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卵によるサルモネラ食中毒の発生防止について


平成10年7月22日


 平成7月21日、標記について、別添のとおり、食品衛生調査会委員長(寺田 雅昭 国立がんセンター研究所長)から厚生大臣に意見具申されましたので、お知らせします。
 なお、その概要等は次のとおりです。


1  我が国における卵及び卵加工品の衛生対策の基本的な考え方

(1)生産から消費に至るまでの各段階における対策の積み重ね(from Farm to Table)が不可欠であること。

(2)我が国においては、生卵を喫食する食習慣があることから、これを前提とした衛生対策が必要であること。

(3)卵を用いる食品については、生食用の卵を除き、消費者に提供されるまでの間に、いずれかの段階で、必ずサルモネラを死滅させるための加熱工程を導入すること

(4)食品の製造者や消費者に対して、表示という手段を用いて、情報を提供すること

(5)消費者の役割を明確にすること

2  主要な衛生対策の概要

(1)殻付き卵

・食用不適卵(重度破卵、孵化中止卵)の食用禁止
・ 生食用卵の期限表示等の義務化
・ 生食用卵以外の卵を使用する食品の調理等のあたっての加熱殺菌の義務化
・ GPセンターにおける衛生管理の徹底
・ 消費者用の衛生管理マニュアルの策定
(2) 液卵
・殺菌液卵、未殺菌液卵の成分規格、製造基準等の策定
3  今後のスケジュール

 食品衛生調査会の意見具申を踏まえ、早急に省令・告示の制定等必要な行政対応を図る。


問い合わせ先 厚生省生活衛生局乳肉衛生課
   担 当 桑崎、梅田(内2473、2476)
   電 話 (代)[現在ご利用いただけません] (直)03-3595-2337


食調第49号
平成10年7月21日

厚生大臣
小泉 純一郎 殿

食品衛生調査会
委員長 寺田 雅昭

卵によるサルモネラ食中毒の発生防止について


 近年、サルモネラによる食中毒が増加傾向を示し、なかでも、サルモネラ・エンテリティディスによる食中毒が増加傾向にあること、また、原因食品については、平成6年以降、「卵類及びその加工品」が増加していること等が指摘されている。このため、昨年7月から本食品衛生調査会において卵によるサルモネラ食中毒を予防するための対策について検討を行い、今回、取りまとめたので、別紙のとおり、意見具申する。


卵によるサルモネラ食中毒の発生防止について

I はじめに

 平成9年6月3日に開催された食品衛生調査会食中毒部会食中毒情報分析分科会において、我が国における最近のサルモネラ等による食中毒に関する分析及び評価が行われた。
 平成8年の食中毒発生状況をみると、大規模に発生した腸管出血性大腸菌O157を含む病原性大腸菌に比べて、事件数及び患者数ともサルモネラによる食中毒が著しく多いこと、また、近年、サルモネラによる食中毒が増加傾向を示していること、なかでも、サルモネラ・エンテリティディス(以下、「SE」という。)による食中毒が増加傾向にあること、原因食品については、平成6年以降、「卵類及びその加工品」が増加していること等が指摘された。このため、サルモネラによる食中毒を予防するための衛生管理について、原因究明、汚染実態調査の結果等を踏まえ、必要な対策を食品衛生調査会でさらに検討する必要があるとの勧告がなされた。
 この勧告を踏まえ、食品衛生調査会に「卵によるサルモネラ食中毒の発生防止に関する分科会」が設置され、平成9年7月25日から10月30日までの間に3回の検討が行われた。その後、乳肉水産食品・食中毒合同部会及び常任委員会における審議を経て、今般、食品衛生調査会として卵及び卵加工品によるサルモネラ食中毒を防止するための対策をとりまとめた。

II サルモネラ食中毒の概要及びSEの汚染状況

1.卵及び卵加工品が原因と疑われるサルモネラ食中毒の概要

(1) サルモネラ食中毒の年次別及び血清型別発生状況は資料1のとおりである。

(2) また、平成8年度に三重県が厚生省の補助事業である地域保健推進特別事業で実施した調査「サルモネラ食中毒の防止対策」―卵関連の食中毒を防ぐために―において、昭和61年から10年間、全国の食中毒事件録等から、SEによる食中毒事件のうち鶏卵を使用した食品が原因食品として疑われた割合を調査した結果、218件の食中毒事件のうち125件、57%であったと報告している。

