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平成10年12月18日

「食品の表示のあり方に関する検討」中間報告書の
公表及び意見の公募について


1 このたび、別添のとおり、「食品の表示のあり方に関する検討」中間報告書が、食品衛生調査会表示特別部会において取りまとめられたので、ご報告いたします。

2 食品衛生調査会表示特別部会においては、今後、報告書を取りまとめるに当たり、今回の「食品の表示のあり方に関する検討」中間報告書について、国民の皆様等からのご意見を募集することとしております。具体的な公募方法等については別添のとおりです。


【別添資料】

別紙1 「食品の表示のあり方に関する検討」中間報告書
別紙2 「食品の表示のあり方に関する検討」中間報告書概要
別紙3 「食品の表示のあり方に関する検討」中間報告書に関する意見の公募について


(照会先)
生活衛生局食品保健課
 田中食品保健課長
 木村課長補佐(2444)
 渡辺調査表示係長(2452)


別紙1

食品の表示のあり方に関する検討

中間報告書


平成10年12月18日


厚生省
食品衛生調査会 表示特別部会



目  次


I 食品の表示に関する検討背景及び経緯


【1】 表示特別部会の設置

【2】 表示特別部会の開催状況


II 現在までの議論整理及び提言


【1】 総論的事項

1 食品表示制度について
2 表示対象食品の範囲について
3 表示事項の範囲について
4 表示の方法について

【2】 各論事項

1 注意喚起等の表示について

(1)いわゆる栄養補助食品および難消化性糖質の過剰摂取に関する現状
(2)いわゆる栄養補助食品および難消化性糖質の過剰摂取の表示に関する今後のあり方

2 アレルギー物質における食品表示について

(1)アレルギー物質に関する食品表示の現状
(2)食品中アレルギー物質に関する表示の今後のあり方

3 原材料の表示について

(1)原材料表示の現状
(2)原材料表示に関する今後のあり方

4 原産国または国内産地の表示について

(1)原産国等の表示の現状
(2)原産国等の表示に関する今後のあり方

5 遺伝子組換え食品に対する表示について

(1)遺伝子組換え食品に対する表示の現状

ア. 我が国の現状
イ. 国際的な動向
(2)遺伝子組換え食品の表示に関する今後のあり方

6 その他の表示について

(1) 製造所固有記号について

ア 製造所固有記号表示の現状
イ 製造所固有記号に関する今後のあり方

(2) 器具・容器包装における表示基準の設定について

ア 器具・容器包装表示基準の現状
1) 国内の現状
2) 諸外国の状況
イ 食品衛生法上の表示の義務化に関する今後のあり方


III 中間報告書をまとめるに当たって

表示特別部会 委員名簿

参考資料

○ 参考資料: 一般公募・参考人意見概要


I 食品の表示に関する検討背景及び経緯

【1】 表示特別部会の設置

○ 食品衛生法に基づく食品の表示は、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的に、公衆衛生の見地から行われてきたところである。

○ 食品衛生法上の規定によれば、公衆衛生の観点からすべての食品に表示を義務付けることが可能であるが、現在定められている表示の基準では、表示の義務付けがなされているのは、容器包装に入った加工食品が中心であり、容器包装に入っていない食品、農産物や魚介類などの加工食品以外の食品については、原則として表示の義務付けがなされていない。また表示内容についても、一部の食品を除いて原材料表示等の義務付けはなされていない。

○ しかしながら、現行の表示基準を定めた当時からみると、食品の製造・流通形態が大きく変化しており、健康危害の発生を防止するために消費者、行政が必要とするすべての情報について、適切な表示の義務付けが必ずしもなされていないのではないかとの指摘がある一方、規制緩和の観点から、表示についてはできる限り自主的な取組に任せるべきであるとの意見もある。また、近年の国際化の動向、整合性を十分に踏まえた対応についても重要となってきており、これらを踏まえた表示対象食品の範囲や表示の項目等、表示基準の全般的な見直しが必要となってきている。

○ これらの点に鑑み、今般、食品衛生調査会に食品の表示のあり方全般を検討する「表示特別部会」を設置し、表示による食品衛生上必要な情報提供のあり方等について、再検討することとした。当部会においては、食品衛生法の目的である健康危害の防止という観点から、今後の食品表示のあり方について提言等を行うこととする。


【2】 表示特別部会の開催状況

第1回 9月11日(金): 表示特別部会設置の趣旨、全般議論
第2回 10月 1日(木): 参考人の意見聴取
第3回 10月26日(月): 論点整理(案)の検討及び論点の検討(1)
第4回 11月11日(水): 論点の検討(2)
第5回 11月30日(月): 論点の検討(3)及び現在までの議論整理
第6回 12月15日 (火): 中間報告書(案)の検討
*なお、食品の表示に関する一般意見を、平成10年8月27日より9月末までの約1ヶ月間、公募した。


II 現在までの議論整理及び提言

【1】 総論的事項

1 食品表示制度について

○ 食品の表示規制は、様々な観点から行われており、食品衛生法のように健康危害の発生防止の観点から行われるもの、不当景品類及び不当表示防止法(景表法)のように公正な商取引の確保の観点から行われるもの、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)のように一般消費者の選択の観点から行われるもの等がある。

○ このような食品の表示規制については、制度が複数存在することから、企業や消費者にとってよりわかりやすいものとなるよう、関係省庁と一層の連携を確保し、調和のとれたものとしていくことが必要である。
 さらに、これらの規制を統一的な枠組みにより実施すべきとの要望があるが、その是非については、それぞれの観点から引き続き表示規制を行うことの必要性や、統一的に実施した場合の長所及び短所等について、必要に応じて関係省庁との連携を図りつつ、幅広い視点から十分に議論する必要がある。

○ 国際化の一層の進展に伴い、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)を中心とした国際機関等における表示を含む国際規格の制定等への対応が重要となってきている。我が国としても、これら国際機関において合意された基準等を、迅速かつ的確に国内制度に反映させていく必要がある。また、こうした国際会議の場において、必要に応じて我が国としての基本的考え方を明確に主張していくことが望まれる。


2 表示対象食品の範囲について

○ 食品衛生法においては、厚生大臣は、公衆衛生の見地から、販売の用に供する食品等に対し、表示に関する必要な基準を定めることができることとなっており、これらの表示の基準が定められた食品等について、基準に合致した表示がなされる。

○ 食品の表示基準が定められている食品としては、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令においては、乳、乳製品及びこれらを主原料とする食品、また食品衛生法施行規則においては、清涼飲料水、食肉製品、冷凍食品、かんきつ類等、容器包装に入れられた加工食品が規定されている。

○ 表示すべき事項は、食品等の種類によっても異なるが、基本的なものとしては、名称、消費期限又は品質保持期限、製造所又は加工所所在地(輸入業者営業所所在地)、製造者、加工者又は輸入者の氏名、名称、保存の方法等があげられる。

