経口避妊薬(OC)の安全性についてのとりまとめ

(注釈)本とりまとめ資料においては、疾病リスクと年齢又は服用期間との関係について明らかにされていない報告も含まれている。

項目

小項目

総合評価

出典

1.腫瘍に関する事項

(1) 乳癌のリスク

54の疫学調査から乳癌の症例群53,297例、対照群100,239例についての調査の結果、現在OC(「oral contraceptives」をいう。以下同じ。)を服用している女性はOCを服用したことがない女性と比較するとリスクは1.24倍であり、また、OC服用を中止してからのリスクは、中止後1〜4年で1.16倍、中止後5〜9年で1.07倍、中止後10年以降では1.01倍と減少すると報告している1)
OC服用開始年齢別の乳癌発現リスクは、20歳未満で1.22倍、20〜24歳で1.04倍、25〜29歳で1.06倍、30〜34歳で1.06倍、35歳以上1.11倍であったが、傾向検定で有意差は認められなかった1)

1)Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer:Lancet 347,1713-1727, 1996

文献評価

方法

出典

非服用者と服用者の比較

        相対リスク (95% 信頼区間)
現服用者      1.24   (1.15-1.33)
服用中止後 1-4年 1.16   (1.08-1.23)
  同   5-9年 1.07   (1.02-1.13)
  同 10年以降  1.01   (0.96-1.05)

服用期間別リスク

          相対リスク±SD
 非服用者      1.00±0.013
 1年未満       1.07±0.023
 1 〜 4年      1.05±0.018
 5 〜 9年      1.09±0.022
 10〜14年      1.16±0.033
 15年以上      1.08±0.063

  傾向検定      P=0.05

開始時年齢別リスク
(非服用者と服用者の比較)

      症例  対照  相対リスク± SD
非服用者  28,200 55,220  1.00±0.014 
20歳未満  2,719 4,205  1.22±0.044 
20〜24歳  5,334 9,111  1.04±0.025 
25〜29歳  3,888 7,205  1.06±0.025 
30〜34歳  2,932 5,412  1.06±0.030 
35歳以上  3,059 5,590  1.11±0.032 

  傾向検定       有意差なし  

ケースコントロール研究
症例53,297例/対照100,239例
製剤:低用量又は中高用量

(注) 製剤
   低用量 :エストロゲン 50μg未満
   中高用量:エストロゲン 50μg以上

1)Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer:Lancet 347,1713-1727, 1996

参考文献

出典

文献評価

方法

非服用者と服用者との比較では有意な差はなかった。1971年以前の開始群で有意なリスクの上昇が認められた。より高いエストロゲン並びにプロゲストーゲンの用量がリスクを上昇させたことが示唆される。
台湾におけるケースコントロール研究であり、本試験に組み入れた症例数は小さく、限られた検出力である。

非服用者と服用者の比較 (95% 信頼区間)
服用状況    症例  対照   オッズ比
 非服用者   149  406    1
 服用者     25   47  1.7(0.9-3.2)

開始年代別リスク (95% 信頼区間)
 非服用者   149  406     1
 1971年より前 12   12  3.2(1.2-8.9)
 1971-1980年  10   19  2.2(0.9-5.5)
 1980年以降   3   16  0.4(0.1-1.7)

 傾向検定           p=0.014

開始時年齢別リスク (95% 信頼区間)
 非服用者   149  406    1
 25歳未満    9   12  3.5(1.2-9.7)
 25-29歳    11   21  1.7(0.7-4.1)
 30歳以上    5   14  0.7(0.2-2.4)

 傾向検定           p=0.019

ケースコントロール
症例174例/対照453例
製剤・用量不明

Chie,W-Cら:Int. J. Cancer
77, 219-223, 1998

(2) 子宮頸癌のリスク

総合評価

出典

OCを服用したことのある女性とOCを服用したことがない女性における子宮頸癌のリスクの比較についてはいくつかの疫学調査がある。WHO1)、Ursin2)、Ye3)、Thomas4)、Becker5)、Parazzini6)及びZondervan7)の7論文のうち、他の論文と比較して記載内容が乏しくOC服用情報の記載のないParazzini、併合可能性(統計学的なデータの均一性)から問題のあるBecker及び研究デザイン上問題のある(症例収集の目的が異なる)Zondervanを除いた残り4報から、リスクは1.3〜2.1倍と推定する。(調査会評価)
なお、OC服用開始年齢別のリスクについて、Thomasら4)は、20歳未満で3.3倍、20〜24歳で1.6倍、25〜29歳で1.2倍、30〜34歳で1.1倍、35歳以上で1.9倍と20歳未満と35歳以上でリスクの増加が認められたとしている。一方Ursin2)らは25歳以上の服用者を対照(リスク値1.0)とした場合16歳以下で1.1倍、17〜20歳で1.0倍、21〜24歳で1.0倍となり服用開始年齢の違いによるリスクの有意な増加は認められないとしている。

(参考)子宮頸癌の発症リスクはヒトパピローマウィルス感染が最も強い因子であるとの報告がある5)、8)

1) WHO:
Int
'l J Cancer, 55, 228 -236, 1993

2) Ursin,Gら:
Lancet, 344, 1390-1394,1994

3) Ye,Zら:
Int
'l J Epidemiol,24,19-26,1995

4) Thomas,DBら:Amer J Epidemiol,144,281-289, 1996

5) Becker,TMら:
Int
'l J Epidemiol 23,913-922, 1994

6) Parazzini,Fら:
Brit J Cancer,77,838-841, 1998

7) Zondervan,KTら:
Brit J Cancer, 73,1291-1297, 1996

8) 永井宣隆: 臨産婦,51,429-436, 1997

文献評価

方法

出典

非服用者と服用者との比較
  相対リスク  (95% 信頼区間)
    1.34    (1.19-1.45)

OC服用期間別リスク

 服用期間   相対リスク (95% 信頼区間)
  非服用    1.0
  5ヵ月以下   0.99   0.85-1.16
  6 〜 12ヵ月 1.24   0.99-1.54
  13 〜 24ヵ月 1.14   0.91-1.42
  25 〜 36ヵ月 1.18   0.92-1.52
  37 〜 60ヵ月 1.39   1.13-1.71
  61 〜 96ヵ月 1.51   1.22-1.86
  97ヵ月以上  2.23   1.84-2.70

   傾向検定       P<0.001

ケースコントロール研究
症例 2,361例/対照 13,644例
浸潤性扁平上皮癌
製剤・用量不明

1)WHO:Int'l J
Cancer,55, 228-236, 1993

非服用者と服用者との比較
  オッズ比  (95%信頼区間)
    2.1     (1.1-3.8)

OC服用期間別リスク

服用期間   オッズ比  (95% 信頼区間)
非服用     1.0       
1 〜 6ヶ月  2.9   1.3-6.4
7 〜 24ヶ月  1.6   0.7-3.6
25 〜 48ヶ月  1.0   0.4-2.3
49 〜 72ヶ月  1.9   0.9-4.2
73 〜108ヶ月  1.7   0.8-3.6
109〜144ヶ月  2.5   1.1-5.8
145ヶ月以上   4.4*   1.8-10.8

            :P=0.04
傾向検定         P=0.004
(非服用と1〜6ヶ月の服用期間を除く)

開始時年齢別リスク
  (25歳以上との比較)

     症例 対象 オッズ比 (95% 信頼区間)
16歳以下  15  21  1.1   (0.3-3.3)
17-20歳  75 122  1.0   (0.5-2.2)
21-24歳  51 107  1.0   (0.5-2.1)
25歳以上  35  62  1.0        

 傾向検定          P=0.50

ケースコントロール研究
症例 195例/対照 386例
腺癌(浸潤癌を含む)
製剤・用量不明

2)Ursin,Gら:Lancet, 344, 1390-1394, 1994

非服用者と服用者との比較
  相対リスク (95%信頼区間)
    1.34    (1.16-1.54)

OC服用期間別リスク

 服用期間    相対リスク (95% 信頼区間)
  非服用     1.0
  1 〜 12ヵ月  0.93    0.76-1.14
  13 〜 60ヵ月  1.35    1.13-1.63
  61ヵ月以上   2.04    1.67-2.50

   傾向検定         P<0.001

ケースコントロール研究
症例 1,110例/対照 8,364例
上皮内癌
製剤・用量不明

3)Ye,Zら:Int'l J Epidemiol,24,19-26, 1995

非服用者と服用者との比較
  相対リスク (95% 信頼区間)
    1.5     (1.1-1.9)

