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平成9年国民栄養調査結果の概要

I 調査の概要

1.調査の目的

 この調査は、栄養改善法(昭和27年法律第248号)に基づき、国民の食品の摂取量、栄養素等摂取量の実態を把握すると同時に栄養と健康との関連を明らかにし、広く健康増進対策等に必要な基礎資料を得ることを目的とする。

2.調査客体

 平成9年国民生活基礎調査により設定された単位区から無作為に抽出した300単位区内の世帯(約5,000世帯)及び世帯員(約15,000人)を調査客体とした。

3.調査項目

1)身体状況調査票

ア.身長、体重(満1歳以上)
イ.血圧測定(満15歳以上)
ウ.血液検査(満20才以上)
エ.1日の運動量(歩行数)(満15歳以上)
オ.問診〈喫煙、飲酒、運動〉(満20歳以上)

2)栄養摂取状況調査票

 世帯員各々の食品摂取量、栄養素等摂取量、食事状況〈欠食・外食等〉

3)食生活状況調査票

 満20歳以上を対象。生活習慣との関連の深い食事の規則性に焦点をあて、朝食欠食の習慣化、夕食のとり方等。

4.調査時期

1)身体状況:平成9年11月

2)栄養摂取状況:平成9年11月の特定の1日(日曜日及び祝日は除く)

3)食生活状況:栄養摂取状況調査と同日

5.調査方法

1)身体状況:被調査者を会場に集めて、調査員である医師、保健婦、栄養士等が測定した。

2)栄養摂取状況:調査員である栄養士が世帯毎に被調査世帯を訪問し、摂取した食品を秤量することにより実施した。

3)食生活状況:調査員である栄養士が被調査世帯を訪問し、留め置き法による質問紙調査を実施した。

6.調査系統

 調査系統は次のとおりである。
 厚生省−都道府県・政令市・特別区−保健所−国民栄養調査員


II 結果の概要

1)増える朝食の欠食,遅くなる夕食

20歳代、30歳代男性で増える朝食の欠食率。
20年前に比べて、20歳代男性で20.1%から32.9%、30歳代男性で9.2%から20.5%へと増加。

 ここ20年間の朝食欠食率の推移をみると、20歳代、30歳代男性での増加が著しい。女性はいずれの年代でもほぼ横ばいの状況である。

20歳代、30歳代男性で増える朝食の欠食率

朝食を週に2,3日以上欠食をする者は、20歳代男性で2人に1人、30歳代男性で3人に1人。欠食の始まりが「小・中・高校生から」がこのうち3人に1人。

 朝食の欠食頻度の状況をみると、週に2,3日以上欠食する者は、20歳代男性で45.0%、30歳代男性で29.9%と多く、20歳代女性でも28.0%みられる。
 欠食する者に対し、「いつごろから欠食するようになったか」尋ねたところ、20歳代、30歳代では「小・中・高校生から」という回答が3人に1人みられた。より若い時期から適正な食生活の習慣を身につけるような働きかけが必要である。

朝食を欠食する者では、夕食時刻も不規則で、その内容も偏りがち。

 朝食の欠食習慣の有無別に夕食状況をみると、「夕食時刻不規則」が“欠食あり”の者では59.0%と、“欠食なし”の者26.5%に比べて多く、「夕食後に間食多い」も“欠食あり”の者では34.3%と、“欠食なし”の者22.6%に比べて多くみられた。朝食を欠食する者では夕食も不規則で、夕食後の間食も多く、1日全体の食生活のリズムの乱れが見受けられる。また「夕食に塩分の多い食品や料理を食べる」「夕食に揚げ物多い」「夕食に野菜食べない」「夕食に主食抜き」という回答も“欠食あり”の者に多く、朝食を欠食する者では、夕食内容にも偏りがみられる。

遅くなる夕食時刻。12年前に比べ、7,8時台、9時以降の者が増加。
特に20〜30歳代男性では4人に1人が9時以降という現状。

 夕食時刻について、昭和60年と比較すると、「7,8時台」が32.9%から47.8%、「9時以降」が4.4%から11.2%へと増加し、夕食時刻が遅くなってきている。 特に夕食時刻「9時以降の者の割合」は20歳代男性で26.8%、30歳代男性で27.2%と多くみられる。

夕食時刻の変化−昭和60年との比較図

夕食時刻 9時以降の者の割合図

1日のエネルギー量に占める比率は夕食で高率。
20〜40歳代男性では1日のエネルギー量の約半分を夕食から摂取。

 1日の摂取エネルギーを朝、昼、夕食及び間食別にみると、夕食の占める割合が高い。女性より男性の方がその割合が高く、特に20〜40歳代の男性では夕食が45%前後を占め、1日のエネルギー量の約半分を夕食から摂取しており、量的に夕食に偏る傾向がみられる。