○ またこのほかには、食品の種類によってそれぞれ、添加物を含む食品については添加物を含む旨、使用基準がある食品については使用方法、冷凍食品については加熱等の必要性、放射線を照射した食品についてはその旨等が定められている。

○ 近年、ますます多様な加工食品が市場に出回っており、消費者に対し、適切な表示による情報提供を行っていく必要性が高まっている。一方、従来、技術的な問題等から表示対象とされてこなかった簡易な加工食品やばら売り食品についても、表示基準を定めることができるか否かについて、表示方法等の問題を含めて、今後、さらに検討することが必要である。


3 表示事項の必要性について

○ 食品の選択に当たっては、長年にわたる文化とも言うべき食習慣によって、安全性を含めた判断がなされていることから、健康危害の防止を目的とした表示に関しては、当該食品の健康への影響の程度について常識的に判断ができる場合、あるいは健康危害を防止するために保存・調理方法等に配慮する必要性について一般的に判断ができる場合には、基本的に表示を義務付ける必要はないと考えられる。

○ しかし、健康危害の発生防止の観点から行われる食品衛生法による表示規制については、近年の高度な加工食品や新開発食品、また市場に流通して比較的時間経過の少ない食品にあっては、消費者がその特性を十分に理解していない場合があり、不十分な知識が健康危害の発生に結びつくことがあるため、こうした点を十分考慮して、表示の必要性について判断していかなければならない。


4 表示の方法について

○ 食品衛生法における表示方法については、邦文で、その商品を購入し使用する者が読みやすく理解しやすいような用語により正確に記載することとされており、表示場所についても、容器包装を開かないでも見ることができるように、容器包装の見やすい場所に記載することとされている。

○ 消費者にとっては、選択に資する情報はなるべく表示されることが望ましい。しかし、消費者が接する情報量が多くなり、その選択が困難になってきていることに加えて、表示スペースの限られた小包装の商品が増えているのが現状である。表示を義務付ける事項を選定する場合には、必要とされる情報を整理し、より重要なものから優先して表示することが必要である。

○ 国際的に統一された絵文字表示(ユニバーサルデザイン)など、高齢社会に対応した表示が採用される方向にあるが、食品の表示においても、より一層、高齢社会に対応した活字の大きさやスペース、色、表示場所など見やすさに配慮するとともに、表示方法のルール化についてもその必要性を含め、今後、さらに検討する必要がある。


【2】 各論事項

1 注意喚起等の表示について
 - いわゆる栄養補助食品及び難消化性糖質の過剰摂取に対する注意喚起表示について

(1)いわゆる栄養補助食品及び難消化性糖質の過剰摂取に関する現状

ア いわゆる栄養補助食品の現状

1)我が国の現状
○ 規制緩和推進計画及びOTO本部決定に基づき、食品に対する消費者の意識の変化、各国間の制度の違いを考慮して、平成8年度はビタミン、平成9年度はハーブ類を対象として、そのいくつかについて食品としての流通を認めることとしており、平成10年度中には、ミネラルについても、同様の取扱いをすることとしている。この食薬区分の見直しに伴い、いわゆる栄養補助食品といわれるものが、国内において流通するようになってきている。
○ いわゆる栄養補助食品とは、ビタミン、ミネラル等を抽出し、カプセル等の形状にしたものであり、我が国においては、いわゆる栄養補助食品に関する法令等による明確な定義は存在しない。このため、上記決定に基づき、栄養補助食品を新しいカテゴリーとすることや、適切な摂取方法等についての注意表示について検討することとしている。
○ 通常、人体に必要な栄養は、日々の食事から摂るのが理想的な形であるが、特に近年、食生活の変化や特別な身体的、生理的状況などから、食生活からだけでは必要な栄養素が得られない場合も出てきており、いわゆる栄養補助食品は、そのような場合に不足しがちな栄養素を補うという役割を担うものであると考えられる。
○ なお、栄養補助食品に係る注意喚起としては、米国において、ビタミンAと奇形発現等の関係において、妊娠前3ヶ月から妊娠初期3ヶ月までにビタミンA補給剤を10,000IU/day以上継続摂取した女性から出生した児に、奇形発現率の増加が認められると推定される疫学的知見が学術誌に報告されたことから、平成7年12月に、ビタミンA含有健康食品が、過剰摂取されることのないよう必要な表示を行う等、関係営業者の指導を行うことを含めた、ビタミンAの摂取の留意点等について、各都道府県等に通知されている。

2) 国際的な動向

○ コーデックス委員会では、現在、「ビタミン及びミネラルの栄養補助食品のガイドライン案」の作成作業を行っており、栄養成分の含有量や、表示については、一日推奨摂取量、注意喚起表示、摂取方法等に関する検討が行われている。
○ 米国及び欧州における規制状況
a.米国における規制
 栄養補助食品・健康教育法が施行されており、ビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸等を成分とし、タブレットやカプセル等の形状にしたものを栄養補助食品として定義し、表示に関しては、製造業者が根拠をもつ範囲において認めている。

b.欧州における規制
 欧州主要国では、ビタミン及びミネラルについてはRDA(一日摂取参照量)と関連させて食品と医薬品を区別している。また、ハーブ類については各国様々であるが、医薬品として規制を行っているものもある。

イ 難消化性糖質の現状

○ エリスリトール等の難消化性糖質は、糖アルコールの一種で、ブドウ糖を原料にした発酵法などの方法で生産されている甘味料であるが、その甘味は砂糖に近く、また生体内でエネルギーとして利用されることがほとんどないため、いわゆるノンカロリーの甘味料として、最近これを使用する食品が増えている。

○ しかし、ほとんど消化されないことから、大量に摂取すると緩下作用を示すことが知られているが、例えばエリスリトールの場合、緩下作用の無作用量は、動物実験の結果等から約0.66g/kg程度とされており、体重50kgの人で約33g、体重30kgの子供で約20gの摂取で下痢等が発生する可能性が生じる。

○ したがって、このような性質をもつ物質を含有する食品について、過剰摂取に対する何らかの表示の有無の検討が課題となっている。


(2)いわゆる栄養補助食品および難消化性糖質の過剰摂取の表示に関する今後のあり方

○ 食品の過剰摂取に起因する健康危害は、概ね、以下の3つに分類することができると考えられる。

(1) いわゆる栄養補助食品の過剰摂取による健康危害

 妊娠初期の女性がビタミンAを過剰摂取することにより奇形発現率が増加する等の、ある種のビタミン、ミネラル等のいわゆる栄養補助食品を過剰摂取することにより、重篤な健康危害を生じることがある場合

(2) 難消化性糖質の過剰摂取による健康危害

 新たな食品素材として開発されたエリスリトール等の難消化性糖質の過剰摂取により、生理的に緩下作用を示す場合

(3) その他食品の過剰摂取による健康危害

 その他食品、例えば冷たい牛乳を多量に摂取することにより、緩下作用を生じる場合

○ これらに対する表示のあり方については、以下のように考えられる。

1) いわゆる栄養補助食品について

○ いわゆる栄養補助食品の表示については、大別すると、例えばカルシウムでは骨を丈夫にするというような表示あるいは1日の推奨摂取量といった健康増進のための栄養強調表示と、脂溶性ビタミン等のように、これ以上摂ると危険であるといった過剰摂取に関する注意喚起表示の2つの表示が考えられる。

