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社会福祉基礎構造改革について

(社会福祉事業法等改正法案大綱骨子)

厚 生 省

I 趣 旨

○ 本改革は、昭和26年の社会福祉事業法制定以来大きな改正の行われていない社会福祉事業、社会福祉法人、措置制度など社会福祉の共通基盤制度について、今後増大・多様化が見込まれる国民の福祉需要に対応するため、見直しを行うものである。

○ この見直しは、介護保険制度の円滑な施行(平成12年4月1日施行)、成年後見制度の導入(平成12年4月1日施行予定)、規制緩和推進計画の実施(平成11年度以降)、社会福祉法人による不祥事の防止、地方分権の推進などに資するものであり、早急に実施する必要がある。

II 理 念

○ 個人が尊厳を持ってその人らしい自立した生活が送れるよう支えるという社会福祉の理念に基づいて、本改革を推進する。

○ 具体的な改革の方向

(1) 個人の自立を基本とし、その選択を尊重した制度の確立
(2) 質の高い福祉サービスの拡充
(3) 地域での生活を総合的に支援するための地域福祉の充実

III 制度改正の概要

1 改正を予定する法律

 社会福祉事業法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福祉法、民生委員法、社会福祉施設職員等退職手当共済法、生活保護法、老人福祉法、公益質屋法

2 改正の内容

(1)利用者の立場に立った社会福祉制度の構築

(1)福祉サービスの利用制度化 【身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福祉法】

図1

※1 公費助成については、現行の水準を維持
※2 要保護児童に関する制度などについては、措置制度を存続

(2)利用者保護制度の創設 【社会福祉事業法】

ア)地域福祉権利擁護制度
○痴呆性高齢者など自己決定能力の低下した者の福祉サービス利用を支援するため、民法の成年後見制度を補完する仕組みとして制度化
○都道府県社会福祉協議会等において実施
イ)苦情解決の仕組みの導入
○福祉サービスに対する利用者の苦情や意見を幅広く汲み上げ、サービスの改善を図る観点から、
・第三者が加わった施設内における苦情解決の仕組みの整備
・上記方法での解決困難な事例に対応するため、苦情相談委員会を都道府県社会福祉協議会に設置
ウ)誇大広告の禁止
エ)利用契約についての説明・書面交付義務付け
(2)サービスの質の向上

(1)良質なサービスを支える人材の養成・確保 【運用事項】

○社会福祉士及び介護福祉士について、
・保健医療との連携や介護保険制度の実施に対応した教育課程の見直し
・実習教育の強化、卒後継続教育の充実
○社会福祉主事について、施設長をはじめとして社会福祉事業従事者全体の資質の向上を図る観点から、養成課程を見直し

(2)サービスの質の向上 【社会福祉事業法】

○事業者によるサービスの質の自己評価などによる質の向上

○サービスの質を評価する第三者機関の育成 【運用事項】

(3)事業の透明性の確保 【社会福祉事業法】

○事業運営の透明性の確保、サービス利用者の選択に資するため、
・事業者によるサービス内容に関する情報の提供
・財務諸表の開示を社会福祉法人に対して義務付け
・国、地方公共団体による情報提供体制の整備
(3)社会福祉事業の充実・活性化

(1)社会福祉事業の範囲の拡充 【社会福祉事業法】

○社会福祉に対する需要の多様化に対応し、9事業を追加
・権利擁護のための相談援助事業
・障害者(児)生活支援相談事業
・手話通訳事業
・盲導犬訓練事業
・知的障害者デイサービス事業 など

(2)社会福祉法人の設立要件の緩和

○地域におけるきめ細かな福祉活動を推進するため、
・障害者の通所授産施設の要件の引き下げ 【社会福祉事業法】
・在宅サービス事業等を経営する社会福祉法人の資産要件(1億円)の大幅引き下げ 【運用事項】
・通所施設の用に供する土地・建物について賃借を認めること。 【運用事項】

(3)多様な事業主体の参入促進 【運用事項】

・保育所について、待機児童数の状況など地域の需給状況等を総合的に勘案して民間企業など社会福祉法人以外の参入を認めること。
(注)特別養護老人ホームなどの入所施設については、介護保険制度の施行状況等を踏まえ、事業の継続性・安定性の確保を考慮して引き続き検討

(4)福祉サービスの提供体制の充実 【運用事項】

○社会福祉施設に対する国庫補助制度を堅持しつつ、
・障害者プランの着実な推進など計画的な整備
・学校等の空き教室の活用など整備方法の多様化

(5)社会福祉法人の運営の弾力化 【運用事項】

・施設ごとの会計区分を弾力化し、法人単位の経営を確立すること。
・利用制度化した事業については、利用料収入を施設整備費の償還に充てることを認めること。
・行政監査の重点化・効率化を図ること。
(4)地域福祉の推進

(1)地域福祉計画の策定 【社会福祉事業法】

○社会福祉事業の計画的推進、住民の自主的な活動と公的サービスの連携などを目的として、市町村・都道府県において地域福祉計画を策定
○ボランティア団体、NPO、郵便局、農協、生協などの地域における身近な活動にも配慮 【運用事項】