OC服用期間別リスク

 服用期間   相対リスク (95% 信頼区間)
  非服用    1.0
  12ヵ月以下  1.4    1.0-1.9
  13 〜 60ヵ月 1.5    1.1-2.1
  61 〜 96ヵ月 1.3    0.8-2.2
  97ヵ月以上  2.2    1.4-3.5

   傾向検定       P=0.003

開始時年齢別リスク
(非服用者と服用者の比較)

     症例 対象 相対リスク(95% 信頼区間)
20歳未満 16  62   3.3  (1.7-5.6)
20-24歳  49  309   1.6  (1.1-2.4)
25-29歳  48  362   1.2  (0.9-1.8)
30-34歳  34  267   1.1  (0.8-1.7)
35歳以上 37  176   1.9  (1.3-2.9)

 傾向検定      有意差なし

ケースコントロール研究
症例 377例/対照 2,887例
浸潤性腺癌、浸潤性腺扁平上皮癌
製剤:低用量又は中高用量

4)Thomas,DBら:Amer J Epidemiol,144,
281-289, 1996

非服用者と服用者との比較
  オッズ比  (95%信頼区間)
    0.4     (0.2-0.9)

ケースコントロール研究
症例 200例/対照 334例
中等度・高度異形成、上皮内癌
製剤・用量不明

5)Becker,TMら:Int'l J Epidemiol 23,913-922, 1994

非服用者と服用者との比較
  オッズ比  (95%信頼区間)
   1.2     (0.9-1.8)

ケースコントロール研究
症例 261例/対照 257例
浸潤癌
製剤・用量不明

6)Parazzini,Fら:Brit J Cancer, 77, 838-841, 1998

非服用者と服用者との比較
  オッズ比  (95%信頼区間)
   1.40    (1.00-1.96)

ケースコントロール研究
症例 310例/対照 3,091例
異形成・上皮内癌・浸潤癌
製剤:低用量又は中高用量

7)Zondervan,KTら:Brit J Cancer, 73, 1291-1297, 1996

(3) その他のエ
ストロゲン依存性腫瘍(子宮体癌、子宮筋腫)

総合評価

出典

子宮筋腫は性成熟期に好発し、思春期及び更年期にはまれであり、閉経期をすぎると退縮することから、エストロゲンが関与しているとの報告がある1)

1) 小川重男ら:必修産婦人科学 改訂第4版,南江堂,p.390, 395-396,1996

(4) 肝良性腫瘍のリスク

総合評価

出典

2つの疫学調査がなされている。Edmondsonらは服用期間が長くなるとリスクは上昇する(1年以下の服用者を1とすると、1〜3年で1.3倍、3〜5年で2.5倍)と報告している1)。Rooksらは、OCを長期間服用した場合の発生頻度は10万人当たり3.4人と推定している2),3)。本症は無症状であり、他の疾患の診断、治療中に発見されることが多いが、肝腫大、右季肋部痛を訴えるケースもある。また、この疾患の特徴として、腫瘍が破裂し腹腔内出血をきたすことがあるので十分な注意が必要である4)

1)Edmondson HAら:
 N.Engl.J.Med.294.470-472, 1976

2)Rooks JBら:
 JAMA 242,644-648,1979

3)Corfman PAら:
 Contraception 37,433-455, 1988

4)Mays, ETら:
 Semin. Liver Dis.4,147-157,1984

文献評価

方法

出典

服用者の服用期間の比較
(12ヵ月以内服用を1とする)

服用期間   症例  対照  相対リスク
 12ヵ月以下  6   15   1.0
 13〜36    4    8   1.3
 37〜60    7    7   2.5
 61〜84    4    2   5.0
 85〜108    3    1   7.5
 109ヵ月以上 10    1   25.0

ケースコントロール研究
症例並びに対照 各34例(マッチドペア)
OC服用歴有り:症例29例/34例 対照24例/34例
製剤・用量不明

1)Edmondson HAら:
 N.Engl.J.Med. 294.470-472, 1976

低用量OC服用者の服用期間の比較

 服用期間  相対リスク
      (12ヵ月以内服用を1とする)
 25〜60ヵ月  17
 61ヵ月以上  26

OCの長期服用により10万人当たり3.4人と評価される

ケースコントロール研究
症例79例/対照220例
製剤:低用量又は中高用量

2) Rooks JBら:
 JAMA 242, 644-648, 1979

(5) 悪性肝腫瘍のリスク

総合評価

出典

英国での疫学調査で、7年までのOCの服用ではリスクの上昇は認められなかったが、8年以上の服用者では悪性肝腫瘍の発生率が増加すると報告されている1),2)。しかし、米国においては悪性肝腫瘍はきわめてまれであり、OC服用による悪性肝腫瘍の寄与リスク(リスクの増加)は100万人当たり1人に満たないと報告されている3)。一方、WHOの研究及び欧州の研究において、OCの服用期間と悪性肝腫瘍の発生に因果関係は認められていないことが報告されている4),5)

1)Neuberger,Jら:
 Brit.Med.J. 292,1355-1357, 1986

2)Forman,Dら:
 Brit.Med.J. 292,1357-1361,1986

3)Corfman PAら:
 Contraception 37,433-455, 1988

4)WHO Collaborative Study of Neoplasia and Steroid Contraceptives.: Int'l J Cancer
 43,254-259,1989

5)The Collaborative MILTS (Multi-centre International Liver Tumor Study): Contraception 56,275-284,1997

文献評価

方法

出典

非服用者と服用者の比較

      オッズ比 (95%信頼区間)
 服用者全体  1.0  (0.4-2.4)
  4年未満   0.3  (0.1-1.1)
  4〜7年   0.9  (0.3-3.4)
  8年以上   4.4  (1.5-12.8)

ケースコントロール研究(50歳未満)
症例26例/対照1,333例
製剤・用量不明

1)Neuberger,Jら:
 Brit.Med.J.292,1355-1357,1986

非服用者と服用者の比較
              相対リスク

          肝細胞癌  胆管癌
 服用者全体     3.8   0.3
  4年未満      3.0    0.1
  4〜7年       4.0    
  8年以上      20.1**  0.9

         :p<0.05, **:p<0.01

ケースコントロール研究
症例30例/対照147例
 (肝細胞癌19例、胆管癌11例)
製剤・用量不明

2)Forman,Dら:
 Brit.Med.J. 292,1357-1361,1986

非服用者と服用者の比較

    相対リスク (95%信頼区間)
服用状況
 非服用者   1.0
 服用者    0.71   0.4-1.2
服用期間
 1〜12ヵ月  0.76   0.4-1.5
 13〜36ヵ月  0.71   0.3-1.7
 37ヵ月以上  0.73   0.3-1.7

ケースコントロール研究
 (アジアを含む8カ国)
症例122例/対照802例
 (肝細胞癌36例、胆管癌30例、その他3例、臨床的に診断された原発性肝癌53例)
製剤・用量不明

4)WHO Collaborative
 Study of Neoplasia and Steroid
 Contraceptives.
 Int
'l J Cancer 43,254-259,1989

非服用者と服用者の比較

      オッズ比 (95%信頼区間)
服用状況
 非服用者   1.0
 服用者    1.05  (0.80-1.37)
服用期間
 1〜2年   0.94  (0.60-1.48)
 3〜5年   0.87  (0.55-1.37)
 6年以上   1.13  (0.83-1.54)

ケースコントロール研究
症例293例/対照1,779例
 (肝細胞癌)
製剤・用量不明

5)The Collaborative MILTS
(Multi-centre International Liver Tumor Study):Contraception 56,275-284,1997

 

項目

小項目

総合評価

出典

2.心血管系に関する事項

(1)静脈血栓塞栓症

WHOは、OCを服用している女性はOCを服用していない女性と比較すると静脈血栓塞栓症のリスクは欧州で3.53倍、発展途上国では3.25倍と報告しており1)、また、Spitzerらは4.0倍と報告している2)

1)WHO: Lancet 346,1575-1582, 1995

2)Spitzer,WOら:Brit.Med.J.312, 83-88, 1996

文献評価

方法

出典

非服用者と現服用者の比較
      オッズ比 (95%信頼区間)
欧州      3.53  (2.39-5.21)
発展途上国   3.25  (2.54-4.14)

