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今後の水道及び水道制度の在り方を検討するに当たっての
基本的認識(中間とりまとめ)

 21世紀における水道及び水道制度の展開についてグラントデザインを行うべく、今後の水道及び水道制度の在り方を構想するとともに、その実現方法について、自由に議論し、論点を整理するに当たっての基本的認識は以下のとおりである。

(1) 現状

 水道行政は、需要者である国民の公衆衛生の向上と生活環境の改善に資することを目的としているが、その目的の達成のため、これまでは、水道の普及促進と水道水供給の量的不足の充足に主眼がおかれ、主として、供給側である水道事業等の体制を整備、向上するための施策が講じられてきた。

 また、原則として水道事業の経営主体は住民に最も身近な行政主体でもある市町村とされ、水道の給水サービスが公営企業として行われてきたことも、これらの施策の実効性の確保に大きな貢献をしてきたといえる。

 この結果、我が国の水道は昭和30〜40年代の高度経済成長期の目覚しい拡大、発展を経て、今ではほとんどの国民が水道の利便を享受でき、国民生活とは切り離すことができない身近な存在となるまでになったが、それに伴い、水道の使命も公衆衛生の向上と生活環境の改善という観点のみならず、国民生活や事業活動、都市機能を維持するための基盤施設として、社会経済活動全般にわたって多様かつ高度な機能が求められるようになってきている。

(2) 様々な課題

 水道がその使命を果たす上では、供給側の視点からみても、全国的にみれば、ほぼ需要に対応した水源が確保されているものの、渇水時等の水量の確保や水質の保全、災害等の緊急時対策といった様々な課題が残されている。

 特に水源の確保については、水需要構造が地域によって異なることに加え、水資源賦存の地域性などから、水源確保に要する費用や給水の安定性などにおける水道事業間の格差が生じざるを得ないという構造的な課題がある。さらに、近年、ダム適地の減少、開発効率の低下、さらには水源地域対策や環境保護の観点などから、新たな水源の確保は一層困難となってきている。これにより水の資源としての価値がそれだけ高まってきているともいえる。

 また、水道水の安全性を確保することは水道にとっての最重要課題であり、また、国民の関心も高い。そのためには水源水質の保全は極めて重要で、「水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律」等の制定により、一部地域での対策も進められているものの、未だ十分とは言えず、水道事業体等供給側のみの対応では問題の解決が困難であることもあり、水道事業体を困惑させている。また、有害化学物質やクリプトスポリジウムによる汚染のおそれ等に対応して、水質管理体制の強化が必要となっている。

 このような水源の量と質の問題を考える場合、水道もまた水循環系の一利用過程であることから、水循環系における水道の位置づけを明確化するとともに、水道行政及び水道制度も水循環に関わる多くの関係者、関係制度との間で協調と連携を図ることが不可欠である。その際、水循環系を全体として扱えるような制度的枠組みの必要性についても検討する必要があろう。

 なお、地形的な要因などに加え、水道事業の原則的な経営主体が市町村とされてきた結果として、中小規模の水道事業が多く、大規模な水道事業と比べて経営面や施設面といった供給体制における格差が生じるに至っているという状況も、見落とすことはできない。

 また、水道の普及が概ね行き渡った結果、今後は既に整備された施設の維持管理の重要性が増すものと考えられる。

(3) 需要者の視点

 このように様々な課題や水道事業体間の格差を内包しつつも、水道は当たり前の社会サービスとして定着し、成熟期を迎えつつあるといえる。

 また、社会に定着し、成熟段階に入った水道、ガス、電気、電気通信等の公共料金分野のサービスにおいて共通して見られるように、経済が成熟化する中で、サービスの内容・質に対する需要者の関心が高まってきている。水道の給水サービスの内容・質に関しても、需要者に対する説明や需要者の意見の反映を図る必要性が今まで以上に高まると考えられる。

 こうしたことから、前述の課題を含め今後の水道の在り方を検討するに当たっては、これまで以上に需要者側の視点に立つことが求められる。

 すなわち、水道に要求される最低限の給水サービスの水準を確保することだけでなく、需要者の多様なニーズに応じた多様な給水サービスの在り方を模索することが必要であると考えられる。

