報道発表資料 HOME

平成11年6月22日

第6回厚生科学審議会先端医療技術評価部会
・生殖補助医 療技術に関する専門委員会の概要


○ 本日午後1時30分から午後4時45分まで、第6回厚生科学審議会先端医療技術評価部会・生殖補助医療技術に関する専門委員会が開催された。

○ まず、多胎・減数手術について、事務局が第3回の本委員会の議論を踏まえて作成した議論のたたき台(資料1)をもとに議論を行った。

○ 次に、精子、卵子、受精卵の提供について、事務局が作成した問題点等の整理のペーパー(資料4)をもとに議論を行った。

○ 最後に、次回専門委員会は7月23日午後1時30分から開催することとされた。


照会先:厚生省児童家庭局母子保健課
    北島(内3173) 武田(内3179)
    (代表)[現在ご利用いただけません]
    (直通)03-3595-2544


資料1

多胎・減数手術について(まとめ案)

1 生殖補助医療による多胎について

○ 生殖補助医療技術による多胎は、排卵誘発法(排卵誘発剤の使用)を原因とするものと、体外受精を原因とするものがある。排卵誘発法による多胎は、排卵障害による不妊症の治療として、卵胞の成熟・排卵を促すホルモン(ゴナドトロビン等)を投与することにより、多数の卵胞が同時に成熟・排卵し、複数組の精子と卵子が受精することによって生じる。一方、体外受精による多胎は、妊娠率を高めることを目的として、複数個の受精卵を子宮に移植することにより、それらが複数個着床することによって生じる。

○ 平成8年度厚生省心身障害研究「不妊治療のあり方に関する研究」(矢内原巧)によると、三胎については、体外受精を原因とするものが46.7%、排卵誘発法を原因とするものが43.2%、自然が8.5%、四胎については、体外受精を原因とするものが52.9%、排卵誘発法を原因とするものが41.2%、自然が3.9%、五胎については、体外受精を原因とするものが33.3%、排卵誘発法を原因とするものが66.7%、自然が0%となっている。

○ 多胎妊娠は近年、増加傾向にあり、平成8年度厚生省心身障害研究「多胎妊娠の疫学」(今泉洋子)によると、平成7年の多胎児の出産率を昭和43年と比較すると、双子は1.3倍、三つ子は4.7倍、四つ子は26.3倍と上昇している。これは、生殖補助医療技術の普及によることが大きいと思われる。

2 多胎妊娠の危険性

○ 多胎妊娠については、平成7年の日本産科婦人科学会周産期委員会報告によれば、胎児数が増加するにしたがって、出生体重が減少しており、双胎は2,153±703g、三胎は1,673±485g、四胎は1,203±359g、五胎は993±2499g(平均±標準偏差)となっている。一方、流産率は胎児数が増加するにしたがって上昇し、双胎は1.7%、三胎は2.4%、四胎は15.0%、五胎は15.0%となっており、四胎以上が特に高くなっている。

○ 22週以降の周産期死亡率(対出産1,000)は、胎児数が増加するにしたがって上昇し、双胎は75.0、三胎は75.3、四胎は102.9、五胎は125.0となっている。後遺症害については、出生1年以上経過したものをみると、双子は4.7%、三つ子は3.6%、四つ子は10.2%、五つ子は30.8%となっており、特に四つ子以上が大きくなっている。後遺障害の内訳としては、脳性麻痺、精神発育障害、未熟児網膜症が多くなっている。

○ このように四胎以上の多胎妊娠については、母の合併症が増加し、児の予後が極めて不良であるといえる。

3 減数手術

○ 減数手術は、多胎による妊娠・出産のリスクを回避するためや多胎児を育てることに対する負担の回避等を目的としてはじめられたものであって、多胎妊娠に際して、一部の胎児を子宮内において死滅させる手術のことである。一般的には、胎児の心臓に塩化カリウムを注入することなどによって行われる。

○ 減数手術の実施状況については、前出の「不妊治療のあり方に関する研究」の調査によれば、アンケート調査結果を得た195施設中、減数手術は87例行われている。実施施設数は15施設となっており、その多くは診療所である。

○ 減数手術は、母体内において胎児を死滅させる手術であるが、母体保護法の人工妊娠中絶の定義規定は、「人工妊娠中絶手術とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう」と定めていることから、母体保護法の定める術式に合致しない手術であるとの指摘がされている。

