経口避妊薬(OC)の有効性についてのとりまとめ

項目

小項目

総合評価

出典

避妊効果に関する事項

1. 飲み忘れ等を含めた効果
 (国内治験)

国内で実施されたOC(「0ral Contraceptives」をいう。以下同じ。)の第III相臨床試験では、延べ4,514例の女性の避妊効果が評価され、13例の妊娠例(0.29%)が報告されている。この内、飲み忘れが原因と評価された症例数は9例であり、その他の理由で妊娠した症例は4例で、原因としては効果不十分、頻回の下痢であった。

1) 谷沢 修ら:臨床医薬 6,2167-2202, 1990、2) 水野 正彦ら:基礎と臨床 24,7647-7676, 1990
3) 水野 正彦ら:産科と婦人科 57,2507-2532, 1990、4) 松本 清一ら:基礎と臨床 25;1155-1177, 1991
5) 水野 正彦ら:臨床医薬 7,579-616, 1991、6) 水野 正彦ら:基礎と臨床 25,1911-1964, 1991
7) 水野 正彦ら:基礎と臨床 25;4575-4607,1991

各社の国内第III相臨床試験成績

2.他の避妊方法との比較

米国医師用添付文書には、OCを含めた各種避妊方法を正しく続けて使用している場合と一般的な使用における失敗率(妊娠率)を記載している。OCは飲み忘れのない理想的な服用の場合,妊娠する確率は0.1%(1,000人の女性が1年間飲み続けた場合,1人が妊娠する)以下であるが,飲み忘れなどを含めた一般的な服用における妊娠率は5%である。1周期中で飲み忘れた錠数が増えると,妊娠の確率も増加する。
             各種避妊法使用開始1年間の失敗率(妊娠率)         
          方法             理想的な使用*  一般的な使用**(%)

経口避妊薬                                 5     
 配合剤                        0.1       データなし   
 プロゲストーゲン単味剤***               0.5       データなし   
殺精子剤のみ(発泡錠,ゼリー,クリーム***)       6         26     
薬剤添加IUD***                   0.1〜1.5      0.1〜2.0   
コンドーム                        3         14     
ペッサリー                        6         20     
リズム法                        1〜9        25     
女性避妊手術                      0.5        0.5    
男性避妊手術                      0.10        0.15    
避妊せず(妊娠希望)                  85         85     
   * :選んだ避妊法を正しく続けて使用しているにもかかわらず妊娠してしまった場合
   ** :選んだ避妊法を使用しているにもかかわらず妊娠してしまった場合(OCについては、飲み忘れを含めた場合の失敗率)
   ***:日本では未発売

Trussel J.Contraceptive
efficasy.
In Hatcher RAら
Contraceptive
Technology:
Seventeenth Revised Edition.pp779-844
New York NY:Irvington Publishers,1998

 

参考資料1. 人工妊娠中絶に関する資料

項目

統計

出典

1.日本:年齢別中絶数の推移

                      中絶率=中絶件数/(中絶件数+出産件数)

          <20歳   20-24    25-29   30-34   35-39  40-44   45歳<   不詳   合計

1970年 中絶件数1) 14,314  141,355  192,866  187,142  134,464  54,101   6,818   973  732,033
    中絶率2)   41.5    21.6    16.9    34.3    62.5   84.6   92.7   77.7    27.5
1975年 中絶件数  12,123  111,468  184,281  177,452  123,060  56,634   5,804   775  671,597
    中絶率    43.1    18.9    15.4    35.7    66.3   86.6   94.8   99.1    26.1
1980年 中絶件数  19,048   90,337  131,826  177,506  123,277  50,280   5,347   463  598,084
    中絶率    56.6    23.3    14.0    31.3    67.6   87.9   95.4   97.9    27.5
1985年 中絶件数  28,038   88,733   95,195  142,474  139,594  51,302   4,528   263  550,127
    中絶率    61.1    26.4    12.2    27.2    59.9   86.2   94.9   87.4    27.8
1990年 中絶件数  32.431   86,367   79,205   98,232  101,705  54,924   3,811   122  456,797
    中絶率    65.0    31.0    12.6    21.6    52.4   81.4   94.7   84.7    27.2
1995年 中絶件数  26,117   79,712   65,727   68,592   65,470  33,586   3,803    17  343,024
    中絶率    61.8    29.2    11.8    15.6    39.6   72.9   90.2   58.6    22.4
1996年 中絶件数  28,256   80,743   66,833   66,045   62,069  31,227   3,667    27  338,867
    中絶率    64.4    29.8    11.7    14.9    37.0   71.4   90.2   69.2    21.9
1997年 中絶件数  30,984   80,252   68,963   64,877   60,007  29,422   3,233    61  337,799
    中絶率    65.1    30.5    12.2    14.8    35.7   69.6   88.7   71.8    22.1

