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平成10年7月23日
1.化粧品規制の検討経緯
化粧品については、薬事法により、事前の承認・許可、指定成分の表示等の規制を行っているが、欧米諸国では企業の自己責任において成分名を表示して供給されている。
化粧品はそもそも人体に対する作用が緩和なものであるが、企業の製造物責任の考え方の進展と相まって、最近では重大な健康被害をもたらすおそれが少なくなってきている。こうした状況を背景に、消費者への必要な情報提供を確保しつつ規制を緩和し、欧米の規制制度との整合化を図ることにより、化粧品の国際的な流通をさらに促進し、消費者の需要の多様化に対応したより多くの選択を可能とすることが求められてきた。
本検討会は、政府の規制緩和推進計画を踏まえて、平成8年12月に設置され、我が国の化粧品規制の在り方について、消費者への情報提供の充実や消費者の安全確保に配慮しつつ検討を行い、平成9年3月31日に今後の化粧品規制の方向性と課題を中間とりまとめとして示した。
この最終とりまとめは、具体的課題についてのワーキンググループでの検討結果を踏まえ、今後の化粧品規制の在り方と具体的な取扱いについてまとめたものである。
2.今後の化粧品規制の在り方と具体的取扱い
(1)成分規制
3.今後の課題
・日米欧間での規制制度の国際調和のための活動の継続的実施
・欧米で化粧品として扱われている製品の医薬部外品からの移行
平成10年7月23日
化粧品規制の在り方に関する検討会
1.化粧品規制の検討経緯
化粧品は、我が国では安全性及び品質の確保の観点から薬事法により規制を行っており、事前の承認・許可制や指定成分の表示等が行われている。一方、欧米諸国においては化粧品は企業の自己責任において供給されるものとしつつも、消費者保護の観点から所要の規制がなされている。
我が国の薬事法では、医薬品については個別品目毎の承認と許可を必要としているが、化粧品については種別毎の包括承認・許可制を導入して手続きの簡素化を図ってきた。これは、化粧品が医薬品とは異なり、疾病の治療等の効果を期待されるものではなく、そもそも人体に対する作用が緩和なものであることなどの特性を勘案したものである。
近年、消費者の需要の多様化に対応して数多くの化粧品が次々と開発され市販されており、また、国際的商品として流通が盛んとなって輸入化粧品が増大している。その一方で、企業の製造物責任の考え方の進展と相まって、過去にみられた顔面黒皮症のような化粧品による健康被害のおそれが最近では少なくなってきている。こうした状況を背景に、消費者への必要な情報提供を確保しつつ規制を緩和し、我が国が欧米に比べ新たな製品の導入が遅れることのないよう欧米の規制制度との整合化を図ることによって、化粧品の国際的な流通をさらに促進するとともに、消費者の需要の多様化に対応したより多くの製品の選択を可能とすることが求められてきた。
本検討会は、政府の規制緩和推進計画を踏まえて、平成8年12月に設置され、我が国の化粧品規制の在り方について、消費者への情報提供の充実や消費者の安全確保に配慮しつつ検討を行ってきた。検討会では、関係者の意見を聴取しながら、化粧品の製造・輸入販売業者、消費者及び行政の関係と役割を考慮しつつ、成分規制、許可制、成分表示等について議論を重ね、平成9年3月31日の中間とりまとめにおいて今後の化粧品規制の方向性と課題を示した。
この中間とりまとめでは、消費者への情報提供を充実しつつ事前の許認可制度を簡素化することを中心としており、成分規制については配合禁止・配合制限成分リスト(ネガティブリスト)及び配合可能成分リスト(ポジティブリスト)による方式とすることで種別毎の承認制は廃止すること、配合されている全成分名を表示すること等、規制の基本的な仕組みとしては欧米と同様の規制制度への転換を示している。
この最終報告書は、中間とりまとめで指摘された具体的課題についてのワーキンググループでの4回にわたる検討の結果を踏まえ、今後の化粧品規制の在り方と新たな制度における具体的な取扱いを含めてまとめたものである。
2.今後の化粧品規制の在り方と具体的取扱い
(1)成分規制について
化粧品に配合される成分については、化粧品種別許可基準が作成され、収載成分の追加と見直しが最近はほぼ年1回行われている。この許可基準に収載されている成分のみが配合されていて基準に適合する化粧品については、承認は不要とされ、種別毎の許可のみが必要であるが、種別許可基準に適合しない成分を配合する化粧品については種別毎の承認が必要とされ、承認申請の内容について事前の審査が行われている。
一方、米国及び欧州連合(EU)では、製造物責任の考え方に従い、化粧品の安全性確保については企業の自己責任が前提となっていることから、化粧品の成分規制は、配合禁止・配合制限成分を指定する方式(ネガティブリスト方式)を基本とし、特定の成分群については配合可能成分を指定する方式(ポジティブリスト方式)がとられている。
国際的な規制の整合化を図ることによって、多様な消費者の需要に速やかに対応し、かつ、安全性を確保することを考えた場合、我が国の化粧品成分規制も、基本的には配合禁止・配合制限成分リスト(ネガティブリスト)方式による規制とすることで、種別毎の承認制を廃止するとともに、安全性に関する評価を行って慎重に取り扱う必要のある特定成分群(防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素)については配合可能成分リスト(ポジティブリスト)を作成して規制する方式によることとする。
(2)許可制について
現在、化粧品の製造業及び輸入販売業については薬事法に基づく許可制となっており、許可業者名と取扱品目は行政が把握している。また、新たな許可に際しては申請者及び責任技術者の人的要件が充たされていることに加え、製造所や営業所の構造設備が適切であるか等を薬事監視員が確認している。
