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10.2.13
1 これまでの検討経緯等
21世紀初頭における食品保健行政の進め方について検討を行うため、平成9年11月12日、食品衛生調査会常任委員会に「今後の食品保健行政の進め方に関する検討会(座長 寺尾允男国立医薬品食品衛生研究所長)」(以下、「検討会」という。)が設置された(趣旨は別紙1ー1)。検討会は、これまで5回の審議を重ねてきたが、このほど、別添の報告書骨子(案)がとりまとめられた(骨子本文は別紙1ー2)。
食品保健は国民生活と関係が深いことから、今回、検討会において報告書骨子(案)を公表し、国民から広く意見を募ることとされている(募集の要領は別紙2)。
今後、検討会において、報告書骨子(案)に寄せられた意見も検討し、報告書が作成される予定である。
【これまでの検討状況】
第1回 | 平成 9年11月12日(水) | (常任委員会・検討会合同会議) |
第2回 | 12月 1日(月) | (検討会) |
第3回 | 12月26日(金) | (検討会) |
第4回 | 平成10年 1月21日(水) | (検討会) |
第5回 | 2月 4日(水) | (検討会) |
第6回 | (予定) 3月20日(金) | (検討会) |
2 報告書骨子(案)の概要
1)食品保健についての現状認識
食品保健行政の使命は飲食に起因する健康被害の未然防止、健康被害発生時の迅速的確な被害拡大防止、及び、その教訓を再発防止に生かすことにより、国民の公衆衛生を維持増進することを使命としている。
平成8年の腸管出血性大腸菌O157の発生等、新たな問題点に対応するためには、食品保健行政を再点検し、その充実強化を図る必要がある。平成7年、食品の安全性に関する問題の多様化、輸入食品の著しい増加、国民栄養摂取状況の変化などに対応して法改正が行われたところであるが、最近の食品の安全性をめぐり、
2)戦略の視点及び具体策
(1)新たな健康危機の管理と食中毒対策
【具体的施策】
(2)新しい食品と輸入食品の安全対策
【具体的施策】
【具体的施策】
(4)情報公開と消費者教育
【具体的施策】
(5)調査研究の推進
【具体的施策】
3 今後の予定
今後、検討会において、国民から提出された意見も検討し、報告書が作成される予定である。
なお、厚生省では、最終報告書を受けて、さらに食品衛生調査会において具体的な検討が必要な事項については、食品衛生調査会の各部会において検討頂き、それらを踏まえて必要な施策を行う予定である。
別紙1-1 |
1 検討の趣旨
食品保健行政は、保健医療行政とともに、食品による感染症の発生や蔓延、有害物質による健康被害などを防止し、国民の生命・健康の維持増進を目的としている。
21世紀を迎えるに当たって、腸管出血性大腸菌O157や狂牛病などの新興再興感染症、ダイオキシン類などの化学物質による健康影響など健康危機への対応、遺伝子組換え食品などの新しい食品の開発等による健康被害の防止、食肉や野菜などの安全性の確保のための生産から食卓までの衛生管理の必要性など、平成7年の食品衛生法改正以降顕在化した種々の問題点に的確に対応し、今後とも所期の目的を達成するため、食品保健行政の進め方について今一度検討する必要がある。
このため、食品衛生調査会常任委員会において、食品衛生上の新たな課題を整理し、今後の食品衛生行政の課題及びそのために必要な施策をとりまとめ、その結果を受けて21世紀初頭における食品衛生に関する総合的な戦略を作成し、今後の食品保健行政の基本的な道しるべとすることとした。この具体的な審議のため、食品衛生調査会常任委員会に今後の食品保健行政の進め方に関する検討会を設置するものである。
2 今後の食品保健行政の進め方に関する検討会委員(別紙1-1-1)
伊東 信行 | 名古屋市立大学学長 | |
岩田 三代 | 日本経済新聞社編集局生活家庭部次長 | |
大塚 栄子 | 北海道大学薬学部教授 | |
