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平成10年6月22日
I.経緯
国民栄養調査の今後のあり方を検討するために、平成9年7月より「21世紀の国民栄養調査のあり方検討会」(座長:細谷憲政 東京大学名誉教授)を開催し、調査の枠組み、調査・研究との関連、調査体制等について検討してきたが、本日、報告書がとりまとめられた。
II.概要
1.基本的考え方
(1)肥満症、糖尿病、高脂血症等生活習慣との関連が深い疾病の予防が大きな課題となっている現状においては、過剰の状況をとらえる必要がある。
(2)健康・栄養状態を評価するためには、食物側の評価ばかりではなく、身体側の評価も重要である。
(3)生活習慣病対策の観点から、生活習慣全般についての把握が必要である。
(4)健康・栄養教育の充実を図るためには、健康・栄養に関する知識・態度・行動の把握が必要である。
(5)上記について、総合的に把握できる企画、解析が必要である。
2.国民栄養調査の現状と問題点
国民栄養調査は、昭和20年に諸外国からの緊急食料援助を受けるための基礎資料を得るために実施されたのが始まり。昭和47年以降、調査内容は、食物摂取状況調査、身体状況調査、食生活状況調査から構成。
現行の国民栄養調査においてみられる課題は以下のとおり。
(1)不足の問題が中心であり、過剰については十分な把握がなされていない。
(2)食物摂取、身体、食生活状況調査を一体として解析するには至っていない。
(3)生活習慣病対策の観点から、生活習慣と疾病との関連を分析する視野に立った見直しが求められている。
(4)具体的な実施にあたっては、被調査者及び調査員の負担を軽減すべく、その合理化が求められるとともに、一定の調査精度を確保するための基盤整備、調査結果の十分な解析を図るための体制が必要とされる。
3.21世紀の国民栄養調査のあり方
(1)調査の枠組みについて
(1)身体状況の把握
(3)生活習慣全般の把握
(2)行政施策及びその他の調査・研究との関連について
(3)調査体制等について
(1)調査体制の整備
(2)対象者の選定
(3)調査の名称
(4)調査の周期
(4)調査実施にあたって留意すべき事項について
(1)一定の調査精度の確保、より円滑な調査実施のための方策について
(2)調査協力を得られやすくするための方策について
(5)健康日本21(仮称)との関連について
計画策定に際しては、数値目標を設定し、施策を展開、その評価を実施することとなるので、基礎となる値の設定、目標達成度の評価を行うために、本調査は活用されるものとなる。
III.21世紀の国民栄養調査のあり方
(別紙1)「21世紀の国民栄養調査あり方検討会」名簿
(別紙2)「21世紀の国民栄養調査あり方検討会」開催経過
(参考資料1) 国民栄養調査の調査方法・項目の変遷
(参考資料2) 平成9年国民栄養調査の概要
(参考資料3) 国民栄養調査実施の流れ
今日、「生活習慣病」という新たな概念が導入され、生活習慣の改善を目指す一次予防対策の推進が求められる時代になった。これにともなって、栄養行政においても、健康づくりや疾病予防を主眼とした施策の一層の推進を図る必要性が生じてきた。
国民栄養調査も、国民の健康・栄養状態を把握する基本統計であるとともに、健康づくりや生活習慣病対策を推進していく上で、施策の決定及び実施された施策の評価を行うために必要な資料を得ることを目的とした調査であることが求められるようになってきた。
このため、今後重点的に把握の必要があるものとしては、下記の事項があげられる。
1)従来は栄養素等の欠乏を防ぐために不足の状況を把握することを中心としてきた。しかし、肥満症、糖尿病、高血圧症、高脂血症等生活習慣との関連が深い疾病の予防が大きな課題となっている現状においては、過剰の状況を把握する必要がある。
2)健康・栄養状態を評価するためには、食物側の評価ばかりではなく、身体側の評価も重要である。
3)生活習慣病対策の観点から、食生活をはじめとした身体活動、喫煙、飲酒等生活習慣全般についての把握が必要である。