○ 減数される胎児の選び方について、障害の有無や男女により選別する例が諸外国でみられたことから倫理的な面での議論がなされるようになっている。

4 多胎・減数手術に対するこれまでの対応

○ 多胎・減数手術に対するこれまでの関係学会等の対応については、日本母性保護産婦人科医会は、平成5年、減数手術については、優生保護法(現母体保護法)上の人工妊娠中絶手術に該当せず、堕胎罪の適用を受ける可能性があるとの見解を公表している。

○ 日本産科婦人科学会は、平成8年2月に「多胎妊娠」に関する見解を公表し、生殖補助医療技術による多胎妊娠については、その防止を図ることでこの問題を根元から解決することを志向すべきとし、体外受精・胚移植においては移植胚数を原則として3個以内とし、また、排卵誘発に際してはゴナドトロピン製剤の周期あたりの使用量を可能な限り減量することを求めている。

5 生殖補助医療技術による多胎減数手術に関する基本的考え方

○ 胎児は人ではないが人の萌芽であり、その生命は尊重されなければならないことは言うまでもない。刑法の堕胎罪、母体保護法も胎児の生命の保護をその保護法益の一つとしている。

○ 生殖補助医療技術による多胎はある程度、防止することが可能である。 体外受精による多胎は、通常、子宮に移植する受精卵の数以上にはならず、3個以上の胚移植については、移植する受精卵の数を増やしても妊娠率はそれほど上がらないことが分かっている。また、凍結保存した受精卵をタイミングよく子宮に移植することにより、受精卵2個の移植でも相当の妊娠率が得られるという指摘もある。

○ 排卵誘発法による多胎についても、ゴナドトロピン製剤の使用法や周期あたりの使用量を可能な限り減量するなどの単一排卵率が高い排卵誘発法が開発されている。

○ こうしたことを踏まえると、生殖補助医療技術による多胎妊娠への対応は、多胎妊娠の防止により行われるべきであって、こうした防止の努力なくして多胎になった場合に減数手術により胎児の数を調整することは、胎児の生命の軽視といえ、認められるべきではない。

○ しかしながら、以下に述べるような多胎防止の措置を十分講じたとしても、現在の技術では、多胎を完全に防止することはできない。4胎以上の多胎妊娠は母の合併症が増加し、児の予後が極めて不良であることを踏まえると、緊急避難的に減数手術が許容される場合があると考えられる。

6 対応の方向性

(1)体外受精において対応すべきこと

○ 体外受精による多胎妊娠は、子宮に移植する受精卵の数を調整することにより、確実に調整することができる。前で述べたとおり、(1)四胎以上の多胎妊娠は母の合併症が増加し、児の予後が極めて不良であること、(2)3個以上の受精卵の移植による妊娠率はそれほど移植数により変わらないこと、(3)凍結保存した受精卵の移植では2個でも相当の妊娠率が得られることを踏まえると、体外受精の際、子宮に移植する受精卵の数は、原則として、凍結保存した2個に制限することが適当である。

○ 体外受精を行うに際しては、受精卵を複数個移植することによる多胎妊娠の危険について、患者に十分に説明するとともに、十分な情報提供と相談を行い、患者の許容しうる胎児数について把握する必要がある。その結果、患者が双子の出産を許容せず、あくまで単体出産を望む場合には、移植する受精卵の数を1個とする、一方、三胎出産する確実な意志があって医学的にも三胎出産に耐えうると考えられる場合には、移植する受精卵の数を3個とするといった調整をリプロダクティブヘルス/ライツの観点を踏まえ、行う必要がある。

(2)排卵誘発法において対応すべきこと

○ 排卵誘発法については、多胎妊娠の危険があるばかりではなく、卵巣過剰刺激症候群を引き起こす可能性もあり、十分な技術を持った医師が慎重に実施する必要がある。

○ 排卵誘発法を行うに際しては、排卵誘発法による多胎妊娠の危険について、患者に十分に説明するとともに、十分な情報提供と相談を行い、患者が多胎妊娠を許容しない場合には、リプロダクティブヘルス/ライツの観点も踏まえ、それを使用すべきではない。

○ 排卵誘発法については、いまだ完全な多胎防止策が確立されていないことから、この分野の研究を行政、関係学会等が積極的に推進する必要がある。また、単一排卵誘発法の普及を図る必要がある。