加倉井 弘 | NHK解説委員 | |
熊谷 進 | 国立感染症研究所食品衛生微生物部長 | |
小池 麒一郎 | 日本医師会常任理事 | |
小林 修平 | 国立健康・栄養研究所長 | |
○ | 寺尾 允男 | 国立医薬品食品衛生研究所長 |
戸部 満寿夫 | 財団法人日本公定書協会理事 | |
日和佐 信子 | 日本生活協同組合連合会組織推進本部部長補佐 | |
丸山 務 | 麻布大学環境保健学部教授 | |
柳川 洋 | 自治医科大学教授 | |
山崎 修道 | 国立感染症研究所長 | |
山崎 幹夫 | 千葉大学名誉教授 | |
和田 正江 | 主婦連合会副会長 |
(五十音順 ○印:座長)
(別紙1-1-2)
○ 新たな健康危機の管理と食中毒対策
(1)課題
O157、サルモネラ、サイクロスポーラ、クリプトスポリジウム、ダイオキシン類等
(2)必要な施策
○ 新しい食品と輸入食品対策
(1)課題
遺伝子組換え食品の開発、栄養補助食品の増加、輸入食品の増加、アレルギー患者の増加
(2)必要な施策
○ 生産から食卓までの衛生管理
(1)課題
製造者、流通業者及び消費者による衛生管理の徹底、施設対策
(2)必要な施策
別紙 1-2 |
平成10年2月13日
食品衛生調査会常任委員会
今後の食品保健行政の進め方に関する検討会
(目 次)
1 新興・再興感染症等の健康危機の顕在化
2 食品中化学物質による健康影響への懸念
3 新しい食品の開発と国際的な食品流通の活発化
4 食品衛生管理における消費者・企業・政府の役割分担
1 新たな健康危機の管理と食中毒対策
2 バイオテクノロジー応用食品や輸入食品等の安全性対策
3 生産から食卓までの衛生管理
4 情報公開
5 国際協力と国際貢献
(1)発生時の即応体制の強化
(2)食中毒発生情報の公表
(3)原因究明の強化
(5)危険度(リスク)評価手法の確立及び科学に立脚した食品の安全確保対策の推進
(6)食品中化学物質の安全対策の推進
(1)バイオテクノロジー応用食品対策
(3)輸入食品対策
(1)農場における対策
(2)水産食品に対する対策
(3)と畜場、食鳥処理場等における対策
(4)食品製造・加工施設等の対策
(5)大量調理施設の対策
(6)消費者教育と家庭での予防対策
生命と健康は、国民一人一人にとって最も大切な財産である。特に、高齢社会を迎えた今日、充実した老後をおくる前提は健康であり、若年者にとっても自己実現を図る基礎は健康にある。こうした健康を支える上で、食事は最も重要な因子の一つであり、その前提となる食品の安全性確保は、枢要な要素である。食品保健行政の目的は、食品の衛生上の危害発生の未然防止であり、健康上の被害が発生した場合には、迅速、的確な拡大防止策をとり、その教訓を再発防止に生かすことにより、国民の公衆衛生を維持増進することを使命としている。
ところが、これまでの国民の衛生水準の飛躍的な向上にも関わらず、近年、腸管出血性大腸菌O157に代表されるような新興・再興感染症等による新たな危機が顕在化している。また、ダイオキシン、内分泌かく乱物質等の化学物質による健康への影響が懸念されている。こうした健康危機に適切に対応するため、健康被害などの危険を示唆する情報を初期の段階で検知し、最新の科学的知見に基づき評価し、迅速に対策を講じるなど、危機管理の適切な実施が課題となっている。
また、世界的な市場経済の急速な発展やこれに伴う我が国の経済社会全体の規制緩和や地方分権という構造改革の流れの中で、食品の安全性を確保するためには、消費者、企業および行政の役割分担の明確化とその連携の強化が必要である。
食品保健分野については、平成7年食品の安全性に関する問題の多様化、輸入食品の著しい増加、国民栄養摂取状況の変化などに対応して法改正が行われたところであるが、今後この法改正の趣旨を着実に実行するとともに、上記の新たな課題に対応する必要が生じている。
こうした認識の下、これまでの食品保健行政を再点検し、21世紀初頭の食品保健行政のあり方の指標を作成する。
