平成9年エイズ発生動向年報

(平成9年1月1日〜12月31日)



平成10年1月27日

厚生省エイズ動向委員会


目  次

概要

1.エイズ発生動向調査(サーベイランス)の概要
2.診断基準
3.集計方法の対象と方法
4.集計結果を見る上での留意事項


発生動向の分析結果

1.平成9年報告例の主な内訳
2.平成9年12月31日までの累積報告例の内訳
3.HIV及びAIDSの動向
4.都道府県別の報告件数
5.まとめ


表1 1997年に報告されたHIV感染者及びAIDS患者の内訳と前年との比較
表2 1997年12月31日現在のHIV感染者及びAIDS患者の国籍、性、感染経路別累積報告件数
表3 HIV感染者及びAIDS患者の国籍、性別年次推移
表4 HIV感染者及びAIDS患者の国籍、感染経路別年次推移
表5 HIV感染者及びAIDS患者の国籍、性、感染経路別年次推移
表6-1 HIV感染者の国籍、性、年齢階級別年次推移
表6-2 AIDS患者の国籍、性、年齢階級別年次推移
表7 HIV感染者及びAIDS患者の国籍、性、感染場所別年次推移
表8 HIV感染者及びAIDS患者の国籍、性、居住地別年次推移
表9-1 異性間性的接触で感染した日本国籍男性HIV感染者及びAIDS患者の年齢階級、感染場所、居住地別年次推移
表9-2 同性間性的接触で感染した日本国籍男性HIV感染者及びAIDS患者の年齢階級、感染場所、居住地別年次推移
表9-3 異性間性的接触で感染した日本国籍女性HIV感染者及びAIDS患者の年齢階級、感染場所、居住地別年次推移
表9-4 異性間性的接触で感染した外国国籍男性HIV感染者及びAIDS患者の年齢階級、感染場所、居住地別年次推移
表9-5 同性間性的接触で感染した外国国籍男性HIV感染者及びAIDS患者の年齢階級、感染場所、居住地別年次推移
表9-6 異性間性的接触で感染した外国国籍女性HIV感染者及びAIDS患者の年齢階級、感染場所、居住地別年次推移
表10-1 HIV感染者の居住地別年次推移及び人口10万対報告件数
表10-2 日本国籍HIV感染者の居住地別年次推移及び人口10万対報告件数
表10-3 外国国籍HIV感染者の居住地別年次推移及び人口10万対報告件数
表10-4 AIDS患者の居住地別年次推移及び人口10万対報告件数
表10-5 日本国籍AIDS患者の居住地別年次推移及び人口10万対報告件数
表10-6  外国国籍AIDS患者の居住地別年次推移及び人口10万対報告件数

添付資料

1.ウインドウ・ピリオド中の献血血液によるHIV感染について

(薬企第51号、平成9年5月27日より転載)
2.諸外国の動向 略

3.厚生省エイズ動向委員会委員一覧

4.厚生省エイズ動向委員会年報作製作業部会委員一覧



概  要


1.エイズ発生動向調査(サーベイランス)報告の概要

 エイズ発生動向調査(サーベイランス)は1984年から開始され、後天性免疫不全症候群の予防に関する法律が1989年に施行されることによって整備され現在に至っている。報告の流れとしては、HIV感染者あるいはAIDS患者を診断した医師が都道府県・指定都市・中核市に「エイズ病原体感染者報告票」(以下、初回報告票と呼ぶ)を7日以内に提出し、その報告票が都道府県・指定都市・中核市から厚生省保健医療局エイズ疾病対策課に集められる。初回報告票がすでに提出されたHIV感染者あるいはAIDS患者に病状の変化(HIV感染者がAIDS発病または死亡、AIDS患者が死亡)があった場合、「エイズ病原体感染者報告票(病状に変化を生じた事項に関する報告)」(以下、病変報告票と呼ぶ)が同様の流れで集められる。いずれの報告票もエイズ動向委員会による審査を通して確定される。なお、凝固因子製剤による感染はこの報告の対象外である。
 初回報告票の内容は、HIV感染者・AIDS患者の別、国籍、感染経路、性、年齢、感染場所(日本国内・海外)、居住地(都道府県・指定都市・中核市)、診断年月日、報告年月日などである。病変報告票の内容は、病状の変化の状況とその年月日が入ることを除けば、初回報告票とほぼ同じである。なお、いずれの報告票でも、氏名、生年月日などの個人を特定できる情報は含まれていない。