(3) 一方、平成4年以降の卵及び卵加工品が原因と確定され、若しくは疑われるSEの食中毒事件について、殻付き卵、液卵の別等を各都道府県等を通じて調査したところ、資料2のとおり224件の報告があった。その結果、原因食品としては、液卵に比べ殻付き卵が大部分を占めていた(201件、約90%)。
 さらに、原因施設別に事件数をみると、飲食店が71件と最も多く、以下、給食施設44件、弁当製造施設39件、家庭においても32件の発生があった。

2. 卵のSE汚染状況の概要

(1) 殻付き卵及び液卵におけるSEの汚染状況は資料3に示したとおり、平成4年の殻付き卵についての調査においては、24,000個の殻付き卵を検査し、そのうち6検体(0.03%)から、SEを検出している。

(2) 卵のSE汚染については、鶏の体内で卵が形成される段階において、卵白等が汚染されることを示す知見が得られている一方、産卵後、卵殻表面から卵内部へSEが侵入するということも認められている。さらに、SE汚染を受けた卵が、その後の温度条件と保存期間によっては、卵内のSEが増殖することも報告されている。また、いったん割卵した卵については、保管の温度条件が劣悪であれば、すみやかにSEが増殖するとの知見も得られている。

(3) 未殺菌液卵(全卵)についての調査においては、平成2年に1,370検体中55検体(4.0%)、また、平成4年に150検体中18検体(12.0%)からSEをそれぞれ検出している。

(4) なお、殺菌液卵についての調査においては、平成2年から平成3年までの284検体及び平成4年の50検体のいずれからもSEは検出されなかった。

3. このように、サルモネラによる食中毒は鶏卵の関与が大きく、サルモネラによる食中毒を防止するためには、その取扱いも非常に重要であると考えられる。

III 国際機関、諸外国における卵及び卵加工品の衛生対策の概要

1. WHOは、資料4に示したとおり、平成5年にFood safety measures for eggs and foods containing eggsを公表し、卵の衛生的な取扱いに関して、食品工場、外食産業、集団給食施設、食品の取扱従事者、消費者に次の内容を骨子とする勧告を行っている。

(1) 食品工場等は、サルモネラを殺菌する製造・調理過程を経ない食品に対しては、安全性を確保するとともに、相互汚染を防止するため、殺菌した卵の使用を検討すべきである。

(2) 食品工場等は、殻付き卵の輸送、配達及び貯蔵は、10℃以下で行うべきである。また、冷蔵が現実的でない場合には、卵生産農家、問屋及び小売り店は、できる限り新鮮な卵を供給すべきである。その場合、消費期限及び(又は)産卵日表示について検討すべきであるし、適切な取扱いや保存に関する情報についても提供すべきである。

(3) 食品取扱者は、安全確保のための処理がなされていない卵の使用にあたっては、全ての部分が70℃に達するまで加熱すべきである。
 この勧告は、高齢者、乳幼児、妊娠中の女性、免疫機能が低下している者等感受性の高い人たちにとって特に重要である。

2. また、資料4に示したとおり、英国及び独国においては、殻付き卵の表示について、期限表示を義務付けるとともに、消費者が購入後に冷蔵して保存する必要があることを表示させている。

3. 液卵については、資料4に示したとおりFAO/WHO合同食品規格委員会等においても、液卵は全て殺菌するよう製造基準を定めるとともに、製品の微生物規格としてサルモネラ陰性も規定している。

IV 我が国における卵及び卵加工品の衛生対策の基本的な考え方

 以上のことを踏まえ、本部会として卵及び卵加工品の我が国における具体的な衛生対策を提言するにあたっての、基本的な考え方は次のとおりである。

1. 卵及び卵加工品によるサルモネラの食中毒の防止については、生産から消費に至るまでの各段階における汚染防止、増殖の抑制、死滅等それぞれの対策の積重ねにより、はじめて可能となるものであること。

