見(9件)

・水道事業の第一義は、国民の公共の福祉、公衆衛生の向上であり、また、公平、公正の基本理念が貫かれていなければならないことから、水道事業が営利を目的としたり、民間企業の経営状況や私的な都合によって給水サービスが左右されてはならず、あくまで「公有・公営」でなくてはならない(17)
・「命の水」の管理を営利を目的とする民間企業に委託することは許されず、国民の命を守る行政が責任を持って管理していく公営事業が基本。(27)
・水道には、代替機関・業種が見あたらず、安全な飲料水を供給することが求められており、民営化によって利益追求事業とするにはあまりにもふさわしくない。全国の多くの水道事業が経費節減や企業努力という観点から業務の合理化を余儀なくされ、様々な業務が民間委託されているが、これによって市民サービスは低下し、そこに働く水道労働者の働く気概や技術的向上まで奪い去っている。まして、事業そのものが民営化されれば、あらゆる場面で問題が出てくることは必至。水道は、市民サービスの生命と暮らしを維持する上でなくてはならならず、民営化の実験はあってはならないこと(29)
・民営化については、とても賛同できない。公営の場合、独立採算企業であってもその経営については決して利潤追求が目的ではない。水道事業は他に類をみない独占事業でかつ市民の生活と関わっているもの。災害時の緊急体制について、神戸市水道局の職員が自らの過程を犠牲にしてまでライフライン復旧に心血を注いだのは、公務員としての誇りと責任感以外にはない(30)
・民営化には絶対反対。水道は、憲法25条の生存権の具体的保障が原点であり、その本質において経済活動でなく行政の問題として対処すべき原則をもっており、国及び地方公共団体が行政上の責任を全うすべき義務を負っている(35)
・水道事業は生命の水を預かる極めて公共性の高い事業であり、民間事業に移管すれば、住民の水、自然環境まで営利に利用されることになる。自然の水サイクルを取り戻し、自然と人間社会の共存の中から、安全でおいしい水を作るという視点からも、水道事業は地方公共団体の固有の責務として取り扱われるべき。公営企業役割は、今後さらに重要であり、民営化などあろうはずもなく、また絶対に民営化してはならない(37)
・住民が参加しやすい水道事業としては身近なところの経営主体が一番良い。水源についても常時私たちの目が届くところの水源が一番理想的。水道事業の民営化には絶対反対。(39)
・民営化は効率性のみが求められ、施策が切り捨てられる可能性が高い。水道事業経営の軽減策を講じながら上水道事業を育成し、全国まんべんなく安全でおいしい水道水を飲用できる態勢を整備していくことが国の使命。(48)
・公設民営化は、水道事業における事業のやりっ放しを過去のものとして清算し、多くのツケを住民・市民に回し利潤追求を主眼とした民営化で取り戻そうという極めて虫の良い話。民営化論はコスト論のみを振りかざし、維持管理の重要性を軽視し、責任を回避するためにする論(32)

○民営化に対する賛否以前に検討すべき課題があるとの意見(4件)

・民営化に対する考え方を十分に検討し確立しておくことが必要で、それぞれの利害得失を十分に比較考量されることを期待(26)
・一挙に民営化することには反対で、イギリスの事例や東南アジアの民営化等の研究が必要(3)
・民営化については、競争性という点で地域独占を外さないと十分でなく、地域独占性をそのままにするのかどうかを併せて検討する必要。民営事業では、市街地等有利なところだけつまみ食いされ、非採算地区のみが残されるという形になるおそれがある。(5)
・ 民営化の是非についてさらに議論を深めるべきであるが、今必要なのは、給水サービスの向上を図るための方法論に関する議論であり、水道事業体において、明確な目標設定、それに向けての効率的な事業運営と組織改革のための自助努力が必要(6)

○その他、上下水道の一体的管理、認可制度の見直しなどの意見(5件)

・経営の合理化や上下水道を一体的に管理運営することについて検討を開始すべき。水道の各分野で民間の技術力や経営ノウハウを活用することが今後ますます必要であり、民間の技術の評価、人材の資格付与などのあり方の検討が必要(4)
・ 普及の進んだ今日、21世紀の水道経営を目指して抜本的に見直すべき。市町村毎の水道は、数が多すぎる、特に小規模水道は新たな環境問題に対応できない。マンネリ化している水源開発、広域化、簡易水道の建設に対する補助制度も抜本的に見直すべき。水道事業の組織のあり方は、市町村毎の水道の改革、地域ごとの広域化、水源から末端まで大都市圏の水道の一体化、全国的な管理組織の新設等を進め、虫食い的に民営化される前に国としての方針を打ち出すべき(3)
・ 90数%に達した普及率を考えたときに、認可制度が今のままでよいのかどうかの検討も課題(5)
・水道事業の変更等は全て市町村の議会と市民の了解の基で責任を持って事業を進めており、認可制度を一層緩和して良いのではないか(49)
・水道法では、水道事業体が容器入りの水を得ることが認められないと聞いているが、そのような制約も必要がない(21)

・国と地方の役割分担を踏まえた財政負担のあり方についても検討すべきではないか。

○財政措置の見直しに関する意見(3件)

・近い将来、国庫補助行政がなくなる可能性も視野に入れて、補助制度を見直すべき。水道は本来受益者の負担で賄われるべきものであり、水源開発は国の責任でという論理も、国の財政難の折り持ちこたえられるか疑問(3)
・財政支援については、まず水道料金で負担すべき部分、公費で負担すべき部分の議論を整理することが必要(5)
・施設整備の進展とともに水道事業における維持管理のウエイトはますます増大するが、維持管理は水道を現状維持にとどめるものではなく、水道施設の更新や改造の積極的な意義を評価し、必要に応じて財政措置も配慮するシステムの確立が必要(26)