不規則な夕食。特に20、30歳代男性では、夕食時に野菜食べず、揚げ物も多いなど、内容も偏りがち。

 夕食のとり方をみると、「夕食時刻不規則」という者が20歳代男性で3人に2人、30歳代男性で2人に1人みられ、「夕食後に間食多い」という者も20歳代男性では3人に1人みられる。「夕食に揚げ物多い」「野菜を食べない」という者も、20歳代、30歳代の男性で多くみられ、この年代の男性では内容も偏りがちである。

20歳代男性で、肥満度別に夕食のとり方をみると、肥満の者では夕食後に間食をする者が多く、夕食に揚げ物や塩分が多い食品・料理を食べる者も多い

 近年男性で肥満者の割合が増加しており、20、30歳代の若い世代でもその傾向がみられる(資料P.16参照)。
 20歳代男性で、肥満度別に夕食のとり方をみると、“肥満”の者では、「夕食後に間食多い」45.3%、「夕食に揚げ物多い」51.6%、「夕食に塩分多い食品や料理を食べる」51.6%と、“普通”の者に比べ、その割合が高い。
 また、1日の栄養素摂取量をみても、“肥満”の者では脂質エネルギー比率が適正比率の上限とされる25%を超えて高率であるとともに、食塩の摂取量も高い。肥満や高血圧は、脳卒中や虚血性心疾患などの危険因子となることから、疾病予防のためには若い時期から適正な食生活を実践する必要がある。

3食のうちで最も大切にしている食事は夕食。 20、30歳代男性では3人に2人。

 3食のうちで最も大切にしている食事は、いずれの年代でも夕食をあげる者が多い。男性では20、30歳代で各々64.1%、64.8%、女性では30、40歳代で各々70.9%、69.8%と多くみられる。
 また、年齢が高くなると「3食とも」という回答も多くみられる。

食事に望むこと。朝食には手軽さ。夕食には手作り、20〜40歳代男性では好きなもの、いろいろな料理、そして家族との団らんという回答も。
女性、あるいは年齢が高くなるとともに、健康に良いが高率。

 食事に望むことは、朝食では「手軽さ」が最も高く、特に20〜40歳代でその割合が高い。一方夕食については、「手作り」が高いが、20〜40歳代男性では、「好きなもの」「いろいろな料理」が上位にみられ、夕食の比重が高くなる一因とも考えられる。夕食では「家族との団らん」が高率でみられるように、1日の終わりの食事ということで、精神的な満足感を得る場として位置づけられている側面もあるが、そのような要素も大切にしつつ、特に20〜40歳代男性では量や内容に偏りが生じないような配慮も必要である。
 女性では朝食、夕食とも「健康に良い」が上位にみられ、30、40歳代では夕食に4人に3人が「家族との団らん」をあげた。また、男女とも年齢が高くなるとともに、「健康に良い」「決まった時間」が高率でみられる。


(参考資料)

1.栄養素等摂取量について

 国民1人1日あたりの栄養素等摂取量を調査対象の平均栄養所要量に対する充足率でみると、表1のとおり、エネルギーはほぼ適正摂取であり、カルシウムを除く栄養素については所要量を上回っている。
 性・年齢階級別でみると、男性ではカルシウムが所要量を下回り、女性ではカルシウム、鉄が所要量を下回り、いずれも若い年代でその充足率が低くなっている。