2. 我が国においては、生卵を喫食する食習慣があることから、これを前提とした衛生対策が必要であること。

3. 生食用の殻付き卵を除き、卵を用いる食品については消費者に提供されるまでの間に、必ずいずれかの段階でサルモネラを死滅させるための加熱工程を導入すること。

4. 食品の製造者や消費者に対して、表示という手段を用いて、適切に卵を取扱うための情報を提供すること。

5. 消費者の役割を明確にし、家庭における卵の適切な取扱い方法について積極的な啓発を行うこと。

V 具体的な衛生対策

 本部会で検討した卵及び卵加工品の具体的な衛生対策は以下のとおりである。

1.殻付き卵の衛生対策について

 別添1のとおり

2.液卵の衛生対策について

 別添2のとおり

3.家庭における卵の衛生的な取扱いについて

 別添3のとおり

VI  おわりに

 本部会が提言した卵及び卵加工品の衛生対策について、必要な準備期間を確保しつつも、できる限り早急に実施し、サルモネラ食中毒の発生防止を図るべきである。


(別添1)

殻付き卵の衛生対策について

1.生産段階における衛生対策

 以下の事項の衛生対策について、農林水産省に対し、その徹底等を要請すること。

(1) 採卵養鶏場におけるサルモネラ衛生対策の徹底

(2) 輸入ヒナの検疫強化

(3) SEワクチン等サルモネラ予防法の有効活用

(4) 卵によるサルモネラ食中毒が発生した場合の採卵養鶏場までのさかのぼり調査への協力

(5) 重度破卵、孵化中止卵の食用禁止の徹底

2.流通段階における衛生対策

(1) 重度破卵及び孵化中止卵については、食用に供しないよう、必要な措置を講じること。
 また、採卵養鶏場及び卵選別包装施設(GPセンター)においては、ひび割れ卵を生食用の卵として出荷しないこと。

(2) GPセンターにおける卵の衛生管理を徹底するため、別紙の内容による衛生管理要領を作成し、指導の徹底を図ること。

(3) 食品製造者、飲食店営業者、消費者等に対して用途別に適切に卵を取扱うようにさせるため、殻付き卵に次の事項が表示されるよう、必要な措置を講じること。

ア  生食ができる卵(消費者に対し、期限表示内はそのまま生の状態で提供できる卵)

(ア) 名称

(イ) 採卵養鶏場名及び採卵養鶏場の所在地又は選別包装を行った者の氏名(法人にあっては、その名称)及び選別包装を行った施設の所在地(輸入品にあっては、輸入業者名及び営業所所在地)

(ウ) 消費期限又は品質保持期限

(エ) 購入後は冷蔵保管する必要がある旨

(オ) 生食用である旨

イ  加熱加工用の卵(消費者に対し、最終製品として、必ず加熱してから提供することが必要な卵)

(ア) 名称

(イ) 採卵養鶏場名及び採卵養鶏場の所在地又は選別包装を行った者の氏名(法人にあっては、その名称)及び選別包装を行った施設の所在地(輸入品にあっては、輸入業者名及び営業所所在地)

(ウ) 産卵日、採卵日、格付け日、包装日、消費期限又は品質保持期限

(エ) 加熱加工用である旨

(4) また、飲食店、菓子製造業等卵を使用して食品を製造、加工又は調理する場合は、割卵後、すみやかに70℃、1分間以上、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌するよう必要な措置を講じること。
 ただし、殺菌液卵を使用する場合又は加熱加工用以外(生食用)の卵を使用して調理を行い、その食品が調理後すみやかに消費される場合は除くこととすること。
 なお、食品の製造、加工又は調理の施設においては、殻付き卵はできる限り、冷蔵して保存するとともに、将来、その流通から販売に至るまで、一貫して冷蔵することを検討すべきである。

3.消費者における衛生対策

 別添3に示した「家庭における卵の衛生的な取扱いについて」の主要な事項は以下のとおりである。

(1) 卵はきれいで、ひび割れのない、新鮮なものを購入すること。

(2) 持ち帰った卵は、すぐに冷蔵庫に入れること。

(3) 十分加熱して調理する場合のめやすは、卵黄も白身もかたくなるまで加熱することです。

(4) 卵かけご飯、すき焼き、納豆にかけるなど、卵を生で食べる場合には、破卵やひび割れ卵は使用せず、食べる直前に殻を割ること。

(5) 十分に加熱しない卵料理は、調理が始まってから2時間以内に食べること。また、加熱調理を行った卵料理についても、なるべくはやく消費すること。


(別紙)

卵選別包装施設の衛生管理要領


 卵選別包装施設(以下、「GPセンター」という。)の衛生管理にあたっては、食品衛生法第19条の18第2項に基づき、都道府県知事が定める管理運営の基準の他、次の事項について、衛生管理を行うこと。