1)平成9年母体保護統計報告(厚生省大臣官房統計情報部人口動態統計課)

2)同資料より算定

2.諸外国との避妊方法の比較


      OC  IUD   CD   RA  CINO  FST  MST   他   
日本1)   1.3  3.8  77.2  17.0  9.6  5.3   1.2   -
西独2)  50.6  13.1  11.7   7.1  3.4  8.6   3.2  1.9 
東独2)  61.8  11.6  10.4   8.7  4.5  3.0   0.0  0.0 
英国2)  39.3  7.3  19.6   1.5  4.7  10.1  16.0  1.6 

    OC:経口避妊薬、CD:コンドーム、RA:リズム法、
    CINO:性交中絶法、FST:女性避妊手術、MST:男性避妊手術、

1)毎日新聞人口問題調査会(第23回全国家族計画世論調査報告書より改編)

2)Determinants of contraceptive use

3.日欧米の対人口中絶比の比較

          上段:中絶数
          下段:(中絶数/女性数)×100(女性数:総人口の1/2とした)

表1

1) United Nations:
Demographic
Yearbook 1996版
(C)1998

2) 平成9年母性保護統計報告(厚生省大臣官房統計情報部人口動態統計課)

4.諸外国との年齢別中絶率の比較

 

中絶率(中絶件数/(中絶件数+出産件数))

表2

1) United Nations:
Demographic
Yearbook 1996版
(C)1998

2)平成9年母性保護統
計報告(厚生省大臣官
房統計情報部人口動態統計課)



参考資料2. 副効用

項目

総合評価

出典

1.卵巣癌の発生の減少

OCを服用している女性は、服用したことがない女性と比較すると卵巣癌のリスクは、OC服用3〜6カ月で0.6であり、予防効果が認められ、5年以上服用するとリスクは0.4、10年以上服用で0.2となり、服用期間に比例して、リスクは減少すると報告されている1)
さらに、OC服用の中止後少なくとも15年間この予防効果は持続すると報告されている1)
また、卵巣癌患者の10%が遺伝子の変異を有しており、遺伝子の変異を有する女性の25〜45%が生涯に卵巣癌を発症するとの報告がある。遺伝子変異を有する女性とその姉妹の対照との比較においてもOC服用者は卵巣癌のリスクを低下させるとの報告もある2)
卵巣癌の原因として排卵との関連性が示唆されている。排卵のつど卵巣上皮は破裂、修復を繰り返しているが、その過程から細胞異常が起こり、異常増殖、腫瘍化の可能性が考えられている。OC服用は、排卵回数を減らすので、これらの破裂・修復過程が減少し、その結果として癌化が減少する3)

1)The Cancer and Steroid Hormone Study of the Centers for Disease Control and the National Institute of Child Health and Human Development: N Engl J Med 316: 650-655,1987

2)Narod SA ら: N Engl J Med 1998;339:424-428.

3)The Centers for Disease Control Cancer and Steroid Hormone Study: JAMA 249:1596-1599,1983

文献評価

方法

出典

OC服用累積期間と卵巣癌発症の相対リスク1)

OC服用期間 症例 対照  相対リスク(95%信頼区間(CI))
 非服用者 
   242  1,532  1.0
 3〜6カ月   26   280   0.6 (0.4〜0.9)
 7〜11カ月   14   134   0.7 (0.4〜1.3)
 1〜2年    65   602   0.7(0.5〜0.9)
 3〜4年    40   397   0.6(0.4〜0.9)
 5〜9年    39   594   0.4(0.3〜0.6)
 10年以上   13   328   0.2(0.1〜0.4)

結論:OC服用により卵巣癌発症のリスクは0.6(95%CI 0.5-0.7)で、その効果は3〜6カ月の服用でみられ、服用中止後15年継続する。

試験法:ケースコントロール研究
対象:症例546例/対照4,228例

1) The Cancer and Steroid Hormone Study of the Centers for Disease Control and the National Institute of Child Health and Human Development: N Engl J Med 316:650-655, 1987

