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平成11年6月4日

透析型人工腎臓装置の適正管理について


 今般、米国食品医薬品庁(FDA)から「血液透析治療に関連した交叉汚染の可能性に関する安全性警告」が発せられた。

 米国において血液で汚染されたとされる透析装置あるいは血液回路と同一の製品が我が国においても使用されている事実は、現在のところ確認されておらず、また、我が国において現在一般に使用されている透析装置に関し、こうした血液汚染事例は報告されていない。
 また、中央薬事審議会副作用第三調査会のほか専門家等の意見を聴取したところ、米国と日本では透析医療の手法等に相違が見られるため、米国に比して異常圧が発生する可能性はより低いものと考えられることから、透析装置の汚染は、通常の使用下にあっては想定し難いということであった。

 今後とも米国における関連情報の収集に努めていくこととしているが、予期し得ぬ事故を未然に防止するため、FDAの安全性警告を参考として、装置の適正な取り扱いとともに透析型人工腎臓装置の検査・保守管理に引き続き努めるよう、都道府県、関係団体等に周知徹底方依頼した。


厚生省医薬安全局安全対策課
 担当:安倍、中村
 [現在ご利用いただけません](内線)2749


医薬安第57号

平成11年6月4日

各都道府県衛生主管部(局)長 殿

厚生省医薬安全局安全対策課長

透析型人工腎臓装置の適正管理について


(1)今般、別添のとおり米国食品医薬品庁(FDA)から、米国において昨年12月以降、透析装置内の部品が血液で汚染された事例が数例発生したことに伴い、「血液透析治療に関連した交叉汚染の可能性に関する安全性警告」が発せられた。
 現在、FDAは、透析装置の汚染の原因について調査中であるが、それまでの間、血液による汚染のリスクを最小限にする観点から、安全性警告により必要な勧告を発出したものである。
 なお、米国において現在のところ交叉汚染による感染者の発生は確認されていない。

(2)米国において血液で汚染されたとされる透析装置あるいは血液回路と同一の製品が我が国においても使用されている事実は、現在のところ確認されておらず、また、我が国において現在一般に使用されている透析装置に関し、こうした血液汚染事例は報告されていない。
 また、中央薬事審議会副作用第三調査会のほか専門家等の意見を聴取したところ、血液回路における異常圧が発生すれば、自動的に警報装置が作動し透析装置が停止する仕組みとなっているのみならず、更に、我が国の場合、次のような理由により米国に比して異常圧が発生する可能性はより低いものと考えられることから、透析装置の汚染は、通常の使用下にあっては想定し難いということであった。

(1)我が国で使用されている透析装置は静脈側のみに圧センサーが設置されているものが大半であるのに対し、米国では動脈側にも圧センサーが設置されているものが一般的であること。
(2)我が国では血流量を毎分200ml程度に設定するのに対し、米国では通常毎分400ml程度に設定すること。
(3)我が国ではダイアライザーは使い捨てであるのに対し、米国では再利用が広く行われていること。

(3)当課としては、今後とも米国における関連情報の収集に努めていくこととしているが、予期し得ぬ事故を未然に防止するため、FDAの安全性警告を参考として、装置の適正な取り扱いとともに透析型人工腎臓装置の検査・保守管理に引き続き努めるよう、貴管下の医療機関に対して速やかに周知徹底方お願いする。
 また、貴管下医療機関において、万一透析装置の血液汚染の発生等が認められた場合には、当課への報告がなされるようご配慮願いたい。

 なお、同様の通知を(社)日本医師会会長、(社)日本透析医学会会長、(社)日本透析医会会長及び臨床工学技師会会長にも発出していることを申し添える。


(別 添)

(仮訳)

FDA安全性警告:
血液透析治療に関連した交叉汚染の可能性について

(この警告をコピーして配布することを奨励します)

1999年5月

血液透析治療センター
腎臓透析医長
病院リスクマネジャー
復員軍人病院     各位


 最近、いくつかの治療センターにおいて、血液透析装置内の部品に血液による汚染が発生し、患者の安全についての関心が高まってきています。汚染の原因については今なお究明中であり、血液回路やトランスデューサープロテクタの欠陥を含めて、多くの要因を含む可能性があります。この問題の原因に関しては、適切な情報が得られ次第、更新情報として提供します。