(3)減数手術について

○ 減数手術については、母体保護法の人工妊娠中絶の定義規定に該当する術式ではないとの指摘があるが、減数手術は確かに母体内において胎児を死滅させるものであり、分娩と同時に母体外に排出されるといっても、それは人工的に排出されるとはいえず、また、優生保護法制定時に減数手術のような手術が想定されていないことを考えると、その指摘は適当であると考える。

○ 減数手術については、前述したとおり、原則としては、行われるべきではないため、母体保護法の改正により、人工妊娠中絶の規定を改める必要はない。

○ しかしながら、多胎妊娠の予防措置を講じたのにも関わらず、やむを得ず四胎以上の多胎となった場合には、母子の生命保護の観点から、緊急避難的に行うものについては、刑法上の違法性が阻却されうるものと考える。

○ 減数手術の適応と内容については母子の生命保護の観点から個別に慎重に判断すべきものと考える。

○ 減数に当たって障害の有無や男女等により選別を行うことは、母体保護法にいわゆる胎児条項がないこととの整合性の観点から、行われるべきではない。

○ 減数手術についても、塩化カリウムの投与を誤って母体に行う可能性があるなど危険を伴うものであることから、十分な技術を持った医師により行われる必要がある。

7 行政、関係学会が行うべきこと

○ 以上述べたように、生殖補助医療技術による多胎妊娠の防止対策が、適切に実施され、減数手術の実施条件が厳格に守られるためには、行政又は学会において、これをルール化することが必要である。

○ 行政又は関係学会が、このような実施体制が整備されている医療施設を認定し、登録させ、これらの実施を登録医療施設に制限し、報告させるなど、これらのルールが適切に守られる体制を構築する必要がある。


資料4

精子、卵子、受精卵の提供について(問題点等の整理(案))


1 第三者の精子、卵子、受精卵の提供について(各技術共通事項)

(1)第三者からの配偶子提供の是非

○ 不妊症により第三者からの配偶子提供を受けなければ、子どもを望んでいても子どもを持つことができない夫婦が存在。

○ こうした者は養子を受け入れるべきとの意見もあるが、夫婦どちらかの血縁がある子、あるいは血縁がなくとも自らが分娩した子を持ちたいとする者が存在。

○ 親子関係については、これまで血縁関係が基本であると考えられてきており、厚生科学特別研究「生殖補助医療技術についての意識調査」(平成11年、一般国民対象)においても、54.4%の者は「血は水よりも濃し」という考え方に近い又はどちらかといえば近いと答えているが、一方で、45.6%の者は「産みの親より育ての親」という考え方に近い又はどちらかといえば近いと答えており、血縁のない親子関係を認める者も相当数。

○ 一方で、こうした技術の中には受診者や提供者の身体的負担を伴うものや出生児に精神的、社会的な問題や影響があるものもあり、これらを踏まえ、それぞれの技術の是非やそれが実施される際の条件を検討することが必要。

(2)対象者

○ 対象者については、結婚していながら不妊症であるため子どもを得ることができない者が適当ではないか。この場合、事実婚の状態にある者をどうすべきか。

○ 一方で、不妊症ではなく、結婚したくはないが子供を産みたい女性については、父のない子どもを生み出すこと等の出生児への影響を考えると認めるべきではないのではないか。

(3)問題点

1)出生児の法的地位の問題
○ 出生児の法的地位は後述の通り不安定な面がある。

○ 現在、これらの技術による出生児は実子として届け出られているが、血縁関係がなくとも実子としての法的地位を与えるのか、養子とすべきかが問題となる。

○ 厚生科学特別研究「生殖補助医療技術についての意識調査」(平成11年、一般国民対象)では、AID、第三者の精子を用いた体外受精では、「夫と妻の実子とする」とした者は58.4%、「夫の養子、妻の実子とする」とした者は11.5%、第三者の卵子を用いた体外受精では、「夫と妻の実子とする」とした者は59.0%、「夫の実子、妻の養子とする」とした者は9.8%、第三者の受精卵を用いた胚移植では、「依頼者夫婦の実子とする」とした者は40.4%、「依頼者夫婦の養子とする」とした者は18.7%。