ケースコントロール研究
欧州      症例433例/対照1,044例
発展途上国   症例710例/対照1,954例
製剤:低用量又は中高用量

1)WHO: Lancet 346,1575-1582, 1995

非服用者と現服用者の比較
      オッズ比 (95%信頼区間)
        4.0   (3.1-5.3)

ケースコントロール研究
症例471例/対照1772例
製剤:低用量又は中高用量

2)Spitzer,WOら:BMJ 312, 83-88, 1996

(2) 脳卒中

総合評価

出典

WHOは、OCを服用している女性はOCを服用していない女性と比較すると虚血性脳卒中のリスクは欧州では2.99倍、発展途上国では2.93倍1)、出血性脳卒中のリスクは欧州1.38倍、発展途上国1.76倍2)と報告している。さらに、Petittiらは虚血性と出血性を合わせた調査において、虚血性1.18倍、出血性1.14倍と報告している3)。また、Heinemannらも虚血性脳卒中のリスクは2.9倍であると報告している4)

1)WHO: Lancet 348, 498-505, 1996

2)WHO: Lancet 348, 505-510, 1996

3)Petitti,DBら:
 N. Eng.J. Med.335,8-15, 1996

4) Heinemann,LAJら:
 BMJ 315,1502-1504,1997

文献評価

方法

出典

非服用者と服用者の比較
虚血性脳卒中
       オッズ比 (95%信頼区間)
欧州      2.99   (1.65-5.40)
発展途上国   2.93   (2.15-4.00)

ケースコントロール研究
欧州      症例141例/対照 373例
発展途上国   症例556例/対照1,579例
製剤:低用量又は中高用量

1)WHO: Lancet 348, 498-505, 1996

非服用者と服用者の比較
出血性脳卒中
       オッズ比 (95%信頼区間)
欧州      1.38   (0.84-2.25)
発展途上国   1.76   (1.34-2.30)

ケースコントロール研究
欧州      症例247例/対照 643例
発展途上国   症例821例/対照2,267例
製剤:低用量又は中高用量

2)WHO: Lancet 348, 505-510, 1996

現服用者と非現服用者の比較
虚血性並びに出血性脳卒中
      オッズ比 (95%信頼区間)
虚血性    1.18   (0.54-2.59)
出血性    1.14   (0.60-2.16)

ケースコントロール研究
虚血性    症例142例/対照378例
出血性    症例148例/対照396例
製剤:低用量

3)Petitti,DBら: N. Eng.J. Med.
335,8-15, 1996

虚血性脳卒中
      オッズ比  (95%信頼区間)
       2.9    (2.0-4.0)

ケースコントロール研究
症例124例/対照276例
製剤:低用量又は中高用量

4)Heinemann,LAJら: BMJ 315,
 1502-1504,1997

(3) 心筋梗塞

総合評価

出典

WHOは、OCを服用している女性はOCを服用していない女性と比較すると心筋梗塞のリスクは欧州で5.01倍、発展途上国では4.78倍と報告しており1)、また、Lewisらは2.26倍と報告している2)

1)WHO:Lancet 349, 1202-1209, 1997

2)Lewis, MAら:
 Contraception 56, 129-140, 1997

文献評価

方法

出典

非服用者と服用者の比較
       オッズ比 (95%信頼区間)
欧州      5.01   (2.54-9.90)
発展途上国   4.78   (2.52-9.07)

ケースコントロール研究
欧州      症例198例/対照480例
発展途上国   症例170例/対照461例
製剤:低用量又は中高用量

1)WHO:Lancet 349, 1202-1209, 1997

非服用者と服用者の比較
       オッズ比 (95%信頼区間)
        2.26   (1.32-3.86)

ケースコントロール研究
症例57例/対照156例
製剤:低用量

2)Lewis, MAら:
Contraception 56,129-140, 1997

(4) 喫煙と循環器系疾患のリスク

OC服用者のうち34歳以下の女性では、心筋梗塞等の循環器系疾患による死亡率は10万人当たり15人以下であるが、35歳以上の女性、特に喫煙者(1日15本)では10万人当たり63人以上と急激に上昇するとの報告がある1)
心筋梗塞については、30歳〜39歳において14本以下の喫煙者のリスクは10万人当たり6人であるが、15本以上の喫煙者では30人と上昇するとの報告がある2)

1)Layde,PM ら:
 Lancet March 7,541-546, 1981

2) Stadel,BV:New Eng.J.Med, 305,
 672-677,1981

(5)血栓性素因と静脈血栓症のリスク

先天性血栓性素因には多数の異常症があるが、最近、静脈血栓症の発生に関連があるとされている活性化プロテインC抵抗症が注目されている。この成因は凝固第V因子の遺伝的変異であることが明らかになっている1)。OC服用と第V因子Leiden突然変異(注1)の保有はそれぞれ深部静脈血栓症のリスクを上昇させ、2つの因子があわさるとそのリスクは相乗的に上昇すると報告されている2)
後天性血栓性素因としては、悪性腫瘍、高脂血症、高血圧、感染症、抗リン脂質抗体症候群などがあり、これらの疾患のある女性では,血栓が生じやすいと考えることができ3),OCの服用により血液凝固能が亢進され血栓症の発症リスクが高くなる可能性がある。


(注1)日本での症例の報告はない。

1)風間睦美: Biomedical
 Perspectives 6,85-89,1997

2)Bloemenkamp,KWMら:Lancet
 346, 1593-1596,1995

3)丸山征郎: 血栓と循環,4,
 21-23,1996

(6)抗リン脂質抗体症候群と血栓症のリスク

抗リン脂質抗体症候群は、血栓性素因の一つとして考えられ、全身性エリテマトーデス患者では、抗リン脂質抗体の代表的なものである抗カルジオリピン抗体(aCL)、ループスアンチコアグラント(LA)が、それぞれ36.3%、25.3%検出され、そのうちの47.2%、59.5%でそれぞれ血栓症が認められたとの報告がある1)

1)野島順三ら:臨床病理,46,
 1181-1187,1998

(7)高血圧と血栓症のリスク

OCにより心筋梗塞、血栓塞栓症、脳卒中等の重篤な疾患の危険性が増大し、高血圧等の危険因子の存在下では、これら疾患の発症及び死亡のリスクは有意に高くなるとされている1)

1)米国経口避妊薬添付文書ガイダンス

(8)妊娠中の高血圧の既往

妊娠中に高血圧の既往のある女性の静脈血栓症のリスクは既往のない女性に比し1.66倍(ヨーロッパ)、1.16倍(発展途上国)である。さらに、OCの服用者で妊娠中に高血圧の既往のある女性とない女性を比較した場合、発展途上国ではリスクの上昇は見られなかったものの、ヨーロッパでは妊娠中に高血圧の既往のあるOC服用者のリスクが上昇すると報告されている1)

1)WHO:Lancet, 346, 1575-1582,
1995

(9) 大手術の術前4週以内,術後2週以内、産後4週以内、長期間安静状態と血栓症のリスク

OCの服用を中止した後、凝固系検査値の回復時期は中止後4週間は必要とされている1)
また、OC服用により手術後の血栓塞栓症発生のリスクが増加することも報告されている2)

手術後の血液凝固能・線溶能の異常も2週間でほぼ正常閾値内に改善すると考えられている3)
239例の剖検における静脈血栓症発生頻度は、ベット上の安静期間が1週間以内で15%、1週間以上で80%と報告されている4)

1) Robinson, GE ら: 
 BMJ,302:269-271,1991

2) Vessey,MPら:
 Br.Med J, 3, 123-126,1970

3)篠木信敏ら:
 medicina 33,1308-1310, 1996

4)Gibbs, NM: Br. J. Surg., 45,
 209-236, 1957

(10) 肥満と血栓症のリスク

WHOの疫学調査で、静脈血栓症のリスクは、BMI(注2)(肥満度)の上昇により有意に上昇する。OC非服用者でもBMI25kg/m2以下の女性に対し、BMI25kg/m2を超える女性の静脈血栓症のリスクは1.52倍(ヨーロッパ)、1.63倍(発展途上国)となると報告されている1)

(注2)BMI(肥満度)=体重÷(身長)2で表される。例えば、身長160cmのヒトであれば体重64kg以上のヒトでリスクが高くなることになる。

1)WHO:Lancet 346,1575-1582, 1995

(11)脂質代謝異常と血栓症のリスク

深部静脈血栓症患者では、高コレステロール血症、高トリグリセライド血症を高い頻度で合併すると報告されている1)。さらに、OCの服用により血清脂質、リポ蛋白の変化が報告されており心筋梗塞などの心血管系疾患を進行させるリスクが大きいとの報告がある2)