2.発生動向調査(サーベイランス)のためのAIDS診断基準は下記のとおりである

I HIV検査で感染が認められた場合

 酵素抗体法(ELISA)又はゼラチン粒子凝集法(PA法)といったHIVの抗体スクリーニング検査法の結果が陽性で、かつWestern Blot法又は蛍光抗体法(IFA)といった確認検査法の結果も陽性であった場合、または抗原検査、ウイルス培養、PCR法などの病原体に関する検査(以下、「病原検査」という。)によりHIV感染が認められた場合であって、下記の特徴的症状(indicator Diseases)の1つ以上が明らかに認められるときはAIDSと診断する。

II 周産期に母親がHIVに感染していたと考えられる生後15ヶ月未満の児の場合

 周産期に母親がHIVに感染していたと考えられる生後15ヶ月未満の児については、HIVの抗体確認検査が陽性であっても、それだけではHIV感染の有無は判定できないので、さらに以下の(1)または(2)のいずれかに該当する場合で免疫不全を起こす他の原因が認められないものをAIDSと診断する。

(1) HIV抗体検査、ウイルス分離、PCR法などの病原検査法が陽性で、特徴 的症状の1つ以上が明らかに認められるとき
(2) 血清免疫グロブリンの高値に加え、リンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数/CD8陽性Tリンパ球数比の減少といった免疫学的検査所見のいずれかを有する場合であって、特徴的症状の1つ以上が明らかに認められるとき
(特徴的症状)

カンジダ症(食道、気管、気管支又は肺)
クリプトコックス症(肺以外)
クリプトスポリジウム症(1ヶ月以上続く下痢を伴ったもの)
サイトメガロウイルス感染症(生後1ヶ月以上で、肝、脾、リンパ節以外)
単純ヘルペスウイルス感染症(1ヶ月以上継続する粘膜、皮膚の潰瘍を呈するもの又生後1ヶ月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの)
カポジ肉腫(年齢を問わず)
原発性脳リンパ腫(年齢を問わず)
リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex (13歳未満)
非定型抗酸菌症(結核以外で、肺、皮膚、頸部もしくは肺門リンパ節以外の部位、又はこれらに加えて全身に播種したもの)
10 ニューモシスチス・カリニ肺炎
11 進行性多発性白質脳症
12 トキソプラズマ脳症(生後1ヶ月以後)
13 化膿性細菌感染症(13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌による敗血症、肺炎、髄膜炎、骨関節炎又は中耳・皮膚粘膜以外の部位の深在臓器の腫瘍が2年以内に、二つ以上、多発あるいは繰り返して起こったもの)
14 コクシジオイデス症(肺、頸部もしくは肺門リンパ節以外に又はそれらの部位に加えて全身に播種したもの)
15 HIV脳症(HIV痴呆、AIDS痴呆又はHIV亜急性脳炎)
16 ヒストプラスマ症(肺、頸部もしくは肺門リンパ節以外に、又はそれらの部位に加えて全身に播種したもの)
17 イソスポラ症(1ヶ月以上続く下痢)
18 非ホジキンリンパ腫(B細胞もしくは免疫学的に未分類で組織学的に切れ込みのない小リンパ球性リンパ腫又は免疫芽細胞性肉腫)
19 活動性結核(肺結核(13歳以上)又は肺外結核)
20 サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く。)
21 HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病)
22 反復性肺炎
23 浸潤性子宮頸癌