(2)知的障害者福祉等に関する事務の市町村への委譲 【知的障害者福祉法、児童福祉法】

(3)社会福祉協議会、共同募金、民生委員・児童委員の活性化 【社会福祉事業法、民生委員法、児童福祉法】

○市町村社会福祉協議会を地域福祉の推進役として明確に位置づけるとともに、都道府県社会福祉協議会の役割として社会福祉事業従事者の養成研修、社会福祉事業の経営指導を行うことを明確にすること。
○県内配分を原則とする共同募金について、大規模災害に対応した広域配分を可能にするとともに、透明性確保のため配分委員会を設置すること。
○住民の立場に立った活動を行う民生委員・児童委員の職務内容を明確にすること。

(5)その他の改正

 社会福祉施設職員等退職手当共済法の見直し等

3 施行

 平成12年4月施行を原則。ただし、措置制度の利用制度への変更、地域福祉計画の策定、知的障害者福祉等に関する事務の市町村への委譲に関する規定について、準備期間を考慮し、平成15年4月施行


照会先
 厚生省社会・援護局企画課
 03-3591-9867


平成11年4月15日

厚 生 省

社会福祉事業法等一部改正法案大綱

第1 趣 旨

 個人が尊厳を持ってその人らしい自立した生活が送れるよう、個人の選択を尊重した制度の確立、質の高い福祉サービスの拡充、個人の自立した生活を総合的に支援するための地域福祉の充実を図るため、所要の改正を行うものである。

第2 内 容

1 社会福祉事業法の一部改正

(1)基本理念規定の改正

(1) 個人の尊厳の保持を基本とした福祉サービスの提供を基本理念として規定すること。
(2) 地域福祉の推進に関する規定を設けること。
(3) 福祉サービスの提供体制の確保、適切な利用の推進について、国、地方公共団体の役割を明確化すること。

(2)社会福祉事業の推進

(1) 社会福祉事業の追加及び削除
ア 知的障害者、痴呆性高齢者等に対し福祉サービスの利用を支援するための事業を追加すること。
イ 障害者関係事業(障害者(児)生活支援相談事業、身体障害者生活訓練等事業、手話通訳事業、知的障害者デイサービス事業、知的障害者デイサービスセンターを経営する事業、盲導犬訓練施設を経営する事業)を追加すること。
ウ 公益質屋を経営する事業を削除すること。
(2) 経営基盤の強化、事業の質の向上及び透明性の確保を図ることを社会福祉法人の経営原則として規定
(3) 障害者の通所授産施設の要件を緩和し、社会福祉法人の設立を促進すること。
(4) 社会福祉法人に財務諸表の開示を義務づけること。

(3)福祉サービスの適切な利用の推進

(1) 国、地方公共団体、社会福祉事業を経営する者が社会福祉事業に関する情報提供に努めることとすること。
(2) 社会福祉事業を経営する者の誇大広告を禁止すること。
(3) 社会福祉事業を経営する者は、利用契約に際し、利用者に対して説明するとともに、契約成立時に書面を交付しなければならないこと。
(4) 社会福祉事業を経営する者は、サービスの自己評価などにより質の向上に努めるものとすること。
(5) 都道府県社会福祉協議会は痴呆性高齢者などに対する福祉サービスの利用を支援する事業を実施するものとすること。
(6) 社会福祉事業を経営する者の苦情解決の責務を明確にすること。
(7) 社会福祉施設における苦情への対応その他運営に関する事項を基準に加えること。
(8) 事業者による苦情の解決を補完するため、苦情相談委員会を都道府県社会福祉協議会に設置するものとすること。

(4)地域福祉の推進

(1) 地域福祉を推進するため、市町村が策定する地域福祉計画及び都道府県が策定する地域福祉支援計画に関して規定すること。
(2) 市町村社会福祉協議会を地域福祉の推進役として明確に位置付けるとともに、都道府県社会福祉協議会の役割として社会福祉事業従事者の養成研修、社会福祉事業の経営指導などを行うことを明記すること。
(3) 県内配分を原則とする共同募金について、大規模災害に対応するため、広域配分の実施を可能とするとともに、透明性を確保するため、配分委員会を設定するものとすること。

(5)その他所要の改正

(1) 福祉事務所の所管区域を保健所等の所管区域を勘案して定めることとすること。
(2) 社会福祉主事の任用資格について所要の改正を行うこと。
(3) 「収容」を「入所」に改める等用語の見直しを行うこと。

2 身体障害者福祉法、知的障害者福祉法及び児童福祉法の一部改正

(1)措置制度の利用制度への変更

 身体障害者福祉法、知的障害者福祉法及び児童福祉法(障害児に限る。)における福祉サービスの提供方式を現行の措置制度から、利用者が福祉サービスの提供者と直接契約し、市町村がその費用について支援費を支給する方式に改めること。

