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必要病床数等に関する検討会報告書(概要)


1.検討会の概要

○ 昭和60年12月の医療法改正により医療計画が制度化されて以来、10年余を経過した。必要病床数については、高齢化の進展、慢性疾患を中心とした疾病構造への変化、医療の質の向上に対する国民の要望の高まりなど、昨今の医療をとりまく環境の変化に対応した算定方式を検討する必要がある。

○ 本検討会では、行政改革委員会等からの提言を踏まえつつ、医療計画における一般病床の必要病床数等に関し検討するため平成9年7月に設置された。
 第3次医療法改正における医療計画の記載事項の見直しに当たっての留意すべき事項として、本年2月「必要的記載事項に関する集約意見」をとりまとめた。
 その後、「21世紀に向けての入院医療の在り方に関する検討会」における病床を区分するとの検討結果を踏まえて、必要病床数の算定方法について検討を行った。

2.必要病床数に関する基本的な考え方

(必要病床数の性格について)

○ 第3次医療法改正により、医療計画の記載事項が見直されたことから必要病床数の性格について、再検討が必要である。

(病床区分の導入に伴う必要病床数の推移について)

○ 急性期病床については、現在の平均在院日数の短縮化が促進され、慢性期病床については、治療の効率化や療養環境の充実等による長期入院の改善が図られる。

(地域間格差の是正)

○ 必要病床数の地域間格差の是正にあたっては、現行のブロック単位の考え方を改め、最終的な目標として全国統一とすることが適切である。

3.必要病床数の算定方式について

(急性期)

○ 急性期病床については、入院件数及び平均在院日数を用いる算定方式とする。

(慢性期)

○ 全体の必要病床数から、急性期病床の必要病床数を引いた数を慢性期病床の必要病床数とすることが適切と考えられる。

(全体の病床数)

○ 全体の必要病床数については、現行の算定方式を基に、入院率の地域間格差の是正については、当面、全国値に対する一定の基準値を超える都道府県値については基準値を採用し、都道府県値が基準値より低い場合は、都道府県値を採用することが適切である。

(圏域間の患者流入・流出)

○ 圏域間の患者流入・流出数については、現行の二次医療圏毎の流入入院患者数の加算、流出入院患者数の減算、1/3加算の方法を全面的に見直す。

4.病床数の適正化について

(急性期・慢性期の区分による対応)

○ 急性期病床における平均在院日数の短縮化を受けて、慢性期病床等への病床転換が図られるよう誘導することにより病床数を適正化する。

(病床資源の有効活用)

○ 休止中の病院の病床、患者数や医療従事者数に見合ってない病床などの廃止、減少を病床資源の有効活用の観点から検討する。

(情報公開の推進による対応)

○ 広告事項の拡大等情報提供をより一層推進することや、都道府県が医療計画に定めた事項の情報を提供することなどにより、患者による適切な医療機関の選択を推進する。

(計画的な推進)

○ これらの施策を適切に行うため、都道府県においては、充分な実情の把握を行い、病床数の適正化を計画的に進めるものとする。


必要病床数等に関する検討会 報告書


はじめに

○ 高齢化の進展、慢性疾患を中心とした疾病構造への変化、医療の質の向上に対する国民の要望の高まりなど昨今の我が国の医療をとりまく環境が著しく変化してきた。
 こうした中で、地域における医療需要に対応できるよう、医療機関の機能分担や業務の連携を明確にし、医療提供体制の整備を図ることや医療に関する情報提供の促進などが求められている。

○ 昭和60年12月の医療法改正により医療計画が制度化されて以来、10年余を経過した。必要病床数については、現状追認型の算定方式となっているが、昨今の医療をとりまく環境の変化に対応した算定方式を検討する必要がある。
 また、第3次医療法改正においては、医療提供施設の整備目標、医療施設間の機能分担・業務連携、救急医療、へき地医療等の確保に関する事項について、二次医療圏ごとに医療計画に必ず定めるものとされたことから、必要病床数の取り扱いについてもその基本的な考え方についての検討が必要である。