○ いわゆる栄養補助食品の表示のうち、有効性や摂取方法等の栄養強調表示は、基本的に栄養学的見地から検討されるべきものであることから、今後は栄養改善法に基づき、公衆衛生審議会の健康増進栄養部会において審議を行うこととする。

○ しかしながら、脂溶性ビタミン等の過剰摂取の害に対する注意喚起表示等については、食品衛生上の危害発生防止の観点から、引き続き当表示部会で検討することとする。

○ したがって、いわゆる栄養補助食品の表示については、当面2つの審議会に分かれて審議されることになるが、同じ食品の表示についての議論でもあることから、公衆衛生審議会の健康増進栄養部会の議論と当部会の議論を、今後とも緊密な連携のもとに進めていくよう配慮する必要がある。


2) 難消化性糖質について

○ 緩下作用は、難消化性糖質に限られた作用ではなく、様々な食品で大量摂取等することにより発生することから、難消化性糖質のみ注意喚起表示を義務表示とすることは、他の食品との関係からバランスを欠くと考えられる。

○ 難消化性糖質は、甘味料として使用されているが、通常の砂糖等の甘味料と味のみでは区別がつかないこと、その使用が普及して日がまだ浅く、消費者に十分認識されていないため名称を表示しただけでは難消化性糖質であるかどうかが判別し難いこと、また、物質毎に緩下作用を発現する量がそれぞれ異なることから、目安となる量を表示する必要がある。

○ 以上から、難消化性糖質を一定量以上含む食品の注意喚起表示には、「お腹が緩くなることがある」等の表示のためのガイドライン等を示し、関係業界の自主的な対応とするとともに、、物質毎に最大無作用量(最小作用量)を決め、摂取の目安となる量を示すことが必要である。


3) その他過剰摂取により健康危害が知られている食品について
○ これまで経験的に過剰摂取すると緩下作用を示すことが知られている食品は数多くあるが、これらの食品については、個人が今までの食品を摂取した経験に基づき過剰摂取を避けていると考えられ、また、個人差や形態により作用の発現が大きく異なることから、用量等を特定して注意喚起を行うことは困難である。

○ したがって、これらの食品については、基本的に注意喚起表示を行う必要はないと考えられる。


2 アレルギー物質に関する食品表示について

(1)アレルギー物質に関する食品表示の現状

○ 現在、食品衛生法においては、食品中のアレルギー物質についての表示は、義務付けられていない。

○ しかし国際的に見ると、コーデックス委員会の食品表示部会においては、以下の8種のアレルギー物質を含む包装食品について、それらを含む旨を表示すべきことを規定する案が、すでに合意されており、平成11年6月に採択される予定となっている。

(1) グルテンを含む穀類及びその製品
(2) 甲殻類及びその製品
(3) 卵及び卵製品
(4) 魚及びその製品
(5) ピーナッツ、大豆及びその製品
(6) 乳・乳製品(ラクトースを含むもの)
(7) 木の実及びその製品
(8) 亜硫酸塩を10mg/kg以上含む食品

○ また、厚生科学研究による過去10年間の国内文献調査によれば、身体的に重症となるアナフィラキシーショック症状を呈した例として、そば、小麦、えび、貝、ゼラチン、牛乳、キウイ、さくらんぼ、ももが挙げられるほか、その他重症にいたらないまでもアレルギー性の症状を呈したことがある食品として、肉類では鶏卵、鶏肉、豚肉、牛肉、穀類では米,大麦、山芋、豆類ではくるみ、大豆、魚介類ではさば、いわし、さけ、ひらめ、たら、あわび、いか、甲殻類ではかに、果物ではりんご、野菜ではトマト、セロリ、にんじん、その他として、はちみつ等が示唆されている。


(2)アレルギー物質に関する食品表示の今後のあり方

○ 食品中のアレルギー物質については、健康危害の発生防止の観点から、これらを含有する食品に対し、表示を義務付ける必要がある。

○ アレルギー疾患を有する者は、一般に自らどのような種類のアレルギー物質で症状を誘発するか認識していることから、敢えてアレルギーの警告表示の形をとらなくとも、健康危害の防止を行うことができると考えられる。

○ 表示方法については、これら食品中のアレルギー物質のポジティブリストを作成する方法、原材料名表示で対応する方法等が考えられる。このうち、どのような方法が適当かについては、今後、さらに検討する必要がある。


3 原材料の表示について

(1)原材料表示の現状

○ 食品衛生法やJAS法、景表法のいずれの法律においても、原材料又は原材料の一部の表示が規定されている。

○ 食品衛生法では、缶詰、食肉、ハム類、ソーセージ類、ベーコン類、加工乳及び乳製品の一部について主要な原材料等の表示を義務付けている。

○ JAS法、景表法において基準が設けられた品目については、一括して表示すべき事項の中に原材料があり、使用したすべての原材料を表示することになっている。

○ コーデックス委員会の一般基準または一般ガイドラインでは、包装された食品の原材料は原則として義務表示となっている。


(2)原材料表示に関する今後のあり方

○ 表示が望ましい具体的な事例としては、特定個人に健康危害を引き起こす可能性のあるアレルギー物質や乳糖などを含有する食品、また過剰に摂取すると健康危害を引き起こす可能性のある難消化性糖質(エリスリトール等)を含有する食品などが考えられる。

○ 現に近年、食品原料に起因するアレルギー物質等による健康危害が散見されることから、消費者がこうした危害を未然に防止することを目的として商品選択を可能にすることが必要であり、そのためには原材料表示を義務付ける必要がある。

○ 表示方法については、いわゆるJAS法、景表法における表示ばかりでなく、コーデックス委員会の一般基準または一般ガイドラインなどの国際的な表示方法も参考にしながら、食品衛生法における表示方法のあり方を、今後、さらに検討する必要がある。


4 原産国または国内産地の表示について

(1)原産国等の表示の現状

○ コーデックス委員会の一般基準または一般ガイドラインでは、包装された食品において、省略すると消費者に誤解を与える場合には、表示が必要であるとしているが、食品衛生法に基づく表示基準においては、現在、義務表示を行っている事項はない。


(2)原産国等の表示に関する今後のあり方

○ 貝類や食肉にあっては、食中毒予防の観点からのモニタリング等にもかかわらず、万一、食中毒事件等が発生した場合、生産海域表示等があれば、迅速に遡り調査が行えるとともに、被害の拡大防止対策が有効に立てられることから、国内外を問わず生産海域あるいはと畜場の名称等の表示を義務付ける必要がある。

○ 例えば、小型球形ウイルス(SRSV)に汚染されたカキを原因として食中毒が発生した場合等には、迅速に当該カキの採捕海域までの行政的な対応が行えるとともに、被害の拡大防止に資することが期待できる。