(1)利用の仕組み
ア 利用者が指定事業者に利用の申込を行うこと。
イ 市町村は利用者の申請に基づき、支援費の支給を決定すること。
ウ イの決定を受けた者が、当該福祉サービスを利用した場合には、市町村は利用者に対し、サービスに要する費用から自己負担額を控除した額を支援費として支給すること。
エ 利用者は自己負担額を事業者に支払うとともに、市町村は、利用者に代わり、支援費を事業者に直接支払うことができること。
オ 利用者の自己負担額は、本人及び扶養義務者の負担能力を勘案したものとすること。
(2)対象事業
ア 身体障害者福祉法上の事業
(ア) 施設:身体障害者療護施設、身体障害者更生施設、身体障害者授産施設
(イ) 在宅:身体障害者居宅介護等事業、身体障害者デイサービス事業、身体障害者短期入所事業
イ 知的障害者福祉法上の事業
(ア) 施設:知的障害者更生施設、知的障害者授産施設、知的障害者通勤寮
(イ) 在宅:知的障害者居宅介護等事業、知的障害者デイサービス事業、知的障害者短期入所事業、知的障害者地域生活援助事業(グループホーム)
ウ 児童福祉法上の事業
児童居宅介護等事業、児童デイサービス事業、児童短期入所事業
(3)市町村等の役割
ア 市町村は福祉サービスの利用者への相談、情報の提供を行うとともに、必要に応じてあっせん又は調整等を行うものとすること。
イ 市町村は、緊急の場合等サービスの利用が著しく困難である場合には、職権により入所等の措置を行うことができること。
ウ 国及び都道府県は、市町村が支援費として支弁する費用の一部を負担又は補助すること。

(2)事業の法定化

 障害者の福祉の増進を図るため、以下の事業を法律上の事業として位置付け ること。

ア 身体障害者・知的障害者・障害児生活支援相談事業
 (情報の提供並びに助言及び指導、障害者と市町村、居宅生活支援事業者、障害者施設、医療施設等との連絡調整等の援助を総合的に行う事業)
イ 身体障害者生活訓練等事業
 (身体障害者が日常生活又は社会生活を営むために必要な訓練等の援助を提供する事業)
ウ 視聴覚障害者情報提供施設の機能の拡充
エ 手話通訳事業
オ 盲導犬訓練施設を経営する事業・盲導犬の貸与
カ 知的障害者デイサービス事業・知的障害者デイサービスセンターを経営する事業

3 児童福祉法の一部改正

(1)助産施設及び母子生活支援施設の入所方式の見直し

 助産施設及び母子生活支援施設について、現行の措置制度から利用者が希望する施設を都道府県等に申し込み、利用する制度に改めること。

[利用の仕組み]

(1) 利用者は、都道府県等に対し、希望する施設の利用を申し込むこと。
(2) 都道府県等は、利用者が希望する施設に対し、サービスの実施を委託すること。
(3) 都道府県等は、利用者本人又はその扶養義務者から、負担能力に応じ、費用の全部又は一部を徴収すること。
(4) 都道府県等は、利用者に対し施設に関する情報提供を行うこと。

(2)児童委員の見直し

(1) 児童委員について、民生委員法の改正に伴う所要の改正を行うこと。
(2) 要保護児童を発見した場合の通告先に、児童委員を加えること。

4 知的障害者福祉法及び児童福祉法の一部改正

 知的障害者に関する事務等を市町村に委譲すること。

ア 知的障害者援護施設に係る事務
イ 知的障害者地域生活援助事業(グループホーム)に係る事務
ウ 障害児短期入所事業に係る事務 等

5 その他

(1)民生委員法の一部改正

(1) 住民の立場に立った活動を行う民生委員の職務内容を明確にすること。
(2) 「名誉職」を「無給」に改める等、用語を見直すこと。

(2)社会福祉施設職員等退職手当共済法の一部改正

(1) 共済契約の対象を社会福祉法人が経営する施設及び事業とすること。
(2) 財政安定化の観点から、概ね五年を通じ財政の均衡を保つことができるよう掛金の額を決定すること。
(3) 支給乗率を、国家公務員退職手当と同様の水準とすること。

(3)公益質屋法の廃止

(4)その他の改正

(1) 身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、生活保護法、老人福祉法及び児童福祉法の一部改正
○ 公立施設の整備に対する国及び都道府県の負担規定を補助規定に改めること。

(2) 児童福祉法の一部改正
○ 児童福祉施設の設置者に対する報告徴収等に関する規定を設けること。
(3) 生活保護法の一部改正
○ 「収容」を「入所」に改める等、用語を見直すこと。

6 施行期日

 この法律は、平成12年4月1日から施行すること。
 ただし、

○ 身体障害者生活訓練等事業、盲導犬訓練施設の法定化及び社会福祉事業への追加に関する規定は平成13年4月1日から、
○ 地域福祉計画、措置制度から支援費を支給する方式への変更及び知的障害者福祉等に関する事務の市町村への委譲に関する規定は平成15年4月1日から、
それぞれ施行すること。


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