第一 食品保健についての現状認識
1 新興・再興感染症等の健康危機の顕在化
エボラ出血熱、結核、マラリア、サイクロスポーラを始めとして、世界的に新興・再興感染症等の国民の生命を脅かす健康危機が顕在化している。また、我が国でも食中毒事件が大規模化する傾向の中で、平成8年腸管出血性大腸菌O157による食中毒が発生し大きな被害が生じたことは記憶に新しい。さらに、食品流通の国際化の進展に伴い、海外からの感染症の流入も懸念されるところである。
2 食品中化学物質による健康影響への懸念
食品を通じたダイオキシン等環境中に存在する化学物質の曝露やプラスチック製食品容器から溶出する化学物質への曝露等による内分泌かく乱作用や食品中の複数の化学物質による相互作用等食品中化学物質による健康への影響が懸念されている。
3 新しい食品の開発と国際的な食品流通の活発化
世界的な市場経済の急速な発展及び科学技術の進歩は、食品の分野においても大きな変化をもたらしており、多種多様の食品等が大量に生産され世界的に流通するようになってきている。
4 食品衛生管理における消費者・企業・政府の役割の再認識
我が国経済社会については、抜本的な構造改革が実施されつつある。この中で、規制緩和の推進が図られ、食品衛生規制のような社会的規制についても必要最小限のものとすることが求められている。規制緩和は、消費者・企業の責任ある自立を前提とするものであり、こうした自立は、消費者・企業が種々の情報を入手することが可能となることが前提であり、消費者・企業相互の自発的な対話や情報交換の重要性も増している。
第二 戦略の視点
1 新たな健康危機の管理と食中毒対策
食品衛生の主要な目的は、飲食に起因する感染症(感染性の食中毒)や化学物質による危害(化学物質による食中毒)の発生・蔓延を防止する健康危機管理であるとの認識をもって対応することが重要である。このためには、医療体制の確保や予防治療方法の開発・普及等と総合的に行うことが不可欠であるため、食品衛生(保健)部門と保健医療部門との緊密な連携が必要である。また、内分泌かく乱作用を巡る問題等国民の関心が高い分野の調査研究をより一層推進するとともに、その成果等を踏まえ、迅速かつ適正な措置を講じることが求められる。
2 バイオテクノロジー応用食品や輸入食品等の安全性対策
科学技術の進展にともない、これまでの食習慣にない食品が出現してきた。これらの食品には、不足しがちな栄養素を集中的に補充するものや、組換えDNA技術応用食品など多様なものがある。いずれも、人類の食生活の改善に寄与し得るものであるが、同時にその安全性の確保にも十分な検証が必要であり、また、前者の食品などについては、その摂取が正しく行われる必要がある。
3 生産から食卓までの衛生管理
食品の安全性を一層確保するためには、農林水産業等食品の生産段階から流通、さらに製造、加工、調理、消費に至るまでの各過程における対策が総合的に講じられる必要がある。こうした対策は、農林水産業者、製造者、加工者、調理者そして家庭などにおいて、それぞれの責任において衛生的な観点から行われるものである。
(2) 食品の安全性を所管する厚生省・地方公共団体担当部局は、食品産業の振興を所管する農林水産省・都道府県担当部局とは独立して、食品保健行政に専念すること
4 情報公開
安全な食品が供給されることは国民の生活の基盤をなすものであることから、食品保健行政の円滑な遂行のためには、科学的な基盤に基づき国民の理解を得ることが不可欠である。このため、リスクコミニュケーション、すなわち、情報の公開とそれに伴う意見の交換をより一層積極的に行うことが重要である。
5 国際協力と国際貢献
食料輸入の増加を背景に、我が国の食品保健に関する様々な知見や技術をもとに国際的に貢献するとともに、途上国への支援等を充実させることが、我が国の食品の安全性を確保するためにも必要となっている。また、このような国際協力や貢献は、先進国としての我が国の責務ともいえよう。
第三 具体的施策