5 遺伝子組換え食品に対する表示について

(1)遺伝子組換え食品に対する表示の現状

ア. 我が国の現状

○ 遺伝子組換え食品に対する表示を求める声が高まり、この件に関する意見書や要望書が出されている。また国会の場でも議論されているが、結論は出されていない。

○ 食品表示問題懇談会遺伝子組換え食品部会(農林水産省)において、消費者の選択の観点から遺伝子組換え食品の流通実態を踏まえた表示のあり方について検討中である。

イ. 国際的な動向

1)コーデックス委員会食品表示部会における進捗状況

○ バイオテクノロジーを利用して得られた食品の表示については、昨年より議論がなされ、現段階においては、下記の2つの案について議論がなされているところであるが、結論は出ていない。

ア 従来の物と組成、栄養素、用途に関して実質的に同等でない場合には表示を行うこととし、栄養素の含量が従来の物と大きく違う場合は栄養素を、貯蔵、調整、調理の方法が従来の物と大きく違う場合は使用方法を表示する。

イ 次のいずれかに当てはまる場合には表示する。

(1) 遺伝子組換え生物であるかそれを含むすべての食品

(2) 遺伝子組換え生物により製造されているが、これを含まない食品で、自然な変動を考慮の上で十分な分析の結果、従来食品と異なると判断される場合

(3) 従来食品にはない何らかの物質が存在し、それが一部の人の健康にとって影響がある場合、また倫理的な問題の原因となる可能性のある場合

2)各国の取り組み状況

(1) 米国、カナダ

○ 既存の食品と比較して著しい成分変化があったり、アレルギーの誘発などの健康リスクが増加する場合等を除き、表示の義務付けは必要ないとしている。

(2) EU

○ 昨年5月より新規食品規則が施行され、以下の場合は表示が必要となったが、これに該当する食品は、現在のところEU域内で流通していない。

ア. 組成、栄養素、用途等に関して従来のものと同等でないもの
イ. 従来のものよりアレルギーを誘発しやすいなど特定の人々の健康にとって影響があるもの
ウ. 動物遺伝子が用いられること等によって倫理的な問題が生じるもの
エ. 野菜や果物等、生きた遺伝子組換え細胞を含む食品


(2)遺伝子組換え食品の表示に関する今後のあり方

○ 遺伝子組換え食品の表示に関する意見を総括すると、概ね、以下のようになる。

ア 表示を必要とする意見:

(1) 遺伝子組換え食品についてはその安全性について不安を抱く消費者が食品を購入する際、消費者自身の価値観に基づく判断により、選択が可能となるよう表示が必要である。

(2) 現在得られる科学的知見には限界がある。したがって、こうした食品により将来起こりうる予期せぬ影響が潜んでいる可能性は完全に否定できないことから、予防的観点から表示が必要である。

イ 表示は必要ないとする意見:

(1) 現在厚生省が行っている安全性の評価は、現在の科学的知見に基づき、既存の食品と同程度に安全であることを確認しようとするものである。したがって、安全性の観点からは、こうした確認がなされた食品に遺伝子組換え食品である旨を表示する必要はない。

(2) こうした食品に安全性の観点からの表示が必要ということであれば、遺伝子組換えでない既存の食品であっても安全性の観点から何らかの表示をさせない限り規制のバランスを失うこととなる。

○ 安全性が確認された食品の表示については、現時点での結論は出ていないが、この問題の関心の高さや安全性の評価に対する理解が十分に得られていないことに鑑み、今後、さらに検討する必要がある。

○ 一方、安全性について既存の食品と同程度と見なし得ない食品の場合は、現在のところ市場に出されていないことから、直ちに何らかの対応をとる必要はないが、将来こうした食品が出現する可能性が否定できないことから、今後、現行の安全性評価指針の適用範囲等その内容を見直す必要性について検討するとともに、公衆衛生上の観点からの新たな表示制度が必要かどうかについても、さらに検討する必要がある。

○ 現在のところ、遺伝子組換え食品であるか否かを確実に判定する検査方法は開発されていない。検査方法の確立が表示義務を課すための前提条件となるわけではないが、遺伝子組換え食品について消費者の間に不安がある現状においては、表示の信頼性を確保することが求められることから、検査方法等の技術的事項についての研究を推進する必要がある。

○ なお、遺伝子組換え食品に関しては、遺伝子組換え技術に対する一般国民の理解度により、社会的受容(パブリックアクセプタンス)が大きく左右されることから、遺伝子組換え食品の安全性やその技術について、今後とも広く一般国民へ情報提供するとともに、消費者、企業、行政等関係者による意見交換をする場を設けるなど、相互理解に努める必要がある。


6 その他の表示について

(1) 製造所固有記号について

ア 製造所固有記号表示の現状

○ 製造所所在地、製造者氏名の表示については、次の場合において、予め厚生大臣に届け出た製造所固有の記号の記載による例外的な表示方法が認められている。

(1) 製造所所在地の代わりに製造者の住所をもって記載する場合
(2) 製造所所在地及び製造者の氏名の代わりに販売者の住所及び氏名をもって記載する場合

○ 製造所固有記号の届出は、前項の(1)の場合には製造者の住所地を管轄する都道府県を、一方、前項の(2)の場合には製造所の所在地を管轄する都道府県をそれぞれ経由するため、製造者の住所地と製造所の所在地が異なる場合にあっては、都道府県はその全容を把握することが困難となる。
 このため、国に対し状況を照会する場合が生じるが、国には年間約1万5千件の届出があり、国における迅速な照会対応には限度がある。


イ 製造所固有記号表示に関する今後のあり方

○ 製造所固有記号に対する照会については、製造者名、製造所所在地を販売業者に問い合わせれば済むことから制度そのものを廃止するのがよいとの意見がある一方、照会に対し速やかに回答できるシステムを構築し対応を図るべきであるとの意見もある。

○ これらの意見については、制度自体の必要性に関する議論を深めることが不可欠との考えから、今後、さらに検討する必要がある。


(2) 器具・容器包装における表示基準の設定について

ア 器具・容器包装表示基準の現状

1) 国内の現状

○ 食品衛生法においては、公衆衛生の見地から、販売の用に供し、若しくは営業上使用する器具または容器包装に、規格若しくは基準が定められた場合には、必要な表示の基準を定めることができることになっているが、現状では、表示の基準を定めてはいない。

○ なお、他の法令として、家庭用品品質表示法第3条の規定に基づく合成樹脂加工品品質表示規程により、「原料として使用する合成樹脂の種類、取扱い上の注意等」については合成樹脂加工品に表示すべき事項とされており、また、製造業者ではないが、表示者については、「表示した者の氏名又は名称、住所及び電話番号」、または「通商産業大臣の定めるところによりその承認を受けた番号」により表示に付記すべきことが遵守事項として定められている。