1 原料卵の受入れ

(1)食用不適卵(腐敗卵、かび卵、重度破卵(卵殻膜が破れ液漏れをしている卵をいう。)及び孵化中止卵)、破卵、重度汚卵、軟卵が施設に搬入されることのないよう点検すること。

(2)点検の結果、食用不適卵を発見した場合にあっては、食用にしないこと。

(3)受入れに当たっては、次に掲げる事項を記録し、その記録を3ヶ月間保管すること。

ア 搬入年月日
イ 搬入量(個数又は重量)
ウ 採卵養鶏場の所在地及び氏名
エ 産卵日又は採卵日
2 原料卵の保管

(1)原料卵は直射日光の当たらない涼しい箇所に保管すること。

(2)原料卵は採卵養鶏場ごと、搬入年月日ごとに区別、整理して保管すること。

3 洗卵

(1)洗卵する場合は、洗卵前に重度汚卵、5(4)に規定するC及びD級破卵を除去すること。

(2)洗卵は、飲用適の水を用い、原則として流水式で行うこと。

(3)洗卵に用いるブラシは、清潔で衛生的なものであること。

(4)洗浄水の温度は、30℃以上、かつ原料卵の温度より5℃以上(8℃以下で保存された原料卵については、原料卵の温度より5℃以上)高くすること。

(5)洗浄水及びすすぎ水は、150ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム溶液又はこれと同等以上の効果を有する殺菌剤を用いるとともに、すすぎ水の水温は洗浄水温より5℃以上高くすること。

(6)洗浄水及びすすぎ水に水道水以外の水を用いる場合は、飲用適の水であることを年1回以上確認すること。

4 乾燥

(1)水洗した卵は、すみやかに乾燥すること。

(2)乾燥に用いるブラシは清潔で衛生的なものを使用すること。

5 検卵

(1)検卵は、営業者により、従業員のうちから「検卵責任者」として専任された者が行うこと。なお、機械により検卵する場合は、「検卵責任者」がその検卵状況を管理すること。

(2)検卵は、透過光線、その他正常卵と破卵等を的確に選別できる方法を用いて行うこと。

(3)検卵は、確実に正常卵と破卵、気室の深さ、異物混入の有無等を選別できる早さで行うこと。

(4)検卵にあたっては、原料卵を下記に掲げる区分に基づき、選別すること。

ア 正常卵
イ A級破卵:透過光線により発見されるひびが見られるもの
ウ B級破卵:卵殻が破れているが卵殻膜は破れていないもの
エ C級破卵:卵殻及び卵殻膜が破れているもの
オ D級破卵:卵殻膜が破れ液漏れしているもの
カ 汚  卵:糞又は卵液で汚染しているもの
キ 軟  卵:卵殻が未成熟なもの
ク 異物混入卵:卵内に異物が混入しているもの
ケ 血玉卵:卵黄表面に血液が付着しているもの
コ みだれ卵:卵黄がつぶれたもの。ただし、物理的な理由で卵黄がつぶれたものを除く。
(5)A級〜C級破卵並びに軟卵は、液卵又は加熱加工用として出荷すること。

(6)D級破卵、異物混入卵、血玉卵及びみだれ卵は、食用にしないこと。

(7)洗浄しても汚れの残る汚卵は、液卵又は加熱加工用として出荷すること。

6 包装

 包装(外包装)及び容器包装は、衛生的で清潔なものを用いること。包装(外包装)は原則として新箱を用いることとする。なお、やむを得えず再利用する場合にあっては、1回限りとすること。

7 表示

 以下に掲げる事項を容器包装(容器包装が小売のために包装されている場合は、当該包装(外包装)。)を開かないでも容易に見ることができるように当該容器包装又は包装の見やすい場所に記載すること。なお、やむを得ず、すでに他の卵選別包装施設が使用していた包装を用いる場合にあっては、表示内容が明確にわかるよう当該包装に表示内容を印刷した用紙を貼付する等により行うこと。

(1)生食ができる卵(消費者に対し、期限表示内はそのまま生の状態で提供できる卵)

ア 名称

イ 採卵養鶏場名及び採卵養鶏場の所在地又は選別包装を行った者の氏名
(法人にあっては、その名称)及び選別包装を行った施設の所在地(輸入品にあっては、輸入業者名及び営業所所在地)
 なお、選別包装を行った者の氏名及びその所在地を表示する場合にあっても、できる限り、採卵養鶏場名及び採卵養鶏場の所在地もあわせて表示すること。