表1 年齢階級別 栄養素等摂取量

  総 数 1-6歳 7-14 15-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 70歳以上
調査人数(総数) 13,289 744 1,275 864 1,699 1,488 2,029 2,019 1,644 1,527
栄養素等摂取量                    
 エネルギー kcal 2007 1407 2013 2232 2041 2111 2106 2114 2018 1743
 たんぱく質 80.5 52.5 78.3 87.4 80.4 82.3 84.4 88.2 82.9 72.4
  うち動物性 43.9 29.8 45.1 49.8 44.3 44.9 46.1 48.2 43.2 37.2
 脂質 59.3 46.2 69.4 72.2 64.7 64.8 61.6 58.5 52.4 44.2
  うち動物性 29.7 22.7 35.8 36.6 32.3 31.5 30.6 29.6 25.9 22.3
 炭水化物 273 194 265 302 272 279 282 287 287 255
 カルシウム mg 579 510 688 566 509 532 546 625 632 576
 鉄 mg 11.6 7.3 10.5 11.9 11.2 11.6 12.2 13.1 12.8 11.3
 食塩(ナトリウム×2.54/1,000) 12.9 7.4 11.4 12.7 12.3 13.1 13.8 14.5 14.2 12.8
 ビタミン A IU 2832 1724 2791 2775 2694 2838 2803 3205 3157 2784
 ビタミン B1 mg 1.19 0.78 1.22 1.36 1.22 1.21 1.23 1.26 1.19 1.04
 ビタミン B2 mg 1.43 1.15 1.59 1.54 1.38 1.42 1.43 1.53 1.46 1.29
 ビタミン C mg 135 91 129 134 127 118 132 154 160 139
穀類エネルギー比 40.6 33.7 36.7 42.6 41.9 41.6 40.9 40.0 41.6 42.2
動物性たんぱく質比 54.5 56.8 57.6 57.0 55.1 54.6 54.6 54.7 52.1 51.3
平均栄養所要量                    
 エネルギー kcal 1989 1394 2126 2357 2210 2188 2105 2023 1816 1504
 たんぱく質 65.5 42.6 73.7 72.7 66.6 66.8 66.2 66.3 65.5 61.3
 カルシウム mg 612 500 668 705 615 618 603 601 600 600
 鉄 mg 10.7 7.9 10.6 12.0 11.4 11.4 11.1 11.1 10.0 10.0
 ビタミン A IU 1821 1040 1546 1903 1919 1934 1903 1896 1895 1878
 ビタミン B1 mg 0.81 0.56 0.85 0.95 0.87 0.88 0.87 0.80 0.72 0.67
 ビタミン B2 mg 1.11 0.77 1.18 1.29 1.21 1.22 1.16 1.11 1.03 0.95
 ビタミン C mg 49 40 45 50 51 51 50 50 50 50
平均充足率%                    
 エネルギー 101 101 95 95 92 97 100 104 111 116
 たんぱく質 123 123 106 120 121 123 128 133 126 118
 カルシウム 95 102 103 80 83 86 91 104 105 96
 鉄 108 92 99 99 99 102 110 118 128 113
 ビタミン A 156 166 180 146 140 147 147 169 167 148
 ビタミン B1 148 139 144 143 140 138 142 158 164 156
 ビタミン B2 129 150 135 120 114 116 123 138 142 135
 ビタミン C 274 228 285 269 248 231 262 309 320 278


2.食品群別摂取量について

 主要食品群別の摂取量について、年齢階級別に示したのが表2である。
 15〜19、20歳代で摂取量が高いのが油脂類、肉類。一方、緑黄色野菜、その他の野菜、海草類、魚介類は、若い世代で摂取量が低く、50、60歳代での摂取量が高い。牛乳・乳製品については7〜14歳で300gを超えるが、20歳代以降は100g前後と少ない。


表2 年齢階級別 食品群別摂取量

  総 数 1-6歳 7-14 15-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 70歳以上
調査人数(総数) 13,289 744 1,275 864 1,699 1,488 2,029 2,019 1,644 1,527
穀 類 259.7 152.3 236.6 294.2 267.0 279.4 275.4 268.3 267.7 243.6
 米 類 165.4 85.4 124.6 186.2 165.9 172.6 176.1 177.9 185.0 167.8
 小 麦 類 92.2 63.6 108.9 104.7 99.0 104.4 97.7 88.6 81.3 74.7
種 実 類 2.0 2.1 0.7 1.3 1.3 1.7 2.1 2.8 2.9 2.2
い も 類 69.4 51.7 89.2 70.2 60.4 66.9 64.8 70.3 76.0 71.2
砂 糖 類 9.7 5.9 9.1 8.8 8.5 9.4 10.5 10.7 10.9 10.7
菓 子 類 24.2 35.3 35.7 31.0 24.7 19.9 23.0 20.0 20.6 19.9
油 脂 類 17.0 12.5 18.1 20.6 19.9 21.5 18.8 16.4 13.9 10.0
豆 類 70.9 39.3 61.7 55.3 58.0 62.5 74.1 84.4 89.1 83.7
果 実 類 130.8 117.2 127.3 116.1 93.9 91.7 126.6 160.5 169.3 153.0
緑黄色野菜 91.6 50.3 70.8 83.7 88.6 89.6 89.6 111.8 110.1 94.6
その他の野菜 183.5 86.7 161.0 165.2 170.3 180.8 199.0 212.9 212.4 186.3
きのこ類 13.3 6.0 8.4 12.4 13.6 12.4 14.4 16.9 15.8 12.8
海 草 類 5.2 2.2 3.7 4.4 4.4 4.7 5.4 6.6 6.4 6.2
調味し好 飲料 189.4 83.1 96.5 146.8 214.8 268.6 241.7 240.7 180.4 110.2
魚 介 類 98.2 44.6 67.1 84.7 80.9 95.4 109.6 126.8 118.8 104.5
肉 類 80.3 51.1 89.9 118.7 104.8 92.2 87.4 75.6 59.0 45.6
卵 類 40.8 31.0 42.7 51.2 41.1 45.2 43.0 41.8 38.0 32.6
牛乳・乳製品 134.8 184.9 321.5 156.5 100.4 104.7 96.5 112.1 114.6 112.6
その他の食品 5.5 5.1 6.0 9.0 7.1 7.2 5.8 4.4 3.5 3.4


連絡先:厚生省保健医療局生活習慣病対策室 
    栄養調査係(内線2344,2345)


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