遺伝子変異を保有する女性の卵巣癌発症のオッズ比(95%CI)

      全ての対照  遺伝子変異の対照  
OC服用歴
   なし 
   1.0       1.0
   あり 
   0.5 (0.3-0.8)  0.4 (0.2-0.7) 
OC服用期間
 3年未満    0.8 (0.4-1.4)  0.4 (0.3-0.9)
 3〜6年    0.4 (0.2-0.9)  0.4 (0.1-1.0)
 6年以上    0.4 (0.2-0.7)  0.3 (0.1-0.7) 
遺伝子変異
  BRCA1            0.5 (0.3-0.9)
  BRCA2            0.4 (0.2-1.1)

結論:OC服用により卵巣癌の遺伝子変異を有する女性に対しても予防効果を示した。

試験法:ケースコントロール研究
対象:
 遺伝子変異を持つ症例 207例
  BRCA1  179例
  BRCA2  28例
 対照(それらの姉妹) 161例

2)Narod SA ら: N Engl J Med 339: 424-428, 1998

OC服用期間  症例  対照  相対リスク(95%CI)
非服用者 
    86   683   1.0
服用者  
    90   921   0.6 (0.4-0.9)
 3カ月未満   16   106   1.0 (0.5-1.9)
 3-11カ月    13   133   0.7 (0.4-1.4)
 1-2年     32   213   0.8 (0.5-1.4)
 3-4年     12   137   0.5 (0.2-1.0)
 5年以上    17   332   0.4 (0.2-0.6)

中止後の期間  症例  対照  相対リスク(95%CI)
非服用者    86   683   1.0
服用者     74   815   0.6 (0.4-0.8)
 1年未満    15    54   1.0 (0.4-2.2)
 1-4年     15   129   0.6 (0.3-1.1)
 5-9年     18   221   0.5 (0.3-0.9)
 10年以上   26   411   0.5 (0.3-0.9)

結論:OC服用により卵巣癌発症の相対リスクは0.6(95%CI 0.4-0.9)で、服用期間に応じその減少効果は増大し、服用中止後も継続した。

試験法:ケースコントロール研究
対象:症例179例/対照1,642例

3)The Centers for Disease Control Cancer and Steroid Hormone Study: JAMA 249:1596-1599,1983

項目

総合評価

出典

2.子宮体癌の発生の減少

OCを服用している女性は、服用したことがない女性と比較して、子宮体癌のリスクは1年以上服用した場合0.6であり、予防効果が認められると報告されている。このリスクはOC服用期間に比例して減少し、4年間の服用で0.4であり、OC服用中止後、この予防効果は15年以上持続したと報告されている1)
また、1979〜1995年に報告された子宮体癌の疫学調査11報でメタアナリシスが実施され、服用期間に比例して子宮体癌のリスクは減少すること、服用中止後もその効果は継続することが報告されている2)
この予防効果は、プロゲストーゲンによるとされているが、その明確なメカニズムはいまだ不明である。

1) Cancer and Steroid Hormone Study of the Centers for Disease Control and the National Institute of Child Health and Human Development: JAMA 257: 796-800, 1987

2) Schlesselman JJ:
 Human Reproduction 12 : 1851-1863, 1997

文献評価

方法

出典

OC服用期間と子宮体癌発症の相対リスク

OC服用期間  症例  対照  相対リスク(95%CI)
 非服用者   250  1,147   1.0
 3〜6カ月    24   186   0.9 (0.5〜1.5)
 7〜11カ月   13   80   1.3 (0.6〜2.6)
 12〜23カ月   20   266   0.7 (0.4〜1.2)
 24〜71カ月   26   576   0.4 (0.3〜0.7)
 72〜119カ月  12   317   0.4 (0.2〜0.8)
 120カ月以上  15   241   0.4 (0.2〜0.8)

OC服用中止後の期間と子宮体癌発症の相対リスク1)

服用中止後の期間 症例  対照  リスク (95%Cl)
 非服用者     250  1,147   1.0
  5年未満     12   471   0.3 (0.1〜0.5)
  5〜9年     22   417   0.4 (0.2〜0.6)
  10〜14年    30   368   0.5 (0.3〜0.8)
  15年以上     9   144   0.3 (0.2〜0.6)