ウ 消費期限又は品質保持期限

エ 購入後は冷蔵保管する必要がある旨

オ 生食用である旨

(2)加熱加工用の卵(消費者に対し、最終製品として必ず加熱してから提供することが必要な卵)
ア 名称

イ 採卵養鶏場名及び採卵養鶏場の所在地又は選別包装を行った者の氏名
(法人にあっては、その名称)及び選別包装を行った施設の所在地(輸入品にあっては、輸入業者名及び営業所所在地)
 なお、選別包装を行った者の氏名及びその所在地を表示する場合にあっても、できる限り、採卵養鶏場名、採卵養鶏場の所在地もあわせて表示すること。

ウ 産卵日、採卵日、格付け日、包装日、消費期限又は品質保持期限

エ 加熱加工用である旨

(3)期限表示における期限の設定にあたっては、微生物試験や理化学試験及び官能検査の結果等に基づき、科学的・合理的に行うこと。このため、関係事業者団体が作成した適切な期限表示設定のための指針を参考とすること。

8 保管及び流通

 選別包装後の卵は、できる限り低温で保存するとともに、保管から輸送に当たっても大きな温度変化を防止するため、一定の温度を維持するよう努めること。

9 施設設備の洗浄消毒

 毎日の作業終了、処理室、ブラシ、コンベア等は、洗浄及び消毒を行った後乾燥させること。


(別添2)

液卵の衛生対策について


 殺菌液卵及び未殺菌液卵については、次に示す微生物学的な成分規格や製造や保存にあたっての基準が守られるとともに、適切な表示がなされるよう必要な措置を講じること。

1.殺菌液卵

(1)成分規格

 サルモネラ 陰性/25g          

(2)製造の基準

ア  原料卵

(ア) 原料卵は、食用不適卵(腐敗卵、カビ卵、異物混入卵、血玉卵、重度破卵(卵殻膜が破れ、液漏れをしている卵をいう。)、みだれ卵(卵黄が潰れた卵をいう。ただし、物理的な理由で卵黄が潰れたものを除く。)及び孵化中止卵)を含まないものであること。

(イ) 原料卵は、正常卵、破卵、汚卵及び軟卵に選別されていること。

(ウ) 破卵、汚卵及び軟卵は、搬入後24時間以内に又は8℃以下で保存し72時間以内に割卵し、加熱殺菌すること。

(エ) 正常卵を搬入後3日以上保存する場合は、8℃以下で保存し、できるだけ速やかに割卵すること。

イ  洗卵

(ア) 汚卵は、必ず洗浄するとともに、150ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム溶液又はこれと同等以上の効果を有する殺菌剤で消毒すること。

(イ) 原料卵を洗浄する場合は、汚卵と区別して、割卵直前に飲用適の流水で行うこと。

ウ  割卵及びろ過工程

(ア) 割卵から充てんまでの工程は、一貫して行うこと。

(イ) 割卵及びろ過に用いる設備(ろ過の網を含む)は、作業終了後及び作業中に定期的に洗浄し、消毒すること。

(ウ) 割卵は洗浄し、消毒した清潔な容器及び器具類を用いて行うこと。

(エ) 機械を用いて割卵する場合は、遠心分離又は圧搾方式で行わないこと。

(オ) 誤って食用不適卵を割卵した場合は、直ちに、当該卵が混入した液卵を廃棄するとともに、割卵に用いた器具容器を洗浄消毒すること。

エ  殺菌前の液卵の貯蔵

 殺菌前の液卵は、速やかに冷却装置のある貯蔵タンクへ移し、8℃以下に冷却すること。ただし、割卵後すぐに殺菌する場合にあっては、この限りでない。殺菌前の液卵を8時間以上貯蔵する場合は、速やかに5℃以下に冷却すること。

オ  殺菌

 液卵は、次の条件又はこれと同等以上の効力を有する方法により加熱殺菌すること。

(ア)液卵(加糖又は加塩したものを除く)

a.連続式により殺菌する場合

 全卵:  60℃  3.5分間
 卵黄:  61℃  3.5分間
 卵白:  56℃  3.5分間

b.バッチ式により殺菌する場合

 全卵:  58℃  10分間
 卵黄:  59℃  10分間
 卵白:  54℃  10分間

(イ)液卵(加糖又は加塩したもの)