※ 19のうち、肺結核、22、23は1994年の新たな診断基準で採用された特徴的症状である。

※ ※ 肺結核及び浸潤性子宮頸癌については、HIVによる免疫不全を示唆する症状または所見がみられる場合に限る。

(厚生省エイズサーベイランス委員会,1994)

3. 集計の対象と方法

 1997年12月31日までに厚生省エイズ動向委員会によって確定されたHIV感染者とAIDS
患者を集計対象とした。なお、前述の通り、この中には、凝固因子製剤による感染は含まれていない。HIV感染者に関する情報は初回報告票から、AIDS患者に関する情報は初回報告票と病変報告票から得た。
 HIV感染者とAIDS患者を、日本国籍と外国国籍ごとに、年次、感染経路、性、年齢、感染場所、居住地の別およびそれらの組み合わせの別に集計した。年次は診断時点、報告時点ではなく、エイズ動向委員会での確定時点としたが、詳細は4に記す。感染経路は異性間性的接触、同性間性的接触、静注薬物濫用、母子感染、その他、不明の6区分とした。同性間性的接触には両性間性的接触を含めた。また、女性には同性間性的接触がないので、男性のみを集計した。その他の感染経路には輸血や臓器移植などとともに、可能性のある感染経路が複数あるケース(同性間性的接触と静注薬物濫用のいずれかなど)を含めた。

4.集計結果を見る上での留意事項

 HIV感染者の多くは、感染後のかなり長い期間、特定の症状がなく、検査を受けてはじめて感染が判る。診断されたHIV感染者のエイズサーベイランスへの報告漏れは比較的少ないと思われるが、検査を受けていないHIV感染者がいるために、国内に存在するすべてのHIV感染者の内で報告されている者の割合は必ずしも高くない可能性がある。一方、AIDS患者は特定の症状を有することが多く、医療機関を受診する。診断されたAIDS患者の医療機関からの報告率がきわめて高いことを考慮すると、AIDS患者の報告率はかなり高いと考えられる。
 エイズサーベイランスでは、同一者に対して複数の初回報告票を提出しないこと、病状が変化しない限り、同一者に対して複数の病変報告票を提出しないことが定められている。ただ、前述の通り、報告票には個人を特定できる情報が含まれていないために、報告に若干の重複がある可能性を否定できない。HIV感染者とAIDS患者の間には病変報告分の重複がある。本集計では、HIV感染者とAIDS患者を別々に重複して数えており、そのために、それらを合計しても意味がない。
 本集計では、日本国籍と外国国籍を別にしているが、これは、両者の感染経路の状況や年次推移の傾向などが大きく異なるためである。
 前述のように、年次を診断時点でなく、エイズ動向委員会の確定時点とした。多くの症例では報告は診断後速やかに行われ、直ちにエイズ動向委員会が審査・確定している。ただ、様々な事情から報告が遅れるケースもある。1990〜1997年にエイズ動向委員会により確定されたHIV感染者の中で、確定されたのが診断の翌年であったケースは3.5%、2年以上遅れたケースは0.4%であった。同様に、1990〜1997年に確定されたAIDS患者では、確定されたのが診断の翌年のケースは5.4%、2年以上遅れたケースは2.9%であった。報告票の年齢欄には診断時点あるいは報告時点などの規定はないが、確定が診断や報告よりも極端に遅れるケースはきわめて稀であるので、年齢を診断時点あるいは報告時点のいずれのものとみても、全体像を把握する上で大きな問題はない。



発生動向の分析調査

1.平成9(1997)年報告例の主な内訳

 平成9(1997)年には、HIV 感染者(以下HIVと省略)397件、AIDS患者(以下AIDSと省略)250件が報告され、いずれも前年(それぞれ375件、235件)を上回った(AIDSは過去最高)。感染経路別では、性的接触による感染(HIVの77.3%、AIDSの64.4%)、国籍・性別では、日本国籍男性(HIV58.9%、AIDS68.0%)が多数を占め、感染場所別では、日本国籍者の大半が国内感染(HIV 75.4%、AIDS 61.0%)であった。
 前年との比較では、HIV、AIDSともに、性的接触による感染(以下、性感染)、日本国籍男性、国内感染が増加し、居住地別では、近畿ブロックにおけるHIV報告件数の増加が目立った(以上表1)。また、HIV抗体スクリーニング開始後の国内献血血液で感染した症例が初めて報告された(表1及び添付資料参照)。