1)Kawasaki,Tら:Thrombosis Res.
79, 147-151, 1995

2)高木繁夫ら: 綜合臨床, 34,
1115-1119,1985

(12)血栓症の家族歴

血栓症の家族歴のある女性はない女性に比し、深部静脈血栓症のリスクが2.9倍と報告されている。さらにOC服用によりそのリスクが上昇するとの報告がある1)

1)Bloemenkamp,KWMら:Lancet
 346, 1593-1596,1995

(13)年齢別血栓症のリスク

静脈血栓塞栓症、脳卒中(虚血性・出血性)、心筋梗塞とも、加齢に伴いリスクは増大した。特に、喫煙者及び高血圧を有するOC服用者群では、その増大は急激であると報告している。

各種血栓症の発症推定数(100万人あたり)

<非喫煙>      OC非服用者     OC服用者   
年齢      20〜24 30〜34 40〜44 20〜24 30〜34 40〜44
静脈血栓塞栓症  32.2  45.8  59.3  96.7  137  178
虚血性脳卒中    6.0  9.8  16.0  15.1  24.6  40.1
出血性脳卒中   12.7  24.3  46.3  12.7  24.3  92.6
心筋梗塞     0.14  1.7  21.3  0.34  4.2  53.2

<喫煙>       OC非服用者     OC服用者  
年齢      20〜24 30〜34 40〜44 20〜24 30〜34 40〜44
静脈血栓塞栓症  32.2  45.8  59.3  96.7  137  178
虚血性脳卒中   12.1  19.7  32.1  30.2  49.2  80.2
出血性脳卒中   25.5  48.6  139  38.2  72.8  232
心筋梗塞      1.1  13.6  170  2.7  33.9  426

<非高血圧>     OC非服用者     OC服用者  
年齢      20〜24 30〜34 40〜44 20〜24 30〜34 40〜44
静脈血栓塞栓症  32.2  45.8  59.3  96.7  137  178
虚血性脳卒中    6.0  9.8  16.0  15.1  24.6  40.1
出血性脳卒中   12.7  24.3  46.3  12.7  24.3  92.6
心筋梗塞     0.14  1.7  21.3  0.34  4.2  53.2

<高血圧>      OC非服用者      OC服用者  
年齢      20〜24 30〜34 40〜44 20〜24 30〜34 40〜44
静脈血栓塞栓症  32.2  45.8  59.3  96.7  137  178
虚血性脳卒中   24.1  39.3  64.2  60.3  98.4  160
出血性脳卒中   76.4  146  278  153  291  556
心筋梗塞     0.81  10.2  128  2.0  25.5  319

1995年に報告された血栓症に関する各種疫学調査(静脈血栓塞栓症4報、脳卒中4報、心筋梗塞3報)を基に、それぞれの年齢別の発症リスクを推定した。

1)Farley T.M.M.ら:Contraception 57: 211-230, 1998

 

項目

小項目

総合評価

出典

3.次世代への影響に関する事項

(1) 催奇形性

 

1))新生女児の性器の男性化

 

2))新生男児の性器の女性化

 

3))心血管系奇形発症

Hugginsらは、OCと染色体異常を含む先天性異常の関連について既発表の論文(1960年〜1988年)を評価し,「妊娠前のOC服用とダウン症を含む先天性異常との関連は,あったとしても非常に小さい。」と結論した1)

1)) 女児の男性化については、1960年の報告では妊娠中に10〜40mg/日のホルモン剤投与を受けた女性に新生女児の男性化が認められたとあるが、以後OCのホルモン含量は劇的に低下された。このため「妊娠初期に1mg以下のプロゲストーゲンを含むOCを服用した女性で,新生女児の外性器の男性化が認められたという新しい報告はほとんどない。」と結論されている1)

2)) 米国では過去の添付文書には男児の泌尿生殖管の異常(性器の女性化)の記載が見られていたが(「Norinyl」1986年版米国添付文書)、1988年以降の米国経口避妊薬添付文書ガイダンス2)では「妊娠前にOCを服用していた女性における先天性異常児出産の危険性増大は認められていない」との内容に変更されている。

3)) 妊娠初期にOCを服用していた女性での心血管系奇形児の発症率は、非服用者に比し有意差はなかった3)。また、他の報告でも、妊娠初期に不注意で服用してしまった場合でも催奇形性作用(特に心臓奇形や四肢異常)の発現はみられないことが示唆されている4〜7)
以上のように、OCと催奇形性との関連には否定的な見解が示唆されているが、ホルモン製剤であることを考慮すると、妊娠が疑われる女性はOCの服用を継続すべきでない。

日本の調査として、日本母性保護医協会にて先天異常の調査があり、流産防止のために妊娠中にプロゲストーゲンを服用した人と服用しなかった人を比較した結果、口蓋裂を含む先天奇形の発生率に有意な差は認められなかった8)
なお、1978年4月〜1988年12月に東京都立病産院における先天異常出産モニタリング調査も行われたが、OCについての記載並びに考察はなかった9)

1)Huggins,GRら:
 Fertility & Sterility 54,
 559-573, 1990

2)Corfman, PAら:
 Contraception 37, 433-455, 1988

3)Heinonen,OPら:
N.Eng.J.Med. 296, 67-70, 1977

4)Harlap.Sら:
 Obstet.Gynec 55, 447-452, 1980

5)Savolainen,Eら:
Am.J.Obstet.Gynec140,521-524, 1981

6)Ferencz,Cら:
 Teratology 21,225-239, 1980

7)Rothman,KJら:
Am.J.Epidemiology109,433-439, 1979

8)先天異常調査 20年のあゆみ:日本母性保護医協会 1993

9)東京都立病産院における先天異常出産モニタリング調査

 

文献評価

方法

出典

心血管系奇形を有する新生児発症例数
・妊娠初期OC服用者 6例/278例
・対照群(非服用者) 385例/49,240例
   相対リスク 2.4(有意差なし)

コホート研究
・妊娠初期のOC服用者: 278例
・対照:妊娠初期にOCを含む外因性
  ホルモン剤の非服用者: 49,240例
製剤・用量不明

3)Heinonen,OPら:
N.Eng.J.Med.296,67-70, 1977

参考文献

出典

文献評価

方法

妊娠中のOC服用と先天性泌尿器異常児(CUTA)出産
妊娠中のOC服用例数
・CUTA出産群   9例/118例
・正常児出産群  8例/368例
   (1例データ欠損のため除外)
妊娠中のOC服用によるCUTA出産の相対リスク
       オッズ比(95%信頼区間)
OC服用     4.8  (1.6-14.1)
(CUTA児の性別は記載されていない)

ケースコントロール研究
妊娠中のOC服用例の調査
・先天性泌尿器異常児(CUTA)を出産した
 女性:118例
・対照:正常な新生児を出産した女性:369例
製剤・用量不明

Li,DKら:
Teratology 51,30-36, 1995

遺伝子的男児で女性器を持った例
正常な女性器、卵母細胞のない卵巣、染色体は男性、上肢、下肢及び頸骨の湾曲、足の異常
OCとの関連性は不明
(症例報告)

症例報告
・受胎前18ヵ月前から妊娠中6ヵ月までOC服用
製剤:低用量

Kim,MRら:
Am.J.Obset Gynecol 172,
1042-1043, 1995

2,431例中27例に性器異常
・女性の性器異常       20例
・男性の性器異常        6例
・性器形成不全(性別不明)  1例
(症例報告)

症例報告
・妊娠中に切迫流早産の予防及び治療目的でホルモン剤使用
・母親2,431例の出産した新生児を調査
製剤:中高用量

石塚直隆:
日本内分泌学会誌 38;443-449, 1962

(2) 染色体異常

総合評価

出典

Carrは、OC服用中止後6ヵ月以内に妊娠した女性からの自然流産児54例と対照群227例の染色体異常発生例を比較したところ対照群22%に対しOC服用群は48%であったこと、トリソミーに差は認められなかったが、三倍体はOC服用群に有意に高かったと報告している1)
一方、Lauritsen2)はCarrと同じく自然流産児の染色体異常について調査したが対照群との間に有意差は認められず、三倍体にも有意差は認められないが、45X、染色体異常には有意差があるとしている。また、Dhadial3)、Boue4)らも自然流産児の染色体異常について調査したが、OC服用群と対照群の間に有意差はなく、多倍体にも有意差は認められなかったとしている。