1 新たな健康危機の管理と食中毒対策
(1)発生時の即応体制の強化
従来の対策では対応困難な新しい食中毒に対し、迅速的確に対応するため、(1)患者発生情報の迅速な把握、(2)徹底的な原因究明、(3)効果的な被害防止策の立案と実行等が必要である。
(2)食中毒発生情報の公表
国、地方公共団体は、食中毒の原因究明及びその公表に当たっては、関係業界や業振興担当部局等の立場に左右されることなく、もっぱら住民への被害拡大防止、適切な医療の確保等の観点から、積極的に対応することが重要である。
(3)原因究明の強化
現在の食中毒の原因究明は地方公共団体によって行われ、全国的な傾向を国が解析評価する形となっており、患者発生情報を効果的に収集解析評価する体制を構築し、そこで得られた情報をもとに原因究明を徹底することが必要である。
(4)食品保健関係業務の効率化
監視指導体制及び原因究明体制を強化するため、例えば、重点的・専門的な監視等、現在の食品保健関係業務のさらなる効率的な実施方法を検討すべきである。
(5)危険度(リスク)評価手法の確立及び科学に立脚した食品の安全確保対策の推進
コーデックスにおいて、食品の安全のための規制は科学に立脚したものであるべきとの勧告が採択されており、食品の基準等の策定に適用すべき危険度(リスク)分析(リスク評価、リスク管理及びリスク情報交換)の原則を確立するための議論が進められているところである。我が国も、この考え方を踏まえて、規格基準の改正や新設等に当たっては、第一に常に最新の科学的知見に応じたリスク評価を行うことが必須である。
(6)食品中化学物質の安全対策の推進
(7)国際基準策定への積極的な貢献
食品の安全性確保の観点から、従来からFAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス)における国際基準の策定に我が国として参加してきたところである。また、アジアの食習慣を踏まえた適切な国際基準が設定されるよう、アジア各国と共同で食品摂取量に関する調査研究を進めているところである。
(8)検査技術の高度化及び普及の推進
(9)食物アレルギー対策
食物アレルギーの原因となる食材は増加しつつあると言われており、学校給食で食物アレルギーにより死亡した事例等の問題が報告されている。このような現状に対して、今後とも食物アレルギー発症メカニズムの解明等基礎的研究を推進していくことが重要である。これに加えて食物アレルギーの患者数や生活上の障害等の実態を正確に把握し、アレルゲンを含む食品の情報提供や学校給食の改善等、行政として早急に対応すべき事項を明らかにしていく必要がある。また、食物アレルギーの実態の経年的変化や将来における遡り調査ができるように、患者等の血清を長期にわたり保存していく仕組みも検討していくべきである。
2 新しい食品と輸入食品の安全性対策
(1)バイオテクノロジー応用食品対策
(2)栄養補助食品対策
ビタミン剤等従来医薬品として使用されていたものが、ビタミンやミネラルなどの栄養補助食品として自由に使われるようになってきている。
(3)輸入食品対策
3 生産から食卓までの全過程における食中毒予防方策の推進
(1)農場における対策
食品の安全性を確保するためには、生産から消費に至るまでの、それぞれの段階における対策の積み重ねが必要である。このため、厚生省は農林水産省に対し家畜や農産物についての必要な情報の提供を求めるとともに、農林水産省に対して必要な対策の実施について積極的に要請すべきである。
(2)水産食品に対する対策
農場等における衛生対策と同様、水産食品についても生産から消費に至るまで、対策の積み重ねが必要である。特に、わが国における水産食品の流通拠点である市場における衛生管理の向上が課題となっており、水産食品の衛生管理に関する国際的な状況も踏まえた対策が必要である。
(3)と畜場、食鳥処理場等における対策