2) 諸外国の状況

○ 諸外国においても公衆衛生の見地から食品用器具・容器包装への表示義務を課しているとの情報は承知していない。

○ コーデックス委員会においても、器具・容器包装の表示義務は定められておらず、また、米国においても同様に、器具・容器包装への義務付けはされていない。

イ 食品衛生法上の表示の義務化に関する今後のあり方

○ 食品衛生法上の表示義務に関しては、食品そのものに由来する食中毒とは異なり、現状においてはプラスチック製の食品用器具・容器包装そのものによってヒトの健康に重大な影響を与えるとの科学的な報告もないことから、一般の食品に必要とされる表示の観点とは性格が異なり、その必要性は一般に低いものと考えられる。


III 中間報告書をまとめるに当たって

○ この中間報告書は、当表示特別部会において、主に健康危害の防止という観点から、食品における表示のあり方全般について検討を行った結果、一定の方向性が得られた事項について、その方向性や今後さらに検討すべき課題を取りまとめたものである。

○ 本報告書において、一定の方向性が得られた事項については、食品衛生行政の的確かつ迅速な対応を図るためにも、細部についての詳細な検討を経て、できる限り速やかに実施を図るべきである。

○ なお、今後さらに検討する必要があるとされた継続課題については、引き続き当部会において、主に健康危害の防止という観点から、表示の持つ意味をも含めて総合的に検討していくこととする。



食品衛生調査会 表示特別部会委員名簿

  粟飯原景昭 大妻女子大学 家政学部教授
  五十嵐 脩 お茶の水女子大学 生活環境研究センター長
  大井 玄 国立環境研究所長
  小沢理恵子 日本生活協同組合連合会
くらしと商品研究所所長代理
  熊谷 進 国立感染症研究所 食品衛生微生物部長
  小林 修平 国立健康・栄養研究所長
  杉 伸一郎 株式会社イトーヨーカ堂
常務取締役食品事業部長
  竹中 勲 京都産業大学 法学部教授
  寺尾 允男 国立医薬品食品衛生研究所長
○  戸部満寿夫 財団法人日本公定書協会 理事
  豊田 正武 国立医薬品食品衛生研究所 食品部長
  細谷 憲政 茨城県健康科学センター長
  村上 紀子 女子栄養大学 教授
  山崎 幹夫 千葉大学 名誉教授
  和田 正江 主婦連合会 副会長

(五十音順、○は部会長)


参考資料

食品の表示に関する一般公募・参考人意見概要


 食品の表示に関する一般意見を、平成10年8月27日より9月末まで、約1ヶ月間公募した。また、第2回表示特別部会において、関係者の参考人陳述を受けた。
 それらの内容を整理すると、概ね以下のようになる。


I 全般的意見

(1)表示全般について

(検討の観点について)

・危害の防止,健康の確保・増進,商品の選択の観点からそれぞれ表示を検討すべきである。

・基本的に食品衛生上の表示に限るべきである。

・表示による情報提供とは何か。「求めるモノを選ぶ」ためから、「好まないモノを避ける」ための情報提供に対するニーズが高まっている。

・食の多様化等により、消費者の喫食の可否判断が難しくなっていることを踏まえる必要がある。

・現在の表示のあり方の議論は、遺伝子組換え食品に代表される食品の安全性に対する不安と関連している。そのような意味で、新たな科学技術の有用性や安全性について社会にわかりやすく伝達する仕組みを構築することが重要である。安全という概念についてもより一層議論を行い、安全と安心のずれの修正を図る必要がある。

・安全の確保は、PL法の施行等も踏まえれば、企業防衛の意味からも最重要課題である。表示は安全確保の重要な手段の一つであり、製造者が食品の適性に応じて自主的に対応するのが適当である。

・表示は単なる情報伝達手法ではなく、様々な社会的責務を伴うものである。表示がつまり情報開示とするのは早計である。

・市民、消費者の自己責任のもとに食品が選択されるようにすべきであり、そのような意味において、情報提供は生産者、流通業者の責務である。

・科学技術を科学的に検証することは、もはや不可能であり、「食品表示」のあり方は、「自然な状態としての食品の価値」表示を原点とすべきである。

・自らの良心や倫理に基づく表示(デメリット表示等)への転換を図るべきである。

・統一的な食品表示が必要である。


(国際化への対応について)

・コーデックス委員会を中心とした国際化の流れへの対応が必要である。また国際規格の制定等に際し、国としての意見を強く主張できる体制の整備が必要である。

(情報の受け手の教育について)

・表示という非常に限られた手段により情報を的確に伝達するために、安全性等に関する教育等を充実させ情報の受け手の理解力を向上させることも重要である。


II 個別課題に対する意見

1 注意喚起表示について

(栄養素機能表示、健康強調表示について)

・食は生活習慣病のリスク軽減に有用であり、新たに検討してもらいたい。

・定められた栄養素の栄養素機能に関する限定された表示を行うことができるようにする。

(いわゆる栄養補助食品について)

・栄養補助食品の位置付けを明確に、また特定補助食品との整合性に十分な配慮を望む。

・国際的ハーモナイゼーションの流れに乗った新しい観点を盛り込み、消費者の健康づくりに資するような食品選択を支援する観点の表示制度に改善する。

・新規食品とは何かの明確な定義の検討を期待する。

(特定保健用食品について)

・消費者に効能効果を明確に伝えるため効能効果表示を認める。

(用法・用量表示について)

・栄養素成分でも過剰摂取の問題も考えられ、食品でも用法用量の記載を認める。

(栄養価表示について)

・箱,分包毎の栄養表示が必要である。

(食品である濃厚流動食について)

・経管用途表示が規制され表示できないことになっているが、諸外国では食品としても経管用途表示及びその用途が広く認められている。経管用途表示を認めていただきたい。

(表示の必要性について)

・注意喚起の内容及びその必要性については、商品を設計する食品メーカーが判断することが妥当である。通常の摂取の場合、義務づける必要はない。

・注意喚起表示は義務付けではなく、食品製造者が食品の特性に応じて自主的に対応するのが適当である。

・脂溶性ビタミンについては,含有率の基準を設け,基準以上の含有率を含むものについては表示をすべきである。
・低カロリー糖アルコールについては,過剰摂取をすると健康上の問題が生じる恐れのあるものについては表示をすべきである。

・アルコール含有菓子類については、子供向けを考慮し、アルコール含有量が重量比で1%以上含むものについて表示をする必要がある。

・脂溶性ビタミン,糖アルコール等に義務表示が必要である。

・いわゆる健康食品や低カロリー食品を多く摂取する人が多くなり、それらの食品の中には,ビタミン含有量がおおいものや表示のないもの,低カロリー食品で過剰摂取して体調を壊す可能性のあるものが出回っているため、注意喚起をすべきである。

(表示方法について)

・特定の成分を多量に含み,過剰に摂取した場合に健康上の問題が生じる可能性のある食品については「過剰に摂取することにより,健康に障害を与えることがある。」旨、及び具体的な摂取量の目安の表示を義務付けるべきである。