○ 特に、急性期・慢性期の病床区分については、「行政改革委員会規制緩和小委員会」の最終報告において急性期病床、慢性期病床について適正な病床となるよう現行の必要病床数の算定方式を改めること、また「与党医療保険制度改革協議会」においては急性期病床と慢性期病床とそれぞれの必要病床数を決めるよう、それぞれ指摘された。
 また、入院医療全般について検討を行った「21世紀に向けての入院医療の在り方に関する検討会」(以下「21世紀検討会」という。)においても、病床区分を考慮した必要病床数の算定方法について検討する必要があるとされた。

○ また、急速な高齢化の進展に伴う要介護者の増大に対応して、介護保険制度が創設される。これに伴い、介護が医療保険から切り離されるとともに、在宅・施設両面に渡る多様なサービスの給付が行われることとなる。
 医療計画においても、急性期・慢性期の病床区分の導入と合わせて、より一層の保健・福祉・医療の連携が求められる。

○ 本検討会は、行政改革委員会等からの提言を踏まえつつ、医療計画における一般病床の必要病床数等に関し検討するため平成9年7月に設置された。
 当検討会では、第3次医療法改正における医療計画の記載事項の見直しに当たっての留意すべき事項として、本年2月「必要的記載事項に関する集約意見」をとりまとめた。(別添資料)
 その後、「21世紀検討会」における病床を区分するとの検討状況を踏まえて、必要病床数の算定方法について検討を行い、以下のとおり意見をとりまとめたので報告する。

I.必要病床数に関する基本的な考え方

1. 必要病床数の性格について

○ 現行の必要病床数は、基本的な性格として、病床の過剰地域では増床を抑制するという性格、非過剰地域では整備の目標としての性格の両面を持っていた。

○ 第3次医療法改正により、医療計画に、医療提供施設の整備目標、医療施設間の機能分担・業務連携、救急医療、へき地医療等の確保に関する事項について定めるとされたことから、医療計画制度の性格に質的な側面が強化されることとなった。
 これに伴い、非過剰地域における必要病床数についても、整備の目標としての性格が薄れたと考えられ、その性格について、過疎地域等の必要な整備が抑制されないよう留意しつつ、再検討が必要である。

2.病床区分の導入に伴う必要病床数の推移について

○ 急性期病床については、「21世紀検討会」において、「主として、急性期医療を必要とする患者又は亜急性期医療を必要とする患者に対し一定期間の集中的な医療を提供して、患者の状態の改善を図る病床」とされ、具体的な病床の設定は、在院期間を考慮し、「急性期病床としてふさわしい平均在院日数を全国的な標準として設定することが望ましい。」としていることから、結果として現在の平均在院日数の短縮化が促進されると考えられる。このため、平均在院日数の短縮化に対応可能な必要病床数の算定方式を設定する必要がある。

○ 慢性期病床については、「21世紀検討会」において、「主として、慢性期医療を必要とする患者に対し長期間にわたり医療を提供する病床」として病床機能が明確化されることから、治療の効率化や療養環境の充実等による長期入院の改善が図られる。このため、慢性期病床についても、長期入院の改善に対応した必要病床数の算定方式を設定する必要がある。

○ このような在院日数の短縮化や長期入院の改善等に対応した必要病床数の推移を考えると、今後の急速な高齢化に伴う医療需要の増加を想定した上でも、医療計画における必要病床数については、総体として現状の病床数と同程度、またはより少なくなると考えられる。

3.地域間格差の是正

○ 現行の必要病床数の算定の基礎となる入院受療率の都道府県値については、最も低い県の約2倍を超える県があることや、必要病床数の算定に用いるブロック別入院率についても北海道、四国ブロックで高く、最も低い関東ブロックと比較して明らかな差が生じているなどの格差がある。
 医療資源の効率的な配置、医療提供の体系化を目指した医療計画の趣旨からみて、このような必要病床数の地域間格差の是正が急務である。