健康な家畜等の消化管内に生息しているO157やサルモネラ等による食中毒を防止するためには、と畜場や食鳥処理場における衛生管理体制の強化が不可欠。このためと畜場、食鳥処理場におけるHACCPの導入及びその徹底等を行うべきである。
(4)食品製造・加工施設等の対策
HACCPは飲食による食品衛生上の危害を防止することを目的としたものであり、このような国際的にも通用する考え方のもと、一元的に、HACCPを具体化した総合衛生管理製造過程の導入を食品の製造、加工業に促していくことが不可欠である。
(5)大量調理施設の対策
これまでの大規模食中毒が学校給食施設等の大量調理施設が原因となったことが多いことから、これらの施設における衛生管理の強化が不可欠である。このため、調理過程においてもHACCPの考え方を踏まえた衛生管理手法を導入することを検討し、試行的事業の結果を踏まえ、実行可能かつ効果的な手法の開発が必要である。
(6)消費者教育と家庭での予防対策
消費者自らが正しい知識に基づく適切な行動をとることは、食品の安全性を最終的に確保する上で重要であるが、近年の食中毒には家庭における食品の不適切な衛生管理が原因となるものが少なくない。
4 情報公開と消費者教育
食品保健行政の推進に当たっては、関係する情報を迅速に、正確かつわかりやすく国民に提供することが不可欠である。特に、食品衛生調査会の審議内容や各種調査研究内容等国の持つ各種情報の提供を一層進める必要がある。このため、現在ホームページやWISHNET、行政相談室等において公開されている情報提供をさらに進めるとともに、そのデータベース化についても検討することが望まれる。また、海外の情報等も広く集め、提供する必要がある。
5 調査研究等の推進
食品保健に関する事項には、未だ科学的に未解明の部分が多い。従って、厚生省は、国立医薬品食品衛生研究所、国立感染症研究所、国立健康・栄養研究所等を中心として研究をさらに推進することが必要である。
国際的に食品流通が活発化する中で、各国の食品衛生規制の違いがもたらす貿易障壁が問題となり、科学的な理由が存在する場合を除いては、自国の規制と国際基準の調和を図ることが求められている。
他方、我が国の主権の及ばない諸外国から輸入される食品について、その安全性をどのように確保していくかが大きな課題となっている。
また、食品をとりまく科学技術の進展、生活様式の多様化などを背景に、新たな技術を応用した食品や特定の栄養素に着目、強化した食品等が開発されていることを踏まえた保健対策が必要である。
一方、食中毒原因究明等の結果を見ると、最近の食中毒対策においては、農場や食品工場などの食品の製造段階から、流通、加工、調理、消費の各段階における衛生管理が不可欠であることが明らかとなっている。
このような社会経済と食品保健に関する状況を踏まえ、食品保健の分野についても、消費者・企業と政府との役割分担の明確化と再認識が求められている。
また、政府の中においても、住民の自己決定を拡大し民主主義の活性化等を目指す国と地方の新しい関係を確立するための役割の見直しを行う地方分権が推進されつつある。
また、我が国の食糧供給(カロリーベース)の58%(平成7年度)は輸入品であり、多くの食品を海外に依存している。このような状況の中で、国際的な枠組みを無視し、我が国独自の食品衛生規制を実施することは困難であり、我が国の食品衛生規制も科学的に作成された国際標準には準拠することが求められる。
他方、こうした国際標準の作成について、受け身となるのではなく、積極的に関与することにより、もっぱら科学的な観点から健康影響に十分配慮し作成されるよう貢献する必要がある。
また、食品衛生の確保の第一義的な責任は食品の製造、加工、調理にかかる企業・消費者にある。
食品は日々、多くの種類のものが様々な調理方法で無数の場所でつくられ、伝統的なものも含め種々の食習慣のもと摂取されており、そのすべてを政府が監視することはもとより不可能であり、消費者や企業が食品衛生の確保を自己の責任として改めて認識することが必要である。