結論:OCを少なくとも12カ月以上服用した場合の子宮体癌発症リスクは0.6(95%CI 0.3-0.9)であった。 この予防効果は服用中止後15年間継続した。

方法:ケースコントロール研究
対象:症例433例/対照3,191例

1) Cancer and Steroid Hormone Study of the Centers for Disease Control and the National Institute of Child Health and Human Development: JAMA 257: 796-800, 1987

図1   OC服用期間と子宮体癌発症の相対リスク2)

表2

OCの最終中止からの期間と子宮体癌発症の相対リスク2)

結論:服用期間が長くなると子宮体癌の発症リスクは低下し、服用中止後もその効果は継続する。

1979〜1995年に公表された子宮体癌の疫学調査17報を検討し、服用期間及び服用中止後の期間が検討できる11報についてメタアナリシスを実施した。

症例1,746例/対照6,243例

2)Schlesselman JJ:
Human Reproduction 12: 1851-1863, 1997


項目

総合評価

出典

3. 月経に関連した
 副効用
1)月経異常の減少
2)鉄欠乏性貧血の
 減少
3)月経困難症の減少

OCを正しく服用することにより、周期は規則的となるので、月経不順の人でも正常周期となる1)
エストロゲン作用によって子宮内膜の腺上皮の増殖が非服用時に比較して抑制されるために、内膜の剥離時に失われる血液量が減少する。経血量の減少については日本での臨床試験においても確認されている。この経血量の減少により女性特有の鉄欠乏性貧血の予防が期待される1)
エストロゲンとプロゲストーゲンの配合剤が月経困難症の症状を軽減することは、古くから知られており、発症を1/3に減少させると報告されている1)
この機序としてOC服用により排卵が抑制されること、子宮内膜の増殖が妨げられることが報告されている1)

1)Royal College of General Practitioners: Oral contraceptives and health, Pitman. 1974

文献評価

方法

出典

OC服用と月経異常発生のオッズ比1)

 異常の種類  OC服用者 非服用者 オッズ比
  過多月経    12.48   23.82   0.52
  月経困難症    3.87   10.43   0.37
  月経不順     5.19   7.92   0.65
  中間出血     3.04   4.23   0.72

結論:OC服用者は非服用者に比較し、月経の異常(過多月経、月経不順、中間期出血等)の発生は少なく、月経困難症の発生も少なかった。

試験法:コホート試験
対象:服用者  23,611例
   非服用者 22,766例

1) Royal College of General Practitioners: Oral contraceptives and health, Pitman.pp61-64 1974

鉄欠乏性貧血のオッズ比1)

       OC服用者   非服用者   オッズ比
鉄欠乏性貧血  5.67(現在)  9.71     0.58
        5.44(過去)  9.71     0.56

結論:現在服用者及び過去服用者共に非服用者に比較して鉄欠乏性貧血の発生は有意に低かった。

試験法:コホート試験
対象:服用者  23,611例
   非服用者 22,766例

1)Royal College of General Practitioners: Oral contraceptives and health, Pitman. pp22-30 1974


項目

総合評価

出典

4. 排卵抑制に関連
 する副効用

 1)卵巣貯留嚢胞の
 減少
 2)子宮外妊娠
 の減少

米国ではOCの服用により年間3,500人の卵巣貯留嚢胞の入院を防止できると推定されている1)
また、これらの効果はOCの用量によって異なるとの報告がある2)

OCの排卵抑制作用に基づき、他の避妊法を使用した際に発症する子宮外妊娠の減少が報告されている3)

1)Connel,F.Bら: J.Reprod.Med.29: 513-523, 1984

2) Lanes SFら: Am J Obstet Gynecol 166:956-961, 1992

3) Vessey M ら: J Biosoc Sci 8: 373-427, 1976

文献評価

方法

出典

OCの種類  相対リスク(95%CI) 頻度/10,000人
非服用者     1.0          4.4
 35μg
以下    0.52 (0.17-1.33)    2.2
 35μg超    0.24 (0.01-1.34)    1.2

結論:低用量OCの卵巣貯留嚢胞の減少作用は、高用量OCに比し弱いようである。

試験法:コホート試験
対象:   7,462例

2) Lanes SF ら: Am J Obstet Gynecol 166:956-961, 1992

避妊法の違いによる希望しない妊娠の結果と頻度
         (服用者10万人/年当たりの頻度)

希望しない妊娠の結果  OC  バリア法  IUD
 満 期 産      91   1,462   497
 流  産       19    306   776
 子宮外妊娠       1    10   121
 妊娠中絶       39    622   606 
合  計        150  2,400  2,000