○ 必要病床数の地域間格差の是正にあたっては、現行のブロック値の考え方を改め、最終的な目標を全国統一値に置くことが適切である。

II.必要病床数の算定方式について

(急性期)

○ 急性期病床の区分については、在院期間を考慮し区分されること、また、急性期の患者は主に在院期間が短いことから、適切な入院件数及び平均在院日数の把握が可能であることから、両者を用いる算定方式とする。(別紙A案)平均在院日数については、直近の調査結果から、その後の変動と先に述べた平均在院日数の短縮化を考慮した上で設定する。

○ 平均在院日数については、多少の地域間格差があるものの、全体としては変動が少ない状況から全国値の採用を基本とする。また、平均在院日数が全国値より低い都道府県については、必要以上の病床数を算定することを避けるため、当面、都道府県値を採用する。

(慢性期)

○ 慢性期病床に入院する患者の平均在院日数から必要病床数を算定することが考えられるが、入院期間が長いこと、退院回数が少ないこと等、適正な平均在院日数を求めるには困難が多い。

○ また、現状における療養型病床群、老人病院、一般病院における長期入院患者等の実数値をもとに算定するといった手法が考えられる。しかしながら、急性期・慢性期の病床区分や介護保険の導入を考えると、現実の入所患者数としての意味はあるものの、慢性期病床の必要病床数としてそのままの数値を用いるのは適切でない。

○ 更に、医療計画に定めることとされた、要介護者のための療養型病床群の整備目標にその他の長期入院患者のための病床を加えて必要病床数を算定する手法や、需要の観点から介護を必要とする施設入所者のうち医療提供も必要な患者数、65歳以上で要介護でない慢性期病床入院を要すると考えられる患者数等から必要病床数を算定する手法が考えられる。

○ いずれの算定の手法についても、それぞれに長所・短所があるが、急性期病床の区分については在院期間により区分されること、また慢性期病床を算定する手法と比較して簡便であることを考慮し、全体の必要病床数から急性期病床の必要病床数を引いた数を慢性期病床の必要病床数とすることが適切と考えられる。なお、具体的な算定方式にあたっては、上に述べた算定方式と比較して検証することが必要と考えられる。

(全体の病床数)

○ 全体の必要病床数については、現行の算定方式を基に次のように改めるのが適切である。
 入院率の地域間格差の是正をしていくため、現行のブロック値に代え、当面、全国値に対する一定の基準値を超える都道府県値については基準値を採用し、都道府県値が基準値より低い場合は都道府県値を採用することが適切である。また、全国値に対する基準値については、全国平均値に、標準偏差に係数をかけたものを加えて設定する。
 更に、平均在院日数の短縮の方向性を加味して算定した病床数を全体の必要病床数とする。(別紙B案)

(圏域間の患者流入・流出)

○ 圏域間の患者流入・流出数については、現行の二次医療圏毎の流入入院患者数の加算、流出入院患者数の減算、1/3加算の方法を全面的に見直す。

○ 第3次医療法改正により、都道府県が主体となって、医療施設間の機能 分担・業務連携や機能を考慮した医療提供施設の整備について、医療計画に定め推進することを受けて、都道府県が圏域間の患者流入・流出数を算定することが適切である。

○ したがって、算定にあたっては、現行の流入加算・流出減算、1/3加算の方法に代えて、都道府県が医療計画にそって、現状の流入・流出数の範囲内で適切な数を設定する方法を採用することが適切である。

III.病床数の適正化

1. 急性期・慢性期区分による対応

○ 急性期病床における平均在院日数の短縮化を受けて、慢性期病床等への病床転換が図られるよう誘導することにより病床数を適正化する。この際、都道府県は、急性期病床の適正化の動向を十分把握し、無理なく自然な流れの中で医療計画に適応した病床の適正化を図る。