・表示の際には、「大量に飲むとおなかがゆるくなる恐れがある。」といった抽象的な表現ではなく,年齢,体重を考慮した具体的な1日1回あたりの摂取限度量を表示することが望ましい。

(調理方法や使用方法表示について)

・生食用の解釈は,衛生性,鮮度,品質を尺度とすべきであり、表示の方法としては「生食可能」でよい。

・消費者の喫食可否判断も難しくなってきている。生食できないものには表示のあるものもあるが徹底していないため、生食可否表示をするか、注意喚起表示したほうが望ましい。
・危害が発生する可能性の高い食品については、消費者が理解しやすい表現で、具体的に調理方法や使用方法を表示すべきである。

(その他の意見について)

・キャビアなど通知で指導しているものについては、法制化も含め、その内容を整理するべきである。

・成分の特性等について認知度を高める必要がある。


2 アレルギー物質の表示について

(表示の必要性の有無について)

・当事者の意見をもっと尊重すべきである。

・検討課題も数多くあり、国際的議論も踏まえ対応すべきである。

・警告表示等をさらに義務づけようとする動きは、世界的にもないと承知している。

(表示方法について)

・アレルギー体質の人は、どのような食品がアレルギー症状を起こすか承知している。したがって基本的には原材料表示の問題である。

・感受性の高い人が摂取を避けられるよう原材料表示を義務付けることが望ましい。

・加工食品に全て原材料表示していれば問題はないと思われる。但しそうでない場合(外食や弁当等)については議論が必要である。

・原材料表示を正確に行うのみでよい。

・重篤な障害が生じるような食品については、ポジティブリストを作成し、含有表示をするべきである。

・含有が認識されにくいものは原材料表示のみでは不十分であり、目立つところに明記する必要がある。

・原材料名を表示するとともに、「アレルギーを起こす可能性がある。」旨の表示をすることが望ましい。


3 原材料表示について

(表示の有無について)

・個々の商品ですでに対応しており、商品特性により判断されるべきである。

・容器などの制約もあることから,任意表示でよい。

(表示の必要性について)

・近年、食品原料に起因する危害が散見されることから、消費者の商品選択を可能にし、衛生上の危害を未然に防止する意味からも、食品衛生法の中で原材料表示を義務付けることは妥当である。

・名称のみでは内容が判断できない食品が多くなっていることから、全ての食品を対象に原材料表示をすることが望ましい。

(表示の範囲について)

・基本的には,全ての原材料の表示が望ましい。

(表示方法について)

・純正さを規定した上で、原材料を的確に表示し,添加物等はデメリット表示をする。

・表示をする際には、原材料と食品添加物とを区別し品名と用途を表示する必要がある。


4 原産国表示・原産地名表示について

(表示の必要性について)

・原産国表示はすでに景表法等で規定され、個々の商品ですでに対応しているので、新たに付加する必要はない。
・国内産地表示は、食品衛生面からは任意表示でよい。

(表示の範囲について)

・ポストハーベスト農薬やダイオキシン等の議論も踏まえ、生鮮野菜、果物や魚介類をはじめ加工食品にも,可能な限り表示することが望ましい。

・国により,農薬,抗菌性物質食品添加物等の使用状況や微生物の汚染状況が異なることから,効率的な検査を行うためには,原産国,製造国が表示されている必要がある。

・生鮮野菜,魚介類など現在表示が免除されている食品についても,食品衛生法に違反する食品を市場から速やかに排除するためには,産地の表示だけでなく,生産者又は輸入者の氏名及び所在地の表示を義務付ける必要がある。

・原産国表示に加え、原産地表示も併せてするべきである。

(表示方法について)

・表示を義務付ける場合には、主原料の原産国または国内産地の明示であり,加工地表示ではない。


5 遺伝子組換え食品の表示について

(表示の観点について)

・遺伝子組換え食品に関しては、漠然とした安全性への不安感がある。
 従って、遺伝子組換え食品購入の選択が消費者自身の判断により可能となるよう、表示をするべきである。

・科学的に現在知られている事実に照らし合わせて問題がなくても、長期にわたる飲食による人体への影響、また子孫への影響に対する不安等、未知の危険が潜んでいる可能性の存在を否定できないことから、表示をするべきである。

・知ること、選択できることは基本的な権利であり、遺伝子組換え食品の選択をするための情報の開示、表示の実施は、国、企業の責任であり義務であることから、表示をするべきである。

・現在の科学的知見で既存のものと同等とみなし得る食品であると判断されるのであれば、敢えて表示する根拠はなく、表示は不要である。

(表示対象食品の範囲について)

・原材料に使用されたものも含め、遺伝子組換え食品を利用した食品全てに表示をする。

・遺伝子組換え食品について、組換えられたDNAにより生産されたたんぱく質を含む場合には,その旨を表示する。

・従来のものと組成、栄養素、用途に関して実質的に同等でない場合には表示を行い、同等である場合には表示の対象とはしない。

(表示方法について)

・従来のものと組成、栄養素、用途に関して実質的に同等でない場合には次の方法により表示を行う。
a)栄養素の含量が従来のものと大きく違う場合には、栄養表示を行う。
b)貯蔵,調理の方法が従来のものと大きく違う場合には、使用方法表示を行う。
c)従来のものよりアレルギーを誘発しやすい等で、特定の人に影響のある場合には、警告表示を行う。

・原材料、添加物が遺伝子の組換えされたもの、もしくは遺伝子の組換えされた可能性のあるものは、すべて「遺伝子の組換えされたものを含む」とし、遺伝子の組換えがされていないと明確に証明できるものに限り、「遺伝子の組換えされたものを含まない」旨を義務表示する。

・食品に使用されている遺伝子組換え食品の原材料量と添加物の使用の有無に関して表示する。

・表示を検討する場合には、肯定的な表示(使用表示)、あるいは否定的な表示(非使用表示)か、どちらを採用するかについて考慮する必要がある。肯定的表示では、遺伝子組換え成分を含む製品はすべて表示、否定的表示では、遺伝子組換え成分を含まない食品のみに「遺伝子組換え食品を含まない」の表示をする。

・遺伝子組換え食品を選択したくない消費者にとっては、遺伝子組換え食品が含まれないことが表示されることが重要であることから、栽培の段階から、遺伝子組換え作物とそうでない作物に分別し、生産者の証明書を加工から流通の最終段階に至るまでつけるという分別制度を検討する必要がある。

・表示を行う場合は、一定の基準を設定して自主的な任意表示とすべきである。

(国際的動向との整合性について)

・表示制度の導入にあたっては、CODEX委員会での審議など国際的な動向との整合性の考慮が必要である。

(安全性の評価に対する法的規制について)

・安全性は法的規制によって確保すべきであり、そのためには次の施策を行う必要がある。
a)遺伝子組換え植物の栽培は,安全性審査を経た上での許可とする。
b)遺伝子組換え食品,添加物についての「安全性評価指針」を、食品衛生法第7条に基づく「製造基準」とする。
c)「安全性評価指針」を法制化する。

