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生食用食肉等の安全性確保について

厚生省生活衛生局乳肉衛生課


 平成10年9月1日の食品衛生調査会委員長からの答申に基づいた「生食用食肉の衛生基準」を策定し、本日付けで各都道府県・政令市・特別区あて別紙のとおり通知した。

1 答申の概要

 生食用食肉については、検討の結果設定した「生食用食肉の衛生基準」に基づいて安全性を確保することが適当であり、加工等の方法については、今後も科学的な知見の集積を図り、その他の方法についても検討すべきである。

2 これまでの経緯

平成9年6月23日 厚生大臣より食品衛生調査会委員長に諮問
7月23日 乳肉水産食品部会開催
8月12日 第1回分科会開催
平成10年6月26日 第2回分科会開催
8月18日 乳肉水産食品部会開催
8月27日 乳肉水産食品部会長より食品衛生調査会委員長に報告
9月 1日 食品衛生調査会委員長より厚生大臣に答申
9月11日 各都道府県等に通知

3 通知の概要

(1)生食用食肉は、糞便系大腸菌群及びサルモネラ属菌陰性でなければならないこととした。

(2)生食用食肉を販売する場合には、生食用である旨の表示をすることとした。

(3)腸管出血性大腸菌O157等による食中毒の防止を図るため、各都道府県等は衛生基準に基づき、消費者への周知及び関係営業者への指導等を徹底していくこととした。


照会先
 厚生省生活衛生局乳肉衛生課
 担 当:加地(内2474)、星野(内2477)
 電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
     (直)03-3595-2337

生衛発第1358号
平成10年9月11日

改正 平成13年5月24日食発第157号

  都道府県知事
各 政 令 市 市 長 殿
  特 別 区 区 長

厚生省生活衛生局長

生食用食肉等の安全性確保について

 平成8年にレバーの生食による腸管出血性大腸菌O157による食中毒が発生したことから、同年7月22日付衛食第196号、衛乳第175号「レバー等食肉の生食について」によりレバー等食肉の生食を避けるよう消費者、関係事業者に対して指導方お願いしてきたところである。
 その後、我が国ではレバー等を生食することが国民の食生活の一部に定着していることもあり、消費者が安心してこれらを食することができるよう、平成9年6月、厚生大臣は食品衛生調査会に、安全性を確保する規格基準の設定について諮問し、本年9月1日、食品衛生調査会から答申があった。
 今般、この答申に基づいて、別添のとおり、生食用食肉の衛生基準を策定したので、今後は食中毒の発生を防止するため、これに基づき消費者、関係事業者への周知・指導について遺憾のないようお願いする。

(別 添)

生食用食肉の衛生基準

1 生食用食肉の成分規格目標

 生食用食肉(牛又は馬の肝臓又は肉であって生食用食肉として販売するものをいう。以下同じ。)は、糞便系大腸菌群(fecal coliforms)及びサルモネラ属菌が陰性でなければならない。

2 生食用食肉の加工等基準目標

(1) とちく場における加工

ア 一般的事項

 生食用食肉を出荷するとちく場においては、と畜場法施行令第1条、と畜場法施行規則第2条の2及び第2条の3の基準が確実に守られていること。

イ 肝臓の処理

(ア) 肝臓は、次の基準に適合する方法で処理すること。

(1)
 食道結さつに当たっては、頸部食道断端部分は、合成樹脂製等不浸透性の袋で被った後に結さつすること。ただし、解体処理工程上、明らかに頸部食道断端が肝臓に触れる可能性がない場合は袋で被う必要はない。

(2)
 肝臓の取り出し前に胃又は腸を取り出す場合は、消化管破損のないよう取り出すこと。消化管破損があった場合は、その個体の肝臓は生食用に供しないこと。

(3)
 肝臓の取り出し直前に、手指を洗浄し、ナイフ等の器具を洗浄消毒すること。また腹部正中線部分の表面については消毒又は汚染部分の切除を行うこと。

(4)
 肝臓の取り出しに当たっては、肝臓、手指又は器具が皮毛又は作業員のエプロン等に触れないように取り出し、直接、清潔な容器等に収め、取り出し後は速やかに冷却すること。

(イ) 肝臓は、病変、寄生虫、消化管内容物又は皮毛等が認められないこと。

(ウ) 内臓取扱室では、他の内臓(生食用でない肝臓を含む。)の取扱い場所と明確に区分し、洗浄、消毒に必要な専用の設備が設けられていること。

(エ) 内臓取扱室で、生食用の肝臓を取扱う加工台、まな板及び包丁等の器具は、専用のものを用いること。
 また、これらの器具は、清潔で衛生的な洗浄消毒が容易な不浸透性の材質であること。