4)健康・栄養教育の充実を図るためには、健康・栄養に関する知識・態度・行動の実態を把握するとともに、それらに影響を与える諸要因についても把握する必要がある。
5)健康・栄養状態の評価、生活習慣の状況、さらに知識・態度・行動等について、総合的に把握できる企画、解析が必要である。
II.国民栄養調査の現状と問題点
国民栄養調査は、昭和20年に、諸外国からの緊急食料援助を受けるための基礎資料が必要となり、GHQの指令に基づいて、東京都民を対象に実施されたのが始まりである。昭和23年には全国規模の調査となり、昭和27年には栄養改善法の制定にともない、法律に基づく調査となった。 (2)調査内容は、大きく食物摂取状況調査、身体状況調査、食生活状況調査から構成されているが、それら調査を一体として解析するには至っていない。 (3)生活習慣病対策の観点から、食生活をはじめとした生活習慣と疾病との関連を分析する視野に立った見直しが求められている。 (4)具体的な実施にあたっては、被調査者及び調査員にとって負担の大きい調査となっていることからその合理化が求められている。また、一定の調査精度を確保していくための基盤整備が必要とされるとともに、調査結果の十分な解析を図るための体制の整備が必要とされる。
1.調査の枠組みについて
調査の枠組みとして、その項目は、1)健康・栄養状態の評価としての身体状況の把握 2)食物摂取状況の把握 3)生活習慣全般の把握 4)健康・栄養に関する知識・態度・行動の把握、の4つの側面から構成する。
1)身体状況の把握
健康・栄養状態の評価には、身体計測値や生理学的指標、生化学的指標等が用いられる。これらは、栄養状態の評価における潜在性の欠乏状態や過剰状態の指標として、生活習慣病との関連では各種疾病の有病率、疾病の危険因子の指標として活用される。なお、検査項目については、企画段階で十分精査する必要がある。
2)食物摂取状況の把握
・食物摂取状況においては、栄養素、食品等の摂取量を把握する。
・外食や加工食品の利用の増加、被調査者の負担等から、食材料の秤量回答が困難になってきていることから、1回当たりに摂取される料理及び食品の量等に関するデータの収集・整備を図る。
・エネルギー及び栄養素等の過剰摂取や摂取不足の者の割合を把握するには、現行の食物摂取状況調査が1日であることを踏まえ、補完的な研究を実施することにより明らかにする必要がある。
3)生活習慣全般の把握
(1)食生活の把握
(2)身体活動の把握
(3)喫煙、飲酒等生活習慣の把握
4)健康・栄養に関する知識・態度・行動の把握
健康・栄養教育をより効果的に実施し、その効果を評価するために、健康・栄養に関する知識・態度・行動の実態を把握するとともに、それらに影響を与える社会環境等諸要因について把握する。
2.行政施策及びその他の調査・研究との関連について
・国民栄養調査は栄養施策の決定に必要な情報や資料を得るものであり、栄養所要量、食生活指針の策定等と関連させ、栄養施策の推進を図るとともに、食生活指針や後述の「健康日本21(仮称)」等の到達状況を経年的に評価するために活用を図る。
・栄養・食生活と疾病に関するコホート研究など疫学的研究をはじめ、栄養学に関する基礎的研究、健康指標の開発や各種調査手法に関する研究、行動変容に関する行動科学的研究、身体活動や休養等と健康に関する研究等は、別途研究としてその推進を図る必要がある。またこれら各種調査研究の成果について、健康・栄養施策に積極的に活用することが重要である。
・調査によって得られたデータについては、健康づくり、生活習慣病対策の観点から国として十分な解析を行うとともに、プライバシーの保護、データ管理等十分に考慮した上で、食品保健など他の行政分野や研究分野においてデータの有効活用が図れるような体制の整備を検討する。
・本調査の実施とともに、都道府県等においては地域の健康・栄養に関する課題に照らしながら、調査や健康づくり事業の推進が図れるよう、本調査の企画、調査内容及び調査結果等、本調査に関する情報の提供及び共有化を図る。
3.調査体制等について
1)調査体制の整備
・調査の企画、解析を充実させるためには、検討委員会を設けるなど、十分な検討が行えるような体制の整備が必要である。また、国立健康・栄養研究所の協力を得て、正確かつ速やかに集計結果の公表を行う。