松永は以下のように総括している5)
OCと染色体の突然変異誘発作用についての報告を検討し、1)OCにより排卵を抑制された卵母細胞に遺伝子突然変異又は染色体の切断その他の構造異常についての研究は報告されていないが、その可能性は低い、2)OC服用中止後に妊娠すると三倍体の異常胎児が増える可能性があるが、結論は報告者により分かれており、特に最近の大きな調査では否定的である、3)OC服用中止後に妊娠した母からの出産児にトリソミーのような染色体異常をもった児の出生が増えるとの証拠は得られていない、としている。

なお、比較的新しいHarlapの報告では、流産児と出生児を対象に調べると、逆にOC服用群は避妊をしていない対照群に比べ染色体異常となる危険率は低いとしている6)

1)Carr, DHら:
 Can.Med.Assoc.J.103,343-348,1970

2)Lauritsen,JGら:
Acta Obstet Gynec.Scand 54, 261
-264,1975

3)Dhadial,RKら:
Lancet ii;20-21,1970

4)Boue,Jら:
Teratology 12; 11-26, 1975

5)松永 英:産婦人科
 治療,32,88-93, 1976

6)Harlap,Sら:
 Teratology 31; 381-387, 1985

文献評価

方法

出典

染色体異常
・OC服用群     48% (26例/54例)
・非服用群      22% (50例/227例)
・トリソミー (有意差なし)
・45X、染色体異常(有意差なし)
・三倍体 (有意に高い)

・母親がOC服用中止後6ヵ月以内に妊娠
 自然流産児     54例
・対照:母親にOC服用経験なし
 自然流産児     227例
製剤・用量不明

1)Carr,DHら:
Can.Med.Assoc.J.
103,343-348, 1970

染色体異常
・OC服用群     60% (75例/124例)
・非服用群      49% (60例/122例)
・トリソミー (有意差なし)
・45X、染色体異常(有意に高い)
・三倍体 (有意差なし)

・過去にOC服用経験のある母親からの
 自然流産児     124例
・対照:OC服用経験のない母親からの
 自然流産児     122例
製剤:中高用量

2)Lauritsen,JGら:
Acta Obstet Gynec. Scand 54,
261-264, 1975

染色体異常
・OC服用群       7例/8,522例
    (1,000人あたり 0.82)
・避妊していない群   23例/11,717例
    (1,000人あたり 1.96)

・妊娠前5ヵ月以内にOCを服用していた(妊娠後は服用せず)母親からの流産児及び出産児             8,522例
・対照:妊娠前の避妊していない母親からの
 流産児及び出産児    11,717例
製剤・用量不明

3)Harlap,Sら:
Teratology 31; 381-387, 1985

(3) 次世代の癌

1))精巣癌

2))子宮癌

総合評価

出典

OC服用者の次世代の癌(精巣癌)についての報告はない。しかしながら、妊娠中に流産防止薬として使われたジエチルスチルベストロール(DES)、エストロゲン、プロゲストーゲン、あるいは妊娠診断薬として使われたプロゲストーゲン等に関する次世代の精巣癌の報告があるので参考までに記載した。
OC服用者の次世代の子宮癌についてヒトの報告はなく、その影響は不明である。なお、OCは妊娠中に服用する医薬品ではないが、妊娠マウスにエチニルエストラジオールを単独投与した結果、児の成長後腟上皮及び子宮内膜の悪性変性を示唆する報告があるので参考までに記載した。また、マウスの新生児にエストラジオールを投与した場合、成長後腟上皮の悪性変性を認めたとの報告があるので参考までに記載した。

   

参考文献

出典

文献評価

方法

・症例      9例/97例
(DES:2,エストロゲン:1,
 プロゲストーゲン:1,配合剤妊娠診断薬:5)
・対照      2例/105例
相対リスク(95%信頼区間) 8.0(1.3-49)

精巣癌患者の母親と一般対照の母親に面接し、妊娠中に服用したホルモン剤を調査
製剤・用量不明

Depue.RHら:
J Natl Cancer Inst 71,1151-1155, 1983

・症例      6例/78例
(エストロゲン:2, 他は不明)
・対照      1例/78例
相対リスク    5.0(有意差なし)

精巣癌患者の母親と近隣に在住する一般対照の母親に面接し、妊娠中に服用したホルモン剤を調査
製剤・用量不明

Henderson.BEら:
Int.J.Cancer.23,598-602, 1979

・症例      4例/202例
(DES:2, プロゲステロン:1,
 プロゲステロン妊娠診断薬:1)
・対照      5例/206例
相対リスク(95%信頼区間) 0.8(0.2-3.5)

精巣癌患者の母親と精巣癌以外の癌患者の母親に面接し、妊娠中に服用したホルモン剤を調査
製剤・用量不明

Brown.LMら:
Cancer Res 46, 4812-4816, 1986

・症例      9例/211例
(DES:4, プロゲストーゲン:1,
 妊娠診断薬:2, 不妊症治療薬:1)
・対照      10例/214例
オッズ比 (95%信頼区間)  0.9(0.3-2.6)

精巣癌患者と同級生のそれぞれの親に面接し、妊娠中に服用したホルモン剤を調査
製剤・用量不明

Moss.ARら:
Am.J.Epidemiol.124,39-52, 1986

児の成長後、腟上皮の増殖及び角化、子宮内膜の肥厚などが認められた。これらは癌性変化に移行する可能性があると考えられる。

妊娠マウスにエチニルエストラジオールを単独で妊娠11〜17日まで0.02又は0.01mg/kg/日経口投与し、生後10〜14週で腟、子宮を摘出し検討した。

安田佳子ら:医学のあゆみ,98,537-538,1976
安田佳子ら:医学のあゆみ,99,611-612,1976

成長後、腟上皮の増殖及び角化が認められた。子宮並びに乳腺においては変化は認められなかった。
(この試験で認められた腟上皮の変化は、年齢とともに腫瘍化していくことが多いといわれている)

出生24時間以内の雌性マウスに5μgのエストラジオールを単独で5日間注射し、生後7〜15ヵ月後に腟、子宮、乳腺、卵巣などを摘出し検討した。

Takasugi,Nら: J.Nat.Cancer Inst.33,855-865, 1964
(守 隆夫: 医学のあゆみ,95, 559-602, 1975)

(4) 性的発達・行動の異常

総合評価

出典

ヒトでの性的行動異常の報告はみられていない。動物(ラット)ではOCを投与された母体から出産された次世代の性的発達・行動に異常はなく、生殖能への影響は認められていない1〜4)

1) 常見那順ら:
基礎と臨床24,117-136, 1990

2)原田滋雄ら:
薬理と治療19,197-231, 1991

3)Kwarta,Jr.,RF ら:
応用薬理42,327-340, 1991

4)影山明彦ら:
日獨医報36,67-82, 1991

 

項目

小項目

総合評価

出典

4.妊娠機能に関する事項

(1) 性周期の回復

国内で実施された第III相臨床試験成績では、OC服用中止・終了後の妊娠機能への影響について調査した結果、全ての製剤で90日以内に90%以上の症例で月経の再来又は排卵が認められた。

1) 谷沢 修ら:臨床医薬 6,2167-2202, 1990、2) 水野 正彦ら:基礎と臨床 24,7647-7676, 1990
3) 水野 正彦ら:産科と婦人科 57,2507-2532, 1990、4) 松本 清一ら:基礎と臨床 25;1155-1177, 1991
5) 水野 正彦ら:臨床医薬 7,579-616, 1991、6) 水野 正彦ら:基礎と臨床 25,1911-1964, 1991
7) 水野 正彦ら:基礎と臨床 25;4575-4607,1991
  第III相臨床試験
    安全性評価対象症例数:  412〜932例
    総服用周期数:   6,174〜14,084周期(最長33周期)

各社の国内第III相臨床試験成績

文献評価

方法

出典

月経再来率(OC服用終了後)
〜60日      73.7〜100%
〜90日      92.4〜100%

申請各社の第III相臨床試験のまとめ
対象症例数: 1,374例
総服用周期: 54,126周期
製剤:低用量

各社の国内第III相臨床試験成績

エチニルエストラジオール0.03mg及びノルゲストレル0.3mg製剤
月経再来率(OC服用終了後)
〜30日      98.8%
〜60日      99.9%
〜90日      100%