他方、政府は、健康被害の原因究明や拡大防止、必要な規制の制定とその遵守状況の把握、新しい衛生管理手法の開発・紹介・導入、関係する情報収集及び分析評価などを限られた人員で効率的に実施し、消費者・企業による食品衛生の確保を支援することが求められている。
行政内部の構成については
が、公正な食品保健行政を担保する上で合理的であり、いわば世界標準となっている。我が国も、こうした構成を今後とも維持し、公正な食品保健行政を通じて国民の生命・健康が守られるようにすることが必要である。
また、国と地方との関係では、地方で可能な事務は地方で行うこととしながらも、食中毒等の健康被害が容易に都道府県境や国境を越え発生するものであることを踏まえ、国の指揮の下危機管理が行うことができる体制が必要である。
具体的には、まず、企業が自ら情報を公開するとともに、国も食品保健行政に関する情報を地方公共団体や消費者に提供し、消費者、企業、国、地方公共団体が相互に科学的根拠に基づき情報交換をしていくことが重要である。
なお、食品衛生調査会については、議事録の公開するとともに、提出された意見も審議の参考にしているところである。また、調査会委員として消費者の意見等幅広い視点からの、科学に立脚した意見を反映できる委員を委嘱していくことも重要である。
患者発生情報に関して、保健所・医療機関等に対する食中毒(疑いを含む)としての取扱い対象の明確化、国・地方公共団体・保健所がそれぞれの役割分担に応じて迅速な情報収集及び情報分析を行うことができる体制の整備を行うことが必要である。国における情報分析については、食中毒情報分析分科会において、特に国外の発生情報及び国内の地方地方公共団体間にまたがる発生情報の分析並びに地方地方公共団体に対する情報還元を行うことが必要である。また、発生時の原因究明のため、DNA分析等新たな疫学指標の開発及び試験検査水準の向上を図ることが必要である。
以上については、感染症所管部局等との連携を図り、相互の役割分担を明確化するとともに、関連の試験研究機関との連携を強化することが重要である。
さらに、大規模食中毒の発生に備え、事前に医療機関との連携体制を整備しておく必要がある。
微生物に関するリスク評価については、その手法が確立されておらず、現在は定性的な評価により基準が設定されている。しかし、食品の流通実態の変化や製造技術の進展等に適切に対応するためは、特に微生物危害について、リスク評価に基づく適切な基準の設定が望まれるところである。そのため、疫学的及び臨床学的データ等に基づく有害性の評価や、食品の微生物汚染実態や摂取量調査等曝露の評価を踏まえリスク評価の手法を確立するため、我が国も国際的な議論に積極的に貢献することが必要である。
一方、化学物質に関するリスク評価については、後述するが、特に科学技術の進歩に対応した曝露評価手法を確立することが求められる。
食品の安全性確保対策は、自然界の食品には元来一定のリスクがあることを踏まえ、科学に基づくリスク評価及びそれに基づくリスク管理の実効性や費用対効果の観点、食生活・食習慣との調和の観点から、国民の健康確保を前提にした上で、効果的に実施することが必要である。
食品中の残留農薬については、今後とも基準設定を推進するため、現行の「2000年までに少なくとも200農薬の基準策定」という目標を踏まえた新たな目標を設定を設定することとする。また、農作物以外の未加工食品、加工食品への農薬残留についても実態調査の拡充が必要である。
プラスチック製食品用器具・容器包装については、従来からの規格基準の設定に加え、原料であるモノマーや添加剤等の個別物質ごとに安全性に関する資料の収集、分析を行うことが必要である。
また、残留基準設定の必要性が高いものについて、我が国において毒性評価のために毒性試験等の必要な資料を整備し、FAO/WHO合同食品添加物専門委員会(JECFA)に対して資料を提出する等、国際基準の設定に積極的に貢献することが重要である。
また、食品の汚染実態把握を広範に把握するとともに、食品の経時的な比較や地域間の比較が可能となるよう食品の経年的な保管事業の拡充と活用が必要である。