 現在のところ、私達はまず、透析装置の血液の交叉汚染によって、血液に由来する病原体が患者から患者へ移動し得る可能性について関心を持っています。それゆえ、血液透析施設においては、血液により汚染された装置が示す徴候について警戒の上、必要に応じて是正処置を講じることがきわめて重要です。


背 景

 米国食品医薬品庁(FDA:Food and Drug Administration)は、医療機器報告(MDR:Medical Device Reporting)は受け取っていませんが、1998年12月以降、血液透析治療の実施中に、血液による透析装置の汚染が数例発生したとの情報を入手しています。発生したこれらの事象に関するECRI(Emergency Care Research Institute)の調査の過程で、動脈側ドリップチャンバ内の液面の波動、血液回路圧力の急速かつ頻繁な変化、またはトランスデューサープロテクタへの血液浸入に気付いたことが、従事者から報告されています。事例のいくつかについては、トランスデューサープロテクタの亀裂と、それに続く血液透析機械の汚染が生じていました。

 毎日使用する通常の状況下においては、血液透析機器のこのような血液による内部汚染は容易に見つかるものではないとのことに注意することが重要です。新品の血液回路や外部トランスデューサープロテクタを使用しても、ある状況下では交叉汚染が発生する可能性があります。定期的な保守点検では、機械内部の汚染の検出には十分でないことについても留意する必要があります。


勧 告

 この問題をより一層明確化し、解決方法を特定すべく、FDAは企業、ECRI及び医療機関とともに作業を継続中です。それまでの間、リスクを最小限にするため以下の処置を講じるよう、私達は勧告します。

・血液による汚染の可能性を踏まえ、内部圧力回路や圧力検出ポートを含め全ての機械について、直ちに有資格者による検査を実施してください。汚染が発生している場合には、再び使用する前に機械の滅菌を行わなければなりません。
・製造業者による取扱説明書に従って、常に外部トランスデューサープロテクタを使用し、圧力警報装置を活用するようにしてください。
・外部トランスデューサープロテクタに血液の浸入が認められた場合には、直ちに交換の上、これまで取り付けられていたプロテクタの検査を行ってください。もし、トランスデューサープロテクタの機械に面した側に血液が認められた場合には、治療が終了した後で、有資格者が(上記第一項に示されているとおり)機械を開けて、汚染についてチェックしてください。
・汚染が発生している場合、当該機械の使用を中止し、使用する前に滅菌を行わなければなりません。
・血液回路の圧力警報装置が頻繁に作動したり、血液ドリップチャンバのレベル調整が頻繁に必要な場合は、当該問題の発生を示している可能性があります。


FDAへの有害事象報告

 これらの事例については、独立して発生した個別の不具合かもしれませんが、一方で、発生数及び公衆衛生上の重大性に鑑み、装置の汚染に関して今後全ての事例について遅滞なく報告されることが肝要であると私達は考えます。従って、早期に傾向を把握し、速やかに解決策が進むよう、血液透析施設におかれては、当該事例や類似事例について自発的に報告していただくよう、要請する次第です。

 自発報告については、FDAの自発報告プログラムであるMedWatchにて、直接提出してください。提出先は次のとおりです。電話番号は(800)FDA-1088、FAX番号は(800)FDA-0178、また郵便での宛先はMedWatch, Food and Drug Administration (HFA-2), 5600 Fishers Lane, Rockville, MD 20857-9787です。


詳細情報の入手について

 この安全性警告に関する質問については、Office of Surveillance and BiometricsのIssues Management Staffまでお送りください。郵便での宛先はHFZ-510, 1350 Piccard Drive, Rockville, Maryland, 20850、FAX番号は(301)594-2968,また電子メールは czh@cdrh.fda.govです。当該通知については、CDRHのホームページ、www.fda.gov/cdrh/safety.htmlから写真複写または印刷できます。今後のFDA安全性警告、公衆衛生勧告及びその他のFDA市販後安全性情報については、電子メールによるリストサーバ購読によって入手できます。購読にあたり、fdalist@www.fda.govまで電子メールにて請求してください。メッセージのテキストにおいては、タイプ:subscribe dev-alertです。

敬 具

Elizabeth D. Jacobson,Ph.D.       
医療機器・放射線保健センター長代行



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