40歳以下の月経周期が少なくとも3ヵ月規則的な女性1,282例の性周期の回復率を調査
製剤:低用量

Woutersz TBら:
J Reprod Med 26, 615-620, 1981

(2) 服用中止後の妊娠率

総合評価

出典

OC服用終了後の経産婦並びに未経産婦の1年後の妊娠率は81〜90%であり1)、OCを服用していない一般夫婦の不妊症の頻度は8.4〜10.1%であり、ほぼ同程度であることから妊娠機能への影響は少ないものと考えられる2)
また、OC非服用者に対しOC服用者の排卵性不妊症のリスクは1.3倍であり、6年以上服用した場合でも1.35倍とリスクが増大することはなかった3)

1)Royal College of
General Practitioners Oral Contraceptives and Health p.71-77, 1974 Pitman Medical

2)Mosher WDら:
Fertility & Sterility, 56,192-193,1991

3)Chasan-Taber,Lら:
 Am.J.Epidemiol.146,258-265, 1997

文献評価

方法

出典

OC服用終了後日数及び妊娠率
         経産婦   未経産婦
〜 6ヵ月      79%     68%
〜12ヵ月      90%     81%
〜24ヵ月      93%     85%

OC服用を終了した者2,291例(経産婦1,540例、未経産婦751例)の服用中止後の妊娠率に関する調査
製剤・用量不明

1)Royal College of
General Practitioners
Oral Contraceptives and Health p.71-77, 1974 Pitman Medical

OC服用期間と排卵性不妊症

   症例 対照 相対リスク(95%信頼区間)
 非服用者  328  12,835  1.0
 服用者   378  10,187  1.3( 1.1-1.5 )
  0〜4年  278  7,448  1.27(1.16-1.39)
  4〜6年   55  1,611  1.32(1.18-1.48)
  6年以上  45  1,128  1.35(1.18-1.54)

   傾向検定       P=0.22

統計学的には、OCの服用期間が長くなるにつれて排卵性不妊症のリスクが増大することはなかった。

試験法:ケースコントロール試験
対象:排卵性不妊症患者 1,917例
   対照       44,521例
製剤・用量不明

3)Chasan-Taber,Lら:Am.J.Epidemiol.
 146,258-265, 1997

エチニルエストラジオール0.03mg及びノルゲストレル0.3mg製剤
OC服用終了後妊娠するまでの期間
 〜 6ヵ月 21/26 (80.8%)
 〜12ヵ月 23/26 (88.5%)
 〜24ヵ月 26/26 (100%)

平均15周期OCを服用した後、妊娠した26例におけるOC服用中止後の妊娠までの期間に関する調査 
製剤:低用量

4)Woutersz TBら:
 J Reprod Med 26,615-620, 1981

(3)服用中止後の妊娠

総合評価

出典

米国経口避妊薬添付文書ガイダンスでは「OC服用中止後の妊娠 OCの服用中止後には、とりわけ服用開始前に月経周期が不順であった女性において、妊娠の成立が多少遅れるかもしれない。OCの服用を中止して妊娠を希望する女性は、定期的な月経周期が回復するまで妊娠を延期することが望ましい。OCの服用中止後まもなく妊娠が成立した場合でも、新生児に先天異常の増加はみられないようである。」の記載があり、OC服用中止後の妊娠は、定期的な月経周期が回復するまで妊娠を延期することが望ましいとされている1)。ただし、本記載についての根拠論文は明確にされていない。

1)米国経口避妊薬添付文書ガイダンス

 

項目

小項目

総合評価

出典

5.その他の安全性に係わる事項

(1)耳硬化症

OCの服用により本症が悪化し、服用中止により改善したとの報告がある1)

1) Jorge Aら: Rev. Bras. Oto-Rino-Laringol. 41, 46, 1975

(2)持続性そう痒症、妊娠ヘルペスの既往歴

妊娠ヘルペス並びに妊娠中に全身性の皮疹を来した女性がOCを服用したところ、皮疹や水疱が発生し、服用中止により軽快したとの報告がある1)

1) Koide SSら: J. Reprod. Med. 15, 214, 1975

(3)思春期前の女性

エストロゲンは骨端線を閉鎖させ、骨の発育を停止させることが知られている1)

1) 吉本雅昭:ホルモンと臨床, 44,597-605, 1996

(4) 高血圧

現服用者はOC非服用者と比較すると高血圧のリスクは1.8倍(95%信頼区間:1.5〜2.3)に上昇する。過去のOC服用者でのリスクは1.2倍(95%信頼区間:1.0〜1.4)であった1)

各社の国内第III相臨床試験(製剤:低用量)における発現率は0.2〜0.8%であった2)

1)Chasan-Taber,Lら:
Circulation 94, 483-489, 1996

2)各社の国内第III相臨床試験成績

(5) 耐糖能の低下

米国経口避妊薬添付文書ガイダンスでは耐糖能が低下するとの記載がある1)
OCはインスリン感受性を30〜40%低下させるとの報告がある2)

また、国内の臨床試験成績で空腹時血糖、糖負荷試験を行った成績からは糖代謝上での異常は認められていない3)

1)米国経口避妊薬添付文書ガイダンス

2)Godsland.I.Fら:
J.Clin.Endocrinol.Metab. 74,64-70,1992

3)各社の国内第III相臨床試験成績

(6) ポルフィリン症

国内臨床試験では発現がみられなかったが、治療用の黄体・卵胞ホルモン配合剤で副作用報告1),2)がみられ「使用上の注意」に記載されている。

*血色素の構成物質であるヘムの前駆物質のポルフィリンの代謝障害に基づく疾患であり、ポルフィリンまたはその前駆物質が大量に産生され、体内に蓄積されたり、排泄されたりする。大半は遺伝性であるが、一部は薬剤や種々の疾患によって二次的に生ずる。

1)二宮涼子ら:
臨皮48, 281-283,1994

2)降旗謙一ら:
最新医学35,2522-2527,1980

(7) 肝障害

治療用の黄体・卵胞ホルモン剤を服用した女性で、黄疸又は胆汁うっ滞性肝障害が発生したとの報告がある1)
国内臨床試験成績より、肝障害(GOT,GPT等の異常変動)の発現頻度は、0〜1.3%であった2)

1)医薬品副作用情報 No.28、薬務公報社

2)各社の国内第III相臨床試験成績

(8)心疾患、腎疾患又はその既往歴

本症はレニン−アンギオテンシン−アルドステロン系の活性亢進により、ナトリウムと体液の貯留を来す1)。一方、OCはレニン活性の上昇と尿中アルドステロン排泄量の増加を示し、水の貯留傾向・浮腫傾向がみられる。よって本症においてOCを服用すると血圧上昇等の心臓及び腎臓への負荷が増大することが考えられる2)

1)Harrison' Principles of Internal Medicine, Eighth Edition, p.176,p.1450,1977

2)岡田弘二:ステロイド療法のあり方 産婦人科領域,金芳堂,p.171,1982

(9)てんかん

月経時の本症については、OCの服用により発作が増悪したとの報告がある。また、てんかん患者では体液の貯留を来しており、上記同様、OCを服用するとさらに増悪するおそれがある1)

1)Zimmerman, AW: Neurologic Clinics,4,853-861,1986

(10)テタニー

本症は低カルシウム血症、アルカローシスを伴うことが多い。一方、OCはレニン活性の上昇と尿中アルドステロン排泄量の増加を示す。また、OCを服用したところ、血清カルシウムが低下し本症が発症したとの報告がある1)

1) Burckhardt B: Hormone Res., 6, 321, 1975

(11) 脂質代謝

OC服用と高トリグリセライド血症に関連があると報告されている1)

1)Crook,Dら:
 Am.J.Obstet. Gynecol.158,1612
 -1620,1988

(12) 悪心・嘔吐、点状出血等

OC服用中の副作用の発現頻度では、OCに含有されるホルモンに起因すると考えられる悪心・嘔吐、頭痛、乳房痛等が高かった1)
 悪心・嘔吐:     1.2〜29.2%
 頭痛:        3.4〜15.7%
 乳房緊満感:     0.1〜20.0%
 乳房痛:       1.0〜12.3%

点状出血及び破綻出血を含む不正性器出血の発現頻度は、服用継続により低下した1)
 服用第1周期:     11.6〜39.0%
 服用第2周期:     6.4〜28.3%
 服用第3周期:     4.9〜24.4%
 服用第12周期以降:  3.0〜11.2%