○国と地方の役割分担に関する意見(2件)

・国の役割は、事業者としては、超先行性の高いダム、流域全体の渇水容量を確保するダム、水系を連絡する大口径管の建設などが、行政としては、規格・基準の策定、技術開発、未規制物質の全国的なモニタリング、各種情報の整理・提供が中心で、個別水道事業に対する関与は少なくて良い(5)
・水道事業の指導・監督について十分な機能を発揮し得るよう国と地方における行政のあり方を再検討した上で、それぞれの機能強化を図るべき。特に都道府県の水道担当部局のより一層の機能強化が必要。主として弱小な水道事業者を指導すべき立場にある都道府県の水道担当部局がその役割を十分に発揮しない限り、水道の健全な発展も期待できない。国においては、災害時や事故時における危機管理体制の充実・強化も必要。(6)

・水道にとって地方公営企業方式はどうあるべきか。

○見直されるべきとする意見(2件)

・市町村営を前提にしているので、経営主体に変化があれば当然見直されるべき。国の業務のエイジェンシー化の動きもいずれ地方に波及するので、注目が必要(3)
・ 経営方式が、公営企業法式がよいのか民営がいいのかは、最も真剣に議論されねばならないテーマ。
 原点は低廉な水の供給であり、経営努力があれば経営方式の差は大きな問題ではないが、需要者からみた低廉な水の供給という企業努力が著しく不足しており、公営企業職員に関する制度の見直しや関係法の改正などの検討が早急に必要(45)


(6) その他

ア 水道関連の技術、資機材・器具等の研究・開発等の技術開発、試験研究の推進と、新技術等の普及の推進に当り、特に配慮すべき点は何か。

○ 研究体制の充実を図るべきとの意見(2件)

・ 中小水道の研究・技術開発への認識、意欲が乏しい実態からみて、全ての水道が研究技術開発に関与する仕組みの構築が必要であり、情報化時代に即して、水道事業体の情報化、OA化推進についての方向性を示すことが必要(4)
・国レベルでの強力な研究機関の必要性が何度も叫ばれながら実現していない。この機会に改めて国レベルの水道研究機関の設立について大いに検討すべき。情報の収集、伝達機能の強化を図ることが必要。米国環境保護庁の例にみられる一般国民に対する情報公開や情報伝達の促進も重要(6)

○国の役割に関する意見(2件)

・どういう研究・開発が必要なのか方向性を示すのも国の役割であり、先導的・モデル的な技術について、実用化し、普及を目指すための事業を国の負担で行うべき。民間の技術開発を促進するとともにそれを評価する仕組みが必要(5)
・水道事業体、民間の自由な開発工夫に任せるべきで、国が画一的な関与をしないこと(3)

○その他(2件)

・完成した製品である水の品質が重要で、プロセスに関してはより柔軟な対応が許されることになり、水処理技術や施工技術等の開発や発展の可能性が拡大する
・制度、規格面で国際調和をまず最優先することが、二重投資などの無駄な費用をなくし、コストの低下につながり、さらにそのまま途上国に対する技術的支援に流用できる(24)


イ 人材の養成、技術の継承のための枠組みが必要ではないか。

○水道の活性化、OBの活用、交流人事などにより人材の育成を図るべきとの意見(3件)

・水道が活性化されない限り優秀な人材は集まらないので、如何にして活性化させるかが課題。大学での研究開発に積極性を持たせ、水道を専門にする講座を増やす必要(3)
・水道の技術、経営管理のノウハウをもった水道OBを中小水道等の指導に役立てる仕組みを検討すべき。また、水道事業体職員の事業体間交流の促進、友好都市同士などの水道職員の人事交流の推進が必要(4)
・小規模な自治体では少人数で下水道など他の業務を兼務しながら小規模施設を複数管理しており、職員の配置換え等により、技術の伝承はうまく行われていない(10)


ウ 途上国の水道整備に対する技術的、財政的支援を強化するのは、我が国水道の責務と考えられるが、そのために我が国の水道は何をすべきか。

○相手国の実情に応じた支援、国際協力のための人材育成や体制整備を図るべきとの意見(4件)

・日本の技術をそのまま持ち込んでも効果があるとは限らず、地元の実情にあわせた支援が必要。支援のための技術者の養成(シルバー隊の強化)も重要(3)
・途上国援助は、官ベースでは限界があり、民間ベースで関わり合いを強めることが必要(5)
・技術者の技術アップ、ノウハウの蓄積、組織的な支援などが非常に弱く、プロフェッショナルな人材の養成、養成機関の創設、水道分野における海外協力専門機関の設置、国際的な水道技術ライブラリーの設置などが現在のところ皆無であり、是非とも強化することが必要(12)
・途上国の水道整備に対するわが国の責務は、自国の都合のみを考えるのではなく、規格面全ての国際調和を目指した技術的支援体制を整えることが重要(24)


エ また、制度、規格面で国際調和が必要と考えられるが、特にどのような面において調和を図るべきか。

○国際規格の採用と性能面重視の国際調和に関する意見(2件)

・ 日本方式を守る必要性も判るが国際規格の採用がこれからの方向であり、国際舞台で活躍できる制度、規格を作ることが必要
・ 既設管路については、寸法面で国際調和を図ることは困難であり、性能面重視の国際調和を図ることから始めることが適当(24)


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