2.平成9(1997)年12月31日までの累積報告例の内訳

 1997年12月31日までの累積報告件数は、HIV 3985件、AIDS 1684件となった。感染経路別構成は、HIVでは、凝固因子製剤37.5%、異性間性的接触30.6%、同性間性的接触14.4%、静注薬物濫用0.4%、母子感染0.5%、その他1.2%、不明15.4%となった。AIDSの感染経路別構成では、凝固因子製剤が37.3%とやや高いが、その他の感染経路の構成はHIVにほぼ近い。(以上表2)。凝固因子製剤による感染者以外の報告例の国籍・性別構成は、HIVでは日本国籍男性43.2%、日本国籍女性9.0%、外国国籍男性14.0%、外国国籍女性33.8%であり、AIDSでは、それぞれ65.8%、6.0%、20.2%、8.0%となった(以上表3)。同性間性的接触のAIDSを除き、HIV、AIDSともに性感染例は増加を続けている(以上表4、図1)。


図1 HIV及びAIDS患者の国籍、感染経路別年次推移   図1の0

a日本国籍HIV感染者

図1の1

  b外国国籍感染者

図1の2

 
c日本国籍AIDS患者

図1の3

  d外国国籍AIDS患者

図1の4


3.HIV及びAIDSの動向

 HIVの報告件数は1992年のピーク後減少したが、再び増加傾向にあり、AIDSの報告件数は一貫して増加しつつある。年間報告件数が増加を続けているのは、日本国籍男性のHIVとAIDS、外国国籍女性のAIDSであり、他は1996年まで増加を続けていたが1997年にやや減少した。HIVとAIDSの報告件数の比(HIV/AIDS)は、1997年1.59で、1992年の8.67以来減少を続けている(以上表3、図2)。報告件数の増加は、主として性感染(異性間及び同性間)によるもので、感染経路不明例もやや増加した(以上表4)。


図2 HIV感染者及びAIDS患者の国籍、性別年次推移   図2の0

aHIV感染者

図2の1

  bAIDS患者

図2の2


(1)HIVの動向

日本国籍男性の場合:異性間と同性間性的接触がほぼ同数(443 v.s495)で報告件数の大半を占め、かつ増加の中心である(以上表5)。異性間性的接触は、年齢のピークが30-34歳、国内感染が大半(59.8%)を占める(以上表9-1)。国内感染例の割合は近年緩やかに増加しつつある(図3)。居住地別では、関東甲信越ブロック(以下東京都を除く)45.6%、東京都31.6%で、ほぼ全ブロックで増加が続いている(以上表9-1)。一方、同性間性的接触では、年齢は25-29歳がピークでやや若く、国内感染の比率がさらに大きい(79.6%)(以上表9-2)。異性間性的接触の場合と同様、国内感染例が緩やかに増加しつつある(図3)。東京都57.2%、関東甲信越ブロック22.2%と、東京都の比率が大きく(図4)、東京都では増加が続いているが、近畿ブロックでも1997年に報告数が急増した(以上表9-2)。

日本国籍女性の場合:異性間性的接触が、増減しつつも緩やかに増加している(以上表5)。年齢のピークは25-29歳で、感染場所の大半はほぼ一貫して国内(72.5%)であり、居住地は、関東甲信越ブロック38.5%、東京都28.6%で(以上表9-3、図4)、日本国籍男性に比べると、これらの地域の占める割合がやや小さい(以上表9-3)。
 外国国籍男性の場合:異性間性的接触が同性間性的接触の約1.6倍で、いずれも1996年までは緩やかな増加傾向を示し、1997年に減少した(以上表5)。異性間性的接触の年齢のピークは、30-34歳、感染場所は海外が大半(66.9%)であるが、国内感染も15.3% 存在する。居住地は、関東甲信越ブロックと東京都がほぼ同数で、計75.8%を占める(以上表9-4、図4)。同性間性的接触は、年齢のピークが25-29歳とやや若く、66.7%が東京都に集中している(以上表9-5、図4)。感染経路不明例は、数、年次推移ともにほぼ異性間性的接触に近い(以上表5)。