1)各社の国内第III相臨床試験成績

参考:服用中止の理由

服用継続例における副作用及び投与終了、妊娠希望等による服用中止率

製品A
図1

製品B
図2

 

(13)長期の又は激しい下痢、嘔吐

OCの吸収不良をきたし、妊娠する可能性が高くなる1)

1)外国添付文書:ORTHO-NOVUM

(14) 角膜厚の変化

外国及び治療用の黄体・卵胞ホルモン配合剤の使用上の注意に記載されているので記載した。

性ホルモンの角膜に及ぼす影響を検討するために性周期に伴う角膜の厚みの変化を観察した結果、性周期の変化に伴って角膜厚が変化する(排卵後数日間は角膜厚が増加し、月経開始日に向かって減少する)ことが観察された1)

1) 今釜 秀一ら:
臨床眼科 41, 751-753, 1987

(15) その他の副作用

国内で実施された第III相臨床試験成績 (総計 4,640例) で、下記のような副作用が報告されている1)

図3

* 色素沈着は、日光照射、妊娠、OC服用で増悪するとの記載がある2)。

1)各社の国内第III相臨床試験成績

2)檜垣裕子:今日の治療指針 p713,医学書院, 1999

(16) 臨床検査値への影響

1))コルチゾールの上昇

OC服用により血中総コルチゾールは有意に上昇するが、生理活性を有する遊離型は変化しないため臨床上は問題がないとされている。国内の臨床試験成績からもコルチゾールの上昇が認められたが、この上昇は肝臓でのエストロゲンによって肝臓でのコルチコイド結合性グロブリン(CBG)の合成が促進され、この上昇したCBGにコルチゾールが結合するためコルチゾール値が有意に上昇したと考えられている1)。なお、コルチゾールの上昇は妊娠経過に伴って上昇する2)

1)Vange,Nら:
Contraception 41,345-352,1990

2) 野口 實
日産婦学会雑誌40,14-20,1988

2))甲状腺機能 T3,T4

OC服用により結合型T3並びにT4が有意に上昇する。これは、OCに含有されるエストロゲンが肝臓でのサイロキシン結合型のグロブリン(TBG)の合成を促進するため、結合型T3、T4が上昇するが、生物活性を示さないと考えられている。なお、T3、T4は妊娠に伴って上昇する1)

1)Schatz,DLら:
 Cand Med Ass J 99:882-886,1968

(17) 相互作用
1))OCの作用を減弱させる薬剤

下記の薬剤は、肝の薬物代謝酵素を誘導し、OCの代謝と促進と、避妊効果の減弱化及び不正出血の発現率の増大と関係あると考えられている。

 リファンピシン1,2)、バルビツール酸系製剤(フェノバルビタール等)3,4)
 ヒダントイン系製剤(フェニトインナトリウム等)4)、カルバマゼピン5)、グリセオフルビン4)

下記の薬剤は、腸内細菌叢を変化させOCの腸肝循環による再吸収を抑制し、避妊効果の減弱化及び不正出血の発現率の増大と関係があると考えられている。
 テトラサイクリン系抗生物質(テトラサイクリン等)4,6)
 ペニシリン系抗生物質(アンピシリン等)4,6)

下記の薬剤は、エチニルエストラジオールの血中濃度又はAUCに影響し、OCの作用を減弱するおそれがある。
 トログリタゾン8)、リトナビル7)、メシル酸ネルフィナビル8)、ネビラピン8)

1) Reimers,Dら: Prax. Pneumol,
25, 255-262, 1971

2) Back,DJら:
 Contraception,21,135-143, 1980

3) Back,DJら:
 Br.J.Pharmacol.69,441-452, 1980

4) Back,DJら: Br.J. Clin.
 Pharmacol.25, 527-532,1988

5)Crawford Pら: Br.J.Clin. Pharmacol.,30,892, 1990

6)Back,DJら: J.Steroid.Biochem.16,407, 1982

7)Ouellet,Dら: Br.J.Clin.
 Pharmacol.46,111-116,1998.

8)トログリタゾン、メシル酸ネルフィナビル,ネビラピン 添付文書

2))OCにより作用が増強又は減弱される薬剤

下記の薬剤はOCにより代謝が抑制されるため、これらの薬剤の作用が増強するおそれがあると考えられている。
 副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン等)1)、三環系抗うつ剤(イミプラミン等)2)
 塩酸セレギリン3)、シクロスポリン4)

OCにより耐糖能、インスリン分泌が影響され血糖降下剤の作用を減弱することがある5)
 インスリン製剤、スルフォニル尿素系製剤、スルフォンアミド系製剤、ビクアナイド系製剤等

機序は不明であるが、OCとの併用で月経異常が現れたとの報告がある6)
 塩酸テルビナフィン

OCとの併用で効果の減弱する可能性が考えられる7)
 Gn-RH誘導体(酢酸ブセレリン等)、硫酸グアネチジン

1) Frey,BMら:Eur J.
 Clin Pharmacol 26,505-511, 1984

2) Abernethy,DRら:
 Clin Pharmacol Ther 35,792-797,1984

3)塩酸セレギリン添付文書

4)シクロスポリン添付文書

5)Steele,J.M.:
 J.Fam.Plan.Doctors,3,77,1978

6)塩酸テルビナフィン添付文書

7)酢酸ブセレリン、硫酸グアネチジン添付文書

(18) 乳汁への影響

米国経口避妊薬添付文書ガイダンスに「OCを服用した授乳婦において母乳の量、質とも低下するとの報告がある。」と記載されている1)。また、ヒトに50μgのエチニルエストラジオールを経口投与後、哺乳中に乳児に移行するエチニルエストラジオール量は24時間で0.02%であると報告されている2)

1) 米国経口避妊薬添付文書ガイダンス

2)Nilsson,S:
Contraception:17, 131-139,1978

 

項目

小項目

総合評価

出典

6.その他

(1)死亡率

OCの服用中止から10年未満と10年以上経過例との関連
非服用者に対する死亡率の相対リスク(95% 信頼区間)
       
現在服用中
          又は中止から    中止から
          10年未満      10年以上
 
全死因     1.0(0.9-1.2) 1.0(0.9-1.1)
 癌      1.0(0.8-1.2) 1.0(0.8-1.2)
  子宮頸癌  2.5(1.1-6.1) 1.1(0.4-3.1)
  卵巣癌   0.2(0.1-0.7) 0.7(0.4-1.4)
 循環器疾患  1.5(1.1-2.0) 1.1(0.8-1.4)
  脳血管疾患 1.9(1.2-3.1) 1.2(0.7-2.0)
 暴力,事故  1.3(0.8-2.0) 1.5(0.9-2.6)

OC非服用者に比し、現在服用中又は服用中止後10年未満の女性では、循環器系等の死亡率(特に脳血管障害)に影響を与えるものの、服用中止後10年以上の女性では非服用者と比較して循環器系を含むすべての死因において有意差が認められなかった。

方法:コホート試験 英国における46,000例の婦人に対する25年間の調査結果
年齢、経産歴、社会階級、喫煙により補正した。OC非服用者に対する死亡の相対リスクで評価
製剤・用量不明

1)Beral.Vら;BMJ 318,96-100,
1999

(2)HIVウイルス

子宮頸部におけるHIV-1ウイルスの脱落
       HIV-1 DNA
        陰性  陽性 オッズ(95%信頼区間)
非服用者   84/161 98/154 1.0 
OC服用者  18/161  7/154 3.0(1.1-8.4)

補正後(308例、10例を除く)のオッズ比は3.8(95% 信頼区間:1.4-9.9)となった。

子宮頸部におけるHIV-1ウイルスの脱落はOC服用で高くなったが、子宮腟部ではOC服用による差は認められなかった。

方法:子宮頸部又は腟部からのHIV-1ウイルスの脱落に及ぼす因子の検討
対象:318例のHIV-1陽性患者(子宮摘出3例含)
製剤:中高用量又は低用量

1)Mostad, SBら:Lancet 350, 922-927, 1997

(3)免疫系

OCに含まれる合成プロゲストーゲン・エストロゲンは、いずれもステロイド骨格を持つ性ホルモンであることから免疫系への作用が考えられ、過去にはOC服用者が感染症について高い発生率を示したとの報告もある1)。しかしながら、その後の多くの研究2-8)では、一定の方向性は認められず、実際の影響については不明である。