連続式により殺菌すること。

10%加塩卵黄:  63.5℃  3.5分間
10%加糖卵黄:  63.0℃  3.5分間
20%加糖卵黄:  65.0℃  3.5分間
30%加糖卵黄:  68.0℃  3.5分間
20%加糖全卵:  64.0℃  3.5分間

(なお、バッチ式による殺菌については、製造実態を調査の上、今後、必要な加熱条件について、検討することとする。)

カ  液卵は、加熱殺菌後、直ちに8℃以下に冷却すること。

キ  冷却後、液卵を容器包装に充填する場合は、微生物汚染が起こらない方法により、殺菌済みの容器包装に充填し、直ちに密封すること。

(3) 保存等の基準

 液卵の適切な温度管理等を行わせるため、以下の事項が遵守されるよう必要な措置を講じること。

ア  液卵は、8℃以下で保存すること。ただし、冷凍液卵にあっては、−15℃以下で保存すること。

イ  製品の運搬器具は洗浄し、消毒し、乾燥させたものであること。

ウ  製品の輸送にタンクローリーを用いる場合にあっては、当該タンクローリーは、洗浄の容易なステンレス製のタンクであって、定置洗浄装置又はこれと同等の効果を有する方法で洗浄消毒を行うこと。

(4) 表示の基準

 食品製造者等に対して用途別に適切に液卵を取扱うようにさせるため、以下の事項が表示されるよう、必要な措置を講じること。

ア  名称
イ  原材料名
ウ  製造者氏名及び製造所所在地(輸入品にあっては、輸入業者名及び営業所所在地)
エ  食品添加物名
オ  消費期限又は品質保持期限
カ  保存の方法
キ  殺菌方法
2. 未殺菌液卵

(1) 成分規格

 一般生菌数  106/g以下 

(2) 製造の基準

ア  原料卵

(ア) 原料卵は、食用不適卵(腐敗卵、カビ卵、異物混入卵、血玉卵、重度破卵(卵殻膜が破れ、液漏れをしている卵をいう。)、みだれ卵(卵黄が潰れた卵をいう。ただし、物理的な理由で卵黄が潰れたものを除く。)及び孵化中止卵)を含まないものであること。

(イ) 原料卵は、正常卵、破卵、汚卵及び軟卵に選別されていること。

(ウ) 破卵、汚卵及び軟卵は、搬入後24時間以内に又は8℃以下で保存し72時間以内に割卵し、充てんすること。

(エ) 正常卵を搬入後3日以上保存する場合は、8℃以下で保存し、できるだけ速やかに割卵すること。

イ  洗卵

(ア) 汚卵は、必ず洗浄するとともに、150ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム溶液又はこれと同等以上の効果を有する殺菌剤で消毒すること。

(イ) 原料卵を洗浄する場合は、汚卵と区別して、割卵直前に飲用適の流水で行うこと。

ウ  割卵及び充填

(ア) 割卵から充填までの工程に用いる設備は、作業の前後及び1ロットの原料卵を処理するごと、又は作業中に定期的に清掃し、消毒すること。

(イ) 割卵は洗浄し、消毒した清潔な容器及び器具類を用いて行うこと。

(ウ) 機械を用いて割卵する場合は、遠心分離又は圧搾方式で行わないこと。

(エ) 誤って食用不適卵を割卵した場合は、直ちに、当該卵が混入した液卵を廃棄するとともに、割卵に用いた器具容器を洗浄消毒すること。

(オ) 割卵から充填までの工程で、液卵の温度が上昇しないよう適切に温度管理を行うこと。

(カ) 液卵は、割卵後速やかに8℃以下に冷却すること。

(キ) 冷却後液卵を容器包装に充てんする場合は、微生物汚染が起こらない方法により、殺菌済の容器包装に充てんし、直ちに密封すること。

(ク) 凍結液卵以外の液卵の一日の製造量は、特定の使用者から注文があった数量のみとすること。

(3) 保存等の基準

 液卵の適切な温度管理等を行わせるため、以下の事項が遵守されるよう必要な措置を講じること。

ア  液卵は、8℃以下で保存すること。ただし、冷凍液卵にあっては、−15℃以下で保存すること。
イ  製品の運搬器具は洗浄し、消毒し、乾燥させたものであること。
ウ  製品の輸送にタンクローリーを用いる場合にあっては、当該タンクローリーは、洗浄の容易なステンレス製のタンクであって、定置洗浄装置又はこれと同等の効果を有する方法で洗浄消毒を行うこと。
(4)表示の基準
ア  名称
イ  原材料名
ウ  製造者氏名及び製造所所在地(輸入品にあっては、輸入業者名及び営業所所在地)
エ  食品添加物名
オ  消費期限又は品質保持期限
カ  保存の方法
キ  未殺菌である旨及び使用にあたって製造、加工又は調理工程中において必ず加熱殺菌して使用する旨


