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平成11年4月21日

糖尿病実態調査報告書について


 糖尿病は、脳卒中や心臓病の危険因子となることが知られており、また、神経障害、網膜症、腎臓障害などの合併症による生活の質の低下も重大な問題である。さらに、糖尿病の患者数は、近年急激な増加を示しており、生活習慣病として、国民の最も重要な健康問題の一つとなっている。
 そこで、厚生省として初めて、平成9年11月に糖尿病実態調査を実施し、平成10年3月に、我が国の糖尿病有病者数の推計、糖尿病の状況と肥満、糖尿病の状況と健診についての解析結果を概要(速報分)として発表したところである。
 本報告は、速報版の内容に加えて、糖尿病健診と保健指導の状況、医療サービスの状況、併発症の状況、危険因子等について詳細に解析し、集計表をあわせて、糖尿病実態調査報告書としてまとめたものである。

1.調査の目的

 平成8年の患者調査において医療機関を受診中の患者数は約218万人と推計されている。しかし、一方で、我が国の有病者数は500万人とも600万人とも言われており、未受診者、または治療を中断した患者等を含めた総数は不明であった。
 そこで、糖尿病に関する状況を把握し、特に有病者数とその背景を明らかにすることにより、今後の効率的な糖尿病施策の展開に資することを目的とした。

2.調査の概要

解析対象客体

 平成9年国民栄養調査で栄養摂取状況調査に回答した20歳以上の人(10,865人)のうち、血液検査に応じた6,059人(55.8%)を解析対象客体とし、さらに糖尿病に関する質問を行った。

調査項目

(1) 国民栄養調査で行った調査内容

栄養摂取状況調査
食生活状況調査
身体状況調査(身長、体重、血圧測定、歩行数、問診)
血液検査(血色素量、赤血球数、血糖値、ヘモグロビンA1c、総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリド、総たんぱく質)
(2) 糖尿病実態に関する質問内容

 糖尿病に関連した家族歴、既往歴、保健事業の関わり、治療、合併症等について質問した。

解析

 解析は糖尿病実態調査企画解析検討会が行った。(名簿は別添)

3.結果

(1)糖尿病有病者数の推定

 「糖尿病が強く疑われる人」は690万人、「糖尿病の可能性が否定できない人」を合わせると1370万人と推計される。

(2)肥満と糖尿病

 「過去の肥満度」が30%以上の人では、3人に1人が「糖尿病が強く疑われる人」または「糖尿病の可能性が否定できない人」である。

(3)糖尿病健診と治療

 今回の調査で、「糖尿病が強く疑われる人」のうち、健診を受けたことのある人の半数以上は治療を受けているが、健診を受けたことのない人では、91.9%は治療を受けていない。

(4)糖尿病の合併症

 腎症や網膜症、神経障害などの糖尿病合併症の状況について調べたところ、「今回の調査で正常な人」や「糖尿病の可能性を否定できない人」に比べて、「糖尿病が強く疑われる人」で、合併症を発症している割合が高い傾向がみられる。

(5)糖尿病健診後の保健指導と生活習慣の改善意識の向上

 今回の調査で、健診で異常値を指摘された後に何らかの保健指導を受けた人の方が、指導を受けていない人に比べて、「生活習慣を改善した」と回答した割合が高い。また、保健指導の内容別では、複数の内容を組み合わせて指導された人の方が、「生活習慣を改善した」と回答した割合が高い傾向がみられる。

(6)糖尿病健診後の保健指導と医療機関受診

 健診後の医療機関受診についても、(5)と同様に、保健指導を受けた人の方が、健診後に医療機関を受診した割合が高い傾向がみられる。

*(1)、(2)、(3)については速報分で、発表済み


・「糖尿病が強く疑われる人」

 ヘモグロビンA1c6.1%以上、または、アンケート調査で、現在糖尿病の治療を受けていると答えた人

・「糖尿病の可能性を否定できない人」

 ヘモグロビンA1cが5.6%以上6.1%未満で現在糖尿病の治療を受けていない人


4.今回の調査で確認された内容に基づく国民に向けたコメント

(1)糖尿病の予防のためには、肥満を防止することが大切。

 肥満予防のためには、食べ過ぎに注意して、良く体を動かすようにしましょう。

(2)初期の糖尿病は自覚症状がほとんどみられないため、知らない間に病気が進行し、糖尿病患者の生活に重大な支障をきたす合併症(神経障害・網膜症・腎症)が出現することもあります。
 この合併症を予防するためには、

○適切な健診受診による早期発見
○発見されたらできるだけ早く治療を始めて、それを継続させていくこと
が大事です。

5.厚生省の今後の対応

 今後は、保健医療従事者等に対し、糖尿病実態調査の結果を周知するとともに、広く国民に対し糖尿病の予防・進行防止のための普及啓発をおこなうこととする。また、健康日本21においても、調査結果を踏まえて、糖尿病対策についての議論を行っていくこととする。


糖尿病実態調査企画解析検討会名簿


座長  赤澤好温(国立京都病院顧問)
金澤康徳(自治医科大学附属大宮医療センター長)
葛谷 健(塩谷総合病院糖尿病センター長)
後藤由夫(東北厚生年金病院名誉院長)
櫻井秀也(日本医師会常任理事)
中村栄子(千葉市保健所次長)
松原 了(神奈川県衛生部長)


照会先:保健医療局生活習慣病対策室
担当者:菊岡、市原
内 線:2339
直 通:3595−2245


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