・結果の詳細な分析や調査項目の妥当性についての検証等は研究機関において継続的に行う。
2)対象者の選定
・調査対象者数については、調査項目及び解析方法を踏まえ、統計学的検討を含めた見直しを行い、調査対象者数の拡大についても検討を加える。
・特に、高齢者、乳幼児等については、食生活上の問題により、栄養素摂取の不足や偏りがもたらされ、潜在的な栄養欠乏状態に陥る危険性が高いので、このような対象についても十分解析できるような調査設計を行う。
3)調査の名称
現行の「国民栄養調査」は、栄養改善法に基づき、栄養改善の方途を講ずる基礎資料を得るために実施している調査として位置づけられているが、「健康・栄養調査」等、健康づくり、生活習慣病対策の中で本調査が果たすべき役割にふさわしい名称に変更する。
4)調査の周期
近年の調査結果をみると、食物摂取状況等の傾向に著しい変化は見受けられず、毎年の実施でなくても、その動向は把握できるものと考えられる。なお、調査周期を仮に3年とすれば、調査実施年の前後の年に調査の企画及び解析を行うなど、調査の質の向上にも寄与できる。ただし、緊急に把握すべき課題が生じた場合には、周期にとらわれず臨時的に調査を実施する必要がある。
昭和40年代後半になると栄養不足は著しく改善され、一方で栄養素摂取の偏りによる問題が生じるようになり、昭和47年に栄養審議会の答申を得て、食物摂取状況調査とともに、身体状況調査においては医学的観点からの調査内容の充実、食生活状況調査の導入を図り、現在に至っている。平成元年からは健康づくり施策のデータとして活用されるべく、運動量の測定、血液検査等が加えられ、更に平成7年から食物摂取状況調査に個人単位の調査を導入したことにより、各世代での特徴を把握することができるようになった。
しかしながら、現行の国民栄養調査においては、次のような課題が見受けられる。
III.21世紀の国民栄養調査のあり方
健康・栄養状態についての身体側、食物側からの評価と、生活習慣の状況や知識・態度・行動に関するデータが有機的に活用されるべく、十分な企画、解析を行う必要がある。また、今後必要とされる調査項目については、どのぐらいの周期をもって把握すべきか、総合的に見直していく必要がある。
足立 己幸 | (女子栄養大学教授) | |
池戸 重信 | (東京農林水産消費技術センター所長) | |
上島 弘嗣 | (滋賀医科大学教授) | |
梶本 雅俊 | (国立公衆衛生院栄養生化学部公衆栄養室長) | |
葛谷 英嗣 | (国立京都病院臨床研究部長) | |
○ | 小林 修平 | (国立健康・栄養研究所所長) |
坂本 元子 | (和洋女子大学教授) | |
白倉 克之 | (国立療養所久里浜病院院長) | |
高石 昌弘 | (大妻女子大学教授) | |
田中 平三 | (東京医科歯科大学教授) | |
田辺 穣 | (愛知県衛生部技監) | |
豊田 正武 | (国立医薬品食品衛生試験所食品部長) | |
中村 丁次 | (聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院栄養部長) | |
◎ | 細谷 憲政 | (東京大学名誉教授) |
山口 直人 | (国立がんセンターがん情報研究部長) | |
渡辺 昌 | (東京農業大学教授) |
回 次 | 開 催 日 | 検 討 内 容 |
第1回 | 平成9年 7月 7日 | 国民栄養調査の現状と問題点について |
第2回 | 9月16日 | 国民栄養調査の今後のあり方について |
第3回 | 11月 4日 | 〃 |
第4回 | 平成10年2月 4日 | 〃 |
第5回 | 4月 9日 | 報告書(素案)について |
第6回 | 6月16日 | 報告書(案)について |
厚生省保健医療局生活習慣病対策室 照会先:大谷,上家,河野 内 線:2343,2346,2344 電 話:[現在ご利用いただけません](代表)
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