結論:他の避妊法に比較してOC服用者は子宮外妊娠の発生は低かった。

試験法:コホート試験
対象: 17,032例
 OC服用者 9,653例
 バリア法  4,217例
 IUD   3,162例

3) Vessey M ら:
 J Biosoc Sci 8: 373-427, 1976


項目

総合評価

出 典

5.骨盤内感染症の発生の減少

各種避妊法における骨盤内感染症(PID)発症頻度は、OCを服用している女性で最も低く、IUDの使用者に比べ1/5であった1)。PID発症の相対リスクは、OCを現在服用している女性で有意に低いことが報告されている。また、1年以上のOC服用者は70%その発症を減少させたと報告されている2)。その予防効果は、プロゲストーゲンが頸管粘液の粘度を高め、腟内細菌の子宮内への移送を阻止するためと考えられている。

1) Weström L:Am J Obstet Gynecol 138: 880-892, 1980

2)Rubin GL ら: Am J Obstet Gynecol 144: 630-635, 1982

文献評価

方法

出典

各種避妊法によるPID発症頻度

        総数  IUD   OC  バリア法
 婦人年    41,930  2,935  16,311  7,044
 PID症例     571   153   148    98
 PID/100婦人年 1.36  5.21   0.91   1.39

結論:IUD使用者に比較してOC服用者はPIDの発症率が低かった。

スウェーデンにおけるPID発症頻度調査

1) Weström L:Am J Obstet Gynecol 138: 880-892, 1980

OC服用とPID発症の相対リスク

 OC服用状況  症例   対照  相対リスク (95%CI)
   なし      170  558  1.0
   あり      472 1,945  0.8 (0.6〜1.0)
    現在服用   139  831  0.7 (0.5〜0.9)
     12ヵ月以下 73  197  1.1 (0.8〜1.5)
     13ヵ月以上 66  634  0.3 (0.2〜0.4)
    過去に服用  333 1,114  0.9 (0.7〜1.1)

結論:OC服用者は非服用者に比較して有意にPIDの発症リスクは低かった。13カ月以上の現在服用者でその予防効果は特に高かった。

試験法:ケースコントロール研究
対象:症例648例/対照2,516例
2)Rubin GL ら:
Am J Obstet Gynecol
144:630-635, 1982

項目

総合評価

出典

6.良性乳房疾患の発生の減少

英国のOxford Family Planning Association Contraceptive Study(1968-1979)で行われた疫学調査1)では、良性乳房疾患の発症がOC服用群で減少している。
その予防効果は、服用期間に比例して高く、エストロゲン含有量が一定の場合、プロゲストーゲンの含有量が多いほど高いと報告されている2)

1)Brinton L A ら.: Am. J.Epidemiol. 113: 203-214, 1981

文献評価

方法

出典

OC服用と良性乳房疾患の相対リスク1)

    線維腺腫 慢性嚢疱疾患 生検未実施の 他の乳房疾患
                  乳房腫瘍
       74     211      331     70 
服用経験
 なし   49 1.00 110 1.00  169  1.00  34  1.00
 あり   25 0.35 101 0.66  162  0.58  36  0.63
(95%CI) (0.2〜0.7) (0.4〜0.9) (0.4〜0.8) (0.3〜1.2)

服用期間(年)
 非服用  49 1.00  110 1.00 169 1.00  34 1.00
 2年未満  7 0.43  24 1.28  35 0.84  4 0.44
 2-3年   9 0.46  30 0.89  38 0.67  8 0.51
 4-5年   6 0.33  22 0.49  37 0.56  7 0.49
 6-7年   3 0.46  14 0.56  30 0.44  14 1.34
 8年以上  0 0.00  11 0.35  22 0.49  3 0.38

最後の服用から
 非服用  49 1.00  110 1.00  169 1.00  34 1.00
 過去服用 7 0.16  41 0.47  77 0.52  21 0.60
  1年未満 3 0.46  14 0.56  26 0.57  5 1.91
  1年   8 0.98  13 1.16  11 0.43  3 1.15
  2年以上 7 0.54  33 1.10  48 0.81  7 0.41

結論:OC服用により良性乳房疾患の発症のリスクは減少し、特に長期の服用者に良性乳房疾患発症リスクの低下がみられた。
試験法:コホート試験
対象:17,000例超

1)Brinton L A ら.: Am. J.Epidemiol. 113: 203-214, 1981