2)出生児の心理や取り巻く環境の問題
○ 出生児が戸籍上の父母が遺伝的な父母ではないと分かったときに精神的ショックを受ける可能性がある。

○ 第三者からの配偶子の提供を受けて出生したことが周囲の人に知られた場合に、出生児が偏見を持たれるおそれがある。

○ 配偶子の提供者が近親者である場合には、提供者と出生児との間で親子の情が生じるなど親子関係に問題が生じる可能性がある。

3)商業主義の問題
○ 優秀な提供者の配偶子を高額であっせんするケースが米国等ではみられる。
 (こうした配偶子の売買は、配偶子は人ではないとはいえ人身売買的であり倫理的に許容されるのか。)

○ 一方、配偶子の提供者に実費程度を支払わなければ、提供者が集まらないとの指摘がある。

4)遺伝的な親を知る権利の問題
○ 出生児が成長過程で遺伝的な父母を知りたいと考える可能性がある。

○ 一方、配偶子の提供者は、被提供者や出生児に自分の個人情報を知られたくない場合が多い。

2 第三者の精子を用いた人工授精(AID)

(1)現状

○ AIDは我が国では昭和29年に開始されて以来、出生児数は約1万人に達しているといわれ、年間約200人が出生しているといわれる。

○ 日本産科婦人科学会においては、平成9年5月の「「非配偶者間人工授精と精子提供」に関する見解」により、自然妊娠の見込みがないことや十分な説明・同意などを条件にAIDの実施を承認。

(2)本技術の考えられる対象

○ 女性側に特に問題がなく、男性側に精巣機能が高度な障害を有しているなど精子を得ることができない問題がある場合。

(3)本技術の問題点

1)安全面の問題
○ 本技術による出生児が障害を持つ率は自然妊娠の場合と同程度。(夫婦間の場合と同様)

○ 精子を子宮に注入する際に排卵誘発剤を用いる場合には、多胎になる可能性がある。(夫婦間の場合と同様)

○ 精子提供者について性感染症の検査が行われない場合には、被実施者の女性が性感染症に感染する可能性がある。

○ 1人の精子提供者が精子を提供する回数が多い場合には、同一の精子提供者を遺伝的父とする子が多数出生し、それらが婚姻する可能性がある。(近親相姦の危険)

2)出生児の法的地位の問題
○ 民法は、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定と規定。夫は子の出生を知った日から1年以内であれば子が嫡出であることを否認可能。
○ AIDについては、夫の同意なく実施された場合には、嫡出否認が認められる地裁の判例があり、この場合、出生児の父は存在しなくなる。

○ 一方、夫が同意してAIDが行われた場合には、嫡出否認できないと解釈するのが常識的と法務省民事局長は国会で答弁。

○ 出生を知ってから1年以上経過後又は一度嫡出子であることを承認すると嫡出否認ができなくなるが、妻が夫によって懐胎することが不可能な場合は嫡出推定が及ばなく、親子関係不存在の訴えを起こしうるとする判例があり、これがAIDによる出生児にも適用される可能性がある。

(4)本技術の是非についての委員及び国民の意見

○ 本委員会委員については、全ての委員が本技術を認める又は条件付きで認めるとしている。

○ 厚生科学特別研究「生殖補助医療技術についての意識調査」(平成11年)によると、本技術を一般論として、「認めてよい」とする者は10.8%、「条件付きで認めてよい」とする者は49.4%、「認められない」とする者は21.5%、「わからない」とする者は18.2%。

2 第三者の精子を用いた体外受精

(1)現状

○ 第三者の精子を用いた体外受精については、日本産科婦人科学会においては、平成9年8月の「「体外受精・胚移植」に関する見解」により、体外受精が配偶者間に限定しており、承認されていない。

○ 本技術とAIDの取扱いを区別していることを疑問視する意見がある。

(2)本技術の考えられる対象

○ 男性側に精巣機能が高度な障害を有しているなど精子を得ることができない問題があり、かつ、女性側にも卵管閉塞などの問題がある場合。

(3)本技術の問題点

1)安全面
○ 本技術による出生児が障害を持つ率は自然妊娠の場合と同程度。(夫婦間の場合と同様)

○ 採卵は排卵誘発剤の使用が必要であり、かつ、侵襲的な方法であるため、女性に身体的負担がある。(夫婦間の場合と同様)

○ 胚移植の際、受精卵を複数個胚移植することにより、多胎になる可能性がある。(夫婦間の場合と同様)

○ 精子提供者について性感染症の検査が行われない場合には、被実施者の女性が性感染症に感染する可能性がある。

○ 1人の精子提供者が精子を提供する回数が多い場合には、同一の精子提供者を遺伝的父とする子が多数出生し、それらが婚姻する可能性がある。(近親相姦の危険)
* 2)についてはAIDと同様。
(4)本技術の是非についての委員及び国民の意見