・食品衛生法第4条2項の対象とする必要がある。

(分析法の開発、検査体制の整備について)

・表示が適切に機能するためには、検査方法を定め、生産される遺伝子組換え食品が表示規定を満たしていることを確認することができるように検査体制を整備する必要がある。
・「遺伝子組換え食品及びその原材料の不使用」の表示導入にあたっては、指針に適合している組換え食品のすべてについて、その保証となる分析法の開発を行う必要がある。

・食品に占める遺伝子組換え食品原材料の許容含有量を定めるかどうか、また法律で規定するかどうかについて、検討する必要がある。

(情報公開・知識の普及について)
・遺伝子組換え食品に関するパブリックアクセプタンスへの対応が不十分であったため、消費者に漠然とした不安感が残ることとなっている。従って、遺伝子組換え食品の実態や安全性評価の仕組み等についての情報開示、知識啓発が必要である。
・国を中心に遺伝子組換え技術についての知識普及を進める必要がある。


6 その他

(1)製造所固有記号について

・固有記号は,製造所所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に届け出されることから、販売者を所轄する都道府県では製造者の把握はできないため、製造者,製造所在地は表示上の販売者に照会しなければ判明しないが、食品衛生上の問題が生じた際には、製造者の特定に手間取り行政対応が遅れることがある。

・また、表示からは製造所在地を知ることはできないため、消費者も製造所所在地を誤認する結果となっている。

・従って製造所固有記号は廃止すべきである。廃止できない場合には厚生省が都道府県からの照会に速やかに回答できるシステムを作るべきである。

・製造所が自社工場を表す固有記号についても同様に廃止すべきである。


(2)表示対象食品及び表示項目の拡大について

・消費者に対する情報提供及び行政対応の円滑化のためには、生鮮食品、細切・乾燥等簡易な加工した食品を含め、すべての食品について、製造者氏名、製造所所在地、期限表示等の表示を義務づけるべきである。


(3)定義・基準の明確化について

・添加物のキャリーオーバーの規定が抽象的でその判断が非常に困難であり、含有量等により数値化するなどわかりやすい判断基準を示すべきである。

・「無添加」表示について法的な基準を明確にする必要がある。

・食品には名称を表示することとされているが、フローズンチルド食品や乳等を主要原料とする食品等には定義がないため,その取り扱いに苦慮しているものがある。これらの食品の定義を定め、定義に合致するものについてはその名称の表示を義務化すべきである。

・器具・容器包装については表示基準が定められていないが,違反品の速やかな排除等のためには、製造者氏名、製造所所在地、原料樹脂の種類,使用方法についての表示を義務付けるべきである。


(4)その他

○ 食品添加物等について

・食品容器包装材由来で食品へ移染する物質についても、「間接的食品添加物」として,現在の添加物と同様の規制対象とし,同様の表示を義務化するべきである。

・検査体制を整備するべきである。

○ 表示に関する通知等の整備について

・具体的表示の方法は表示指導要領等の通知文書により示されており、過去の通知文書,疑義照会等の全ての文書をチェックしなければ,表示の適否が判断できない。全て規則で規定し、誰もがわかりやすくすべきである。

○ 表示方法について

・表示は包装の3分の1以上の面積に9ポイント以上の大きさの活字で表示するべきである。

○ 有機農産物について

・有機栽培の表示の実施を望む。

・生産過程管理者の承認印と使用農薬の表示をするべきである。

○ 宗教食表示について

・宗教食表示を求める。

○ 品質保持期限について

・短く設定されているのではないか。実態を調査し,適切な期限の設定表示を指導するべきである。

○ 製造日年月日表示について

・製造日表示を求める。

○ リキッドスモークによる燻製品について

・リキッドスモークにより燻製した製品に表示が必要であるなら、従来の燃焼煙による燻製にも表示が必要である。


別紙2

食品衛生調査会 表示特別部会
食品の表示のあり方に関する検討 中間報告書概要


I 検討背景

○ 現行の食品における表示基準については、健康危害の発生を防止するために消費者、行政が必要とするすべての情報について、表示の義務付けが必ずしもなされていないのではないかとの指摘がある一方、規制緩和の観点から、表示についてはできる限り自主的な取組に任せるべきであるとの意見もある。また、近年の食品の表示に関する国際化の動向、整合性を十分に踏まえた対応も重要となってきており、これらを踏まえた表示対象食品の範囲や表示の項目等、表示基準の全般的な見直しが必要となってきている。

○ これらの点に鑑み、今般、食品衛生調査会に食品の表示のあり方全般を検討する「表示特別部会」を設置し、今後の表示による食品衛生上必要な情報提供のあり方等について再検討するとともに、食品衛生法の目的である健康危害の防止という観点から提言等を行うこととした。


II 現在までの議論整理及び提言

【1】総論的事項

1 食品表示制度について

○ 食品の表示規制については、企業や消費者にとってよりわかりやすいものとなるよう、食品の表示に関する各制度が調和のとれたものとなるようにすることが必要である。また、これらの規制を統一的な枠組みにより実施することの是非についても、幅広い視点から十分に議論する必要がある。

○ 国際化の一層の進展に伴い、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)を中心とした国際機関等における表示を含む国際規格の制定等への対応が重要となってきている。我が国としても、これら国際機関において合意された基準等を、迅速かつ的確に国内制度に反映させていく必要がある。また、 こうした国際会議の場において、必要に応じて我が国としての基本的考え方を明確に主張していくことが望まれる。


2 表示対象食品の範囲について

○ 近年、ますます多様な加工食品が市場に出回っており、消費者に対し、適切な表示による情報提供を行っていく必要性が高まっている。一方、従来、技術的な問題等から表示対象とされてこなかった簡易な加工食品やばら売り食品についても、表示基準を定めることができるか否かについて、表示方法等の問題を含めて、今後、さらに検討することが必要である。


3 表示の方法について

○ 高齢社会に対応した活字の大きさやスペース、色、表示場所など、より一層見やすさに配慮するとともに、表示方法のルール化についてもその必要性を含め、今後、さらに検討する必要がある。


【2】各論事項

1 いわゆる栄養補助食品や難消化性糖質の過剰摂取に対する注意喚起表示について

(1)いわゆる栄養補助食品の表示について

○ いわゆる栄養補助食品の表示については、有効性や摂取方法等の栄養強調表示と、脂溶性ビタミン等の最大摂取に関する注意喚起表示の2つの表示が考えられる。栄養強調表示については、栄養改善法に基づき、公衆衛生審議会の健康増進栄養部会において審議を行い、注意喚起表示等については、食品衛生上の危害発生防止の観点から、引き続き当表示部会で検討する。

(2)難消化性糖質の表示について

○ 難消化性糖質を一定量以上含む食品については、注意喚起表示のほか、物質毎の最大無作用量(最小作用量)、摂取目安量を示す表示のためのガイドライン等を作成し、関係業界の自主的な対応とする必要がある。