1)Royal College of General Practitioners:OralContraceptives and Health.Pitman Medical, London,1974

2)Bray, RS: Contraception, 13, 417-425, 1976
3)Keller, AJら: Obstet. Gynecol. 49, 83-91, 1977

4)Gerretsen, Gら: Contraception, 22; 25-29, 1980

5)Baker, DAら: Contraception, 32, 377-382,1985

6)Bisset, LRら: Contraception, 38, 567-578, 1988

7)Baker, DAら: Contraception, 39, 119-124,1989

8)Scanlan, JMら: Psychoneuroendocrinology, 20, 281-287, 1995

 

参考資料(情報提供資料の記載に反映していない報告)

項目

小項目

総合評価

出典

 

ビタミンC

OCとビタミンC(VC)との相互作用については、Backら1)が5例のデータで相互作用があると報告しているが、その後確認のため37例を用いて検討された結果、VCの併用でエチニルエストラジオール、プロゲストーゲン(レボノルゲストレル)の血中濃度の上昇は認められず2,3)、外国添付文書の相互作用のある薬剤にも記載されていない。

1)Back.DJ.ら:BMJ 282; 1516, 1981

2)Zamah.NM.ら:Contraception 48, 377-391, 1993

3)Kuhnz,Wら;Contraception 51,111-116,1995

文献評価

方法

出典

VC 1g投与時の血中エチニルエストラジオール濃度(mg/L)
      OC単独 VC併用   検定
投与6時間  49±11  57±12   P<0.01
投与24時間 21± 5  31± 9   P<0.05
VC1gの併用により血中EE濃度が上昇した。

低用量OC単独とVC 1gとの併用を、それぞれ1周期、同一被験者(5例)に投与し、血中エチニルエストラジオール濃度を測定した。

1) Back.DJ.ら:BMJ 282; 1516, 1981

OC単独とVC併用群の
血中エチニルエストラジオール薬物動態パラメータ(平均±S.D.)

パラメーター     測定日 OC単独群 VC併用群
Cmax pg/ml        1   102±48   99±43
            15   145±68  143±72
AUC(0-12h)pg・h/ml    1   407±183  411±183
            15   718±322  740±389

ビタミンC(1g)との併用でエチニルエストラジオールの血中濃度が増加することはなかった。

クロスオーバー試験
症例:37例
OC(レボノルゲストレル 150μg、エチニルエストラジオール30μg)単独とVC 1gとの併用をそれぞれ1周期、同一被験者(37例)に投与し、血中エチニルエストラジオール濃度等を測定

2) Zamah.NM.ら:Contraception 48, 377-391, 1993

VCとの併用によりレボノルゲストレルの血中濃度は影響をうけなかった。

クロスオーバー試験
症例:37例
OC(レボノルゲストレル150μg、エチニルエストラジオール30μg)単独とVC 1gとの併用をそれぞれ1周期、同一被験者(37例)に投与し、血中エチニルエストラジオール濃度等を測定

3) Kuhnz,Wら;Contraception 51,111-116,1995

酢酸メドロキシプロゲステロンの相互作用

高用量酢酸メドロキシプロゲステロンの併用禁忌に「ホルモン剤」の記載があるが、高用量酢酸メドロキシプロゲステロンの適応症は乳癌及び子宮体癌であり、OCではこれらの疾患は「禁忌」である。

1) 高用量酢酸メドロキシプロゲステロン添付文書

鎌状赤血球貧血

鎌状赤血球症とは常染色体劣性遺伝の血流閉塞を特徴とする溶血性貧血を伴う疾患であり、OC服用によって症状が悪化することが予想されることから禁忌の項へ記載済みである「血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患又はその既往歴のある患者」及び「血栓性素因のある女性」により本症は網羅される。

1) 日本臨床増刊,血液・尿化学検査 免疫学的検査(中巻),p.177,1995

デュビン・ジョンソン症候群、ローター症候群

これらの症候群は、1))胆汁うっ滞を伴わない抱合型高ビリルビン血症を呈する慢性非溶血性黄疸で、かつ肝・胆道系に閉塞機転を有さない予後良好な体質性黄疸であり、ポルフィリン代謝異常を示す、2))常染色体劣性遺伝様式をとる極めて稀な先天性疾患である、3))妊娠、あるいはOCを服用したことによってこれらの症候群と診断されることがあるが、無症状に経過して壮年期まで気づかれないことが多い、とのことから禁忌の項へ記載済みである「重篤な肝障害のある患者」、「妊娠中に黄疸の既往歴のある患者」及び慎重投与の項へ記載済みである「ポルフィリン症の患者」、「肝障害のある患者」によりこれらの症候群は網羅されている。

1) 日本臨床,肝・胆道系症候群 肝臓編(下巻),p.424,p.446,1995

血栓性静脈炎又は血栓塞栓症の初期症状

現在の添付文書案には「血栓症(四肢、肺、心筋、脳、網膜等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、下肢の疼痛・浮腫、突然の息切れ、激しい頭痛、胸痛、急性視力障害等の症状があらわれた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。」との記載があり、ここで「血栓性静脈炎又は血栓塞栓症の初期症状」を記載すると従来の記載と重複し整合性がとれなくなる。また、この記載より従来の記載の方がわかりやすいため、添付文書への記載は不要と考えるが、記載してある症状が初期症状であることを明確にするために「血栓症(四肢、肺、心筋、脳、網膜等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、下肢の疼痛・浮腫、突然の息切れ、胸痛、激しい頭痛、急性視力障害等の初期症状があらわれた場合には投与を中止し適切な処置を行うこと。」とする。

治療用卵胞・黄体ホルモン剤の添付文書

胆嚢疾患

米国経口避妊薬添付文書ガイダンスに以下のとおり記載されている。

「以前の研究では、OC及びエストロゲン製剤の服用者においては胆石手術が必要となる相対リスクが高まるとされていた1)。しかし、最近の研究では、胆嚢疾患発症の相対リスクはOC服用者でも最小限であることが示されている2,3,4)。このような所見が見られるようになったのは、エストロゲン・プロゲストーゲンの低用量製剤が臨床の場において使用されるようになったことと関連があるのかもしれない。」

1) Boston Collaborative Drug Surveillance Program: Lancet, 1, 1399-1404, 1973

2) Layde PM et al.: J. Epidemiol. Comm. Health, 36, 274-278, 1982

3) Rome Group for the Epidemiology and Prevention of Cholelithiasis (GREPCO): Am. J. Epidemiol., 119, 796-805, 1984

4) Strom BL et al.: Clin. Pharmacol. Ther., 39, 335-341, 1986.

先天異常児出産

最近の報告及び米国経口避妊薬添付文書ガイダンス1)ではOC服用と先天異常児出産の関連については否定的である。また、多くの疫学報告より、OCを妊娠前に服用していた女性において異常出産の危険性が増大するということはないとされている。これらの試験はさらに催奇形性作用のないことも示しており、特に妊娠初期に不注意に服用してしまった場合でも、心臓奇形や四肢の異常のないことが報告されている。

1)米国経口避妊薬添付文書ガイダンス経口避妊薬の安全性についてのとりまとめ「3.次世代への影響に関する事項」参照

流産,子宮内胎児死亡

OCを服用していた女性で服用終了後の流産については、相対リスクは0.8〜1.0倍以下であったと報告されている1)

報告    OC服用者    流産率  非服用者  流産率  相対リスク
Peterson     442     9.0    699    8.6    1.0
RCGP       305     8.6    413    9.1    0.9
Vessey     2,017     11.7   2,478    11.9    1.0
Harlap     8,412     40.2a   23,711   48.2a    0.8
      a:10万人当たりの1日の平均自然流産率

妊娠中の胎児の死亡(死産)についても以下の様に相対リスクは0.2〜0.8倍となっている1)
妊娠中の胎児の死亡率:1000人当たりの死亡数

報告      OC服用    死亡率  非服用者  死亡率  相対リスク
Peterson      401     2.5    641    6.2    0.4 
Robinson     1,250     1.6   1,250    9.6    0.2 
RCGP       4,477     10.3   9,511    13.7    0.8 
Rothman      1,963     1.5   2,809    4.3    0.3 
Harlap & Davies  2,994     4.3   13,832    7.5    0.6 
Vessey      1,781     7.9   2,182    10.5    0.8 

1)The effect of female sex hormones on fetal development and infant health: WHO Technical Report Series 657, 1981