併せて、発ガン性が指摘されている環境汚染物質の安全性評価を最新の科学的知見を基に検討することが必要である。
曝露評価については、科学的により精密な推定手法の導入が求められるとともに、その基礎となる国民の食品摂取量の正確な把握に努めることが必要である。
さらに、既に設定された規格基準等の事後評価やそれぞれの時点における具体的な曝露量を的確に把握するため、マーケットバスケット方式による一日摂取量調査等が求められる。
しかしながら、欧米各国の取組みに比べると、わが国の取組みはいまだ十分とはいえず、国際的な貢献の観点から、国際基準の策定やその基盤となる科学的な調査研究により一層積極的に取り組むことが求められる。具体的には、科学的、専門的分野において一元的かつ継続的に対応できる専門家の育成とその組織的な活用が不可欠である。また、地域毎の食品摂取量の把握や内分泌かく乱作用に関する調査研究等国際的に関心の高い分野について、欧米各国やアジア各国との共同研究を拡充することが望まれる。
なお、国際化の進展と規制緩和を踏まえ、わが国の基準についても科学的に検討する必要があるが、我が国の基準のうち、国際基準より厳しいものであって、かつ、科学的に妥当であると考えられるものについては、その旨積極的に国際的な場において主張していくことが必要である。
また、地方公共団体における組織、検査の実施体制を見直し、統廃合を行うことにより検査業務の効率化、高度化を推進することが求められる。
また、こうした広範なバイオテクノロジー応用食品の安全性評価を合理的に実施するためには、安全性評価のための指針等の策定の実施主体と、これらの基準に基づく個別の食品毎の安全性評価の実施主体を分離し、相互のチェック体制を確立していくことについても今後検討が必要である。
バイオテクノロジーを応用した食品の安全性確保は第一義的には製造者等にあることから、製造者等は食品の安全性確保に関する社会的責任を一層自覚するべきであり、行政は安全性評価指針策定などのいわゆる基準設定業務及びモニタリングなどの監視業務を担当するべきである。なお、国民の間に大きな不安があるアレルギーについては、1の(9)の食物アレルギー対策の項で提案されている血清バンクを活用し、アレルギー発症状況に関するモニタリング実施について検討して行くべきである。
健康を維持増進していくためには食生活においてバランスがとれた食事をとることが基本であり、通常の食品によりこういった食生活を実現することが望ましいが、ビタミンやミネラルなどの栄養補助食品はこのような食生活が困難な場合や摂取栄養に特別の配慮が必要な場合において二次的・補完的な意義を有するものであることを踏まえた上で、その適正な利用が図られるべきである。
食品と健康に関する情報が氾濫している中で、消費者がこれらの情報に惑わされることなく、食品の購入に際し正しい選択ができるようにするためには、まず、適切な食生活のあり方や食品の有用性や安全性に関する教育を充実させることが重要である。
また、ビタミンやミネラルなどの栄養補助食品については、今後その利用頻度が増すことが考えられるが、これらは適切かつ有効に利用することにより、健康の維持増進の一助となる可能性もある。このため、摂取する人の状態に応じた適正量についての目安の設定や、栄養補助食品についての適正な表示の検討が必要である。さらに、ビタミンやミネラルの安全性について多面的な研究を進めることが必要がある。
一方で、医薬品まがいの効能効果を暗示して販売されている健康食品が依然として多いため、これらの監視や取締りの強化が望まれる。
また、輸入食品の安全性確保のため、輸入時の検査だけでなく、コーデックスやアジア太平洋経済協力(APEC)において示されている相互承認制度を考慮して、今後、信頼できる検査・認証制度を有する国と二国間で相互承認の取決めを進め、併せて、違反時には必要に応じて輸出国の査察ができる仕組みも検討していくことが適当である。