2 アレルギー物質に関する食品表示について

○ 食品中のアレルギー物質については、健康危害の発生防止の観点から、これらを含有する食品に対し、表示を義務付ける必要がある。
 表示方法については、これら食品中のアレルギー物質のポジティブリストを作成する方法、原材料名表示で対応する方法等が考えられるが、どのような方法が適当かについては、今後、さらに検討する必要がある。


3 原材料の表示について

○ 近年、食品の原材料に起因するアレルギー物質等による健康危害が散見されることから、衛生上の危害を未然に防止する観点から消費者の商品選択を可能にするため、また食品衛生上の対策を講ずる上で、食品衛生法の中で原材料表示を義務付ける必要がある。

○ 表示方法については、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律、不当景品類及び不当表示防止法における表示基準ばかりでなく、コーデックス委員会の一般基準または一般ガイドラインなどの国際的な表示方法も参考にしながら、今後、さらに検討する必要がある。


4 原産国または国内産地の表示について

○ 貝類や食肉にあっては、食中毒予防の観点からのモニタリング等にもかかわらず、万一、食中毒事件等が発生した場合、生産海域表示等があれば迅速に遡り調査が行えるとともに、被害の拡大防止対策が有効に立てられることから、国内外を問わず生産海域あるいはと畜場の名称等の表示を義務付ける必要がある。


5 遺伝子組換え食品に対する表示について

○ 遺伝子組換え食品の表示に関する意見を総括すると、概ね、以下のようになる。

ア 表示を必要とする意見:
(1) 遺伝子組換え食品についてはその安全性について不安を抱く消費者が食品を購入する際、消費者自身の価値観に基づく判断により、選択が可能となるよう表示が必要である。
(2) 現在得られる科学的知見には限界がある。したがって、こうした食品により将来起こりうる予期せぬ影響が潜んでいる可能性は完全に否定できないことから、予防的観点から表示が必要である。

イ 表示は必要ないとする意見:
(1) 現在厚生省が行っている安全性の評価は、現在の科学的知見に基づき、既存の食品と同程度に安全であることを確認しようとするものである。したがって、安全性の観点からは、こうした確認がなされた食品に遺伝子組換え食品である旨を表示する必要はない。

(2) こうした食品が安全性の観点からの表示が必要ということであれば、遺伝子組換えでない既存の食品であっても安全性の観点から何らかの表示をさせない限り規制のバランスを失うこととなる。

○ 安全性が確認された食品の表示については、現時点での結論は出ていないが、この問題の関心の高さや安全性の評価に対する理解が十分に得られていないことに鑑み、今後、さらに検討する必要がある。

○ 一方、安全性について既存の食品と同程度と見なし得ない食品の場合は、現在のところ市場に出されていないことから、直ちに何らかの対応をとる必要はないが、将来こうした食品が出現する可能性が出てくることも予想されることから、今後、現行の安全性評価指針の適用範囲等その内容を見直す必要性とともに、公衆衛生上の観点からの新たな表示の義務づけが必要かどうかについても、さらに検討する必要がある。

○ 現在のところ、遺伝子組換え食品であるか否かを確実に判定する検査方法は開発されていない。検査方法の確立が表示義務を課すための前提条件となるわけではないが、遺伝子組換え食品について消費者の間に不安がある現状においては、表示の信頼性を確保することが求められることから、検査方法等の技術的事項についての研究を推進する必要がある。

○ なお、遺伝子組換え食品に関しては、遺伝子組換え技術に対する一般国民の理解度により、社会的受容(パブリックアクセプタンス)が大きく左右されることから、遺伝子組換え食品の安全性やその技術について、今後とも広く一般国民へ情報提供するとともに、消費者、企業、行政関係者による意見交換をする場を設けるなど、相互理解に努める必要がある。


6 その他の表示について

(1) 製造所固有記号について

○ 製造所固有記号における表示のあり方については、制度自体の必要性に関する議論を深めることが不可欠であり、今後、さらに検討する必要がある。

(2) 器具・容器包装における表示基準の設定について

○ 食品そのものに由来する食中毒とは異なり、現状においてはプラスチック製の食品用器具・容器包装がヒトの健康に重大な影響を与えるとの科学的な報告もないことから、一般の食品に必要とされる表示の観点とは性格が異なり、食品衛生法上の表示義務に関しては、その必要性は一般に低いものと考えられる。


III 中間報告書をまとめるに当たって

○ この中間報告書は、当表示特別部会において、主に健康危害の防止という観点から、食品における表示のあり方全般について検討を行った結果、一定の方向性が得られた事項について、その方向性や今後さらに検討すべき課題を取りまとめたものである。本報告書において一定の方向性が得られた事項については、食品衛生行政の的確かつ迅速な対応を図るためにも、細部についての詳細な検討を経て、できる限り速やかにその実施を図るべきである。

○ なお、今後さらに検討する必要があるとされた継続課題については、引き続き当部会において、主に健康危害の防止という観点から、表示の持つ意味をも含めて総合的に検討していくこととする。


「食品の表示のあり方に関する検討」中間報告書に関する意見の公募について


 現行の食品における表示の基準については、健康危害の発生を防止するために消費者、行政が必要とするすべての情報について、表示の義務付けが必ずしもなされていないのではないかとの指摘がある一方、規制緩和の観点から、表示についてはできる限り自主的な取組に任せるべきであるとの意見もあります。また、近年の食品の表示に関する国際化の動向、整合性を十分に踏まえた対応も重要となってきており、これらを踏まえた表示対象食品の範囲や表示の項目等、表示基準の全般的な見直しが必要となってきています。
 これらの点に鑑み、今般、食品衛生調査会表示特別部会において、食品の表今後の表示による食品衛生上必要な情報提供のあり方等について再検討するとともに、食品衛生法の目的である健康危害の防止という観点から、このたび「表示のあり方に関する検討」中間報告書を取りまとめたところです。
 つきましては、表示特別部会の参考資料に資するべく、今回まとめられた中間報告書につきまして、国民の皆様方からご意見を幅広くいただきたいと考えております。


1.表示特別部会へのご意見は平成11年1月14日(木)(必着)までに下記の宛先に郵送、若しくは電子メールにてお送り下さい。
 なお、締切をすぎた後に頂いたご意見については、表示特別部会に報告できないことがありますのでご注意下さい。

宛先

〒100ー8045 東京都千代田区霞ヶ関1ー2ー2
中央合同庁舎第5号館
厚生省生活衛生局食品保健課 宛

Eメールアドレス SW-VZA@mhw.go.jp


2.ご意見には、下記の事項を見やすく記載して下さい。

【ご記載いただく内容】

ご意見、氏名(会社・団体等の場合はその名称)、年齢、性別、職業、住所


3.提出されたご意見及び氏名(会社・団体等の場合はその名称)、年齢、性別、職業、住所(郡市名まで)は、公表されることがありますのでご留意ください(新聞の投書欄と同様の取扱いです)。



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