外国国籍女性の場合:異性間性的接触が、1992年に大きなピークを示した後減少し、過去3年間ほぼ横ばいの状態にある(以上表5)。年齢のピークは、20-24歳ともっとも若く、感染場所は国外感染と不明が多いが、国内感染も15.0%存在する。居住地は、関東甲信越ブロックが68.6%、東京都が21.0%を占める(以上表9-6、図4)。感染経路不明は、数、年次推移ともにほぼ異性間性的接触に近い(以上表5)。


図3 日本国籍HIV感染者の感染場所の年次推移   図3の0

a異性間性的接触の男性

図3の1

  b同性間性的接触の男性

図3の2

c異性間性的接触の女性

図3の3

   

図4 感染経路、国籍、性別の居住地の分布

aHIV感染者

図4の1


bAIDS患者

図4の2

 
東京都
関東・甲信越ブロック(東京都を除く)
その他のプロック  ※ブロック区分については表10−1を参照

(2)AIDSの動向

日本国籍男性の場合:異性間性的接触が報告件数、増加傾向いずれも最も大きく、同性間性的接触は過去4年間40件前後でほぼ横ばい状態にある(以上表5)。異性間性的接触では、年齢のピークは45-49歳、感染場所は、1994年までは海外感染が主であったが、1995年以降は国内感染が主となった。累計では国内感染が50.3%である。居住地は、関東甲信越ブロック46.0%、東京都26.3%で(以上表9-1、図4)、1997年に北海道、近畿ブロックで報告が増加した(以上表9-1)。同性間性的接触では、年齢のピークは40-44歳で、感染場所は、国内が中心(64.8%)でその傾向は1991年以降一貫している。居住地は東京都が中心で57.7%、関東甲信越ブロックは23.3%であり(以上表9-2、図4)、多くのブロックで1997年に報告数が減少した(以上表9-2)。感染経路不明例が21.1%存在する(以上表5)。

日本国籍女性の場合:異性間性的接触は、1995年以来年間約10件と横ばいで(以上表5)、年齢のピークは30-34歳、国内感染が主(60.0%)で、居住地は相対的には関東甲信越ブロックに多いが、全国に分散している(以上表9-3、図4)。感染経路不明例が23.8%存在する(以上表5)。

外国国籍男性の場合: 異性間性的接触が1992年以来優位で、1996年まで増加を続け、1997年に減少した。同性間性的接触は年間数例にとどまっている(以上表5)。異性間性的接触では、年齢のピークは30-34歳、海外感染が主(66.7%)で、東京都、関東甲信越ブロックに72.0%が集中している(以上表9-4、図4)。同性間性的接触では、年齢のピークは30-34歳、海外感染が主(54.1%)で、東京都に62.2%が集中している(以上表9-5、図4)。感染経路不明例が41.6%存在する(以上表5)。
外国国籍女性の場合:異性間性的接触と感染経路不明例がほぼ同数で、少数ではあるが緩やかな増加傾向にある(以上表5)。異性間性的接触の年齢のピークは25-29歳、感染場所は海外(38.1%)、居住地は関東甲信越ブロック(66.7%)が中心である(以上表9-6、図4)。


4.都道府県別の報告件数


 人口10万対の累積報告件数は、全国ではHIV1.98(表10-1)、AIDS0.84(表10-4)である。人口10万対報告件数の多い都道府県の上位5つは、日本国籍者の場合、HIVでは、東京都、千葉県、茨城県、神奈川県、埼玉県(表10-2、図5)、AIDSでは、東京都、茨城県、栃木県、千葉県、神奈川県(表10-5、図5)で、外国国籍者の場合、HIVでは、茨城県、長野県、山梨県、東京都、栃木県(表10-3、図5)、AIDSでは、山梨県、茨城県、東京都、群馬県、長野県である(表10-6、図5)。