 この場合、水道の給水サービスは「需要者がサービスの供給者を選ぶことができない」という供給構造を有することから、需要者間の公平性を確保し、需要者の負担の選択の幅を拡大するという観点から、そのサービスの内容・質などを見直すべきであり、その際、サービスの内容、質の決定に関する需要者の参加を促してゆくことが重要である。

 さらに、水道が国民生活や事業活動、都市機能を維持するための基盤施設となっていることを踏まえ、需要者側の視点としては、住民や事業者といった個々の需要者としての視点に加え、需要者の集団である都市や生活圏、経済圏といった視点を併せ持つことが重要である。

(4) 社会・経済の変革への対応

 次に、社会・経済の状況に目を転ずると、経済のグローバル化等に対応しつつ、我が国の経済社会の状況は急速に変化し、行財政改革の推進に見られるような様々な変革が進められている。水道分野でも、個々の需要者と供給者を結ぶ水道の末端に位置する給水装置に関する規制緩和や、国と都道府県を中心とする水道行政における地方分権などの改革は端緒についたところであり、今後とも社会の変化に応じて改革に取り組んでいくことが求められる。この場合、国際的な競争と制度の調和という観点も重要な要素となっている。

 国際的な調和という点では、地球温暖化対策に代表される地球環境問題も、全ての人類に関わる共通の問題であり、水道においてもその視点からの取り組みが求められる。

 このほか、高齢化・少子化の進行、国・地方の財政状況の悪化、情報公開、公共料金改革、高コスト構造の是正、公と民の役割分担など、水道を取り巻く環境の変化を十分認識して検討を進める必要がある。

 特に、水道における関係者の役割分担については、水道が有する社会性を踏まえつつ、社会全体の変革の流れの中で、国、地方公共団体、民間、さらには国民も含めその在り方を検討する必要がある。

 なお、新たな対応可能性を広げるためにも、水道における技術開発、試験研究の推進を図るとともに、水道技術の承継やそのための人材の確保等も重要である。

(5) まとめ

 以上述べてきたとおり、21世紀における新しい水道及び水道制度のあり方について検討するに当たっては、水道が成熟期を迎えるという新たな段階に入ったこと、様々な課題を水道及び水道制度において抱えていること並びに水道をめぐる経済社会状況が急速に変化していることを踏まえ、これまで以上に需要者側の視点に重心をおいて、現状、課題を整理し、別紙に示す論点について、今後の方向性の提示を行っていくことが必要である。

その際、水道法の目的に明記されている「清浄にして、豊富、低廉」という水道の基本理念については、水が貴重な資源であり、近年その有限性が顕在化してきたこと等を踏まえて、その今日的意義を明確化していくことが必要になると考えられる。


(別紙)今後の水道と水道行政を検討するに当たっての論点

(1) 水道水供給の理念の明確化

 水道法に掲げられた清浄(=水質)、豊富(=水量)、低廉(=料金)という理念は、今日まで、水道の在り方を律する基本となってきた。この理念は、社会状況が変わっても維持すべき理念であるとしても、その具体的な内容や解釈については、受益者であり、また、その費用の負担者でもある需要者の要求との関係で議論されるべきである。

 そこで、まず、需要者はどのような給水サービスを期待するのかということを整理し、「清浄にして豊富、低廉」という理念の今日的意義を明確化していくことが重要である。

 ア 水質

 イ 水量

 ウ 料金

(2) 給水サービスの公平性

 水道水の水質、水量、料金、緊急時の対応等給水サービスの水準については地域間の格差があり、結果的に需要者間で不公平が生じている。このことは、例えば同一水源を利用する水道事業者間においても見受けられる。水道の給水サービスが事業単位で行われる以上、事業間である程度の格差はやむをえないとも考えられるが、需要者間の公平性の確保という点から、(ナショナルミニマムとしての)給水サービスの質に関して一定の水準を設けるべきではないか。

 そのような公平性の確保のため、以下の諸点を検討する必要がある。

 ア.水道の未普及による格差

 イ.水質、水量面での給水サービスの質(水準)の格差

 ウ.水道料金の格差

(3) 健全な水循環の確保

(4) 水道に対する市民参加

 ア 水道事業者の説明責任・情報公開

 イ 政策決定における住民意見の反映

(5) 水道における関係者の役割分担

(6) その他


問い合わせ先
  厚生省生活衛生局水道環境部水道整備課
  矢野(内線4023)


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