なお、関係する国との行政レベルでの情報交換を一層推進して行くことも必要である。
このため、食品衛生法の総合衛生管理製造過程の承認制度の対象品目を拡大する等のHACCPの導入を促進するための方策を講じる必要がる。
また、食品の生産、製造・加工におけるHACCPの適切な実施には、施設設備の適切な管理運営が不可欠であることから、食品の製造加工実態を踏まえ、科学的な評価に基づいた管理運営基準の改訂等が必要である。
また、食品の流通小売業等においても搬送時や保管時の適切な温度管理や食品相互の汚染防止のための衛生管理等に努めることが重要である。
なお、HACCPの適切な実施のためには、危害分析や管理方法の設定に必要な科学的・専門的な情報が製造・加工業者等の営業者に十分に提供され、有効に活用されることが必要である。このため、危害因子の制御方法に関する調査研究を充実し、その情報を広く提供できる体制を整備することが必要である。
HACCPの検証などに必要な試験方法について、その有効性を評価していく仕組みづくり等を促進するべきである。
また、これらの衛生管理手法の開発とともに、学校給食施設や病院等の給食施設について、今後、食品衛生法による規制の導入も含めた抜本的な規制方策の検討が必要であろう。
したがって、消費者に対して情報提供を通じた教育を行うことが必要である。このため、食中毒の発生状況や原因、適切な調理方法等について速やかに、わかりやすく正確な情報を提供し、国民各層に広く注意喚起を行い、衆知を集め、対策確立に結びつけていく必要がある。特に、魚介類や卵の生食等の我が国特有な食習慣を踏まえ、国民が自らの判断で対応できるよう、危険性等について、表示等を含め、広く国民に情報提供し、周知することが必要である。
情報提供に際しては、関係省庁と連携するとともに、特に、保健所等住民に身近なところでの相談体制を充実することが重要である。必要に応じて、都道府県から市町村へも情報を提供するべきである。さらに、国立試験研究機関等と地方衛生研究所等の間のネットワークの推進等情報交換を進めることが重要である。
危機管理時には、広報はしかるべき役職で、広く情報を理解している人が担当する必要がある。
また、地方公共団体が行う食品保健行政の全国的なレベルを把握し、必要な改善が図れるよう、行政内容や水準の評価指標やその基礎となる情報提供及び評価手法等について検討を進めるべきである。
なお、情報公開の推進に当たっては、情報公開法(仮称)に従って行うこととすべきである。
さらに、国立高度医療センターや大学等における調査研究の推進も重要である。
また、必要な人材養成や研修等もこれらの関係機関の連携のもとに進めることが必要である。
別紙2 |
平成10年2月13日
厚生省生活衛生局 食品保健課
乳肉衛生課
食品化学課
今回、別紙の通り、「今後の食品保健行政の進め方に関する検討会」(以下、「検討会」といいます。)は、その報告書骨子(案)を公開し、国民の皆様からご意見を募ることとされました。
そこで、次の要領で国民の皆様からご意見を受け付けることとなりましたので、ご意見をお待ちしております。
1 報告書骨子(案)への意見は3月13日(必着)まで下記へ郵送してください。
なお、締め切りをすぎた後に頂いたご意見については、検討会に報告できないことがありますので、ご注意ください。
郵送先: | 郵便番号100ー8045 東京都千代田区霞ヶ関1ー2ー2 厚生省生活衛生局食品保健課 電話03ー3595ー2326(直通) |
2 ご意見には、下記の事項を見やすく記載してください。
【ご記載頂く内容】
ご意見、氏名、年齢、職業、住所
3 提出されたご意見は、検討会に提出され、報告書作成の参考にすることとされております。
4 提出されたご意見及びご提出頂いた方の氏名、年齢、職業、住所(郡市名まで)は公表されることがありますのでご留意ください(新聞の投書欄と同様の取り扱いです。)。
連絡先 生活衛生局食品保健課 新木(内2444)、渡辺(内2452)