(別添3)

家庭における卵の衛生的な取扱いについて


はじめに

 卵は、良質のたんぱく質が多く、また、ビタミン、ミネラル等の各種の栄養素が含まれ、栄養価の高い食品で、我々の健康の維持・増進に大きく貢献しています。
 一方、栄養価が高いということは、その取扱いが悪ければ、食中毒を起こす細菌にとっても、自分を増殖させるための良好な環境となります。
 このため、厚生省では、卵によるサルモネラ等の食中毒を防止するため、生産から消費にいたるまで、卵を取扱う全ての人を対象とした総合的な衛生対策を推し進めることとしています。
 この「家庭における卵の衛生的な取扱いについて」も、その一環として作成したもので、家庭で卵を取扱う際に注意していただきたいポイントをまとめたものです。
 ここに示されたポイントをしっかり守っていただき、これまでどおり安心して卵料理を召し上がって下さい。

*****

ポイント1

食品の購入

○ 卵はきれいで、ひび割れのない、新鮮なものを購入しましょう。

 [参考] 卵を割って平らな皿の上に中身を置いた時、古い卵ほど、黄身は平らになり、白身は薄くなります。

○ 産卵日や包装日、期限表示がなされている卵は、日付を確認して購入しましょう。


ポイント2

家庭での保存

○ 持ち帰った卵は、すぐに冷蔵庫に入れましょう。

○ 持ち帰ってから、期限表示のある卵は期限表示内に消費しましょう。
 また、期限表示のない卵は、産卵日や包装日等を確認してできるだけ早く消費するよう心がけましょう。

○ 卵の保管は、10℃以下がめやすです。温度計を使って温度を計ると、より庫内温度の管理が正確になります。


ポイント3

下準備

○ 卵や卵の中身を入れたボウル等の容器・器具は使用した後よく洗うようにしましょう。洗ってから、熱湯をかけると安心です。

○ 卵は、料理に使う分だけ、使う直前に割って、すぐに調理しましょう。決して割ったままの状態で放置してはいけません。割卵した卵を放置すると、細菌が増殖しやすくなり、危険です。


ポイント4

調理

○ カスタードの加熱のめやすは、金属製のスプーンでかき回した時、スプーンにカスタードの薄い膜がつくまでです。

○ ゆで卵は、沸騰水で5分間以上加熱しましょう。

○ 自家製マヨネーズは材料の卵を加熱しないで使用することから、これまでいくつかの事故例が報告されています。従って、自家製マヨネーズを作る場合は、ひび割れ卵(殻にひびのある卵)は使用せず、作ったらすぐに使い切るようにしましょう。

○ 料理を途中でやめてそのまま室温に放置すると、細菌が食品についたり、増えたりします。途中でやめるような時は、冷蔵庫に入れましょう。再び、調理をするときは、もう一度、十分加熱しましょう。

○ 十分加熱して調理する場合のめやすは、卵黄も白身もかたくなるまで加熱することです。


ポイント5

食事

○ 卵かけご飯、すき焼き、納豆など、卵を生で食べる場合には、破卵(殻が割れている卵)やひび割れ卵(殻にひびがある卵)は使用せず、食べる直前に殻を割るようにしましょう。

○ 温かく食べる料理は、常に温かく、冷やして食べる料理は、常に冷たくしておきましょう。めやすは、温かい料理は、65℃以上、冷やして食べる料理は10℃以下です。

○ 十分に加熱しない卵料理は、調理が始まってから2時間以内に食べましょう。また、加熱調理を行った卵料理についても、なるべくはやく消費しましょう。

○ 老人、2歳以下の乳幼児、妊娠中の女性、免疫機能が低下している人等に対しては、生卵(うずらの卵を含む。)は避け、できる限り、十分加熱した卵料理を提供してください。


ポイント6

残った食品

○ 残った卵料理は、時間が経ち過ぎたら、思い切って捨てましょう。



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