○ 本委員会委員については、本技術を認めるとする者、条件付きで認めるとする者、認めないとする者に分かれた。

○ 厚生科学特別研究「生殖補助医療技術についての意識調査」(平成11年)によると、本技術を一般論として、「認めてよい」とする者は10.0%、「条件付きで認めてよい」とする者は48.2%、「認められない」とする者は23.0%、「わからない」とする者は18.8%。

3 第三者の卵子を用いた体外受精

(1)現状

○ 第三者の卵子を用いた体外受精については、日本産科婦人科学会においては、平成9年8月の「「体外受精・胚移植」に関する見解」により、体外受精が配偶者間に限定しており、承認されていない。

○ 本技術とAIDの取扱いを区別していることを疑問視する意見がある。

(2)本技術の考えられる対象

○ 女性側に卵巣機能が廃絶しているなど卵子を得ることができない問題がある場合。

(3)本技術の問題点

1)安全面
○ 本技術による出生児が障害を持つ率は自然妊娠の場合と同程度。(夫婦間の場合と同様)

○ 採卵は排卵誘発剤の使用は必要であり、侵襲的な方法であるため、卵子の提供を行う第三者の女性に身体的負担がある。

○ 胚移植の際、受精卵を複数個胚移植することにより、多胎になる可能性がある。(夫婦間の場合と同様)

○ 卵子提供者について性感染症の検査が行われない場合には、被実施者の女性が性感染症に感染する可能性がある。

○ 1人の卵子提供者が卵子を提供する回数が多い場合には、同一の卵子提供者を遺伝的母とする子が多数出生し、それらが婚姻する可能性がある。(近親相姦の危険)

2)出生児の法的地位の問題
○ 民法上は、母子関係については、分娩により当然発生するという判例がある。

○ しかしながら、民法は卵子提供による妊娠・出産を想定していなく、卵子提供者からの認知の訴えや関係者からの親子関係不存在の訴えが生じうる。

(4)本技術の是非についての委員及び国民の意見

○ 本委員会委員については、本技術を認めるとする者、条件付きで認めるとする者、認めないとする者に分かれた。

○ 厚生科学特別研究「生殖補助医療技術についての意識調査」(平成11年)によると、本技術を一般論として、「認めてよい」とする者は9.6%、「条件付きで認めてよい」とする者は49.6%、「認められない」とする者は22.1%、「わからない」とする者は18.7%。

4 第三者の受精卵を用いた胚移植

(1)現状

○ 第三者の受精卵を用いた胚移植については、日本産科婦人科学会においては、平成9年8月の「「体外受精・胚移植」に関する見解」により、体外受精が配偶者間に限定しており、承認されていない。

(2)本技術の考えられる対象

○ 男性側に精巣機能が高度な障害を有しているなど精子を得ることができない問題があり、かつ、女性側も卵巣機能が廃絶しているなど卵子を得ることができない問題がある場合。

(3)本技術の問題点

1)安全面の問題
○ 本技術による出生児が障害を持つ率は自然妊娠の場合と同程度。(夫婦間の場合と同様)

○ 採卵は排卵誘発剤の使用が必要であり、かつ、侵襲的な方法であるため、卵子提供する女性に身体的負担がある。

○ 胚移植の際、受精卵を複数個胚移植することにより、多胎になる可能性がある。(夫婦間の場合と同様)

○ 精子・卵子提供者について性感染症の検査が行われない場合には、被実施者の女性が性感染症に感染する可能性がある。

○ 精子・卵子提供者が匿名で多数の精子・卵子を提供した場合には、同一の精子・卵子提供者を遺伝的父母とする子が多数出生し、それらが婚姻する可能性がある。(近親相姦の危険)

* 2)については、父子関係はAIDと、母子関係は第三者の卵子を用いた体外受精と同様。
(4)本技術の是非についての委員及び国民の意見

○ 本委員会委員については、本技術を認めるとする者、条件付きで認めるとする者、認めないとする者に分かれた。

○ 厚生科学特別研究「生殖補助医療技術についての意識調査」(平成11年)によると、本技術を一般論として、「認めてよい」とする者は7.8%、「条件付きで認めてよい」とする者は35.1%、「認められない」とする者は37.4%、「わからない」とする者は19.7%。


報道発表資料 HOME