構造設備や責任体制を明確にしておくことは品質を確保するためにも、また、安全性の確保を担保するためにも重要であり、製品の品質や安全性に問題があったときの対応も考慮して、製造業又は輸入販売業に関する許可制は存続させることとする。また、許可業者としての企業の自己責任を前提とすると、品質管理方法の整備による一層の品質確保への努力が必要である。
なお、種別毎の承認制の廃止に伴い、業許可における品目については構造設備と品質管理方法に着目して種別をまとめなおすべきである。
また、品質管理体制の整備など実際の品質確保の状況が進んでいくことで、構造設備や責任技術者についての要件も緩和していくことが可能になると考えられる。
(3)成分表示規制について
現在、化粧品の成分表示については、アレルギーなどの皮膚障害を起こすおそれのある成分が指定され、この指定成分に限って製品への成分名の表示が義務づけられている。一方、米国さらにはEUにおいては配合された成分の名称を全て表示する全成分表示の制度が導入されている。
成分表示については、消費者の選択や確認をより容易にするための情報を充実することが重要であることから、成分規制を配合禁止・配合制限成分リスト及び配合可能成分リストによる成分規制(ネガティブリスト・ポジティブリスト方式)に移行することにあわせ、配合成分の名称については原則として全成分表示とする。
また、成分名の表示は、消費者に理解しやすいものであると同時に、配合成分に関する情報が正確に伝わることが必要とされることから、現時点においては邦文名による記載を基本とする。
ただし、欧米ではINCI名(International Nomenclature for Cosmetic Ingredients)による成分表示が採用されており、欧米との制度の調和(ハーモナイゼーション)をより一層進めていくためにはINCI名による全成分表示の導入も検討していくことが必要と考えられる。しかしながら、現時点においては消費者や製造・輸入・販売に係わる関係者にINCI名の理解が十分進んでいる状況ではなく、また、消費者に対してINCI名から邦文名への検索と成分の内容に関する情報を提供する体制も整備されていない。このことから、INCI名による全成分表示を導入して邦文名でもINCI名でも利用可能とするためには、消費者等に対する理解の増進と情報提供体制の整備が必要であり、こうした状況の進展を踏まえて検討していくべきである。
(4)化粧品情報等について
配合禁止・配合制限成分リスト及び配合可能成分リストによる成分規制(ネガティブリスト・ポジティブリスト方式)と全成分表示等を導入するにあたり、今後とも化粧品の安全性を確保していくためには情報の収集及び提供が重要である。また、欧米との規制の調和(ハーモナイゼーション)を具体的な内容まで含めて一層進めていくためには化粧品の範囲についても今後検討していくことが必要とされる。
3.今後の課題
今回の化粧品規制の見直しは、企業の自己責任を前提として欧米との規制制度の調和(ハーモナイゼーション)を実現することを柱としている。この点から、新たな薬事法に基づく規制においては、製造物責任法とともに、企業が消費者の安全性の確保に最大限配慮して製品の開発・導入と提供に心がけることと、消費者に対して正しい情報の提供に努めることが重要であり、健康被害の未然防止の観点から最も基本的なことである。
一方、化粧品規制の具体的な内容については、米国と欧州の間でも歴史的な制度の違いがあり、こうした違いを埋めていくために、日米欧間における規制制度の調和のための活動が継続的に進められることが必要と考えられる。
また、欧米では化粧品とされているもののうち一部は我が国では医薬部外品として取り扱われている。成分分量は化粧品の範囲内であっても効能が標榜できることに着目して医薬部外品として承認を受けている場合等については、化粧品が標榜できる効能の範囲に関して今後欧米との整合化が進むことにより、化粧品として取り扱うことも可能になると考えられ、これらの点を含めた規制の見直しは今後とも必要と考えられる。
安藤 正典 | 国立医薬品食品衛生研究所環境衛生化学部長 | |
井上 達 | 国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部長 |
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翁 健 | 大阪府保健衛生部薬務課長 | |
鰍澤 照夫 | 東京都衛生局薬務部薬事衛生課長 | |
金森 房子 | 生活評論家 | |
川島 眞 | 東京女子医科大学教授 | |
栗原 政雄 | 米国商工会議所化粧品小委員会委員 | |
酒居 淑子 | 兵庫県立神戸生活科学センター所長 | |
佐藤 欣子 | 弁護士、八千代国際大学教授 | |
デビッド・アシュレー | 欧州ビジネス協議会化粧品部会委員長 | |
○ | 原田 昭太郎 | 関東逓信病院副院長 |
平田 圭子 | ジャーナリスト | |
平田 稔 | 日本化粧品工業連合会薬事法対策委員会委員長 | |
日和佐 信子 | 日本生活協同組合連合会組織推進本部本部長補佐 | |
渡辺 徹 | 日本薬剤師会専務理事 |
(○印:座長)
鰍澤 照夫 | 東京都衛生局薬務部薬事衛生課長 | |
金森 房子 | 生活評論家 | |
○ | 川島 眞 | 東京女子医科大学教授 |
栗原 政雄 | 米国商工会議所化粧品小委員会委員 | |
酒居 淑子 | 兵庫県立神戸生活科学センター所長 | |
佐藤 欣子 | 弁護士、八千代国際大学教授 | |
デビッド・アシュレー | 欧州ビジネス協議会化粧品部会委員長 | |
平田 稔 | 日本化粧品工業連合会薬事法対策委員会委員長 | |
日和佐 信子 | 日本生活協同組合連合会組織推進本部本部長補佐 | |
渡辺 徹 | 日本薬剤師会専務理事 |
(○印:座長)
第1回会合 第2回会合 第3回会合 第4回会合 |
平成9年8月25日 平成9年10月20日 平成9年12月28日 平成10年1月12日 |
照会先:医薬安全局審査管理課 植村、磯崎(内2740)
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