(2) 食肉処理場(食肉処理業又は食肉販売業の営業許可を受けている施設をいう。以下同じ。)における加工


 生食用食肉のトリミング(表面の細菌汚染を取り除くため、筋膜、スジ等表面を削り取る行為をいう。以下同じ。)及び細切(刺身用に切分ける前のいわゆる册状にする行為をいう。以下同じ。)を行う場所は、衛生的に支障のない場所であって他の設備と明確に区分されており、低温保持に努めること。
 また、洗浄、消毒に必要な専用の設備が設けられていること。


 トリミング又は細切に用いられる加工台、まな板及び包丁等の器具は、専用のものを用いること。
 また、これらの器具は、清潔で衛生的な洗浄消毒が容易な不浸透性の材質であること。

ウ 細切するための肉塊は、次の基準に適合する方法でトリミングを行うこと。

(1) トリミングの直前に、手指を洗浄し、使用する器具を洗浄消毒すること。

(2) 肉塊を、洗浄消毒したまな板に置き、おもて面のトリミングを行うこと。

(3)おもて面をトリミングした肉塊を当該肉塊が接触していた面以外の場所に裏返し、残りの部分のトリミングを行うこと。

(4)1つの肉塊のトリミング終了ごとに、手指を洗浄し、使用した器具を洗浄消毒すること。

エ 細切は、次のように行うこと。
(1) 細切の直前に手指を洗浄し、使用する器具を洗浄消毒すること。

(2)1つの肉塊の細切終了ごとに手指を洗浄し、使用した器具を洗浄消毒すること。

オ 器具の洗浄消毒は、83℃以上の温湯により行うこと。

カ 手指は、洗浄消毒剤を用いて洗浄すること。


 手指又は器具が汚染されたと考えられる場合には、その都度洗浄又は洗浄消毒を行うこと。


 生食用食肉は10℃以下となるよう速やかに冷却すること。
 また、10℃以下となった生食用食肉は、10℃を越えることのないよう加工すること。

ケ 肉塊の表面汚染が内部に浸透するような調味等による処理を行わないこと。

(3) 飲食店営業の営業許可を受けている施設における調理

ア 生食用食肉を調理する、まな板及び包丁等の器具は、専用のものを用いること。
 また、これらの器具は、清潔で衛生的な洗浄消毒が容易な不浸透性の材質であること。


 調理は、トリミングを行った後に行うこと。トリミングの方法は、(2)のウに準じること。(あらかじめ、細切され、容器包装に収められたものを取り出してそのまま使用する場合は除く。)


 手指又は器具が汚染されたと考えられる場合には、その都度洗浄又は洗浄消毒を行うこと。

エ 器具の洗浄消毒は、83℃以上の温湯により行うこと。

オ 手指は、洗浄消毒剤を用いて洗浄すること。

カ 生食用食肉の温度が10℃を越えることのないよう調理すること。

キ 肉塊の表面汚染が内部に浸透するような調味等による処理を行わないこと。


3 生食用食肉の保存等基準目標

(1)
 保存又は運搬に当たっては、清潔で衛生的な有蓋の容器に収めるか、清潔で衛生的な合成樹脂製の容器包装に収めること。

(2)
 保存又は運搬に当たっては、10℃以下(4℃以下が望ましい。)となるよう温度管理を行うこと。なお、冷凍したものにあっては、−15℃以下(−18℃以下が望ましい。)となるよう温度管理を行うこと。


4 生食用食肉の表示基準目標

 この基準に基づいて処理した食肉を生食用として販売する場合は、食品衛生法施行規則第5条の表示基準に加えて、次の事項を容器包装の見やすい位置に表示すること。ただし、とちく場と食肉処理場が併設しており、とさつから加工処理まで一貫して行う場合は(3)を省略することが出来る。

(1) 生食用である旨

(2)
 とさつ、解体されたとちく場の所在する都道府県名(輸入品の場合は原産国名)及びとさつ、解体されたとちく場名、又はとさつ解体されたとちく場の所在する都道府県名(輸入品の場合は原産国名)及びとさつ、解体されたとちく場番号

(3)
 加工した食肉処理場の所在する都道府県名(輸入品の場合は、原産国名)及び食肉処理場名(食肉処理場が複数にわたる場合はすべての食肉処理場名)



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