2. 病床資源の有効活用

○ 休止中の病院の病床、患者数や医療従事者数に見合ってない病床などが存在することから、これらの病床の廃止、減少を病床資源の有効活用の観点から検討する。また、開設者変更時の病床数の減少についても、病床数の適正化の観点から検討する。

3. 情報公開の推進による対応

○ 患者による適切な医療機関の選択と医療機関間の適切な連携が推進できるよう、広告事項の拡大等情報提供をより一層推進する。

○ 都道府県が医療計画に定めた医療提供施設の整備目標、医療施設間の機能分担・業務連携、救急医療、へき地医療等の情報を提供することにより、患者による適切な医療機関の選択を推進する。

○ 医療法上適正を欠く医療機関については、改善指導等の措置を行うとともに、問題のある医療機関については、監視結果を公表する。

4. 計画的な推進

○ これらの施策を適切に行うため、都道府県においては、充分な実情の把握を行い、病床数の適正化を計画的に進めるものとする。

5. 特定の病床等に係る特例による対応として、人口急増や特別な事情が認められる場合などについて、基準の明確化を図る。

おわりに

○ 我が国の医療制度について、抜本的な改革が行われようとしている中で、本検討会においては、その課題の一つである必要病床数等について、14回に渡り議論を重ねてきた。
 その結果、基本的な考え方について意見の一致が得られ、この報告書をまとめるに至った。

○ しかし、必要病床数に関し具体的に改革を進めるに当たっては、急性期病床を算定する場合の平均在院日数、全体の病床数を算定する場合の入院率の全国値に対する基準値の具体的な値や、特定機能病院など急性期医療を主として行う病院において平均在院日数が長いものがあることなどをどのように考えるのか、といった検討すべき課題が残されている。これらの課題については、医療や地域の実態も踏まえ、良質な医療提供体制の確立に資するものとなるよう、関係者が一体となって、早急かつ十分に議論がなされることを要望する。


(別 紙)

必要病床数の算定方式について(案)


A案: 急性期病床については、当該病床における入院件数、平均在院日数を用いて、次の算定方式により必要となる病床数を算出する。平均在院日数は、全国値を用いるが、平均在院日数が全国値より低い都道府県については、都道府県値を用いる。

(急性期必要病床数)= (入院件数)×(平均在院日数)
―――――――――――――――――
(病床利用率)

B案: 全体の病床数については、現行の算定方式において、入院率について全国値に対する一定の基準値を超える都道府県については基準値を採用し、都道府県値が基準値より低い場合は都道府県値を採用し、更に、平均在院日数の短縮の方向性を加味して、次の算定方式により必要となる病床数を算出する。

(必要病床数)= (現行の算定方式で、(入院率については基準値又は都道府県値)を使用して算出した必要病床数) (目標となる平均在院日数)
× ――――――――――――
(現在の平均在院日数)

注)基準値は、標準偏差に係数をかけたものを、全国平均値に加えて設定する。


必要病床数等に関する検討会委員名簿

(五十音順)

  秋 葉 保 次 日本薬剤師会常務理事
○  池 上 直 己 慶応義塾大学教授
岩 崎 栄 日本医科大学常任理事
  梅 田 昭 夫 日本歯科医師会副会長
  大 橋 謙 策 日本社会事業大学教授
  梶 原 優 日本病院会監事
  杉 崎 盛一郎  安田健康保険組合理事長
  秀 嶋 宏 全日本病院協会会長
  松 田 朗 国立医療・病院管理研究所所長
  宮 坂 雄 平 日本医師会常任理事

(注) ◎座長 、 ○座長代理


照会先:厚生省健康政策局指導課
    課長補佐 土居 弘幸(内 2559)
    課長補佐 倉本 守(内 2555)
     代 表 [現在ご利用いただけません]
     直 通 3595-2194


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