図5 人口10万対報告件数の国籍別都道府県別の分布   図5の0

a日本国籍HIV感染者

図5の1

  b外国国籍感染者

図5の2

 
c日本国籍AIDS患者

図5の3

  d外国国籍AIDS患者

図5の4



5.まとめ


(1)HIVとAIDSの報告件数は依然増加基調にあり、その中心は日本国籍の男性である。

(2)外国国籍者の報告が、なお少なからず存在する。

(3) 感染経路は、凝固因子製剤による感染以外では、HIV、AIDSとも性感染によるものが 大半で、静注薬物濫用や母子感染によるものはなお少数にとどまっている。

(4) 性感染の感染場所は、日本国籍者の場合HIV、AIDSとも大半(50-80%)が国内で、男性のHIVでは国内感染の比率が近年さらに高まりつつある。外国国籍者にも、少なからず国内感染例が報告されている。

(5) 報告例の居住地は、一般に関東甲信越ブロックと東京都に集中し、同性間性的接触による感染例はとりわけ東京都に集中している。

(6)献血のHIV抗体スクリーニング開始後の国内血液輸血で感染した症例が初めて報告された。



添付資料

1 ウインドウ・ピリオド中の献血血液によるHIV感染について

(薬企第51号、平成9年5月27日より転載)

[概要]

・ 1997年2月に、血液センターで献血された血液にHIV抗体検査陽性を示した血液を見出し、この血液は供給から除外された。
・ 直ちに、同一献血者から採血された血液について遡及調査を行い、この献血者が82日前に血液センターで献血していたことを確認した。

・ その献血由来の血液はHIV抗体検査陰性であったが、その時に保管していた検体からPCR法陽性のウインドウ・ピリオドの血液であること、また、その時に献血された血液は全血採血で、一人の患者さんにだけ輸血されていたことも判明した。

・血液センターから82日前に献血された血液を供給した医療機関の主治医に連絡し、患者へのHIV感染の有無の確認と医療上必要な対応についてお願いした。患者への輸血99日後の血液の検査結果はHIV抗体倹査陽性であることが分かった。

・ 患者がHIVに感染したのは、抗体検査で検出できない期間(ウインドウ・ピリオド)に献血された血液の輸血によるものと考えられる。

[今後の安全対策]

・検査を目的とする献血はウインドウ・ピリオドによる感染を引き起こす行為であることの周知

・問診や献血終了後3時間以内の自己申告制の徹底による安全性の確保献血時にPCR検査を可能とする技術の導入の検討

3 厚生省エイズ動向委員会委員一覧(50音順)

  伊 藤 章 横浜市立大学医学部助教授
  河 ア 則 之 国立療養所福井病院長
  栗 村 敬 大阪大学名誉教授
  島 田 馨 東京専売病院長
  曽 田 研 二 横浜市立大学医学部教授
  田 島 和 雄 愛知県がんセンター研究所疫学部長
  根 岸 昌 功 東京都都立駒込病院感染症科医長
山 崎 修 道 国立感染症研究所長
  山 田 兼 雄 聖マリアンナ医科大学客員教授
※は委員長

4 厚生省エイズ動向委員会年報作製作業部会委員一覧
(50音順)
市 川 誠 一 神奈川県立衛生短期大学衛生技術科助教授
鎌 倉 光 宏 慶應義塾大学公衆衛生学教室講師
木 原 正 博 神奈川県立がんセンター臨床研究所研究三科技幹
中 村 好 一 自治医科大学公衆衛生学助教授
橋 本 修 二 東京大学大学院医学系健康科学・看護学専攻
疫学・予防保健学助教授
安 岡 彰 国立国際医療センターエイズ治療・研究開発センター
臨床研究開発部医長

 問合せ先
 厚生省保健医療局エイズ疾病対策課
    池田(内線2358)
    大澤(内線2355)